わがしかし ⑤ (53)

タカシ「先輩…っ、待ってくださいよ、先輩!」

タカシ「先輩…俺、先輩にまだ伝えてないことが…!」

ヒトミ「見てタカシくん、ほら…桜」

タカシ「え…?」

ヒトミ「桜、すごく綺麗だよ」

タカシ「…い、今は桜なんか…」

ヒトミ「卒業したって、私たちの仲はきっと変わらないよ」

ヒトミ「だって…」

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【ココノツの自室】


ココノツ「だって……」

ココノツ「…………」

ココノツ(……だって……あれ……?)

ココノツ「だって…だって…?」

ココノツ「……………」

ココノツ(……やばい……「だって…」の先が思いつかない……)

ココノツ「だって……なんだ……?」



スッパーーーーーンっ!!!!


「ココナツゥ!!!」


ココノツ「!!!?!?」ビビクゥ

サヤ「ココナツ!マンガなんて描いてる場合じゃないよっ!」

ココノツ(……え……ええっ……?)

サヤ「花見…花見するぞっ!」

ココノツ(……え……ええっ……!?)

最終菓子「花・縁り・団子」

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~その後~

ココノツ「えーっと…」

ココノツ「なんで急にそんな話に…?」

ほたる「それはね…」ヌウ…

ココノツ「う、うわっ!?ほたるさんいたんですか!?」

ほたる「実はさっき、サヤ師と話していたのだけれど…」

~ちょっと前のこと~

【喫茶エンドウにて】


ほたる「ああ…美味しい」

ほたる「やっぱり、サヤ師の淹れたコーヒーは駄菓子とベストにマッチして最高ね…」

サヤ「あはは、ありがと」

ほたる「ご馳走さま。はい、コーヒーのお代と…」

ほたる「ついでに、これをあげるわ」

サヤ「ん?これは…」

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サヤ「…も、もっちゃんだんご…?」

ほたる「ふふっ…そう、もっちゃんだんご…」

ほたる「さくらんぼ餅で有名な共親製菓が出した、三色だんごを模して作られた駄菓子よ」

サヤ「へ、へ~…」

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サヤ「…あ、串は刺さってないんだね」

ほたる「主な購買層である子供に対する配慮ね」

ほたる「ほら、串って案外危ないし」

サヤ「あー…確かに」

ほたる「それに、串がない分ゴミの量も減り…ひいてはそれが価格を抑えることにも繋がっている…」

ほたる「ああ…すごいわもっちゃんだんご!」

サヤ「だんご…そっか…」

サヤ「最近暖かくなってきたし、もうそんな季節だよねぇ」

ほたる「そんな季節?」

サヤ「え、ああ…ほら、春といえばさ…」

サヤ「やっぱり、お花見だよね」

サヤ「ほたるちゃんも、そう思ったからこんな駄菓子持ってき…」

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ほたる「…………」

サヤ(……あれ……?私なんか変なこと言った……?)

ほたる「……えっと、サヤ師……」

サヤ「ん?」

ほたる「…お花見って…何かしら…?」

サヤ「……はい……?」

~そして現在~

サヤ「…とまあ、そんな感じで」

サヤ「聞けばほたるちゃん…生まれてこのかた一度もお花見したことがないって言ってるんだよっ…!」

サヤ「に、にに日本に住んでて、こんなことあるのっ…!?」

ほたる「…め…面目無い…」

ココノツ(……そういえば忘れてたけど、ほたるさんってこういう変な人だったな……)

ココノツ「…ま、まあ、別に悪いことしてるってわけでもないし…」

ほたる「私…小さい頃から父の後をついて海外を転々としてて…」

サヤ(そっか…家庭の事情が…)

ほたる「日本にいる時期も、決して少なかったわけではなかったのだけれど…」

ほたる「全国の駄菓子屋巡りで忙しくて…その…」

ココノツ・サヤ(……ああ、やっぱ変人だこの人……)



「…事情は聞いたぜ…」


ほたる「そ、その声は…!?」

ヨウ「フフッ、こんなこともあろうかと…」

ヨウ「今朝方から既に、ハジメちゃんに頼んで場所取り済ませてあるんだなぁこれが…」

ヨウ「虫の知らせを聞いてな、花見デビューするほたるちゃんの為に、最高の席を用意しておいたぜ…っ…!」

ほたる「…よ、ヨウさん…っ…!」

ココノツ「…いや、絶対自分が楽しむためでしょそれ…」

ココノツ(…まあ、ほたるさんが楽しめるならいいか)

~その後~

【近所の神社】

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ほたる「わあぁ……!」

ほたる「す、すごいわ!ココノツくん!」

ココノツ「あ、はい。綺麗ですよね」

ほたる「屋台があんなにたくさん並んでる!!!」

ココノツ「えっ、そっち!?」

ほたる「あっちはりんご飴が売ってるし、…あっ!あっちは焼きとうもろこしが売ってるじゃない!」

ほたる「すごいわね、まるでお祭りだわ!」

ココノツ「まあ確かに、花見ってある種のお祭りみたいなものかもしれないですね」

サヤ「日本人ってお祭り好きだねぇ」

ヨウ「まあまあ御三方、盛り上がる気持ちも分かるが、そろそろ会場に向かおうぜい」

ココノツ「会場って、どの辺に陣取ったのさ?」

ヨウ「ん?ああ、そこだよそこ」

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ココノツ「…………」

ほたる「…………」

サヤ「…………」

ヨウ「…………」

ヨウ「………な?」

ココノツ「な?じゃねぇよ…っ……!?」

ココノツ「おい父さん!花ないじゃん!どこにも咲いてないじゃん!?」

ココノツ「っていうかこれ、桜じゃなくて梅の木じゃん…!!!」

ヨウ「せ、先週までは咲いてたんだよぉ…」

ココノツ「お花見なのに何を見ればいいの!?木を見るのか!?木を!!!」



「あ、いたいた~」


ほたる「あら、ハジメちゃん」

ハジメ「いやいやどーも、お待たせしちゃいまして…」

ココノツ「は、ハジメさん…これは一体…」

ハジメ「ああ店長、いや実は昨日の夜ついパパさんと話し込ん(?ん)じゃって…」

ヨウ「気がついたら、二人とも居間で寝てたよネ☆」

ハジメ「す、すすすんませぇん…自分目覚ましセットしたんスけど…」

ココノツ(…う、ウチの大人たちはどうしてこう…)

ハジメ「あ、でも代わりといっちゃなんなんスけど…」

ココノツ「ん?」

ハジメ「いや~、この失態を挽回するべく、今の今まで各所を奔走してたんスよ」

ハジメ「その結果、運の良いことに…」

【とある場所にて】

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サヤ「わ~!綺麗~」

ヨウ「な、なんつーベストロケィション…」

ココノツ「…え、いや…どーやってこんな良いところ確保出来たんですか…?」

ハジメ「ああ、実は…」


「遅いぞ!少年!」


ココノツ「あ、紅豊さん…」

紅豊「ユタカと呼べ」

ココノツ「あの…ここってもしかして」

紅豊「フフッ…驚いたか」

紅豊「見ての通り、ここは我がタウンズマートかしが浜店の陣地!」

紅豊「このベストスポットを確保するため、店長である俺自ら2日前より陣取り、ようやく確保するに至った場所…それがこのサンクチュアリだ!」

ココノツ(え、えぇ……)

ココノツ「な、なんでそこまで本気出すんですか…」

紅豊「俺は何事にも全力を持って臨むのだよ」

紅豊「そして何より、この景色を見せてやりたい奴がいてな」

ココノツ「え…それって…」


ザアアアァァァァァ…………


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ほたる「…………」

ココノツ(……ほたるさん……)

ハジメ「さーさー元店長、どうぞ一杯~」

紅豊「む…これは失礼」

ヨウ「あ、ハジメちゃんこっちも頂戴」

ココノツ(早速馴染んでるな…)

サヤ「どう?ほたるちゃん」

ほたる「ん?」

サヤ「初めてのお花見の感想は」

ほたる「そうね…」

ほたる「なんだか…いつもよりもっちゃんだんごが美味しく感じるわ…」モグモグ

サヤ「いつ間に駄菓子をッ…!?」

ほたる「うーむ…今後はお花見に合う駄菓子の選出も課題ね…」ブツブツ

ココノツ「だんごかぁ…」

ココノツ「…そういえば、なんでお花見の時って三食だんごなんだろう?」



むぎゅ~


ハジメ「えへへへ、それはっスね~」

ココノツ「は、ハジメさんッ……!?」

ココノツ(もう酔ってるよこの人…っていうか胸がァ…ッ…????)

ハジメ「お花見にだんごを取り入れたのはどうも秀吉らしいっスよ~」

サヤ「秀吉って…豊臣秀吉?」

ハジメ「そっス~」

ハジメ「元々お花見は、弘仁3年(812年)ごろには既に習慣としてあったみたいなんスけどぉ」

ハジメ「その頃のお花見は庶民が参加するような行事じゃなくて、どーも貴族ら特権階級の人たちだけのお戯れだったみたいっスねぇ」

ハジメ「今みたいに桜を見ながらどんちゃん騒ぎするんじゃなくて、短歌を詠み合う会だったらしいっスよぉ」

ココノツ「え、そうなんだ…」

ハジメ「そんで慶長3年(1598年)に、太閤秀吉が京都の醍醐寺でお花見を開催したんスけど」

ハジメ「普通に花を愛でるだけじゃつまらないって言って、飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎをお花見に取り入れたんスよ~」

ハジメ「そんときのお茶菓子として振舞われたのが、三食だんごみたいっスねぇ」

サヤ「へ~、そうなんだぁ」

ハジメ「いやぁ、やっぱりお花見はお酒も飲めるしご飯も食べれるしで最高っスね~」

ハジメ「秀吉公に感謝感謝っス」

ココノツ「な、なるほど…」

ココノツ「っていうか、それにしても…」

紅豊「…ボカァ言ったんですよ、後継にはならないって…でも父さんは…」

ヨウ「うんうん分かる分かる。そういう時期あるよねぇ」

ヨウ「なんならもういっそウチ(シカダ)を継いじゃいなよ。そうしなよもう」

紅豊「あ~、それいいっすねぇ」

玉井「ついでにウチも継げ!今なら半額でいいぞぉ…!」

紅豊「何ですってぇ…!?買った!」

ココノツ(……な、なんてだらしない絵図…っ……!)

ココノツ「…っていうか、いつの間にか玉井さんもいるし…」

サヤ「あはは…お酒飲めない私たちは肩身狭いね」

ココノツ「そ、そうだね…」

ハジメ「…あ、それだったら」

~その後~

【神社から離れたとある場所】


サヤ「ど、どこまで歩くの~…?」

ハジメ「ああ、もうちょっとっスよ~」


グラっ


ハジメ「うわ、っととと…」


ガシっ


ココノツ「だ、大丈夫ですかハジメさん?」

ハジメ「あ、いやはや申し訳ない…」

サヤ「…………」

サヤ(ねえほたるちゃん…あの二人なんかその…良い雰囲気じゃない…?)

ほたる「…………」

サヤ(…?ほたるちゃ…)チラッ

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ハジメ「…あ、着いたっスよー」

ココノツ「……あ……」

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サヤ「うわっ…すごい…」

ココノツ「丘の上に桜の木が…」

ココノツ「こんなところあったんですね」

ハジメ「この前仕入れで通りかかったときたまたま目に入ったんスけどねぇ」

ハジメ「屋台のある神社から遠いのもあって、人気がなくて静かっスよね~」

ハジメ「まぁ、飲み食いできるもの色々持ち込むのは大変っスけど」

サヤ「確かに、良いところだなぁ…」

サヤ「ん~…風が気持ちいい~!」

ほたる「…それにしても」

ほたる「この4人が一堂に会するって、なんだか珍しいわね」

ココノツ「あれ…そうでしたっけ?」

サヤ「うーん、言われてみればそんな気も…」

ハジメ「あはは、まあお花見っスからねぇ。みんな集まってナンボっスよ」

ほたる「なるほどね…」

ほたる「桜には…人と人とを繋げる力があるのかもしれないわ」

サヤ「お、なんだか深いことを言うねぇ」

ほたる「…私がこうして初めてお花見出来たのも、ひとえにみんなのお陰だわ」

ほたる「三人とも、ありがとう」

ほたる「私一人じゃ、見に来ようなんて思いもしなかった…」

ココノツ「……………」

ほたる「やっぱり、人の縁っていいものね!」

ココノツ「…そうですね」

サヤ「…………」

ココノツ「…どうしたの?サヤちゃん」

サヤ「え…あ、いや…」

サヤ「桜って綺麗なんだけどさ…すぐに散っちゃうじゃん…」

サヤ「なんかそういうところがちょっと寂しいな~…なんて思ったり…思わなかったり?」

ハジメ「あー、ちょっと分かるかも」

ほたる「…大丈夫」

ほたる「散ったとしても、そこから無くなるわけじゃないわ」

ほたる「またいつか…みんなで見に来ましょう」

ココノツ(……散っても、なくならない……)

ココノツ(…ああ、そうか…そうだよな…)

ココノツ「マンガの結末…分かった気がする」

サヤ「え?何の話?」

ココノツ「あはは、何でもない」

サヤ「もう、なにニヤニヤ笑ってんだよぅ」



『春は、新しい風を運んでくる…』

『旅立ち、別れ、そして出会い…』

『人の縁も、風に運ばれ桜のように散ることもあるだろう…』

『でも、それは消えて無くなるわけではなくて…』

『季節が巡れば、また…』


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~駄菓子No.005「もっちゃんだんご」~

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さくらんぼ餅で有名な共親製菓が出した三色団子みたいな駄菓子。表面に付いてるざらっとした大粒砂糖がシャリシャリしてて癖になる。
とっても甘いので熱いお茶やコーヒーなどと一緒に食すのがおススメだぞ!

~和菓子No.005「三色団子」~

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お花見シーズンに欠かせない三色の色鮮やかなお団子。
赤は赤しそやくちなし、緑はよもぎなどを使って色付けするのが本来の習わしだが、現代では食紅や天然色素で代用するものも多い。
それぞれの色は意味があって、桃色が「春」白が「冬」緑が「夏」と、巡る季節を表すという説が有力だが、(秋がないのは「飽きがこない」という団子屋のユーモアらしい)
三色がそれぞれ春そのものを表現しているという説もある。
ちなみに京都の一部の地方では秋を表す「小豆色」の団子も加わった四色団子が売っているとか。

~「桜」という花~

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主に3月~4月にかけて花を咲かせる北半球の温帯地域に分布する植物。
他の国と比べて圧倒的に品種改良が盛んなことからも日本の花というイメージが強いが、中国や台湾など、アジア各地にも生息している。
というか、アメリカ・ワシントンにも桜はある。(1912年に日本から寄贈されたもの)
その種類は日本だけでも600種類以上存在し、北海道・四国・伊豆諸島等、特定の地域でしか見られないものもある。
とはいうものの、日本に分布する桜の凡そ80%は「ソメイヨシノ」であり、種類は多く存在してもそれ以外の桜を見る機会はあまりない。
ちなみにソメイヨシノの花言葉は「純潔」「優れた美人」

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そしてほたるの姓であるところの「シダレザクラ」の花言葉は「優美」「ごまかし」

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桜の種類によって花言葉は異なるので、調べてみると楽しい…かも?

~おわりんこ~

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また、どこかで。

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