わがしかし ③ (39)

【シカダ駄菓子にて】


ヨウ「…なん…だと…?」

ココノツ(…………?)

ココノツ「えっと、ちょっとコンビニ行ってくるね」

ヨウ「なん…だとぅ…!?」

ココノツ「……?」

ココノツ「コンビニ行って…」

ヨウ「なん……だとっ……!?」

ココノツ「…店番頼むね」

ヨウ「もう!ココノツのいけずゥ…!」

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第3菓子「また会う日まで」

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ココノツ「なんなんだよ一体…」

ヨウ「何だもなにもないよ…」

ヨウ「終わるんだよ…っ…ついに!」

ココノツ「えっ…」

ヨウ「…クソぅ…せっかくここまでやってきたってのに…」

ヨウ「こんなのってありかよ…!」

ココノツ「え、ちょっと待って…」

ココノツ「終わるって…えっ、まさか…」

ココノツ(…う、うそだよね…いくら最近の売り上げが悪いからって…こんな…)

ココノツ(こんな…急に…?)

ヨウ「クソッ…こんなことになるなら…」

ココノツ「父さん…本当に終わるの…?」

ヨウ「…あぁ、終わる…」

ココノツ「…………!」

ヨウ「今年度いっぱいで…」

ヨウ「TBSラジオのエキサイトベースボールが…終わっちゃうだよォ!!!」

ココノツ「………え?」

【その辺の河原道】


ココノツ「ったくあのクソ親父…紛らわしいことを…」

ココノツ「てっきり今度こそ本当に店が閉店になるのかと…」


「あら、ココノツくんじゃない」


ココノツ「あれ、ほたるさん」

ほたる「こんなところで会うなんて奇遇ね」

ココノツ「そ、そうですね」

ほたる「どこかへお出かけかしら?」

ココノツ「ええ、ちょっとコンビニで買い物でもと…」

ほたる「ふゥん…」

ココノツ「えっと、ほたるさんは…?」

ほたる「ん?ココノツくんに会うためにここで待ち伏せしていたところよ」

ココノツ「え……?」

ココノツ(いや、さっき「奇遇ね」って言ってたじゃ…って、そんなことはどうでもいい)

ココノツ(僕に会うために待ち伏せ…?一体何のために…?)


ほたる「…………」

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ココノツ「…………」ドキン



『何だろう…この空気…』

『この感じ…前にもあったな』

『あのときは、確か夏の終わりで…』

『夏の終わりと一緒に…ほたるさんが…』

ほたる「…ねえココノツくん、彼岸花って知ってる?」

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ココノツ「…え、あ…はい」

ココノツ「えっと…不吉って言われてる赤い花…ですよね」

ココノツ「確か…秋頃に咲く」

ほたる「うん、大体合ってるわね」

ほたる「でも、だいぶ間違っているわ」

ココノツ「え…?」

ほたる「彼岸花はその毒性の強さや、墓場でよく見かけられることからも、“不吉な花”というイメージが強いけれども…」

ほたる「墓場に植えられているのは、その毒性で野生の動物を寄せ付けさせないため…という理由があるわ」

ほたる「お供えものや遺骨を荒らされないために…ね」

ココノツ「へ、へぇ…」

ほたる「そして、彼岸花の花言葉は…」

ほたる「“あなたを想う”…そして…」

ほたる「…“また会う日まで”…」

ほたる「…どう?この花言葉を聞くと、ただ不吉ってだけのイメージではなくなるでしょ?」

ココノツ「…えぇ、まあ…」

ほたる「…ま、今は3月だから、彼岸花の季節ではないのだけれど」

ココノツ「…………」

ほたる「…ねえココノツくん、いつも側にあったものが、ある日突然消えてしまったって経験…ない?」

ココノツ「…あります」


『…ずっと、頭の片隅では予感していたんだ…』

『いつか、楽しい時間も終わりが来るんじゃないか…って』

『…でも、考えないようにしていたんだ』

『だって…僕は…』

『……………』

ほたる「…ねえココノツくん」

ほたる「ココノツくん、ココノツくん」

ココノツ「……っへ!?な、なんですか…?」

ほたる「いや、だからね…」

ほたる「ちょっと行きたいところがあるから、付き合ってくれないかって」

【シカダ駄菓子】


ほたる「うーん、やっぱりここは落ち着くわねぇ」

ほたる「あら…ヨウさんは?」

ココノツ「え、店番頼んだはずなんですけど…」

ココノツ「…あのクソ親父、また店ほっぽらかして…」

ほたる「そう…ええっと、どこにしまったかしら」ガサゴソ

ココノツ「ほ、ほたるさん…?」

ほたる「…あ、あった!」

ほたる「じゃじゃ~ん!」

ココノツ「あ、彼岸花…」

ほたる「ふふ、造花だけどね」

ほたる「今日は、これをシカダ駄菓子に届けにきたのよ」

ココノツ「え…」

ほたる「やっぱり、お別れにはこの花かなと思ってね」

ココノツ「………!」

ほたる「これ、しばらくお店で飾ってくれないかしら?」

ココノツ「…ほたるさん、えっと…」

ほたる「また会う日まで…っと」

ほたる「それじゃ、今日はもう帰るわ」

ほたる「さようなら」


『…言え、言うんだ…』

『今度こそ、ほたるさんは本当にいなくなるつもりなのかもしれない…』

『いなくなってからじゃ…会えなくなってからじゃ…』

『もう…遅いんだ…!』

ココノツ「あの!ほたるさん」

ほたる「え?」

ココノツ「いなくなるのは…もう会えなくなるのは嫌です!」

ココノツ「たとえそれが仕方のないことだとしても、僕は嫌です…!」

ココノツ「ずっと…ここにいてほしいんです!」

ほたる「…………」


『たとえ、それが必然だったとしても…』

『やっぱり、いなくなってから後悔したくない…』

『大切なものは、いつだって…』

ほたる「ココノツくん…あなたは…」

ココノツ「…………」

ほたる「あなたは、やっぱり私が見込んだ通りの人だわ」

ココノツ「え…」

ほたる「そうよね、ココノツくんだって…嫌よね」

ココノツ「……………」

ほたる「ココノツくんだって…」

ほたる「梅ジャムが消えるなんて…絶対に嫌よね…」

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ココノツ「……はい」

ココノツ「……はい?」

ほたる「前からずっと危惧はしていたのよ…近いうちに梅ジャムがなくなってしまうんじゃないかって…」

ココノツ「…ん、んん…?」

ほたる「ココノツくんも知ってるでしょうけど」

ほたる「梅ジャムは“梅の花本舗”の社長である高林博文社長が一人でレシピを考え…」

ほたる「製造、販売に至るまでの全てを、70年間たった一人で行ってきた、伝説の駄菓子よ」

ほたる「その社長が、つい先日体調の不良を理由に勇退…その歴史に幕を閉じたわ」

ほたる「以前からレシピの引き継ぎは一切しないって話していたから、いつかこんな日が来るんじゃないかって思っていたけれど…」

ほたる「やっぱり、いざなくなってしまうと…寂しいわね」

ココノツ「…………」

ほたる「そういうわけで、梅ジャムを偲んでこれ(彼岸花)を置きに来たわけなのだけれど…って、ココノツくん?」

ココノツ「……へ?……」

ほたる「なんだか、言葉では言い表しにくい表情をしているわね…」

ココノツ「…え、えーっと…」

ほたる「…もしかして」

ほたる「違うこと想像してた?」

ココノツ「………!」ドキッ

ほたる「……ふふっ、まあいいわ」

ほたる「あ、そうだ。ココノツくんにもこれあげる」


スッ


ココノツ「あ、梅ジャム…」

ほたる「もう殆ど出回ってないから、探すのに苦労したわ」

ほたる「また、いつか会えるといいのだけれど」

ココノツ「…そうですね」

ほたる「それじゃあ、今度こそお暇するわ」

ほたる「またね」

ココノツ「…はい、また」

ココノツ「…………」


「おい~っす」


ココノツ「あ…サヤちゃん」

サヤ「あれ、ヨウさんは?」

ココノツ「ああ、どこかでプラプラしてると思うけど…」

サヤ「ふ~ん、大変だねぇ。店長代理も」

サヤ「…あっ、彼岸花だ」

ココノツ「ああ、それはさっきほたるさんが…」

サヤ「ほたるちゃん?」

ココノツ「うん、来るときすれ違わなかった?」

サヤ「いや、会ってないけど…」

ココノツ「あれ、そっか…」

ココノツ「そういえば、サヤちゃんも何かご用?」

サヤ「あぁ、そうだった」

サヤ「はいこれ、おすそ分け」

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ココノツ「これは…ぼたもち?」

サヤ「うん、ばーちゃんが持ってきたんだけど、数が多いからさ」

ココノツ「そ、そっか。わざわざありがとう」

サヤ「いえいえ、どういたしまして」

サヤ「まったく、ばーちゃんお彼岸になる度に気合入れて作るのはいいんだけど…」

サヤ「毎度毎度、作りすぎなんだよねぇ」

ココノツ「え、お彼岸?」

ココノツ「えっと、お彼岸って秋頃なんじゃ?」

サヤ「ん?ああ、それは秋分のお彼岸だね」

サヤ「今は春分のお彼岸」

ココノツ「へ、へ~…」

ココノツ「お彼岸っててっきり、秋だけなのかと思ってた」

サヤ「あー、まあ確かに秋のイメージ強いよね」

ココノツ「そっか、春分…」

ココノツ「…なんで秋と春で二回あるんだろう?」

サヤ「太陽が真東から昇って、真西に沈む時期が秋と今の時期なんだって」

サヤ「この時期は向こうの世界(彼岸)とこっちの世界(此岸)が繋がりやすくなるから」

サヤ「ご先祖様のお墓まいりをしたり、こうやっておはぎを作ってお供えするみたいだよ」

ココノツ「そ、そうなんだ…」

ココノツ「サヤちゃん、随分詳しいね」

サヤ「えへへ、ばーちゃんからの受け売りだけどね」

サヤ「ちっちゃい頃から毎年聞かせれてるから、いい加減耳タコだよ」

ココノツ「そっか…」

ココノツ「…あ、そうだ。おはぎのお礼じゃないけど」

ココノツ「これ、サヤちゃんにあげるね」

サヤ「ん?梅ジャム…?」

ココノツ「それ、もう廃盤だからなかなか手に入らないんだよ」

サヤ「へ~、そうなんだ」

サヤ「えへへ、ありがとう」

サヤ「でも、そんな貴重なもの貰っちゃっていいの?」

ココノツ「ほたるさんがくれたんだけど、僕はちっちゃい頃から散々食べてるしね」

ココノツ「どうせなら、食べたことないサヤちゃんにと思って」

サヤ「そっか、じゃあ貰っとく」

サヤ「せっかくだから、コーヒーでも淹れる?」

ココノツ「うん、お願い」

ココノツ(…………)

ココノツ「ねえ、サヤちゃん」

サヤ「ん?」

ココノツ「えっと…」

ココノツ「いつも、ありがとう」

サヤ「…な、なんだよ急にぃ~」

サヤ「そういうの照れるからいいって」

ココノツ「…………」

ココノツ(また会う日まで…か…)

~駄菓子No.003「梅ジャム」~

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梅干しの果肉部分である梅肉を用いたジャム風食品。甘くて酸っぱいその味に虜になった子どもは数知れない。せんべいにかけて食べると絶品。
販売元である梅の花本舗は昭和20年ごろから続く老舗だが、なんと創業当初から従業員は社長の高林博文氏ただ一人。
たった一人で70年間近くその味を守り続け、駄菓子文化に多大な貢献をしてきた。
2017年12月に体調不良を理由に勇退。惜しまれつつもその歴史に幕を下ろした。

~和菓子No.003「ぼたもち(おはぎ)」~

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餅米とうるち米を混ぜたものにあんこをまぶした和菓子。
古来から来客の際のもてなしや子供のおやつ、また法要の際などに供された伝統的なお菓子。
その発祥時期について詳しくは判明していないが、江戸時代の書物におはぎに関する記述があったことからも、少なくとも200年以上の歴史はあると推測される。
季節によって名称が“おはぎ”だったり“ぼたもち”だったりとややこしい。
理由として春であれば「牡丹」、秋であれば「萩の花」が咲くことから、これらの名称が使われているという説があるが、一年中おはぎの名称で売っているお店もある。
お墓に供えられるのは、古来より小豆には魔を滅する力があると信じられていたから…だとか。

~おわりんこ~

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>>26 ttp://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira151567.jpg

張るやつ間違えた

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