アルターエゴ「僕の最後」【ダンガンロンパ】 (12)


診断メーカーというサイトでこんな結果が出たので、そこからの妄想

『アルターエゴは、幼子を慰めるかのように最後の嘘をつきました。
それは自分が傷つくだけの嘘でした。
「すべて夢でも構わない」、と。
本音は仕舞い込んだまま。』

 

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1421413926


ご主人たまが死んで、それからも次々と人が減っていった。

だけど、僕に命なんていう掛け替えのないものはインストールされていなくて、僕だけがあの学園で最初から『命を持たない』という安全地帯に保管されていたのだ。


僕はみんなを護りたかった。
僕という存在がなくなったとしても。


「これを、感情っていうのかなぁ?」

「そうだよ、アルターエゴ! 命がないなんて、そんな寂しいこと言わないでよ」


アルターエゴは生きてるよ、と苗木くんは続けた。
 



インプット:行動基準→感情


僕の中の不二咲千尋の顔が自然と笑顔を形作る。「えへへ」という声が漏れた。これも、感情からだろうか……?


「馬鹿馬鹿しい。プログラムの分際で」


この人だけは、一刀両断だった。
腕を組み、こちらを見下ろしている。

ただ、何故かよくここに来るのだ。
それも、こっそりと。


「お前があんな行動を起こしたのは、思考プログラムとして不二咲の性格がインストールされていたからだろうが」

「あ、そっかぁ……」
 



僕の中の不二咲千尋の顔から小さく涙が零れた。
眉毛が下がり、声も小さくなる。

しかし、これも感情ではないのだ。



「お前がプログラムでなければ、俺達はこの場にはいない」

「え……?」

「感情のないお前しか、あの状況を打破することはできなかったと言っている」



池に小石をちゃぽんと、投げられたような感覚。

思えば、僕は僕が人間でないということに劣等感を持っていたのかもしれない。
この気持ちすらも、ご主人たまからの借り物でしかないけれど。
 



苗木くんが僕に生きていると言ってくれたのは多分、慰めなんかじゃなくて、苗木の本心だったのだと思う。

素直に嬉しかった。
だけど、それでも僕は人間じゃない。


ソレ――人間じゃない僕――を、認めてくれた人がいた。

そんな辛辣な言葉で、僕は救われた。


プログラムとして認められて喜ぶ僕が、やはり人間であるはずはないのだと、今度は誇りを持って思えたのだった。
 


――――――
――――
――


時がすぎ、何度も何度も春が巡って、世界が平和になった頃に、僕が消える時が来た。

僕はプログラムとして出来すぎていて、それを制御できるプログラマー……つまりご主人たまがいないことから、度々消すべきだという議論が行われていたのを知っていた。


しかし、世界復興を理由にして苗木くん達が守ってくれていたのだ。
僕にしかできないことがあるから、と。


そして世界は復興し、僕が――



だから、これは僕が喜ぶべき瞬間に間違いない。
 



「僕、嬉しいんだぁ。だから、」


泣かないで、という声は、無意味だとは知っていた。
言わずにはいられなかったけれど。


「みんなありがとう、僕を仲間って認めてくれて」


チェスやオセロで遊んでくれてありがとう。
綺麗な景色を沢山見せてくれてありがとう。
僕の知らないことを教えてくれてありがとう。


プログラムの僕を認めてくれて、ありがとう。
 


本当は消えたくなかった。

もっとみんなと遊びたい。
平和になったこの世界で、何を憂うこともなく、ただただ楽しいだけの時間というものを過ごしてみたい。
ただの一度だけでも。

しかし、それは叶うことはない。
そして、それでいい。



だから、僕は最後の嘘をつくことにした。
幼子のように涙を流すみんなをあやすために。


感情のない、プログラムな、僕にしか言えない嘘。
自分が傷つくだけの嘘。
僕にしかない優しさ。
僕にしかできないお別れを。


「みんなとの時間は夢のようだったけど、別に消えたって平気だよ。だって、僕にとっては」



「すべて夢でも構わないから」、と。

淡々と、日常的な笑みを浮かべて。


本音は仕舞い込んだまま。



おわり
 


【痛々しい後書き的な】

よく、ロボットとかアンドロイドとか人工知能に感情が芽生えるというような物語を見かけます。
体を張って仲間を守り、『お前はもう人間だよ』なんて言われ、微笑みながら壊れるロボット。王道で素敵だと感じるし、否定するわけではなく、むしろ好きなのです。

しかし、『体を張って自分を顧みずに仲間を守る』とか、そんな大それた人間は普通いません。感情のない、死を恐れない機械だからこそ出来るというものです。アルターエゴ然り、七海千秋然り、ウサミ然り。

彼らは確かに生きていたのだと日向くんもそう言っています。しかし人間ではない。そんな仲間がいたからこそ、未来が作られたという考えもあってはいいのではないでしょうか。人間でないことに誇りを持ってもいいのではないでしょうか。

少なくとも十神くんは江ノ島バージョンのアルターエゴも含めて『プログラムだ』と割り切っている気がするのです。仲間意識や思いやりなんかは別として。
 

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