<酒場>
酒場に入る一人の男。
奴隷「へへへ……っと」
ワイワイ…… ガヤガヤ……
奴隷「お、いたいた!」
奴隷「よう、市民さん! ご一緒していいっすか?」
市民「ご一緒って……ようするにおごれってことだろ?」
奴隷「ハハハ、当たり」
市民「しかし、また逃げ出してきたのか?」
奴隷「逃げ出したなんて人聞きの悪い! ちゃ~んと今日の仕事は終わらせましたよ!」
奴隷「ま、市民さん、ウチの主人と仲いいしまた口添え頼んますよ」
市民「はぁ……お前ほど自由な奴隷もいないだろうよ」
看板娘「はいはぁ~い、生ビール二つ、お、待、た、せっ」ゴトッ
市民「ありがとう」
奴隷「おっ、頼む前に俺の分まで持ってきてくれるなんて気がきくねえ!」
奴隷「さすが看板娘ちゃん!」
奴隷「だいぶ地位が向上したとはいえ、俺たち奴隷はまだまだ最下層」
奴隷「こんなによくしてくれる店は、ここぐらいだ!」
看板娘「べっつにぃ~、よくしてるつもりなんてないわよ」
看板娘「ただあたしにとっては、ここに来てくれる客はみんな同じってだけよ」
看板娘「奴隷だろうが市民だろうが、たとえ皇帝だろうが、ね」
奴隷「へへへ、さっすが!」
市民「払うのはボクだけどな」
奴隷「ところで、あそこで一人チビチビ飲んでる奴は誰だい?」
奴隷「なんか妙に身なりがいいが……」
看板娘「ああ、あの人?」
看板娘「少し前からたまぁ~に、店に来るようになったんだけど……」
看板娘「なんでもこの国の皇帝らしいわよ?」
奴隷「皇帝!?」
奴隷「ぶっ……ハッハッハッハッハ!」
奴隷「ありえねー! 皇帝がこんなとこ来るワケねーじゃん!」
看板娘「こんなとこってなによ! でも、あたしだって信じてるワケじゃないわ」
看板娘「ジョークのつもりなのか、あるいはちょっと変わった人なんでしょうね」
奴隷「あ~笑った笑った……よぉ~し、ちょっとからかってくるか」ガタッ
看板娘「よしなさいよ、趣味悪いわよ」
市民(皇帝陛下、か)
市民(奴隷や市民階級では顔を知らないまま一生を終える者がほとんどで)
市民(貴族階級でも会って話したことがある、という者はごくわずかだという)
市民(もっともボクは職人として、一度だけ会って話したことがあるが……)
市民(いやぁ、あの日のことは一生忘れられないだろうな)ニタ~
奴隷「よう」ザッ
皇帝「む」
奴隷「アンタ、ずいぶん若いけど、この国の皇帝なんだって?」
皇帝「うむ、余は皇帝である」キリッ
奴隷「ぷふっ……俺はさ、奴隷身分なんだけどさ」
皇帝「そうなのか」
奴隷「このところ奴隷身分の地位もがだいぶよくなって、感謝しちゃあいるんだけどさ」
奴隷「早いところ、奴隷制を廃止しちゃもらえませんかねぇ? 皇帝さん?」
皇帝「うむ、余も奴隷制の廃止は急務だと思っておる」
皇帝「しかし、城内にはまだまだ反対する重臣が多くてな」
奴隷(やべーよ、コイツ)
奴隷(完全になりきっちゃってるよ……)
奴隷「そこはさ、アンタ皇帝なんだからバーッと廃止できるでしょ?」
奴隷「なんたって一番偉いんだから」
皇帝「たしかに、強権を振るえばバーッと廃止することも可能かもしれぬ」
皇帝「しかし、奴隷身分に対する差別や偏見は根強い」
皇帝「もし、奴隷身分を形だけ解放させたとしても」
皇帝「奴隷より上だった層に残る差別意識がそのままであったなら、なんの意味もない」
皇帝「むしろ、解放されたことで彼らと五分の競争をしなければならなくなり」
皇帝「奴隷身分は今よりも苦境に立たされることとなる」
皇帝「ゆえにバーッと奴隷制を撤廃することもできず」
皇帝「今は奴隷身分の地位向上を図ることが精一杯なのだ……どうか分かって欲しい」
奴隷「分かってますって、皇帝さん! アンタは頑張ってる! えらい!」
奴隷(なんか本格的に語り出したぞ、コイツ)
奴隷(妄想のしすぎなのか、変な毒草でも食ったのか、重症だな……)
奴隷(こりゃおもしれえ。せっかくだから市民さんも呼ぶか)
奴隷が市民を手招きする。
奴隷「お~い、市民さんもこっち来て下さいよ!」クイクイ
奴隷「三人で飲みましょう!」
皇帝「うむ、酒の席がにぎやかなのは結構なことだ」
市民「……まったく、しょうがないヤツだな」ガタッ
市民「あ~どうも、はじめまして。ボクは食器職人をやってる市民と申します」
皇帝「余は皇帝だ。よろしく」キリッ
市民(ホントになりきってるな。でも皇帝陛下の名を騙るなんてバレたら重罪だぞ……)
市民(適当に付き合った後、それとなく忠告してやるか──)
市民「──ん?」
市民(この人、どこかで見たことがあるような……)
市民(どこだったかなぁ……?)
市民(あれはたしか……この帝国の……お城の……謁見の間……)
市民「!?」
市民(ま、まさか……いや、まさかな。絶対ありえない)
市民「あの……皇帝陛下」
皇帝「なんだ?」
奴隷「陛下なんてつけなくていいっすよ。かたっくるしい」
市民「お前は少し黙ってろ」
市民「陛下……およそ一年前、ある若手職人から献上された銀食器を覚えてますか?」
皇帝「もちろんだ」
市民「そ、その時……その職人とどんな会話をしたかは……?」ゴクッ…
奴隷(ん? 市民さんコイツ知ってるのか?)
市民(いや……ボクはなにを聞いてるんだ、なにを)
市民(この男が皇帝陛下のワケがない)
市民(仮にそうだったとしても……覚えているわけがないだろう)
………
……
…
~ 回想 ~
一年前──
<帝国城>
市民『わたくしは食器職人の市民と申します』
市民『まだ未熟者ではありますが、急逝した師の代わりに心を込めて作りました』
市民『どうぞお納め下さいませ』
皇帝『うむ』カチャ…
皇帝『ほう……これはみごと。美しさと頑丈さと軽さを備えている』
皇帝『食器としては最上級の部類であろう。未熟などと謙遜するものではない』
市民『恐れ入ります』
皇帝『使うのがもったいなくなってしまうほどだ。これらは大切に飾らせてもらおう』
市民『!』ピクッ
市民『陛下……恐れながら申し上げます』
市民『食器は……あくまでも食べるために使う道具』
市民『飾って眺めるためのものではありませんっ!』
皇帝『!』ハッ
市民『!』ハッ
皇弟『キサマ……。たかが職人風情が、兄上に無礼ではないか!』
皇弟『おい誰か! この者を皇帝不敬罪にて捕えよ!』
市民≪し、しまった……! つい……!≫
皇帝『待て、弟よ』
皇弟『!』
皇帝『たしかにこの者の申す通り、余が浅はかであった』
皇帝『食器とは飾るものではなく使うもの』
皇帝『これらの食器は大切に使わせてもらおう』
市民『は……』
市民『ははーっ! ありがとうございますっ!』
皇弟『……くっ』
………
……
…
皇帝「もちろん、覚えておる」
皇帝「余が食器を飾ろうといったら、食器は使うものだと叱られてな」
皇帝「以来、あの食器は大切に使わせてもらっておるぞ」
皇帝「ん、そういえばおぬしはあの時の──」
奴隷「ギャハハハハッ!」
奴隷「そりゃそうだ! 食器ってのは使わなきゃ意味がねえ!」
奴隷「スプーンや皿を飾ったって滑稽なだけだっ!」
奴隷「一つ賢くなったな、皇帝さんよ! ギャハハッ!」バンバンッ
皇帝「うむ」
市民「…………」
市民(本物じゃん!)
奴隷「ま、グッといけって!」トクトク…
皇帝「うむ」チビチビ…
奴隷「もっとグッと!」
皇帝「いやあまり一気に飲むとゲップが……」グエップ
奴隷「ったく、だらしねえなぁ」
市民「お、おい奴隷!」ガシッ
奴隷「ん?」
市民「ちょっとこっち来い!」グイッ
奴隷「なんすか?」
市民「いいか、よく聞け……」ボソッ
市民「あの人は……本物の皇帝陛下だ」
奴隷「えっ」
奴隷「まさか……! へへへ、冗談でしょ!?」
市民「本当だ」
市民「ボクは一年前、銀食器を献上する時に陛下に会っている」
市民「しかも、あの時居合わせた者でしか知らないはずの会話まで知っていた」
市民「まちがいなく……あの方は本物の皇帝陛下だ!」
奴隷「……まあ、アンタはそういう冗談をいうタイプじゃない」
奴隷「マジみたいっすね」
市民「──というわけだ」
市民「これ以上無礼な態度を取ると、お前もボクもどうなるか分からないぞ」
奴隷「…………」スタスタ
市民「お、おい!?」
奴隷「よう、皇帝」
皇帝「ん?」
市民(バ、バカ……っ!)
奴隷「皇帝っていやあ、この国のトップだ」
奴隷「それがなんだって、護衛もつけずにこんな場末の酒場にいる?」
奴隷「まさか、城を追い出されたってワケでもあるめえ?」
皇帝「……余は時折、こうしてお忍びで城下町に出ることにしておる」
奴隷「全然忍べてねえって。で、なんのために?」
皇帝「庶民の目線に立ち、庶民の生活を自分の目や耳で感じるためだ」
奴隷「ふうん、ご立派なもんだ」
奴隷「俺たちにとってみりゃ、神様がわざわざ下界に降りてきてくれたようなもんだ」
皇帝「皇帝は神などではない。人間だよ。おぬしと同じ、な」
奴隷「…………」
奴隷「同じなもんかよッ!!!」バンッ
ザワッ……!
奴隷「生まれてから死ぬまでずぅ~っと、誰かにいいように使われっぱなしの俺らと」
奴隷「豪勢な城に住んで、命令一つで千の役人や万の兵士を動かせるアンタ」
奴隷「どこがどう同じなんだよ!」
奴隷「ムシケラみたく扱われても文句もいえねぇ俺らと」
奴隷「やろうと思えば、気に食わないヤツを即死刑にだってできるアンタ」
奴隷「いったいどこが同じだってんだっ! えぇっ!?」
市民「お、おい奴隷……よせって……」
市民「ちょっと落ち着こ? ね? ヤバイって、マジで」
奴隷「たしかに昔に比べて、奴隷の待遇はだいぶよくなったかもしれねえ」
奴隷「さっきアンタがいった奴隷制をなんとかするって言葉もウソじゃねえだろう」
奴隷「俺の仲間にもアンタに感謝してるヤツはいる」
奴隷「だがよ、俺はゴミみてえに死んでいく仲間だって何人も見てきた!」
奴隷「皇帝がゴミみたいに死ぬなんてありえねえだろ!?」
奴隷「俺たちとアンタは全然ちがう……同じじゃねんだよ!」
ザワザワ…… ドヨドヨ……
「どしたどした?」 「ケンカだ!」 「やれ、やれーっ!」
看板娘「ちょっと奴隷、どうしたのよ、いったい! らしくないじゃない!」
市民「ど、どうすれば……!」ガタガタ…
皇帝「……そうだな」ガタッ
皇帝「余とおぬしはちがう」
皇帝「おぬしがどんなに渇望しても皇帝にはなれぬように」
皇帝「たとえ余自身が望んだとしても、余が奴隷になることはできぬだろう」
奴隷「そういうこった!」
奴隷「俺らとアンタらじゃ、全然ちがうんだよ!」
奴隷「それなのに、庶民の目線でとかいわれてもイヤミなだけだ!」
皇帝「分かった」
皇帝「では本日はこれで退席するとしよう」
皇帝「だがもし、余がそのあたりの認識を改めて、またここへやって来たら」
皇帝「その時はまた共に酒を飲んでくれるか?」
奴隷「……いいぜ」
皇帝は酒場を出て行った。
看板娘「ねえ奴隷、あの自称皇帝さんとなんかあったの?」
奴隷「ん……ああ、ちょっとな。騒がせて悪かったよ」
市民「おいおい、なにをしてくれたんだお前は」
市民「あの方は“本物”だといっただろう?」ボソッ
奴隷「へへっ、面と向かう機会があったら一度ガツンといってみたかったんすよ」
奴隷「この国のトップって奴にね」
奴隷「死刑になったって悔いはないっす」
市民「ないっす、って。お前はいいけど、ボクまで罪に問われたりしないだろうな……」
市民「ボクはもうすぐ結婚するんだぞ……知ってるだろ!?」
市民「ああ神様、お助けを……」
奴隷「へへへ、さあ飲みましょう!」
市民「うう……最悪だ」ガクッ
一週間後──
<酒場>
ワイワイ…… ガヤガヤ……
奴隷「今日もご一緒していいっすか?」
市民「よくないっていってもするんだろ? ほら、座れよ」
奴隷「へへへ、どうも」ガタッ
市民「……ところで、あれからなにかあったか?」
奴隷「いや、なにもないっすね」
市民「ボクもだ」
奴隷「どうやら二人とも、死刑は免れたようっすね。あ~よかった」
看板娘「なんの話してんの? ほら、お酒とおつまみ」コトッ
市民「お、ありがとう」
奴隷「ところで看板娘ちゃん、あの自称皇帝は来てるかい?」
看板娘「そうねえ……アンタと喧嘩してからは見ないわね」
奴隷「そっか……」
市民「まあ、そりゃそうだろう。来るワケがない」
奴隷「ふん、根性なしめ」
市民「なにいってんだ。もしあの方がその気なら、ボクらは今頃首チョンパだ」クイッ
奴隷「…………」
看板娘(あらやだ、首チョンパだなんて……法律系のお仕事の人だったのかしら)
ギィィ……
看板娘「あら、ウワサをすれば──来たわよ」
市民&奴隷「え!?」クルッ
市民「…………!」
奴隷「…………!?」
市民&奴隷(なんだ、あの格好は!?)
皇帝の格好は、まさに町民といった風情であった。
市民「あ、あの……陛下?」
奴隷「な……なんだよ、その格好は!? この間の服はどうしたんだよ!」
皇帝「先日おぬしより、皇帝が庶民の目線になれるワケがないと叱られた後」
皇帝「余は考えた。どうすればいいか、と」
皇帝「答えが出ないまま日々が過ぎた」
皇帝「そして、やはりおぬしのいったことは正しいと感じた」
皇帝「余は庶民にはなれぬ、と」
皇帝「だからとりあえず形から入ることにしたのだ」
奴隷「なるほど。自分のランクを落としてから、俺らを酒に誘おうってことか」
皇帝「いや、それはちがう」
奴隷「は?」
市民「へ?」
皇帝「姿こそ変えたが、余はあくまで皇帝だ」
皇帝「余はありのままの自分で、おぬしらと接したい」
皇帝「余は奴隷と市民、おぬしらに命令しに来たのだ」
皇帝「余と酒を飲め、と」
市民「は、はいっ! 光栄です! そりゃもう、一晩中でも──」
奴隷「ぷっ……ギャハハハハハッ! ハーッハッハッハッハッハ!」
皇帝「?」
奴隷「なるほど。あくまで皇帝のまま、か……いいね、気に入った!」
市民(あ、あわわ……大笑いプラス相変わらずのタメ口……)
市民(誰かコイツをしょっぴいてくれ……)
皇帝「ということは仲間に入れてもらえるのか?」
奴隷「ああ」
奴隷「──といいたいとこだが、最後にもう一つだけ条件がある」
皇帝「条件?」
奴隷「俺たち二人の仲間になるからには、最後にあることをやってもらう」
そして──
皇帝「看板娘よ」
皇帝「皇帝命令だ。余と結婚して、妃となれ」
看板娘「うふふ、お誘いありがとう、皇帝さん。これで顔洗ってから出直してね」
バシャッ!
皇帝「ぶっ! ……ぷっ、げほっ、げほっ! ──ぶふっ!」
奴隷「みごとなフラれっぷりだったぜ、皇帝」
奴隷「これは俺と市民さんも通った道なんだよ。そうっすよね?」
市民「ああ……昔、ボクも交際を申し込んで思いっきり水ぶっかけられたっけ」
奴隷「──というわけで」
奴隷「これで俺たち三人は晴れて仲間だ! よろしくな!」
皇帝「よろしく」
市民(え、俺たち三人って、やっぱりボクも仲間に入らなきゃダメ?)
奴隷「んじゃ、新しい仲間を歓迎するためにカンパイでもやるか!」
皇帝「うむ」
市民(マ、マジかよ……皇帝陛下と乾杯って。いいのかよ……)
奴隷&市民&皇帝「カンパーイッ!」カチンッ
ワイワイ…… ガヤガヤ……
客「なんだいありゃあ?」
看板娘「奴隷と市民と皇帝の三人組よ。ま、皇帝さんは自称だけどね」
客「ハハハ、そりゃいいな」
看板娘「ええ、あんな風に色んな身分の人が仲良くできる時代がくればいいのにね……」
~
市民「幸いまだボクら以外は気づいてないようですし、陛下が本物の皇帝というのは」
市民「三人だけの秘密にしませんか? 騒ぎになってもマズイですし」
奴隷「お、いいっすね!」
皇帝「秘密か……うむ、悪くない!」ニヤッ
奴隷「……ところで、こないだは悪かったよ」
奴隷「俺も昔、奴隷身分を率いて奴隷制廃止を訴えて過激なことやってたからさ」
皇帝「過激なこと?」
市民「武器を持って町を行進したりしてたんですよ」
市民「兵士とも死人こそ出なかったものの、しょっちゅう小競り合いですよ」
奴隷「結局、仲間割れして、やめちゃったんすけどね」
奴隷「その後は今の主人の家で、働かせてもらってる」
奴隷「あんな強引なやり方じゃ、仮に廃止されても意味がないことは分かってたし」
奴隷「それに……皇帝、アンタならやってくれるんだろ?」
皇帝「うむ、任せてくれ」
皇帝「必ずや、近いうちに奴隷制を廃止してみせる!」キリッ
三人は週に一回か二回のペースで、酒場で飲むようになった。
奴隷「俺の仕事? 農作業、荷物運び、豚小屋の世話、その他雑用ってとこかな」
皇帝「かなりの重労働だな……体は大丈夫なのか?」
市民「奴隷は人一倍体力があるから仕事も早く、終わるとすぐここに来るんですよ」
~
市民「いつかこの帝国一の食器職人になるのが夢なんです」
奴隷「市民さん、普段は温厚だけど食器のことになると、結構怖いんだぜ」
皇帝「うむ、余も叱られたことがあるからな」
~
皇帝「もちろん猛反対を受けたぞ。こうしてお忍びで町に出るのはな」
市民「そりゃそうでしょう。万が一なにかあったら大変ですからね」
奴隷「お忍びって、アンタ全然忍んでなかったじゃん……フツーに名乗ってたし」
そんなある日──
<帝国城>
皇弟「兄上、相談があるのですが」
皇帝「どうした?」
皇弟「兄上の戴冠式まで二ヶ月を切りました。いよいよ兄上は正式に皇帝となられます」
皇帝「もうそんな時期になるか……早いものだ」
皇弟「この神聖にして厳正な儀式、まさに帝国の行く末を占うものといってよいでしょう」
皇弟「ゆえに平和や平等を重んずる兄上の意志を反映し、戴冠式が終わるまで」
皇弟「武装解除令を出し、城下に存在する全ての武器を」
皇弟「一時的に城で預かるというのはいかがでしょう」
皇弟「また国の武器職人にも補助金を与え、仕事も休ませましょう」
皇帝「ずいぶん大げさだな……。なにもそこまでしなくとも──」
皇弟「なにをおっしゃるのです、兄上!」
皇弟「私は正直いって、お忍びで城下へ出向く兄上の気持ちが理解できません」
皇弟「平民や奴隷どもと同じ空間で息をするなど、考えただけでも虫唾が走る」
皇弟「しかし同時に、だからこそ兄上こそが真の王者なのだと感じてもいるのです」
皇弟「兄上ならば、この帝国に真の平和をもたらしてくれると……!」
皇弟「ゆえに!」
皇弟「この戴冠式は武器など無縁の状態で、やり遂げねばならぬのです!」
皇帝「……ありがとう」
皇帝「分かった弟よ、おぬしに任せる」
皇弟「ははっ! 兄上の治められる帝国に、永久の平和があらんことを!」ザッ
<酒場>
奴隷「──戴冠式? なんだそりゃ」
市民「陛下が正式に、皇帝になられる式だよ」
奴隷「へ? 正式に皇帝になるってどういう意味っすか?」
皇帝「実は、余はまだ“仮皇帝”といってよい身分だ」
皇帝「この国の皇帝は代々、即位後20ヶ月の猶予期間を経て」
皇帝「ようやく正式に皇帝になるのだ」
奴隷「なんでそんなめんどくせーことを……」
市民「なんでも初代皇帝が即位した後」
市民「“民や臣に皇帝として認められるには20ヶ月は必要”だといって」
市民「ホントに20ヶ月正式に戴冠しなかったのが始まりらしい」
奴隷「へぇ~」
市民「とはいえ今や形式的なものに過ぎないですし、仮に国民に投票をさせたって」
市民「陛下はまず大丈夫ですよ」
皇帝「そういってもらえるとありがたい」
奴隷「んで、その戴冠式がいよいよ間近ってワケか」
皇帝「うむ、緊張しておる。戴冠式の日を想像しただけで胸が……」ドキドキ
皇帝「なにしろ一生に一度のことだからな」ドキドキ…
市民「なんでも今回は真の平和に向けた戴冠ということで」
市民「この城下からしばらく武具の類をなくすそうですね?」
皇帝「弟の発案でな」
奴隷「しっかし、アンタの弟さんってのは大丈夫なのか?」
奴隷「俺も昔暴れてたせいもあって、奴隷階級じゃ名が売れてるからな」
奴隷「城で働いてる奴隷連中にも顔が利くんだ」
奴隷「そいつによるとアンタの弟って、皇帝になりたがってたらしいじゃねえか」
皇帝「たしかに」
皇帝「しかし、その件については父上の遺言があったおかげで決着がつき」
皇帝「すでに和解しておる」
奴隷「ふうん、ならいいけど」
そして──
<帝国城>
皇弟「兄上」
皇弟「城下の武装解除は滞りなく進んでおります」
皇弟「回収した武具は戴冠式が済み次第、持ち主の元へすみやかに返却いたします」
皇帝「ご苦労だったな」
皇弟「いえ。これも兄上の、ひいては我が国のためですから」
皇帝「……ところで弟よ」
皇弟「はい?」
皇帝「おぬしはまだ皇帝に──」ボソッ
皇帝「い、いやなんでもない。呼び止めてすまなかったな」
皇弟「?」
皇弟「では私はこれで」スッ…
皇帝(余は弟を信じたい)
皇帝(しかし、余の直感は──)
<職人組合>
職人A「まったく羨ましいハナシだ」
職人A「武器職人連中は金をもらえて、戴冠式まで休みまでもらえるんだからな」
職人B「ホントホント。こんなことなら、俺も靴職人なんかにならなかったのに」
市民「ぼやくなよ、二人とも」
市民「武器職人たちだって急に休めとかいわれて困惑してるらしいしな」
職人A「ったくニコニコしやがって、もうすぐ結婚だからって。羨ましいねぇ」
職人B「ホントホント」
市民「そ、それとこれとは関係ないだろ」
職人A「でもよ、こないだ俺、鍛冶屋が城に向かうところを見たんだ」
職人B「ホントかよ」
職人B「鍛冶屋っていや、自分が作った剣で辻斬りまがいのことして」
職人B「投獄されたこともあるだろ。あんなのが城にお呼ばれするハズないよ」
職人A「いわれてみればそうだなぁ。見間違えだったのかなぁ」
市民「…………」
<女主人の家>
女主人「奴隷、この荷物、さっさと向こうに運んじゃって!」
奴隷「やれやれ、人使いの荒いご主人様っすね。だから嫁のもらい手が──」
女主人「なんだって!? アタシほど優しい主人はいないよ!」
女主人「アンタが仕事ほったらかして、市民と飲んでることも知ってるよ!」
女主人「アンタほど主人に逆らう奴隷もいないってえの!」
奴隷「まあまあ、一応その日のうちの仕事は全部終わらせてますから」
女主人「ところで逆らう、で思い出したけど……」
女主人「町で大暴れして流刑になった奴隷がいたろ? ほら、昔アンタのダチだった」
奴隷「ああ、剣奴ですか。アイツは奴隷解放を建前に、暴れたかっただけっすよ」
奴隷「だから仲間割れしちまった……。で、ヤツがどうかしたんですか?」
女主人「アイツが城下町近くにいた、ってウワサが立ってるんだけど」
奴隷「まさか……。あれだけのことをしといて、そんなにすぐ戻ってこれるワケがない」
女主人「アタシもなにかの間違いだと思うけどねぇ」
奴隷(う~ん、ちょっと気になるな……)
<酒場>
奴隷「──ちょっと気になる情報を小耳に挟んだんすけど」
奴隷「剣奴が、城下町近くにいたって……」
市民「剣奴って……ウソだろう? アイツは流刑にされたハズだ」
市民「アイツ一人に、兵士や町民が何人も病院送りにされたって聞いてるし」
奴隷「ま、俺も主人から聞いただけなんすけどね」
奴隷「一応国のトップの耳にも入れとこうと思って」
皇帝「城には意外と情報が入ってこないからな。感謝する」
市民「あ、陛下、ボクも気になることがあるんです」
市民「先日の勅令で、全ての武器職人は戴冠式まで仕事が禁止になりましたけど」
市民「その中の一人、鍛冶屋が城に向かうところを見たって仲間がいましてね」
市民「鍛冶屋は腕はいいですが、評判はよくない職人なので、ちょっと気になって」
皇帝(暴れものの剣奴と、評判の悪い鍛冶屋、か……)
皇帝「二人に頼みがあるのだが」
市民「は、はいっ!」
奴隷「なんだ?」
皇帝「今いった情報、もう少し詳しく調べてみてはくれぬか?」
皇帝「これは余の勘だが……嫌な予感がするのだ」
奴隷「おいおい、もう忘れたのか? アンタは皇帝なんだぜ?」
市民「ふふっ、そうですよ陛下。頼みなんてのはおかしい」
皇帝「!」ハッ
皇帝「そうだったな。では二人に命令する、今の情報をもっと調査せよ!」
奴隷「アイアイサー!」
市民「はいっ!」
看板娘(相変わらず楽しそうに話してるわね、あの三人)
三人は一週間、各々の方法で情報を収集した。
奴隷「ヤツについて、なんでもいいから情報を探ってみてくれ!」
奴隷仲間A「へいっ!」
奴隷仲間B「分かりやした!」
~
市民「あれから鍛冶屋のヤツはどこにいるんだ?」
職人A「そうだなぁ、そういえば見ないな」
職人B「ホントにな。元々人前に出てくるようなタイプじゃなかったしな」
~
皇帝「……くれぐれも内密にな」
側近「心得ております」
側近「我々も皇弟陣営の不穏な動きは気になっておりましたゆえ」
一週間後──
<酒場>
皇帝「──さて、報告を聞こう」
奴隷「んじゃ、俺から」
奴隷「剣奴が、城下町の近くにいたってのはどうやらマジみてえだ」
奴隷「それにしても、どうやって流刑地から抜け出してこれたんだか……」
市民「ボクの方も、あまりよろしくない結果です」
市民「鍛冶屋の自宅に行っても誰もおらず、仕事道具も消えていました」
市民「つまり、失踪したその先で武器を作っている可能性が高い」
皇帝「余もだ」
皇帝「やりたくはなかったが、我が弟について部下に調べさせたところ」
皇帝「“何か”を企んでいるのは間違いなさそうだ」
皇帝「残念ながらシッポはつかめなかったが……」
奴隷(暴れるのが好きな剣奴……)
市民(武装解除令に、鍛冶屋の失踪……)
皇帝(弟が企むことといえば……)
奴隷&市民&皇帝「…………」
三人の口から、ぽろっと同じ言葉が出た。
奴隷&市民&皇帝「クーデター」ボソッ
看板娘「ん? クレーターがどうかした?」
市民「あ、いやいや何もない!」
奴隷「こ、ここからは市民さんの家で話そうぜ!」ガタッ
皇帝「う、うむ、そうだな」ガタッ
看板娘「……変なの」
<市民の家>
奴隷「あれ?」
奴隷「市民さん、今日は愛しの彼女はいないんすか?」
市民「町娘と一緒に暮らすのは、結婚式を挙げた後だよ」
皇帝「結婚式はいつなのだ?」
市民「結婚式は陛下の戴冠式後です」
皇帝「そうか……ぜひ招待されたいものだ」
市民「一介の職人の結婚式に、陛下が来たら大騒ぎになりますよ、ハハ」
奴隷「結婚したら、ここで夫婦生活を営むワケか~」
奴隷「い~なぁ~、もう毎晩お楽しみって感じじゃないっすか!」
皇帝「ふむ……おっと鼻血が」ブッ…
市民「もうボクのことはいいから、さっさと話し合いを始めましょう!」
奴隷&皇帝「は、はいっ!」
奴隷「──つまり、まとめると」
奴隷「皇弟は剣奴と鍛冶屋を使って、皇帝暗殺を企んでるってか」
市民「まだそうと決まったワケじゃないがな」
市民「しかし……もしやるとしたら、いつでしょうか」
皇帝「戴冠式、だろうな」
皇帝「よくよく考えてみると、戴冠式は暗殺をやるには絶好の機会なのだ」
皇帝「戴冠式には兵も、重臣すらも入れぬ」
皇帝「参加できるのは──」
皇帝「皇族、つまり余と弟、帝国の大神官、そして余が選んだごくわずかの従者のみ」
皇帝「式が終わるまでは入ることも出ることも絶対に許されぬ」
皇帝「完璧な密室というわけだ」
市民「戴冠式は絶対不可侵の聖域、であると同時に──」
奴隷「なにをしてもかまわない無法地帯でもあるワケか」
皇帝「戴冠式を終えてしまえば余の権威は、国内はおろか国外にも絶対的なものとなり」
皇帝「いかに弟といえど手は出せなくなる」
皇帝「しかし……こうして改めて話をまとめてみると、どうしても腑に落ちんのだ」
皇帝「弟は市民階級や奴隷階級を毛嫌いしておるというのに……」
市民「きっとそれさえも計算なんでしょう」
市民「現に陛下ですら、皇弟様が剣奴らと手を組んでいるとは全く思わなかった」
皇帝「なるほど……」
皇帝(もしこの推測が正しければ、いつから計画してたかは分からぬが)
皇帝(いずれ市民階級や奴隷階級を使って余を亡き者にしようとしていたワケか)
皇帝(弟よ……)
奴隷「じゃあ、戴冠式の前に、皇帝が弟をグワッとふんじばれば解決だな!」
皇帝「余としてもグワッといきたいところだが、そうもいかんのだ」
皇帝「まず第一に、決定的な証拠がない」
皇帝「調査はさせているが、おそらく決行までスキは見せぬだろう」
皇帝「それに前にもいったが、余はまだ皇帝見習いのような状態だ」
皇帝「城内での影響力は、弟と大差ないのが実情だ」
皇帝「ここで下手な手を打つと、城内の勢力が分裂する危険性もある……」
皇帝「そうなれば国そのものが分裂する恐れも出てくる」
奴隷「くそっ、めんどくせぇな」
市民「やるからには、皇弟様の計画を見て見ぬふりしつつ」
市民「その裏をかかなきゃならないってことか……」
奴隷&市民&皇帝「う~ん……」
結局何も思いつかなかったので、三人は飲み直すことになった。
<酒場>
奴隷「なんか名案ねえのかよ、皇帝さんよォ」グビッ
皇帝「余にいわれても困る。市民よ、命令だ。名案を出すのだ」チビチビ…
市民「そうおっしゃられても……奴隷、何とかしてくれ」ゴクッ
酔客「うへへ……相変わらずやわらかい尻してんねぇ、看板娘ちゃん」ナデナデ…
看板娘「ちょっとアンタ、尻出して!」ブンッ
ベチンッ!
酔客「ぎゃああっ! 尻のおできがぁぁっ!」
「アハハ、なんだありゃ」 「ケツさわってケツ叩かれやがった!」 「バ~カ!」
看板娘「こういうアホな客はね、同じことやり返されると案外弱いもんなのよ」
奴隷&市民&皇帝「…………」
奴隷&市民&皇帝(これだ!!!)
奴隷「俺は閃いちまった!」
市民「ボクも閃いた!」
皇帝「余も閃いてしまった!」キリッ
奴隷「よ~するに、俺たちも同じことすりゃいいんだ! 俺が剣奴をぶっ倒す!」
市民「ボクも知り合いの武器職人に、武器製作を頼んでみるよ」
皇帝「奴隷を戴冠式に連れて行くのは、余がごり押しすれば何とかなるだろう」
奴隷「なんかみんな、急にテンション上がってきたな!」
市民「アレだ……不謹慎だけど、旅行を計画してる時のあの感覚に近い!」
皇帝「うむ、必ずや三人の手で勝利を勝ち取るのだ!」
奴隷「たった三人の」
市民「戦争の」
皇帝「始まりだ!」
一方、その頃──
<帝国城 地下室>
カーン…… カーン……
ハンマーで刃を叩く鍛冶屋。
皇弟「どうだ、順調か?」
鍛冶屋「ヒヒヒ、もちろんですとも」
鍛冶屋「あっしの最高傑作が、もうすぐ完成しますよ」カチャッ…
皇弟「よろしい」
皇弟「つまりこの剣が、今帝国城下に存在する唯一の武器というワケだ」
鍛冶屋「もし皇弟様が“皇帝”となられたら──」
皇弟「約束通り、好きなだけ武器を作らせてやる」
皇弟「試し斬りや人体実験も秘密裏にではあるが、認めてやろう」
鍛冶屋「ヒヒヒ、ありがとうございます、ありがとうございます」ペコペコ
皇弟「調子はどうだ?」
剣奴「すこぶる快適ィ~、薄暗いのがイケ好かんけどな」
皇弟「戴冠式までの辛抱だ」
皇弟「戴冠式最中に部屋に乱入するのはまず不可能だが、事前に潜むのは容易だ」
皇弟「戴冠式の日、キサマは事前に“戴冠の間”に忍び込み」
皇弟「私の合図で兄上を討つのだ」
皇弟「手段がどうあれ、兄上さえ死ねば私が最高権力者だ」
皇弟「キサマらの処遇はどうにでもできる」
剣奴「そしてアンタは──」
皇弟「キサマのような血の気の多い者を集め、あの鍛冶屋の武器を装備させ」
皇弟「粛清を任務とした、最強の親衛隊を作り上げる!」
皇弟「兄上は……いや歴代皇帝はみんな甘い」
皇弟「帝王とは民と融和する者にあらず」
皇弟「民を踏み砕き、君臨する者なのだッ!」
剣奴「……俺らよりよっぽど危険な目ェしてんねぇ、アンタ」
鍛冶屋「ヒヒヒ、しかし皇帝もさぞ驚くでしょうなぁ」
鍛冶屋「まさか、平民や奴隷嫌いを公言する皇弟様が」
鍛冶屋「あっしのような平民や奴隷を使って皇位を簒奪しようとするのですから」
皇弟「勘違いするな」
皇弟「私はキサマらが嫌いだ。こうして一緒にいるだけで虫唾が走る」
皇弟「だが、嫌いなことと用いることは矛盾しない」
皇弟「利害の一致、これに勝る信頼関係はない」
皇弟「いつ兄上に寝返るともしれぬ城内の部下よりも」
皇弟「キサマらの方がよほど信頼できる」
皇弟「使えるものならなんだって使ってやるさ」
剣奴「アンタとなら、楽しい時代が築けそうな気がするねえ……ウン」
鍛冶屋「ヒヒヒ……あっしもあっしの剣がより血を吸える時代を望むまでですよ」
そして、戴冠式まであと三週間となったある日──
<市民の家>
市民「申し訳ありません……!」
市民「知っている武器職人にはあらかた声をかけたのですが──」
市民「みんな仕事道具も預けさせられたようで……武器を用意することが……!」
皇帝「いや、おぬしが気に病むことではない」
皇帝「余の見立てが甘かったのだ」
皇帝「弟による武装解除令が、ここまで徹底されていたとは思わなかった」
奴隷「しっかし、どうするよ?」
奴隷「やっぱり武器はないと、なぁ……剣奴は手強い」
市民「鍛冶屋も性格はともかく、腕は一級品です」
市民「その辺の棒切れを武器にしたとしても、まず歯が立たないでしょう……」
皇帝「まだ時間はある。最後まで諦めず、手段を考えてみよう」
その夜──
<帝国城>
皇帝「おっと」ポロッ
執事「大丈夫ですか、陛下」スッ…
皇帝「うむ、考え事をしていてナイフを落としてしまった」
皇帝「洗ってきてくれぬだろうか」
執事「はい。しかし、このご愛用されておられる食器、本当によくできておりますな」
執事「丈夫で軽くて、壊れないですし……」
皇帝「うむ……なにしろ我が友の作品だからな」
執事「え?」
皇帝「いや、なんでもない」
皇帝(……丈夫で、軽くて、壊れない、か)
皇帝(これは……もしかしたらイケるかもしれぬ!)
翌日──
<市民の家>
市民「なっ……!」
市民「ボクが……鍛冶屋の剣に対抗するための武器を作る!?」
市民「ムチャです、陛下。食器と武器の製造法はまるでちがうんです」
市民「武器のナイフと、食事に使うナイフが全然ちがうように……」
市民「それならまだ、その辺の棒切れを武器にした方がいいくらいですよ」
皇帝「なにも余は武器を作れとはいっておらんぞ」
皇帝「食器を作れといっているのだ」
市民「食器を……? どういうことです……!?」
皇帝「つまりだな──……」
市民「……──なるほど、アリかも」
奴隷「そりゃあ面白え!」
皇帝「おぬしとしては、食器をこんなことのために作るのは不本意かもしれぬが──」
市民「いえ、そんなことはかまいません」
市民「いざとなれば、職人としてのプライドを捨てることもまた、ボクのプライドです」
市民「ですが、大量の材料がいることはまちがいないですね」
皇帝「材料は余がなんとかしよう。いくらでも購入できる」
市民「ありがとうございます、陛下」
奴隷「俺もできることがあったら雑用とか手伝いますよ、市民さん!」
市民「ありがとう、奴隷」
こうして市民の『食器製作』が始まった。
<市民の作業場>
思考錯誤を繰り返す市民。
市民(皇帝陛下のおかげで材料は問題ない)
市民(あとはボクの食器職人としての腕前にかかっている!)
市民(作るんだ! 奴隷と皇帝陛下を──親友を守る『食器』を!)
市民(とにかく……時間が許す限り試作しまくるしかない)
市民(なにしろ、こんな仕事は初めてだからな)
~
職人A「なんか秘密の仕事してるんだって? 俺らにも手伝わせてくれよ」
職人A「ジャンルはちがえど、手伝えることはあるだろ?」
職人B「ホント水臭いぜ。事情は聞かないでおいてやるよ」
市民「ありがとう、二人とも……!」
しかし──
<帝国城>
皇弟「──なに? 兄上が私財を投じて大量の金属を購入している?」
部下「ええ、秘密裏に買い込んでいました。いったいなにに使うのやら……」
皇弟(金属……)
皇弟(まさか、兄上が私の策略に気づいて武器を用意しようとしている?)
皇弟(いや、戴冠式が終わるまで鍛冶屋以外の武器職人が武器を作ることは不可能……)
皇弟(剣奴と鍛冶屋に敵うハズはない……が)
皇弟(兄上は甘い)
皇弟(しかし、決してバカではない……!)
皇弟(兄上が普段のお忍びで、私が知らない人間関係を築いている可能性がある!)
皇弟「部下よ」
皇弟「兄上の“お忍び”での交友関係を洗え。すぐにだ!」
部下の調査はさほど時間はかからなかった。
皇弟「──市民と奴隷、か」
部下「はい、おそらく陛下がもっとも親しくしているのはその二名かと」
部下「酒場で週に一度くらい目撃されています」
部下「もっとも、陛下を本物の皇帝だと思っている人間は皆無でしたが……」
皇弟「市民と奴隷、か」
皇弟「クッ……クックック……」
部下「え……!? ど、どうかなされましたか!?」
皇弟(市民や奴隷を見下す私と、市民や奴隷と対等に酒を酌み交わす兄上……)
皇弟(考え方はちがえど、互いの切り札は同じということか)
皇弟(なんという偶然……いや血は争えないということなのだろうな)
皇弟(面白い……実に面白い!)
皇弟(だが、兄上──勝つのは私だ! 私でなくてはならない!)
皇弟(剣奴のついでに釈放した流刑地の悪党どもを使って、その二人を捕えるとしよう)
<女主人の家>
奴隷「──なんだお前ら」
悪党A「ちょっとついてきてくれるだけでいいんだよ」
悪党B「痛い目にあいたくねえだろ?」
奴隷「別に……あわせてみなよ」
悪党A「なんだと……だったらあわせてやるよ!」ブンッ
悪党B「うりゃっ!」ブンッ
奴隷「奴隷をなめんなっ!」シュババッ
ドゴッ! バキッ!
あっという間に悪党を叩きのめす奴隷。
奴隷「ったく、普段の仕事のがハードなぐらいだ」
悪党A「く、くそっ……」
悪党B「だが、こっちにゃまだ仲間が──」
仲間はすでに倒されてた。
女主人「やれやれ、他人様の奴隷に手を出そうとするとは不届きなヤツらだねえ」
悪党C「うげぇ……」ピクピク…
悪党D「あがが……」ピクピク…
悪党E「つ、強い……」ピクピク…
女主人「お、そっちも片付いた?」
奴隷「さすがっすね……」
女主人「当然だよ」
女主人「むかしアタシの爺さんから武術教わっててね。腕っぷしにゃ自信あんのさ」
女主人「ところで、コイツらなんなんだい?」
奴隷「俺に聞かれても困るっすよ」
女主人「じゃ、とりあえず兵士に通報しとくか」
ところが──
<城下町>
市民「──なんだ、君たちは!?」
市民「ボクは君たちのような輩に、狙われるようなことはしてないぞ!」
悪党F「お前を連れてきゃ、金がもらえんだよ」
悪党G「大人しくついてきな」
市民「こ、断る!」
悪党F「ふん、バカな野郎だ」シュッ
ボグッ!
市民「うっ……」ガクッ
市民(いったい……なぜ……ボク、が……)
<帝国城 地下室>
市民「ん、ここは……」キョロキョロ
皇弟「目が覚めたかね。はじめまして」
市民「! ──あ、あなたは皇弟様!?」
皇弟「ほう、庶民の分際で私の顔を知っているとは」
市民「以前、この城に銀食器を献上したことがありまして。覚えておられませんか?」
皇弟「悪いが、記憶にないな」
市民「…………」
皇弟「さて、私は無駄話が嫌いだ」
皇弟「我が兄上──皇帝は、キサマらを使って何を企んでいる?」
市民「! なんのことだか……? ボクは皇帝陛下に使われるような身分では──」
皇弟「無駄話は嫌いといったはずだ」チラッ
剣奴「さっさと吐いた方が賢いぜェ?」シュッ
ドズッ!
市民「ごふっ!」
市民(ボクたちの推測は……正しかったのか! やはり皇弟様は……)
皇弟「キサマには婚約者がいるそうだな?」
皇弟「もうすぐ結婚だそうじゃないか。めでたいことだ」
皇弟「私に非協力的な態度を取るのなら、彼女の身にも不幸が及ぶかもしれん」
市民「そ、そんな……」
皇弟「さあ話してもらおう。兄上はキサマらを使って何を企んでいる?」
市民「…………」
市民(皇帝陛下、申し訳ありません! 奴隷……すまない!)
市民「わ、分かりました、お話しします……」
市民「ボクと奴隷は、戴冠式を利用して皇位簒奪を目論むあなたの野望をくじくため」
市民「これまで動いていました」
皇弟「……ふふ、やはりな。さあ、続けてもらおう」
………
……
…
皇弟「なるほどなるほど。目には目を、と」
皇弟「戴冠式でこちらの暗殺計画を返り討ちにする予定だった、と」
皇弟「しかし、キサマらには肝心の武器を入手する手段がない」
皇弟「どうするつもりだった?」
市民「ボクは食器職人です。食器を……武器にするつもりでした」
皇弟「食器を? 武器に?」
皇弟「そんなことが可能なのか、鍛冶屋」
鍛冶屋「いわれてみりゃあ、食器にもナイフがありますからねぇ」
鍛冶屋「しかし、しょせんは食器」
鍛冶屋「食器のナイフと武器のナイフでは、製造法も殺傷力もまったくちがいます」
鍛冶屋「あっしの剣の相手にゃなりませんよ」
皇弟「……もし戦いになったとしても、100パーセント勝てるか?」
鍛冶屋「もちろんですよ、ヒヒヒ」
皇弟(仮に今ここで市民を処分したとしても)
皇弟(すぐ兄上は異変に気付くことだろう)
皇弟(兄上が私との全面対決を避けたがってるのと同様、私もそれは避けたい)
皇弟(ならば──懐柔するのが得策か)
皇弟(利害の一致により私に従わせた、鍛冶屋や剣奴のように……)
皇弟「よくぞ話してくれた」
皇弟「私は今ここでキサマをどうこうするつもりはない」
皇弟「今後も私にキサマたちの計画の情報を流してくれるのであれば」
皇弟「今までどおり兄上や奴隷らと接してくれていい」
皇弟「そうすれば、キサマも恋人も命を落とさずに済む」
皇弟「首尾よくいけば、報酬もたっぷりくれてやる」
市民「…………」
市民「わ、分かりました……!」
<酒場>
奴隷「この間、俺のところに変な奴らが来たぜ」
皇帝「変な奴ら?」
市民「…………」
奴隷「俺を連れていく、とかいって集団で襲いかかってきやがったんだ」
奴隷「まあ主人と一緒にぶちのめして、兵に引き渡してやったけどよ」
皇帝「もしかすると、弟の手の者かもしれぬな」
皇帝「弟が余とお前たちの関係に気づいた可能性がある」
奴隷「ゲ、マジか! チッ、だったら兵なんかに引き渡すんじゃなかったぜ」
奴隷「そうだ、市民さんは大丈夫だったんすか?」
市民「──あ、ああ、ボクのところには来ていないよ」
奴隷「そりゃよかったっす」
奴隷「俺もけっこう恨みを買ってるから、そっち方面だったのかも」
市民「…………」
皇帝「ところで市民よ」
皇帝「食器製作は順調か? なんだか元気がないようだが──」
市民「え、ええ、もちろん!」
市民「職人仲間も手伝ってくれて、どうにか『食器』は完成しつつあります」
奴隷「へへへ、さっすが市民さん!」
皇帝「うむ、無理をいってすまなかったな」
奴隷「俺たち三人、勝ったらここで祝杯だ!」
市民(皇帝陛下、奴隷……)
市民(ボクは……)
市民(ボ、ボクは……!)
戴冠式一週間前──
<城下町>
ワイワイ…… ガヤガヤ……
市民(戴冠式間近だから、すっかり町もお祭りムードだ)
市民(あちこちに出店が出て……踊ってる人もいる)
市民(いつもだったらボクも祭りに加わってるんだろうけど)
市民(とてもそんな気にはなれない……)
町娘「とても……にぎやかですね」
市民「そうだね」
市民「なにしろ、もうすぐ皇帝陛下の戴冠式だからね」
町娘「そうですね、そして──」
町娘「もうすぐ私たちの結婚式ですね」
市民「うん……そうだね」
町娘「これでやっと私とあなた、二人で暮らせるのですね!」
町娘「私、嬉しくて嬉しくてたまりません」
町娘「市民さんも嬉しいですか?」
市民「も、もちろんだとも……」
市民(ボクは……君を失いたくはない……)
市民(失いたくないんだ……)
市民(だから、ボクがこれからやることは、仕方のないことなんだ……!)ギリッ…
<帝国城>
皇弟「いよいよ戴冠式も間近ですねぇ、兄上」
皇弟「町では庶民どもがすっかりお祭り騒ぎだとのことです」
皇弟「私も亡き父母の分まで、早く兄上の晴れ姿を拝見したいものですな」
皇帝「ありがとう、弟よ」
皇弟(兄上……あなたは私がお命を狙っていることを知っているのでしょう?)
皇帝(弟よ……余はおぬしが余の命を狙っていることを知っている)
皇弟(庶民と親しくするような輩に皇帝の座は相応しくない)
皇帝(庶民を悪用するような輩に皇帝の座は渡せぬ)
皇弟(勝つのは──)
皇帝(勝つのは──)
皇弟(私だ!)
皇帝(余だ!)
戴冠式二日前──
<帝国城 地下室>
皇弟「さて、当日のキサマらの予定はどうなってる?」
市民「明日、ボクと奴隷が、ボクの家に集結します」
市民「そこで最後の打ち合わせをします」
市民「そして奴隷はボクの『食器』を手に、当日皇帝陛下の従者として城に参上します」
皇弟「よし……」
皇弟「では明日、剣奴は悪党を率いて市民の家に向かい、奴隷を斬れ」
皇弟「そうすれば戴冠式当日、兄上を守るものはなくなる」
皇弟「いくら兄上でもたった一日で新たな協力者は用意できないだろうからな」
皇弟「それが無事済めば、キサマの役割も終わりだ」
皇弟「あとは結婚でもなんでも好きにしろ」
市民「はい……ありがとうございます!」
戴冠式前日──
<市民の家>
市民「ここが……ボクの家だ」
剣奴「ほぉう、けっこう立派な家じゃねェか」
剣奴(フン……奴隷か)
剣奴(かつて奴隷解放運動でつるんだ仲だが──)
剣奴(まさかこの手で斬ることになるたァな)
剣奴(視界に入った瞬間、この剣で斬る!)チャキッ
剣奴「野郎ども、なだれ込むぞ!」
ウオォォォォォ……! バンッ!
剣奴「…………」
剣奴「あれ……?(だれも、いない……?)」キョロキョロ
剣奴「テメェ、これはいったいどういうこった!?」ギロッ
市民「…………」
<帝国城 地下室>
皇弟「──なんだと!? 奴隷がいなかった!?」
皇弟「キサマァッ! なぜウソをついた!? 奴隷はどこにいるッ!?」
市民「…………」
市民「ボクは昨夜、ボクとあなたが通じてることを二人に打ち明けました」
皇弟「……は?」
市民「ついでにいっておきますと、皇帝陛下は戴冠式には出ません」
市民「あなたの……負けです!」
皇弟「は!?」
………
……
…
~ 回想 ~
昨夜──
<市民の家>
市民『──ボクは計画のほとんどを話してしまいました』
市民『申し訳ありません、陛下……!』
奴隷『市民さんがそんな目にあってたなんて……』
皇帝『いや……謝ることなどない』
皇帝『元々おぬしを巻き込んだのは余だし、こうして打ち明けてくれたことに感謝する』
皇帝『市民の証言だけでは、弟を糾弾することはできまいが、な』
奴隷『つまり、決戦の日が一日早まったってワケか』
奴隷『だけど……あっちは複数、俺は一人……勝てるかどうか』
市民『それについてはボクに考えがある』
市民『陛下、この際戴冠式に出ないという選択肢はありませんか?』
市民『町娘を連れて、戴冠式が終わるまで奴隷と一緒に隠れててもらえませんか?』
皇帝『うむ、たしかに余もそれを考えていた』
皇帝『元々この問題は、余が戴冠式に出なければいいだけのハナシだった』
皇帝『大騒ぎにはなるだろうが、な』
奴隷『いやいやいや、そんなことしたら正式に皇帝になれねんじゃねえの?』
皇帝『それは問題あるまい。戴冠式はもはや形式的なものであるしな』
皇帝『武装解除令が解除されれば』
皇帝『弟陣営だけが武器を持っているというアドバンテージもなくなる』
皇帝『不参加の言い訳は……ちょっと腹壊してたんで、とかでよかろう』
奴隷『よくねえよ』
皇帝『しかし──問題が一つ』
皇帝『余と奴隷がおぬしの恋人とともに消えてしまえば──おぬしの命はない』
皇帝『ちゃんと弟から逃れる手は考えてあるのか?』
市民『もちろんです』
市民『ボクとて結婚を間近に控える身、死にたくはありませんから』ニコッ
………
……
…
市民(手なんかあるワケない……)
市民(今頃、陛下と奴隷は明日が終わるまで、打ち合わせした場所に隠れているハズ)
市民(友と恋人……どちらも失わずに済む方法は、これしかなかった……)
市民(陛下、奴隷……三人で勝つという誓いを破って、ごめん……)
皇弟(一生に一度の神聖なる戴冠式を……こうもあっさり辞退!?)
皇弟(兄上……あなたという方は、いつもいつも私の神経を逆なでする!)ギリッ…
皇弟(兄上が戴冠式に出なかったところで、私が皇帝になれるワケではない)
皇弟(武装解除令は明日まで……)
皇弟(明後日以降はもう、兄上を殺すチャンスは皆無となる!)
皇弟「剣奴、悪党どもを使ってなんとしても兄上を探し出せッ!」
皇弟「──なんとしてもだッ!」
しかし、皇帝を見つけ出すことはできず──
剣奴「皇帝がかくまってもらえそうな場所は、あらかた探させたが──」
剣奴「どこにもいやしねえ!」
鍛冶屋「どっ、どうするのですか、皇弟様!」
鍛冶屋「これじゃあ、あっしの剣が活躍する時代が来ないではありませんか!」
皇弟「ぐう……っ!」ギリッ…
皇弟(まさか……利に弱いはずの市民風情がこんな捨て身に出るとは……!)
皇弟(兄上が戴冠式に来なければ、全て破綻する……!)
皇弟「剣奴! この裏切り者の首を叩き落とせっ!」
剣奴「待ってましたァ! こっち来い!」グイッ
皇弟(せめて兄上が親しくしていたコイツを斬り、溜飲を下げるしかあるまい……!)
皇弟(兄上が……親しく……)ハッ
皇弟「──いや、待てッ!!!」
その直後、帝国城下に無数のビラがばら撒かれた。
『市民は逃げられなかった』
ビラに書かれた内容は、たったこれだけ。
意味の分かる人間などいなかった。
ガヤガヤ……
「なによこれ?」 「変なの」 「回り込まれてしまったってことか?」
「クイズ?」 「なんか気持ち悪いな」 「そこら中にあるぜ」
「捨てよ捨てよ」ポイッ 「暗号?」 「鼻をかむのにちょうどいいわね」チーン
その頃、奴隷と皇帝と町娘は──
<酒場の酒蔵>
看板娘「あ~もう、しつこいったらありゃしない」
看板娘「さっきも店にガラ悪そうなのがやってきて、アンタら二人を探してたわよ」
看板娘「ったく、何やらかしたのよアンタたち」
奴隷「へへ、サンキュー、看板娘ちゃん。ここなら絶対見つからねえや」グビッ
皇帝「あとは市民が打ち合わせ通り、逃げ込んでくれば完璧だな」チビチビ…
町娘「お酒おいしいですね」ガブガブ
看板娘「アンタたちは大切なお客だから、いくらでもかくまってあげるし」
看板娘「お酒ならいくらでも飲んでいいわよ」
看板娘「もちろんあとで金払ってもらうけどね」ニコッ
皇帝「市民が来たら、明日が終わるまでここで酒盛りだ」
奴隷「戴冠式に未練はねえのか?」
皇帝「もちろんあるが、戴冠式をバックれる皇帝というのも新しいだろう?」キリッ
奴隷「やっぱアンタより、弟が皇帝になった方がよかったかもな」
町娘「おいし~」ガブガブ
町娘「なんで私がここに連れてこられたのかさっぱりですが、お酒おいしいれす」ウイ~
奴隷(飲みすぎだろ……もう一升は飲んでるぜ)
看板娘「ところでさ、町中でこんなビラがやたら配られてたんだけど」
看板娘「意味分かる?」ピラッ
奴隷「どれどれ……」ピラッ
皇帝「余はビラよりビールが欲しい」チビチビ…
奴隷「ン~? 市民は、逃げられ……なかった……?」
皇帝&奴隷「!!!」
戴冠式当日──
【帝国城 戴冠の間】
帝国城には数えきれないほど部屋があるが、その中でもっとも神聖な部屋である。
選ばれた使用人によって、常に清潔を保たれ、なおかつ戴冠式の際にしか使用されない。
戴冠式に参加できるのは──
・皇帝及び皇族
・大神官
・皇帝自らが選んだごく一部の従者
儀式が終わるまではたとえ何があろうと、
戴冠の間へ入ること、戴冠の間から出ること、は一切許されない。
むろん、城内は大騒ぎである。
ザワザワ…… ドヨドヨ……
「陛下がどこにもいない!」 「どうなってるんだ!?」 「延期なんかできんぞ!」
「大神官と皇弟様はもう中だ!」 「ちゃんと探せ!」 「どこにいる!?」
「一生に一度の儀式が……」 「まさか誘拐!?」 「兵を総動員しろ!」
<帝国城 戴冠の間>
皇弟「…………」
大神官「皇帝陛下はどうされたんじゃろうか……」
大神官「まさか来ないなどということは……」
皇弟「来るさ……必ず来る」
皇弟(城下町外へ逃げる時間はなかった……ビラは必ず目にするはず)
皇弟(目にすれば、必ず来る! ……兄上は甘いからな)
カーテンの裏には、すでに剣奴と捕らわれの市民、そして鍛冶屋が潜んでいた。
ヒソヒソ……
剣奴「てめえも悪趣味だなァ」
鍛冶屋「ヒヒヒ……あっしの剣で皇帝が死ぬところを是非見たいからねえ」
鍛冶屋「あっしの剣で時代が変わる瞬間、をね」
剣奴「もし、皇帝と奴隷が来なきゃ、その瞬間コイツは終わりだ」
市民(来ないでくれ、陛下、奴隷)
市民(来なければ、ボクは殺されるが悔いはない!)
市民(元々あっさり皇弟陣営に捕まったボクが悪いんだし……)
市民(ボク一人死ねば、全て解決するんだ!)
市民(頼む、来ないでくれ……!)
すると──
ギィィ…… バタン……
正装に身を包んだ皇帝と、マントをはおった奴隷が現れた。
皇帝「待たせたな、大神官と弟よ」ザッ
奴隷「ども」ザッ
大神官「おお、お待ちしておりました!(──と、もう一人は誰じゃ?)」
皇弟「待っていたよ、兄上」
皇弟「よくぞ私の誘いに応じてくれた」
皇帝「我が友、市民は無事なんだろうな?」
皇弟「もちろんだとも。──オイ、出て来い!」クイッ
剣奴「助かったなぁ? ほらよ」グイッ
市民「へ、陛下……奴隷……!」ヨロッ…
鍛冶屋「ヒヒヒ……」ザッ
大神官(え? いっぱい出てきたけど、なにがいったいどうなっておるのじゃ!?)
市民「陛下ッ! 奴隷ッ!」
市民「せっかく……せっかく皇弟様を出し抜いたというのに……!」
市民「ボクの覚悟を台無しにしやがって……この……バカ野郎どもがッ!」
市民「なんで来たんだァ!!!」
奴隷&皇帝「!」ビクッ
奴隷「市民さん……」
奴隷「俺は奴隷、最下層の人間さ。市民階級の人のために働く義務がある」
奴隷「ましてアンタにゃ、いつも酒をごちそうになってる」
奴隷「市民さんの命が危ないんなら、命がけで助けに来るのが当然でしょうが」
奴隷「皇帝、アンタの意見は?」
皇帝「余は皇帝。この帝国の頂点に立つ男」
皇帝「死に急ぐ市民一人を救うなど、造作もないこと」キリッ
奴隷「──だそうだ」
市民「~~~~~!」
皇弟「兄上が入ってきた時点で、もうこの部屋には誰も入ることができない」
皇弟「戴冠式が終わるまで、出ることも許されない」
皇弟「さて……始めようか、兄上」
皇弟「互いに兵は一人きりだが──」
皇弟「これはれっきとした戦争だ!」バッ
剣奴「久々だなァ……かかってきなよ、奴隷」チャキッ
邪悪な気を発する剣を構える剣奴。
鍛冶屋「ヒヒヒ……(あっしの剣で皇帝が死ぬ! あっしの剣で歴史が変わる!)」
皇帝「ならば、こちらも兵を出そう」サッ
バッ!
奴隷が、はおっていたマントを脱ぎ捨てる。
鍛冶屋「ヒヒヒ……食器のナイフじゃあ剣には絶対勝て──」
鍛冶屋「!?」
奴隷の手にあった『食器』は──
皇弟「あれは三つ又の槍……!? い、いや──」
鍛冶屋「巨大フォーク……!?」
市民(そう──)
市民(ボクには剣のような刃物を作る技術はない……)
市民(だから、突き刺せるフォークを作った!)
市民(しかし、それでも向こうは本物の武器……不利にはちがいない!)
皇弟「殺せッ!」バッ
剣奴「アンタにいわれるまでもねえや!」ダッ
皇帝「ゆけっ、奴隷よ!」バッ
奴隷「任せときな!」ダッ
ガキンッ! ギンッ! キィンッ! キンッ! ガキンッ!
フォークと剣が激しくぶつかり合う。
大神官(最初はワケ分からんかったが、ようやく状況がつかめてきたわい……)
大神官(枯れ果てたはずのワシの血が、たぎってきおった、たぎってきおったぞォッ!)
『皇帝』一族の命令で、『市民』階級が作った武器を手に、『奴隷』身分が激突する。
キィンッ! ガンッ! キンッ!
市民(よし、戦えているぞ! 奴隷の腕もあって、負けてない!)
鍛冶屋(たかがフォークに、なにを手こずっているんだ……!)
キンッ! ガキンッ! ギィンッ!
大神官「なるほど……」
大神官「たしかに切れ味──攻撃力では剣が圧倒的に有利じゃろう」
大神官「しかし、巨大フォークの方がリーチが長く」
大神官「剣を持つ剣奴は深く斬り込めずにいる!」
大神官「ゆえに互角ッ!」
大神官「この戴冠式──否、皇位争奪戦争! どうやら長期戦になりそうじゃな!」
キンッ! グググ……
剣奴「久々だなぁ、奴隷」
剣奴「奴隷解放運動の活動方針をめぐって、喧嘩別れして以来か」
奴隷「そうだな、あれからすぐお前は城下で暴れて流刑になった」
奴隷「今度はこんなクーデターに手を貸して、頭の悪さは相変わらずみてえだな」
剣奴「ほざくな! 家畜に成り下がった犬の分際で!」
剣奴「俺は皇弟と天下取って、俺を見下してきたヤツらを斬りまくってやるぜェ!」
剣奴「奴隷身分代表としてなァ!」
奴隷「訂正しろよ」
剣奴「?」
奴隷「奴隷身分代表、じゃなく」
奴隷「“暴れたくて仕方ないクソ野郎代表”だろが!」
剣奴「なんだとォ!?」
奴隷「俺は偉ぶってるヤツも嫌いだが」ギィンッ
奴隷「虐げられてたのを理由に好き勝手するヤツも大嫌いなんだよ!」ブンッ
ザクゥッ……!
剣奴「ぐおっ……!」
大神官(むむっ! やや浅いが、フォークでの一撃が入った!)
皇弟「剣奴、なにをやっている! だらしないぞ!」
剣奴「ぐっ……」
剣奴(あのフォークが案外やりづれえ……斬り込めねェ)
剣奴(あのリーチさえどうにかすりゃ、こっちのもんなんだが……)
剣奴(──そうか!)サッ
キィンッ! カキンッ! ギンッ!
奴隷(なんだぁ……?)
奴隷(急に間合いを広げやがった……傷を負ったからか?)
奴隷(いやちがう──ま、まずいっ! 剣奴の狙いは──)
ザンッ! ボトッ……
フォークの先端──槍でいうなら刃の部分を、斬られた。
剣奴「これでそのフォークはもう、ただの金属棒だ」ニヤッ
奴隷「しまった……!」
大神官(これは……リーチの差で懐に入り込めぬと悟った剣奴は)
大神官(狙いを奴隷本人ではなくフォークに絞ったのだ!)ゴクッ…
大神官(結果、フォークは斬られ、リーチの長さと攻撃力を同時に失った……)
大神官(これで一気に勝負が傾いた!)
大神官(もしこれが試合ならば、この時点で勝負あり、じゃろう!)
剣奴「ククク……あばよッ!」ビュババッ
ザシッ!
剣奴「しゃっ!」ブオンッ
ドゴッ!
斬撃と蹴りの波状攻撃。
奴隷「ぐおぇ……っ!」ドサッ
奴隷「ハァ……ハァ……」
鍛冶屋「ヒヒヒ……」
鍛冶屋「ヒァヒァヒァ! やっぱりあっしの剣は最強だ!」
鍛冶屋「食器職人如きのフォークなんざに負けるわきゃねえんだ!」
剣奴「そういうこった!」ビュオンッ
ザンッ!
奴隷「ぐっ……!」ブシュッ…
市民(やはりボクの『食器』では本物の『武器』には……!)
皇弟「どうやら私の勝ちのようだな、兄上」
皇帝「…………」
奴隷「みんな……市民さんの食器をなめすぎだ」ハァハァ…
奴隷「こうして持ってるだけで、全然負ける気がしねえ……」ハァハァ…
奴隷「俺は……市民さんが作ってくれた食器を信じるぜ!」ザッ
再び構える奴隷。
市民「奴隷……!」
皇帝「よくぞいったッ! それでこそ奴隷、それでこそ我が親友!」
皇弟「な……兄上!?」
皇帝「皇帝命令だ」
皇帝「奴隷……必ず勝てっ!!!」
奴隷「!」
この瞬間、奴隷の体内を電流のようなものが駆け巡った。
奴隷「おうよっ! ──皇帝陛下!」ダッ
剣奴「動きが……!?」
ギンッ! キンッ! カキンッ!
大神官(むむっ、奴隷の動きがよくなりおった!)
大神官(食器職人への信頼と、皇帝陛下の命令が、あやつに力を与えたのかッ!?)
奴隷(俺は生まれてからずっと、誰かに命令されて生きてきたが)
奴隷(……こんな気持ちは初めてだ)
奴隷(“自分から従いたくなる命令”なんてもんが、この世にはあるんだな……!)
奴隷「うおおおおっ!」ビュババッ
剣奴「ぐっ……」ギギギンッ
鍛冶屋「なにやってるんだ! あっしの剣を使って苦戦するなんて!」
剣奴(うるっせェなぁ~……)イライラ…
剣奴(だいたいこの剣が悪ィんだ!)
剣奴(切れ味重視しすぎて、重すぎるし、グリップが持ちにくいったらねえ!)
皇弟「…………」
皇弟「剣奴、さっさと始末しろっ!!!」
剣奴「…………」ブチッ
剣奴「う、うるせぇぇぇぇぇっ!!!」
剣奴「俺が、俺が奴隷身分だからって……命令すんじゃねぇぇぇっ!」
剣奴が動揺した隙を、奴隷は見逃さなかった。
先ほど斬り落とされたフォークの先端部分を拾うと──
剣奴「あっ──」
奴隷「奴隷は……二度刺すッ!」
ズンッ……!
奴隷は剣奴の右腕にフォークの刃を突き刺した。決定的な一撃だった。
剣奴「ぐああああっ……!」
ドザァッ……!
皇弟「…………」
皇弟(命令で兵の力を高めた者と、命令で兵の力を削いだ者……)
皇弟(ククク……どちらが王者に相応しいかなど、明白ではないか……)
皇弟「兄上」
皇弟「私の負けだ」
皇帝「!」
皇弟「私は……昔から兄上が嫌いだった」
皇弟「先に生まれたというだけで、皇帝の座を約束され」
皇弟「せっかく国のトップに立ったというのに」
皇弟「天だけを見つめるべき目線は、常に庶民にまで向いている」
皇弟「我慢ならなかった……私こそ皇帝に相応しいとずっと呪っていた……」
皇弟「だからこそ私は、私のやり方で市民階級や奴隷身分を利用することで」
皇弟「兄上を皇帝の座から引きずり下ろしたかったのだ」
皇弟「だが、私はこうして敗れた」
皇弟「私はいつだったか、兄上こそ真の王者と心にもないことをいったが」
皇弟「まさしく兄上は真の王者だったのだ」
皇帝「弟よ……」
皇弟「王者に逆らい、戦争に敗れた今、もはや私は生きてはいけません」
皇弟「どうか兄上の手で殺して下さい」
皇帝「…………」
皇帝「断る。これ以上、血は見たくない」
皇弟「──なぜですッ!」
皇弟「反逆者を処罰しないなどと、甘いなどという次元ではありません!」
皇弟「今も私は心の中で舌を出しているかもしれないのですよ!」
皇帝「そう、おぬしのいうとおり余は甘い。この性格は今さら直せぬ」
皇帝「そして、もし余が甘くなければ、つけ入るスキがなければ──」
皇帝「きっとおぬしも今回のようなことは起こさなかったろう」
皇帝「余はおぬしに、反逆を起こすスキなど二度と与えぬ」
皇帝「だから余は──甘いけど甘くない皇帝を目指すッ!」キリッ
奴隷(な、なんだそりゃ……)
市民(菓子とかにありそうなキャッチフレーズだ……)
皇弟「くっ……」ガクッ
皇弟「くそぉ~~~~~っ! 私は、私はぁ……っ!」ボロボロ…
奴隷(えぇ~今ので泣くのかよ!?)
市民(性格は正反対だと思ってたけど、やっぱり兄弟なんだな……感性が近い)
鍛冶屋「──まだだァッ!」
鍛冶屋「ヒヒヒ……ヒァヒァヒァ! あっしの剣はまだ負けてねぇっ!」チャキッ
奴隷(あっ、剣奴の剣を拾って!)
鍛冶屋「あっしの剣が……時代を変えるんだァァァッ!」ダダダッ
皇帝めがけ、突進する鍛冶屋。
奴隷「やべぇっ!」
市民「逃げて下さい、陛下っ!」
大神官「とうっ!」バッ
鍛冶屋「ジジイ、どけぇぇぇっ!」ダダダッ
大神官「皇弟様が敗北を認めた以上、この戦争は決着がついておる!」ヒョイッ
グルンッ ドザァッ!
鍛冶屋「あ、がが……」ピクピク…
大神官「皇弟様はしばらく謹慎、剣奴と鍛冶屋は牢に入って反省ってとこじゃろ」
大神官「これにて一件落着!」
大神官「──では怪我人も出ておりますし」
大神官「さっさとチャンピオンベルト贈呈……じゃなく戴冠式を終わらせましょうかの」
皇帝「うむ、パーッとやってくれ。終わるまで余たちは出られぬからな」
大神官「では大神官の祈り30分、陛下のお言葉30分、その他諸々全てカットしますぞ」
皇帝「どんどんカットしてくれ」
奴隷「市民さん……。いいんすか、これで……」ボソッ
市民「まあ、皇帝陛下らしいんじゃないか?」ボソッ
大神官「では──」
大神官「帝国大神官の名において、第18代皇帝に冠を授ける」スッ…
皇帝「国のため、臣のため、民のため、帝としてこの身を捧げることを誓う」ザッ…
戴冠を果たした皇帝は、もはや先ほどまでとは質の違う威容を放っていた。
奴隷と市民はもちろん、皇弟たちもまた、彼こそが皇帝だと認めざるを得ないほどに──
戴冠式より一週間後──
<教会>
カラァ……ン カラァ……ン
ワアァァァァァ……!
「おめでとーっ!」 「お幸せにー!」 「キレイよー!」
市民「みんな……来てくれてありがとう!」
町娘「市民さん……。私、とっても幸せです……!」
職人A「いやぁ~めでたいめでたい!」
職人B「ホントホント!」
奴隷「へへへっ、市民さん……今日は一段とかっこいいぜ!」
女主人「羨ましいったらないね」
看板娘「あら、二人は結婚しないの?」
奴隷&女主人「…………」ポッ…
ザッ……!
大神官「これはよき結婚式ですのう、陛下」
皇帝「うむ」
ザワザワ……! ドヨドヨ……!
「大神官だ!」 「いったいどうして!?」 「すげえ!」
女主人「あらおじいちゃん! ──と、誰? ものすごく豪華な衣装だけど……」
奴隷「おお、来てくれたのか、皇帝!」
看板娘「あら、(自称)皇帝さんじゃない。やっぱり来てくれたのね」
大神官「そのとおり、この方こそ先日戴冠なされた第18代皇帝だ」
看板娘「……え? えええええッ!?」
市民「陛下……ボクのために……」
皇帝「すまぬな、どうしても来たかったので来てしまった」
皇帝「市民に町娘よ、皇帝直々の命令だ! 幸せになるがよい!」
市民&町娘「──はいっ!」
ワアァァァァァ……!
そして一年後──
<城下町広場>
皇帝「皇帝の名において、宣言する!」
皇帝「本日より、奴隷制を全面的に廃止するものとする!」
ワアァァァァァ……!
皇帝はついに自らの手で、宿願だった奴隷解放を果たした。
粘り強い施策の結果、
もはや奴隷に対する偏見や差別は消えつつあると判断したためである。
皇帝「──さて、奴隷解放を祝して、今日は余自ら手を取り合いたい友がおる」
皇帝「上がってきてくれ」
ワアァァァァァ……!
市民「ど、どうもボク……目立つのは苦手で……」カチンコチン
皇帝「そう緊張するな、市民」
奴隷「気楽に、気楽に」
皇帝「おぬしはリラックスしすぎだ」
皇帝「ところで結婚したらしいな、おめでとう。余だけが独身になってしまった」
奴隷「よ、よしてくれよ。こんなとこで」
ハハハハハ……!
奴隷「じゃ、やりますか! ──我らは誓う!」ガシッ
市民「我ら三名、生まれと育ちはちがえど!」ガシッ
皇帝「平等であると!」ガシッ
ワアァァァァァ……!
この奴隷、市民、皇帝の三名が手を取り合う姿は──
帝国の平和のシンボルとして、後世においても人々に尊敬され、愛されることになる。
~おわり~
これで100スレなので最後に全晒し
主人公「ついに俺もトーナメントに出場か……」
のび太「……ハンター試験?」
まる子「ええっ!あたしがゾルディック家の末っ子!?」
秘書「今日のノルマは50です」
男「死なせてくれ」 幼女「あたしもしぬ」
女敵「さっさとアタシなんか倒しちゃえばいいのに」
まどか「私と契約してマスコットになってよ!」 QB「マスコット…?」
主人公「うわっ……俺の強さランク、低すぎ……?」
カニ「“バカとハサミは使いよう”!」 猿「なに!?」
QB「ぼくと契約して、格闘少女になってよッッッ」
大将「5vs5の団体戦だ!」「オーッ!」
ヒーロー「命をもらう!」 女幹部「かかってらっしゃい」
側近「勇者が来ました!」魔王「バカ、オナニー中だ!」
姫「お願い……助けてぇっ……!」
ギャンブラー「俺の名はギャンブラー……ギャンブルの天才だ」
少女「なにこの数字?」男「HP(ヒットポイント)だよ」
ノビタ13「用件を聞いてあげるよ!」
メイド「冥土にお送りいたします」主人「かかって来い」
受験生「お前もこの大学を受けるのか」ライバル「まぁね」
勇者「ここが500年後の世界か……」
男「敵校の偵察に来た強豪校のフリしようぜ!」オタク「いいね!」
ケン「ガイル……いったい誰を待っているんだ?」
女帝「反乱軍ですって!?」
花粉娘「私は花粉の化身、花粉娘と申します」
オルトロス「テュポーン先生、ケフカ倒しに行きません?」
戦士「あなたが伝説の剣士だな?」
村娘「あたしを弟子にして欲しいの!」師匠「なに?」
男「ハロー注意報?」
魔王「そうだ、死んだフリをしよう!」
少女「私を食べてくれない?」青年「いいよ!」
マスオ「ネットカフェ……?」
QB「やぁ、福造」喪黒「こんばんは、キュゥべえさん」
かめはめ太「俺、君が好きなんです!」どどん子「私も……」
姫「姫ときどき女剣士、というわけね?」
雪女「やめてぇっ……溶けるぅぅ……っ!」
トリコ「便所飯……?」
吸血鬼「アナタの血をいただくわ」格闘家「なんだと!?」
男「俺は……反乱軍に志願する!」
男「俺が戸愚呂の家に行った時の話をしたい」
お頭「今日はあの村だ」山賊「あそこは女がいっぱいいますぜ」
女「口開けて」男「あ~ん」女「ってわけであ~んのSSね」
男「クソが! またID腹筋スレかよ!」
不良「俺たちが」秀才「事件を」オタク「解決しよう!」
戸愚呂弟「スーパートグロブラザーズ……?」
シンデレラ「私が……王子を倒すッッッ!」
女賢者「さ、おしおきを始めよっか」少年賢者「やめてぇ……っ!」
魔法使い「神様ってのは、意地悪だな」マッチョ「うん……」
男「いじめはイジメられる方が悪い」
少女「あ、こんなところにキノコが生えてる!」
桜木「マオーは俺が倒す!」流川「どあほう」
チンピラ「お怪我はありませんでしたか、お嬢さん」町娘「え?」
男「さて、そろそろ会社に出かけるか……」
少年賢者「ボクのアソコがムクムクしてきちゃうの」女賢者「えっ?」
少女剣士「ミルクは最高だね、おっさん!」剣士「ちゃんと口拭けよ」
勇次郎「探偵になりてェ」コナン(ハァ?)
オタク「ボクの幼馴染ちゃんが最近イケメンと仲が良い」
女武術家「たのもうっ!」格闘家「道場破りか!?」
元太「うな重ゥゥゥゥゥ!」コナン「やべぇ、禁断症状だ!」
孫娘「おい、クソジジイ!」祖父「なんだ、バカ孫!」
国王「名づけて……勇者ドッキリ大作戦!」
クレーマー「今日もクレームしまくってやるぜ……」
男「これが世界一のクソゲーか……」
登山家「さ、登山の始まりだ!」ハーピー「あら?」
側近「日本にはポケモンというゲームがあります」大統領「ほう」
おじさん「おじさんの……きんのたまだからね」男「うわぁぁぁ!」
チビ「一番辛いのは俺だ」デブ「いやオレだよ」ハゲ「ボクだ」
皇帝「ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」
剣士「勇者を決めるトーナメントだと……?」
QB「宇宙の維持に君たちのエネルギーなんて必要ないんだ」
のび太「もしもオサレな世界になったら!」
メリー「今あなたの後ろにいるの」武術家(殺気ッ!?)
老人「わしを弟子にしてくれんか!?」少女「へ?」
クッパ「ガッハッハ、珍しいカメだな」宇水「何が可笑しい!!!」
マルス「メディウスか……是非とも肉を喰らってみたいッッッ!」
るろうに観柳「明治回転式機関砲浪漫譚」
竜「なにをしに、ココにきた?」村娘「食べられに」
のび太「スターフォックス……?」
クソ娘「うんち食べたい」男「便秘なんだ……」
剣士「大丈夫かい、アンタ」女剣士「なぜ助けたのです?」
男「死亡フラグを立て続けないと死ぬ病気?」
メガネ「ボクはこの進学校で、東大を目指す!」
勇者「俺は勇者様の影武者ですから」
男「俺は世界を征服する!」友人「は!?」
シンジ「ターミナルドグマ最大トーナメント……!?」
軍師「ホント仲がいいんだね」若将軍&女将軍「よくないっ!!!」
料理人「食べられない料理を作れだと……?」
シンジ「アスカって『あんたバカぁ?』しかないの?」アスカ「!?」
塾講師「いいか、復習を忘れるなよ! 復習が大事なんだからな!」
騎士「我々に」忍者「任せるでござる」学生「帰れよ」
男「珍撃の巨チン……!?」
教師「今日からこの学校に赴任しました。趣味は妄想です」
少女「マッチが売れないのなら、マッチョを売ればいいじゃない!」
タモリ「世にも奇妙なニートの物語」
コルド大王「どうだ、我が子にならぬか?」トランクス「いいだろう」
令嬢「ご指導、よろしくお願いしますわ」武術家「よろしく」
妹「お兄ちゃん、いっしょに寝よっ」兄「え……?」
勇者「世はまさに大勇者時代!」
探偵「なにっ!? 連続ケツえぐり事件!?」
紳士「私はもう……小便小僧じゃないんだ……」
奴隷「たった三人の」市民「戦争の」皇帝「始まりだ!」
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