【艦これ】間宮「四季を愛する提督」 (75)

※艦隊これくしょんのSSです。

※安価はあるかもしれない

※荒らし、批判等はNo thank you!

※口調崩壊、キャラ崩壊はしてる…かも。

※若干のオリジナル設定があります。

※過去作の鎮守府とは別の話。

※誤字脱字があったり、駄文だったり、改行がおかしなところであったり
 それでもカモンな人は↓どうぞ。
 笑顔で見てもらえたらうれしいです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1420623475

さー荒らそう

【過去作品】
・1作品目:【艦これ】木曾「スキンシップをしてこない提督」
      【艦これ】木曾「スキンシップをしてこない提督」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1419426357/)

・2作品目:【艦これ】青葉「仮面をつけた提督」
      【艦これ】青葉「仮面をつけた提督」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1419743288/)

・3作品目:【艦これ】神通「優しすぎる提督」
      【艦これ】神通「優しすぎる提督」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1420348867/)

リンクできない人は検索してください。

 第拾九鎮守府には、艦娘が営んでいる2つの店がある。

 1つは、軽空母の鳳翔が経営している≪居酒屋・鳳翔≫。戦闘の第一線から身を引き、演習や遠征を担当するように

なった鳳翔が始めた居酒屋だ。

 この店は夜にしか開かないが、出される家庭的な料理と様々な種類の酒が美味しく、隼鷹や那智をはじめとする飲兵衛の

艦娘はもちろん、色々な娘達が来店する。

 そして、もう1つの店は、給糧艦の間宮が営む≪甘味処・間宮≫。もともと戦闘を担当せず、艦娘達に食糧を補給する

ことを主な仕事とする間宮が経営している、いわば茶屋のようなものだ。

 この店は≪居酒屋・鳳翔≫とは違い、陽の出ている間にしか開店しない。だが、スイーツや和菓子を食べることができ、

お菓子等の販売もしている。こちらは、駆逐艦や軽巡洋艦の子たちに人気だった(一部の重巡洋艦や戦艦も来店することも

あるが)。

 年の瀬も迫ってきた冬のある日、昼の3時ごろ。多くの艦娘達は出撃、演習、遠征に出払っていて、鎮守府には最低限の

人しかいない。

??「すみませ~ん」

 そんな中で、≪甘味処・間宮≫に1人の男が来店した。その声を聞くと、店の奥でお菓子の仕入れの準備をしていた間宮

が出てくる。

間宮「は~い、こんにちは~」

 間宮が出てくると、店先に立っていたのは、白い軍服に身を包んだ長身の男だった。年齢は20代あたり。その男は帽子を

取って温和な笑みを浮かべてこう言った。

提督「こんにちは。また、いつものをお願いしてもよろしいですか?」

間宮「はい、わかりました。そこで、お待ちくださいね」

 間宮はそう言うと、店の中に並べられたテーブルと椅子の中で、入り口から少し離れた席を示した。

提督「ありがとうございます。さっきまで間宮さんは何を?」

間宮「商品の仕入れをしてました」

提督「後で私も手伝いましょうか?」

間宮「いいえ、大丈夫です…って言っても、貴方は手伝ってくれるんでしょうね…?」

提督「ええ。もちろん」

間宮「ふふっ、ありがとうございます。では、少し待っていてくださいね」

 間宮はそう笑いかけると、厨房の奥へと入っていく。

 その瞬間から、間宮の目はさっきの温和な感じから真剣なものへと変わった。

 皆にスイーツや菓子を提供する時、彼女は一切の加減と言うものをしない。それには、間宮なりの理由がある。

間宮(私は戦線には出られませんが、皆さんは戦っている。それは、提督も同じ。執務室で指令を出しているだけなの

   でしょうけど、艦娘の子たちは提督の指示で戦っている。その責任を負っている提督は、戦っているのと同じです。

   ならば私は、提督や艦娘達に安らぎを与えるようにならなければ)

 そう考えながら間宮は、提督が気に入っているスイーツを作る準備を始める。

 間宮は、艦娘達や提督にスイーツを提供する時はこの意志を忘れないでいた。それだけ、彼女のこの決意は強いのだ。

間宮「伊良湖さーん」

 間宮はある名前を呼んだ。それは、最近間宮の店で働き始めた娘だ。その伊良湖という子は、厨房のさらに奥、さっき

間宮が商品を仕入れていた勝手口から小走りで走ってきた。

伊良湖「は、はい!」

間宮「提督に出すいつものスイーツを作るから、あなたはお茶を淹れてくださいね」

伊良湖「わかりました、いつものですよね?」

間宮「ええ、そうよ」

 2人は最低限の会話だけすると、提督に出すスイーツとお茶を作り始めた。

一旦ここまでで切ります。

言い忘れていましたが、このSSは短い予定で、更新は若干遅めです。そこだけはご了承ください。

報告を忘れて本当にすみません。

>>2
 やめてくださいお願いします。(懇願)


伊良湖さんって、影が若干薄いけど何気に可愛いですよね?

間宮さんとは珍しい
期待しよう

>>7
期待してるけどさ、そうやって反応するのはバカを呼ぶだけだよ

再開します。

>>9
 ご忠告、ありがとうございます。以後、控えるようにします。

批判もNo thank youなのか……(困惑)

 数十分して、提督のお気に入りのスイーツが完成した。それは、抹茶のわらび餅と、白玉あずきだった。それを1つの皿

に、綺麗に盛り付ける。それと同時に、伊良湖もお茶を淹れ終わった。こちらは一見すると普通の緑茶だが、様々な種類の

茶葉をブレンドした特別な緑茶だった。この緑茶は、提督にしか出したことがない。

 間宮は、伊良湖からブレンド茶の入った湯呑を受け取ると、自分が盛り付けたスイーツと一緒にお盆に載せて提督の元へ

運ぶ。そして、席で座っていた提督の目の前に盛り付けられたわらび餅を載せた皿と湯呑を置いた。

間宮「お待たせしました、どうぞお召し上がりください」

提督「いつもありがとうございます」

 提督は、わらび餅の傍らに添えられていた櫛を取り、わらび餅の一つにゆっくり刺し、それを口に運ぶ。

提督「…相変わらず、美味しいですね」

間宮「ありがとうございます」

 次に、提督は傍の湯呑を手に取り、緑茶を一口飲む。

提督「こちらも美味しいですよ」

間宮「それ、伊良湖さんが淹れたんですよ」

提督「そうですか、ありがとうございます」

 提督はそう言って、間宮の傍にいた伊良湖に頭を下げた。提督に頭を下げられた伊良湖は、両手を左右に振った。

伊良湖「い、いえ、そんな…!私なんてまだ着任したばかりの新参者で…」

提督「いえいえ、それでも美味しいですよ?」

 提督に微笑みかけられ、伊良湖はかあっ、と顔を紅くした。

伊良湖「…あ、ありがとうございます…」

 その様子を見ていた間宮は、心の中にモヤッとした感覚を覚えた。


 ぶっちゃけると、間宮は提督のことが異性として好きだった。好きになった理由は単純で、提督が自分の作ってくれた

スイーツを美味しいと言ってくれたのと、戦いを指揮する凛々しい姿に惚れてしまったのだ。それに、提督が前に自分に

言ってくれたことも惚れた要因だと思える。

 それは、数か月前に提督が自分のお店を訪れて、間宮が厨房で調理している姿を見てみたい、という提督の要望で、提督

が見ている前でスイーツを作っていた時のこと。提督が、スイーツを心を込めて作っている間宮を見てこう言ったのだ。

提督『間宮さんは、戦えないから戦えないなりに自分にできることを一生懸命やっています。私は、そんな姿の間宮さん

   に憧れているんです』

 その言葉で、間宮の心は完全に打ち砕かれた(恋愛的な意味で)。


 間宮は、まだ照れ照れしている伊良湖を見て嫉妬心を覚えた反面、自責の念も覚えた。

間宮(この子はまだ新米、提督に褒められ慣れていないのでしょう。それなのに、照れているのを見ただけで嫉妬心を

   覚えるなんて…私も大人げないですね)

 そう言うと、気を紛らわすために間宮はカレンダーを見た。今日の日付は12月20日。もう今年も終わりに近い。そして、

あるイベントが近づいていた。間宮はそれに気づき、提督に言った。

間宮「提督、もうすぐクリスマスですね」

提督「ああ、もうそんな時期ですか」

伊良湖「?」

 伊良湖が疑問の表情を浮かべる。それを見て、間宮は言った。

間宮「この鎮守府は、何かイベントがあるたびに、皆でそれを楽しむのよ」


 この提督が鎮守府に着任したのは今年の春の3月。提督は元々海軍の人で、徴兵されたのではない。

そして、出撃と建造を繰り返して多くの艦娘という名の仲間たちを手に入れた提督は、桜が咲き誇る5月の上旬にこう提案

した。

提督『この鎮守府も大所帯になりましたし、桜も見頃ですし、皆でお花見でもしましょうか』

 その言葉に、多くの艦娘達が賛成の声を上げた。しかし、4月上旬に着任した間宮は、この言葉に疑問を抱いた。

しかしその時はあまり気にせず、皆のために丹精込めて弁当を作ってあげた。

 そして、間宮は花見に同行した。行先は鎮守府の近くの丘である。そこには立派な桜の木が一本生えていた。桜の花は

満開だった。その桜の木の下で、皆は楽しそうに桜を見上げたり、間宮と鳳翔が作った弁当を食べていた。もちろん、

その弁当は提督も食べた。そして、一言。

提督『やはり、間宮さんのご飯は弁当でも美味しいですね』

 提督のその言葉に、間宮は顔を赤らめてプイと顔を背けた。

 ちなみに、その間宮の背後では、

千歳『一番千歳、脱ぎま~す!』

隼鷹『二番隼鷹、続きま~す!』

千代田・飛鷹『やめてぇ!!』

 飲んだくれな姉と妹を持つ2人の艦娘が苦労していた。

 また、夏の7月中旬、提督はこう言った。

提督『近くの広場でお祭りが行われているようですし、皆で行きましょうか』

 提督のその言葉に、またも皆は賛成した。そこでもやはり間宮は違和感を感じた。この時だけ、提督はなぜか切なそうな

表情をしている。だが、間宮はあまり考えず、皆が浴衣に着替えてスキップをしながら出ていく艦娘達に続いた(浴衣は

いつのまにか提督が手配していた。サイズもぴったりでなんだか不気味な感じがした)。

 そして、祭り会場で打ち上げ花火が上がるのを見上げて提督は一粒の涙を流していた。間宮は、その提督の横顔をじっと

見つめた。

 そして、提督のさらに横では、

愛宕『花火がきれいねぇ~』

高雄『そうですわね…』

龍驤『…………チッ』

大鳳『…………クッ』

 体の一部分があまり成長していない艦娘達が舌打ちをしていた(間宮も、出るところは出ているので迂闊に声をかける

ことができない)。

 それから、提督は何か季節を感じさせるイベントがあるたびに、それに艦娘達を参加させた。砂浜へ海水浴へ行き、

八月十五夜には皆で外に出て月見をし、秋になると山へ紅葉狩りへ行った。

 その、提督が季節に関するイベントごとに首を突っ込むのを見て、ついに間宮が聞いた。

間宮『提督は、なぜ季節関係のイベントになると、艦娘達を巻き込んでまで参加するんですか?』

 間宮のその純粋な疑問に、提督はこう答えた。

提督『実は、私の父と母はすでに他界していましてね…』

間宮『あ…すみません』

提督『いえ、構いません。それで2人は、今の私と同じように四季の行事を楽しんでいました。ですが、両親が他界する

   前の私はあまり四季の行事などに興味はありませんでした。そして、2人とも末期癌で死ぬ間際に私にこう言った

   のです。「私たちと同じように、四季を愛し、楽しみなさい」って』

間宮『………』

 間宮は黙って提督の話の続きを待った。

提督『最初はその意味があまりわかりませんでした…。ですが、両親の死後、試しに行事に参加してみると、改めて季節

   ごとの魅力というものに気づきました。それは、ただ過ごしているだけでは感じることのできなかったものです。

   それで、私はこの魅力をあの子たちと共有したいと思ったのです』

間宮『…そうだったんですか』

 間宮はそう返した。ただ考えなしに、イベントに参加しただけではないということに気づいて、ほっとした。

だが提督は、四季のイベントを楽しむ理由の内の1つしか間宮に教えなかった。理由はもう1つあるが、それはまだ

言えなかった。

今日はここまでです。また明日、再開します。

ちなみに、明日以降は夕方(早くても正午過ぎ)に投下するようになります。それに伴い、投下スピードも遅くなります。

ご注意ください。それでは、また明日。


間宮さん、アイテムじゃなくて正式に艦娘として実装されないかな…

乙なのです!

地の文にもうちょい抑揚がほしい
~た。~た。~た。ばっかで疲れる

それには賛同だけども
疲れるという表現はかなりおかしい。 メリハリがないなら分かるが

間宮さんの起伏が一番すごいなといつも思う

間宮さんは起伏がすごいなといつも思う

こんにちは。再開します

>>19->>20
 それについてはすみません。>>1の文章力の無さゆえです。今後は減らすように努めます。

伊良湖「へぇ~…そうだったんですか…」

 間宮の話を聞いた伊良湖は、驚きの声を上げる(提督が話したその理由については話していない)。

 伊良湖は数週間前にこの鎮守府に着任したばかりなので、この鎮守府の勝手や状況にまだ慣れていない。だから、この

鎮守府が少しイベントに積極的だということに少し驚いたのだ。

伊良湖「鎮守府って、もっと戦争一辺倒な印象がありましたけど…本当はそんなでもなかったんですね」

提督「まあ、ウチだけでしょうけどね…」

 そう少し自嘲気味に言うと、提督は最後のわらび餅を口に運んだ。

提督「ごちそうさま。美味しかったですよ、いつもありがとうございます」

間宮「いえいえ、これぐらいのことでは」

伊良湖「お、お粗末さまでした」

 間宮は微笑みながら礼を言い、伊良湖は深々とお辞儀をした。これが、ベテランと新米の違いだろうか。

間宮は空になった皿と湯呑を厨房の洗い場に持っていき、再び提督のところへ戻る。クリスマスについて話し合うためだ。

間宮は、提督の正面の椅子に座り、本題について話し始める。

間宮「それで提督、クリスマスのことですが…」

提督「そうですね、クリスマスも冬の風物詩です。大本営の方からクリスマスツリーも届きましたし…」

間宮「へ?なんでツリーが?」

提督「雰囲気だけでも楽しめってことでしょう。なら、これに乗じて私達はクリスマスパーティでも行いましょうか。

   艦娘の方達も喜ぶでしょうしね。そこで、間宮さんと伊良湖さん、鳳翔さんには料理の方を任せたいのですが…」

間宮「はい、わかりました」

 間宮は提督の申し出を快諾する。

 間宮は、ここでスイーツを作っているうえ、艦娘達の料理を毎日作っているから料理は得意なのである。

 また、提督から季節のイベントに積極的な理由を聞いてから間宮は、提督の提案に疑問を抱かなくなった。むしろ、ノリ

ノリである。

 伊良湖は、両手のこぶしを力強く握り、元気な声で返事をした。

伊良湖「わかりました!精いっぱい頑張ります!」

提督「急な話で申し訳ないのですが、お願いしますね」

 提督はお辞儀をして席を立とうとすると、あっ、と思い出したかのように声を上げて再び座り直す。そして、間宮に

向き直った。

提督「間宮さん、少し小耳に挟んだことなんですが…」

 提督が言うと、その口調と声の真剣さから平時とは違う何かを感じ取った間宮は、自然と姿勢を正す。同時に、傍で

立っていた伊良湖も真剣な目つきになる。なにか、よくないことでもあったのだろう。

間宮「はい、何でしょうか?」

 まさか、新しい敵が出現したのか、と思ったが提督の次の言葉は予想の遥か上を行くものだった。


提督「間宮さんが店の商品をつまみ食いしているというのは本当なんですか?」


間宮「…………え?」

 間宮は一瞬何を言っているのかわからないような表情をし、伊良湖はぽかんと口を開ける。そして、数秒して気づいた。

間宮は、本当につまみ食いをしていたのだ。

間宮「ど、どこでそんなことを聞いたんですか?」

 間宮は咄嗟に、肯定とも否定とも取れる言葉を言って何とか誤魔化そうとする。

提督「いやですね。昨日何の気なしに食堂に来たら、叢雲さんと磯波さんが間宮さんのスイーツについて語り合って

   いましてね、その話を少し離れた場所で聞いていたら…」

磯波『昨日食べた間宮さんの新作スイーツ、美味しかったですねぇ。私も間宮さんみたいに、スイーツが作れるように

   なりたいなぁ~』

叢雲『まぁ、その間宮さんが自分の商品をつまみ食いしたことがあるって知ったら、皆はどう思うんでしょうね…』

磯波『わわっ、叢雲ちゃん、それは言わないって約束したじゃない!』

提督『…………』


伊良湖「間宮さん、本当にそんなことをしてたんですか…?」

 そう言った伊良湖の顔を見てみると、ジト目に引きつったような笑顔だった。あの顔は、完全に疑っている。

提督「どうなんですか…?」

 提督はそう言うと、ずいと顔を近づける。目の前に提督の顔が近づいてきたので、間宮は顔を紅くして椅子ごと後ろへ

飛び退いた。

間宮「い、いえ、私がそんなことをするはずが…!」

 顔を紅くして両手を高速で左右に振りつつ否定の言葉を口にしながら、間宮はつまみ食いがバレた時のことを

思い出す―。

 それは、伊良湖がまだこの鎮守府に着任していない頃、1ヶ月ぐらい前だろうか。

 いつものように、朝早く起きて艦娘達の朝食を作って一緒に食べ、皿を洗った後店に戻って仕込みを始めようとすると、

くぅと小さくお腹が鳴った。

間宮(さ、さっき食べたばっかりなのに…。太っちゃう…のに)

 間宮はそう言って、気を紛らわすように顔を振ると、目線の先には昨日の残りのカップに載せられたアイスクリームが。

間宮は、そのアイスから目が離せなくなってしまった。

間宮(だ、ダメよ。売れ残りとはいえ流石に店の商品に手を出すのは…)

 くぅ~…。

間宮『ま、まぁ売れ残りだし…自分で作ったものだし…なにも問題はないわよね…?』

 間宮は、誰に言い聞かせるわけでもないのに声に出して、アイスを手に取る。そして、戸棚からスプーンを取り出して

そのアイスを静かに食べ始める。

間宮(ああ、太ってしまう…。でも、普段は自分が作った料理なんて美味しいと感じないのに、今はとても美味しい…)

 そんな風に考えながらアイスをパクパク食べていると、不意に店の扉がガラッと開く。

そして―

吹雪『すみませーん!間宮さんのお部屋を少し拝見したい―』

 そう元気よく言いながら入ってきた吹雪は、間宮がアイスを食べているのを見て絶句してしまう。その吹雪の後ろにいた

初雪、叢雲、磯波も後ろから間宮の姿を見つめていた。

 その視線に気づいた間宮は慌てて取り繕おうとする。

間宮『あっ、い、いらっしゃい、買い物?というか、まだ開けてないんだけど…』

磯波『い、いえ、あのですね…間宮さんが普段生活している部屋ってどんなだろうと思って、まだ忙しくない開店前に

   見に行こうと思ってですね…。それより、それって…』

 そう言いながら磯波は、間宮の手に握られているアイスのカップを指さす。

間宮『ち、違うわよ!?これは昨日の売れ残りであって、決して今日出すモノでは…!』

叢雲『どっちにしろ、店の商品じゃない、それ』

初雪『…羨ましい』

 結局、間宮はこの4人に今日出すはずのアイスを奢ってあげた上に、自室も公開してあげた(提督の写真が飾ってあった

が、間宮は目を盗んで隠しておいた)。

 時は戻って今。

伊良湖「どうなんですか?間宮さん」

間宮「い、いえ…」

 実際のところ、吹雪たちにつまみ食いを見られてから、間宮はつまみ食いをしてこなかった。だが、つまみ食いをした

事があるのに変わりはない。

 伊良湖のジト目に耐えられなくなり顔を横へ向けると、今度は提督の目線が突き刺さる。

提督「いえ、私は間宮さんを疑っているわけではなくてですね。念のため真実を確かめておきたいと思っているだけです

   よ」

 この提督の、間宮を信用しているような目線と口調が今は痛くてしょうがない。

間宮「いえ…えと…その…」

 間宮が観念して全て話そうとした時、不意に店の扉がガラッと開き、何人かの女の子たちが入ってくる。提督は、間宮

から入って来た女の子たちに視線を移した。

間宮(よかった…!)

 先陣を切って入ってきた駆逐艦の暁が声を上げて言った。

暁「失礼するわ!提督はいるかしら?」

 その声を聞くと、提督は席を立ち上がり、返事をする。

 なぜ提督がここにいるのを知っているのかと言うと、提督は執務室のドアに『間宮さんのところにいます』と書いた

プレートをかけていたのだ。

提督「私はここですよ?…あなたたちが帰ってきたということは、遠征が終わったのですね?」

 提督がそう言うと、暁の後ろに立っていた妹の響が答える。

響「その通りさ、南西諸島への遠征から帰ってきたよ」

提督「お疲れ様です。それで、結果はいかがでしたか?」

 提督がそう言うと、響の後ろにいた雷が元気よく答える。

雷「大成功よ!前日に間宮さんのスイーツを食べたおかげね!」

電「あの、ついでに家具コインも拾ってきたのです」

 そう雷に続いて自信がなさそうに言ったのは電、この暁型駆逐艦の末っ子である。提督は、四姉妹の報告を聞いて嬉し

そうに頷く。

提督「ありがとう。よくやりましたね」

 そう言うと、提督は少し切なそうな表情でこう続ける。

提督「…できる事なら、君たちみたいな女の子を戦地へ行かせたくはないのですが…。この鎮守府は他と比べて戦力が少し

   劣っているので…すみませんね」

 提督がそう悲しそうに言うと、雷が若干怒り気味に言った。

雷「何言ってるのよ!もっと私たちを頼っていいんだからね!」

暁「そうよ、それに子ども扱いしないで!一人前のレディとして扱ってよね!」

 雷と暁の言葉を聞くと、提督は響と電を見た。2人とも、こくりと頷く。

提督「…わかりました。これからも、少しは頼らせていただきますね」

雷「それでいいのよ!」

 雷が納得したかのように大きく頷く。そして、提督はこう言った。

提督「では、遠征が大成功したご褒美にアイスでも奢りましょう」

暁「へ?いいの?やったぁ!」

 提督の言葉を聞くと、暁だけはピョンピョン跳ねて喜びを表している。その様子を見て、ここにいる暁以外の全員は、

レディとはかけ離れている…、と感じた。

提督「…では間宮さん、お願いしてもよろしいでしょうか?」

間宮「あ、はい!」

 提督に言われると、間宮は席を立って厨房へ早足に向かい、準備を始めようとする。そこで提督とすれ違う時、提督は

小さな声でこう言った。

提督「…あのつまみ食いのことは、聞かなかったことにします。ですが、次やったら許しませんからね」

 間宮はその声を聞くと、さらにペースを速めて厨房の奥へと入る。伊良湖も同じことを言われたが、こちらは渋々と

頷いた。


 間宮がアイスの載ったカップを4つお盆に載せて、四姉妹が座るテーブルに運ぶ。そして、アイスを皆の前に置くと、

召し上がれ、と言って一歩下がる。

 反対に、提督が一歩前に出てこう言った。

提督「食べながらでいいので聞いてもらってもよろしいでしょうか?」

暁「何かしら?」

提督「今度、この鎮守府でクリスマスパーティを開こうと思うんです」

響「…そうか、日本ではクリスマスはこの時期にやるのか」

※日本は12月24日から25日がクリスマスとされているが、ロシアでは年明けの1月7日にやる。そして、特別なパーティな どは開かれず、クリスマスを祝うというよりも新年を祝うという意味合いが強い。

雷「それ本当?」

電「はわわわ、それは楽しそうなのです」

 案の定、この4人は嬉しそうな表情をする。だが、間宮は不安そうな表情を浮かべながら提督に囁いた。

間宮「提督、よろしいのでしょうか?この子たちに教えてしまって」

提督「大丈夫ですよ。どうせ直ぐに皆さんに教える予定でしたし。それに―」

暁「そのクリスマスパーティって、いつやるの?」

 提督が何か言おうとすると、既に興味津々な暁が身を乗り出して提督に訊ねる。カップのアイスはもう無くなっていた。

提督「今度の24日、水曜日にやる予定です。一応、後日他の皆さんも集めて説明会をする予定ですが、あなたたちもその

   説明会には参加してくださいね。クリスマスパーティを行う条件等も言いますので」

響「条件って何だい?」

提督「それは今は言えませんね」

 提督は悪戯っぽく笑うと、響は口を尖らせた。

響「…Злость(ズロースチ:意地悪)」

 響がロシア語で何か呟いたが、それに気づかなず雷と電は既に手伝う気満々である。

雷「24日ね!わかったわ」

電「だとしたら、早く準備をしないといけないのです」

雷「そうね!私たちも頑張らないと!」

 雷と電の言葉を、提督は手のひらを2人に見せて制止する。

提督「いえ、クリスマスパーティの準備は間宮さんや、軽巡洋艦、重巡洋艦の方々に手伝ってもらうつもりですので。

   あなたたちは特に手伝わなくても大丈夫ですよ」

雷「そんなー…」

電「仕方ないのです…」

 雷と電はしょんぼりとしながら、アイスを食べるのを再開した。

 全員がアイスを食べ終わると、4人は立ち上がり、提督に丁寧にお辞儀をする。そして暁が代表して、お礼の言葉を

述べる。

暁「ご馳走様でした。提督」

提督「いえいえ、それに間宮さんにもお礼を言ってください」

 提督にそう言われると、間宮は体をピシッとする。今度は、響がお礼を言った。

響「Спасибо(スパシーバ:ありがとう)、間宮さん」

間宮「いえいえ、あれくらいのこと…」

雷・電「ありがとうございました!」

 雷と電の2人が一緒にお礼を言うと、4人は店を出ていった。それを見ると、提督が思い出したように間宮と伊良湖に

言う。

提督「では、クリスマスの料理についてはお願いしますね」

間宮「はい、わかりました」

伊良湖「任せてください!」

 そして、提督はちなみに、と付け加えて続けた。

提督「あの子たちにクリスマスパーティのことを教えたのって、なぜだと思います?」

間宮「…わかりません…」

 間宮がそう答えると、提督伊良湖を指さす。伊良湖は提督がクリスマスパーティをしようと言った時からから、

伊良湖「クリスマス♪クリスマス~♪あぁ、楽しみですねぇ~」

 と鼻歌交じりに何度も呟いている。

提督「あの様子では、いずれバレると思ったからですよ…」

間宮「…何だかすみません」

 間宮は申し訳なさそうにぺこりと頭を下げる。


 しかし、クリスマスパーティをやると聞いた暁型の4人は、パーティをやることを駆逐艦の子たちに言い触らしていた。

なぜそんなことをしたのかというと、原因は響の一言である。

響『楽しみは皆で共有したほうがいい。パーティのことを皆にも伝えてあげよう』

 その言葉に暁、雷、電は二つ返事で了解した。そして、その話は駆逐艦娘から軽巡洋艦娘→重巡洋艦娘→戦艦娘→空母

艦娘と伝えられていき、ついには鎮守府のほとんどの艦娘が知る羽目になった。


 ちなみに、クリスマスパーティのことを聞いた一航戦の空母赤城と加賀の反応。

赤城『パーティと言うことは、食べ物がいっぱい食べれるんですね!』

加賀『さすがに気分が高揚します…!』

 食べ物のことしか考えていなかった。

ここで一回切ります。

次の再開予定は、21時過ぎの予定です。

では、のちほど。

 翌日21日の午前11時前。鎮守府の地下にある大会議室には、全ての艦娘が集合していた。提督から、ある行事についての

説明会をするから11時までにここに集まるように言われたからだ。

北上「この説明会って、あれでしょ。24日のパーティのことについてでしょ?私たちは知ってるんだからもう説明会なんて

   必要ないんじゃない?」

大井「でも暁さんは、何かパーティをやるための条件を言うからって言ってたけど」

 そんなことを言い合っている北上と大井の後ろの方では、戦艦勢が話している。

長門「くりすます…とは、何をやるんだ?私は戦闘のこと以外にはあまり疎いからな…」

陸奥「ちょっと説明が難しいけど、まあ盛り上がるイベントよ」

 陸奥はざっくりと説明したが、長門はそれだけで納得してしまったようだ。

長門「そうか、盛り上がるものか!なら、存分に楽しまんとな!」

 その横では、伊勢が日向と少し言い争いをしている。

伊勢「ねー、頼むよー」

日向「何度も言っているだろう、いやだ」

伊勢「なんでー!?なんでクリスマスプレゼントくれないの!?」

日向「その年(暫定20代)でクリスマスプレゼントを欲しがるなど子供臭い…。もう少し大人になったらどうだ?」

 この会話だけ聞くと日向が姉で伊勢が妹のようだが、実際は逆である。そんな感じで艦娘達が話をしながら、約束の11時

まで和やかに過ごしていく。

 そして11時になると、鎮守府の鐘が鳴り、それと同時に提督が大会議室に入室してきた。

 提督は入室すると、艦娘達が起立しようとする前に、

提督「号令ははぶきましょう。それほど時間のかかるものではありませんしね」

 そう言うと、提督は皆の正面に立つ。

提督「さて、今日あなたたちを呼んだのは、皆さんも知っているかもしれませんが、この鎮守府でクリスマスパーティを

   開催しようと思います」

 提督がそう言うと、艦娘達はわぁっ!!と沸き上がる。注意深く見てみると、普段は感情を表に出さない弥生も薄らと

笑っているように見える。

提督「ただし!」

 提督がそう断りを入れると、沸き上がっていた艦娘達が静まり返る。提督はその反応を見て続ける。

提督「今回は少々規模が大きなものとなります。そのため、資材を少々消費することになります。よって、少しの間

   資材を貯めなければなりません。それにともない、遠征の回数も増えます。だから、皆さんにはこの遠征を成功させ

   てもらい十分な資材を獲得してもらいたいのです」

 そして、と提督は前置きし、秘書艦の鳳翔から資料を受け取る。その資料を見ながら話を続けた。

提督「今現在、この鎮守府の出撃の勝率は78%です。それを、23日までに80%以上にしてください」

 その言葉に、艦娘達は今度はどよめいた。

川内「そんな…今日入れて3日で勝率を2%上げるなんて…」

長良「ちょっと難しくないかな…?」

 艦娘達のどよめきを聞いて、提督は咳払いをし、艦娘達の話を止めさせる。

提督「勝率を80%にするのは、大本営に牽制をするためです。こちらの鎮守府が強いということを示し、この鎮守府の運営

   を円滑にするためです」

 大本営は、勝率の低い鎮守府をつぶそうと考えているらしい。そうならないために、この地域で比較的勝率の低いこの

鎮守府の勝率を平均レベルにすれば、大本営から潰されるリスクも減るからだ。

 クリスマスの1日だけでも出撃をしないと、簡単に勝率に差がつけられてしまう。だから、そうならないために勝率を

あげておく必要があるのだ。

提督「私は、あなたたちがこのノルマを達成できると信じています。だから、皆さんでクリスマスパーティを開けるように

   頑張ってください」

 艦娘達は、提督のその言葉に、力強く返事を返した。

艦娘「「「はい!!!」」」


 その後の2日間、遠征に言った艦隊は全員大成功。

 出撃では、艦隊の頭脳と言われている霧島と鳥海が綿密な戦略を立てて戦いに臨む。それによって、出撃艦隊は敗北する

ことが一度もなく、勝率は85%にまで跳ね上がった。

 そして説明会からわずか2日後に、資材が十分に溜まったことと勝率が80%を超えたことにより、クリスマスパーティの

開催が決定となる。

今日はここまで。明日の夕方に再開の予定です。

最後は短すぎてすみません。

それではまた明日。



結局、重巡はしばらくの間バシー島沖で育てることにしました。

あぁー間宮さんかわいくてノンケになるぅー

こんばんは。再開します。

提督「まさかたった2日でノルマを達成するとは…」

 提督は、≪甘味処・間宮≫のテーブルに座りながら、戦闘の報告書を見て感嘆の声を上げた。隣にいた間宮と伊良湖も、

提督が持っている資料を見て口に手を当てる。

間宮「皆さん、そんなにクリスマスパーティがやりたいんですね…」

 そう呆れ気味に言う間宮はにっこりと笑っている。

提督「演習相手の提督さんは、『なぜそっちの攻撃は全部クリティカルヒットなんだ。こっちの攻撃は全て外れたのに!』

   と半ば自棄気味なことを言っていましたし…。この2日間で我々が倒した深海棲艦の数はおよそ110体…。普通は、

   2日だけじゃ倒せない数ですよ…」

間宮「それだけパーティが楽しみなんですよ。皆さん、戦いばかりで息詰まっていたようでしたしね」

 間宮のその言葉を聞くと、提督の肩がピクッ、と震えた。間宮はそれに気付いたが、伊良湖はそれに気づかずに提督に

話しかける。

伊良湖「それより提督さん、これでクリスマスパーティは…」

 伊良湖の言葉に提督はふわりと笑い、こう返した。

提督「そうですね。約束通り、開催しましょう」

伊良湖「やった!」

 提督の言葉を聞くや否や、伊良湖は提督に抱き付く。その行動に提督は慌てて引き離そうとするが、伊良湖はがっちり

提督を掴んで引き離せそうにない。

提督「ちょっ、伊良湖さん!?」

伊良湖「ありがとうございます!私、料理に腕を振るいますんで、見ててください!」

提督「わかりました、わかりましたから離してください!」

 提督がそう言うと、伊良湖は渋りながら提督を離す。だが伊良湖は、嬉しさから涙目だった。提督が、伊良湖のその顔を

見ると、少し胸がキュンとした。

 そして、提督は同時に鋭い目線を感じ取る。その視線の先を見てみると、そこには若干涙目の間宮が。その表情からは、

若干暗い感情が見える。その感情が嫉妬だということに提督は気づかない。

提督「ええと…間宮さん…?」

 提督がおっかなびっくり聞いてみると、間宮は少し怒り気味に言った。

間宮「私は、明日のための食材を買ってきます!伊良湖、店はお願いしますね!」

伊良湖「あ、はい!」

 間宮はそう言うと、厨房の奥へと消えていってしまった。これから買いに行く食材の量を考えると伊良湖も誘うべき

だったが、間宮は少し1人になりたかった。

 伊良湖も店の準備をしようとしたが、その前に提督にもう一度頭を下げてお礼の言葉を言う。

伊良湖「提督さん、本当にありがとうございます!」

提督「いえいえ。私が好きでやろうとしたことですから」

 提督は控えめに手を横に振った。

 間宮はその様子を厨房から静かに見つめていた。そして、さっきの自分の態度を反省する。

間宮(さっきは、はしたない態度をとってしまいました…。でも、なぜか胸が締め付けられるような感じがして、とても

   悲しくなってしまって…)

 間宮は自分が抱いた感情に知らないフリをしたが、すぐにその感情を認める。

間宮(わかってます…伊良湖さんに嫉妬したということは。でも、あんな態度をとってしまったから、提督には嫌われて

   しまったのでしょうね…)

 間宮はそう思いながら、勝手口から出ていき、食材を買いに行った。


 間宮が買い物を済ませると、太陽は水平線に沈みかけていた。

その帰り道、間宮は嫉妬の念に囚われて伊良湖を連れて行かなかったことを後悔しながら歩いていた。その理由は、両手に

持っている大きなレジ袋。

間宮「…重すぎる…。伊良湖さんを連れてくればよかった…」

 間宮はなんとか頑張ろうとしたが、腕が疲れたので途中の海の見える公園で休憩することに。公園には誰もいなかった

ので、間宮はベンチに座り、自分の横にレジ袋をドサッと置き、ベンチの背もたれにもたれかかる。

間宮「はぁ~…疲れた…」

 間宮はそう息を吐きながら言うと、水平線に沈みかけている太陽を見つめた。そして、小さな声で、

間宮「提督さん…さっきはすみませんでした…」

 誰も聞いているはずがない、と思って口にしたが、意外なことに返事が返ってくる。

提督「何がすまないんですか?」

間宮「て、提督!?」

 間宮がびっくりして振り返ると、そこにいたのはやっぱり提督だった。

間宮「え、なんで提督がここに!?」

提督「ええ、あの後、間宮さん一人じゃ大変だろうと思って探していたら、ベンチでぐったりと座っていたので声を

   かけようとしたのですが」

間宮「そ、そうでしたか…」

提督「それより、何がすまないんですか?」

 提督に改めて聞かれ、間宮は歯切れが悪そうに答える。

間宮「ええと、さっき、貴方に辛く当たってしまって…それで…」

提督「ああ、そのことですか。私は気にしてませんよ」

間宮「あ、ありがとうございます」

 提督がこう返すのだから、さっきまで真剣になって考えていた自分が馬鹿みたいに思える。それと同時に、自分の感情に

気づかなかったのかとがっかりした。

提督「さあ、早く帰りましょう。明日は大変になりますしね」

間宮「あ、はい!」

 提督の言葉を聞くと、間宮は腕をプルプル震えさせながら二つのレジ袋を両手に持って歩き出そうとする。それを見て

提督が、間宮が右手に持っていたレジ袋を左手で受け取り自分の右手に持った。

提督「片方持ちますよ。辛そうですしね」

 提督が笑顔でそう言うと、間宮はたまらず、開いていた右手を提督の左手に重ねた。

提督はその行動に疑問の表情を浮かべたが、間宮が顔を紅くしてこう言う。

間宮「少し、このままでいさせてください」

 間宮のその言葉に、提督は目を細めて、

提督「…わかりました。では、鎮守府へ戻りましょう」

 と言い、間宮の手を引いて鎮守府へと戻っていった。

ここで一回切ります

再開します。

 そして、クリスマスの当日24日。午後3時。

 鎮守府2階の特別室では軽巡や重巡の艦娘達が、クリスマス会に向けて会場の準備を進めていた。中では艦娘達の声が

飛び交っている。

摩耶「おい、テーブルを早くこっちへ持ってきてくれ!数が足りない!」

天龍「今持ってく!少し待ってろ!」

夕張「壁紙そっち張って!」

長良「よしきた!任せといて!」

 艦娘達が協力しながら準備を進めている様子を、提督はその様子を鳥海と共にドアの外からから見ていた。

提督「皆さん、張り切ってますね」

鳥海「それだけ楽しみなんでしょう。ちなみに私の計算だと、あと1時間ほどで終わる予定です」

提督「わかりました。鳥海さんの計算は外れたことがないので信用します」

 そして、本当に1時間後に準備は完了することになる。


 午後4時。

 ≪甘味処・間宮≫では、間宮と伊良湖が夜のパーティに向けて料理を大忙しで作っていた。厨房からは、ジュージューと

いう調理する音と、2人の艦娘の声が聞こえる。

間宮「伊良湖さん、そっちの料理できた?」

伊良湖「あと少しでできそうです!間宮さんは?」

間宮「こちらはもうできてます!あとは盛り付けるだけですよ」

 この2人だけで、パーティで出す全ての料理を作っている。その時、伊良湖には疑問があった。

伊良湖「間宮さん、鳳翔さんは?」

 この場には、≪居酒屋・鳳翔≫を営むほど料理が得意な鳳翔がいない。

間宮「なにか、やることがあるって言ってましたけど…。それより、こちらでやるべきことを早くやってしまいましょう」

伊良湖「はい!」

 伊良湖は、クリスマスパーティを開催すると聞いた時から張り切っていた。今この場でも、普段は見せないような

スピードで料理を作っている。

間宮(本当は、いつもこの調子で頑張ってほしいのですが…。でも、私も提督に美味しいって言ってもらいたいですし、

   頑張りましょう)

 そして、2人の作る料理はともに完成しつつあった。


 午後5時。

 赤城と加賀は埠頭から戻ってきた。手に持っているバケツの中には魚が大量に入っている。

赤城「たくさん釣れましたね」

加賀「いくらパーティと言っても、間宮さんと伊良湖さんだけが作る量だと少ないでしょう。皆さんも食べるでしょうし。

   ならば、こちらだけで釣ってこちらだけで食べてしまいましょう」

赤城「はい。この魚なら、煮ても刺身にしても美味しいですからね」

 そう言いながら鎮守府に戻る道を歩いていると、前方から提督がやってくる。

提督「あれ?2人とも、どこへ行っていたんですか?いや、その格好からすると、釣りでしょうか?」

 提督がそう言う通り、赤城と加賀は矢筒の代わりに、釣竿の入ったケースを方から提げている。

 次に提督は、赤城が持っていたバケツの中を見て驚きの声を上げた。

提督「おお、すごい一杯釣れましたね」

赤城「そうでしょう?でも私たちはこれを―」

 赤城が何か言おうとする前に、提督が勘違いしてこう言う。

提督「ああ、パーティ用の食材ですね?」

赤城「え」

加賀「いえ、それは―」

提督「ですが、間宮さんと伊良湖さんは手一杯ですし、私が調理しましょう」

赤城「え、提督捌けるんですか?いや、そうではなくて―」

提督「ええ、人並みには。では、これは私が預かりますね」

 提督はそう言うと、赤城と加賀から魚の入ったバケツをパッと取り、持って行ってしまった。後には、茫然とした表情の

赤城と加賀が取り残される。

赤城「…………」

加賀「…………あとで提督が捌いたのをもらいましょう」

赤城「………はい」

 そして、午後6時。ようやく、パーティのための全ての準備が整った。

提督はその報告を受けると、駆逐艦や戦艦(普段よく出撃しているから休ませようという提督の計らい)、空母の子たちを

引き連れて会場の特別室の扉の前に立つ。

 そして、扉をゆっくりと開けると―。

駆逐艦勢「おお~…」

戦艦勢「これは…すごいな」

 駆逐艦の子たちがキラキラした目をして中を見回した。

 特別室の中は、軽巡や重巡の子たちが飾り付けた色とりどりのモールや壁紙、中央には大きなクリスマスツリー、

テーブルクロスがかけられたテーブルの上には様々な料理が載っている。壁際には、やり切った表情の艦娘達がいた。その

中には間宮と伊良湖もいる。

吹雪「すごい!綺麗!」

睦月「料理がおいしそー!」

 提督は先に部屋に入って、艦娘達に言う。

提督「準備をしてくださった皆さん、ありがとうございます。ご苦労様でした。そして他の方々も、日々の戦い、お疲れ様

   です。今日はゆっくり、パーティを楽しんで、日ごろの疲れを癒してください」

 提督がそう言うと、扉の前にいた艦娘達が部屋に入ってくる。

 パーティが始まると、みんなワイワイと料理を食べたりクリスマスツリーなどの飾りを見て声を上げたりしている。

那珂「料理が美味しい!」

五十鈴「そっちのジュース取ってー」

如月「クリスマスツリー、飾りがきれい…」

長月「ああ、これは見とれるな」

木曾「おい誰だクリスマスツリーに短冊吊るした奴!」

長門「フム、提督が捌いたこの魚、なかなか美味いな!」

赤城「ああ…私たちの獲った魚が皆に食べられる…」

 彼女たちは、この時だけ日々の戦いのことを忘れているようだ。それを見て、提督はほっと一息つく。

提督(本当に、やってよかった…)


 そして、パーティを始めてから1時間後の7時頃。提督が声を声を上げた。

提督「みなさん!鳳翔さんから、お話があるそうです!」

 提督がそう言うと、艦娘達が一斉に提督と鳳翔の方を向く。そして、隣にいた鳳翔の足元には段ボールがたくさん置いて

ある。

鳳翔「今日はクリスマスと言うことで、皆さんに手袋をプレゼントしようと思います。皆さん1人1つずつですよ?」

川内「え?この人数分を一人で…?」

天龍「すげぇ…」

 鳳翔は徹夜したのか、目の下には薄らと隈ができている。それに気づき、提督は小さく声をかける。

提督「鳳翔さん、大丈夫ですか?」

鳳翔「こんなこと、大したことじゃありませんよ」

 鳳翔の言葉を聞いて、提督はすごい気力だと素直に思った。

 だが鳳翔は、部屋を見渡しながらこう呟く。

鳳翔「ところで提督、間宮さんを見ませんでした?」

提督「え、近くにいませんか?」

 そう言って周りを見回したが、間宮の姿はない。

鳳翔「そろそろ料理が少なくなってきた、追加を頼もうと思ったのだけど…」

 提督は、ふと窓の外を見てみた。すると、いつの間に外に出たのか近くの街灯の下に間宮が立っている。

提督「………」

 提督はそれを見ると、鳳翔に少し席を外すことを伝えて、執務室にあるものを取りに行き、間宮のところへと向かった。

 提督が外に出ると、間宮はまだ街灯の下に立っていた。ゆっくりと近づいていき、話しかける。

提督「風邪をひきますよ?」

間宮「あ、提督…」

 間宮は提督に気づくと、何か言おうとして、止める。

提督「どうしたんですか?」

間宮「あの、提督…。少し聞きたいのですが…」

提督「なんですか?」

間宮「あなたはなぜ、私たち艦娘を巻き込んでまでイベントをしようとするんです?」

 間宮のその質問に、提督は若干の驚きを見せる。そして、間宮は続ける。

間宮「両親の方が生前に言っていたのなら、我々には構わず提督だけで楽しめば良いはずなのに、どうして私たちも参加

   させるのですか?それには、両親の言葉のほかにも理由があるからじゃないんですか?」

 その言葉に、提督はふぅ、と息を小さく吐く。

提督「そうですね。確かにその通りです。私には、皆さんを巻き込んでまでイベントをやる理由が、四季の魅力を皆と

   共有したいという理由のほかにもう一つ理由があります」

 間宮は、その言葉の続きをじっと待つ。そして、提督はゆっくりと話し出す。

提督「私は、日々の深海棲艦との戦いの中で、皆さんが女の子らしさを忘れているんじゃないかと思ったんです」

間宮「…え?」

提督「あなたたち艦娘は兵器でありますが、その本質は感情を持った女の子です。あなたも含めてね。ですが、皆さんは

   深海棲艦と戦っているうちに、自分の持つ女の子らしさを殺してしまっているのではないかと思うんですよ」

間宮「……」

提督「ですから私は、皆さんに女の子らしさを取り戻してもらいたかったのです。ですが、私は男ですので女の方のことは

   わかりません。ですから、今日やかつてのようにイベントをやって皆さんに戦いのことを少しの間でも忘れて

   楽しんでもらいたかったのです」

間宮「そんなことを考えて…」

提督「私にはこの程度のことしかできません。戦うのをやめてくれと言っても、彼女たちは戦うことを止めないのでしょう

   から。深海棲艦と戦うのが艦娘の使命とでも言うでしょうし」

 提督はそう言いながら、パーティが行われている特別室を見上げる。そこからは、楽しそうな艦娘達の声が聞こえる。

提督「ですから、こうやって少しでも彼女たちの不安や負担を取り除いてあげようと思ったからイベントをするのです。

   それだけの理由ですよ」

間宮(……ここまで優しいとは…)

 そこまで考えて、間宮は意を決して口を開く。

間宮「あ、あの、提督!」

提督「なんですか?」

 提督の表情を見て、一瞬言うのを躊躇ったが、続けてこう大声で言った。



間宮「私、提督のことが好きでなんです!」



 提督は少しの間、呆けたように口を開けていた。そして、数秒してやっと言葉を発する。

提督「…はい?」

 提督は、まさか、自分の理由を話したこのタイミングでこんなことを言われるとは思っていなかった。

提督「いや…えっと、なんでここで…?」

間宮「あなたは、私の作ったスイーツ食べるたびに美味しいって言ってくれたじゃないですか。私は、その言葉を何度も

   聞いているうちに、あなたのことが気になっていたんです。そして、私がスイーツを作っている時にあなたが

   『私に憧れている』って言った時に、私は貴方を好きになったんです…」

提督「………」

間宮「そしてさっき、私達を気遣ってイベントをしてくれるという優しい理由を聞かされて、一層好きになったんです…

   だから、今、言わさせてもらいました…」

提督「そうですか…」

 間宮の言葉を黙って聞いていた提督は、間宮の言葉を聞き終えると、懐から小箱を取り出した。

間宮「え、提督…それは?」

提督「ええと、いや…そのですね…」

 提督は歯切れが悪そうに言い出したが、やがてこう言った。



提督「実は、私も間宮さんのことが好きなんですよ」



間宮「……………へ」

 その言葉を聞くと、間宮の口から笑いにも似たような声が出る。

提督「前に私が言いましたよね?『あなたに憧れている』と。実は、その時からもうあなたのことを好きになっていた

   のですよ。戦闘には出れないから、それなりにできることを模索して、甘味処を始めたんでしょう?その逞しさが

   私は好きなんです」

間宮「だって…え…そんな…」

提督「そして…」

 提督は持っていた小箱の蓋を開ける。その中には、一つの光る指輪が。






提督「間宮さん、私と結婚していただけませんか?」




間宮「へぇっ!?だって、その指輪は…それに、私は提督とケッコンカッコカリができませんよ!?」

提督「これはケッコンカッコカリ指輪ではありません。本物の指輪です。この戦いが終わったら、本当に私と結婚して

   くれませんか?」

 提督はもう一度そう言う。その言葉に、間宮は涙が出てきた。そして、この時に間宮が言う言葉は1つしかない。




間宮「…はい。お受けいたします」




きょうはここまで。また、明日は少し予定が入っているので、再開は明日の夜の予定です。

それではまた明日。



だれか、コメントしていただけませんかね…。コメントがないと、すごい不安になってしまいます…

こんなに連続で何作もよく書けるな

>間宮「私、提督のことが好きでなんです!」
デナン系の新しいモビルスーツっぽくなってるのは間宮が噛んだからかな?


面白いです

こんばんは。再開します。

>>64
 今気づきました
 すみません。重要シーンなのに…
 「好きでなんです!」→「好きなんです!」で脳内補完お願いします。

伊良湖「間宮さん…やりましたね…」

 その声に、提督と間宮は振り返る。そこにいたのは、顔を真っ赤にした伊良湖だった。

提督「な…伊良湖さん…!?」

伊良湖「あ」

間宮「な、なんでここに…」

伊良湖「ええと、鳳翔さんから料理が足りなくなったから間宮さんに補充を頼みたいんだけど、見当たらないからあなたが

    持ってきてって言われたんですが、どこにあるのかわからなかったので間宮さんに聞こうとして探していたら…

    なんか真剣そうな話をしていたんで…」

提督「…どの辺から聞いてたんですか…?」

伊良湖「間宮さんが『私、提督のことが好きなんです!』って言ったところから…」

間宮「ああああああああああああああ…」

 伊良湖の言葉に、間宮は顔を真っ赤にして呻きながら膝から崩れ落ちる。

提督「間宮さん!?」

伊良湖「あ、提督、後は任せます!よかったじゃないですか、間宮さんみたいな美人から告白されるなんて!」

提督「…あなた、間宮さんの気持ちに気づいていたんですか?」

伊良湖「ええ。私が提督と親しそうにしてると、間宮さん不機嫌そうな顔をしますし、これは嫉妬だろうなーって…

    それでは、あとはごゆっくり!」

 伊良湖はそう言うと、鎮守府へと走って戻って行った。

 提督は、まだ地べたに膝をついている間宮の肩を叩き、鎮守府に戻ろうと提案する。

提督「戻りましょうよ。鳳翔さんからの頼みもありますし…ね?」

間宮「…はい」

 間宮は返事をするとゆっくり立ち上がり、スペアの料理がある≪甘味処・間宮≫へと歩み始める。だが間宮は寒いのか、

手を握ったり開いたり両手をこすり合わせたりしている。提督は、それを見て間宮の左手を優しく握った。

間宮「!」

提督「こうすれば、暖かいでしょう?」

間宮「…そうですね。…あ」

 間宮は何かに気づいたように声を上げると、夜空を見上げる。すると、雪がぽつりぽつりと降ってきた。提督も

釣られるように空を見上げる。

提督「雪…ですか。ホワイトクリスマス…ってやつですね」

間宮「…そうですね。提督さん…ちょっといいですか?」

 提督はその言葉に、間宮に顔を向けなおす。すると―




 間宮はほんのわずかな間だけ、提督の唇に自分の唇を重ねた。



 そして数秒後、唇を離して顔を紅くしながら提督に向かってぼそぼそと話す。

間宮「…自分で言うのもなんですが、いい雰囲気でしたので…」

提督「…そうですね。最高の雰囲気でした」

 提督はそう言うと、また間宮と手を繋ぎ、間宮の店へと向かっていった。

 深海棲艦との戦いはいつ終わるのかはわからない。

 だが提督は、この戦いが終わり、艦娘達が普通の女の子として暮らしていける世界を望んでいる。

 そして、その世界で間宮と共に残りの人生を歩んでいくことも同時に望んでいた。

 そんな明るい世界が来ることを願って、提督は艦娘達に女の子らしさを思い出してもらうためにイベントを開催する。

 あと少しで、年が明ける。次のイベントを開催するのも近かった―。

というわけで、間宮編は終了です。皆さんいかがでしたか?

ですが、>>1はこの作品の出来は、自分で作っておいてなんですが少しストーリー構成が若干悪かったなと感じました。

そこで、陸奥編と那智編の投稿を少し見送ることにしようと思います。よって、次の投稿は小話を何度も載せる短編集

(地の文は少な目)か、既にストーリー構成ができているヲ級編を作ろうかと思います。どちらをやるかは多数決で決め

ます。


↓3 次の作品どうする?次の選択肢から。(決まった場合のスレ立ては、1月11日(日)の午後2時以降)

 1.短編集

 2.ヲ級編(若干長め)


次からは頑張りますのでよろしくお願いします。では、また今度。

2

2

2かな

こんにちは。遅くなりましたが、新スレができました。

【艦これ】空母ヲ級「私ヲ救ッタ提督」
【艦これ】空母ヲ級「私ヲ救ッタ提督」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1420964459/)

こちらもよろしくお願いします。

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