しんのすけ「25年後の世界だゾ」(33)
マサオ「しんちゃん……向こうの幼稚園でも元気でね……」
しんのすけ「おう!元気でやれよ!」
かざま「お前もな、引っ越し先で落ち着いたら手紙のひとつでも寄こせよな」
しんのすけ「恋文というやつですな」
かざま「違うよ!気色悪い事言うな!」
ネネ「……しんちゃん」
ボー「元気で」
マサオ「うぇーん!」
ネネ「泣くんじゃないわよマサオ君!あんたが泣いたら私まで……うぇーん!」
かざま「ばか……やろう……」
しんのすけ「泣くなんておバカだゾ……また会えるの……に……」
かざま「かすかべ防衛隊も本日をもって解散か……」
マサオ「しんちゃんのいないかすかべ防衛隊なんて考えれられないしね」
ネネ「そうだ!ねえ!空き地にタイムカプセルを埋めない!?」
かざま「いいね!そうしようよ!」
ボー「長い間もつ入れものが必要」
しんのすけ「お煎餅の大きな缶がお家にあったからそれを持ってくる」
かざま「じゃあその間に中に入れるものを各自家から持ってこようか!」
マサオ「何にしようかなー」
ネネ「私はもう決まっているわよ?」
かざま「しんのすけも持ってくるんだぞ」
しんのすけ「ほーい」
しんのすけ「お煎餅の缶持ってきたゾ」
かざま「ご苦労、穴掘るの手伝ってくれ」
ネネ「ねえ、もうこれぐらいでいいんじゃない?」
かざま「駄目だよ、浅いと誰かに掘り起こされるかもしれないし」
ボー「犬や猫が掘り返してしまうかも」
しんのすけ「うおりゃー!」
かざま「ぶわっ!おいしんのすけ!土飛ばすなよ!」
ネネ「きゃあかざま君!泥だらけの手が私の服についたじゃない!」
マサオ「ボーちゃん鼻水!」
ボー「ぼー」
かざま「よし、これぐらい深ければ大丈夫かな」
かざま「じゃあ順番にタイムカプセルに入れていこう」
かざま「まずは僕から、僕はこれを入れるよ」
ネネ「なにそれ、鳥のおもちゃ?」
しんのすけ「カラス?」
かざま「鷹さ、鷹は権力の象徴なんだ」
かざま「僕はとにかく偉くなるよ、今の世の中出世しない事には何もできないからね」
ネネ「夢がないわねー」
かざま「夢だけじゃ食っていけないよ」
マサオ「そのおもちゃ高そうだけどいいの?」
かざま「ははっ、そのうちこれぐらいのおもちゃはいくらでも買えるようになるから大丈夫だよ」
かざま「じゃあ次はマサオ君」
マサオ「ぼ、僕は……これ!」
ネネ「ペン?」
マサオ「うん!僕は漫画家になるんだ!」
かざま「へぇ、凄いじゃないか」
ネネ「この前描いたやつひどい出来だったけどね」
マサオ「そ、そんな事ないよ!」
かざま「でも漫画家って成功できるのはほんの一握りだから、マサオ君には厳しい思うよ」
マサオ「そんなぁ……」
しんのすけ「でもマサオ君ならきっとなれるゾ」
マサオ「しんちゃん!」
しんのすけ「落語家さんに」
マサオ「漫画家!ぼく寄席なんてできないよ!」
かざま「次はネネちゃん」
ネネ「私はこれよ!」
マサオ「ネネちゃんの写真?」
ネネ「そっ!サイン付きのね!今のうちに一枚もらってく?凄い値打ちになるわよきっと」
かざま「ネネちゃんは芸能人になりたいのかい?」
ネネ「女優よ!最初はアイドルとして売り出して女優にシフトしていくの」
しんのすけ「おお!ひょっとしたらマサオ君の描いた漫画がドラマ化した時にネネちゃんが主演になるかもしれないゾ!」
ネネ「マサオ君なら昔のよしみで友情出演してやってもいいわよ」
マサオ「ネネちゃんはちょっと……」
ネネ「何よ!」
マサオ「ひぃぃ!」
かざま「次はボーちゃん!」
ボー「僕はこれ」
ネネ「何よこれ?」
かざま「これは……蓄音器?」
ボー「そう、僕の作った小型の蓄音器」
マサオ「凄いや!こんなの作れるなんて!」
ボー「僕は発明家になる、そしてみんなが幸せに暮らせる発明をたくさんする!」
マサオ「なれるよ!ボーちゃんなら!」
しんのすけ「テレビから綺麗なおねーさんが飛び出るテレビ作って欲しいゾ」
ボー「頑張る」
かざま「最後はしんのすけだぞ」
しんのすけ「オラはこれ!」
かざま「アクション仮面のメガネか」
しんのすけ「おお!オラはアクション仮面になるんだ!」
ネネ「馬鹿ねー、アクション仮面はこの世に存在していないのよ?」
しんのすけ「そんな事ない!アクション仮面はいるー!」
かざま「あれはフィクションの話であって……」
しんのすけ「いる!アクション仮面はいる!」
しんのすけ「オラはなる!正義の味方になってやるんだー!」
しんのすけ「……」
部下「起きましたか野原刑事」
しんのすけ「寝てしまっていたのか……すまんな」
部下「いえ、仕事ですから、着きましたよ」
部下「何やら楽しそうな顔してらっしゃいましたけど、どんな夢だったんですか?」
しんのすけ「子供の頃の夢さ……」
部下「野原さんにも子供の時があったんですか?」
しんのすけ「馬鹿言ってねえでいくぞ」
部下「へい」
ピンポーン
四郎「誰だよ……今いいとこだったのに……」
ガチャッ
部下「動くな!警察だ!児童ポルノ所持の疑いで逮捕する!」
四郎「!?」
しんのすけ「パソコンを持っていけ」
警官「はい!」
四郎「……しんちゃんか?」
しんのすけ「……」
四郎「やっぱしんちゃんだよな!?いやー俺だよ!またずれ荘にいた四郎だよ!」
四郎「大きくなったなー」
しんのすけ「……」
四郎「なぁ……昔のよしみで何とか見逃してもらえないか?」
しんのすけ「……」
四郎「娘がもうすぐ中学なんだよ……今逮捕されるとさ……」
しんのすけ「駄目だ、罪は罪だ」
四郎「おい、冷てえなぁ、ちったぁ気ぃ利かせてくれても……」ガシッ
しんのすけ「連れていけ」バシッ
四郎「え!?」
部下「こい!このロリコンめ!」
四郎「ちょ、ちょっと!?しんちゃん!おい!?」
しんのすけ「……ふぅ」
部下「野原さんの知り合いだったんですか?」
しんのすけ「俺は小さい頃一時期小汚いアパートに住んでてな……そん時の隣人だ」
部下「意外ですね、そんな所に住んでいたなんて」
しんのすけ「それもとびっきりのボロアパートだぞ、壁に穴が空いていてな……」
カランカラン
マサオ「へいらっしゃい!あっ!」
しんのすけ「おう」
マサオ「しんちゃん!」
マサオ「あっ、野原さんって呼んだ方がいいかな?」
しんのすけ「昔のままでいいよ」
マサオ「何にする?しんちゃん」
しんのすけ「熱燗と何か適当にくれ」
マサオ「へい」
しんのすけ「……」グビッ
マサオ「久しぶりだね、しんちゃんが交番勤務の時以来かな?」
しんのすけ「ああ、マサオが財布を落としたって言って交番に駆け込んできて以来だな」
マサオ「ごめんねあの時は」
しんのすけ「今度からはポケットの中を確認してから交番に行ってくれ」グビッ
しんのすけ「この店、マサオのか?」
マサオ「まあね」
しんのすけ「凄いじゃないか」
マサオ「そんな、もともとは嫁のお父さんのお店だよ」
しんのすけ「もう漫画は描いてないのか?」
マサオ「うーんと……同人ってやつはまだ描いてる」
しんのすけ「昔少年誌で連載してたよな?」
マサオ「知ってたか」
しんのすけ「読んでたよ、ファンだったんだぜ」グビッ
マサオ「10週打ち切りだったけどね」
テレビ『ちょっとこんなの食べられませんよぉー!』
しんのすけ「……」グビッ
マサオ「ネネちゃん頑張ってるよね」
しんのすけ「確かアイドルやってたと思ったんだがな」
マサオ「あまりテレビとかには出ていなかったね……芸人みたいになってからはたまに出てるけど」
しんのすけ「芸能界ってとこは大変そうだな」グビッ
マサオ「あ、そうだ、これ知ってる?」コトッ
しんのすけ「何だいそりゃ」
マサオ「ボーちゃんの発明品だよ、超高速ぶどうの皮剥き機」
しんのすけ「へえ、今はこういうの作ってんだ」
マサオ「工場で使ういろんな機械の設計をしているんだって、凄いよね」
しんのすけ「みんなそれぞれの道で頑張っているんだな……」グビッ
しんのすけ「そういやかざまは今何してんだ?」
マサオ「……」
しんのすけ「マサオ?」
マサオ「さ、さあ、分からないな……しんちゃん知ってる?」
しんのすけ「小学校の時から今まで会ってねえな」
マサオ「そう……元気にしてるかな……かざま君……」
しんのすけ「今頃はどこぞの大企業の幹部にでもなっているんじゃないか?」
マサオ「はは、偉くなるんだって言ってたしね」
しんのすけ「つくねもう一本」
マサオ「あいよ」
車の中
しんのすけ「……」
部下「次の児童ポルノ所持疑いの家に行きましょうか」
しんのすけ「こう毎日毎日だと嫌になるな」
部下「仕事ですよ」
しんのすけ「……なあ、お前アクション仮面って知ってるか?」
部下「あくしょんかめん?何ですかそれ?」
しんのすけ「知らないのか……俺も歳をとったな……」
部下「ヒーローものですか?今やすっかり萌えアニメばかりでそういうの無くなっちゃいましたね」
しんのすけ「ガキの頃の夢、覚えているか?」
部下「んー、すっかり忘れてしまいましたね、毎日忙しくて、野原さんは?」
しんのすけ「……俺も忘れちまったよ」
部下「次は組織たって児童ポルノの製造、販売をしている秘密工場です」
しんのすけ「秘密工場とは嫌んなるねぇ」
部下「はい、児童ポルノの世界では知られた組織みたいです」
部下「特にリーダーがポルノに関して高い知識をもった人物で……」
しんのすけ「はぁ……」
ばんっ!
部下「警察だぁ!動くな!」
ズキューン!
しんのすけ「!?」
『児童ポルノの製造、販売を指揮していた犯人が警官の銃を奪って逃走、繰り返す』
『児童ポルノの製造、販売を指揮していた犯人が警官の銃を奪って逃走』
『なお、負傷した者はゼロ、銃の携帯許可が……』
「はぁ……はぁ……」
「この辺は細かい路地になっている、逃げるぞ……」
しんのすけ「みーつけた」
「!?」
しんのすけ「かざま君」
かざま「……」
かざま「……お前か」
しんのすけ「鬼ごっこは終わりだ、かざま君」
かざま「……どけ」チャキッ
しんのすけ「はは、まだそういうの持っていたのか、懐かしいな」
しんのすけ「子供の頃は水鉄砲でびしょびしょになるまで遊んだね」
かざま「これは本物だぞ!どけ!死にたいのか!?」
しんのすけ「マサオ君が必ず転んで泣いちゃうんだよなぁ、ネネちゃんがさらに泣かして」
かざま「どけぇ!」
しんのすけ「……」
ズキューン!
しんのすけ「せいっ!」
かざま「!?」
ドシャーン!
しんのすけ「お相撲ごっこか、久しぶりだな」
かざま「このっ!」
バキッ!
しんのすけ「……!」
ドガッ!
しんのすけ「偉く……なるんじゃなかったのかよ?」
ガスッ!
かざま「……っ!」
しんのすけ「とにかく偉くなって!出世するんじゃなかったのかよ!?」
バキッ!
かざま「……が」
ドガッ!
かざま「何が分かるんだよ!?」
ガスッ!
かざま「お前に何が分かる!ろくすっぽ苦労なんてした事のないお前に!」
バキッ!
かざま「僕の何が分かるって言うんだよぉぉぉぉ!」
パシッ!
かざま「!?」
しんのすけ「……何があったか知らないけど」
しんのすけ「諦めた時点でかざま君の負けだゾ!」
ドシャーン!
かざま「はぁ……はぁ……」
しんのすけ「はぁ……はぁ……」
かざま「……出頭……するよ……」
しんのすけ「……ありがたいよ……ぜぇ……」
かざま「でも……その前に……寄っていきたい場所があるんだ……」
しんのすけ「……」
かざま「……」タタタ
しんのすけ「……」
部下「野原さん!?犯人が!?」
上司「いや、奴は戻ってくるよ」
部下「え!?」
空き地
しんのすけ(まだ空き地だったのか……)
しんのすけ(……掘り返した跡がある)
ザッザッ
しんのすけ「……」
『しんのすけ、頭の良いお前の事だ、これを読んでいるだろうな』
『ちゃんと警察に行って罪はちゃんと償うから安心してくれ、もし僕が逃げたらお前の責任問題だからな』
『警察に行く前に、どうしてもここに来たかった、あの頃の気持ちをもう一度思い出したかった』
『お前の宝物、少しの間だけ借りるぞ、許せ』
しんのすけ「ふふ、オラのアクション仮面のメガネがないゾ」
『―――なあしんのすけ』
『アクション仮面はいないって昔お前に言った事覚えているか?』
『大人になってそれが真実だってさらに強く思った、だから』
『こんな正義のヒーローのいない世界では』
『誰かが正義のヒーローにならなきゃいけないんじゃないのかな』
おわり
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こち亀のパクリじゃねえか
そーなんだ!Σ(・□・;)