清霜ストーリー (11)
☆注意事項☆
艦隊これくしょんの二次創作です。
書き溜めなんかありません。ノリです。
色気出して地の文とか入ります。くどいです。
キャラ崩壊とかがあります。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1420364512
人間、やればできるというけれど、私は人間じゃないかもしれないけれど、どうしようもないことってあるかもしれない。
……なんてことを考え始めたのはつい最近だ。
霞「やればできる、なんてのは無責任よ。できることをやらなきゃダメね」
霞ちゃんの身も蓋もない言葉が耳に痛い。
私だって頑張ってる。頑張っているけれど、頑張れば頑張るほど、学べば学ぶほど、なんとなく無理なんじゃないかなってことは増えてくる。
清霜「だけどさ、霞ちゃん。それでも私は戦艦になるんだよ」
だからこそ、私は言った。
言い過ぎていよいよ黒光りしてきた私の夢。
みんなが曖昧に笑って、それとなく矯正しようとしてくる私の夢を、けれど霞ちゃんは
霞「知ってるわよ」
と言ってくれる。
「頑張ってね」でも、「信じてるよ」でも、ましてや「無理」でも「諦めろ」でもなくて「知っている」
私が挫けそうになった時、どれだけこの言葉に救われているのか霞ちゃんは知らないだろうけれど、知っているかもしれないけれど。
だから私は、霞ちゃんのことが大好きなんだ。
霞「けど、今のあんたは駆逐艦なんだから、訓練や任務に身を入れないとダメじゃない。……ましてや、ほら」
そう言って、霞ちゃんは持っていたおにぎりを差し出した。
霞「ご飯を抜くなんて馬鹿のすることよ。持ってきたから食べなさいな。……頑張るのはいいけど、体壊したら困るのはあんただけじゃないんだから」
清霜「ありがとう! 大好きだよ霞ちゃん!」
霞「まったく、調子いいんだから」
清霜「ううん、大好きなのってほんとだもん! 大好き、大大好き! 知ってるでしょ?」
霞「うるさい、早く食べろ」
清霜「あはは、いただきまーす」
一口食べる。
すごくおいしい。
清霜「……けどこれ、ちょっと塩辛いよ」
霞「どうせ走りこみするんでしょ? 汗かくんだから塩分を取らないと」
清霜「たまにお母さんだよね、霞ちゃんって」
霞「……」
睨まれた。
黙って食べる。
霞「……それで、今日は何をしていたの?」
清霜「うん、ちょっとおさらいをね」
そう言って私は机の上に広げた兵棋演習図を見せる。
清霜「風速15メートルを想定して、15キロ先の敵に41センチ砲を初弾で命中させるために必要な……」
霞「わかったわかったってば。……まったく、能書きだけは一人前なんだから」
脳裏に浮かぶのは炎上しながら沈む敵深海棲艦。
机の上に広げた教本とにらめっこしながら何年もこつこつと続けた結果、砲撃の演算程度ならある程度できるようになっていた。
清霜「うん、陸上の私は最強の戦艦なんだ」
霞「そ、で? その戦艦様はこの前の演習はどういう結果だったの? あたし、まだ聞いてないんだけど」
清霜「……全弾命中だよ」
霞「妄想の話は聞いてない。駆逐艦として、どうだったのって聞いてるのよ」
清霜「……」
私は黙った。
たぶん、私が戦艦になっても一生霞ちゃんにはかなわないと思う。
試しに戦艦の私と駆逐艦の霞ちゃんを頭の中で戦わせてみた。
ほんの数秒でものの見事に撃沈されて私は少し凹む。
霞「……はぁ、それこそやれば出来るくせにどうしてやらないのかしら」
清霜「うっ。……早く戦艦に改装してくれたら活躍できるもん」
霞「機銃すらまともに扱えないのに戦艦になってどうするつもりなのよ。練習艦になりたいってんなら止めないけど」
清霜「そこなんだよねぇ……」
いくら理論上、というか空想上は無敵でも実戦で使い物にならなければそれは意味が無い。
そもそも、戦艦の主砲、副砲はおろか小さな巡洋艦が持つような20センチ砲だって、私には物理的に持てないのだ。
清霜「鍛え方が足りないのかな、どう思う?」
霞「ダメ。へろへろで出撃して、沈んだらどうするのよ」
清霜「そこは若さでカバー、とか」
霞「カバーするのは周りの人間。迷惑だから止めなさい」
清霜「……うーん、と……」
言葉に詰まる。
霞ちゃんは全然甘やかしてくれない。
けれどいつか見ててよ霞ちゃん、私が戦艦になったその時はきっと
と、来るべき将来に向けて意欲を高めようとしたその時、
霞「あ、そうそう。明石さんが探していたわよ」
と言った。
清霜「明石さんが? ……なんだろう」
霞「さぁ? 連れて来いって言ってたから、私も一緒に行く。どうせしょうもないことだろうから、あんたのキリがつくまでは待つけど、どうするの?」
ちらりと、机の上を見る。
清霜「ううん、待たせちゃ悪いし、行こう」
霞「そう。じゃあこっち」
そして私達は、明石さんの待つ工廠へと向かった。
思えばこの時、なにか適当な理由をつけて無視していればあんな事にはならなかったのかもしれない。
……なんて、思わせぶりなことを言ってみる私だった。
明石さんは気持ち悪いくらい笑顔だった。
明石「来たわね!! 会いたかったよ二人共! ナイストゥーミートゥユー!」
うわテンションたけえ。
嫌な予感メーターが振りきれる。
いつもは夕張さんと変な機械を作って遊んでるイメージ(失礼)だったけど、今日は明石さんが変だった。
いや、変なのはいつも通りか。
マッド・サイエンティストならぬマッド・エンジニアだもんこの人。
スパナとレンチを握り締めて危ない笑い声をあげる明石さんから一歩距離を取る。
霞「……」
うわあ、霞ちゃんなんてもう帰りたそうにしてる。
霞「じゃあ、私はこれで失礼します」
あ、やっぱり逃げ、逃げ……逃すか!
霞「……清霜、はなして」
清霜「やだ」
明石「もー、どうしたの?」
霞「清霜を連れてきたので帰ります」
明石「それは困る。用事があるのは君たち二人なんだから」
霞「は?」
明石「霞ちゃん言ってたじゃない。駆逐艦でも砲撃戦をまともにできるようになれないかって、それってようするに戦艦になりたいってことでしょ?」
清霜「え? それって」
霞「……主砲の改修が出来ないかって意味だったんですど」
明石「そうなの? あたしてっきり、また霞ちゃんはお節介を焼いたんだと思ったんだけど」
霞「……」
明石「まぁ可愛い駆逐艦の頼みとあっちゃあ工作艦としては頑張らざるを得ないよね。……というわけで作ってみましたのがコレ!!」
バーンと口で言って明石さんが何かを取り出した。
……いや最初から気にはなってたんだけど、なんだろうコレ。
ラグビーで使うようなヘッドギアに見えるけど
それにしては余計な部品がたくさんついててなんだか怖い。
なにより角なんだかアンテナなんだかわからないものの存在が怖すぎる。
明石「名付けて「妄想実現マシーン」!!」
霞「帰るわよ」
清霜「うん」
明石「待った!! 名前こそ如何わしいけどこれ、すごいのよ? ものすごいのよ?」
霞「あの、あたし達忙しいんですけど」
明石「これはね、クラインフィールドをあたしなりに解釈していい感じにマイナーチェンジして作った代物なの」
清霜「クラインフィールドって、霧の艦隊の?」
かつて一緒に戦った電脳少女たちと、そのオーバーテクノロジーを思い出す。
清霜「えっ、じゃあってことは、ひょっとして超重力砲とかそういうのが撃てるようになるんですか!?」
明石「いや、それは流石に無理だけど」
清霜「なんだ……」
明石「私が興味を持ったのはメンタルモデルの方」
清霜「メンタルモデル?」
明石「うん。彼女たちの存在を受けて、あたし達艦娘が直接戦わなくても済むようにってのが始まりだったんだけどね」
清霜「あ、じゃあつまり、戦艦のあたしが出せるってことですか?」
明石「いや、それも無理かな。彼女たちは言ってみればホログラムみたいなもので、実際に戦うのは人が乗る戦艦だったし」
清霜「……じゃあ明石さんは、何を作ったんです?」
明石「うん、電脳物資を実体化させることは無理だったけど、電脳空間で電脳物資を動かすことくらいはできるようにしてみたの」
清霜「えっと?」
明石「まぁ要するに、次元の壁を越えられるってこと。三次元から二次元に。現実からフィクションにね。もちろん、越えられるのは意識だけで、体がそのまま電子化したりはしないんだけど」
明石「まぁ、もっと簡単に言えば。簡単に明晰夢を見れる様になる機械とでも言うのかな」
明晰夢。
自分で夢であると自覚しながら見ている夢。
夢、か。
清霜「……なんか説明されればされるほど、スケールダウンして言ってる気がするんですけど」
明石「試作機だもん。けど、これを使えば間違いなく戦艦になれるわよ」
心が揺らぐ。
夢の中とは言え、戦艦になれるってすごく魅力的に思える。
霞「……それならでも、あたしは必要なんですか? 夢を見るだけなら、あたしは必要ないと思うんですけど」
明石「ふっふっふ。ところがね、この機械のすごいところは他人の夢に入り込めるところにもあるのよ」
霞「他人の夢に? けど、それなら明石さんでもいいじゃないですか」
明石「あたしじゃダメなのよ。上手く説明できないけど、あたしはまだ清霜ちゃんとそこまで仲良くなれてないから、きっと弾かれてしまうわ」
霞「あ、そ。仲が良くないとダメなのね。……じゃああたしも弾かれるんじゃないかしら」
清霜「それは大丈夫だよ! だって、私霞ちゃんのこと大好きだもん!」
明石「うんうん。やっぱり思った通り。……それにね、霞ちゃん」
霞「なんですか」
明石「見たいでしょ? 清霜ちゃんが戦艦になってるとこ」
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません