京太郎「ん？ ああ、これか？」

優希「は、ははは……ハゲだじぇ！」ﾋﾞｼｯ

京太郎「うっせータコス」

和「立派な五厘、ですね……」

咲「朝のセットに女の私でもちょっと引いちゃうくらい時間をかけ、日々のケアにも女々しすぎるくらい余念がなかったあの京ちゃんがどうして！？」

京太郎「お前もうるせーな」

久「まぁまぁ。それより、なぜなの須賀君？ 私も気になるわ」

京太郎「いや、実はですね……」

昨日・ヘアサロン姫松

赤阪「いらっしゃ～い。あ、須賀君お久しぶり～」ﾆｺﾆｺ

京太郎「あ、ども。ご無沙汰してました」

赤阪「あいかわらず男前やね～、元気してた～？」

京太郎「あはは、ぼちぼちってとこです」

赤阪「今日はカットなん～？」

京太郎「ええ、軽く梳いてもらう感じでお願いします」

赤阪「あ、じゃあちょうどええや～ん」

京太郎「？」

赤阪「漫ちゃ～ん。出番やで～」ｸｲｸｲ

京太郎（漫ちゃん？ 誰だ……）

漫「……呼びました？ 代行」

赤阪「ちょっと～、いい加減その“代行”呼びやめて言うたや～ん。オーナーって呼んでな、オーナー」ﾆｺｯ

漫「そんなことより、なんです？」

赤阪「あぁん、無視なんてひどいやん～」

漫「はいはい、わかりましたよ赤阪オーナー代行」

赤阪「漫ちゃんのイジワル～」ｸﾈｸﾈ

京太郎「あの……この方が今日のカット担当してくれるんですか？」

赤阪「あ、そうなんよ～。漫ちゃん、今日はいよいよ実戦いってもらうで～」

漫「えっ、アシスタントじゃなくてですか！？」

赤阪「せやで～、もう漫ちゃんも独り立ちするのにええ頃やと思うてな」

漫「で、でも！ 末原先輩はまだ私のこと……」

赤阪「あぁ末原ちゃんな～。あの子感情表現へたっぴやからな～」

漫「やっぱりやめときます。私なんかが……」

赤阪「まぁまぁ、漫ちゃん。最後まで話は聞いとくもんやで」

漫「……」

赤阪「意外に思うかもしれへんけど、あの子私の前ではよう言っとるんやで」

漫「な、なにをですか……？」

赤阪「漫ちゃんはもう立派なスタイリストや。青山行ったって通用するくらいの……ってな」

漫「せ、先輩……が？」

赤阪「せやで～」ﾆｺﾆｺ

漫「うぅ……せ、先輩ぃ……」ｽﾞﾋﾞｯ

京太郎「うぅ……いい話だなぁ」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

赤阪「さぁさぁ漫ちゃん。涙吹いて。お客様の前やで」

漫「……っ、はい」ｺﾞｼｺﾞｼ

赤阪「さ、見せたれや。漫ちゃん自慢の一か八かの爆発カットを……！」

漫「はいっ！」

京太郎「よしこい！」





京太郎「……え？ 爆発？」

赤阪「道具持ってき！」

漫「はい、代行！」ﾀﾞｯ

赤阪「オーナーな」ﾆｯｺﾘ

京太郎「あの、爆発って……」

赤阪「須賀君、ほら座って～。タオルまくで～」ｷﾞｭｯ

京太郎「あの、首に巻くのはいいんですけど……なんで目元まで？」

？？「これからちょっと色んな衝撃あるかもしれへんけどあんま気にしないでや～」

京太郎「し、衝撃？」

？？「だ、代行。準備できました」

？？「よっしゃ。今までの成果を存分に試すときやで漫ちゃん！」

？？「はい！」ﾁｬｷﾝ

京太郎（いやな予感しかしない……）

ｼﾞｬｷﾝｯ……ｼﾞｮｯｷﾝｯ……

京太郎「あ、あの……大丈夫なんですか？」

？？「大丈夫や。漫ちゃんを信じる私を信じる末原ちゃんを信じてや」

京太郎「末原って誰すか……」

ブフォンッ！！

京太郎「アチ、熱ッ！！ ッチャ！！」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ

？？「あ、ごめんなさい」

京太郎「い、いい一体今のはなんすか！？」

？？「ちょっとドライヤーが暴発しただけやで～。気にせんといて～」

京太郎（いや、気にするだろ！ 暴発って……）

ｼﾞｮｷｼﾞｮｷｼﾞｮｷｼﾞｮｷ……

京太郎（おいおい待てよ……切りすぎじゃないか？）

ブブ……ﾌﾞﾌｫｯ、ボヴォヴォヴォッ！！

京太郎「ちょッ！ 熱ィ、ﾁﾁッ、アツッ！！！ や、やめてっ！」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ

？？「大丈夫や！ 大丈夫やで須賀君！」ｶﾞｼｯ

京太郎「な、なにが大丈夫なんすか！！ ちょ、どいて、重っ！」

？？「漫ちゃん、まだ！？」

？？「もうすぐ、もうすぐです……あっ、きた！」

京太郎「……えっ」





ヴァｆッフォオオオオオオオオン！！！

ｼｭｳｩｩ……

京太郎「あ、ぁ……俺の髪が……」ﾁﾘﾁﾘ

漫「……い、たた」

赤阪「……いやぁ、凄い爆発やったわ～」

ｶﾗﾝｶﾗﾝ

末原「ただいま戻りまｓ……て、ぇえっ！！？」

漫「あ、先輩……」

赤阪「おっかえり～、末原ちゃ～ん」ﾆｺﾆｺ

京太郎「髪……俺の髪……」ﾊﾟﾗﾊﾟﾗ




末原「……代行……漫ちゃん？」ﾜﾅﾜﾅ

漫・赤坂「ヒエッ……」

末原「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい(ry」

京太郎「あ、はは……もういいですよ」

末原「ほんっっとうに、ほんっっっっっとうに申し訳ないです……！！」

京太郎「いいですって。本人たちも反省してるようですし」

漫「ｺﾞﾍﾞﾝﾅｻﾞｲ……」ﾍﾟﾀｯ

赤阪「ﾓｳｼﾊﾞｾﾞﾝ……」ﾍﾟﾀｯ

京太郎「ほら、ね？ ハハ」

末原「あの、本当によろしいのでしょうか。本来ならば慰謝料くらい請求されてもええ立場ですのに……」

京太郎「いいんです。そのお金はお店の修理にでも使って下さい」

末原「そ、そんなっ！」

京太郎「また来たときにカットは屋外で、なんて言われたら、この季節たまったもんじゃありませんからね」ﾆｺｯ

末原「す、須賀さん……っ」ｳﾙｯ

京太郎「それじゃ俺はこれで……」ｽﾀｽﾀ

末原（なんてええお人なんや……）





京太郎「ぁ……ふぁ、ぶえっくしょんッ！ ……頭さっぶ」ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

………………

…………

京太郎「……てわけっす」

久「……ねぇ、須賀君。一言いい？」

京太郎「へ？ なんすか？」

久「……バカなの？」

京太郎「なっ……バカとはなんすか！」

優希「いやバカだじぇ。大バカ犬だじぇ」

まこ「人が良いのとただの阿呆をはき違えちょる猿じゃな」

和「お人よしすぎて近いうち詐欺にでも遭いそうですね。念のため友達辞めてもいいですか？」

咲「京ちゃんと結婚する人かわいそう……産まれてくる子供もかわいそう」

京太郎「お、お前ら……な、なんでそこまで俺が言われなきゃいけないんだーッ！」

久「そ、そうね。髪を失った上に暴言まで吐かれちゃ須賀君のメンタルが持たないわ」

咲「そうだね、ごめんね京ちゃん。髪の毛早く生えてくるといいね」ﾖｼﾖｼ

まこ「ワカメ食べると伸びるのが早まるんじゃと。今度大量に送っちゃるけえ」

優希「髪の毛がなくなってもタコスが作れれば問題ないじぇ！」

和「そうですね、より無個性になった気がしますがそれはそれで問題ない気もします」

京太郎「お前ら……最大限慰めてるつもりなんだろうな。ありがとう。もういいよ」

咲「それはそうと、京ちゃん。今日は私たちを部室に集めてどうしたの？」

京太郎「あぁ、部長にはもう話してあるんだけどな……」

和「？？」

久「実は龍門渕から一緒におせち食べないかって誘われてるのよ」

優希「ええ～っ、私おせちキライだじぇ。正月はオードブルの方がいいじぇ」

京太郎「こいつ……」

久「ハハ、優希らしいわねぇ」

和「まったく優希は……いつまでたっても子供ですね」

優希「なにをっ！」

まこ「まぁ龍門渕のことじゃけぇ。そこらへんも抜かりないじゃろうて」

久「ま、そうよね」

優希「オードブルあるのか！？ タコスもか！？」

京太郎「ハギヨシさんが用意してくれてるだろ、たぶん」

優希「よっし、すぐ行くじぇ！ 今すぐ行くじぇ！」

和「節操ないですね。子供ですか」

優希「ふふん、子供じだじぇ♪ お子様だじぇ～♪」

和「開き直らないでください」ｺﾂﾝ

まこ「まぁ気晴らしにええじゃろ」

咲「私も賛成です」

久「満場一致ね。それじゃ、みんなで向かいましょうか。校門前に車つけてあるから、とりあえずそこまで行きましょ」

ｽﾀｽﾀ

和「そういえば部長、いつの間に免許取ったんですか？」

京太郎「あ、それ俺も気になってた」

まこ「3年はこの時期午前授業だけじゃろ？ じゃけえ授業が終わって部活が始まるまでの間、コツコツ教習所に通ってたんじゃと」

久「そゆこと」

咲「ホント抜け目ないですね、部長は」

久「はは、そんなに褒めないでよ～」

優希「でも車はオンボロだじぇ」

京太郎「とても女子高生が乗る代物とは思えないもんなぁ……」

久「はい、あんたたち荷台けってーい」

優希・京太郎「そんなぁ！」

まこ「ちゅーてもあんたともう一人以外は必然的に荷台じゃろうが」

咲「軽トラですもんねぇ、あはは」

和「染谷先輩、助手席どうぞ」

まこ「お、ええんか？」

和「はい」ﾆｺｯ

優希「咲さんの隣ゲットですわじぇ。ハァハァ」

和「……走ってる最中荷台から引きずりおろしますよ、優希」

優希「冗談、ジョーダンだじぇ、はっはっは」

久「ほらぁ、早く乗ってちょうだい。おいていくわよー」

優希「やっば。京太郎、踏み台になれ！」

京太郎「やなこった！」

優希「なにをぉーっ！」ｶﾞｼｯ

京太郎「あ、このっ、ひっつくなーっ！」

ｶﾞﾔｶﾞﾔ

久「んじゃ、しゅっぱ～つ！」

ﾌﾞﾛﾝﾌﾞﾛﾝ……

ここまで昨日の。こっからちょっと書きためてからまた来ます。

ｶﾞﾀﾝｶﾞﾀﾝ

和「咲さん、揺れ大丈夫ですか？」

咲「うん、平気。私ジェットコースターとか得意だから」

和（？？ どういうことでしょう？）

咲「あ、そうだ京ちゃん。寒くない？」

京太郎「はぁ？ そりゃ冬だしな、寒いだろ」

咲「そうじゃなくって。コ↑コ↑」

優希「んプッ、咲ちゃんハゲネタやめろし！ いい加減犬が可哀そうだじぇ。なぁ、ハゲ太郎？」ｹﾀｹﾀ

京太郎「……寒いですけど何か？」ｸﾞﾘｸﾞﾘ優希「いやああああ」

咲「あはは、気悪くしないでよ。私いいもの持ってきたんだから」ｶﾞｻｺﾞｿ

京太郎「ん、なんだよ」

咲「んしょ、と。はいこれ、じゃじゃーん！」

京太郎「あの……それは？」

咲「カツラだよ。ハロウィンのとき使ったやつなんだけど、さっき偶然見つけて。これで寒さも凌げるでしょ？」

和「ｯﾌﾟ、咲さん、それ……アフロじゃないですか。それもレインボー……ﾌﾟﾌﾟ」

優希「ぎゃははっ、傑作だじぇ！ 京太郎、被ってみろ！！」

京太郎「……」ｽﾎﾟｯ

咲・和・優希「あはははっ！」

京太郎「ふんっ！」ﾋﾞﾀｰﾝｯ

咲「ああ、なにすんのもう。せっかく似合ってたのに」

京太郎「うっせー、余計なお世話だ」ﾌﾟｲｯ

和「お、怒っちゃいましたね。からかいすぎたかも……」

優希「けど傑作だったじぇ。GJ咲ちゃん」

咲「似合ってると思うんだけどなぁ……」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

ｶﾞﾔｶﾞﾔ

久「なんか後ろ騒がしいわねぇ」

まこ「ホンマ元気ええのう。こんな寒いっちゅーのに」

久「若いっていいわねぇ」

まこ「そうじゃな。女子大生はもうオバサンじゃもんな」

久「むかっ。まだ高校生ですぅー。オバサンじゃありませんー」

まこ「おのれはガキか。じゃがまぁ、そろそろあんたがいなくなった後のことも考えにゃならんのう」

久「私がいなくなった後のこと？」

まこ「後ろでギャーギャー騒いどるあいつらの面倒じゃて。あとはまぁ、新入り獲得もせんと今後部を存続させるのは厳しいかもしれんしのう」

久「へぇ、色々考えてるのね。さすが新部長さん」

まこ「茶化すな。他にもあんたが散らかしてくれた諸々の尻拭いでこちとらいっぱいいっぱいじゃ」

久「あはは、ごめんなさいね。けどあなたが後輩でいてくれてホントに助かったわ」

まこ「ホンマかどうか疑わしい発言じゃのう……」

久「ホンマよホンマ。だって卒業することへの不安がないもの。心残りはあるけどね。かわいい後輩と別れなくちゃいけないっていう」

まこ「まったく、調子のいいことばっか言いおって……」

久「あれれ？ もしかしてまこ照れてる？ あはは、カワイイやつめ。この、この」ﾂﾝﾂﾝ

まこ「照れとらんわ！ やめんか、やめ……っ」

久「ふふ、ありがとね。期待してるわよ、まーこっ」ｷﾞｭｯ

まこ「ば、バカたれ！ 運転に集中せんかい！」

久「え……？ ああっ！！ おわっと！」ｷｷｨ

「う、うわーっ！」「ひぇえ！」「な、なに！？」「し、死ぬかと思ったじぇ！」

久「あ……はは、やーばかったぁ……あぶねあぶね」

まこ「ほれ、言わんこっちゃない！」

久「なはは、ごめんてば。ごめん」

まこ「ったく……ところであんた、こっちの道であっとるんか？ 偉く険しい道じゃが……」

久「ううん、わかんない。私カーナビないとてんでダメだから」ﾃﾍﾍﾟﾛｯ

まこ「アホゥ！ それを先に言わんかい！」

大凡1時間後

京太郎「なんかおかしくねえか。時間的にはもうついててもいい頃だろ」

優希「というかここどこだじぇ。いつまで経っても辺り一面林だじぇ」

咲「迷ったのかな……う、さむっ」ﾌﾞﾙﾙｯ

和「咲さん、上着どうぞ」ﾇｷﾞﾇｷﾞ

咲「そんな、悪いよ。和ちゃん着てて。寒いのはみんな同じなんだし」

和「そ、そうですか……それじゃ少し身を寄せ合いましょう。あったかくなりますよ」

咲「そうだね」ﾑｷﾞｭ

和「さ、咲さん！？///」

咲「あれ、ちょっと寄せすぎた？」

和「え、いえ！ とんでもない。そ、それじゃ私も……えいっ！」ﾑｷﾞｭ

咲「ん、ちょっとあったかくなった……かな？」

和「そ、そうですね……咲さん///」ﾄﾞｷﾄﾞｷ

優希「……のどちゃん下心丸出しだじぇ」ｼﾞﾄｰ

和「う、うるさいです優希。羨ましいなら優希もこっちきたらどうですか」

優希「べ、別に羨ましいとは言ってないじぇ。な、京太郎？」ﾑｷﾞｭ

京太郎「あ、頭が寒い……」ｶﾞﾀｶﾞﾀ

和・優希「……ｯﾌﾟ」ｸｽｸｽ

咲「やっぱりさっきのカツラ貸そうか？」ｽｯ

京太郎「ああ、頼む……」ｽﾎﾟｯ

和・優希「ｯ……」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

ｷﾞｭﾙﾙ……ｷｨ

咲「……あれ、止まった」

和「どうしたんでしょうか……まさかガス欠？」

優希「え、縁起でもないこと言うんじゃないじぇのどちゃん……」

和「ご、ごめんなさい……けど」

京太郎「俺、部長に聞いてくる！」ﾀﾞｯ

咲「あ、京ちゃん！」

ｺﾝｺﾝ

久「んんー……ん？」ﾁﾗｯ

京太郎（部長！ あ・け・て！）ﾌﾘﾌﾘ

久「ﾌﾞﾌｯｗｗｗｗ」

まこ「な、突然吹き出してなんじゃ！？」

久「ま、窓の外……ッ」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

京太郎（あ・け・て！）ｺﾝｺﾝ

まこ「ﾝﾌｯ……な、なんじゃおのれは！ 不審者か！」

ｶﾞﾁｬ

京太郎「どうしたんすか」

まこ「それはこっちのセリフじゃボケ」

京太郎「あ、この頭っすか？ 咲がたまたま持ってて。寒いんで借りただけっすよ」

まこ「そうかい」

京太郎「それよりも、どうして車止めたんすか？」

まこ「……じゃと。答えてやらんかい」

久「ち、ちょっと須賀君……ｯ、そ、その頭して真顔でこっち見ないで……ﾌﾟﾌﾟ……ｯ」

京太郎「うわ、ひでぇ」

久「ご、ごめんなさい。いやぁ、そのね……すごく言いにくいんだけど」

京太郎「な、なんすか？」

京太郎（うわぁ……やっぱり道に迷ったのか。あーどうすんだマジで……腹減ったよ俺）

久「実は……かなりマズい状況に追い込まれてるのよ」

京太郎「えっ……」

京太郎（そ、そんな深刻な事態なのか！？ たかだか道に迷ったくらいどうにでもなるだろ？ この日本で遭難なんてことあるわけないし……な、ないよな？）

久「どうか真剣に聞いてほしいの……あと、ここで聞いたことは咲たちには秘密よ」

京太郎（くそ、マジかよ……咲たちにすら話せないって、どんだけヤバいんだ？？）

久「じゃあ、心して聞いてね……」

京太郎「え、ぁ……」

京太郎（……いやいや、なにうろたえてるんだ俺！ 男・須賀京太郎、こんなピンチの時にこそしっかりしなきゃダメだろ！ そうだ。よし、まずは部長の話を……）

京太郎「……は、話してください」

久「ええ、わかったわ。その……あのね」

京太郎「……」ｺﾞｸｯ

久「実は……も、漏れそうなのっ」

京太郎「はい……え？ なにが？」

久「おしっｋまこ「言わせんわｯ！！」ﾊﾞｼｯ

京太郎「あ、あの……」

まこ「さすがに悪ノリが過ぎるわい」

久「いやぁ、だって須賀君いい反応するから」

京太郎「……」