ユミル「訓練兵になったら」 (100)

進撃のSSです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1420286470

キース「入団式を始める!」

ユミル「・・・」キョロキョロ

ユミル「いいですか?」

キース「なんだ!」

ユミル「なぜ私ひとりなんです?」

キース「志願者がいなかったからだ」

ユミル「ご冗談ですか?」

キース「冗談ならよかった」

ユミル「ていうことは本当ですか?」

キース「募集はしている・・・はずだ」

ユミル「そうですか(はず?)」

ユミル(どういうことなんだ?そんなに人気ないのか)

キース「壁が破られ人口が減ったしまったことも大きな影響だ」

キース「ただもう少し来てくれると思ったのだが・・・」

ユミル(じゃあ解散しろよ。というかするよな)

ユミル(ていうか帰ったら駄目なのか?)

ユミル「あのー」

キース「なんだ?」

ユミル「いや私一人だとさすがに解散ですか?」

ユミル(解散しようぜ)

キース「ただの一人でも希望者がいる限りその者の意志を尊重する」

ユミル(尊重してくれ)

キース「ひとまず貴様を歓迎しよう」

ユミル(歓迎されたー)

キース「まあここだけの話、貴様が来て助かったというところだ」

ユミル「・・・(私が帰ったらここはどうなるんだろう?閉鎖か?)」

キース「貴様がこなかったらもちろん閉鎖になるところだった」

ユミル(このハゲのおっさんは路頭に迷うのだろうか?)

キース「しっかりついてくるように」

ユミル(でもおっさんとずっと一緒もなー)

キース「貴様大丈夫か?気分でも悪いのか」

ユミル「いいえ大丈夫です」

ユミル(全然大丈夫じゃないですね)

キース「それでは適正試験を行う」

ユミル「はぁ」

キース「なんだその気の抜けた返事は!」

ユミル「はっ!申し訳ございません」

キース「ではついて来るように」

ユミル「はぁ・・・」

キース「んっ?」

ユミル「なんでもありません」

ユミル(まいったなぁ)

キース「これが適正試験をする器具だ」

ユミル「そうですかー(なんだこの手作り感のするものは)」

キース「貴様にはこれを使って立体機動の適正があるか試させてもらう」

ユミル「そうですかー(こんなん使ってわかるかよ)」

キース「なにか質問は?」

ユミル「これ私が落ちたらどうなります?」

キース「初めてやることで不安なのはわかるが」

ユミル(別の意味でな)

キース「始める前からそんな気弱でどうする」

ユミル(そういう意味じゃねーんだけど)

キース「大丈夫だ。きっと貴様ならやれる」

ユミル(あんまりそんな言葉かけないでくれって)

キース「なにせ今期唯一の志願した訓練兵だからな」

キース「期待させてくれ」

ユミル(期待しないでくれ)

キース「では装備をつけろ」

ユミル「こうっすか?」

キース「そうだ。様になっているな」

ユミル「そうっすか」

ユミル(なんだろう?これ遠くから見たらすげえシュールじゃないか?)

キース「いくぞ」

キュルキュルキュル

ユミル(うわっおっさんがハンドル回してる)

ユミル(ああこれで滑車が周ってロープで持ち上がるのか)

ユミル(ますますシュールだな)

ユミル(一生懸命ハンドルを回すおっさんと持ち上がる私)

ブラーン・・・

ユミル(ああ帰りたくなってきた。帰るとこなんてないけど)

キース「おお。うまくいっているな」

ユミル(うまくいっちゃったな)

キース「素質は十分だ」

ユミル(やべっ合格しちまう)

キース「ではそろそろ降ろすぞ」

ユミル「ちょっと待って下さい。私はまだやります」

キース「なぜだ?貴様はもう十分に成果を見せた」

ユミル「まだです。えーとその持久力です。それも大事でしょう?」

ユミル(失敗して落ちてやる)

キース「素晴らしい!その気概は認められるべきだな。では降ろすぞ」

ユミル「えっちょっと」

キュルキュルキュル

ユミル「受かっちゃいましたか?」

キース「ああもちろんだ」

ユミル「受かっちゃいましたか?」

キース「2回も聞くな」

キース「さあ食事だ。だか少し待て準備をする」

ユミル「はい・・・?教官が作るのですか?」

キース「ああ」

ユミル(ありえないだろ)

キース「貴様には部屋で待機してもらおうか」

ユミル「了解しました」

キース「鍵を渡しておく。戸締りはきちんとするように」

ユミル「はい(戸締り?)」

ユミル(ここか。部屋っていうか家、いや寮か)

ユミル(何十人もいられる寮だ。かつてはそうだったんだろうけどさ)

ユミル(いまは誰もいねーよな)

ユミル「失礼します」ガチャ

ユミル「・・・」スタスタ

ユミル「誰かいませんか」

ユミル「・・・」スタスタ

ユミル「誰もいないのか!」

ユミル「・・・」スタスタ

ユミル「誰もいねーな!」

ユミル「よっしゃ!超広いぜ」

ユミル「毎日違うベットで寝てみようか」

ユミル「枕だけは同じで日替わりで」

ユミル「どうだ羨ましいだろ」

ユミル「・・・」

ユミル「はぁー(することねーな)」

ユミル「なんか逆立ちしたくなってきたな」

ユミル「よっ」バッ

ユミル「おー反対だ。ははっ素晴らしい世界だ」

ユミル「ならばこの世界は私のものだ。この部屋のように」

ユミル「何もかもが思いのまま」

ユミル「このたくさんのベットも私のものだ」

ユミル「掃除や洗濯が大変だぞ。どうすんだよ」

ユミル「あのおっさんと私で洗濯か?めんどうだな!」

ユミル「めんどくさいよ。あーもっと小さい部屋が」

ユミル「もっと・・・」

ユミル「・・・それよりも手が疲れた」

バタン

ユミル「あー埃が舞ってる。星みたいだ」

ユミル「綺麗だ。喉にダメージを負うぞ」

ユミル「はー(誰かに見られていたら死にたくなるな)」

ユミル「じゃあ次は枕を投げよう」

ユミル「じゃあってなんだよ」

ユミル(独り言ばかりだ)

一時間後

ユミル「こう手首のスナップを効かせたほうがいいか?」シュッ

ユミル「いや掴む箇所が重要か」

ユミル「さすればコントロールとスピードを両立できるであろう」

ユミル(・・・なんか空しくなってきた)

ユミル「今更かよ!」

ユミル(・・・一人ツッコミ)

ユミル「ははっ」

ユミル「駄目だ」

ユミル(食堂ってどこだっけな)

ユミル(あそこだ明かりが点いている)

ユミル(ここも広い)

ユミル「教官飯手伝います」

キース「貴様か・・・」

キース「初日くらいはとおもったのだが」

ユミル(明らかに悪い手際だ)

キース「やはりうまくいかないものだ」

キース「頼むとするか」

ユミル「暇なんでもちろん」

キース「ではいただくとしようか」

ユミル「ええそうですね」

ユミル(そういえばこんな風に食事するのっていつぐらいだ?)

キース「おい貴様」

ユミル「はい?」

キース「なぜ訓練兵に志願したのだ?」

ユミル「お言葉ですがなぜ教官は教官をやられているのですか?」

キース「そうだな」

ユミル「すみません」

キース「しかし今度は街で食事を買ってくることも考えなくてはな」

ユミル「やっぱ美味くないですよね」

キース「まったくだ。貴様も私もこれに関しては」

ユミル「もっと訓練します」

キース「ああ。訓練あるのみだな」

キース「明日からは本格的に訓練を始める」

ユミル「はい」

キース「今日は早く休みをとれ」

ユミル「あっはい」

キース「・・・寮いや部屋は問題ないか?」

ユミル「えっあー問題ありません」

ユミル「ただ・・・」

キース「ただ?」

ユミル「広すぎて嫌なんです」

キース「なぜだ?」

ユミル「えっ・・・それは」

ユミル「いやなんてゆうか」

ユミル(寂しい?そんな訳ないだろ)

ユミル(今までずっと一人だったろ)

キース「まあいいだろう。考慮しておくが」ガタッ

ユミル「あっ片付けやります」

ユミル(考慮ってなにすんだ?)

キース「戸締りはきちんとするように」

ユミル「ここら辺そんなに治安悪いのですか?」

キース「どうしてそう思う?」

ユミル「教官が戸締りをしきりに言われるので」

キース「最近どうも盗みが起きているようだ」

ユミル「ここでですか?」

キース「そうだ」

ユミル「訓練兵といえど兵団の組織なのにそこで盗みを働くって」

キース「うむ。しかし起きている。貴様も気をつけるように」

ユミル「はい。ちなみに何が盗まれているのでしょう」

キース「主に食料だ」

ユミル「食料っすか。それって動物とかの可能性もあるんですかね?」

キース「まだわからん。だが用心するに越したことは無い」

キース「ではまた明日だ」

ユミル「はーい」

キース「『はい』だ」

ユミル「はい。食器は置いといていいんで」

キース「うむ」

ユミル「これとこれを洗って」

ユミル「はぁ・・・どーなんのかな私は」

ユミル「どーにかなんのかな」

ユミル「まいったなぁ」

ユミル「飯まずいし」

ユミル「いや私が作ったんだって」

ユミル(相変わらず多い独り言)

ユミル「寂しい」ボソッ

ユミル「あっ言ってないぞ言ってないからな」

ユミル(誰に言い訳してんだ)

ユミル「そうだ朝飯軽く作っておくか」

ユミル「材料は余りもんでいいだろ」

グツグツ

ユミル(今日私がやったことはぶら下がって逆立ちして料理して)

ユミル(ああ枕も投げたな。明日はもっとスピンをかけてみるか)

ユミル(どうでもいいよ)

ユミル「はぁ・・・出来たし寝るか」

ユミル「ない!」

キース「なんだ?なにが起きたんだ?」

ユミル「あっ教官見て下さいこれを」

キース「皿だが?」

ユミル「いや違うんです。昨日の夜作って置いた飯が」

キース「ほう気が利くな」

ユミル「あっどうも」

ユミル「いや違くて無いんすよ。飯だけきれいに」

キース「まさか」

ユミル「そう。そのまさかですよ」

キース「貴様無意識で食べてしまうほど腹ペコだったのか」

ユミル「えっ教官?」

キース「・・・」

ユミル(冗談いったつもりなのか?)

ユミル「そーなんですよ。最近育ち盛りで」

ユミル(のってみたけど)

キース「・・・そうか。以後気をつけるのだな」

ユミル(そんな反応かよ。よくわかんねーよ)

ユミル「とにかく飯どうします?材料もあんまりないっすけど」

キース「うーむ。街まで買ってくるしかあるまい」

ユミル「そうですか。じゃあちょっと準備してきます」

キース「なんの準備だ?」

ユミル「いやパジャマですから着替えます」

キース「いやそれはそれで問題だが貴様は訓練をしてもらう」

ユミル「えっ?訓練しますか?」

キース「訓練場をランニングだ」

タッタッタ

ユミル「マジかよ。マジか。くそっ」

ユミル「もう1時間以上走ってるぞ」

ユミル「もう何週目だ」

ユミル「どんくらい走ればいいんだ」

ユミル「早く帰ってきてこいよ」

ユミル「なんでもいいから」

タッタッタ・・・

ユミル(はぁ・・・もう限界だ)

キース「貴様」

ユミル「あっ教官これいつまで」

キース「よくやったな」

ユミル「へっ?」

キース「さぼろうとしたらいつでも出来たはずだ」

ユミル「あー」

キース「少し反応が怪しいがいいだろう」

キース「そうだ。貴様にこれをやろう。恐らく以前の訓練兵が持っていたものだ」

ユミル「なんですか?」

キース「これだ」

ユミル(ぬいぐるみ)

ユミル「ああやっと訓練終った」

ユミル(そんで今日も広い部屋だ)

ユミル「だるい」

ユミル「思わず口に出すほどに」

ユミル「さぼっちまえば良かったんだよ」

ユミル「なぁ?」

ユミル「・・・」

ユミル「それにしてもぬいぐるみ」

ユミル「ぬいぐるみなんて趣味じゃねーよ」ギュー

ユミル(なんか温い)

ユミル「良くやったなんて始めて言われたよ」ポンポン

ユミル「そうだろ?」

ユミル「・・・」

ユミル(今日も今日で誰かに見られたら死にたくなるな)

ユミル「どこかの誰かのぬいぐるみ」

ユミル「お前の前の持ち主はどんな奴かな」クルクル

ユミル「こんな綺麗なのにな。もったいねー」クルクルー

ユミル「あっ」

ユミル「値札だ・・・新品じゃん」

ユミル「ははっ」

ユミル「あっおはようございます」

キース「うむ・・・ん?」

ユミル「どうしました?あっこれ持ってきちゃいましたよ」

ユミル「ぬいぐるみ」

キース「なぜだ?」

ユミル「どうしてでしょうね」

キース「ん?」

ユミル「飯です。飯にしましょう」

キース「ああ。しかし倉庫の奥から引っ張りだしてきた甲斐があったものだ」

ユミル「あーそうですねー。それは素晴らしいことじゃないですか」

キース「?それにしてもたいした量だな。早くから起きて作っていたのか?」

ユミル「まあいいじゃないすか。細かいことは。お互いに」

ユミル「それより今日はどんな訓練です?」

キース「座学だ」

ユミル「座学」

キース「不満か?」

ユミル「いーえ」

キース「『いえ』だ」

ユミル「それっておかしくないですか?」

キース「確かにそうだな」

ユミル「ははっ」

ユミル「そうだ」

ユミル「後で街に買い物にいきましょう」

キース「いやそれは駄目だ」

ユミル「別に気にしませんよ」

キース「なんのことだ」

ユミル「ははっじゃあ訓練です。やってやりましょう」

キース「随分とやる気ではないか」

ユミル「そうですね」

ユミル(自分でも不思議だ。こんな単純な奴だっけ私は?)

キース「早く食べないか」

ユミル「はーい。はいはい」

キース「貴様は・・・まったく」

ユミル「お前も食うか」

キース「ぬいぐるみは食わんぞ」

ユミル「冗談ですって」

ユミル(とは言ったけど座学は眠い)

ユミル(でも私しかいないのに)ウトウト

ユミル(眠るわけには・・・)ウトウト

キース「では貴様復唱してみろ巨人の弱点とは何か」

ユミル(なんか言ってる弱点だって)

キース「どうした聞いてなかったのか!」

ユミル「それは眠気です!」

キース「・・・」

ユミル「あっ」

キース「・・・まぁあながち間違いでもないが」

ユミル(そっか)

キース「巨人の弱点とはこの通りうなじだ」カツカツ

ユミル(なんか描いてる)

キース「ここを抉ると・・・」カツカツ

ユミル「あのー教官それなんすか?」

キース「巨人だが」

ユミル「えーそんな巨人いますか?」

キース「何を言うこの本の通りだ」

キース「なにより私は本物の巨人を数多く見てきたのだぞ」

ユミル「その本見せて下さいよ」

ユミル(いや本は本物の巨人とそっくりだけど教官のは)

ユミル「下手っすねー」

キース「何!そんなことあるまい」

ユミル「いやいや私のほうが上手いっすよ」

ユミル「・・・」カキカキ

ユミル「・・・どうだ!」

キース「大して変わらん!」

ユミル「えっ全然違うって!この部分の陰影とか」

キース「うーむ」

ユミル「どうです。上手いでしょ?」

キース「まあまあだな」

ユミル(やった)

キース「だがやはり私のほうが上手いぞ」カツカツ

ユミル「書き足すのはずるいですよ。じゃあ私も」カキカキ

・・・

キース「はっ」

ユミル「どうしたんですか?」

キース「貴様どうしてくれる。もう夕刻だ」

ユミル「えー私に言われてもなあ」

キース「何の成果も得られなかったではないか」

ユミル「絵は上手くなりましたよ」

キース「・・・貴様が眠くならない講義としてはよかったが」

ユミル「ばれてましたか」

キース「1人しかいないからな」

ユミル「毎回こんなのにしましょうよ」

キース「調子にのるな。次からは厳しくするぞ」

ユミル「了解です。ていうかこれからどんな訓練があるんです?」

キース「基本は立体機動の訓練だ」

ユミル「まあそうですよね。他には」

キース「対人格闘訓練」

ユミル「誰とやるんすか?」

キース「・・・行軍訓練」

ユミル「1人で?」

キース「・・・雪山行軍もあるぞ」

ユミル「死にます」

キース「・・・」

ユミル「どんまい。私と教官」

キース「せめてあと1人いたら」

ユミル「まあまあ」

ユミル「雪山行軍とかは春になってからいきましょう」

ユミル「弁当とか持って」

キース「もはや雪山でも行軍でもないぞ」

キース「馬術とかもあるからな」

ユミル「はいはい飯にしましょうね」

ユミル「ほらっ食堂へ行きましょう」

キース「教室の片付けがまだだ」

ユミル「いいです。この絵を消すのはまた今度で」

ユミル(なんでかもう少しだけ残して置きたいんだ)

ユミル「時間が掛かるから部屋で待っててもいいっすよ」

キース「いや私も少しはやろう」

ユミル「どーも」

ガタッ

ユミル「!?誰だっ!」

ユミル「教官!あいつ裏口から逃げる」

キース「とにかく追うぞ!」

ユミル「はい!」

ユミル(くそっ何て速い奴)

ユミル「てめえ誰なんだ!」

ユミル(暗くてよく見えねーし)

ユミル(教官はまだか)

ユミル「お前か!この前飯盗ったのは!」

ユミル「返せよ!折角作ったんだぞ」

キース「なにを言っている」

ユミル「あっ教官」

キース「もう気配はないようだ」

ユミル「ええ。全然追いつけなかった」

ユミル「くそっ」

キース「・・・明日からの訓練は」

ユミル「はい?」

キース「立体機動を中心に行う」

ユミル「え?あっはい」

ユミル(立体機動を使ってあいつを捕まえるのか)

キース「訓練兵とは言え兵団の一部だ」

キース「それに喧嘩を売っているのだぞ」

キース「目に物を見せてやる」

ユミル「はい!」

数日後

キース「だいぶ上達したようだな」

ユミル「そりゃもうずっとやってますからね」

ユミル「でも」

ユミル「飯はあいつに食われっぱなし」

キース「皿は返してくれるが」

ユミル「しかも洗って」

ユミル「なめられてるんですよ」

キース「皿だけにか」ボソッ

ユミル「・・・はい」

キース「すまない」

ユミル「いやいいんすよ」

ユミル「それよりも今日こそは捕まえてやりましょうね」

キース「うっうむ」

ユミル「なんですか。私すげー訓練頑張ったからいけますって」

ユミル「訓練兵団の力を見せてやります!」

サシャ「あのーここって訓練兵団なんですか?」

ユミル「そうだよ」

サシャ「そうなんですかー」

ユミル「ってお前誰だー!」

サシャ「私はサシャです」

ユミル「知らねーよこのガキ。何でここにいるんだよ」

サシャ「お皿返しにきました」

ユミル「おっおう。いや違うお前まさか」

サシャ「はい?」

ユミル「食べ物泥棒!てめえご飯返せ」

サシャ「えっ?えっ?」

キース「やめるんだ」

ユミル「なんで!?」

サシャ「ご飯返せません!」

ユミル「はっ?」

サシャ「食べてしまいましたから」

ユミル「泥棒のくせにいい度胸だ。教官こいつどうします?」

サシャ「泥棒じゃありませんって」

ユミル「うるせえ」

サシャ「だって」

ユミル「だってじゃない。教官なんか言ってくださいよ」

サシャ「その人に」

サシャ「いつでも好きなときに食べにきていいって」

ユミル「教官?」

ユミル「・・・教官が!?」

キース「・・・」

サシャ「きょうかん?変わった名前です」

サシャ「私がお腹を空かしてさまよっていたら」

サシャ「そのきょうかんさんが1人でご飯を食べてまして」

サシャ「窓からずっと見てました」

サシャ「そしたらなんと残ったご飯をくれました」

サシャ「やりました。幸せです」

ユミル「わかんねー答えだな」

ユミル「・・・教官どういったことっすか?」

キース「あまりにも腹を空かしている子供がいて」

キース「食事を渡したら余りにもうまそうにくっていたのだ」

キース「だからついな」

ユミル「いやまあそれはいいんすけど」

サシャ「あのー」

ユミル「なんだよ飯ねえぞ」

サシャ「さっきも聞きましたがここって」

サシャ「訓練兵団ですか?」

サシャ「ただのご家庭かと」

ユミル「はっ?どこをどう見たら」

サシャ「食事を作ったり絵を書いたり遊んだりしてますもん」

ユミル「うー」

サシャ「というか二人で訓練兵団なんですか?」

ユミル(言い返せない)

キース「そうだ。今年は志願兵が少ないがな」

サシャ「でしたら私も訓練兵団に入れてください」

ユミル「何言ってんだお前」

キース「構わんぞ」

ユミル「そうだって何言ってるんですか?」

サシャ「ありがとうございます」

サシャ「お父さんに言われて来ましたが」

サシャ「訓練兵団がどこにあるのかよくわからなくて」

サシャ「迷っていたんです」

サシャ「いやーまさかここが訓練兵団だなんて」

ユミル「本当かよ」

キース「不満か?」

ユミル「そんなんじゃねーすけど」

ユミル「わからないのはなんで捕まえようなんて嘘を」

キース「訓練に身が入ると思ってな」

ユミル「それだけ?」

キース「すまないがそうだ」

キース「しかし貴様を甘く見ていたな」

キース「優秀だ。ここ何日かの訓練でそう思ったぞ」

ユミル「・・・はい。どうも」

サシャ「やっぱり仲良いですねえ」

サシャ「いやー食べましたー」

ユミル「食いすぎだ。食料なくなったじゃねーか」

サシャ「買いに行きましょう」

ユミル「教官がいいっていったらな」

ユミル「こいよ。部屋に案内してやる」

サシャ「はい」

ユミル「お前さ」

サシャ「はい?」

ユミル「なんでこの前は逃げたんだよう」

サシャ「顔が怖いんですもん」

ユミル「・・・怖くねーし」

サシャ「お名前は?」

ユミル「ユミルだ」

サシャ「ユミルさんよろしくお願いします」

ユミル「気持ちわる。ユミルでいい」

サシャ「はいユミル」

サシャ「わぁ広い部屋です」

ユミル「そうだろ」

サシャ「ベットもたくさん」

ユミル「好きなとこ使えよ」

サシャ「ユミルはどこで」

ユミル「んー」

サシャ「あーあそこですね。枕が山のように」

サシャ「なんでですか?」

ユミル「育ちがいいから枕がたくさんないとな」

サシャ「そうですか。じゃあクマさんのぬいぐるみは?」

ユミル「・・・もらいもん」

サシャ「かわいいです。誰からです?」

ユミル「教官から。いっとくけど倉庫にあったやつだからな」

サシャ「へえ」

サシャ「触らせてください」

ユミル「いいよ」

サシャ「・・・」モフモフ

サシャ「貸してもらってもいいですか?」

ユミル「駄目」

サシャ「ケチです」

ユミル「寝ろ」

サシャ「はい」

サシャ「じゃあ私はここで寝ましょう」

ユミル(隣かよ)

サシャ「ユミル枕下さい」

ユミル「ほらよ」

サシャ「わぁ投げないでくださいよ」

ユミル「なんで隣なんだよ」

サシャ「いいじゃないですか」

サシャ「ねえユミル」

ユミル「うるさいなぁ」

サシャ「誰かが隣にいるっていいですねえ」

サシャ「安心です」グウ・・・

ユミル「それは・・・そうかもな」

サシャ「あっこれ見てくださいユミル」

ユミル「なんだよ」

ユミル(結局街で買出しだ)

ユミル「私のときは駄目っていったじゃないですか」

キース「まあそう言うな」

サシャ「ユミルユミル」

ユミル「あいつ街に来るの初めてなんすかね」

ユミル「はしゃいでる」

キース「よほど山奥からきたそうだな」

サシャ「美味しいですよー」モグモグ

ユミル「(勝手に)食うなー!」

サシャ「へっ?」

ユミル「へっ?じゃねーよ。お前店のもん勝手に食うなよ」

サシャ「はい」モグモグ

ユミル「食ってるだろ」

サシャ「今日は恐らくなにかのお祭りです。だからきっと大丈夫です」

ユミル「あやふやすぎるだろ」

サシャ「えー?ユミルも教官もどうぞ」

ユミル「駄目だこいつ。教官もなんか言ってくださいよ」

キース「とりあえず3人分の代金を払うか」

ユミル「えー」

キース「仕方あるまい」

サシャ「良かったです。みんなで食べましょう」

ユミル「まったく甘いよな」

サシャ「怒っては駄目ですよ」

ユミル「お前のせいだから。だいたいさあ」

ユミル「あんな風に勝手に食って金も払わなかったら」

サシャ「払わなかったらどうなるんです?」

ユミル「そうだな・・・飯抜きの刑になるぞ」

サシャ「ほっ本当ですか?」

ユミル「ああ本当だ」

サシャ「そっそれは何食でしょうか!?」

ユミル「2食いや3食だ!」

サシャ「1日何も食べては駄目ですか!?」ガタガタ

ユミル「そうだ。教官が金払ってくれなかったら大変だったんだぞ」

サシャ「あわわ」

サシャ「あっあの」

キース「どうした?」

サシャ「すみませんでした」

サシャ「さっきは勝手にお店のものを食べてしまって」

キース「あぁ。繰り返されければ良い」

キース「知らなかったのだろう?街での生活が」

サシャ「すみません・・・怒っていますか?」

キース「いや」

サシャ「とにかくもうしません」

サシャ「ご飯抜きの刑はつらいですから」

キース「なんだそれは?」

サシャ「えっ?」

キース「誰から聞いたのだ?」

サシャ「ユミルです」

キース「ほう」

・・・

ユミル「怒られたじゃねーかよ」

サシャ「ユミルのせいですよ」

キース「そろそろ帰るぞ」

ユミル「へーい・・・おいサシャ帰るってよ」

サシャ「ユミルあれって」

ユミル「あれって?」

サシャ「あれユミルのと同じのです。クマさんのぬいぐるみ」

ユミル「ぐっ偶然だなー(ここで買ったのか?)」

サシャ「偶然ですかー・・・かわいいです」

ユミル「どうした?」

サシャ「買っちゃ駄目ですよね?」

ユミル「私達金ないしな。教官なら持ってるけど」

サシャ「でも」

ユミル「教官に言ってみるか?買ってくれるかもしれないぞ」

サシャ「いえユミルいいんです」

ユミル「なんだよお前らしくない」

サシャ「ユミルこそどうしたんです?さっきと違うじゃないですか」

ユミル「だって私だけじゃずるいみたいじゃん」ボソッ

サシャ「えっ?とにかくさっきみたいに迷惑かけちゃあ駄目です」

サシャ「ユミルも教官も困りますもん」

キース「帰るぞ!」

サシャ「はーい。今すぐ」

ユミル「・・・まいったなぁ。金ねえのに」

サシャ「今日も疲れましたぁ」

ユミル「お前座学のほうが疲れてんな。普通は逆だ」

サシャ「座学は駄目です。実技で生きていきます」

ユミル「あきらめ早いから」

サシャ「人生あきらめが重要です」

ユミル「あきらめが悪いほうがいいんだバカ」

サシャ「バカって言わないで下さい」

ユミル「お前気にしてたのかよ」

サシャ「バカじゃないです」

ユミル「悪かったって。お前だってやればできるよ」

サシャ「適当なこと言ってます?」

ユミル「半分くらいな」

サシャ「ひどい」

ユミル「半分は信じてるよ」

サシャ「だったらユミル勉強教えてください」

ユミル「んー悪いまた今度な」

サシャ「えー最近ユミル何やっているんです?ご飯食べたらすぐどこかにいってしまって」

ユミル「えーと。お前こそ何やってんだよ」

サシャ「私ですか?いやーそんなに私に興味ありますか」

ユミル「ねーな」

サシャ「聞いてくださいよ。興味もってくださいよ」

ユミル「じゃなんだよ」

サシャ「暇なんで大量の枕を投げて遊んでます。あと逆立ちしたり」

サシャ「面白いですよ」

ユミル「バーカ」

サシャ「ひどいです」

ユミル「もう少しいい子にしてたらいい事があるからさ」

サシャ「子供に言うみたいなこと言って」

ユミル「子供だろ?」

サシャ「今日はすぐに戻りましょうよ」

ユミル「そうだな・・・」

ユミル(えーとまず朝飯の準備して)

ユミル(あれの続きを作って)

ユミル(そういや課題もあったな)

サシャ「ユミル?」

ユミル「部屋の掃除くらいしろよ」

サシャ「なんですか」

サシャ「うーん」

キース「どうした?課題は終ったのか」

サシャ「終ってません。それはともかく」

キース「・・・なんだ?」

サシャ「最近ユミルが部屋に戻ってくるのが普段より遅いです」

キース「ほう。普段も遅いのか?」

サシャ「ユミルは晩ごはんの片付けしたりその後朝ごはんの準備をして」

サシャ「あと課題やったりしてから戻ります」

キース「貴様は手伝わないのか?」

サシャ「たまに。でも部屋で待ってていいって言うんです」

サシャ「教官。いい子ってなんでしょうか?」

キース「なぜそんなことを訊く?」

サシャ「いい子にしてればいい事があるってユミルが言うんです」

キース「いい子か」

サシャ「私はいい子でしょうか?」

キース「訓練兵としてはいい子ではない」

キース「座学の成績は良くなく。実技は命令を逸脱することが多い」

サシャ「はい・・・」

キース「しかし私は良い訓練兵に恵まれている」

サシャ「ユミルのことですか」

キース「いや2人をことを言っている」

サシャ「えっ?先ほどはそうじゃないって」

キース「貴様がいてどれだけ良かったと思えることがあったか」

サシャ「私何もしていませんよ?」

キース「それでもいい。きっともう1人の訓練兵もそう思ってる」

サシャ「はぁ。でもそれならとても嬉しいです」

キース「ただ願わくば」

キース「講義中に眠そうな顔ばかりして欲しくないものだ」

サシャ「はっはい。それは」

キース「そうだ課題はまだと言ったな。どうした?これからやるのか」

サシャ「ちょっちょっと部屋のお掃除をしてきます」タッタッタ

キース「ふふっ・・・らしくもないことを言うようになった」

キース「私が思うにその相手がいてどれだけ幸せかと思うこと。思われることが」

キース「できたなら。そんな世の中にしたかったが私はできなかった」

キース「あの二人にはできるだろうか?」

キース「いずれは絶望に巻き込まれてしまう。そして私はそこに送り出す存在なのに」

キース「いまは眠たそうな顔でもいいと思わずにはいられないものだ」

サシャ「あっユミル今日は早いですね」

ユミル「最近部屋綺麗だな」

サシャ「はい!」

ユミル「なんだよ?」

ユミル「・・・サシャさあ」

サシャ「はい」

ユミル「お前にさ」

サシャ「はい?」

ユミル「いい物をやろう」

サシャ「いい物?」

ユミル「ほらっ倉庫にあったからさ」

サシャ「ぬいぐるみ」

ユミル「私のとそっくりだろ」

サシャ(全然似てませんが)

サシャ「でも」

サシャ「かわいいです」

ユミル「本当か?良かった」

サシャ「良かった?」

ユミル「ちげーよ。気に入って良かったなってことだよ」

ユミル「そうだろ」

サシャ「いいえ。ありがとうユミル」

ユミル「倉庫にあっただけだからな」

サシャ「はいユミルかわいいです」

ユミル「なんだよ」

サシャ「ふふーん」

キース「なんだそれは」

サシャ「これですか?これはですねー」

サシャ「なんとユミルがくれました」

キース「むう」

サシャ「欲しいですか?」

サシャ「でもすみません。これは私の大事なものなんです」

キース「わかっておる」

サシャ「触ってもいいですよ」

キース「そうか」

サシャ「はい」

キース「・・・」ポンポン

サシャ「どうです?」

キース「暖かいな」

サシャ「暖かいですか?」

キース「ああ」

サシャ「それは良いことですね」

キース「うむ。大事にするのだぞ」

サシャ「はい」

キース「明日からも訓練は続く、早く寝なさい」

サシャ「はーい」

キース「誰かに似てしまったな」

サシャ「?教官もお休みなさい」

キース「ああ。そうだな」

サシャ「教官は晩ご飯の後ってお部屋にいらっしゃるのですか?」

キース「このように見回りをしてからはな」

サシャ「寂しくはないですか?」

キース「はっそんな心配をしなくてもいい」

サシャ「はあ」

キース「貴様らを一人前にするまではそんなことを考える暇はない」

キース「ただ最近寒さが堪えるときはあるが」

サシャ「それは大変です」

キース「ははっ大したものではない」

サシャ「あのユミルいいですか?」

ユミル「お前どこ行ってたんだよ」

サシャ「見回りです」

ユミル「はぁ?ずっと持ってんなそれ」

サシャ「ずっと持ってますよ。それよりもユミル」

サシャ「教官にあげたい物があるんですが」

ユミル「・・・何を?金ねーぞ」

サシャ「作りましょう」

ユミル「またかよ」

サシャ「また?」

ユミル「なんでもない」

ユミル「お前も手伝えよ」

サシャ「ええもちろん」

サシャ「教官いますか?」コンコン

キース「ああ」

ユミル「じゃ失礼します」ガチャ

キース「何だ貴様ら何の用だ」

ユミル「いい部屋ですね」

サシャ「初めて入りました」

キース「どうしたテスト内容は教えんぞ」

ユミル「違いますってサシャあれ出せ」

サシャ「はい」

ユミル「教官。これ」

ユミル「セーター」

サシャ「私達が作ったのです。これで寒くありません」

キース「これは・・・暖かいな」

ユミル「じゃこれで」

サシャ「えーお茶でも飲んで行きましょうよ」

ユミル「お前が言うな」

キース「まあたまにはいいだろう」

サシャ「やった。あそこにあるお菓子いいですか?」

ユミル「最初からそれが狙いか?」

サシャ「違います」

サシャ「・・・」パクパク

ユミル「どうですか?」

キース「いい出来だ」

ユミル「あっセーターですか?どうも」

ユミル「来年はもっと人がくるんすか?」

キース「ああ。この名簿を見なさい」

サシャ「名前でびっしりです」

ユミル「何で私の時だけ」

キース「まあ廻り合わせというかタイミングだろう」

ユミル「職員は?」

キース「もっと増やすことになるだろう」

ユミル「じゃあこんな風には」

キース「もうならないだろう」

ユミル「そうですね」

ユミル「私が言うのもなんですけどもっと訓練兵には厳しいほうがいいですよ」

キース「いや前はそうではなかったのだがな」

キース「それこそ入団式の時に恫喝するような」

ユミル「鬼教官だ」

キース「影ではそう言われていただろうな」

ユミル「それで私らはどうなるんです?」

キース「そうだな。私も悩んではいたのだが」

キース「ひとつはこのままの訓練を継続し次年度のものに対しては1年先輩となるか」

キース「もうひとつは」

ユミル「来年と奴と同じ訓練を受ける?」

キース「そうだ。上からは費用の面からもそうしろとは言われているが」

キース「その判断は貴様らにまかせようと思う」

ユミル「うーん。なんかどっちもめんどくさそうだ」

ユミル「二人だけ先輩ってのも、また同じ訓練受けんのも」

ユミル「なあサシャはどうする?さっきから静かだけどよ」

サシャ「・・・はい?」ウトウト

ユミル「あーちょっと寝かしてきます」

キース「ああ疲れているのか?」

ユミル「まだ子供なんです。いつも飯食ったらすぐ寝るんだ」

ユミル「こいつは途中から入ったから来年もう一回やったほうがいいと思います」

ユミル「実際まだ早いくらいなんだ訓練兵になるのは年齢的にも」

ユミル「サシャ部屋に着いたぞ」

サシャ「はーい」

ユミル「ほらっベットまで歩け」

サシャ「はーい・・・」グウ

ユミル「ベットくらい自分で入れよな」

サシャ「ありがとうございます」

ユミル「ったく。じゃあな寝ろよ」

サシャ「ユミル」

ユミル「ん?」

サシャ「私は来年も一緒にいたいですよ」

サシャ「さっき怖い夢を見ていました」

ユミル「どんな?」

サシャ「夢の中でみんなどこかに行ってしまって」

サシャ「私怖いです。そうなってしまうのが」

ユミル「・・・」

サシャ「あの何か言ってください」

ユミル「ああ」

サシャ「そうだ楽しいお話してください」

ユミル「難しいよ。お前の方が面白いから」

サシャ「ひどいですねえ」

ユミル「私にできることはあまりないな」

サシャ「そんなことないです」

サシャ「たくさんもらいました」

ユミル「バカだな何もあげたりはしてねーよ」

サシャ「ユミルにならバカって言われてもいいですよ」

ユミル「うん」ナデナデ

サシャ「・・・」ウトウト

ユミル「・・・」スッ

サシャ「ユミル」

ユミル「何だ?」

サシャ「いてください」

ユミル「寝るまではいてやるさ。他には何かあるか?」

サシャ「パン焼いて下さい。きっと」

サシャ「おいしいですよお」グウ・・・

ユミル「おやすみ」

ユミル「・・・ごめんなサシャ。ちゃんといるって言ってやれなくて」

ユミル「寝かしつけてきました」

キース「うむ」

ユミル「そうだ茶淹れてきますか?無くなりましたよね」

キース「しかしまぁこんな訓練兵はいままでいなかったな」

ユミル「こんな少ないことも無かったからですよ」

キース「確かにな」

キース「貴様達がいなくなったらこう話すことももうあるまい」

ユミル「はい・・・恐らくそうかもしれません」

キース「ここを出たらどうするか考えているか?」

ユミル「成績上位10位以内は憲兵団にいけるんですよね」

キース「ああそうなっている」

ユミル「じゃあ私達は絶対行けますか?」

キース「どうだろうな。あまり前例がないからな」

キース「しかし成りたければいくらでも推薦はしてやるつもりだ」

キース「貴様らはこれから何にでもなれる。成っていけばいい」

キース「まだ多くの意味があるはずだ。私と違い」

ユミル「教官だってまだいけますよ」

キース「どうだかな。最近いや昔から思うことがあるが」

キース「私の人生に意味はあったのだろうか?と」

ユミル「教官らしくないですね」

キース「・・・教え子にこんなことを言うべきではないな。すまない」

キース「聞かなかったことにしてくれ」

ユミル「いやいいんじゃないすか。悪くないですよ」

ユミル「そんなことを言える日なんてあまりないんですよ」

ユミル「さっきのこと私にはわからない」

ユミル「でももし私が教官みたいなことを言う事があったとき」

ユミル「例えば人生最後の日だ」

ユミル「その時が絶望にあふれていたとしてもなんでも」

ユミル「最後の時おんなじ風に思って意味はあったかなんて」

ユミル「らしくもなく思ってしまったときはきっと思い出す」

ユミル「今日みたいなことがあったなって」

ユミル「その後色んなことを思い出してさ」

ユミル「例えばなんで入団式が一人なんだよとか」

ユミル「笑ってしまうことがたくさん」

ユミル「思い出すんだ。最後に日に。そうさ悪くない」

ユミル「死の間際に笑うんだ。最高じゃないですか?」

ユミル(だけど誰かに謝ることを考えてしまうかもな)

ユミル「なんて・・・さ」

キース「バカなことを言うな」

ユミル「そうバカなことです。あまり言いませんよ」

ユミル「でも私が生きている限り覚えています」

キース「もう夜が遅い。そろそろ部屋に戻りなさい」

ユミル「まだ早くないですから」

キース「確かに消灯時間までまだあるが」

ユミル「ああそうです」

キース「ではすまない。お茶を淹れてきてくれ」

ユミル「いいすよ」

ユミル「その前にあなたが今まで教えたことは意味がありました」

ユミル「私とサシャに」

ユミル「そう思って誇ってもらえると嬉しいです」

ユミル「こんな訓練兵で悪いんですが」

ユミル(水を入れて火を点けて)

ユミル(お湯を沸かして・・・)

ユミル(これもこれからは自由にはできないな)

シーン・・・

ユミル(ここは静かだ。誰もいないから当たり前で)

ユミル(だとしたら今ここにいる私らは全員静かな思いをしている)

ユミル(すぐにそうなるのは分かってるのに)

ユミル(どうしてだ?)

ジュー

ユミル「おっと。沸いたのか」

ユミル「早く持って帰ろう」

ユミル「暖かいうちに」

キース「遅かったな」

ユミル「すみません。ちょっと熱いから気をつけて」

キース「わかっていると思うが」

ユミル「来年からはこんな風に話すのは無理ですね」

ユミル「そんなんじゃまとまらないですから」

キース「うむ。来年は志願者が多い」

ユミル「へーもう一回名簿見せてくれませんか?」

ユミル「・・・あっ」

キース「知り合いでもいたのか」

ユミル「いえ・・・教官。私も来年サシャと一緒にやります」

キース「貴様なら1人でも憲兵団に送ってやったのだがな」

ユミル「ありがとうございます。でもいいんです」

ユミル「その代わりでもなんでもないですが」

ユミル「何個かお願いがあって」

ユミル「ひとつは私の成績がたとえ上位10名であっても除外してほしいってこと」

ユミル「ずるいですからね。2回目なんて。あっもちろんサシャは関係ないっすよ」

ユミル「それでもしできるなら私の代わりの順位をある奴に渡してくれませんか?」

キース「そんなことできる訳あるまい」

ユミル「・・・はい」

キース「ただその者がそこそこの成績ならばあるいはな」

ユミル「はい!」

キース「貴様はそれで何がしたいんだ?」

ユミル「私は・・・」

入団式前日

ユミル「頼むサシャ」

サシャ「そんなことしたら私完全に変な人です」

ユミル「訓練兵デビューだ」

サシャ「そんなデビューしたくありません」

サシャ「ユミルがすればいいじゃないですか」

ユミル「悪いけど私はクールな人って感じでやってく」

サシャ「えー」

ユミル「なんだよ。そんなに目立つわけにはいかないんだから」

サシャ「似合いませんよ」

ユミル「そんなことないだろ」

サシャ「だってユミルは一人で生きていくんだって振る舞いをしても」

サシャ「よく見ると全然そんな風には見えなくて」

サシャ「すぐばれてしまいますよ」

ユミル「えっ?そうか?」

サシャ「そうですよ。大体なんでこんなことするんですか?」

ユミル「・・・」

サシャ「言えませんか?」

サシャ「どちらにせよいいです。私はあなたのためにがんばります」

サシャ「そのために変な奴って思われてもいいですから」

サシャ「短くても長い付き合いですもん」

ユミル「・・・仲良くなりたい奴がいるんだよ」

ユミル「きっと罰を受けたお前を助けにくると思うんだ。そしたら私もそこに加わって

サシャ「ふふっ」

ユミル「なに笑ってんだよ」

サシャ「だからそんなんじゃないって言ったじゃないですか」

サシャ「でもその子が幸せになってくれるといいですね」

サシャ「諦めちゃだめですよ」

サシャ「そんなことしたら怒ってしまいますよ私は」

サシャ「それに怒られてしまいますよ教官に」

サシャ「ねっ」

ユミル「うん怒られちゃうな」

サシャ「ええ」

ユミル「うまくいったらパンやるよ。そんでいつかの約束果たしてやる」

サシャ「はい・・・」

ユミル「どうした嬉しくないのか?」

サシャ「いいえ嬉しいですよ。でも」

サシャ「あと一つの約束はあの時のままですか?」

ユミル「起きてたのかよ。恥ずかしいな私は」

サシャ「そんなことないです。私は嬉しかったですよ」

サシャ「本当のことを言ってくれたって思いましたから」

ユミル「もう少し待ってくれないか?」

ユミル「あと少し」

ユミル「あと少しで私は何かを取り戻せるかもしれない」

ユミル「私が欲しかったのはいつも人の心なんだ」

ユミル「それはなぜか何もしないとすぐに全てが遠ざかる」

ユミル「それを繋ぎとめるものを探したい」

ユミル「それが私のしたいことだ」

サシャ「はい。よくわかりません」

ユミル「このやろ。まあいいやとにかく頼んだぜサシャ」

サシャ「はーい」

ユミル「お前がみんなの前で芋食ってるとこみたら笑ってしまうかもしれないけど」

サシャ「私だってユミルがかっこつけてるとこみたら笑ってしまいますよ」

ユミル「笑うなよ」

サシャ「ユミルこそです」

サシャ「あっそうです。今のうちに枕投げ対決の決着をつけましょう」

ユミル「逆立ち対決の決着もな」

サシャ「負けませんよ」

キース「これより入団式を始める!」

ユミル(あれが鬼教官か、恫喝してる)

ユミル(どうだろう似合っているのかな?まあいいや)

ユミル(いけサシャ!)

サシャ(やっぱりやるんですかユミル?)

ユミル(頼む)コクッ

サシャ(はぁ)

キース「貴様何をしている!」

サシャ「芋を・・・芋を食べています!!」

これで終わりです。ありがとうございました。

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