友奈「にぼっしーちゃんおいしい」 (41)

~☆

東郷「ええ、確かに」

樹「おいしいね」

風「なんていうかさ、この独特のしょっぱさが、癖になる感じだよね」

友奈「あー、すごくわかります、その感想」





夏凜「…………」

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夏凜「あのさ」

友奈「ん?」

夏凜「にぼっしーちゃん、にぼっしーちゃん、って盛んに言われてるの聞くと、
   なんだか私が名指しされてるみたいで妙に照れるんだけど、どうにかならない?」

友奈「どうにかって……」

風「私たちは、讃州中学勇者部所属のにぼっしーじゃなくて、
  ただ『にぼっしーちゃん』の話をしてるだけなんだから、別にいいじゃない」

夏凜「そんなこと言ったって、気になる物は気になるのよ。あと、にぼっしー言うのやめて」

 
風「あっ、にぼっしーが怒った」

夏凜「怒ってないわよ」

風「いやいや、怒ってるでしょ」

夏凜「だから怒ってないって」

風「絶対怒ってる」

夏凜「怒ってない」

風「そんな怒らないでよ……」ションボリ

夏凜「だーかーらー、怒ってないって言ってるでしょうが! 話聞きなさいよ!」

樹(この二人の漫才も、部室にだいぶ馴染んできたなぁ)シミジミ


風(もうそろそろやめとかないと、やめどきがなくなるわね)

風「で、にぼっしー。私たち今なんの話しようとしてたんだっけ?」

夏凜「何って……その『にぼっしーちゃん』に関してじゃない」

夏凜「私が言いたいのは、それが商品名通り『にぼっしーちゃん』って呼ばれてるの聞くと、
    まるで私が呼ばれてるみたいだから、せめて私たちの間では何か他の言い方考えたりしてよって話」

友奈「他の言い方……」

東郷「偽にぼし、とか?」

友奈「これまた相当ダイレクトにいったね、東郷さん」


樹「『にぼっしーちゃん』って誰かが言ってるだけで気になるってことは、
  最近家でテレビ見ると気苦労大変なんじゃないですか?」

樹「結構テレビのCMにこれ出てますよね?」

夏凜「あんたたちに呼ばれてさえなきゃ、そこまで気にならないのよ」

夏凜(筋トレ中にテレビつけてて『にぼっしーちゃん』とか聞こえると、集中乱れるのは事実だけど)

夏凜「それに、そのCM流れたら、そのCMの間だけ積極的にチャンネル変えてるし」

友奈「ええーっ! なんでっ!」

友奈「私最近、あのCMがテレビに流れてるのが見たくて、しょっちゅうチャンネル変えてるのにぃ¥っ!」

夏凜「バカ」

夏凜「何が楽しくて、自分がテレビの画面に映ってるのを、一人でポケーと眺めなきゃいけないのよ」


東郷「じゃあ、みんなで見ればいいのかしら?
   夏凜ちゃんが出てるCMならちゃんと録画してあるから、
   準備さえ整えればいつでもどこでも見られますよ?」

風「おっ、ナイス東郷!」

夏凜「そういう話でもなくて――」

友奈「でも、夏凜ちゃんって凄いよね!」

友奈「ゆるキャラにぼっしーちゃんのオリジナルだもん!」

友奈「同じ勇者部の一員として、鼻が高いよ!」エッヘン

夏凜「ゆるキャラのオリジナル……」

夏凜「私からすれば、知らない人たちがチラチラこっちを見てくるから、
    普段街を歩きにくくなっただけでなんのウマ味もないんだけど」

友奈「おぉー! 発言がもう完全に有名アイドルさんだぁ!」


夏凜「へぇー」

夏凜「有名アイドルに特有の物の言い方とか、言うことの中身ってあるんだ」フムフム

夏凜「私ってアイドルとか世事に疎いから、一般の空気の一端が知れて、勉強になったわ」

友奈「いや、私が勝手に有名アイドルってこんな感じじゃないかな、って思ってるだけだけど」

夏凜「え」

友奈「なんかゴメンね。紛らわしいこと言って、いらない勘違いさせちゃって」

夏凜「……あ、謝らなくていいわよ。本当はわかってたんだから! 言われなくてもそれくらい!」





風「――やい夏凜っ!」


夏凜「?」



風「これを、見よっ!」バッ




にぼっしーちゃんの菓子袋「」デデーン!



夏凜「……で、それがどうしたのよ?」

風「あれ?」

夏凜「ねえ、風が何をしたかったのかさっぱりなんだけど、樹、わかる?」

樹「う、うーん……。私にはちょっと、難易度が高いです」

夏凜「東郷と友奈は?」

友奈「う、うーん……」

東郷「風先輩本人に訊くしかないんじゃないかと」

夏凜「だ、そうなので、何をしたかったのか、本人直々に説明してくれない?」

風「いいけど」


風「エー、ゴホン。私が、ズバリ何をしたかったかと言うとだね」

風「夏凜がにぼっしーちゃんって言葉をここまで気にしてるってことはだよ?」

風「このパッケージに描かれたにぼっしーちゃんを突きつければ、赤面効果は数倍数十倍」

風「それはもうグギャーってなるかとてっきり」

風「で、私はそれが見たくて見たくて我慢できなかったの」

風「色々ざっくばらんにまとめると、ほどよく夏凜を辱めたかった、終わり」

友奈「思ってたより割とエグい動機なんですね」

夏凜「……グギャーがなんなのかちょっとよくわからないけど、絶対ならないわよ」

夏凜「だって、そのパッケージに描かれてるの私じゃないし」


風「私じゃないって……。ふーん、何かしら変なこだわりがあるんだ」

風「このパッケージの絵、どう見ても可愛い可愛いうちの夏凜なのに」

夏凜「可愛い言うな。あと、変なこだわりで悪かったわね」



ガヤガヤ



夏凜「……」

夏凜(変なこだわりと言われてもねぇ)

夏凜(これに描かれてるの、最後に顔を合わせてからかれこれだいぶご無沙汰な、
    義輝だと私は思ってるし……)

夏凜(大体これができた経緯からして――)

ひとまずはここまで

別の現行あるけど一時間くらいで終わるから平気平気→失敗
『にぼっしーちゃん』の話の流れで、夏凜ちゃんの味ってどんな味なんだろ? 
あの浜辺の時は味覚失ってたからわからなかったなーと友奈が言い出す展開を書きたい
→見切り発車で無計画に始めたのでかじ取りに失敗 そちらには戻れそうにない

本当に展開まったく練らずぶっつけ本番するとわき道に逸れる場合がある、
短くても思ったより見直したりで書くのに時間かかると実感できたので、次回から気を付けたいです

でも、ぼーっと書いてるうちにこれから書く展開自体は頭にまとまったから、今日中に書き終えると思う

~☆

夏凜(あの日、私はいつもの海辺の砂浜で、
    夕日の日差しを受けながら、両手に木刀を握り黙々と身体を動かし、鍛錬をしていた)

夏凜(その必要は、本当はもうない)

夏凜(それでも、バーテックスと戦うための鍛錬こそ、私が生まれてから最も努力したことで、
    おそらく私に最も多く、私が私であるゆえの価値を与えてくれたものだった)

夏凜(バーテックスと戦うという目的が、急に目の前から消えたこと自体は、あっさり受け入れられた)

夏凜(今の私には、勇者部という居場所があるから)

夏凜(だけど、自分のすべてを注ぎ込んだ時間を、思いを、
    そう容易く心と毎日から取り除くことはできない)

夏凜(だから私は、いつもの時間、いつもの場所で、
    戦わなくていいのだとわかってからも、度々剣をふるい続けた)


夏凜(そしてあの日、私はしっかり汗をかいて、そろそろ疲れ始めたから、その鍛錬を切り上げた)

夏凜(そこら辺に適当に置いておいた水入りの五百ミリリットルペットボトルを片手に掴む)

夏凜(一口、二口と飲み、渇いた喉を潤す)

夏凜(蓋を閉じて、ペットボトルを腋に挟む)

夏凜(これまたそこら辺に置いておいたにぼしの袋を拾い、
    中身を一本二本と口に運び、咀嚼する)

夏凜(私の好きな、にぼしの素朴な味が、口いっぱいに広がっていく)

夏凜(疲れた体に、にぼしのパワーが広がっていく……気がする)

夏凜(とにかく、にぼしは、万能食品なのだ)

夏凜(私がポリポリとにぼしを齧っていた、そんなときだった)

夏凜(突然、かっちりしたスーツを着た壮年の男性が、こちらに向かって走ってきた)


夏凜(一見したところ、柔和な人のよさがにじみ出るような顔をしていたが、
    服装があまりにも海辺の砂浜という場所には似合わない)

夏凜(彼は、そのまま私の目の前まで辿りつき、日頃運動不足なのかやや息切れをしながら、
    息が整うまで待つのも惜しいとばかりに息せき切って、喋り始めた)

男「君、素晴らしいよっ!」

男「君こそ、僕が今まで探し求めてきた人材、
  あと一つ企画に必要だけど欠けていたピースだったんだっ!」

夏凜「はぁ」

男「あっ、いきなりこんなことを言われても困るよね、僕はこういう素性の者なんだけど……」

夏凜(そう言って、彼は私に懐から取り出した名刺を差し出した)


夏凜(彼の言ったことをある程度かいつまんでまとめると、こういうことになる)

夏凜(彼は、お菓子会社の開発部門に勤めていて、何か人の意表を突く、
    それでいて老若男女誰しもに定着するような、新しいお菓子を作ろうとしていた)

夏凜(彼はその過程で、大好きだった祖母に、小さい頃たくさん食べさせてもらった、
    にぼしというものにふと強烈に心惹かれた)

夏凜(にぼしを、その形を変えてでも構わないから、もっとみんなにとって近しい物にしたい)

夏凜(そんな動機を伴い、試行錯誤の末に彼は、
    実際に自らが満足する出来のお菓子を完成させた)

夏凜(きっと売れるだろうという自信があった)

夏凜(あと問題だったのは、そのお菓子をどう売り込むか)

夏凜(彼は、その売り込みに関して、私の力を借りたいと言ったのだった)


男「商品を完成させてから、いや、商品を作ってる時から今日までずっと、僕は考えてたんだ」

男「いったいどうしたら、こいつを幅広く売ることができるのか、と」

男「そのために、一般の人たちにお試しで食べてもらったりとかもするつもりだけど、
  まず何より考えなければいけないのはテレビCMだと僕は思った」

男「それで考えて考えて、テレビCMに屈強な海の男を起用することを思いついた」

夏凜「海の男?」

男「うん」

男「つまりね、僕たちが外と内という形で、明確にあの壁で生活領域を制限されていても、
  にぼし、海の魚と言えば、普通は漁師という言葉の響きを心のどこかで感じるだろう?」

男「それは海の男、かつての時代にはあって、今はもうなくなってしまったもの」

男「古き良き、日本の心ってやつだ」

男「僕はそういう力強さを『にぼっしーちゃん』の宣伝において、
  人々の関心を惹きつけるため活用したい、そう感じた」


男「でも、それでは足りない」

男「そのアピールの方法では、お客さんとなりうる人々の一部の心にしか響かない」

男「それでは僕の理想としていることを、十分に前面に押し出せない」

男「だから僕は、この商品のためのキャラクター、
  それもゆるキャラのようなものを作ろうとした」

夏凜「ゆるキャラ……」

男「そう、ゆるキャラ」

男「可愛いのを頑張って考えたり、社内でアイデアを募集したりして、
  可愛いだけで評価するなら文句のつけようがないデザインを用意した」

男「これで、必要な物は揃ったはずだと思った」

男「なのに、何かが足りない、とも思った」


男「その矛盾した気持ちがどうにも気がかりで、ここ一週間、
  僕はインスピレーションの源となるものを探して、
  祖母が住んでいた街、ここにやって来てあちこちをうろついていた」

男「そして、偶然君に出会うことができた」

夏凜「私、ですか」

男「君だよ」

男「さきほどから、あそこで、君がその二振りの木剣で演武をするのを拝見させてもらっていた」

男「君の見た目はとても可愛らしいのに、その所作は驚くほど力強く、生命力で充実しみなぎっていた」

男「そして、美しかった」

男「まさしくそれは、これまで僕が内心抱いてきたヤマトナデシコのイメージそのもので、
  君を見ているうちに僕は、僕が今必要としていたのはこれなんだ、と気が付いたんだ」


男「力強さ。可愛さ。片方ずつではダメだった」

男「両方なくてはいけなかったんだ。それと美しさも」

男「しかも、そう言う衝撃に加えて、
  僕が君の演舞を眺め、呆然と突っ立っていると、君は演武を終え、そのにぼしを食べ始めた」

男「気が付いたら僕は、君の目の前に立って、そして、こうしてお願いをしていたというわけさ」

夏凜「……」

夏凜(彼は、いい年をした大人とは思えないほど素朴に興奮し、少年めいて瞳をキラキラさせていた)

夏凜(私にとって、その熱は不快ではなかった。むしろ好ましくすらあった)

夏凜(何しろ自分の鍛錬を、それがどういう意味であれ、素晴らしいと他人に手放しで褒められたのだ)

夏凜(剣をふるっていて、こんな賞賛をもらったのは初めての経験だった)

夏凜(もちろん、彼が稀代の演技力を秘めた詐欺師で、私を担ごうとしている可能性も、頭のどこかにあった)


夏凜(しかし、それはゆっくりこの目で見て、話して、確認して、
    吟味すればいい問題だと思った)

夏凜(それに何より、私は勇者部の三好夏凜なのだから、
    私の助けを欲している人が目の前にいれば、
    助けようという方向性で動こうとするのは当然の道理だろう)

夏凜(……もっとも、にぼしが好きだと言う彼の気持ちに、
    共感したという面も正直あるのは間違いなさそうだった)

夏凜「――えっと、それで私は、具体的に何をしたらいいんですか?」

男「ああ、それはね」

男「今みたいに、ここで、演武をして、それをCMとして使わせていただきたい」

男「そして、最後に『にぼっしーちゃん』を一口食べる、みたいな」

男「うーん、15秒で収められるかなぁ……」


夏凜(彼の中で、私が承諾することは、半ば決定事項として扱われているように見えた)

夏凜(というよりはむしろ、私が承諾してくれないと、
   何もかも頓挫するほど困ってしまう、と表現した方がいいかもしれない)

夏凜(私は、そういう風に誰かに頼られることが、嫌いじゃなかった)

夏凜「キャラクターの方はどうなるんですか? そっちの方は、なしってことに?」

男「ん? キャラクター?」

男「……今、力強さと可愛さの融合が必要だと気づいたばかりだから、なんの目途も立ってないねぇ」

男「キャラクターの使用を企画からなくすつもりはないから、
  これからデザインを考えるつもりだけど、名前は一応もう前から決めてるんだ」

男「にぼっしーちゃん。商品名も同じにするつもりだよ」

夏凜「…………」

夏凜「えっと、私に一つ、こうしたらどうかなという案があるんですけど――」


夏凜(私の頭の中にあったのは、私の精霊である義輝だった)

夏凜(どうして義輝が唐突に浮かんだのか)

夏凜(にぼっしーちゃん、と聞いて、
    自分の境遇に一層重なるものを、そこに感じたからかもしれない)

夏凜(義輝は、私にとって、特別な意味を持つ存在だった)

夏凜(勇者部に入る前、勇者として認められた折のこと)

夏凜(私が勇者として支給されたデバイスは、勇者部の他のメンツと違って、先代のおさがり品だった)

夏凜(それはみんなとは違い、必ずバーテックスの戦いに私は参加していただろうという証だけど、
    穿った見方をすれば、戦うことができるのは、
    私自身、私だけ、そう言い切ることのできない成果だと言えた)

夏凜(先代の勇者が、その身を賭して必死に築いてくれたレールの上を、
    その後に続いて彼女と同じように歩く)


夏凜(勇者としての道程において、私がオリジナルと呼べるもの、
    これぞ私の実力だ、と胸を張って言えるものは、技能と、精霊だけだった)

夏凜(必然、目で見て、この手で触って感じられるのは、義輝のみだったということになる)

夏凜(大赦の人から、デバイスの経緯はともかく、
    義輝は君だけの、君が戦うためだけの存在だ、と知らされた私は、とても喜んだ)

夏凜(義輝は、簡単な言葉を、ごく限られて使用できる機会は少ないけれど、喋ることができた)

夏凜(義輝は、まるで予期せず新しくできた友人のようだった)

夏凜(バーテックスとの実戦のための最終調整を行っている間、
    私は義輝と様々な物を見て、聞いて、感じた)

夏凜(しかし、そんな義輝は、もう私の元にはいない。
    勇者の力とともに、散華の後遺症と共に、お別れをしたのだ)

夏凜(義輝は、私にとって、私の努力と成果、強さの象徴的な存在だった)


男「――なるほど、赤い甲冑を着せる……。いい考えだなぁ!」

夏凜「いいんですか?」

男「ああ、その案、採用させてもらうよっ!」

夏凜(彼は、私の要望を本当に積極的に取り入れようとしてくれた)

夏凜(私が『にぼっしーちゃん』の企画に本腰を入れて参加するようになってから、
    私の下手な絵や、言葉足らずの話を精一杯汲み取って、
    彼はそれをできるだけ忠実にキャラクターの形にしようとしてくれた)

夏凜(とはいえ思いの擦れ違いもあった)

夏凜(内心私は最初、義輝そのままのデザインを実現させようとしていた)

夏凜(だけどそれは受け入れられなかった)

夏凜(力強さはともかく、可愛らしさが足りない、と言われてしまった)


夏凜(意見のぶつかり合いと、妥協)

夏凜(そういう経過の果てに、顔は肌色の目は点々、ツインテールをなびかせた、
    さながらデフォルメした私のような誰かが、
    赤い甲冑を着込み双剣を構えているというキャラクターが完成した)

夏凜(ゆるキャラ、にぼっしーちゃんの誕生である)

夏凜(でもそれは、私にとっては、やっぱり義輝のままだった)

男「ありがとう! 夏凜ちゃん! 最高のCMが撮れたよ!」

男「君のおかげだ!」

夏凜「それに、にぼっしーちゃんのアイデアに関しても?」

男「そう! にぼっしーちゃんに関してもっ!」

夏凜「……ふふっ。お役に立てたのなら、よかったです」


夏凜(CMは、ショートバージョンとロングバージョンが収録された)

夏凜(ロングバージョンは、動画サイトと公式サイトで公開されたらしい)

夏凜(私は気恥ずかしいので、結局一度も見ていない)

夏凜(ショートバージョンは、私が勇ましく海辺の砂浜で双剣をふるっている映像数秒と、
    さも疲れた様子で砂浜に倒れ込み、にぼっしーちゃんを齧っている姿。
    さらに映像が切り替わる)

夏凜(ババーンと砂浜に置かれた『にぼっしーちゃん』の袋がズームして映され、
    「運動のあと、つい食べたくなる、新感覚お菓子、にぼっしーちゃん」
    とテレビ画面の下部に同時に表示されている)

夏凜(それで終わり)

夏凜(このCMがどれほど効果があったのか、私はよく知らないが、
    少なくとも人々にこのお菓子が浸透したことだけは間違いない)

夏凜(にぼっしーちゃん。私にとって義輝として生まれたキャラクターを背負い、
    『にぼっしーちゃん』というお菓子は、老若男女隔たりなく受け入れられ、
    急速に国民的な人気のお菓子へと成長していった)

~☆

夏凜「今日は、偽にぼし食べないの?」

風「え? まあね。そりゃそうでしょ」

風「しょっちゅう食べてたら、どんなにおいしくてもいつか飽きちゃうもん」

風「ほどほどがいいのよ、ほどほどが」

夏凜「……まあ、そうよね、確かに」

樹「夏凜さんは、普段からあまり偽にぼし食べませんよね?」

夏凜「だってあれは、にぼしっぽさは確かにかなりのものだけど、
    結局は食べやすくみんなの好みに合うよう調整されたお菓子じゃない」

夏凜「それより本物のにぼしを食べた方が、私の好みには合ってるわ」


風「夏凜は本当ににぼしが好きだねえ……」

風「そのうち生まれ変わったらにぼしになりたい、とか言い出すんじゃないの?」

夏凜「言い出さないわよ」

東郷「みんな、今日は、私が作ってきたぼたもちを食べましょう」

友奈「やったー! 東郷さんのぼたもちー!」

風「夏凜も、東郷のぼたもちは好きよね?」

夏凜「ええ。確かにおいしいわよね、東郷のぼたもち。好きよ、私も」

風「ふふん、部室に来たばかりの頃は――」

夏凜「うっさい! 変わるのよ! 人間は!」

~☆

夏凜(『にぼっしーちゃん』ブームは収束した)

夏凜(しかし、飽きられたのとはまた違う)

夏凜(日常的に人々に食べられるようになり、浸透し、今更特別な話題ではなくなったのだ)

夏凜(それに伴い私自身も、街中を歩いていて、
    あの注目の視線を感じることがほぼなくなっていった)

夏凜(私は、普段からテレビ活動をしているわけじゃない。だから、当たり前のことだった)

夏凜(世間は移り変わりやすい)

夏凜(でも、そんな中でも私はいまだに折を見ては、夕日を浴びながら、
    いつもの海辺の砂浜で、いつものように剣を振っている)


夏凜「…………」ブン! ブン!

夏凜「…………」ブオン! ブオン! ビュウ!

夏凜「……よし、今日はやめ」

夏凜「ふー」

夏凜(程よい疲れと発汗)

夏凜(砂浜のペットボトルを手に取り、中の水を一口二口と飲む)

夏凜(それから私は、その傍らの『にぼっしーちゃん』の袋を開け、一本二本と口に入れる)

夏凜(そして、本物のにぼしの方が好きだな、と再認識する)

夏凜(それでも『にぼっしーちゃん』の味は、私に何か独特な元気を与えてくれるようで、
    時々一人で食べたくなる、そんな味としていつも私の舌を楽しませてくれるのであった)


終わり

昨日書き終わるだろうと言ったけど、昨日一文字も書かなかったから書き終わらなかった
予定立てるの下手くそすぎるな?と思った

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