双葉杏「小市民と飴」(103)

キャラ崩壊・違和感、複数P、アイドルの外部所属など注意

1.ルーシー・ヴァンペルト


杏「へいプロデューサー、寄ってかない?」

モバP「芝生の真ん中で、ラグビーボール持って何しているんだ?」

杏「杏が押さえてるから、思いっきりこれを蹴っ飛ばそうよ」

モバP「何を……」

モバP「いや、仕事も終わってこれから帰るだけだし、良いだろう」

杏「スカッとしよう!」

モバP「よおし、助走つけて……」

モバP「行くぞ!」ダダダダダ

モバP「ぬえいっ!」

杏「あい」ヒョイ

モバP「あああああ!!」スカッ

モバP「」ズテーン

杏「たまには空でも眺めてみるのも良いかもね」

モバP「そうさ、ボクは誰からも愛されないのさ」

杏「それでも人生は続いていくものよ?」


――

モバP「という夢を見た」

杏「プロデューサー、アイドルにいじめられたりしてない?」

2.春夏秋冬


杏「終わったー。もうお仕事はしない、しないぞ!」

モバP「生きるとは、『もうしたくない』ことの繰り返しである」

杏「いや、今日で全てが終わる。今日で全てが報われて、杏は晴れて印税生活」

モバP「強気だな」

モバP「まあ、まずはお疲れさん。何はともあれ達成感があるのは良いことだ」

杏「そうだね。とりあえず飴ちょーだい」

モバP「ほい、チェルシー」

杏「あーん」パクッ

杏「んん、ヨーグルトスカッチおいしいなー」

モバP「ピンク派と緑派がいるが、俺は緑派だ」

モバP「ヨーグルト味って何か良いよな。飴に限らず」

杏「そう? 杏はバターの方も好きだよ?」

モバP「後で事務所の飴棚に両方買い足しとくか」

モバP「今の子はヨーグレットは好きなんだろうか」

杏「あまり食べたことないけど、錠剤みたいな見た目のやつ?」

モバP「ああ。よくハイレモンと並べて置いてある」

モバP「体調崩した時に薬局で処方してもらう薬もあんな味なら良いのに、と思ったもんだ」

杏「そうだけど、味とか気にしないでも、普通は噛まずに水で、とかでしょ?」

モバP「だが、飲み込みきらなかった時、口の中に嫌な感じの苦さと異物感が残るのがな」

モバP「顆粒、もとい粉薬もあれはあれで飲み辛いし」

杏「そうだね。そういうの、大人になれば平気になるのかな」

モバP「美味しくないから薬、なんだろうが、いつの間にか慣れてしまったな」

杏「でもさ、錠剤のように飴を間違って飲み込んじゃうことってあるよね」

モバP「稀にある。うわやっちゃったわ、という何とも微妙な気持ちになる」

杏「せっかく噛まずに舐めていたのに、あの勿体無さといったらね」

モバP「何の為に飴を舐めていたのか分からなくなるな」

杏「ヒトは何の為に飴を舐めるんだろうね」

モバP「哲学か。答えは?」

杏「飴がおいしいから。以上」

モバP「……何の話をしていたんだっけ」

3.とあるモバPの死生観


杏「時にプロデューサー」ピコピコ

モバP「何だ」カタカタ

杏「ヒトって死んだらどうなると思う?」ピコピコ

モバP「ゲームしながら会話ができるとは器用だな」カタカタ

杏「プロデューサーこそ、お仕事しながら相槌打てるでしょ?」ピコピコ

モバP「ああ。一つの物への集中力は読書中の文香を見習いたい」カタカタ

杏「周りの出来事に一切無反応になるからねぇ」

杏「それで、どうなのさ」ピコピコ

モバP「死んだらどうなるか? ……そんなこと真剣に考えると眠れなくならないか?」パチン

杏「お、休憩?」コトッ

モバP「人生相談なら真面目に聞く。お坊さんのようなありがたい説法はくれてやれないが」

杏「大袈裟だなぁ。そんなんじゃないよ」

モバP「お茶と、何か適当に飴でも持ってくるわ」

モバP「ほい、パインアメ」

杏「ありがとー」パクッ

杏「んん、フルーツ風味の飴はたくさんあるけど、これはレベル高い」

モバP「昔は近所に売っていなくて時々しか食べられなかったが、俺も好きでな」ズズ

モバP「さて、シンプルに答えるとしよう」コト

モバP「『そういうことは、なるべく考えないようにしている』だな。さようなら」

杏「いきなり逃げたか」

モバP「生きている内はどうやっても正解が分からないであろうことに、あまり悩んでも仕方ない」

モバP「だが、自分が安心できる形で死後を想像しておくのは良いかもな」

杏「天国に行ける、とか?」

モバP「ああ。『死んだら五感は閉じ、自我は消失して無に還る』、なんて言われても漠然と怖いだけだろ?」

杏「それはある。宇宙や時間について考える時と似てるね」

モバP「誰も知らないということは、可能性は無限。どうせなら良いように考えた方が得だろう」

杏「ポジティブだねぇ」

杏「でも、天国というかあの世はあってほしいかな」

杏「そこは働かなくても不自由のない、杏にとっての理想郷」

モバP「そんな世界があったら憧れるな。やがていつかは飽きそうだが」

杏「あの世に飴や娯楽はあるかな? そもそもあの世では飲食を必要とするのだろうか」

モバP「ヒトとしての欲求が無くなったら、意識は自分でもそれは自分じゃないような気がするな」

杏「よし、飴と娯楽のあるあの世をつくろうよ」

モバP「無いならつくれば良いとはよく言ったものだな」

モバP「しかし、これは”明日から”ではなく”死んでからやる気出す”という新しいパターンか」

杏「何も杏がやるとは言ってないでしょ。プロデューサー、頑張ってね」

モバP「えー」

杏「でもあの世って、実際あるとしたら凄いキャパシティだろうなぁ」

杏「これまで亡くなった億~兆単位の人類がひしめいているんだよ?」

モバP「いや、さすがに溜まりっ放しじゃなく、循環はすると思うぞ。生まれ変わるとかな」

杏「でも、昔と今では人口が合わないじゃん。増えた分はどこから来たの?」

モバP「世界の質量というのは予め決まっていて、代わりに減った”物”が人になった、とか」

杏「そっか……生まれ変わっちゃう場合、親しかった人とあの世で再会、なんてことはできないかもしれないのか」

モバP「それは寂しいな」

杏「寂しいね」

杏「実はこの世界は誰かのシミュレーションで、自分以外はみんなただのスクリプトに過ぎない」

杏「とかは、やっぱり変かな?」

モバP「いや、神様のような上位の次元の存在に監視されている、というのも良いと思うぞ」

モバP「よく中学生くらいの子が脳内で知らない誰かに呼びかけてみたりするが」

杏「さすがにそんな子はいないでしょ今時」

蘭子『ククク……アストラルの蠢き、斯様な物と知る』(あなたの心、読んでいますよ?)

杏「うん、大丈夫……だと思う」

モバP「こちらからは認識できない何者かに普段の全てが見られている」

モバP「とかいう妄想は自意識が刺激されちゃう訳だよ」

杏「プロデューサーは変わった子だねぇ。本当に自宅に監視カメラとか付けられていなきゃ良いけど」

モバP「俺はともかく、『アイドルは常に人に見られている』くらいの自覚は欲しいんだがな」

モバP「な、杏」

杏「なんだよぉ」

杏「話を戻して、じゃあプロデューサーの理想の死後って?」

モバP「そうだな。『死んだ瞬間、ここまでは夢でしたってことで小学生くらいの物心ついた頃に戻る』、というのはどうだ?」

杏「記憶引き継いで人生をやり直してみたい感じ?」

モバP「ああ。日常でふと既視感を覚えたりするだろ? それが前回の記憶の断片と言われると妙に頷ける」

杏「どーだろ。たまに強くてニューゲームやってるみたいな人いるけどさ」

杏「でも、体は子ども、頭脳は大人、で周りに適応してやっていくのは大変だと思うよ」

モバP「杏が言うと説得力があるな」

杏「失礼だなぁ。小学生の頃はちゃんと小学生してたよ」

モバP「悪い悪い」

モバP「だが、千枝やありすみたいな子もいる訳で、子どもに返っても案外馴染めるんじゃないかと」

モバP「甘いのかな」

杏「たまにプロデューサー、体は大人で精神は子ども、みたいに見えることあるからなぁ」

杏「では、もしも二週目があったとして、少年時代を凌いで大人に追いつきました」

杏「プロデューサーは、また同じようにプロデューサーになって、杏をアイドルにする?」

モバP「当然」

モバP「そしてある日、今みたいに二人で飴でも舐めながらこんな話になって」

モバP「『実は俺はお前をずっと前から知っている』、と言おうか言うまいか悩む」

杏「そこまできて悩むのか」

モバP「実際そんなことを言う裸ネクタイでPヘッドのプロデューサーがいたとしたら、やだこの人変態? と思うだろ」

杏「言わなくても変態だよそれは。……まぁ、正気は疑うよね」

モバP「でも杏なら最終的に信じてはくれなくても、まーいいや、で受け入れてくれそうだから、言うかな」

杏「ずいぶんと舐められたものだね」

モバP「そういえば、かのロゼッタさんが『世界に同じ繰り返しはない』と仰っていたな」

杏「どのロゼッタさん」

モバP「ヒゲの配管工に星を集めてもらうロゼッタさん」

杏「あー、ね」

杏「新しい世界にも記憶とか情報は受け継がれていく、みたいな感じだ」

モバP「ああ。そういう考えでいくと、俺と杏が来世でもこうしていられるとは限らない」

モバP「後でたらればの後悔をしないように、まずはお前をしっかりとトップアイドルに育て上げないとな」

杏「えー、過労で死んじゃう。緑色のキノコを求む」

輝子「え……新種?」ガサッ

乃々「1upだと思うんですけど……」ボソ

美玲「横滑りするキノコなんて恐すぎるだろ」

杏「どうでも良いけどプロデューサーの机の下って広すぎると思うんだ」

モバP「謎空間化しているな。某ビーグル犬の犬小屋の地下室には及ばないが」

杏「ちなみに、何で『昔に戻る』なんてユニークな発想に至ったのさ」

モバP「過去にやったゲームとか、読んだ小説の影響とかじゃないの? 知らんけど」

杏「適当だなぁ。杏もだけどさ」

モバP「脳は夢を見る。それは未解明な部分が多い。そして、脳は通常フル稼働はしていない」

モバP「夢現でベッドから落ちたことがある。体が床にぶつかるまでは一瞬の出来事だ」

モバP「だが夢の中では、体が落ちていく感覚が結構長い時間続いていた」

モバP「日常でもふと、信号の代わり際や時計の秒針の動き際を目にした時、その一瞬がやけにゆっくりに感じたりしないか?」

杏「どうだろ」

モバP「普段でこれなら、脳が最期の本気を出せばタイムリープみたいなことができたりしないかなーって」

モバP「そんなことを考えてみたりもする」

杏「それってそもそも『死ねて』ないんじゃ」

モバP「死ぬ直前にループするから、まあそうか」

杏「何か訳が分からなくなってきちゃったね」

モバP「結局、難しいことは考えないに限るな。そろそろ仕事に戻って良いか?」

杏「ほーい。頑張ってねー」

杏「とりあえず」

杏「杏がまた杏になれるのなら、もう一度プロデューサーに面倒見てもらえば良い」

モバP「ふー」カタカタ

杏「いや、そんな先の話よりもまず、死ぬまでどうやって生きるかの心配だよね」

杏「……それも全部プロデューサーに面倒見てもらうかな」

4.月明かりの下一人知れず


杏「レッスン終わった、疲れた」

モバP「お疲れさん。はい、ヴェルタースオリジナル」

杏「謝謝!」パクッ

杏「んー、とろける甘さダヨー」

モバP「中途半端に菲菲の真似をするんだねキミィ」

杏「特に意味はない」

モバP「そういえばこの前、菲菲に」

菲菲『Pさんて芝麻球(胡麻団子)みたいダヨネ』

モバP「って言われたなあ」

杏「どこら辺がそうなのか分かんないな」

モバP「よく考えたら、遠回しな愛の告白だったのではないだろうか」

杏「プロデューサーの、よく突拍子も無いこと言い出すような自由さが伝染しているだけじゃない?」

モバP「ああ、確かに思いつきで発言することはあるが」

モバP「でもそれは逆に俺の普段の言動も、こうして変に深読みされているかもしれないということか」

杏「意味もなく『月がきれいですね』とか触れ回ったりしてない? きっと困ったことになると思うよ」

モバP「そんな表現、よく知っているな」

モバP「それはさすがにしない。薫に『月がクッキーみたいだな』、と言ったことはある」

杏「ムーンライトでも食べたかったのかな?」

モバP「話は変わるが、バラエティとかで字幕あるだろ?」

杏「また凄い飛び出し方するね。交差点なら余裕で接触事故だよ」

杏「で、字幕? 杏たちが出演した番組とか確認してるなら、よく見るんじゃないの?」

モバP「ああ。で、字幕が出てきたら、杏はどこに視線が行く?」

杏「文字」

モバP「だろ? あれよく考えたら何でだろうとか思わない?」

モバP「文字に気を取られている内に、気づけば出演者の細かなリアクションとか見逃しているんだよ」

杏「気にするようなことでもないと思うけど、言われてみれば」

モバP「ゲーム一つやるにしても、立ち絵とかよりテキストボックスの方に意識が行く時間が多い」

杏「文字があると読まずにはいられない感じ?」

モバP「ああ。更には自分で朗読したりもする」


杏「プロデューサー」

モバP「はい?」

杏「ちょっと助けてあげられないかもしれない」

モバP「そうカタいこと言うなよ」

5.石炭袋


モバP「ジュース、買ってきたぞ」ホイ

杏「うむ、苦しゅうない」

モバP「最近はすっかり夕方が短くなって、この時間ともなればもう暗いな」プシュ

杏「そだね」パチ

モバP「一服したら、車出すか」ゴク

杏「ん」コクコク

杏「ふぅ……プロデューサーはコーヒーか。やっぱり大人は無糖派?」

モバP「俺はどちらかと言えばシュガハかな」

心『アナタのはぁとをシュガシュガスウィート☆』

杏「佐藤先生の次回作にご期待ください」

モバP「ただ別に甘くないと飲めないとか、味にこだわりとかはあまりないんだな」

モバP「豆で買って自分で挽いて、といったことをする程度になればまた違うかもしれないが」

杏「缶コーヒーで満足かぁ」

杏「でもさ、甘いので良いんだったら、何でコーヒーでなくちゃいけないんだろう」

杏「スポーツドリンクじゃダメなの? それとか、紅茶とか」

モバP「汗かいて塩分が欲しい訳じゃないし、コーヒーは目覚ましも兼ねてる」

モバP「紅茶は、個人的に麦茶や緑茶慣れしていて違和感があるから、特には飲まない」

杏「ふぅん……まぁ好みは人それぞれってことか」コクコク

モバP「杏はこの前、コーヒー飴にあまり興味を示さなかったな」

杏「杏にだって好みがあるのさ」

杏「でもくれるなら貰うよ。苦いのはちょっと苦手なだけ」

モバP「あのくらいが俺は好きなんだがな」ゴクゴク

モバP「唐突に思い出したが、石炭飴って食べたことあるか?」

杏「ないよ。北海道名物らしいけどね」

モバP「そうか。飴を知り尽くしたアイドルと思われていた杏にも、まだ食べたことのない種類はあるんだな」

杏「どったの? 食べたいのなら取り寄せしてみたら?」

モバP「いや、俺は別に」

モバP「杏の地元の方だから、帰る時に寄って買ってみたらどうだ?」

杏「そんなの面倒だ」

モバP「じゃあ俺が北海道行くことあったら買って来よう。ついでにジンギスカンキャラメルも一緒に」

杏「杏は食べないからね」

杏「やたら石炭飴プッシュするけど、何か思い入れでもあるの?」

モバP「んん? そうだなあ」ゴクゴク

モバP「昔プレイしたRPGに、主人公(14)と女の子(8)が出てきたんだよ」

モバP「二人はいつも一緒に冒険ごっこをして遊ぶような仲だった」

モバP「しかし主人公が生まれ育った街を離れ、本格的な冒険の旅に出よう、と決心した時」

モバP「女の子に『お前はまだ子どもだから連れて行けない』と言ってしまう訳だ」

杏「(14)も充分子どもだと思うんだけどなー」

モバP「当然女の子は怒って、一人で家に帰ってしまう」

モバP「その後、知り合いの発明家の家を訪ねると、この『石炭アメ』をくれて励ましてくれる」

杏「ついでに牛乳が届いていないので貰いに行ったら夜空から汽車が」

モバP「何か銀河鉄道が紛れ込んできたぞ」

モバP「杏は宮沢賢治好きなのか? 意外と文学少女だな」

杏「さっきから石炭飴をイメージしてたら石炭袋が出てきてさ」

モバP「文学少女……眼鏡……ふむ、閃いた」

春菜『よっしゃ、眼鏡どうぞ!』

杏「いや、かけないからね」

モバP「杏って眼鏡かけたら結構似合いそうなんだよなあ」

杏「まず国語の授業で習うことくらいで文学少女というのもどうかと思うよ?」

杏「割と鬱展開だったから記憶に残ってるだけだし」

モバP「確かにな」

杏「あ、話逸らしちゃってごめんね」

モバP「構わんよ」

モバP「で、その石炭アメの備考に確か『ほろ苦い』と書かれていた」

杏「石炭舐めたことないけど、美味しくはなさそう」

モバP「まあ実在の石炭飴はほろ苦くはないようだが、当時少年の俺には妙に興味をそそられた」

モバP「何かビターなコーヒーの味でもするのかなと」

杏「偏見かもしれないけど、飴って基本的に甘いからこそだと思うんだ」コクコク

モバP「ヒトは歳をとるにつれ、苦味も良しと知るものさ」

杏「そうなのかなぁ」

杏「とりあえず、プロデューサーにとって石炭飴とは、女の子とのほろ苦いイベントの象徴的なアイテムなのか」

モバP「でも結局、女の子はついてくるんだがな」

杏「ついてくるんだ」

杏「そういえば事務所の最年少って9歳だっけ。そう考えると(8)って凄いね」

モバP「ああ。しかもそれで保護者属性という」

杏「年少で保護者かぁ。イメージとしてはこう?」

桃華『本当に、Pちゃまはわたくしがいないとダメなんですのね』ナデナデ

モバP「素晴らしい。まあお嬢様という訳ではないんだが」

杏「あのさプロデューサー」

モバP「どうした?」

杏「プロデューサーはロリコンだよね」

モバP「朝日が東から昇るのは当たり前だよね、みたいにさらっと言うなよ」

杏「それも、小さな子にほど甘えてみたがるタイプ」

モバP「ロリマザコンで悪かったな」

杏「自分で言っちゃってるよ」

杏「思えば杏にやけにフレンドリィなのも、実はそういう下心があったりする?」

モバP「下心で分け隔てして接しているつもりはないぞ」

モバP「それに杏には特に保護者的な頼もしさとか、風格がある訳じゃないだろ」

杏「えー、杏が頼りないって言いたいの? 否定しないけどさ」

モバP「その代わり、人との距離感を測るのが上手い」

モバP「よく相手を選んで、相手に合った接し方をしてくれる。自分になるべく負担のかからないように調整もしてな」

モバP「そういう所は頼もしいというか、安心感がある。一緒にいて居心地の良いタイプだ」

杏「そりゃどうも。意識してやってる訳じゃないんだけどねー」

モバP「しかし、杏が保護者かあ……想像してみるとそれも面白いな」

杏「やめい」コツン

モバP「さあて。脱線が脱線を呼ぶ話もこれくらいにして、そろそろ帰らないとな」

杏「おーっす」 キラッ

モバP「あ、流れ星だ」

杏「えっ、見えなかった」

モバP「……一瞬の間に願い事三回呟けって卑怯だよな」

杏「はいはい、帰るよー」

6.愛の形、飴の形


モバP「また昔のゲームの話にはなるんだが」

杏「そういう路線はリアクションとり辛いんだけどさ」

モバP「それでも杏は適当に聞いてくれるから話しやすい」

杏「はいはい。で?」

モバP「この前の三好紗奈CX見ていて、ちょっと思い出したことがあるんだよ」

杏「毎回レトロゲーを取り上げて、自力でクリアしようっていうアレ?」

モバP「ああ。その夢大陸アドベンチャー回なんだが」

杏「フロントビューのシューティングゲームみたいな奴だね。それなら見たよ」

モバP「ステージ中に4色に変わるハートが出てきただろ?」

杏「うん」

モバP「それを見て、ある飴が頭に浮かんだんだ」

杏「え、なになに? 飴?」

モバP「ハート型で、赤と黄色があったかな。20年ほど前の話だが、正月に親戚の家に行った時に貰ったんだ」

モバP「思い出補正込みとしても、これがとても美味くて、こんなものを食べられる私は何て特別な存在なのかと思ったね」

杏「何それ、杏も食べたい!」キラキラ

モバP「記憶があやふやだが確かキャンレディとかいう名前だったと思う。もう製造されていない幻の飴」

杏「はい解散」

モバP「当時田舎に住んでいて近所にはなかったから、それきり食べる機会もなかった」

モバP「復刻しないかなあ」

杏「まぁ分かる。今はもう無い懐かしの味が食べたくてたまらなくなる感じ」

モバP「でも実際食べられたとして、コレジャナイ感があったりしてな」

杏「子どもと大人では味覚変わるって言うからね」

モバP「で、一周回っていつもの市販の飴が一番美味いじゃん、となるのかな」

杏「とりあえず、食べられない飴を紹介した代償として飴ちょーだいプロデューサー」

モバP「これからレッスンだろ? 頑張ったらな」

杏「杏は既に生きることを頑張ってるよ」

モバP「それにしても、昔から今も消えずにあるイメージの飴というと、あれだな」

モバP「サクマ式ドロップス」

まゆ「Pさん、呼びましたかぁ?」ヒョコッ

モバP「ん? まゆか。いや、飴の話をしていたところだ」

まゆ「そうですか。早とちりしました」

モバP「……随分と大人しいが、もしかしてセーフモードか?」

まゆ「はい」

杏「いや、どこからともなく現れた時点で大人しくはないと思うけど」

杏「で、どういうこと?」

モバP「『ままゆセーフモード』は、まゆがヤンデレしてない状態だ」

杏「えっ、何それ」

モバP「年中怒っている人が怒ってもあまり恐くない、ということがあるが」

モバP「まゆも、年中ヤンデレキャラでは周りが慣れてしまって張り合いがないそうだ」

モバP「じゃあ、クーデレに挑戦してみない? と持ちかけた」

モバP「結果、たまにこういうクールなまゆが見られるようになった訳だ」ナデナデ

まゆ「♪」

杏「クール……なのか?」

モバP「さて、話を戻すが」

まゆ「あ、割り込んですみません。私のことは気にしないでどうぞ」

杏「何だこの違和感」

杏「で、サクマ式ドロップスね。あれって缶にそのまま入ってるんだっけ」

モバP「そうだ。個包装と違って、振ると良い音がする」

モバP「フルーツの味にちなんだ色取り取りの飴が、見た目は綺麗だし食べても美味い」

モバP「一個一個何が出てくるか楽しむのも良いが、器に盛ると宝石の山みたいに見えるぞ」

杏「宝石ねぇ……形が妙にそれっぽいよね」

杏「むー、食べたくなっちゃったなぁ」

モバP「まあ、だったらほれ。現物がここにある」

杏「おお」

モバP「手、出してみ」

杏「はい!」

モバP「何が出るかな」カラコン

杏「OH……」

モバP「ハッカでしたー」

杏「まぁ、食べるんですけどね」コロコロ

モバP「よくハッカが最後まで残ってしまうのは何故だろうな。あのスーッと感?」

杏「じゃないかな。というかそれ、音が軽かったけどもしかしてハッカしか入ってない?」

モバP「当たり。目がぱっちり覚めたところでそろそろ行ってらっしゃい」

杏「なかなか横暴なことをするようになったねプロデューサーも」

モバP「おんぶや抱っこやお馬さんさせられていた頃と比べると、杏はずいぶん自立したよ」

杏「さすがにお馬さんはさせないから」

モバP「今日はいつもより良い飴を用意して待っているからな」

杏「飴で何でも言うこと聞くと思ったら大間違いだ」

モバP「いらないのか」

杏「いるけどさ」

まゆ「お茶を煎れました。良かったらどうぞ」コト コト

モバP「お、ありがとう」

まゆ「杏ちゃんとPさんって仲良いですよねぇ」

モバP「まあな」ズズ

杏「否定しないっていうね」

まゆ「……少し、嫉妬してるんですよぉ?」ニコ

杏「い、行ってきます!」パタパタ

まゆ「うふふ」

モバP「お前って結構器用だよなあ」

まゆ「そうですか?」

7.こんなことなら、おとっつぁんなんか連れて来るんじゃなかった


モバP「ちひろ、新しい羽織出してくれるか」

ちひろ「どこか出かけるんですか?」

モバP「天気も良いし、天神様にお参りに行って来ようと思うんだ」

ちひろ「そうですか。ならあなた、杏を連れて行ってあげてくださいよ」

モバP「やだよ、どこか連れてく度に飴買って飴買ってとうるさいんだから」

ちひろ「良いじゃないですか。自分の子ですよ?」

モバP「自分の子だからかやけにこういうことには敏感で」

杏「ただいまー」

杏「あれ、おとっつぁん、どっか行くの?」

モバP「ほらみろ帰って来ちまっただろうが」

杏「杏も一緒に行きたい!」


――

モバP「という夢を見た」

笑美『夢で初天神とかどんだけやねん』

杏「みたいな反応をしてもらおうとか思ってた?」

モバP「しているじゃないか」

杏「それでもよく知らない杏なんかに話すより、もっと歳の近い人とかさ、いるじゃん」

モバP「笑点くらいなら見ていても、うちに落語に興味があるアイドルはあまりいないんだよな」

モバP「菜々さんとかは豊富な人生経験を生かして、マクラとか上手そうだが」

杏「その言葉選びはまずいと思うよ」

モバP「スカウトはそういう方向性でも探してみようかね」

杏「事務所もういっぱいだってば」

モバP「しかし、夏祭りなんかは良いな。様々な出店が並んで」

モバP「金魚すくいにヨーヨー、射的、スピードくじ、お面」

モバP「食べ物だって、リンゴ飴やわたあめ、焼きそば、イカ焼き、チョコバナナ、ラムネ」

モバP「子どもなんてのは少ない予算(おこづかい)でどう楽しむか、悩むんですなあ」

杏「このところプロデューサー、以前にも増して懐古主義になってない?」

モバP「認めざるを得ない」

杏「でも、リンゴ飴は食べたい」

モバP「リンゴ飴なあ……もうずいぶん食べていないが」

モバP「外の赤いビードロの様な色した飴部分の甘さと、中のリンゴの程よい酸味がアクセントで」

杏「良いよねー」

杏「わざわざそういう所に行かなきゃ食べられないのが惜しいよ」

モバP「味はお祭りの雰囲気で美化されている部分もあるだろうがな」

杏「わたあめなら簡単に作れるのが売ってるよね」

モバP「ああ。以前俺の家にもあって、こう、割り箸に巻きつけて食べるんだが、売り物ほどのボリュームにはならないという」

杏「杏も雑貨屋なんかで見たことはあるけど、業務用は規模が違うもんね」

モバP「それに、たこ焼きプレートやかき氷機みたいなもので、そんなに頻繁には使わないんだよな」

杏「最初の数回だけ楽しんだら、後はほったらかしになっちゃうんだ?」

モバP「たこ焼きやかき氷はまだ工夫もできるが、わたあめは、ねえ……」

杏「結局、どちらもお祭りとかでたまにしか食べられないからちょうど良いのかもね」

モバP「そうだな」

杏「……」

モバP「……」

モバP「何か甘いものが食べたくなってきたな」

杏「うん」

8.月へ帰れ


杏「今日からプロデューサーはニュージェネの付き添いでいないのか」

机「シーン」

杏「……」

杏「最近の感じだと結構キてると思うんだけど、ちゃんとコミュニケーション取れるんだろうか」

??「天呼ぶ地呼ぶ海が呼ぶ、悪を倒せと我を呼ぶ」ガチャ

光「人倫の伝道師、ナンジョルノ イズ ヒア!」ババーン

杏「おっす。そこは天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ、だよね」

光「細かいことは気にしない」

杏「おいおい……光はお仕事帰り?」

光「そうとも! お疲れ様です!」ペコ

杏「うん、お疲れ様。元気良いなぁ」

女P「光、歩くの速いよお」ゼエゼエ

杏「あ、女Pさん」

女P「あら、杏ちゃんこんにちは。今日はPさんがいないんだったね」

杏「代わりにきらりに面倒見てもらってる。今はちひろさんと出てるよ」

女P「そっかあ。でも、寂しくない?」

杏「私よりプロデューサーの方が寂しがってるんじゃないかなぁ、なんてね」

女P「あ、分かる気がする。Pさんは杏ちゃんといる時がとても活き活きして見えるから」

杏「結構いいかげんなこと言うけど」

女P「と言いつつ、いつも息が合っているでしょ?」

杏「そうかなぁ」

光「女P、アタシの今日のヒーローぶりは話してくれないのか?」ズイ

女P「良い演技だって褒められたことだね」

女P「大丈夫。自分から多くを語らずとも常に話題にされる存在、それがヒーロー」

女P「光は既に私の、そして皆のヒーローだよ」

光「なるほど。そこで自慢なんてしているようじゃまだまだ小物だな」

光「よし! アタシ、もっと頑張る!」

女P「その心意気やよし!」グッ

杏「仲良いな」

杏「……飴食べたくなってきた」

モバP『頑張ったな。飴食べるか?』

杏「こういうの、餌付けされてるって言うのかなぁ」

杏「ただ貰えることを当たり前のように享受する」

杏「パブロフの犬……やめやめ」

杏「飴棚に何か置いてないのかな」テクテク

杏「はぁ、面倒臭い」ガサゴソ

杏「……お、ちゃいなまーぶる?」

杏「たまにデパートとかでこういう色合いのガムボールマシーンを見かけるけど」

杏「んむ」パク

杏「ん、確かに飴ではあるのかな」コロコロ

杏「んがっ!」

杏「……かたい」

9.あおいそらーしろいくもー


こずえ「あんずー?」

杏「んー?」

こずえ「ふわぁ、こんにちはー」

杏「こんにちは」

こずえ「そら、ながめてるのー?」

杏「そうだよ」

こずえ「ふぅん」

杏「こずえちゃんはさ、マンションとかの高い建物の前に立って、空を見上げてみたことある?」

こずえ「あるー」

こずえ「でも、くびがいたくなるよぉー?」

杏「うん、痛くなるからやめたんだけどね」

杏「そうやってると、段々建物がこっちに倒れてくるように感じるんだよ」

杏「そんなことはないって分かってるんだけど、不思議な感覚でさ」

こずえ「そらは、どんなてんきだったー?」

杏「今日みたいな青空に雲がゆっくり流れていくような、少し物足りない天気だよ」

こずえ「ものたりないのー?」

杏「うん。でも、今はそういう気分に浸ってみるのも悪くないかなって思う」

こずえ「よくわからないのー」

杏「あっと、ごめんねこずえちゃん。何かプロデューサーみたいなこと言ってたよ」

こずえ「ううん、いいよー」

こずえ「こずえもいっしょに、そらをながめてていいー?」

杏「特に面白いことはない気もするけど、どうぞー」

こずえ「……」ポケー


杏「……」ポケー


こずえ「…… ……」ポケー


杏「…… ……」ポケー


こずえ「…… …… ……」ポケー


杏「…… …… …… …… ……」ポケー

芳乃「そなたー、そなたー」テクテク


こずえ「……?」


芳乃「そなたー、そなたー?」キョロキョロ


杏「下で芳乃の声がするね」


芳乃「そなたー……?」


杏「誰か探しているのかな」

ヒゲP「ん? どうしたんだい、芳乃ちゃん」


芳乃「そなたー」テクテク


芳乃「……いたー」ギュッ


ヒゲP「ははは、芳乃ちゃんは子猫みたいだね」


芳乃「そんなことはないのでしてー」スリスリ



こずえ「……いいなー」


杏「……平和だねぇ」

10.結構毛だらけ猫灰だらけ


杏「あれ、東郷さん」

あい「ん、杏君か。普段はあまり話をしたことがなかったが、どうかしたのかな?」

杏「プロデューサーがいないので、人間観察かな」

あい「渋い……いや、なかなか面白いじゃないか」

杏「東郷さんは何を?」

あい「ああ。正山小種(ラプサンスーチョン)を煎れてみようと思うんだ」

杏「ラスプーチンみたいな響きだね」

あい「私は最初、ラプさんとスーちょんの釣りバカコンビか何かかと」

あい「それは置いとくとして、君も飲んでみるかい?」

杏「うぅ……杏にはまだ早い飲み物だ」

あい「これは確かに、香りも味も独特だね。付き合わせてすまない」

杏「気にしないよ。でも、東郷さんは紅茶に興味があったんだね」

あい「別にそうでもないさ。アイドルの子に頂いたから、ふと飲んでみようとね」

杏「特に理由はないんだ」

あい「ああ。ここの事務所の皆は割と『気まぐれ』というか、『テキトー』というか」

あい「私も気づいたら馴染んだようだ」ズズ

杏「これもプロデューサーの影響なのかなぁ」

あい「モバPくんか。彼の何というかつかみ所のなさは、不思議と憎めない」

あい「まとめるべき時はまとめ、アイドルたちもまとまるべき時はまとまる」

杏「う~ん、何か上手く行き過ぎてるようで怖いんだよね」

あい「そうかい?」

杏「ある日突然、『出てってくれ』とかなったらさ」

あい「それを言っちゃあ、おしめぇよ」ズズズ

杏「ナチュラルにプロデューサー化してると思うよ、東郷さん」

あい「らしくないなと今のは自分でも思った」

あい「だが、心配することはないさ。彼を、そして今の自分を信じてあげよう」

杏「信じる、か」

あい「そしてたまには彼の為に、何かしてあげようと思えたら、一歩前進、かな?」

11.80年代生まれ


杏「おかえり」

モバP「ただいま」

杏「……」ジー

モバP「どうした? そんなに見つめて」

杏「いや、久々に見たような気がしてさ」

モバP「ほんの数日じゃないか」

モバP「だが、こうして帰りを待たれる立場というのもモチベーションになるな」

杏「アイドルたちのお父さんみたいなところあるからね」

モバP「お父さんやるにはまだ年季が足りんよ」

杏「でも早ければ小学生くらいの子どもがいる歳でしょ? 早く孫の顔が見たい、とか親にさ」

モバP「その手のことを言われると辛いな」

杏「プロデューサーってさ、アラサーだよね」

モバP「ああ。ギリギリブルマ世代のアラサーです」

杏「逃げも隠れもしない発言だね」

杏「ブルマって、ちょっと前のお仕事のやつだっけ」

モバP「運動会の体操着だな」

杏「プロデューサーはあれが好きなんだ?」

モバP「その時代を経験しているからね。率直に言って、好きだね」

モバP「際どい露出度で目のやり場には困るんだがな」

モバP「ハーフパンツに移行した時はがっかりした反面、妙にホッとしたことを思い出す」

杏「助平」

モバP「スーパーによく売ってる、巻き寿司といなり寿司の入った奴か」

杏「それは助六」

杏「アイドルをあまり変な目で見たりしないようにね、プロデューサー」

モバP「ベストを尽くします」キリッ

杏「困ったアラサーだなぁ」

モバP「おやおや、お困りのようですな」

杏「何言ってんの」ペシ

モバP「まあ何だ、いつもアイドルたちには元気を貰っているから、俺も若くいられる」

モバP「振り回されることも多いが、感謝しているよ」

杏「それは杏だけじゃなく、みんなに言うべきじゃないかな」

モバP「まあな。そうだ、感謝ついでにせっかくだから飴でも」

杏「いや、いいよ」

モバP「え、杏が飴を遠慮した!?」

杏「そーじゃない」

杏「はい、これ」

モバP「お、キュービィロップか、懐かしいなあ」

モバP「でもどうしたんだ? 今日は何かあったのか?」

杏「別に。ただ、たまにはプロデューサーを労ってあげようかなって」

杏「そう思ったんだけど、何をしたら良いか思いつかなかったから、とりあえず杏の持ってきた飴をあげるよ」

モバP「杏……」

杏「え?」

モバP「ありがとうな」

杏「うん。だったらお返しは、休日という形でくれても良いのよ?」

モバP「無茶言わんといて」

杏「あ、分けっこだからね」

モバP「そうか。なら、緑色は俺が貰うな」パク

杏「じゃ、杏はこっち」パク

モバP「ん。小さいが、おいしいな」

杏「……二人で一つってのも、悪くないね」

12.兄と妹と兄の担当アイドル


杏「この前は年少組対象におはなし会を開いてたね」

モバP「本来、幼稚園児や小学校低学年くらいが対象だと思うがな」

杏「いや、アイドル事務所で何してんのさ」

モバP「少し児童図書館的な成分があっても良いかなと」

モバP「という訳で亜里沙先生と二人で本の読み聞かせや紙芝居、人形劇からお手玉、あや取りといった遊びまで」

杏「もー、フリーダムだねぇ。本業疎かにしてない?」

モバP「すいません。ちひろさんからも差し支えない程度にと言われました」

杏「しかも好評につき第二回も検討?」

モバP「小学生以上からも是非参加したいという声がちらほら」

杏「たまにプロデューサーが何でプロデューサーをやっているのか分からなくなることがあるよ」

杏「仕方ないから、杏にも本読んで?」

モバP「そうくるか」

杏「どうくると思ってたのさ」

モバP「いや、ここ楽屋だしな? 雑誌とかならともかく本はないぞ」

杏「えー」

モバP「そもそも杏に読み聞かせるような本って何だ? 聖書?」

杏「聖書って……いや、普通に童話とかね」

モバP「簡単な童話なら暗唱できるぞ。あとは児童文学の一節とか」

杏「もっと別の所にリソース割こうよ」

モバP「好きに生きている結果だな」

杏・モバP「「あはははは」」

杏「何これは」

モバP「さて。収録前の景気づけに、飴をあげようね」ガサゴソ

杏「おぉー」

モバP「キシリクリスタルー」ジャーン

杏「わーい」パク

杏「ん、普通の飴玉とは違うこの感じ」コロコロ

モバP「上下で層になっている飴とか、二色の混じったロリポップキャンディとか、何か夢があるよな」

杏「内側と外側で味が違う飴も好きだよ。舐めてたら味が変わる」

モバP「中がガムだったりする物もあるよな」

モバP「そんなのもひっくるめて、飴って宝石みたいだと思う。前にも言ったかもしれないが」

モバP「味わうだけじゃなく、包装から中身まで、ただ見ていてもこう、心が躍る」

杏「本当だねぇ。シンプルなのに奥が深い」

モバP「子どもはビー玉とかアクリルアイスとか、カラフルでキラキラするものに興味を持つことがあるが」

モバP「飴はそういう類でも特に身近な宝石と言えるのかもな」

モバP「しかし飴は食べると無くなってしまう。諸行無常」

杏「……うん?」

モバP「形あるもの、いつかは無くなる」

杏「何かよく分かんない話になってきたよ」

モバP「それはアイドルもまた同じであり」

杏「おーい」

モバP「それでも俺は偶像(アイドル)を求めてプロデューサーになったのだ」

杏「もしもーし」

??「あめゆじゅとてちてけんじゃ~♪」ガバ


モバP「うおっ」ビクッ


モバP「あれ、俺は何を言おうとして……ん、楓?」

楓「お久しぶりです、兄さん」

杏「えっと……え、高垣、さん?」

楓「ふふ……共演者さんの楽屋に挨拶に来たら、兄さんと出くわしましたですのだ」

杏「へぇ。まさかプロデューサーに妹さんがいて、しかも人気アイドルだったなんて初耳だよ」

モバP「そういや言っていなかったな」

楓「杏ちゃん、今日はよろしくお願いしますね」

杏「あ、はい」ペコ

楓「可愛い……」

楓「杏はアプリコット、可愛いはプリティー……アプリティーコット……ふふ」

モバP「妹はこの通り、子どもがそのまま大きくなったような自由奔放な奴でな」

楓「あ、ひどーい」

杏「じゃ、プロデューサーの影響を存分に受けてるんだね」

楓「なるほど、言われてみれば」

モバP「……ブーメランを投げてしまった」

楓「兄さん、たまには温泉に行きたいです」

モバP「唐突にどうした」

楓「最近はお仕事ばかりで私全然構ってもらえていない……」

モバP「お互い独立しているんだし、いい歳だし、わざわざ連れ立って行かなきゃダメなのか?」

楓「むぅ……冷たい」

杏「杏も休みたい」

モバP「どさくさに紛れて何言ってんだ。……今度な。ちゃんと時間作るから」

楓「約束ですよ? ……やった、ふふふ」

モバP「お前は大丈夫なのか? 最近はバラエティにドラマにと引っ張りだこじゃないか」

楓「大丈夫大丈夫。何なら杏ちゃんも一緒にどうかな?」

杏「えぇ? いや、兄妹水入らずの時間を邪魔しちゃ悪いと思うので、杏は家でゆっくりだらだら」

モバP「ま、その辺の話はまた後でにしよう。そろそろ時間だろ?」

楓「はーい。……杏ちゃん、行こうか?」


――

モバP「さて、これで杏を家まで送ったら終わりだな」

杏「プロデューサー」

モバP「どした?」

杏「何かさ。あれから高垣さんに凄く……気に入られちゃった、気がする」

13.キャンディバー


杏「プロデューサー、何か話してよ」

モバP「おう、時間ができたから良いぞ。午後の仕事も終わったし、飴はいるか?」

杏「もちろん!」

モバP「よし、ではこのいちごみるくをあげよう」

モバP「ソファに腰掛けて、ほい」

杏「わーい!」パクッ

杏「んん、幸せの味ー」

モバP「最近ありすがストロベリーパニックなので、これを買ってきた次第だ」

杏「ストロベリーパニックって何」

モバP「ただ言ってみただけだ」

モバP「ちなみに冷静な苺パスタは割と食べられる物なんだぜ」

杏「何を言っているんだ」

モバP「さて、今日は何の話をしようか」

モバP「豆腐の中にドジョウが潜る話」

モバP「友紀との野球観戦中に、隣席にファールボールが突き刺さった話」

モバP「B級、邦画、アクション、コメディ等等、深夜映画の話」

モバP「メロンパンの生る木がある話」

モバP「バーバパパのリブとララとベルの内誰か一人と付き合えるなら誰が良いかで友達と議論した話」

モバP「いろいろあるぞ」

杏「ネタが尽きない人だなぁ。どれ、ちょっと膝借りるね」ポフ

モバP「さすがに膝を枕にされるなんて思わなかった」

杏「たまにはこういう姿勢で聞き流してみようかなと」

モバP「聞き流すのか」

杏「プロデューサーの声、聞いてて落ち着くんだよなぁ」

杏「寝たらゴメンね」

モバP「……ま、良いか」

おわり

何となく一日100レスしてみたかったのさ

関係ないおまけ


珠美「どうぞ、上がってください」

李衣菜「ここが、珠美ちゃんの家ですか」

李衣菜「ということは……ふふふ」

李衣菜「これぞ」

李衣菜「まさに」


李衣菜「タマホーーーーーム!!」


李衣菜「ロックですね!」

夏樹「だりー、Deep PurpleのBurnって知ってるか?」

李衣菜「……」


李衣菜「タマホーーーーーム!!」


夏樹「ええー」

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