・・・夜中、中隊娯楽室・・・
新隊員「ガソリンが燃えると二酸化炭素と水が……ブツブツ……うーん、謎だ」
男「消灯後まで何やってるんだ?」
新隊員「あ、男小隊長。今度、危険物乙4の試験受けるんです。合格しなかったら中隊をクビだって女3曹に脅されてて……」
男「乙4を?補給隊ならともかく、うちは整備中隊だよ。燃料なんか関係ないだろう?」
新隊員「整備工場に暖房用の燃料タンクあるじゃないですか。あれに燃料を入れるのが下っ端の仕事なんですけど、あれぐらいの大きいタンクになると乙四の資格が必要なんです」
男「そうか。で、何がわからないんだ?」
新隊員「なんで、ガソリン燃やすと水が出てくるんですか?」
男「だってガソリンには水素が入っているだろう」
新隊員「水が入っていたら水抜き剤入れるでしょう?」
男「水じゃない、水素だよ」
新隊員「水素って水の細かいのですよね?」
男「違うよ。中学校で勉強しただろう?」
新隊員「ボクゆとり世代だから……」
男「ゆとり世代ってこの程度の事も習わないのか?」
新隊員「学校では教えてるかもしれませんが、僕の記憶には……」
男「しょうがないやつだなあ、試験いつだよ?」
新隊員「この3連休の後の月曜日です」
男 「あと3日しかないじゃないか?」
新隊員「小隊長、ボク堕ちちゃうかも……」
男「"おちる" の字が違う!たかが乙四の試験にオーバーなことを…。だったら、この連休うちに来て勉強するか?お前一人でやってもできるようにならないだろう?」
新隊員「あ、ボクの事襲う気じゃないですよね」
男「……自分で勉強しろ」
新隊員「うそです、お願いします。教えてください」
・・・男の家・・・
男「酸素には手が二本あって……」
新隊員「えっ?酸素って生き物なんですか?」
男「なんで?」
新隊員「手があるって……」
男「物の例えだ」
新隊員「良かった。呼吸するたびに生き物が体に入ってくると思ったら耐えられない」
男「お前ベジタリアンか?」
新隊員「違いますけど……」
男「だったらいいじゃないか、気にするな」
新隊員「そういう問題じゃないでしょう。常識で考えればわかりそうなものじゃないですか」
男「お前に言われたくない!受からせる自信がだんだんなくなってきた……」
新隊員「じゃあ、受かったら焼肉連れてってください」
男「何でそうなるんだよ」
新隊員「困難な目標を達成しようとする部下のがんばりを評価するのが、上司ってもんでしょう」
男「わかったよ。だったら、ちゃんと勉強しろよ」
新隊員「はい。そういえば昔は焼肉って同衾食って言ってたらしいですよ」
男「同衾食?」
新隊員「一緒に焼肉に行く男女はもうセックスしてるって。つまり、ボクと……」
男「連れてかない」
新隊員「冗談です、連れてって……」
・・・試験の後、焼肉屋・・・
新隊員「ありがとうございました。これで中隊クビにならないですみます」
男「良くあそこから受かったなあ。連休つぶした甲斐が有ったよ」
新隊員「そうだ、連休ボクとずっと一緒でよかったんですか?彼女さんから文句言われません?」
男「彼女なんかいないよ」
新隊員「そうなんですか。小隊長、イケメンな方ですよね。ッテイウコトハヤッパリ、モーホ……」
男「今日割り勘な」
新隊員「うそです、うそです。でも一緒に遊びにいく人っていないんですか?」
男「強いて言えば幼馴染士長ぐらいかな」
新隊員「へー、そういう関係だったんですか、知らなかった。幼馴染さんもかわいい人ですよね、ちょっと天然ですけど」
男「そんなんじゃないよ、うちが近所で幼稚園のころからの付き合いなんだ」
新隊員「つまんないですね」
男「こんな商売してると出会いも無いしなあ」
新隊員「うちの小隊のWAC(女性自衛官)ほとんど彼氏いますもんね。あと可愛い子って言えば……ボクぐらいですかねえ」
男「馬鹿な事いってるんじゃない。だいたい自分で可愛いって言うか?」
新隊員「子供のころから女の子みたいでかわいいって言われ続けましたから、それなりに自信は……そうだ、今晩泊めてください。泊まるところが無いんです」
男「部隊に帰れ」
新隊員「未成年なのに結構な量お酒飲んじゃったでしょ。ボク結構顔に出る方だし。当直にバレたらむちゃくちゃ怒られるんです」
男「知らないよ、そんな事」
新隊員「未成年に飲ませたのは誰ですかね~?おこられるのボクだけじゃないと思うんですけど」
男「お前、わかってて飲んだな……ひとつだけ聞かせてくれ。お前本当にホモじゃないよな?」
新隊員「正直なところ……後ろも前もこれまで一度の経験ありません」
男「だよな」ホッ
新隊員「これまではね。さ、行きましょう」ニコッ
男「これまではって、おまえ……」
お正月にここを見ているということは、残留でしょうか……お疲れ様です
・・・小隊長のうち・・・
ガチャリ
男「よし、寝るぞ」
新隊員「部屋に入ったらいきなりなんて、ムードが……」
男「そういう意味じゃない!睡眠のほうだ!」
新隊員「ええ、もうですか?まだ早いですよ……うーんと、あのですね小隊長」
男「なんだよ?」
新隊員「100歩譲ってボクがホモだったとするじゃないですか」
男「何をどう譲ったかわからないけど、で?」
新隊員「そういうところから抜け出すよう指導するのが若手幹部の役割ってもんじゃないですか。これは服務指導をする絶好のチャンスですよ」
男「お前の性癖にまで口を出す気は無い」
新隊員「そんなつれない事言わないで。もうちょっとだけ飲みましょう、ね?」
男「ちょっとだけだからな。で、お前ホモなのか?」
新隊員「だから、今まで何の経験も無いって言ってるじゃないですか。背が低くて、女っぽい顔してるってだけですよ……
小隊長こそ怪しいですよ。小隊のWAC(女子自衛官)でも彼女にすればいいじゃないですか」
男「みんな彼がいるっておまえ言っただろう」
新隊員「そうですねえ、いないのは幼馴染士長ぐらいですかねえ……あ、女3曹も噂を聞いたことないな」
男「女3曹って付き合ってる人いないの?」
新隊員「よっぽどうまく隠してるんなら別ですけどね。ねえ小隊長、女3曹と付き合ってみたら」
男「女3曹は、ちょっと畏れ多くてね」
新隊員「小隊長が?階級全然上じゃないですか」
男「歳も部隊経験も向こうのが上だし、可愛くて仕事もできるだろ。なんか気後れしちゃうんだよな」
新隊員「ボクと女3曹、どっちが可愛いですか?」
男「女3曹」
新隊員「ひどい、ボクというものがありながら……」
男「ひどくない!お前と俺には何の関係も無い!」
・・・しばらく後・・・
男「で、この間の演習の帰りにさ……」
新隊員「Zzzzz……」
男「寝ちゃったか。風邪ひかさないように毛布かけといてやるか。これが女の子だったら結構好みの顔なんだけど」ゴソゴソ、ソー
新隊員「……」ガバッ
男「うわっ、な、なんだ、酔っ払ってるのか?急に抱きついて……」
新隊員「今ボクのことかわいいって思ってたでしょ?」
男「何言うんだ、藪から棒に。かわいいって、お前男だろう」
新隊員「ボクの目を見て答えてください」
男「いいから、顔を近づけるなってば……わかったから。ああ、かわいい、かわいい」
新隊員「なんか無理やりボクが言わせてるみたい……」
男「そうじゃないよ。ほんとにかわいいと思ってるよ」
新隊員「じゃあ、こうしていても良いですよね」ギュッ
男「ダメだって、抱きつくんじゃない。俺はホモじゃないってば」
新隊員「だったら問題ないじゃないですか」
男「なにがだったらだ!」
新隊員「だって部下に手を出したらセクハラでしょ?」
男「だからお前男だろう!って言うかセクハラしてるのはお前だ!」
新隊員「そんなこと無いですよ。お互い合意してればいいんですから。ほら、小隊長のここ半分勃っ……」
男「そんなこと無い」
新隊員「ふーん、そうですか……ムニュ……ほら」
男「そんなところ触るんじゃない!」
新隊員「もうちょっとムニムニしたらどうなるでしょうね……」
男「あっ、コラッ、やめろ!ダメだってば……」
新隊員「……」
男「ん、急に静かに?おい新隊員?」
新隊員「Zzzz……」
男「あ、また寝たか。こんな酒癖悪いとは思わなかった。だけど人の大事なところを握りながら寝るのはやめてくれないかなあ。もうちょっとで……」
一年以上前に書いたものが、なぜか最近になってケチョンケチョンに叩かれまして(言われてることはもっともなんですけど)。
その中でBLの話しなら読んでも良いというレスがありましたので、そこの色合いだけ膨らましたしたものです。キャラクターに思いいれもありましたし。
別ルートの話になるとは思いますけど、どこまで書くかも固まってません……
・・・翌朝・・・
新隊員「ん?この感触は……うわっ!!」
男「あ、起きたか?」
新隊員「あれ?ボクは何を……昨日小隊長のうちに泊めてもらって……あっ、すみません!!あの、えーと……」
男「謝るところを見ると、昨日何したか覚えてるんだな。本当に酒癖悪いんだから」
新隊員「申し訳ありません。あの、ボク、あんなことしたらクビですか?」
男「酔っ払って抱きつかれたぐらいでクビに出来るか。だけどお前本当にホモじゃないのか?」
新隊員「違います!ただ、小隊長なら甘えても許してくれるかなあって、つい」
男「まあ、あの程度なら怒らないよ。学生時代はもっとひどい目にあってるし」
新隊員「すみませんでした」
男「気にするなよ、酒の上での失敗なんて良くあることだから」ニコニコ
新隊員「……あのう……」
男「なんだ」
新隊員「その、どうせなら甘えついでに、膝枕してもらえませんか」
男「別にいいけど…男に膝枕してもらってうれしいか?」
新隊員「子供のころ、うちの親が機嫌の良い時だけ膝枕してくれたんです」
男「それならいいよ、ほら」
新隊員「小隊長はいやじゃないんですか」
男「なにが?」
新隊員「そのう、ボクに膝枕するのって。ボク男だし 」
男「そうだなあ……妹とかさ、小さいころはよくじゃれ付いてくるだろ。それとおんなじ様な感じかな」
新隊員「妹かぁ……」
男「なんか不満なのか?」
新隊員「妹って言われていい気分なわけないじゃないですか」
男「お前なあ、それは彼女が言うせりふだろう」
新隊員「そういえばそうですけど……」
男「なんだよ?」
新隊員「小隊長は妹さんに膝枕すると、ここがこーんな感じになるんですか」ツンツン
男「それは……朝だからだよ。お前だって朝勃ちぐらいするだろう、な?」
新隊員「朝勃ちかぁ」
男「そうだよ」
新隊員「なるほど。じゃあ、昨日の夜硬くしてたのも朝勃ちですか?」
男「夜に朝勃ちするわけないじゃないか」
新隊員「だったら何なんですか?」
男「それは……」
新隊員「本当はボクが欲しかったんじゃないですか?後ろ?まえ?」
男「だから俺は……」
新隊員「ホモじゃないんですよね。だけど可愛い部下に擦り寄られるのはいやじゃないでしょ?」
男「確かに可愛いと思うけれどもだ、お前と関係を……つまり前や後ろをどうこうしようと思ったことは一度も無い」
新隊員「でも、こうするくらいだったら良いですよね?」サワサワ
男「あっ、そんなとこ、さわっちゃダメだって……」
新隊員「いやですか?」サワサワ
男「……」
新隊員「いやなら止めますけど」ピタ
男「いや、その……」
新隊員「ちゃんと、"続けて"ってお願いしてください」
男「……」
新隊員「嫌なんですか」
男「嫌じゃないけど……」
新隊員「"お願いします"は?」サワサワ
男「……」
新隊員「ふーん、言ってくれないんですか。じゃあ、止めちゃおっかなぁ」ピタ
男「頼む……」
新隊員「頼むか……まあいいでしょう。じゃあ……」スリスリスリッ!
男「あっ、ダメだって。急に早くしたら!あ、ヤバイッ!」ビクン、ビクビク
新隊員「え、あの、まさかいきなり……」
男「……」
新隊員「いや、その、こうなるとは……」
男「お前なあ……」
新隊員「ごめんなさい!ボ、ボク、こんなことする気じゃ……ちょっと甘えるだけのつもりだったのに。すみません」シュン
男「お、おい急にいじけるな。イかされたあげくお前にしょんぼりされたら俺の立つ瀬が……」
新隊員「でも、こんな失礼な事して怒ってますよね。小隊長がせっかく優しくしてくれたのに。やっぱりクビですか……」シュン
男「だからな、”新隊員にいかされたんでクビにします”っていえるわけないだろう」
新隊員「怒ってません?」
男「怒ってないよ。強いて言えばパンツが冷たくなってきたのが不快なだけで」
新隊員「あ、洗います」アタフタ
男「あ、コラ、脱がそうとするんじゃない。汚した下着なんかみっともなくて他人になんか洗わせられないよ。
それよりさ、本当はこういう経験有るんじゃないのか?いいようにもてあそばれた気がするんだけど」
新隊員「そんなこと無いです。ほんとに初めてです、こんなことしたの。エッチな本とか読んでいろいろ妄想はしてましたけど……」
男「その妄想におれは入ってたのか?」
新隊員「内緒です」
男「内緒って、おまえ……」
新隊員「小隊長はどうなんですか、ボクで妄想したこと無いんですか?」
男「……ない」
新隊員「一瞬躊躇しましたよね。ってことは……」
男「無いものは無いって!」
新隊員「そんなにむきになって否定しなくたっていいのに。どうせボクの事なんか……」
男「そういうわけじゃないよ」
新隊員「じゃあ、ほんとは?」
男「だから、ホモじゃない」
新隊員「けど、ボクを見てドキッとすることはあった……」
男「……」
新隊員「フフフ、えーと明日格闘の訓練のとき、練習のペアになってもらえますか。ボク背が低いからいつも余っちゃうんですよ。だから一石二鳥……」
男「公私混同したらダメだって」
新隊員「じゃあ、ボクがほかの男に組み敷かれ身動きも出来ないまま身悶えさせられるようなことがあってもいいって言うんですね」
男「そういう言い方をするな。たかが絞め技の練習だろう、まったく。だったら練習の時、俺の近くにいろよ」
新隊員「ありがとうございます。でも、我慢できますか?」
男「なにが?」
新隊員「みんなの前でボクと抱き合うんですよ」
男「絞め技の練習だ!何度も言うけど、俺は……」
新隊員「ホモじゃないんでしょ。でもボクのことはかわいいんですよね」サワサワ
男「だから、そこをさわるなってば」
新隊員「やせ我慢して……さっきと同じじゃつまんないですよね。今度は直にしてみましょうか…モゾモゾ…あ、ぬるぬるしてる」
男「汚いからやめろって」
新隊員「別に汚くないですよ……ねえ、小隊長?」ムニムニ
男「なんだ?」
新隊員「彼女が出来るまではボクのこと、かわいがってくれますか?」ムニムニ
男「彼女が出来る出来ないに関係ないよ」
新隊員「なんかビミョーな返事だなあ。まあいいや、でも妹さんと同じといわれた以上、彼女にするのはボクが認めたきちっとした女の人じゃなきゃ許しませんから」
男「妹か……そういえば何年もあってないなあ」
新隊員「それはさびしいですね、遠くに住んでいるんですか」
男「そうじゃないけど、俺、姉貴しかいないから」
新隊員「じゃあ、しょうがないですね……あっ、さっきだましましたね、妹と同じだなんていって!そんなことする人にはこうだ!」スリスリスリッ!
男「だから、早くしたらダメだって!あっ」ビクン、ビクビク
新隊員「す、すみません。つい、また……」
男「ハァ……」
新隊員「あのう……」
男「ん?」
新隊員「ボク泊めたこと後悔してますか?」
男「そうだなあ……そんなこともわかってくれないんだったら泊めた甲斐が無かったかな」
新隊員「えーと、それは」
男「また膝枕してもらいたかったらいつでも泊まりにおいで」
ひとまず終わり
1年前の仕切りなおしのBLっぽい部分はとりあえずここまで、ということで一区切りしたいと思います。
短いBLものなら読んでもらえるかしら・・・
ここから先は普通の男女ものの予定なのでちょっと間をおいてまたはじめたいと思います
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