春香「ジーニアス」 (68)
「こうやって歌ってたんだよ!」
ある少女が言った
もう1人の少女は首をかしげる
「おうた…?」
すると少女は頷いた
「うん!こう…こんなふうに」
手を前に広げて歌ってみせ、
嬉しそうに笑う
「ふーん…」
その様子を見ていた少女は
特に感じた様子もなく相槌を打つ
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ここは公園
出会ったばっかりの名前も知らない2人がお互い向き合って話していた
リボンを髪に結んだ赤髪の少女と
青くサラサラした長髪の少女
2人の少女はたまたま公園で知り合い、
赤髪の少女が会場で見た歌を真似して見せていたのだ
長髪の少女は興味の無さそうな顔でキョロキョロと見回すと、ある所で目を止めた
太った猫が少女を見ていたのだ
毛は銀色でフサフサしており、まるまるとした体型をしている
図太い顔でじっとしているその猫に
長髪の少女は釘付けになった
赤髪の少女は相手が話を聞いていない事に気がつくと長髪の少女の目線を追った
そして、それがその猫に向けられているものだと分かると指をさして言った
「あ…猫がいる!」
長髪の少女は猫を見ながら頷いた
「…うん」
赤髪の少女は長髪の少女を見て顔を伺う
「あの猫が気になるの?」
それに反応することもなく、長髪の少女はじっと猫を見続ける
しばらく猫と少女を交互に見ていた赤髪の少女は、パッと長髪の少女の前に身を乗り出した
「もっと近くに行ってみようよ!」
「えっ…」
「ほらっ行こ!」
手を引いて猫に向かって歩き出す赤髪の少女に長髪の少女は抵抗することもなく着いていく
そして、猫の側まで近づくと
赤髪の少女がしゃがんで言った
「大っきいね!」
猫は逃げることもなく、ビクともせずじっとしている
目を薄っすらと開けて2人を見下ろすような目で見ていた
長髪の少女は呟いた
「不思議な色…」
偶にうろうろする猫を見ることはあっても、銀色のフサフサした毛をした猫は見たことが無かった
猫を見ていた赤髪の少女も次第に興味深そうな顔になり
2人してしばらくその猫を眺めていた
そして不意に赤髪の少女が手を伸ばした
「なでたらどうなるかな」
その時、猫はさっと身を引いて少女の手から離れた
「あっ!」
赤髪の少女は声を上げてまた手を伸ばす
「まって!」
猫は立ち上がると、のそのそと走って逃げていく
それを見た赤髪の少女は目をまん丸くした
「うわぁ…」
座っている時と違い立ち上がると更に猫は大きく見えたのだ
ますます興味を持った少女は長髪の少女に言った
「追いかけよっ!」
「えっ?」
「逃げちゃうよ」
「…でも、お母さんが公園から出たらダメって」
赤髪の少女は、乗り気じゃない少女の腕を掴むと今度は力強く引いた
「あっ…」
長髪の少女は引っ張られて抵抗もできずに連れて行かれる
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