ダージリン「例えば各校の隊長で1輌の戦車を動かすというのは?」みほ「え?」 (61)

ダージリン「まぁ、コタツっ! 入ってもよろしいんですの?」

みほ「どうぞ、狭い部屋ですみません」

ダージリン「そんなことはないわ。みほさんらしい部屋だと思います」

みほ「ありがとうございます」

ダージリン「ふぅー。やはり冬はコタツですわね」モゾモゾ

『誰!?』

ダージリン「あら、もう来ていたの?」

カチューシャ「なぁんだ。ダージリンだったの。コタツ内はカチューシャが占領したからほかへいくことを――」

ケイ「ヘイっ!! ミホー!! きたわよー!!」

みほ「あ、ど、どうも」

ケイ「ワオ! コタツがあるー!! 早くインしちゃおーっと!! ゴーアヘッード!!」ゲシッ!!

『いたっ!! 誰よ!! このふっとい足は!! 急に足をいれるなんて何を考えてるわけ!? しょくせいしてるっ!!』

みほ「い、今お茶を用意します」

ダージリン「お気遣いなく。わたくしは紅茶でお願いしますわ」

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ケイ「やっぱりコタツはいいよね。ナイスチョイス」ゲシッ!!!ゲシッ!!!

『いたい! いたい!! ちょっと!! やめて!!』

ダージリン「カチューシャが可哀相ですわ」

ケイ「パードゥン? 太い足って言われた私のほうが可哀相の間違いじゃない?」

みほ「お待たせしました」

ダージリン「ありがとう」

ケイ「さてと!! それじゃあ、ミーティングを始めましょうか!! さぁ、なにする? どーする?」

ダージリン「相変わらず騒々しいお人ですわね」

ケイ「だって、こういうのワクワクしない!? 私はするわ!!」

ダージリン「そういえばまほさんは?」

みほ「い、一応誘ってはみたんですけど、どうなるかはわかりません」

ダージリン「そうですか。まぁ、期待せずに待つとしましょう」

ケイ「それより私が考えてきたものがあるんだけど、聞いてくれる!?」ゲシッ

『やめて……やめて……』

みほ「カ、カチューシャさん、出てきたほうがいいと思います」

ケイ「まずは花火を派手にドーンと打ち上げて、みんなのアイを釘付けにするわけ」

ケイ「そして私たちがチアリーダーの格好で隊列を組みながらエントリー!! どう? いいと思わない?」

ダージリン「確かにそれが無難でしょうけど、季節は冬。チアリーダーの格好は少し抵抗がありますわね」

ケイ「ノンノン。そんなの動いているうちに心も体もヒートしちゃうわ。心配はナッシング。サンダースが全面協力すれば最高のステージだって用意しちゃうわ」

ダージリン「カチューシャもそれでいいんですの?」

『カチューシャ、そんなのしたくないわ』

ケイ「どうして? 絶対盛り上がるのに」

『ありきたりすぎ。金さえかければいいと思ってるやつほど安直な発想に頼って見栄えばかりを良くするのよ。外見が豪華なだけの中身がない建物に魅力なんてないわ』

ケイ「……」

ダージリン「わたくしは利き紅茶なるものを提案します」

ケイ「ホワイ?」

ダージリン「戦車道の規範となる隊長が行うことですもの。優雅で静かなイベントであるべきかと」

『地味すぎね。観客はそんなイベントを期待していると思うの?』

ダージリン「……」ズズッ

みほ「カチューシャさん、でてきてくださいっ。汗かいちゃいますからっ」

ケイ「カチューシャの言うことも一理はあるわね。これだけのイベントだもの、オーディエンスだって大きな期待をしているだろうし」

ダージリン「こんな格言を知ってる? いいアイディアなら、いいからやってしまえ。許可を得るより、謝るほうがずっと簡単だ」

ケイ「知らない」

ダージリン「とにかく好きなようにやればいいのです。観客に迎合してつまらなくなるのはわたくしたちのほうですわよ」

ケイ「だからって会場が盛り上がらなかったら意味がないわ。今回のイベントは戦車道の選手人口を増やすためにやるんだし」

ダージリン「露出の多い衣装で躍って本当に選手人口が増えるかは疑問ですが」

ケイ「オープニングセレモニーとしては良いアイディアだと思うんだけどなぁ」

ダージリン「なるほど。では、オープニングでは貴女に躍ってもらい、メインには利き紅茶大会ですわね」

ケイ「それ盛り上がるの?」

ダージリン「わたくしの企画は聖グロリアーナの隊列のように一切の狂いもありませんことよ」ズズッ

ケイ「リアリー? ちょっと信じられないけど」

『雪合戦をやればいいのよ!! あと雪像をみんなでつくったり!!』

ケイ「って、ミホからは何かないの?」

みほ「わ、私ですか? えと……戦車道のイベントなので……戦車は使ったほうがいいかなって……思うんですけど……」

ダージリン「空砲を利用して演奏をするのはありましたわね。あれをするんですの?」

ケイ「おぉー!! それいいね!! 戦車の空砲を使えばダイナミックな演奏になること間違いなし!!」

みほ「そ、そこまでは……」

ダージリン「演奏者のほうが目立ってしまいそうですけど」

ケイ「そっか。ヒロインは私たちだって言われてるから、それだと趣旨が違ってきちゃうんじゃない?」

みほ「す、すみません」

『雪合戦がいいわ!!」

ダージリン「とはいえ、戦車を使うのはわたくしも考えておりましたわ」

ケイ「それじゃやっぱり、一番最初に出てきた案のオールスターのエキシビジョンでもしちゃう?」

ダージリン「それが廃案になった理由をお忘れですの? 全校の隊長が集まるのなら話は別ですが、今回参加するのはわたくしたちだけですのよ」

ケイ「まぁ、私たちだけじゃ迫力に欠けるだろうけど」

ダージリン「ええ。せめて黒森峰の全面協力があれば形にはなるのですが」

ケイ「二番目の案にあった黒森峰VS選抜選手オールスターってやつね。一度でいいからやってみたいわ。絶対歴史に残るファンタスティックな試合になるのに」

みほ「いいですね。楽しそう」

『雪合戦しないの?』

ダージリン「けれど、オールスターという要素は今回のイベントの目玉ですから、上手く取り入れたいですわね」

みほ「本当にすみません。大洗のイベントなのに」

ケイ「いいって、いいって。スーパーダークホースだった大洗の優勝で戦車道が盛り上がってるのは事実だし、私はカーニバルが大好きだもの」

みほ「ありがとうございます」

ケイ「それに今回はミホの家に招待してもらえてハッピーよ」

みほ「ケイさんがここじゃないと会議したくないって言うので……」

ケイ「言ってみるものね。大きな部屋で話し合うのはクールだけど、こうして肩を寄せあってみかんを食べながらワイワイするのが私は大好きなの!」

みほ「あはは……」

『カチューシャは広い講堂を使いたかったけど?』

みほ「狭くてごめんなさい」

ケイ「コタツの中にに収まっちゃうカチューシャに講堂なんてビッグすぎるわ」

『なんですって!! またカチューシャをバカにしたわね!? しょくせいしてやる!!』

ダージリン「戦車……オールスター……」ズズッ

みほ「あの、やっぱり各校の戦車を集めて、綱引きとかにしませんか?」

ケイ「数の暴力でサンダースがウィンしちゃってもいいなら、オッケー!」

ダージリン「……例えば各校の隊長で1輌の戦車を動かすというのは?」

みほ「え?」

ダージリン「使用するのは今年の優勝校である大洗女子学園の車輌。それも隊長車であるⅣ号でどうです?」

みほ「えぇぇ!?」

ケイ「Ⅳ号を私たちで? あと1人はどうするの?」

ダージリン「まほさんに頼めばよろしいかと」

ケイ「グッドアイディアだけど、マホはやってくれる?」

みほ「ど、どうだろう……」

ケイ「まぁ、乗るのはいいとして、それからどうするわけ」

ダージリン「そうですわね……。大洗のみなさんと試合をするぐらいでいいと思いますわ」

みほ「そ、そんな! 幾らなんでも1輌だけだと試合になりませんよ!!」

ダージリン「たった1輌でマチルダⅡ3輌を撃破し、チャーチルとも互角に渡り合ったのはどこの誰でしたでしょうか?」

みほ「あ、あれはたまたまで!!」

ダージリン「偶然だけであのような結果にはなりませんわ」ズズッ

ケイ「じゃ、それでいきましょう!! 今から楽しみね!!」

みほ「い、いいんですか!? みなさん、車長なのに!!」

ケイ「そっか。操縦手とか砲手とか決めないといけないわね」

ダージリン「学園の名を背負う隊長ですわよ。全てに秀でているのは当然のはず」

『カチューシャ、装填手だけは絶対にできないけど、いいわけ?』

ダージリン「カチューシャは通信手でどうです?」

『どうしてそうなるのよ!! そもそも1輌しかないなら通信手なんていらないじゃない!!』

ダージリン「そんなことはですわ。敵の情報・分析をするのも通信手の役目でしょう」

『カチューシャは車長以外しないから!!』

ダージリン「ケイさんのご希望は?」

ケイ「どこでもいいけど、選べるなら操縦手か砲手がいいかな」

ダージリン「わたくしは操縦手を希望しますわ」

みほ「え? え?」

ケイ「ミホは?」

みほ「本当にいいんですか? 車長としてプライドを持っているんじゃあ……」

ケイ「プライド? あははは。ミホ、今回はどう楽しむのかがポイントなんだから、そんなつまんないものをここで持ち出したら何も楽しめないでしょ?」

みほ「ケイさん……」

ダージリン「みほさんは車長に拘りがあるんですの?」

みほ「い、いえ、とんでもない」

ケイ「じゃ、ミホは装填手なんてどう?」

みほ「は、はい! がんばります!!」

ケイ「となると、マホは通信手ってことになるわね」

ダージリン「まほさんが通信手なんて贅沢な采配ですわね」

ケイ「だけどほかにポジションがないじゃない」

ダージリン「そうですわね……」

みほ「とりあえずお姉ちゃんが来たら話してみましょう」

『来たらいいわね』

ダージリン「まほさんから何か連絡はありまして?」

みほ「いえ、何も……。そろそろ到着してもいいと思うんですけど」

ケイ「サボタージュするならするって連絡くれてもいいのに」

ダージリン「まほさんなら本当に連絡してきそうですわね」

『ミホーシャ、お腹がすいたわ。何かある?』

ピリリリ……ピリリ……

みほ「あ、ちょっとすみません」

ダージリン「お気になさらず」

みほ「もしもし」

杏『やっほぉ、西住ちゃん。会議のほうは捗ってる?』

みほ「はい、メインでやることは決まりました」

杏『ホント? いやぁ、よかったよ。前回の会議のときは何にも決まらなかったからちょっと心配してたんだよね。で、なにするの?』

みほ「各校の隊長がⅣ号に乗って、大洗のチームと試合をするという形になりました」

杏『うんうん。なるほど。河嶋ぁ、メモとって』

みほ「それでみなさんにも協力をしてほしいんですけど」

杏『それは勿論だ。大洗の戦車道イベントなのに西住ちゃんたちだけに任せるなんてできっこないからね』

ダージリン「まほさんは何故来ないと思います?」

ケイ「道に迷ってるとか?」

『恥ずかしいだけじゃないの? それよりおやつはまだなの?』

ケイ「コタツの中で食べるつもり? マナーがなってないわね」

ピンポーン

みほ「あ! お姉ちゃんかも」テテテッ

ダージリン「ようやく来ましたか」

ケイ「ここからが本格的なミーティングね」

『すぅ……すぅ……』

ダージリン「足のほうから寝息が聞こえてくるのが気がかりですわね」

ケイ「コタツはこれがあるから怖いわ」

みほ「はぁーい」ガチャ

まほ「……遅れてしまった。すまない」

みほ「ううん。気にしないで。なにかあったの?」

まほ「土産は何がいいか迷っていたら、この時間になってしまった」

みほ「お、お姉ちゃん!! 気を遣わなくていいって言ったのに!!」

まほ「しかし、各校の隊長が集まる場だ。最低限の礼儀を守るのは戦車道を嗜む淑女として当然のことだ」

ダージリン「……」ズズッ

ケイ「あはははは。そういえばお土産用意してなかった。ミステイク、ミステイク」

まほ「待たせてしまって申し訳ない」

ダージリン「いえいえ。気にしてませんわ」

ケイ「ハロー、マホー。久しぶりね」

まほ「ああ」

みほ「お姉ちゃん、上着貸して。かけとくから」

まほ「お願い」

ケイ「さ、座って座って。寒かったでしょ?」

まほ「そうだな。では、失礼する」ゲシッ

『いたぁい……』

まほ「だ、誰かいるのか!?」ガバッ

カチューシャ「うぅ……すぅ……すぅ……」

まほ「プラウダのカチューシャ……。風邪を引くから出しておこうか」グイッ

ケイ「マホのお土産ってこれね。ええと……即席ラーメン……?」

まほ「地元の名物だ。私があとで作るから是非食べてほしい。みほ、カチューシャをベッドで寝かせていい?」

みほ「うん。いいよー。使ってー」

カチューシャ「すぅ……すぅ……」

まほ「これでよし。それで会議はどの程度の進んだの?」

みほ「ええと、この5人でⅣ号戦車に乗って、大洗のチームと試合しようかってことになったんだけど」

まほ「そうか……」

ケイ「今さらハンターイなんていわないでよ。結構悩んだんだから」

まほ「まさか。貴方たちの考えた企画を上回る案でもあれば別だが、生憎と私はこういうのを考えるのは苦手で」

ダージリン「では、賛成ということでいいんですわね?」

まほ「勿論だ。それに素敵なイベントだと思う」

ケイ「サンキュー、マホ!」

まほ「それぞれの役割も既に決まっているのか?」

ダージリン「ええ。車長はカチューシャ、装填手はみほさん、砲手はケイさん、操縦手はわたくしが務めることになりましわ」

まほ「では、私は通信手か」

みほ「まだ変更できるよ。決定してるわけじゃないから」

まほ「いや。通信手で構わないよ」

みほ「ほ、ホントに? ええと、私たちには味方車輌がいないから、通信手の役割が割と薄くなっちゃうんだけど」

まほ「位置把握等も大事な役割だ。戦車内で必要ない者などいない」

みほ「あ、ごめん。そうだよね」

ダージリン「とはいえ、まほさんの能力を鑑みれば、通信手に置くのはかなりもったいないですわね」

まほ「貴女が操縦手を務めることも同じようなものだろう」

ダージリン「まほさんにこの言葉を贈りますわ。誇りはつつましさに包まれている時に最も成功する」

まほ「ありがとうと言えばいいのかわからないが」

ケイ「よぉーし!! これでメインイベントは決まったわね!! これは間違いなくエキサイトするわぁ!!」

まほ「では、今から始めよう」

みほ「え?」

まほ「どうした?」

みほ「は、始めるってなにを?」

まほ「練習に決まっている」

ダージリン「い、今からですの?」

ケイ「このラーメンを食べてからでもいいんじゃない?」

まほ「1度の成功を叶えるのは、万の練習だ。全員、外に出ろ」

みほ「お、お姉ちゃん、あの……」

まほ「当然、Ⅳ号の使用許可も得ているな?」

みほ「え……」

まほ「……」

みほ「い、今から聞いてみる!!」

まほ「みほ。私がいつも言っていたのはそういうところのはずだ。何故、1手先を読み行動しない」

みほ「ご、ごめんなさい!!」

まほ「そこが改善されたら誰よりも優れた戦車乗りにもなれるというのに」

みほ「も、もしもし!! 会長!! 至急お願いしたいことがあります!!」

ダージリン「今、外に出るのはちょっと……」

まほ「出ろ」グイッ

ダージリン「さ、さむいですわぁ!!」

ケイ「コタツの中に退却ー」モゾモゾ

まほ「既に電源は切ってある。貴女は数分もしないうちに出てくることになるだろう」

ケイ「オーシット!!」

ダージリン「まほさんは戦車道に関してはストイックですわね……」

ケイ「マホー、もっとゆとりをもてないの?」

まほ「カチューシャ、起きろ」

カチューシャ「ううん……すぅ……すぅ……」

まほ「仕方ない、背負うか。手伝ってくれ」

ケイ「オッケー、オッケー。何を言っても無駄ってわけね」

ダージリン「こちらがカチューシャの上着ですわ」

みほ「い、今から練習したいんですけど、いいですか?」

杏『別にいいけど、今いるのはカメとレオポンだけだからなぁ。1年生とか呼ぶ?』

みほ「あ、そんな。折角のお休みなのに可哀相ですから」

まほ「呼んで集まるのなら、呼んだほうが良い」

みほ「お、お姉ちゃん!?」

まほ「大洗のイベントなら全員が協力するべきだろう」

みほ「う、うん……」

杏『お姉さんいるの? 代わってくんない?』

まほ「もしもし?」

杏『あ、西住ちゃんお姉さん。久しぶりだねぇ』

まほ「ええ。決勝戦以来ですね」

杏『今から練習したいってことだけど、みんなが集まるかは微妙なんだよねぇ』

まほ「集まれる人だけで構わない。私も急に招集して全員が来るとは思っていない」

杏『それはありがたいね。じゃ、無理はさせなくてもいいってわけだ』

まほ「だが、何も用事がないというなら……」

杏『まぁまぁ。じゃ、そういうことで。学園で待ってるよー』

まほ「あ、ああ」

みほ「終わったの?」

まほ「角谷さんだったか。不思議な人だな」

みほ「でも、良い人だよ?」

ダージリン「早くいきませんこと?」

まほ「そうだな。出発しよう」

カチューシャ「すぅ……すぅ……さむぅい……」ギュゥゥ

杏「Ⅳ号はいけるー?」

ナカジマ「はぁーい。いつでもいいですよー」

杏「河嶋ぁ、小山ぁ」

桃「はい。アヒルチームは全員来る意志がありました」

柚子「ウサギチームは数人確認が取れないものの、澤さんが必要なら絶対に集めると意気込んでいました」

杏「他は?」

柚子「連絡がつきません」

杏「そっかぁ。とりあえず、アヒルさんチームには協力してもらうか」

桃「分かりました。そう伝えておきます」

柚子「澤さんは?」

杏「連絡がつかないならいいよ。あとあんこうチームは?」

柚子「全員に声をかけました。来てくれるそうです」

杏「よしっ。十分だな。おーい、八九式も追加でー」

ホシノ「八九式もだってー!」

ツチヤ「りょーかーい」

みほ「会長!」

杏「やぁやぁ、西住ちゃん。待ってたよ」

みほ「急にすみません」

杏「いやいや。こっちとしてはここまで真剣に取り組んでくれることに感謝したいぐらいだからな」

まほ「お久しぶりです」

杏「久しぶり。ごめんよ。みんな用事があるっぽくてさ、あまり集められなかった」

まほ「それは仕方ない。急に言い出したのは私だ。気にしないでほしい」

杏「ところでカチューシャが寝てるけど、大丈夫?」

まほ「中々起きてくれなくて。困っている」

ケイ「アンジー」

杏「ケーイ!」

ケイ「(で、ホントに集めようとした?)」

杏「(したした。折角西住ちゃんのお姉さんが来てくれたんだし、練習しないのは損じゃん)」

ダージリン「(練習は日を改めてもできますわよ。本番まではまだ時間もありますし)」

まほ「何をコソコソと話し合っている?」

ナカジマ「整備は終わってます。あと練習弾も積んでおきましたから、思う存分練習してください」

まほ「ありがとう」

ダージリン「では、搭乗しましょうか」

みほ「カチューシャさん、起きてください」

カチューシャ「うん……あれぇ……ここ、どこ……?」

まほ「大洗女子学園の格納庫だ。今から練習を始める」

カチューシャ「れんしゅう……? なんで……?」

ダージリン「まほさんの提案ですわ」

カチューシュ「ねむいから……あとにしてぇ……」

みほ「そんなこと言わないでください」

まほ「……カチューシャを戦車の中へ。砲撃音で起こそう」

ダージリン「意外と過激ですわね」

まほ「誰でもやっているだろう」

ケイ「戦車を目覚ましに使うなんてマホだけじゃない?」

みほ「あ……ぅ……」

典子「アヒルさんチーム、全員集合しました!!」

杏「おー。悪いね、折角の休日だったのに」

典子「練習大好きですから!!」

妙子「しかも各校の隊長と練習できるんですよね!!」

あけび「参加しないわけにはいきません!!」

忍「きっとハイレベルな練習になるはず!!」

典子「バレー部魂がどこまで通用するのか試すときだ!!」

優花里「お待たせしましたぁ」

沙織「みぽりんのお姉さんが来てるってホント!?」

桃「既にⅣ号の中にいる」

麻子「例のイベント絡みか」

華「各隊長で動かすⅣ号は色々と勉強できそうですねぇ」

優花里「今のⅣ号戦車は間違いなく日本で一番強いですね!!」

杏「高い能力をもった人間を寄せ集めたら最強って考えは甘いけどなぁ」

沙織「で、私たちはどれに乗るの?」

―Ⅳ号戦車内―

カチューシュ「すぅ……すぅ……」

ケイ「ミホー? 準備はオッケー?」

みほ「装填できてます!」

ダージリン「どこを狙いますの?」

まほ「前方の的を狙え」

ケイ「イエス、マム!! いっくわよぉ!!」カチッ

ドォォォォン!!!!

カチューシャ「な、なになに!? どうしたの!?」

まほ「起きたか?」

カチューシャ「ちょっと!! 起こすならノンナみたいにもっと優しく起こしなさいよ!!」

まほ「車長、カチューシャ。既に練習は始まっている。指示を」

カチューシャ「……現在の状況は?」

ダージリン「慣れるために軽めの運転をしているところですわ」

カチューシャ「そう。カチューシャもⅣ号の感覚に慣れなきゃね。とりあえず好きに動いてみて」

カチューシャ「それにしても車高が低いわね。そこが不満だわ」

みほ「KV-2と比較されると困ります……。装填、できました」

ケイ「サンキュー。よーし……」

ダージリン「止まりますか?」

ケイ「ノーサンキューよ、ダージリン。行進間射撃でやってみるから」

カチューシャ「11時の方向に的があるわ! あれを狙って!!」

ケイ「ラジャー!」

まほ「……」

ドォォォン!!

ケイ「イエース!!! 命中!!」

カチューシャ「やるじゃない、ケイ。ノンナよりはヘタクソだけど」

ケイ「ふふん。褒め言葉として受け取っておくわ」

杏『そろそろ戦闘訓練はじめよっか?』

カチューシャ「ええ、いいわよ。本気でやってもいいのよね?」

杏『ああ、その代わりこっちも本気でやっちゃうからなぁ』

>>32
>>34
タイプミスでカチューシュになってるけど気にしないで

まほ「そちらの戦力は?」

カチューシャ「聞く必要なんてあるの? これだけの面子が乗ってるのに」

まほ「カチューシャ、本気で言っているのか」

カチューシャ「……本気じゃないわ」

まほ「よかった。角谷さん、戦力を教えてくれ」

杏『うん。ヘッツァー、八九式、Ⅲ突、ポルシェ・ティーガーの4輌だ。増えることはないから』

まほ「ルールは殲滅戦か」

杏『フラッグ戦にしとく?』

ケイ「殲滅戦だとこっちはかなり不利になっちゃうね」

ダージリン「普通ならフラッグ戦でいいでしょうけど、カチューシャは殲滅戦のほうが好きですから」

カチューシャ「殲滅戦に決まってるでしょ。どーせ、全部潰すんだから」

みほ「あはは……」

まほ「……ルールは殲滅戦で構わない」

杏『オッケー。んじゃ、始めようか』

みほ「大丈夫かな……」

カチューシャ「行くわよ!! 力の違いを見せ付けてやるんだから!!」

ダージリン「慣れない戦車で殲滅戦、しかも味方車輌なし。相手のほうが有利であることは明白ですわね」

カチューシャ「関係ないわ!! こっちには今年の優勝校隊長と準優勝隊長と去年の優勝校隊長がいるんだから!! 負けるはずないでしょ!!」

ケイ「それを言っちゃうと向こうは優勝校のメンバーが揃ってることになるわよ?」

カチューシャ「ふん。ミホーシャの指示なしじゃ、上手く立ち回れないんでしょ? ヨユーよ、ヨユー」

みほ「……」

まほ「そうなの、みほ?」

みほ「え? な、なにが?」

まほ「カチューシャの言っていることは正しいのか?」

みほ「えっと……」

ダージリン「それは今からわかることですわね。大洗はみほさんのスタンドプレイでしかなかったのかどうか」

ケイ「それで優勝しちゃったんなら、みほさえいればオールオッケーってこと? それはそれですっごいけど」

みほ「そ、それはないですよぉ」

カチューシャ「違うの? あの奇抜な戦術は全部ミホーシャが――」

ドォォォン!!

―演習場―

八九式『当たった!!』

Ⅳ号『よくもやってくれたわね!! ケイ!! 撃っちゃって!!』

八九式『まずい!! 逃げろ!!』ゴゴゴ

カチューシャ『追え追えー!!!』

みほ『待ってください!! Ⅲ突が隠れているかもしれません!!』

カチューシャ『分かってるわよ!! ダージリン!! 止まって!!』

ダージリン『はい』

Ⅲ突『うてー!!』ドォォォン!!!!

カチューシャ『危ないじゃないの!! 反撃!!!』

Ⅲ突『後退してください!!』ゴゴゴ

カチューシャ『相変わらず逃げ足だけは速いんだからぁ!! 追うわよ!!』

ダージリン『追うのは構いませんが残り2輌が姿を見せたらどうされますの?』

カチューシャ『ここで待ってたら包囲されて逃げ場がなくなっちゃうでしょ。それに八九式はどう見ても囮なんだから、あえて誘いにのったほうが敵車輌の位置もわかっていいじゃない』

みほ『Ⅲ突のあの動き……おりょうさんじゃない気が……。誰だろう……? ううん、おりょうさん以外であそこまで操縦ができる人なんて麻子さん以外にいないはず……』

―Ⅳ号戦車内―

ケイ「ファイヤー!!!」カチッ

ケイ「……外れちゃった」

カチューシャ「ケイ、主砲はもったいないから機銃を使って!!」

ケイ「えー? それってかっこ悪いじゃない」

カチューシャ「いいから。それに八九式なら機銃でも十分でしょ」

ケイ「そうなの?」

ダージリン「Ⅲ突は見失いましたわね。八九式の背中を追うしかないですわ」

カチューシャ「二羽のウサギを一度に捕まえることはできないわ。一羽ずつゆっくりと追い込んでいいのよ」

まほ「この先は森になっている。ここは様子を見るべきだ」

カチューシャ「車長に命令しないで! ダージリン、森に入っちゃダメ!!」

ダージリン「了解」

みほ「麻子さんが乗っているなら……砲手は華さんってことも……そうなると車長は優花里さん……?」

カチューシャ「この先で待ち伏せしてるなら迂回して相手の後ろを取っちゃえばいいわね」

ケイ「私としては正面から堂々と行きたいところなんだけど」

カチューシャ「バカじゃないの。そんなことして負けちゃったら意味ないじゃない」

ケイ「スポーツなんだから正々堂々と勝ち負けをつけるほうが気持ちいいでしょ」

カチューシャ「だーかーら、負けたら意味がないの!」

みほ「ケンカはダメですよぉ」

ダージリン「……」ズズッ

みほ「ダージリンさんも紅茶を飲んでないでなんとか言ってくださいっ」

ダージリン「そうですわね。車長はカチューシャなのですから、最終的な判断はカチューシャにお任せしますわ」

カチューシャ「ほら、ダージリンもこういってる」

ケイ「まぁ、私の流儀には反するけど、ボスであるカチューシャがそういうならいいか」

カチューシャ「よし。ダージリン、森は迂回。相手の背後をとるわよ」

ダージリン「みほさんはどう思いますの?」

みほ「あ、えっと、その、相手が優花里さんの場合、私たちの動きを読んでいる可能性もありますし、砲手が華さんだとどんなに遠くからでも正確に当ててくるので気をつけたほうが……」

まほ「それはともかく、カチューシャ。周囲の警戒を怠らないほうがいい。狙われていたらどうする」

カチューシャ「そんなの言われなくてもわかってるわよ!! とにかく迂回して!! 反対側から突入するわよ!!」

ケイ「ん……? マホの忠告はちょっと遅かったみたいね。ヘイ、ダージリン!! バーック!!」

―Ⅲ突車内―

優花里「恐らくこの森に入るのを躊躇うはずです。そこを狙いましょう」

華「はいっ」

沙織「カメさん、レオポン、所定の位置についていますか?」

杏『いつでもオッケー』

ナカジマ『こちらも準備できてます』

沙織「アヒルさん、用意はいいですか?」

典子『大丈夫です!!』

沙織「優花里! いつでもいいって!!」

優花里「はい!! ――撃てー!!」

華「ふっ」カチッ

ドォォォン!!!

沙織「当たった?」

華「いえ。ダメです」

麻子「直前で気づかれたか。追うぞ」

―演習場―

Ⅳ号『――撃てー!!』ドォォォン!!!

Ⅲ突『うわぁ!?』ポシュッ

カチューシャ『あーっはっはっはっは!! あれぐらいで尻尾を巻いて逃げ出すとでも思ったの!? おめでたいわね!! 貴方たちが相手にしているのは各校の隊長なのよ!!』

カチューシャ『さぁ、この調子で残りも――』

ヘッツァー『ようこそ、カチューシャ』

ポルシャ・ティーガー『西住さん、悪く思わないでくださいね』

八九式『これが西住隊長直伝!! 肉を切らせて骨を粉砕するフォーメーション!!』

みほ『わ、私、そんなの教えてません!!』

カチューシャ『な、なんで3輌もここにいるのよ!?』

ダージリン『数を活かして包囲していると思いきや3輌がⅢ突を壁にして待ち伏せているとは……。捨て身の作戦に乾杯』ズズッ

ケイ『ヘイ、ダージリン!! ムーヴ!! ムゥゥヴ!!』

まほ『みほ。こういう無茶な作戦はお前らしくない』

みほ『だから、私が考えたんじゃな――』

ドォォォン!!!

カチューシャ「ミホーシャ!!! あんな戦術を教えていることをどうして言わないの!!」

みほ「ご、誤解です……」

ダージリン「Ⅲ突を撃破したからと無闇に動いてしまったカチューシャに責任があるのではなくて?」

カチューシャ「なんですって!?」

ケイ「まほはどう思う?」

まほ「敗因は色々とあるが、一番に挙げるとすればやはり練習不足だろうな」

ケイ「練習不足ぅ? もっと大きな要因があると思うんだけど」

まほ「ダージリンが最後に諦めたのは、操縦に慣れていないために避ける術がなかったからだろう?」

ダージリン「そうですわね。無様に足掻くぐらいなら、わたくしは優雅に紅茶を飲むと決めていますの」

カチューシャ「諦めるのが早すぎるわよ!!」

まほ「カチューシャも圧倒的な劣勢から開始される試合には慣れていなかった」

カチューシャ「ふんっ。大体、1輌で4輌に勝てるわけないじゃない。ランチェスターの法則ぐらい知ってるでしょ」

ケイ「最初は自信満々だったのに」

カチューシャ「うるさいわね!! 最初ぐらい強気でいないと勝てるものも勝てないでしょ!!」

まほ「このような試合を本番でしてしまっては戦車道に泥を塗るのと同義だ。これから練習するぞ」

優花里「西住どのー!! 怪我はありませんかー!!」

みほ「優花里さん……」

麻子「会長に本気でやれと言われたのでやってみたが、あれでよかったのか?」

みほ「あ、うん。それはいいんだけど……」

華「何か問題がありましたか?」

みほ「さっきの戦術、私は教えたことがないよぉ!」

沙織「あー。あれはゆかりん考案のものだったんだけど、元はプラウダの真似なんだって」

みほ「そ、そうなの?」

優花里「はい。包囲の一部をあえて薄くするカチューシャ殿の戦術を真似てみたんです」

カチューシャ「Ⅲ突がやけに弱かったのはわざとだったのね」

ケイ「まんまとカチューシャは自分の戦術に引っかかったわけだ」

カチューシャ「違うわよ!! わ、分かってたけど、あえて突っ込んだの!! ダージリンの諦めが予想外だっただけよ!!」

ダージリン「あら? わたくしの所為ですの? ビックリですわ」ズズッ

杏「流石はダージリンだねぇ。どんなに追い込まれても余裕だ」

まほ「以前から感じていたが、ダージリンは大物だな」

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