【ラブライブ】希「意味のない独占欲」 (63)


◆シリアス展開
◇のぞにこ、のぞえり、ほのえり要素あります
◆違和感はことりのおやつにしてください
◇SS初書きですがよければ最後までお付き合いください。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1419309376


「さわら、ないで」

しまった、と思った。
口を突いて出た言葉は周りを困惑させるには十分で、ただ全身が震えて頭の中がぐちゃぐちゃになっていった。

「希ちゃん…?」

太陽のようにみんなを照らす、わたしも幾度となく勇気を貰ってきたμ′sのリーダーが不安げにわたしを見た。

「ごめん。」
「えっ、希ちゃん!?」

その純粋な瞳に耐えられなくて、逃げるようにわたしは屋上を飛び出した。


…………


「はぁ…っ、は、ぁ…っ…はは…なに、してるんだろ…」

全力で校内を走って人気のない廊下にしゃがみ込む。自分の行動に呆れを通り越して笑えてきた。
もう辞めようかな、全部。


「希?」
「っ!!」

誰もいないと思っていた場所に響いた聞き慣れた声に身体が強張った。今一番会いたくなかったのに。なんてタイミングが悪いのか。


「…えり、ち……練習は?」
「ちょっと職員室に野暮用があったのよ。今から向かうところ、希は?今日は特に何もないって」

「う、ウチは…用事、ができて、もう帰るからっ…!」
「えっ、ちょっと希!?」

顔も直視できずに逃げるように走った。
いつも通り声をかけてくれるえりちに心が痛かった。
わたしは、わたしの心はこんなに醜いのに。



誰もいない家にいつの間にか立ち尽くしていた。
もっとも寂しいなんて、みんなと出会うまでは思っていなかったけど。
だけど今はその感情ではなくて、罪悪感だとか黒くてもやもやしたものが心の中で渦巻いていた。

穂乃果ちゃんの手を振り払って、えりちの言葉を遮って逃げて…自分でも何でこんなことになってしまったか分からない。

「えりち…えりち…っ」

ここでこんな風に泣いたって誰も助けてくれる訳じゃない、ましてやこんな気持ちを肯定してくれる人なんて優しいμ′sのメンバーにもいないだろう。
だってわたしが考えてることは
「μ′sなんて入らなければよかった」ってことなんだから。

…………



ろくに眠れないまま朝を迎えた。
どことなく全身が気だるくて少し熱っぽい気もした。

「休もうかな…学校」

昨日の今日で練習にも行きづらいし、えりちの顔を見るのも気まずいし。
でもこのままじゃいけないのもちゃんと分かってる。謝らなきゃいけない、あんな態度をとって今日も逃げるなんて流石にズルい、よね。
うん、ちゃんと謝らなきゃ。よし。

自分を奮い立たせてわたしは洗面所に向かった。



「…み、」
「……。」
「み、…希!!」
「!!に、こっち?どうしたん?」
「どうしたん?じゃないわよ、あんた何度呼んでも返事しないからどーしたのかなって」
「あ、ああ…ウチそんなにぼーっとしてた?」

確かに少し頭がぼーっとする。
気がつけばもう放課後だった。

「希、ちょっと顔貸しなさい」
「え、ウチ痛いのはイヤや〜!」
「うるさいわね!」

おどけてみせるわたしを制して、にこっちの小さな掌がわたしのおでこにピタリと当たる。
そして間も無く深いため息が聞こえた。

「やっぱり…あんた熱あるじゃない。通りで顔赤いと思ったわ…」


あーバレてもうた…

「イヤやなにこっち〜ウチ熱とかないで?…にこっち?どうしたん?」

誤魔化そうと笑っていたらにこっちが目の前で携帯をいじり始めた。

「ほんとあんたは自分のことには無頓着よね…。…これでよし、っと。さ、帰るわよ」
「ええっ!?今日練習あるやろ?!」
「あんたそんな状態で練習出る気だったの?あのねぇ、アイドルは体調管理が命なのよ!今無理して練習したら元も子もないわ」
「それはそうやけど…なんでにこっちも帰るん?」
「あんたの家に看病にいくのよ。どうせ一人なんでしょ、こころたちのことはママに頼んだから気にしなくていいわ」

!?!?
にこっちがわたしの看病!?
そりゃにこっちはμ′sでは料理もできて面倒見もよくて、お母さんぽいけど…!

でも、わたしがにこっちに看病されるのはちょっと恥ずかしいかも…

「着いたわね」
「(特に引き止める理由も思いつかないまま家に着いてしまったわ…)」

…えりち。
昨日あのまま逃げてしまって、今日も何も話せなくて。
えりちはわたしのこともう呆れちゃったかな。



「とりあえず体温計ってくれる?にこはその間にお粥作っちゃうわ」

にこっちは本当手際いいなあ…憧れる。
μ′sの中で一番小さくて、小学生に間違われそうな見た目なのに中身はしっかりしてて、頼れる。
わたしもにこっちみたいな強さを持っていたらえりちに好かれてたかなあ…。

てきぱきと台所で動くにこっちをぼーっと眺めながらそんなことを思っていた。
考えるのはいつだってえりちのことばかりで。
こんなんじゃいつかは嫌われてしまうな。


〜♪

規則的な電子音が部屋に鳴り響いた。
脇から抜き取り表示された数字を確認する。
おお…これは……

「何度だった?」
「た、大したことないで!」

こんな数字にこっちに見られたらまた怒られる。アイドルっていうのは!って。
熱のせいかちょっと涙腺が弱くなっている気がした。こんなことで視界が滲んでしまう。

「はぁ。微熱じゃないことぐらい分かってるわよ。今更アイドルとしてどーのこーのいうつもりなんてないから泣かないの」

わたしの心を見透かしたように優しく言葉を紡いでその小さな手でわたしの頭を優しく撫でる。
心の不安が拭われて安堵感が広がった。

「さんじゅう…くど…よんぶ」
「はいはい。よく学校頑張ったわね。でも無理はしちゃだめよ、わかった?
お粥作ったから少しでも食べてもう寝なさい。寝るまでにこが居てあげるから」
「うん、うん…にこっち…ありがとう…」
「はいはい。ったく世話がやけるわね〜」

それからにこっちが作ってくれたお粥を食べてわたしはすぐ眠りについた。


「ふぅ…やっと寝たわね。…あら、メール……ふふ、希愛されてるわね、みんな希のことが大好きみたいよ」



希を起こさないようにそっと扉を閉めるとメールに書いていた通りμ′sのメンバーが扉の外で待っていた。

「にこちゃんっ、希ちゃんは!?」
「穂乃果!あまり大きな声を出しては希が起きてしまいます!」
「そういう海未ちゃんも声大きいにゃー」

わたしはため息をひとつつくとみんなを近くの公園に誘導した。

「熱があったってきいたけど、希ちゃん大丈夫なの…?」
「花陽ちゃん練習中ずっと気にしてたもんね、ことりも心配。希ちゃん一人暮らしだし…」
「う〜…穂乃果たちに何かできないのかなあ…」

「そうね、今はそっとしておいてあげましょう」
「絵里…希が心配ではないのですか?」
「心配だけれど…今私達に出来ることはないわ」

「絵里のいう通りよ。にこたちは希が元気になるのを待つしかないわ。何かを溜め込んでいるみたいだし少し希にはゆっくりする時間が必要だと思うの」


みんなそれぞれ浮かない顔はしていたけれど、納得はしたみたいだった。
もう日も傾いてきている。ここにいつまでもいてはにこたちも風邪を引いてしまう。

「さ、私達も帰りましょ。」

みんなを促して帰路に付かせる。


「あ、絵里はちょっと残ってくれない?」
「え?ええ…」


…………



「はい。」
近くの自販機で缶コーヒーを2本買って1本を絵里に手渡す。

「あ、ありがとう…。えっと、話がある…のかしら?」
「希のことよ。最近変だと思わない?」

そう、希はここ1週間変だった。
ぼーっとしたり、泣きそうな顔をしたり。
見ていて消えそうだと思ったぐらいだ。

「絵里なら何か理由知ってるかと思ったけど…その様子じゃ知らないようね…」
「えぇ…わたしも、その、希に避けられていて…」

避けている?
希が絵里を?

「希が絵里を避けるわけないじゃない、喧嘩でもしたの?」
「そういうわけではないのだけれど…急によそよそしくなってしまって。私が何かしてしまったのかしら…」

絵里の顔を見る限り嘘ではなさそうだった。
希のことはにこにも正直よくわからない。
けれどμ′sのためにもこのままで言い訳がなかった。

「ねぇ、にこからちょっと提案があるんだけどー…」




「よう寝たなあ…」

目がさめるともう朝だった。
にこっちはいつ帰ったんやろ、それも知らない。
テーブルの上には朝ごはんまできちんと作られておいてあった。
本当、にこっちはお母さんみたいや。

ベッドから起き上がって背伸びをしてみる。
昨日とは打って変わって身体が軽かった。
全部にこっちのお陰やね。早く学校に行ってお礼せんと。
きっとみんなにも心配かけちゃったし、ちゃんと今日は練習にもいかないとね。

「えりち…」

えりちともちゃんと話せるかな。




「希、もう調子はいいの?」
「にこっち!ほんまありがとうなあ。にこっちのお陰で元気いっぱいや!」
「それはよかったわ、まぁあんたはもう少し人に頼ったほうがいいんじゃない?みんな心配してたわよ」
「みんな?…真姫ちゃんも?」
「なんでそこに真姫が出てくるのよ!…まぁ、昨日あんたのアパートにみんな押しかけて来た時には何も言ってなかったけど後でにこにメール送ってくるぐらいには心配してたわよ」
「そうなん…不謹慎やけどちょっと嬉しいなあ……」
「あんたは一人じゃないのよ、分かった?」
「にこっちはさすがやなあ、ありがとにこっち」
「ふ、ふん。当然でしょ。」



「…あら希、もう体調はいいの?」

にこっちと談笑していると後ろから聞き慣れた凜とした声が聞こえてきた。
不意打ち。心臓がバクンッと跳ねた。

「えりち…う、うん、もう平気やよありがとうなあ」
「希……私、あなたに何かしてしまったのかしら…?」
「えっ?」
「私のこと、避けてるわよね?」


…気づかれていた。
いや、わたしの態度が分かりやすすぎたのかもしれない。
確かにそうだ。にこっちとはあんな風に話せてもえりちの前では言葉がスムーズに出てこない。
えりちからすれば避けられていると感じるのも当然だった。

えりちにバレないように先ほどまでにこっちがいた場所に視線を送るも、にこっちはもう自分の席についていた。
まるでわたしたちを2人にしているみたいに。


「希。私はあなたの気に触るようなことをしてしまったのかしら……私は、希に嫌われて…」
「ちがうっ!!!」

一瞬にして教室のざわめきが失せ静寂に包まれる。
だが、そんなことを気にしている余裕などなかった。

「えりちは悪くない、それは本当なん!でもウチが!ウチが…っ」

ウチが、えりちを好きやから。
そーゆー目でえりちを見てしまっているから。
そんなこと、言えるわけないやん…

「希…?」
「ごめん、先生に呼ばれてるから…」
「希!」

言って仕舞えば楽なんだろうか。
だとしてもその代償は?
えりちの悲しそうに揺れた青い瞳が頭から離れない。

何故自分がえりちのそばにいるのかもわからなくなっていた。


………

2度目の拒絶だった。
1回目はあの日、廊下で。

私は一体希になにをしてしまったのか。
何が希をあそこまで追い詰めているのか。
泣きたそうな顔をして、涙をこらえて。

何もわからないまま手離し状態で、私も泣いてしまいたかった。
泣いて、どうして避けるのよって強く腕を引いて問い詰めたかった。

でも、そんなことをしては益々希を傷つけてしまうことは百も承知だった。
話してくれるのを待つしかないのだろうか。
そもそも、希は私に話してくれるのだろうか。


希は違うと言ったけれど、私はとっくの昔に希に嫌われていたのではないか。
それとも、私が抱えているこの想いが希に伝わってしまったのか。


ー希が好き。
もう随分前からだったと思う。
もちろん最初は友達として。

だけれど、お互い心を開いて見せ合って、手と手で触れ合って時間を共にしていくうちに1人の人間として、1人の女の子として『東條希』に恋をしてしまった。

許されない想いなのは重々承知だった。
女の子が女の子に恋をするなんて。
巷では百合、なんて名称もついて調子に乗りそうになるが、これは同性愛なのだ。
日本でないところではこの想い自体が罪な国もあるぐらいだ。

言えるわけがなかった。

けれど、もし伝わってしまっているのならもう隠す必要もないのではないか。
全てを打ち明けた上で嫌われよう。
どんな言葉も受け止めていこう。
このままの関係は絶対に嫌だ。


だけど、今から追いかけて全てを打ち明ける行動に出るほど私には度胸がない。
まずはμ′sの太陽のようなリーダーに相談してみよう。
年下だけれど、彼女は頼りになる。
なによりわたしと同じ想いを抱えているから話しやすいのだ。

私は携帯を取り出して彼女にメールを送った。


19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]


「うーん…希ちゃんがね……」
「そうなのよ、穂乃果、何か希から聞いてない?」

昼休み。
私は穂乃果を誘って中庭で一緒にお昼を食べていた。
もちろん希の相談事で、だ。

「特に何も聞いてないけどなあ…あ、でもね、この間さわらないでって言われちゃったよ…あはは」
「の、希に?さわらないでって?」
「うんー…さすがに穂乃果もちょっと傷ついちゃったよ」


希が穂乃果にそんな攻撃的なことを言うなんて。
ますます頭がこんがらがってしまった。
一体希に何があったんだろうか。


「原因とか…あったの?」
「原因かあ〜…うーん……」

穂乃果が頭を抱えて悩んでいる。
原因も無しに希がそんなことを言うだろうか。
友達に、ましてやμ′sのメンバー…リーダーにさわらないで、なんて。


「あっ、絵里ちゃんに抱きついた直後…だったかなあ…」
「…え?」
「うん、うん!そうだよ!ほら、この間!絵里ちゃんがちょうど職員室にいこうとしてたとき穂乃果が絵里ちゃーん!って抱きついたよね?」
「え、えぇ…そんなこともあったわね」

「その後に屋上でね、希ちゃんにえりちと抱き合ってたやろ?仲いいなあって言われたらじゃあ希ちゃんともするー!って抱きつこうとしたらね」
「…さわらないで、って?」
「そうなんだよ〜…希ちゃん穂乃果のこと嫌いになっちゃったのかな…」


希は、わたしと穂乃果が抱き合ったところを見ていた。
その上で穂乃果と抱き合うことを拒んだ。
つまり、私が原因…よね……

「いつの間に、そんなに嫌われていたのかしら…」
「ぅええ絵里ちゃん!?大丈夫!?えっと、えっと、これ!穂乃果のハンカチだけど使って!?」
「ありがとう穂乃果…優しいのね」
「友達が泣いていたらそりゃあほっとけないよ」


いつだって側にいたのに。
何一つ希の気持ちを分かってあげられなかった。
間接ハグでも、嫌なくらい私は希に嫌われていたなんて思ってもいなかった。

それから少し他愛もない穂乃果のノロケ話を聞いて、にこからの提案のことを穂乃果にも話し、わたしは中庭を後にした。

付き合うカプだけ表記入れとけ
前にほのうみ、ことうみって表記のSSで片方が片想いで終わったパターンが荒れてたから
無駄に怒りやすい人たちの神経逆撫でしてもしゃーない


…………

やってしまった。
今日こそ仲直りしようって、普通に話そうって思ってたのに。なのに。

えりちと話していると自分じゃなくなるみたいで。
言葉を紡ぐのが難しくなって。
こんなんじゃ嫌われてしまう。

先生に用事があると嘘を言った手前すぐ教室に戻るわけにもいかず廊下で立ち尽くしていた時、

「希」

「にこっち…おっかけてきたん?…情けないやろ?ウチなにしてんやろね?えりちにもう顔合わせ出来ん…っ……!?」


精一杯涙を堪えて、笑ってみる。
だけどダメだった、もうわたしも限界だった。
あ、泣いてしまう、そう思った瞬間不意に身体を寄せられた。

「もう、いいのよ希」

優しく呟くにこっちの温かい腕の中にわたしはいた。

「もういいのよ。」

もういい、と何度も呟くにこっちを見てずっと堪えていた涙がどっと溢れ出した。

「うぅ…っ…く、ひっ…にこっち…っ、ウチどーしたらええん…!?ずっとえりちがすきで…っ、えりちが幸せならいいって、本当にそう思ってたんよ、ウチやってμ′sのみんなが大好きなんよ!でも、でも…っ」

こんなの意味のない独占欲だ。
ただのわたしの汚いわがまま。

誰と誰が仲良くなろうが勝手だし、先に仲良くなったからってわたしが偉いわけでもない。
みんなの頼れる存在で、可愛くて綺麗で責任感が強くて、それでいて繊細で。
そんなえりちだからわたしは好きになったし、μ′sのメンバーも仲良くなった。

みんなのことが大好きなのは嘘なんかじゃない。
だけどえりちに恋愛感情を抱いてしまったせいで今のわたしにはみんなが敵に見えて。

こんな気持ちのままμ′sにいていいわけがなかった。


「にこっち」
「…落ち着いた?」
「あんな、ウチ…………ーーー」

「は……?」


もうここにはいられない。


>>10
そうなのですね…初めてなので知りませんでしたすみません。教えてくださってありがとうございます、以後気をつけます。



…………


「ちょ、ちょっと……どういうこと?」
「えりち、ごめんな。そーゆーことやから」
「そーゆーことって何よ!?私達9人でμ′sなんでしょう!?今更やめるってどーゆーことなの!?」


放課後の生徒会室。
メールでえりちに話があると伝えて呼び出した。
μ′sをやめるって。


「ウチには、もうμ′sにいる資格なんてないんよ。えりち、みんなをよろしくな?」
「希、一体あなたに何があったの?ねぇ話してよ、私じゃ頼りないっていうの?友達じゃない、なんで何も言わずに居なくなるのよ、ねぇ希ー……」

「うるさいっ!!!」
「…っ希」

「えりちにはわからんよ!!ウチの気持ちなんて!みんなに好かれてるえりちにはわからんよ!!!もうほっといてや……っ」
「希!!!」


えりちの顔も見ずに生徒会室を飛び出す。
わからんよ、えりちには。
友達としてしかわたしのことを見てないえりちには絶対にわからんよ……



??「……どーゆーこと?」


…………

穂乃果「真姫ちゃん、それ本当に…?」
真姫「えぇ…エリーがμ′sをやめるってどういうこと?って希に言ってた…」

海未「希がμ′sをやめる…?」
ことり「き、聞き間違いじゃないのかなっ」

真姫「な、なによ!私の耳がおかしいっていうの!?」
花陽「ま、真姫ちゃん落ち着いて…!」
凛「希ちゃんがやめるなんて嫌にゃ…」

にこ「………」


………………


「あんな、にこっち。ウチμ′sやめるわ」
「は……?あんた、何…言って。」

「このままじゃμ′sはウチのせいでダメになる。ウチなんかおらんほういいんや。こんな気持ちのままみんなと一緒にはおれんよ」
「…そんなのみんなが許すと思うの?まず、にこが許すと思う?」

「許さんでもいいんよ、ふふっ…むしろ恨んでおいてや?ごめんなにこっち。ありがと」
「希!待ちなさいよっ!!」

…………

なんて声をかけたらいいかわからなかった。
どうしたら希を救ってあげられるのかわからなかった。
でもあの時、希が私の腕の中で絵里への想いを口にしたあの時。確かに私の胸はズキンと痛んだ。
結局同じなのだ、私も。
意味のない独占欲を抱えている。

こんなこと口が裂けても言えないが、いっそのこと絵里に希を嫌って欲しかった。
そうすれば希には嫌でもにこのところに居てくれる。
ズルイって分かっていても、絵里のことしか見てない希を手に入れるにはそれしか思い浮かばなかった。

(にこは、希が好きなのよ…)

仲間だから、友達だから。
確かにあの日看病に行ったのはそんな責任感もあったけど、ほっておけなかったのよ。
あんな弱々しいところを見て、ボロボロになってまで絵里を思い続けて。
にこなら希を、少なくとも今よりは幸せにしてあげられるのに。


……

凛「にこちゃん」
にこ「!な、なによ」
穂乃果「希ちゃんと絵里ちゃんのこと、何か知ってるかなあって…」

何か、って?
希が絵里を好きなこと?
絵里も実は希を好きなこと?
でもお互いそれに気付かずにすれ違っていること?

にこ「……知らないわよ」

それを全部話したらきっとみんなは2人が幸せになれるために行動するだろう。
希を好きなにこのことを置き去りにして。

急に喋ってるキャラの名前が付き出して、うん?ってなった。
地の文系なのか、台本の様な形なのか統一した方がいいんじゃないかなと思う。


>>15

どっちがいいのかなと思って混同してしまいました…ご指摘ありがとうございます、参考にさせていただきます。


>>15

ご指摘ありがとうございます
どちらが読みやすいのかなと思って混同してしまいました…混乱させてしまってすみません


>>15

ご指摘ありがとうございます。
どちらが読みやすいのかと思って混同させてしまいました……混乱させてしまってすみません


同じの3つも投稿されてしまいましたすみません…!
続き書いていきます。
初めてなのでいろいろご指摘いただいて嬉しいですありがとうございます


誰もいない生徒会室で、私は希が出て行ったドアの先をただ見つめて立ち尽くしていた。

(…わたしのせいで?)



「ねぇ絵里、提案があるんだけど…希に告白しちゃわない?」
「えぇ!?!?希に、こ、告白!?できるわけないじゃない…!私、希に嫌われているかもしれないのに…」

「だーかーらぁ!あえてよあえて!このまま気まずい空気でいたって仕方ないでしょ?そーゆーときはぁ、本人に確かめるのが一番にこっ・」
「そんなに簡単に言わないでよぉ…」

「だから…さ、絵里」
「…にこ?」
「希のこと、ちゃんと笑顔にしてあげてね」



にことこんな会話をして、きっとにこも同じ気持ちなんだって悟った。
口には出さないけど、あの子も希を大切に想ってる。
そのにこに託されているなら断らないわけにはいかなかった。だから私は、


「えぇ、必ず。」


そう、確かに約束した。
なのに。


『えりちにはわからない!みんなから好かれてるえりちには分からんよ!!』


どうして、あんなに側にいたのに。
誰よりも近くにいたはずなのに。

私がみんなから好かれてるって希は言うけど、希だってみんなに頼りにされてるし好かれてる。
誰にでも優しくて、いつも人のことを見ていて。
だからわたしもそんな希をすきになった。


でもいつからか、その「好き」は恋愛感情に変わって、口には出せなくなった。
その上仲間に対する嫉妬心まで生まれて。

この間なんて、穂乃果が希に抱きついてて、それだけでもいらっとしてしまったのに、そのあとわたしに抱きつこうとするもんだから触らないでって言いそうになっちゃったわ。
こんな形で間接ハグなんてしたくないって……って…あれ…?



『この間希ちゃんに触らないでって言われちゃったよ』
『絵里ちゃんに抱きついた後に、希ちゃんに抱きつこうとしたら』



……同じ?

学校を出て、穂乃果の隣を歩きながらさっきのことを思い返していた。

『穂乃果じゃダメかな、絵里ちゃん』

どうして。
穂乃果には好きな人がいるんじゃないの?


「なんで穂乃果には好きな人がいるはずなのにわたしに告白なんてしたんだろう」
「……!」
「そう思ってるでしょ?絵里ちゃんの顔に書いてある」


心を読み取られた気がして心臓が跳ねた。
穂乃果はいつもそうだ、心臓にいちいち悪い。


「鈍いよ、絵里ちゃん。穂乃果はずーっと絵里ちゃんのことが好きだったのに」
「ずっと…前、から…?」
「そうだよ?惚気だって絵里ちゃんのことを話してたのに全然気づかないんだもん。絵里ちゃんは本当に希ちゃんしか見えてなかったよね」


少し俯き加減に声を震わせて話す。
からかっているようには思えなかった。
穂乃果の気持ちは優しいし、穂乃果のことは私だって大好きだ。

でも、違う。
希に対する好きの気持ちではないのだ。
仲間、友達として私は穂乃果が好き。


「ごめんなさいね、穂乃果……だけど、私は」
「聞きたくないっ!」
「ほの…」


また、だ。
また流される。
触れ合う唇にもう何にも感じなかった。
こうすれば穂乃果が少しでも楽になるのなら、それが私の罪滅ぼしになると思った。


けど。




「えり…ち……」


どさっと何かが落ちる音がして、その方向に目をやると、今一番会いたくなかった人物が視界に映る。
瞳に涙をためて、無理に口角をあげた、…希がそこにいた。



「えりち……穂乃果ちゃんと付き合ってたん……?」
「違う…!違うのよ希!!私は!」

「じゃあなんで穂乃果ちゃんとキスなんてしてたんっ!?」
「……っ!!」


あの現場を見た以上、言い訳なんてできっこなかった。
だけどこのままでは希に多大な誤解を与えてしまう。
私は、私は希が。希のことだけが好きなのに……!


「違うの希、きいて、私は」
「そうだよ希ちゃん。絵里ちゃんが言えないなら穂乃果が言うね?穂乃果たち付き合い始めたの」


……っ!?


「穂乃果!?」
「や、やっぱりそうなんやね…ごめん、気づかなくて…!」
「ちょっと穂乃果!?希、違うのよ、私は」

「……ウチもにこっちと付き合っとるんよ」
「え…?」
「わー!そうなんだ!おめでたいねぇ!ねぇねぇ今度ダブルデートとかさ!しよーよっ」


にこと希が付き合ってる……?
私は、心のどこかで2人が付き合うことはないと思っていた。
希が好きなのは私だって。
そう、思ってた……。



「ねぇ、話は終わった?」
「あ、にこっち……ごめんなあ、今行くね」


こっちを見て、にこは微かに笑った気がした。

2人が去った路地で私はどうしたらいいかわからずに、ただ1つのことだけを決めて穂乃果の手を握った。


「……穂乃果、私と付き合ってくれないかしら」



もう、戻れない。
私は私から希を手放した。

想いに蓋をして告げることもないまま、穂乃果を愛することを誓った。


………………


思い出していた。さっきの光景を。


『希、違うのよ、私は』

ー…何が違うって言うんだろう。
えりちは、わたしに何を言おうとしていたんだろう。


『穂乃果たち付き合い始めたの』


穂乃果ちゃんならきっとえりちを幸せにしてくれるよね。
もう、諦めなきゃこんな気持ち。
わたしにはもうにこっちもいるんだし。
もう…忘れなきゃ……


「ショックだった?」
「え?」
「絵里と穂乃果のキス」
「……」


ショック、だったのだろうか。
確かに頭を何かで殴られたような衝撃は走ったけれど、心のどこかで安心したような気もする。

…穂乃果ちゃんのあの顔、声。
えりちのあの顔、声。

付き合ってないことなんて、ずっとえりちの側にいたわたしには分かっていた。
でも、信じたふりをするぐらい、もうえりちを想い続けるほどわたしは強くなかった。

これ以上、えりちを想って傷つくのは耐えられなかった。
これ以上泣くのは辛かった。
逃げたのだ、結果的に。

想いに蓋をして、自分の気持ちを伝えることもないまま、わたしはこのままにこっちを好きになるように頑張る。

「ううん…今は、にこっちがおるから」
「何よ、照れるじゃない……。希、ありがとう」
「こちらこそ」

これでいい、これでいいんだ。



『どういうことよ』
「そっちこそどういうことなのよ、希と付き合ってるなんて」
『にこは宣戦布告したでしょ。あんたはなんで穂乃果と付き合ってるのよ?希への気持ちなんて所詮その程度だったんだ』


違う。
そんなんじゃない。


「そんなことにこには言われたくないわよ」
『電話越しに怒られても困るけどね』


忘れなきゃいけない、希のことは。
忘れて穂乃果を幸せにしてあげなきゃ……


『後悔しないのよね?』
「にこは私の味方なの?敵なの?なんなのよ…これ以上振り回さないで…」
『……今の絵里だと穂乃果も希も傷つけることになるわよ』


その瞬間、何かが自分の中で音を立てた。


「じゃあどうしろって言うのよ!?自分の我が儘を突き通して希を困らせろっていうの!?!?私といたら希が傷つくだけじゃない!!あんな状態の穂乃果だって放っておけないし、わたしはどうしたらいいのよ!?」

『…あんたのそーゆートコロが気にくわないのよ。人のことばっかり考えて、結局自分はどうしたいわけ?誰の隣にいたいの?誰を好きでいたいの?誰に幸せにしてもらいたいの、されたいの?もう少し自分に素直になれば?』


言うだけいうとプツッと通信は途絶えた。
規則的な電子音を聞きながら頭の中でぐるぐると考える。


誰の隣に一番いたいのか。
誰のことを一番に好きでいたいのか。
誰のことを一番に幸せにしたくて、
誰から一番に幸せにしてもらいたいのか。

この先、誰と……



「そんなの、わかってることじゃない……」


わたしはメールを打つと、明日のために布団に潜り込んだ。


………………


「まったく…世話がやけるわよね…」


電話を一方的に切って、私はため息をついた。
希を手放したいわけじゃない。
絵里を応援するつもりだってない。

だけど、絵里を必死に忘れようとする希を…そのことでさらに自分を傷つけている希を見ていたらいてもたってもいられなかった。


そこまでして恋人でいたいわけでもない。
仲間として友達として、悩みを聞いて体調崩したなら看病でもしてそれだけで十分だ。
何より大切なのは希が幸せで笑顔でいること。

なら、希と絵里を一緒にさせることしかもう方法がなかった。

きっと2人とも同じ想いを抱えてすれ違っている。
仲がいいが故に、相手を分かりすぎた故に。
なら、にこが仲介すればきっと上手く行くだろう。


希のことは本気で好きだ。
だからこそ笑っていてほしい。


明日、もう一度伝えよう。
そして希の背中を押そう。怖くないように。

だめだったらいつでもにこがそばにいてあげるから、って。
変なの。泣けてきちゃった。

わかってたことだけどやっぱり辛いね。



『希、明日暇ならデートするにこっ☆』


デート…ううん、さよならの準備。
にこの、希への恋心のさよならの準備。

大丈夫。
こうしてよかったって、いつかきっと思えるはずだから。


〜♪

『ええよ〜(o^^o)楽しみやね』


さ、明日のために早く寝ないとね!

……………


「おぉーい!絵里ちゃーんっ」
「穂乃果、早いのね」
「そりゃあ!絵里ちゃんがお休みの日にデートに誘ってくれたんだもんっ、ねぇねぇどこ行く!?穂乃果楽しみにしすぎてあんまり寝れなかったよ〜…」

「ふふっ穂乃果らしいのね。穂乃果はどこにいきたい?」
「えぇっとね〜!穂乃果が決めていいの!?じゃあね、水族館〜!」


いつも以上に元気な穂乃果に手を引かれて水族館への道を歩く。

今日は、今日だけは。穂乃果の言うことを聞いてあげよう。
今日で終わりにするんだから。

もう、自分への気持ちに嘘はつけない。









「絵里ちゃんみてみて!!綺麗〜〜!」
「ハラショー…水族館って素敵ね…」
「おぉっ?あっちでイルカショーやってるみたいだよ!いってみようよ!!」

「ほ、穂乃果!走らないの!」







「…ふぅ!楽しかったねぇ水族館!!ねぇ、絵里ちゃん次はどこにー…」
「穂乃果、あそこの喫茶店に入りましょう」


〜♪
いらっしゃいませー……ご注文は……


「絵里ちゃんどうしたの?さっきご飯食べたばっかりで穂乃果まだお腹すいてないし…疲れちゃった?」
「ううん、あのね。穂乃果に話があるの」


途端に穂乃果の顔が曇る。
きっと何かを悟ったのだろう。

「それは穂乃果にとってよくない話なのかな?」
「喜ばしい話ではないかもしれないわね」

穂乃果は唇を噛み締め俯いてテーブルの下に隠してある拳をぎゅっ、と強く握った。

「なら、穂乃果は聞かないよ。穂乃果は絵里のことが大好きだもん。離れないよ、諦めたりなんかしない」
「穂乃果……」

「だいたいずるいよ、穂乃果とお別れするつもりだったならどうして夢を見させるようなことしたの?こんなのひどいよ。穂乃果だけ喜んでバカみたい…」
「穂乃果、ごめんなさい。あなたの気持ちに応えられなくて…。でも、私はもう自分に嘘はつきたくないのよ。私は希が好きなの」

「穂乃果のことは好きじゃないの…?」
「好きよ、大好き。明るくて太陽みたいでいつもみんなを照らしてて。わたしの憧れだわ」
「な、ならどうしてっ」

「でも、私の穂乃果に対する好きは仲間や友達としてなのよ」
「……っ!」
「穂乃果、本当にごめんなさい。あなたの気持ちは凄く嬉しかったの、これは本当よ」

「でもそばにいてくれなきゃ意味ないよ…」
「いるわ。穂乃果の友達として、仲間として、先輩として。私はいつだって穂乃果の側にいる。何かあったら真っ先に頼って?あなたは一人じゃない」


暫く沈黙が続く。
ぽたぽたと、テーブルに水たまりが出来ていく。
あんまり泣いたら可愛い顔が台無しだわ、なんてぼんやりと考えてた時不意に穂乃果が顔をあげた。


「もう…ずるいなあ、絵里ちゃんは。」


私の大好きな笑顔がそこにあった。


「希ちゃんのところに行ってきなよ。穂乃果はもう少しここにいる」
「で、でも…」
「いいから!もう、察してよ!」

席を立ってぐいぐいと私の背中を押す。

「……穂乃果、穂乃果ありがとう……」
「いいから!今度イチゴパフェ奢ってよね〜!」
「えぇ約束するわ」


約束する。
穂乃果に誓って、必ず同じ間違いは繰り返さない。
私は希が好き。
想いを伝えるために私は喫茶店を後にした。


………………


「にこっち、にこっち!どこいこか?」
「んー何処でもいいわよ?希が行きたいところで」

はしゃぎながら私の手を引く希を見て、愛しいと思った。
ずっとにこの側にいてほしい。
でもやっぱりにこの願いは希が笑って、幸せでいることだから…。


「それじゃだめやん!にこっちの行きたいところも行かんと」
「じゃあ……遊園地いきましょっ?」
「ゆ、遊園地!?」


最後に「恋人」として楽しい思い出作りましょう。
笑って、背中を押してあげられるように。







「にこっち、見て〜風船もらってしもた!」
「あんたって意外と子供っぽいわよね……まぁ、そういうところも可愛いんだけどね」

「はい!これにこっちの分!」
「えぇ!?にこの分の風船!?」
「あったりまえやーん!」


そう言って希が手渡したのは、ピンクのウサギの風船。


「なんか、にこっちに似てるなーって」
「…そっちの薄紫のクマも希に似てるわよ」

子供用の風船を手にして笑いあう。
すごく、すごく幸せ。






「ん〜!!遊んだねーっ!」
「なんであんたそんなに元気なのよ…」
「あははっ、にこっちジェットコースター弱いなあ、次は何乗ろうか?」


陽が傾いてきている。
もう、潮時ね。


「じゃあ、最後に観覧車乗るにこ☆」




…………



「ふわあ…綺麗やねぇ、夕日がキラキラしてる、ねぇにこっちも見てみ…」
「ねぇ、希」

「にこっち?どうしたん?」
「希は今誰が好き?」


希の瞳をまっすぐに見つめて問いかける。
狭い空間でごくり、と息を飲んだのが聞こえた。


「なんで、そんなこときくん?えりちのことはもう忘れるって話したはずやん?」


希は気まずそうに目をそらす。
バカね。そんな態度じゃまだ絵里のことを気にしてるってバレバレよ。


「希は、この先誰と1番一緒にいたい?誰に愛して、愛されたい?辛い時に1番側にいてほしいのは誰?」

絵里に昨夜電話で問いかけた質問を希にも投げかける。
希は俯いたまま答えようとしない。
だけど待ってる、希が自分自身で答えを出してくれること。

「にこっち……」
「ん?」
「ごめん…なさい……わたし、えりちのこと忘れられん…っ、えりちが好き…!」


胸がズキン、と痛む。
あの日と同じ。でも違うのは私の気持ち。
意味のない独占欲を手放して、相手の幸せを願うことが出来る。


涙を浮かべながら嗚咽きながら、希は本当の気持ちを口にした。
ったく、エセ関西弁外れてるし。


「観覧車降りたら行きなさいよ。絵里の所に」
「でも、にこっち」
「幸せになって、希」

唇が触れる。涙味のしょっぱいキス。
恋の終わりを確かに今告げた。


「ありがとう…っ」


繋いだ手をするりと離し、希は1番大切な人のところへ駆け出した。


「これで、よかったのよね……っ、…っく、ひっ…ぅ…」

地面にいくつもシミを作る。それでも涙は止まりそうになかった。
好きだった、大好きだった。
私の想いが無駄にならないように、どうか幸せになって。





「待たせて、ごめん…」
「いえ、私も今来たところよ」


にこっちの手を離して、えりちの居場所もわからないまま遊園地を飛び出した。
ちょうどその時、えりちから今から会えないかとメールが届いた。

そこから向かって、今に至る。


あんなにわたしを想ってくれて、大事にしてくれた。
最後までわたしのことを1番に考えてくれた。
だからこそ、もう進むしかない。
えりちになんて思われようとわたしは、わたしの気持ちを伝える。



「その、話があるの。聞いてくれないかしら」
「ウチも話があるんよ、聞いてほしい」

待ち合わせた喫茶店で適当にコーヒーを注文して向かい合わせに座る。
なんだか懐かしい、こうしてえりちときちんと顔を見て話をするのが。

「ふふっ、なんだか希とこうして話するの久々な気がするわね」
「そうやね…」

わたしがえりちを避けていたから。

「えりち、ごめん。ずっと…避けてて…」
「もう気にしてないわ。随分とあの時凹んだけれどね」


言わなきゃ、好きだって。
心臓がバクバクと音を立てて跳ねる。
上手く言葉は出てこないし、これから言うことを想像して顔から火が出そうだった。


「希。」

名前を呼ばれて、俯いて下げたままだった顔を上げる。




目の前にえりちがいて。
わたしのことを見つめていて。
顔が、近くて。

えりちの唇とわたしの唇が、





「あなたが好きよ、希」






重なった。



唇が重なったのはほんの一瞬で。
だけど、ずっとずっとこの先も忘れられないぐらい衝撃的で、甘くて。

ああ、わたしは。やっぱりえりちのことが好きだった。



ぽろり、ぽろりと後から後から涙が溢れて頬を伝う。

「の、希!?ごめんなさいっ、私…!」
「ウチも…ウチもえりちが好き。ずっとずっと好きだった…!これからもずっと…っ」


言い表せないくらい幸せだと思った。
こんな日が来るなんて思わなかった。


「えぇ。わたしもずっと前から好きだった。これからもずっと希が好きよ…愛してる」


一度手放した手をもう一度掴んだ。
もう二度と離さないと誓って、わたしはえりちの手をぎゅっと握る。





互いの気持ちを話した。
背中を押してくれた2人のこと、避けていた理由、ここにくるまでのこと。
もちろんμ′sからは抜けたりはしない。

すれ違って、傷つけあって。
誰かを代わりにして傷つけて。
それでもやっぱり貴女に戻ってきた。


きっと、これから何度でも間違える。
それでも、その度貴女がいてくれたらきっとわたしは大丈夫。
誰より大切な貴女が側にいてくれたらきっと。









「なぁなぁ、えりちー」
「あら、なぁに?希」


「愛してる。」






【絵里side】


「ごめん、遅くなって…」
「いえ、私も今来たところよ」


息を切らして希が待ち合わせ場所に駆けてきた。
涙の跡がはっきりと浮かんでいる。
きっと、にこに背中を押されたのだろう。穂乃果と同じように。



待ち合わせた喫茶店で適当にコーヒーを頼んで互いに向き合うように席に着く。
なんだかひどく懐かしい気がした。

目をやると希は気まずそうに俯いている。
テーブルの下では小刻みに握った拳が震えていた。

きっと何かを言おうとしているんだろう、俯いたままの顔は火が出そうなくらい赤かった。

…愛おしい。
そう思った瞬間、私は立ち上がりテーブルに手をついていた。



「希。」


ああ、私は。





「あなたが好きよ、希。」





こんなにもあなたが好きで仕方ない。








ふ、と唇が離れて。
視界に映った希は目を潤ませて、新しく頬に涙の線を次々と作る。


しまった、先走りすぎてしまった。
嫌な思いをさせてしまったのだろうか。
どうしよう、このままではまた…


「の、希!ごめんなさいっ、私」
「ウチも…ウチもえりちが好き…!ずっとずっと好きだった…これからもずっと…っ」


耳を疑った。
希から、好きと伝えられた。私に。
今までもこれからもずっと私が好きだと。


ああ、もう死んでもいいかもしれない。
幸せで、幸せでおかしくなってしまいそうだ。

誰よりも大切な希とこうして気持ちがつながるだなんて。一生分の運を使い果たしたかもしれない。



それから、すれ違っていた間の話をした。
にこのこと。穂乃果のこと。
今日あった出来事も、希が私を避けた理由やμ′sをやめると言った理由も。

手をぎゅっと固く繋ぎながら、もう二度とこの手を離さないと誓って、私たちはもう一度唇を重ね



「なぁなぁ、えりちー」

愛しい愛しい、誰より大切な最愛の人。
これからもずっと。

「あら、なぁに?希」
「…愛してる」


少し照れて笑いかけられて、
間違いなくこの恋は続くと確信した。


紫色の長くて綺麗な髪の毛を1束掬って口付ける。
甘い、甘い香りがした。





「私も、愛してるわ希」








これで全て完結になります!
あるスレで読んだ『3年生同士が恋をしたら拗れまくってドロドロになりそう』という意見からこのSSを書くに至りました。


本当に丸っきりの初めてでしたので、至らない点多々あったと思いますがそこは次回の反省点にしたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!

3年生ドロドロにわざわざ穂乃果入れたところは>>1の怨念を感じる
どうせならにこえりでやればお題通りだったのにね……


>>48

自分が穂乃果好きなもので、絵里の背中を押すのは穂乃果がいいなっていう思いからです…不快な気分にさせてしまったならすみません

結局色々理由付けてもほのえり・のぞにこを貶めたかっただけなんだろう



>>50

自分の中で
絵里と希は誰のいうことを一番素直に聞き入れるかな、と考えた結果この組み合わせになりました。
貶すつもりは毛頭ありませんでした。すみません。



正直こんなにレスつくなんて想像もしてなかったので嬉しすぎて震えています…!
本当に読んでくださった皆さんありがとうございました!

次はほのえりで記憶喪失ものを書いていく予定です。よければそちらにもお付き合いください。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年12月30日 (火) 07:49:53   ID: k_v5iURl

最高、やっぱりえりのぞ、次ににこのぞだな

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom