マスオ「僕が会社クビに…」 (155)
タラオ「パパー、何でお家にいるですか?」
マスオ「…」
タラオ「会社行かなくていいですか?」
マスオ「…」
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サザエ「タラちゃん!あっちでカツオお兄ちゃんと遊んでらっしゃい」
タラオ「ええー、カツオお兄ちゃん野球に行くって…」
サザエ「いいから!あっちに行ってなさい!!」
タラオ「…はいです」
サザエ「…あなた」
マスオ「…すまないねサザエ。僕が不甲斐ないばっかりに…」
サザエ「あなた…」
サザエ「大丈夫よ。お金なら当面は心配ないし」
サザエ「あなたはずっと真面目に働いてきたんだもの」
サザエ「少し休んで、また仕事を探せばいいわ」
マスオ「サザエ…ありがとう。僕は君と結婚して、本当によかったよ…」
サザエ「もうっ、マスオさんったら」
サザエ「泣くことないじゃない!さっ!今日の夕飯はあなたが好きなものを作るわ!」
サザエ「だし巻き卵でいいわよね?」
マスオ「…サザエ…」
―夜―
サザエ「ご飯できたわよー!」
カツオ「わーいって…だし巻き卵かぁ…」
サザエ「何言ってんのよ。あんた好きでしょう?」
カツオ「だってこれだけじゃオカズにならないよ~」
サザエ「何言ってるの!早く食べちゃいなさい!!」
カツオ「ちぇっ!」
マスオ(…ごめんよ、カツオくん…)
サザエ「あなた、美味しい?」
マスオ「びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛!!サザエの料理は本当に美味しいなぁ」
サザエ「もうっ!あなたったら~!!うふふふふ」
ワカメ「もう、姉さんとマスオ兄さんって本当に仲良しねぇ」
波平「あー、おっほん!!」
マスオ「ビクゥ」
波平「マスオ君、食事が終わったら、わしの部屋に来てくれんか?」
マスオ「はっはいぃ!!」
―夕飯後―
カツオ「ねえ、姉さん」
サザエ「なーに?今後片付けで忙しいのよ」
カツオ「マスオ兄さん…何かあったの?」
サザエ「…なんで?」
カツオ「だって…いつもは居間で晩酌するのに」
サザエ「たまには静かに飲みたい時もあるでしょう」
カツオ「でも…変だよ…まさかリス…ふぐぅ!!」
サザエ「…いい?カツオ?」
カツオ「ふぅ!!ぐぅう!!??」
サザエ「このことは、誰にも言っちゃいけないわよ?」
サザエ「我が家の稼ぎ手がリストラだなんて…」
サザエ「恥以外の何物でもないんだからね?」
サザエ「絶対にご近所に言いふらしたりしないでよ!?」
カツオ「…はっはい…」
―波平の部屋―
波平「今度のことは災難だったな、マスオ君」
マスオ「…はい。まさか、派閥に入ってないというだけで…」
マスオ「リストラの筆頭になるなんて思っても…」
波平「思ってもみなかったか?マスオ君?」
マスオ「…はい」
波平「…」
マスオ「…」
波平「フゥー」
マスオ(びくぅ!!)
波平「本当に君は甘いな、マスオ君」
マスオ「お義父さん…」
波平「自分の力だけで世間を渡っていけると」
波平「本気でそう思っていたのかね?」
マスオ「…すみません」
波平「まあ…」
波平「今更こんなこと言っても仕方ない」
波平「しかしこの件で…わしの立場も危うくなった」
波平「もうこれ以上の地位は望めんだろう」
マスオ「お義父さん…本当に…」
波平「君が謝ってもなにも変わらんよ。マスオ君」
マスオ「…はい…」
波平「それよりも…」
波平「再就職の目処は付いてるのかね?」
マスオ「いえ…昨日の今日なもので」
波平「なるべく早く決めるように。婿がいつまでも無職では、近所のいい笑いの種だ」
マスオ「…はい。すぐに探します。ご迷惑をおかけして本当に申し訳ないです…」
波平「まったくだ」
マスオ「…」
マスオ(…ふぅ。やっぱりお義父さんは手厳しいなぁ…)
マスオ(再就職か…)
マスオ(明日、ハローワークにでも行ってみようかな)
タラオ「パパー?」
マスオ「タラちゃん!!もう寝たんじゃなかったのかい?」
タラオ「パパー、明日もお家いるですかぁ?」
マスオ「えっ!!いっいや…その…」
タラオ「お家いないですか…」
マスオ「いやっ!!いつもよりゆっくりだよ!!」
タラオ「ほんとですか!!じゃあ、パパと遊びたいですぅ!!」
マスオ「…タラちゃん…」
マスオ(そういえば最近、タラちゃんと遊んでいなかったな)
マスオ(朝からハローワークへ行くつもりだったけど…)
マスオ(また忙しくなる前に息子と交流を持つのも…いいな…)
タラオ「パパー、やっぱり忙しいですか?」
マスオ「いや、大丈夫だよ!」
マスオ「明日は朝からパパといっぱい遊ぼう!!」
タラオ「やったで~す!!」
カツオ(…マスオ兄さん…)
サザエ「ふぅ、やっと夕飯の片付けが終わったわ」
フネ「サザエ、今日はもうお休みなさい」
サザエ「えー。でも母さん、朝食の下ごしらえがまだ…」
フネ「私がやっておくから。サザエも疲れてるでしょう?」
サザエ「母さん…ありがとう…」
フネ「辛い時だけど、一番大変なのはマスオさんだからね」
フネ「あなただけは何があっても味方でいてあげなさい。ね?」
サザエ「母さん…言われなくてもわかっているわよ~!!」
サザエ「マスオさんは私の大事な旦那様だもの!!」
サザエ(…とは言っても…)
サザエ(リストラされたばかりなのにグッスリ眠っちゃって…)
サザエ(危険感ってものがないのかしら)
サザエ(昔からボーッとした人だとは思っていたけど…)
サザエ(かといって、プレッシャー掛け過ぎても自滅しそうだし…)
サザエ(やんわりと発破をかけていくしかないわね)
サザエ(…まったく…面倒くさい人…!)
―次の日―
マスオ「ふぅ~ごちそうさま」
タラオ「パパー!何して遊ぶですか?」
ワカメ「タラちゃんったらぁ!マスオ兄さんは会社があるんだから遊ばないわよー?」
マスオ「…」
波平「うおっほん!!」
カツオ「ほらっ!ワカメ!!早く学校行くぞ!!」
ワカメ「ええ~っ!待ってよお兄ちゃん~!!」
マスオ(カツオくん…ありがとう…)
タラオ「パパー!何するですぅ??」
マスオ「そうだなー。じゃあ天気もいいし公園にでも…」
波平「うおっほん!!!」
マスオ「あっ!いやっ!ええと…」
サザエ「あら、あなた、今日は早くから用事があるんじゃなかったかしら」
マスオ「えっ!その…でも…」
タラオ「パパー…忙しいですか…」
マスオ「ええと…ええと…」
サザエ「…あなた…?」
マスオ「ごめん…タラちゃん…」
マスオ(ごめんよ…タラちゃん…)
マスオ(ハローワークってこんなとこにあったのか…)
マスオ(こんな近所なのに知らなかった…)
マスオ(自分には縁のないとこだと思ってたからなぁ…)
マスオ(思ったより綺麗な建物なんだな…うわっ)
マスオ(凄い人…まだ午前中なのに…)
マスオ(これどうなってるんだろう…どこへ行けば…)
マスオ(…今日はやめとこう…)
マスオ(まだ頭の整理も心の整理もついてないし…)
マスオ(肩身は狭いけど…急いで探すこともないだろうし…)
マスオ(また出直そう)
???「あれ?あなた確かカツオくんの?」
マスオ(まっまずい!!知り合い!!??)
マスオ「ええと…あなたは…」
???「ああ、すみません。私、こういうものです」
マスオ「花沢…ああっ!確かカツオくんの!!」
花沢父「はい。娘がいつもお世話になってます~」
マスオ「いえいえこちらこそ」
花沢父「今日はこの物件の見回りに来たんですよ。マスオさんは今日はどうしたんです…はっ!!」
マスオ「えっ…あっ!!違うんですよ!!今日は仕事ができたんです!!」
花沢父「仕事を…探しに…?」
マスオ「ちっ違いますよ!家の会社で労働市場の調査をしてるんですよ!!」
花沢父「あっ、あ~なるほど!そうですよねぇ」
花沢父「早大出の商社マンがリストラなんて…ありえないですよねぇ」
マスオ「ははははは。いやー、ははははは」
マスオ(詳しいな、この人)
マスオ(…今日は仕事を探さないとしても…)
マスオ(やることがない…)
マスオ(近所にいると誰かに会いそうだし…)
マスオ(…家に戻るか…)
コナン「流石に毛利蘭キモスギルwwwwwwwwwwwwww見てて不快なんだよ糞が毛利蘭死ね」
コナン「なんで付き合ってもいないのに新一の彼女ズラしてるんだよwwwwww」
コナン「キモいストーカー女のクソツノドリル毛利蘭死ね!!!!」
コナン「歩美ちゃんや灰原といちゃつきたいのに原作者が無理やりくっつけようとしてきてマジウゼエ」
コナン「人の心は変わりゆくものなんだよ」
コナン「頭が悪くて性格も悪い毛利蘭なんか早く死ねばいいんだよ」
コナン「優しさも押し付けがましい毛利蘭死ね」
コナン「園子と和葉以外友達0の毛利蘭キモスギワロタwwwwwwどこが人気者なんだよwwwww」
コナン「空手都大会チャンピオンにしては部活やってるところなんて全然見ないんですけどどうなってんだよwwww」
コナン「青山がブサイクツノドリル毛利蘭に無理やり付加価値つけようとした結果が不自然過ぎる今の状態wwww」
マスオ「ただいまー…」
サザエ「…あら、早かったのね」
タラオ「おかえりです!!」
サザエ「それで…どうだったの…?」
マスオ「…ああ、目星は…ついたよ…」
サザエ「本当に!?よかったわ~!!」
タラオ「どうしたんです?いいことあったですかぁ?」
サザエ「うふふ、お昼ご飯にしましょうか?あ・な・た!」
マスオ「あ…ああ、そうだね…」
―昼食後―
マスオ(思わずあんなこといっちゃったけど…どうしよう…)
サザエ「あなた?」
マスオ「あっああ!サザエ!…ええと、タラちゃんは!?」
サザエ「お昼寝してるわよ。で、新しいお仕事はどんなものかしら?」
マスオ「あっ…ええと…建設!建設業だよ!!」
サザエ「…は?」
マスオ「…え?」
サザエ「…まさかとは思うけど…現場で土掘ったりするわけじゃないわよね?」
マスオ「…いや…その…」
サザエ「まさかそんなわけないわよね?」
マスオ「サザエ…その言い方だとまるで…土方が悪いような…」
サザエ「悪くないわよ。でも、私は商社マンと結婚したのよ」
マスオ「…」
サザエ「…考え直してちょうだい」
マスオ(…はあ…)
マスオ(まさか…サザエがあんなこと言うなんて…)
マスオ(本当は…肉体労働もいいかなって…思ってたんだけどな…)
マスオ(汗水垂らして働くってのも…生きてるって感じがしそうで…)
マスオ(…でも…)
マスオ(自分ひとりのことじゃないからな…)
マスオ(ツテで商社関係の仕事がないか探してみよう)
マスオ(とりあえず明日、アナゴくんに電話を掛けてみようかな…)
―次の日―
アナゴ「やあ!フグ田くぅん!!」
マスオ「アナゴくん!!…何だか…ものすごく久しぶりな気がするよ…」
アナゴ「ははぁ!何いってるんだい!」
マスオ「ははは!とりあえず飲もうか!!いつものところで…アナゴくん?」
アナゴ「…あぁー、いや」
アナゴ「会社の近くは…その…な?」
マスオ「…そうだね」
アナゴ「すまないね、フグ田くぅん…」
アナゴ「君と一緒にいるところを…あの部長の一派に見られたら…」
マスオ「わかってるよ。アナゴくん」
アナゴ「…すまないね…。少し離れたところに、旨い魚を出す店があるんだ。そこへ行こう!」
マスオ「…アナゴくん…ありがとう…」
アナゴ「な~に!いいってことよぅ!!ぶるぁあああああ!!!」
アナゴ「…そうかぁ…カミさん…やっぱり怒ってるのかぁ…」
マスオ「…表に出さないけどね…」
マスオ「それで…もしよかったら…」
アナゴ「ああ、わかってるよぅ!フグ田くぅん」
マスオ「アナゴくん!!すまない!!本当にありがとう!!」
アナゴ「な~に。期待に沿えるかわからないが、全力を尽くすよ」
マスオ「アナゴくん…」
アナゴ「さっ、今日は飲もうじゃないかぁ!!ぶるぁぁああああああ!!!」
マスオ「あ~飲み過ぎちゃったかな~っと」
マスオ「ただいま~っと…あれ?鍵が…?」
マスオ「お~い!!サザエ~サザエ~!!」
マスオ「サザ…あっ!」
サザエ「あら、お帰りなさい。随分気持ちが良さそうね」
マスオ「ああ…今日はアナゴくんに…仕事の…」
サザエ「働かないで飲むお酒は美味しい?」
マスオ「すみません…」
マスオ(一応…自分で稼いだ金なんだけど…)
―次の日―
マスオ(…もう朝か…)
マスオ(サザエ…まだ怒ってるかな…)
マスオ(今日はちゃんと仕事を探してみよう…アナゴくんに頼ってばかりもいられないしな…)
タラオ「パパ?」
マスオ「やあタラちゃん。おはよう」
タラオ「おはようですぅ。お仕事行くですかぁ?」
マスオ「ああ…いや、タラちゃん。パパのお話、聞いてくれるかな?」
タラオ「はい?」
マスオ「パパね、お仕事…出来なくなっちゃったんだ…」
タラオ「…どうしてですか?パパ、お仕事嫌いになったですか?」
マスオ「…いや、お仕事は…好きだったよ…」
タラオ「じゃあ、なんでですか?好きなのにできないですか?」
マスオ「…」
マスオ「…そうだね」
マスオ「好きでも…出来なくなっちゃうときがあるんだ」
マスオ「好きなことでも…それが出来るとは、限らないんだ」
タラオ「…よくわからないです…」
マスオ「…そうだね。タラちゃんには…まだ難しいね…」
マスオ「でもね、タラちゃん」
マスオ「好きな仕事は無くなっちゃったけど、パパはこれからね」
マスオ「また、好きになれる仕事を探しに行くんだ。…時間はかかるかもしれないけどね」
マスオ「なんて…はは…タラちゃんに話すことじゃなかったかな…」
タラオ「そんなことないです!!」
マスオ「タラちゃん…」
タラオ「パパ、がんばるです!お仕事行ってるパパ、かっこよかったです!!」
タラオ「だから…またお仕事みつけてがんばるです!!」
タラオ「ぼく…パパのこと応援します!」
マスオ「タラちゃん…ありがとう…」
カツオ「…マスオ兄さん…」
マスオ「!??」
マスオ「カッカツオくん!?…もしかして今の話…」
カツオ「うん…聞いていたよ…」
マスオ「カツオくん…」
カツオ「…マスオ兄さん…酷いじゃないか…」
マスオ「…そうだね…僕は本当に不甲斐ない…」
カツオ「違うよ!!」
カツオ「どうして…どうして何も言ってくれなかったんだよ…」
カツオ「そりゃあ…簡単に言えることじゃないし…世間の目も気になるかもしれない…」
カツオ「…でも…こんなときに…つらい時に支え合うのが…家族じゃないか!!」
マスオ「…カツオくん…」
カツオ「そりゃあ…僕に相談したって…なんにも解決しないかもしれないけど…でも…」
カツオ「でもっ!!」
マスオ「カツオくん!!」
カツオ「!!」
マスオ「…ありがとう…」
カツオ「マスオ兄さん…」
マスオ「君が…こんなに考えていてくれたなんて…」
マスオ「ついこの間まで…あんなに小さかったのにな…」
マスオ「本当に…男の子って…急に大きくなるんだな…」
カツオ「兄さん…なにいってるんだよ…もう…」
マスオ「ははは…ありがとう。君が応援してくれたら、本当に心強いよ」
カツオ「マスオ兄さん…頑張ってね!兄さんなら…会社がほっておかないよ!」
マスオ「うん…頑張るよ」
タラオ「僕も応援しまーす」
マスオ「タラちゃん…そうだね。タラちゃんもいれば…百人力だ!」
マスオ「じゃあ、行ってくるよ」
カツオ「うん…朝ご飯は…いいの?」
マスオ「ああ、朝から並んで気合いをいれないとね!」
カツオ「そっか…いってらっしゃい!マスオ兄さん!」
マスオ「ああ、いってきます!」
タラオ「いってらっしゃいでーす」
マスオ(…ふう…とりあえず…目ぼしい求人は見てみたけど…)
マスオ(やっぱり給料は…今までの半分もいかないか…)
マスオ(アナゴくんが探してくれる仕事も…すぐに見つかるとは限らないしなぁ…)
マスオ(…一度家に戻って…アナゴくんから電話がないか聞いてみるか…)
マスオ(近所の人に会ったら気まずいからな…)
マスオ(人の少ない道を通って帰ろう…おや?)
マスオ(あれは…ワカメちゃん?)
マスオ(そうか…もう学校は終わっている時間なんだな…)
マスオ「おーい!ワカメちゃーん!」
ワカメ「…」
マスオ(あれ…聞こえなかったかな?)
マスオ「おーい!ワカメちゃ…」
ワカメ「…話しかけないで」
マスオ「…えっ…?」
マスオ「ワカメちゃん…どうしたんだい?」
ワカメ「…姉さん、怒ってるわよ。じゃあ」
マスオ「ワッワカメちゃん!?」
マスオ「サザエが怒ってるって…そんな…」
マスオ「…た…ただいま…」
サザエ「…あなた。ちょっとこっちへ来て」
マスオ「ええと…何かあったのかい…?」
サザエ「いいから!!」
マスオ「いっ痛いよサザエぇ!!耳は!!耳を引っぱるのはぁ!!!」
サザエ「どうしてよ…なんで…なんで…黙っておかなかったのよ…!!」
マスオ「それは…家族だし…」
サザエ「あの子はまだ子供なのよ!!話していいことと悪いことの区別もつかないの」
サザエ「あなた…そんなこともわからないの!?」
サザエ「…あなたがリストラされたってことは…もう近所中に…知れ渡ってる…」
サザエ「あなた、タラちゃんに話したのね」
マスオ「…サザエ…それは…」
サザエ「…あの子…近所中に言いふらしてるのよ…」
サザエ「パパは…お仕事出来ないって…」
サザエ「新しいお仕事探してるって…!!」
サザエ「明日から…近所中の…いい話のタネよ…」
マスオ「でも…この近所の人は優しいから…こんなことで…」
サザエ「ええ、そうよ…優しいわよ…」
サザエ「優しいから…表立っては言わないわよ…」
サザエ「代わりに…皆裏では…なんていってるか…」
マスオ「サザエ…それは…」
サザエ「考えすぎだって思ってるんでしょう!?」
サザエ「あなたは…わからないわよ…」
サザエ「近所付き合いだって…したことないものね」
サザエ「ニコニコ笑顔で話していれば…済むものでもないのよ…」
サザエ「笑顔の裏に…どんな感情が隠されているか…」
マスオ「サザエ…サザエ…」
カツオ「姉さんの馬鹿っ!!」
マスオ「カッカツオくん!?」
サザエ「カツオ…あんた!!」
カツオ「姉さんは…姉さんは結局…自分のことばかりじゃないか!!」
カツオ「仕事を失って傷ついてるのは…マスオ兄さんだろう!!」
カツオ「なのに…優しくしたのは最初だけで…」
カツオ「結局姉さんは…マスオ兄さんのことを…家族だなんて思っていないんじゃないか!」
カツオ「…ねえ…姉さんは…」
カツオ「マスオ兄さんが好きで結婚したんだろう?」
カツオ「だったら…こんなときこそ…支えあってよ…」
カツオ「僕…もし…将来結婚したら…」
カツオ「二人みたいに仲のいい夫婦になるんだって…」
カツオ「二人のこと…羨ましいなって…憧れるなって…」
カツオ「そう思ってたのに…」
マスオ「カツオくん…君ってひとは!!」
サザエ「…愛…?」
マスオ「サザエ…?」
サザエ「…そうね…もしかしたら…」
サザエ「私は…あなたのこと…愛していなかったのかもしれない」
マスオ「…サザエ…?何を言ってるんだい?」
カツオ「姉さん…?」
サザエ「私が…あなたと結婚したのは…」
サザエ「あなたとなら…幸せな結婚が出来ると思って…」
サザエ「親にも…親戚にも…近所の人たちにも…」
サザエ「祝福されて…なんの問題も…後ろめたいこともなく結婚できるから…」
サザエ「マスオさん…私は…私は…」
マスオ「サザエ…もういい…もういいよ…サザエ…」
カツオ「姉さん…やめてよ…姉さん!!」
サザエ「マスオさん…私は…あなたを…愛してない…愛したことが…な…」
フネ「サザエっ!!」
サザエ・マスオ・カツオ「!!!」
サザエ「かあ…さん…」
フネ「サザエ。ちょっとこっちへいらっしゃい」
サザエ「母さん…私…」
フネ「カツオとマスオさんは部屋に入ってなさい」
カツオ「母さん!僕はっ!!」
フネ「静かにしなさい」
カツオ「…」
フネ「あなたの話は後でちゃんと聞くから。ね?」
フネ「マスオさん」
マスオ「はっはいぃぃぃ!!」
フネ「カツオのこと、お願いしますよ」
マスオ「…わかりました」
マスオ「さっ、カツオくん」
カツオ「…はい」
カツオ「…マスオ兄さん」
マスオ「なんだい?カツオくん」
カツオ「…ごめんなさい…」
マスオ「…どうして君が謝るんだい?」
カツオ「だって…僕…」
マスオ「カツオくん。…ありがとう」
カツオ「…えっ!?」
マスオ「思えば…僕とサザエは、今まで喧嘩一つしたことがなかった」
マスオ「お互いに感情をぶつけ合うということが…なかったんだ」
カツオ「…いいことじゃないの?」
マスオ「そうだね…悪いことではないのかもしれない」
マスオ「でも、決して良いことでもない」
カツオ「…よくわからないよ…マスオ兄さん…」
マスオ「カツオくん。君はよくサザエと、喧嘩したり追いかけっこをしてるよね」
カツオ「…うん」
マスオ「僕は…そんな君たちを羨ましく思うことがあった」
マスオ「気持ちをぶつけて…喧嘩して…仲直りをして…」
マスオ「何て言えばいいのかわからないけれど…」
マスオ「君たちは家族なんだなって、そう思ったんだ」
カツオ「マスオ兄さん…」
マスオ「僕は昔から…人に遠慮することが多くてね…」
マスオ「人に正直な気持ちを伝えることが苦手だった」
マスオ「相手に合わせることが多いから、目に見える敵をつくることはなかったけど」
マスオ「はっきりと主張しない僕を疎ましく思った人もいたかもしれない」
マスオ「多分これが…今回のリストラの原因にもなったのかもしれないね」
カツオ「マスオ兄さん…」
マスオ「誰にでもいい顔するのが…必ずしも良い結果をもたらすとは限らないみたいだ」
カツオ「マスオ兄さん…でも僕は…」
カツオ「マスオ兄さんのそういうところ…好きだよ」
カツオ「優しくて…色んな人を受け入れられるような…」
マスオ「カツオくん…」
カツオ「だから…そんなにさ、自分を悪く言わないでよ…」
マスオ「カツオくん…君は本当に…優しい子だね」
カツオ「そんなの…ま、僕はマスオ兄さんの弟だからねっ!!」
マスオ「ははは!カツオくんは本当に調子がいいなぁ!!」
カツオ「ははは!マスオ兄さんも、たまには僕を見習って、姉さんと取っ組み合いでもしたほうがいいんじゃない?」
マスオ「う~ん、サザエは強そうだなぁ」
カツオ「強いよ~姉さんは!町内相撲大会の伝説の横綱だからね!!」
マスオ「びゃあ゛ぁ゛゛ぁすごいぃ゛ぃぃ゛!!」
ワカメ「…あのう…マスオ兄さん…」
マスオ「おや?ワカメちゃん。おかえりなさい」
カツオ「ワカメー!どこ行ってたんだ?」
ワカメ「…マスオ兄さん…そのう…」
マスオ「どうしたんだい?ワカメちゃん?」
ワカメ「さっきは…ごめんなさい…」
マスオ「ワカメちゃん…」
ワカメ「その…お姉ちゃんが怒っていたから…私も…つい…」
カツオ「ワカメ!!マスオ兄さんになにを言ったんだよ!!」
マスオ「カツオくん!!」
カツオ「マスオ兄さん…でも…」
マスオ「いいんだよ。ワカメちゃん。びっくりさせて…すまないね…」
ワカメ「マスオ兄さん…私…私…」
マスオ「大丈夫だよ。ワカメちゃん」
マスオ「さっ、居間へ行こうか!」
マスオ「お義父さんもそろそろ帰ってくるところだし、今日は僕らで夕飯を作ろう!!」
カツオ「ええ~っ!!僕、料理なんてできないよ~」
マスオ「練習すればすぐ出来るようになるさ!」
ワカメ「そうよお兄ちゃん~!最近は男の人でも料理が出来ないと結婚できないのよ~」
カツオ「なんだよ~ちぇっ!!ま、いいや。たまにはこういうのもいいかもね」
マスオ「よ~し!そうと決まれば台所へレッツゴーだ!」
マスオ「さて、そうは言っても…」
マスオ「今から作るとなると…時間がかかるものは作れないしなぁ」
カツオ「マスオ兄さん!見てよこれ!!」
マスオ「おっ!見てよこれ!!」
マスオ「おっ!お肉じゃないか!!」
ワカメ「割り下もあるわ~!」
マスオ「今日はすき焼きの予定だったのかな?よ~し!!」
マスオ「これなら材料を切るだけだね!手分けして切ろう!!」
カツオ・ワカメ「おーっ!!」
マスオ「ふぅ…何とか形になったかな」
ワカメ「わーい!美味しそう!!」
カツオ「この一番大きく切ってある肉は僕のだからね!!」
ワカメ「お兄ちゃんずる~い!!」
マスオ「ははははは!カツオくんは本当に食いしん坊だなぁ」
フネ「あらあらまあまあ」
マスオ「あっ!お義母さん!」
マスオ「すみません…台所を勝手に借りてしまって…」
フネ「あら、いいのよ。助かったわ」
マスオ「ありがとうございます…あの、サザエは…?」
サザエ「マスオさん…」
マスオ「サザエっ!そのっ!僕は!」
波平「今帰ったぞー」
マスオ「あっ、お義父さん…」
フネ「まあまあ。お話は後にして、夕飯を頂きましょう。皆が作ってくれたすき焼き、とても美味しそうだわ」
波平「…なんだ…マスオ君が作ったのか…」
マスオ「…はい」
波平「男が料理とはな…」
マスオ「…」
フネ「あなた?」
波平「ああ…うむ…」
カツオ「よーし!食べるぞ~!!いっただっきま~す!!」
ワカメ「あらぁ?そういえばタラちゃんは?」
マスオ「そういえば…姿がみえないな…」
サザエ「そんな…まさか…事故にでも…!」
フネ「落ち着きなさいサザエ」
サザエ「でも…っ」
タラオ「ただいまでーす」
フネ「ほら、帰ってきたじゃないか」
サザエ「タラちゃん!どこ行ってたの」
サザエ「…あら」
ノリスケ「いや~お久しぶりです!」
サザエ「ノリスケさん…」
ノリスケ「伊佐坂先生のところへ原稿を取りにいったら」
ノリスケ「偶然タラちゃんも先生のお家に遊びにきてましてね」
タラオ「偶然ですぅ」
ノリスケ「帰るついでに送りにきたんですよ」
サザエ「あら…それはどうも…」
ノリスケ「いや~いいんですよ!それにしても今夜は…すき焼きですか」
サザエ「ええ…まあ…」
ノリスケ「いいな~この季節のすき焼きって美味しんですよねぇ」
タラオ「ノリスケおじさんも一緒に食べるですぅ」
サザエ「!!タラちゃん!」
ノリスケ「いや~それは悪いですよ」
タラオ「みんなで食べるとおいしいです~」
ノリスケ「そうかい?いや~タラちゃんに誘われると断りきれないなぁ」
ノリスケ「いや~おじゃまします」
マスオ「ノッノリスケ君!」
ノリスケ「お久しぶりです。マスオさん…おや?エプロンですか」
ノリスケ「仕事も出来て料理もこなすとは…いや~さすがですね」
マスオ「ああ…はは…そんなことないよ」
波平「う~おっほん!!」
ノリスケ「あっ!おじさん!お久しぶりです」
ノリスケ「いや~それにしても美味しいですねこのお肉」
ノリスケ「最近ウチの会社も景気が悪くなっちゃって」
ノリスケ「こんないい肉買えないですよ」
カツオ「ノリスケおじさん!このネギすごく美味しいよ」
ノリスケ「ごめん。ネギは苦手なんだ」
ノリスケ「いや~ビールが美味しいなぁ!!…あれ?」
ノリスケ「マスオさんは飲まないんですか?」
マスオ「ああ、僕はいいんだ」
ノリスケ「どうしたんです?遠慮深いな~。…あっ!もしかして…」
ノリスケ「失業しちゃって肩身が狭くて酒も喉を通らないとか!?ははは!な~んちゃって!!」
ノリスケ「な~んちゃって!!…あれ?」
タラオ「パパ、お仕事できないですぅ」
カツオ「…タラちゃん…」
波平「ノリスケ。お前は出入り禁止だ」
ノリスケ「すいません…こんな時に上がり込んじゃって…」
マスオ「気にすることはないさ。はは…いつものことじゃないか」
ノリスケ「いやーそれにしても、あんまり気を落とさないほうがいいですよ」
ノリスケ「人生山あり谷あり!落ちるとこまで落ちれば怖いものなんてなくなりますよ!ははは!!」
マスオ「ははは!そうだね」
マスオ(ノリスケ君が言うと腹が立つな…)
ノリスケ「じゃあ求職活動頑張ってください!それじゃ!!」
マスオ「ああ、おやすみ」
マスオ(さて、ノリスケは帰ったし)
マスオ「サザエ…いるかい?」
サザエ「マスオさん…」
マスオ「タラちゃんは?」
サザエ「今晩は父さんと母さんのところで寝かせてもらうわ」
マスオ「そうかい…なあ、サザエ」
マスオ「不甲斐ない夫で…本当にすまない」
サザエ「…あなた…」
マスオ「今回のリストラも、社内で上手く渡り切れなかった…」
マスオ「僕の意気地のなさが…優柔不断さが…原因になったんだ」
マスオ「この性格のせいで…君たちに…君たち家族に本当に迷惑をかけてしまったね」
マスオ「もし…君が望むなら…僕は…」
サザエ「だめっ!!」
マスオ「サザエ…?」
サザエ「マスオさん…あなたは…どうしたいの?」
サザエ「私がどう望かじゃなくて…あなたの…気持は?」
マスオ「サザエ…」
サザエ「私は…あなたの気持が…本当の気持ちが聞きたいの…」
マスオ「僕の…僕の気持は…」
マスオ「僕は…君ともう一度…やり直したい」
サザエ「マスオさん…」
マスオ「頼りなく思うかもしれないけど…僕は君と夫婦でいたい」
マスオ「今度は…ちゃんと君たちと家族になりたいんだ」
サザエ「…」
マスオ「サザエ…どうしたんだい?」
サザエ「あなたって…どうしていつもそうなのよ…」
マスオ「サザエ?」
サザエ「いつも…自分からあやまって…」
サザエ「人の良いことばかり言って…」
サザエ「私は…あなたに謝られるたびに…苦しかった」
サザエ「謝られたら…そこで終わりじゃない…」
サザエ「反論もできない。喧嘩もできない。…本当に言いたいことも言えない…」
サザエ「あなたの前で一人で感情を爆発させていると…自分が馬鹿みたいだった…」
サザエ「私は…いつも仲良しじゃなくてもいいから…」
サザエ「喧嘩して、仲直りして、なんでも言い合える…そんな仲になりたかった」
マスオ「ごめん…サザエ…ごめん」
サザエ「違うの…最後まで聞いてちょうだい…」
サザエ「さっき、母さんと話したの」
―数時間前―
フネ「少し落ち着いたかい?サザエ?」
サザエ「うん、ありがと。母さん」
サザエ「…ねえ、母さん」
フネ「なんだい?」
サザエ「母さんは…父さんのこと、愛してる?」
フネ「そうだねぇ…昔みたいに愛してるかっていわれたら、嘘になるね」
サザエ「…そう」
フネ「でもね、サザエ」
フネ「純粋な愛情だけを求めていては、夫婦に成り立たないんだよ」
サザエ「…」
フネ「母さんもね、お父さんのことが嫌になった時期があったのよ」
フネ「お前がまだ小さい頃だったけどね」
フネ「お父さん、会社でトラブルを起こしてね、やめるやめないの大騒ぎになったの」
サザエ「父さんが?」
フネ「今も頑固だけど、あの頃はその頑固さに若さゆえの意地が上乗せされてねぇ」
フネ「母さん、やめるかもって話を聞いた途端、実家に帰っちゃったの」
サザエ「母さんが?」
フネ「ええ。この人は私を守ってくれないって思った途端、何もかも嫌になってねぇ」
サザエ「それで…どうしたの?」
フネ「実家のお母さんに説教されて、とんぼ返り」
サザエ「おばあちゃん…なんて?」
フネ「ちゃんと夫婦になりなさいって」
サザエ「夫婦に…なる…?」
フネ「そう。変な感じでしょう?結婚したんだから、とっくに夫婦なのにって」
フネ「でもね、それは違ったのよ」
フネ「お互いが努力して、色々なことをすり合わせていかないと、夫婦になれないのよ」
フネ「その為には自分から何かを捨てなきゃいけないかもしれない」
フネ「でも、捨てた後にはまた何かが手に入るのよ」
フネ「わかるかい?」
サザエ「難しいわ…」
フネ「そうだね。すぐには理解できないかもしれないねえ…」
フネ「それで…サザエはどうするんだい?」
サザエ「…ちゃんと…マスオさんと話して…謝りたい…」
サザエ「私…今まで自分のことばかりで…」
サザエ「今回も…マスオさんが一番辛いはずなのに…」
サザエ「あの人の優しさに…強さを甘えて…勝手なことばかり言って…」
サザエ「母さん…私、あの人と…夫婦になりたい…ちゃんと…家族になりたい」
フネ「そう…そうだね。あなたたちならきっと…大丈夫だよ…」
フネ「おや…いい匂いがしてきたね」
フネ「さっ、サザエ、夕飯の支度、手伝いましょう」
サザエ「はい、母さん」
サザエ「マスオさん…本当にごめんなさい…」
マスオ「サザエ…」
サザエ「私、あなたに甘えさせてもらっていることにも気がつかなかった」
サザエ「本当に…子供だったんだと思うわ」
サザエ「一時の感情に流されて…人のことを考えられない…」
サザエ「こんなんじゃ…奥さんになんてなれない…誰かを支えることなんて…できない…」
サザエ「マスオさん…私も、あなたと家族になりたい」
サザエ「ちゃんと…あなたが何でも言えるような…そんな相手に…なりたい…」
マスオ「…サザエ…もう、顔をあげておくれよ」
サザエ「マスオさん…」
マスオ「ありがとう、サザエ…本当に…うれしいよ…」
サザエ「お礼を言うのは…私のほうよ…マスオさん」
マスオ「まだ…仕事も決まらないし…話し合うこともたくさんあるけど」
サザエ「少しずつ歩み寄って、すり合わせて…」
マスオ「僕たち…家族に…なろう…」
サザエ「マスオさんっ!!」
マスオ「サザエ…愛してるよっ!!」
~ お し ま い ~
このSSまとめへのコメント
リストラは恐ろしい…
毛利蘭首吊って死ねよ
毛利蘭首吊って死ねよ
毛利蘭首吊って死ねよ毛利蘭首吊って死ねよ
毛利蘭首吊って死ねよ毛利蘭首吊って死ねよ
毛利蘭首吊って死ねよ毛利蘭首毛利蘭首吊って死ねよ吊って死ねよ
マスオさんかっこいい!!
花沢父が何もかも知りすぎてるキーマンだと思って読んだのに、
最後まで何も波風がない話でガッカリした。
ワカメもすぐ謝るし、サザエもすぐ心改めるし、平坦すぎてつまんね
リストラはおそろしいな…
1番かっこいいのはカツオだろ
マスオはただの意気地なし