ブサメン「ん? この手紙をか?」
女「う、うん」
ブサメン「了解した。今すぐでいいのか?」
女「うん。そ、その……」
ブサメン「何、仕事はしっかりとこなす! んじゃ、がんばってくれよ!」
女「うん……うん? がんばるって――」
ブサメン「アディオス!」
ブサメン「片思いってのは、案外すんなりと終わりを告げるものだな」
ブサメン「おーい! イケメン!」
イケメン「ん? ああ、ブサメンか」
ブサメン「ほい」
イケメン「いや、ほいって言われてもなぁ」
ブサメン「恋する乙女からの果たし状だ。憎いね~このこの!」
イケメン「……も、もしかして、まさかの二通目、だと?」
ブサメン「……わお、もしかして」
イケメン「さっきサッカー部の奴から同じものをもらったよ。そいつのクラスメイトの女子から、って」
ブサメン「おまっ、森島先輩かよ!」
イケメン「わおっ! チキチキチキ」
ブサメン「わおっ! このこのっ!」
イケメン「にしても、こんなゲームみたいな出来事が起こるとは……」
ブサメン「イケメンのみに許されたイベントだな」
イケメン「だ、だから俺は別にイケメンなんかじゃ――」
ブサメン「どの口が言うかー!」
イケメン「お、おまっ! お前のヘッドロックは冗談にならんっ!」
ブサメン「水泳部直伝! 七咲ヘッドロックッ!」
イケメン「もはや七咲関係ねぇ!」
ブサメン「まったく……で、冗談は置いといて、返事、どうするんだ?」
イケメン「はぁはぁ……そ、そうだなぁ。会ってみないと分からないけど……」
ブサメン「分からないけど?」
イケメン「多分、断らせていただくよ。相手には悪いけど」
ブサメン「はぁ……まったく、生粋のイケメンだっつーのに、もったいねぇよな毎回」
イケメン「だから俺はイケメンじゃ……まぁいいか。だって、相手は少なくとも本気だと思うし、それを『なんとなく』で相手をしちゃいけないと思うんだ。高校生の恋愛ごとき、っていうやつもいるけど、うちの両親は高校生の時に出会って、そのまま出来ちゃった結婚したわけだし」
ブサメン「……はぁ」
イケメン「? どうした、あきれたような様子で」
ブサメン「だからお前には叶わないんだよ、まったく」
イケメン「?」
ブサメン「んまっ! 俺にはこれから先ずっと無関係な話だろうから、トンズラさせていただくぜい! 次の時間は移動教室だしな!」
イケメン「あっ、そういえばそうだったな…………なぁ、ブサメン」
ブサメン「ん?」
イケメン「お前……何かあったのか?」
ブサメン「……さぁ? ほれ、早くしないと鐘がなっちまうぞ」
イケメン「……ああ」
イケメン(……中学の時から付き合ってきたからわかるけど……ブサメンがああやってテンションが少し高い時は、大体何か会った時だ……何があったんだろうか)
――昼――
ブサメン「購買行くけど、なんか頼みたいものある~?」
メガネ男子「あっ、俺唐揚げポテト」
普通男子「俺はハッシュドポテトとヨーグルト!」
イケメン「お前ら、もう少し遠慮したらどうなんだ?」
ブサメン「いいのいいの。好きでやってるんだし。んじゃ、行ってきますか。金は後でな」
ブサメン(……あっ、女さんだ)
女「へー! あそこの喫茶店の裏メニューにそんなのあるんだー!」
ギャル「バイトとかスタッフの間でしか知られてないんだけど、店長さんが『いつもギャルさんは頑張ってくれてるし、君の友達は特別に出してあげる』って!」
ギャル2「ラッキー! それじゃあ私はグレートコズミックあんみつパフェ!」
女「な、名前からして色々と過ごそう……」
ブサメン(……バレー部のエース。成績もよくて、交友関係も広い、才色兼備にふさわしい女子。……ふっふーん、やはりイケメンとのツーショットはかなり映えそうだ)
ブサメン(イケメンはあんなこと言ってたが、多分女さんだって分かったら、オッケーだすんじゃないか? イケメンは俺達と毎日ぼやくように『青春したい』って言ってばかりだったし)
ブサメン(まぁ、俺みたいなやつに親しく接するイケメンが希少種なだけか。おそらく話を会わせてくれてるだけだろうし……)
ブサメン(……これもまた一興。そう考えれば)
ブサメン(この時間帯の購買はピークを過ぎてるから、まだ空いてるほうだな。……って、あぶなっ。テイクアウト用の弁当が残り二つだけかよ)
ブサメン(俺はこの肥満体形に反して、油ものは弱いからなぁ。和食弁当はどうしても確保した限りだ)
ブサメン「おばちゃん、和食べんと――」
???「す、すいません。和食弁当を……あっ」
ブサメン(おや? ……ネクタイの色からして、女子の後輩か。高校生にしては体が小さいなぁ)
後輩「え、えーと……その……」
ブサメン(う~ん……弁当は残り二つ。一つは和食弁当、もうひとつは中華満腹スタミナ弁当。……まっ、迷った方が負けってことなのね)
ブサメン「少女よ」
後輩「ふぇ? え、えーと、その……」
ブサメン「選択肢は二つに一つ。どっちか選べ。五秒以内に」
後輩「えっ!? えーと、えーと、わ、和食弁当を……」
ブサメン「おばちゃん。中華満腹スタミナ弁当」
おばちゃん「あいよー」
後輩「へ? で、でも、さっき――」
ブサメン「少女よ。世の中、隙を見せれば負けだ。この限定品のスタミナ弁当はありがたく頂戴したっ! さらばだっ!」
後輩「あ! そ、その――」
ブサメン「はぁ……なんで初対面の人と話すと、変なキャラになるのかねぇ」
ブサメン「帰ったぞーい」
メガネ「あれ? 俺たちのやつは?」
ブサメン「……あっ」
普通「えぇー!? お、俺たちの昼食なのに……」
イケメン「だったら自分で買いに行けよ、はぁ……」
ブサメン「すまん、今すぐ買いに行く」
イケメン「おいおい、お前が食べる時間がないじゃないか」
ブサメン「問題ない。人間一色抜いても死にやせんよ」
イケメン「だろうが……」
ブサメン「んじゃ」
メガネ「よろしー」
普通「頼んだぜ」
イケメン(……相変わらず他人には甘いよなぁ、ブサメンのやつ)
――放課後――
イケメン「おーいブサメン」
ブサメン「ん?」
イケメン「明日の放課後、カラオケにでも行かないか?」
ブサメン「……なんで明日? 今日じゃないのか?」
イケメン「あ、ああ。その……ほら、例の手紙の……」
ブサメン「そうだったなぁ……まったくモテる男はつらいねぇ、このこの」
イケメン「ぐ、偶然のめぐりあわせだって……それより、明日はどうなんだ?」
ブサメン「ああー、その……すまん、無理だ。今は夏だしな」
イケメン「やっぱり駄目か。まぁ、放課後は学校のプールで練習詰めだもんなー、さすが水泳部というべきか」
ブサメン「夏以外は案外暇だがな。んじゃ、そういうことで……断るなら、優しく振ってやれよ」
イケメン「ああ、善処はするさ」
ブサメン「ふぅ……相変わらずほかの部員はなしっと」
ブサメン「先生がそもそもやる気がない人だから、幽霊部員が多いんだよなぁ。三年生が引退してからは俺だけだし……まぁ、ゆっくり練習できるってのは評価できるけど」
ブサメン「ふぅっ……ふぅ。最近ふくらはぎに違和感を感じるな……練習後のストレッチを丹念にやるか」
ブサメン「……あっ。部室の鍵はともかく、プールの鍵を借りるのを忘れちまった。なんで別々の鍵なんだろう、一緒にした方が楽なんだがなぁ」
ブサメン「まっ、ここは俺一人だし、しょうがないか……」
ブサメン「学校が広いから事務室まで遠いなぁ……お、あそこにいるのは……女子ソフトボール部か」
ブサメン「あっ、こっち見た……うんうん、予想通りの反応だな、多分一年生だな」
ブサメン「別に漫画とかみたいに笑われたりはしないが……関わりたくないのが普通であって」
ブサメン「女性から見れば、不潔の具現化とも言うべき顔なんだろうな。自分でもそう思うし」
ブサメン「……汗くせぇ。少し歩いただけで夏場はこれだよ」
???「……あっ」
ブサメン「ん? あ……よう」
幼馴染「……」
ブサメン「まっ、怪我しない程度にやれや」
幼馴染「……」
ブサメン(そしてそそくさと逃げる、と……彼女は幼馴染。小学校からの知り合いで、元水泳部だ。だが、突然退部して、今はアルバイトに励んでいるらしい)
ブサメン(まぁ、退部の心当たりは知ってるんだよなぁ。当初は俺と先輩、そして幼馴染の少数での練習で、二年生が俺と幼馴染だけだったから、『俺と幼馴染は恋人だ』っていう、根も葉もないうわさがたったんだ)
ブサメン(幼馴染はその噂をされるのが嫌で退部したのだろう。いくら幼少のころからの知りあいでも、こんな顔の男の恋人って嫌に決まってるからなぁ)
――夜――
ブサメン(はぁ、はぁ……後500メートル。それを終わらせれば)
???「おーい。そこの熱血ウォーターボーイ」
ブサメン「はぁ、はぁ……あれ、女教師先生? ……あぁ」
女教師「時計をみろ、とっくに小学生はおねむの時間だ。にしても、今日の身周りが私でよかったな。幸運に思え」
ブサメン「すいません。久しぶりに無我夢中になってました」
女教師「相変わらずの熱中ぶりだな。関心関心。だが夜の9時までプールで泳ぐのは関心できんな。文句を受けるのはうちらなんだ」
ブサメン「先生は副顧問だからいいんじゃないですか?」
女教師「そんなにあまくもないぞ。親によっては学校全体を巻き込んだりするからな」
ブサメン「なんというか……公務員の宿命ですかね」
ブサメン(女教師先生は水泳部の副顧問だ。とはいっても、顧問より部にかまってくれるから、正直顧問でいいと思う)
女教師「お前登校集団地下鉄だっけか?」
ブサメン「あ、はい」
女教師「車に乗ってけ。そんなに家も遠くないしな」
ブサメン「そうですね……時間も時間ですし、お言葉に甘えて」
女教師「結構結構」
女教師「レッドブル、飲むか? 疲れた体には結構効くぞ」
ブサメン「うーん……遠慮しておきます」
女教師「そう。……にしても、よく頑張るよなぁ」
ブサメン「え?」
女教師「三年生は引退して、実質お前一人の水泳部。そんな状況でもしっかり毎日練習してるんだ。それに、毎朝走り込みをしてるし」
ブサメン「あれ? なんで……ああ、そういえばランニングコースの途中に、先生の家ありましたっけ」
女教師「たまに早起きした時にお前の姿を見るんだ。……にしても、人一倍運動してるのに、なんでその腹は引っ込まないかねぇ」
ブサメン「高校の受験勉強のときに思いっきり太って、それっきりなぜかやせないんですよねぇ。しかも、無駄に脚とか胸の筋肉がつくから、ますます図体がでかく見えちゃって」
女教師「所謂隠れゴリマッチョか」
ブサメン「ああ、そんなニュアンスですね」
女教師「で」
ブサメン「で?」
女教師「高校生らしく水泳に情熱を捧げるウォーターボーイ。彼女はできたのか?」
ブサメン「ああ、丁度今日、失恋したところですよ、ははは」
女教師「……失恋って、そんなに軽いもんだっけか?」
ブサメン「そういうんもんじゃないですか?」
女教師「ふーん……幼馴染はどんな様子か聞いてるか?」
ブサメン「人伝に聞いてるだけなら。今はアルバイトに時間を割いてるそうで」
女教師「あいつのうちシングルファザーだからなぁ。自転車店の自営業ってのも大変なんだろう」
ブサメン「あまり客足が多いとは言えないって幼馴染から聞いたことはありますね」
女教師「まぁ、どうせ女子高生だ。遊びの金も多いに限ることはないね。まだ援助交際に手を出さないだけまし、か」
女教師「なぁなぁ、ブサメンよ」
ブサメン「またどうしたんですか、改まって」
女教師「あと一人ぐらいは部員が欲しいとは思わないか?」
ブサメン「はぁ……いつもぼやいてますけど、多分、俺がいる限り無理な話ですよ?」
女教師「うーむ、いっそ整形したらどうだ?」
ブサメン「教師がいう言葉じゃないですね」
女教師「私は生徒に『ウソをつく』ってのは覚えさせたくない性質でね」
ブサメン「……まぁ、せいぜい引退するまで待って下さいよ」
女教師「そのままだったら来年には廃部だよ」
ブサメン「だったら俺が退部して、来年の新入生をどかどか入部させればいいんじゃないですか?」
女教師「誰が部を引っ張るんだ。お前は、まぁ、見た目はあれだが水泳の腕は確かだ。お前にはこれからも水泳部の部長としてがんばってほしいってのが私の本音だ」
ブサメン「もちろんがんばりますよ。……でも、実際俺もマネージャーぐらいは欲しいと思っていたところです」
女教師「いいなぁ。休日練習の時なんかは楽できそうだ」
ブサメン「一人いてくれただけで色々と助かると思うんですけど……なんせたった一人の水泳部に今更入部するモノ好きもいませんよねぇ」
女教師「せめて幼馴染がいればよかったんだが……まぁ、悔んだってしょうがないか」
ブサメン「あっ、ここで止めてもらって大丈夫です」
女教師「はいよ。じゃっ、明日の放課後は練習に行けるから、またな」
ブサメン「はい、よろしくお願いします」
女教師「……なぁ、ブサメン」
ブサメン「は、はい?」
女教師「……水泳に打ち込むのは大変結構。けどな、高校生時代でしか作れない『経験』ってのは数え切れないぐらいあるもんだ。お前は、その……その経験を積むための努力をしてみたほうがいいんじゃないか、って言いたかった」
ブサメン「要は?」
女教師「誰か女でも作れば?」
ブサメン「神にでも祈ってください。俺に関してばかりは神頼み以外の方法はありませんよ?」
女教師「そっか。……んじゃ、おやすみー」
ブサメン「どうもでした」
ちょっとポッキー買ってくる
後、かなり急ぎ足でしかも即興なので、誤字多くてすいません
水泳部の奴って筋肉すげえよな
ブサメン「ただいまー」
妹「あっ! お帰りおにい!」
ブサメン「すまんな、今日は遅くなった。夕食はもう食べたか?」
妹「うん! お風呂も入ったし、後は寝るだけ。おにいの分の夕食はテーブルにあるから」
ブサメン「あんがとな」
妹「そうそう、後、あまり部屋を散らかさない方がいいよー?」
ブサメン「まーた無断で部屋に入ったか……」
妹「ご、ごめん……」
ブサメン「ああ、いいよいいよ。怒られるのは俺だから」
妹「?」
ブサメン(一度同人誌を放置したまま外出して、母さんに怒られたんだ。『妹が見たらどうするの』って。まぁ、正論なんだけども)
ブサメン「とにかく、今度からはパソコンを使いたいときはおにいに進言すること。ok?」
妹「わ、わかった」
ブサメン「よろしい」
『カニカニカニカニカニクリ~ム~♪ コロコロコロコロコロコロするぞ~♪』
ブサメン「梨穂子はかわいいなぁ!」
ブサメン(……幼馴染、ねぇ。梨穂子ルートもそうだけど、たとえどんなに長い付き合いでも、小さなきっかけでそれは壊れるもんなんだなぁ。……まぁ、俺の場合、原因は俺にあるわけだけど)
ブサメン(……にしても、部員が後何人かは欲しいよなぁ。このままだと廃部は確実的だし……かといって、今から部員をかき集めることなんて無理)
ブサメン(可能性があるとしたら、帰宅部の一年生を拾うしかないのかね。……七咲みたいなエースが欲しい、いや、男子一人女子一人が理想、最低でも女子の枠も確保したいな)
ブサメン(……ダメだ。らちが明かんね)
ブサメン「そんな、空から女の子が降ってくるわけでもないし。……七咲ルート、久しぶりにやろっかな」
一旦ここでストップ
あまり書けなかったような気がする……
予想外の多さの支援、感謝感謝
>>37
個人差でまちまちですけど、自分はすごく肩幅広くなりました
おかげでさらにデブに見えました
――翌日の放課後――
ブサメン(最近は本格的に『夏』って感じで、夕方でも蒸し暑いなぁ。どうにかなんないのかね)
ブサメン(……にしても、いきなり『進路指導室にこい』って、女教師先生なにかあったのだろうか? 多分荷物の運び出しとかだろうけど……)
ブサメン「しつれいしまーす」
女教師「おっ、やっと来たか」
ブサメン「どうしたんですか? この前と同じように資料の――」
???「あっ……」
ブサメン「ん?」
後輩「そ、その……は、はじめ、ましてっ」
ブサメン「…………ああ! 購買で会った」
女教師「む? 知り合いか」
ブサメン「ま、まぁ、そんな感じです」
ブサメン「で、いきなりどうしたんです?」
女教師「ああ。まず、私が一年の担任を受け持ってることは知ってるだろう?」
ブサメン「そうでしたね、3組でしたっけ?」
女教師「まぁな。でな、後輩さんはついこの前に3組に転校してきたばかりなんだ」
ブサメン「転校生? ……そういえば、風のうわさでそんな話を聞いたような……」
女教師「まぁそれはいい。肝心なのはこれからだ。それで、実はそいつから相談をとある受けてな」
ブサメン「は、はぁ」
女教師「なんでも、転校してくる前まで、実は持病持ちで運動がろくにできない。けれどそれが完治した今、せっかくだから運動部に入部して、自分の体をより健康的にしたい、ってな」
後輩「は、はい……」
ブサメン「大体話は読めましたよ。それを聞いた先生は、それに漬け込んで水泳部に勧誘したってわけですね」
女教師「そうそう。とはいっても、最初は選手としてじゃなくて、水中歩行とかの水中運動をしてもらって、少し激しい運動に慣れてほしい、って思ってる。最終的には泳ぐことが目標だがな」
仮眠終わり
トリつけました
ブサメン「なるほど。先生の思いつきにしては理にかなってますね」
女教師「珍しく頭が回ったよ。……で、今ちょうど入部手続きが終わったから、お前に紹介しようと思って呼んだんだが……顔見知りなら色々と助かった」
後輩「え、えと、あぅ……」
ブサメン(なんだか、妙にたじたじしてるなぁ。恥ずかしがり屋なのか? てか、よく見ると高校生には見えないほどの幼女体型だなぁ。その手の人なら喜びそうだ)
ブサメン「ふむふむ。そうか、入部してくれるとはありがたい。なら自己紹介をしておかないとな。水泳部部長のブサメンだ。よろしくたのむ」
後輩「あ、はいっ! よろしく、お願いします……」
ブサメン(なんだかこの感じ、どっかでデジャブを感じるなぁ……小動物系女子って感じの……あぁ! 紗江ちゃんだ! この感じ、まさに紗江ちゃんだよ)
ブサメン「まぁ、緊張するでない。そういった話なら大歓迎、ゆったりと色々覚えいこう」
後輩「はいっ」
女教師「うん、青春青春。じゃあさっそく練習に参加してもらおうかね」
後輩「今日、ですか? でも水着とかはまだ……」
女教師「ああ、そうじゃなくて……まずは一週間見学してもらいたいんだよねぇ。普段どんな練習をしてるのかってのを見てもらいたいんだ。色々とブサメンと親睦も深めてほしいしな」
ブサメン「親睦、ですか……」
ブサメン(親睦ねぇ……幼馴染は例外に、女子と親睦を深められたことがない俺には無理な話だよ)
後輩「わ、分かりました」
女教師「君には最初はマネージャーとして働いてもらいながら、その傍らで水泳の練習をしてほしい。もちろん、そこの部長さんが丁寧に指導してくれるはずだから、まぁ、よろしく頼む」
後輩「はい……あ、あのっ、ブサメン先輩っ」
ブサメン「む?」
後輩「その、あの……」
ブサメン「ふぅむ……後輩さん後輩さん」
後輩「は、はいぃっ!」
ブサメン(緊張してるなぁ……これはひと癖ありそうだ)
ブサメン「はぁっ、はぁっ、はぁっ……はぁ」
女教師「ふむ……練習の成果が出始めてる感じだな、まぁまぁのタイムだ」
ブサメン「……いや、微妙ですね」
女教師「厳しいな、随分と」
ブサメン「納得したら終わりじゃないですか」
女教師「ふむ……なるへそ」
後輩「あぅ、あの、その……」
ブサメン「ん? ああ、もしかして退屈だった?」
後輩「い、いえ! お、お疲れ様ですって言いたかったのと……これを」
ブサメン「おっ、タオルだ。……え? 使っていいの?」
後輩「……」コクッ
女教師(……ふぅ~ん)
ブサメン「じゃあ、使わせてもらおうかな。ほんとにいいの?」
後輩「は、はいっ。私が使ってるもので申し訳ないですけれど……今日はまだ使っていないですのてで、その……もし、よければ」
ブサメン(それを聞くともっと使いづらいのだが……)
ブサメン「あー、その……」
女教師「ブサメン、今日はもうお開きだ」
ブサメン「え? まだ練習終わりまでまだ……」
女教師「お前、昨日の疲れがぬけきってないだろ? 私も伊達に経験者じゃあない」
ブサメン「……わかりました、今日は引き下がります」
女教師「ふむ、よろしい」
後輩「先輩、お疲れなんでしょうか……?」
女教師「ああ、こいつ、昨日は9時頃まで泳いでたからな」
後輩「すごいっ……そんなに……」
ブサメン「マイペースを維持すればそれぐらいは……あっ、ありがとう後輩さん。タオルは洗って返すよ」
後輩「え? い、いいですよ、そこまでお手間をかけさせるわけには……」
ブサメン「いやいや、男が使ったタオルを持って帰らせるわけにもいかないよ。それで、明日も同じような感じですか?」
女教師「明日か……うーむ」
ブサメン「……何か意味ありげな熟考ですね」
女教師「……いや、何、休日の練習はどうしようかなーと思っていただけだ」
ブサメン(つまり休日の練習に何かあるってことですか……はぁ、思いつきで行動するのはどうかと思いますよ、先生)
女教師「と、言うわけでだ。後輩は今週の土曜日までに水着一式な」
後輩「ふぇっ、わ、わかりましたっ」
女教師「……それともう一つ。後輩の登校手段ってなんだ?」
後輩「えと、私は地下鉄で登下校してます、はい……」
女教師「ブサメン、お前後輩と駅まで同伴な」
ブサメン「…………はいぃ?」
女教師「いくら夏真っ盛りでも現在時刻6時半。この時間でこのか弱く麗しい後輩ちゃんを、欲望渦巻く駅前の人波の中に放り込んだら何が起こるk」
ブサメン「いい加減止まってください。…………はぁ、分かりましたよ。そこまで言いくるめる気だとすると、反論は受け付けてくれないようですから……でも、最終的な是非は後輩さんがゆだねてますよ」
女教師「む、それもそうか……で?」
後輩「あっ、あの、ですね……そ、その……ご迷惑でなければ、ぜひっ」
女教師「なっ?」
ブサメン「なって……まぁ、そういうならいいですけど……」
ブサメン(かわいそうに……こんな奴と帰ることになるなんてなぁ。まぁ、距離感を維持しながら帰れば、他人だと思わせることはできるか)
後輩「い、いいんでしょうか? 先輩の貴重なお時間を……」
ブサメン「俺も地下鉄通いだから、まぁ、後輩さんがいいならいいさ。……むしろこっちがいいのか聞きたい」
後輩「そ、その……先輩とは色々とお話したいので……いい機会、と言いますかっ」
ブサメン「まぁ、そこらへんは帰りながらでいいだろうて」
後輩「そう、ですね」
ブサメン(で、先生の無理やり過ぎる先導によって、結局後輩さんと一緒に帰ることとなったのだが……)
後輩「……」
ブサメン「……」
ブサメン(案の定気まずいよ……後輩さんは今日の様子で、人見知りで気が弱いのはわかってるし、かといって俺が口を開くと、俺様口調かつ変人口調になってしまうし……先生め、俺も隠れ人見知りなのを知っていての所業か? と、とにかく、後輩さんには迷惑がかからないように距離をとって……)
後輩「そ、その…………しぇんぱいっ!」
ブサメン「……む?」
後輩「ふぇ? ……は、はぅぅっ///」
ブサメン(派手に噛んだなぁ……リアルで『しぇんぱい』を聞くことになろうとは)
後輩「ふぇぇ……///」
ブサメン(これはかなり恥ずかしい。う~ん……フォローしておくか)
ブサメン「後輩さん後輩さん」
後輩「は、はぃ……」
ブサメン「30秒そこでステイッ!」
後輩ふぇっ!? あ、あの、どこに…………凄い速さで行っちゃった」
ブサメン「ほい到着っ!」
後輩「そ、その、えーと……」
ブサメン「構えてっ」
後輩「ふぇ? きゃっ!? ……スポーツドリンクのペットボトル?」
ブサメン「うちの学校のプール、室内プールだったから暑かっただろう? いくらか汗をかいていた様子だったからな、まぁ、飲め。運動に慣れていない人が怖がるべきは、体温変化と発汗による体力消耗だ。その二点に関しては人としてどうしても避けられないからな。体力がまだ不完全な後輩さんは、日ごろからそれに配慮するように」
後輩「は、はいっ」
ブサメン(……って、また嫌な癖が出ちゃったなぁ。まともに話そうとすると、こうやって理屈っぽくなるんだよなぁ)
後輩「そ、その……そうだ。……先輩っ」
ブサメン「どうなされた?」
後輩「その…………あ、ありがとうございましたっ!」
ブサメン「…………ん?」
後輩「え? あ、その……こ、購買の時に、お弁当をゆずくってくれたり……こうして一緒に帰ってくださったり……このスポーツドリンクも」
ブサメン(……ふむふむ。礼を重んじる人らしい。いい後輩を持ったなぁ)
ブサメン「ふむ……いや、購買の時はたまたまもう一方の奴が食べたくなった気分に急に襲われただけだ。それに一緒に帰るのは、まぁ、先生の言うとおり、女子高生一人でこの時間、それも駅前は色々と物騒だし。スポーツドリンクはな、自動販売機で俺のサイダーを買ったら、たまたま自販のスロット機能のスロットがビンゴして特典で貰っただけだ。気にすることではないぞ」
ブサメン(って、なぜ俺はこんなツンデレめいた発言をしているのだろうか。ただ最後の『気にするな』を言いたかっただけのはずなのだが……)
後輩「ふぇ? そ、そうなんですか?」
ブサメン(そしてこの言いわけ臭い言葉を信じる後輩さんはほんとに純粋だ。……と、言うより、疑うことが苦手ってところかな?)
ブサメン「まぁ、とにかく気にするでない。後、男なんか何を考えてるか分からないからな。あまり男を信用しない方がいいぞ」
後輩「ふぇ? で、でも先輩は男性で……」
ブサメン(う~ん、今まで会ったことのない人種だから、どう接すればいいのか……まぁ、それはこれから慣れればいいってことか)
ブサメン「いいか、男子高校生ってのは、みんな変態なんだ。つまりその変態共に気をつけろってことさね」
後輩「へ、へんたいさんっ///」
ブサメン(う、初々しい……こんなこと言ってるこっちが恥ずかしく……いや、元から恥ずかしいもとい変か)
ブサメン「ま、まぁ……人付き合いは慎重にやってけ、とだけ言っておく」
後輩「そう、ですね……気をつけますっ」
ブサメン「うむ、それでよろしい」
ブサメン「あっ、そういえば水着一式を買うんだったな?」
後輩「はい、先生からそう言われていますし、わ、私も、水泳をがんばるのでっ」
ブサメン「ふむ……で、な。水着はとにかく試着してみてくれってことを一つ。水着って着やすい着にくい千差万別だが、最終的には『どれだけ自分の体に合うか』ってことが大事だから、後輩さんには是非自分の体に合った水着を買ってほしい」
後輩「じ、自分に合った水着……めもめもっ」
ブサメン「勉強熱心で何より。使用するタオルは……このタオルがお勧め。吸水性はこれが一番でしまいやすいから」
後輩「い、色は青だけ、なんでしょうか?」」
ブサメン「確か……ピンク、紫、青だったかな? ゴーグルは……これが結構大事でね。ゴーグルはほんと安いものから高いものまでピンキリなんだ。だが、俺は高い方が色々といいかも」
後輩「なんででしょうか?」
ブサメン「……吸着性があるゴーグルじゃないと、飛び込みの時に取れちゃう時があるんだよ。俺の経験上、高いゴーグルは滅多に取れることはない。まぁ、余裕があったら、でいいけど、あくまでアドバイスな」
後輩「な、なるほどっ」
ブサメン「これはもちろんのことだけど、しっかりと競泳用のゴーグルと水着を買うこと。スーパーとかで売ってる安物は論外だぞ。……後は、余裕があったらこの『スイマーズデミスト』を買うことをおすすめしたい」
後輩「スプレー……ですか?」
ブサメン「これをゴーグルの内側に塗って、水ですすぐと、ゴーグルが曇らないんだ。これさえあれば練習の時の煩わしくなくなる……結構ゴーグルの曇りって、長時間泳ぐ人にとっては邪魔になりやすいんだよねぇ。バックの時なんかは天井を見ながら距離を測ったりするし」
後輩「ば、ばっく?」
ブサメン「ああ、背泳のことね。要は背泳ぎ。バタフライはバタ、平泳ぎはブレって呼ぶんだ」
後輩「へぇぇ……」
ブサメン「事前に言っておくことはこれぐらいかな」
後輩「い、色々とアドバイス、ありがとうございますっ。……けれど、不安です。お店に行っても、あまり分からなそうで……」
ブサメン「う~ん、確かに初心者って結構間違ったもの買ったりするからなぁ」
後輩「……そ、その……です、ねっ///」
ブサメン「な、なんだ? またいきなり」
後輩「…………あ、あしたっ、一緒にお店に行っていただきませんかっ……!」
ブサメン「…………何の店に?」
後輩「み、水着を買いに、スポーツショップまでっ……///」
ブサメン「……ちょいまて。後輩さんは女子だな」
後輩「は、はいっ」
ブサメン「……男がいくら女の子と一緒でも女の子の水着コーナーを徘徊する様は、傍から見ればどう見える?」
後輩「ふぇ? ……へ、へんたいさんですっ」
ブサメン「そうだな。つまり俺は変態さんになるぜよ」
後輩「せ、先輩はへんたいさんではないと、お、思いますっ」
ブサメン「いや、傍から見れば変態に間違われるな、うん」
後輩「うぅ……で、でも、両親はどちらも水泳未経験者で、アドバイスももらえませんし……間違ったものを買うわけにもいきませんし……せ、先輩は……嫌、ですか?」
ブサメン(嫌、むしろ俺が聞くべきところなのだが……でも、確かに間違って競泳用じゃないものとかを買われても困るっちゃ困るが……って、俺と後輩さんと二人っきりでショッピング……デート? いやいや、状況が状況だから違う、うん……多分)
ブサメン「……あ、明日まで、待ってくれないかな? その、都合とか合わないかもしれないし、さ」
後輩「は、はいっ。分かりました。その……よろしくおねがいします」
ブサメン(うぅ……可愛い後輩の助けにはなりたいのだが……後輩さんにとってはいいのだろうか? 俺と一緒にいるところを同級生になんか見られたら、色々と噂になると思うし……それで幼馴染は退部したしな……はぁ)
ブサメン「ん? 後輩さんは東線か?」
後輩「いえ、私は西線の地下鉄を……」
ブサメン「ではここで解散だ。俺は本屋に寄る予定だったからな。丁度駅は目の前だし、ここからなら大丈夫だろう」
後輩「はい。そ、その……本日は、ありがとうございますたっ。こ、これから、よろしくおねがいしますっ!」
ブサメン「まぁまぁ、硬くならずに。ゆったり行くのがうちのモットー……らしいから。ゆったーりこれから色々覚えていくといい。んじゃ、帰りは気をつけろよ」
後輩「は、はいっ。……せ、せんぱいっ」
ブサメン「む?」
後輩「また、明日っ!」
ブサメン「……ああ」
【夜】
ブサメン(……理解できない。後輩さんについて、どうも疑問点が浮かび上がってしまう)
ブサメン(今まで、俺はあまり人と深く関わらなかった。精々イケメンか幼馴染ぐらいだ。……俺はそれでよかったし、何より周囲の人達は俺と深く関わろうとしなかった)
ブサメン(人の頼みごとを断れないのが俺の性質。だから精々周囲から見れば『体の言い駒』に近しい。パシリに行け、と行けば行ってしまうし、掃除をまとめてやってくれ、と言われれば面倒だと言いながらもやってしまう)
ブサメン(しかしあくまで駒であって、友としての認識はしていない。この見た目と、何より初対面または女子相手に出てしまう俺様口調及び変人口調。さらには面倒くさい性格。誰だってある程度の距離は置きたくなる)
ブサメン「……はずなんだ」
ブサメン(特に女子ならそれが顕著なのだが……なぜか後輩さんは、その素振りを見せない)
ブサメン(むしろ、あっちからこちらに近づこうとも思っているのではないか? というギャルゲ脳の妄想まで駆り立てられてしまう)
ブサメン(演技がうまいのか? それともほんとに素なのか? ……明日のデートもどきだってそうだ。あの誘いは人によっては『デート』と認識されるであろうか)
ブサメン(だが相手がイケメンならともかく、よりにもよって俺だ。俺と一緒に行くことによって確かに不安は取り除ける。しかし俺と一緒に行動することによって不利益を被るのは後輩さんだ。そのデメリットを承知で果たしてこんな行動をとるのか?)
ブサメン(考えれば考えるほど分からない。俺が部長権限を行使して、ならともかく、誘いは相手から…………まて、この状況は、どこかで見た事があるな……)
ブサメン(……………………なんで俺は、こう、素直な人付き合いができないんだろうな。いつから、こうなったけか……そうだ、あれは――)
『あいつ学校にきやがったぜ』
『晒しあげられるだけなのにな』
『近寄らないで、犯罪者……っ』
『……ごめん、その……離れて、今すぐ』
『最悪だよ、ブサメン君!』
「――にい、おにいっ!」
ブサメン「…………うんっ……寝てたのか?」
妹「そうだよ。ゲームつけっぱなしで座イスで寝ちゃってたんだけど……大丈夫?」
ブサメン「……何がだ?」
妹「寝汗。いくら夏の夜でも、すごい汗の量だよ? 妙に顔が怖かったし……」
ブサメン「……ほんとだ」
妹「…………おにい」
ブサメン「ん?」
妹「何か悩んでるようだったら、その……私も助けになるから、ね?」
ブサメン「……心配するな」
妹「で、でも……」
ブサメン(……そっか。妹は『あのこと』を心配してるんだな。夏、だしな。……お前だけが真実を知ってくれている。それだけで俺は救われてるのに、心配かけるなんてなぁ、兄としてあるまじき問題だな)
ブサメン「悩みなんて、ない。俺が能天気になったのは知ってるだろ? ……ほら、時間が時間だからもう寝なさい」
妹「……うん。おやすみ、おにい」
ブサメン「ああ……おやすみ」
現時点の修正箇所
>>22
●ブサメン「問題ない。人間一色抜いても死にやせんよ」
→ブサメン「問題ない。人間一食抜いても死にやせんよ」
>>27
●女教師「お前登校集団地下鉄だっけか?」
→女教師「お前登校手段地下鉄だっけか?」
>>48
●女教師「なんでも、転校してくる前まで、実は持病持ちで運動がろくにできない。けれどそれが完治した今、せっかくだから運動部に入部して、自分の体をより健康的にしたい、ってな」
→女教師「なんでも、転校してくる前まで、実は持病持ちで運動がろくにできなかったらしいんだ。けれど、それが完治した今、せっかくだから運動部に入部して、自分の体をより健康的にしたい、ってな」
>>69
●ブサメン「いい加減止まってください。…………はぁ、分かりましたよ。そこまで言いくるめる気だとすると、反論は受け付けてくれないようですから……でも、最終的な是非は後輩さんがゆだねてますよ」
→ブサメン「…………はぁ、分かりましたよ。そこまで言いくるめるとなると、反論は受け付けてくれないようですから……でも、最終的な是非は後輩さんがゆだねてますよ」
>>87
●ブサメン(人の頼みごとを断れないのが俺の性質。だから精々周囲から見れば『体の言い駒』に近しい。パシリに行け、と行けば行ってしまうし、掃除をまとめてやってくれ、と言われれば面倒だと言いながらもやってしまう)
→ブサメン(人の頼みごとを断れないのが俺の性質。だから精々周囲から見れば『体のいい駒』に近しい。パシリに行け、と行けば行ってしまうし、掃除をまとめてやってくれ、と言われれば面倒だと言いながらもやってしまう)
●ブサメン(しかしあくまで駒であって、友としての認識はしていない。この見た目と、何より初対面または女子相手に出てしまう俺様口調及び変人口調。さらには面倒くさい性格。誰だってある程度の距離は置きたくなる)
→ブサメン(周囲の大多数からは、友としての認識はされていないだろう。この見た目と、何より初対面または女子相手に出てしまう俺様口調及び変人口調。さらには面倒くさい性格。誰だってある程度の距離は置きたくなる)
【翌日の朝】
イケメン「……」
ブサメン「……」
イケメン「お前それ、かなりいい感じじゃないかっ! 転校してきたばかりの後輩! しかも同じ部活に入部して、実質お前ブサメン専属のマネージャー! さらには相手の反応を見る限り感触あり! まさに今! ブサメンに、春が来ようとしている!」
ブサメン「んな、ゲームみたいなことあるわけないだろうに……」
イケメン「実際ゲームみたいな展開じゃないか! それに今日の放課後、二人っきりのショッピングデートだぞ! これは千載一遇のチャンスだ!」
ブサメン「だ、だから、俺は行くと決めてないし……それに、まぁ、女性用の水着を買うのは、スポーツショップだからまだましとして、よりにもよって俺と二人っきりだぞ?」
イケメン「そうだな。それがチャンスだと言ってるんじゃないか! ここで頼れる先輩アピールをさらにしておけば、その後輩さんの好感度はウナギ登りだぜ!」
ブサメン「後輩さんはそんな気はない……と、思うぞ。そう勘違いされちゃ、迷惑だろ。こんな男に好かれるのは、あっちが……」
イケメン「ほう? つまりブサメンは、少なからず後輩さんに対して、そういう気が少しでもあるわけだな?」
ブサメン「っ……」
イケメン「それにだな。これは恋愛感情抜きで、お前は後輩さんと仲良くやっていくべきだと、俺は思うぞ」
ブサメン「……なんで俺なんだよ」
イケメン「後輩さんは転校してきたばかりなんだろ? つまり、この一新した環境にまだ慣れてないはずだ。こういった時にこそ、率先して後輩さんに頼りにされる存在が、後輩さんの不安を取り除ける存在が必要なんだよ」
ブサメン「それが俺だと?」
イケメン「その通り。ブサメンが話してくれた昨日の様子を見るからに、後輩さんはブサメンのことを慕っているはずだ。と、同時に、お前を頼りにしているはず。だからこうして、放課後、水着を同伴して買いに行くのを頼まれた。これは何より、ブサメンを頼りにしているサインじゃないか」
ブサメン「……」
イケメン「それに、後輩さんにとってはこの学校で初めて確率したつながり……『部活の唯一の先輩』っていうコネクトを持てた存在なんじゃないか? ブサメンが後輩さんの性格を分析するに、おそらくクラスでも、そう短期間で親しい友達を作るのは難しい性格のようだしな」
ブサメン(……頼りになる存在、か)
イケメン「そして、後輩さんは少なからず困ってる様子だ。お前の性格からして、困ってる人のことはそう簡単に見捨てられないはずだけどな?」
水泳やっててデブって設定は違和感がある
>>99
実例だった奴がが今ここにいる
どうせ水遊びレベルだろ?
最初太っててもまともにやってれば痩せる
>>101
週4で一日2500~4500メートル
太りやすい体質だったのとポッキーばっか食ってたせいだと思うが……
【放課後】
ブサメン(で、結局……)
後輩「そ、その、本日はありがとうございますっ。わざわざ部活まで休んでくださって……」
ブサメン「まぁ、先生からも『後輩さんのことをよろしく』って言われてしまったしな」
ブサメン(まさか先生まで、強制的に部活を休みにしてくるとは思ってなかった。……まっ、イケメンにああ言われたおかげで、行く気はあったけどな)
ブサメン「着いたぞ。俺はここのスポーツショップでいつも水着とかを買っている」
後輩「お、大きいお店ですね……人もいっぱいで」
ブサメン「ここら辺で唯一のスポーツ用品専門店で、この規模だからなぁ……平日でも客が多い。特に放課後の時間帯は部活帰りの学生とかが多いな。だからこそ、品ぞろえもいいって訳だ」
後輩「……っ……」
ブサメン(……力が入った肩、強張った顔。かなり緊張している、となると……)
ブサメン「後輩さんは、人が多いところが苦手なんだな」
後輩「ふぇ!? な、なんで分かったんですか……?
ブサメン「まぁ……経験者は語る、だな。しかし大丈夫か? 入口の前でその様子だと……」
後輩「だ、大丈夫っ、だと……思います。一人じゃ、ないのでっ……」
ブサメン「……まぁいいか。サァ、行くか。この店は見た目通り広い、構造も結構複雑だから、俺を見失うなよ。俺が先導する」
後輩「は、はいっ」
ブサメン「この階の奥が水泳用品コーナーだ。ちなみに一階はランニングシューズとかを取りそろえてるから、覚えておいて損はないかもな」
後輩「こ、この階は、他の階と比べて人が少ないような……?」
ブサメン「水着なんて、月一とかに買うものじゃあない」
後輩「あっ、なるほど」
ブサメン(まぁ、こっちも人が少ないのはありがたい……なんせこれから、女性用水着を物色しなくちゃいけないからな)
ブサメン「ここが女性用水着の列、こっちはタオル、ゴーグルとか、こっちはビート板……とはいっても、ビート版は学校にあるから忘れてくれ」
後輩「い、以外と水着って、多いんですね……ぱっと見でも20種類ぐらいは……」
ブサメン「100種以上あるランニングシューズよりは選びやすいと思うぞ? メーカーによってかなり違いって出るし。……後輩さんは水泳初心者なんだよな?」
後輩「は、はい」
ブサメン「だとすれば……これがお勧めだな」
後輩「似たようなデザインが多いですね……あまり差が分からないような」
ブサメン「これは初心者用の水着で、このシリーズは俺も一年の時に使ってた。他と比べて、着やすくて動きやすい」
後輩「あっ、それはいいかも」
ブサメン「後は……このシリーズは一番よく使われてるシリーズかな。オリンピックで有名になったメーカーのもので、他のものと比べて体感速度がかなり違う」
後輩「あっ、確かあの選手が着ていたような……」
ブサメン「さらにお勧めするなら――」
ブサメン(後輩さんは最終的に、一番最初にお勧めした水着を選んだ。まぁ、無難だな。今から泳ぎ始めるんだから、どれだけ速く泳ぐのではなく、どれだけ泳げるようになるかが大事だからな)
後輩「せ、先輩。ゴーグルも、水着に負けないぐらい多いような……」
ブサメン「あぁ、でも安い値段で同じ値段のやつは、大体同じようなゴーグルと思っていい。目安としては……1500円から3000円のゴーグルで、メーカーの差異が出てくると思う。ちなみに俺が使ってるのはこの2600円のやつ」
後輩「これだと、何かいいんですか?」
ブサメン「これが一番、飛び込みの時に取れにくかった。以上」
後輩「な、なるほどっ。…………では、これにします」
ブサメン「まぁ、買い換える気がないならそれが一番だな」
店員「ありがとうございましたーっ」
ブサメン「さっきも言った通り、お金に余裕がある時にもう一着の水着を買うのがいい。大会や練習で、予備があれば困ることはないだろうから」
後輩「はいっ」
ブサメン「早速明日から頑張っていこう。言っておくが、俺の教導はハイペースだからな、遅れをとるなよ?」
後輩「が、がんばりますっ」
ブサメン「うむ。……っと、駅が近かったからすぐに着いたな」
後輩「すいません……今日の件でお時間を取らせた挙句、送りまで一緒に……」
ブサメン「歩いて五分は送りの範囲ではないだろう」
ブサメン(先生にしつこく『”帰りまで”後輩さんのことをよろしく頼む』と言われたら、そうするしかなかろうて……)
ブサメン「今日はお疲れさーん。んじゃ、また明日のぉ」
後輩「ふぇ? 先輩、今日も用事が?」
ブサメン「いや、個人的にちょっとな。そういうわけで、気をつけて帰れよ」
後輩「……せ、せんぱいっ!」
ブサメン「ん?」
ブサメン(そこはかとないデジャブを感じた)
後輩「そ、その……本日は本当に、ありがとうございましたっ。貴重なお時間を、私のためにとらせてしまって……その……」
ブサメン「……ふむ。後輩さん」
後輩「は、はい」
ブサメン「やりたくなったからやった」
後輩「ふぇ?」
ブサメン「それ以上でも、それ以下でもないのね。……んじゃっ」
後輩「へっ? せ、せんぱっ…………行っちゃった」
興<オソカッタジャナイカ…
メインpcのhd逝かれてデータぶっ飛んだショックからやっと立ち直ってきた
急いで書く、眠るまで
【翌日の昼】
ブサメン「それじゃあ、今日からさっそく頑張っていこう。休日練習だからといって手加減はせんぞ」
後輩「はいっ……よ、よろしくお願いしますっ」
ブサメン「うむ。……ところで、後輩さんはどこまで泳げる?」
後輩「え、えと……多分、水に顔をつけるまでなら……」
ブサメン「多分……息継ぎは?」
後輩「その、その……ごめんなさい……」
ブサメン「……うん、頑張ろう」
ブサメン「水泳の息継ぎは『口から空気を入れて、鼻から空気を出す』。この一方通行がまず基本だ。顔には水をつけられるなら……呼吸法の練習からだな」
後輩「が、がんばれ……るかな」
ブサメン「泳ぎ始める前にそんなことは言うな。可能にするんだ」
後輩「は、はいっ……!」
後輩(ふ、雰囲気が変わった……。真剣なんだ。……頑張らないとっ)
ブサメン「はい、肺に空気を入れて……ダイブッ」
後輩「ふぅ……っ!」
チャポンッ
……バシャッ!
後輩「ケホッ、エホッ! い、痛い、です……キーンって」
ブサメン「大丈夫か? 鼻から水が入ったんだな、水泳経験者なら誰でも経験する。にしても、思ったより肺活量がいかんせん……入院中運動とかは?」
後輩「あ、あまり……走ったりとかは、全然で……」
ブサメン「これは泳ぐのと同時に、基本的な有酸素運動と無酸素運動を取り入れた方がいいかもしれん。……今は走ったりとかは、ドクターストップとかはかかってないんだよな?」
後輩「慣れるまで、無理をしない程度なら……」
ブサメン「ふむ……それは後ででもいいか。今は呼吸法を覚えることに専念しよう。もう一回だ」
後輩「うぅ……は、はい」
ブサメン「うむ、がんばったがんばった、及第点だ」
後輩「ふぅ……ふぅ……はぁ……」
ブサメン「疲れたか?」
後輩「はい、その……はい」
ブサメン「そこにある俺のバッグあされ、そこに塩飴があるから、着替えたら舐めるといい」
後輩「塩飴……?」
ブサメン「水泳って、気づけないけど、かなりの量の汗を発汗してるんだよ。たった2時間前後でも、陸上部の一日分の半分のメニューをこなしたほどに。その疲労感がなによりの証拠だ。それに、塩分を適度にとらないと、この季節は色々と、な」
後輩「ありがとう、ございます。その……几帳面で、優しいんですねっ」
ブサメン「几帳面……なのかなぁ。ただ心配性なだけ――」
後輩「? どうなされましたか?」
ブサメン「……」
タッタッタ ガシッ
ブサメン「バレー部主将と副顧問を確保」
イケメン「あっちゃあ……ここで見つかっちたか」
女教師「わーつかまったー」
ブサメン「イケメン、なんでバレー部主将のお前がこんな部活真っ盛りな時間にここにいる、そして先生はなぜ物陰から覗いていたんですか」
イケメン「いやぁ、そのなぁ、先生に『青春の一ページを観に行こうじゃないか』と言われて……それに噂の後輩さんを確認しておきたかったし」
女教師「二人だけの方が面白そうだから、以上」
ブサメン「……イケメン、お前は戻りんしゃい」
イケメン「お? お咎めなしきた!」
ブサメン「後でお前の将来についてバレー部顧問の強面先生と親身に話し合う」
イケメン「すんませんしたっ!」
ブサメン「そもそも先生、こいつも一応主将なんですから、部活途中に引っ張り出さないでください」
女教師「いや、ちゃんとバレー部の休憩時間調べてその時間に誘導したぞ?」
ブサメン「主将いきなりいなくなったら困るでしょうが。そんな無駄に計画性のある悪ふざけはやめてください」
女教師「ふむ……あまり面白い絵が見れなかった」
後輩「先生? いつの間に……」
女教師「わたしの家庭は代々伊賀の一族で……」
ブサメン「嘘おっしゃい」
女教師「む……で、進み具合はどんな感じだ?」
ブサメン「呼吸法は覚えさせました。バタ足の基礎も身体に覚えさせたので、まぁ、この短時間でなら及第点かと」
女教師「ブリリアント。やっぱりお前、教えるのうまいな」
ブサメン「あまり実感ありませんが……」
女教師「ふむ……よし、今日は終わりで」
ブサメン「へ? いや、俺はまだ――」
女教師「……たまには休め、以上」
ブサメン「マジですか……」
女教師「お前、いくら大会前だからといって詰め込みすぎだ。それに……足の筋肉とインナーマッスルが悲鳴をあげてるだろ」
ブサメン「っ……」
女教師「水泳インターハイ経験者をなめんじゃない。練習時間と、泳ぎのフォームを見たらすぐにわかるさね」
ブサメン「……わかりましたよ。明日も練習はあるんですよね?」
女教師「……ウン」
ブサメン「なんで目が泳いでるんですか?」
女教師「いんや。……とにかく、明日は学校集合な」
ブサメン「わかりました」
後輩「お、お疲れさまでした?」
ブサメン「覗き魔に言う言葉ではないだろう、後輩さん」
後輩「ふぇ?」
イケメン「まっ、なかなかいい絵が見れてよかったぜ! んじゃ、そろそろおいとましますか」
ブサメン「イケメン、時間」
イケメン「ん? ……あっ!? 昼休みとっくに終わってんじゃん!? やっべ!」ダッ
後輩「お、お疲れ様ですっ」
ブサメン「だから覗き魔に言う言葉ではないだろうに」
【翌日の昼前】
キャー
キャッキャッ
アハハハハ
ブサメン「…………ここは?」
女教師「プールだ」
ブサメン「そうですね。……ウォータースライダーに流れるプール、ええ、プールですね。……レジャープール」
後輩「お、おおっ」
ブサメン「練習って言ったましたよね?」
女教師「うん、練習。後輩さんの水に慣れるための」
ブサメン「そういうことですか……はぁ」
後輩「み、水が流れてる……」
ブサメン「む? ……もしかすると、レジャープールは初体験?」
後輩「ふぇ? あ、その……おはずかしながら。小さいころはもっと体が弱くて……」
ブサメン「なるへそ。……だー、まぁ、今日はそれで妥協してあげますよ。昨日、休息しろって言われてましたしね、ええ」
女教師「後輩さんのことになった瞬間許容するブサメン……」
ブサメン「何がいいたいんですか? 自分は年下には甘い……だけです」
女教師「ふーん」ニマニマ
ブサメン「くっ、何か妙に悔しい……でも、みんな遊泳用の水着って中に、競泳水着は目立つんじゃないですか? あらかじめ言ってくれれば、用意できたものの――」
女教師「じゃーんっ」
ブサメン「じゃーんって……うわぁ、しっかりと準備してる」
後輩「せ、先生、準備がよろしいのですねっ」
ブサメン「違う、計画的犯行だ」
女教師「こっちがお前の。で、こっちが後輩さんの」
後輩「え、えと……ふぇっ、ちょっと、あの、これは……」
女教師「サイズが完全に見立てだが、間違いはないはずだ。……ファッションにおいてもな」キリッ
後輩「で、でもっ、でしたら、わたしが持参した――」
女教師「人生、なにごとも挑戦」
後輩「うぅ……」
ブサメン「にしかし、ちょうどシーズンだから、家族連れだったりが多いな……カップルも」
女教師「うぉーい」
ブサメン「ん? やっと来ましたか。……って、黒のビキニ。いかにもありがちですね」
女教師「おい、それ二十代後半のビキニ姿を見たときの反応がそれかい?」
ブサメン「じゃあどういう反応がほしいんですか? 鼻血を出してぶっ倒れればいいんですか?」
女教師「そりゃあ、ゲームのやりすぎだ」
ブサメン「ったく」
後輩「あ、あの……」
ブサメン「? 後輩さん? どしたの、物陰になんか隠れて」
後輩「あぅ……うぅ」
女教師「かむ、かむ」
後輩「……エイッ」
ブサメン「……」
ガシィッ
ブサメン「女教師、さん?」
女教師「なんだ?」
ブサメン「あれって、あれですよね? 柚原このみのギリギリビキニですよね?」
女教師「自作だっ」キリッ
ブサメン「メイドインはどこかなんて聞いてないんですよ。問題はなんであんな過激なものを着させているかってことですよ」
女教師「いや、ほんとはコスプレサークルの知り合いに頼まれて作ったのだが……後輩さんにぴったりじゃね? と邪念が……」
ブサメン「邪念ってわかってるなら払ってください。そしてそのよこしまな欲望に後輩さんを巻き込まないでください」
女教師「ブサメン、怒るときに妙にしゃべり方が理屈屋っぽくなるの、やめといたほうがいいぞ?」
ブサメン「なぜですか?」
女教師「怖いし」
ブサメン「そりゃあ、怒ってるから当たり前です。何より、常識ってものを考えてください! 公衆の面前であんな水着を着させるなんて、この社会不適合者!」
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