あずさ「 駅 」 (14)
とある駅のホーム。
あずさ「やっと着いた……」ふぅ…
あずさ(もうっ夕方には止むって言ってたのに……)
あずさ(ホントに天気予報ってアテにならないのねっ)
あずさ(まっいっかな…もう止みそうだし、今日はもうお仕事ないから…早く事務所に帰っt―――――)
あずさ「えっ!?」ドキッ―――
あずさ(あのレインコート…あれは昔、私があの人に…………)
?「………………………」
スタスタ――――
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あずさ(それにあの速足の歩き方……もしかして―――――)トクン…トクン……
あずさ(ううん間違いない…あの人は―――――――――)
あずさ(私が…昔…愛していた人―――――――)
あずさ(あのレインコート…まだ着てくれていたんだ…………)
あずさ「あっプッ――――――――――」さっ
ぐぐっ…
あずさ(…………ダメ…懐かしいと思う。そのたった一歩の手前で―――――)
あずさ(あの時の苦い思い出が―――――――――)
あの時―――――
?『あずささん…俺と別れて下さい―――――』
あずさ『……えっ!?』
あずさ『………プロデューサーさん……いきなりどうして……どうしてなんですか……』
P『……少し前なんですが、あるタレント事務所から、ウチでやらないか?ってお誘いを受けましてね』
P『それで、もし元事務所の所属タレントのあなたと関係を持っていた。なんて事が先方にバレてしまったらコトですから』
あずさ『そんな――――それでしたら私はアイドルなんて辞めて――――――』
P『そんな事をしても無駄ですよ。これから売り出していく商品(アイドル)にイキナリ辞められたら、それこそ誰も得になる事はないですから』
あずさ『―――――――!!』
P『それに…これからアイドルとして歌手として女優として羽ばたき、そして必ず大きく羽ばたいていくだろう、三浦 あずさなら尚更ですよ―――
―――』
あずさ『そんな――――――』
P『ですから。あなたには…俺の置き土産として、これから売れていって貰わないと困るんですよ。事務所的にも…もちろん俺的にも』
あずさ『プロデューサーさん……」
P『では。成功を祈って。ここでさよならです―――――――』
スタスタ
あずさ『あっ待って――――プロd―――――』
――――
あずさ『――――――どうして…どうしてイキナリ…こんな事って……こんな事って――――――』
あずさ『ああっ……ああ…ああああああ―――――――――』
――――――
あずさ(そう――――――)
あずさ(あの時の事を思い出させて……)
あずさ(心も想いも締め付けられて―――――)
あずさ(あなたに掛ける言葉を…見付からなくさせる―――――――)
あずさ(あなたががいなくてもこうして……)
あずさ(私が元気にやっている事を―――――)
あずさ(さりげなく笑顔で伝えたい…ただ、それだけの事なのに―――――――)
――――――……電車が到着します――――――白線の内側に―――――――
あずさ(あなたと別れてから二年――――――)
あずさ(私は変わる為に長かった髪を切った――――――)
あずさ(そして私を見詰めていてくれた、あなたのその眼差しは……)
あずさ(もう…私に向けられる事はない――――――)
あずさ(それがあなたの…答え……だから―――――――)
あずさ(私とあなたはこれから―――――)
あずさ(それぞれに待っている人のもとへ戻っていく……)
あずさ(あなたは私になんか気付こうともしないで――――――)
あずさ(あなたの…その一つの方しか見ようとしない視線は、あなたの私に向けていた一方的な想いと同じみたい――――)
ガタン…ゴトン……
電車内。
P「…………………………」
あずさ(……ここなら隣の車両からでも…あの人の顔がよく見える――――――)
あずさ(――――って…とっくに終わった事なのに、私ったら一体…何をしてるんだか…………)
あずさ(…………でも――――――)
あずさ(あの人の俯いてる横顔を見ていると……)
じわ…
あずさ(どうしてなの……どうしても…涙が溢れてきそうになる―――――――)
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