男「ひ、ヒーロー?本当に?」
妖精「はい、もちろんです!」
男「あの、変な生き物と戦ったり人のために慈善活動する?」
妖精「そうですよ!世界平和の為に頑張りましょうね♪」
男「…本当に?ドッキリとかじゃなくて?」
妖精「?もちろんです!」
男「っしゃあおるぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
妖精「はひっ!?」ビクッ
男「男に生まれ早23年…来る日も来る日も仕事で休みといえば寝てるかぼーっとしてるだけの日々とはもうおさらばだ!!これからの人生ヒーローとして生きていくぜ!妖精さんもちっちゃくて可愛いし!」
妖精「か、可愛い…///」
男「さあ、なにすればいい?もうヒーローになれる?空飛べる!?」
妖精「あ、契約がまだなので変身は出来ません!」
男「…契約…?」
妖精「はい!契約を交わして初めてヒーローになれます!」
男「…インキュベ◯ター的な契約?」
妖精「い、インキ◯ベーター?」
男「詐欺みたいな契約を結ばせてくるこまったちゃんだよ」
妖精「私たちの契約は簡単なものですし、最悪辞めることも可能ですよ?」
男「あ、なら安心ですね!」
妖精「はい!では契約しましょう!私に続いて契約内容を復唱して最後誓っていただければ結構です!」
男「わかった!」
妖精「コホン…では!」
『私利私欲でヒーローの力を使いません』
男「私利私欲でヒーローの力を使いません!」
『私はこの世界の為にこの身を捧げます』
男「私はこの世界の為にこの身を捧げます!」
『正体をヒーロー以外に教えません。また、ヒーロー関係の情報をヒーロー以外に教えません』
男「正体をヒーロー以外に教えません。また、ヒーロー関係の情報をヒーロー以外に教えません!」
『以上を神に誓いますか?』
男「誓います!」
妖精「はい、契約完了です!」
男「え、少なくない?」
妖精「そうですか?最悪やめてもいいですしねー。大事なのは私利私欲に使わない事と、正体をヒーロー以外に教えない事です!」
男「じゃ、じゃあ早速変身したいんだけど!」
妖精「わかりました!私利私欲には使えませんが今回は練習という事で変身のみ許可します!ではどうぞ!」
男「まじかー!どうやって変身するの!?叫ぶ!?叫んじゃう!?」
妖精「心で思っていただければ十分ですよ!」
男「じゃ、じゃあ…早速…いくぜ!」ピカー
男「…お?おお?」
妖精「変身成功です!かっこいいですよ!」つ鏡
男「おお…俺、本当にヒーローになったんだ…」ジーン
男「スタイリッシュな感じがするなぁ…素顔が隠れるようにマスクもあるし」
妖精「能力はー…身体能力強化と飛行みたいです!」
男「え、空飛べんの!?」
妖精「はい!ちょっと飛んで見ますか?」
男「飛ぶ飛ぶ!ど、どうやったら飛べんの!?」
妖精「えーと、まずは息を吸ってください!」
男「おう!」スゥー…
妖精「はい止めて!そして下っ腹に力をグッと入れていただければ浮きます!」
男「…っ!…っ…っ…」フワァ…
妖精「浮いてますよ!その調子で頑張ってください!」
男「っは!」ドスン!
妖精「あー、残念。飛んでみてどうでした?」
男「…なんか予想と違う…」
妖精「慣れれば息を止めずに飛べますよ!」
男「そ、そっかぁ!で、身体能力強化ってのはどのくらい強化されるの!?」
妖精「だいたい100倍くらいですかね?まだまだいけそうですよ!」
男「すげー!俺すげー!」
妖精「ではヒーローになりましたしどうしますか!?早速活動しますか?」
男「い、いや、もうちょっと練習してからがいーかなぁって…」
妖精「残念!練習期間は終了してしまいました!実戦で頑張りましょう!」
男「え」
男「な、なら先輩ヒーローとか紹介してほしいなぁ!てか今ヒーロー何人いるの?」
妖精「ごめんなさい、私たちもヒーローの正体を教えられないんです!直接会って仲良くなってください!」
男「ちょ、人見知りな俺に!?不親切過ぎだろ!」
妖精「プライベートは大事ですよ?」
男「ですよねー」
妖精「あ、今いるヒーローの数ですが…日本ですとだいたい1000人くらいですかね!」
男「多くね!?」
妖精「あ、今980人に減りました!」
男「でも減っちゃったよ!なんで!?」
妖精「んー、詳細はわかりませんがまあ、辞めたか『亡くなった』かのどちらかでしょうね!」
男「…え、死ぬの?」
妖精「はいもちろんですよ!人災、天災ならまだしも『敵』と戦えば死ぬこともあります!」
男「そ、そうなのかぁ…怖いな意外と」
妖精「…?…!!男さん!大変です!!」
男「どうした!?敵か!?」
妖精「はい!でもどうやら小物みたいです!練習がてら倒しに行きませんか!?」
男「わ、わかった!!場所は?」
妖精「距離にしてだいたい5キロです!南公園という公園付近です!」
男「え、あそこ!?わ、わかった!」
妖精「あ、周囲のこちらに対する視覚遮断してから出ましょう!」
男「身バレは怖いからね!助かる!」ダッ
妖精「…あの、男さん。どちらへ?」
男「玄関だよ!急がないと!」
妖精「窓から飛んでいきましょうよ!脚力強化すれば凄いジャンプ出来ますから!」
男「あ、そうだ俺身体強化出来たんだった!よっしゃ!窓開けてくれ!」
妖精「は、はい!…んー!んー!」ぐいぐい
男「…ごめん、君には重かったね」がらら
男「さージャンプするぞー!でもどうやって脚力強化するの?」
妖精「こう…ぐっと力を入れて思いっきりやればいいんですよ!」ぐっ!
男「ああ、クラウチングスタートみたいな感じでやればいいのね」ぐっ
妖精「そうですそうです!もっともっとぐっ!としてください!」
男「おお!なんか力が溜まってる感じがする!!」ぐぐぐっ
妖精「今です!思いっきり走り出してください!」
男「しゃあ!」ドンっ!!
男「え?」
あああああああああああ!!
妖精「凄いです!凄いジャンプ力ですよ」
あばばばばばばばばばば!!
妖精「どうですか?ヒーローの力は凄いでしょう!」
へぅあばばばばば!
妖精「あ、そろそろ着地してくださいね!」
えあ!?
ドゴォ!!!
男「」
妖精「痛そうですね!大丈夫ですか!?」
男「っ…ぁ…がふ…はが…」
妖精「急いでください!敵は小物でも一般人には十分脅威ですよ!!」
男「ちょ…ちょと…まっ…待って…マジで…いてぇって…」
妖精「ヒーローじゃなきゃ死んでましたよー?あと無意識にガードしたおかげでもあります!」
男「っは…ぁ…やべえって…めっちゃ…腫れてるし…」
妖精「がんばれ!がんばれ!あと2キロ位ですよ!」
男「あ、歩いて…いかない…?っ痛…」
妖精「今から歩いていくと多分15人くらい殺されますよー」
男「っ!!は、走っていく!」
妖精「その意気です!さあ頑張って走りましょう!」
男「いぎ…!うあ…ちくしょう…ちくしょうぉ…!」ダッ
~南公園~
妖精「やっとつきましたね~!」
男「もうやだ…まじでいたい…」ぐすっ
妖精「泣かないでくださいよー!ほら、あれが敵です!ちょうど今活動を始めたみたいですよ!」
敵「あー…」
男「なんかゾンビみたいな敵だな…あれなら!」ダッ
妖精「がんばれー!がんばれですー!」
男「死ねやぁぁぁぁぁ!!」
先ほどの痛みで溜まっていた鬱憤を晴らすように相手の腹部めがけて蹴りを放つ。
ボキッ!
鈍く、嫌な音だと思った。
それは、敵からではなく
敵「あー?」
男「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
蹴りを放った、己の足から聞こえた。
妖精「ああ!ヒーローの力をちゃんと使わないと!」
遠くから妖精が何か言っているがそんなもの耳に入らない。
俺は敵の前だというのにうずくまり、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして折れた足を見ていた。
力が、全く入らない。痛いというより自分の足なのに感覚がなくて気持ち悪い。
敵「あー?」
敵は俺の行動が理解出来ないのか暫く様子を見てから手を伸ばしてきた。
妖精「ああ!避けてください!やられちゃいますよ!」
妖精が耳元まで近づいてきてきゃんきゃん叫んでいる。
そんな事言われても、足は感覚が無くて動かないし気持ち悪くてそれどころじゃない。
俺は胃の中身を吐き出さないように必死に耐えながら涙でボヤける視界で敵を見る。
肩を、掴まれた。
敵「あー」
ボキッ
また、あの嫌な音がした。
妖精「大丈夫ですか!?反撃してください!このままじゃ殺されちゃいますよ!」
また耳元の妖精が叫ぶ。
でも、そんなの、無理だ。
もう、身体が動かない。痛い、とか気持ち悪い、とかじゃない。頭が働かない。意識が、薄れていく。
敵「あー」
力なく倒れた僕を、濁った目で見ているこいつはゆっくりと足を上げる。
それをただ下から見るしかない僕は、防ぐ術なんてない。
妖精「きゃー!きゃー!」
…グシャ!
深夜の公園に、まるで何かが破裂したような、潰されたような音が響いた。
今日の更新は以上です。
『変身が解けたら、すぐ契約を破棄してヒーローを辞めろ』
男「…っあ゛ぁぁぁぁぁぁぁ!?」ガバッ
妖精「きゃあぁぁぁぁぁ!?」びくっ
男「…あれ?」
妖精「男さん!気がつきましたか!?」
男「俺、死んでないの?」
妖精「もちろんです!ほら、傷だって治っているでしょ?」
男「傷…?…あっ!」足を見る
男「おお、すごい!本当に治ってる!」くいくい
妖精「ヒーロー時に負った怪我は変身が解除されると共に回復しますよ!死ななければ」ボソッ
男「はー…便利だなぁ…って今サラッと怖いこと言ったなおい」
妖精「じゃないとすぐ身元がバレたりしますからねー!敵も居なくなりましたしお家に帰りましょう!」
男「敵…?っあ!!」キョロキョロ
妖精「どうしました?」
男「あ、あのゾンビみたいなやつは!?」
妖精「違うヒーローさんが倒してくれましたよ!一撃で!」
男「あ、あの化け物が一撃で…」
妖精「男さんがちゃんとヒーローの力を使ってれば勝ててましたよ!」
男「いや、ヒーローの力ってなんだよ…思いっきり蹴ったのにダメだったぞ」
妖精「身体能力強化、しなかったでしょ!!」
男「あ」
妖精「敵相手に普通に蹴ったら骨くらい折れますよ!」
男「…いや、常時強化されてるもんかと…」
妖精「そんなわけないですよ!もー!」
男「いやだって、能力の使い方とかわかんないし…」
妖精「実戦で覚えた方が早いかなって思ったのにー!帰ったらすぐ講義してあげます!」
男「…え、俺が悪いの!?まあ、いいけど…所でさ、俺が気絶?したあと何か俺に言った?」
妖精「?私は言ってないですよー?さ、張り切って帰りましょー!」
男「え、歩き?」
妖精「ただいまーと、おかえりなさいでーす!」
男「なんでお前そんな元気なの…」
妖精「男さんこそなんで疲れ切ってるんですか!たった五キロ歩いただけじゃないですか!」
男「いや、そりゃ肉体的には全回復してるけどさぁ…精神的には結構参ってるんだけど…骨とか生まれて初めて折れたし…って部屋もジャンプした衝撃でぐちゃぐちゃだし…はぁ…」
妖精「大丈夫ですか?よしよし!」なでなで
男「ほっぺた気持ちいい!元気出た!」
妖精「ならよかった!あ、そろそろ日が変わりますね!」
男「え?うわ、本当だ…。まじかよもうそんな時間か…明日も仕事なのに…」
妖精「ではちゃちゃっと済ませちゃいましょう!」
男「講義だっけ?おう!」
妖精「違いますよ?」
男「え?」
ぐぎゅるるるるる!!
男「お、おご…!?」
妖精「頑張ってください!」
男「な、なにが…!?ちょ、ちょっとトイレ…!!」
妖精「はい!」
男「…っ…う…っあ…!!な、なんで、出ない…!?」お腹さすさす
妖精「便意ではありませんからねー!」
男「な、なんでこんな…!!か、神様俺が何したって…ぅ…!」さすさすさす
妖精「ヒーローの力を使ったらその代償を求められますから!」
男「お、おぉ…おぉ…!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」さすさす
妖精「がんばれ!がんばれ!」
男「き、気持ち悪…うぐっ…うぇ…おえぇ!!」ビチャ、ビチャチャ
妖精「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
~二時間後~
男「…まず俺に言うことあるよね?」
妖精「お疲れさまです!」
男「お疲れさまッス!じゃねぇ!!代償とか聞いてねーけど!?」
妖精「契約の時この身を捧げるって言ったじゃないですか!」
男「いや、言ったけど…そういう事じゃなくね!?」
妖精「…なんですか?文句が多いですね」
男「そりゃ、二時間もトイレにこもったからな!しかもあまりの痛さでで吐いたし!」
妖精「だったら辞めればいいじゃないですか!わざわざ辛い思いしなくていいんですよ!?」
男「!?」びくっ
妖精「ほら、辞めるなら辞めるって言ってください!」ズイッ
男「ぎゃ、逆ギレかよ…」
妖精「ほら、ほらほらほら!!」ズイズイッ
今日の更新は以上です
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