京太郎「親戚が多い」 (89)

年末

龍門渕邸

京太郎「……毎年のことだが、すごいな本家は。完全に迷子だ」

京太郎(どうもみなさんこんばんは、須賀京太郎中学三年生です。今日は毎年恒例、年末の親戚一堂集合デー……っとあれは)

京太郎「お久しぶりです貴子さん」

貴子「きょ、京太郎!ああ、久しぶりだなおっきくなったな、風邪ひいてないか?お小遣いあげよう、アメ食べるか?」

京太郎「あ、アメだけでいいです」

貴子「遠慮するな、これでも稼ぎはあからな、お年玉も期待してていいぞ?それと昔みたいに『たかねえ』と呼んでもいいんだぞ?今日は久しぶりにお風呂入ろう、むしろ今からだ風呂の中で年越しするぞ」

京太郎「待ってくださいって!ちょ、力強っ!?」

美穂子「こら!何してるんですか二人とも!」

貴子「……っち、美穂子か」

京太郎「あ、美穂姉」

美穂子「聞いてましたよコーチ……というか貴子さん、京ちゃんはもう中学生!……来年は高校生なんです!大人のあなたが男女の仲を逸脱させる真似をしてどうするんですか!そして京ちゃんも!デレッとしてないで男らしくきっぱりと断りなさい!」

京太郎「いや、断ろうとしましたって!でも」

美穂子「でももだってもありません!」

貴子「こらこら、そんなに怒るな美穂子。京太郎が怖がっているじゃないか」

美穂子「二人に怒っているんです!」

京太郎(貴子さんと美穂姉、二人とも小さい頃から振り回さ……もといお世話になっている、いまだに俺が女性に頭が上がらないのはこの二人……いや、今日来ているであろう数多くの親戚のせいに違いない)

京太郎「ああ、咲……お前が恋しい」

宮永宅

咲「くしゅんっ!……風邪かなぁ?」



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京太郎「どうにか二人から逃げてきたが……また迷子だ。咲のこと笑えないぞこれは……ってあれは」

葉子「きょ、京太郎!」

京太郎「ああ、葉子ちゃん」

葉子「ばっ、私は先輩!葉子先輩でしょ!」

京太郎「ごめんごめん、ついクセで」

葉子「ま……まぁ、いーけどさー」

京太郎(門松葉子、暑がりなのか子供の頃から常に赤面している……見た目はギャルっぽいがぬいぐるみを大切にする良い子なのだ、ぬいぐるみを大切にする良い子なのだ、大事なことなので二回言った)

葉子「で、どうしたの?まさか私に会いに!?そんな……けど……こんなところで」

京太郎「いや、迷子になっちゃって……広いから本家は」

葉子「む……まあ広いのには同意、なんか一年毎に広くなってる気がする。案内するよ、ついてきな」

京太郎「おっ、ありがとう……って」

葉子「……」

京太郎「なんで手を?握るんだ?」

葉子「きょ、京太郎は昔っから迷子になりやすかったからね!はぐれないように繋いでるだけ!それ以外の意味はない!」

京太郎「そうだっけ?」

京太郎(言われてみると葉子ちゃんとは昔っから手を繋いで移動していた気がする……本格的に咲のことをからかえなくなってきたぞ)

葉子「そうそう……だからこれは普通のこと……普通の……」

京太郎(さて、葉子ちゃんの案内の元龍門渕迷路を攻略していた俺たちだがここで問題が発生した)

葉子「さんを付けろよ、タコ髪ヤロー!」

淡「えーん、怖いよキョータロー!」

京太郎(大王イカとエンカウントした)

葉子「なっ、なに京太郎に抱きついてんのよ! 」

淡「ええ、だって葉子ちゃん怖いんだもーん、守ってダーリン」

葉子「だ、だ、だ、ダーリンって」

京太郎(これはまずい、なぜかは分からないが葉子ちゃんと淡は昔から犬猿の仲なんだ……葉子ちゃんは今どき珍しい程の大和撫子的考えを持っているから男と女がおふざけとはいえ触れあっているのが気になるのだろう)

京太郎「とりあえず、淡は離れろ……毎度髪が絡む」

淡「相変わらず反応薄いなぁ、これでも美少女だと思うんだけど」

京太郎「小さい頃から相手してたから慣れた」

淡「むっ、作戦失敗だったかな……」

京太郎(なんだかわからんが淡が離れた、これで葉子ちゃんもおとなしく……)

葉子「なんでタコ髪だけ呼び捨て……」

京太郎(……なんでむくれているのだろう)

京太郎「……」

葉子「……」

淡「それでさーその先生が」

京太郎(両腕が重い!)

美穂子(こら!女の子に重いなんていっちゃ駄目!)

京太郎(テレパシー!?いや刷り込まれた美穂姉の教育結果だろう……俺でさえあれなんだから部活とかでは厳しいのだろうな、逆に貴子さんは優しくて慕われてそうだ……いや、そんなことじゃなくどうして俺の両腕に女の子、いやまあ姉妹のようなものだけど、がくっついているか……もしかして俺ってモテフェロモンでも出てるのか!?んなワケないな)

エイスリン「ハッ」

京太郎「うっ、エイスリンさん……」

エイスリン「……シュラバ?」

京太郎「違います!」

淡「違わないよ」

葉子「二人っきりだったのに……」

京太郎(エイスリン・ウィッシュアート……なんでも海外式龍門渕らしい……というかウチの血筋はアホみたいに広いからその内人造龍門渕とか出てくるかもしれん。と、それはともかくエイスリンさんとはそれほど付き合いがあるわけじゃない、小さい頃に日本にきた彼女を一時期預かっていただけの関係だ……顔は会わせるけど、ともすれば中学のクラスメートの方が親しいくらいだし)

エイスリン「キョータロー!フロ!ハイル!ヒサビサ!」

淡「……キョータロー、どーいうことよ」

葉子「ちょっと話し合いが必要ね」

京太郎「待ってくれ二人とも話し合いするのに指を鳴らすことも屈伸も必要ないはずだ」

京太郎(エイスリンさんは外国人で少々スキンシップが過剰な所があるだけ……彼女は幼く見えるが高校二年生、中学生の俺なんて幼い頃のままのイメージ……言うなれば大人と子供なのだ、エイスリンさんからしたらむしろ俺がはしゃいで溺れないか心配なんだ、やれやれもう俺も電車なら大人料金だというのに)

エイスリン「キス、モ!」

葉子「私、左」

淡「じゃ、右で」

京太郎(違う違うキスと言ってもほっぺでそれも子供の頃にしていたのをふざけて今でも挨拶代わりにやってくるという言うなれば定型化したお約束、外国人特有の過剰なスキンシップに過ぎない、カタチだけのもの……)

京太郎「だから腕を引っ張らな、痛ぇええええ!」

エイスリン「シュラバ?」

京太郎(あまりの痛みに気絶して目覚めたら一人になっていた……置いてかれたか?)

京太郎(しかも顔の周りがべちゃべちゃする……油汗でもかいたか?)

京太郎「なんにせよまた一人か……辛いぜ」

誓子「わわわっ、京ちゃんだ」

京太郎「誓姉……久しぶり」

誓子「顔……虫刺されかな?酷いよ」

京太郎「冬に虫……?うーむ」

京太郎(虫も気になる所だが誓姉である。桧森誓子、美穂姉と同い年で美穂姉が厳しいお姉ちゃんタイプだとするならば)

誓子「舐めたら治るかな?」

京太郎(優しすぎるお姉ちゃんタイプだ、並みの男子中学生なら勘違いするところだろう……危ない危ない)

京太郎「いや、怪我じゃないんですから」

誓子「それもそうだよねー、ところでここで何してるの?」

京太郎「いや、恥ずかしながら迷子でして」

誓子「じゃあお姉ちゃんが案内するよ」

京太郎「ありがとうございます」

京太郎(少々天然みたいなところがあるが頼りになる姉なのである……美穂姉なら頼りがいらなくなるようになりなさい!とか言うだろうし)

数分後

京太郎「……ここ風呂ですよね?」

誓子「顔洗わないと、みんなに顔見せれないよ?はい、脱ぎ脱ぎしましょー」

京太郎「ノー!ノー!一人で!というか洗面所でできますから!」

京太郎(最近は中学生男子と風呂に入るのが流行っているのか?いや、未遂だよ?)

京太郎「今は誓子さんの風呂あがり待ちだ……というかあの人が風呂入りたかっただけなんじゃ……」

由子「……風呂の前で独り言は不審者なのよー」

京太郎「由姉!?……いや、これは致し方ない事情が」

誓子「えー由子ちゃん?」

京太郎「誓姉!服!服!」

由子「みんなー!京太郎が!」

京太郎「誤解だからぁ!」

京太郎(走り回る由姉を追いかけていたらどうにかみんなが集まっていた広間にたどり着けた……たどり着いたが怒られた)

美穂子「京ちゃんはそのまま正座!」

京太郎(親戚一同に笑われる俺……というか一番笑っていたのは俺の両親だった、ちくしょう)

佳織「相変わらずだね京ちゃんも、美穂姉も」

京太郎「佳織ちゃん……いやもうきっついよ、本家の人達も笑ってたし」

佳織「私たちの世代で男の子は京ちゃんだけだもん、余計に面白いんだよ」

京太郎(そう、これだけ親戚がいて不思議なことに同年代の男がいないのだ……いればこんな苦労することもないというのに)

佳織「そうだ、透華ちゃんが呼んでたよ」

京太郎「へ?姫様が?」

佳織「うん、裏庭にこいって」

京太郎「……勘当されるかもしれん」

佳織「そ、それはないんじゃないかな?多分」

京太郎「絶対が欲しいぜ」

裏庭

京太郎「おいこれ庭じゃねーよ森だよ」

透華「ようやく着ましたわね……レディを待たせるとは、減点ですわよ」

京太郎「これはこれは、すいません姫様、送らばせながら騎士が向かえに参りました」

京太郎(自分のことながら臭い台詞だ、誰の影響だ?)

宮永宅

咲「くちゅん!やっぱり風邪だよこれ」

再び裏庭

透華「ま、まあよろしくてよ……まったくどこで覚えたのかしら……もう」

京太郎「で、姫様……ご用件は?」

透華「先程、本家と分家の会合で決まったことがあります」

京太郎(やっぱり勘当か!?いやいやあれは勘違い!)

透華「あ、あなたが私の許嫁となりました!」

京太郎「なんだ許嫁……」

京太郎「えええええええぇ!?」

透華「光栄に思いなさい!私は少々気分が優れないので失礼しますわ、あ、あ、ああああなた!」

京太郎「ちょ、待っ、足速っ!? 」

京太郎「許嫁って、いったい」

衣「当たり前だ」

京太郎「うお、衣姉……いつの間に?」

衣「最初からいた!……うん、衣姉、いいな」

京太郎「そ、それより当たり前って」

衣「今龍門渕の血筋で若い男はきょーたろーしかいない、血を保つためにも他から取るわけにはいかん……故にというわけだ」

京太郎「さ、流石衣姉……頭が良い」

衣「ふふん、そうだろー!」

京太郎「って、そんな……姫様は迷惑だろ、俺となんて」

衣「いや、とーかは喜んでいたぞ……というかきょーたろーは自分の立場をよく理解するべきだ、来年は高校生であろう?」

京太郎「……ふむ」

京太郎(たしかに今日のトラブルを含め、俺はまだ自分が子供だと思っていたがために起こったようにも思える……今日は大晦日、もうすぐ年明け……そして高校生)

京太郎「そうだな、自分の立場……か。ありがとう衣姉、ちょっと目が覚めたよ」

衣「それよりも衣はもう眠い……きょーたろー、だっこ」

京太郎「ええ!?まだ八時ですよ?」

京太郎(それから数時間コアラのように抱きついて離れない衣姉と共に俺の年は明けた)

京太郎(許嫁……うーん、実感がわかない。というか酒の席で決めたことだろ、どうせ。昔っからそうだよあの人たちは、何回かあったぞこんなこと)

京太郎「もう寝よう」

京太郎(俺の激動の高校生活が始まる、少し前の話である)

京太郎「オチ、朝目覚めるといきなり透華に叩かれた……浮気者で離婚らしい……あいつ酒でも飲んでるんじゃないか?」

衣「んー?朝か?」

プロローグおわり

京太郎(高校生。義務教育を終え、自らの選択で学習するべき道を決められる)

京太郎(龍門渕という血筋は、確かに今どき珍しいくらいの厳格と統制により成り立つ一族なわけだが、その本質は「多様性」と「拡散」である)

京太郎(通常権力者という存在が自らの血を自分と同等、もしくはより貴き血と交わらんとすることを重点とするが我らが龍門渕はそれがない……有り体に言えば自由恋愛だ)

京太郎(勿論本家本元、直属の純血である姫様ともなると違うが。基本的に身分も身形も関係なく、愛こそが絶対のルール……そんなため龍門渕という血筋は長野だけではなく東京、大阪、九州……はたまた海外式なる存在まで確認されるほどその力を日夜広めているのだ)


京太郎(長々となったがつまり何が言いたいかというと龍門渕だからといって経営する学校に全員入れるのは非効率的だから、進学先くらい自分で決めろとありがたいお言葉をいただいた俺はどうにか必死の勉強で家から近い普通の高校……清澄高校への進学を獲得した)

京太郎「よかった……本当によかった」

良子「おめでとう、京太郎……涙声だったから完全に落ちたと思ったよ」

京太郎「し、信用ないなぁ……」

京太郎(良姉……上田良子。髪型といい、いちいち格好いい仕草といい、尊敬するべきところが尽きない姉でありながら兄のような……師匠とも言える親戚。勉強方面でも面倒を見てもらっている他、こうして毎晩Skypeでカメラ通して雑談をしたりと付き合いの長い姉である)

京太郎「ともあれありがとう良姉、毎晩勉強付き合ってくれてさ」

良子「むしろそこは毎晩勉強をやり続けた自分に自信をつけるべきだと思うけど……ま、ありがたく受け取っておくさ」

京太郎「相変わらずいちいち格好いい……」

良子「それに、毎晩数時間の私なんかより朝から夕方にかけて付きっきりで面倒を見てくれた文学少女にこそ礼は言うべきだと思うけどな」

京太郎「いや、それはもちろんしましたよ。だから良姉は二番目です」

京太郎(文学少女の中の文学少女、宮永咲。中学入学直後からの付き合いで、今回も多大なる迷惑をかけてしまった……まあ俺と咲は迷惑の擦り付けあいみたいな関係だから、今更であろう。そんな彼女との縁は高校に言っても切れないようで、あの秀才が龍門渕を受けなかったという点に疑問は残るものの、心優しい咲らしく「私立はお金がかかるから」とか、そういうのであろう)

良子「女性に二番目とは失礼だな、あーあ昔の京太郎はあんなに可愛かったというのに小生意気になった」

京太郎「ええ!?あ、そうだ……だったらこれを 」

良子「ん、スマホか?」

京太郎「ええ、高校入学祝いってことで両親が用意してくれていたみたいです」

京太郎(意外だと思われるかもしれないがうちの両親は携帯やらを買い与えるのは高校生からという信念があるらしく長らく俺は灰色の中学生活を送っていた……PCが与えられたのは父親の御下がりという点と良姉と通話をするだけという運と決まりごとがあってはじめて許可されたのだ)

良子「で、それがどういうことだ?」

京太郎「だから、良姉のアドレスをはじめて入れます!咲……文学少女はそういうのが苦手なんで。俺ははじめては良姉って昔から決めていたんです!」

京太郎(なにせ相談相手だし、これからも高校生活の中でお世話になることはあるだろう)

良子「……」

京太郎「あれ?良姉、なんか顔が赤いけど」

良子「お前本当に生意気になったな」

京太郎「なんで!?」

京太郎(ちなみにオチ、すでに両親のアドレスが「ママ」「パパ」という名義で登録されていたため……酷い嫌がらせだ。良姉は三番目になってしまい不貞腐れて寝た、不貞腐れた顔まで格好いいのはずるいと思う)

京太郎(入学式……やたら気合いの入った両親と)

透華「さあハギヨシ、しっかりと撮りなさい!そしてそれをいつか……式……」

ハギヨシ「かしこまりました」

衣「きょーたろー!」

京太郎(龍門渕の方々……どうやら私立と公立で日程がずれたために遊びに来たらしい……ただでさえ金髪というのは目立つのにこれは目立ちすぎ。と、思ったが同じ入学生にピンクプラチナブロンドのツインテールがいるようで俺の注目度はそこまででもないみたいだ)

咲「京ちゃん、また一緒のクラスだね」

京太郎「おお、お前との腐れ縁もここまで来たかって感じだ」

咲「もー勉強教えていたときは『咲様』なんて呼んでたのに調子いいんだから京ちゃんは」

京太郎(いやいや内心ではすごい感謝してるぜ?本当に)

京太郎「先生からの話も終わったし帰るか」

咲「あ、でも放課後は部活の勧誘があるみたいだよ」

京太郎「部活?」

咲「うん、清澄高校にハンドボール部はないけど他には色々充実してるみたいだから探してみたら?」

京太郎(ふむ、このままだと龍門渕家や両親との堅苦しい食事になりそうだし。ここは時間を潰して逃げよう)

京太郎「では早速メール」

咲「わ、すごいアイフォンって奴だよね?」

京太郎「微妙に間違ってるぞ」

……

透華「この私を置いて……そ、その咲という少女はいったい何者なんですの!?」

ハギヨシ「どうやら京太郎殿の中学からの友人のようで」

透華「くっ、内にも外にもライバルが多すぎますわ!」

京太郎(俺と咲は連れ添って様々な部活を巡った)

京太郎(文学少女である咲のことだから当然のごとく文学部に入ると俺は思っていたのだが彼女曰く)

咲「文学部って大抵自分が文学を生み出すと思っているというか文学とは擦り合わせを行うべきなのにその擦り合わせを避けたりだとか過剰な接触……壊し合いをしようとしている人達が多いんだよね、いやむしろ高校生であるからその姿勢は正しいのかもしれないけど私としてはそういうのはもういいかなって感じだから」

京太郎(と、文学部に並々ならぬ考えがあるらしく……俺には分からない世界なのだが、ともかく咲は文学部に入らなかった)

咲「京ちゃんは入る部活決まった?」

京太郎(律儀にも運動部の見学に付き添ってくれた彼女には悪いのだが俺もピンとくるものがなかった、中学時代はとにかく運動がしたいと思っていたのだけれど今はそうでもない)

京太郎「これが大人になったってことか」

咲「そう思えている内は子供だと思うよ、京ちゃん」

京太郎(そんな会話をしながら、部活巡りは終了した……帰りに入学までこぎ着けた礼として咲にラーメンを奢った。こういうので喜んでいるあたり咲もまだ大人の女性にはほど遠いのだと思う)

京太郎(事態が転じるのは次の日である)

昼休み

京太郎「タコス……学食にタコス?」

京太郎(学食、というものをはじめて利用してみたがしかし、はたしてタコスというのは全国の高校でスタンダードなものなのだろうか)

京太郎「良姉との会話には、出てこなかったよな?うーむ」

京太郎(ともかく咲との昼食のためにはやく決めなければ……ちなみにあいつは弁当、わが家の母親は朝早くからの仕事で千円札を卓上に置いて出ていってしまったため券売機の前で悩む俺がいる所存である)

京太郎「もしかしたらこれは高校生では当たり前のことなのかもしれない、とりあえず二つ買うか」

京太郎(買ってみると券売機のタコスの部分には売り切れを意味する赤いランプが点灯した……冗談のつもりだったが、タコスは本当にスタンダードなのかもしれない)

優希「あーっ!」

京太郎「……ん?」

優希「た、タコスが……」

京太郎(どう見ても小学生にしか見えない子供がそこにいた)

優希「うっ……うっ……」

京太郎「あー、どうしたんだ?そんなところで泣いてると……うん、目立つぞ」

優希「うう、知らない男子にタコスを奪われた挙げ句世間体の心配までされたじぇ」

京太郎「タコスって……ああ、食券か」

優希「せっかくタコスが食堂にある高校と聞いて必死に勉強したのに……食堂使える初日から見知らぬ男子生徒に奪われるなんて……この世界は間違っているじょ」

京太郎「いや俺だけじゃなくて多数の生徒が物珍しさで買った結果だと思うのだが」

優希「うるさいうるさいうるさーい!タコスがないもん!タコスがないもん!」

京太郎(なにやら病気を発症しそうな声をしたこの少女を見ていると、親戚のもこを思い出す……背的にも)

京太郎「じゃあやるよ」

優希「え?」

京太郎「そんなに美味しいもん、独り占めしちゃ悪いからな」

京太郎(美穂姉の言うことではないが女性には優しく……いや子供には優しくだな。一枚くらいは奢ってやってもいいだろう、もしかしたらこれが縁になって美人な同級生とか紹介してもらえるかもしれんし)

優希「……な、なぁ!」

京太郎「礼ならいいって」

優希「私は昼にはタコスを二つ食べるじぇ」

京太郎「……」

京太郎(まあ、追加の出費がかかったことは語らないでいいだろう。優希というらしいその少女とは「放課後、旧校舎で待つ!」と果たし状めいたことを告げられ別れた……もしや告白か?ということを咲に言ったら)

咲「京ちゃん、人生舐めすぎ」

京太郎「おっしゃる通りです」

放課後、旧校舎

京太郎「ここか……麻雀部?」

京太郎(昨日の部活巡りでは見つけられなかったけど、こんな場所にあるなら当たり前か)

京太郎「……失礼します」

久「……」

京太郎「……失礼しました」

京太郎(すげー美人が着替えしてたぁ……)

京太郎「おいこれどういうことだ、なんかの罠か」

久「君、入部希望者?」

京太郎「え、いや俺は」

久「じゃあ覗き魔?」

京太郎「……入部希望者です」

優希「遅れたじぇー」

久「でね、役をつくっていくわけ」

京太郎「はあ、なるほど」

優希「あ、タコスの人だじぇ!」

京太郎「俺からしたらお前の方がタコスの人なんだが」

久「あら?知り合い?」

優希「あー部長ダメだじぇ!私がやるんだから!」

久「え?」

まこ「……なんの騒ぎじゃこれは」

和「待ってください……優希、足が……速すぎ」

京太郎(このあと説明や自己紹介等で一騒動があったのだが……それは割愛する)

京太郎(どうやら優希は昼のタコスのお礼として俺に麻雀を教えたかったらしい)

和「優希は麻雀がタコスと同じくらい大好きですから、その楽しさを伝えたかったのでしょう」

京太郎(と、親友のことを語る和……原村和と会えただけでもタコス二つ分の価値はあるだろうなんせ素晴らしいおもち……まあ、それと同じくらい。もしくはそれ以上に)

京太郎「麻雀、って面白いですね」

優希「だろ!」

京太郎(素晴らしい出会いだった……これでは少々貰いすぎというものだ、だから)

京太郎「なあ優希、なんかお願いはないか?」

優希「うーん……そうだ!なら」

京太郎「なら?」

優希「犬になるじょ!」

京太郎「……お、おう」

和「こら、優希!」

京太郎(いえいえ構いませんよ和さん……何はともあれ長い付き合いになりそうだ)

久「須賀君、私のお願いも聞いて欲しいなー」

京太郎「いや、それは」

久「着替え」

京太郎「なんでも申し付けてください!」

久「じゃ、とりあえず麻雀部への入部と……知り合いの女子を誘ったりなんかして欲しいわね」

京太郎(本当に、長い付き合いになりそうだ)

須賀宅

「そういえば京太郎、あんた部活とか入ったの?」

京太郎「うん、麻雀部」

「麻雀部!?……はー、今までハンドボール一辺倒だったあんたがねぇ」

京太郎「だから教えてくれよ母さん、どうも頭に入らなくて」

「あんたが小さい頃ママが教えようとしたらあんなに嫌がったのに……まあいいわ、教えてあげる」

京太郎(こうしてみると俺の母親ほど習うのに適任な人はいないだろう)

「まず一つ」

京太郎(なんせ俺の母さんは)

閑無「麻雀は、楽しむためにある」

京太郎(現役のプロ雀士、リングネーム石飛閑無その人なのだから)

最後の爆弾がやりたかったので今回他の親戚成分は薄めで。

なお京ちゃんが無双するなんてオカルトはありえません。

シノハユまだ読んだことないから、詳しくは知らんが、年齢大丈夫なの?
はやりんと同じ世代なんだよね?

>>53
はやりん世代の年齢を4年位増せばヘーキヘーキ。



プロが死んだ!!!!

戒能良子(よしこ)

上田良子(りょうこ)

何故名前を被らせたのか
まぁ上田さんは喋ってないけど

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