悪者「ここ例の王国か…」 (164)
山々に囲まれた国、『王国』
そんな山の綺麗な空気をはねのけるように歩く男
悪者「はあ、随分と歩かされたな…」
悪者「ん…? なんだこのボロ小屋は…」
しばし足を止めて、町の光と見比べる
悪者「こんなとこ泊まっても、余計に疲れるだけだ」
悪者「モンスター共もまだ昼寝の時間だ…どれ、もうひと踏ん張り」
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ーーーーー 王国 ーーーーーー
悪者「ここが例の王国か…」
すっかり暗い夜道には人影も少ない
悪者「チッ…シケたとこだな…」
悪者「飯がねぇな…お?」
商人「…ふわぁ…」
悪者「おい」
商人「ん…?お客さんかい? 悪いが店じまいの時間だ。また今度にしてくれ」
悪者「構わねえよ」
ドスン!
商人「グえっ!」ガク
膝蹴りを腹に食らい、もだえる
悪者「ふぅ~んどれどれ…お、携行食糧か。これと…薬草も貰うか」
どうせ人情にほだされて、義賊まがいの事しちゃうんだろう?
商人「…ぐっ…このクソヤロォ…!」
悪者「あ~? 店じまいってんだからこっちから貰いに行ったんだぜ」
悪者「感謝ぐらいしてくれねぇとなぁ~」ヘヘ
商人「だ、誰か…」
しかし、近くのものは皆目を伏せて通りすぎて行く
悪者「ま、そう言うことだ。代金は払うからよ」ククク
悪者「あばよっ!」
ゲシッ!
商人「づぁっ!」
代金以上の蹴りを顔にお見舞いして、寝床を探しに行く
悪者「よし、ここなら…」
細い道の隙間のような部分に腰を落とす
悪者「…にしてもこの国は」
人々の声が聞こえない
夜だからなのかと割りきってみる
悪者「…この国で、あの研究が…」
悪者「明日には動き出してみるか」
悪者「…チッ…」
空気に溶け込むように、男は目を閉じていった
>>3
取りあえず見てくれててサンクス
ーーーーー 朝 ーーーーー
騎士「強盗?」
兵士「はい…日没の頃、門の付近の商人が襲われていたと…」
騎士「…分かった。二十歳くらいの黒い羽織を着ていた男だな?」
兵士「はっ。間違いないであります」
この国の治安維持のためにも、騎士は日々情報を集める
騎士「よし、調査開始だ!」
兵士「はっ!」
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ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
悪者「んだおらぁ!! 食いもんの一つくらい良いじゃねえかよぉ!」
ドスン!ドスン!!
果物売り「いっ!…こ、これで!許してくれ…うっ…」
悪者「そうそう、出しゃあ良いのよ出しゃあ~」ハハハ
騎士「…奴か」
騎士「許せん…!」
ググッ…
剣を握る手には殺気が溢れる
騎士「お前か…昨晩の強盗を働いたのは!!」
悪者「ぁあ? 誰だ?」
騎士「質問に答えろ!!」ジャキ
悪者「だからなんだよ…ったく」ボソ
騎士「…よかろう」
騎士の剣は悪者の体を振り抜いた
ーーーーーーかに見えたが
悪者「あんだよ、危ねえだろ」
騎士「…!? (今確かに斬ったはずだ!)」
悪者「腕は良いが…人を斬るのをビビってる」クク
騎士「ッ!?…くそが!」
悪者は右手で剣を抜く
悪者「観客も居るようだし、イッチョやるか!」
騎士「…来い」
街の一角は静かな殺気に包まれた
ロング「…ん…」
民衆に紛れて戦いを覗く長髪の少女
その視線は全く動くこと無く一点を見つめている
悪者「へへ…来ないなら行かせて貰うぜ…!」
騎士「……」
ロング「…弱い、でも…違う…」
ロング「あの男…人…違う」
騎士「…」ジリッ
悪者「…… (さっきと表情が違う…何のつもりだ?)」
騎士「……どうした。来るんじゃないのか?」
悪者「…」グッ
ダッ!!
悪者の一歩は常人には分からぬほど速かった
騎士にはそれが見えるが、騎士の剣は全く刃先を前に向けないーーーーーーが
ガシィン!! ドスッ
悪者「…!」
剣を滑らすようにして悪者の腹部に拳が入る
騎士「こう見えても、受け側に関しては得意でね」
悪者「っ…フン、こんなもの!」
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
悪者「はぁ…はぁ…」
騎士「はぁ…くっ…」
悪者・騎士「(しつこいヤツめ…!)」
兵士達「あそこだ!!」
悪者「…! チッ…虫けら共のお出ましか」
ダッ!!
騎士「逃がすか!!」
ボンッ
騎士「ぐっ?!」
煙が辺りに広がり視界を奪って行く
兵士達「ゴホッ!エホッ!」
騎士「クソッ…あんなものまで持っているとは…」
ーーーーーーーーーーーー
悪者「ッはぁ…はぁ…ここまでは追ってこれやしねぇか…」
悪者「何てヤツだ…俺の速さに合わせて来やがった…」
悪者「…ふぅ…こんなことしてる場合じゃねぇのに…」
恐らくあの騎士は城の兵士であり、また自分と互角であると考える
悪者「…あそこに…あの城のなかに…」
悪者「煙幕もあれでおじゃんかよ…」
悪者「クソッ…!クソックソックソッ!!」ガンガン
ロング「……」
悪者「…はぁ…」
ロング「……ねぇ」
悪者「!? な、何だ!」
ロング「……?」
悪者「…チッ…ガキかよ…」
悪者「(この近さで気づけねぇとは…余程頭がやられてんのか?俺ぁ…)」
ロング「左腕…」
悪者「あぁ? 何だ? 殺されてぇのか??」
ロング「"ソレ"…押さえつけるの大変?」
悪者「な、はぁ!?!」
ロング「あなた、さっき喧嘩してたでしょ?」
悪者「っ…喧嘩だぁ? (何でこいつ、腕のこと…!)」
ロング「フフッ…あなた大変そうだったもの。二つも面倒見てて」クスクス
悪者「くっ…ヘラヘラと…! 殺されてぇのか!? (誰も知るはず無い…ましてやこんな小娘が…!)」
悪者「今てめぇとお喋り何かしたくねぇ!! 消えやがれ!!」
ロング「そうだったわ、隠れ家が要るわよね? あ、あと煙幕もかしら?」ウフフフ
悪者「ッ…チッ…」
ロング「どうせ私を脅して家を奪おうとしてたんだから、どうせならこっちから招待するわ」
悪者「(いったい何物だ…このガキ)」
ロング「……」
悪者「……」
ロング「………あなた弱いわね」
悪者「んッだとコラァ!!!」ジャキ
ロング「…」グッ
悪者「…ッ…ぐっ (動けねぇ…!)」
ロング「…フフッ…面白い人♪」フッ
悪者「…チッ… (まさか…呪術? 高位魔術師でも扱えるか分からんものまで… )」
ロング「ねぇ…いい加減答えてよ」
悪者「…あ?」
ロング「左腕の"ソレ"…何?」
悪者「……知らねぇ」
ロング「ふぅんそう、身近な人に付けられたんだ」
悪者「…!?!」
ロング「…しかも、そのせいで何かやらかしちゃっとか?」
悪者「…知らねぇよ (何でこいつ…まさか話の間だけで…)」
ロング「…まぁ、過去は消せないわ」
悪者「黙れ…クソガキ」
悪者「(どう話しても推測してきやがる…)」
一体なにがどうなってるんだってばよ
さあ?この先の展開でわかるだろたぶん
ーーーーーーーーーーーー
十八より若いだろうか
そんな少女に丸で脱がされるように、過去を見抜かれる
悪者でさえいささか畏怖する程だった
ロング「ここよ」
悪者「…ここは…」
悪者が以前目にした山小屋にたどり着いた
ロング「あら、前に来たことあったのね」
悪者「……はぁ」
ーーーーーーーーーーーー
ロング「ただいま~」
占い師「おかえり…むむ?」
悪者「…」
シワの寄った老婆が目を細めて覗きこむ
ロング「ねっ? ちゃんとつれてきたでしょ?」
悪者「はぁ???」
占い師「うむむ…」
悪者「…もう好きにしやがれ…」ハァ
ーーーーーーーーーーーー
悪者「…占い師だぁ?」
占い師「そうじゃ」
悪者「このババアがか?」
ロング「そうよ」
悪者「……グ」
悪者「…ップ…ハッハッハッハ!!!」バンバン
占い師「…何じゃ?」
悪者「あー、悪い悪い…ヒッ…ハッ」
悪者「あーあ…」
ロング「…」
悪者「……んなもんいるわけねぇだろーが!!!」ガン
占い師「…なぜじゃ?」
悪者「俺が来るのが分かってたみてぇに言ってるが、ただ単にソレっぽいヤツ捕まえただけだろーが!!」
占い師「そんなことをして、ワシになんの特がある?」
悪者「知るか!! んなもん! てめぇらの頭がおかしいだけだ!!」
ロング「…はぁ」
悪者「さっきのこいつだって、ただの妄想に過ぎねぇ!」
占い師「ふむ……そうか」ホッホッホ
悪者「何だよ…気持ちわりぃ…」
占い師「では、やはりその左腕は何かを抱えているのだな?」
悪者「な?!」
ロング「ぷっ…」
占い師「…それに、あの城に用があるのは知っておる」
悪者「…フン。だったら何だ!」
占い師「…地下に研究者達が、闇の研究をしておる」
悪者「…っ…なんの関係がある」
占い師「お前にとってはただの復習かもしれん…じゃが」
占い師「お前の決断により、世界の運命が決まる…」
悪者「…(復讐…そうだ、復讐だ)」
憎しみと悲しみの記憶が甦ってくる
思い出したくもない記憶ーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
「あの子の腕…みた?」
「気色悪いわ…」
「こっちにくるな!くろうでやろう!」
「うわーん!! こわいよー!!」
「…お前を生かすためには、こうするしか…すまなかった」
「たかが悪魔の契約だぞ! それにあの子はちゃんと人の心を持ってるじゃないか!」
「あなた…!もうやめてお願い!!」
「うルセぇえエエえ!!!クワセロォオオ!! 」
ーーーーーーーーーーーー
悪者「……」
悪者「みんな…しんじゃった…」
悪者「おなかすいた…」
悪者「ナンカ…おいしソウ…!」
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
悪者「俺をこんな姿にした…」
悪者「こんな"異常"な人間にした奴らを…」
悪者「[ピーーー]んだ…!! 」
悪者「ぶっ殺してやるんだぁぁああ!!!!」
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
占い師「聞いておるか…?」
悪者「…!」ハッ
占い師「…少しは真面目に聞けるようになっかのぉ?」
悪者「……」
占い師「復讐…お前が何をしたいかまでは分からぬ…」
占い師「…じゃが、この先のそなたの運命…ワシらも助けを出す」
悪者「…何でそんな面倒なことすんだよ…」
あら、避けられなかった…
まあ良いか
占い師「…人類の危機じゃしのぉ…」
悪者「…チッ…まあいい」
悪者「とにかく俺は、情報を元にあの城の地下へ向かう」
悪者「あんたらがなんと言おうと知らん」
占い師「それで構わんよ…ワシらとて何が正しいかまでは分からん…」
ロング「…ちょっとはましになった…かな?」フフ
ーーーーーーーーーーーー
小屋をあとにして、再び王国を目指す
悪者「…何だってんだ…ホントに」
~~~~~~~~~~~~~~~
悪者「少なくともあの国で俺はお尋ね者だぜ?」
占い師「大丈夫じゃ…その娘を連れていきなされ」
ロング「はぁーい♪」
悪者「…チッ…こんな小娘に何が」
ロング「…あなたよりは強い自信ならあるよ?」
悪者「…フン」
ロング「やっぱり~? 勝てないと思ってるよね~」
悪者「あぁん!!?」
占い師「その娘に、魔術に関しては誰も勝てはせんじゃろう…」
悪者「…チッ…」
ロング「どーもー」
占い師「先ずは闇の力の根元をあばくのじゃ…恐ろしく禍々しい気を感じる…」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
規制はメール欄にsaga入れれば防げるよ
殺すぞって出来る
>>33
あざます!
ロング「…暇よね~…」
悪者「…」ブツブツ
ロング「……わっ!!」
悪者「……ぁあ?」
ロング「…城の内部は魔翌力が制限されるから、そこから先は一人で頼むわよ?」
悪者「あ、あぁ…」
ロング「(…まぁ、城につく頃には元に戻りそうね…)」
山の獣たちは丸で猛獣が通るかのように、二人を見張っている
その気はどちらのものであろうと、恐ろしいことには変わりない
ーーーーーー 王座 ーーーーーー
王「騎士よ…賊を逃したときいたが…」
騎士「はっ…その通りでございます…」
王「珍しいこともあるものだな…」ハッハ
騎士「…っ」ギリッ
王「まあよい…だが、くれぐれも城のなかには通すなよ?」
騎士「申し訳ありません…次は必ず…!」
王「よし、下がれ」
騎士「失礼いたします」
バタンッ
王「……フン」
王「(あやつも所詮は人間…頼りにはならぬな)」
王「…事を急がねばならんな」
ーーーーーーーーーーーー
sagaねsag"a"
あと魔力とかも間に翌が入っちゃうよ
>>37
あ、分かった上で下げたんす
すまそ
騎士「……」ソワソワ
騎士「(あの輩…片腕であの強さ…)」
騎士「……」スクッ
兵士「騎士兵長、どちらへ?」
騎士「しばらく門番を頼む…用事を思い出した」
兵士「し、しかし、国王命令でここを見張れと」
騎士「心配するな…」ガシャン
騎士「すぐに戻る」
またヤツは街で悪さをするに違いない
門の前で棒立ちしていては防げるものも防げない
騎士は悔しさとともに商店街へと足を運んだ
ーーーーーー 街の入り口 ーーーーーー
悪者「こんなとこから入ってどうすんだよ…俺は目ぇつけられてんだぞ?」
ロング「大丈夫よ。このタイミングなら」
悪者「… (まあ別に、その辺の兵士くらいは数には入らんか)」
ロング「いい? 何があっても一直線に向かうのよ?」
悪者「元よりそのつもりで来たしな…」
ロング「まっすぐに進めば、道は間違わないわ」
悪者「はぁ…ガキじゃあるめえしよ…」
悪者はまだこの時の言葉の意味を理解していなかった
騎士「…どこに身を隠したんだ?」
明るい内にと、細い路地裏にて悪者を探していた
騎士「(あの様子であの山を越えていったとは思えない…)」
騎士「どこにいる…」
一方、街では
悪者「…?」
ロング「…何?」
悪者「いや…何でもねぇよ」
悪者「(偶然か…? 人の目線が丸でこちらを向かない)」
ロング「ふーん…」
ロング「(老人…右へ…肩がぶつかる…女性の視線、右へ…子供を転ばせ声をあげさせる…周囲の視線を左へ…五歩二時の方向へ前進…)」
ロング「…それならいいけど~」
騎士「…うーん」
騎士「(やはり商店街で情報を集めた方が良いか…)」
騎士「…行こう」
ーーー 一方こちらは
悪者「…」
ロング「あれが城門だよ…あのデカイ赤いヤツ」
悪者「わあってるって…っせぇなぁ」
悪者「(あの先に…俺の目的が…!)」グッ
ロング「あとは頼んだわよ! …捕まったら一生牢屋か、即処刑だからね?」フフ
悪者「…チッ…なめ腐りやがって」
魔術が得意ではないぶん、体術には自信しかない。こんなところでぶっきらぼうが役に立つとは
悪者の顔はほくそ笑んでいるようにも見えた
ロング「さて…あとは"喧嘩仲間"を取り抑えないと…」
ロング「…ッフフッ♪」
地下に眠る秘密ーーーーー
それが何かは分からないがきっと面白いものなのだろう
彼女にとっては退屈しのぎのつもりだった
騎士「…そうか」
女性「はい…そのような人は…」
騎士「足を止めてすまなかった、ありがとう」
女性「いえ……では」
騎士「…… (やはり逃げたのか?)」
ーーーーーーーーーーーー
スタッ…
悪者「…ふぅ」
悪者「(だいぶ進んだが…どこだ…?)」
見張りの目をかいくぐり、地下への道を探す
悪者「……」スッ
兵士「ん…?」ピクッ
悪者「…(チッ…あんまり"跡"を)」
誤爆失礼
スタッ…
悪者「…ふぅ」
悪者「(だいぶ進んだが…どこだ…?)」
見張りの目をかいくぐり、地下への道を探す
悪者「……」スッ
兵士「ん…?」ピクッ
悪者「… (チッ…あんまり"跡"を残したくないが…)」
スパッ!
兵士「かはっ…」
悪者「おっと」ガシ
喉元を切り裂き声をふさぎ、兵士を通路の死角にそっと隠す
悪者「(急がねぇとマズいな…)」
悪者「…ん?」チラッ
通路の隅で死角になっていたのか、古ぼけた扉がある
悪者「(そうだ…いままで必ずどの扉の前にも兵士がいた…)」
悪者「間違いねぇ…!」
ためらう事も忘れ扉に手をかける
ゾワッ…!
悪者「…っ!?」ビク
悪者「(この感覚…まさか…!)」
懐かしい左腕の感覚ーーーー
悪者「こんなときに…くそっ!」グググ
食欲に近い"何か"が襲ってくる
悪者「ぅぐっ……アァア…!!」ガン!
兵士「む… (うなりごえ…?)」
兵士がこちらに向かってくる
足音からすると数十秒で辿り着くだろう
悪者「…うぁ…はぁ…っはぁ…」
悪者「(クソが…一旦離れるしかねぇか)」
兵士「…!! (血痕…?)」
兵士「侵入者だぁぁああ!!!」
悪者「チッ…クしょう…!」ダッ
叫び声に反応してどんどん兵が集まってくる
今の状態で戦えば勝敗は見えている
悪者「力を使えば…!!」
ーーーーー力を使えば
悪者「こんなやつら…ぐッ…」ギリッ
ーーーーーひと思いに
悪者「ッ…よし…大丈夫だ (…何とか抑えたか)」
ーーーーーー喰ッテヤルノニ
「っ!?…誰か殺られてるぞ!!」
「何!? 急いで探せ!!」
悪者「(逃げようにも、行き止まりでどこにも行けねぇ…!)」
「騎士兵……どこ……!」
「先ほどから……!…!」
悪者「…? (なん…だ? 声が遠くて……)」
「……な時に!……国王に……!」
「……!…!……………」
悪者「(力が…入…らねぇ)」グラッ
………ドサッ…………………
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
悪者「…う…ん…」
悪者「(ここは…)」
ガシャン!
悪者「…!」
腕に絡み付く金属
意識がはっきりして目の前に檻が見えた
焦りと戸惑いが無意識に体を動かす
悪者「っ…くそッ…!」ガシャガシャ
見張り「静かにしろ!!」ガン
悪者「うるせぇ!! 俺ぁこんなところで呑気にうたた寝してる暇は…」ガシャガシャ
見張り「…ぷっはっはっは!!」
悪者「黙れ虫けらが!!」
見張り「お前さん…ここに来たからにはな…死刑しかねぇんだぜ?」
悪者「……!?」
見張り「精々、処刑台まで歩く準備運動でもしとくんだな!」
見張り「ぎゃーっはっはっはっは!!!」
ひげ面で寝巻きのような服装の男にバカにされた屈辱より、悪者はただ焦りで言葉を失った
ーーーーーーーーーーーー
悪者「…チッ…」
悪者「(どうにかして抜け出さねぇと…)」
悪者「…」チラッ
左腕を覗き込むと、前の状態より明らかに悪化している
悪者「… (何だってあんな大事なときに…!)」
見張り「ンゴォー……ムニャムニャ…」
悪者「………」
ーーー …そなたに助けを出す ーーー
ーーー あとは頼んだわよ! ーーー
悪者「…ハッ!」
悪者「(クソッ…!…何を期待してやがる! 自分の力で這い出るっきゃねぇだろ!)」ブンブン
ガチャッ…
悪者「!!」
思わずした期待
そんなところには思わぬ客がやって来るもの
「おらっ、さっさと歩け」
見覚えのある影が目に写った
騎士「……」
悪者「…なっ…!?」
自分を裁きに来たのかと考えた
しかし、騎士は丸で囚人のような服を着て、体には何ヵ所かアザが見える
見張り「…んごぁ?…」
見張りの代り番「お~い、連れてきたついででなんだが交代だぞ~」
見張り「おおぅ、ありがてえ…」ヘヘ
騎士「……」
ガシャン!…カチッ
悪者「…… (何がどうなってやがる…)」
隣の檻でただ呆然と下を見る騎士を見て、悪者は再び言葉を失った
見張り2「ちょっくら便所でもいくか……」
ガシャン
騎士「…っ!…」ガン!
悪者「おい…なんでてめえが…」
騎士「黙れ!!」
悪者「…!…」
騎士「貴様のお陰で、今やお前の参謀者だ…」
悪者「… (拷問の跡か…でもなぜ…)」
騎士「…何が目的だ…」
悪者「………」
騎士「なぜあの場所に忍び込んだと聞いている!!?」ガン!
悪者「……」
悪者は混乱した話を整理すべく、ある行動に出た
悪者「…良いだろう。答えてやる」
騎士「当然だ!!…俺をこんな目に合わせておいて…!」
悪者「ただし!」
騎士「……」
悪者「俺からの質問を答えてからだ…」
頭を使うのは正直苦手だ
だが今は体の自由がきかない
悪者「…なぜ…お前が疑われているんだ…」
どうにかして確かめたかった
騎士「それはっ……」
この国のどこまで"侵されている"のか
そして
ーーーあの扉の先に、本当に秘密は眠っているのか
騎士「俺は…貴様を捕まえに街に出たんだ…」
悪者「…それで?」
騎士「…? (嫌に冷静だ…前とは明らかに違う…)」
騎士「俺は城門の番を任されていた…いつもなら貴様のような輩は、即捕まえてくるのが鉄則のはずなのに…」
悪者「余計なこと抜かしてる暇はねぇ…! 見張りが帰ってくる前に済ませるんだ」
騎士「…!……わ、分かった」
処刑される身で、なぜこんなにも真剣な表情をするのか
騎士はこの男が何かを知っていると感じた
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
~~~~ 数時間前 ~~~~
騎士「…うーむ… (普段からここにいる人間に聞かなければなるまい…)」キョロキョロ
ロング「… (二秒後…足を止める…周囲で一番目につくところは…!)」ダッ
騎士「…む」ピタッ
ロング「はぁ~…暇ねぇ…」
騎士「(彼女に聞いてみるか…)」
騎士「すまない…ここらで強盗があったのを知っているか?」
ロング「えっ…ええ、それが何か…?」
騎士「何処にいるとか、噂を耳にしていたら教えてほしいのだが…」
ロング「あら、私その現場にいたんです。確かこっちの方に…」
騎士「く、詳しく教えてくれ! (こんなところでなんといい情報を…!)」
ロング「ええ、もちろんご案内いたします (…チョロいわね)」ニコッ
悪者「で、その少女に付いていったと…」
騎士「ああ…あんな軽率な行動さえしなければ…!」
悪者「… (少女…まさかな…)」
悪者「でも、それだけでお縄にかけるなんて変だぜ?」
騎士「いや、その先が重要なんだ…」
一度は命を奪い合った相手
それを忘れて話してしまうほど、騎士にとっては悔しい出来事だった
悪者も同じく、自らの目的に我を忘れ話に聞き入ってしまう
ロング「確かこの辺で…誰かと話してて…」
騎士「う…うむ (随分とつれ回すな…)」
ロング「あ! あの山の南方まで歩いていきましたよ!」
騎士「そうか! 感謝する!」ダッ
ロング「い~え~…」
ロング「……何だか、真反対のようで…」フフ
ーーーーーーーーーーーー
ーーー 日の入り時 ーーー
騎士「… (あの少女の話が本当だとすると、取り逃がした線が大きいか…)」
日中に出来るだけ歩き回ったが、もう限界だと悟り足を王国に向けた
ーーー 王国 ーーー
ザワザワ……
騎士「(皆が城に向かっていく…?)」
兵士「…! 兵長!! どこに居られたのですか!?」ダッ
騎士「何だ、何が起きている!?」
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
王「…ほう、それで輩を追い回しているうちに王国を出たと…」
騎士「…っ…」
王「…貴様になんと命令した!!」バン!
騎士「はっ……城の前の門番をと……」
王「… (こいつも中々に扱いが難しくなってきたな…仕方あるまい。これで…)」
王「……貴様も参謀者か…!」
騎士「っ!?…け、決してそのような事は」
王「……こやつを"死罪の牢屋"へ連れて行け!!」
騎士「…な…あ……」ガク
絶望と怒り
しかし自らの過ちだと認めるしかない騎士は、悲しそうな兵士たちの視線を浴びつつ鎧を剥がされた
あかん
厨二病パワーが切れてきた
俺の(厨二)力を受け取れェーッ!
悪者「…」
騎士「…俺はただ忠誠を尽くしてきた…それだけなのに…!」
悪者「そうか… (やはり妙だ…)」
悪者「(俺が犯人だってのに、俺を追いかけて"城を空けた"ことか、もしくは"命令に逆らった"ことを罪の理由にしてやがる)」
悪者「(あるいはその両方か…いや"そうだった"としても)」
騎士「…さぁ、貴様のほうも教えてもらおう。理由も知らずには死ぬにも死にきれん」
悪者「あぁ…そうだったな。話してやる…」
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
>>62
ふっ…貰っておこう
あざす
ーーーーーーーーーーーー
すべて正直に話した
正直という行動をしたのはいつ振りだろうか
ーーーーーただ左腕の"ソレ"を除いて
悪者「…俺はそこに用があって来ただけだ」
騎士「…王の命が狙いではない…だと?」
悪者「別にそんなもん要らねぇ……が」
騎士「……?」
悪者「いや… (もしかしたら"国ぐるみ"で動いてるとしたら、黒幕は恐らく…)」
悪者「何でもねぇ……」
騎士「…フン…まぁいい。精々それを尋問の時に話すのだな」
悪者「…チッ…」
武器を取られていたことは当然だ
しかし、この皮膚に密着するような左腕の手袋ははずされずにいた
悪者にとってこの事はとても大きかった
ガチャン!
悪者「…来やがったか」
兵士は悪者の意識が戻ったのを確認すると、話をすぐに切り替えた
兵士「貴様への尋問を行う…立て」
悪者「へいへい…よっこらしょ…」スクッ
騎士「……」
兵士「…兵長」
騎士「罪人に話しかけるな!」
兵士「…っ!」
騎士「任務をまっとうしろ」
騎士「…俺のようになりたくなければな」
騎士はただ、その哀れむような目で見られることが耐えられなかった
見張り2「あースッキリした、ハイハイ交代ねぇー…あら?」
悪者「ふぁーあ…」
兵士「……」
騎士「……」
見張り「…あ、つ、ついでに便所掃除でもして来るかなー…あはは~…」
見張り→見張り2
ーーーーーーーーーーーー
悪者にとって処刑されることはさほど怖くなかった
死に近づけば近づくほど、"ソレ"は制御できなくなる
いずれにしろ自らの意思では死に至れないのだ
質問者「…では、財宝を探しに来たというのかね?」
悪者「ああ、金になるし…何より目立つだろ?」ハハハ
質問者「…はぁ…」
そして悪者にはある策略がひとつ浮かんでいた
かなり危険な賭けだが、ただ呆然と暴走するより遥かに希望があった
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーー 山小屋 ーーーーー
ロング「…ホントにこれでいいの?」
占い師「ああ…心配はいらんよ…」ホッホッ
占い師「…光と闇。互いに対をなす存在…」
占い師「あやつらはまだ己の形を理解していまい…」
占い師「そのためには…光は闇を照らし、闇は光を写し出さなければならない…」
占い師「……まだ、距離が遠すぎるのじゃ……」
ロング「…ふーん」
ロング「でも取りあえず助け船は出さないと、不味いんじゃない?」
占い師「見ておればよいよ…彼らの運命はまだ始まったばかりじゃ…」ホッホッ
ロング「……迎えにいけってことね?」
占い師「…まったく…お前は歳をとるたびに可愛げが無くなっていくのぉ…」
ロング「ふーんだ。おばあちゃんより可愛いげあるもんっ」
ーーーーー 牢屋 ーーーーー
ガチャッ…
騎士「…」
悪者「……」
ギィィ…ガチャン!……カチャッ
悪者「……よお」
騎士「まだ死んではいなかったか…」
悪者「…あったりめーだろ」
見張り3「……んむにゃ………」スヤー
悪者「…話がある」
騎士「……」
さっそく悪者は"行動"を開始した
ーーーーーーーーーーーー
悪者「ーーーーってワケだ」
騎士「な…し、しかしそんなことが…」
悪者「…怪しいと思わねぇかよ」
騎士「…?」
悪者「お前を殺す理由なんてどこにもねぇんだぜ?」
悪者「ましてやこの状況…お前に汚名返上させてもおかしくねぇ」
悪者「お前を消す理由…それは…」
騎士「…私に知られたくない秘密がある…」
悪者「……」
騎士「… (確かに最近の国王はなにかおかしい…)」
騎士「(昔に比べて明らかに兵を城から出さなくなった…)」
騎士「(それに…どちらにしろ…)」
悪者「まあ、テメぇもこんな形で死にたくはねえだろ?」
騎士「……」
核心を突かれた
今まで長い間国に尽くしてきた自分が、皆の前で犯罪者として殺される
正直許しがたい事だった
ーーーー 数時間後 ーーーー
バァン!
見張り3「うわわっ!!」
悪者「… (よし! やっぱり…!)」
兵士「…悪者とやら…国王陛下がお急ぎでお呼びだ…立て」
騎士「っ… (まさか…そんな…)」ビク
兵士「…兵長… (何て酷い顔を…)」
騎士「…… (コイツが言った通りなら…!)」ブルブル
悪者「あいよ~…」チラッ
悪者は騎士を睨み付けるようにその場をあとにした
騎士はこれから起こることに対して怖じけづく
しかし"これ"以外、生き延びる道はないのだ
読み返して気づいた
>>52
隣の檻で→檻の隣で
だった
読んでる方いたらもうしわけねぇっす
ーー 拷問室 ーー
王「……」
悪者「おいおい、俺と二人きりなんて大丈夫なのか?」
悪者「…襲っちまうぜ?」ケラケラ
王「…何故知っている…」
悪者「ぁあ?」
王「答えろ!!」バン!
悪者「ん~…答えてやってもいいけど、取りあえずこれ、外してくれないと答えらんねぇかもなあ」ヘヘ
王「貴様…ただでは済まさんぞ」
悪者が仕掛けた作戦
それは尋問の時から始まっていたのだ
そしてこれはある意味すでに成功しているも同然なのだ
ーーー 尋問中 ーーー
質問者「では、これで終わりにする」
悪者「…王様に伝えといてくれや」
質問者「む…?」
悪者「"公開処刑の時、この国の地下に眠る秘密を人々に知らしめる"…とな」
質問者「なんのことか知らんが、国王陛下のお怒りに触れるだけだぞ?」
悪者「だといいな…」クックッ
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
悪者「どうせ殺すんだろ? 言っても得ねぇし~」ブラブラ
王「答えないのならば…こうだ!!」
バシバシ!!
悪者「っ…っ!……」
ほぼ無抵抗で何度も鞭を喰らう
だが悪者の顔は薄ら笑いを浮かべる
王「はぁ…はぁ」
悪者「っはぁ…ヘヘッ…一つだけ…教えておくか」ククク
王「フン…所詮盗賊かぶれか…さっさと話せ!」
悪者は息を整え言い放った
悪者「今回の黒幕は…騎士…アイツなんだ」
王「!!」
王「やはりか…! クソ!」
悪者「アイツも…ここへ連れてこい。俺となら腹を割って話すはずだ」
王「…クッ…! おい!!」ゴンゴン!
ガチャッ
「はっ!お呼びでしょうか」
王「もう一人を呼んでこい!!早急にだ!」
「兵長を…ですか」
王「雑用係にも及ばんあの輩をだ!」
「か、かしこまりました」
ダッ!
悪者「… (上手くやれよな…あの野郎)」
悪者「(でもまあこれで、もう寝返りはしねえだろ)」ニヤリ
騎士「ふぅぅ……」
貧乏ゆすりをして何とか落ち着いてみる
騎士「…裏切り…それとも…摘発?」
騎士「……どうすれば」
ガチャッ…
騎士「…!」
兵士「兵長…国王陛下がお呼びです」
騎士「あぁ…わかった」
騎士「(元より今は罪人…ならば…)」
「ーーーーーーやるしか…ない」
ーーーーーーーーーーーー
兵士「……」
騎士「…」
城の地下にある牢から、葬式のように出てきた二人
もっとも、それより酷い仕打ちではあろうが
兵士「…兵長」
騎士「……なんだ」
兵士「本当に…あの物の手助けを…?」
騎士「…」
これ以上、部下たちに情を向けられる資格などない
騎士「ああ…その通りだ」
もうこれからは自分の命の為に生きるのだ
騎士「…たった今からな」
ーーーーーーーーーーーー
兵士「っ…」
騎士「すまない…もう俺は…」
バタッ…
兵士「兵…長…」ガク
騎士「罪人だ…」
この程度の叩き方なら時期に目が覚める
そのときこの兵士はきっと私のことを皆に言いふらすだろう
でも、これでいい
騎士「良いのだ…これで」
騎士は手錠の鍵を奪い、自由を奪い返した
騎士「罪人の武器や服は確か…」
タッタッタッ………
王「…遅い…何をやっておる!」
悪者「…… (まさか逃げ出しちゃあいねぇよな…)」
王「そうだ…それより貴様、あの男と剣を交えたそうじゃないか」
悪者「…!! あ、あぁあのお芝居ねぇ」ハハハ
王「…何でも商人を襲い品を奪ったのを許せなかったらしいが…」
王「それもあやつの芝居だと言うのか…?」
悪者「フン、それがどうした? (まずい…感づかれたか?)」
王「…あやつは遠方と連絡を取るのは、親類のみだ…それが」
悪者「……」
王「貴様とどう繋がったのか…」
悪者「… (早くしやがれ…! あの野郎!)」
……グアッ……………ドサッ
悪者「…!」
王「む? 来よったのか?」
コンコン
王「よし…貴様も早くここに」カチャッ
騎士「…申し訳ありません」
王「!?」ドスン
完全装備をした騎士を目にして、王は思わず尻餅をつく
王「なっ、何故貴様は…!?」
騎士「…私は、あなたを信じていました」
騎士「ですが…どうやら変わらなければなりませんね」
王「貴様ぁぁあ!!!」
王「うぁああ!!」ブゥン
闇雲に鞭を振り回す
しかし、騎士は子どもの縄跳びに混じるかのように王に近づく
騎士「しばし、ご休息を…」
ガン!…
王「うっ…」
ドサッ…
騎士「…はぁ」
悪者「ヒューゥ、かぁっくイイねぇ!」
騎士「……いま鎖を…」
悪者「どーれ、よっこいしょ…」スタッ
騎士「!?…さては図ったな!」
悪者「は?…最終確認だよカ・ク・ニ・ン」
騎士「なに!?」
悪者「…ホントに俺の話を信じたのか…な」
騎士「くっ…」
悪者「この程度なら、縄脱けくらいで何とかなるもんだぜ?」ハハッ
騎士はこの男のあくどさに呆れつつもあった
~~~ 牢屋にて ~~~
悪者「お前は城のなかに詳しいだろ?」
悪者「俺がお前を呼ぶ。したら兵をふりきり武器やら取り返してこっちまで来やがれ」
悪者「なにぃ?…今さらあいつを信じるのかよ…」
悪者「兵士どもはお前の信頼も厚そうだし、以外と信じてくれるんじゃねぇか?」
悪者「…ああ、いいぜ? もしここでまず俺が呼ばれなかったらおとなしく死んでやる」
悪者「だか呼ばれたら…いまのことを実行しろ…いいな?」
…………………………………………
バァン!
悪者「ほうら…お出でなすったぜ?」ケケケ
~~~~~~~~~~~~~~~
……ッタッタッタッ!
騎士「はぁッ…はぁ」
悪者「どっちだ!?」
騎士「確かこの辺は古い排気口があるはず…」
悪者「さっさと思い出せ!!」
「あそこだ!! 捕まえろ!!」
「応援を要請しろ!!」
騎士「くっ…こっちだ!」ダッ
悪者「ったく頼むぜ~?」ダッ
せっかく逃げ出しておいて捕まるわけにはいかない
出口まで一目散に城内を駆け抜ける
悪者「あれか?!」
騎士「…!! 早く進め!!」
「どこへ逃げた!?」
「国の入り口を封鎖しろ!! 一人もも外へ出すな!!」
タッタッタッ………
騎士「…っ…」ゴク
悪者「……ふぅ、なんて数だい…」
騎士「ここから下水道まで行き、外へ出れば…樹林の付近に出るはずだ…」
悪者「おっ…乗ってきたか?」ヘヘ
騎士「フン…貴様のためではない。己の為だ」
悪者「あーら偶然、俺も俺の為にしか生きたことねぇや」ハハ
騎士「…外道め!」
光の入らないホコリだらけの通路を進むと、少し広い通路に出る
悪者「おぉ臭せえ…」
騎士「昔は機能していたが…王が街の整備に目を向けなくなってから…」
悪者「愚痴は出てから聞いてやるって」ケッ
異臭を放つ暗い道
わずかに漏れる光と水の音だけが聞こえる
騎士「まぁ…今はそれが幸いしているな」
悪者「…この中で外への出口がどれだか分かるのかよ?」
騎士「一番奥にある物だ。すぐわかるはずだ…」
外からの光がそれぞれの出口から入っている
今、頼れるのはそのいく筋かの光である
しばらくして、悪者も口数が減ってきた頃
騎士「……」スタスタ
悪者「…! 止まれ!」ガシッ
騎士「なっ」
悪者「シッ!…何かいるぜ…」
騎士「…?」
悪者の視線の先には、うめき声のようなものを上げる何かがいた
悪者「… (人か…? 何故こんなところに……)」
??「ウゥゥ……」
騎士「獣型のモンスターじゃないか?早く倒して先に…」
…………ワセロ……ニク…イ………
悪者「……?」
??「…ゥア"!!!!」ブゥン!
騎士「!?」
ザクン!!
悪者「なっ!?」
その"何か"は腕を急激に伸ばし、騎士に襲いかかった
間一髪でかわした騎士の横の壁には、"腕だった物"が突き刺さっている
騎士「ッ…! (危なかった…何だこれは…!)」
悪者「…コイツ…どっかで…」
??「……クワセロ…ハラヘッダ……」ギロッ
悪者「(やはり…人間だ)」
騎士「何をしている! 斬りかかれ!!」
??「グウォア!!」ブン
騎士「ふっ!」サッ
ガシャアァァン!!
騎士「俺が囮になるとは…クッ…」
悪者「(何か言っやがる…よく聞き取れない…)」
騎士「寝ぼけているのか!!!」
悪者「はっ…! クソッ…!」ダッ
スパンッ
??「ウィイイィィ……ムアァァ…」シュウウ
悪者は綺麗に胴体を二分した
しかし、斬り口から徐々に再生していく
騎士「何だ…これは…!」
悪者「…! やっぱり…」
悪者「おい!! 出口まで走れ!!」
騎士「し、しかし…!」
??「…ァァアア!!!!」ダッ
悪者「黙って走れ!!」
不気味なうめき声が響きわたる
騎士は戸惑いつつも走り出す
悪者「くっ…!(日が暮れる前に出れるか…?)」ダッ
ーーーーーーーーーーーー
騎士「あそこだ!!」
薄く光が差してきているが、草木などで塞がれている
川に繋がっているのか水の音も聞こえる
??「ガァッ!!」ガシッ
騎士「うわっ!!」
ドゴォン!!
悪者「チィッ…! ウスのろまが!」
??「…ウゥ…イダダク…」アーン
捕まった騎士は、「これまでか…」と諦めかけた
悪者「ゥォおらアア!!」ブン
ズバンッ!
??「グゥゥ…アトチョッド……」ギリギリ
騎士「…く…」
悪者はソレの腕を断ち切った
悪者「おい!! 外への穴を開けろ!」
騎士「わ、わかった…」フラッ
??「アァァァァア!!!」
無我夢中で草木を掻き分ける
うなり声はすぐそばまで来ている
バサァッ!!
騎士「よし! 早く外に逃げ…」
ピシッ……
??「ウゥゥ…ウァ?」シュウウ
悪者「…こんなところに…」
強い光に当たると、ソレは突然白い煙をあげて消えはじめた
悪者「闇の…研究が……」
騎士「な…消えていく…?」
??「ア…ァ……」ジュウウ
しばらくすると、跡形もなく消え去ってしまった
悪者「…… (もう既に犠牲が…)」
ーーーーーーーーーーーー
騎士「…説明をしてもらおう」
悪者「…チッ…」
森林への見事脱出に成功した二人
しかし、尚も重々しい空気が続いていた
悪者「…前に見たことがあった…それだけだ」
騎士「それだけで何故弱点まで知っている!」
騎士「それに…さっきは…!」
悪者「…あ?」
騎士「… (何故俺を助けたんだ?…自分だけ逃げられたはずだ…ましてやコイツが…)」
騎士「いや……黒い獣のような…あれは何だ?」
悪者「…あのクソみたいな闇の研究…あれの産物だ」
騎士「牢屋での話か? あれは兵器開発と言うことでは…」
悪者「兵器だ」
騎士「…?」
悪者「…詳しくは落ち着ける場所を探してからだ」
ロング「…やっと来た~。二人そろって遅刻ね」フフ
ロング「えいっ」スッ
少女は木の枝を魔術で飛ばした
かなりの距離を飛び、それは悪者の頭をコツンと鳴らす
悪者「…ん?」
枝は突然生き物のように動きだし、器用に文字を書き始めた
騎士「む…追っ手か?」ジャキン
悪者「…」
騎士「これほど器用に文字を書けるほどの遠隔魔法を…何者だ」
カッカカッ…カッカッ…
悪者「いや…待て」
"南西の山道より追っ手あり 東に山を登ると美 少女の歓迎あり"
悪者「……しゃあねぇ。またカクマって貰うとするか」
騎士「…??」
~~~~~~ 王国 ~~~~~~
王「それで…逃したのか…?」
代理兵長「はっ…及ばずながら…」
王「……ふざけるな!!!」バン!
兵士達「!!」
代理兵長「し、しかし、まだそれほど遠くには…」
王「それではいかんのだ!!」
代理兵長「…はっ…」
王「…くっ… (今は城を空けるわけには…!)」
王「もうよい!!下がれ!!」
兵士達「……」
代理兵士「はっ…失礼いたします…」スッ
王「…はぁぁ…」イライラ
研究者「まあ…そうカッカなさらずに…」
王「…! 聞いておったのか…」
研究者「あまりに大声が聞こえたもので…つい」クス
研究者「何でも…騎士さんが盗賊と駆け落ちしたとか…」クックック
王「あのデクの棒め…! 少し剣技が上手いからと兵長に任命したが…しくじったわい」
研究者「なに…もうすぐにでも完成致しますよ…」
王「!…本当か!」
研究者「ええ…この国単位ではなく、世界の国々を従えられる"力"を…手にできますよ」
王「うむ。しかし…あやつらが他の国に知らせたら…」
研究者「フフ…。彼…盗賊さんはきっとこの力の意味を知らないでしょう」
研究者「どこで仕入れた情報か知りませんが…普通の人間があの力に触れれば…」
王「……」
研究者「…少なくとも今は人の形をしていないでしょうね…」クックッ
王「では…」
研究者「ええ…普通は見たものは消されるか…暴発して死に絶えます…つまるところ彼は…」
研究者「数年前の"あの村"での災厄を知るもの……もしくは」
王「もしくは…?」
研究者「… (あの子供…唯一力を制御できた人間…)」
研究者「いや…何でもありませんよ」フフ
~~~~~~ 山道 ~~~~~~
騎士「…む、あの娘…」
ロング「おーい! こっちこっち~」フリフリ
悪者「チッ…ホントに居やがったか」
少女が二人のもとへ駆け寄る
ロング「あら、騎士さん。良かったですね見つかって!」ニコ
騎士「…君は…こうなる事を知っていたのか?」
悪者「あー、そいつと話さない方がいい」
ロング「何よ~。嫉妬してんの~?」クスッ
悪者「テメエと話すと胸がムカムカするんだよ!」
ロング「ひどぉい。目的を手伝ってあげたのに~」シクシク
騎士「まさか…グルだったのか?」
悪者「だーれがこんな奴と組むかよ!!」
ロング「おばあちゃんにサトされて思わず心動かされちゃった癖に~」プッ
悪者「テンめぇはぁぁあ!!!」ブン
スカッ
ロング「わー危なーい。アハハハハ」ケラケラ
騎士「… (仲がいいな…この二人)」
悪者「チッ!…オラ、とっとと案内しやがれ」
騎士「な、ちょっと待ってくれ。どこへ行くんだ??」
ロング「私のお家よ?」ウフフ
悪者「なっ…国からちけぇだろ。追っ手がカクマってねぇか聞いてくるぞ?」
ロング「フフッ…その点は大丈夫よ」
ロング「あの小屋におばあちゃんがちょっと細工をしてあるの。来ればわかるわ」
悪者「…ったく。頼むぜ?」
やや賑やかな会話を挟み、以前悪者が訪れた山小屋へ向かう
―――ただ一人の疑問を残して
騎士「な…?え…??」
ロング「…この辺ね」
木々の目の前で立ち止まる少女に騎士は問いかける
騎士「…何にもないぞ?」
ロング「…待ってて」スッスッ
悪者「さっさとしてくれ…疲れてるんだ… (魔方陣か…?)」
木の一部に持っていた針のようなもので削ってゆく
さらさらと描き上げると、少女は目を閉じた
ロング「よっ…と」ググッ
メキッ…メキメキッ…
騎士「!! (これは…!)」
悪者「…んだこりゃあ…」
ねじれてゆく木は、やがて家の形に変形していった
ロング「ほら、これならバレないでしょ?」
悪者「…」
騎士「(何という魔術…この少女はいったい…)」
~~~~~~ 小屋 ~~~~~~
占い師「よく来なさったな…若き騎士よ」
騎士「いや…はぁ…」
悪者「…で、何でまたここまで連れてきたんだ?」
占い師「ホッホッホ……分からぬか?」
悪者「ここが安全とは思えねぇ…例え隠れているとしても」
占い師「まぁまぁ…先にそこの騎士さんに状況を説明してやらなくては…」
騎士「そ、それはありがたい…是非頼みます」
ロング「私から簡単に言うわ。おばあちゃんが話すと長くなっちゃいそう」
占い師「ううむ、仕方ない…任せよう」
彼女の説明はとてもまとまりがあり、ものの数分で騎士をうなずかせた
ロング「まあ、つまり貴方は私とこの人の被害者って訳ね」
騎士「なるほど…確かに」
悪者「んまぁ、何でもいいけど…ここに来た理由には繋がられねぇぜ?」
占い師「それは…ワシから話させてもらおう」
占い師「どれ…よいさっと…」スク
占い師はとても重そうに腰をあげた
その時支えに使った杖が、騎士には少し気にかかった
騎士「ん…? (気のせいか…見たことのある形だ)」
占い師「ふむ…」ヒョイ
占い師「……これでよし。扉を開けてみなさい」
悪者「何だぁ? 子供騙しは効かねぇぞ?」
ガチャッ…
悪者「…?」
出た先は山の中だった
しかし、ある異変に気づく
悪者「ここ…俺が最初に通った道じゃ…!」
占い師「この小屋はの…あの国を囲むすべての山のどこかに、入口があるのじゃ」
悪者「(そうだ…二回目に来たときも…)」
悪者は今までの景色を思い出してみる
悪者「(…この小屋に気づいたのも"小屋本体"を見たらじゃねえか?)」
ロング「…少なくとも、あなたは3ヶ所の入口を知っている事になるわね」
悪者「…最初に近づいたとき、人の気配なんか有りっこなかった…」
占い師「…入口は1ヶ所にしか出ない。それ以外は空き家のような物じゃ…」
占い師「外からは、鍵となる"魔術式"を知るものしか"ここ"には入れん」
騎士「何と高度な…あなたはどこかで高位魔導師を…?」
占い師「なぁに…年の功じゃよ…」ホッホッ
ロング「じゃよじゃよ~」アハハ
悪者「… (そんな簡単な魔術式だったかよ…)」
話も切りがよくなり、騎士は題を移した
騎士「ところで…そこの盗賊が"闇の研究"について調べている事は、お二人はご存じで?」
悪者「誰が盗賊だオラァ… 俺にだってちゃんとした名前があんだよ」
騎士「あぁ、悪者…だったか? 牢屋で耳にしたが…まぁそれはいい」
悪者「…チッ…」
実のところ悪者も、この話題になることを望んでいた
一旦退くことにしたようだ
占い師「ワシらは勿論、この男…そして、この男に話をした"者"もこの国の研究を知っておる」
悪者「…! 知ってるのか、アイツを…」
占い師「ホッホッ…ワシは占い師じゃぞ? …まぁ、それとは別に知ってはおるがの…」
悪者が情報をつかめた理由
自らの悲劇からいく年か経ち、ある噂を聞きつけた悪者は、一人身でそこへ向かった
――――――――――――――――――
――――――――――――――――――
――――――――――――――
悪者は自らの運命を壊した者を探す旅に出た
しかし、孤立しかけていた村で育ったため地理にも乏しく、ある洞窟に迷いこんでしまった
悪者「う…イテテ…ここは…?」
洞窟の穴に落ち、気を失っていた悪者
そこはかつて"竜神"という、人の思考を持ったモンスターが居た所だ
悪者「…? 何だ…この地面…」
グニュッ…
悪者「うわっ!?」
《騒がしいぞ…小僧…何の用だ》
悪者「っ…!だ、誰だ! どこにいる!!」ジャキン
《お前の下に死んでいるだろう…》
悪者「なっ…そんなわけッ…」
《はぁ…仕方あるまい。しばし待たれよ》
スゥーッ………
悪者「(な、何だ…意識が…)」フラッ
悪者「…ん…っ!?」
竜神『…これでよし…さあ小僧、何の用だ?』
悪者「なっ…ここは…?」
いつの間にか椅子に対面して座っていた
目の前の小さなテーブルには暖かそうな飲み物がある
竜神『…ここは私が作った"仮想現実"だ』
どこか気品のある男が語りかけてくる
その声は先ほどのものと同じだ
竜神『ここに来る者は皆、何か使命を負ったもの…そして何かを求めている』
竜神『お前は…何を知りたいのだ…?』
悪者「…俺は…」
「――――を探している」
――――――――――――――――
――――――――――――――――
騎士「……」
ロング「何を…探しているって?」
悪者「知らん…忘れた…」
占い師「その者は神の一種じゃ…その名を」
騎士「"竜神"…」
占い師「ホッホッホ…名前まで聞いておったのか」
悪者「リュウジン…?あの幻術使いのおっさんがか?」
占い師「世界における"使命を課せられた者"だけが、その姿を知る…」
占い師「そして…その者の願いを叶える。が……」
騎士「が…?」
占い師「その者は…願いを忘れ、"使命をまっとうする意志"だけを持たされる…」
ロング「どうやら二人とも会ってるみたいね…竜神さんに」
悪者「…お前も…会ったのかよ」
騎士「…兵士になる前に、物凄いモンスターに出会った…倒した記憶は愚か」
騎士「竜神に訊かれて言った願いも…覚えていない」
騎士「俺が覚えているのは…自分の産まれ故郷が何者かに"破壊"されたことだ」
悪者「…チッ…」
ロング「……?」
占い師「竜神とは…いつ頃会ったのじゃ?」
騎士「4年前か…そこらかと」
占い師「ふむ…ロングや、悪者さんと席を外してくれやせんか…」
悪者「ぁあ?…何で今さら」
ロング「ほーらいいからっ!外に出る!」
バタンッ!
騎士「いったい…何が起こっているんですか?」
占い師「…真実を知れば、今までの過去を疑う事になるじゃろう。覚悟して聞くとよい…」
今の騎士には信じられないこと
自分の背負った運命
そして
あの悪者との関係
騎士「伝説やおとぎ話でしか聞いたことがない…」
占い師「竜神はこの世界を調和するために存在する者…」
占い師「つまりは人の前に現れたということ…これは重要な事じゃ」
バタンッ…
悪者「おう、便所借りんぞ」
騎士「(アイツと俺が…世界の運命を握っている)」ジー
悪者「…あんだよ。文句でもあるってのか?」
ロング「行くなら行く!」グッ
悪者「うわっ!分かった!や、やめねぇかこのくそアマ!!」スタスタスタ
~~~~ 外 ~~~~
ガチャッ
悪者「ふぃー…スッキリしたぜ」
ロング「お帰り~」
悪者「へいへい。…ん、何だそれ?」
ロング「あ…これ?」
少女は不思議な色の石を握っていた
その色はどこか懐かしいような暖かいような
不思議な色
ロング「大切な人に…貰ったんだ」
悪者「…そんな石ころよか、飯の方が良いだろうに…」
ロング「…ううん…これがいい」ギュッ
悪者「前から思ってたけど…」
ロング「…?」
悪者「やっぱ薄気味悪りぃな、お前」
ロング「…あっそ~」
~~~~ 小屋 ~~~~
占い師「よし、二人とも揃ったかのぉ?」
悪者「見りゃわかんだろ? それとも見えねえのか?」
騎士「……」
悪者「…はぁ…んで、何だよ」
占い師「明日の朝、再び城に向かい…"凶兆"を叩くのじゃ」
悪者「マジかよ…今の城の警備で行くのは、ちょっと狂ってると思うぜ?」
騎士「それに…追っ手が来ないと言うことは、ほぼ全ての兵が城を守れと命ぜられてるはず…」
ロング「そこで、私に考えがあるのよ」
悪者「また囮みてぇな事でもすんのか?」ヘッヘッ
ロング「……」
悪者「…ぁ、ぁあ?」
作戦が告げられ、全員が寝床に就く
キィィ…
騎士「…あ」
占い師「おや…眠れんのか?」
騎士「…いや…」
占い師「……今まで国の一員だった者にとって厳しいのは分かる…じゃが…」
騎士「……竜神に会ったとき、夢だと思っていました」
騎士「しかしその頃から…国の全体像が歪んで見え始めたんです」
占い師「うむ…運命には逆らえん」
騎士「分かっています。あの……ところで」
騎士「あの少女は…どういう…」
占い師「…気になるかね?」
占い師「あの娘の住み処は…"闇"に襲われたのじゃ」
騎士「それって…まさか!」
占い師「…そなたの村かもな……じゃが、あの研究による被害は数えきれん。もしかすると…」
騎士「……」
占い師「……ふむ…」
騎士「…え…と」
占い師「まあ、あの娘はその生き残りじゃ…」
騎士「そ、そうですか…」
死角になる壁に寄りかかり話を聞いていた
他人事に思えず男は顔をゆがめた
悪者「……」
生き残りなど考えられない惨状だった
やはり繋がる人間は――――いない
――――はず
占い師「普通は…あの被害では生き残れん…」
占い師「じゃが…恐らく、それがあの娘の力の現れだったのかもしれんな」
騎士「…何か特別なものが?」
占い師「いいや…特別なものなどではない」
占い師「記憶・判断・想像…どの部類においても、異常な発達を見せている…」
騎士「じゃあ…いわゆる…」
占い師「うむ…"天才"と呼ぶべきであろう」
悪者「…… (異常過ぎるとは思うがな)」
占い師「ワシの魔術書を、小さい頃に面白がって見ていたのじゃ…」
占い師「どれ…この辺に」ヒョイ
スゥーッ…パサッ
騎士「なッ…こんなものを? 私ではとても…」
占い師「最初は子供なりに遊んでおるのか…そう思っておった」
――――――――――――――
――――――――――――――
幼「……」ペラッ
幼ロング「…ねぇ、おばあちゃん」
占い師「何じゃね?」
幼ロング「このあかいとこ、"アブないから使うな"っていみ?」
占い師「ふむ…その通りじゃ。お前は頭がいいのぉ…」
幼ロング「えへへ……。でも、こんなにかんたんに使えるのに、何であぶないのかな…」
占い師「ん…? 使えるではなく"読める"の間違いではないのか?」
幼ロング「ん~…おばあちゃん、ちょっといい?」
占い師「む…?」
ググッ…グイッ
占い師「…っ!?」バタバタ
幼ロング「よっ…アハハッ」ニコ
スタッ
占い師「っ……な、なんと…」ハァハァ
幼ロング「…大丈夫?」
占い師「…ロングや…少し話をしようか」
――――――――――――――――
――――――――――――――――
占い師「あの娘にはとんでもない力が眠っておる…しかもそれを制御するだけの頭脳も…」
騎士「…なるほど、それは騙される訳ですね」ハハハ
占い師「ホッホッ…そうじゃったな」
悪者「… (チッ…情けねぇ)」
占い師「…じゃが、あの娘は過去に恐ろしい目にあった衝撃で…少し記憶が消えておる」
騎士「……」
占い師「悲しい記憶は心を乱す。良かったら、目を配っておいてくれ…」
騎士「…はい」
悪者「… (戻るか…)」サッ
寝床へ帰る途中、少女の顔が目に入った
ロング「…」スヤスヤ
悪者「……」
どうにも性に合わない
でも、何か繋がる部分を感じる
悪者は過去の自分と重ねてしまった
悪者「…はぁ…」
ロング「ヘックシ!」
悪者「…けっ、誰かに噂されてむず痒いか」ハハ
孤独に生きてきた
それが今は、くしゃみひとつで笑ってしまう
少し暖かな夜がふけていく
~~~~ 城の地下室 ~~~~
研究者「…これで、だいぶ集まりましたね…」フフ
人間の山「」グチャァ
研究者「…それにしてもあの連中…少々気になりますね」
研究者「まあ来たところで、"彼ら"の一員になるのでしょうけどね…」
王「」クタ
研究者「フフフ…ねぇ、国王陛下?」
研究者「明日の朝には…素晴らしい力を手にいれますよ?」
研究者「…"闇"の力を…ね」
~~~~~~~~~~~~
朝日が昇ると、悪者は王国の門の前にたどり着いていた
悪者「…チッ…気に食わねえけど、効率は良いしな」
悪者「俺が一騒ぎ起こせば充分だろ」
そこには門番らしき者たちがいる
悪者は遠くから声をかけた
悪者「おーい、おはようさーん!」フリフリ
門番1「なっ…?!お、おい!応援を呼べ!!」
門番2「よし、行ってくる!」ダッ
悪者「はぁあ、間抜けみたいじゃねえか…」
門番1「くっ…何の用だ!!」ジリジリ
悪者「… (こいつらも大概だがな)」
悪者「いやぁ、ちっと忘れ物しちまってよ…」
門番1「ふ…ふざけるな!! 貴様には殺してもいいと命令が出ているのだ!」
悪者「…ん~…そりゃあまずいな…」ポリポリ
悪者「… (マジでコイツら殺さずに戦えってか?)」チラッ
しげみから騎士と少女が目を光らせる
ロング「…めッ…」バッテン
悪者「…あ~、兵は城の前に居るのか?」
門番1「だ、黙れ!!誰が言うものか!」
騎士「…やはり…ここは任せて逆側から」
ロング「いいえ、ダメよ…」
「逆側の門を閉鎖しろー!!」
騎士「うむ…」
ロング「必ずスキはできるわ…」
悪者「…あ~、そんじゃあ…どけ」ダッ
門番1「クソッ!とりゃあ!」ブン!
…サッ…
ドゴッッ!!
門番1「グはっ!……ここは持ちこたえねば…!」ヨロッ
悪者「チッ…さっさとしやがれ…」
門番2「はぁッ…はぁ…」ゼェ
悪者「…一人じゃん」
門番2「し、城から応答がない…門の回りの兵で食い止めるしか…!」
騎士・ロング「…!?」
門番1「くっ…見張り台も降りてこい!」ガシャン
悪者「…よくわかんねぇけど、こんくらいの人数なら…」ポキポキ
悪者「…手加減効くかは知らねえけどよ!」ダッ
騎士「またと無いチャンスだ!今の内しかない…!」
ロング「……」
騎士「…どちらにしろ、乱戦は避けられん」
ロング「…ええ、そうね。行きましょう」
二人は、悪者が兵たちの目を引いたスキに王国内に入り込んだ
……ワヤワヤ………ゴウトウガ……カエリマショウ……
ロング「…今よ」
騎士「よし…」スタスタ
ロング「…」グッ
トントン…
野次馬「んっ?」クルッ
野次馬「…あれ?今誰か…」キョロキョロ
騎士「皆…気づかないのか?」
ロング「…待って」
騎士「…」
おばちゃん「やぁねぇ…あの騎士さんもいないんでしょう?」
オバサン「そう言われれば、お城から誰も出てこないわねぇ」
おばちゃん「最近の国王様、何かへんよねぇ…」
ペチャクチャ…………ネェー……………………
ロング「……後は頼むわね」
騎士「…」コク
城の前に兵士がいない
先程の騒ぎに駆けつけたのか
――――あるいは
…………スタッ…
騎士「…?」キョロキョロ
騎士「(誰もいない…気配すら…しない)」
騎士「…こっちの角の方だと言っていたな」
不気味な静けさの城内
目指すは"隠された扉"
騎士「… (おかしい…兵たちはここに居なければどこにいる)」
騎士「…ふぅ」グッ
手汗が剣の柄ににじむ
慎重に。慎重に
騎士「…これか…」
普段は誰も通らないような場所
古ぼけた扉はこちらに姿を見せた
騎士「…よし」
ガチャッ…
騎士「…っ!? ゴホッ…オホッ…」
突然として異臭が鼻をつく
騎士「クッ… (この臭いは)」
騎士「…(動物の死骸…?)」
謎の異臭の正体
歩みを進めるとそれが何か分かった
騎士「これは…!」
大量の剣と鎧が散乱している
騎士「誰がこんな…まさか、国王陛下が…」
「やあ、よく来たね」
騎士「っ!?」バッ
研究者「いらっしゃい」クク
~~~~ 城門付近 ~~~~
門番1「っ…あっ…!」ガクッ
ドサッ…
悪者「ふぃー…これでよし」
悪者「どれ、手助けに向かうか」
ロング「急いで」
悪者「うぉっ、そこにいたのかよ…」
ロング「何かおかしいわ…この城全部が」
悪者「それを探りに来たんだろ? テメエらしくねぇなぁ」ケケ
ロング「…とにかく、行くわよ」
悪者「…チッ…なんでぇ…」
周囲の怯える目を浴びながらも、二人は急ぎ足に城に向かった
~~~~ 地下室 ~~~~
騎士「貴方は…研究所の…!」
研究者「おや、犯罪者殿に知られているとは…嬉しいものですねぇ」フフ
騎士「…なぜ、こんな真似をした…」
研究者「…なぜ?」
研究者「そこにいる"お方"が、力を望まれたのでね…」
王「…ウゥゥ…」
騎士「…!? 国王陛下!?」
研究者「国一つだけでは物足りなかったご様子でねぇ…」
研究者「"この力"がふさわしいかと…」クックッ
威厳のあった姿も、今は獣のような唸りを上げ檻の中に閉じ込められている
騎士「…国王陛下の様子がおかしくなったのも、貴様のせいか!」グッ
研究者「…少なくとも今はね」フフフ
騎士「こんなことをして…何をするつもりだ!」
研究者「ここまで来たら、分かるだろう?」
騎士「……」
研究者「単純なことだよ…」
研究者「…この弱々しい世界を支配する為。それだけさ」
騎士「くっ…!」
研究者「丁度いい! 君が"こいつら"の実験台になってもらおうか…!」
兵士達「…ヌァァア…!」ゾロゾロ
騎士「ナメるなよ…これでも兵達を従えてきたんだ!!」
内心は震えている
前人未到の力を前に、一人で戦い勝てなければ
――ただ犯罪者としての"死"あるのみ
兵士「…ギィィイィィ…!」ブン!
騎士「…ハアッ!」
スパッ!
兵士「ウブワァァ!…ガァァ…」ブシュッ
騎士「ん…っ!?」
シュルルッ…シュゥゥゥ……
騎士「こ、こいつは…あの時の…!」
研究者「おや…この力をご存じとは」フフ
研究者「でも、残念ながらここは特別頑丈でねぇ…光は届かんのだよ」クックック
騎士「っ… (やはり、脱獄したときの…)」
研究者「この力の真髄を見るがいい…!!」
~~~~ 城内 ~~~~
悪者「…なんだこりゃあ…」
ロング「……」
悪者「おい、どうなってやがる」
ロング「…した」
悪者「ぁあ?何をしたって?」
ロング「下の方に…何かいる」
悪者「下って…そりゃあオメェ地下室だろ?」
少女の顔にいつもの余裕が見られない
悪者「それよかこの城の守りはどうなってんだ?」
ロング「恐らく…内部に反逆者がいたのね」
ロング「それに魔力の制限も…かかってない」
悪者「おっ、ラッキーじゃんかよ!」
ロング「ええ… (そこまでの内通者…?)」
~~~~ 地下室 ~~~~
騎士「はぁ…はぁ…」
兵士達「…ァァアアァ」ゾロゾロ
騎士「ッ… (何故死なない…!首だけでも再生するなんて…!)」
研究者「クックッ… (この力の真髄…)」
研究者「… ("生命力、活力は死からの距離に反比例する")」
騎士「はあっ!!」ブン
スパンッ!!
兵士「グゥァア…! ゴロ…ス」ブシュウ
研究者「フフ… (そして、より強い"闇の力"の持ち主に服従する…)」
研究者「フフフ…ハッハッハ!」
~~~~ 地下室前 ~~~~
ロング「…これね」
悪者「あぁ、これで間違いね…ぇっ!?」ビク
ロング「…?」
突然顔色を変えた悪者に、少女は思考を巡らせる
ロング「…隠し事はやめてよね」
悪者「あぁ? 少し古傷が痛んだだけだ」
ロング「……」
悪者「ボーッとしてる暇はねぇだろ!…行くぞ」
ロング「ん…」コク
悪者「… (またこの感覚…何で大事なとこで…!)」
むず痒さのような感覚を抑える悪者
しかし、今の少女は扉の先への意識が強い
悪者の異変の原因を理解できないままでいた
ガチャッ……
騎士「ぐはぁっ!!…うっ……」ドサッ
悪者「なっ…」
ロング「!?…何よあれ…」
大量の兵士がひしめくなか、一人の男が話しかける
研究者「やあ、遅かったね。"犯罪者"殿」クックック
悪者「んだテメェは…?」
研究者「…今から消える者に答える義理は無いですね」
悪者「…よくわかんねぇけど、ぶっ殺す!!」
ロング「任せて!」グッ
研究者「…おやおや、呪術ですか?」グイ
ロング「!?」
目の前で軽い体操をして見せる男
研究者「…私はこの力そのものを身体中に巡らせている」
少女「…この人たちにもそれをしたのね」
研究者「…どうやら君は、見た目とはかけ離れた"中身"をお持ちだ」
研究者「でも…この力には勝てはしないな」フフ
研究者「…さあ、殺れ」
悪者「…っ!」クラッ
ロング「(きっとある…何か打開策が…)」
騎士「…を…」
ロング「…えっ…」
騎士「…日の光を…ここへ…グフッ……」
ロング「…!」
地下に造られた薄暗い研究所
少女はある結論を導き出した
ロング「この広さなら………爆発せよ!!」グッ
ボオォオオオン!!!!!
研究者「ムゥッ…! (凄まじい威力だ…だが)」グキ
兵士達「ウゥゥ…ァア」ジュゥゥ
研究者「ここの魔力抑制を解錠したことにより、今や"闇の力"こそ最強! 無駄なことだ!」ジュゥ
ロング「…」スゥゥ
ロング「防壁ッ…!!!!」ググッ
…ゴゴゴゴゴ!!!
研究者「…!支柱を!」
ロング「…ッ… (最大限に上方へ開けば、外まで届くはず…!)」
騎士「さすが…だ」ニコ
悪者「っ…あっ…!」フラフラ
騎士「…?」グッ
悪者のもがく姿が目に入った騎士
敵からの攻撃を受けたようには見えない
かろうじて立ち上がる騎士
騎士「…っ…どうした…何をそんなに…」
ロング「気をつけて!!揺れるわよ!!」
騎士「あ…あぁ、分かった」
やがて、城は崩れ始めた
~~~~ 街の中心部 ~~~~
……ォゴゴゴゴゴ!!
「きゃっ!!」
「…何?なんの揺れ?」
「今…城が傾かなかったか?」
「何言ってんのよ…どうやったらあんな大きな物…」
「ママぁ~、お城が揺れたよ~?」
「…お…おい!! 見ろ!!」
ゴゴゴゴゴッ!!
ピキィィィン…………
「城が……」
「何と…崩れおったわい…」
「あの真ん中の白い光…何かしら…?」
騎士「う…ん」
ロング「ふぅ…」
ォオオオオオオオォォ……
騎士「…兵達が…消えて行く」
ロング「あれはもう人ではないわ…諦めなさい」
悪者「…っつあ、痛てて………って、なんだこりゃあ!?」
ロング「あら、もとに戻ってる」
騎士「貴様は…さっき何をもがいていたのだ?」
悪者「あ、あぁ?…チッと古傷がよぉ」
ロング「…取り合えず小屋まで戻りましょう。あの男が下敷きになったとは思えないわ」
騎士「…良かろう」
悪者「…チッ…クソッたれ…」
乙乙
>>148
いつもあんがとな
こんだけ書いてまだ3割来てないッツ( ´_ゝ`)
なんだって
どうみても七割くらいかいてるだろ・・・
>>150
物語の3割←×
スレッドの量←○
相変わらずの説明下手さwww
~~~~ 小屋 ~~~~
占い師「…では、どうなったのじゃ?」
騎士「…兵士達が…皆、その男の手下に…」
ロング「とても不気味だったわ…」
悪者「…チッ…」
占い師「ふむ…どうやら、その男の侵略は"一時的"には食い止めたようじゃな」
ロング「やっぱり…まだ生きているのね」
騎士「あれに巻き込まれてまだ……恐ろしい力だ」
占い師「…して、ロングや…」
ロング「…ううん」
占い師「……そうか、まだじゃったか」
騎士「…?」
ロング「じゃあ、話してもらいましょ?」
騎士「何をだ?」
悪者「…」
占い師「ロング…お前は大方の予想はついておろう?」
ロング「…半分くらいかな?」
悪者「…わぁったよ…見せた方が早そうだな」ヒュル
そう言うと悪者は手袋を外し左腕を晒した
忌まわしき力を受けた兵達と、同じ色の腕を
騎士「…っ!?」
ロング「これ…あいつらと一緒の?」
悪者「…たぶん…いや、ちげぇねぇか」
騎士「しかし…お前はこの国には居なかったはず……」
悪者「……俺は…ガキの頃に、死に至る毒をこの腕に受けた」
悪者「数日も経てば、身体中に回っちまうヤツだったらしい…」
――――――――――――――――
――――――――――――――――
悪者父「…何とか…ならないでしょうか…」
??「…方法はありますよ」
悪者父「!!」
??「ただし…少々のリスクと後遺症は残るでしょうね…"アレ"は」
悪者は扉越しに聞こえる声を密かに聞いていた
幼悪者「…こうい…しょう?」
幼悪者「なんだろう…こわいな」
ズキッ!!
幼悪者「ううっ!!」ガク
悪者父「っ!?どうした!?」
幼悪者「だ…だいじょうぶだよ…ちょっといたかった…」
??「…どうなさるんですか?」
悪者父「っ……」
――――――――――――――
――――――――――――――
ロング「……」
悪者「俺は生き延びた……でも、死にたいくらいに虐げられた…」
悪者「…この腕を持ったせいで」グッ
力を入れると、それはより黒く光った
悪者「だがな…親父はこの力の正体を知った」
騎士「それが原因で…」
悪者「いや……親父は…」
悪者「この力に…闇に取り付かれやがった」
悪者「周りの奴ら…仲の良かった奴らを殺し、そして…」
悪者「家族までも…!」
――――――――――――――――
――――――――――――――――
悪者父「………ゥゥ…」
悪者「…親父…なにしてんだよ…!!」
悪者父「お前が…弱いカラ…いじめられるんだろォ!!」
悪者「だからって殺すなんて…」
悪者母「あなた…どうして…」
悪者父「ぁあ?…なんダヨ…」
悪者母「……牢獄のある国まで連れていきます」
悪者父「…ゥゥ……!」
悪者父「フッざけるなぁ!!」ブン
ガツンッ!!
悪者「っ!?」
悪者母「…ぅっ……」グタァ
悪者「そ…んな…」
――――――――――――――
――――――――――――――
悪者「記憶にあったのはそこまでだ…」
占い師「村が滅んだ理由…そなたの力ゆえか」
悪者「……ホントに、アホみてぇだった」
悪者「気づきゃあ目の前が半遺跡状態だぜ?」
自分の体はこの左腕の物
運命はいつだって左手が握っている
騎士「…でも、それはお前にとっての"正義"の為だったのだろう?」
悪者「…?」
ロング「怒った理由は間違ってないってさっ」
悪者「…でも」
騎士「その力が感情の起伏に呼応して動くとしたら…」
騎士「普段から苛つき通しのお前が、その力を抑えられるわけが無い」
騎士「お前にも…人らしい所はあったと言う訳だ」ハハ
悪者「…んだぁ?黙って聞いてりゃあ言ってくれるじゃねぇか」
ロング「フフフ…」クスクス
少女は優しい笑顔を見せた
久しい友人と出会ったような
そんな笑みを
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