まどか「すにーきんぐみっしょん!」(276)

さやか「じゃ、また学校でね!」

まどか「うん、またね!」

―――――

まどか「もうちょっと遊んでいたかったけど、仕方ないよね」

まどか「うーん、まだ門限まで結構あるけど…」

まどか「…一人ぼっちじゃ、何してもつまんないよね…」


まどか「………ほむらちゃんっていつも何してるのかなぁ」


まどか「かっこよくて何でもできて、私なんかとは大違い」

まどか「だけど、お誘いしてもお昼とか帰りとかあんまり一緒になってくれないし、休み時間にお喋りとかも全然……」

まどか「たぶん魔法少女のことで大変なんだと思うけど…」

まどか「……でも、でも、私はほむらちゃんとも仲良くしたいな」

まどか「魔法少女とかそんなの関係なしに、普通のお友だちになりたい」

まどか「やっぱり、もっとほむらちゃんのこと知らないとね」

まどか「…そうだ、ちょっとのぞき見してみちゃおうっと!」

まどか「 自分を知り相手を知ればナントカだね !」ティヒヒ!

―――――

まどか「とりあえず、ほむらちゃん家まできたのはいいけどどうしよう…」マドマド

まどか「あ、ほむらちゃん中にいるのかな」

まどか「よーし、耳を済まして…………」ピト

………………ガサ……………コトン…………

まどか「うん、中にいるみたい」

まどか「でもどうやってほむらちゃんを観察しようかな」

まどか「窓からのぞくのは……うーん、双眼鏡を持ってくればできたかも」

まどか「どこかに合鍵が隠してあったりして」ゴソゴソ

まどか「そんなわけないっか……」

まどか「むー…」

まどか「そういえばちゃんと鍵がかかってるのかな」

まどか「しっかり者のほむらちゃんだけど鍵をかけ忘れちゃったりなんて」

まどか「確認してみないとね」

まどか「ゆっくーり、音を立てないように………」

ソローリソローリ


―――――

ほむら「掃除機掛けもお終い」カチャッ

ほむら「ちょっと疲れたし、休憩にしましょう……」

カタッ
チャポチャポチャポ

ほむら「ん………やっぱりティーパックじゃマミの紅茶には及ばないわね」コトン



ほむら(いよいよ二日後になってしまった)

ほむら(……何時頃からだったかしら、こんな事をするようになったのは)

ほむら(今日という今日を何度も何度も繰り返してきたはずなのに)

ほむら(居ても立ってもいられなくって、どうしようもなくて)

ほむら(決意の表れだったのか、それとも諦めの肯定だったのか)

ほむら(とにかく、せめて少しでも後腐れの無いようにと)


ほむら(すっきり綺麗に何もなくしてしまうようになったのは)



気付けば、自分が魔法少女になったあの日がまるで遠い昔のようで。
それなのに、ここまで辿ってきた道程はつい昨日のようで。

ただ、長い長い戦いを経て漸くここまで来た。


繰り返す中で、まどかが契約しないように策を散々弄してきたけれども。
結局、その最適解は「大団円」へと収束していった。

ただただ偏に、まどかが優しかったから。
誰か一人でも傷つけば、まどかは躊躇うことなく契約してしまう。

まどかさえ助けられればいいと思っていたけど。
まどかを救わなければならないのだと思い知った。

それまでだって手を抜いたつもりは勿論無い。
しかし、それからはもう死に物狂いだった。
余計な感情を圧し殺して、何もかもかなぐり捨てて。

私は私自身に強さを求めた。
素質が無いことになんて甘んじられない。
限界だと思っていたものを振り切って。

ちっぽけな魔力から大きな魔法を引き出す技術を。
僅かばかりの容量を少しでも増す方法を。
経験から模索し、繰り返す魔女との戦いの中で実践した。

もちろん、基礎体力も補わなければならない。
暇さえあればトレーニングに勤しんだ。


初めて成果が感じられたの
は、どれだけ繰り返したか思い出せなくなった頃だったと思う。
あまりに微塵な進歩でも、ようやくの第一歩。

身体の弱かった私はもういない。

私は理想の結末を邪魔するものを拒んだ。
ただ繰り返しただけでは変えられなかった。
成すべきことは多い。

武器の確保。
グリーフシードの収集。
インキュベーターの勧誘の妨害。
まどかと美樹さやかの契約の阻止。
巴マミと佐倉杏子との和解。
魔法少女の真実の伝達。
魔女化の抑止。
ワルプルギスの夜を想定した戦闘訓練。

時にはイレギュラーへの対処も強いられる。

全く同じ過去は一度として無かったけど、作業効率は加速度的に上がっていった。
遥か彼方に望む未来へ、確かに歩み続けている。

どんくさかった私はもういない。



今だからこそそんな考えが浮かぶことは無くなったけど。
何度も投げ出しそうになった。
気を抜けばいつでも狂ってしまいそうだった。

それでも、必死に堪えて前に進み続けた。
私が救えなかった人たちを。
私が見棄ててきた人たちを。
そんな犠牲を無為になんてできる訳がない。


あいつはチェックメイトを宣言したつもりでいたのだろう。

いつのことだったか、まどかの膨大な素質は私が繰り返した結果であるのだとインキュベーターが宣ったが。

その言葉は寧ろ、私を更に奮い起たせた。

だったら出来る限り繰り返さないよう努力するだけ。
それすら踏み越えて行くだけ。
まどかを守り通すだけ。

そんなことで絶望できる私ではなくなっていた。



ワルプルギスの夜の本性を目の当たりにしたのは、この時間だった。

さすがにへし折れてしまいそうだったけど。

しかし、投げ出せる訳がない。
私の後にはもう、引き返せる道なんか残っていない。
幽かな可能性を我武者羅に追い求めるだけ。

少しずつ、それでも次第に。
その差を確実に縮めていった。

繰り返す度に成長するのはまどかの素質だけじゃない。
この私だって更に。


何度敗れたって。
何度だって這い上がる。

そして、前回。

決死で食い下がって。
後一歩の所でやられてしまったけど。

確かな手応えが残っている。
この感覚がそのまま確信になる。




万全を期した。

今回こそ、撃破できる。撃破してみせる。





そうすれば、インキュベーターはまどかを唆す手立てを失うはず。
そうすれば、まどかが私達のことで気を揉むこともなくなるはず。
私自身だって十分に強くなった。
身体能力だけなら杏子にだって引けを取るつもりはない。


でも、しかし。
砂が落ちきってしまえば。
時間を止められなくなってしまえば、足手まといになってしまう可能性が否定できなくなる。


迷惑はかけたくない。

……ワルプルギスの夜を倒したらどうしようか。

出口があるかもわからない迷路の外側の事なんか考えもしなかった。
迎えたことのない未来が今、手を伸ばせば届きそうな所にある。

今後のことも決めていかないと。


どこか遠くに行こう。
ここを離れなければ。

それだけはもうずっと前から決めている。

北に行こうか、南に行こうか。
海外でもどこでもいい。
どうだっていい。


それから、……それから。


それから?



「あれ?」



……わたし、は。






「……………どうしたらいいの?」








カチャ

ほむら「?!」

ガチリッ


ほむら「つい時間を止めてしまったけど……」

ほむら「…空き巣か何かかしら?」

ほむら「…やっぱり、開けっぱなしにしておくのは良くないわね……」

ほむら「…既に半開きじゃない」スタスタ

ほむら「一体誰がこんなことを……」チラッ


ほむら「……………………」

ほむら「………っ」

ほむら(………………どうして。どうして、こんな時に…………)

ほむら(……………………)


ガチリッ

―――――

カチャ

まどか「?!」

まどか「ちょ、ちょっと音がでちゃったけど、たぶん気づかれてないよね」アセアセ

まどか「でも、本当に鍵をかけ忘れちゃってるなんて」

まどか「ほむらちゃんにも抜けてるとこがあったんだね」

まどか「後はゆっくり開いて……」ソォーット

まどか「よし、いよいよだね…」ドキドキ

まどか「ほむらちゃんは何してるのかな?」ヒョコッ




ほむら「…………」
まどか「…………」




まどか「………てぃひひ」ダラダラ

ほむら「……まどか、あなたはここで一体何をやってるの」

まどか「え、えっと、あのー、ううぅ……………てぃひひ」アセアセ

ほむら「…………」

まどか「えと、そうだ、この前ほむらちゃんに借りたマンガを返そうと思って」アセアセ


ほむら「……私、漫画は持ってないわよ」

まどか「」ダラダラダラダラ

まどか「えっと、えっと、ほむらちゃんは元気かなーって」ダラダラ
まどか「ほむらちゃん、転校してきてからずっと休みがちだし…」

ほむら「……怒ったりしないから、誤魔化さないで」

まどか「…ほ、ほむらちゃんの私生活ってどんなのかなーって…」

ほむら「………そう…」


まどか「…ごめんなさい」ペコリ

ほむら「……私だったから良かったようなものの、もうこんなこと絶対にしては駄目よ」

まどか「はい…」

ほむら「………」


まどか「……ほむらちゃん?」

まどか「…なんだか元気ないみたいだけど、どうしたの?」

ほむら「……っ、別に、なんでもないわ…」


まどか「ううん、そんなはず無い。私じゃなくってもわかっちゃうよ」



まどか「だって、ほむらちゃん」



まどか「とっても辛そうで、今すぐ泣き出しちゃいそうな顔してる」




まどか「…私じゃあ、何か力になれないかな?」

まどか「お話を聞くぐらいはしてあげられると思うから…」

まどか「誰かに相談するだけで、少しは楽になると思うの。私もそうだから……」


ほむら「………」

ほむら「………本当に、本当に。いつまでたっても変わらない……」ポソリ

ほむら「…………………少し、上がっていくかしら?」

まどか「………うん!」パァァ

まどか「お邪魔しまー……あれ?」

まどか「こないだみんなで来たときはなんだかすごかったけど」

ほむら「あの時はね。必要だったからそうしたまでよ」

ほむら「今はもう必要ないから、魔法を解いただけ。本当はこんな部屋なのよ」

まどか「でも…」


まどか「この部屋の中に机だけっていうのも……」

まどか(………………)

ほむら「……掃除の途中だからよ。邪魔な物はひとまずこの中に放り込んでしまうの。」カシャン

まどか「…そっか、だから魔法少女の姿になってるんだね」

まどか「すらっとしててかっこいい……って、ほむらちゃん!ソウルジェムが真っ黒だよ!!」

ほむら(…そういえばまどかにはまだ見せてなかったわね)

まどか「え、ええ?グリーフシードは残ってるの??ないの?どうしようどうしよう??!」オロオロ

ほむら「まどか、落ち着いてよく見てみなさい」スッ

まどか「え……?」ジー
まどか「…真っ黒だけど濁ってない………なんだか夜空みたい」

ほむら「本当はそんな色じゃなかったはずなのだけど、いつの間にかね」

まどか「そうなんだ…………びっくりしちゃった」フゥ

まどか「えっと、もともとはどんな色だったの?」

ほむら「紫色よ。ぼんやりとしか思い出せないけど……」

まどか「そうなんだ。でも、どうして色が変わっちゃったんだろう?」

ほむら「……こればっかりは私にも解らないわ」


ほむら「…………何か飲み物を用意しましょうか?」

ほむら「お湯と紅茶とコーヒーしかないけど…」

ほむら「紅茶はティーパックでコーヒーはインスタントだけど……」

まどか「えっと、紅茶がいいな」

ほむら「じゃあ好きなのを選んでちょうだい」ヒョイ

まどか「本当に何でも入ってるんだね」ドレニシヨウ?

ほむら「…ええ、最近は中身の管理も大変だわ」

まどか「そんなにいっぱい何か入ってるの?」コレガイイカナ

ほむら「…色々ありすぎて説明しきれないわね」


ほむら「……それにしても、どうしたら私の私生活なんかに興味がわくのかしら?」チャポチャポ

ほむら「私のなんて無味乾燥もいいところなんだけど…」ハイドウゾ カタッ

まどか「…うん、今日はさやかちゃんと遊んでたんだけどね」イタダキマス

まどか「さやかちゃん、今日は用事があるって早く帰っちゃって」

まどか「まだ時間があるけど、一人ぼっちじゃつまんないなーって思って」

まどか「…そしたらね、ほむらちゃんのことが頭に浮かんできたの」

まどか「ほむらちゃん、学校でもいっつも一人でいるから…」

まどか「マミさんも杏子ちゃんも、ほむらちゃんが一人で魔女退治してるのを心配してるし」

まどか「…それなのにほむらちゃんっていつも、なんだか寂しそうで……」

ほむら「……」

まどか「私ね、ほむらちゃんが転校してきてからずっと、友達になりたいなって思ってたの」

まどか「保健室に行く途中であんなこと言われたのにはびっくりしたけど…」

まどか「その時のほむらちゃん、声も体も震えてたの、よく覚えてる」


まどか「それから、わたしとさやかちゃんを助けてくれて」

まどか「マミさんと杏子ちゃんと仲良くなって」

まどか「…ほんとは、魔法少女同士はあまり仲良くしないんだって、マミさんが言ってたの」

まどか「それにね、マミさん、私たちみたいな後輩ができて嬉しかったって」

まどか「一緒に戦ってくれる仲間ができて嬉しかったって」

まどか「ほむらちゃんには感謝してもしきれないわねって」


まどか「さやかちゃんもね、ほむらちゃんのお陰で自分の気持ちに向き合うことができたって」

まどか「上条くんの事も諦めずに励まし続けてみせるって」

まどか「でも、ありがとうなんて恥ずかしくって言えないや…って」


まどか「杏子ちゃんもね、もうマミさんと昔みたいに一緒にいられないと思ってたって」

まどか「それに、また、人の為にも魔法を使おうかなって」

まどか「いつか、ちゃんとお礼を言わないとなって」


まどか「みんながほむらちゃんに感謝してるんだよ」

ほむら「……」

まどか「それにね、わたしもありがとうってちゃんと言いたいの」

まどか「あの時わたしとさやかちゃんを助けてくれて」
まどか「それに、私たちの知らないところで助けてくれていて、ありがとう」


まどか「でもね、私は助けられるばかりじゃ嫌なの」

まどか「ほむらちゃんみたいに誰かの為に何かできるようになりたい」
まどか「本当は一緒に魔法少女として戦いたい」


ほむら「っ、……それ、だけは…………」

まどか「うん、それだけはしない」

まどか「前にみんなでここに来たとき、約束したもんね」

ほむら「……………………………」

まどか「だから、そうじゃないところで力になってあげたいの」
まどか「ほんのちょっとでも、ほむらちゃんを支えてあげたい」

まどか「みんな揃っているときでも、ほむらちゃんってどこか遠くにいるみたいで……」

まどか「……えへへ、話がすっごく逸れちゃったね」


まどか「私が今日のぞきをしようとしたのはね」

まどか「ほむらちゃんと友達なるきっかけが欲しかったからなの」


ほむら「……………目的、と手段がちょっと、捻くれてるわね……」

まどか「…他に、思い付かなくって」

ほむら「……あなた、らしいわ………」
ほむら「…本当に、どれだけ経っても変わらない………」ボソ

まどか「…ほむらちゃん、改めてお願いするね」


まどか「私と、お友達になってください」




ほむら「……………………」

ほむら「……………っ、ごめん、なさい……」

まどか「…」

ほむら「……今は、明後日のことで、っ精一杯で…」

ほむら「…………あなたの気持ちは、とても、嬉しい…」グッ

まどか「………」

ほむら「………私、なんかのことを、っ気遣ってくれていて……………」プルプル

ほむら「……………だから、返事は、………っ、すべてが終わってからで、い、いいかしら……」



まどか「…………やっぱり、そうなんだ」ボソ

まどか「……ねぇ、ほむらちゃん」

ほむら「………………」

まどか「………わたしの顔を見てほしいな」

ほむら「……………………」

まどか「…ほむらちゃんは」

まどか「ほむらちゃんは明後日のことが終わったら」



まどか「本当に返事をしてくれるの?」





ほむら「ぅ……………」

まどか「……私ね、ほむらちゃんが転校してくる前の日に夢を見たの」

まどか「一人の女の子がとっても大きな何かと戦ってて」
まどか「町中がぼろぼろになって、その女の子も傷だらけになって」
まどか「でも、最後にはその何かを女の子がやっつけたの」

まどか「でね、その女の子が私のところまで来てこう言ったの」

まどか「『これで全部おしまい。そしてお別れ。元気でね、まどか』って………」


まどか「…そう言って、私の目の前から………消えちゃった」
まどか「すごく悲しそうな顔して、泣いてたの…」

まどか「…私ね、わかっちゃった」

まどか「ほむらちゃんが本当はお掃除してたんじゃないんだって」

まどか「…本当はお引っ越しの準備だったんだよね」

ほむら「ぁ……………」

まどか「ほむらちゃんが初めて教室に入ってきたとき、私、びっくりしちゃった」

まどか「夢の中で出逢った子は、ほむらちゃんだった」

ほむら「……ぅ………ぅあ……」ジワ

まどか「あんなに泣いてた子が、どうしてこんなに冷たい目をしてるんだろうって」


まどか「……きっと、とても辛いことがあったんだろうなって」

まどか「………もっと早くお話ししたかったけど」

まどか「ほむらちゃん、私たちと一緒にいるのを避けてるみたいだったから………」

まどか「私たちのことあんまりよく思ってないのかなって……」

まどか「…それで、声をかける勇気がでなくって……」
まどか「本当に嫌われてたらどうしようって思って……」

ほむら「………違う、……っ、違うのよぉ…っ」ウルウル

まどか「……」

まどか「………ふと思ったの」
まどか「このままじゃ本当にいなくなっちゃうって」

まどか「だから、……いてもたってもいられなくって…!」

ほむら「ぁあ………ぁ、まどか………」グスッ

まどか「…ほむらちゃん、どうしてどこかに行っちゃうの?」

まどか「ほむらちゃんが決めたことなら、しょうがないけど」

まどか「でも、理由ぐらいは教えてほしいな」

まどか「私の…私のわがままだけど……」

ほむら「ぁ……ぅ、まどか、っ、あなたは…」ポロ

ほむら「……ぁ、あなたはっ……優し、すぎる…」ポロリ

ほむら「…っ、やさしくて、強くって、っ、他人のい、…痛みには、びん感で」ポロ

ほむら「ぅう、…わたし、っにはぁ、まぶしすぎて!」ポロポロ

ほむら「っ、ずっと!ずっと!わたしの、あこがれだったのに!!」ボロッ

ほむら「あなたはっ、わっ、わたしのすべて、っなのにぃ!」ボロ

ほむら「なのに、なのに!わたし、わたしはっ!!わたしはあぁ………」ボロボロ



ほむら「……ぅぅううううぅぅぁぁぁあああああ!!!」ボロボロボロ


まどか「……………」

まどか「……ほむらちゃん…」スッ


ギュウウウウゥ

ほむら「ぐうぅう、うううう!」ボロボロ

まどか「きっと、辛かったんだね、苦しかったんだね…」

まどか「辛くって、苦しくって、泣くこともできなかったんだね…」

ほむら「うぅ、ううぅぅ…」コクコク

ギュウッ


まどか「…だったら、今はいくらでも泣いていいんだよ」ナデナデ


ほむら「……ぁぁぁああああ!ぅああああああぁぁ!!」ボロボロボロ

――――――――
―――

ほむら「…ぅ………う…」ポロポロ

まどか「…」ナデナデ

ほむら「………………」ポロポロ

まどか「…………」ギュ

ほむら「ぅ………………」グスッ

まどか「よしよし」ナデナデ

ほむら「………」ギュッ

まどか「……」ナデナデ


ほむら「…………………私は」ポツリ

ほむら「……もう、誰にも頼らないって決めたのに………」

ほむら「…結局、あなたに助けられてばかりで………」グスッ

ほむら「あなたを助けられなくって……!」ジワァ

まどか「…」

ほむら「私ね、未来から来たんだよ…」ポロ

ほむら「この一ヶ月を、何度も何度でも繰り返したの…」ポロポロ

ほむら「ただ、あなたと交わした約束を守りたかった……」ギュ

ほむら「っ、それが、私に残された、たったひとつの道標で」ポロポロ

ほむら「…だからっ、私は…、わたしはぁぁぁ………ぅ」ボロボロ

ほむら「ぅぅうぅ…」ボロボロ

ほむら「わけわかんないよね……、っ、きもちわるいよね……」ポロポロ

まどか「……」ナデナデ

まどか「ねぇ、ほむらちゃん」ナデナデ

まどか「…私には、ほむらちゃんが背負ってるものも」ギュ
まどか「ほむらちゃんがどれだけ苦しんでるのかも分かってあげられないけど」ナデナデ


まどか「でもね、分けてもらうことならできるから」
まどか「私も一緒に、少しでも背負ってあげたいから…」


まどか「私も、がんばって受け止めてあげるから」ダキッ

ほむら「ぅあ……ぅ、まどか、まどかぁ…!」ボロボロ


ほむら「…わたし、何もできないだめな子なのに」ポロポロ

ほむら「あなたは、友達になってくれて」グス

ほむら「魔法少女のあなたが、私を助けてくれたのに」エグッ

ほむら「わたしの、っ目の前で、あなたはぁ、しんでしまった!」ボロッ

まどか「…………」ギュウ

ほむら「なにもぉ、何もできないわたしがくやしくて、かなしくってぇ!」ボロボロ

ほむら「っだから、わたしも魔法少女になったのに」グスッ

ほむら「まどかとの出逢いをやり直したいって、まどかを守れるわたしになりたいって…」ポロポロ

ほむら「転校してくる前まで戻ってきたのに」グス

ほむら「わたし、あなたを助けられなかった…」ポロ

ほむら「何回やり直しても、たすけられなかった………!」ポロポロ

まどか「……」ナデナデ

ほむら「わたしね、あなたと約束したの」ポロ

ほむら「キュウべぇに騙される前のあなたを助けてあげるって」グスッ

まどか「!………」

ほむら「だから、何度もやり直したの…」グス
ほむら「…でも、全然うまくいかなくって……」グスグス

ほむら「その数だけ、あなたたちを見棄ててきた…」ポロ
ほむら「わたしが、ころしてしまったことだって………」ポロッ

ほむら「…だから!一緒にいることは……できないの………」ポロポロ

ほむら「そんなの、誰にも許してもらえないから……」グスグス

ほむら「これが終わったら、ここを去って…」ポロポロ

ほむら「どこか遠くにいくつもり、だったのに……」ポロポロ

ほむら「どうしていいか、わかんなく、なっちゃった……」グスッ

ほむら「…わたしはなんで、こんなことになっちゃったんだろう……」ポロポロ

まどか「……ほむらちゃん」ナデナデ

ほむら「こんなわたしと仲よくしてくれて、嬉しかった…」ポロポロ

ほむら「何回、やり直しても、あなたたちはいつでもそうだった……」ポロポロ

ほむら「…だから、別れる時に悲しくなって……」ポロポロ

ほむら「また会ったときに、余計に辛くなって………!」ポロポロ

ほむら「そんなのっ、っ、耐えられなくってぇ……」ボロボロ

ほむら「だから、離れようと、っしたのに…」グスッ

ほむら「そんなの、寂しくって、できなくってぇ!」ボロボロ

まどか「……」ギュウウ



ほむら「っ、わたし、わたしは!」ボロボロ


ほむら「ほんとは、ほんとは!ほんとはあぁっ!!!」ボロボロ








「…xxx、xxxxxxxxxxx………!!」










まどか「…ほむらちゃん!」グイッ

ほむら「!?」

まどか「私の顔、見える?」

ほむら「?、??、え、ええ……」ポロポロ

まどか「私と手、つないでくれる?」ギュ

ほむら「……ええ、………あったかい…」ポロポロ

まどか「私の声、聞こえる?」

ほむら「…よく、聞こえる………」ポロポロ


まどか「なら、今、私はここにいるんだよ」

まどか「ほむらちゃんのおかげで、今の私がいるんだよ…!」



まどか「ごめんね、私がわがままいったばっかりに…」

まどか「ほむらちゃんを、こんなに苦しめて……」

ほむら「……まどかのせいじゃない!わたしが、勝手にやったことだから……」ポロポロ

ほむら「っ、それに、あさってで全部おしまいだからぁ……」ポロポロ

ほむら「だから、もう気にしなくていいからぁ………」ポロポロ



まどか「………」

まどか「ううん、おしまいなんかじゃない」

まどか「全部終わったら、またひとつ始まるんだよ…」

まどか「こんなことじゃ全然足りないと思う………」
まどか「なんの埋め合わせにもならないと思う…………それでも」

まどか「一通りおしまいにしたら」

まどか「みんなでどこかに遊びにいこうよ」

まどか「みんなでお洋服買いにいこうよ」

まどか「またみんなで学校にいこうよ」

まどか「ほむらちゃんは、ひとりぼっちじゃないんだよ」

まどか「ほむらちゃんのこと、みんなもきっとわかってくれるよ」

まどか「ほむらちゃんが寂しかった分だけ、ずっと一緒にいてあげる」

まどか「嬉しい時は、一緒に笑おうよ」

まどか「悲しいことがあったら、私が受け止めてあげる」

まどか「巻き戻した分だけ、一緒に先に進もうよ」

まどか「今度は私にほむらちゃんを助けさせて」

まどか「私にほむらちゃんの願いを叶えさせて!」

まどか「だから…」


まどか「だから、まずは」


まどか「これから私と、最高の友達になってほしいの!!」




ほむら「ぅ、っ、わたし、わたし」ポロポロ


ほむら「わたしは、いい、の?」ポロポロ

ほむら「あなたと、ともだちになっていいの?」ポロポロ

ほむら「あなたを、あなたたちを、ずっとまもれなかったのに、みすててきたのにっ」ポロポロ

ほむら「そんなわたしなんかと、ともだちに、なってくれるの?」ポロポロ


まどか「………うん!」ニコッ



ほむら「う、ぅうう、ぁううぅう…」ポロポロ

まどか「…やっと、ほむらちゃんと仲よくなれるね」ナデナデ
まどか「これからもっともっと、うんと仲よくなろうね」ギュ

ほむら「……ごめんなさい………」ポロポロ

ほむら「ごめんなさい……ごめんなさい…!」ボロボロ

まどか「私はほむらちゃんのこと、全部許してあげるからね」ヨシヨシ

ほむら「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!」ボロボロ


ほむら「ごめん……なさい…………!」ボロボロ

ほむら「ぅう………ううぅ……」ボロボロ

―――――

ほむら「………だいぶ、落ち着いたわ」グスッ

ほむら「見苦しい所を見せてしまったわね」グシグシ

まどか「私は、嬉しかったな」
まどか「ほむらちゃんが私を頼ってくれたと思うから」


ほむら「……ふふ」クスッ

まどか「あ、笑った!」

まどか「やっぱり、笑ってた方がかわいいね」

ほむら「ありがとう」
ほむら「でも、笑うだなんていつ以来かしら」

ほむら「結局、最後まであなたに助けられっぱなしだったわね」

まどか「もう、最後じゃないってさっき言ったでしょ?」プンス

ほむら「…ちゃんと、分かっているわ」
ほむら「あなたには私の願い事を叶えてもらうんだから」クスクス

まどか「あぅ、そ、そうなんだけどさ///」


ほむら「……ふふ」ニコリ
まどか「えへへ」ニコッ


まどか「あっ、紅茶…」
ほむら「どうせ安物だし、気にしないで」

ほむら「あら、もうこんな時間ね」

まどか「えっ?あっ、ほんとだ!」
まどか「どうしよう、ちょっと遅くなっちゃうかも…」アセアセ

ほむら「なら、私が送っていってあげる」
ほむら「もう準備はできてるかしら?」

まどか「う、うん。とりあえず…」アセアセ

ほむら「それじゃあ、行きましょうか」ニギ

ガチリッ

まどか「?、??」

ほむら「手を放しては駄目よ、あなたの時間まで止まってしまうから」

まどか「これがほむらちゃんの魔法…」
まどか「なんだか、不思議な気分」

ほむら「このまま帰れば、十分に間に合うわね」

テクテク

まどか「本当に何もかも止まってる…」
まどか「でも、こんなことで魔法を使って大丈夫なの?」

ほむら「そうね、確かに無駄遣いはよくない」

ほむら「あと二、三時間もぶっ続けてしまえばまずいわね」

まどか「え、そんなに?」

ほむら「断続的に行えばもっと持つわ」
ほむら「初めは精々三分位だったのだけど…」


ほむら「しかし、これとももうすぐお別れかと思うと、少し名残惜しいわ」

まどか「?」

ほむら「私の魔法はね…」

―――――

まどか「そっか、止められなくなっちゃうんだ…」

ほむら「正直いって大打撃よ」
ほむら「魔女とまともに渡り合えるかどうか…」

ほむら「そうなれば、いつやられてしまってもおかしくないから…」

まどか「だから、どこかに行っちゃおうとしたの?」

ほむら「まあ、その理由の一つになるわね」
ほむら「…そんな顔しないで、もうどこにも行かないから」


ほむら「必ず帰ってくるわ」

まどか「…うん、私、待ってるからね」

ほむら「ちゃんと避難所で大人しくしているのよ」

ほむら「キュウべぇに何を言われても契約しては駄目よ」

まどか「もう、分かってるってばー!」プクー

ほむら「うふふ」


ほむら「さて、着いたわね」

まどか「うん、ありがとう!」

ほむら「どういたしまして」

まどか「…あのね、ほむらちゃん」

まどか「ほむらちゃんが転校してきた日に言ってたことだけど…」

ほむら「?、それにしても、あんな台詞をよく覚えてたわね…」

まどか「そりゃあ、いきなりあんなこと言われたら誰だってびっくりするよ」

ほむら「うーん………?」

まどか「それでね、私、変わろうと思う」

ほむら「?!、あなたまさか、この期に及んで…」

まどか「違うよ、奇跡にも魔法にも頼らないの」

まどか「私、得意な科目も取り柄も何にもないってずっと思ってた」

まどか「だから、そんな自分から変わりたいって思ってた」


まどか「けどね、ほむらちゃんが教えたくれたんだよ」

まどか「私が、私を変えるの」
まどか「何にもないなら、見つければいいんだよね?」

ほむら「……そうかもしれないわね」

まどか「だから、私も頑張るよ」

まどか「絶対に、ほむらちゃんの願いを叶えてあげる!」

まどか「だから、絶対に帰ってきてね、約束だよ!」

ほむら「……ええ!」

まどか「それじゃ、指切り!」スッ

ほむら「ふふ、相変わらず、子供っぽいのね」スッ

「「せーのっ」」
「「ゆーびきーりげーんまーん」」
「「うーそつーいたーらはーりせーんぼーんのーーますっ」」

「「ゆーびきった!!」」

ほむら「あなたの為なら針千本ぐらいどうということはないのだけど」

まどか「それは何か違うよ…」


ほむら「さて、やらなくちゃいけないことができてしまったし、もう行くわね」

まどか「もう遅いし、無理はしちゃダメだよ」

ほむら「あなたの為なら無理を通して道理を引っ込めることぐらい朝飯前よ」ファサッ
ほむら「実際にそうしてきたのだし」

まどか「そうじゃなくってぇ!」

ほむら「明後日の準備の再確認をしてくるだけよ」

ほむら「絶対に帰らなければならないのだから、ね」ニコ

まどか「……気をつけてね」

ほむら「ふふっ、それじゃあね」

まどか「うん、またね!」

ガチリッ

まどか「あ、いなくなっちゃった…」


まどか「…よし、私も頑張らなくっちゃ!」


まどか「ただいまー!」ガチャ

「おーぅ、おかえりー」
「まろかー!」
「お帰り、まどか」

まどか「…ママ、パパ、あのね……!」

――ワルプルギスの夜、前日――
―――――

ほむら「さて、明日の最終確認よ」

ほむら「まず、ワルプルギスの夜は98.3%この時刻に」
ほむら「97.6%この位置に出現するわ」

杏子「…なぁ、どうしてそこまで言い切れるんだ?」

杏子「いや、あんたのことを信用してない訳じゃないんだけどさ」

ほむら「統計よ」

杏子「…確かにあんたはそれで色んな魔女の居場所や特徴を当てて見せた、けど」

杏子「データはどっから出てくるんだ?」


マミ「私、気になってちっとも眠れなかったわ」
杏子「微妙な嘘をつくな」

ほむら「 それは後から嫌というほど聞かせてあげる」

マミ「ほんとっ?!」ガタッ
杏子「落ち着け」

ほむら「それで、出現してからだけど」
ほむら「まずは町中に仕込んだ重火器で迎撃するわ」

ほむら「二人は魔力を温存しておいて」

杏子「しっかし、現代兵器なんかが通るのか?」

ほむら「勿論統計に基づいているわ」
ほむら「魔力も込めてあるから、巻き添えにあったら大変よ」

ほむら「そのうち奴が堪らずひっくり返ろうとするから」
ほむら「私が時を止めてあなたたちを回収する」

ほむら「重火器による迎撃も奴の上方にシフトさせるから」
ほむら「できる限り全力の攻撃をぶちこんでちょうだい」

マミ「ふふっ、腕がなるわね」ワキワキ

ほむら「…本気でやらないと死ぬわよ」
杏子「だろーね」

マミ「ぅ…」シュン

ほむら「奴が完全に反転すれば、辺りに甚大な被害が出てしまう」
ほむら「だから、短期決戦。一瞬でケリをつけるわよ」


ほむら「その為に、グリーフシードも大量に用意しておいたわ」ドザァ
ほむら「好きなだけたっぷり使ってちょうだい」ドババババ

杏子「ちょ、うっわ!うっわ!!」ジャラジャラ
マミ「いやぁ!私のお部屋が真っ黒にぃ!」ジャラジャラジャラ

ほむら「まぁ、持ちきれないでしょうから私が逐次配給するわ」ジャラジャラ

ほむら「あと、キュウべぇに回収させる余裕もないでしょうから、一つを使いすぎないで」ジャラジャラ

ほむら「…まぁ、基本事項だけ確認しておけば後は問題ないわよね?」ヒョイヒョイ

杏子「んー。ま、いけるっしょ」
マミ「任せてちょうだい!」ドン!

ほむら「心強いわね」ヒョイヒョイ


マミ「暁美さん、さっきのお話!」キラキラ
杏子「…あんたはいつからそんなお子様になっちまったんだ?」

マミ「だって、あのミステリアスな暁美さんのことなのよ!」マミン
杏子「あのって、本人目の前だし」

ほむら「っと、これで最後」ヒョイ


ほむら「……さて、と」
ほむら「これからあなた達に語るのは、暁美ほむらの真実よ 」

―――――

マミ「…暁美しゃん、あけみしゃん……ぐすっ」ウルウル

杏子「…どうしてすぐに話してくれなかったんだよ、そんな大事なこと!」

ほむら「マミ、当てつけがましくその胸を押し付けないで」
マミ「でもぉ、暁美しゃんがかわいそうでぇ……ひぐっ」ウルウル

杏子「…あたしら、仲間なんじゃねーのか?いつだって相談してくれればよかったんだぞ?!」

ほむら「ごめんなさいね、どうしても踏ん切りがつかなくって」ナデナデ
マミ「わたし、これから暁美しゃんのこと、ほむらちゃんって呼ぶね……ぐす」ウルウル


杏子「だぁーっ!締まらねぇ!!」クシャクシャ

杏子「…ともかく、やっと歩み寄ってきてくれたな」

杏子「ずっと待ってたよ」

ほむら「待たせてしまって、ごめんなさい」

杏子「へへっ、そうそう。素直が一番だ」

ほむら「あなたが言うと言葉に重みがあるわね」クス

杏子「ぐっ……ほっとけ!」

杏子「それよりも、さ。辛気くせー話はまた今度ってことで」
杏子「せっかくだし」


マミ「私の特製ケーキ、くうかい?」テヘペロッ

杏子「そりゃあたしんだ、返せ!」ムキー
ほむら「よく似合ってるわ」クスクス

―――――

qb「……わけがわからないよ」

qb「至高の存在であるまどかを見つけたっていうのに」

qb「あのイレギュラーが現れてからというものの……」

qb「見滝原どころか日本中の魔女が殲滅されて」

qb「対応に追われているうちにとりつく島も無くなって」

qb「正体を探ろうとしても尻尾を見せもしない」

qb「まあ、大体の予測は立ったけど」

qb「こうも見事に詰まされていると、もうどうしようもないね」

qb「それに、あの様子を見ると」
qb「本当にワルプルギスを倒してしまうだろう」

qb「…わけがわからない」

qb「どうにか言いくるめられるだろうか…」

qb「…明日が最後」


qb「……」トボトボ


qb「マミー、ただいまー」ヒョイッ
マミ「あら、お帰りなさい、キュウべぇ」ニコッ

――ワルプルギスの夜、当日――
―――――

―5―

マミ「…すごい風ね」

―4―

杏子「ま、どってことないさ」
杏子「やるべきことをやるだけだしな」

―ほむら「……!」ポチッ―

―2―

杏子「ん?なんだありゃあ」

―1―

ヒュゥウウウウウウウウウウウウ
ゴォォオオオオオオオオオオオオ




「アッハハチュドンドゴバガガドガバダダ



杏子「ひっでぇな、登場一秒で弾幕の嵐かよ!」

マミ「ふざけてないで集中しなさい!!」ティロッ!!

杏子「お、おう?」

ほむら「反転するわよ!気を引き締めなさい!」

杏子「えっ、いくらなんでも早す
ガチリッ

――同刻――

まどか「……」

qb「ほむら達のことが心配かい?まどか」ヒョコ

まどか「あ、キュウべぇ」

qb「いくら彼女達がベテランでも、最強の魔女の前には霞んでしまうからね」

qb「ひょっとしたら、今頃もうぼろぼろになっているかもしれないよ」

qb「それでも君は、こんなところでじっとしていられるかい?」

qb「君が魔法少女になれば、あの魔女を倒すことなんて造作もないんだよ」

まどか「…私はね、みんなを信じてるよ」

まどか「それに、ほむらちゃんと約束したもん」

まどか「だから、絶対に契約はしない」

qb「そうか…」

qb「…」

qb「今回はここで引き下がるよ」

qb「それに、あちこちを補填して回らないといけないし」

qb「こんなところで時間を無駄にしている場合じゃないんだ」

qb「まぁ、もし気が変わって、宇宙のために死んでくれるのなら」

qb「いつでも呼んでくれればいい」ヒョコ

まどか「……」


まどか「ほむらちゃん…」

まどか「ほんとは、私も泣き出したかった」ジワッ

まどか「私がほむらちゃんをあんなにしちゃったんだもん」ウル

まどか「でも、私が支えてあげないと、私しかいないって思ったから……」ウルウル

まどか「私なら助けられるなんて、根拠はこれっぽっちもないのに……」グスッ

まどか「…自分勝手でごめんね……」ポロポロ


まどか「ん……」グシグシ

まどか「……私も、強くなるんだもん」グシグシ


まどか「……嵐、止んでる」

さやか「あー、いたいた!まどか見っけー!」ピョコッ

まどか「!?、ごめん、さやかちゃん!」ダッ

さやか「あ、ちょっと!どこいくつもりなのさ?!」タッタッ

まどか「ほむらちゃんたちのところに行くんだよ!」タタタッ

さやか「いやいやいや、こんな天気なのに外出ちゃ駄目でしょーが!」タッタッ
さやか「それに、待っててあげるって言ってたじゃん!」タッタッ

まどか「でも、でもっ!」タタタッ


パシッ

さやか「まどか、落ち着きなって」
さやか「まどかから約束を破ってどーすんのさ?」

まどか「……っ、で、でもっ」ゼェゼェ

さやか「心配なのはわかるよ、あたしだってそう。でも」

さやか「転校生…じゃなくて、ほむらはまどかのこと信じてくれたんでしょ?」

さやか「ならさ、まどかもちゃんと信じてあげなよ」
さやか「ほむらと友達になるんでしょ?」


さやか「それともさ、まどかが一昨日言ったことって全部嘘だったの?!」


まどか「ぅ、……さやかちゃんの、いじわる……」ポロポロ

まどか「そんなわけ……ないよぉ…」ボロボロ

さやか「んー、わかればよろしい!」ニヒ

さやか「でもさ、びっくりしたよ」

さやか「相談があるって急に呼び出されたと思ったら」
さやか「あんなこと言い出すんだもんね」

さやか「まどかもいつの間にか成長しちゃって、さやかちゃんも感無量!」ジーン…

さやか「…まだいろいろとお子様だけど」プクス

まどか「も、もう……!」ポロポロ

さやか「あっはは、怒ってるか泣いてるのかどっちなのさー!」ニヘラヘラ

まどか「…さやかちゃんのことなんか知らない」プイ

さやか「ありゃ、嫌われちゃったかー」サヤカチャンショック!



さやか「……さ、戻ろっか」

―――――――――
――――

―――それから。

「ほむらちゃん、ほむらちゃん!」ウルウル

「おい、ほむら!しっかりしろよ!!」

「………やっと、越えられたのね………」

「ああ、そうだよ!あんたはやって見せたんだよ!」

「ほむらちゃん、ほむらちゃぁん……」エグッ



「………疲れきってしまったわ…」
「………少しぐらい、休ませて…………」





―――――――――
――――

―――あっという間に時間が過ぎて。


「しっかし、あの校長ほんっと話ばっか長いんだもん、やんなっちゃう!」ファーァ

「終業式なのですから仕方無いですわ」

「さやかちゃんったら相変わらずなんだから」


「んじゃ、あたしら今日はこっちだから」
「仁美ちゃん、またね」

「ええ、それではまた」ニコッ


―――ほむらちゃんは。

「しかし、せっかく皆でマミさん家に集まるっていうのに……」

「…仕方ないよ」

「……そだね、こんなことで沈んじゃうのもね」

「そのぶん、さ。いっぱい楽しんでいっぱいケーキ食べちゃおうじゃん!」

「杏子ちゃんにも負けない食い意地だね」

「ぬ、言うようになったのーお主!」

「さて」

ピンポーン


―――結局、あの家に戻ることはなかったの。

「あら、丁度いいところに来たわね」

「おーう、入れ入れ」

「なにそれ、我が物顔じゃーん!」

「居候してんだしいいんじゃねーの?」

「私は同棲のつもりよ?」

「なっ、はぁ!?!」

「うふふ、冗談に決まってるじゃない」

「なぁんだ、びっくりしちゃった……」

「おっとぉ、あんたは他人事じゃないでしょーが」


―――なぜかって?

「さて、丁度焼き上がったことだし…」

「私たちの特製ケーキ、くうかい?」

「あ、それ、杏子のやつじゃないですかー!」

「…もうめんどくせーからあげた」

「うふふ」

「でも、私たちって?」

「…手伝わされた」

「あらあら、満更でもなかったみたいだけど?」

「エプロン着てケーキ作り………ぶはっ!」ケラケラ

「っ!てめぇ!!ちょっと表でろ!」

―――――

―――それはね。

「しっかし、ほんと心配して損したよ」

「休ませてとか言ってぶっ倒れたと思ったら、寝ちまっててさ」

「かわいかったわねー、ほむらちゃんの笑顔」

「あれは、なんていうか、その」

「「「守りたくなる」」」

「な」
「わね」
「うん」

「あれ、ひょっとしてあたしだけ……?」

―――――

―――ほむらちゃんが約束を守ってくれて。

「あら、もうこんな時間ね」

「あ…!私、行かなくちゃ」

「ごめんなさい、お先に失礼します」

「あたしはもうちょっとお邪魔してます」

「邪魔しちゃ悪いしねー」ニヤニヤ

「気をつけて帰れな」

「今度はちゃんと集まりましょうね」

「はい……お邪魔しました!」

バタン

「…しっかし、まどかをとられちゃった気分ですわ」

「早く、私も甘えてもらえるようにならなくっちゃ」

「だって、正真正銘の先輩だったのよ?」
「巴先輩………なんて甘美な響きなのかしら」ウットリ

「…あたし、時々あんたのことが分かんなくなるよ」

「あら?私はあなたのことも諦めてないわよ」
「いつか取り戻してみせる、在りし日の『マミさん』を!」フンス

「うげぇ」

「あはは…」

―――――

―――もうひとつ、私のわがままを聞いてくれたの。

タッタッタッタッ

「ごめん、待った?」ハァハァ

「いいえ、ついさっき終わったところよ」

「…そっか」フゥ

「じゃ、帰ろっか!」

「ええ」

ギュッ


―――あのね。

「すっかり日も傾いてしまったわね」

「そうだね」

「…あのへんの空の色、ほむらちゃんのソウルジェムみたい」

「ふふ、本当ね」キラッ

「でも、夕空が見せる物悲しい紫ではないの」

「…朝焼けの空の、燃えるような紫だもんね」

「ええ、あなたが私を明けない夜から連れ出してくれたのよ」

「今日のほむらちゃんは、なんだかロマンチストさんだね」

「ふふ、ちっとも大袈裟なんかじゃないのよ」

―――――

―――私たち、鹿目家に。

「いい臭いがするわ」

「今日は私の大好物、クリームシチューだもん!」

「そっか、楽しみね」

「えへへ」

ガチャ

「おーう、おかえりー」
「まろかー!ほむらー!」
「二人とも、お帰りなさい」


「「ただいま!!」」







―――家族がもう一人、出来ました!―――






ほむら「ずっと、ずっと一緒にいたかった」
これで、おしまい。

―――でも、まだまだ終わりじゃないもんね!

―――ええ、あなたと一緒なら、何時までも。

以上、今度こそおしまいです
初めてで一気に締めちゃうには分量多すぎで
まどかの一人称がぶれっぶれでほむほむ独り言長すぎでした
あ、あとスレタイは飾りです

ほむらとさやかの絡みが本編に無いので明日?にでもちょびっと書き足しておきます

長々失礼しました

―ほむらちゃん―

杏子「時間止められなくなったら足手まといになるとか言ってたけどさ」

ほむら「ちぇすとーーーーー!!」ドゴォ

マミ「爆弾も使わずに素手で戦ってるわね」

ほむら「まぁだまだぁーーーー!!」メキィ

杏子「これじゃ立場全く逆じゃん」トオイメ
マミ「私もあんな格好いい戦い方ができるようになるかしら?」キラキラ

ほむら「ガッデエェェェェェエム!!」ボキッ

―ほむほむ―

ほむら「ふぅ、いい汗かいたわ」

杏子「…お疲れさん」
マミ「ほむらちゃん、すっごくかっこよかったわ!」

ほむら「さて、結界が消えないうちに…」ゴソゴソ

杏子「?グリーフシードならもう回収したじゃんか」

ほむら「よっと」ダバダバダバダバ
ほむら「まどかの所にお世話になっているのだから、いらない家具とかを処分しようと思って」ドスドスッ
ほむら「普通に投棄するんじゃお金もかかってしまうしね」ドンガラガッシャン

マミ「さすがほむらちゃん!」
杏子「」

―さやかちゃん―

さやか「聞いたよ、素手で魔女を倒しちゃうんだって?」

ほむら「日々の努力の賜物よ」ファサァ

さやか「それにしても、筋肉質じゃなくてスレンダーな体ってのがすごいわ」ジー

ほむら「…そんなにじろじろ見られると少し恥ずかしいわね」

さやか「ふむふむ、あー、そっか!鍛えちゃってるから出るとこがでてなベギッ」


ほむら「良かったわね美樹さやか、これで上条君とお揃いよ」ニコニコ

さやか「」パクパク

―マミさん―

杏子「しっかしさ、ほむらのお陰でマミとまた仲良くなれたのはいいが」

杏子「随分子供っぽくなっちまってないか?」

ほむら「………早くに親を亡くしているから、甘え足りないんじゃないかしら?」

ほむら「実の所は分からないけど、それだけ私達が頼られている証拠だと思うわ」

杏子「ん……やっぱりむず痒いわ」ポリポリ

杏子「でもさ」

――――――――
マミ『ねえ杏子、今晩はハンバーグにする?オムライスがいいかしら?』
マミ『それともわ・た・し?』キャッ///
――――――――

杏子「流石にこれはないわ」

ほむら「それ、本気で言ってるのかしらね………」

―鹿目さん―

まどか「ほむらちゃーん、そろそろ学校いくよー?」

モウスコシマッテクレナイカシラ?


トットットットッ

まどか「やっと降りてき………」

まどか「」

ほむら「昔の格好をしてみたのだけど、久し振りで三つ編みに手間取ってしまってね」

ほむら「…やっぱり、似合わないかしら?」


まどか「…………かわいいっ!」ダキッ
まどか「かっこよくて美人さんなのに更にかわいいなんて、ほむらちゃんずるい!!」スリスリ

ほむら「ちょ、ちょっと、まどか?」
まどか「んもぉー、まったくこれだからほむらちゃんはー!」ナデナデ

まどか「んっふふふふふー!!」ティヒヒヒ!

―あんこちゃん―

さやか「しっかし杏子はからかいがいがありますよねー」

マミ「ちょっとつっつくだけであの慌てようだものね」ウフフ

まどか「あんまりいじめちゃ…」

さやか「まぁまぁ、そんなひどい事する訳じゃないし」

マミ「つんけんしてるのもいいけど、デレた時の愛らしさといったら筆舌に尽くしがたいわよ?」

さやか「そうそう、醸し出すは小動物の雰囲気!潤んだ瞳がもーたまらんのですわ!!」

まどか「…そんなにかわいいの?」ドキッ



杏子「お、何の話をしてたんだ?」ヒョコ

「あ」「あら」「おやおや」
「「「ちょうどいい所に」」」

杏子「ひっ」ゾクゾクッ

―美樹さやか―

さやか「あのさ、ほむら」

ほむら「この間の事だったらごめんなさいね、ちょっと脅かそうと思って」

さやか「あれは冗談にしてはキツすぎ……」
さやか「っと、それもそうなんだけどさ」

ほむら「どうしてどこかよそよそしいのかって?」

さやか「む、まぁそうなんだけど」
さやか「あたしだって、ほむらともっと友達らしく付き合いたいんだけどね」

さやか「やっぱりあんた、ちょっと距離置いてるし」



ほむら「私だって自覚してるわ…」


さやか「…本当はあたしの事、嫌いだったりする?」

ほむら「……決して嫌いではないの」

ほむら「ただ、苦手意識がまだ少し拭えなくて……」
ほむら「…あなたとは特に色々とごたごたがあったから……」

さやか「…ふーん」

ほむら「……いつになるか分からないけど、努力はしているから…」



さやか「…あたしね、あんたが未だに昔の事を引きずってる所が大っ嫌い」

さやか「もう終わった事なら、さっさとお別れして今のこと考えなよ」
さやか「この期に及んでうじうじしちゃてさ」

さやか「いい加減その殻も破っちゃいなよ」


ほむら「…あなたって」

ほむら「向こう見ずで意地っ張りで」

ほむら「人の事を大切にするくせに自分は蔑ろで」

さやか「それはあんたも一緒じゃん」

ほむら「人の気も知らないで見切り発車で行動して」

ほむら「あなたが動くだけでトラブルが巻き上がって」

ほむら「一口に言ってしまえば単純バカで」

さやか「ぐむっ」

ほむら「…それでも、嫌いにはなれなかった」


ほむら「嫌いになれる訳ないのよ、あなただって友達だったから…」



さやか「…んじゃさ」

さやか「後はもっと好きになってもらうだけ、ということで」

さやか「ほむらもあたしの嫁になるのだー!」ギュ

ほむら「あ、ちょっと」ムグ



さやか「…初めの頃は強く当たっちゃったからさ、すごくバツが悪いんだけど」

さやか「ありがとね」

さやか「ほむらが引き止めてくれなかったら、本当の自分と向き合えなかった」


さやか「おかげで、恭介の事も諦めずに励まし続けられたよ」

さやか「恭介、やっぱりバイオリン弾きたいって」

さやか「片手が動かなくても諦めないってさ」


さやか「奇跡も魔法もある」
さやか「けど、それは自分の手で掴むものだってあんたが教えてくれた」

さやか「だからこそ、あんたとは出来るだけ対等でいたい」
さやか「魔法少女とかそうじゃないとか、そういうのは抜きでさ」


ほむら「…………あの、さやか?」

ほむら「私、あなたとの結婚はちょっと……」

さやか「今そこに食いつく?!あたしの真面目はどこいっちゃうのさ!!」

ほむら「ふふ、あなたとはこういう関係がいいのかなと思って」

ほむら「それに、ちゃんと伝わってるわよ」
ほむら「ありがとうね、さやか」

さやか「…あっはっは、ならもう言うことなし!」


ほむら「…ああ、私はこんなにも果報者だったんだ」
ほむら「こんなにも温かい仲間が、ずっと近くにいてくれてたのね」

さやか「きっとほむらの努力が報われたんだよ」


さやか「そんじゃ」
ほむら「これからも」


「「よろしく!」」パシッ

これにて後日談もとい蛇足もおしまいです
ほむらとさやかのなんと絡ませづらいこと…


それでは、お付き合いいただきありがとうございました!

気付けば第二部を書いていました
では1/3ほど投下します

―――――――――
――――

ほむら「………」カリカリ

ほむら「……うーん」ゴシゴシ

ほむら「…」カリカリ


まどか「……何してるの?」ウトウト

ほむら「内緒」カリカリ

まどか「むー…」ファーァ

ほむら「こればっかりは、ね」カリカリ


まどか「あぅ…おやすみー……」ポスッ

ほむら「お休み、まどか」カリカリ


スゥ……スゥ……

ほむら「……」カリカリ

ほむら「…一丁上がり」パタッ

ほむら「これだけ詳しければ間違い無いでしょうし、後は注文するだけね」

ほむら「さて、遅くなってしまったし早く寝て…」パチッ



ほむら「……しまいたいのだけど」ハァ

ほむら「軽く捻ってあげるから待ってなさい」

サッ ピシャッ


…………………ホムラチャン…

―――――――――
――――

まどか「ねぇ、ほむらちゃん」

まどか「土曜日だけど、二人でお出かけしない?」

まどか「何するかはもう決めてあるんだよ!」

ほむら「土曜日? そうね………」

ほむら「…」


まどか(あれ?………ひょっとして、ダメなのかな……)

ほむら「…うん、行きましょうか」

まどか「よかった…」ホッ

ほむら「?」

まどか「あ、えっと、何するかはお楽しみ!」

まどか「私に任せてね!」

ほむら「ええ。けど、少しだけ寄り道してもらってもいいかしら?」

まどか「うん、大丈夫!」


まどか「えへへ、早く土曜日にならないかな」

ほむら「それなら早く寝ないとね」

まどか「楽しみすぎて今日から寝れないかも」

ほむら「居眠りしてしまうかもしれないわよ?」

まどか「さやかちゃんみたいにはならないもん」


ほむら「それじゃ、お休み。まどか」
まどか「おやすみー」パチッ



ほむら「…………うまく出来てるといいな」

―――――――――
――――

ほむら「起きてください、朝ですよ」ユサユサ

詢子「んぁ…………あと十時間………」ネムネム

ほむら「そんなに寝ていたら遅れてしまいます」バサッ

詢子「うっ、さっむー………」


ほむら「おはようございます、お義母様」

詢子「おはよう、ほむら」


詢子「さて、ほむらのおかげで今日は遅刻の心配も全くなしだ」

ほむら「いえいえ」

詢子「しかし、なかなか直らないねー。その堅っ苦しいの」

ほむら「努力はしているんですけど…」

詢子「ま、何度でも言うさ」

詢子「今は理屈抜きに、ほむらは鹿目家の娘だ」

詢子「だから『お義母様』だけは許さない。百歩譲ってお母様」

詢子「お母さんでもいいし、なんならママでもいい」

ほむら「ママはちょっと……」

詢子「はっはっは、確かに柄じゃないね」


詢子「…今日は二人っきりで遊んでくるんだって?」

ほむら「はい」

詢子「そんじゃ、わがまままどかの事は頼んだよ。しっかり者の『お姉ちゃん』」

ほむら「!?」

詢子「さてさて、準備準備っと」  バタン



ほむら「…………お姉ちゃん?」

―――――


まどか「うにゅ……」ポケー

まどか「……えーっと」グシグシ

まどか「…………あっ、もうこんな時間!?」

まどか「大変! 早くママを…」

イッテクルワー!
イッテラッシャーイ

まどか「あう」


マドカァー オキテルカー?

まどか「うん、起きてるよー」

まどか「……………」


知久「おはよう、まどか」
まどか「おはよう」
タツヤ「おはよ!」

まどか「あれ、ほむらちゃんは?」

知久「ママと一緒に朝御飯を済ませて、今は洗濯物を干してくれてるよ」

知久「『お手伝いできることがあれば何でもしますから』って聞かなくてね」

知久「このまま行くと仕事を全部取られてしまうかな?」

まどか「そっ、そんなこと」

知久「はは、冗談だよ」


知久「さ、朝御飯食べようか」

まどか「うん」
タツヤ「ごはん!」

―――――

ほむら「お義父様、干し終わりました」

知久「ご苦労様。ほむらちゃんもココア飲むかい?」

ほむら「はい、いただきます」


タツヤ「おはよ!」

ほむら「おはよう、たっくん」

まどか「もう、起こしてくれればよかったのに」プープー

ほむら「あれだけぐっすり寝てたら起こせないわ」

ほむら「それにしても、最近寝坊してばかりじゃない?」

まどか「………だって、ずっと楽しみだったもん!」

知久「お待ち遠様」コト

ほむら「熱っ」

知久「それで、今日はどこに行くんだい?」

まどか「えへへ、ほむらちゃんに内緒だから、パパにも内緒!」

まどか「あ、お昼は食べてくるからね」

知久「分かった、あんまり遅くならないようにね」

ほむら「……」フーッフーッ


知久「そうだ。お使いを頼まれてくれるかな?」

まどか「うん」

知久「じゃあ後でメモとお金を渡すよ」

ほむら「…」フーフー
タツヤ「どったの?」

―――――

まどか「うーん、どれ着てこう?」

ほむら「どれも似合うわ」

まどか「でも、……悩むなぁ」

まどか「ほむらちゃんは…」

ほむら「準備万端よ」

まどか「あ、またそれ着てる」

まどか「似合ってるんだけど、もっと他のも着ようよ」

ほむら「? 着れれば良いと思うけど」

まどか「せっかくの美人さんなんだからお洒落しなきゃ!」

ほむら「お洒落、ねぇ……」


まどか「…ふふふーん」ティヒヒ!

―――――

知久「はいこれ、メモとお金」スッ

ほむら「忘れないようにしないとね」

まどか「むっ、忘れないもん!」

ほむら「さぁて、どうかしら?」クスクス


知久「それじゃ、気を付けて」

ほむら「はい」
まどか「うん!」

「「いってきます!」」

知久「行ってらっしゃい」
タツヤ「いってあー」

バタン

タツヤ「パパーあそぼー」

知久「よしよし、なにして遊ぼうか」

―――――

トコトコ


ほむら「それで、まずはどこに連れていってくれるのかしら?」

まどか「えっと、お昼まではお散歩したいな」

まどか「たまにはこういうのもいいかなーって」

ほむら「ふふ、そうね」


まどか「こうやって二人っきりになるのも久しぶりだね」

ほむら「朝晩はいつも二人だけじゃない」

まどか「同じ部屋で寝てるんだから、それとこれとはちょっと違うよ」

ほむら「……だったら、あの日以来になるわね」


テクテク

まどか「あの時のほむらちゃん、子供みたいにわんわん泣いちゃって」

ほむら「あれは、その………ね?」カァァ

ほむら「他言無用よ、絶対よ?」

まどか「どうしようかなー、あんなほむらちゃん滅多に見れないしなー」ティヒヒ!

ほむら「お願い! 皆に知られたら私、恥ずかしくって死んじゃう…」オロオロ

まどか「じゃあ、皆には内緒にするね?………多分!」

ほむら「もう、多分じゃなくて絶対…」


トコトコ

ほむら「それにしても気持ちのいい天気ね」

まどか「お日さまがあったかいね」


まどか「だいぶ寒くなってきたし、もうすぐ冬本番かぁ」

ほむら「冬………久しいわ」

まどか「またそんなこと言ってる」


まどか「そうだ、マフラーとか持ってないでしょ?」

ほむら「ええ」

まどか「だったら、私が編んであげる!」

まどか「ちゃんと編めるかはまた別なんだけど…」

ほむら「ふふ、楽しみにしてるわ」


テクテク

ほむら「こんなに広い公園があったのね」

まどか「いい所でしょ? 小さいときはよく連れてきてもらったんだよ」



ほむら「ねえ、ベンチに寄りかかってるあの人……」

まどか「あ、上条君だ」


恭介「ん、やぁ、鹿目さんに、暁美さん」ゼェゼェ

まどか「上条君、こんな所でどうしたの?」

ほむら「無理は良くないわ、まだ本調子じゃないのでしょ?」

恭介「……ははは」ハァハァ



恭介「ふぅ………えっと、どこから話した物かな…」

恭介「僕が復学したその日に何があったかは……勿論知ってるよね」ハァ

まどか「うん、校門でさやかちゃんと仁美ちゃんに告白されたんだよね」

ほむら「大勢の生徒がいるなかで、しかも大声で」

恭介「おかげであっという間に学校中に広まっちゃって…」

ほむら「災難だったわね」

恭介「向こう一週間は落ち着けやしなかったよ」

まどか「それで、返事はまだ決まらないの?」

恭介「考える余裕があれば、こんな目に遭ってないんだろうけど…」

ほむら「意気地無し」

恭介「はは、返す言葉もないよ…」

恭介「で、そんな二人が、今日は三人でどこか出掛けようってね」

ほむら「二股だなんてあなた……」

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「茶々よ、茶々」

恭介「断るに断れなかったんだ……。で、集合場所に行ってみたら二人が怒鳴り合ってて」

恭介「どうも行き先について二人で揉めてたらしいんだけど…」

恭介「僕を見つけるなりすごい剣幕で迫ってきてね」

恭介「なんていうかその、身の危険を感じて……」

ほむら「思わず逃げ出してきたのね」


まどか「…どこで待ち合わせしたの?」

恭介「……駅前だよ」

恭介「向けられる視線が………」

まどか「………逃げ出しちゃうのもしょうがないよ……」

ほむら「その、えっと、頑張ってね……」


……オォーイ、キョースケェー………
…………キョースケサァーン……



ほむら「結局、あなたのその手は治らないままなの?」

恭介「それが、どうしても諦めさせてくれない頑固者がいてね」

恭介「ほら、見てくれ」ピク

まどか「あっ……!」

恭介「まるで奇跡だって、医者が言ってたよ」

恭介「今はまだほんの僅かに動く程度だけどね」

恭介「もしもまたバイオリンが弾けたら、君達にも是非とも聞いてもらいたいな」

まどか「きっとまた弾けるようになるよ!」

ほむら「ふふ、楽しみね」

「あーっ!!」
「此処にいらしたのですね!?」

ダダダダダダッ

さやか「しかもナンパしてるだなんて、何考えてるのさ!!」

仁美「そうですよ!私というものがありながら……」

さやか「…いやいや、いやいやいやいやいや、いつ恭介が仁美だけの物になったのかなー?」ニコニコ

仁美「あら、そうなのだとばかり思っておりましたけど、違いますの?」ニコニコ

恭介「…」
ほむら「…こればかりは諦めたら?」

まどか「ちょっと、二人とも落ち着こうよ!」

仁美「あら、まどかさんにほむらさん! ということは」

さやか「恭介ェ、まさかあたし達の友達に手を出そうとした訳!?」

仁美「それはいくら恭介さんでも許せませんわ! 反省していただかないと」

さやか「そうだ、仁美。今日はこれからさ……」ゴニョゴニョ

仁美「なるほど、素晴らしいですわ! でしたら…」モニョモニョ

さやか「いいねいいね、わかってるじゃん!」

さやか「さて、そうと決まれば……」

ほむら「彼なら向こうへ走っていったけど」


タタタタタタタッ



恭介「………恩に着るよ」ヒョコ

まどか「私の知ってる二人じゃない………」

まどか「学校じゃ、いつも通りだったのに……」

ほむら「………」

恭介「…もう少し大人しくしてくれれば、落ち着いて考えられるんだけどなぁ」

ほむら「それにしても、仲が良いのか悪いのか…」ガシッ


さやか「さて、行こっか恭介」ニッコリ
仁美「もう逃がしませんわよ?」ニッコリ

恭介「」

―――――

まどか「……二人ともどうしちゃったんだろう」

ほむら「…さやかが契約するかどうか悩んでいたでしょ?」

ほむら「そうさせない為に私、無理矢理に説き伏せたの」

ほむら「魔法少女になる前に、自分に対して本当に正直になりなさい」

ほむら「あなたにはまだ出来ることがあるはずだからって」

まどか「…そっか、ほむらちゃんだったんだ」

ほむら「まさか、ここまで自分に正直になっていたとは………」

ほむら「仁美さんまで巻き込んで…」

まどか「でも、さやかちゃんらしいよね」

ほむら「……それもそうね」

―――――

ヒタヒタ

まどか「一緒に住んでるし、並んで歩いてると姉妹みたいに見えるかな?」

ほむら「びっくりするほど似てないわね」

まどか「むっ、どうせほむらちゃんみたいに美人さんじゃないもん」ムスッ

ほむら「私だってまどかみたいに可愛らしくないわ」

まどか「かわいいくせに、ふーんだ」プイッ

ほむら「『まどかの事をよろしく、お姉ちゃん』って、今朝お義母様が」

まどか「うそっ!? 私の方がお姉ちゃんじゃないの?」

まどか「私、ほむらちゃんよりお姉ちゃん歴長いんだよ!?」

ほむら「ほらほらまどか、落ち着きなさい」
ほむら「なんてね」クス


コソコソ

まどか「お昼はあそこに見えるお店でね」

まどか「雰囲気がよくって、おいしいものばっかりなんだよ」

ほむら「ですって。ついてきて良かったわね」クルッ
まどか「?」

杏子「あちゃ、バレちまってたか」ヒョコッ

まどか「杏子ちゃん、いつの間に…」

ほむら「今日は全部私の奢りだから、二人とも遠慮せずにね」

まどか「え? でも、そんなのほむらちゃんに悪いよ……」

ほむら 「いいのよ。杏子はそのつもりで引っ付いて来たんでしょうし」

杏子「へへっ、そういうこった!」

―――――

杏子「こんなに色々あると目移りしちまうなー!」キラキラ

杏子「どーれにしよっかなー」ジーッ


まどか「やっぱり、今日は私が誘ったんだし私が……」

ほむら「いいのよ。いつもお世話になっているし、たまにはね」

ほむら「それにこの子、物凄く食べるわよ?」

まどか「………うーん」


ほむら「お金ならあるから、気になる物は全部頼んだらいいわ」

杏子「え、本当か!? 後悔すんなよ?」

ほむら「ふふ、させてみなさい」

杏子「後で謝られても知らねーからな!!」

ソレデハシバラクオマチクダサーイ


まどか「杏子ちゃん、もう学校には慣れた?」

杏子「いーや、全っ然。特に制服がアレだ、窮屈っていうか」

ほむら「授業には付いていけてる?」

杏子「マミに教えてもらってるし、どうにかね」

ほむら「『マミさん』じゃなくて?」

杏子「あれは無理矢理言わされただけだったろーが」

まどか「マミさん、すごく嬉しそうだったよ?」

杏子「駄目駄目、甘やかすと癖になっちまう」

杏子「その分ほむらが『巴先輩』って呼んでやれよ」

ほむら「嫌よ、柄でもない」

杏子「そういや、新しい得物は見つかったか?」

杏子「取れる戦術が増えりゃもっと楽になるだろ」

ほむら「探しているのだけど、なかなかしっくりくる物が無くって」

まどか「獲物? 何か捕まえるの?」

杏子「いや、得意な武器って意味だよ。あたしの槍みたいな」

ほむら「銃は調達できないし、爆弾は作るのに手間がかかるから今は手ぶらね」

まどか「そんなの危ないよ!」

杏子「…あー、見たこと無いのか」

杏子「一回さ、ほむらの魔女狩りに連れてってもらいなよ」

ほむら「杏子」ジロリ

オマタセシマシタ、コチラガ……

杏子「きたきた!」

ほむら「あ、それ私です」

まどか「どれもおいしそう…」

杏子「一口でも二口でもつまめばいいじゃん」


「「「いただきます!」」」


まどか「えっと、さっきの話だけど、ほむらちゃんは大丈夫なの?」

杏子「ああ、ほむらは並の魔女なら武器が無くても渡り合えるんだ」アムッ

杏子「ぶっちゃけ強すぎ」ムグムグ

まどか「…………そうなの?」

ほむら「食べるか話すかどちらかにしなさい」

ほむら「私はただ、最低限の魔力を最大限に活用しているだけよ」

杏子「その操作技術と変換効率が卓絶しすぎだっつうの」ハムッ

ほむら「コツは教えたでしょ?」

杏子「そう簡単に出来れば苦労しねぇさ」モグモグ

ほむら「当たり前じゃない。私だってどれだけ難儀したことか」

まどか「……ほむらちゃんって、そんなにすごいんだ」

杏子「そりゃそうだ、ここを守った魔法少女だぞ?」カチャ

ほむら「何言ってるの、私一人では到底無理だったわ」


ほむら「そうだ、今度あなたの槍を貸してよ」

ほむら「ぐねぐね曲がって面白そうだと前から思ってたの」

杏子「貸すか! マミのマスケットにしとけ」

ほむら「どうせなら本物がいいわね。硝煙の匂いが懐かしい……」

オマタセシマシタ、コチラ……

杏子「やーっと次がきたか」

まどか「あ、一口ちょうだい」

杏子「ほら、あーん」パクッ

まどか「うんっ、おいしい!」

杏子「ほむらも、あーん」スッ

ほむら「……」

ほむら「私は別にいいわ」フイッ

杏子「照れんな照れんな」グイグイ

まどか「そうだよほむらちゃん!」

ほむら「てっ、照れてなんか」カアァ

オマタセシマシタ、コチラ……

杏子「いやー、最ッ高!」ガツガツ

まどか「……」

杏子「ん? どうかした?」グムグム

まどか「…普段からそんなに食べてるの?」

杏子「いいや。そんなことしてたらマミん家を食い潰しちまう」ゴクン

ほむら「でも、会う度に何かしら食べてるじゃない」

まどか「ずるい」

杏子「?」

オマタセシマシタ、コチラガ……

杏子「へへっ、前から食ってみたかったんだよね! こんな馬鹿でっかいパフェ!」

まどか「」

杏子「そんで、二人はこの後どうすんの?」パクッ

まどか「えへへ、ほむらちゃんと二人でお出かけ中なんだよ」

ほむら「どうせ暇なんでしょうし、あなたも来る?」


杏子「……………あー、いいや」

杏子「マミに買い物頼まれてるし」パクパク

ほむら「そう、なら仕方ないわ」


杏子「ふー、ごっそさん!」ケプ

ほむら「いつ見ても気持ちのいい食べっぷりね」

まどか「あんなに沢山、どこいっちゃったんだろう…」

杏子「そりゃあ、胃袋の中に決まってるさ」ポンポン



杏子「……悪いね」

ほむら「別にいいのよ。出世払いで返してもらうから」

杏子「えっ、奢りじゃねえの!?」

まどか「頑張ってお勉強しないとね」

ほむら「あら、杏子の事を言えるのかしら?」

まどか「う、だって、もっと分かりやすく教えてくれれば……」

ほむら「なら、もう少し真面目に取り組みましょうか」

まどか「むー」


ほむら「奢られに来た癖に、気にするのね」

杏子「…うっせ」

ゴウケイデヨンマントンデハチジュウエンニナリマース

杏子「じゃーなー!」

まどか「うん、またね!」

ほむら「またね」


まどか「杏子ちゃん、あんなに食べるんだね……」

ほむら「あれでも抑えていた方よ」

まどか「………あれで?」

ほむら「あの子の事よ、どうせ何処かで引け目を感じているんでしょう」

ほむら「全く、素直じゃないのは誰なのかしら?」

ほむら「遠慮しないでって言ったのに」

まどか「………」

以上、今回分でした
続きはまた夜に投下します

続きになります
全体の3/5程まで進みます


テクテク

ほむら「さて、今度はどこ?」

まどか「ちょっと探してるものがあってね」

まどか「だから、ショッピングモール」

ほむら「…さては、私に荷物持ちをさせるために……」

まどか「そ、そんなつもりじゃ」

ほむら「ふふ、冗談よ」


まどか「……ほむらちゃん、よく笑うようになったね」

ほむら「そう?」

―――――

ほむら「物凄い人ね」

まどか「うーん、どのお店が良さそうかな」

ほむら「こんなに広いんだし、のんびり探せばいいわ」



ツギハドチラニシマショウ?
ハッハッハ、サヤカチャンニオマカセアレー!
フ、フタリトモ、モウカンベンシテクレ……


まどか「あ、さやかちゃんと仁美ちゃんと………見たことない子だ」

ほむら「? ……………なるほど、顔立ちは端整だし、あの出来映えなら…」

まどか「…なんで私には紹介してくれないんだろ」ムスッ

ほむら「まどか、そっとしておいてあげましょう。彼の名誉の為に」

まどか「え!? なぁんだ、勘違いしちゃった……」

ほむら「私も危うかったわ」



ほむら「あ……………………やっぱり要らないわね」

ほむら「所詮玩具は玩具よ、きっと」

まどか「あれ? あれあれ? ひょっとして、何か欲しいおもちゃがあるのかな?」
まどか「ほむらちゃんもまだまだ子供だね!」ティヒヒ!

ほむら「……かもしれないわね」

ほむら「慣れ親しんできた武器が懐かしくって……」

ほむら「モデルガンを改造して魔力を込めれば代用できるかも、なんて」

まどか「」

ほむら「流石に甘過ぎね。もう忘れることにするわ」


まどか「ここなんか良さそう!」

ほむら「お洋服が欲しかったの?」

まどか「そんな所かな」



まどか「フリルたっぷり……」ブツブツ

まどか「レースとリボン……………」ブツブツブツ

ほむら「…多すぎて山積みになってるわよ?」

まどか「しんぷるいずべすと………」ブツブツ
まどか「あっ、何か言った?」クルッ

ほむら「ふふ、随分と熱心ね」


まどか「うーん、一回着てみよっか?」

ほむら「この量だと試すのも一苦労ね」

まどか「はい」ボスッ


ほむら「?」

ほむら「………………??」

ほむら「………何故私に渡し
まどか「さぁさぁ、着てみよっかほむらちゃん!」キラキラ

ほむら「あなたの服を買いに来
まどか「ちっともお洒落に興味のない子の為のお洋服を選びに来たんだよ!!」ギラギラ

ほむら「あまり大きな声を
まどか「ほらほら、こっちこっち」グイグイ

ほむら「ちょ、ちょっと
まどか「それじゃ着替えたら言ってね!」バタン



ほむら「…………え? え?? こんな派手なのを、着るの…………?」

ティヒヒ、ホムラチャンマダー?

コンナノッテ…ワタシ…


まどか「遅ーい!!」バッ

ほむら「ひゃ!?」
ほむら「え、えっと、着てみたけど………どうなのかしら…?」

まどか「鏡を見れば一目瞭然だよ?」

ほむら「見ても分からないから聞いたのに……」

まどか「まったく、ほむらちゃんには自覚が全然足りないね!」


まどか「それじゃ、次いってみよう!」ズイッ

ほむら「あの、まどか? 何故あなたまで入っ
まどか「だって、着替えるのが遅くって待ってられないもん!」バタン


ほむら「こんなの絶対に似合わない……」ゴソゴソ

まどか「ほら、自分を見てみて」


まどか「ほむらちゃんは今、周りからどんな風に見えてると思う?」

ほむら「………やっぱり、分からないわ」

ギュッ

まどか「今のほむらちゃんはね」

まどか「とってもとってもかわいい、普通の女の子に見えるんだよ?」


ほむら「…………私が、普通の?」


まどか「うん、だから次はこれ!! ほらほら、早くそれ脱いで!」ウェヒヒ!

ほむら「そ、そんなに急かさないで」モゾモゾ

―――――

ほむら「疲れた……」


まどか「どれもばっちり似合ってたから、全部買っちゃうよ!」

ほむら「……これを全部?」

まどか「うん! ほむらちゃんには、もっと普通の女の子らしい事をしてほしいもん」

まどか「だから、私からのプレゼント!!」

ほむら「……嬉しいのだけど、こんなに沢山、大丈夫?」

まどか「えへへ、お小遣い貯めてたし、とっといたお年玉もあるんだよ!」

まどか「えーと、合計で……」

まどか「……あ」

まどか「半分足りない……」

ほむら「全く、そそっかしいんだから」クスクス

まどか「どうしよう……」

ほむら「足りない分は私が出すわ」

まどか「そんなの、私がプレゼントした事にならないもん……」

ほむら「だったら数を減らしましょう」

まどか「でも、全部ほむらちゃんに似合うし……」

ほむら「ふふ、まどかの欲張り屋さん」


ほむら「それなら、半分は私が自分で買うから」

ほむら「もう半分はあなたが、ね?」ニコ

まどか「……………」

まどか「………うん」

―――――

ほむら「嵩張って歩きにくそうだけど?」

まどか「んしょ、そんなことないよ」

ほむら「…………そうだ、ちょっと仕舞ってくるから待っていて」ヒョイ

まどか「あ、私が持っていくのに」

タッタッタッタッ



まどか「……こんな時までドジばっかり」

まどか「……………うまくいかないなぁ……」



ほむら「……あの、お待たせ」

まどか「!」

ほむら「えっと、その、…………着てみたの」モジモジ

ほむら「やっぱり慣れないけど、あなたからの贈り物だから………」

ほむら「……変じゃ、ないかしら?」

まどか「……………ううん、全然!」

まどか「でも、どうせだから髪型も変えてみよっか?」




まどか「……よし、完成!」

まどか「えへへ、とってもかわいいよほむらちゃん!」

ほむら「…………あ、ありがとう」カアァァ

―――――

まどか「えーと、次はね…」

ほむら「……ちょっと言い難いのだけど」

ほむら「試着に時間が掛かりすぎて、もう時間が…」

まどか「あ、ほんとだ………他にもいっぱいやりたい事があったんだけどなぁ」

まどか「……今からじゃ、ちょっと遅くなっちゃうね」

ほむら「なら、今度連れていってくれないかしら?」

まどか「……うん、また今度だね」


まどか「あ、ほむらちゃん、なにか用事があるんだったよね?」

ほむら「それなら、帰り掛けに少し立ち寄るだけだから」

ほむら「さあ、帰る前にお使いを済ませないとね?」

まどか「……忘れてた!」

―――――

まどか「えっと、にんじんの次は…」



ほむら「!! まずい」

ほむら「まどか? そういえば洗剤が切れ
まどか「あ! おーい、マミさーん!」フリフリ

「あら、鹿目さん!」

ほむら「ちょ、ちょっと! 私今こんな格好なのに」カアアァァ

まどか「?」

マミ「お昼は杏子が迷惑を掛けてしまってごめんなさいね」

まどか「いえいえ、私じゃなくって、ほむらちゃんに言ってください」

ほむら「」ボンッ

まどか「マミさんもお買い物ですか?」

マミ「ええ。杏子に頼んだら、半分以上がお菓子に変わってたのよ?」

まどか「あはは、杏子ちゃんらしいですね……」

まどか「あれ、そういえば一緒じゃないんですか?」

マミ「罰としてふん縛って置いてきたわ」



マミ「所で、後ろに隠れているその子は」

ほむら「!」ビクッ

マミ「鹿目さんのお友達?」


まどか「え?」

まどか「あ、えっと、ちょっと待ってください」


まどか(マミさん、ほむらちゃんだと思ってないみたいだよ)ゴニョゴニョ

ほむら(普段から何で判断してるのよ……)チラッ

マミ「?」

ほむら(こんな姿、他の皆には見られたくなかったのに……)モニョモニョ

まどか(こんなにかわいいのに?)ゴニョゴニョ

ほむら(こ、心の準備が出来ていないというか)モニョモニョ

まどか(あ、そうだ! 私に任せて)ゴニョゴニョ


まどか「すいません、この子すっごく人見知りで」

マミ「ふふ、そうみたいね」

まどか「だから、マミさんの事を教えてました」

まどか「紹介しますね」

まどか「親戚の、鹿目明美ちゃんです!」
ほむら「!?」

まどか「私と同い年で、今度見滝原中に転校してくるんですよ」

マミ「改めまして、私は巴マミ。よろしくね」

ほむら「よ、よろしくお願いします……」ペコリ

マミ「同じ鹿目さんだとややこしいし、明美さんでいいかしら?」

ほむら「え……あ、はい」


マミ「そういえば、鹿目さんは今日はほむらちゃんと一緒だって杏子が言ってたけど」

ほむら「」ビク

まどか「えと、用事があるからって途中で別れました」

マミ「いつも一緒にいるのに、珍しいわね」

マミ「そうだ、二人とも明日は暇かしら?」

まどか「はい、私は特には」

ほむら「私も……何も」

マミ「なら、私の家でお茶会しない? 新しい後輩の歓迎会も兼ねて、ね?」

ほむら「でも、いきなりなんて……」

マミ「遠慮なんかしなくていいのよ」

マミ「美樹さんには私から連絡しておくから、ほむらちゃんも誘っておいてね」

まどか「はい、もちろん」チラッ

マミ「ふふっ、ケーキの用意をしながら待ってるわ」

まどか「マミさんの作るお菓子ってとってもおいしいんだよ?」

ほむら「知っ………とても、楽しみです」

オカイアゲアリガトウゴザイマシター


マミ「ねぇ、よかったら少しお茶していかない?」

ほむら「あの、まだ寄らないといけない所がありまして……」

ほむら「今日は失礼します」

まどか「でも、ほむらちゃん。それがどこかまだ聞いてなかったけど……」

ほむら「」

マミ「? 明美さんでしょ? ほむらちゃんじゃな…………あっ」

ゴソゴソ パシャ

ほむら「何故撮るのよ! 今すぐ消しなさい!!」カアァァァ

マミ「いやよ、手放すわけないじゃない!」

―――――

トコトコ

マミ「でも、そんなに恥ずかしがる事?」

まどか「自信がないみたいです」

ほむら「…だって、こんな服着たのは初めてだから……」

マミ「なら杏子と美樹さんにも感想を聞いてみましょう」ピッ

ほむら「」


マミ「それにしても、リボンがよく似合ってる」

まどか「えへへ、私が結わえたんですよ?」

マミ「まるでお人形さんね。普段のクールさは何処へやら」

ほむら「うぅ……」カアァ

まどか「そういえば、いつのまにか『ほむらちゃん』って呼ぶようになりましたよね」

マミ「色々あってね」

マミ「……よかったら、あなたと美樹さんの事も下の名前で呼びたいの」

マミ「あなた達とは一つ違うけど、………先輩より、友達でいたいから」モジモジ

まどか「うーん、……ちょっと、こそばゆいです」

まどか「でも、マミさんは私達の頼れる先輩だし、大切な友達ですから!」ニコ

マミ「そっか………ふふ、ありがとね」

ほむら「私も下の名前は勘弁願いたいのだけど」

マミ「それは聞き入れられないわね」

ほむら「なんで私には拒否権がないのよ!」

マミ「私の同情を買ってしまった事と、その可憐な姿のせいよ」

ほむら「っ!!」カアァァ

―――――

ほむら「ちょっと見せられない物だから、ここで少し待ってて」



まどか「え、………お洋服屋さん?」

マミ「正確には仕立屋ね。どこに用があるのか気になって付いてきたけど…」

マミ「ふむ、中々興味深いわね」


まどか「…………私、余計な事しちゃったのかな…」

まどか「ほむらちゃん、お洒落に興味がないと思って、勝手に押し付けて………」

マミ「でも、あんなに恥ずかしがりながら、どこか嬉しそうだったわ」

マミ「それに嫌だったら、買ってもらったのをすぐに着るはずがないもの」

まどか「でも、気を遣ってくれてるだけかも…」

マミ「私にはとてもそうとは思えないけどね」


ほむら「よいしょっと、お待たせ」

まどか「うわっ、大きい!」

マミ「可愛らしいラッピングだけど、一体誰へのプレゼントかしら?」

ほむら「内緒」

まどか「いいなー、何が入ってるの?」

ほむら「内緒」

マミ「もう、少しぐらい教えてくれてもいいじゃない」ムー

ほむら「なーいしょ。さて、さっさと仕舞わないと」パアァ



マミ「今日は珍しい物も見れたし、帰って明日の準備をしなくっちゃね!」

マミ「そうそう、二人から返信が来てたわ。ふふ、『明日が楽しみ』ですって」

まどか「ほむらちゃん、期待されちゃってるね」

ほむら「……き、着ていけばいいんでしょう!?」


マミ「それじゃ、また明日ね」

まどか「はい、また明日!」

ほむら「…………」ハァ

ほむら「また明日」



まどか「さ、私達も帰ろっか」

今回分終了です
続きはまた次の夜に投下します

それでは一気に最後まで


テクテク

まどか「もうお日様も見えなくなっちゃった」

ほむら「もうすぐ暗くなるわね」


まどか「今日はあっという間だったなぁ」

ほむら「そうね、あっという間」


ほむら「少し寒くなってきたわね」

まどか「なら」

ギュ

まどか「こうすれば、ね?」

ほむら「でも、私の手、冷たくないかしら?」

まどか「ううん、とってもあったかいよ」


トコトコ

ほむら「はぁ、さやかと杏子になんて言われるか……」

まどか「そんなに心配?」

ほむら「そうじゃないんだけど……その………」

まどか「……」


まどか「……ねぇ、ほむらちゃんは今日、楽しかった?」

ほむら「ええ、それはもう。とても楽しかったわ」ニコ


まどか「……そっか」

まどか「楽しんでもらえて、……よかった」

―――――

ガチャ


「「ただいま!」」

知久「二人とも、おかえり」
タツヤ「おかーり!」

知久「ほむらちゃん、随分と可愛らしくなったね」

ほむら「そ、そうでしょうか……」カアァ

まどか「パパ、はいこれ」ガサッ

知久「うん、ありがとう」

知久「お風呂を入れておいたから、晩御飯を作っているうちに入っておいで」

ほむら「はい、ありがとうございます」

まどか「ねぇ、たまには一緒に入ろっか?」

―――――

チャポン

まどか「ほむらちゃんのお肌、真っ白ですべすべで、いいなぁ」

ほむら「病的な白よ。私はあなたぐらいの健康的な色の方がいいわ」

ほむら「あと…………あなたと違って、……伸び代が…」

まどか「伸び代?」


まどか「ほむらちゃんの髪の毛、今日ので少し癖ついちゃってるね」

まどか「そうだ、私に洗わせてくれない?」

ほむら「いいけど、代わりにあなたの髪は私に洗わせてもらうわね」

まどか「えへへ、洗いっこだね!」

―――――

まどか「ふぅ、さっぱりしたー!」ホワホワ

知久「ちょうど晩御飯も出来上がった所だよ」

知久「ママは今日は遅くなるみたいだし、皆で先に食べてしまおうか」

まどか「うーん、今日のほむらちゃん、ママにも見せたかったのに…」

知久「ママのことだから、着せ替え人形にされてしまうかもね」

ほむら「………親子だわ」

タツヤ「ごはんー」

知久「そうだね。それじゃ」


「「「「いただきます」」」」

―――――

タツヤ「ごちそさまー!」
ほむら「ご馳走さまでした」
まどか「ふぅ、お腹一杯!」


知久「そうだそうだ、ほむらちゃんに小包が届いてたんだった。はい」スッ

まどか「?」

ほむら「あ、届いてたんですね。ありがとうございます」

知久「………君の親御さんから聞かされるべき事なんだろうけど」

知久「お金の使い方には、気を付けなさい」

ほむら「大切な人への贈り物ですので、ついつい……」

ほむら「確かに度を過ぎていますね。気を付けます」

まどか「??」

ほむら「では、洗い物は私が済ませてしまいますので」

知久「わかった、よろしく」

まどか「私も手
タツヤ「ねーあそぼー!」ダキッ

まどか「あっ、こら、タツヤ!」

ほむら「大丈夫よ、私一人で済ませられるから」


カチャカチャ


まどか「ねぇタツヤ、ほむらちゃんって誰にプレゼントを送るんだろうね」

タツヤ「?」キョトン

まどか「もらえる人が、羨ましいなぁ……」

―――――

まどか「んん………」グシグシ

ほむら「ふふ、今日は歩き疲れてしまったものね」

まどか「ん……」

まどか「ふぁ……さっきの、…小包って………?」

ほむら「内緒」

まどか「?…………けちー……」ウトウト

ほむら「さぁ、もう寝ましょうか。きっとよく眠れるわ」

まどか「……おやすみー………」モゾモゾ

ほむら「お休みなさい、まどか」

パチッ

―――――

「ただいまー」

知久「おかえり」

知久「今日は随分と遅かったね」

詢子「はっはっ、ちょーーーっとね」

詢子「………腹が立って腹が立ってしょうがねぇ」ギリッ

詢子「けど、こればっかは我慢して煮詰めてかないとな…」

知久「そうか。晩御飯はどうする?」

詢子「んや、いいわ。碌に飲めなかったから付き合ってくれ」

ゴクッゴクッ

詢子「ふぅ……………んで、娘たちはどうだった?」コト

知久「ほむらちゃんが随分と様変わりして帰ってきたよ」

詢子「なんだそれ。あと、ほむらちゃんじゃなくてほむらだろ」

知久「なかなか慣れなくて」

詢子「…ま、追い追いでいいか」グイッ


詢子「………悪いね。まともに休みも取れなくて」

知久「気にしてないさ」

詢子「たまには皆でどっか行きたいもんだ」ンクッ

詢子「……うっし、もう一踏ん張りして暇でもぶんどってくるか」

詢子「…でも、驚いたね。……急にほむらを引き取りたいって言い出して……」

知久「あんなに必死になっているまどかは見た事が無かったよ」

詢子「……まどかがほむらを連れてきた時、だいたい分かったけど…」ゴク

詢子「まぁ、……娘がもう一人くらい、欲しいとは思ってたんだ………」




カラン


詢子「…まどかもなぁ……貰う、ばっかだと思って………」ウトウト

詢子「………いい子、だから、………ふぁ…………」カクン

詢子「………………………すぅ…………すぅ…」

知久「……いつもお疲れさま」


ヨッコイショット アレ、オモタクナッタカナ……

―――――――――
――――

『さようなら』

待って、行かないで……

『どうして? 縛り付けるだけの理由があるの?』

私は、一緒にいたいの…

『一緒だなんて、迷惑なだけ』

『あなたのせいで、酷い目に遭ったのよ?』

なら、その埋め合わせをするから……

『ふざけないで。取り返しがつかない事ぐらい分かっているでしょう?』

『今日だって、楽しんでいたのはあなただけじゃないの?』

…………

『何もできない癖に』

だから、私は変わるの………

『何一つ変わって無いじゃない』

それは……………

『でしょう? 結局あなたは自分勝手』

『頼まれもしないのに同情を振り撒いて』

だって、だって、見てられないもん………

『目を背ければいいじゃない。あなたは魔法少女じゃないんだから』

関係無いよ、そんな事……

『関係無いのはあなたの方よ』

『それじゃ、さようなら』

まって………

『もう二度と会うことも無いでしょうね』

お願い、ほむらちゃん……

行かないで……!



まどか「行かないでよぉっ!!」


まどか「ぁ………」

まどか「………………また、夢」

まどか「……いつも…………………」


まどか「あれ………………ほむらちゃん?」

―――――

コロン


ほむら「……うーん、チェーンソーはいまいちね。よく切れたけど…」

qb「全く、とんでもないことをしてくれたね」ヒョコ

ほむら「あら、お勤め御苦労様」

qb「君のお陰で納期に間に合わないじゃないか」

qb「一時的とはいえ、魔女が枯渇したせいで新規契約が減ってしまったんだから」

ほむら「いいじゃない。世の中が平和になったって事でしょ」

qb「それが君達の首を絞めているんだと、何回言えば理解してもらえるのかな」

ほむら「別のエネルギー源を探しなさいよ」

qb「あったらこんな所にはいないさ」

qb「所で、穢れの溜まったグリーフシードはあるかい?」

qb「配給待ちが多発してるからさっさと徴収しなきゃならないんだ」

ほむら「…………………はい」ポイッ

qb「よっと、…きゅっぷい」ゲフ


ほむら「あなた、マミの所に顔出してる?」

qb「最近は行ってないね」

ほむら「ならたまには遊びに行ってあげなさい」

qb「何故だい? 正体を知った今、君達は僕らを憎悪している筈だろう」

ほむら「ええ、そうよ。今すぐ真っ二つにしてやりたいわ」ギュィイイイィィ

qb「それを止めてくれないかな」

ほむら「それでも、彼女にとってあなたは唯一無二の友達なのよ」

qb「さっぱり分からないね。何故仇敵を友人として迎えられるんだい?」

ほむら「あなたも感情を持ってみれば、痛いほどよく理解できるはずよ」

qb「それは到底無理な話さ。僕は至って健常な個体だからね」

ほむら「だったら殺してあげるから、あなたたちの言う精神疾患持ちを後釜に据えなさい」

ほむら「いい子なら歓迎するし、悪い子なら調教してあげる」

qb「貴重なサンプルをわざわざ手放す訳がないだろう」

ほむら「サンプルだなんて可哀想に」

qb「心にも無いことを」

ほむら「心を持たない癖に」

qb「しかし、この辺りは魔女が減るばかりで効率が非常に悪い」

qb「君達も早く魔女になってくれないかな」

ほむら「っ、余所を当たりなさい。今すぐに!」ギュィィイイイ

qb「わっ」ササッ



ほむら「……決して魔女になんてならない」ギリッ

ほむら「こんな私を認めてくれた、皆の為に………」


ほむら「もう、二度と…………!」グッ

スタスタ

―――――

サッ  ピシャッ  


「……お帰り、ほむらちゃん」

ほむら「あら、起こしてしまった? ごめんね」

まどか「…ううん、違うの。眠れなくて………」

まどか「……また、魔女?」

ほむら「ええ、チェーンソーの威力と取り回しの悪さがよく分かったわ」

まどか「……」

ほむら「さぁ、もう遅いし。早く寝ましょ」


まどか「……今日は、一緒に寝てくれない、かな………」

ほむら「? 構わないけど」

モゾモゾ


まどか「………ねぇ、私達と暮らして、どう?」

ほむら「どう? どう……………そうね」

ほむら「最初はやっぱり戸惑ったわ。ずっと一人で過ごしてきたから」

ほむら「でも、お義母様は本当の娘として扱ってくれて」

ほむら「お義父様も、本当の父親の様に接してくれて」

ほむら「たっくんも私によく懐いてくれて」

ほむら「あなたは、これ以上無く親しくしてくれて」

ほむら「まるで私が、最初からこの家の一員だったみたい」

ほむら「そう思えるぐらいに、私を受け入れてくれているんだって、今は実感してる」

まどか「……」

まどか「………毎日、楽しい?」

ほむら「ええ。こんなに素敵な日々を送れるなんて思ってなかった」


まどか「…………魔法少女の事、辛くないの?」

ほむら「……辛いわ。あの魔女を撃ち破った所で、全てが終わった訳じゃないのだから」


まどか「………ほむらちゃんは、……私のせいで、魔法少女になったんだよね………」

ほむら「…いいえ」

ほむら「私はあなたの……いえ、自分の為に」

ほむら「あなたを失いたくなかった。ただ、それだけ」

まどか「でも、それは………その時の私が、馬鹿だったから……」

ほむら「馬鹿なんかじゃない。あなたはいつだって他人の事を思い遣ってたわ」

まどか「………それは多分、思い遣りじゃないと思うの…」

まどか「誰かの為になりたくって、頼りにされたくて………」

まどか「してもらうばっかりの、……何もできない、自分が嫌だから……」

まどか「………結局、私のわがままなの……」

ほむら「…」

まどか「……ほむらちゃんを家に呼んだのだって」

まどか「今日、お出かけしたことだって………」

まどか「ほむらちゃんが、……私のせいで、苦しんだから」

まどか「…だから、私が責任取らなきゃいけないから……」

まどか「ほむらちゃんは、……笑ってないと、いけないから…」

まどか「今度は私が、ほむらちゃんを助けてあげないと…いけないから………」

まどか「……ほんとは、迷惑だったよね………」

まどか「無理矢理引き留めて……」

まどか「好きでもない格好させて…………」

まどか「………楽しくなんて……………なかった、よね…」


まどか「結局、私は、………何もできない。してあげられない…………」ジワ

まどか「私、……すこしも、かわれない…………」ポタッ



ほむら「ねぇ、こっちを向いて」

まどか「………わたし…」

ほむら「向いてくれないの? なら」ゴソゴソ


ギュッ

まどか「っ………!」

ほむら「ふふ。本当にわがままで、本当に欲張り屋さんね」

ほむら「他人の悲しみや苦しみまで背負い込んで」

ほむら「その癖、自分のはちっとも分けてくれないだなんて」

まどか「………」


ほむら「あのね、私はあなたから、掛け替えのない贈り物を貰ったの」

ほむら「何だと思う?」

まどか「………………そんなの、わかんないよ…」



ほむら「今という、この時間よ」




ほむら「初めて出逢ったその時から、私はずっとあなたに助けられてきた」

ほむら「何の取り柄も無かった私に、手を差し伸べてくれた」

ほむら「私が持っていなかったものは全部、あなたがくれた」

ほむら「例えば、それは友達、それは自信」

ほむら「あなたがいてくれたから、私が今、ここにいるの」

まどか「でもっ、それは私じゃない、私は何もしてない……」ポタ

ほむら「本当に?」

ほむら「あなたは、私の事を心配してくれて、私の所に来てくれて」

ほむら「私を赦してくれて、私の願いを叶えてくれているじゃない」ギュ

ほむら「あの時、引き留めてくれて、本当に嬉しかった」

ほむら「私の手を引いてくれて、本当に嬉しかった」

ほむら「今日だって、前から考えてくれていたんでしょう」

まどか「…………………うん……」

ほむら「私を楽しませようとしてくれたんでしょう」

まどか「…………うん…」

ほむら「私に、普通の女の子でいてほしかったんでしょう」

まどか「……うん…」

ほむら「ありがとう」

ほむら「今日は、これ以上ないぐらい楽しかった」

ほむら「それに、昨日だって、一昨日だって」

ほむら「あなたと過ごした毎日は、全部楽しかった」

まどか「……」

ほむら「ねぇ、こっちを向いて」

まどか「……」

まどか「…………」モゾモゾ

ギュッ


ほむら「ふふ、やっと向いてくれた」

ほむら「何もできないなんて言わないで」

ほむら「あなたは、私を受け止めてくれた」

ほむら「あなたのお陰で、今は心から笑うことができるの」

まどか「…本当、なの………?」ジワ

ほむら「ええ、本当」

まどか「……苦しく、ないの……?………辛くないの…?」ポタ

ほむら「いいえ。魔法少女の事は辛いし、苦しい」

ほむら「でもね、そんなの気にならなくなるぐらい、ずっとずっと」

ほむら「あなたとの約束を果たすことができて」

ほむら「あなた達が一緒にいてくれて」


ほむら「私は、こんなにも幸せ」


まどか「……………しあわ、せ……?」ポタ

まどか「……ほんとうに?………」ポタッ

ほむら「ふふ、まだ信じられない?」

ほむら「なら、分かるまであなたのわがままを聞いてあげる」

ほむら「ずっと、あなたの横で笑っていてあげる」

ほむら「もっと、あなたを頼ってあげる」

まどか「…………ぐすっ…」ポタ

まどか「……ほむらちゃんは、つよいね…………やさしいね……」ポロポロ

ほむら「そう思う? 強さも、優しさも、あなたがくれたのよ」


ほむら「だから、自信を持って」

ほむら「何もできないはずが無いわ」

ほむら「何故なら、あなたが私を救ってくれた事は、紛れもない真実なんだから」


まどか「……うぅ……………ひっく…」ポロポロ

ほむら「大丈夫よ。あなたの気持ちは、ちゃんと通じてる」

まどか「……わたし、…ぐす、うれしいな………」ポロポロ

まどか「……わたしなんかの、ひっく、こと、こんなにおもってくれてて………」ポロポロ

まどか「ぐすっ……ありが、ひっく、ありがとう………」ポロポロ

ほむら「こちらこそ、ありがとう。私の事を思ってくれて」ギュ

まどか「……うぅ…………ぐす…」ポロポロ

まどか「…………ひっく…」ポロポロ




ほむら「…私も、もう少しだけ素直にならなくちゃ」ボソ

まどか「…………すぅ…………すぅ…」

ほむら「ふふ、泣き疲れちゃって」ナデナデ

―――――――――
――――

『さようなら』

じゃあ、またね。

『本当に行ってしまうわよ?』

だって、ここにいるのは嫌なんでしょ?

『さて、どうかしら』

え? うーん、わかんないなぁ。

『あなたはどう思っているの?』

やっぱり、一緒にいてほしい、かな。

『こんな私と? 正気じゃないわ』

だって、ほむらちゃんが自信をくれたから。

『ならもう私は用無しのはずよ』

それでも、あなたは大切な人だから。

『大切? 何の役にも立てやしないのに』

だからって切り捨てるのは、やっぱり違うと思う。

『相変わらずね。そのままじゃいつまで経っても変われないわよ』

ううん、ほむらちゃんが教えてくれたの。
変われなかったんじゃなくて、気付けなかっただけ。

同情して、その人を通して、自分の事ばかり見てたんだ。

『ふふ、尚更お別れしないといけないわね。私の事はさっさと忘れなさい』

そっか………でも、私はあなたの事、覚えてるから。

『はぁ、最悪の餞ね。気が変わったわ、いつまでも付き纏ってあげる』

もう、素直じゃないんだから。

『当たり前じゃない。それじゃ、適当に頑張りなさい、私』

うん。頑張るよ、卑屈な私。

―――――――――
――――

ほむら「起きてください、朝ですよ」ユサユサ

詢子「むぐぅ…………あと十年………」ネムネム

ほむら「そんなに寝ていたら手遅れになってしまいます」バサッ

詢子「ひっ、さっむ……」


ほむら「おはようございます、お母さん」

詢子「おはよう、ほむら」


詢子「さて、ほむらのおかげで今日も遅刻の心配は全くなしだ」

ほむら「せっかくの日曜日ですのに……」

詢子「はっはっ、あたしはいいんだよ」

詢子「今日は会社に行くんじゃないし」

詢子「そんで、昨日は色々あったみたいだね」

ほむら「ええ、それはもう色々と」


詢子「今度さ、休みをどっさり取ってくるから」

詢子「あたしの買い物にも付き合え」

ほむら「私を着せ替え人形にするんですよね?」

詢子「そうそう。覚悟しとけな」

ほむら「分かりました。ふふ、楽しみです」


詢子「さ、朝飯朝飯」

―――――


まどか「ん……………ふぁあ」グシグシ

まどか「…………あー…」

まどか「…よし、頑張るぞー!」

ほむら「起きてる?」ヒョコ

まどか「わっ」

ほむら「ほらほら、後はあなただけよ。朝御飯が冷めちゃうわ」

まどか「うん、着替えたら行く」




「「「「「いただきます!」」」」」

知久「今日もどこかに行くのかい?」

まどか「うん、マミさんにお誘いされて」

知久「そうか、あまり迷惑を掛けないようにね」

まどか「あ、今日もお昼は食べてくるから」

知久「分かった。それじゃあタツヤはパパと遊んでようか」

タツヤ「うん!」

詢子「しかし、よく似合ってるわ」

ほむら「まどかが選んでくれたんですよ」

詢子「うんうん、流石はあたしの娘だ」

「行ってくるわー」

「「「「いってらっしゃい」」」」


ほむら「ねぇ、ちょっと来て」

まどか「?」


ほむら「本当は、もう少し様子を見てからがよかったんだけど……」

ほむら「はい」スッ

まどか「えっ、これ………」

ほむら「受け取ってくれるかしら?」

まどか「…………………うん、うん!」ジワ

まどか「ほむらちゃん、ありがとう!!」ポロ

ほむら「ふふ、そんなに喜んでくれるなんて」

まどか「えへへ………」グシグシ

まどか「……これ、マミさん家で開けていい?」

まどか「みんなに自慢したいな」

ほむら「ええ。あなたの物よ、どうぞご自由に」

まどか「じゃあ、早く行こ!」グイグイ

ほむら「そう慌てないで、連絡ぐらいしておかないと」

まどか「あっ、そうだね」

ほむら「全く、子供っぽいんだから」クス



「「行ってきまーす!!」」

―――――――――
――――

さやか「しっかし、杏子のエプロン姿もすっかり板に付いてきたねー」

マミ「腕前ももっと付いてくるといいんだけど」

杏子「中々上手くできねーんだよなぁ…」

マミ「練習あるのみよ」

ピンポーン

「「!」」

ダダダダッ

マミ「あらあら、二人ったら」ウフフ

ガチャッ

まどか「あ、さやかちゃんに杏子ちゃん」

さやか「………」
杏子「………」

ほむら「? どうしたの、二人とも」

さやか「……」プルプル
杏子「……」プルプル

まどか「?」

さやか「ほむら、ぷっ、あんた、柄じゃない、から」プルプル
杏子「そんな、格好して、くふっ、いつもの、ほむらが」プルプル

「「あーっはっはっはっはっは!!!」」

ほむら「何よ、失礼ね」ムスッ

「「!?」」

ダダダッ

杏子「おいマミ、どういう事だよ!!」

さやか「恥じらう様子が丸っきりありませんでしたよ!?」

まどか「お邪魔しまーす」
ほむら「失礼するわ」

「「ほら!」」ビシッ

マミ「あら、ほむらちゃん、今日も可愛らしいわね」

ほむら「ふふ、ありがとう」ニコ

さやか「あ………でも、結構かわいい」

杏子「………割りとアリだな」

マミ「それに、鹿目さんもよかったわね」

まどか「えへへへ……」テレテレ

杏子「ん? なんだ、そのでっかい箱とちっさい箱は」

まどか「じゃーん、ほむらちゃんからのプレゼントだよ!」

さやか「……ほむら、あんた変な物でも食べた?」

ほむら「その言葉、そっくりそのままあなたに返すわ」

マミ「誰の手に渡るかは分かってたけどね」


まどか「大きい方から開けてみよっと」ペリペリ

パカ

マミ「まあっ、素敵!!」

さやか「うわっ!」

杏子「……すげぇ」

ほむら「どうかしら?」

まどか「これって、私のノートの……」

ほむら「ノート?」

さやか「あぁ、あれね」プクス

まどか「あっ、いや、その」

杏子「なぁ、早速着てみなよ」

マミ「ふふ、私も見てみたいな」

まどか「えっと、じゃあお風呂場、借ります」スクッ

まどか「ほら、ほむらちゃんも来て」グイ

ほむら「え、私も?」

―――――

まどか「ねぇ、私のノート、見たの?」

ほむら「?? 何のノート?」

まどか「え、じゃあこれはどうして……」

ほむら「思い出して、設計して、仕立ててもらったのよ」

まどか「あ………」

まどか「……ごめんなさい」

ほむら「なんで謝られてるのかは分からないけど………」

ほむら「それより、帰ったらそのノートを見せてくれない?」

まどか「え、恥ずかしいよぉ」カアァ


ほむら「さ、着てみるんでしょ?」

まどか「う、うん」

―――――

ガチャ


まどか「……どうかな?」

杏子「へへ、まさにまどかだな」

さやか「こ、これは……」ゴクリ

マミ「まるで本物の魔法少女ね!」

ほむら「気に入ってくれた?」

まどか「…うん、とっても!」

さやか「まどかっ! 私の嫁になるのだーっ!!」ダキッ

まどか「わわっ」

杏子「でも、なんてったってこれを?」

ほむら「そうね……」

ほむら「まどかは私の魔法少女だから」

ほむら「で、どうかしら?」

まどか「……」カアァァ

杏子「ごっそさん」

さやか「ねーねー、あたしの分はないの?」

ほむら「ふふ、今度ね」

まどか「こっちも開けちゃうよー!」

マミ「分かった、あの大きさだとソウルジェムでしょ?」

ほむら「それも考えたんだけどね」

キラリ

まどか「わぁ……」

杏子「なるほどな。あたしたちとお揃いだ」

マミ「うふふ、素敵じゃない!」

さやか「ずるい、ずるいぞぉーー!」

ほむら「さあ、嵌めてみて」

まどか「……あ、これ、なんて彫ってあるの?」

ほむら「おまじないよ」

マミ「どれどれ?」

杏子「駄目だ、読めねぇ」

―――――

マミ「ねぇ、お昼から杏子の服選びでもしましょうか」

さやか「いいですなぁ、ほむらみたいにしてしまいましょうぞ!」

杏子「げ、あたしはやだぞ、あんなの!!」



まどか「ねぇ、ほむらちゃん」

ほむら「どうしたの?」

まどか「……えへへ、ありがとう!」

ほむら「どういたしまして」

まどか「でも、どうして?」

まどか「私を魔法少女にしない為に、頑張って来たんじゃなかったの?」

ほむら「そうね………一つは、あなたの夢を、形だけでも叶えてあげたかった」

ほむら「ふふ、余計なお節介よね」

まどか「ううん、嬉しいな」

ほむら「もう一つは、魔法少女姿のあなたを、もう一度だけ見たかった」

まどか「そっちが本音でしょ?」

ほむら「あら、お見通しなのね」クスクス

ほむら「でも、あなたは本当に私の魔法少女」

ほむら「あなたの魔法が、私に光をくれたの」

まどか「私はただ、わがままを言っただけなんだけどね」

まどか「あと、おまじないの文字だけど」

ほむら「何て書いてあるか、知りたい?」

まどか「ううん、分かっちゃった!」

ほむら「ふふ、なら」

まどか「これからも」


―――ずっと、一緒。


まどか「だね」

ほむら「ええ」





まどか「ずっと、ずっと一緒にいてくれる?」
おしまい。

投下終了です
次がありますのでこれ以上は書きません

それでは、お付き合いいただきありがとうございました

読み返してみると確かに素っ気ないですね
非常にありがたいです

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