女「そんな筈は無い、って出来るだけ期待はしない様にしてたんですけど」
女「思った以上にショックです……」
男「……」
女「…先輩、私どうしたら良いですかね?」
女「好きな人に好きな人がいる、って知っちゃって」
女「しかも、それを相談されたって……」
女「私は、もう恋愛対象から外れてると見た方が良いんでしょうか!?」
男「知らん」
女「冷たいっ」
女「後輩が困ってるんですよぅ!?」
男「自分の恋愛事情ぐらい人に頼らず自分で何とかせんか」
女「ぐらい!?ぐらいって何ですかっ、ぐらいって!」
男「それより俺は今忙しい。とっとと帰れ」
女「忙しい、って本読んでるだけじゃないですかっ」
男「その本を読むのに忙しいんだ、俺は。お前みたいな暇人とは違う」
女「普段読んでない癖に!」
男「普段は時間が無いから読めないだけだ。いい加減、溜まってた貸出しの本、返さないかんからな」
女「あっ、そう言えば、図書委員長が物凄くお怒りでしたよ…返却早くしろって」
男「マジか、やべぇ」
女「じゃなくてっ」
女「話そらさないで下さい!」
男「いや、そらしたのはお前だが」
女「………」
男「………」
女「そっ、それよりも!」
女「私の話、聞いて下さい!」
男「だから、さっきから聞いとるだろうが」
女「聞いて下さい!」
男「聞いてる」
女「助けて下さい!」
男「自分で何とかしろ」
女「………」
男「………」
女「………いじわる」
男「何とでも言え」
女「………」プクッ
男「…大体、色恋沙汰は第三者が介入する事で余計拗れる場合もある。めんどいのは御免だ」
男「そもそも、恋ってのは自分で叶えるもんだろう」
女「………男先輩は、相変わらず硬派ですね」
男「………」
女「………いつもなら、乗ってくれるのにさ」
男「今回は事情が違うだろうが」
女「…分かりません。分かる様に説明して下さい」
男「………」
女「…そうやって都合が悪くなったら黙り込むの、先輩の悪い癖ですよ」
男「うるせぇ」
女「………さては」
男「…あ?」
女「…………先輩、もしかして」ニヤニヤ
男「な、何だよ」
女「…恋、した事ありませんね?」
男「……………」
女「まぁ、先輩老け顔ですもんねーっ、隈とかもうっほんっと酷いしっ!一目見ただけでこいつ不眠不休っ、ひゃぁぅっ」
男「…………」
女「くぅぁ~っ、何も拳骨する事無いじゃないですか~っ」
女「そんなんだから恋愛の一つや二つ出来ないんですよ~!」
男「……………鈍感女が」ボソッ
女「ついでにモテないんですよ~!」
女「いだい゙いだい゙いだい゙いだい゙」
男「……お前は一言多い」
女「…………」
男「…………」
女「…………」
男「…………」
女「…………」
男「…………」
女「…………」バンッ
男「…………」ビクッ
女「…で、協力して下さるんですよね!?」
男「誰がいつ、どこで、そんな事言ったんだ?ん?」
女「私が勝手に決めました」
男「お前の脳内ほんと快適だな」
女「可愛い女の子がこうしてお願いしてるんですよ!!」バンッ
男「………」
女「何ですか、その目は」
男「………いや」
女「………」
女「………先輩は」
男「?」
女「………私を女の子扱いしませんよね」
女「さっきだって容赦無く殴るし!!」バンッ
男「バンバンうるさい」
女「すみません」
男「…………」
女「…………」
男「…………」
女「………何か、心地好いんですよ」
男「………」
女「男先輩は、他の人、って言うか…他の男の人みたいに私の事、女として扱わないから。線を引かないから」
男「………」
女「下心無しで付き合ってくれてるんだ、って…そう思うと話しやすいし、絡みやすいし…」
女「………相談だって、今まで沢山して来たけど先輩、何だかんだ言って引き受けてくれるから」
女「何て言うか…同性感覚で、つい…頼っちゃうんです」
男「………」
男「…………お前さ」
女「はい」
男「…………………やっぱ何でもないわい」
女「……?」
男「…つか」
女「…?何ですか?」
男「……一つ、言わせて貰うが」
女「はい」
男「………」
女「………」
男「………」
女「………」
男「…お前の周りにまともなダチがいんから、俺の所に来るんだろう」
女「いや、もうほんとごもっともで」
男「…女、すまんが、俺は今回協力してやれない」
女「どうしてでしょう?」
男「さっき言った様にめんどくさい。それだけだ」
女「理由がやたらと軽薄ですね。男先輩はめんどくさいの一言で他人の相談事を片付けちゃう様な人じゃ無かった筈ですが」
男「………随分、知った口を叩くんだな」
女「先輩を何年見てきたと思ってるんですか」
男「いや、二年だけだろ」
女「そうでした」
女「………どうしても駄目、ですか」
男「しつこいぞ」
女「………」グスッ
男「………」
女「………ぅ」
男「…そんなに好きなのか、その男の事」
女「………はい」
男「………」
女「………」
男「…………はぁ」
女「………」
男「………分かった」
女「…!」ガバッ
男「……協力はやはり、出来ないが」
男「……相談ぐらいなら、乗ってやろう」
女「ほっ、本当ですか!?」
男「………おう」
女「本当の本当ですね!?」
男「……ああ」
女「良いんですね!?」
男「…ん」
女「………」
男「………何だ」
女「……………ふ、ふ」
男「……………」
女「ふふ、ふふふふふ…」
女「……嘘泣き、成功です」
男「やっぱりか」
女「男先輩、毎回引っ掛かり過ぎですよ?にししっ」
男「……ばかたれ、わざと引っ掛かってやっとるんだ」
女「ふふっ、優しいんですね」
男「……おだてても何も出んぞ」
女「はいはい」
男「………」
女「して、先輩」
男「何だ」
女「どうしてそこまで協力を拒むのですか?」
男「…………自分で考えろ」
女「ふむ、ですが」
女「相談に乗ってる時点で、協力してるような気がしますけどね」
男「なっ、べ、別に…そんなんじゃ、ない……ぞ」
女「………」
男「………」
女「…あー、えっと……男先輩がデレると、色々……………キモくなりますね」
男「コメントに気遣いゼロだな」
女「あ、あはは……」
女「………でも、先輩」
女「ほんと、ありがとうございます」
女「きょうりょ、じゃなかった………相談に乗って下さるなんてっ」
女「ありがとうございますっ…!」
男「………」
女「相談はまた明日にでもっ」
女「…じゃ、私帰りますね!」
男「………あぁ」
女「それではっ」ペコッ
男「…気を付けて帰れよ」
女「大丈夫ですっ、私を誰だと思ってるんですかっ」
男「ただのガキ」
女「ふふっ、“ただの女”って答えない所が先輩らしいですね!」ガラッ
男「………」
女「では!さよなら!」ピシャン
男「…………」
男「…………言わない様にしとるんだ、ばか女が」
女「あっ、先輩!」ガラッ
男「!」ビクッ
女「?」
男「な、何だ」
女「あっ、いえ…そのですね」
男「……」
女「何て言うか……私、先輩に沢山助けて貰ったので、その分の、いえ!それ以上に恩を返したいなって…」
男「……」
女「だから、あの!」
女「先輩に好きな人が出来た暁には、遠慮せずにぜひ私を頼って下さい!全力でサポートしますのでっ」
男「………そうか」
女「はっ、はい!……な、何だか照れますね、こういうの」
男「…嬉しそうだな、お前」
女「そ、そうですかね」
男「……用はそれだけか」
女「いえ」
女「後、男先輩はでも多分彼女出来なさそうですね、って言おうとしました」
男「だから一々お前は一言が多いっつってんだろうがあぁぁ!!!」
女「ひゃ~っ」ピシャンッ
男「………たくっ」
男「…世話、かけさせやがって」
男「…………」
男「…………はあぁぁ」
男「あのバカ女ー」
男「よくもー」
男「よくもー…」
男「よく、も……」
男「…………」
男「…………」
男「…好きな奴、つくりやがって」
男「…………なぁにが、好きな人に恋愛相談されました、だ」
男「…………」
男「…………くそ」
男「………こっちのほうが色々ときついわ」
男「好きな人に恋愛相談された事を好きな人に恋愛相談されたんだが」
男友「ほう……興味深い話だな」
男「お前なら面白がってくれると思ったわ」
男「そのまま冗談として受け止めてくれれば、もう少し俺の心は晴れたんだがな」
男友「それで、男」
男「あ?」
男友「部活、勉強、成績にしか興味の無い堅苦しいお前が色欲に目覚めていたとは」
男友「初耳だな」
男「おい、心外だぞ。その三つで俺のイメージを塗り固めるな。俺にも他に好奇心をそそられる物の一つや二つあるわい」
男「それに男なら誰構わず、少しぐらい女に興味持つだろう」
男友「言い返す言葉も無いが、男」
男「何だよ」
男友「お前は私にそれを相談しているのだな?」
男「……まぁ、そうだな」
男友「だったら、私は」
男友「今、好きな人に恋愛相談された事を好きな人に恋愛相談された事を好きな人に恋愛相談された訳だ」
男「…………えっ」
男友「私はお前の事が好きだ」
男「お、おま、おまえ……そ、そっちの気があったのか………」ブルブル
男友「おろろろろろろろろろろろろ」
男「やっぱりな!!お前ノーマルだもんな!!!つか吐くぐらいなら無理に言うなや!!!」
男友「わ、わたしが、ホモだとしても、お前を、選ぶぐらいならぅぇっ、自殺するわ…おぇっ、おろろろろろろろろろろ」
男「こっちこそ願い下げだ!!!」
男友「何でも良いが、ティッシュ取ってくれ、気持ち悪い……げぇ」
男「…お前は何なんだ、一体」
男友「…………」フキフキ
男「…………」
男友「…………」フキフキ
男「……落ち着いたか」
男友「こっち向くなぁっ!!気色悪いっ!!!」
男「お前って奴はとことん酷い男だなおい!!!」
男友「……すまない」
男友「ちょっとさっきの自身の発言でお前とセクシーしてる所を想像した。もうお前のその顔を見ているだけでそれが鮮明に頭の中で繰り返されるから、その首から上の部分を切るか焼くか何とかしてくれ」
男「それ俺に死ねって言ってるよな?オブラートに包んだつもりだろうが、全然包まれてないからな?」
男友「所で、男」
男「もうほんと何なんだよ、お前」
男友「何故、私があんな事を言ったのか教えて欲しいか?」
男「いや、別に」
男友「では教えてやろう」
男「………」
男友「まず、私がいきなりお前に告白したのは、例えの例だ。真に受けるなよ」
男「分かっとるわ!」
男友「いや、女にモテないお前がいつそっちが側の人間になるか、分からんからな。よって、私のケツがいつ狙われるかも分からん訳だ」
男「…男友、いい加減にしないか。俺がそういう冗談は嫌いだと知ってるだろう」
男友「そうだったな、すまない」
男友「まぁ、好きな人に恋愛相談された事を好きな人に恋愛相談された事を好きな人に恋愛相談された、なんて状況の可能性の話だ」
男「………」
男友「有り得なくはないだろう。そうなると男、お前は全く自身の好きな人と同じ行為をしている事になる」
男友「そこも配慮して相談する人間を選べ、と言いたかったんだ」
男「………」
男友「お前の事だ。そこをちゃんと配慮した上で私に相談したのだろう、しかし」
男「…いや」
男「…すまん、正直男友に対して配慮などはしていなかった」
男「同姓だし親友だし、で色々と安心しきっていてしまった」
男友「ふむ」
男友「配慮されたらされたでそれはキモいが」ブルッ
男「俺の周りは、ほんと一言多い奴ばっかりだな」
男「で、何で俺にわざわざこんな事言う?」
男友「お前は鈍い男では無いが、少々デリカシーに欠ける」
男「…悪かったな」
男友「私に相談したと言う事は、想い人の為に他の人の協力を更に求めるつもりだろう」
男「…まぁ」
男友「その忠告だ」
男「………そうか」
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