母「聞こえてるんでしょ?なんで生きてるの?」
娘「……えぇ?」ニヤニヤ
母「ッ!」イラッ
母「気持ち悪いんだよッ!!!」
ドッッ!
娘「うぐっ…ゲホッ、く、ふふ、ふ、ひひ」ニヤニヤ
母「チッ」
娘「お母さん、もう叩かないの?」
母「うるさい!どっか行け!!」イライラ
娘「…分かった。いつもの時間に帰ってくるからね」ニコッ
返事はない。いつものことだけど。
分かってるよお母さん。ほんとはずっと一緒にいたいんでしょ?ほんとはもっと「愛したい」んでしょ?
私ももっと「愛されたい」よ!
けど。これ以上「愛」をもらったら、お母さんがいじめられちゃうからね。
親子の愛を否定するなんて、世の中どうなってんのよ。
《どこかの屋上》
古く、所々錆びた柵に身を預ける。
ギィ。
今にも外れてしまいそうな柵。このまま柵が外れて落ちたら、どうなるのかな?
死ぬのは分かってる。
そういうことじゃなくて、私は死んだ後のことだ。
娘「まず悲鳴が聞こえてー、野次馬が集まってー…あ、写メとか撮られちゃうのかなー?」
『キャー!!』『救急車よべ!』『人がふってきた!』『うわ、グロ…』『もしもし?今、リアルで死体見てるんだけどwwグロww』『おぇぇ…』
その光景は容易に想像できる。
こういうことを考えるのは嫌いじゃない。むしろ楽しい。
別に死にたいわけじゃない。
誰だって、死にたくなんかないでしょ?
自ら死んで逝った人達だって、できれば死にたくなかったはずだ。
ただ、死ぬ以外に選択肢が見つからなかっただけで。
私は、私が死んだことでどんなに周囲に影響を及ぼすのかが気になるだけ。
グチャグチャになった私の死体を見た人は、もしかしたら一生のトラウマになるかもしれない。
私の死をネタに、誰かが誰かと盛り上がり仲が深まるかもしれない。
私の死をきっかけに、恋が生まれ新しい命が芽生えるかもしれない。
娘「お母さんは…」
娘「悲しむよね?」ニヤニヤ
《とあるアパートの一室》
あぁ、本当にむかつくガキ。
ニヤニヤニヤニヤ。あたしが殴っても泣かない、叫ばない、誰かに助けを求めない。ただニヤニヤ笑っているだけ。気持ち悪い。
ああ、なるほど。あの子は私が嫌いなのね。
だから私が嫌がることをするんだわ。
私だって嫌いよ。あんな子。
あの子がいなければ、私は『あの人』と結婚できるのに。
はやくしねばいいのに。
ヴーヴー
母「」ビクッ
母「あ、電話……ぁ!」
〈あの人〉だ!愛しい〈あの人〉からの電話!
嬉しい。嬉しい。
母「ウッウウン!あー、あー…よし!」
ピッ
母「は、はい、もしもし。」
男(あの人)『…あ、もしもし。男だけど。もしかして、忙しかった?』
母「いえ、全然!」
男さんのためならいつでも暇です。
母「どうかしましたか?」
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