・公式でお姫ちんに妹様がいるということなので、貴音妹(仮)を主人公としてお話を書いていきます。
・プロデューサーが入社してから1年が経過した時点で、貴音妹が765プロへ所属するというお話です。
・安価指定はなく、随時設定募集というスタイルです。
・設定はいくらでも重複可で、その中から>>1が独断と偏見で採用していく形になります。ご了承ください。
・募集しているプロフィールは以下をご参照ください。(以下は貴音のプロフィールです)
ニコニコ大百科
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ピクシブ百科事典
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・設定が集まってきたら書き始めたいと思います。
・よろしくお願いいたします!
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支援するぜぇ
名前・雅(みやび)
年齢・14
容姿・貴音と正反対なイメージ。 身長は響と同じくらいか少し下。肩くらいまでの黒髪。
貴音の呼び方・たか姉(ねぇ)
性格・やや おっとりマイペース。悪戯好きで貴音をホラー系ドッキリで驚かすことアリ
設定投下ありがとうございます! これからも引き続きよろしくお願いします!
物語は1年後なため、765プロのアイドルたちは設定より+1歳となります。伊織は高校生となり、真は高校卒業、律子は成人してます。
全員、アニマス最終話くらいは売れている予定です。
貴音妹 以外のキャラについての設定や展開も拾っていくかもしれません。
P「キミが貴音の妹さんだね。ようこそ765プロへ!」
琴音「Hello、です。ワタシの名前は『四条 琴音』。そして、もしかしてアナタが……」
P「ああ、俺がキミを担当することになったプロデューサーだ。これからよろしくな!」
琴音「はぁい、ヨロシクですプロデューサー。Nice to meet you!」ギュッ
P「うおっ!?」
琴音「?」
P「貴音から外国暮らしが長いと聞いてはいたけど……日本じゃそういうスキンシップは控えてくれるかな?」
琴音「あ、ごめんなさいです。つい、すっかり」テヘッ
P「うっかり、な。……えっと、とりあえずお互いを知るために、まずはミーティングをしようか。会議室へ移動しよう」
琴音「はぁい」
―――会議室―――
P「さて、それじゃあ早速ミーティングを始めるか。肩の力を抜いて話そう」
琴音「はぁい」
P「ははっ、まったく緊張してる素振りはないな。貴音と同じで肝が据わってるらしい」
琴音「キモがすわってる?」
P「怖がったりしないで落ち着いてるってことさ」
琴音「なるほどです。でも、たか……じゃなかった。『御姉様』は怖がりですよ?」
P「え? ああ、意外と幽霊とかダメだよな」
琴音「そうそう! 昔、ワタシがイタズラで…………あっ、あんまり御姉様のこと、言わないように言われた、です」テヘッ
P「『とっぷしぃくれっと』ってヤツか?」
琴音「Exactly! 『TOP-SECRET』、です」
P「それじゃあ残念だけど、ほかの話をしようか」
琴音「気にならないです? 御姉様の『TOP-SECRET』。どうしてもって言うなら、教えちゃう、ます」
P「うーむ……」
○「どうしても!」
△「いや、いいよ」
□「それより琴音の秘密を知りたいな」
↓+1
P「どうしても!」
琴音「うふふ、プロデューサーは正直者です」
P「貴音とは長い付き合いだけど、あんまりプライベートについては教えてくれないからな」
琴音「ワタシ、御姉様に電話で『メリーさん』やったことあります。そしたら御姉様、いっぱい泣いてワタシにべったり。その日は、2人で寝ました」
P「へぇ。貴音も可愛いところあるんだな」
琴音「御姉様のナイショ、聞けてうれしいです?」
P「ああ、教えてくれてありがとう」
琴音「んー、プロデューサーは聞きたがりみたいなので、あんまりワタシの秘密、みんなに教えないほうがよさそう、です」
P「えっ!?」
P(たしかに、貴音が言いたがらないことを妹から聞きだすのは、良くなかったかな……?)
P(ちょっと反省すべきかもしれないな)
P「えっと、それじゃあ簡単に自己紹介してもらっていいか?」
琴音「はぁい。四条 琴音、14歳です。子供の時からいろんな外国に住んでたので、言葉いっぱい喋れます」
P「ふむ。資料によれば、身長150cm、体重39kg、スリーサイズは上から……」
琴音「プロデューサー?」ジッ
P「あはは……しかしなんというか、姉である貴音と違って「面妖な」雰囲気ってものはないみたいだな」
琴音「メンヨー?」
P「ミステリアスってこと」
琴音「Oh、そーゆーことね! ワタシは御姉様みたいな「secretiveness」……ナイショ癖はないから、です」
P「ふーん。その金髪は、地毛なのか?」
琴音「はい! ふふ、どうですか、このブロンドは?」ファサッ
○「金髪の地毛は始めてみたよ」
△「アニメのキャラみたいだ」
□「まるで太陽みたいに輝いてる」
↓+1
P「まるで太陽みたいに輝いてる」
琴音「え、太陽?」
P「うん」
琴音「……そっか、太陽……うふふ」
P「琴音?」
琴音「あ、いえ、なんでもないです。それじゃあ、髪だけじゃなくって、ワタシももっと輝かなくちゃ、です!」
P「そうだな。俺も最大限サポートするから、トップアイドル目指していっしょに頑張ろう!」
琴音「はぁい!」
P(なんだかよくわからないが、どうやら機嫌が良いみたいだ。彼女を乗り気にさせる言葉選びができたらしい)
P(このあとも2人で様々なことを話して、親睦を深めることができた!)
―――グッドコミュニケーション―――
こんな感じでやっていこうと思います。
今日はここまでです。ありがとうございました。
―――レッスンスタジオ―――
琴音「What!? ワタシ、まだアイドルじゃないです!?」
P「正確には、まだアイドル候補生っていう位置づけだな。だから俺がキミを担当するのも、本来は変則的なんだ」
琴音「コーホセイ? ヘンソクテキ?」
P「ああ、えっと……本当はアイドルの卵として、いろんな能力を見ていって、それからアイドルデビューをするんだよ」
琴音「ワタシ、まだ弱いですか?」
P「それはわからない。だから今日は、このレッスンスタジオに来てもらったんだ」
琴音「なるほど! じゃあワタシのチカラ、いっぱい見せちゃう、ます」
P「おお、自信満々だな」
琴音「もっちろん。それにワタシ、御姉様にも勝負で負けたことないです!」
P「そ、そうなのか? それじゃあ……」
○「将棋でも?」
△「グラビアでも?」
□「フードファイトでも?」
↓+1
P「フードファイトでも?」
琴音「あー……それは、ワタシ、すぐおなかいっぱいになっちゃう、ます」
P「へぇ、琴音は小食なのか?」
琴音「はい。でも、あれは御姉様がおかしいです。レディとしては、ワタシのほうが勝ってる……違うです?」
P「あはは、たしかにそう言われればそうかもな」
琴音「です! なのでフードファイトもワタシの勝ち。ワタシの100戦100勝、です」ドヤッ
P(なんだか言いくるめられてしまった。意外と負けず嫌いなのか?)
P(それにしても、大した自信だな。貴音に負けたことはない……か)
P(まぁ貴音は誰かと組んでこそ輝くタイプだしな。だからこそ、なんでも高レベルでこなせる響との相性が抜群に良いんだが)
P「えっと、それじゃあこのビデオの振り付けを真似して踊ってみてくれるか?」
琴音「はぁい。ん~……こう、こうで、こうやって、こうです?」タン、タタン、タンッ
P「おおっ!? 見ただけなのに1発で踊れるなんて、すごいじゃないか!」
琴音「そうです? これくらいなら簡単ですよ?」
P「いやいや大したもんだよ。もしかして、ダンスやってたことあるのか?」
琴音「やってたことないです。でも、御姉様ができることなら、ワタシにも簡単です」フンス
P「それじゃあ、歌は?」
琴音「歌を習ったこともないです。でも、けっこう自信ある、ます」
P「なにか知ってる曲をちょっとだけ歌ってもらってもいいかな。サビだけでいいからさ」
琴音「では……『光の外へ心は向かっていく そこに何があるの? ……確かめたい 高く高く目指す景色の果てに 永遠が広がる』」
P「……!!」
琴音「『追いつめられて言葉無くして思うのは 心の中に散った風花……』 ……どうです?」
P「いや、これは……」
○「貴音以上の歌声だよ!」
△「カラオケだったら100点かもな」
□「最初がこれなら、すぐに貴音を追い越せる才能だ」
↓+1
P「最初がこれなら、すぐに貴音を追い越せる才能だ」
琴音「う……やっぱりプロデューサーは正直者、です」
P「ほとんど素人にしては、上手すぎるくらいだけど……さすがにまだ貴音には及ばないな」
琴音「……です」
P「でも素晴らしい才能だっていうのは本当だよ。もうほとんど基礎は完璧に近いんじゃないかな」
琴音「どこがだめです?」
P「言葉のイントネーションがちょっとおかしいところがあったかな。それと歌詞に合わせた感情をこめてほしい」
琴音「むぅ。メロディにのせれば、日本語もオーライだと思ってたのに、です」
P「なに、すぐに良くなるさ。いっしょに勉強していこう!」
琴音「はぁい。……くやしいですけど、でも、ウソ言わないでくれたの、うれしいです」ニコッ
P(さすがに、今や一流アイドルの貴音にはまだ及ばないというのは、琴音自身もわかっていたみたいだな)
P(気を遣って下手におだてたりしなくてよかった。もしかして、俺のこと試してたのかな?)
P(それからもレッスンは和やかな雰囲気で続き、俺は琴音のポテンシャルの高さに驚かされ続けた)
―――グッドコミュニケーション―――
―――事務所―――
琴音「プロデューサー! ワタシのアイドルデビュー、ほんとです!?」
P「ああ。琴音の才能はかなりのものだからな。もちろん、まだFランクアイドルですらないし、レッスンも重ねてもらうけど」
琴音「えー? ワタシとってもすごいので、レッスンいらないですよ? すぐにテレビもオッケー、です」
P「そういうわけにはいかないさ。まぁ、どうしてもって言うなら、事務所のコネでなんとかできるけど」
琴音「う……それはちょっとイヤ、です」
P「それじゃあ自分の力で登って行かないとな」
琴音「はぁい」
P「それに、あんまりレッスンを怠けてると……」
○「穴掘って埋まりたくなるようなミスをするぞ?」
△「寝てばっかりのアイドルになっちゃうぞ?」
□「アイドル候補生に抜かされちゃうぞ?」
↓+1
P「アイドル候補生に抜かされちゃうぞ?」
琴音「アイドル=コーホセー?」
P「いや、そんな外国人の名前みたいなのじゃなくてだな……。おーい、かすみちゃーん」
かすみ「は、はーい……!」
P「こちら、アイドル候補生の『高槻 かすみ』ちゃんだ。10歳だけど、一応、765プロでは先輩だな」
琴音「なるほどです。タカタツキ=カスミ」
P「高槻 かすみ、な」
琴音「Sorry、タタスキ=カスミ」
P「…………」
かすみ「あの、はじめましてっ……」ペコッ
琴音「Hello、タタスキ=カスミ」
かすみ「わ、外国の人……?」
琴音「ワタシの名前は、四条 琴音です」
かすみ「……四条?」
琴音「Yes、四条 琴音」
かすみ「もしかして、貴音おねえさんの妹さんですか?」
琴音「御姉様のお姉さんの妹さん?」
かすみ「あれ?」
琴音「うん?」
P(……わぁ、つっこみたい)
琴音「タタスキ=カスミは、今なにやってます?」
かすみ「えっと、事務所のおそうじをしてます」
琴音「どうしてですか?」
かすみ「やよいお姉ちゃんが忙しいから、わたしが代わりに事務所をきれいにするんです」
琴音「ヤヨイお姉ちゃん?」
かすみ「あ、お姉ちゃんっていうのは、わたしのお姉ちゃんで……」
琴音「なるほどです。タタスキ=カスミも妹ですか」
P「どうだ琴音、かすみちゃんとユニットでも組んでみるか?」
琴音「それもいいですけど、ワタシは1人でやっていく、ます」
P「1人で?」
琴音「ワタシは1人で大丈夫です。ずっと昔から、ワタシは1人でやってきました。ですから……」
P「……」
○「それじゃ俺の仕事がなくなっちゃうよ」
△「本当に1人だったの?」
□「あんまり貴音と仲良くないの?」
↓+1
P「あんまり貴音と仲良くないの?」
琴音「そんなことは……ないです」
P「そういえば、琴音は貴音と同じところに住んでるのか?」
琴音「いいえ、御姉様とはべつのところです」
P「じゃあ一人暮らしなのか?」
琴音「……」コクッ
P「そうなのか……」
P(なんだかとても元気がなくなってしまった。不用意に踏み込み過ぎてしまったのかもしれない)
P「まぁいきなりユニットと言われても困るだろう。まずはソロで……俺と二人三脚でがんばろう」
琴音「ニニンサンキャク?」
P「2人いっしょのペースで進んで行こうってことさ。これからは1人でできないことも、きっと増えてくるしな」
琴音「そうなんですか?」
P「ああ。たとえば俺がいれば……」
○「日本語を教えてやれたりできる」
△「イタズラを手伝ってやれたりできる」
□「肩車をしてやれたりできる」
↓+1
P「日本語を教えてやれたりできる」
琴音「Oh、それもそうです。まだワタシ、いっぱい日本語わからないですから」
P「今でも十分話せてはいるけど、仕事では微妙なニュアンスが重要になってくるからな」
琴音「プロデューサーは生まれた時から日本語を勉強してるプロフェッショナルです?」
P「ああ。だから早く日本語に慣れるためにも、俺や事務所の子たちといっぱいお話をしよう」
琴音「はぁい」ニコッ
P(どうやら1人じゃできないこともあるってことを教えてやれたようだ)
P(これで、せめて仕事の上では頼ってくれるようになるだろう)
P(琴音はそれから早速、かすみちゃんとお話をしていた。妹同士で気が合うのか、2人はけっこう仲がよさそうだった)
―――ノーマルコミュニケーション―――
―――琴音のマンション前―――
P「ここが琴音の住んでるマンションか……けっこう良いとこ住んでるんだな」
琴音「そうです? ニッポンの家は狭いし地味だから、あんまり好きじゃない、です」
P「それは琴音の住んでたところが立派なだけじゃ……」
琴音「?」
P「ところで、このマンションの別の部屋には、貴音が住んでたりするのか?」
琴音「違いますよ?」
P「じゃあ、この近くに住んでるとか?」
琴音「御姉様の住んでるところ、知らないです」
P「そうなのか? それは……」
○「家族は心配しないか?」
△「じゃあたまに遊びに来ちゃおうかな」
□「その歳で1人暮らしなんて尊敬するよ」
↓+1
P「家族は心配しないか?」
琴音「むっ」ムスッ
P「え?」
琴音「ワタシ、1人でなんでもできます! 家のこと、心配なんてないです!」
P「いや、でも琴音はまだ14歳だしさ……」
琴音「14歳でも、です! 外国でも1人暮らししました! イチニンマエです!」
P「わ、わかったよ。ごめん、見くびるようなこと言っちゃって」
P(どうやら琴音のプライドを傷つけてしまったらしい。あまり子ども扱いをするのは、良くないかもしれないな)
琴音「むぅ……ワタシの部屋見れば、ちゃんとしてるのわかる、ます」
P「……え?」
琴音「それでは、立ち話もなんですからワタシの部屋に入りましょう、です」
P「ええっ!?」
琴音「?」
P「いや……う~ん。むしろ琴音のほうは、こんな男を部屋にあげちゃってもいいのか?」
琴音「いいですよ? なにかダメです?」
P「ダメってことはないけど……」
琴音「あ、ワタシ知ってます! プロデューサーみたいな人を、ヤマトナデシコって言います!」
P「……いろいろ間違ってるよ」
琴音「あれ?」
P(うーむ……どうしたものかな。誰でもぽんぽん部屋にあげちゃうようでは、いつか困ったことになるぞ)
P(どうにか琴音に思いとどまってもらいたいが……)
○「男はオオカミなんだよ!」
△「きょ、今日は仕事があるから、もう帰らないと……」
□「大和撫子は琴音になってほしいんだ」
↓+1
P「大和撫子は琴音になってほしいんだ」
琴音「ワタシが、ヤマトナデシコ?」
P「そうだ。日本の人は、アイドルにそうあってほしいと思っているのさ」
琴音「んー?」
P「女友達ならまだしも、まだ知り合って間もない男を部屋にあげるのは困るんだ。今は大丈夫でも、有名になってくるとね」
琴音「Oh! スキャンダルですね? むぅ……面倒な」
P「そうそう、スキャンダル。悪いことしてなくても、悪い噂はされてしまうんだ。だからなるべく、レディとしての振る舞いに気をつけてくれ」
琴音「なるほどです。それなら、悪いウワサされないの、今だけですね?」
P「え?」
琴音「これからヤマトナデシコはがんばります、誰もおうちに入れません。だから、今日はプロデューサーをゴショータイ、です!」ニコッ
P「お、おいおい……うわ、ひっぱるなって……!」
P(り、理屈としてはそうだが……本当にわかってるんだろうか?)
P(結局家には上げられてしまったが、自分で言うだけあって、琴音の家事スキルは大したものだった)
P(琴音も終始楽しそうにしていたし、親睦を深めることができた。それなりに充実した休日になったな)
―――グッドコミュニケーション―――
―――テレビ局―――
琴音「やっとテレビに出られるです?」
P「いや、まずは局のディレクターに顔を覚えてもらうんだ」
琴音「なるほど、コネクションを作るんですね」
P「その通りだ。……と言っても、知り合いのディレクターさんだけどな。名前を売るには、まず顔を売らないと」
琴音「それなら、インパクトが大事ですね。なにかやったほうがいいです?」
P「う~ん……」
○「思いっきりキャラ作りしてみるか?」
△「一発芸とかあるといいかもな」
□「そのままで十分だよ」
↓+1
P「そのままで十分だよ」
琴音「そのまま?」
P「ああ。変にアピールしようとして、琴音の魅力を隠すことはないからな。そのままで行こう」
琴音「それで大丈夫です?」
P「ありのままの琴音じゃ、自信がないか?」
琴音「むっ……あります!」
P「だろう? 俺も今の琴音が一番、素敵だと思うよ」
琴音「……あ、アリガト、です」///
P「なにかあっても俺が全部フォローするから、琴音は自由に振る舞ってくれていいよ。ただし、日本スタイルでね」
琴音「はぁい」
P(琴音は普段から常識をわきまえているし、十分すぎるほど魅力的だ。変に押さえつけるのは逆効果だろう)
P(うまいことプライドに火をつけられたようだし、瞳の奥にやる気の炎が灯っているのを感じる)
琴音「これから会うディレクターはきっと、人を見るパワーのある人ですね?」
P「たしかに、いろんなアイドルたちを見てきて、目が肥えてるだろうな。だから……」
琴音「?」
P「わざわざ説明しなくても、きっと琴音の魅力を見抜いてくれるはずだよ」
琴音「そういう人は、ワタシのどこを見てくるです?」
P「そうだなぁ……」
[タッチしてください]
『目』
琴音「……目、です?」
P「ああ。人を見るとき、いろいろ見る所はあるけど……やっぱり一番は目かな」
琴音「すこし、わかる気がする、です」
P「そうか?」
琴音「はい。パッション、スピリット、キャラクター……全部、目を見ればわかると思う、ます」
P「その通りだな。だから琴音も気負いせずに、堂々とディレクターさんの目を見ていれば、大丈夫だよ」
琴音「はぁい、リョーカイ、です」
P(俺の目から見ても、今の琴音の目にはやる気が見て取れる。あのディレクターさんなら、この情熱を見抜いてくれるだろう)
P(その後の顔見せでは、琴音は堂々とディレクターさんと目を合わせて、余裕を感じさせる自然体で振る舞っていた)
P(琴音の外側と内側の魅力を大いに伝えられる、最高の顔見せにすることができた!)
―――パーフェクトコミュニケーション―――
―――撮影スタジオ―――
琴音「ここでワタシの写真を撮る、ですね?」
P「ああ。宣材用のな」
琴音「センザイ? よくわからないですが、どんな写真を撮ればいいです?」
P「宣材っていうのは、琴音の自己紹介のための写真だ。だから琴音らしさが出た写真が撮れるといいな」
琴音「ワタシらしいというのは?」
P「んー、そうだな……」
○「太陽みたいな?」
△「腹黒そうな?」
□「子供っぽい?」
P「太陽みたいな?」
琴音「!」
P「琴音は近くにいると眩しいくらいの子だからな。俺の中ではそんなイメージなんだ」
琴音「ホントに……そう思う、ですか?」
P「ああ。見た目の煌びやかさもそうだし、内面の華やかさも、見ていれば感じ取れるような気がするよ」
琴音「そんな風に言ってもらえると、うれしい、です」///
P「それが写真でどこまで伝わるかはわからないけど……」
琴音「いいえ、伝えてみせる、です。ワタシなら、できます!」
P「そうか。よし、良い写真にしような!」
琴音「はぁい」ニコッ
P(俺の見立てでは、琴音はビジュアル的な才能も持っているはずだ)
P(そんな琴音が、これだけノリ気になってくれれば……まさに鬼に金棒ってやつだな)
琴音「あ、あの、ところで……その……」
P「うん?」
琴音「センザイの写真は、この服で撮る……ですか?」
P「ああ、それでもいいし、いくつか衣装も貸してもらえたりするよ。着替えるか?」
琴音「い、いえ。この服で大丈夫、です。……ですけど、いつか水着で写真とかも?」
P「有名になってくれば、そういうオファーもあるだろうな」
琴音「ううっ……」
P「どうしたんだ、渋い顔して。……あ、もしかして琴音」
○「肌を晒すのは怖いか?」
△「水が苦手なのか?」
□「プロポーションに自信ないのか?」
P「肌を晒すのは怖いか?」
琴音「え……?」
P「そうだよな、14歳といえど、琴音も立派な女の子なんだ。無理もないよ」
琴音「あ、あー……そ、そうですっ! そうなのですよっ?」アセアセ
P「じつは765プロの先輩たちの中にも、恥ずかしがり屋だったり、ビジュアルレッスンが嫌いだったりした子がいるんだよ」
琴音「そうなのです? その人たちは、水着は着ないですか?」
P「いや、仲間とか周りの人たちに励ましてもらいながら、最後はなんだかんだで仕事をこなしてくれたよ」
琴音「…………そ、そう、ですよね……」
P「だけど琴音が怖いっていうなら、無理にそういう仕事をさせたりはしないよ」
琴音「!」
P「きちんと琴音が納得してくれるまで話し合って、それでも駄目なら、そんな仕事は俺が断ってやるからさ」
琴音「そ、そんなこと、大丈夫なのですか?」
P「あんまりよくはないけど、765プロも大きくなったしな。それくらいのことはできるさ。なにより、琴音のためだからな」
琴音「……アリガト、ございます」
P「おっと、もう時間みたいだな。さ、今日は普通の写真撮影だし、大丈夫だよな?」
琴音「は、はい! がんばってきます!」
P(ぱたぱたとカメラマンさんのところへ走っていく琴音の足取りは軽かった)
P(どうやら、彼女の不安を取り除いてやることに成功したようだ)
P(その後、撮影は大成功。カメラマンさんも琴音の容姿やセンスをしきりに褒めちぎっていた)
P(俺から見ても琴音の表情は、思わず見とれてしまうような魅力で溢れていた)
―――パーフェクトコミュニケーション―――
―――レコーディングスタジオ―――
P「さぁ、今日は琴音の曲を収録するぞ」
琴音「ワタシの曲?」
P「そうとも。琴音のために作詞作曲してもらった、琴音の曲だ!」
琴音「!!」
P「この歌の出来で、今後の琴音の活躍は大きく左右されるだろう。アイドルとしての1発目だからな」
琴音「……リョーカイ、です」
P「大丈夫か? 緊張してないか?」
琴音「大丈夫です。それで、そのワタシの曲は、どんな曲なんです?」
P「ああ。タイトルは……」
○「『りとる♪ぷりんせす』」
△「『ヴィオラ・マンジュリカ』」
□「『魅惑のSUNLIGHT!!』」
P「『魅惑のSUNLIGHT!!』」
琴音「……!!」
P「琴音を表せるキーワードがなにかってことを、俺なりに考えてみたんだ。そして最後に行きついたのが、これだった」
琴音「太陽の、光……です?」
P「そうだ。今までの琴音を表しているというのもそうだし、これからファンのみんなを照らして元気にする光となってくれるようにっていう期待を込めて、さ」
琴音「…………」
P「あ、あれ? もしかして不満だったか?」
琴音「そんなはず、ないです! この曲、ワタシにぴったりです。アリガト、ございます……プロデューサー」///
P(琴音は目を伏せ、胸に手を当てて、曲のタイトルを噛みしめるように呟いている)
P(まだ歌ってさえいないけれど、俺には、この曲がかつてない最高のものになるという予感があった)
P(琴音は持ち前の歌唱力で見事に『魅惑のSUNLIGHT!!』を歌いきり、俺たちをすっかり魅了してくれた)
―――パーフェクトコミュニケ^ション―――
―――ダンススタジオ―――
琴音「ふっ、ふっ……」タンッ、タタンッ
琴音「よっと」タンッ!
P「よし、そこまで! そろそろ休憩にしようか」
琴音「はぁい。でも、まだまだ行けるですよ?」
P「がむしゃらにやればいいってもんでもないだろ? ちょっと反省会しよう」
琴音「むぅ。反省することなんてないです」
P「た、たしかに俺の目にも完璧に見えたし、俺が口を出せることは結局ないんだけどさ……」
琴音「ふふっ、トーゼンです」フンス
P「まずは俺の目でダンスのレベルを確かめておきたかったんだが、次はプロのトレーナーさんを呼ぼうか」
琴音「それもいらない、です。ワタシは1人で大丈夫ですから」
P「うーん……」
○「じゃあ今度、ステージに立ってみるか?」
△「あんまり自惚れるもんじゃないぞ」
□「……もしかして、俺もいらない?」
P「あんまり自惚れるもんじゃないぞ」
琴音「う……ウヌボレ……? ワタシが?」
P「いくらセンスがあっても、ダンスを習ったことがないなら素人も同然だ」
琴音「……」
P「練習でみっちり基礎を固めておかないと、本番でなにか思わぬハプニングがあった時に対応できないしな」
琴音「……」ムスッ
P「琴音? どうしたんだ、頬を膨らませて?」
琴音「べつに、なんでも」プイッ
P「お、おい琴音? もしかして気を悪くしたか? でもこれはお前のためで……」
琴音「ワタシだって、好きでこんな……」
P「え?」
琴音「……なんでもない、です。わかりました、トレーナーでもなんでも呼んでください」
P(琴音はそれっきり俯いて、意気消沈してしまった。もしや気が付かないうちに、彼女の地雷を踏んでしまったのだろうか)
P(注意するにしても、もう少し言葉を選んでやった方がよかったかもしれないな)
P「それにしても、琴音は本当に運動神経が良いんだな」
琴音「これくらいなら簡単です。運動でも御姉様に負けたことない、です」フンス
P「そういえば貴音が以前、襲い来る暴漢を投げ飛ばしたことがあるけど……もしかして琴音も?」
琴音「素手で戦うなんてヤバンなことしたくないです。やろうと思えばできますけど」
P「で、できるのか……」
琴音「それより、プロデューサーに聞きたいことある、ます」
P「聞きたいこと?」
琴音「ワタシのダンス、悪いとこないですけど……良いとこはどこですか?」
P「ああ、なるほど。それならダンス素人の俺でも指摘できそうだな」
琴音「です」ニコッ
P「そうだな、琴音のダンスは……」
○「踊ってて楽しそうだよな」
△「なんかエロイよな」
□「なんとなく貴音を思いだすよな」
P「踊ってて楽しそうだよな」
琴音「楽しそう?」
P「ああ。だから見ているこっちまで楽しい気分になってくるっていうか」
琴音「!」
P「もちろんダンスの技術も高いんだけど、それだけじゃ、見てる人は「すごい」としか思わないだろ?」
琴音「はい……」
P「だけど琴音のダンスはすごいだけじゃなくって、見てる人に元気を与えられる素晴らしいダンスだと思うよ」
琴音「そ、そうです? そうだったら、嬉しいです……」///
P「まぁ、問題はその持ち味が本番でも発揮できるかって事なんだけど……琴音なら、それも大丈夫な気がするよ」
琴音「はい! ワタシはどんな場所でも、パーフェクトに踊って見せます」ニコッ
P「おっ、さすがだな。頼もしいよ」
P(どうやら上手に彼女のダンスを褒めてやることができたらしい。すっかり機嫌を良くしてくれた)
P(いつか琴音が、他の765プロの子たちと並んで踊る日も来るだろう。その日が今から待ち遠しいな)
―――ノーマルコミュニケーション―――
―――街中―――
琴音「むぅ……自分で自分のCDを売る、ですか」
P「みんな最初はこんなもんさ。もちろん今の765プロなら、事務所の力でもっと大々的に売ることもできるけど……」
琴音「自分のパワーで、トップに立ちます!」
P「……だよな」
琴音「ですけど、御姉様にもこういう時代があったんです?」
P「ああ。売れない時はまったく仕事がなくってな。それに人手もないから色々と自分たちでやっていたよ」
琴音「……そういうものですか」
○「ガッカリしたか?」
△「驚いたか?」
□「もうやめたいか?」
P「ガッカリしたか?」
琴音「え?」
P「世間のイメージからは想像できないよな、こんな仕事」
琴音「……それは、そうですね」
P「だけど気を落とさないでくれ。琴音なら、すぐに登り詰められるさ」
琴音「ちょっとびっくりはしましたけど、落ち込んではいない、です」
P「そうなのか?」
琴音「それに心配もしてないです。ワタシならトップになれるって、知ってます」フンス
P「そ、そうか……」
P(相変わらず大した自信だな。頼もしすぎて、逆に俺のほうが励まされてしまった気分だ)
P(琴音はさっき、なにを思っていたんだろう。……気になるが、もう聞ける雰囲気じゃないな)
P「さぁ、そろそろCDを売っていこうか」
琴音「なにかルールはありますか? ホーリツとかに引っかかりませんか?」
P「許可はもらってるから、大丈夫だよ。よっぽどのことをしない限りね」
琴音「それでは……売ってみる、です」
琴音「はぁい、みなさ~ん! ワタシのCD、買って行かれませんかぁ~?」フリフリ
P(琴音はお人形みたいな外見だから、売り始める前から注目を集めていたが……)
P(さっそくお客が集まってきたな。これは幸先がいいぞ!)
P(ここで俺がすべきことは……)
○「ここにいたら邪魔だし、飲み物を買ってきてやろう」
△「隣でいっしょに売りさばこう」
□「口出しせずに見守っていよう」
P(口出しせずに見守っていよう)
琴音「わぉ! ホントに3枚です? アリガト、ございます~」ニコッ
琴音「お釣りです? えっと……あれ? ニッポンのお金は……」
琴音「あ、握手です……? ちょ、ちょっと待ってください、です」
琴音「名前? ワタシの名前は、四条琴音、です。はい、765プロの……」
琴音「あ、ちょっと待ってください! えっと、えっと……」
P(黙って見ていたら、あっという間に琴音が人だかりに飲まれてしまった。まずいな、これじゃ近づけないぞ)
P(とりあえず問題だけ起こらないように見張って、販売は琴音に一任するしかないか……)
P「おつかれ、琴音。大丈夫か?」
琴音「だ、大丈夫、です……ちょっとびっくりでしたけど……」
P「CDはちょっと売れ残っちゃったな」
琴音「……ワタシ、なにがダメでした?」
P「いやいや、琴音はダメじゃなかったよ。CDを買ったあとも立ち去らない人たちのせいで、新しいお客さんから琴音が見えなかったせいだと思う」
琴音「なるほど、です……みなさん1人1人の相手をしすぎたんですね」
P「疲れただろ? さぁ、事務所に戻ろう」
琴音「……はぁい」
P(琴音は完売できなかったというのが悔しかったのか、この日はずっと落ち込んでいた)
P(なんでも1人でやりたがる彼女の好きなようにさせてみたが、今回の結果はあまり思わしくなかったな……)
P(琴音がなにを考え、なにを抱えているのか……)
P(彼女のプロデュースをするためには、いずれ彼女に、もっと踏み込む必要があるのかもしれない)
―――ノーマルコミュニケーション―――
―――事務所―――
P「やったぞ琴音! 月刊イドラで、琴音の特集が組まれることになったぞ!」
琴音「……え? えっと……」
P「かなり大手の雑誌だから、これで一気に琴音の知名度が上がること間違いなしだ!」
琴音「そう、なんです? ですけど、どうして……ワタシ、まだアイドルになってすぐですよ?」
P「特集に関する詳しいことは知らされてないが……」
琴音「まぁワタシなら、こんなにすぐ注目されるのも簡単です!」フフン
P「これは琴音にとって大きなチャンスだと思う。……あと、それから」
○「取材が終わったら、ご飯食べに行こう」
△「もし失敗しても、俺が必ずフォローしてやる」
□「くれぐれも、失礼のないようにな」
P「くれぐれも、失礼のないようにな」
琴音「もう、そんなの大丈夫ですよ?」
P「ははっ、まぁ一応な」
琴音「それじゃあ行ってきます!」
P(…………)
琴音「………………」
P「あ、琴音。取材終わったのか」
琴音「……知ってたんですか」
P「え?」
琴音「取材されたのはワタシじゃなくって……『四条貴音の妹』でした」
P「……詳しいことは知らされてないっていうのは本当だ。でも、なんとなくそういうことだろうなとは思ってたよ」
琴音「だからワタシに、失礼ないように言ったんですね」
P「い、いや、それはだな……」
琴音「失礼ないように、我慢して答えました。これで、いいんですよね」
P「……間違いなく知名度は上がって、世間は琴音に注目するだろう」
琴音「『四条貴音の妹がアイドルしてる』って、ですか?」
P「……そうだ」
琴音「…………わかってます。それが、プロデューサーのお仕事で……みんな、いろいろガマンしてアイドルしてる、ですよね」
P「な、なぁ琴音……」
琴音「すこしだけ、外の光を浴びてくる、です……」
P「あ、ああ……」
P(琴音のためを思って、念のために釘を刺しておいたのだが……それがこんなことになるなんて)
P(……その後、琴音の機嫌をとるのには非常な労力を要した)
―――バッドコミュニケーション―――
―――ライブハウス―――
琴音「けほっ、こほっ……! 暗いのと狭いのと汚いのはイイにしても、埃っぽいです!」
P「ご、ごめんな……俺個人で動かせる金には限度があってさ」
琴音「……つまりこれが、今のワタシの実力ってことです?」
P「まぁ、事務所の力を使わなければ、最初はこんなものだよ」
琴音「そういうことならガマンする、です。売れれば、もっと良いところで大きなライブできますよね?」
P「ああ。それに、最初のうちはこういう小さなハコで練習しておくのも大事なんだよ」
琴音「どうしてです?」
○「コアなファンが付きやすいからな」
△「いきなり大きなハコじゃ緊張しちゃうからな」
□「それがシンデレラ・ストーリーの醍醐味だろ?」
P「それがシンデレラ・ストーリーの醍醐味だろ?」
琴音「!」
P「最初から大きくて綺麗なところで誰でもできるんじゃ、つまらないじゃないか」
琴音「……」
P「スタート地点が低くて、なかなか思い通りに行かなくって、たくさん悔しい思いや苦労もして……それでこそ感動も大きくなる。そうだろ?」
琴音「プロデューサー、イイこと言うですね」ニコッ
P「ははっ。実際に間近で、たくさんのシンデレラを見てきたからな」
琴音「その中には……」
P「ああ。こないだ琴音が会ったかすみちゃんの、お姉さんもそうだし……それに……」
琴音「…………。ワタシ、もっともっと……シンデレラよりも、もっと上に行きたいです!」
P「琴音なら、必ずなれるさ。いや、俺が必ず叶えてみせる!」
琴音「ふふっ。それじゃあ今はこの場所で頑張りますね、魔法使いさん」
P(どうやら上手いこと琴音の闘志に火をつけることができたらしい。この現状をポジティブに受け止められたようだ)
P(それから琴音は最高のパフォーマンスを披露して、小さな会場を見事に熱狂させてくれた!)
―――パーフェクトコミュニケーション―――
―――スタジオ―――
P(……琴音のやつ、トイレに行ったっきり帰ってこないな……どうしたんだ?)
P(もうすぐラジオの収録が始まっちゃうぞ。まだパーソナリティの人に挨拶も済ませてないってのに……)
P(くそ、このままじゃマズイか……? どうする?)
○「絶対来るはずだ。信じて待とう」
△「念のため、トイレに様子を見に行こう」
□「電話をかけてみるか」
P(念のため、トイレに様子を見に行こう)
P「えっと、たしかトイレはこの辺りに……あっ!」
P(トイレが清掃中じゃないか! じゃあ琴音は、べつのトイレを探しに行ったのか?)
P(くそ、どっちに向かった? 琴音はここから近いトイレの位置なんて知らないはず……)
P「とにかく走って探すしかないか! 幸い目立つ外見だし、人に訊いていけば……!」
P「はぁ、はぁ…………あっ!!」
P(あのゆるふわお嬢様結びの金髪は……!)
P「琴音!!」
琴音「プ、プロデューサー!?」
P「もうすぐラジオが始まる! 急いで戻るぞ!」
琴音「は、はいっ!」
……収録後……
P「やれやれ、一時はどうなることかと思ったよ」
琴音「……」
P「今回はギリギリ間に合ったから、笑って許してもらえたけど……今度からは気をつけてくれよ?」
琴音「……ごめんなさい、でした」シュン
P「それにしても、なにをやってたんだ? もしかして道に迷ったとか?」
琴音「はい……そうです」
P「それなら近くにいる人に道を尋ねるなり、俺に電話するなり、できることはあっただろ?」
琴音「……ごめんなさい……ぐすっ……」
P「なぁ、琴音……」
○「もっと俺を、困らせてくれよ」
△「……そんなに俺は頼りないか?」
□「ご飯でも、食べに行こうか」
P「もっと俺を、困らせてくれよ」
琴音「……え?」
P「琴音の代わりに困るのも、琴音と一緒に困るのも、俺の仕事なんだからさ」
琴音「えっと……?」
P「道に迷ったかもしれないって思ったら、すぐに電話してくれよ。ちょっと歩くの疲れたなって思ったら、俺を呼んでくれよ」
琴音「でも、そんな……」
P「琴音ならきっと、1人でも大概のことはできるよ。でもさ、1人でやる必要のないことは、俺に押し付けてくれればいいんだ」
琴音「……どうして、そこまで……」
P「俺が琴音のプロデューサーだからだよ。俺たちはパートナーだ」
琴音「!!」
P「琴音が嬉しいなら俺も嬉しいんだ。それなら、琴音が困ってる時は、一緒に困らせてくれよ」
琴音「……プロデューサー」///
P「さて、と。それじゃあ湿っぽい話はおしまいにして、事務所に帰ろうか!」
琴音「……はいっ!」ニコッ
P(まだ彼女が心に秘めている何かを知ることはできていないけれど、この様子なら、うまい言葉をかけてあげられたようだ)
P(その後、琴音は尻尾でもブンブン振りそうな調子で俺の傍をちょこちょこ歩き回り、この日はずっとニコニコしていた)
―――グッドコミュニケーション―――
P「琴音、ついにEランクだな! おめでとう!!」
琴音「もう、プロデューサーってば。おおげさじゃないです?」
P「そんなことないさ。琴音がトップアイドルになる階段の、1ステップ目だからな。大切なことだよ」
琴音「んー、なるほど」
P「たしかに知名度はまだまだだけど、これからどんどん有名になって、外を歩くのも一苦労になるかもしれないぞ?」
琴音「あ、変装とかしないとダメになるですか?」
P「ははっ、そうだな。海外セレブみたいに」
琴音「嬉しいですけど、それはそれで、面倒な……」
P「仕方ないさ、“有名税”ってやつだな」
琴音「ユーメーゼー?」
P「ああ……」
○「有名人はみんなにお金を配る決まりでだな……」
△「有名になると、その代償も生じるものさ」
□「意味は俺も知らない! 律子が言ってた!」
P「有名になると、その代償も生じるものさ」
琴音「……?」
P「その代わり、上に行かなくちゃ見えない景色ってものもある」
琴音「!」
P「琴音の先輩たちは、みんなその景色を見てきた。残念ながら脇役の俺は見たことがないけど……必ず琴音にも、その景色を見せてやるからな!」
琴音「……はい! ワタシもいっしょに頑張る、です」
P「ああ、頑張ろう!」
琴音「それから……」
P「うん?」
琴音「ワタシの隣にいてくれたら、いっしょに、一番トップの景色、見せてあげます」ニコッ
P「……それは、すごく楽しみだな」
P(生意気に、随分と嬉しいことを言ってくれるものだ。もちろん言われなくても、琴音の傍を離れるつもりはないが)
P(だけどそんなことを言われたら、ますます絶対に……トップアイドルにしてやらなくちゃな!)
P「さて、それじゃあ琴音のEランク昇格祝いに、どこか食べに行くか!」
琴音「Wow! プロデューサー、太っ腹です!」
P「外で俺たちが堂々と食事できるのも、アイドルランクの低い今のうちだからな」
琴音「え?」
P「プロデューサーとはいえ、アイドルと食事っていうのはちょっとマズイからな」
琴音「……プロデューサー、ワタシとゴハンできないと、寂しいです?」
○「さすがに慣れたさ」
△「琴音のためなら我慢するよ」
□「そしたら他の子と行くよ」
P「琴音のためなら我慢するよ」
琴音「ということは、寂しいですね?」
P「ま、まぁ、そうだな」
琴音「ふふっ、プロデューサーってば、照れちゃってます」
P「て、照れてないぞ?」
琴音「顔赤いです」
P「……うぐぐ、弱ったな……勘弁してくれ」
琴音「でもプロデューサー、ガマンしなくてもいいですよ?」
P「え?」
琴音「寂しくなったら、いつでもワタシの胸に飛び込んできてOKですから!」バッ
P「……あはは、覚えとくよ」
P(琴音は嬉しそうに胸を張ると、鼻歌交じりに出かける準備を始めた)
P(そして、その後の一日中……なぜか琴音は俺のことを自分の弟のように扱い続けた)
P(とてもちっこい琴音に甘やかされるのは、なんだか屈辱だったが……琴音が楽しそうだったから良しとしよう)
―――パーフェクトコミュニケーション―――
―――事務所―――
P(ふぅ……仕事も一段落したし、そろそろ休憩するかな……)
琴音「プっロデューサー♪」ヒョコッ
P「お?」
琴音「ハイ、タッチ!」スッ
P「ええ? えっと……」
[タッチしてください]
『手』
琴音「いぇい!」パチンッ
P「……えっと、琴音?」
琴音「うーん、たしかに、ちょっと元気になったような気も……」
P「よくわからないけど、満足したか?」
琴音「はぁい。えへへっ」ニコッ
P「それにしても、急にハイタッチなんて、どうしたんだ?」
琴音「タカツキ=カスミに教えてもらいました。元気が出るおまじないだって!」
P「ああ、なるほど。そういうことか」
琴音「タカツキ=ヤヨイは、プロデューサーとこれをやってトップアイドルになったんですよね?」
P「たしかにやよいとはよくハイタッチをしていたよ」
琴音「どうしてハイタッチなんです?」
P「それは本人に聞かないとわからないけど、やよいに論理的な説明は期待しないほうが良いと思うなぁ」
琴音「?」
P「こういうのはノリとか気合いの問題だからな。それが琴音に合ってるかどうかも、今はわからないよ」
琴音「むぅ、そうなのですか……」
P「人の真似をしなくたって、琴音が元気になれるおまじないは見つかるさ。俺と琴音だけの、おまじないがさ」
琴音「プロデューサーとワタシだけのおまじない……ですか。じゃあじゃあ、たとえばどんなのがいいでしょうかっ?」
P「急には思いつかないけど……そうだなぁ」
○「頭を撫でるとか」
△「闘魂注入だァ!!」
□「俺が琴音を褒めるとか」
P「頭を撫でるとか」
琴音「頭を……?」
P「なにかがうまくいった時とか、これから頑張るぞって時にさ」
琴音「んー、それで元気になるです?」
P「わからないけど……まぁ、ただの思いつきだから気にしないでくれ」
琴音「……ちょっと、やってみてくれませんか?」
P「え、いいのか?」
琴音「どうぞ」スッ
P「えっと、じゃあ……」
なでなで……
琴音「んっ……」
P「よくがんばったな、琴音。これからもこの調子でがんばろうな」
琴音「…………!!」///
P「うわ、顔真っ赤だぞ、琴音!?」
琴音「は、えっ!? うぁ、なんで……や、やっぱりこれは無し~っ!!」///
P「あ、おい琴音! どこ行くんだ、琴音ー!?」
P(その後、なぜか琴音はしばらく頭を押さえながら、顔を赤くしてうーうーと唸っていた)
P(もしかして怒ったのかと思ったけど、本人曰くそうではないらしい。だけど、もう頭を撫でるのは無しということになった)
―――パーフェクトコミュニケーション―――
―――レストラン―――
琴音「ここが、パスタの美味しいレストランです?」
P「ああ。琴音がパスタ好きだっていうから、調べておいたんだ」
琴音「Wow! プロデューサー、アリガトです!」
P「さぁ、今日は俺の奢りだ! 好きなだけ食べてくれ」
琴音「え……自分の食べるものは、自分でお金出しますよ?」
P「ん、そうか?」
○「貴音とは正反対の反応だな」
△「……いや、今日だけは奢らせてもらおう」
□「そうか? じゃあそうしようか」
P「……いや、今日だけは奢らせてもらおう」
琴音「え?」
P「食事に誘ったのも、この店に連れてきたのも俺だからな。最後までエスコートさせてくれ」
琴音「ですけど……」
P「いずれ琴音が大人気アイドルになった時に、今度は琴音がエスコートしてくれ。今日は俺の番ってことで」
琴音「……」
P「琴音が別に奢ってもらわなくても困らないことは知ってるけどさ。これはお金じゃなくて、気持ちの問題だから」
琴音「……そこまで言うなら、わかりました……今日だけ」
P「ありがとう。それじゃあ、料理を頼もうか!」
琴音「はぁい」ニコッ
P「いやぁ、噂以上の味だな! すごくおいしいよ!」
琴音「……あの、プロデューサー」
P「うん? ……って琴音、あんまり食べてないな。もしかして口に合わなかったか?」
琴音「いえ、味はとってもおいしいです。そうじゃなくって、その……」
P「?」
琴音「ワタシ、すぐおなかいっぱいになっちゃう、です。なので……」
P「ああ、そういえばそんなこと言ってたな。じゃあ……」
○「残りは俺が食べてもいいか?」
△「無理しないで、残しても大丈夫だぞ」
□「次からは小皿に取り分けようか」
P「残りは俺が食べてもいいか?」
琴音「あ……ごめんなさい、です」
P「謝ることなんてないさ。琴音は小柄だし、あんまり食べられなくても仕方ないんだから」
琴音「プロデューサーは、おなか大丈夫です?」
P「ああ。俺もそんなにたくさん食べる方ではないけど、これくらいなら平気さ」
琴音「それじゃあ、お願いします……」
P(俺は自分の分と、そして琴音が残した分をなんとか平らげた。ほんとに琴音は少食なんだな……)
P(食事が終わると琴音は急に大人しくなって、なんだかもじもじとしていた)
P(もしかしたら俺に尻拭いさせてしまったと感じているのかもしれない。こんな食事ぐらいで気にしなくてもいいのに)
P(ともあれ食事自体はとても喜んでくれたようだ。このレストランを教えてくれた善澤さんに感謝だな)
―――グッドコミュニケーション―――
―――事務所―――
P「ただいま戻りましたー。……って、あれ?」
琴音「くー……すぴー……」
P「なんだ琴音、ソファで寝てるのか? というか、今日はもう仕事ないはずなのに、まだ残ってたのか」
琴音「むにゃ……」
P「ずいぶんぐっすり寝ているようだが……さて、どうしたものかな」
○「寝言でも聞いてやろう」
△「毛布でもかけてやろう」
□「寝顔を写メってやろう」
P「毛布でもかけてやろう」
琴音「……んん」
P(これはしばらく起きそうにないな。疲れてるだろうし、ぐっすり休ませてやろう)
……
琴音「んっ……あれ?」
P「お、やっと起きたか?」
琴音「プロデューサー……? あっ!!」
P「どうかしたか?」
琴音「プロデューサーを待ってたら、眠っちゃってたみたい、です」
P「ははっ、そうみたいだな」
琴音「……あれ、毛布が……?」
P「アイドルなんだから、そこらで寝て風邪なんてひいたりしないようにな?」
琴音「は、はい……気をつける、です」///
P「それで、どうして俺を待ってたんだ? なにか用事があるなら、メールしてくれればいいのに」
琴音「え、えっと……それは、その……」
P「?」
琴音「……ヒマだったので、どうせならプロデューサーといっしょにいようかと……」
P「え?」
琴音「い、家に帰っても1人ですからっ、ヒマつぶしにプロデューサーでもからかおうと思っただけ、です」
P「はぁ……」
○「友達はいないのか?」
△「仕事の邪魔はするなよ?」
□「なら高槻家にでも泊まってみればどうだ?」
P「友達はいないのか?」
琴音「なっ……! そ、それは、その……」///
P「そういえば琴音って、学校はどうしたんだっけ?」
琴音「履歴書に書いたと思うですけど……」
P「学歴欄とかあんまり見てなかったな。なになに、学歴は……海外の大学を中退!?」
琴音「アイドルやるので大学はやめました。ちょっと本家と揉めましたけど……」
P「そ、そうだったのか……飛び級ってやつか? なら日本には友達が少ないわけか」
琴音「はい……」
P「うーん……それなら今日は、琴音の家まで送らせてくれないか?」
琴音「……!」
P「ちょっと待っててくれな、すぐに残りの仕事を片付けるから」
琴音「はぁい」ニコッ
P(琴音のなんでも1人でやりたがる性格は、なんでも1人でできなければならない環境が作りだしたものなのかもな……)
P(俺がきちんと目を光らせて、彼女に寂しい思いをさせないようにしなければ)
P(……寂しい時に真っ先に俺を頼ってもらえたっていうのは、少しは彼女の信頼を得てきたと考えていいのだろうか)
―――ノーマルコミュニケーション―――
―――街中―――
P「さすがは琴音だな。あっという間にCD完売だ!」
琴音「これくらい、ワタシならトーゼンです」フンス
P「ははっ、大した自信だ。頼もしい限りだよ」
琴音「これからもう事務所に戻るです?」
P「そうだな。琴音も疲れてるだろうし、さっさと戻って一休みしよう」
琴音「はぁい…………あれ?」
P「琴音? どうかしたか?」
琴音「あそこで泣いてる子、迷子じゃないですか?」
P「え? ……ああ、たしかに。小さい子が1人で泣いてるな」
琴音「ワタシ、行ってきます!」ダッ
P「あ、おい、琴音!」
琴音「ボク? もしかして、迷子になっちゃったのかな?」
「ひっく……ぐすっ……」
琴音「よしよし、泣かないの。お姉ちゃんが来たからには、もう大丈夫だよ? お姉ちゃんはお母さん探しのプロだから!」ニコッ
「……ほんと?」
琴音「ほんとだよ。お母さん、すぐに見つけてあげるからね。だから、もう泣かないの。いいかな?」
「うん……ひっく……もう泣かない」
琴音「よぉし、えらいぞ~! ボクは良い子だから、そこの自販機でジュース買ってあげるね。ふふっ、どれがいいかな~?」
P(……なんというか、ずいぶんと小さい子の扱いに慣れているな)
P「……ん? あそこの、こっちに走ってきてる女の人、もしかして……」
「おねーちゃん、ありがとー!」
琴音「はぁい、バイバーイ!」フリフリ
P「良かったな、お母さん早く見つかって」
琴音「そうですね。これで一安心です」
P「それにしても、ずいぶんと手慣れていたみたいだけど……弟でもいるのか?」
琴音「いいえ、BrotherもSisterも、御姉様1人だけですよ?」
P「へぇ、そうなのか」
琴音「……それでは、今度こそ事務所に戻りましょう」
P「…………」
○「琴音はしっかり者だな」
△「琴音は偉いな。よしよし」
□「琴音を妹にできたらなぁ」
P「琴音を妹にできたらなぁ」
琴音「……え?」
P「あ、いや、すまん。つい……」
琴音「………………」ジトッ
P「な、なんだ? もしかして、気を悪くしたか?」
琴音「べっつにー? 妹にすればいいんじゃないですかー? どーぞご勝手に」プイッ
P「え? いや、無理だろそんなの……」
琴音「ふんっ。ワタシは事務所に戻ってます。Good bye!」スタスタ
P「お、おい琴音!? 待てって、どうしたんだよ?」
琴音「ふーんだ」
P(それから事務所に戻るまでの間、琴音はずっとそっけない態度だった)
P(俺はただ、ずっと1人っ子だったもんだから琴音みたいな可愛らしい妹が羨ましかっただけなんだが……)
P(いったいなにが彼女の機嫌を損ねてしまったのかは、結局わからずじまいだった)
―――バッドコミュニケーション―――
―――ライブハウス―――
P「今日は初めての単独ライブだな。調子はどうだ?」
琴音「バッチリです! 昨日はぐっすり眠れましたし」
P「そうか。緊張とかは……してないみたいだな」
琴音「Of course! こんなに小さな会場でのライブで、緊張なんてしません」
P「ははっ、琴音ならそう言うと思ってたよ」
○「少しくらいは緊張してほしいけどな」
△「だが慢心は失敗の元だぞ?」
□「よし、全力で輝いて来い!」
P「よし、全力で輝いて来い!」
琴音「はぁい、行ってきます!」ニコッ
…………
琴音「はぁ、はぁ……。どうでした? ワタシ、輝いてましたか?」
P「ああ、完璧だったよ! さすがは琴音だな!」
琴音「えへへ」///
P(よしよし、琴音らしさが存分に現れた、パッション溢れる最高のステージになったな。会場も大盛り上がりだ)
P(本番前に説教のような真似をしてモチベーションを下げさせなかったのは、良い判断だったかもしれない)
琴音「きゃっ……」ヨロッ
P「琴音! 大丈夫か!?」
琴音「だ、大丈夫、です。ちょっとダンスを張り切りすぎたので、足が疲れただけです」
P「歩けるか?」
琴音「はい! ぜんぜん平気です」
P「……」
○「抱えるぞ!」
△「ちょっとここで話さないか?」
□「腕を貸すよ」
P「腕を貸すよ」
琴音「え?」
P「そんな風にフラフラしてたんじゃ心配だ。楽屋まででいいから、俺の腕に掴まってくれ」
琴音「いえ、でも……」
P「ほら、早く」
琴音「……えっと、じゃあ……」
P(自分でやっておいてなんだけど、スタッフの人たちに見られるのは少し気恥ずかしかったな)
P(だけど初対面の時に平気でハグしてくるような琴音のことだから、彼女の方はあまり気にしていないだろう)
P(ステージ上で輝いてくれる琴音のために、せめて舞台裏では俺が支えてやらないとな)
―――グッドコミュニケーション―――
―――老人ホーム―――
P「お疲れ、琴音。初めての慰問はどうだった?」
琴音「……べつに、どうもしないです。仕事が終わったのなら、早く帰りましょう」
P「お昼をここでご馳走してくれるそうだよ。ついでに食べて行かないか?」
琴音「いえ、ワタシは先に帰ってます。それでは」
P「え? お、おい、ちょっと待てって!」
琴音「……なんです?」
P「どうしたんだ、一体。なにか急用でもあるのか?」
琴音「そういうわけじゃ、ないですけど……」
P「…………」
○「……よし、じゃあ帰るか!」
△「お年寄りが苦手なのか?」
□「歌って踊るだけがアイドルじゃないぞ」
P「歌って踊るだけがアイドルじゃないぞ」
琴音「!」
P「たしかに俺たちが請け負った仕事はもう終わったけど……ファンを大切にしないアイドルは人気が出ないぞ?」
琴音「……」
P「今回はダンスじゃなくて歌メインだったから、琴音にとっては疲れたかもしれないけどさ。あと少しだけ頑張ろう」
琴音「……はい」
P「よし。それじゃあ、向こうでご飯を貰ってこよう!」
P(琴音は食事中もみんなに笑顔を振りまいていたが、しかしそれはどこかぎこちない笑みだった)
P(結局、どうして琴音が早く帰りたがったのか、気落ちしている様子だったのかは、わからずじまいだった)
…………
琴音「……あの、プロデューサー」
P「うん? どうした、琴音?」
琴音「ワタシがトップアイドルになるためには、なにが必要だと思う、ですか?」
P「え……またずいぶんと唐突な質問だな」
琴音「ごめんなさい。ですけど、今、答えを聞きたいです」
P「う、うぅむ……」
P(琴音の目は真剣そのものだ。まるでなにかを思いつめているかのように……)
P(ただの思いつきで聞いているわけではなさそうだな)
P「そうだな。琴音がトップアイドルになるために必要なのは……」
○「まだまだ全部足りていないさ」
△「世間の認知度かな」
□「日本語力かな」
P「まだまだ全部足りてないさ」
琴音「ぅ、ぁ……全部……」
P「まだまだアイドルになりたてだからな。知らないこともできないことも多いだろう」
琴音「……はい」
P「Eランクアイドルとはいえ、新人から抜け出したばかりだ。足りないことだらけさ」
琴音「……」
P「だからこれからもいっぱいレッスンして、高みを目指していかないとな」
琴音「……で、でもっ……ワタシ、ずっと小さい頃から……!」
P「え?」
琴音「あ……いえ、なんでもないです……。ごめんなさい、もう帰ります……」スタスタ
P「あ、おい、琴音!?」
P(自信家な琴音のことだから、俺の言葉をバネにしてくれると思って、あえて厳しい言葉をかけてみたんだが……)
P(今日の琴音は様子が変だったし、なにか違う言葉をかけてほしかったんだろうか?)
P(その後、琴音はずっと気落ちした様子で、俺の言葉にも上の空だった)
―――バッドコミュニケーション―――
―――事務所―――
琴音「プロデューサー、キライなものあるです?」
P「嫌いなもの?」
琴音「はい! 辛いの、怖いの、高いの、いろいろキライなものありますよね?」
P「う~ん……そうだな。しいて言うなら……」
○「犬かな」
△「律子かな」
□「怖い話かな」
P「怖い話かな」
琴音「怖い話……怪談、というやつですね?」
P「まぁそうなるな。昔からそういう怖い系のものが苦手でさ」
琴音「ホラーです? それともスプラッター?」
P「グロいのも好きではないけど、どちらかといえば心霊系……ゴースト的なやつのほうが嫌いだな」
琴音「なるほど、なるほど……んふふ」
P「急にそんなこと聞いてきて、どうしたんだ?」
琴音「いえいえ、なんでもないですよ? ただの日常会話です」
P「……?」
琴音「ところで、これはワタシの大学時代のトモダチのお話なのですが……」
P(それから琴音はじつに生き生きと、多彩な怪談話を披露してくれた)
P(途中でレッスンから帰ってきたかすみちゃんも巻き込まれるように話を聞いてしまい、怪談の苦手な俺たちはガタガタと震えっぱなしだった)
P(それからかすみちゃんを怖がらせて眠れなくさせてしまった責任として、琴音は高槻家にお呼ばれすることになったらしい)
P(意外とイタズラ好きな琴音を家に招いたら、もっと大変なことになりそうだが……事務所の子と親睦を深めることができたのは僥倖だな)
―――パーフェクトコミュニケーション7―――
―――事務所―――
P「ただいまー。お、なんだ、テレビ見てたのか?」
琴音「……プロデューサー。質問なんですけど」
P「うん?」
琴音「あの、ワタシ、とっても長く外国いましたけど、でもニッポンは大好きです」
P「お、おう」
琴音「だから隠さず教えてほしいですけど…………今、NINJAって何人くらいいるんです?」
P「……は?」
琴音「これニッポンの秘密っていうのはわかってます。でもワタシも四条の人間ですから、知っておくべきだと思うんです!」
P「えっとだな……」
○「忍者なんていないんだよ」
△「わからないよ」
□「じつは俺が忍者だ」
P「じつは俺が忍者だ」
琴音「……え?」
P「ほら、忍ぶっていうのは、こっそり隠れるって意味だろ? だからみんなに紛れないといけないんだ」
琴音「……」
P「このスーツも、昔の黒装束の名残でな。でも現代であの恰好は目立つから、これが今のNINJAスタイルなのさ」
琴音「……」
P「いまどき分身とか手裏剣投げたりとかは古いからやらないが、今でも我々は情報戦が得意でな。高木社長に仕えて、プロデュースに役立てているのさ」
琴音「……」
P「こ、琴音? どうした、急に黙って……」
P(さすがに適当吹かしすぎて怒ったか? 仕方ない、冗談っぽく白状して謝るか)
P「あ、あの、ごめ―――」
琴音「す、スゴイですプロデューサー!! NINJAの末裔だったんですね!!」
P「……え?」
琴音「プロデューサーは只者ではないと思っていたです! さすがワタシのプロデューサー! Excellent!」
P「あ、あはは……それほどでも」
P(ま、まさか本当に信じてしまうとは……なんて純粋な子なんだ)
P(これは冗談だってバレたらすごく怒られそうだな。仕方ない、忍者の末裔ってことにしておこう)
P「それにしても琴音、なんというか、いかにも外人さんって感じの質問だな」
琴音「むぅ。たか……御姉様と違って、ワタシはずーっと外国でしたから」
P「貴音といっしょじゃないんだよな? 海外へは誰かと一緒に行ったのか?」
琴音「いいえ、ワタシ一人です。向こうではホームステイでした」
P「それって何歳頃の話だ?」
琴音「3歳とちょっとです。ときどきニッポンに帰ってきてましたけど、ほとんどあっちです」
P「そ、それはすごいな……」
琴音「ですけどステイ先はちょっと面倒な家で、だからワタシ、すぐ一人暮らししました……」
P「……」
○「人に頼るレッスンはしたか?」
△「日本のことは俺が教えるよ」
□「だからそんなに完璧なんだな」
P「人に頼るレッスンはしたか?」
琴音「……え?」
P「なんでも1人でやってしまって、人に頼るってことが苦手になっちゃってないか?」
琴音「そ、そんなの……1人でできたほうがいいに決まってる、です」
P「だけど無理に1人でやろうとして、それで迷子になってるようじゃダメだろう?」
琴音「う……それは……」
P「今をときめくトップアイドルだって、1人でなんでもできる子なんていないさ。みんな助け合って、支えあってるんだ」
琴音「……」
P「今、俺が担当してるのは琴音だけだ。だから琴音のために全力で、なんでもさせてくれよ」
琴音「!」
P「慣れてないなら、これからゆっくり人に頼ることを覚えていけばいい」
琴音「……そんなに頼られたいなら、まぁ、しょうがないです。そこまで言うなら、ちょっとは頼ってあげるかも、です」
P「ああ。ぜひ頼むよ」
琴音「……は、はいっ」
P(琴音はそれから、なんだかそわそわと落ち着かない様子だった)
P(いざ頼れと言われても、どう頼っていいかなんてわからないんだろう)
P(最初のうちは俺がしっかりリードしてやらないとな)
P(そして、そのうち彼女の方からいろいろと頼ってくれるように、俺も頼れるプロデューサーにならないとな)
―――パーフェクトコミュニケーション―――
―――路上―――
琴音「……こ、ここで歌う、ですか……?」
P「ああ。まだ知名度もそう無いし、こういう地味な活動もしていかないとな」
琴音「……アイドルって、こんなこともするんです?」
P「みんな売れないうちは、こういうこともやるもんだよ」
琴音「むぅ……」
P(……あんまりノリ気じゃないみたいだな)
P(どうにかやる気を出してもらいたいが……)
○「琴音にはまだ難しかったかな」
△「終わったらお菓子を買ってやろう!」
□「ちょっと高いところに登って歌おうか」
P「ちょっと高いところに登って歌おうか」
琴音「!」
P「そういえば前に、CDを手売りしてたらギャラリーに囲まれて揉みくちゃにされたことがあったっけ」
琴音「は、はい……」
P「どこか檀上で歌えば、遠くからでも琴音を見てもらえるし、無理に近づいてくる人もいなくなるだろう」
琴音「……はい!!」///
P(琴音は、以前CDを手売りしたときのことを気にしていたのか)
P(どうやら不安を的確に察してやることができたみたいで、琴音はとても嬉しそうにしていた)
P(まったく、それくらい遠慮せずに言ってくれてもいいんだが)
琴音「ですけど、私で大丈夫ですか?」
P「うん? どういうことだ?」
琴音「まだ私、あんまり日本語で歌うの、得意じゃないです」
P「ああ、そういうことか。たしかにイントネーションが気になるところもあるが……」
琴音「もうそれなら、英語で歌ってしまいますか?」
P「え?」
琴音「いちおう、できるはできますけど」
P「うーむ……」
○「いや、日本語でいこう」
△「なら、歌わないでダンスだけする?」
□「よし、じゃあ英語で歌ってみるか!」
P「よし、じゃあ英語で歌ってみるか!」
琴音「……いいんですか?」
P「ああ。今日はべつに収録してるわけじゃないし、好きなように歌ってみようか」
琴音「は、はい!」
P「ただし歌う曲は、すでにみんながメロディを知ってるような『風花』みたいな曲にできるか?」
琴音「できると思う、です」
P「よし! それじゃあ行ってこい!」
琴音「はいっ!」
P(きっと琴音の歌唱力なら、メロディで何の曲かがわかれば、みんな聞き入ってくれるだろう)
P(ぶっつけ本番は少し不安だが、緊張でヘマをする性格でもないし……せっかくなら思いっきり、気持ち良く歌わせてやったほうがいいよな)
P(……かくして琴音の路上ライブは大成功!)
P(琴音はいつもよりはるかに圧倒的な歌唱力で、道行く人々の足を止めさせて魅了してしまった!)
―――パーフェクトコミュニケーション―――
―――ライブハウス―――
琴音「……けっこう、お客さんいる、ですね」
P「そうだな。琴音もけっこう人気になってきたし」
琴音「あれって、ぜんぶ……」
P「ああ、みんな琴音のファンの人たちだな。なんせ、今日は琴音のワンマンライブなんだから」
琴音「そ、そうですか」
P「それに今日は、テレビ局の取材も来てるからな。今日成功すれば、一気に琴音の知名度があがるだろうな」
琴音「……」
P(……あれ? 琴音、震えてるのか……?)
○「その衣装、寒いのか?」
△「武者震いか?」
□「……怖いのか?」
P「……怖いのか?」
琴音「!」
P「なにかあったんだろ?」
琴音「ど、どうして……」
P「ずっと近くて見てるんだ。琴音のことなら、それくらいわかるさ」
琴音「……!」///
P「話してごらん」
琴音「…………笑わない、ですか?」
P「そんなこと、するはずないだろう?」
琴音「……あ、ありがと、ございます」///
琴音「じ、じつは……今日の朝、ライブで……失敗する夢……見たんです」///
P「へ?」
琴音「な、なんですか! おかしいですか! ヘンですか!?」
P「いや、そんなことはないが……ちょっと意外でさ」
琴音「私だって、たまにはそういうこともある、です……」
P「そっか。それでちょっと、弱気になっちゃったんだな」
琴音「はい……」
P「…………」
○「琴音だけが頼りなんだ!」
△「じゃあライブは延期しようか?」
□「なにがあっても、俺が何とかするよ」
P「琴音だけが頼りなんだ! 頼む、がんばってくれ!」
琴音「え……」
P「ライブステージに上がったら俺にできることなんてないし、琴音に頑張ってもらうしか……」
琴音「そう、ですね……私が一人で、がんばるしかない、ですよね」
P「だから、がんばってくれ!」
琴音「……もう、そんなに頭を下げないでください。大丈夫ですから」
P「ほんとか?」
琴音「はい。夢は夢ですから、きっと大丈夫です」
P「そうか、それじゃあ頼んだぞ!」
琴音「はぁい」
P(ステージへ向かう琴音からは、さっきまでの弱気な表情はすっかり消えていた)
P(むしろ出会った当初のような、他を寄せ付けないストイックな表情だ)
P(それから琴音はすさまじい気迫で、完璧なパフォーマンスを見せてくれた)
―――グッドコミュニケーション―――
―――テレビ局―――
P「琴音、収録おつかれさま」
琴音「あ、プロデューサー!」
P「今日もすごく良かったよ。琴音もすっかりテレビ慣れしたな」
琴音「そう、です?」
P「ああ! 以前から落ち着きすぎってくらい落ち着いてたけど、最近は特にな」
琴音「ふふっ……ワタシ、ついにDランクになりましたから。しっかりしないといけないです!」
P「よし、その意気だ!」
琴音「はぁい。……ところで、プロデューサー」
P「ん? どうした?」
琴音「えっと、その……今日、うちに来られますか?」///
P「え……」
○「そりゃあ、もちろん!」
△「いや、それはマズイかな……」
□「それって、琴音の家じゃなきゃだめか?」
P「いや、それはマズイかな……」
琴音「えーっ!? どうしてです!?」
P「いや、琴音もすっかり有名になっちゃったからな。これからは、そういうのには気をつけないと」
琴音「……パパラッチのことです?」
P「ま、そういうことだな」
琴音「むぅ……それなら、これからはプロデューサーとあんまりいっしょにいられない、ですか?」
P「いや、そうはならないよ」
琴音「え?」
P「俺は琴音のプロデューサーだからな。不自然じゃない範囲でなら、俺たちは一緒だよ。ずっとね」
琴音「う……そうですか」///
P「だけど、琴音のことを大事に思ってるからこそ、きちんとケジメはつけないといけないんだ」
琴音「……わかりました。それなら、これから事務所でお話しましょう」
P「ああ。……ところで、琴音の家でなにするつもりだったんだ?」
琴音「べつに、用事はあるわけじゃないです。ただお仕事が終わったあとも……なんとなく、いっしょにいたかったから」
P「そっか、それじゃあ事務所でも大丈夫だな。さ、一緒に帰ろう!」
琴音「はぁい」ニコッ
P(どうにか琴音の機嫌を損ねずに、琴音の誘いをかわすことができたようだ。物わかりのいい子で助かるな)
P(琴音はこれからアイドルとして、もっともっと羽ばたいていける子だ。だからなるべくリスクのあることはしないように気をつけないと)
P(それから俺たちは事務所に戻ると、二人で何気ない会話を楽しみながら、穏やかな時間を過ごした!)
―――パーフェクトコミュニケーション―――
―――事務所―――
琴音「……はぁ~」
P「なんだ琴音、お疲れか?」
琴音「んー、ちょっとだけ、ですけど」
P「今日は朝からずっとスケジュールがキツキツだったもんな」
琴音「はい。でも、忙しいのはうれしいことですよね?」
P「ああ、その通りだ! 忙しくて困るなんて、贅沢な悩みさ」
琴音「そうですよね…………ふわぁ~あ……」
○「ほら、休んでる暇はないぞ」
△「肩くらいなら貸してやるぞ」
□「肩でも揉んでやろうか?」
P「肩くらいなら貸してやるぞ」
琴音「……そうですか? それじゃあ、お言葉に甘えちゃいます……」スッ
P(冗談半分で言ってみたんだが、まさか本当に寄りかかってくるとは……)
琴音「すぅ……」
P(しかも、もう寝息を立ててる……よっぽど疲れてたのか。ランクが上がったおかげで、このところ働きづめだったもんな)
琴音「むにゃ……」
P「琴音、いつもお疲れ様。明日からも頑張ろうな」
琴音「……ぷろりゅーさー……」ニコッ
P(それから琴音が目を覚ますまでのあいだ、ずっと肩を貸してやっていた)
P(俺のほうは肩が凝ってしまったが、琴音は元気になってくれたようだから良しとしよう!)
―――パーフェクトコミュニケーション―――
―――事務所―――
P「ただいまー!」
琴音「あ、プロデューサー! おかえり、です!」ニコッ
P「うん、ただいま琴音。聞いてくれ! じつはこの雑誌からオファーがあったんだ!」
琴音「Wow! この雑誌、ワタシも知ってます!」
P「そうだな。かなり有名な雑誌だもんな」
琴音「それで、取材ですか? それとも撮影です?」
P「撮影だな。表紙にもなるって話だ」
琴音「そ、それはすごいです! Wonderful!」
P「う、うん、そうだな。すごいよな」
琴音「プロデューサー? なにか様子、おかしくないですか?」
P「……琴音。この雑誌のアイドル、どんな格好してる?」
琴音「どんなって…………あっ!!」ビクッ
P「そうだ、じつは今回の撮影は水着でというオファーでな。それで琴音に話を聞いてから決めようと思って」
琴音「あ、うぅ……水着、ですか」
P「琴音、前に水着は恥ずかしいって言ってたから、どうかなって思ったんだけど……聞くだけ聞いてみようかと」
琴音「……このお仕事、すごいんですよね? 表紙にもなるって」
P「それはもちろんだ。これも今まで琴音が頑張ってくれたおかげさ」
琴音「うぅ~……でも……」
P(うーむ、かなり悩んでるな。やっぱり肌を露出するのは怖いのか。どうにか不安を取り除いてあげたいが……)
○「……琴音の水着姿、見てみたいな」
△「水着は勘弁してくれって頼みこんでみようか?」
□「アイドルとして、時には我慢も必要だ」
P「……琴音の水着姿、見てみたいな」
琴音「……はぇ!?」
P「あっ、いや! すまん、つい……」
琴音「ついって……え、どういう……」
P「い、いや、忘れてくれ。ちょっと口が滑っただけだ」
琴音「え、でも……それってつまり、プロデューサーがワタシの……」
P「なんでもない! なんでもないから、気にしないでくれ!」
琴音「……どうしてですか?」
P「え?」
琴音「ワタシが水着なんて、そんなのぜったい似合うはずないのに……」
P「そんなことないさ。絶対かわいい! 俺が保障する!!」
琴音「うぁ、えっと……そんなこと……」///
P「それに似合わないような子を、大手雑誌社がチョイスするはずないだろ? みんな琴音の水着姿が見たいと思ってるんだよ!」
琴音「……プロデューサーも?」
P「あ、ああ……正直、そうだな」
琴音「…………どうしても」
P「え?」
琴音「プロデューサーが、どうしてもって言うなら……ちょっとだけ」///
P「……琴音?」
琴音「み、水着は用意してあるんですかっ?」
P「あ、ああ……一応、そっちに」
琴音「ちょっと、待っててください!」ダッ
P「あ、おい、琴音!?」
琴音「……ど、どうですか……?」モジモジ
P「すごくかわいいよ、琴音!」
琴音「う……変じゃないです?」///
P「そんなことないさ。むしろどこがおかしいと思うんだ、完璧じゃないか」
琴音「…………む、胸とかは?」
P「え?」
琴音「あっ、いえ、なんでもないですっ!!」///
P「……」
○「胸が大きくなる秘密の方法でも教えようか?」
△「そんなこと気にしてたのか、ばかだなぁ」
□「まぁ、ちょっと慎ましいよな」
P「そんなこと気にしてたのか、ばかだなぁ」
琴音「なっ……!」///
P「あのさ、琴音。中学生ぐらいの女の子に胸の大きさを求めるなんて、そんなのかなりの変態だぞ」
琴音「……え? そうなんですか?」
P「それはそうだよ。それに中学生じゃなくても、胸の大きさなんて気にしないよ」
琴音「で、でも、男の人は大きい方がいいんじゃ……」
P「それで好かれて、琴音は満足なのか? 胸が大きいってだけで琴音を好きになるようなヤツに好かれて、嬉しいか?」
琴音「あ……」
P「逆に、胸が大きくなかったから琴音を嫌いになるようなヤツ、こっちから願い下げさ。そうだろう?」
琴音「は、はい! その通りです!!」
P「たしかに胸も女の武器の一つだけど、琴音には他にもたくさんの魅力があるんだ。だから、恥ずかしがることなんてないんだよ」
琴音「そう、ですね……」
P「それに……うーむ……俺の見立てでは、琴音の身体は今にグングン成長すると思うぞ?」
琴音「ほ、ほんとです!?」///
P「ああ。だけど今この瞬間は、琴音が今持ってる魅力で勝負だな。琴音が今だけしか持ってない魅力だって、たくさんあるんだから」
琴音「……えへへ。わかりました! それじゃあ今だけのワタシの力で、お仕事がんばりますっ!!」
P(そうしてかなりやる気になってくれた琴音は、その後、見事に撮影をやりきってくれた)
P(とても自信に満ちた表情で臨んだ撮影は、雑誌社の人にもカメラマンにも大好評の大絶賛!)
P(ちなみに琴音が表紙を飾った号は、通常の二倍以上の売り上げになったらしい)
P(しかし撮影が終わってからというもの、琴音がしきりに俺を海に誘ってくるのには参ってしまった)
―――パーフェクトコミュニケーション―――
―――ライブハウス―――
琴音「なんだか、しっとりしたふいんきの場所ですね」
P「そうだな。琴音は普段、ジャズを聴いたりはするか?」
琴音「聴いたりもしましたし、演奏したこともありました」
P「え、演奏?」
琴音「はい。ジャズは演奏者の技量がとくにいっぱい現れるジャンルですから、けっこう疲れちゃう、です」
P「ええっと……」
琴音「まぁ、今日は聴くだけですから、気が楽ですね!」
P「は、はい、そうですね……」
琴音「……? どうかしたです?」
○「ここに来たのは無駄足だったかな?」
△「ほんとになんでもできるんだなぁって」
□「もう俺いらないんじゃ……」
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