剣士「軌跡の物語…!」(301)

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剣士「冒険学校…!」
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剣士「冒険物語…!」
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剣士「冒険物語…!」(2)
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上記作品の4スレ目となります。よろしくお願いいたします。

 
鍛冶長「…っ」

 
バンシィ『ちっ…!お前ジャない…!もウ一度ッ!!』

剣士「やらせるかぁぁ!!」

…ビュオン!!バスバスッ!!

バンシィ『ぐっ…!』


職人エルフ「お、親父ぃぃっ!!しっかりしろ、親父ッ!!ど、どうして俺を庇って…!!」

鍛冶長「…息子を守るのは、当然じゃろう……」ゲホッ!

職人エルフ「だ、だけど!!」

鍛冶長「馬鹿者…。早く…武器を造らぬか……」

職人エルフ「そんなこと言ってる場合じゃ!」

 
鍛冶長「…馬鹿者が…お前が造らぬで…どうする……」

鍛冶長「ぐっ……!」ズキンッ


職人エルフ「…っ!」


鍛冶長「ダメ…じゃ…。目が…かす…ん……」


…バッ!

魔道士「し、職人エルフさん!止血剤と回復剤です!」

職人エルフ「か、貸せぇっ!」バッ

パァァッ…!

 
鍛冶長「…」

職人エルフ「…っ」

…ポタッ、ポタッ…ドロッ……


職人エルフ「ど…どうして血が止まらないんだ!?」


バンシィ『その傷ハ、闇の傷…。一度刺さレば、呪イとなり、死ニゆくダけよ…!!』


職人エルフ「うっ…うおおおおおっ!!」

鍛冶長「…」

職人エルフ「…嘘だろ、嘘だろ!!親父っっ!!」

鍛冶長「…」

 
バンシィ『…ククッ。予想トは違ったが、戦意喪失で…結果オーライだナ…!』


剣士「…っ!!」


職人エルフ「…おや…じ……」


少女エルフ「鍛冶長…さん……」


魔道士「…っ」



鍛冶長「…」



バンシィ『…エルフ族など、弱き種族ヨ……』ククッ

 
剣士「…っ!」

魔道士「か、鍛冶長さん……」

少女エルフ「なん…で……」ヘナッ

職人エルフ「親父…!本当に…死んじまった…のか…よ……」


バンシィ『…次は、貴様ラの番ダ…!覚悟しロ…!!』パァァッ

剣士「…ってめぇぇぇ!!」スチャッ!

バンシィ『クククッ!!来いっ!!』

剣士「ぬおっ…!」ググッ


魔道士「…」

魔道士「…えっ!?」ハッ

魔道士「ま、待って剣士!鍛冶長さんが!」


剣士「…な、何っ!?」クルッ

 
…パァァッ!

職人エルフ「うおっ!?」

魔道士「か、鍛冶長さんの身体が光って…!」

剣士「…!」

少女エルフ「わっ…!」

バンシィ『…何っ!』


スゥッ…スタッ……

鍛冶長「…」


職人エルフ「…へ?」

少女エルフ「か、鍛冶長…さんが…生き返った…の……?」

魔道士「で、でもまだ地面に鍛冶長さんが倒れて……!分身…!?」

 
剣士「……ち、違う!これは…!げ、幻影魔法だ!」

魔道士「!」

職人エルフ「!」

剣士「だ、だけど…なんかすげぇ、若い……!なんで……!」

少女エルフ「鍛冶長さん…!」


鍛冶長「…最期の力だ。これが、お前に話しかけられる最後の時間だな」


職人エルフ「お、親父…!」

魔道士「凄く若いのは、幻影だから…?」

少女エルフ「か、鍛冶長さん…」


職人エルフ「…はは、なんだよ親父…。すげぇ…かっけぇじゃん……」ヘナッ


鍛冶長「せめて最期くらい、あの頃の恰好でお前に背中を見せてやりたかったんだ」

 
職人エルフ「お、親父っ……!」

鍛冶長「…俺が殺されたからって、誰も恨むんじゃねぇぞ。これは、仕方なかったことだ」

職人エルフ「…っ」

鍛冶長「…お前の役目は終わっていないんだ。しっかりしろ!」

職人エルフ「…」

鍛冶長「お前の血で、その武器を打ち、この戦いを終わらせる礎となれ」

職人エルフ「…親父」

鍛冶長「俺はちょっとばかり先に逝っちまうが、他のみんなによろしくやってくれよ」

職人エルフ「…」


鍛冶長「それと…剣士!」


剣士「!」

 
鍛冶長「…俺の造った大剣、大事にしろよ。お前が思ってる以上に、それはスゲーやつなんだからよ!」

剣士「は…はは!わかってるよ、もちろんだ!!任せてくれよ…!!」


鍛冶長「…」ニカッ

…スゥゥ…


職人エルフ「…き、消えちまう…!?消えるな、消えないでくれ親父っ!!」

鍛冶長「また、一緒に酒でも飲もうな…」

職人エルフ「…っ!」


パァァ……

……プチュンッ……


職人エルフ「……っ!」

 
剣士「ジイちゃんっ…」

魔道士「鍛冶長さん…」グスッ

少女エルフ「…っ」


バンシィ『…馬鹿ナ奴よ。エルフ族は逆ラうだけアって、バカの集マりってコトだな…』ククク


剣士「て、てめ…!」

職人エルフ「てめぇだけは、てめぇだけは絶対に…ゆるさねぇっ!!!」ゴッ!!


バンシィ『!』


剣士「お……」

魔道士「!」

少女エルフ「おじちゃん…!」

 
職人エルフ「…絶対に許さねぇぞ」

職人エルフ「俺の全てを賭けて、俺の血で、究極の作品…見せてやるよ!!」

職人エルフ「…それが今の俺の役目なら、やってやるよ!!そうだろ、親父っ!!」

グググッ…ビュオッ!!


ガチィィィィイインッ……!!!ボワッ!!!


職人エルフ「俺の最高傑作…!親父以上のものを…見せてやるっ!」

ガチィィインッ!!!


バンシィ『…!』


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 】
 
 
…ブシュッ!

バハムート「がはっ…!」

フラッ…ガクッ…!


アリオク『…哀しい姿だな、竜族の王よ。膝をついたのはどれくらいぶりだ?』

バハムート「…くっ!」

アリオク『逆らえば、どうなるかなど分かっていただろうに』
 
バハムート「…っ!」


剣聖少将「…俺らと格が違ったバハムート」

剣聖少将「それを簡単に打ち返すアリオク…。魔界と俺らの世界で、こんなに差があるというのか……」

 
アリオク『…バハムートよ、いい加減従え。今ならまだ、許してやるぞ』

バハムート「何を言う…。貴様を討たねば、再び犠牲が増えるだけだ!」

アリオク『完全に人間に心奪われたか。人間共を屈服させれば、それで戦いは終わるのだがな?』

バハムート「…人も我らも、変わりはしない。生活があり、それを奪うのは間違っているだろう!」

アリオク『強者が弱者から自由に奪って何が悪い』

バハムート「…それは本当の強者ではない!」


アリオク『弱い者を守ってこそ強者…とでもいいたいのか?』

アリオク『バカが。だったら、今…こんな風になっているわけがねーだろうが』

アリオク『俺が強かったから、こうなった。…ははははっ!』


バハムート「ならばそれを、打ち破るまで!」

 
アリオク『…何が打ち破るだ』

アリオク『我らの兵は、欲望のままに暴れ、その欲を満たした者は我らだけではない。人間も同じことよ』

アリオク『その欲の前に、心失った者、身体失った者、その全てに対して君は償えるのか?』

アリオク『…事が起きてから反逆しても遅いんだよ。バハムートくん?』


バハムート「…っ!」


アリオク『だったら、このまま制圧したほうがいいとは思わないか』

アリオク『まぁ、こちら側の世界を知って、俺のモノにしたいと思ったわけだが…』

アリオク『人間が使えそうな生き物だったのは幸いだ』ニヤッ


剣聖少将「!」

 
アリオク『なぁ…剣聖少将よ』クルッ

アリオク『降伏すれば、もう命を奪うことはしないぞ?』

アリオク『今のトップは貴様だ。貴様がそれを受ければ、戦争は終わるんだぞ…』


剣聖少将「それを受け入れたら…どうなるか教えてもらいてぇな」


アリオク『そうだな…。生かすという前提のもと、奴隷というものになるか……』クク


剣聖少将「!」

剣聖少将「…」

剣聖少将「…ふっ、笑わせるな」


アリオク『…』


剣聖少将「人間の行く末が、そんな悲惨な未来だとしたら、俺はこう言わせてもらう」

剣聖少将「…悪いが、人間の未来のために俺と一緒に死んでくれ…とね」


アリオク『…それが返事か』

 
剣聖少将「お前に屈するくらいなら、最後の最後まで戦い抜くさ」


アリオク『…どいつもこいつも愚かな奴ばかり!』

アリオク『ならば、俺の前に…ひれ伏せさせてやる……!』パァァ


剣聖少将「この道しか、ねーんだよ…!」

バハムート「そう。どちらかが滅ぶ以外、決着がつくことはないということだ!」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
――――【 南方大陸 第二避難所 】
 
…ガチィィィンッ!!!…

パァァッ…!!

職人エルフ「で、できた…!」

職人エルフ「出来たぞ…!出来た!出来たぞぉぉぉ!!!」


剣士「!」
 
魔道士「!」

少女エルフ「!」


バンシィ『…ッ!』

 
職人エルフ「…どうだ。見てるか、親父!!」

職人エルフ「やってやったぞ…!造ってやったぞ!!」


剣士「そ、その武器たちは…!」


…ギラッ!ゴォォォッ…!!


職人エルフ「竜族とやらの炎の核の魔力、俺のエルフ族の魔力…」

職人エルフ「燃え上がる、至極の武器たちだ!」

職人エルフ「…竜炎拳鋼、竜炎の杖っ…!」


剣士「…!」


職人エルフ「こいつはちっとばかし、強いぜ……?」ニヤッ

 
少女エルフ「…お、おじちゃん…!凄いよっ!!」


職人エルフ「ははは、あたぼうよ!」

職人エルフ「見たかよ…親父。これで…文句の一つも言わないで逝けるだろ……!」バッ!


鍛冶長「…」


剣士「…魔道士!1本はお前の武器だろう…。受け取ってくれ」

魔道士「…はいっ」コクン

職人エルフ「…持って行け。世界も変えられる、最高の一品だ」

…スッ


バンシィ『…渡さセるか!闇の波動っ!!』クワッ!

剣士「ちっ…!邪魔するなー……!」スチャッ

 
…バキィッ!!

バンシィ『ぐアっ!?』

ズザザァ…!


剣士「…おろ?」

魔道士「あっ…!」

少女エルフ「…武道家!乙女格闘家ぁ!」


武道家「いよっ!ようやく、周りも落ち着いたぜ!」

乙女格闘家「二人で、相当倒してきたよ!」


剣士「…さすがだぜ、武道家。頼れる相方だな」

武道家「…おうよ!」

 
職人エルフ「…全員来たか!」

職人エルフ「お前らの分もある。改めて受け取ってくれ!魔道士、武道家、乙女格闘家!」

職人エルフ「ここにあるのが極上の一品…!最高の武器たちだ!」


…ギラギラッ…!ゴォォォッ…!!


魔道士「はいっ…!」

武道家「な、何だこりゃ…!」

乙女格闘家「真っ赤な…ナックル…?」


武道家「剣士、この武器が……」

乙女格闘家「…アリオクを倒すための武器なの?」


剣士「…そう。これは、竜の核を埋め込んだ、至極の一品だそうだ」

 
武道家「…そうか。完成したんだな」

武道家「…」

武道家「……えっ?」ハッ

武道家「…って、剣士!?そこに鍛冶長さん…倒れてないか!」


鍛冶長「…」


剣士「…っ」


武道家「…」

武道家「……そ、そうか」


剣士「…」

武道家「だったら…尚更、アイツをぶっ飛ばさないといけねえじゃねえか…!!」ギリッ!!

 
職人エルフ「…お前ら、受け取ってくれ。そして、あいつを…倒してくれ…!」

職人エルフ「頼む……!お前らしか…出来ないんだ……!」


武道家「…わかりました。有難く、受け取らせて貰います」

乙女格闘家「うん…!」

魔道士「…職人エルフさん、改めて受け取ります!」
 
 
…スチャッ


魔道士「…っ!」パァァ!!

武道家「お…おぉぉっ!!」ゴォォッ!

乙女格闘家「す、凄いっ!!」ゴァッ!!

 
職人エルフ「…さぁ、頼んだからな……。俺は…疲れた……」フラッ

少女エルフ「あっ!おじちゃん!」


…ドシャッ


職人エルフ「…」スゥッ


少女エルフ「…えっ?」

少女エルフ「ね、寝ちゃった……」

少女エルフ「…」

少女エルフ「!」ハッ

 
剣士「…」 
 
ザッザッザッ…スッ

…キラッ……


剣士「…それと、黒魔石の欠片。核が溶けて、ようやく戻ってきたか」


バンシィ『…ッ!』


剣士「…さぁ、バンシィッ!!今度はお前が、恐怖に怯える番だ!!」

武道家「竜の力…見せてもらおうか」スチャッ

魔道士「身体に竜の炎の力が……!」パァァッ

乙女格闘家「みんなの想い…この一撃にぶつけるんだからっ!」スチャッ

 
バンシィ『…そレがどうシたぁァぁぁァッ!!!』グワッ!!

ゴッ…ゴゴゴゴッ……!!

バンシィ『いクらデでも…カかってくるがイい…!』

バンシィ『闇の波動ッ!!』

ゴッ…ズオォォォォオッ!!!


武道家「…ふぅぅ!闘気が…竜の覇気へ変わっていく……!」カッ!

乙女格闘家「…竜気…!」ババッ!!


スゥゥゥ…!


武道家&乙女格闘家「発っ!!」

…ゴバァァァアアッ!!!…

 
バンシィ『!!』

ゴッ!!!…ズドオオオオォォォォオンッ!!!


バンシィ『ぐッ…グぅぅゥうッ!!』バチバチッ!

バンシィ『こ、コれハ…紛レもなク…竜族の……ッ!!』


魔道士「…まだっ!」パァァッ

魔道士「極…っ!竜炎……っ!」パァァァッ!!!


バンシィ『…ッ!!』


魔道士「……魔法ぉぉぉっ!!」


ゴッ…ゴォォッォォォオオオッ!!!!

 
バンシィ『……闇突槍ッ!!』ババッ!!

…ゴォォッォオオオッ!!!

魔道士「…この炎、バンシィの闇なんて、照らして散らせるから!!」

ゴオオォォォオオオッ!!!!

バンシィ『グッ…グオォォォッ!!!』

魔道士「消し…飛べぇぇぇっ!!!」

…グンッ!!

バンシィ『ぬグゥッ!?』

バンシィ『な…なンて…魔力……!!負け……!』


ピカッ…!ズドォォォォォンッ!!!


魔道士「…どうだっ!」ビシッ!

武道家「ひゅーっ!かっちょいー!」

乙女格闘家「やるー!」

 
ズザザザァ…!


バンシィ『…な、ナンて炎ヲッ…!グッ…グオォォッ…!!』ジュゥゥ!

バンシィ『か、身体が溶けるッ!!再生が…追イつかナい…ッ!!』ドロッ


ザッ…ザッザッザッ……


バンシィ『!』ハッ


…スチャッ

剣士「…最初の余裕はどうした、闇の帝王さんよ」

バンシィ『よ…ヨせ…!今、お前の攻撃ヲ受けて…黒魔石を刺サれたラ…!!』

剣士「…恐怖ってやつが、少しは分かるか…!」ググッ

バンシィ『や、ヤめロオォォォォォォッッ!!』

 
剣士「ジイちゃんや、みんなの命を奪った敵だッ!!」

剣士「闇は…闇の中へと消えてなくなれぇぇぇぇっ!!」

グググッ…ビュオッ!!!

バンシィ『ヒ…ッ!!』


……


…ズバァァンッ!!…


……


バンシィ『…!』

剣士「…」

 
…ドロッ…ボロボロッ…!ボトッ!

バンシィ『か…身体が崩レる!!ま、マだ俺ハ……ッ!!』

剣士「…じゃあな、闇の王」スッ

…ブシュッ!!!

バンシィ『ガッ……!ガァァァァッ!!!』グネグネッ


少女エルフ「ば、バンシィが凄い暴れてる!何を刺したの!?」

魔道士「…黒魔石。エルフ族や私たちの命と引き換えに生成されたもの…」

少女エルフ「…!」


魔道士「本当なら、剣士や今の武器だけで彼らの身体は崩れさせることはできる。」

魔道士「…だけど、彼らはアレで終わりじゃないの」


少女エルフ「ど、どういうことですか?」

 
魔道士「バンシィは、長い時間を経てまたこの世界へと復活するんだって」

魔道士「だから、そうならないように黒魔石で少しでも長い時間を封印するの……」


少女エルフ「…!」


バンシィ『…ぐ、グアアアッ!!』

バンシィ『か、必ズ…いツかマタ…ココへ戻って…再び……闇の世界トして……!』


剣士「…だったらその度に倒してやるよ」

剣士「おめーが目を覚ました時、新たな勇者が、お前を倒すさ」


バンシィ『く…クソォォォッ!!』

バンシィ『ガッ…!ガァァァアッ……!!』

バンシィ『……ア゛ッ……!』

 
パァァァアッ……!!

…バシュンッ……!!!

ヒュッ…!

…カチィンッ!…カランッ…カランカランッ…


魔道士「あ…!」

武道家「消えた…?」

乙女格闘家「ってことは…!」

少女エルフ「か…勝ったんだ…!!」


剣士「…」

ヒョイッ…ギラッ…!!

剣士「…黒魔石に封印された死神…か」

 
魔道士「剣士、それ…どうするの?」


剣士「あのバンシィは、この黒魔石に封印されてるんだろう」

剣士「だから、これは出来るだけ人目がつかないようにしないとな……」


魔道士「…どこかに置いておくっていっても」

剣士「ないんだよなぁ。どこか、安全な場所もあれば……」


…ムクッ

職人エルフ「……け、剣士」


剣士「…おっ」

剣士「…職人のオッサン…目が覚めたのか」


職人エルフ「剣士…ありがとうな」

剣士「!」

 
職人エルフ「…倒してくれたんだろう。親父も…喜んでるだろうよ…」

剣士「…お礼の言われることじゃない」

職人エルフ「…」

剣士「…」


職人エルフ「…なぁ、剣士」

剣士「…何だ」

職人エルフ「頼みがあるんだ…いいか?」

剣士「…なんだ?」

 
職人エルフ「寝ながら…少し…話が聞こえてたんだ。その黒魔石は…俺に任せてくれないか?」

剣士「ん?」

職人エルフ「この地に、かの太陽の祭壇のように祭壇を造り、それを隠そうと思う」

剣士「…太陽の祭壇って」


職人エルフ「…」

職人エルフ「そうだな…。少し、時間をいいか」ムクッ


剣士「あ、あぁ……」


職人エルフ「あの太陽の祭壇は、東西どちらのエルフ族も崇めてきたのは知ってるよな」

職人エルフ「だが、その実態は…魔界との扉を開くためのモノだったのかもしれん」

職人エルフ「俺の歳じゃ、あれがそうだったのかは正直な話、わからないのが本音だ」


剣士「…」


 
職人エルフ「だけど、こんなことを知ってれば…あの祭壇なんかとっくに壊してた」

職人エルフ「…俺らが元凶のトリガーみたいなもので、こんな言葉も信用できないだろう」


剣士「…そんなことは」


職人エルフ「…いいんだよ」

職人エルフ「だけど、一つ聞いてもらいたい」

職人エルフ「今の俺らは、色々とダメージが大きい。何か、拠り所が必要だと思う」

職人エルフ「お前の頼みで、その祭壇でコレを守ること」

職人エルフ「そんなことでも、今の俺らにとっちゃ目標になる」

職人エルフ「信頼できないなら、断ってもいい」

 
剣士「…いや、信頼できるとかの問題じゃないと思うんだが」

職人エルフ「そ、そうか…。すまないな……。勝手だった……」

剣士「あ…!い、いや違うぞ!そういう意味じゃない!」

職人エルフ「…なんだ?」


剣士「あんたらは、元々西方大陸の民だ。それと、東方大陸出身者だっているはず」

剣士「なのに、ココでそれを建て守るということは、故郷へ戻れないってことだぞ?」

剣士「そんな話…。信頼とか云々の前に、エルフ族にとってはそっちのほうが重要な問題じゃないのかと…」

 
職人エルフ「…俺は構わないさ」

剣士「い、いや…。お前がよくても他のやつが……」

職人エルフ「それに、俺らの故郷はもう…燃やされて何も残っていない。東西どちらもな」

剣士「っ!」


職人エルフ「新たな場所で、ゼロからやり直すのも悪くないと思う」

職人エルフ「俺以外にも、賛同してくれるやつはいるはず」

職人エルフ「だからこそ……。どうだろうか」


剣士「…」

剣士「……」

剣士「………わかった。いいぜ」


職人エルフ「!」

 
剣士「ほら、任せるぞ」ヒュッ

職人エルフ「…いいのか」

…パシッ

剣士「当たり前だ。信じるに決まってるだろ。理由とかはいらねぇし、話はこれで終わりだ」

職人エルフ「…ありがとう」

剣士「…」ニカッ


少女エルフ(…なんで、おじちゃん急にそんなこと…)

少女エルフ(…)

少女エルフ(…あっ!)

少女エルフ(そっか、おじちゃん……)

少女エルフ(鍛冶長さんがいなくなって、自分がみんなを引っ張る立場なんだって……)

 
魔道士「それじゃ、剣士…!」

武道家「急ごうぜ。バハムートや親父さんが、俺らを待ってるはずだ!」

乙女格闘家「私たちの力で、アリオクを…倒すんだよね」グッ

剣士「あぁ…最終決戦だ…」コクン


職人エルフ「…気を付けて行けよ。生きて…戻ってこい。世界を救って来い!!」


剣士「おう!ちーっと面倒だが、軽く世界でも救ってくるわ!」

魔道士「も~…面倒とか言わない!」

武道家「ははは!軽く世界を救ってやるってか!やっぱ好きだぜ、そのノリ!」

乙女格闘家「いざ、決戦へ行かんっ!」


剣士「じゃあ、みんな。また、ジイちゃんには挨拶に来るから。絶対に」

職人エルフ「…わかった。待ってるぜ」ニカッ

 
剣士「…行くぞ、みんな!」

武道家「おう!」

魔道士「行こう!」

乙女格闘家「うんっ!」


タッタッタッタッタッタッ………

…………
………



職人エルフ「…」

職人エルフ「…頑張ってくれよ。剣士、武道家、魔道士、乙女格闘家…」


少女エルフ「きっと勝つよ!だって…剣士たちだから…!」

職人エルフ「…そうだな」フッ

少女エルフ「うんっ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆様ありがとうございます。投下いたします。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 】


…ボトッ!ゴシャァッ…!!


バハムート「…っ!」

アリオク『…次はどこがいい?左腕か、右足か、左足か!』

バハムート「我の四肢を失ったところで、どうにかできると思うな!」

アリオク『くくく…。はっはっはっは!』

バハムート「…くっ!」


剣聖少将「…ば、バハムートの右腕を簡単に!」

 
アリオク『…さて、そろそろその首…刎ねさせてもらう』

アリオク『俺の攻撃を受け続け、血を流し、腕を落とされ、羽を切られ、よく耐えた』

アリオク『だが、次の一撃は…お前は耐えられないだろう…!』


バハムート「…さすがだ、アリオク」

バハムート「魔界を制した実力は、やはり本物だったということ…か」


アリオク『今更、媚びたところで許さんぞ…!』

バハムート「誰が媚びるものか。ただ、実力の有る者とし…褒めているのだ」

アリオク『…ほう』

バハムート「我とて、戦いの道で生きてきた。その力も、羨ましくも思う…」

アリオク『ククッ…』

 
バハムート「だが、貴様は強すぎるが故に…。戦いしか知らぬ故に…。」

バハムート「幸せというものが、相手を支配することしか知らぬ。それはまた、不幸ということ」


アリオク『…何だと』


バハムート「…貴様が生まれた事は、必然であったのかもしれん」

バハムート「我々は、平和の中に生き、いつの間にか他に目をやることを疎かにしていた」

バハムート「…改めて、お前のような男が生まれたことで、それを認識させられた」


アリオク『…ッ!』ギリッ


バハムート「お前がいなかったら、それに気付くことはなかっただろう」


アリオク『…一体、何の話を!』

 
バハムート「…平和だと思っていた魔界の果ては、未だに殺し合い渦巻く世界であった」

バハムート「温かい場所があれば、冷たい場所もある」

バハムート「お前は、そんな冷たい場所から這い上がり、我々に気付かせてくれたというのだ」

バハムート「…いずれ、そんな冷えた世界も温かさに満ち溢れた世界となればいいと思っている」


アリオク『…戯言を!』


バハムート「…戦いでしか生きられぬ、戦いでしか己を表現できぬ冷えた世界…魔界の果て」

バハムート「そこで生まれたお前は、支配することしか幸せを知ることができなかった」

バハムート「……すまなかった」


アリオク『……ッ!』

 
バハムート「…幼き頃より、お前は愛を受けずに……」


アリオク『…煩い。煩い…!煩い、煩いっ!!煩いぞっ!!!』

アリオク『バハムートォォォォォ!!!』


バハムート「…」


アリオク『貴様を消し…!魔界のすべても…燃やし尽くしてやろうか…!!』


バハムート「!」


アリオク『俺は、気が変わるのは早いんだ……!!』

アリオク『貴様だけじゃない。貴様の愛する者!俺を見下す者!ただの気分で生かしていた全てを…!』

アリオク『全て…無にしてやる……』グワッ!!

 
バハムート「…させると思うか!」

アリオク『…させて貰う。俺は誰だと思っている?』


バハムート「…ガァァッ!!」

ボッ…ボォォォォオオッ!!


アリオク『無駄なこと!」

…バシュウッ!


バハムート「…爪の真空波ならば!」ブンッ!

ビュッ…ビュオオオッ!!!


アリオク『無駄だっ!!』

…ガキィンッ!!

 
アリオク『…火炎も効かぬ、爪の真空波も無駄、尾の鱗も、俺には傷すらつかぬ!」

アリオク『竜族の技は、全て俺の前では無意味だ!!」


バハムート「無意味だろうと、やらないよりは意味がある!」


アリオク『まだそのような口を利くか!』

アリオク『貴様…!刎ねられた頭だけで、そこから世界が消える様を見ているがいいッ!!』

アリオク『…はぁっ!!』パァァッ!

ビュッ…ビュオオオオォオッ…!!!

バハムート「…ぐっ!」


ビュッ!!…ガキガキィンッ!!


バハムート「むっ…!?」

アリオク『何っ…!弾いただと…!?』

 
バハムート「今のはどこから……」ハッ


…ザッ!

剣士「…待たせたな、バハムートォ!!」

武道家「今、戻ったぞ!」

魔道士「バハムート…さん。武器、あなたの炎の核を宿らせてもらいました!」

乙女格闘家「力が溢れてくるよ!」


バハムート「お、お前たち…!」

剣聖少将「お前ら…!」

アリオク『…ゴミ共め、戻って来たのか』


剣士「…口の悪い。ゴミかどうかは、やってみなくちゃわからねーだろ?」ニヤッ

 
アリオク『…そうだな。だが、貴様らは一瞬で砕け散ることになる!ハァッ!!』パァァ

ビュビュビュビュッ!!


バハムート「いかん!」

剣聖少将「また無詠唱の…!」バッ!


武道家「…甘いぜ」

…ババババシィッ!!!シュウゥッ…


アリオク『…!』


武道家「…どうだ!」

…ギラッ!ゴォォ…!


アリオク『…その燃ゆる武器!まさか、エルフ族と竜族の核の……!』

 
剣士「…さぁ、反撃の時間だ」

武道家「アリオク…!」

魔道士「覚悟っ!」

乙女格闘家「いくよっ!」

…スチャスチャッ!!

パァァッ…!!


剣聖少将「いけるのか……!」

バハムート「…」


アリオク『…何をしようと、無駄なこと!』

 
武道家「竜気ィィィ……!!」パァァ!!

乙女格闘家「……発っ!!」

ゴッ…ゴォォォォオッ!!!


アリオク『…小賢しいっ!!竜族の気などッ!!」

アリオク『はぁぁっ!』クワッ!!

…カッ!!ズバァァンッ!!


武道家「…き、気合だけでかき消すのかよ!だけどな…続くぜ!」


魔道士「…極っ!!竜…炎……!!魔法ぉぉぉっ!!」

ボッ…!ボオォオォォォオオオッ!!!!


アリオク『ぬっ!』

 
魔道士「竜の炎だけじゃない、貴方が忌み嫌うエルフ族の魔力の籠った炎っ!」


アリオク『…何が籠った炎だっっ!!!』グワッ!!

アリオク『我が腕の一振りで、この程度消してくれる!!』

スッ…ビュオッッ!!!…バシュウゥッ…!
 

魔道士「…くっ!」


アリオク『相手にすらならん!!』


剣士「…だと思うか」ボソッ


アリオク『ッ!』ハッ!

 
剣士「…またその首を、とらせてもらうぞ!!隙ありぃぃっ!!」

ビュオッ!!

アリオク『…ふんっ!!』ビュッ!

ガキィインッ!!ビリビリッ…!!


アリオク『ふんっ…。貴様の一撃とて、俺には効かぬ』

アリオク『…』

アリオク『…ぐっ!?』ズキンッ!

…ポタッ!


剣士「!」


武道家「おっ…!」
 
乙女格闘家「…あ、アリオクの手から血が!」

魔道士「やっぱり、鍛冶長の造った武器だけはアリオクは苦手なんだ…!」

 
剣士「…純粋な力勝負じゃ負けねェぞコラァ…!!』ギリギリ

アリオク『ク、クソ人間が…!』グググッ


…タァンッ!!

武道家「…敵は一人じゃねえぞ!アリオク!」

乙女格闘家「竜気を、もう1度!」パァァッ!

魔道士「好機は逃さない!極っ!!竜ぅぅぅ……っ!!」パァァッ!!


アリオク『…っ!!』


剣士「…これで終わりだ、アリオク!」

 
アリオク『…こ、この程度……!』

アリオク『これしきのことで、俺がやられるわけねぇだろうがッ!!!』

アリオク『……ガアアアアッ!!!』

ゴッ…ブワアァァアアアッ!!!


武道家「!?」

魔道士「何っ!?」

乙女格闘家「む、紫色のオーラが…!?」


剣聖少将「こ、これは…!」

バハムート「いかん!魔力のシャウトだ!魔力の防護壁が間に合わぬ…!」


ゴッ…ゴォォォオオオオッ!!!キィィィィィィインッ!!!!!!

 
武道家「ぬあっ…!」ビリビリ!!

魔道士「きゃあああっ!」ビリビリッ

乙女格闘家「み、耳がぁぁぁ!頭がっ…!!」ビリビリッ!!

剣聖少将「な、なんだ…身体が……!」ビキビキッ

バハムート「ぬぐっ……!」バチバチッ!

剣士「…ぐああああっ!!」

…ビリビリビリッ…!!!


アリオク『……ぷはぁっ!!』

アリオク『はぁっ!はぁーー……!!』ギロッ


…ガクッ!

剣士「あ゛…ぐっ……!か、身体が……!」

バチッ…バチバチッ……!

 
アリオク『…俺の魔力をオーラとし、声とし、それを波動とする…!』

アリオク『それを受け、すぐに立てる奴はいないだろう…!』

ザッザッザッ…ガシッ!

剣士「うぐっ…!」


アリオク『しゃべることも難しいだろ?どうだ、気分は……』

ブンッ…バキィッ!!

剣士「がっ…!」


アリオク『…すぐには殺さん。ジワジワと…死んでいくがいい……!』

バキッ!バキィッ!!ゴリッ…ビキビキッ!!

剣士「がッ……!」ブシュッ!

 
魔道士「け、けん…し…!」ズキンッ

武道家「くっ、くそおっ……!」バチッ

乙女格闘家「う…動けない……!」ビリッ

フラッ…ググググッ…!


アリオク『…貴様らは、そこで傍観しているといい!』

アリオク『この男が、どのような最期を迎えるかをな…!!』


剣士「……へ、へへっ」


アリオク『…何が可笑しい』


剣士「…ぺっ」

…ベチャッ

 
アリオク『…』

剣士「…ぶわぁ…っか……」

アリオク『…今すぐ殺すッ!!!』バッ!!

剣士「…!」

アリオク『…死ねェェッ!!』

…ビュオッ!!!


剣士「ちっ……。ここ…ま…でか……」


武道家「け…けん……!」

武道家「…ッ!」


……
………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

剣士「…俺の背中、お前にしか任せられないからな」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
………
……

 
武道家「うっ…!」

武道家「うおっ……!」

武道家「うおおぉぉあぁぁぁぁっ!!!」パァァッ!!

…ゴォッ!!!!ブァッ!!


乙女格闘家「ぶ、ぶどう…か……!?」

魔道士「ぶどう…か…!」


武道家「うっ…!うおおおおらああああっ!!」

武道家「アリオクゥゥゥッ!!!」

ダッ…ダダダダダダッ!!


アリオク『!』

 
武道家「剣士を…離せコラァァァ!!」ビュッ!!

…バキィッ…!!


アリオク『なっ…!?』


ズザザザァ……!!



パッ…ドシャアッ!

剣士「げ、げほっ……!」

武道家「…剣士!大丈夫か!!」バッ!

剣士「お…おま…え……どうして……」

 
アリオク『貴様ァ……!』

アリオク『俺の波動を受け、そのように立てるとは…。一体何を……!』


武道家「…」パァァ


アリオク『身体から光だと……?』ハッ

アリオク『…』

アリオク『…なるほど、そうか』

アリオク『その身体から溢れているオーラ。エルフ族の…!』


武道家「…」パァァ


アリオク『魔族の血をその身体に…だったか……!』

アリオク『ク、ククッ……』

アリオク『こ、この大剣といい…!人間との相性は、悪くも抜群ということか……』イラッ

 
魔道士(…エルフ族の魔力と血の覚醒ってこと?)

魔道士(で、でもそれじゃ体内に宿した枯渇症を防いでいた魔力が……!)


剣士「くっ…!お、おらぁぁっ!!」ググッ…ムクッ

武道家「おっ…」

剣士「…武器の回復のおかげで、俺も何とか立てる。くっそ…あのバカ大声出しやがって…」クラッ

武道家「うはは、気合が足りん!」

剣士「うっせ!」


武道家「はは……!」ズキッ

武道家「…っ!!」ズキンッ!
 
武道家「…さ、さぁ剣士。俺も加わって、アリオクをぶっ倒すぞ!」バッ!


剣士「当たり前だ!」

 
アリオク『…何を。再び波動の前に倒れるがいい!』スゥゥゥ!


武道家「やらせるかよ!竜気ィィ…発っ!!!」ビュオッ!!

…ビュオオォオッ!!…

アリオク『竜の気力砲など、効かぬと言っている!』

ブンッ!!バシュウッ!!
 
 
武道家「…からの二段構えだ!隙ありだぜ!」ダッ!

ダダダダッ!!ビュッ!バキィッ!!


アリオク『…遠距離攻撃からの、近接に突っ込む速度は速い!』

アリオク『だが、竜の気を宿したとはいえ…俺にはただの打撃じゃダメージの一つもないぞ?』ククッ

 
武道家「…」ニヤッ

武道家「…衝撃波ぁぁぁっ!!」

ゴッ…!!ゴバァァァッ!!!

アリオク『…ぐおォっ!?』ビキビキッ!


武道家「…体内に直接、竜気とエルフ族の魔族…俺の気を打ち込んだ!」

武道家「いくらお前でも…体内に食らえば!」

武道家「…ッ!!」ズキッ!!

武道家(…い、いてぇっ!気力を発する度に…!く、くそったれ……!!)


ズザザザァ…!

アリオク『…油断した!今の攻撃は、褒めてやろう!』

 
…ビュオッ!!

アリオク『ぬっ!』ピクッ

ビュッ…ガキャアンッ!!!

剣士「…っち!防がれた!」

アリオク『闇討ち…!そう易々とやらせると思うか…!』 
 

ビュッ…ビュビュビュッ!!!


アリオク『…むっ!』ハッ


ドゴォンッ!!ドゴドゴドゴォンッ!!


武道家「遠距離からでも、俺は竜気攻撃の援護は出来る…!攻撃の手を休めるかよ!」パァァッ

モクモクッ…!

アリオク『無駄に連携を……!』

 
剣聖少将「い、いいぞ…!」

バハムート「よく…あそこまで……」

魔道士「わ、私たちも早く援護を…!」ググッ

乙女格闘家「身体の痺れ…収まってよ……!」ビリビリ


ダダダッ…!!

剣士「アリオクゥゥゥ!!」ビュッ!!

アリオク『ぐっ!』

…ガキィンッ!!…プシュッ…

アリオク『ちっ…!』ズキンッ


剣士「血が出るなら、効いてるんだろう!まだまだぁぁっ!!」ビュビュッ!!!

アリオク『小賢しい!!!はぁっ!!』パァァッ!!

ズドォォンッ!!

剣士「ぬあぁっ!!」

 
ズザザザァッ……!!

剣士「げ、げほっ!無詠唱で火炎だの、爆発だの、魔法を…!」

タタタタッ…ガシッ!

武道家「剣士、大丈夫か!」

剣士「あぁ…。くっそ、隙があるようで完璧だ…!強い……!」


アリオク『…ふん』

アリオク『貴様らでは、俺には勝てん!!」

アリオク『なぁ…元魔王?貴様なら、俺の実力を知っているものな……?』ニタリ


バハムート「…っ!」


剣士「…ごちゃごちゃと!!とにかく、お前を倒せばいいんだろうがぁぁ!!」ダッ!!

ダダダダダダダダッ!!!

 
アリオク『近づかせるものか…!』パァッ!!

ヒュボヒュボヒュボッ!!


剣士「うおっ!!」

バスバスバスッ!!…ズザザッ…!!


武道家「剣士!」 

剣士「ってて…!あのくっそ早い魔法…!連打が苦手な俺じゃ太刀打ちできねぇ…!」

武道家「…俺なら対抗できるが、アイツに直接ダメージを与えることができねぇ…」

剣士「連携をとるにも、今の俺らじゃ限界がある…」

武道家「くっ……!持久戦になったら、確実に負ける…!」

 
アリオク『…持久戦?』

アリオク『その前に、貴様らは消し炭になって消え失せるぞ……?』パァァァァッ!!

ゴッ…ゴォォォオッ………!


剣士「…で、でっけぇ火炎魔法っ!?」

武道家「やっべぇぞ!逃げねぇと…!」

剣士「だ、だけど逃げたら後ろにいる他の軍人や冒険者たちが巻き添えになる!」

武道家「俺らじゃ止められねぇよ!」

剣士「…切り裂けるか、やるしか」チャキッ

武道家「…そうか、火炎程度なら…」


アリオク『…ククッ。無駄なこと……!』

ゴッ…ゴゴゴゴゴッ………!!!!


剣士「…で、でけぇっ!!なんだアレは…!!」

 
武道家「お、おいおい…。洒落にならねぇぞ……!」

剣士「…ッ!」


アリオク『…消し飛べ、貴様らァァァ!!』

ビュッ…ビュオオオオオォォォオッ!!!


剣士「くっ…!」スチャッ!

武道家「とにかく、やるしかないか!!」スッ!!


魔道士「け、剣士っ!!伏せて!!」パァァァッ!!

乙女格闘家「少し身体のしびれが回復した!援護するよ!」パァァッ!!

バハムート「援護、行くぞっ!!」スゥゥッ!!


剣士「!」

 
魔道士「極…竜炎魔法っ!!!」

バハムート「ガァァァアアアッ!!!」

乙女格闘家「竜気…発っ!!!」


ゴッ…!!グオオオォォォオオオオッ!!!!


アリオク『何っ!!』


ズッ…ズドォォォォオオオンッ!!!!!

グラグラグラッ!!

パラパラッ…!


魔道士「や…やった…!?」

バハムート「…見事」

乙女格闘家「相殺~~!!大きい攻撃は、私らで援護するよ!」ビシッ!

 
剣士「お、お前ら……!」

武道家「はは、頼もしい仲間だぜ……」


アリオク『…』ギリッ


剣士「…アリオク!何が魔王だ?何が魔界の覇者だ」

剣士「俺ら人間の数人と、竜族1匹に敵わないなんて、とんだ笑い王だな!」ハッハッハ!!


アリオク『…貴様ァ…』


剣士「…いくらでも撃ってこい。俺らには頼れる仲間がいるんだ」

剣士「俺一人じゃ勝てなくても、俺の仲間と一緒に戦えば…!お前なんて相手にならねぇ!」

 
魔道士「…」コクン

乙女格闘家「…えへへっ!」ビシッ!

バハムート「…」

武道家「…ふっ」


剣士「…さぁ、まだやるのか!アリオク!!」



アリオク『…』

アリオク『……』

アリオク『………』

アリオク『…………なぁ、剣士』



剣士「…あ?」

 
アリオク『…そこのクソ竜に、俺の生まれは聞いたんだろう』

剣士「聞いてるぜ」


アリオク『なら、俺が求めるのは絶対勝利。圧倒的な勝ち。例え、何をしても……だ』

アリオク『そういう考えがあるのは分かってくれるな』


剣士「…何が言いたい」


アリオク『…だが、今。お前らのようなイレギュラーな存在によって…俺の考えは崩された』

アリオク『俺の予定じゃあ、適当に遊び、殺し、絶望を見せ、お前らを支配し…勝利を得るつもりだった』


剣士「…」


アリオク『…こうして抵抗され、俺の絶対的勝利は、ただの勝利へと落ちそうなわけだ』

剣士「…何が勝利だ。勝つのは俺らだ!」

アリオク『ククッ…!きちんと聞いてなかったのか?』

剣士「…あ?」

 
アリオク『俺が望むのは…絶対的勝利!圧倒的な勝利!』

アリオク『それを崩されるくらいなら、ただの勝利などいらぬ…。そういう意味だ!!』


剣士「は?どういうー……」


バハムート「アリオク!貴様、まさか!!」バッ!


剣士「ば、バハムート?」


アリオク『…ククッ』


バハムート「いかん!剣士、奴を止めろ!!今すぐ何でもいい!攻撃の手を休めるな…!!」


剣士「な、何っ?」

 
アリオク『…』ニヤッ

アリオク『…ただの勝利なら、俺は圧倒的な勝利を選ぶ!それが俺の…選ぶ道だッ!!』

フワッ…ヒュオオオオオォォォオッ!!


剣士「げっ…!」

武道家「空へ…!」


アリオク『…全て、空からの渾身の一撃でこの一帯を…いや!』

アリオク『貴様らの住む、この大地…大陸の全てを、灰としてくれるわッ!!!!』


剣士「な…何だとっ!?」

剣士「…お、おいっ!!待てコラァっ!!」


武道家「アリオク、てめっ……!!」

 
剣士「…っ!!」

剣士「そ、そうか!あの時と同じ、また空から…!」

剣士「ならばっ!!これしかねぇっ!!!」


グググッ…ビュオォォオッ!!


武道家「おま、武器を投げ…!け、剣士っ!あの時とは格が違う相手なんだぞ!!」

剣士「…どのみち動かなきゃ、殺されるだろうが!」

タァンッ!!ヒュオオオオッ…!!


武道家「お、おい待て剣士…!」

武道か「く、くそっ!あの飛翔には俺は追いつけねぇ!援護できねえぞっ!!」

 
…ザッ!!


バハムート「…武道家よ」


武道家「バハムート…?」


バハムート「空への戦いなら、我が力を貸すべきだろう」


武道家「…!」

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆さま有難うございます。投下いたします。

 
ヒュオオオォォォオッ……!


剣士「だらあああっ!!」

アリオク『…ほう、ここまで追ってくるか』


…ガシッ!スチャッ!

剣士「…空中での武器の扱いも2度目だ。慣れたもんさ」ニヤッ

剣士「相変わらず踏ん張りもきかねえけどな!てめぇの攻撃くらいは、止められるぜ!」


アリオク『…馬鹿かお前は』

剣士「何!」

アリオク『…ふんっ』


ヒュッ…ヒュオオオッ!!!


剣士「げっ…!更に上に!」

 
アリオク『クク…。貴様がもう1度ここまで来るまでに、この一帯は廃墟となってるだろうな』


剣士「…く、くそったれぇぇ!!」


アリオク『ハハハハッ!!』

アリオク『ハハ……』

アリオク『…』

アリオク『…な、何!?』


…ビュオッ!!ガシッ!!フワッ…

剣士「へっ?身体が浮い……」


バハムート「…無茶苦茶な奴だ。背中に乗れ。傷ついた羽根だが、まだ飛ぶことはできる」バサバサッ

武道家「うひょおおっ!はえぇっ!」


剣士「ば、バハムート!武道家!」

 
アリオク『…き、貴様らッ!』


バハムート「…アリオクよ。この者たちの光に、我は賭ける」

アリオク『馬鹿がっ!いくら貴様らが手を組んだところで!』

バハムート「…それはどうか分からん。だが、可能性があることに賭けない者こそが馬鹿者だろうが」

アリオク『…っ!』


剣士「は、はは…!竜族の背中、案外乗り心地がいいじゃないか!」

武道家「アリオクよぉ…!覚悟しろよっ!」


アリオク『面倒な奴らが…!!』

 
魔道士「……け、剣士たちが!」

乙女格闘家「空で、竜族の背中に乗って戦ってる…」

剣聖少将「…なんつう光景だ」


魔道士「…あ、あの二人ならきっと大丈夫だよね…!」

乙女格闘家「魔道士ちゃん、"きっと大丈夫"なんて…魔道士ちゃんらしくないね!」

魔道士「!」

乙女格闘家「きっと、じゃないでしょ。絶対大丈夫だよ!」

魔道士「…そっか。そうだよね、絶対大丈夫だよね!無敵の二人だもん!」

乙女格闘家「うんっ♪」


剣聖少将(…どんな状況でも、信じられる相方を得た二人か)

剣聖少将(いい奴らを嫁に出来るんだな、あいつらは。生きて戻ってこい、バカ二人組が…)

 
ヒュオオオオォォオッ……!!


剣士「…空中戦を本格的にやることになるとはな!」

武道家「景色がぐるぐると…!ははは、こんな景色、誰も見た事ないぜ!」


バハムート「…この不安定な足場で、踏ん張りをきかせているとは」
 
バハムート「お前たちは既に、人として秀でた存在となっているな…。素晴らしく思うぞ」


剣士「…んなもん、生まれた時から最強の二人組よ!」

武道家「ま、お前と俺じゃ何度か戦ったが俺のほうが勝ち越ししてたけどな!」

剣士「…あんだとうっ!?お前が負けてるっつっただろうが!」

武道家「あぁん!?負けてるのはオメーだろうが!」


バハムート「…やれやれ。こんな時でもケンカか…。天下一品の馬鹿者だな、お前たちは」

 
アリオク『…ごちゃごちゃと!』

アリオク『この攻撃を…止められるかっ!!』グググッ

ゴッ…ゴゴゴッ……!!

バチバチバチッ…!!


剣士「な…なんだあれ……!」

武道家「…闇色の球にに、電撃が走ってやがる…!どんどんデカくなってるぞ!!」

バハムート「…あれを地上に受けては、本当に都市部一帯だけでなく、大陸毎吹き飛ぶな」

剣士「げっ……!」


バハムート「…少し下に陣取る!空中で相殺せねば、地上に影響が出る!」

バハムート「我らの一撃で、あれを粉砕する!」

バハムート「そのまま、あいつを吹き飛ばすぞ!!!」

 
ヒュオオオッ…!!バサバサッ!!


剣士「わかった!」

武道家「俺らの腕に、本気で世界が掛かってるな!」

剣士「俺らに世界の運命がかかってるんだぜ!?俺らが強いところを、世界に見せてやろうぜ、武道家ァ!」

武道家「おうよォ!当たり前だァ!!」


バハムート「この位置で、アレを迎え撃つ!準備をしてくれるかっ!」


剣士「…」チャキッ

武道家「…」スチャッ

バハムート「…」スゥゥ

 
アリオク『…力比べか、面白い…!貴様らごと、全てを吹き飛ばしてやるわ…!!」

ゴォォォ…バチバチッ…バチッ…バチバチバチッッ!!!!



バハムート「ぬぅぅぅぅッ……!!」スゥゥッ!!

剣士「いーーーっ…!せっーーー…!」ググッ

武道家「竜ゥゥゥゥッ……!!」パァァァッ!!


バハムート「……ッ!!」スゥゥゥゥッ!!

剣士「のぉぉぉっーー……ッッ!!」グググッ!!

武道家「気ィィィッ……!!」パァァッ!!!



アリオク『闇に堕ちろっ…!クソ共がぁぁぁっ!!!』

…バッ!!

ゴッ…!ギュオオオォォォォォオオオッ!!!!

 
バハムート「ガァァァァァッ!!!」ボッ!!

剣士「せぇぇぇいいぃぃやああああっ!!」ゴッ!!

武道家「はぁぁぁぁぁっ!!!」ビュッ!!


…ゴォォォッォオオォォォォオオッ!!!!…


…ギュオオォォォオォオオオォッ!!!!!…


アリオク『…ぬ、ぬううぅぅぅ!!!』


剣士「うらあああああっ!!」

 
ズッ…ズズズッ…スド゙オォォォォオォォォオオンッ!!!!!!!


剣士「…ぐ、ぐうううっ!!」グググッ

武道家「お、俺ら3人で受け止めるのがギリギリ…!な、なんて力だ…!!!」グググッ!


バハムート「…こ、このまま押し返すのだ!!」ギリギリッ!!

バハムート「押し返せば、自らの溜めたこの魔法球と我らの攻撃となる!」

バハムート「いくらあいつでも…耐えられるまいっ!!」ググググッ!!!


アリオク『その状態で俺の攻撃と押し合うとは…!!」ビリビリ!


バチッ…バチバチバチッ……!!

ギュウウオオォォオオオッ!!!ゴォォォオオオォォオオッ!!!

 
剣士「あああああぁぁぁっ!!」

武道家「おおおおぉぉぉっ!!」

バハムート「ぐううぅぅぅっ!!」


ググッ…ググググッ……!!


アリオク『…ッ!』ギリギリッ!!

アリオク『…ま、負けられないんだよ…!』

アリオク『お前らのように、甘い世界で何も知らない…クソ共には……!』

アリオク『ま……負けられるかぁぁぁぁっ!!!』クワッ!!!


ギュッ…ギュオォォォオオォオォオオオォオオッ!!!!!!

 
剣士「!?」グンッ!!

武道家「な、なんだっ!?急に…重くっ……!」グラッ!!

バハムート「や、奴の力がまだ増大している…!!それほどに……!!」


バチッ…バチバチィッ!!バチバチッ!!


アリオク『うおおおぉぉぉぉおおっ!!!』グググッ!!


ゴッ…ゴゴゴゴゴゴッ……!!!


剣士「っ…!!」

剣士「な、なんて…重い……!だ、だが…負けられないんだ……!」

剣士「お前のような…奴には……!!絶対にぃぃぃいいっ!!」

 
アリオク『…ぬぅぅぅうッ!!』

剣士「…あぁぁぁああッ!!」


アリオク『…ッ!!』

アリオク『……ッ!!!』クワッ!

アリオク『はっ…はぁぁぁああああ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!!!!』カッ!!!!!


…グッ…グググッ……!


剣士「う、うそだろ!?まだ重く…!!だ、ダメだ……!」ビリビリ!

武道家「ま、負ける……!」バチバチッ!!

バハムート「な、なんという…憎悪!なんという重さ…!!」ギリギリッ!!!

 
アリオク『俺と戦えたことを最高の土産とし、大地とともにこの世から消え失せるがイイッ!!!』

…グンッ!!!


剣士「も、もう…ダメ……だ……ッ!」

武道家「これ以上の…気力が……!」ズキズキッ!!

バハムート「ダメ、か……!」
 

剣士(…だめなのかッ!!)

武道家(……だ、だが…!こ、この一撃を受ければ…世界は…確実に終わる…!)

剣士(世界が…終わる…!?)

武道家(俺たちが思い描いた…未来は……)

剣士(…もっと、みんなで笑い合いたかった…)

武道家(…もっと、みんなで冒険をしたかった…)

 
アリオク『…これで最期だッ!!ぬおああああっ!!』

…グンッ!!!ググググッ…!!!

バハムート「……終わりかっ……」



剣士(…笑いあいたかった?冒険を"したかった"?)

武道家(…そうじゃないよな)

剣士(…そう。したかったなんかじゃない)

武道家(…そう。するんだよ)

剣士(…俺らは自由な冒険者。自由気ままに生きてこそ!)

武道家(その通りだ!俺らの我がままは、誰にも止められねぇってな!)


剣士「…武道家ぁぁっ!」

武道家「…剣士ぃぃっ!」

 
剣士「…ば、バハムートォォ!!まだ終わりじゃねぇぇ!!諦めるなぁぁっ!!」

武道家「こ、このまま押し切るんだぁぁぁぁぁっ!!いくぞぉぉぉおっ!!」

バハムート「…お、お前たち!!ここに来て…!!なら、我とて…!!!」クワッ!


アリオク『…小賢しいわぁぁぁッッ!!!』ゴッ!!


…ググッ…ググググッ…!!グッ……ッ……


アリオク『…ッ!?』

アリオク『な、何っ!?押し込めないだと…!』


剣士「…ま、負けねぇ!!負けられねぇんだっ!!!」


アリオク『…な、何っ…!』

 
剣士「…だらぁぁぁぁぁあああああぁぁぁあっ!!!!」

武道家「…うおおぉぉぉぉおおぉぉおおおぉっ!!!!」

バハムート「…うぬぉぉぉおぉぉおおぉぉぉおっ!!!!」

ググッ…グググググッ……!!!!


アリオク『な、なん…!ぐっ、ぐおおおっ!!!」ググッ


剣士「…これで、終わりだアリオクッ!!!」

アリオク『…こ、こんな馬鹿な…!馬鹿なっ!!!」

剣士「消えろぉぉぉぉぉぉおっ!!!」

アリオク『ぐ…ぐおおおおおっ!!!負けぬ、絶対に負けられぬ!!』

剣士「あぁぁぁぁぁっ!!!消し飛べぇぇぇぇえっ!!」

アリオク『…ッ!!!』

 
剣士(…お前を倒し、全てを終わらせる!)

剣士(今、ここで戦っていることは…運命だったんだと改めて思う!)

剣士(俺じゃなきゃ出来なかった。武道家じゃなきゃダメだった)

剣士(魔道士がいないとどうにもならなかった。乙女格闘家は前向きで、武道家の力になってくれた)

…ググッ!!

剣士(…そ、そうだ…!)

剣士(俺一人を犠牲にして、全てを救えるなら……!)

剣士(大戦士兄、鍛冶長が望んだ平和な未来を掴めるなら……!!)

剣士(全てを捨てて…!!俺は…勝つんだぁぁぁああああっ!!!)

 
武道家(こ、これで…全てが終わる…!全てが決まる…!!)


…ドクンッ!!!!


武道家「…」ブシュッ!!

メキッ…バキバキッ……!!

武道家「…ッ!!」

武道家(…こ、こんな時に…!ここに来て…!す、全て…絞り切った…のか……)

武道家(わ、わずかな魔力さえ失って…身体が…中から崩れていく……!!)

バキッ…!!ブシュッ…!!


武道家(…あ、あと少しなんだ!まだだろ、俺ッ!!)

武道家(まだ、どこかに蓄積した力は…あるっ!!指先、髪の毛、どこからでもいい…!)

武道家(全てが終わった瞬間、消し飛んでもいい!絞り出せぇぇぇっ!!!!)

 
バハムート(…何という男たち。何という人間たちだ…!!)

バハムート(全てを犠牲にし、世界を守ろうとしている……!)

…パァァッ!!

バハムート(…それに応えずして、何が竜の王よ!我とて、全てを…出し切るっ!!)


バハムート(奴のために失われた…仲間たちよ……!)

バハムート(よ、ようやく……!)

バハムート(ようやく、お前たちに、ようやく…笑えて会えそうだ……!!!)


…ドクンドクンドクンッ…!!!


バハムート(勝利を掴み取る!!!勝たせてもらうぞ…アリオクッ!!!)

 
アリオク『…ッ!!』


剣士「あぁぁぁぁあああぁぁああっ!!!」


アリオク『…く、クソったれぇぇぇぇえ…!!」


剣士「…ぬっ、ぬうぅぅうおおおおおおっ!!」


ググッ…ググググッ………!!


アリオク『…なっ…!』


剣士「…これで終わりだ!!アリオクゥゥゥッ!!!!」

剣士「このまま…空の彼方へ…吹き飛びやがれぇぇぇえええええっ!!!!」

 
ピカッ……!!



アリオク『そ、そんな……バカ……な………!』



剣士「…っ」

武道家「…っ」

バハムート「…ッ」

 
………ズッ………

……ズドォォォォォォォオンッ!!!!……

…………

……

…………


……


………
……

……

 

…………
……

……………………
……………
………


……

………………
…………
……
…………



…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 

……
………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

バサッバサバサバサッ…ズズゥンッ……


バハムート「…地上へ着いたぞ」


…ガクッ…

剣士「…ご、ごほっ!げほげほげほっ!!」

武道家「…がはっ!」ゲホッ!!


魔道士「け、剣士っ!武道家ぁっ!」

乙女格闘家「二人とも…!」

剣聖少将「…よく、戦ってくれた…!」

 
剣士「…あ、アリオクは…俺らの攻撃で…確実に吹き飛んだ……」

剣聖少将「あぁ…!見ていたぞ…。よく…やってくれた…!!」


武道家「ははっ…」

武道家「…」

武道家「げ…げほっ!!げほげほっ!!」

武道家「ぐっ…!うぐっ……!」

フラッ…ドシャッ……!


剣士「…武道家?」

魔道士「武道家!?」

乙女格闘家「ぶ、武道家っ!?」

 
武道家「ま、参った……」

武道家「ぜ、全身が…砕けてやが…る…。も…う……」

武道家「ゆ…び……さ……」

武道家「…な…い……」

武道家「…」ガクッ


乙女格闘家「あっ…」

剣士「お、おい…!おいっ!!武道家ぁっ!!」

魔道士「ど、どうしたの!?まさか、枯渇症が…!」

乙女格闘家「……」ヘナッ


剣聖少将「…触るな!今、武道家の身体は魔力枯渇症で崩れかかってる!」

剣聖少将「エルフ族の魔力も、己の気力も、全て絞り出したんだ…」

剣聖少将「今、下手に刺激を与えたら身体がバラバラになるかもしれん…!」

 
剣士「ん、んなこといったってよ!!」

剣聖少将「分かってる!緊急治療の準備はすぐに進めさせてもらう、それまで手を出すな!」

剣士「…っ!」


バハムート「ふむ…魔力枯渇症だったか…」

バハムート「世界の為とはいえ、激痛を隠し、最後まで戦い抜くとは……」

ザッザッザッ…スッ


剣士「な、何をするつもりだ…?」


バハムート「…」

…ブシュッ!ポタッ…ポタッ……


剣士「…ち、血を!?」

 
バハムート「…我の血ならば、一時的に回復はするだろう」

バハムート「だが、これは到底治療と呼べぬもの」

バハムート「…魔力枯渇症は、魔界にもある病。こればかりは、我らとて治せるものではないのだ」


剣士「…っ」

魔道士「そんな…」

乙女格闘家「武道家っ……」

剣聖少将「…」

 
…ポタッ…パァァッ!

武道家「…」


剣士「武道家の身体に…光が……」

魔道士「…今は助かったんだね」

乙女格闘家「よ…よかったよぉ……」グスッ

剣聖少将「…」


バハムート「…」

バハムート「…さて、彼を治療をせねばならぬだろう。我が運ぶのを手伝うとしよう」

バハムート「あとは、この戦いを鎮めるために立ち回らねばならぬだろうしな」

 
剣聖少将「待ってくれ、バハムート」

バハムート「どうした?」


剣聖少将「…アリオク、バジリスク、デュラハン、バンシィ…そしてバハムート」

剣聖少将「魔族を率いるマスターたちは、全て倒されたものと思っていいのか」


バハムート「…魔族を率いる実質のマスターはこれで倒された」

バハムート「だが、世界各地に飛ばされた魔族には、それに匹敵する者がまだいるはず」

バハムート「既に知っているようだが、個体種族は黒魔石による封印術が有効だ」

バハムート「…我は、この戦い自体を収められるように各地へ回るつもりだ」

バハムート「だが、上位魔族たちや戦争の終結の中心となるのは…人間たちにしてほしい」

バハムート「それが本当の、この世界の戦いの終結となるだろうからな」


剣聖少将「…わかった。すぐに情報共有につとめる」

バハムート「頼む。まだ、もう少しばかり戦いは続くだろうがー……」

 
…ズドォォンッ!!!!…


バハムート「!」 
 
剣士「!?」

魔道士「何!?」

乙女格闘家「い、今の音は!?」クルッ



『…ぁ゛…ぁ゛ぁ゛……う゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛お゛ッ……!』



剣聖少将「…おいおい」

剣士「なっ…!」

魔道士「う、ウソだ…」

乙女格闘家「そ…そんな……!!」

 
ォォ…オォォォォ……ォォ………!!!


アリオク『あ゛ぁ゛…ぁ゛ぁ゛ぁ゛……!』

アリオク『う゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!!』ゴッ!!!


剣士「嘘…だろ……」

バハムート「…!」

魔道士「なん…で……」

乙女格闘家「剣士と武道家が…倒したはず…なのに……」

剣聖少将「まだその命、尽きていなかったというのか……!」


アリオク『…』ゼェゼェ

アリオク『…ッ』ギロッ

 
剣士「…っ」チャキッ


アリオク『…』

アリオク『……』

アリオク『………』

クルッ…


剣士「…あ?」


ザッザッザッ…

アリオク『…ッ』パァァ


剣士「ま、魔法か?だけど、今までより遥かに弱い感覚だな…」

剣士「あいつ、一体何を……」

 
アリオク『…』パァァッ

…バチッ!バチバチッ……!!

ギュオオオッ……!!


剣士「…そ、空に穴が!」

魔道士「何あれ!?」

乙女格闘家「…なんか、転移装置に似てる?」


バハムート「…魔界への扉だ」

バハムート「恐らく、我らのいた居城へと戻るのだろう……」


剣士「…居城って!あいつ、回復したらまた襲ってくる気じゃねえだろうな!」


バハムート「…いや、それはない」

剣士「何で分かるんだよ!」

 
バハムート「…感じぬか?」

剣士「え?」

バハムート「…あいつの鼓動を。命を。もう…長くはない…」

剣士「…!」


アリオク『…ッ』フラッ


タァンッ…!


ギュッ…ギュウウゥゥウンッ……!!バチバチッ…!!


…プチュンッ…

 
剣士「…」

剣士「…ま、魔界へ帰ったのか?」


バハムート「…奴の向かった先は、居城の…そうだな。あそこだろう」

剣士「どこだ?」

バハムート「…そっとしておいてやろう。恐らくあいつが知った、最初で最期の温かさだ」

剣士「…?」


バハムート「それより、我々の仕事はこれからだ」

バハムート「世界の戦いを止めるよう、動かねばならないからな」

バハムート「そして…若き冒険者たちよ。全てが落ち着いたら…話をしたい」

 
剣士「…戦いたいってか?」

バハムート「お前が望むのなら」

剣士「…冗談だよ。そっちは軽く考える程度にしておくぜ」

バハムート「ふっ……」


武道家「…う、うぐっ…?」ムクッ


剣士「!」

魔道士「!」

乙女格闘家「!」

 
バハムート「…血が効いたようだ。目を覚ましたか」


剣士「…武道家、聞こえるか?お前はこれから治療院だ。しばらく、休みだぜ」

武道家「じ、冗談だろ…?」

剣士「ん?」

武道家「…き、聞こえてたっつー…の。これから世界の戦いを本当に止めに行く…ってな…」

剣士「お前な」

武道家「…竜の血は本当に…効くぜ…?おら、もうピンピンだ!」バッ!

タタタタッ!クルクルクル……シュタッ!


剣士「武道家、お前は……」


武道家「ま、待ってくれ…!ごほっ…!」ゲホッ
 
武道家「…これ以上、延命が出来ないのもわかってる…」

 
乙女格闘家「…っ」

魔道士「武道家…」

剣士「…」


武道家「エルフ族の魔力、竜の血。」

武道家「本当なら、動くことすら敵わなかっただろうが…こんな風になったのはお前の言う…運命じゃないのか」

武道家「…まだ終わりじゃないっていう以上、俺も一緒に連れてってくれ」

武道家「どうなろうと、俺は俺の我がままで行きたい。お前が俺の立場だったら…どうする」


剣士「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」

武道家「…」

 
剣士「…そう言われたら、俺は許可をせざる得ないじゃねえかよ」

剣士「だけどな、お前の行動を決めるのは俺じゃないだろ」


武道家「…」

武道家「…乙女格闘家。」

武道家「お前には、辛い想いをさせるって分かってる。だけど、最後の最後まで…戦わせてくれないか」

武道家「…頼む」バッ


乙女格闘家「…」

乙女格闘家「…ん!」スッ


武道家「…ん?」

 
乙女格闘家「…キスして!」


武道家「…」

武道家「…はい?」


乙女格闘家「…そしたら、許してあげる」


武道家「な、なんでだよ!」

乙女格闘家「…許さない」

武道家「いやいや、あとでならいくらでもするから…。そ、そんな時じゃねーだろうが!」

乙女格闘家「…許さない」

武道家「なんでだよ!」

 
乙女格闘家「…戦いの中で私と一緒に生きていくっていうのなら、」

乙女格闘家「その戦いの中で、繋がっていたいの。」

乙女格闘家「武道家の我がままがそれなら、私の我がままだって聞いてくれてもいいよね…」


武道家「うっ…」


剣士「…はっはっはっは!」

剣士「断れないぜ、武道家ちゃんっ」ニヤァ

剣士「さぁほらほら、いってこいよ!ほらほらぁ!」

剣士「ほーらほらほら、ほーらぁ!」ニタニタ


武道家「…」

武道家「…ふんっ!」

…バキッ!

剣士「ぬがぁっ!」

 
武道家「…はぁ」

武道家「あれほど、人前でってのは…嫌だっつったのによ……」

トコトコトコ…ギュウッ…

乙女格闘家「え、えへへ…。」

武道家「…」スッ

乙女格闘家「んっ……」グスッ


バハムート「…やれやれ。こんな戦争の最前線の中で、抱き合うとは」


剣士「ったく、しょうがねぇよなぁ。さてと、俺はー……」クルッ

…ギュッ!!

剣士「おあっ!?」

魔道士「…へへっ。けーんし♪」

剣士「…ま、そうなるか」

ギュウッ……!

 
剣聖少将「…」

剣聖少将「…戦争してる中心で、抱き合うか普通。ったく、座ってじっくり鑑賞してやるよ」ジロジロ


バハムート「人間というのは、面白い生き物だな」

剣聖少将「…いや、あいつらがバカなだけだろ」

バハムート「ふっ…」


剣聖少将「…改めて、お前が味方になってくれてよかったと思う。世界を代表して、礼を言う」

バハムート「何を。お前の作戦が完璧だっただけのこと。それに押され、圧倒して寝返っただけだ」


剣聖少将「…」

剣聖少将「あ~あ…。これから忙しくなるな……」


バハムート「…まだ、全ては終わってはおらぬからな」

 
剣聖少将「…」

剣聖少将「…さて、そこのバカどもっ!いつまで抱き合ってんだ!」

剣聖少将「世界平和は、まだまだなんだ!早く、手伝え!」


剣士「…分かってるよ!」

魔道士「は、はいっ!」

武道家「…少しだけ、外でも悪くないかもと思ってしまった。オメーのせいだぞ」コツンッ

乙女格闘家「えへへ~!あとでネ!」


剣聖少将「…さて、改めてお前たちには…世界のために走り回ってもらう!」

剣聖少将「覚悟はいいな?」

 
剣士「…誰にモノ言ってんだか。俺らは黄金!光り輝く、世界の太陽だぜ!」


剣聖少将「…なら、さっさと行って来い!」

剣聖少将「世界のために、その身体…もう1度借りさせてもらうからな!」


剣士「おう!」


バハムート「…」

バハムート「…そうだな」

バハムート「剣士、武道家、魔道士、乙女格闘家……」


剣士「…どうした?」

武道家「ん?」

魔道士「どうしたんですか?」

乙女格闘家「何かにゃ?」

 
バハムート「お前たちは、我が言うことでもないだろうが…」

バハムート「その武器を手に入れ、それを扱う技術を持ち、人より秀でた存在となっている」


4人「…」


バハムート「それは己の力とし、本当の平和への礎となってくれるはずだ」


4人「…」


バハムート「…だが、過信するな。そして、溺れるな」

バハムート「過ぎた力は、己を滅ぼす。まぁ、言わずともお前たちは…分かっているだろうがな」


剣士「…いや、忠告ありがとうよ。これからが本当の戦いになるかもしれないんだ」

剣士「その言葉、しっかり受け止めておくよ」


バハムート「うむ…」

 
…クルッ

剣士「…」

剣士「…ごほんっ!」

剣士「じゃあ…えっとな!みんな…いいか!!」


魔道士「…」

乙女格闘家「…」

武道家「…」

 
剣士「ちょっとばかし俺らはまた、世界を平和のために戦いにいくとするっ!」

剣士「…出発しようぜぇっ!!」ビシッ!


魔道士「うんっ!」

武道家「おうっ!」

乙女格闘家「おーっ!」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 

……
………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 魔界 アリオクの居城 】
 

ガチャッ……!


フラフラ…

アリオク『…』

…ドシャッ!


???「…」

…スッ

 
アリオク『ぅ゛…ぐっ……』ブルッ


???「…アリオク」


アリオク『…だい…ま…じゅ……」


大魔術中佐「…今、ベッドに運んであげるから…」


アリオク『…』


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…パチッ

アリオク『…』


大魔術中佐「…気が付いた?」

アリオク『ここ…は……』モゾッ

大魔術中佐「…大丈夫」

…ギュウッ

アリオク『…』


大魔術中佐「…負けたのね」

アリオク『…』

 
大魔術中佐「…人は強いの。貴方が考える以上に」

アリオク『…』

大魔術中佐「…」

アリオク『ど…どうして…お前は………』

大魔術中佐「…全てを受け入れたかって?」

アリオク『…』


大魔術中佐「…最初は、怖かった」

大魔術中佐「それに、私だって一人の女性。あんなこと……」ブルッ

大魔術中佐「だ、だけど…貴方が時々心を許して話をしてくれたこと」

大魔術中佐「そして、その話がどれだけ哀しいことだったか、今も思い出せば涙が出る……」

大魔術中佐「貴方の過ごしてきた全てを知って…。それが私の心に響いたから。それだけ……」

 
アリオク『…ッ』


大魔術中佐「…うん。分かってる。本当は、人と誰かを愛する…本当に愛し合うには時間が必要だと思う』

大魔術中佐「だけど、その相手を一瞬で知ることだって、一瞬で好きになってしまうことだってある」

大魔術中佐「…それが、たまたま貴方の言葉だった」


アリオク『…』


大魔術中佐「…アリオク」


アリオク『…寒い…冷たい……』ブルッ


大魔術中佐「…大丈夫」ソッ

 
…ギュウッ

アリオク「母…さん……」

大魔術中佐「…」

ギュウッ……


アリオク「…」

アリオク「……あったかい…」


大魔術中佐「…」


アリオク「…」


大魔術中佐「…お疲れ様」


アリオク「…」コクン

 
大魔術中佐「…」

大魔術中佐「…そうだ。もし、あなたの子供が生まれたらね…」

大魔術中佐「魔道士っていう子がいるんだけど…。その子みたく…立派に育って欲しいなって」

大魔術中佐「その名前をとったりしても良いかなって思うんだけど…。どうかな……?」


アリオク「…」


大魔術中佐「…うん。そっか」


アリオク「…」


大魔術中佐「…わかった」


アリオク「…」


大魔術中佐「…お休み、アリオク」

 
アリオク「…」



大魔術中佐「…」



アリオク「…」



大魔術中佐「…」



アリオク「…」


…………
………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
……魔族と人類の大陸戦争。

これは、この世界と魔界において、永く刻まれる歴史の一つになった。


魔界の王、魔族の王とも呼ぶべき、アリオク。 
 
彼の存在が消えたことで、世界の平和が訪れると思っていた。

しかし……。

そのことで、魔族の統率と均衡は大きく崩れ、統率のとれなくなった魔族は自由に暴れ始めたのだ。

その問題を食い止めるべく竜族の王バハムートと剣士たちは世界を走った。


また、それに感化された冒険者や軍人たちの士気も高まり、

彼らも傷だらけの身体を押して、魔族の残党たちへと立ち向かっていった。

 
剣士たちは、エルフと竜の武器を用いて活躍し、やがて世界の混乱は少しずつ落ち着き、

それを見た世界の人々は「軍と冒険者がいれば事態の収束はあっという間だろう」。

そう、信じていた。


……だが……


既に魔族も生き延びようと、この世界へ留まろうと、

洞窟の奥底、海の底、森の奥、遺跡の奥、あらゆる場所へと姿を消していった。


繁栄種族も多く、時間がたてば彼らも魔族として人間へ立ち向かうと睨んだ中央軍は、

「それではいずれ大陸戦争が再び起こる。歴史の繰り返しとなる」

と考え、軍が冒険者へ協力を仰ぎ、「魔族」つまり「魔物」の討伐依頼を実力の段階毎に再設定を行った。


戦争を経てか、以前より冒険者の質も高まり、かつ魔族との戦いの機会が増えた冒険者たちは、

戦争以前よりも冒険者の地位が確固たるものとなっていった。

 

……
………

…そして、少しばかり時が流れ…

………
……

本日はここまでです。
また、6月11日より開始し、気がつけば丁度5ヶ月目となりました。
そして、次回最終回となります。

お付き合い下さった皆さまへ、有難うございました。

皆様ありがとうございます。
最終回、投下いたします。



……
…………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 中央軍本部 】


バハムート「…世界へと散らばった魔族は、これ以上はどうしようもないのだな…」

バハムート「こんなことになって、本当に申し訳ない…」


剣聖少将「…仕方ないことだ。冒険者としては仕事も増えて喜んでいるみたいだがな」

剣聖少将「新種の魔獣やらのモノは高く売れると、ハンティング稼業も増えてるとかなんとか…」


バハムート「同胞の多くは、世界で未だに隠れ、暴れている魔族は共存は出来ないと思う」

バハムート「繁栄種族も多く、これから幾度と問題も起きるだろう。」

バハムート「いくら冒険者や軍の質が上がり、魔族の皮などが素材として価値があがろうとも…事故は防げないと思う」

バハムート「…これはこちらが謝るべきこと。どのように謝罪しても、詫びきれぬ…」


剣聖少将「…気にするな。些細な事だ。戦争が終わったことのほうが大事さ」

 
バハムート「…」

剣聖少将「…」


コンコン…ガチャッ


剣士「…よう」

魔道士「こんにちわです」

武道家「ど、どーも…親父さ…ん……」ヨロッ

乙女格闘家「…こんにちわ」


剣聖少将「…来たか」

バハムート「来てくれたか」

 
武道家「…っ」ヨロッ

剣士「っと…」ガシッ

武道家「す…すまない……」

剣士「…」


バハムート「…あの日からどれくらいたったか。我の血を与えたとはいえ、ここまで持つとはな」

武道家「はは…。だ、だけどもう……限界…だな……」


剣士「…バハムート。あの時、俺らに落ち着いたら話をしたいって言ってたよな」

剣士「それを聞きにきたんだ」


バハムート「…分かっている。お前たちにとって、重要な話になるやもしれんのだ」

剣士「一体何だ?」

 
バハムート「…」

バハムート「…武道家を、魔界に連れて行く気はないか」


剣士「…」

剣士「…え?」


武道家「何…?」

魔道士「ま、魔界!?」

乙女格闘家「な、なんでっ!」


バハムート「…その魔力枯渇症は、我の血以上の治癒を行うことは不可能と言える」

バハムート「だが魔界の魔力は、かの祭壇町と同じ…いや、それ以上の密度がある。」

バハムート「こちら側とは違い、どれだけ濃くても魔力酔いなどは起こさぬ、純粋な魔力だ」

バハムート「それならば、武道家もまだ…生きられるだろう」

 
武道家「いき…られる……?」

バハムート「…だが、酷なことをいえば…1年も持たないはずだ」

武道家「…」


バハムート「それに、魔界とこちらの時間の進み方が違うのもあり、人間の短い寿命では難しいこともある」

バハムート「それを対処できないことはないのだが……」


武道家「…」

武道家「…待ってくれバハムート。行けるのは俺…一人だけなのか」


バハムート「…無論、愛する者も一緒に」


武道家「…危険じゃないのか」


バハムート「…竜族の里に住まわそう。温厚で、戦いなど知らぬ者たちが多い」

 
武道家「…」

剣士「…」

乙女格闘家「…」

魔道士「…」


武道家「…みんな。俺の…正直な言葉をいっていいか」クルッ


剣士「…もちろんだ」

魔道士「当たり前でしょ」

乙女格闘家「当然だよ」


武道家「…俺は、生きたい。命が長らえるなら、少しでも…乙女格闘家と一緒にいたい」

乙女格闘家「…っ」

 
バハムート「…色々と問題もあるが、何とかできないか考えておこう」

バハムート「それと、アリオクは絶大な力で魔界と人間界の亀裂を広げていた」

バハムート「我の力でも開くことは出来るが、二度目はこちらの時間で十数年かかるかもやしれぬ」

バハムート「その頃には、武道家はおそらく……」


剣士「…」

魔道士「…っ」


武道家「…」

武道家「け、剣士……」


剣士「ん…」

武道家「…お前は、どう思う」

剣士「…おいおい、俺に聞くのかよ」

武道家「…あぁ」

 
剣士「…」

剣士「…」

剣士「…行けよ。いや、行ってくれ。頼む…」


武道家「…お前が言うなら…もう、行くしかないな…」ニカッ


剣士「…っ」

剣士「…お、おうよっ!行って来い、バカ野郎!!」


武道家「おうっ…!」

…ガシッ!…


魔道士「…っ」

乙女格闘家「…剣士」

 
バハムート「それでは、時間もないだろう。早速……」パァァ


剣聖少将「…ちょ、ちょい待ってくれバハムート。その前に、色々とやりたいことがある」

剣聖少将「既に準備は進めさせてもらってるし、時間がかかることじゃないんだ」


バハムート「…構わぬが」


剣士「…何だ?つか、親父って色々と気付くと準備終えてるよな」

剣聖少将「くっくっく…。まぁ、世界が再び光を見れるよう…訴えかけるんだよ」

剣士「…あ?」

剣聖少将「…」ニタッ


剣士「…ん?」

 

……
………… 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 広場 】

…ワァァァァッ!!!


剣聖少将「…諸君っ!全ての戦いが終わったわけではない!」

剣聖少将「だが、ココに宣言をする!」

剣聖少将「…今日という日、最悪の歴史となった、大陸戦争は終わったのだとっ!!」バッ!!


ワッ…ウワァァァァッ!!ガヤガヤ…!!ワイワイ……!!


街人たち「うおおおおっ!」

軍人たち「よ、ようやく…」

冒険者たち「…終わったのか…!」

 
剣士「…んだよ、これ」

魔道士「戦争が終わったって言う、世界への声明だね…。」

武道家「必要なこと…なのか……」

乙女格闘家「でもさ、すっごい気になる事が一つ。隣に……」


…チョコンッ

神官「…何で僕まで」

戦士「…俺も」

剣豪「ふむ…」

魔術賢者「…?」


乙女格闘家「どうして、魔術賢者ちゃんがいるのぉ~♪」バッ

…ガシッ

武道家「い、今は落ち着いて…おけ……」


剣士(…戦士のいる手前、さすがにバハムートは顔を出せないか)

  
剣聖少将「…現状として、様々な問題も山積みとなっているのは…みな、知っていると思う!!」

剣聖少将「しかしっ!!」バッ!!

剣聖少将「あの戦いを乗り切った人間たちは、必ずや真の平和を手に入れるだろうっ!」

剣聖少将「全ての人間が手を取り合い、これからの未来を、未来の平和を!この手につかもう!!」


ワッ…ワァァァァアアアアッ!!!!


剣聖少将「…そして、この戦いにその身を削り、傷つきながらも平和の礎となった者たちがいる!」

剣聖少将「その者たちを…今、ここへ呼んでいる」

剣聖少将「さぁ…上がって来てくれ…!」


剣士「…まさか」


剣聖少将「…来い」ニヤッ

 
スクッ…ザッザッザッ……


ワァァァァアアアアァァァァッ!!!!!!


剣士「…」ピクピク

魔道士「こういうこと…」

武道家「はは……」

乙女格闘家「は…恥ずかしい……」

神官「僕が…どうして……」カァァ

戦士「お、俺も…」フラッ

剣豪「…悪い気分じゃないけどな」ハハ

魔術賢者「…」カァァ

 
剣聖少将「順に紹介しようと思う!!」

剣聖少将「…剣豪と、戦士。お前たちは、魔族の造った塔を発見した」

剣聖少将「更に、この戦争の中心となって、かの最強の魔族の一角だった竜族へと挑んだ勇気」

剣聖少将「それを褒め称え、大陸名誉賞を与えようと思う!!」


戦士「…!」

剣豪「俺らが…!」


剣聖少将「それと…願いがあれば叶えよう!」

剣聖少将「その功績は、素晴らしく、世界もそれを認めるだろう!」


戦士「…ね、願い事ですか?」

剣豪「…」


剣聖少将「…すまないとは思うが、脚のことだけは」

 
戦士「…いえ。気にしないでください」

剣豪「…っ」


剣聖少将「…他に何かあるだろうか。あるなら、是非叶えさせてもらいたい」


戦士「…」

戦士「…っ」

戦士「…剣豪、先にいいか」


剣豪「何かあるのか?」


戦士「…俺は、学校の先生になりたいんだ。北西冒険学校の…」

 
剣豪「!」

剣聖少将「…何?」

剣士「…先生!?」

魔道士「な、なんで急にまた……」

神官「しかも、母校の……?」

魔術賢者「あっ…もしかして……」

乙女格闘家「あ、そっか!だ、大戦士先生の……」


戦士「…はい。大戦士師匠の道を歩き続けたいんです」

戦士「でも、この脚じゃそれも叶わないこともわかってます」

戦士「ですから…。いずれ、脚が少しでも動くようになったら…その時は…!」

 
剣聖少将「…なるほどな。大戦士先生改め、戦士先生となるか。」

剣聖少将「うむ、了解した。その時になったら…準備させよう…」ニカッ


戦士「あ、ありがとうございます!」


剣聖少将「…剣豪は?」


剣豪「…」

剣豪「…戦士がそうなら、相方として俺も考えがある」


戦士「ん…。俺の相方としてだと?」


剣豪「お前より先に先生になって…。お前を羨ましがらせることだ!」ワハハ!!

戦士「」

 
剣聖少将(…なるほどな)


戦士「な、なんだよそれ!」

剣豪「くくく、先に先生と呼ばれてやるぜ!」

戦士「ず、ずりぃぞ!!」


剣豪「…剣聖少将サン。確か、中央都市には特待式の冒険学校がありましたよね」

剣豪「そこで働きたいと思います」

剣豪「戦士が先生なら、俺はその上の"剣士教官"とでも、名乗らせてもらいますよ」


戦士「…お、おいおい!」

剣士「け、"剣士"教官だと!?」

魔道士「…愛されてるね」クスクス

剣士「」

 
剣聖少将「…はっはっは!了解した!剣士教官」ニヤニヤ

剣士「」


剣豪「くくく…。戦士、悔しかったら早く追いつくことだな」ビシッ!


戦士「何っ!?」

戦士「言われなくてもな!すぐにお前に追いついて……!」

戦士「…」

戦士「…追いついて、やるさ……!」

戦士「そ、そういう…ことかよ……!」ブルッ


剣豪「さぁ、知らんな。さて、俺らの願いはこれで終わりっす、剣聖少将さん」ニカッ

 
剣聖少将「…わかった!」

剣聖少将「それでは、この二人に…盛大な拍手をっ!!」


…ワァァァッ!!

人々「うおおおっ!」

人々「戦士くん、かっこいいよー!」

人々「頑張れよ~!!」


戦士「…はは」

剣豪「…くくっ」

 
…クルッ

剣聖少将「そして次は…神官っ!!」


神官「は、はいっ!」


剣聖少将「…お前は、何を隠そう黄金パーティの一人だ。認めている」

神官「…っ!」


剣聖少将「だが、その名は知る人も少ないだろう……」

剣聖少将「しかし!戦いの中で、お前はこの戦争で多くの命を救ったことで、助けられた人々は、お前を忘れないだろう!」

剣聖少将「無論、俺の息子も、戦士もだ。お前には…世話になったな……」ニカッ


神官「…い、いえ!」


剣聖少将「大陸名誉賞とともに、何か欲しいものがあれば…言ってくれ」

 
神官「…やっぱり僕にもですか。な、なら…質素なものですが、贅沢をいいでしょうか」

剣聖少将「どっちだよ」


神官「あ…。え、えっと…!実は、働いている教会が戦いの中で壊れてしまったんです」
 
神官「ですので、それの修復だけお願いしたいなと…」


剣聖少将「…それでいいのか?望めば、一生暮らせる大金なんてのも…」

神官「僕が望むものは、それだけです!!」


剣聖少将「…ふっ」

剣聖少将「…わかった。すぐに準備させよう」


神官「…ありがとうございます!」ペコッ


剣聖少将「…それでは、盛大な拍手をっ!!」

 
ワァァァッ!!パチパチパチッ……!!

人々「神官さん、かっけぇぞ~!」

人々「俺も手伝うからな、声かけてくれよ~!!」


神官「て、照れるね……」ペコッ


剣聖少将「…よし、それでは次。」

剣聖少将「次はえ~と…魔術賢者っ!」


魔術賢者「そ、その前に……いいですか……」モジッ

剣聖少将「うむ?」

魔術賢者「どうして…私まで……?」

剣聖少将「偶然だろうが、運命だ」

魔術賢者「…?」

 
剣聖少将「お前が武装さんに、剣士を紹介してくれねば…」

剣聖少将「あの時、あの場所へ来なければ……」

剣聖少将「この戦いは、どうなっていたか分からなかっただろう」

剣聖少将「偶然だとかは関係ない。俺は、お前がそれを受ける権限があると思い、ここへ呼んだんだ」


魔術賢者「…!」


剣士「…おめでとう、魔術賢者」

武道家「やったな……」ニカッ

魔道士「魔術賢者…おめでとう」ニコッ

乙女格闘家「…可愛いっ!」ブルッ


魔術賢者「ありがとう…ございます……」ペコッ

 
剣聖少将「…それでは、願いを言うといい」


魔術賢者「…」

魔術賢者「…今の幸せが続くように…。明るい未来を…お願いします……」ニコッ


剣聖少将「…何もいらないのか?」


魔術賢者「私たちの…未来に生きる人のために…。明るい未来を……」

魔術賢者「それだけで、充分です……」


剣聖少将「…わかった」

魔術賢者「…」ペコッ


剣聖少将「…立派過ぎる心がけだ。さぁ、皆様!盛大な拍手を!」

 
ワァァァッ!!!!ウオオオオッ!!!

人々「…容姿だけじゃなくて、心もキレイすぎるぞ、軍人さん~!」

人々「私たちも、未来のために頑張るからね~~!」


魔術賢者「…」テレッ


乙女格闘家「…」

乙女格闘家「…我慢できなーーいっ!!」

…ッピョーン…


魔術賢者「…!」ビクッ

 
…ガッシャァァン!!!

魔術賢者「」


剣士「…すげぇなお前の女は。平和の式典で」

武道家「自慢の嫁だぜ……」クク
 

剣聖少将「…ごほんっ。」

剣聖少将「さて……黄金パーティの諸君っ!!!」


剣士「!」

武道家「!」

魔道士「!」

乙女格闘家「!」

 
剣聖少将「…まず先に、その命を世界のために尽くし、礎となってくれたこと…心より感謝する」

剣聖少将「ありがとうっ!!」


剣士「…へっ」

武道家「ふっ…」

魔道士「…はいっ」ペコッ

乙女格闘家「…はいっ!」ビシッ

 
剣聖少将「それを踏まえたうえで…黄金パーティに、俺から直々に…称号と名を授けたい」


剣士「…何?」


剣聖少将「"英雄"の名だ」


剣士「っ!」

魔道士「英雄っ!?」

武道家「英雄って…」

乙女格闘家「…!」


剣聖少将「…それぞれに、渡したい。」

剣聖少将「願わくば、その英雄の名が永遠に語り継がれるよう…光となれるように」

剣聖少将「どうだ。受け取ってくれるか…?」

 
剣士「…俺が英雄かよ」

剣聖少将「誰がもう、卵なものか。お前たちは既に英雄として生まれたんだ」

剣士「…っ」

剣聖少将「…受けてくれるか」


剣士「…」

剣士「……それが世界平和へ近づけるというのなら、受けざるを得ないだろうが」


魔道士「…その思いを、無駄には出来ないと思います。ぜひ、受けさせてください」ペコッ

武道家「卵から生まれる時…か。俺なんかが…いいのなら……」


乙女格闘家「…」

乙女格闘家「…わ、私は…!断りたいと思います……」

 
剣士「!」

魔道士「えっ!?」
 
武道家「ど、どうしてだ……?」


剣聖少将「…」


乙女格闘家「…私は、武道家を支える立場でいいと思ってます」
 
乙女格闘家「武道家が、エルフ族の武器を持ってなかったころに、二人で一つだって言ってくれました」

乙女格闘家「だから、私は二人で一つという言葉を大事にしたいんです」

乙女格闘家「私は、武道家が英雄と呼ばれるだけで…それで満足です」

乙女格闘家「英雄である武道家を支える立場で、満足なんです!」

乙女格闘家「な、なんか…自分で言っていてむちゃくちゃだと思いますけど……!」

乙女格闘家「…本当は、私にその称号の名前が重すぎるからの言い訳かもしれませんが…っ」

 
武道家「…」

剣士「…」

魔道士「…」


剣聖少将「…わかった。それでいいんだな」


乙女格闘家「…お願いします」ペコッ


剣聖少将「…わかった。では、英雄の名は…それぞれ3人。」

剣聖少将「いや、もう1人…。名を授ける男を含め、4人の勇敢なる冒険者へ英雄の名を授けようと思う!」
 

剣士「…もう1人?」

 
剣聖少将「…大戦士さ」

剣士「!」

剣聖少将「…あいつは英雄だろ?」

剣士「…あ、あぁ!そうだ…!大戦士兄は…英雄だ!!」

剣聖少将「…」ニカッ


戦士「大戦士師匠、お父さんのことも……。ありがとう…ございます……」ペコッ

剣豪「…」

神官「大戦士先生……」

魔術賢者「大戦士…先生……」

 
剣聖少将「…それではっ!!!改めて!!」

剣聖少将「平和の礎となりし、黄金のパーティ!」

剣聖少将「剣士…!武道家…!魔道士…!乙女格闘家…!」

剣聖少将「そして…"大戦士"っ…!!」


…スゥゥゥッ…


剣聖少将「この者たちを"英雄"とし、その称号と名を…捧げることとするっ!!!!」バッ!!

 
ワッ…!!

…ワァァァァァアアアァァッ!!!!!!


冒険者たち「おめでとう~~~~っ!!!」

冒険者たち「伝説の冒険者だぜ、あんたたちは!!!」

冒険者たち「乙女格闘家だって、英雄なんだからなっ!!」


街の人々「うおおおおおっ!!!」

街の人々「かっこよすぎるぜぇぇぇっ!!!」

街の人々「これからもがんばってくれよおお!!」


軍人たち「…」ビシッ!!!


ワァァァアッ!!!!ウワァァァッ~~!!!!

ワイワイ…ッ!!!

 
剣士「はは…!おうよ!任せとけっ!!!」ビシィッ!!

魔道士「…えへへ!」

武道家「ははっ…!」

乙女格闘家「…任せて~~!!」ブンブンッ


戦士「…おめでとうございます、みなさん…!」

剣豪「参ったな、剣士に追いつくつもりが…どんどん離されてくとは」

魔術賢者「みんな…おめでとう……!」

神官「…君たちに会えたことを、心から…嬉しく思うよ!」


剣聖少将「…ありがとう。若き…冒険者たちよ」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 

……
………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 中央軍本部 会議室 】


バハムート「…挨拶は済んだのか」


武道家「…おう」

乙女格闘家「…」

剣士「…」

魔道士「…」


バハムート「改めて説明する。酷だとは思うが、はっきりと。」

バハムート「一度行けば、こちらへ戻れるのは十年後と考えてほしい」

バハムート「武道家の命は、その時には尽きている」

バハムート「…最期にお前たちは、互いに顔を合わせる事は叶わないだろう」

バハムート「それで…いいのだな」

 
武道家「…」

武道家「……いい」

武道家「…」

武道家「……っ」

武道家「…はず、ないだろうっ……!!」


剣士「!」

魔道士「武道家…!」

乙女格闘家「…っ」ブルッ


バハムート「…」

 
武道家「寂しいに…決まってるだろ……!」ブルッ

武道家「剣士…!魔道士…!僧侶…魔術賢者…!先生たち…!親父さん…!」

武道家「武装さん…エルフのみんな…。剣豪に…戦士に……。出会った人々全て……!!」

武道家「…っ!」


剣士「…」


武道家「…だ、だけど……」

武道家「お、俺は……もう……。愛する者のために……命をささげたいと決めた……!」


乙女格闘家「…っ」


武道家「…連れて行ってくれッ!俺らを…魔界に……!!」

武道家「バハムートッ!!」

 
バハムート「…心得た。その覚悟の全て、決して無駄にしないと誓おう」


剣士「武道家…」

武道家「…剣士」


剣士「楽しかったぜ」

武道家「…俺もだ」

剣士「…お前に、最後に一つ…いいか?」

武道家「何だ…?」

 
剣士「…病人だからって、容赦しねえぞ!!」

剣士「おらぁっ!!」


…ビュオッ!!


武道家「うおっ…!?」

武道家「こ、このやろ……!」


…ビュオッ!!

 

………
……


バキィッ!!!


……
………

 
剣士「…っ!」

武道家「…っ!」


魔道士「…」

乙女格闘家「…」


剣士「これで…何度目の引き分けか」ズキンッ

武道家「…覚えてねえな」ズキンッ


魔道士「…二人とも」グスッ

乙女格闘家「剣士、武道家……!」

 
剣士「…じゃ、行ってこい馬鹿野郎が!」

武道家「お前こそ、頑張れよクソ野郎!」

…パンッ!


魔道士「…乙女格闘家!」

乙女格闘家「魔道士ちゃん!」

…ギュッ!

魔道士「…また、会おうね。絶対だよ」

乙女格闘家「うんっ…!」

 
バハムート「…別れの挨拶は済んだか」

バハムート「それと、剣聖少将の姿がないようだが…ここへは来ないのか?」


剣士「…これで大丈夫だ。親父なら、俺らの別れに顔は出さないほうがいって一人で飲んでるよ」


バハムート「…最後にせめて、挨拶をしたいと思ったのだがな」

剣士「俺が伝えておいてやるよ」

バハムート「感謝する。」

剣士「そのくらい」


バハムート「…それでは改めて。準備は出来たのだな。聞きたいことは、もうないのか」

 
剣士「…」

剣士「…そ、そうだバハムート!」


バハムート「どうした」

剣士「バジリスクのやつはどうなったんだ。あれから音沙汰もなく、魔界に戻ったのか?」

バハムート「奴は既に魔界へと帰還していたはずだ。お前にやられた傷がよっぽどこたえたのだろうな」

剣士「…そうか」

バハムート「…では、それだけか?」

剣士「それだけ聞ければ安心だ。ありがとな」


バハムート「では、武道家。乙女格闘家。出発の準備は…いいな」

 
武道家「…おうっ!」


バハムート「では…ッ!」パァァ!

バチッ…バチバチバチッ……!!ギュオオオッ……!!


武道家「…!」

乙女格闘家「ち、ちょっと怖いな……」


バハムート「こちらにあった、転移装置の仕組みと一緒だ。怖がることはない」

バハムート「こちら側にある魔法や、魔法による装置は魔界の劣化版のようなもの」

バハムート「お前たちが考えている以上に、面白いものが見つかると思うぞ」

 
武道家「…ほう」

武道家「なら、剣士!俺は先に、魔界ってやつを冒険しにいってくるぜ!」


剣士「…黄金。いや、英雄パーティの一人として…リーダーとして命ずるぞ」

剣士「全身全霊をもって、魔界の冒険を楽しんで来い!」


武道家「…」ニカッ

剣士「…」ニカッ


バハムート「…では、閉じるまでの時間もない!」

バハムート「飛び込むぞ!」

 
武道家「おう!」

乙女格闘家「わかった!」

バハムート「…」

タァンッ…!!バチバチバチッ………!!


剣士「武道家ァ!!乙女格闘家ァ!!"またなっ"!!」

武道家「…またな!」

乙女格闘家「…またねっ!」


魔道士「乙女格闘家、武道家!またっ…!元気でっ!」

武道家「お前こそ!またなぁ!」

乙女格闘家「魔道士ちゃん…絶対また会おうね!」

 
バチッ…バチバチバチバチッ………!!

ギュッ、ギュオオォォオオンッ!!!ギュゥゥウウウンッ!!!


剣士「…!」

魔道士「…っ」


バチッ…バチバチバチッ…バチッ…

ギュウウゥゥンッ…!

バチッ……!!

バチッ…!

 

………
…………………
……………
………


…プシュンッ…


………
……………
…………………
………

 


……… 

……………


剣士「…」

魔道士「…」


剣士「…本当に、行っちまった…のか」

魔道士「うん……」


剣士「…っ」

魔道士「…」


…コンコン、ガチャッ!ギィィ…


剣士「ん…」クルッ

 
剣聖少将「…バハムートと共に、二人はもう行ったのか」

剣士「親父か…」

剣聖少将「来たのは俺だけじゃないぞ。ほれ」

剣士「ん?」


…ヨロッ…
 
 
武装中将「…ごほっ…!ひ、久しぶりだな」


剣士「武装のオッサン!!」


剣聖少将「…挨拶に向わせようとしたが、俺と同じく入るのを拒否してなぁ」ポリポリ

剣聖少将「本当に良かったんスか?」


武装中将「…いいんだ。俺の役目はもう…終わったからな……」

 
剣士「…オッサン」


武装中将「…改めてお前が世界を巻き込むような、すばらしい男になったこと」

武装中将「心より…感謝する…。そして、俺のせいで…こんなことに巻き込んだことを……」


剣士「…そこまでだぜ、オッサン」バッ

武装中将「!」

剣士「それ以上は、いらない。謝るつもりならやめてくれ」

武装中将「だが……」


剣士「…確かに、悪い結果を招いたところもあるかもしれない」

剣士「だけど、オッサンやみんながいなかったら、魔界との戦争は勝てなかったはずだ」

 
武装中将「…」

 
剣士「今回のことは、誰が悪いとかはないんだ。誰が謝る必要はないと思う」

剣士「それより、オッサンが生きていたことのほうが俺は嬉しいからさ」ニカッ


武装中将「剣士……」


魔道士「…そうですよ、武装先生!まだまだ世界のために戦わないといけないんですから♪」

武装中将「魔道士……」


魔道士「だから、これからも頑張ってください!」

魔道士「世界はまだ、武装先生や剣聖少将さんをー……っ!」


剣聖少将「…馬鹿野郎!!」

武装中将「…馬鹿モノッ!!」


魔道士「ッ!?」

 
剣士「おい、人の女に向かってバカってなんだ、オッサンが二人そろって」


剣聖少将「そうじゃねぇっつーことだよ」

武装中将「俺らを世界が求めてるって言おうとしたのだろう?」

剣聖少将「求めているものは、俺らじゃない」

武装中将「求められてるのは…お前たちだ」


剣士「!」

魔道士「!」


武装中将「…英雄は、英雄と呼ばれて終わりなのか?」

剣聖少将「世界を冒険するのは、これからが本番になりそうだぜ?」

 
剣士「…!」

魔道士「世界を冒険…」


剣聖少将「身を隠した魔族や、まだ見ぬ魔族が世界で悪さをしている」

剣聖少将「まだ若いお前たちは、まだまだやることはあるって分かってるんだろ?」


剣士「…」


剣聖少将「…英雄の名のもとに、再び世界へと羽ばたくといい」

剣聖少将「世界はまだ、お前たちを待っているんだ」


剣士「…っ!」

剣士「……そうか。そうだよな!」

 
武装中将「うはは…!」

武装中将「さて…。俺らは、新たな体制で軍を立て直さないといかん……」

武装中将「剣聖少将、手伝ってくれるな…?」


剣聖少将「…今度は、地方へ飛ばさないんで?」

武装中将「飛ばしてほしいのか」

剣聖少将「さぁ、頑張ろう!武装中将サマ、何からすればいいんで!?」

武装中将「…この、馬鹿者が!」


剣士「…親父、カッコワリー」

魔道士「剣士にそっくり…」

 
剣士「あぁ!?それは、俺がかっこ悪いのか!?」

魔道士「…さぁ?」

剣士「この……!」

魔道士「…かっこ悪いわけないでしょ!ばかっ!」

剣士「む…」

魔道士「…えへへ、これから頑張ろうね!」

剣士「…当たり前だ!」


剣聖少将「…バカップルが。」

剣聖少将「しかしまぁ、俺らもやることはあるわけだし。お互い、頑張ろうな」


剣士「おうよ!親父も、しっかりやれよ!」

剣聖少将「お前に心配されるほど、落ちぶれてねーっつーの!」

 
魔道士「あははっ!えっと…!じゃあさ、剣士…これからどうするの?」

剣士「ん~…そうだなぁ。南方側のエルフ族の様子を見に行ったりとか……」

魔道士「北方側の魔術賢者とかも、逃げてきた魔族に場所を追われて意外と大変だっていってたし」

剣士「西方大陸とか、東方大陸の前線付近じゃ魔族も多い。そこも手伝うか?」

魔道士「…や、やることいっぱいだね」

剣士「ま、余裕だろ」

魔道士「…剣士なら、そうかもね」クスッ


剣士「…おうよっ!!うっし…英雄パーティはまだまだ終わらんぞっ!!!」

剣士「さぁて!何から始めるかっ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
―――これは、英雄を紡ぐ、永き物語。

彼らが守り抜いた、未来に生きる者たちへ―――

 
…………………
…………………………………………

少年剣士「僕に任せてよ!」…青年剣士「俺に任せてくれ」

幼馴染「任せるわよ!」…魔法使い「任せるっきゃないでしょ、アンタにね」


幼剣士「ぼ、僕にできるのかな…」…聖剣士「僕に任せて!行くぞっ!」

吟遊詩人「うん…。さぁ、行こう!」


冒剣士「…僕が、やるしかないから…!」

女メイジ「うん、貴方がやるべき事。私も支える!」


白剣士「俺がやってやるしかないんだから…仕方ねぇだろうが…!」

悠久姫「私にも任せてもらおうかの!」

 
竜騎士「俺がやるしかないってことさ。女武道家、着いてきてくれるか?」

女武道家「当たり前です。竜騎士さん、私も力になりますから!」


マスター「…俺はまだ、歩いていいんだな。いや、やらなきゃいけないんだな…」

女剣士「きっとそうです。私も支えますから、一緒にやりましょう!」


錬金術師「…面倒くせぇけど、しゃあないわなぁ」

女店員「ほら、早く立ち上がってくださいよ!」


真剣士「最後まで戦いぬく。着いてきてくれるか…?」

黒髪乙女「…うんっ!」


…………………………………………
……………………

 
――――運命は巡り、時は刻まれ、歴史となる

英雄たちの守り抜いた未来に生きる者たちよ、幸福であれ――――

  
………
………………

 

英雄剣士「…さぁ行くぜ、黄金パーティ!!」

英雄魔法使い「あっ!剣士ばっかり…!私だって、やってやるんだから!」

英雄武道家「ほぉ?剣士がやるっつーなら、俺も魅せてやらねえとなぁ!」

英雄格闘家「えへへー!やっちゃうよ~!」

大神官「剣士くん!みんな!僕だって、やるときはやるんだよ!」

魔術賢者「私だって…がんばる……!」



英雄戦士「…願わくば、全ての者に光があらんことを…」



………………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

【  E N D  】

 
■あとがき
丁度5か月と非常に長い作品となりましたが、ここまで読んでいただいた皆様、本当に有難うございました。

…この作品だけ見た人には、最後のシーンは分からなかったと思います。
自分の作品において『少年剣士』より始まった作品の中央大陸の歴史を描いた

『少年剣士』『幼剣士』『冒剣士』『白剣士』『真剣士』
『竜騎士』 『女剣士』 『錬金術師』

上記のエピソード0として描いた物語となります。

※一部、時間軸をずらしたり、
 少年剣士以降の物語と名称等がずれている部分があります。


まだまだ未熟な点も多いですが、いずれかの作品の1つでも読んで下さった皆様に、最大の感謝を。
有難うございました。

最後に、アフターストーリーを載せ、終了となります。

 
■あとがき(現行用)

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※まとめ等に乗るかどうかは、非常に長い作品なのでわかりませんが
 コチラのあとがきは、コピーやまとめ等禁止でお願いします。
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ここまでお付き合い頂いた方々、全員に感謝致します。有難うございました。
2014年6月11日で、最初の作品『少年剣士』を投下してから1年が経過し、
読んでくださってる方から何度か書いてくれと言われていた、"初代英雄剣士"の物語を描くことが出来ました。

書くのをためらっていたのは、嫌という理由ではなかったのですが、
この物語の一貫性として、『英雄』と『英雄が救った世界に、生きる人々の物語』として考えていたからです。
過去の作品を読んでくれた方たちは分かりますが、"魔王"の存在はあっても、決して登場はしませんでした。

これは『英雄の救った世界の物語』だったため、魔王という凶悪な存在を名前として出しておき、
竜族を含む、地上や人間に害を与えた強力な魔物たちは、あくまでも"その配下"として登場させたことで、
作品を長く読んでくれている方たちには"魔王に勝利した初代英雄が最強"という存在にはなったのではないでしょうか。

1年が経過し、区切りも良いと思い、エピソード0として初代英雄剣士を改めて書かせて頂きました。
最初から読んで下さってくれている方たちも、途中から自分の作品を知ってくれた方たちにも、
自分の作品を1つでも触ってくれた全ての方たちへ、最大の感謝を致します。

本当に、有難う御座いました。

 

……
………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 アフターストーリー とある丘 】


…ヒュウウッ…
 

剣士「…」

剣士(…あれから、幾年の月日が流れ…。早いもんだ)


ヒュオオッ…!!

 
剣士(…未だに蔓延る魔族、魔物や魔獣は昔ほどではないが…まだまだ脅威の存在だ)

剣士(しかし、後任ともいうべき冒険者たちは確実に育っている)

剣士(あの戦争を経て、知性ある魔族の存在が当たり前になった今……)

剣士(もしかしたら、これからが本当の冒険時代とも呼ぶべきものが来るのかもしれん)

剣士(……)


ヒュウゥゥッ……!!


剣士(…武道家と乙女格闘家が、魔界から戻ってきて…。武道家は、この丘から世界へと羽ばたいた)

剣士(…いつか、俺もお前の元へ行く。それまでは…少し待っててくれよ)


…ザッザッザッ…


???「…剣士っ!」


剣士「ん…」

 
乙女格闘家「…やっほ~!」

魔道士「剣士っ♪」


剣士「…よう、二人とも」


乙女格闘家「…また、ここに来てたんだね」

剣士「自然と足が向いちまうんだ」

乙女格闘家「…」


剣士「…綺麗だった。太陽の下で、風に乗って、白く輝いて…」

剣士「俺らが知らない、遠くの世界へと旅立っていったんだろうな」

 
乙女格闘家「うん……」

魔道士「武道家……」



……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

乙女格闘家「…武道家が、自分は死んだら風の丘から剣士に骨を撒いてほしいって」

…スッ

剣士「あいつ……」

魔道士「武道家…っ」グスッ…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
……



剣士「…」

 
乙女格闘家「…」

乙女格闘家「…武道家の血は、私の子が受け継いでるから」

乙女格闘家「もうすぐ、産まれるんだよ!」


剣士「…魔道士も、もうすぐ産まれるんだよな」

魔道士「うん」

剣士「…なんだかな、一緒の時期に産まれるって…。まるで俺と武道家みてぇだ」ハハハ

魔道士「だねっ」クスッ

剣士「…乙女格闘家は、これからどうするんだ?」


乙女格闘家「うん?」

 
剣士「これから、一人じゃ色々厳しいだろ?」


乙女格闘家「それなんだけど、私…武道家の夢を継ごうと思って」

剣士「夢?」

乙女格闘家「武道家ね、道場を持ったりしたかったなぁとか言っててね~」

剣士「あいつ、そんな夢聞いたことねーぞ…」

乙女格闘家「さすがに中央都市だと土地代も高いから、ちょっと離れでやってみよって」

剣士「…手伝うか?」

乙女格闘家「ううん。私一人でやってみる!」

剣士「…そうか。頑張れよ」

乙女格闘家「おうっ!…なーんて!」

 
剣士「はは…」

魔道士「…」クスッ

乙女格闘家「えへへ~っ…」


ヒュウウゥ……!ビュオオオッ!!!


剣士「…うおっ!」

剣士「……子供、か。この風のように、時代は流れて、世界は変わっていくんだな…」


魔道士「うん…」

剣士「次は、俺らの子供たちがこの世界を引っ張っていくんだ」

魔道士「強い子だよねきっと。剣士の子供だもん」

剣士「…なーんか意外な予感がするんだよなー」

魔道士「意外?」

 
剣士「俺と魔道士って、どっちかっつーと気が強いじゃん」

魔道士「うん」

剣士「まったく逆の、礼儀正しい子になったりしたりしたらどうする?」

魔道士「…剣士っぽくないなら、育てやすくていいね」

剣士「おい」

魔道士「うそっ、冗談」

剣士「ぐぬ…」


乙女格闘家「…私の子は、武道家みたくなるんじゃないかなぁ」

剣士「くくっ…。調子乗って、おっちょこちょい。だけど努力家みたくなるな」

乙女格闘家「あ~…。そうかも……」

剣士「…っと、そういえば。僧侶とか魔術賢者も、もうすぐ産まれるっつってたよーな気がするな」

 
魔道士「うん、そうだったね。僧侶と女戦士さんは男の子だったかな?」

魔道士「で、魔術賢者は軍の剣士さんとの間に産まれるのは女の子だったはずだよ」


剣士「…ははぁ、全員、同級生になるっぽいな」

魔道士「僧侶と魔術賢者の二人は、北方大陸の雪降町で産ませるっていってたから、幼馴染になるかもね」

剣士「あ~…そんなこと言ってたなぁ」

魔道士「あと、少女エルフちゃんね、結婚して…もう子供生まれたみたいだよ」

剣士「…マジで?」

魔道士「うん。二人目のはずだよ」

剣士「…知らなかった!マジで!?」

魔道士「二人とも女の子で、姉妹そろって少女エルフちゃんに似て可愛いんだろうな~…」

 
乙女格闘家「…私たちの子供だって、かっこ可愛いに決まってるっ!」

魔道士「…だねっ!」


タタタタッ…


大神官(僧侶)「…おーい!」


剣士「お…」

魔道士「あ、僧侶っ!」

乙女格闘家「やっほ~」


大神官「…今日、武道家くんのお参りに来ようとしたら…。みんな、いたんだね」

剣士「おうよ」

 
大神官「…丁度よかった。みんなに話したいことがあったんだ」

剣士「話したいこと?」

魔道士「なに?」

乙女格闘家「魔術賢者ちゃんと結婚するの?」


大神官「違うよ…」

大神官「北西冒険学校のある、東町に今度、新しい教会が出来ることになったんだ」

大神官「だから、僕がそこの担当になるんだよ」


剣士「…教会一つ、任せられるってことか!」

大神官「うん。本当は一人だったんだけど、熱心な弟子がいてさ…。その人もついてくるんだけど…」

剣士「…熱心な弟子、いいじゃん。だけど、乗り気じゃないのか?」

 
大神官「弟子のお嫁さんが、もうすぐ子供産まれるんだよね……」

大神官「うちは元々、雪降町に帰省させることになってたからいいんだけど、」

大神官「その人、お嫁さんともども一緒に来て、そのまま教会で育てるとか……」


剣士「…どんだけ、お前のこと慕ってるんだよ」

大神官「その子供は女の子だし、僕のあとを継ぐのは難しいだろうなぁ…」

剣士「お前の息子に継がせるんじゃねえの?」

大神官「ほら、うちのは冒険者にしたいっていう…」

剣士「あぁ~…!」

大神官「もしかしたら、剣士くんの子供とかと一緒のパーティになるかもね!」

剣士「はっはっは、そうなればいいな!」

  
魔道士「…」

魔道士「…さてと。そろそろ日も暮れるし、家に戻る?」


剣士「…だな」

乙女格闘家「うん。治療院に戻らないとね~」


剣士「…」

剣士「…待て!考えたら、お前ら二人抜け出しちゃダメだろうが!妊婦だろうが!」


乙女格闘家「…大丈夫大丈夫!」

魔道士「…平気平気!」


剣士「はぁ…全く。ま、行くかぁ……」

大神官「さすがだよ二人とも…。ま、戻ろうか」

 
ザッザッザッザッ……

…ピタッ 
 
剣士「…」

剣士「願わくば、この幸せがずっと続くように」

剣士「…なんて」

剣士「…はは、歳とったなぁ…俺も」ククク


魔道士「剣士、どうしたの~!早くいくよ~!」


剣士「…おーう!」

剣士「…」


剣士「またな…武道家。みんなっ!!」

 
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・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・
・・・
・・

 
【 E N D 】

 
これにて、全てが終了いたしました。

1年前を思い出し、出来るだけ前のように展開をして、

アフターストーリーで完結、というように進めさせていただいたので、

最初から見て下さってる方や、剣士シリーズを知っていた方は懐かしく思えるかもしれません。


では、改めてここまで見て下さった方々!

少しでもこの作品に触れて下さった方々!

心より感謝いたします。ありがとうございました!

………
……

金払ってでも続きやサイドストーリーを読みたい。
特に竜騎士シリーズを。。。


また一から読み直してたら朝になってた
また次回作期待


錬金術士もまた続き書くんだっけ?ワクワクするな

大神官の弟子ってどれだっけ?

>>284
のちに出てくる乙女僧侶のお父さんだろうけど今まで出てこなかったんじゃない?
剣士のおじさん(剣聖の兄貴)みたいにまだ出てきてない人もほかにいそうだね

次スレはここに告知してくれるよな?

魔法剣士とか出てきてわけわからん!
全作品好きだけど、なかなか全員一致させられんなー
作者の人には大変申し訳ない

英雄剣士まどうし→少年剣士
英雄武道家格闘家→少年武道家

魔術賢者→魔法剣士
大神宮→僧侶戦士
(魔法剣士と僧侶戦士は幼馴染み)だろう

少年剣士時代には英雄剣士は既に行方不明だったし、
英雄剣士らは小さな町に移り住んだみたいな描写が後からあったし、
少年剣士の幼馴染とかは少年剣士からしか出てきてないんじゃない

皆さま、自分が思っていた以上にお言葉をいただきまして、心より嬉しく思い、感無量です。
5か月という長い作品になりましたが、ここまで皆様にお付き合いいただきましたこと、
改めてお礼申し上げます。有難うございました。

一部に関し、少しだけご回答致します。
>>273 竜騎士に関しては、声も多く、少し構想もあり、固まり次第情報を出したいと思います。

>>280 >>282
次回作は錬金術師の予定で、11月中もしくは再来週までに告知予定です。
一括の長編ではなく、中編と短編がいくつかのものでの「長編のように」し、、店長たちが相変わらずの展開での予定です。
(不思議な道具が、店長たちにトラブルを起こす!等、お待ちくださいっ)

>>284
ご質問は、 >>285 の通りになります。
本ストーリーには登場しませんでしたが、少年剣士編の「乙女僧侶」の父親となります。
また、一部出ていないキャラクターもありますが、そちらは後述に。

>>287
次回作の際は、恐らく残っているとは思いますが、こちらにて告知させていただきます。
現在、新作として錬金術師は確定、その他で2,3つほどの【完全新作】のファンタジーストーリー考えております。
基盤というか、世界観自体は出来ており、そちらは公開できる範囲になったら公開予定です。

>>289 こちらの疑問は、 >>292 の通りになります。
完全に描き切れてはおりませんでしたが、少年剣士以降の作品を読んで頂けると「あぁ、こうなっていたから…」や、
本作アフターストーリーの乙女格闘家が 「道場は自分ひとりでやりたい」 と言ったことを尊重した上で、
英雄剣士がある理由で行方不明に(ネタバレになるので)なっていたりしたので…等と考えております。
なぜ会えなかったのかというのは理由もありますが、自分なりの解釈で考えると面白かったりするのであえて描きませんでした。


長くなりましたが、どうか、また新作等でもお会いできればうれしく思います。
ここへ言葉を乗せて下さった皆様だけでなく、顔を出さない方もいるとは思いますが、その皆様へも感謝をしております。

幾度の言葉となりますが、有難うございました。

wiki更新してたな
竜騎士エピソードよかったよ
そして、>>1無理しないでくれ

皆さま有難うございます。
お言葉、本当に嬉しいです。

>>299
にありますWikiにも記載しましたが、胃腸炎により倒れ、公開まで時間をいただきましたが、

錬金術師その3
錬金術師「経営難に立ち向かう事になった」新人鉱夫「その3!」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1417696211/l50)

公開をいたしました。
よろしくお願いいたします。

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