剣士「冒険物語…!」(1000)

前スレ
剣士「冒険学校…!」
剣士「冒険学校…!」 - SSまとめ速報
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上記の2スレ目となります。よろしくお願いいたします。

 
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――――【 冒険学校 教室 】

ガヤガヤ…

剣士「あーあ、修学旅行…何かあっという間だったな」

武道家「もうちょっとゆっくりしたかったよなー」

魔道士「今度は卒業したら、乙女格闘家さんとか魔術賢者さんとか誘って行こうよ♪」

僧侶「あ、いいかもしれないね」


剣士「卒業旅行か…。また幼エルフに挨拶でもしにいくかぁ?」

魔道士「大百足と出会わなければね…」

剣士「んなもん、俺らがぶっ飛ばすっつーの!」

 
…ガラッ!

冒険先生「エルフなどと聞こえたが…何をぶっ飛ばすだって?」


剣士「あ、あはは…やだなぁ冒険先生♪武道家のことですよ♪」

武道家「あぁ…?」

剣士「お…?」


冒険先生「また、正座するか?」


剣士「…俺たち仲良し!」ガシッ

武道家「阿吽の呼吸だぜ!」ガシッ


冒険先生「よろしい、席についてくれ」

魔道士(バカ…)

 
…ストンッ


冒険先生「今日の授業は、最初だけ少し内容を変える。軍より通達が入ったんだ」

ザワ…ガヤガヤ

生徒たち「軍て…中央軍か?」

生徒たち「面倒くさい内容とかじゃないだろうな…」


冒険先生「あー、そんな堅いものじゃない。魔獣の段階付けが追加されたんだ」

魔道士「魔獣の段階付け…?」

冒険先生「そうだ。今までは"魔獣"という言葉だけだったが、昨日、中央軍本部会議でランク付けが行われてな」

魔道士「段階…ランク付け…ですか?」

 
冒険先生「ほぼ、現在確認されている魔獣に対して、人への害や強さを考慮したものだ」

冒険先生「下級、上級の魔獣に加え、一定以上の知性を持つ魔獣を"魔物"と定めた」


剣士「魔物ねぇ…、どんなのが魔物になったんだ?」


冒険先生「知性が高いといえども、人のようなものはいない」

冒険先生「代表でいえば、遺跡に住みつく巨大化した魔獣を"魔物"としている」


剣士「人間みたく高い知性を持つ魔獣とかっつーのは存在してないの?」


冒険先生「少なくとも、今まで確認はされていない」

冒険先生「ただの動物や植物が魔力を蓄え、自立したモノもあるが、基本的に下級魔獣に分類される」


剣士「去年の魔石洞窟の時は、下級魔獣ばっかだったってことか。へっ、しょぼいな」

冒険先生「最初から上級と戦わせるか、バカもの!」

剣士「うひっ!」

 
冒険先生「さて、本来の授業に戻るぞ」

冒険先生「まずは教科書の72ページ開いてくれー」


剣士「魔物ねぇ…」

魔道士「…?」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 放課後 帰路 】


ザッザッザッ…


魔道士「今日は大戦士先生と稽古しないの?」

剣士「なんか、少戦士のことで用事あるから、今日はナシ」

魔道士「じゃあ私の部屋で、魔法の勉強する?」


剣士「ん~…」

剣士「ちょっと、やめとく」


魔道士「!」

魔道士「そ、そっか…」

 
剣士「その代わり、ちょっと付き合えよ」

魔道士「え?」

剣士「ちょっと町に行きたくてさ、一緒にいかないか?」

魔道士「うん、いく♪」

剣士「本屋で欲しいものが出来たんだよ」

魔道士「け、剣士が本…?」

剣士「…何か問題でも」


魔道士「い、いいえ?」アハハ

剣士「…」

 
タッタッタッ…

少戦士「魔道士さ~ん」フリフリ

魔道士「あ、やっほー」


少戦士「ふぅ、遠くから見えたものだから…」

魔道士「あはは、そっか」

少戦士「はい…」テレッ

剣士「…」


魔道士「大戦士先生は、用事って言ってたもんね。今日は一人で自宅に戻るの?」

少戦士「そうですね、そうなります」

魔道士「そっか、気を付けてね」

少戦士「は、はいっ!」

 
剣士「…」

剣士「さて、魔道士。日が暮れる前に急いで行こうぜ」

スタスタ…


魔道士「そ、そんな急がなくても」

剣士「夕方だし、さっさと行った方がいいだろ!」

魔道士「そ、そりゃそうだけど…」


少戦士「…剣士さんと魔道士さんて付き合ってるんですか?」


魔道士「えっ!?そ、それはー…」チラッ

剣士「…」

 
少戦士「どうなんでしょう?」

剣士「か、関係ないだろ。さっさと帰れ」シッシ

魔道士「…」


少戦士「いいじゃないですか、気になるんですもん」

剣士「付き合ってた所で、お前には関係ないだろ?」

少戦士「…どうでしょうか」

剣士「あぁん?」

少戦士「…魔道士さん、優しくて可愛らしい方ですよね」


魔道士「!」


少戦士「お姉さんとして、接してくれて…」

剣士「…」

 
少戦士「あ…。と、とりあえず今日は帰ります!また!」

タタタタタッ…!

魔道士「あ、ちょっと少戦士!」ダッ


…ガシッ!


魔道士「きゃっ!…剣士?」

剣士「今日の予定は、俺とだろ。アイツは気にするなって、俺と付き合う事考えてくれよ」

魔道士「わ、わかってるけど…」

剣士「…じゃあ行こうぜ」

グイッ…!

魔道士「わっ…!剣士、早いよ!」

 
スタスタスタ…

剣士(く、くっそ…)

剣士(んだっつーの…)


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 北西町 本屋の休憩所 】

剣士「…うし、買えた買えた!」

剣士「はぁー…付き合ってくれてありがとよ。飲み物買ってきた」

…コトンッ

魔道士「うん、ありがと」

剣士「この本屋に、ほしい本が売ってて良かったぜ」

魔道士「…まさか剣士が、魔獣解析書と遺跡歴史本買うなんて」クスッ

剣士「悪いですか!」

魔道士「あはは、意外すぎるよ。何で急に?」

 
剣士「この間、大百足と戦った時に大戦士兄みたく知識が欲しいと思った」

剣士「遺跡本があれば魔獣の情報あるし、どんなのが魔物に分類されてるか分かるっつーかさ」

剣士「今日の授業受けて、そういう思いがもっと強くなったっつーか…な?」


魔道士「確かにそうだね。偉い偉い♪」ニコッ

剣士「……ありがと」


魔道士「…何か素っ気ないね。さっきから少し変だよ?」

剣士「う、うっせぇな別にいいだろ」

魔道士「あ、何その言い方~」

剣士「いいだろ別に!」

魔道士「剣士…変なの」

剣士「…」

 
魔道士「じゃ、戻る?」

剣士「…」

魔道士「…どうしたの?」


剣士「あ、いや何でもない。じゃあ行くかー…」

剣士「って…!?」ハッ


…グイッ!

魔道士「えっ?」

剣士「か、隠れろ!」

タタタッ…クルッ


剣士「…あぶねぇあぶねぇ」

魔道士「き、急にどうしたの?」

 
剣士「そこの角から覗いてみ。ガラスのところ」

魔道士「ん~…?」チラッ


武道家「…」

乙女格闘家「…」


魔道士「あっ、武道家と乙女格闘家さん!」

剣士「…二人で放課後に稽古じゃなかったのかよ」

魔道士「稽古した帰りなんじゃないかな?」

剣士「あ、そ、そうか…」

魔道士「でも確かに、あの二人は私らとはあまり会いたくないかもね…」

剣士「武道家は恥ずかしがるし、邪魔しちゃわりーしな」

 
???「…あれー?二人とも、珍しいとこいるね?」

???「本当だ…」


剣士「あん?」

魔道士「…あっ」


僧侶「どうしたの、本屋にいるなんて」

魔術賢者「剣士…似合わない…」


剣士「…お前らこそ、何でここに」ヒクッ

 
魔術賢者「…一緒に、魔法書を見に来た」

僧侶「武道家くんたちみたく、魔術師同士、二人で高め合えば僕らももっと強くなるかなーって」


剣士「仲のいいことで…」

僧侶「そ、そんなんじゃないよ!」

剣士「へいへい」


魔道士(…本当に今日の剣士、どうしたんだろ…)

魔術賢者「…」

 
剣士「…とりあえず、俺らは帰るよ」

僧侶「うん、気を付けてね。僕らは武具店もちょっと寄ってくから」

剣士「はいよ」

僧侶「ばいばーい」

魔術賢者「また…ね」

トコトコトコトコ…

……


剣士「…」

魔道士「じゃ、帰ろうか?」

 
剣士「…そうだな」

魔道士「でもさ、魔術賢者さんと僧侶も仲良くなったねー」

剣士「全くだ。びっくりしたぞ」

魔道士「本当にお付き合いしちゃったりして」アハハ

剣士「僧侶も意外に気が強いところあるし、割とあるかもなぁ」

魔道士「そうなんだよね~…」


剣士「…」

剣士(…わかってるよ。いつの間にか、本気になってたことくらい)

剣士(何を求めてるわけじゃないけよ…、こういう気持ちってどうしたらいいんだ?)

剣士(武道家に聞くのは絶対に嫌だしなぁ…、ふざけてる風にしか言葉を発せないんだよな俺って…)

剣士(確かに周りから見たら、そうなんだろうが…。ハッキリしねーっつーか…)ハァ

 
魔道士「…」

魔道士「…剣士!私らもどっかで買い物とかして帰ろうよ♪」


剣士「ん?あ、お…おう…」

魔道士「…それっ」

…ギュッ

剣士「おっ…」

魔道士「ほら、今度は私が手ぇ握って連れてくから!」


剣士「…」
 
剣士「お、お前にだけは先に越されるわけにはいかねえなぁ。俺がお前を引っ張ってやるよ!」

 
グイッ…!

魔道士「あ、こらー!」

剣士「はっはっは!」

タッタッタッタッ…!


剣士(とりあえず、今の俺は…きっとこれが楽しいんだな…!)


…………
………

 
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・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
そして、わずかばかりの時間が流れた…
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――――【  2か月後 教室 】

ガヤガヤ…

剣士「ふわぁ…おはよ…」


武道家「おう」

魔道士「おっはよー♪」

乙女格闘家「おはよ!」

僧侶「おはよっ」

魔術賢者「おはよ…」

 
剣士「やれやれ、朝からにぎやかだな」

僧侶「楽しくていいと思うよ」

剣士「ま、確かにそうだな」


魔道士「剣士、そういや話…聞いた?」

剣士「何の?」

魔道士「ずーっと前、食堂で剣士にケンカ売ってきた1年生のこと覚えてる?」

剣士「あ?」

魔道士「ほら、三流騎士を吹っ飛ばした人」


剣士「あ…あ~!」

剣士「オウケンシとかっていう?」


魔道士「豪剣士…」

 
剣士「あ、豪剣士ね。そいつがどうした?」

魔道士「あの後輩、私らがやった実践演習と同じ内容のやつで、私らに匹敵するタイム叩きだしたんだって」

剣士「…まじで?」

魔道士「だから凄い話題になってるみたい」

剣士「いかにタイムが早かろうが、実力は俺のほうが上だ」フンッ

魔道士「うんっ」


…ガラッ

冒険先生「ほらほら、雑談は終わりだ。全員、席に戻れー」


乙女格闘家「あっ、はーいっ」

魔術賢者「…」

ガヤガヤ…ガタガタッ…!

 
冒険先生「よし、全員席に着いたな」

冒険先生「さぁて…いよいよ10月も目前に迫ってきたわけだが」

冒険先生「君たちが入学して早くも1年半を迎えようとしている!」


剣士「時がたつのは早いことで」

冒険先生「全くだな。その早く訪れた1年半目に、公表していなかった実践演習予定を今から発表する」

剣士「…何?」


冒険先生「これは2年生のある時期になったら発表する、学校特別の演習でな」

冒険先生「予定には組み込まれていなかったが、"行う当日"で発表をする、毎年恒例のものだ」

冒険先生「去年の魔石洞窟の探索と同じように、成績に大きく関係する実習だからな」


剣士「ま…まじか!?」キラキラ

 
ガヤガヤ…!!

生徒たち「ま、まさかこのタイミングでかよ!」

生徒たち「またバトルロイヤルだったら嫌だなぁ…」

生徒たち「何するんだよ…」


冒険先生「安心しろ。今年はパーティ別に、"本物の依頼"を受けてもらう」


生徒たち「!」


冒険先生「その依頼をどこまで達成できたか、遂行度によって評価を行う」

冒険先生「それぞれのパーティに合う依頼は用意済みだ」

 
剣士「まじか…まじかぁぁ!」グッ

魔道士「本当の依頼って…。しかも今日ってことは、今からでしょ!?」

武道家「余裕だな、いかなる依頼でもかかってくるがいい!」フハハ

僧侶「僕だって、ずっと努力してきたんだ、その成果くらいみせてやる!」


冒険先生「その通り。クエストの遂行日は全員共通で今日から開始だ。パーティによっては船を使う場合もある」

冒険先生「遊びじゃないんだから、しっかりしろよ。依頼人にどのように動いて貰ったかはしっかり報告してもらう」

冒険先生「今から配る用紙に、パーティで行うクエストの詳細が記載してあるから、しっかり読むように!」


全員「はい!」


冒険先生「では、まずは剣士のパーティからだ。…ほれ」ペラッ

 
剣士「おう、どれどれ」カサッ

…ペラッ

剣士「…」

剣士「…こ、これは…!」


魔道士「何?どれどれ」

武道家「どんなのだ?」

僧侶「遠くないといいなぁ」

 
カサカサ…ペラッ

剣士「…」

魔道士「…」

武道家「…」

僧侶「…」


3人「……えっ?」


剣士「こ、これなの…本当に…?冒険せん…せい……?」

冒険先生「当然だ」ニコッ

………
……

新スレ(2スレ目)としてスタート致しました。
本日はここまでです、有難うございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
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―――【 北西町から離れにある 屋敷 】


…ザボォン、ザボォン…


剣士「…」

武道家「…」

魔道士「…」

僧侶「…」


屋敷主人「ほら、早く探してくれ。ドブの中に金貨を落としちまったんだよ」

屋敷主人「価値のあるコインなんだから、どうしても見つけたくてな!」ガハハ!

 
剣士「…わかってるっつーの!」

屋敷主人「ん~?」


魔道士「こら、剣士…!敬語使ってよ、減点されちゃうでしょ…!」ボソボソ

剣士「あ、あぁそうか…。くそっ、なんでこんな依頼なんだよ…!」ボソボソ


屋敷主人「…何か言ったか?」

剣士「へ、へへ。何でもない…ッスよ、主人さん」ニタッ

屋敷主人「…態度の悪い生徒だな。減点申請するぞ?」

剣士「ちょ、それだけは勘弁をしてくれ…ッス!」

ザボザボザボ…!!


屋敷主人「げっ、わ…分かったからドブに浸かった身体でこっち来るな!!おい!!」

 
剣士「あ…。へ、へい」

屋敷主人「ったく…、俺は3階で寝てるからな!見つかったら言えよ!」

剣士「…」

屋敷主人「適当な生徒寄越しやがって…」ブツブツ

ザッザッザッザッ……

…………


剣士「…」

剣士「…この、くそったれが!!」


僧侶「け、剣士くんそんな大声で…、聞こえちゃうよ」

 
武道家「…面倒なのは分かる。だが、やらねばならぬぞ剣士」

剣士「あぁ!?」

武道家「くくく…。俺だって面倒なのは一緒だ。だが、秘策がある。ココは俺に任せろ剣士」

剣士「…あん?」

武道家「実はな、乙女格闘家との試行錯誤で新たな技を生み出したんだ」ニヤリ

剣士「あぁ?乙女格闘家とプロレスごっこで子供を生み出し」


武道家「掌底波ぁぁっ!」

魔道士「雷撃魔法!!」

 
ドゴォンッ!!ビリビリビリッ…!!

剣士「」

ザボォンッ…ブクブク…


僧侶「け、剣士くんが泥に沈んでいくーー!?し、死んじゃうよ!!」


武道家「まぁアホは放っとけ。お前らだけでもきちんと聞いてくれ」

武道家「実は、新たな技として"闘気"を溜めた拳を使い、」

武道家「ゼロ距離で相手の体に直接打ち込むという技術を会得した」


魔道士「え、それってオリジナルの技ってこと?」

武道家「まだまだ荒削りで未完成だが、意外と強いんだこれが」

 
僧侶「えっ、凄い…!そしたら、武道家くんがその技の始祖ってことになるんじゃないかな?」

武道家「そうなる…か?」

僧侶「そうだよ!で、その技の名前は?」

武道家「…衝撃波」


魔道士「そのまんま」

僧侶「もっとひねろうよ」


武道家「うるせー!技なんてそんなもんでいいんだよ!」

武道家「じゃあ何だ、ウルトラインパクトとか、闘牙衝撃掌とかつけるか!?」


僧侶「し、衝撃掌のほうがカッコイイんじゃないかなぁ」

魔道士「闘牙はナシね。くどいから」

 
武道家「な、なんだお前ら!もう、衝撃波でいいっつーのっ!!」


魔道士「それで…、その衝撃波がどうしたの?」

僧侶「今は敵もいないし、使うようなところでも…」


武道家「く…くくく…」

武道家「いいか、よく聞け。これはその名の通り、衝撃波を打ち込む技なわけだ」

武道家「と、いうことは。…この重い泥に攻撃を与えると?」


僧侶「ドブさらいをせずとも、ドブを全部吹き飛ばせる…?」

武道家「その通りだ!そっちのほうが探すのも早いだろうしな!」

僧侶「じゃ、じゃあ僕らは一回あがってるよ。危ないから下がろう、魔道士さん」

ザボザボザボ…

 
武道家「おっしゃ!闘気…!」パァッ

グググッ…!


魔道士「あ、待って!その前に剣士がそこで浮かんでてー…」

僧侶「あっ、そうだ武道家くん!一旦技を止めてー…」


武道家「衝撃波ぁぁぁあっ!!」ブワッ…!!

ザザ…ザッバァァンッ!!!

剣士「」

クルクルクル…ヒュウウウッ…ドシャアッ!!

 
魔道士「あ…」

武道家「あっ」

僧侶「あ…」


…………
………

 

………
……………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ソヨソヨ…

剣士「…」

剣士「…」

剣士「…んにゃ?」パチッ


魔道士「あ、気が付いた?」


剣士「…あ、あれ…何だっけ…」

剣士「何で俺は…魔道士にひざまくらされている?」

 
魔道士「わ、私と武道家に吹き飛ばされて…」

魔道士「最後に武道家の新技食らって完全ノックアウト…」


剣士「…」

魔道士「で、でも珍しいね。剣士があれしきでダウンしちゃうなんて…あはは…」

剣士「まぁ、疲れてたしな。最近は夜中まで本読んだりしてっから」

魔道士「あ、前に買った本?」

剣士「そっ。ゆっくりだけどよ、頭使う夜更かしだと次の日どうも眠くてな」

魔道士「それって、稽古とかで身体動かす夜更かしする方なら、眠くないってこと?」

剣士「普通そうだろ?」

魔道士「普通…逆」

 
剣士「…そうか?」

魔道士「…そう」

剣士「…」

魔道士「…」


剣士「は…はは…、そうか…」

魔道士「そうだよ」クスッ


剣士「はぁ…」

魔道士「…」

 
剣士「…そういや、俺の体の泥とか落ちてるけどどうした?それにあいつらは?」


魔道士「私が水魔法とかで洗い流しといたの」
 
魔道士「他の二人は、無事に金貨見つけたから、依頼主さんに渡して、お茶してるとこみたい」


剣士「お前はいかなかったのか?」

魔道士「そ、それはえーと…、あの屋敷の人苦手だし、こうして外でゆったりしてたほうがいいかなって思って」

剣士「…ははーん、俺の為か?お?」

魔道士「ち、違うから!」

剣士「…なんだ、そうか。違うのか」


魔道士「…あ、えっと…その…」

剣士「…そうなんだろ?」チラッ

 
魔道士「…」

魔道士「そ、そうだよ!わかってるんでしょ、もう!」


剣士「わりぃ、分かってた」ハハ

魔道士「もー…」

剣士「…」

魔道士「それに、いつまで私の膝に寝てるのかなー?」


剣士「…」

剣士「…」

剣士「もう、しばらく」

 
魔道士「…え?」

剣士「あ、ダメだった?」

魔道士「い、いいけど。ちょっと予想外な答えだったから」

剣士「予想外?」

魔道士「剣士のことだから、"悪い!"とかっていってどけたりするかなーって」

剣士「…」

魔道士「…?」


剣士「最近さー、本とか読んだりしてて、いろんな人の話とかを知るようになったんだ」

魔道士「う、うん?」

剣士「偉人とかさ、立派なことやったり…歴史に名前を残した人間は、自分に素直な人間が多い気がしてさ」

魔道士「うん」

 
剣士「まぁ、俺も欲望にゃ素直なほうだろ?」

魔道士「うん」

剣士「…」

魔道士「…」


剣士「…やっぱり何でもない」プイッ

魔道士「え、ちょっと」

剣士「…気にすんな」

魔道士「そこまで話して、途中でやめるってダメでしょ!気になるじゃない!」

剣士「い、いや…」

魔道士「はーなーしーて」ズイッ

剣士「ち、近いぞ…」

 
魔道士「きちんと話してくれるまで、こうしててやる!」

剣士「…ぐっ」

魔道士「さぁ、話すのだ剣士くん♪」


剣士「……、だから…!」

魔道士「ん~?」

剣士「よ…、欲望にゃ素直ってことで…」

魔道士「だから~?」

剣士「…す、好きな魔道士の膝でこうしていたかっただけだっつーの!!」

魔道士「!」

剣士「そういうことだ、それ以外ない!わかったか!」

 
魔道士「えへへ、よく言えました!」

剣士「…子供か、俺は!」

魔道士「子供じゃん!」

剣士「うっせ!」

魔道士「えへへ…そっかぁ」


…サァァァッ、ソヨソヨ…


魔道士「そっかぁ、うん…。好き、かぁ…」

剣士「…悪いかよ。つーか散々出会った時から言ってたじゃねえか」

魔道士「最初のはおふざけでしょ?」

剣士「可愛いって思ったのは本当だぜ?」

 
魔道士「むっ…」

剣士「それにな…ふざけてないと本音がいえねえんだよ」

魔道士「…」

剣士「意外とふざけながらも、本気で物事言ってる男って多いぜ」

魔道士「…そうなの?」

剣士「たぶん、そうだ」


魔道士「じゃあ…えーと…」コホンッ

剣士「…ん?」

魔道士「私もふざけてみよっかな」

剣士「あん?」

 
魔道士「私も剣士のこと好きだぜー!」

剣士「お…」


魔道士「…」

魔道士「…あははっ。本当にふざけてると、すんなり言えちゃうね」


剣士「…」

 
魔道士「…えへへっ」

剣士「な…魔道士」

魔道士「なぁに?」

剣士「今の言葉は…。ふざけた本気なのか?冗談なのか?」
 
魔道士「…どうだと思う?」

剣士「俺と…一緒の気持ちだと思う」

魔道士「…」

剣士「…」


魔道士「剣士が思ってる通りだと思う♪」

剣士「…」

 
魔道士「あ…。ご、ごめん。こういうのはきちんと言わないといけないよね」

剣士「いや、俺らにゃこんくらいで合ってるのかもしれねーぞ」

魔道士「…ふふっ、そうかもね」

剣士「まぁ…、分かってたけどさ。改めてお互い顔合わせてこんな言葉言うと…少し恥ずかしいな」

魔道士「…うん」


剣士「…」

魔道士「…」


剣士「…だけど」ボソッ

魔道士「?」

剣士「やっぱり男として、正面に立って言わないといけない気はする」

魔道士「えっ?」

 
…ムクッ!

剣士「…ごほんっ!」

魔道士「!」


剣士「ま…、魔道士。いいか?」

魔道士「…」コクン


剣士「改めて俺はお前が…好きだ」

魔道士「…!」

剣士「仲間じゃなくてさ…。俺自身として」

魔道士「…」

剣士「こんな俺だけどよ、付き合ってくれないか…?」

魔道士「…」

剣士「…」

  
魔道士「…」

魔道士「…こ、この…」ブルッ


剣士「ん…」


魔道士「この…、バカァッ!!」

…ベシッ!!


剣士「あだっ!」

魔道士「きちんと言うなら、もっと早く言ってよ!」

剣士「な…」


魔道士「乙女格闘家さんと武道家とか、近くで見てきて…」

魔道士「私と剣士より出会ったのは遅かったのに…その…」

魔道士「す、少し悔しかったっていうか…さみしかったっていうか…!」

 
剣士「…」

魔道士「もう…!それに、こんな場所で言うなんて…剣士らしいっていうかさ…」グスッ

剣士「な、泣いて…」

魔道士「あ…」ポロポロ

剣士「どどど、どうしたんだ?泣くなって!ちょっ!やっぱりこんなタイミングでダメだったな!?」バッ

魔道士「あはは…、剣士、本当に涙に弱いんだね」ゴシゴシ

剣士「ぐっ…!」


魔道士「分かんないけど、ただ泣いちゃっただけだから…大丈夫」

剣士「…」

…グイッ!

魔道士「きゃっ…」

ギュウッ…!

 
魔道士「!」

剣士「すまん…。何にせよ、俺のせいだろ」

魔道士「剣士…、こんなところで恥ずかしいよ…。武道家たちだって窓から見てるかもしんないし…」

剣士「抱きしめたくなったから抱きしめた」

魔道士「…うぅ」


剣士「だけど、これで心置きなくこうしていいんだろ?」

魔道士「そ、そうだけどぉ…」

剣士「じゃ、気持ち伝えてから初めての事なんだから…いいだろ」

魔道士「そんな事言われたら…、何も…言えないよ」

剣士「恥ずかしくて、嫌か?」

魔道士「…嫌なら吹き飛ばすもん」

剣士「くく…俺の彼女は強気だな」

魔道士「か…彼女って…!」

 
剣士「あれ?そうじゃないのか?」


魔道士「あ…、あう…」

魔道士「うんっ……ですっ」ニコッ


剣士「!」

剣士「…お、おう…」


魔道士「どうしたの?」

剣士「…今の顔、すっげぇ可愛かったと…」

魔道士「!」

剣士「…そんだけ」

魔道士「も、もう…!」

剣士「ははっ」

 
ビュッ…ビュウウッ…!!

魔道士「きゃっ…、凄い風…」

剣士「…」

魔道士「秋になっていくのかな。風はだんだんと冷たくなってくね」

剣士「…寒いのか?」

魔道士「さっきまで泥水に浸かってたし、少しだけね」

剣士「じゃあ…こうとか!」


ギュウウッ…!


魔道士「にゃ…!」

剣士「にゃって」

魔道士「つ、ついでちゃったの!」

剣士「何でよ」

 
魔道士「う~…!」

剣士「あ、やべ…」

魔道士「どうしたの?」

剣士「ニヤニヤが止まらない」

魔道士「…変態」

剣士「あぐっ」グサッ


魔道士「…な~んて。私も顔が緩んでるもん…えへっ」

剣士「こ…このやろー!」

サワッ…サワサワッ!コチョコチョッ

魔道士「ちょっ!あははっ!くすぐったいってば!」

剣士「あぁん?」

 
魔道士「も~!この!」

剣士「やべ、反撃される前に逃げないと!」

魔道士「あ、逃げちゃうんだー?」


剣士「…!」

剣士「に、逃げねえよ!もうしばらくだけ、このままがいいかな…」


魔道士「うん…私も、そっちのほうがいい…」

剣士「…」

魔道士「…」


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ザッザッザッ…

武道家「…おーい、色々終わったぞ。ちゃんと依頼完了のサインも貰ってきた」

僧侶「気難しすぎる人で、やっと評価もらえたよ…」


剣士「うっす、ご苦労さん。結構時間かかったな」

魔道士「ご苦労様~。本当に遅かったね?」


僧侶「う、うーん…。本当はサインもすんなりいくはずだったんだけど…」

武道家「…遅かったとか文句言うなよ。お前らのせいなんだぜ」


剣士「あ?」

魔道士「え?」

 
武道家「いや、何でもない」

僧侶「それより学校に戻って報告しようよ。依頼終わっちゃったしね」

魔道士「そうだね。じゃ、行こっか」

剣士「おうよ」

ザッザッ……


武道家「…剣士」ボソボソ

剣士「あん?」

武道家「お前らが、庭であんな事してっから依頼主が怒ったんだっつーの」

剣士「なっ…!」

 
武道家「あのな、窓から丸見えだったし。声聞こえなかったが、結ばれたってことでいいのか?」ボソボソ

剣士「ん…ま、まぁ」


武道家「そうじゃなかったら、あんなことしてねーもんな」

武道家「前々から付き合ってたよーなもんだったが、お互いの気持ち伝えられたなら良かったな」


剣士「お前、ずっと見てたのかよ」

武道家「見えるところでイチャつくのはバカだぜ」

剣士「うっせ!」

武道家「その点、俺はなぁ…」

剣士「…」


武道家「…あ」ハッ

剣士「バーカ」

 
武道家「…あ?」

剣士「…お?」
 
武道家「やんのかオラァ!?」

剣士「かかってこいコラァ!!」


僧侶「ま、また始まったよ…」

魔道士「はぁ~…」


武道家「俺の新技で貴様を葬り去ってやろう!」スゥゥ

剣士「神の休息を得し我が肉体の前に、その程度では傷一つ付かぬ!」スゥゥ

武道家「…はぁぁ!」

剣士「ふぉぉお!」

 
魔道士「ったく、二人ともいい加減にー…」


武道家「衝撃…っ!」ドクッ

武道家「…がっ!?」ドクンッ!

武道家「ご…、ごほっ!?げほげほっ!」


剣士「…ん?」

僧侶「武道家くん?」


武道家「ごほごほごほッ!!ゲホッ!」

剣士「どうした?」

武道家「げふっ…!はぁ…」

剣士「また風邪か?」

武道家「寒い時期にドブん中に長時間入ってりゃあな…」ゲホゲホッ

剣士「貧弱め」

武道家「殺すぞ!」

 
魔道士「はいはい、いい加減にしてってば!」

魔道士「剣士も落ち着く!武道家は風邪ひいてるなら寮戻って休む!いい!?」


剣士「…はい」

武道家「…はい」


僧侶「…これこそ、剣士くんパーティって感じだね…」アハハ…

僧侶「僕がサインを届けるから、三人は寮に戻ってていいよ。ちょっと学校で用事あるしね」

僧侶(剣士くんと魔道士さんは二人っきりに。武道家くんはお休みだね)


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数十分後 冒険学校 2年生教室 】


僧侶「はい、冒険先生。こちらが依頼完了のサインになります」

…パサッ

冒険先生「い…、いくらなんでも早くないか?」

僧侶「え?」

冒険先生「そもそも移動だけで2日以上潰れるはずなんだがな…」

僧侶「で、ですが…」

冒険先生「まさかインチキをやったとか…」

僧侶「そんなわけ!そもそも街の外にある屋敷なんか、移動に1時間かかりませんよ!?」

 
冒険先生「そ、そうか」

冒険先生「…」

冒険先生「…って、今なんと言った?」


僧侶「え?」

冒険先生「…ちょっと、依頼書を確認するぞ」

僧侶「…」


冒険先生「…」

パサッ、ペラペラ…


僧侶「…」

冒険先生「…あ゛っ」

僧侶「…冒険先生?」

 
冒険先生「ま…間違えた…」

僧侶「えっ」

冒険先生「これ、お前らの依頼じゃない…。違うパーティのだ…」

僧侶「ま、間違えたんですか!?」


冒険先生「やってしまった…。本当なら船で移動して依頼をこなすのはお前たちだったんだよ…」

僧侶「え、えぇぇ…」

冒険先生「…評価は最大にしておくよ。悪かった」

僧侶「ぼ、僕はいいですけど、剣士くんらには黙っててくださいね…。何するか分かりませんし…」

冒険先生「し、しかしなぁ」

僧侶「また学校抜け出して、勝手に依頼受けに行ったりしますよ…?」

冒険先生「そうだよな…。黙っておくよ…」

僧侶「あはは…」

 
冒険先生「やれやれ…。すまないことをしたな…」

僧侶「…そういえば冒険先生、他の人が戻るまで僕らは何をしていれば…」

冒険先生「あーそうか。他のパーティは往復で1週間近くかかるところもあるからなぁ」

僧侶「ちょっとした春休みみたいな感じになりそうですね」

冒険先生「んーむ…」

僧侶「何か別の依頼とか、演習があれば剣士くんたちは飛びつくと思うんですけど」


冒険先生「演習か…んー…」

冒険先生「…」

冒険先生「…あっ、あぁ~」ポンッ

冒険先生「そうか。ふむ…それでいいか…」


僧侶「何かありましたか?」

 
冒険先生「…剣士らに、明後日の15時に学校の校庭に来るように伝えてくれ」

冒険先生「あいつらなら、そういう内容に対して優秀だろうしな」


僧侶「…?」


冒険先生「他の空いた2、3日は休みにするしかあるまい」

冒険先生「まぁとりあえず、それだけ伝えてくれればいい。詳細は明日教えるからな」

冒険先生「なぁに、後輩にとってもいい刺激になるはずだ」


僧侶「は、はぁ…」

僧侶(剣士くんたちが優秀な成績を収められそうなモノで、後輩にもいい刺激…ってことは…)

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 2日後 冒険学校 校庭 】

ザワザワ…

大戦士「さて、1年生諸君。今日の武闘演習だが…」

大戦士「今日はゲストが来てくれた。割と有名な面子で知ってるはずだ」


剣士「…そういうことね」

魔道士「は、恥ずかしい…」

僧侶「こんな事なら余計なことを…言わなければ…」

武道家「何が始まるんだ」


1年生たち「おぉ…剣士先輩たちだ!」

1年生たち「この学校きって以来の凄い人たちなんだろ…?」

豪剣士「…」

 
大戦士「静かに。そんな尊敬するような先輩ではないぞ」

剣士「おい、大戦士兄」


大戦士「冗談だ。さて、今日の演習の中に…この剣士と武道家の二人と全員の前で戦ってもらう人はいるかな?」

大戦士「全員というわけにはいかないが、先輩の動きを見て、自分の実力と照らし合わせてみるといいかもしれないな」


剣士「…誰でもかかってくるがいい」

武道家「…相手をしてやろうぞ」

僧侶「僕らは剣士くんと武道家君がやりすぎないように見る係でーす…」

魔道士「私らにしか出来ないと思うしね…」


大戦士「さて、二人に挑みたいやつは誰かいるかー?」

 
…ビシッ

豪剣士「…俺以外いないだろ。剣士先輩、頼むぜ」


1年生たち「お、やっぱりな。豪剣士以外いないよなぁ」

1年生たち「お前なら少しはやれるかもな!」


剣士「お前か…いいぜ」クイッ


大戦士「じゃあもう一人、武道家とやるやつはいるかー?」

…ビシッ

少戦士「師匠、僕しかいないでしょ!」

大戦士「…言うと思ったよ」


僧侶「あれ?」

魔道士「し、少戦士?何で1年生の演習に…?」

 
少戦士「あ、僕は…」

大戦士「年齢が年齢でな、ちょっと制限にも引っかかり、今の2年生のお楽しみには参加を遠慮させてもらったんだ」

少戦士「そうなんです。本当は行きたかったのに…」

大戦士「お前は1年生の年齢のほうに近いし、何より結構仲良くしてるじゃないか」

少戦士「そ、それはそうですけども…」


武道家「何だそうなのか?全然知らなかったぞ」

少戦士「剣士さんたちとは同級生扱いですけど、飛び級でしたから…」

武道家「1年も2年とも仲がいいとは、複雑だな」

少戦士「別に留年してるわけじゃないんで、いいんですけどね」

武道家「まぁそれもそうか」

 
剣士「…うだうだ言ってねえで、さっさとやろうぜ!」


大戦士「ん…。はぁ、全くお前は…」

大戦士「じゃあ模擬武器は用意してあるから、選んだら試合を開始するぞ」


剣士「ほいよ」

武道家「ういっす」

豪剣士「はい」

少戦士「わかりました」

タッタッタッタッ…カチャカチャ…

 
剣士「さぁて、初めての手合わせだな」

豪剣士「ずっと願ってましたから」


武道家「何だかんだで、今日まで再戦してなかったな。どれくらい強くなったかな?」

少戦士「…武道家さん、驚かせますよ」


僧侶「…どんな試合になるのかな」

魔道士「私は、予想はついてるよ」

僧侶「予想?」

魔道士「うん」

僧侶「…僕も何気に同じかも」

魔道士「でしょっ」

 
大戦士「…では、武器を構え!」


剣士「…」チャキッ

豪剣士「…」チャキンッ


武道家「…」スッ

少戦士「…」スッ


大戦士「試合…」スゥッ

大戦士「はじめぇっ!!!」バッ

 
豪剣士「先攻をいただく!大ざ…」ブッ…

剣士「せいやぁっ!!」ブォンッ!!!

豪剣士「!!」


少戦士「閃光打げ…!」ビュッ…

武道家「衝撃波ぁぁっ!!」バスッ!!!

少戦士「えっ!」


…ガキィィンッ!!!グボォッッ!!!


1年生たち「あぁっ!」

大戦士「ふっ…」

魔道士「…うん!」

僧侶「そりゃそうだよね」

 
ズザザザァ…ドシャアッ…!!

豪剣士「が…っ!」ズキンッ

少戦士「な…、何…が…!」ビリビリッ


剣士「ん~…。やっぱり構えからの動作がまだまだ遅すぎるな。大戦士兄にもう少しで追いつきそうなのに」

武道家「俺のもまだまだ威力が浅すぎる。気力を打ち込む感覚をもっと研ぎ澄まさないといかんな」


1年生たち「あ、あの二人が…」

1年生たち「一瞬でやられ…た…?」

1年生たち「ウソだろ…?これがあの剣士先輩と武道家先輩…」

 
ムクッ…

豪剣士「ま、待ってくれ…!まだ、俺はやれる…!」ググッ

少戦士「僕だって…!」ググッ


大戦士「勝負ありだ、二人とも。ダウンした時点の隙で、真剣勝負なら殺されていたんだぞ?」


豪剣士「…ッ!」

少戦士「ぼ、僕も頑張ってきたのに…!こんな一瞬で…!」グスッ


剣士「…二人とも、別に弱いわけじゃないだろ?むしろ強いほうだと思うぜ」

武道家「そうとも。気を落とすことはない」

 
豪剣士「そ、そういう言葉を…!」

少戦士「そういう言葉は、凄く痛いです…」

剣士「あぁ?」ギロッ

武道家「なんだと…?」ギロッ


僧侶「ちょっ!」

魔道士「ふ、二人とも!どうして怒ってるの…」


ザッザッザッザッ…グイッ!

剣士「…お前、俺らが強いっていってるのを、ウソだっつうのか?」

武道家「俺らがウソついてるように見えるのかよ」

 
僧侶「剣士くん、武道家くん…」

魔道士「あ…」

大戦士「くく…」


豪剣士「ど、どういう…」

少戦士「意味ですか…?」


剣士「俺らはお前らの先輩だ。強くて当然なんだ」

武道家「それに、剣士も俺も、もっと吹き飛ばすつもりでやっていたんだがな」

剣士「その通り。だが、お前らはそのクリーンヒットから自然と抜けた」

武道家「その時点で、二人の実力は高いってわかってる」

剣士「俺らも1年前は、お前らと同じくらいだったと思うぞ」

武道家「経験の差っつーのが、お前らはどれほどデカイか知ってるだろうが?」

 
豪剣士「…」

少戦士「…」


剣士「だから、情けの言葉じゃねえし」

武道家「本音で言ってるだけだ。俺らはいつも…」


剣士&武道家「戦いにゃ本気で生きてるからな!」


剣士「だぁっはっはっはっは!」

武道家「うわぁっはっはっはっは!」

 
1年生たち「…!」

1年生たち「か…かっこいい…」

1年生たち「剣士先輩…凄い。私、彼女に立候補しちゃおうかな…」

1年生たち「えぇ!じゃあ私は武道家先輩がいいなぁ♪」

ザワザワ…ワイワイ…!


魔道士「むっ…」ガタッ

僧侶「ま、魔道士さん落ち着いて…」


剣士「…1年生の女子諸君。今、誰か俺と仲良くしたいといったかな?」ビシッ

1年生女子「は、はい!」


魔道士「…」ピクピク

僧侶「剣士くん、刺激しないでよぉ!!」

 
剣士「…残念だな」

1年生女子「…え?」

魔道士「!」


剣士「…」

…グイッ!

魔道士「きゃっ…!」

剣士「この魔道士が、俺の彼女なんだ!可愛いだろ!」ビシッ

魔道士「っ!!」


1年生たち「剣士先輩の彼女!?」

1年生たち「いいなぁ、あんな風に言われてみたい…」

1年生たち「剣士先輩、かっこいい…」

 
剣士「俺は、この魔道士のコトが大好きなんだ…。残念ながらあきらめてくれ…」

剣士「…なー?お前も俺のこと大好きでー…」


魔道士「…」

剣士「…」

魔道士「…」

剣士「…ん?」

魔道士「…」ニコッ


パァァァァアッ…!!ピカッッ……!!!


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――その日、冒険学校の周辺には轟音が鳴り響いた。

町に住む人々はまるで花火のようだったと語っている。


その強大なエネルギーに飲み込まれた1年生の生徒たちは、

魔道士のことを"爆炎の魔女"と伝説に残すことを決める。


大惨事になるかと思われた事件だったが、奇跡的に一人の死傷者も出なかった。

…その裏に、僧侶の素早い聖魔法のフォローがあったのだ。

1年生たちは魔道士と同じように、僧侶を"奇跡の聖魔使い"として崇めるようになる。


魔道士「こら」

僧侶「は、恥ずかしいって…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

………
……………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 そして2週間後 北西町 】

ザッザッザッ…

僧侶「…お待たせ!」

魔術賢者「…別に待ってないから大丈夫」

僧侶「そ、そっか。今日は休日だし、1日ゆっくりできるね」

魔術賢者「うん…」

僧侶「じゃあえっと、今日は新作が出てないか本屋にでもいく?」

魔術賢者「…」コクン

本日はここまでです。有難うございました。

皆さま有難うございます。
投下致します。

 
トコトコ…

僧侶「~♪」

魔術賢者「…」

僧侶「ふんふーん♪」

魔術賢者「…」


トコトコ…

魔術賢者「…なぁ」

僧侶「なに?」


魔術賢者「もうすぐ、学校も卒業になるが…」

魔術賢者「僧侶は将来的に、どうするか決めたのか…?」

 
僧侶「…将来?」

魔術賢者「私は、冒険者になりたいと思っているが…そうもいかないかもしれない…」

僧侶「…え?ど、どうしたの急に」


魔術賢者「猛雪山のふもとの町…」

魔術賢者「"雪降町"には中央軍の支部があるのを知っているか…?」


僧侶「うん、それは知ってるけど」

魔術賢者「私は、雪降町の出身なんだが…親が軍人で、そのコネで軍へ入らないかと連絡が来たんだ…」

僧侶「!」

魔術賢者「…迷っている」

僧侶「…」

 
魔術賢者「地元で、軍へ入れるのなら苦労もしない…。給料は安定しているし、冒険学校の知識も生かせる…」

僧侶「確かに、そうだけど…」

魔術賢者「だけど、僕は少し思っていたことがある…」

僧侶「何?」


魔術賢者「このまま、剣士…魔道士…武道家、乙女格闘家、僕、僧侶…」

魔術賢者「これで将来をともにするかもしれない…と」


僧侶「…」

魔術賢者「きっと、剣士や武道家は一緒に冒険しようって言ってくれると…そう思う…」

僧侶「うん」

魔術賢者「…僧侶は、やっぱりそっちのほうがいいと思っているか…?」

 
僧侶「…」

僧侶「…えっとね、実は…さ」


魔術賢者「うん…」

僧侶「僕自身、冒険者になれるか決め兼ねてたんだ…よね。本音を言うと」

魔術賢者「…僧侶が?」


僧侶「みんなを目の前で見てきて、どう考えても僕は剣士くんたちみたいな前に出れる人間じゃないし」

僧侶「…どちらかといえば、今までの知識を生かして人の為になることをしてもいいかなって考え始めてた」


魔術賢者「その知識を…剣士たちのためにという考えには、ならないのか…?」

僧侶「そ、それはもちろんそうだけど…」


魔術賢者「前、修学旅行の時も僧侶は…"人の為になること"と言っていたな…」

魔術賢者「もしかすると…、僧侶の中で将来的にやりたいものが…少しずつ見えてきてるんじゃないのか…?」

 
僧侶「うっ…」

魔術賢者「図星…か」


僧侶「…うん。冒険者も悪くないし、元々それが目的で学校に入ったけど」

僧侶「生活をしているうちに、ちょっとずつやりたいことが見えてきたんだ」


魔術賢者「…そのやりたいことって?」

僧侶「えっと…教会に入ろうかなって」

魔術賢者「ほう…」


僧侶「治療院で働くのも考えたけど、今の教会では治療院の役割のうえに孤児院やら色々やってるでしょ?」

僧侶「お金は入らないし、慈善団体でやってるようなものだけど、それは人の為になると思うんだ」


魔術賢者「うん…。確かに、教会の存在は庶民の味方…」

 
僧侶「だから、教会で働くのも悪くないかなって」

僧侶「中央都市の郊外で、もうすぐ募集が始まるらしいし…卒業時期にも合うし…」


魔術賢者「…そうか」

僧侶「…うん」

魔術賢者「いいんじゃないか…。立派なことだと思う…」

僧侶「そう…なんだけど…」

魔術賢者「?」

僧侶「やっぱり、寂しくなるし迷ってる」

魔術賢者「まぁ…そうだろうな…。僕も僧侶がいなくなると…寂しいと…思う」

僧侶「あはは…」

 
魔術賢者「…ふふ、少し僕にも僧侶の考えが移ってしまったのかもしれないな…」

僧侶「え?」

魔術賢者「実は…僧侶が、人の為にと思って教会に関する勉強をしていたのは…知っていた…」

僧侶「!」


魔術賢者「僕も興味が出て…調べた…」

魔術賢者「人の為になる事が…、どれほど素晴らしいことか…知ることができた」

魔術賢者「だから…、支部だろうと中央軍で働くことは…世のため人のためになる…。」

魔術賢者「そう思ったら、軍への誘いをすぐに断ることが出来なかった…」


僧侶「…」

魔術賢者「…」

 
僧侶「…魔術賢者さんが、もし支部へ入隊するというなら僕は教会へ行こうと思う」

魔術賢者「!」

僧侶「…君は、どっちにしたいと思う?」

魔術賢者「…ずるい質問だな」

僧侶「…」


魔術賢者「じゃあ…僕もこうする…。僧侶が教会へ行くというなら、僕は支部へ行こう」

魔術賢者「…どうする?」


僧侶「…」

魔術賢者「…」

 
僧侶「…魔術賢者さんは、人のためになることへ夢を持ったんだよね」

魔術賢者「一応、そうなるな…」

僧侶「…その夢を壊すことは、僕にはできない」

魔術賢者「…」

僧侶「君がそれを夢というのなら、僕は教会へ行くよ」


魔術賢者「…」

魔術賢者「…何も、言えないな」


僧侶「…」

魔術賢者「時間はあるとは思うけど…わかった。君がそういうなら、僕も心を決めるよ」

僧侶「…うん」

魔術賢者「…」

 
タッ…タタタタタッ!!!

???「…魔術賢者ちゃ~んっ!」バッ!

魔術賢者「ん…」

…ダキッ!!ズザザザァ!!ドォンッ!!


僧侶「ま、魔術賢者さぁん!?」


トコトコ…

武道家「あーあー…。邪魔するなっつったのに…」

僧侶「武道家くん!?ってことは…」チラッ


魔術賢者「苦しい…乙女格闘家…」ギリギリッ

乙女格闘家「偶然!ここで会うなんて!」

 
武道家「お前らもデートかなんか?」

僧侶「…え、えっと…。武道家くんたちはデートなんだ?」

武道家「…あっ。ま、まぁな」

僧侶「うわ…、少しずつだけど表にグイグイ出すようになってきたね…気持ち」

武道家「うっせ!」


トコトコ…

魔道士「やっほー。遠くから見てて声かけるか迷ったけど、乙女格闘家さんが突っ込んだから来ちゃった」

剣士「よっ」

 
僧侶「剣士くん、魔道士さん」

武道家「ようっ」

乙女格闘家「魔道士ちゃん、やっほー」

魔術賢者「乙女格闘家…しま…ってる…」ギリギリッ


剣士「何だ、休日なのに結局一緒のメンツだな」

魔道士「このまま皆で遊びに行っちゃう?」

乙女格闘家「さんせい!」

武道家「いいぜ、新しい店がオープンしたらしいしそこ行ってみるか?」

 
僧侶「…」

魔術賢者「…」

僧侶「この話は、また今度だね」

魔術賢者「…うん」


武道家「…何の話だ?」

乙女格闘家「なになに!?」

僧侶「な、何でもないよ!」

武道家「教えてもらおうかなー?」

僧侶「ひ、秘密だってばー!」

ギャーギャー!!ワイワイ…!

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 

………
…………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 1か月後 教室 放課後 】


剣士「ふわぁ~…」

魔道士「おっきなあくび」


武道家「今日の授業も終わったか」

乙女格闘家「最近、1日が早いよねー」


僧侶「何だかんだでもう10月なんだね。あと4、5か月くらいで卒業だよ」

魔術賢者「そろそろ…本格的に進路…、考えないと…ね」

 
剣士「進路か…」

魔道士「そうだよね。いつまでも生徒じゃないんだから」

剣士「あっという間だった気もするが、何だかんだで実力はついているんだろうな」

魔道士「きっとそうだと思う。1年生のころの魔石の洞窟は、今なら余裕でクリアできそう」

剣士「…もともと余裕じゃなかったか?」

魔道士「剣士と武道家だけはね…」


武道家「それにしても、本当に俺らは冒険者になれんのかね」

乙女格闘家「冒険者っていう職業がどうなのかは分からないけど、依頼を受けて生活くらいなら出来そうかな?」

武道家「魔物だのなんだの、とりあえず倒せば金入るんだろ?」

乙女格闘家「極論的にはそうかもしれないけどー…」

 
僧侶「…」

僧侶「ぼ、僕は冒険者になるかちょっと迷ってる」


剣士「!」

武道家「!」

魔道士「!」

乙女格闘家「!」

魔術賢者「…」


剣士「…どうしたんだ?今まで冒険者になるために頑張ってきたんだろ?」

僧侶「そ、それはそうなんだけどさ…」

剣士「…?」

 
僧侶「その…、僕には無理かなって…」

剣士「お、おいおい。いつか話してくれただろ…。お前の親のように立派な支援として冒険者に…」

僧侶「支援者っていうかさ…、僕は人の為に尽くせる人になりたいって考えのほうが強いんだと思う」

剣士「…!」


僧侶「じ、自虐になっちゃうんだけど…」

僧侶「僕は目立つほうじゃなかったし、何より裏方に回るほうが得意かなって」

僧侶「剣士くんや武道家くんのように、常に前進の考えはどうしても持てなくて…」

僧侶「冒険者たるもの、前を向かず歩いてどうするっていう話も聞くしさ…」


剣士「…待て。なぁ僧侶…俺の気持ちもいっていいか?」

僧侶「う、うん」


剣士「この4人のまま……いや」

剣士「乙女格闘家と魔術賢者も…この6人で、一緒に冒険していきたいと思っていた」

剣士「すっげー楽しいし、ずっと一緒でいたいと思うんだ。お前は…そう思わないのか?」

 
僧侶「…!」

魔術賢者「…」


剣士「…どうなんだ」

武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」

魔術賢者「…」


僧侶「……っ」

僧侶「そ…そりゃあそう思うよ。剣士くんたちと一緒に世界を走れたら、どれだけ楽しいだろうって」


剣士「じゃあ…!」

 
僧侶「で、でもっ!」

剣士「!」

僧侶「さっき武道家くんが話をした"本当に冒険者になれるのか"って聞いた時…みんなはどう思った?」


剣士「そりゃ…、何とかなるって思ったさ。いや、その為に俺はココへ来たんだから」

魔道士「ちょっと恥ずかしいけど、剣士と一緒ならって…」

武道家「俺も剣士と同じで、冒険者になるためにココへ来たが本心だけどな」

乙女格闘家「私は武道家と一緒ならって。魔道士ちゃんと一緒の気持ち」

魔術賢者「…」


僧侶「…」

僧侶「僕は、この道が少しの不安がよぎったって言うか…何ていうか…わかんないけど…!」

僧侶「…ここまで来て、情けない話だけど…」

 
剣士「お前、だったら俺らが引っ張ってー…!」

僧侶「…うん。きっと剣士君ならそういうと思った」

剣士「むっ…」ピクッ

僧侶「だけどさ、剣士くんたちの言葉でも…心があまり動かないかもしれない…」

剣士「どうして…」


武道家「…」

武道家「…僧侶」ハァ

 
僧侶「…?」


武道家「それじゃ剣士にケンカ売ってるだけだぜ」

武道家「正直に言えよ…お前、何か違う道を見つけたんだろう?」

武道家「言葉が浮かばないなら、お前が思うことをきちんと言ったほうがいい」


僧侶「!」


武道家「2年も付き合ってきたんだ。お前の態度で本音くらいわかるさ」

武道家「剣士は気づいてても、お前をどうしても冒険者の道にいれたいらしいがな」ククク

  
僧侶「け、剣士くん…」

剣士「…」

武道家「…剣士、全員が一緒の道っつーわけにゃいかんだろ。お前だってわかってるんだろ」

剣士「…」


武道家「俺だって、みんなで一緒で戦いたいし、ずっと一緒にいてぇよ」

武道家「…だけどな、剣士。それは素直な気持ちの前に、ただのワガママってやつだ」


剣士「う…うっせぇよ!!」

武道家「…」

剣士「うっせぇ…」

 
僧侶「剣士くん…」

剣士「…あんだよ」

僧侶「僕の本当の歩きたい道、聞いてくれる…かな」


剣士「…」

剣士「言えよ…」


僧侶「…ありがとう」

剣士「…」

 
魔道士「私も気になるよ。僧侶の言う、冒険者以外の道って一体なに…?」

魔術賢者「僕は…何回か聞いてる…」


僧侶「うん。僕はさ…"教会"で働きたいんだ」


剣士「き…」

武道家「教会っ!?」

魔道士「祈祷とか、孤児院とか…そういうところの?」

乙女格闘家「な、なんでまた…」


僧侶「あと治療院とかも関わってるし、冒険者の休憩所とかもしてるから…」

僧侶「間接的にだけど、冒険者に関わってるかなって」

 
武道家「だけど、教会って大変らしいじゃないか」

武道家「慈善団体のようなものだし、生活だって…」


僧侶「生活を気にしてたら、人を救う仕事なんて出来ないと思う」

僧侶「冒険者だって、そうでしょ?」


武道家「た、確かにそうだが…」

僧侶「…僕は、それがやりたいと思った。これは…僕自身が決めた事だから…」

武道家「僧侶…」


剣士「……あーあ、アホらしいわ!!」

魔道士「ち、ちょっと!剣士!」

剣士「先に帰ってるわ。勝手に教会でもどこでもすりゃーいーじゃん」ガタッ


僧侶「け、剣士くん…」

 
剣士「…」

カツカツカツ…、ガラッ!バタンッ!


僧侶「わ、悪いことしちゃったかな…」シュンッ

武道家「お前は悪くねー。こんな状況で、よく言ってくれたよ」

僧侶「…」

魔術賢者「うん…。僧侶、えらい…」

僧侶「え、偉いって…」


魔道士「剣士…」


武道家「あいつはさ、ずっと一緒にいれると思ってたんだろう」

武道家「だからこそ、真剣に向き合った僧侶の気持ちも分かってる」

武道家「だけど、ああいう態度しか取れない奴だから…」

 
僧侶「で、でも…」

武道家「大丈夫だっつーの。あいつも認めてるって」

僧侶「…」

武道家「どうしたらいいか分かんないだけだ。今まで通り、剣士は剣士に戻るから大丈夫だ。心配すんな」

僧侶「うん…」


魔道士「…私、剣士追いかけてくる」

武道家「それがいいかもな」

魔道士「うん。またね、みんなっ」ダッ

タタタタッ…ガラッ、バタンッ!


武道家「…んじゃ、俺らも帰ろうかね。僧侶、気にしすぎるなよ?」

僧侶「うん…」

 
乙女格闘家「じゃ、私も武道家と一緒に帰るね。じゃあね、また明日」

僧侶「また明日」

トコトコトコ…ガラッ、バタンッ!


僧侶「…」

僧侶「…」

僧侶「…はぁ」


魔術賢者「…僧侶、大丈夫?」

僧侶「魔術賢者…」

魔術賢者「僧侶…立派だった」

僧侶「…」

 
魔術賢者「…でも、僧侶がそうなら…」

僧侶「…」

魔術賢者「僧侶がそうなら…"私"は……」

僧侶「うん…。わかってる…」

魔術賢者「…」

僧侶「…」


ガタガタ…ガラッ!

魔術賢者「ん…」

僧侶「…誰か戻ってきたの?」

 
冒険先生「…っと、何だ二人とも。残ってたのか」


僧侶「ぼ、冒険先生!す、すぐに帰ります!」

魔術賢者「うん…、帰ろう…」

トコトコ…


冒険先生「…」

冒険先生「僧侶、ちょっといいか」


僧侶「は、はい」


冒険先生「剣士の奴がな、さっき廊下を走ってったんだが…」

冒険先生「お前に謝る言葉はなんだのと、ぶつぶつ言いながらどっかへ走って行ったぞ」


僧侶「!」

 
冒険先生「…色々あると思うが、俺はそういう事に関して極力、干渉はしないようにしている」

冒険先生「だが、この時期からはこういった事もあるだろう」

冒険先生「うまく言えないが、お前らなら何があっても大丈夫だと思っているよ」


僧侶「冒険先生…」

魔術賢者「…」


冒険先生「ほら、明日も早いんだ。早く寮へ戻ることだな」


僧侶「あ、はいっ。また明日です!」

魔術賢者「失礼します…」


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

タッタッタッタッ…


魔道士「け、剣士待ってよ~!」

剣士「!」

魔道士「はぁ…はぁ…。やっと追いついた…」

剣士「…」

 
魔道士「剣士ったら、あんな言い方して…」

剣士「…うっせ」

魔道士「でも、気持ちは凄い分かるよ」

剣士「…」

魔道士「一緒に帰ろうよ」

剣士「おう…」


トコトコ…


魔道士「…」

剣士「…」

 
魔道士「…剣士」

剣士「なんだ」

魔道士「怒らないでね…」

剣士「…」


魔道士「剣士は、みんながバラバラになるのが許せなかったんだよね」

剣士「…」

魔道士「私だって一緒の気持ち。ううん、みんな一緒の気持ちだと思う」

剣士「…」

魔道士「でも、それが絶対じゃなかった事くらい…剣士にもわかってるんでしょ?」

剣士「…」

魔道士「剣士の心の底じゃ、もう僧侶の道を認めてるんだよね」

剣士「…」

 
魔道士「剣士のことだから、どうやって謝ろうか…必死に考えたりしてたんでしょ?」

剣士「なっ…」

魔道士「図星。やっぱりね…、そうだと思った」

剣士「くそっ…。感情に身を任せちまうのはどうも治らないみたいでな」

魔道士「確かに悪いところだけど…、良さでもあると思う」

剣士「良さ?」


魔道士「剣士がどれだけ仲間を想っていたか…凄い伝わってきたもん」

剣士「…」

魔道士「だけど、仲間を想うなら…僧侶の選らんだ道も態度で向き合って…」

剣士「分かってるよ!分かってるっつーの…!」

 
魔道士「…あっ!ご、ゴメンね。こ、こんな風に言うつもりじゃなかったんだけど…」

剣士「いいよ。僧侶の心配もだけど、どうせ俺のことも心配して来てくれたんだろ」

魔道士「…当たり前だよ」


剣士「…」

剣士「寂しいなぁ。」ボソッ


魔道士「剣士…」

剣士「分かってても、寂しい」

魔道士「みんな、一緒だったもんね」

剣士「出会いは別れの始まりって言葉が…響く」

魔道士「…」

 
魔道士「確かに卒業と同時に離れ離れになっちゃうかもしれない」

魔道士「だけど…剣士パーティは、剣士パーティ!仲間は仲間!そう思ってるよ!」

剣士「…」

魔道士「ずっと友達!みんな…ずーっと大事な仲間なの!」

剣士「…っ」


魔道士「…でしょ?」ニコッ

剣士「あ…あぁ。そうだよな…。きっと…そうだよな」

 
魔道士「それに私も、剣士とずっと一緒の道を歩んでいくつもりだからねっ♪」

剣士「魔道士…」


魔道士「きっと周りから見たら、子供の会話なのかもしんないけど…」

魔道士「私はそう思ってる。何があっても、一緒にいれたらって」


剣士「…俺だってそう思ってる」

魔道士「…うん」

剣士「ずっと一緒にいような」

魔道士「…」クスッ


剣士「…何がおかしい」

魔道士「えへっ…。そ、そうやって面向かって言われると恥ずかしいなって…」

 
剣士「…素直ってことで」

魔道士「剣士が本気で素直すぎると、私が恥ずかしい…」

剣士「恥ずかしかるのも、可愛いと思うぞ?」

魔道士「…ううっ」


剣士「魔道士、もっとくっついて歩こうぜ」グイッ

魔道士「あっ…」ギュッ


剣士「…」

剣士「な…ちょっと話は変わるが、少し前まで思ってたことなんだが…」


魔道士「…なぁに?」

剣士「俺は魔道士を好きな気持ちは隠してても、楽しくしてたし、そのままでいいと思ってた」

魔道士「…」

剣士「お互い、少しでも好きって気持ちが分かってるなら、自然の成り行きのままでもいいってさ」

 
魔道士「…うん」

剣士「だけど本を読み始めて、考えが変わって。今まで以上に、色々と素直になろうと思った」

魔道士「あの時だね…」

剣士「打ち明けて良かったと思う。俺…、やっぱりあのままじゃ満足できなかったと思ってる」

魔道士「…うんっ」


剣士「お前と出会えてよかった。ありがとな」

魔道士「ううん…、私こそ」

剣士「…」ニコッ


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

トコトコ…

乙女格闘家「…」

武道家「…」

乙女格闘家「…武道家、無理してたね。頑張ったね、偉い偉い」

武道家「…わかった?」

乙女格闘家「剣士に感謝してることまで!」

武道家「お、おいおい…。本当に全部お見通しなのかよ」


乙女格闘家「私を誰だと思ってる!」

武道家「…だな」

 
乙女格闘家「気持ち、すっごい分かるよ」

武道家「剣士がああ言わなけりゃ、俺が文句言って外へ出てっただろうよ」

乙女格闘家「そしたら多分、剣士が武道家と一緒のことを言ってたよね」

武道家「絶対そうだろうな」ハハッ

乙女格闘家「剣士と武道家は仲いいんだなぁ…。私以上に厚い関係かも?羨ましい…なーんて」

武道家「おいおい、それとこれは違うだろ。お前と剣士への想いは違うぞ?」


…ギュッ

乙女格闘家「ありがと♪」

武道家「…剣士はなんつうか…、兄弟っつーか…。もう、そんなんじゃ言えない関係だと思う」

乙女格闘家「そういえば、二人とも兄弟はいないんだっけ?」

武道家「そうだな」

 
乙女格闘家「そっかぁ。だから兄弟以上に…お互いがお互いを認め合ってるとかなのかなー」

武道家「難しいけど、そんな感じじゃねえか?」

乙女格闘家「そっか~…」

武道家「…」


カァ…カァ…

乙女格闘家「夕焼けが綺麗~」

武道家「毎日、一緒に見てる景色じゃん」

乙女格闘家「…ダメだなぁ、そこは"お前のほうがきれいだよ"とかさ!」

武道家「あぁ…」

乙女格闘家「薄い反応だなぁっ!」

 
武道家「だって、当然のこと言ったって嬉しくないかなと」

武道家「まぁ、綺麗以上に可愛いとか思ったりしてっけども」


乙女格闘家「にうっ…」

武道家「…何だ、にうって」

乙女格闘家「嬉しくてつい」アハハ

武道家「へいへい」

乙女格闘家「へへー武道家!大好き!」

武道家「俺もだよ」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

本日はここまでです。
次回更新は久々の連日更新(明日更新)を予定しており、
少量とはなりますが、次回にて「冒険学校」の最終回となります。

それでは、有難うございました。

もう卒業かと思ったらよく考えたら1スレ消費してんだよな

皆さま有難うございます。それでは投下致します。

>>159
そうですね…、本日のもあわせるとほぼ2日に1回更新で
1スレほぼ埋めておりましたので。

 
……
…………
………………

そして、さらに時間は流れる。

ふと気が付けば…3月を迎えていた。

つまり…剣士ら2年生が卒業する日である。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 3月(卒業式) 2年生教室 】


剣士「…もう、卒業か」

魔道士「あんな言い合った日から、あっという間だったね」

武道家「言い合った日っつーかさ、学校始まってからあっという間だったぜ」

乙女格闘家「うん…。もう学校生活も終わりなんだね」

僧侶「気がつけば…早かったね」

魔術賢者「早かった…」

まあ1時間で追いつける量だったね

 
僧侶「剣士くん。僕は…僕の道のままって決めているよ」

剣士「分かってる。お互い、頑張ろうな」

僧侶「うん!」

剣士「その…なんだ。本当に悪かったなあの時は…」

僧侶「…次の日にお互い謝ったでしょ。もう気にしないようにしようよ」

剣士「だな。ありがとよ」

僧侶「…」ニコッ


武道家「つーかさ、この後の卒業式終わったらそれぞれの希望毎にバラバラだろ?」

武道家「実質…、これが僧侶といられる最後の時間ってことになるのか」

 
僧侶「そ、そうだね…」

魔術賢者「それに関してなんだけど…ちょっといいかな…」

武道家「どうした?」

乙女格闘家「あ、もしかして僧侶くんと一緒に着いていくとかー!?」


魔術賢者「ち、違う。言いそびれてたけど…」

魔術賢者「実は私…、中央軍に勤める事になった…」


武道家「…はい?」

乙女格闘家「え?」

剣士「…中央軍に?」

魔道士「勤めるって…!」


魔術賢者「私の親が…猛雪山の支部で働いてる人で…」

魔術賢者「言い方悪いけど…、コネでその支部で軍人として働くことに…」

 
僧侶「…僕は知ってたよ」

魔術賢者「うん…」


乙女格闘家「な、何で急にまた…」

魔術賢者「僧侶が離れるというなら…、私の決心もついた…」


乙女格闘家「…二人とも、バラバラになっちゃうよ?」

魔術賢者「仕方ない…。寂しいけど…」

乙女格闘家「哀しいよ…」

魔術賢者「…何で、乙女格闘家が…哀しんでくれる…?」

乙女格闘家「何でって…」グスッ

魔術賢者「…っ」

 
剣士「…みんな、それぞれの道で頑張るんだな」

武道家「乙女格闘家、こいつらの決めた事だろう。簡単に変えられる事じゃない…」

乙女格闘家「うん…」

魔道士「そっか。仕方ないよね…」


…ガラッ

豪剣士「失礼します」

少戦士「失礼します」


剣士「…お、二人とも」

 
豪剣士「卒業、おめでとうございます。一応ご挨拶に」

少戦士「おめでとうございます、みなさん」


剣士「皆さんって…、少戦士は一緒に卒業じゃないのか?」


少戦士「前もでしたが、年齢制限が引っかかったり…大戦士師匠がここに残るので…」
 
少戦士「僕はこのままもう1年だけいないといけないんです」


剣士「そうだったのか…。少戦士、楽しかったぜ」

少戦士「はい…、ありがとうございます」ペコッ
 
 
豪剣士「そういえば剣士先輩、大戦士先生が校庭に来てくれと」

剣士「…大戦士兄が?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 校 庭 】

タッタッタッ…

剣士「大戦士兄~、何か用か?」

大戦士「お、来たか」


ワイワイ…

武道家「どうしたどうした、戦うのか?」

魔道士「最後の決戦みたいな…」

僧侶「また校庭が爆発するんじゃ…」ガクガク

魔術賢者「それ…魔道士…」

乙女格闘家「あははっ、魔道士の魔法は本当にすごいよね!」

魔道士「…ほ、ほめられてるのかな…?」

 
大戦士「だ…団体さんだな」

剣士「で、どうしたんだよ。もうすぐ卒業式始まっちまうぞ?」

大戦士「なぁに、ちょっとね」

剣士「…?」


大戦士「1年前の記録を調べたんだけど、剣士は武装大佐と戦っただけで…」

大戦士「学校の冒険者の身体測定には正式記録として参加してないみたいじゃないか」


剣士「あぁ、そうだったな」

大戦士「そこで、卒業前に折角だから記録をとってもらおうかと」

剣士「…はぁ?」

大戦士「本当はこれ問題なんだよね。中央軍政府に出す資料として、正式な記録残さないといけないから」

 
剣士「…武装のオッサン、忘れてたってことか?」

大戦士「あの人、戦いばっかでそういうところ疎かったりするからなぁ」アハハ

剣士「はぁ…仕方ねぇな。で、何するんだ?」

大戦士「簡単なことさ、50メートル走を測るだけだよ」

剣士「…まじで?」

大戦士「だからすぐ終わるって。ほら、早く準備して」

剣士「仕方ねぇなぁ…」

トコトコ…


大戦士「魔法でも使って、早く走るかい?それも許可されてるけどね」

剣士「んなことしねぇよ。己の足のみで思いっきり走ってやる」

大戦士「そかそか。んじゃいくぞー…」スッ

 
…ググッ

剣士「…」

大戦士「…ドンッ!」バッ!


ダッ…、ダダダダダダッ!!!ビュウッ…!!


魔道士「うわ、はっや」

武道家「あの野郎、俺より早いんじゃないのか」

乙女格闘家「でもあれ、1年生の記録として残るんでしょ?」

僧侶「大戦士先生も緩い人だからなぁ…、仕方ないね…」

魔術賢者「一生…残る記録になりそう…」

 
ダダダダダッ!…ズザザァ…!!

大戦士「…っし!測定終了!」バッ!


剣士「っしゃあ!3秒きってたろ!?」

大戦士「残念、4.5秒」

剣士「おっそ!ウソつくなって!」

大戦士「測る道具の調子が悪くてね。っていうか…わざと4.5秒にしといたんだよ」

剣士「ああん?」

大戦士「あまり早いと、公的記録には残せないだろ…。本当に1年生の記録か怪しまれるって」

剣士「あぁ確かに…」


大戦士「それでも、この学校の最速なんだからいいってことで!」

剣士「しゃあねえな…」

 
大戦士「それじゃ…剣士の記録…と。学校記録、報告記録…」カキカキ


剣士「…」

剣士「…待てっ!大戦士兄!」


大戦士「ん?」

剣士「せめてかっこよく、学校記録のほうには"伝説剣士"とかっつー名前で登録しといてくれ」ハハハ!


魔道士「だっさ」

乙女格闘家「ださっ」

僧侶「ださい…」

魔術賢者「ださ…い…」

 
大戦士「…いいなそれ!かっこいいじゃないか!」

武道家「俺も伝説武道家にしとけばよかったぁぁ!くそっ!」

剣士「うはははは!」


魔道士「…」

僧侶「…」

乙女格闘家「…」

魔術賢者「…」

 
僧侶「じ…、じゃあ卒業式に行こうよ。また遅刻したら冒険先生に怒られちゃうから!」

魔術賢者「そう…だな…」

剣士「最終日まで怒られるのは俺ららしくねえか?」

武道家「まぁ確かに」

魔道士「バカなこといってないで早くいくよ!」

乙女格闘家「いそごっ!」


剣士「んむ…行くか!」

タッタッタッタッタッ…

…………

………

 


………

…………
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 会 場 】


冒険先生「…諸君。今まで、よく頑張ってくれたな」

冒険先生「言葉は悪いが、今まで以上に大変な生徒たちだったと思う」

冒険先生「だが、それ以上に誇らしい生徒でもある」

冒険先生「君たちが、大いに活躍することを願って…別れの挨拶とする」


全員「…」


冒険先生「そして…死なないでくれ。それだけだ」
 
 
全員「…」

 
冒険先生「あっという間に過ぎ去った時間だったかもしれない」

冒険先生「だが、その全ては力となり、明日への生きる道となってくれるはずだ」

冒険先生「この学校から、大いに羽ばたいていけ!」
 
冒険先生「それでは…2年間っ!!ご苦労であったっ!!!」


全員「ありがとうございましたあっ!!!」

………



………

剣士「…なんつーシンプルな挨拶。測定のほうが長かった」

武道家「冒険先生らしいぜ」

剣士「それじゃ…これからどうするんだ?」

魔道士「冒険者希望者は、最初の依頼を紹介して貰えるから冒険先生のところ行くんだよ」


僧侶「…僕は、聖魔先生のところだね。今日中に、色々しないといけないらしくて…」

僧侶「そのまますぐに、中央都市行きの馬車に乗るんだって…。これでさよなら…だね」

 
剣士「なぁに、会いに行くさ」

僧侶「うん。楽しみにしてるからね」

剣士「おう!」


魔術賢者「僕は…、もうすぐ出る馬車で…北方大陸の猛雪山のふもとの雪降町へ行くから…」

魔術賢者「また…会おうね…」


乙女格闘家「…必ず!」

僧侶「もちろん!」


魔術賢者「…」コクン

 
僧侶「それじゃみんな…」

魔術賢者「ありがとう…。またね…」


剣士「…おう!」

武道家「またな!」

魔道士「僧侶、魔術賢者さん…また会おうね!」

乙女格闘家「二人とも、元気でねー!!」


タッタッタッタッタッ……


剣士「…」

剣士「…いっちまったか」


武道家「あまり長くいすぎると、別れもつらくなるしな」

 
剣士「だけど、すぐに会えるっしょ。俺らにかかれば、世界なんざ狭い狭い!」

武道家「だぁっはっはっは!そうだな!」

魔道士「ふふっ」

乙女格闘家「頼もしいじゃん♪」


トコトコ…ポンッ

剣士「あん?」クルッ

…グニッ

剣士「ほ…頬に指…。なんつう古典的な技を…。こんな事するのはー…」

大戦士「…よっ」

剣士「大戦士兄だよなー」

大戦士「みんな、改めて卒業おめでとう」

剣士「うむ」

 
大戦士「君らは勿論、冒険者志望なんだろう?」


剣士「…まあな!」 
 
武道家「それ以外あるわけねーな!」

魔道士「そうですっ!」

乙女格闘家「頑張っちゃうよ~!」


大戦士「…自由気ままのパーティとして活躍していくつもりかな?」


剣士「まぁその辺は…。たぶん…そうかも」

武道家「大体の依頼はこなせそうだし、生活自体も不自由しなそうだしな」


大戦士「ふむ…」

 
剣士「…大戦士兄、何かしたのか?」

大戦士「いや何、君たちが良ければなのだが…」

剣士「…?」

大戦士「実はな…」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 寮への帰路 】

ザッザッザッ…


剣士「…まさかだった」

武道家「いきなりだったな」

魔道士「中央軍の本部への入隊を薦めるって…」

乙女格闘家「軍人って道は考えてなかったにゃ…」

 
剣士「…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大戦士「…君たちがよければ、中央軍へ4人で入隊を紹介するが、どうだろうか」

剣士「えっ?」


大戦士「もちろん、俺の顔を利かせ、君らに不自由のない待遇をするつもりだ」

大戦士「一般冒険者と同じように自由に動いてもらいつつ、軍事のクエストも受諾できるように出来る」

大戦士「俺がしてきたような、大隊や中隊に交わる軍事任務ではなく、4人で自由に動けるようにして貰える」

大戦士「悪い話じゃないと思うんだが、どうだ?」


剣士「つまり、一般冒険者の扱いで、中央軍所属者のみの専用任務も受けられると?」

大戦士「そういうことだよ。君たちの実力なら、すぐにでも入れるはずだしね」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

剣士「中央軍か…」

魔道士「どうするの剣士?」

 
剣士「確かに色々と便利そうだし、大戦士兄の顔も利くって魅力はでかいんだけどなー」ウーン

武道家「乗り気じゃないのか」 
 
剣士「堅いの、俺に向いてるか?」

武道家「向いてないな」

剣士「だろ?」


魔道士「やっぱり断るの?」

剣士「…正直言えば。お前らはどう思う?」

魔道士「私はどっちでもいいと思うけど…、剣士の赴くままにって感じかな」

剣士「お前らは?」


武道家「俺は自由気ままがいいと思ってるぜ」

乙女格闘家「私も武道家にさんせー!」

 
剣士「…じゃあ、大戦士兄には悪いが断ろうぜ」

武道家「そうだな。やっぱり俺らは、少しでも縛られるの好きじゃねーしな!」

剣士「そうそう。俺らは俺らだけで、世界に名を残す人間になってやろうぜ!はっはっは!」

武道家「お、いいねぇ。まずは上位やら危険指定種された魔物でも倒しにいくか!?」

剣士「いいね!やってやるぜっ!!」

ワイワイ…!


乙女格闘家「…魔道士ちゃん、これからもよろしくね♪」

魔道士「うん。こちらこそ」

 
剣士「まずは卒業記念に、大きな町で遊んだりしちゃうか!?」

武道家「いいねぇ!もしかしたら色々と楽しい場所もあるかもな!?」

剣士「そうだな、ぐふふ…」

武道家「ぐふふ…」


乙女格闘家「あの二人、あまり調子に乗るようなら私らで制裁加えないとね…」ゴゴッ

魔道士「賛成…」ゴゴゴッ

 
剣士「…」ゾクッ

武道家「…」ゾクッ

…クルッ


魔道士「二人とも…」ニコッ

乙女格闘家「これからも、よろしくね」ニコッ


剣士「は…」

武道家「はい…」

 
剣士「…」

剣士「あっ!つーかさ、冒険先生に最初の依頼もらいに行くの忘れた!」


武道家「…まぁいいじゃん。最初から色々見つけるほうが、俺らっぽくね?」


剣士「あ、それもそうか。じゃ、まずはどこいく!?海を渡るか、大陸を横断するか!」

剣士「それとも本当にいきなり上位種探すか!」


武道家「俺らは…風のままに、だろ!」

剣士「だな!はっ~はっはっはっはっ!」

魔道士「…やれやれ」

乙女格闘家「楽しみになってきた♪」


剣士「うしっ!それじゃみんな!」パァンッ!

 
魔道士「うん!」

武道家「おうっ!」

乙女格闘家「うんっ!」


剣士「……冒険へ、出発だ!!」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
――――北西冒険学校。

その日、若き冒険者たちは世界へと羽ばたいた。

待ち受ける未来は、光か闇か。

壮大な物語はまだ始まったばかりである――――


・・
・・・
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
……そして。

春。夏。秋。冬。

幾度の季節が巡り、歳月は流れた。


その月日の中、世界にわずかばかりの変化があった。

冒険の礎を築きし、冒険者の先人たちがいよいよ休息の時期を迎えたのだ。

言わば、引退である。


…そう、つまり。

"若き冒険者たち"が光を浴びる時が来たということだ―――…!

 
【 to be continued....! 】

 
--------------------------
◆ 次回 -第三章- 予告 ◆
-------------------------

――――移り変わる時代

管理長「…時代は変わりました。もう、強き冒険者はいないのです」

魔術賢者「そんな…」

管理長「世代交代という今、まさに冒険氷河期ともいえる時代でしょう」

魔術賢者「…」


――――だが、その世界に刺す一筋の光

管理長「あぁ、しかし。この時代にも…成果を上げている面子はおりました」

魔術賢者「…そうなのですか?」

管理長「…はい。男二人と女二人のやかましいパーティと聞いています」ハハッ

魔術賢者「まさか…!」

 
――――そんな最中、事件は起きる

武装中将「…また、か」

中佐「今度ばかりは、解決せねばならないでしょうね…」

元帥「直接の指揮は私が執ろう」

武装中将「嫌な予感がしてならん…」



――――そして、再びあの男も立ち上がる

大戦士「…また俺がやるんですって?」

武装中将「この時代…お前くらいしか頼める者がいないのだ…」

大戦士「…仕方ないことなのか」

 
――――その未来は光か闇か…

それを決めるのは、やはり若き冒険者たちだった…


魔道士「…行こうか」

武道家「…だな」

乙女格闘家「…準備いいよ!」

剣士「さぁ…!俺たちの出番だ!」



【 go to next stage 】

 
本日はここまでです。

先ほども触れましたが、この物語が始まってから、丁度…ではありませんが、明日で2か月目となります。

気が付けば、あっという間でした。

前スレでも申しましたが、改めてここまでおつきあい頂きました事、心より御礼を申し上げます。

原点回帰の作品としているため、久方ぶりに次回予告!を出させて頂きました。


また、今回で章区切りのため、

次回更新は1週間以内目安の予定となっております。

それでは、有難うございました。

>>163
時間に関係なく、剣士たちの物語に触れて頂いただけでとても嬉しく思います。
有難うございました。

皆さま有難うございます。
多忙により、お時間を要してしまいましたが
本日より第三幕の公開を開始いたします。
それでは、投下致します。


<あの日から4年後…>

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 中央軍 依頼一般公開所 】


ザワザワ…ガヤガヤ…


受付嬢「続いての方、どうぞ」

傭兵「失礼する。以前、山奥村の討伐依頼を完了してー…」

受付嬢「では、今回の受諾できるクエストのまとめはこちらに…」

ガヤガヤ……ワイワイ…


トコトコ……

…ストンッ

冒険者A「かーっ!相変わらず混んでるな~!」

冒険者A「待合室の椅子に座るのも一苦労だっつうの」ハァ

 
…ポンッ
 
冒険者B「よっ」

冒険者A「おぉっ!久しぶりじゃん!最近調子どうよ?」

冒険者B「全然。まともに依頼もなくてどうするべきか迷ってた」ハァ


冒険者A「だよな…。だから軍事依頼の一般公開に皆集中しちまうんだが」

冒険者B「町村とかの個人依頼を受けるのにも、ある程度有名じゃないと断られちまうし」

冒険者A「俺らみたいな下位冒険者にとったら、軍の一般受付がなかったら廃業だよ」

冒険者B「そろそろ店でも出してさ…まともに働いたほうがいいのかねぇ」

冒険者Aお、「おいおい!強くなって一攫千金の夢を諦めないって言ってたのはどこのどいつだ?」

 
冒険者B「あまりケガもしたくねぇんだよ…」

冒険者B「実はもうすぐ結婚することになってさ…。子供も生まれるし…」


冒険者A「…こ、子供!?結婚!?お前…本当かよ!」

冒険者B「たまにお前とは一緒にクエストやってたけど、それも無理になるかもなぁ」

冒険者A「はぁ…。そう聞くと、冒険者稼業は俺らみたいなのは現実直視が本当にいてぇよ……」


冒険者B「だな…」

冒険者B「…」

冒険者B「…あっ。そういや、この話知ってるか?」


冒険者A「何の話だ?」

 
冒険者B「最近、男2人と女2人の4人組パーティが、物凄い勢いで高難易度の依頼をこなしてるらしい」

冒険者A「…何だそりゃ」

冒険者B「軍へのスカウトも断って、あくまでも一般冒険者として立ち回ってるとかなんとか」

冒険者A「お…おいおい、軍へ入れば給金も出るし、勿体ない話だ」

冒険者B「…そういう断ってるから、俺らみたいな冒険者らの憧れの的で、噂になってんじゃないの?」

冒険者A「あ~、納得」


冒険者B「一体どんな奴らなんだろうな」

冒険者A「俺も、そんな風に噂になってみてぇなぁ」

 
冒険者B「…はぁ」

冒険者A「…ふぅ」


ガチャッ…ギィィ…

コツコツ…


冒険者B「…お?」ハッ

冒険者A「どうした?」

冒険者B「…今、ココに入ってきた子…見ろよ…!」クイッ

冒険者A「今はいってきた子?」チラッ


コツ…コツコツコツ…

コツコツ…ピタッ


???「…」

 
…ザワッ!ガヤガヤ…!

冒険者たち「…お、おい見ろよ。何だあの女…」

傭兵たち「うわ…、あんな子と付き合ってみてぇ…」

冒険者たち「え、可愛っ…!でも、あの服装ってまさか…」

傭兵たち「中央軍の…軍人……しかも尉官じゃないか!?」


スッ…ペラッ

魔術賢者「受付さん…中央軍所属の魔術賢者少尉だ…。これが、証明書…ね」

 
That's where
  the story begins!
―――――――――
【剣士「冒険物語!」】
―――――――――
Don't miss it!

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

受付嬢「は、はい。魔術賢者様ですね…」

受付嬢(うひゃあ~…!綺麗なヒト…。これで軍人さんとか…反則だよ…!)


魔術賢者「…どうした?」

受付嬢「あっ…。ご、ごめんなさい!えと…!ご、ご用事は何でしょうか!」

魔術賢者「…北方大陸の雪降町支部から派遣されてきた。ここの管理長に話は通ってるはず…」

受付嬢「わ、わかりました。今、お呼びしてきます!」ガタッ

魔術賢者「よろしく…」

タッタッタッタッタッ…

 
魔術賢者(学校を卒業し…、支部に入隊してから今年でもう4年になるのか…。時が立つのは早い…)

…キョロキョロ

魔術賢者(それにしても、中央本部の依頼受付所は初めて来たが…、なかなか綺麗なところだな…)

…パサッ

魔術賢者(む…。乙女格闘家に言われて以来、髪の毛も伸ばしたものの…やっぱり少し邪魔だ…)


トコトコトコ…ボスンッ!

男傭兵「よー、姉ちゃん」ニタニタ

魔術賢者「…む、何か用か。急に肩を組むとは…、馴れ馴れしいな…」

男傭兵「本当にアンタ、軍人さんなのか?可愛いじゃねえか」

魔術賢者「…中央軍北方大陸、猛雪山支部に勤めてるが」

男傭兵「へぇ、本当なのか。驚いたぜ。まぁいいや…このあと俺と遊ばないかい?」

魔術賢者「折角の誘いだが…、このあと仕事があるのでな…」


男傭兵「…夜のお遊びに付き合ってほしーってことなんだけどなぁ?夜にゃ暇だろ?」ニヤニヤ

魔術賢者「ふむ…。夜は休息を取らねば持たない身だからな…。お断りするよ…」

 
男傭兵「つれない事言うなって~。へへっ」ソッ

…サワッ

魔術賢者「!」

男傭兵「いいだろ?」

魔術賢者「…私は、あまりそういう事は好きではないのでな」パァッ!

男傭兵「へっ?」

ゴッ…ボォンッ!!!

男傭兵「がっ…!」ブスブス…

…ドサッ!


魔術賢者「それに…、男としての話なら…君のようなのはタイプじゃない」

魔術賢者「…と言えばいいのか?そういうセリフは私にはよく分からん…」

 
ザワザワ…!

冒険者たち「…やっぱ可愛くても、軍人さんだわアレ」

傭兵たち「容赦ねぇな…」


魔術賢者(やれやれ…、どこに行っても絡まれる。髪の毛を伸ばしたのは失敗だったか…?)


トコトコ…

受付嬢「あ、あのっ。お待たせしました、ここの管理長さんです」

管理長「どうも」ペコッ


魔術賢者「あっ…よろしく…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 応 接 間 】

ギィ…

管理長「わざわざ遠い所をお越しいただき、有難うございました」

魔術賢者「いえ…」


管理長「改めてご紹介させていただきます」

管理長「中央軍本部、一般依頼受付所の管理を任せて貰っております豪闘少佐です」

管理長「気軽に、管理長とお呼びください」


魔術賢者「私は中央軍、北方大陸猛雪山区、雪降町支部の魔術賢者少尉です」

 
管理長「ご丁寧にありがとうございます」

魔術賢者「…こちらこそ」

管理長「それで、本題になりますが。一般依頼へのご用事ですよね?」


魔術賢者「そうですね…」

魔術賢者「簡単に説明させていただくと、実は大型のアイスタイガーが登山区付近で確認されました…」


管理長「ほう」


魔術賢者「ですが、お恥ずかしい話…私たちの支部は面子も少なく…」

魔術賢者「一般に切り替えて募集しようと思いまして…」


管理長「もちろん構いませんよ。ただ…」

魔術賢者「ただ…?」

 
管理長「有能な冒険者は最近、ほとんど限られてきましてね」

管理長「何というかその…、アイスタイガーに対抗できる冒険者がいるかどうか…」


魔術賢者「そこまで冒険者の質は落ちているのですか…?」


管理長「冒険者の世代といいますか、一昔前は熟練者らがゴロゴロしておりました」

管理長「有名なのでいえば、軍の中では軍に所属する前の"武装中将"や…"大戦士少佐"などですね」


魔術賢者「!」


管理長「大戦士少佐は若くして退役しましたが、彼の世代も現役としては、そろそろ限界」

管理長「そして彼らがいなくなり始める今、今度は一つ、二つ下の世代が主軸となる」

管理長「つまり貴方から、貴方の少し年上の世代がメインとなっていくということです」

管理長「世代交代時期にあたる今日この頃、難易度の高い依頼を受けられる面子も少なくて…」

 
魔術賢者「…どの世代にも、飛び抜けた冒険者等はいるものだと…思っていましたが…」

管理長「いや~…10年前くらいを黄金期とするなら、今は氷河期でしょうね」

魔術賢者「では、アイスタイガーを倒せる面子もそうそういないと…」

管理長「そうなんです…。更に大型のアイスタイガーは仮にも上位危険種ですし、それが数体となるとやはり…」

魔術賢者「…」


管理長「一応、この中央でも募集は出しておきますが…。時間がかかると思います」

管理長「自分の身は自分で守るってわけじゃないですが、出来るだけ支部の中で何とかできると嬉しいですね…」


魔術賢者「…受け止めておきます」

管理長「力になれそうになくて申し訳ありません」

魔術賢者「いえ、お話を聞いてくださっただけ…嬉しく思います…」ペコッ

管理長「…」ペコッ

 
魔術賢者「お忙しい時間の中、わざわざお話を聞いていただき、有難うございました…」

魔術賢者「それでは、これで失礼致します…」ガタッ

カツカツカツ…


管理長「…」

管理長「…あぁ、そういえば」


魔術賢者「…はい」クルッ

管理長「こんな入れ替わりの時期に、ガンガンと成果をあげている面子はいましたね」

魔術賢者「…そうなのですか」


管理長「男二人、女二人のやかましいパーティでやってるとか言ってましたか…」

管理長「結構、この中央一般受付けの場所でも、冒険者同士の話題で出てるみたいですよ」


魔術賢者「!」

 
管理長「うちにも1回だけ来た事あるらしいんですよね。自分は留守でしたから、会えなかったんですが」


魔術賢者「その人たちの…名前は…」

管理長「えーと、何と言ったかな…。確か…けん…」


…ドゴォォンッ!!!


魔術賢者「!?」

管理長「!?」

魔術賢者「爆発音…下からですか」

管理長「…何でしょうか。ちょっと見に行きましょう!」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 一般受付 待合室 】


タッタッタッタッタッ…!

管理長「おーい、今の音はなんだ!?」

受付嬢「あっ…。か、管理長…」グスッ

管理長「ど、どうした!?」

受付嬢「あの…、男傭兵さんのうちの一人が…私に色々してきて…」ブルッ

管理長「…そこに倒れてるやつか」

…グデンッ

男傭兵「」


魔術賢者「また…さっきのやつか…」ハァ

 
受付嬢「そ…それでその…。一般依頼受付に来ていたパーティの方々に助けていただいて…」

管理長「その人たちはどこに…?」


受付嬢「依頼の受諾経歴や成果歴がとても高い方々だったので…」

受付嬢「今のうちでは、相応の渡せる依頼がなくて…」

受付嬢「それを知ったら、出ていきました……」


管理長「…そうか。お礼の一つくらい言いたかったんだが。もうこの男傭兵は出入り禁止だな」ハァ

管理長「他の一般依頼のところにも、コイツの詳細は渡しておかんとなぁ」ブツブツ


魔術賢者(…そんな人らだったら、うちの支部の問題も何とかしてくれたかも…)

 
ザワ…ザワザワ…

魔術賢者(ん…?)


冒険者たち「なぁ、さっきの受付のねーちゃん助けた人らってさ…、まさか……」

冒険者たち「…そうかもしれん。だって4人だったし、メンバーもぴったりだったじゃないか」

冒険者たち「今を時めく、あの男女のパーティってやつだったんじゃねーの?」


魔術賢者(…!)

魔術賢者(もしかして、もしかすると…)ダッ!

タタタタタッ…、ガチャッ…バタンッ!!


管理長「あっ…魔術賢者さん…?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 同時刻…中央都市の一角の家… 】


ガチャッ…!

神官(僧侶)「これでもう、大丈夫でしょう」


街人「娘を助けていただき、本当にありがとうございました…」

神官「いえ…。これで失礼します」ペコッ

街人「…」ペコッ


…バタンッ!

 
神官(…ふぅ!今日のお仕事終わり。今日もまた、人の為に尽くせたぞ)

神官(教会に勤めて4年…、何だかんだで僕のしたいことをやれてるって感じだね)

神官(何より、お礼の言葉とか…あの笑顔を見るのが何より嬉しい)


トコトコ…


神官(…でも)

神官(…)

神官(時々、寂しくもなる。もし僕が、当時のみんなといっしょだったら…)

神官(今どこで、僕は何をしていたんだろう。どんな生活を送っていたんだろうって)

神官(それに何より…当時…魔術賢者さんとか…。僕だって…男だったから…)

 
神官(……)

神官(男だったからっていうのは、おかしいな)

神官(今も僕は男だってのー!!それに僕には……。もうっ、しっかりしないとな!)


ドタドタ…ガシャアンッ!!


神官(…って、何の音!?)クルッ


タタタタタッ…!!

盗賊「くそ、路地裏か…どんどん狭くなりやがる!ヘマやって見つかるとは!」


神官「と、盗賊!?」


盗賊「む…!?」

 
タタタタタッ…チャキンッ!

盗賊「そこをどけぇぇ!邪魔だ、殺すぞこらぁ!!」クワッ!

神官「わわっ…!」

盗賊「どけコラァッ!!」

神官「ごめんなさいぃ!」

盗賊「そこに立ってると、邪魔だっつってんだろ!」

神官「ひぃぃっ!」


盗賊「くっそ面倒くせぇ!神父一人くらい殺して通る!!」ブンッ!!

神官「…なーんて。こんな神父の恰好してるけど、実は戦えるんだよ」ニコッ

盗賊「あん!?」

…ガシッ!ギュルンッ!!

盗賊「むおっ!?」

 
…ドシャアッ!!

盗賊「がっ…!」

神官「人を見かけで判断しちゃダメだってば。神の教えだよ」フフッ

盗賊「…て、てめ…」

神官「牢屋に入れてもらうから、寝ててね」ブンッ!

…バキィッ!!

盗賊「…っ」ガクッ


神官「…よしっ」

神官「警備隊、軍に届ける仕事は増えちゃったけど、街の平和を守る為だし仕方ないね」

 
ガサッ…!

神官(…!)ピクッ

ダッ…ダダダダッ!!

神官(えっ、まだ足音!?もしかして仲間がいたの!?)ハッ


ズザザザァ…!!

???A「この野郎、狭い路地逃げ込みやがって!」

???B「こっちだったな!」


神官(あ、仲間じゃないっぽい?警備隊の人かな?)


???D「…って、あの盗人、あそこで誰かに抑えられて倒れてない?」

???C「あっ、本当だ!あの恰好…神父さんかにゃ?」
 
???A「あ、すんませーんっす!その人、盗人なんすよ!」

 
神官「あぁ、分かってますよ!今から、中央軍の警備隊に引き渡そうと…!」


???A「あっ、そうっすか!ならいいんです、ご協力あざっす!」

???B「神父のくせに、随分と強い人もいたもんだな」

???D「この近くの教会の人なのかな?」

???C「そうなんじゃないかなー?っていうかあの人…どこかで見たことあるよーな…」


神官「…」

4人「…」ジー

神官「…」

4人「…」ジー

神官「……そ、そんな所で立ち止まって…どうしましたぁ~!?」

4人「…」ジー

 
神官「…?」

4人「…あ~っ!!」ハッ

神官「!?」


???A「お前…僧侶か!?」

???B「絶対僧侶だよな!?」

???C「僧侶ぉっ!!私だよ、分かるでしょ!?」

???D「僧侶くんだっ!私のこと覚えてくれてるかなー!」


神官「路地裏は日が薄くて、よく見えないんだけど…」ゴシゴシ

神官「何で僕の旧称を…」

神官「…」

神官「ん~…?」ジー


???A「おいおい、冒険学校の仲間を忘れたのか?」

???B「神父ってのは、忘れやすい生き物なんじゃないか」

???C「えぇ~…。僧侶、本当に私たちのこと忘れたの?」

???D「こうなったら、私の拳で思い出させるしかないね!」


神官「……あっ!?」

神官「えっ!?ま、まさか……!」

神官「け…、剣士くん!?武道家くん!!魔道士さん、乙女格闘家さんっ!?!?」

 
剣士「…僧侶!!」

武道家「僧侶!」

魔道士「僧侶っ!」

乙女格闘家「僧侶くーん!」


神官「み…みんなっ!?」


ダダダダッ…ダキッ!!

剣士「いやっほぉぉぉお!!思い出したか!!久々じゃねえか、どうしたんだこんな所で!!」

武道家「お前、その恰好…本当に神父っつーか…教会の偉い人にでもなったのか!?」

魔道士「うわっ凄い!しかも背伸びてるし…!」

乙女格闘家「昔よりよっぽど男っぽくなった気がする♪」

 
神官「ぼ、僕は今は神官で…!」


剣士「なーにが神官だ!はっはっは、何だどうしてここにいるんだよマジで!」バンバン!!

神官「いたた…!それは教会の仕事でさ…」


武道家「神官っつーことは、色々話あるんだろ?聞かせろよ、俺らの話も聞かせてやるから」

神官「あっ、ぜひ聞きたいかも!」


魔道士「背ぇ伸びたねぇ…、成長期だったのかな?」

神官「あはは…そうかな?」


乙女格闘家「筋肉ついた?」ペラッ

神官「わっ、めくらないでよ!」

 
ワイワイ…!!ガヤガヤ…!!

剣士「はははー!何だ、すげぇ今日はいい日じゃんか!」

武道家「まさかこんな所で会えるなんてなぁ!」

魔道士「逃げ足だけは早い盗人だったけど、出会わせてくれたのは感謝しないとね」アハハ

乙女格闘家「でも、盗人逮捕はお金になるから許すまじ!」

神官(みんな…、変わってないなぁ…!)クスッ


ガツッ…!!ガランガランッ!!

 
神官「うわっ、後ろのほうでまた物音?」クルッ

剣士「ん?」クルッ

武道家「何だ?」クルッ

魔道士「まーた盗人さんでも現れた?」クルッ

乙女格闘家「むー?」クルッ


ズザザァ…!!

魔術賢者「はぁ…はぁ…」ゼェゼェ

魔術賢者「やっと…追いついた…!」

 
剣士「あん…?」

武道家「ん…またどっかで見たことあるよーな…」

魔道士「えっ…。み、見たことあるっていうか…凄いキレイになってるけど…」

乙女格闘家「も、もしかして…?」

神官「魔術賢者…さん…!?」


魔術賢者「やっぱり…!みんな…久しぶり…!」


…………
………

本日はここまでです、有難うございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 酒場 】

剣士「では再会を祝してー…」

全員「かんぱいっ!!」

…カァンッ!! 
 
 
グビグビグビ…ッ!!

剣士「ぷはぁ~!」

武道家「うめぇっ!」

 
魔道士「それにしても、僧侶…じゃなかった。神官と魔術賢者さん久しぶりだね!」

神官「本当に偶然だったよね~」

魔術賢者「うん…、みんなが中央にいるとは思わなかった…」

乙女格闘家「本当に魔術賢者ちゃんキレイになったなぁ…」
 
サワサワ…

魔術賢者「乙女格闘家に言われて…、髪の毛伸ばした…」

乙女格闘家「うんうん、そっちのほうがすっごい可愛くて、似合ってるよ!」 


神官「剣士くんたちは、今も冒険者として頑張ってるんでしょ?」

剣士「まぁな。それなりに名前も売れてるみたいだぜ」

魔術賢者「うん…。今日も中央軍のところで…話聞いた…」

 
乙女格闘家「…」

乙女格闘家「ねぇねぇ、話割り込むけどさ。神官と魔術賢者ちゃん!」

乙女格闘家「これって偶然っていう名前の運命だよね!?」


神官「?」

魔術賢者「?」


乙女格闘家「だーかーらー…!」

乙女格闘家「こんな再会、きっと愛につながるんだって!」キラキラ


神官「あ…」

魔術賢者「あぁ…」

 
剣士「はは、確かに運命っぽいか?」

武道家「今の二人の恋愛事情ってどうなってんの?」

魔道士「あ、それ少し気になる!」

乙女格闘家「実は、こっそり二人だけで会ってたとか!?」


神官「…」チラッ

魔術賢者「…」チラッ


乙女格闘家「…」キラキラ


神官「…残念だけど、僕には同居してる婚約者がいるんだ」

魔術賢者「私は、2年前に同じ支部の人間と入籍して…」

 
乙女格闘家「えっ!?」

剣士「そ、そうなのか!?」

武道家「待て待て、結婚してる…のか?」

魔道士「神官にも婚約者!?」


神官「うん。僕は、3年前に見習い神官だった時に救った女性に告白されて…」

神官「北方大陸の雪降町の出身者で…。じ…実はその…」

神官「魔術賢者さんと被ったり……とかじゃないや!何でもない!」


魔術賢者「…私は、流されたまま…結婚した感じだ」

魔術賢者「けれど幸せといえば、幸せだ…。優しい人だから…」

 
乙女格闘家「そ…そうだったんだ…」

剣士「少し残念な気もするけど、二人が幸せだって思ってるなら別にいいな」

武道家「あたりまえだ。当人らが幸せならいいだろ」

魔道士「うん、そうだよ」


神官「確か、魔術賢者さんは今も猛雪山の支部で働いてるんだよね?」

魔術賢者「うむ…。そうだが…」

神官「僕の奥さん、子供が生まれたら故郷で育てたいっていってるんだ」

魔術賢者「へぇ…」

神官「もしそうなったら、仲良くしてあげたら嬉しいな」

魔術賢者「もちろん…」ニコッ

 
剣士「お前らの嫁さんは、一般人なのか?冒険者とかじゃなくて」


神官「恥ずかしいけど、元冒険者。女性の戦士さんだったんだ」

魔術賢者「うちは…支部の中だから…軍人。剣術使いだったな…」


魔道士「へぇ~!じゃあ子供が生まれたら…僧侶と戦士、魔法師と剣術使いの子供かぁ」

武道家「なんか将来、でっけぇ事やりそうな感じ」

剣士「すげぇな、冒険者のハイブリッドじゃん」

武道家「しかし、一歩先の大人になったって感じだな二人とも」ハァ


…ダキッ!!ギュ~!

乙女格闘家「武道家ぁ、私はいつでもオッケー!」

魔道士「わ、私だって…」ボソボソ

 
武道家「だぁ~!確かに子供とか、色々あるけど…まだまだ安住じゃなくて!」

剣士「そうそう、もうちょっと世界を駆け巡って、色々楽しみてぇっつーの!」

神官「なんだ、みんな婚約者みたいなもんなんじゃない」

魔術賢者「みんな…大人…」

乙女格闘家「そりゃねー♪」

魔道士「う、うん」


神官「剣士くんたちは、どんな生活送ってきたのか聞かせてよ」


剣士「…俺らの生活か」

武道家「何だっけ、卒業後の1年目はそんな苦労しなかったな」

魔道士「うん。あの時は比較的、簡単な依頼ばかり受けられたし、初心者ってことで救済多かったし」

乙女格闘家「その代わり、大儲けっていうほどじゃなかったけどねー」

 
神官「初心者…救済?」


魔道士「冒険者として、成果を上げれてない人は基本的に初心者扱いなの」

剣士「そう。だから軍の一般依頼では、優先的に簡単かつ報酬のいいクエストとかぼんぼん発注されてな」

乙女格闘家「宿に宿泊するお金とかは困らなかったねー」

武道家「1年目終える頃には、依頼の失敗率ゼロで、より上位の依頼を軍から受諾できるようにもなった」


魔術賢者「2年目は…?」


剣士「2年目は1年目より更に楽だった印象だ」

武道家「下位依頼、やや難易度の高い依頼をこなして成果をあげて…」

魔道士「結果的にいうと、1年目より2年目のほうが金銭的に余裕が出来たってかんじ」

乙女格闘家「そうだったねー。だけど…去年は…」

 
神官「去年は…?」


武道家「まさに氷河期だ…。下位依頼は初心者じゃなくなったから受けれず、軍の一般受諾は基本的に受けられねーし…」

乙女格闘家「かといって上位依頼は成果が足らず受けられず…」

剣士「2、3か月で宿代に貯めた金が消えてさぁ…」ハァ

魔道士「細い依頼受け続けて、3年目の10月頃にようやく大きい遺跡調査のクエスト受諾して、成果あげて…」


魔術賢者「今年へ繋いだ…と」


剣士「そういうことだ!」

武道家「今年からはデカイ依頼も受諾可能になったから、大体の場所立ち入りできるし」

魔道士「やっと冒険者として、一人前になったかなーってかんじだよね」

乙女格闘家「目指せ、一攫千金!とか!」

 
神官「へぇ~…。いいなぁ、たのし…」ハッ

神官(…楽しそう。なんて言葉…!)

神官(…ッ)


剣士「…」

剣士「…僧侶、飲めよ。今日は酒の席だぞ」ドンッ!


神官「剣士くん…」

剣士「飲まなきゃ損!おら、食え!飲めぇ!!」

神官「…うんっ!」


………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 3時間後 】 

…ゴトンッ!

剣士「もう…飲めねぇ…」ゲフッ

魔道士「あーあー…。だから飲みすぎだって…」


武道家「酒はちびちび嗜むもんだぞ」グビッ

乙女格闘家「剣士くんはいっつもダウンしちゃうよねー」


魔術賢者「はは…。えと、店員さん…焼き鳥ください…」バッ

神官「魔術賢者さん、まだ食べるの!?」

魔術賢者「軍人は…身体が資本っ」キラッ

神官「…食べ放題でよかった」

 
武道家「はっはっは……」

武道家「…」

武道家「…ッ!」ビクンッ


神官「…」ピクッ


武道家「おっ…と。俺もちょっと酔ったかな。夜風にでも当たってくるわ」ガタッ

乙女格闘家「あ、じゃあ私も」

武道家「い、いや。お前はいいよ。いつものことだし、剣士の介抱手伝ってやっててくれ」

乙女格闘家「もー、また?」

武道家「魔道士一人じゃ大変だろ…」

乙女格闘家「それもそっか。わかった」


武道家「お、おう」フラッ…

 
トコトコ…、ガチャッ!ギィィ…バタン


神官「…」

神官(今のはもしかして…)

神官「…みんな、僕もちょっと外に行って来る」ダッ

タタタタタッ…ガチャッ、バタンッ!


魔道士「あ…行ってらっしゃい?」

魔術賢者「神官も…酔ったのかな…」

乙女格闘家「さぁ…?」


………

本日は短めですが、ここまでです。
尚、前スレの埋めネタとして本日、大百足戦の後に起きたお話を4、5レス程度で投下致しました。
そちらも是非どうぞ。
剣士「冒険学校…!」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1402659716/l50)

それでは、有難うございました。

皆さん有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 酒場の外 】

フラフラ…

武道家「げ…げほっ!げほげほげほっ!」

武道家「う゛っ…」

武道家「ごほごほごほっ!おえっ…!」

武道家「がっ…はぁ…、はぁ…!!」


武道家「…っ」


武道家「…ごほっ!?ごほごほっ!!」

…ベチャッ!

 
武道家「はぁはぁ…!ちっ…!」

ズリズリ…ストンッ

武道家「げほっ…!ま、参ったな…」


トコ…トコトコ…

武道家「…誰だ!」バッ

神官「僕だよ…武道家くん」

武道家「そ、僧侶!」

神官「…見てたよ」

武道家「あぁ?ちょっと酔っただけだっつーの」

 
神官「…酔っただけの人間が、血なんか吐くとは思えないよ」

武道家「…」

…ドロッ


神官「思えば、武道家くんは学生の時からそんな兆候はあったよね…」

武道家「なぁに、風邪だっての」ハハッ


神官「…違う。今の僕は、君のような人を大勢相手にしてきたんだ」

神官「分かるんだ…。君がさっき、席で少し心臓を抑えたこと…喉を軽く掻いたこと…」

神官「まさかとは思った。けど、今の血で確信した…」

 
武道家「…何だっていうんだ?神官サン」

神官「君は…、君の体は!数年前から病に蝕まれてる!それも、重病だ…!」

武道家「ははっ…何言ってるんだか」

神官「…何を言ってるんだか、じゃないよ!他の人は知ってるの!?」

武道家「…さぁな」

神官「だめだ、この事はみんなに教えないとー…!」


武道家「…やめろっ!!!」カッ


神官「!」ビクッ

武道家「迷惑かけたくねぇんだ…。頼む…」


神官「…」

神官「そ…そういう事じゃないでしょっ!!」

 
武道家「お…」


神官「そう隠してるほうが迷惑なんだよ!!パーティでしょ!?仲間でしょ!?」

神官「乙女格闘家さんだって、武道家くんと一緒に幸せになろうって思ってるのに!!」

神官「剣士くんだって、魔道士さんだって…、仲間に隠し事しないって…あの日言ったじゃないか!!」


武道家「あの日…。魔石洞窟の時か…」

神官「そうだよ!ダメだよ…、武道家くん…。それじゃ…」

武道家「…」

神官「…」


武道家「…分かってるよ。だけど、血を吐くくらいで死にはしないだろ?」

神官「…本当にそう思ってるの?自分の身体のことだから…分かってると思うけど…」

 
武道家「…」

神官「武道家くん、ちょっと失礼するよ」

トコトコ…グイッ

武道家「お、おい何を…」


神官「…」ボソッ

…パァァッ!!


武道家「なんじゃこの光…?」

神官「黙って。君の身体を簡単に調べてるから」

武道家「…」

 
神官「…」

神官「…」

神官「…ッ!」ゾクッ


武道家「…どうだ」

神官「…」

武道家「…どうなんだよ」

神官「武道家くん…」

武道家「あん?」


神官「この事はみんなに内緒にはする。だけど、2か月…いや、1か月に1度」

神官「この区域にあるうちの教会に来てほしい。絶対に」

 
武道家「…1か月に1度とは、世界を駆け巡る俺らにとっては厳しいな」

神官「そうじゃなかったら、みんなに教える」

武道家「お、おいおい…。何でそんな真剣なんだよ」

神官「ダメだ。それだけは譲れないよ」ギロッ


武道家(…!)

武道家(くく…なんつー眼光するようになったんだ…)


神官「武道家くんっ!聞いてるの!?」

武道家「……わかったわかった!わかったよ!」

神官「!」

 
武道家「わかった。極力、来るようにはする」

武道家「だからこのことは、内緒にしといてくれよ?」


神官「…絶対だよ」

武道家「あぁ、分かったよ」

神官「…」

武道家「それじゃあさっさと皆の所に戻れ。俺はもう少し夜風にあたるからな」シッシ

神官「…うん」クルッ


タッタッタッタッタッ…

  
神官(…)

神官(…ぶ、武道家くんを蝕んでるのは…まさかとは思うけど…魔力枯渇症じゃ…!)

神官(普通は回復するはずの魔力が、徐々に回復量が少なくなっていく奇病…)

神官(…ッ)

神官(それが本当なら、冒険者としては致命的すぎる病…)

神官(…いや、冒険者云々以前に……。武道家くんっ…!)


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数分後 酒場 】

ガチャッ…

武道家「ふぃ~…、ただいま」

乙女格闘家「おっかえりぃ♪」


神官「…」


武道家「まだ剣士倒れてるんかよ」

剣士「」グデンッ

魔道士「はぁ…」

 
魔術賢者「じゃあそろそろ…お開きかな…」

乙女格闘家「そうだねー、時間もいい感じだし」

魔道士「みんなで久々に会えて、楽しかったよ♪」

武道家「今度からみんなでこうして集まるのも悪くないかもな」

神官「…そうだね」


剣士「…」

剣士「…」ムクッ

剣士「今度は、少戦士やら大戦士兄やら、みんなも呼ぼうぜ」


武道家「起きてるなら最初から起きろよ」

魔道士「…。それにしても、他の人たちは何してるんだろうね」

剣士「ん~…大戦士兄とか冒険先生とかは、今も先生してんじゃねえの?」

 
武道家「今度、我らが母校にでも遊びに行ってみるか?」

剣士「おっ!面白そうじゃん!」

魔道士「成長した私たちを見せないとね!」

乙女格闘家「にゃはは…、魔道士ちゃんは色々成長したもんね」ペラッ

魔道士「きゃーっ!」


魔術賢者「はは…。さて…私は近くの宿で泊まって…、明朝の馬車で帰るよ…」


乙女格闘家「…」

乙女格闘家「魔術賢者ちゃん、折角だから僧侶くんも一緒に泊めちゃったらー?」プクク


神官「ちょっと!」

 
魔術賢者「あ…、いや…それはさすがに…」

神官「乙女格闘家さん、相変わらずだなもう!!」

乙女格闘家「やー」アハハ


剣士「ま、とりあえず…お疲れ!付近の教会にいるってわかったし、度々遊びに来るわ」

神官「うんっ」


剣士「ほんじゃ、俺らも宿に行きますかぁ?」

魔道士「だね。でもさぁ、私たちも受諾してるクエストないし…。休み続きになりそうだから、早く次の依頼探さないと」

剣士「そうなんだよなぁ…」ポリポリ

 
魔術賢者「…」
 
魔術賢者「…あっ」


乙女格闘家「どしたの?」

魔術賢者「その…。もし暇なら…4人に頼みたいことが…」


乙女格闘家「うにゅ?」

魔道士「私たちに…」

武道家「頼みごと?」

剣士「何だ?」


魔術賢者「その…、報酬金はそこまで高く出せないんだけど…」

…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

 
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――――【 3日後 猛雪山 】


ビュオォォォオオッ!!!ゴォォォッ…!!!!


剣士「へ…へっくしょおおい!!」

魔道士「わっ!」

剣士「あー…少し寒いかな。それとも誰かが噂してるのか…」ズズッ

魔道士「少し寒いって、こんな猛吹雪の中のセリフじゃないんだけどぉお」ガタガタ


武道家「だらしないやつめ!」ズルズル

乙女格闘家「鼻水すすりながら言っても、威張れないよ」

 
剣士「だぁっはっは!おめぇだって寒がりじゃねえか!」

武道家「あんだと…?やるか…おっ?」

剣士「あぁ…?」

武道家「おぉ…?」


魔道士「こんな時くらい、落ちつきなさい!」

魔道士「うぅぅ、魔術賢者ちゃんの頼みだし、断れなかったけど…」

魔道士「こんな猛吹雪、聞いてない~!!」


剣士「アイスタイガー自体の討伐は楽なんだろうけどなー」

武道家「んーむ…」

乙女格闘家「山に入ってからしばらくするけど、一向に討伐対象出てこないねー?」

 
魔道士「せめて、少しだけ吹雪が収まってくれた後に出てくれたらうれしいんだけどなぁ」

乙女格闘家「にゃはは…。前が見えないと、感覚だけで相手を捕まえないといけないからなぁ…」

魔道士「あっちはこういう時に身をひそめて襲ってくるの得意なはずだから、神経が磨り減るし…」


剣士「はっはっは、いくら強い相手だろうが余裕だ」

武道家「ほう?なら一発で沈められるというのだな?」

剣士「お前の拳より先に、俺の大剣が切り裂くね」

武道家「あぁ…?なら、どっちが先に倒せるか勝負するか!?」

 
剣士「…いいぞ!負けたほうは、ふもとにあった町の、酒場の奢りな!」

武道家「望むところだオラァ!」

魔道士「だから二人とも…」

乙女格闘家「私も乗ったぁー!」キャハッ

魔道士「」


…ザッザッ!

アイスタイガー『グルルッ…!!』


魔道士「って、出たぁぁっ!?!?」

 
剣士「酒の飲み放題に、料理付きだからな!」

武道家「おうよ、一番高いところでいいな!?」

乙女格闘家「私は武道家のお助けだからね!」

剣士「ずりぃぞ、おい!」


アイスタイガー『ガウッ!グルル…』


魔道士「さ、三人ともそれどころじゃないから!!いるからぁぁ!そこ!!」


アイスタイガー『…ガァァッ!!』ダッ!!

…ダダダダダッ!!!


魔道士「き、来たぁぁっ!!えぇいもう!大火炎…!」パァァッ

 
…チャキッ!

剣士「せいやぁぁあっ!!」

武道家「衝撃波ぁぁっ!!」

乙女格闘家「闘気連だぁぁんっ!!」

ゴッ…ゴォォォォッ!ドドドド…!ドゴォォンッ!!!


アイスタイガー『…ッ』フラッ

ヨロヨロッ…、ズズゥン…


魔道士「…」

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 ふもとの酒場 】

ワイワイ、ガヤガヤ…!


グビッ…、グビグビグビッ……!!

剣士「ふぃー!!」プハァッ

魔道士「何はともあれ、お疲れ様。最近飲んでばっかりの気もするけど」

武道家「アイスタイガーなんざ、相手にすらならなかったな」

乙女格闘家「魔術賢者ちゃんの話じゃ、アレを倒せない冒険者が大半って言ってたけど」

剣士「あれくらい一太刀でぶっ殺せるっつーのな」

 
武道家「あぁ、全くだ」

乙女格闘家「私たちが強いだけかもよー?」

剣士「まぁ俺らが強いのは当然だし」

魔道士「剣士と武道家がずば抜けすぎてるんだってば」


剣士「はっはっは、そんなに褒めるなって!お前らだって経験を経て成長してー…」

剣士「…」

剣士「…成長」

剣士「……そうか。あれから4、5年近くになるのか…」ボソッ


魔道士「ん?」

剣士「いや…うーん」

魔道士「…どうしたの?」

剣士「んーむ…。あのさ皆、話変わるけどちょっといいか?」

 
魔道士「うん?」

武道家「面倒な話はナシな」

乙女格闘家「剣士のそういう切り込む話は、いつも面倒な事に巻き込まれてきたからねっ」


剣士「お前ら…。いや何だ、前々から思ってたが、そろそろ行ってもいいんじゃないかなと考えてんだ」

魔道士「行ってもいい?」

武道家「どこにだ?」

 
剣士「…」

剣士「その…エルフ族の"西海岸村"」

 
魔道士「!」

武道家「!」

乙女格闘家「!」


武道家「西海岸村って…幼エルフのか?」

乙女格闘家「あー、私がいない時にいったところだね。何で急にまた?」

 
剣士「俺らが村訪れてから、もう結構たつだろ?」

剣士「きちんとこうして自立したわけだし、武器も大事に使ってるって見せたくないか?」


魔道士「…確かに、気持ちは分かるけど」

武道家「未だにエルフ族との友好関係は確立されたわけじゃねーんだぞ?」

剣士「だけどよ、俺らは歓迎されたじゃん」

武道家「…」

剣士「三人はやっぱり…反対か?」

 
乙女格闘家「私はどんな場所か分からないから、みんなに従うよ」

魔道士「剣士がどうしてもっていうなら、いいけど…」


武道家「…」

武道家「…俺は反対だな」


剣士「…どうしてだよ」


武道家「確かに、あの時の村のみんななら歓迎してくれると思う」

武道家「だが、ありゃ鍛治長がいたからだろ。あれから何年たったと思う?」

武道家「言葉が悪いが鍛治長がもし…いなくなってたら?」

武道家「あの時の職人のエルフが次の長なんじゃないのか?」


剣士「あ…」

武道家「…な?」

剣士「んーむ…」

 
魔道士「そ、そう言われると…。剣士、残念だけど諦めたほうがいいと思う」

剣士「そっかぁ…。だよなぁ…。武器をもらったとはいえ、俺らをよく見てなかったし…村に入れないかもか…」

武道家「当時はバカみてぇに突っ走ったけど、もう俺らにゃ自立してる以上責任もある」

乙女格闘家「うん…」

剣士「仕方ねぇ、諦めるか…」ハァ


トコトコ…ボスンッ!!!チャリンッ!

剣士「ぬおっ!?」

魔術賢者「みんな、ご苦労様…。これ、今回の報酬…。袋に詰めてきた…」

剣士「目の前にいきなり置くんじゃねー!びっくりしただろ!」

魔術賢者「あ、ごめん…」


乙女格闘家「やー、魔術賢者ちゃーん!」ダキッ!

魔術賢者「お、乙女格闘家…苦しい……」ギリギリ

 
武道家「…魔術賢者、俺らが報酬受け取るの明日だぜ?」

剣士「まだ正式に依頼完了の報告してないんだが」

魔術賢者「失敗なんかすると思ってなかったから…。出発した後にすぐ完了報告しといた…」

武道家「あぁ、そういうことか」

乙女格闘家「…信じられてるってうれしいよー!」

ギュウウッ…ギリギリ…

魔術賢者「お、乙女格闘家…しまってる…」ゲホッ


剣士「まぁなんだ、ありがとよ。とりあえず頂戴しておくぜ」

魔術賢者「うん…。あ、それとさ…」

剣士「何だ?」

 
魔術賢者「少し聞こえたんだけど…。エルフ族の村へ行きたいのか…?」

剣士「ん、んむ…」

魔術賢者「なら、現状を知ってる人が…中央軍本部にいるから、話を出来るようにするか…?」

剣士「い、いや…それは…」

魔術賢者「…きっと、みんな知ってる人のはず…」

剣士「知ってる人?」


魔術賢者「武装先生…。今は武装中将…」


剣士「!」

武道家「!」

魔道士「!」

乙女格闘家「!」

 
魔術賢者「武装中将…、今もエルフ族との関係を保つため色々してるから…」

剣士「れ、連絡がつくのか!?」ガタッ!

魔術賢者「うちの支部長が、武装中将と顔見知りで…」

剣士「…!」

魔術賢者「まぁ…、私の旦那なんだけど…」テレッ


剣士「!!」

魔道士「う、うっそー!」

武道家「す…すげぇ人を旦那さんにしたな…」

乙女格闘家「すっごーい!!」


魔術賢者「だから…もしよければという話で…」

 
剣士「お願いする!…と、言いたいが」

剣士「…みんなはどうだろうか。俺は話でも聞きたいと思ってるんだけど…」チラッ


武道家「んーむ…。まぁ、話は聞くだけ聞けるなら…」

魔道士「そうだね」

乙女格闘家「みんなが話を聞くなら、それに従うだけかな~」

剣士「…ありがとよ!魔術賢者、そういうわけだ。頼めるか?」


魔術賢者「うんっ…わかった…」

魔術賢者「…任された」ニコッ


乙女格闘家「!」

乙女格闘家「…」ブルッ
 
乙女格闘家「…かわいい~!」

 
…ピョーンッ…!!

魔術賢者「…!」


…ドスーン!!ガシャアンッ!!


剣士「おおう…」

武道家「乙女格闘家…」

魔道士「楽しそうで、何より…」


………
……

 
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・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

本日はここまでです。有難うございました。

皆さま有難うございます。
1日遅れとなりましたが、加筆も含め投下してまいります。

 
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――――【 次の日 雪降町の宿 】

モゾモゾ…

剣士「…んにゃ」パチッ


魔道士「あ…起きた?」ニコッ

剣士「ん…。おはよ」

魔道士「うん、おはようっ。もう朝だよ」

剣士「…またずっと寝顔見てたのかよ。起こせよ」フワァ

魔道士「へへっ♪」

 
剣士「飽きずに俺のアホ面見て楽しいか?」

魔道士「日課かな?」

剣士「日課って」

魔道士「だって…こういう稼業だと朝に顔を見れる事が何より安心するっていうか…」

剣士「…」

魔道士「…」


剣士「ま、その通りだな。俺も朝、魔道士の顔見ると安心するわ」

魔道士「うん♪」

 
剣士「さて、歯でも磨いて……と。今は何時だ?」

魔道士「もう8時だよ」

剣士「武道家たちもそろそろ起きただろうし、準備してロビーで珈琲でも飲んでようぜ」

魔道士「だねっ」


………

 
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――――【 宿のロビー 】

ガヤガヤ…!ワイワイ…!!


剣士「…」グビッ

魔道士「ん~…朝のコーヒーは美味しいっ」クピッ

剣士「…」

ガヤガヤ…!

剣士「…な、なぁ魔道士」

魔道士「なに?」

剣士「…なんか…昨日より人増えてないか?」

ワイワイ…

魔道士「…確かにそうかも」

 
剣士「どうしたんかね。恰好は冒険者っぽくはないが…」

魔道士「どっちかっていうと家族連れっぽいし、旅行者か何かじゃない?」

剣士「突然こんなに旅行者が…」

…コツンッ

剣士「いてっ!誰だこら!」クルッ


武道家「…よっ。それは俺らのおかげだぜ、たぶん」

乙女格闘家「だねー」

剣士「…あん?」


魔道士「あ…武道家、乙女格闘家!おはよ~」

乙女格闘家「おっはよー♪」

 
剣士「…俺らのおかげだ?」


武道家「俺らが大型のアイスタイガーぶっとばしたから、登山可能区域が大幅に解除されたんだよ」

武道家「それで、近辺に宿とってた旅行者やら情報を仕入れた面子が雪降町に集まってきたんだ」

武道家「北方大陸の山奥とはいえ、ここは登山者にとっちゃ割と有名な場所らしいからな」


剣士「…なるほど」

魔道士「そういうことね」


…ボーン!ボーン!


魔道士「っと、もう9時か…」

武道家「中央行きの特急馬車って9時30分だっけか?そろそろ行ったほうがいいんじゃないか」

剣士「あ~…そうだな」

 
…スクッ

剣士「そんじゃ、行きますかぁ」

武道家「途中で食料品か何か買っておこう。酒とかも買うか?」

剣士「…馬車で酒って、余計に酔いそうな気がすんだけど」

武道家「葡萄酒とか飲みたくないか?」

剣士「…買おう!」


魔道士「飲むのはいいけど、馬車で倒れたり、吐かないでよ。他のお客さんもいるんだから」

魔道士「っていうか、剣士は見境なくなるから飲んじゃダメ」


乙女格闘家「うん。剣士は、飲んじゃだめ」

剣士「何でだよ!」

武道家「そうだな、やっぱり剣士はダメだ」

 
剣士「ぜ…ぜってぇ飲んでやるからな!!」

武道家「やれやれ…」

剣士「何がやれやれだっつーの!」

魔道士「はぁ…」

乙女格闘家「もー…」


コツコツコツ…

魔術賢者「や…みんな、おはよう。まだ町にいてよかった…」


剣士「…あれ、魔術賢者じゃん」

武道家「よっ…どうした?」

乙女格闘家「…おっはよー!」

魔道士「おはよう、魔術賢者さん。どうしたの?」

 
ゴソゴソ…ペラッ

魔術賢者「うん…えっと、これ…」スッ

剣士「…何じゃこの封筒」ペラッ


魔術賢者「それ…紹介状。それがあれば、中央軍本部に入れると思う…」

魔術賢者「旦那に話をしたら…これを渡せばきっと大丈夫って…」


剣士「…わざわざ書いてくれたのか。すまないな」

魔術賢者「ううん…別にいい…」ニコッ


乙女格闘家「…」ウズッ

武道家「ここは酒場じゃないし、他の人の目があるから抑えなさい」ガシッ

乙女格闘家「わ、わかってるってばー!」

 
魔術賢者「みんな、9時30分ので中央に行くんでしょ…?本当にお世話になった…ありがとう…」

剣士「気にするなっつーの。当然のことしたまでだ」

武道家「報酬は貰ってるし、こっちとしては紹介状まで貰ったし万々歳だぜ」

乙女格闘家「うんうん、魔術賢者ちゃんありがとっ!」

魔道士「色々助かるよ」


魔術賢者「…うん、こちらこそ」ニコッ


乙女格闘家「!」ビクンッ

乙女格闘家「…武道家」


武道家「あ?」

乙女格闘家「…しばらく会えないかもしれないし、公衆の面前とか関係ないよね」

武道家「…」ピクッ

 
魔道士「あ…」

武道家「いかん!魔術賢者、逃げろ!」

魔術賢者「…え?」

乙女格闘家「…」ニタァ

…ッピョーン!!

魔術賢者「…!」ビクッ


…ガシャアアンッ!!ズザザザッ…ギュウウッ!!


魔術賢者「」

 
武道家「…」

剣士「…」

魔道士「…」


剣士「……あの愛の表現を、お前は受け止め続けているんだな。凄いぜ」ポンッ

武道家「はは…だろ?」

 
…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
改めて魔術賢者に別れを告げた4人は、中央へと戻っていった。

何事もなく中央都市へと到着後、

剣士一行は武装先生へ再会するために中央軍本部のドアを叩く――。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 3日後・中央都市 中央軍本部 】


軍兵A「…」

軍兵B「…」

ゴォォ…!ヒュウウッ…!!


剣士「ここが武装のオッサンのいる中央軍本部か…」

剣士「依頼受付じゃなくて本部の方は初めて来たがー…」

ゴォォォ……

武道家「何だこの雰囲気…」

魔道士「門番みたいな人たちも、全然微動だにしないで立ってるし…」

乙女格闘家「紹介状は貰ったけど、正面から入っていい感じじゃないね…」

 
剣士「…勇気一発だろうが!」ダッ!

武道家「あっ、おい!」

ダダダダッ…!

剣士「すいませーん!!」


軍兵A「…何か用でしょうか」

剣士「武装中将に会わせてくれ!」

軍兵A「…は?」

剣士「だから、武装中将に…」


魔道士「こ、このバカっ!」グイッ!

剣士「むぐむぐ…!」

 
軍兵A「…いたずらか何かですか?」

武道家「あ…。い、いや…」

魔道士「ち、違うんです!えっと…猛雪山支部の支部長から紹介状を!」バッ!

…ペラッ

軍兵A「紹介状?」ジロッ

軍兵A「…」

軍兵A「…ふむ。おい、ちょっと」ボソボソ


軍兵B「ん?」

軍兵A「これは……、…だろ?」ペラッ

軍兵B「あぁ……、…だな」コクン

 
剣士「…」

武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」


軍兵A「…失礼しました。こちらの紹介状、確かに。少々お待ちいただけますでしょうか」

軍兵A「お伝えするのにお時間がかかりますので…」


剣士「すぐに呼べないのか?」

軍兵A「…武装中将殿は非常に忙しい方です。紹介状を預かってもお会いになることは少ないのです」

剣士「ならさ、"冒険学校の剣士"が来たって教えてやってくれよ」

軍兵A「は…?」

剣士「それで全部通るはずだから!」

 
軍兵A「は…はぁ」

剣士「よろしく!じゃあ中に入って待ってるよ」

軍兵A「ど、どうぞ…」

剣士「ういっす」


武道家「むちゃくちゃな…」

魔道士「本当に会ってくれるのかな、武装先生」

乙女格闘家「久々だねー」


………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 待 合 室 】


コチ…コチ…コチ…


剣士「…」

武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」


剣士「…遅くね?」

 
武道家「もう20分か…。会えないなら会えないでいいんだがな…」

剣士「そんな上司に話通すのって時間かかるもんなのかよ」

魔道士「あのね、ここが世界政府の心臓部の中央軍本部だって分かってる?」

乙女格闘家「そのトップを担ううちの1人を呼び出してるんだよー」


剣士「…なるほど、確かにそりゃ色々あるかもしれん」

魔道士「やっぱり分かってなかった。っていうか説明しても分かってないでしょ…」ハァ

剣士「だけど俺の中じゃ、国を支える人っていうよりも…先生のままだぜオッサンは」

魔道士「うーん、確かにイメージが沸かないけど…」

剣士「もしさ…オッサンがあの時のなままの男なら、会った瞬間にタイマン挑んだりしてみるか」ポキポキッ

魔道士「その瞬間、私の魔法で燃やすからね」

剣士「絶対にやめときます」

 
…コンコンッ

剣士「!」

武道家「来たのか?」

魔道士「あ…。ど、どうぞー?」

乙女格闘家「…」


ガチャッ、ギィィ…

軍兵A「…こちらです。どうぞ」ビシッ!

コツ…コツ…コツ…

 
剣士「…!」

魔道士「あっ…」

武道家「おぉ…」

乙女格闘家「わぁ…」


コツ…コツ…ピタッ


武装中将「…」

武装中将「よく来たな、時代を飾るパーティの諸君」ニカッ


剣士「…オッサン!!」

武道家「武装サン…」

魔道士「お久しぶりです…」

乙女格闘家「武装先生…」

 
武装中将「…久しぶりだな、お前たち」


剣士「オッサン…」

武装中将「…剣士、お前の話は聞いてるぞ。立派な冒険者になったじゃないか」

剣士「…ったりめぇだ!」


武道家「久しぶりっすね…」

武装中将「武道家だったな。久しぶりだ、独自の技を開発したと聞いているぞ?」

武道家「衝撃波のことですか…。そんな話まで…あざす!」


魔道士「武装先生っ…」

武装中将「魔道士…。あの時の涙は、今も忘れてないぞ。女性らしい女性になったな」

魔道士「…っ」


乙女格闘家「わ、私は…」

武装中将「黒髪格闘家…、もとい乙女格闘家か。女性らしさは隠しきれてなかったのを覚えてるぞ」

乙女格闘家「まだ目立ってなかった時なのに、ばれてたんですか…にゃはは…」

 
武装中将「はははっ!…何にせよ、全員、立派になったものだな」

武装中将「俺の立派になったものといえば、シワと白髪くらいだ!」


剣士「なぁに、まだまだ現役だろって!オッサンがよけりゃ、これから実力をー…」

魔道士「…」パァッ!

剣士「…こ、今度、実力を見せてやるよ!」


武装中将「はっはっは!楽しみにしておくぞ!」


剣士「はは…」

武道家「…で、剣士。そんなことより本題だろ」

剣士「あ、あぁ。そうそう、オッサン…紹介状にもあったと思うけど…」

武装中将「ふむ…そうだったな」

………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

剣士「…っつーわけで、学生時代に会ったエルフたちに、もう1度会いに行きたいんだ」

武装中将「なるほどな。それで俺を訪ねたわけだ」

剣士「情勢も詳しくねーし、軍の許可もあったほうが何かと有利かとも考えたけどさ」

武装中将「…冒険者たるもの、世界の情報を知らなくてどうする」

…ピンッ

剣士「いてっ!…へへっ」


武道家「で、どうなんすかね。今もやっぱり危険すか?」

 
武装中将「んー、難しい問題だな」

武道家「難しい?」


武装中将「お前たちが学生だった時よりは、格段に友好関係は築かれつつある」

武装中将「思ったよりも、若い世代のエルフたちは人間に対して恨みを持ってはいないようなのだ」


剣士「あぁ…言ってたな」

魔道士「あの時のメイドエルフさんとかかぁ…」


武装中将「だが、少なからず恨みがあるエルフは確認されている」

武装中将「その時と村が同じとは言い切れぬし、"大丈夫だ"とは決して言えるものではない」


剣士「"エルフ族の西海岸村"は西海岸街支部から近いけど、定期に監査する区域とかじゃないのか?」

武装中将「お前の住む村が、常に他のやつから監視されてたら気持ちいいか?」

剣士「あ~…。そ、そっか…」

 
武装中将「…」

武装中将「仕方ない。西海岸街の支部に連絡をとって現状を見てもらうか?」


剣士「いいのか!?」


武装中将「成果をあげてるパーティの願いだ、これくらいは聞くに決まってるだろう」

武装中将「ま、何より"教え子"として今も思っているがな」ハハハ


剣士「…ありがとよ、オッサン!」

魔道士「お手数かけます」ペコッ

武道家「どーもっす」

乙女格闘家「ありがとーございます」

 
武装中将「…」

武装中将「…ん」ピクッ

武装中将「…いや、ちょっと待てよ。この時期は確か…」


剣士「…どうしたんだ?」

武装中将「今年はあれから3年目の7月…。そうか、もしかしたら…」ブツブツ

剣士「…オッサン?」

武装中将「あ、いや…」

剣士「いやって事はないっしょ」


武装中将「…」

武装中将「ま、そのうち知ることだし先に教えておいてもいいのか…」

 
剣士「そのうち知ることって?」


武装中将「…決して口外せぬと約束できるか?」ジロッ

剣士「な、なんだよ急に」

武装中将「この話は現状、まだ公に出来ない事情がある話なのだ」

剣士「…」


魔道士「そ、それを聞いたら余計なことに巻き込まれちゃうとかあります?」

武装中将「そういうのはないだろう。だが、歴史的な話なので少しな…」

魔道士「歴史…ですか?」

 
武装中将「まぁ何にせよ、説明せねば納得せぬだろうし、話をしてやる」

武装中将「だがこの話は、まだ知る人ぞ知る話。絶対にしゃべるんじゃないぞ」


剣士「…わ、わかった」

武道家「おう…」

魔道士「はいっ」

乙女格闘家「わ、わかりましたっ」


武装中将「恐らくだが、今の時期、西方大陸にいる一部のエルフ族や町村ごとの年配者は留守にしているはずだ」

武装中将「お前たちの言う西海岸村は確か、長老が留守のはず…。今行くのは少しオススメしないぞ」


剣士「…留守?」

 
武装中将「うむ。これは少し入り組んだ話なのだが、お前たちはエルフ族に関してどう教えられてきた?」


剣士「どうって…」

魔道士「西方大陸に住み、魔力の濃い血が流れ、特殊な鍛治技術をもっていて…」

武道家「彼らの歴史は謎に包まれ、その美しい容姿から人間に非道をされてきた」

乙女格闘家「近年、ようやく彼らを守る規律が出来て、昔ほど奴隷狩りや山賊紛いの事件は起こりにくくなっている」

剣士「…だったな」


武装中将「うむ、よく勉強しているな」

武装中将「だがそれは、大きな間違いがある。いや、社会的には正解なのだが…」


剣士「…あん?」

魔道士「間違い…ですか?」

 
武装中将「その情報は、中央軍…」

武装中将「つまり、世界政府がエルフ族をより守るために出した情報操作とでもいうべきか」


剣士「ど、どういうことだ?」


武装中将「実はエルフ族はもともと、"東方大陸側"に住む民族なんだ」

武装中将「今も、東方大陸側には軍が警備、閉鎖にあたった区間の中にエルフ族の町村がある」


剣士「…は?」


武装中将「この世界には、東方、西方、南方、北方、中央の5つの大陸が存在しているのは知っているな?」

武装中将「そのうち、東方、西方、北方大陸は中央を挟むようにして、陸続きとなっている」

武装中将「元々東方の民族だったエルフ族は、前々の世代より非道をされてきた」

武装中将「彼らエルフ族の一部は、その非道より逃れるために東方大陸側より西方大陸側へと逃げたのだ」


剣士「そ、そんなの初耳だぞ…」

武道家「そんなの隠ぺいして、意味あるのか?」

 
武装中将「東方大陸にエルフ族がいないという事が認知されていれば、それで充分だ。意味は分かるだろう」

武装中将「東方側のエルフ族は、非道を受ける可能性は低くなり、民族としては血を残しやすくなる」

武装中将「だが…これも人間の勝手な非道になっているんだろうな」

武装中将「言い方を変えれば、西方のエルフ族には犠牲になってもらい、東側に住むエルフ族を守るということなのだから」


剣士「なっ…」

武装中将「無論、そんなことはさせないように俺らがいるわけだぞ?」

剣士「そ、その"西方を犠牲にする"っていうのはオッサンが決めたことなのか!?」

武装中将「そんなワケないだろう。これは俺の前の世代、当時軍に所属していた前任者たちのもとで決まったことだ」

剣士「でもオッサンはそれに従っているんだろ!?」

武装中将「従わねばならないということだ」

剣士「オッサンも所詮、犠牲にしていいって思ってるから動かないんだろ!?」

 
武装中将「…そう、思うか?」

剣士「ぬ…」

武装中将「…軍従者として大きい声では言えないが、俺は反対だ」

剣士「!」


武装中将「だが、世界で今まで隠してきた事を俺一人で反対したところで、どうこうできる問題ではないんだ」

武装中将「それは…分かるだろう」


剣士「わ、分かるけど…!オッサンともあろう人が!」

魔道士「剣士、落ち着いて。武装先生は悪くないんだから…」

剣士「そ、それは分かってるけどよ…」

 
武道家「なぁ武装さん、ちょっといいか?」

武装中将「なんだ?」

武道家「さっき、西方のエルフ族の一部が東方へ行くって言ったのは、東方にいるエルフ族に会うためか?」


武装中将「あぁ…」

武装中将「それもあるだろうが、彼らのしきたりの一つとして、東方へ行かねばならぬ理由があるのだ」


武道家「しきたり?理由?」


武装中将「彼らは、東方大陸にある"太陽の祭壇"というものを崇めている」

武装中将「それがどんな理由かはハッキリしないが、その祭壇に祈るため、エルフ族らが西方から東方へと向かうんだ」

武装中将「特に、お前らの言う鍛冶長は長老。よりそのような伝わりを大事にするだろう」

武装中将「"月は東に日は西に"。これがエルフ族に伝わる、1つの言葉らしいが」


武道家「へぇ…面白い言葉だな」

武道家「でもさ、西方に住むやつらは、当時の面子は東方へ戻りたいっては考えなかったのかねぇ」

武道家「それのせいで、今住む西方の面子は迷惑被ってるっつーのに…」

 
武装中将「それこそ、彼らは同胞を大事にする種族」

武装中将「東方のエルフ族に迷惑がかからぬように、戻るべき集団移民はしないのだろう」


剣士「…」


武装中将「かなり難しい話だが、これは中央政府…世界が関すること」

武装中将「剣士の気持ちも充分にわかるが、色々な問題が重なっていて安易なものではないという事を分かってくれ」


剣士「…分かるしか、ないんだよな」

武装中将「ありがとう」


剣士「…」

剣士「…そんな重要な話、俺らにしてよかったのか」

 
武装中将「気にするな」

武装中将「俺は若き世代が知らぬことを、作らないべきではないと思っている」

武装中将「だが、時代が変わるまで口外出来ないことなのだ」


剣士「…」

剣士「わかった。もちろん誰も言わねぇよ。オッサンが言う"時代が変わる時"まで」


武装中将「…」ニカッ

剣士「…」

武装中将「お前は正義感が強いというか、本当にもっともっとでかくなる男だと思うぞ」

剣士「…べ、別に」プイッ

 
魔道士「でも、エルフ族が東方側の出身だったなんでちっとも知らなかった…。勉強が無駄になった気分」

乙女格闘家「国とか世界政府が行う、情報操作ってここまで強力なものなんだねー」


武装中将「何が正解ともいえぬが、時代がそうなってしまった…」

武装中将「改善はいずれ、必ず…だ。彼らに本当の平和が訪れるその日まで」


武道家「東方出身のエルフ族に、太陽の祭壇か…」

剣士「何にせよ、鍛治長がいないんじゃ西海岸村に行っても意味ねぇな。今回はやめておくか…」

武装中将「…そうだな、そればかりは仕方なかろう」

武道家「えーと…。ちっとだけ、気になったことがあるんだけど」

武装中将「何だ?」

 
武道家「話し戻すんだけどさ」
 
武道家「俺らは、西方大陸が魔法の生まれし所と聞いてたんだが、それもウソなのか?」

武道家「西方大陸は魔力濃度が高く、エルフ族との関連性や、魔力の謎を解き明かすため研究が進んでるとか…」

武道家「そう聞いてた気がするんだが」


武装中将「一般教養で習う分野だな」

武装中将「これに関しては謎が多く、実は、東方大陸のその"太陽の祭壇"と呼ばれる付近も魔力濃度が高い」

武装中将「研究者たちの仮説のひとつに、西方大陸の魔力濃度の上昇に関して、」

武装中将「実は西方大陸に移り住んだエルフ族の影響ではないかといわれている」


僧侶「エルフ族たちの影響で、西方大陸の魔力濃度が上昇…ですか?」


武装中将「エルフ族の体内に宿す魔力は、触れた物、造りしモノに魔力を付与させてしまうほど強力だ」

武装中将「エルフ族が全体的に散りばめられていれば、全体的な濃度は上がるだろう」


武道家「なるほどなぁ…」

 
魔道士「あ…武装先生。じゃあ私も気になったことが…」

魔道士「5、6年前くらいにあった大地震と魔力濃度の上昇についての謎は解けたんですか?」


武装中将「そんなことまで知っていたのか」

武装中将「あれから何度か調査をしたが、魔力濃度は減少し、今は安定している」

武装中将「西方大陸の大地震と魔力濃度の関連性については謎のままだ」


魔道士「あれから時間が立つのに、まだ解明されてないんですね」

武装中将「地震後にエルフ族の神隠しと、超濃度は謎が多すぎてな…」

 
剣士「…」

剣士「…いつまで難しい話してんだよ!!」


武道家「…少し気になんね?」

乙女格闘家「冒険者たるもの、知識を得ていて損はなし!」

魔道士「そうだよ。知らないって罪になるってよく言うし…」

剣士「…バカで悪かったな!!」


武装中将「はっはっはっ」
 

剣士「もういいっつーの!さっさと、これからの行動決めようぜ!」


魔道士「難しい話してると、すぐそれなんだから…」

魔道士「行動って言っても中央じゃ仕事はないし、馬車で遠征して、山沿いの魔獣討伐の依頼でも行くしかないよ」


剣士「金になることせにゃ、どうにもならんしな。そうするか」

魔道士「うん、それでいいと思う」

 
武装中将「…」

武装中将「…あぁ、そうだった。話に割り込むが、ひとつ情報を」

武装中将「来月、つまり8月に入れば、東方側に遠征しているエルフ族たちも西方側にも戻るはずだ」

武装中将「それ以後に訪ねてこい。その時は、もう1度ここへ来れば、改めて情報を調べてやろう」


剣士「おうっ、有難う」

武装中将「お、いっぱしにお礼を言えるようになったか?」

剣士「何歳だと思ってるのよ、俺」

武装中将「はは、そうか」

 
武道家「んじゃ、遠征も決まった事だし行くならさっさとー…」ドクンッ

武道家「いっ……!!」ズキッ!!

武道家「げほっ!ごほっ!」


武装中将「!」


剣士「…まだ風邪ひいてんの?」

武道家「げほげほっ…!が、学生の時から妙に身体弱くなったのかもな、ははは…」

剣士「一度、治療院とか僧侶…じゃなかった、神官のやつに見て貰ったらどうだ?」

武道家「あ、あぁ考えとくよ」


乙女格闘家「最近、咳がひどいよね……。武道家に何かあったらやだよ?」

武道家「分かってるって。大丈夫大丈夫」ハハハ

乙女格闘家「それならいいんだけど…」

武道家「それよりさっさと行こうぜ!」

乙女格闘家「う、うん…」

 
剣士「んじゃ、オッサンありがとうな。また来るよ」

武道家「ありがとさん」

魔道士「有難うございました」

乙女格闘家「ありがとうございました~♪」

武装中将「う、うむ。気を付けてな…」

剣士「ういっす!」

ガチャッ…


武装中将「…」

武装中将「…やはり、待て。ちょっと武道家だけ残って、それ以外は外で待っててくれるか?」


剣士「武道家だけ?」

 
武装中将「…ちょっとな。その…新技のことで話がある…うむ」

武道家「…」

剣士「…」


魔道士「…わかりました」

乙女格闘家「はいっ」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

武装中将「…で。その咳はいつからだ」

武道家「もう5年になるかな」

武装中将「本当に学生時代からか。咳以外に、痛みはあるのか」

武道家「胸が少しだけ…」


武装中将「ふむ。…さっきの他の奴らの反応。お前自身、病のことは言っていないな」


武道家(うっ…)

武道家「や、病なんて、そんな大それたことじゃ」ハハッ


武装中将「…気づいていないのか?」

 
武道家「この間久々に再会した僧侶に、すげー顔で月一で会いに来いとは言われたけど…」

武道家「それ以外は聞いてないし、大丈夫なんじゃないのかなと」


武装中将「…優しさか。それも辛くはなるんだがな」

武道家「どういうことだ?」

武装中将「お前は今…、魔法を使うことは出来るか?」

武道家「ま、魔法?」

武装中将「魔法だ」


武道家「元々苦手だし、闘気くらいしか」

武装中将「…どんな生き物でも、魔力は宿っている。失敗してもいい、何か簡単な魔法を使ってみろ」

武道家「う、うーん…」

 
武装中将「…」

武道家「じゃあ指先にだけ…小火炎魔法っ」パァッ

…ポウッ!ジジッ…ジジジッ…


武装中将「…」

武道家「…もう、いいか?」ポォォ

武装中将「待て」

武道家「…?」ポォォ

武装中将「…」


武道家「…」ポォォ

武装中将「…」

 
…ユラッ

武道家「ん…」

武装中将「…」

武道家「…」ドクンッ

武装中将「…」


武道家「いっつ…!」ドクンッ!!

武道家「げほっ!ごほごほっ…!!」プシュンッ


武装中将「…やはりか」

武道家「も、もともと魔力は少ないほうだろうし、軽い魔力枯渇を早めに起こしただけだっつーの…」

 
武装中将「…」スクッ

カツカツカツ…、ガサッ!ゴソゴソゴソ…


武道家「な、何してる?」

武装中将「…ほれ。これを受け取れ」ポイッ

武道家「なんじゃこりゃ?」ガシッ

武装中将「その袋の中に入ってるものを取り出してみろ」

武道家「ん…」

ゴソゴソ…パァァッ!

武道家「お、おぉ…?あったけぇ…!なんか力が湧いてくる感じだぞ…。何だこれ?」


武装中将「…それは非常に強力な魔力を持つ魔石。"純気魔石"と呼ばれるモノ」

武装中将「持つと膨大な魔力が溢れ、触れた人間は魔力酔いないし、気絶を起こすレベルの代物だ」


武道家「!」

 
武装中将「だから普段は、その魔力を漏らさぬ加工された袋にしまってある」

武道家「お、おいおい…そんな危ないもんを俺に…」


武装中将「…」

武装中将「…気づかぬか」


武道家「何が?」

武装中将「…俺は正直、触れていなくても袋から出された時点で、多少気分が悪い」


武道家「…」

武道家「…あっ」ピクッ


武装中将「…わかったか」

武道家「ど、どうして俺は倒れない?いや、むしろ心地いいっつーか…」

 
武装中将「…その魔石は、膨大な魔力を宿す以外、ちょっと特殊な効力を持つ」

武装中将「実は治療院が扱う利点があり、貴重な存在の石なのだ」


武道家「…こんなものが?何に使うんだ?」

武道家「あ、分かったぞ!?魔力の量がどれくらいか調べられるんだろ!」


武装中将「それは近いが…少し違う。これは近年発見された効果で…」

武装中将「"魔力枯渇症"の確認に扱われるわけなのだがー……」


武道家「魔力…枯渇症…?」


…………
………

本日はここまでです。

余りこのようなことは書かなかったのですが、少しだけ。
正直なところ、複雑説明パートだったので一気に描きましたが、「そうなんだ」
程度の流しでも大丈夫です。後々のパートで「そうだった」と思えるシーンではありますので、
何卒彼らの話にお付き合い下されば嬉しく思います。

それでは、有難うございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍本部 外 】

…ザッ

武道家「…ただいま」

魔道士「あ、お帰りなさい」

乙女格闘家「おっかえりー♪」

剣士「お帰り。新技とか言ってたが、何の用事だったんだ?」


武道家「あ、えーと…」

武道家「なんかその、新技がどんなもんか見せてくれと…」

  
乙女格闘家「さーっすが武道家!武装先生にも認められちゃった?」

武道家「はは、いや…うん…」

剣士(…?)

武道家「…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

武道家「魔力枯渇症?」

武装中将「魔力が身体から失われていく奇病だ。今のお前は、間違いなくソレだろう」

武道家「う、失われるって…。どういうことだよ!」

武装中将「そのままの意味だ。体内から魔力が失われ、やがて……」

武道家「ま、待ってくれよ!治療方法は?」

武装中将「治療方法は残念ながら、存在していない…」

武道家「…へ?」

武装中将「一旦、その神官のもとへ行くんだ。すぐに。手遅れになる前に…」

武道家「なっ…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
武道家「…」

武道家「な、なぁ。今日はちょっと、先にみんなで一回宿に戻っててくれないか」

武道家「用事ができちゃってさ、あとですぐ行くから」


剣士「…用事だ?」

武道家「武装さんに、その技を他の人に見せてほしいってお願いされて…な。その…うん」

剣士「そうか」


乙女格闘家「じゃあ、私も!」

武道家「あ、えーと…。ぐ、軍の許可がいる場所だから、他の人は入れないんだってよ」

乙女格闘家「えぇ~…」ショボン

武道家「あ~…。じゃ、じゃあ終わったら後で二人で遊ぼうぜ。な?」

乙女格闘家「わかった♪」

 
魔道士「じゃあ、私たちはこの間泊まった宿の部屋で待ってるね」

魔道士「宿の人に言えば、部屋に案内してくれると思うから」


武道家「おう、頼んだ」

武道家「…」


剣士「おい…お前顔色悪いぞ。大丈夫か?」

武道家「あたりまえだろ」

剣士「わかった。んじゃ、部屋で待ってるぞ」

武道家「…おう」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 郊外にある教会 】


武道家「…ってわけだ」

神官「そう。聞いたんだね」

武道家「…正直に言ってくれ。俺はどうなる?」


神官「…」

神官(……武装先生がそう言ったということは…やっぱり…)ギリッ

神官(武装先生がそう真実を伝えたなら、僕は友達として…)

神官「…」ゴクッ

神官「…うん」

神官「武装先生の言った通り、君は魔力枯渇症の可能性が…高いと思う」

 
武道家「!」

神官「そ、それと…」ブルッ

武道家「…何だ」

神官「し…知るのが少し…、遅すぎたと思う…」

武道家「…どういうことか言ってくれるか」


神官「こ…この病は治療方法が確立されていないから、特殊な魔力を持つ道具で魔力の維持をするしかないんだ」

神官「とはいえ、これは治療方法じゃない。あくまで症状の緩和はで、本人の負担を和らげるだけ…」

神官「和らげるだけとはいえ、武道家くんは元々魔力が少ない体質だから、もっと早く何か治療をするべきだった…!」


武道家「…抜けてくのは分かった」

武道家「だけど、抜ける魔力を、その色々な魔力の道具で維持すら出来ないのか?」

 
神官「簡単にいえばこの病は、体内の魔力タンクが壊れて徐々に衰弱していく病なんだよ」

神官「どんなに魔力を回復させようとしても、タンクが壊れてたら一時的な維持は出来るけど…」

神官「いずれタンクは壊れ、魔力は完全に失われる」


武道家「つ、つまり俺は…」


神官「…どのくらいのペースで魔力の減少が発生しているか分からないから何ともいえないけど」

神官「もし5年前から症状が始まっていたとしたら…」


武道家「したら…?」ゴクッ

 
神官「武道家くんが血を吐いていたり、胸に負担がかかるのは…末期症状」

神官「もともと体力がある武道家くんだから立っていられるけど、普通の人だったら寝たきり生活だと思う」

神官「だ、だから…っ」


武道家「…だから、どうなるんだって!俺はいつまでこうしていられる!?冒険できる!?」

神官「普通の人の基準だけど、武道家くんと同じ症状の人の余命は…」

武道家「よ…余命…は……」


神官「"1年"」

  
武道家「…!!」

神官「~…っ」

武道家「お、おい…ウソだろ?」

神官「う、ウソだったら、どんなに良かったか…」ブルッ

武道家「え、待てよ。俺まだこんなに元気だぜ?学生のころ…いや、それ以上に走り続けられるし!」

神官「…」


武道家「え…?お、俺…1年後に死ぬのか?」

神官「し、死ぬなんて!1年後とか限らないよ!個人差はあるし!」

武道家「個人差…。つまり、死ぬのは確定ってことなんだな…」

神官「…あっ」ハッ

 
武道家「…」

神官「…っ」

武道家「そ、そうか。そうなんだな…」


神官「き、きっと…何か方法があるかもしれない!」

神官「明日には治療方法が見つかるかもしれないんだから!」


武道家「…っ」


神官「…奇病はこの世に沢山ある。僕も、そういう人たちを相手にしてきた」

神官「も、もちろん…武道家くんが侵されている病の人たちの相手も…したことはあるんだよ!」


武道家「その人たちは、どうなった…?」

神官「…そ、それは」

武道家「正直に言ってくれ。頼む」

神官「……もう、この世にはいない。余命1年と宣告した人も、半年すらもたなかった…」

 
武道家「…半年、か」


神官「1か月に1度来てほしいといったのは、病を緩和する魔力維持用の魔石の装備の確保に時間が掛かるのと」

神官「どのくらいのペースで減少しているか改めて調べるつもりだったからだよ」

神官「改めて、本当に武道家くんが魔力枯渇症なら…わずかでも魔力の減少を捉えることは出来るから」

神官「それと…、その過程で治療方法が確保されるかもしれないと思ったのは本当で…!」


武道家「…」

武道家「……そうか。俺、死ぬのか」


神官「…だ、だから!そんな武道家くんが落ち込まずとも…!」

武道家「…」

神官「ぶ、武道家くん…!」ブルッ

 
武道家「…」

武道家「…」

武道家「…ぷっ」

武道家「は…はははははっ!」


神官「ぶ、武道家くん…?」


武道家「…おいおい。お前、どんだけ情緒不安定なんだよ」ハハッ

神官「えっ?」


武道家「さっきから冷静に回答したり、感情的になったり」

武道家「お前がそんなんじゃ、俺が感情だせねーじゃねーか」ハハハッ

 
神官「う…っ」ガタガタ


武道家「…」

武道家「僧侶、ありがとな」


神官「…え?」

武道家「手がずっと震えてるぜ?俺の事、きちんと思ってくれてるんだろ…ありがとな」

神官「…っ!」ブルブル

武道家「そんなお前が震えてちゃ、感情は出せないわ、当の本人は笑っちまうっつーの」ハハハ


神官「…仕事だから。平静を装うのが普通だから…」

神官「だけど…、君はやっぱり大切な友達で、仲間で…。感情が抑えきれなくなるし…!」


武道家「…」

 
神官「…な、何で武道家くんがこんなことに……!」

武道家「なぁに、神様ってのは、うまぁく人を作るっていうのは本当だってことさ」

神官「ど、どういう意味…?」


武道家「考えてみろ、俺のような強さを持って生まれてきた事は、まさに天運だ」バッ!

武道家「だが、やっぱり人は平等らしいな。短命にして、バランスをとってきたということだな!」

武道家「ただそれだけだ。うはははっ!は~っはっはっはっはっ!」


神官「武道家くん…っ」

 
武道家「ただ、それだけだ。それに…絶対に俺は死ぬといえるか?」

神官「…絶対なんて言葉、この世にはないと思ってる」

武道家「だろ?何とかなったりするかもしれんぞ」

神官「…」

武道家「話聞いてくれて、色々教えてくれてありがとうな」

神官「…僕も、全力で治療方法を探すから!」

武道家「おうよ、楽しみにしてるぜ」ニカッ


神官「…」

神官「あ…そうだ。武道家くん」


武道家「んむ?」

 
神官「えっとさ…。この袋、持ってってよ」クルッ

ゴソゴソ…スッ

武道家「…これは?」パシッ

神官「"純気魔石"の欠片が入ってる」

武道家「…確か、魔力枯渇症の確認に使うやつだっけ」

神官「うん。だけど、この大きさでも袋から出したら周囲に魔力発しちゃうから、袋からは出しちゃダメ」

武道家「持ってて意味あるのか?」

神官「…小さな欠片だけでも、魔力枯渇症の人にとっては気分が安らぐみたいだから」

武道家「あぁ…そうか。ありがとな!」

神官「うんっ」


武道家「んじゃ…そろそろ皆も心配するし、宿に戻るかー…」

…ミシ…

武道家「ん…?」

 
ミシミシ…

ガタ……ガタガタ…!!

武道家「お…」

神官「地震…かな」


ガタガタ……ガタッ……


武道家「…」

神官「…」
 

ガタッ……シーン…


武道家「…収まったか」

神官「最近、微震だけど地震が多いような気がするんだよね…」

 
武道家「ふむ…」

神官「治療最中に来ると最悪だし、孤児院で子供預かってるとすぐ泣いちゃうし」

武道家「はは、立派に仕事してるなお前は」

神官「へへっ、そりゃね」

武道家「んじゃ…俺は宿に戻るよ。本当にありがとな」

神官「うん。また…」


武道家(結構時間かかっちまったな…)

武道家(怪しまれないためにも、買い物でもしとくか。酒でも買えば剣士も浮かれるだろうし)ハハッ


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 宿 】

ガチャッ…ギィィ…

武道家「…ういっす!」


剣士「お、来たか」

乙女格闘家「おっかえりー!」

魔道士「お帰りなさい」


武道家「なんだ3人で集まってたのか」

乙女格闘家「うん」

 
魔道士「で、どうだったの?」

武道家「何が?」

魔道士「何がって……」


武道家「…」

武道家「…あ、あぁ!」


魔道士「?」

武道家「いや、もう大喝采!そんな素晴らしい技、よく開発しましたって!」

乙女格闘家「すごーい!」

剣士「…」


武道家「ま、まぁそんなもんだ!そ…それより3人で集まって何してたんだよ」

剣士「んむ…。これからどうするかって話をしてた」

 
武道家「…さっき武装さんと一緒にいた時、魔道士が山沿いで依頼を探すって言ってなかったか?」

剣士「そうなんだけどよ、ほら…装備とかも使い込んできたし、新調もしてぇなと」

武道家「中央都市にいるんだ、その辺で買えるだろ」


剣士「俺や武道家、魔道士の武器はアレだが…」

剣士「乙女格闘家は使い込んでるとすぐ金属疲労で壊れちまうだろ?」

剣士「それに、俺らは防具がそこまでいいもんじゃないし…これからの事を考えると買い込むのは有りかなと」


乙女格闘家「…ご迷惑おかけします」

武道家「迷惑じゃねーっつーの」コツンッ

乙女格闘家「あうっ」

 
剣士「ま…そういうことだから色々話してたわけ」

武道家「なるほどな」

剣士「…と。そういう前に、お前のその荷物はなんだ」

武道家「ん?」ガサッ

剣士「すげー袋持って来たようだが…?」


武道家「あー…。ほ、ほら、軍に見せたら推奨金出たんだよ!だから食料とかお酒とか買ってきたんだよ!」

武道家(やっぱり反応しやがった。話そらしてくれると助かるぜ)


魔道士「武道家のおごり?珍しい!」

武道家「珍しいってなんだ、珍しいって」

 
剣士「…じゃ!昼間過ぎだけど、早速ー…」ガタッ!

魔道士「早い!」

乙女格闘家「早い!」

武道家「早い!」

剣士「…はい」


武道家「やれやれ、お前はそんなに酒好きだったか?」

武道家(さすが剣士、俺の考えを裏切らない奴だ……ははっ)


剣士「…いや何だ、飲みたい気分かと思ってな」

武道家「誰がだよ。お前が飲みたいだけだろ」


剣士「そ、それはだな…」

剣士「……いや、いい。何でもない」


武道家「…?」

 
…バンッ!

魔道士「と、に、か、く!今は今後の予定とか、色々決めてから!」

剣士「へーい」

乙女格闘家「節操ないな、剣士!」

剣士「なにおう!?」


武道家「はは…」

武道家「んじゃ、俺も話し合いに参加しますかねーっと」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 中央都市 宿のテラス 】
 
ホー…ホー…

…カランッ

剣士「…」グビッ

剣士「…ふぅ。結局色々やったせいで時間がたっちまった」

剣士「みんなでワイワイ飲みたかったんだがな…」


コツコツコツ…

剣士「ん…」


…ポンッ

武道家「よっ、お待たせ」

 
剣士「…乙女格闘家は?」

武道家「寝たよ。昼間の会議で頭使ったーとかって言って即ダウンしてた」

剣士「あいつ、そんなに考えてたっけ」

武道家「くくく…その言葉、伝えてやろうか?」

剣士「やめてくれ、ぶっ飛ばされる」

武道家「ははは!魔道士は来ないのか?」

剣士「あいつも最近疲れてたからなぁ。すぐ寝ちまったよ」

武道家「…だろうな」


剣士「ふん。それよりほら、ウィスキー飲むか?」スッ

武道家「おう、ありがとよ」カランッ

 
…グビッ

武道家「…む」

剣士「ん?」

武道家「少しきついぞ…この酒」プハッ

剣士「はは、そりゃよかった。酔いたい気分じゃないかなーと思ってたっつっただろ」

武道家「昼間の言葉は俺のことだったのか。…よくわかったな」

剣士「そりゃ分かるさ。何年一緒にいると思ってる」


武道家「…」

武道家「なぁ、剣士」


剣士「あん?」

武道家「お前にだけは、話しておかないといけないと思うんだ」

剣士「…病気のことか?」

武道家「どうしてそれを!?」

 
剣士「ばーか、だからさ…何年いると思ってるんだよ。昼間は僧侶の所にでも行ったんだろ?」

武道家「…筒抜けか。そりゃそうか」フッ

剣士「で、酷い病なのか」

武道家「…正直に話そうと思う」

剣士「おう」


武道家「俺の病気は魔力枯渇症っつって、魔力が失われる奇病だと」

武道家「余命は…1年ないし半年程度だそうだ」


剣士「…」

武道家「…」

剣士「ふん…1年な」

武道家「…驚かないのか?」

 
剣士「お前が病じゃ死ぬと思ってねーよ。何せ、お前は"武道家"だろ?」

武道家「くっ…くははっ!確かにな!」

剣士「…今、お前の身体に起きてる異変は咳くらいなんだろ?」

武道家「以前からだったが、咳の間隔が短くなってきた。心臓の痛みと…後は吐血くらいだぜ」

剣士「はっはっは!笑わせるじゃねえか!立派な病人だぜそれは!」

武道家「くくくっ、どうする?俺が重病人だってよ」


剣士「くく…ははははっ!」

武道家「ははははっ!」


剣士「ははっ…」

武道家「ふっ…」

 
剣士「…」

剣士「……っ」ギリッ!!

剣士「…ば、バカ野郎っ……!」


武道家「…」

剣士「…これからだろ。これからだっただろうが…!」ギリッ

武道家「…悪いな」

剣士「…ッ」

武道家「…」


剣士「…じめてだ」

武道家「…ん?」

剣士「これほど、時間がたつのを止めてほしいと思ったのは初めてだ…!」

武道家「…」

 
剣士「…で。これからどうするつもりなんだ」

武道家「まだ乙女格闘家たちには黙っていようと思う」

剣士「いつ話をする」

武道家「…わからん。もし、その時が来たらのほうがいいだろうとは思う」

剣士「突然倒れられたら、それこそ哀しむんじゃないのか」

武道家「…俺の少しのわがままくらい聞いてくれよ」

剣士「あん?」


武道家「俺はこの、今のパーティが大好きなんだ」

武道家「俺のせいで、このパーティの冒険をやめたくない。命が燃え尽きるまでさ」

 
剣士「…」

武道家「…」

剣士「…そうか」


武道家「あぁ…」

武道家「……げほっ、げほげほっ!」


剣士「…」

武道家「ゴホゴホゴホッ!!ゴホッ!!」


剣士「…武道家」

武道家「ぜぇ…ぜぇ…!…な、なんだ?」

剣士「お前の命がどうとかは、考えたくねぇ。だが、このことはしっかり話すべき相手がいるだろ?」

武道家「乙女格闘家か?だからそれはさっき…」

剣士「ちげぇよ」

 
武道家「じゃあ誰だ?」

剣士「…お前の親だよ」

武道家「!」

剣士「お前の親父と、母親には伝えるべきじゃないのか」

武道家「…」


剣士「しばらく顔出しもしてねぇし、色々とある前に顔くらい見せてやろうぜ」

武道家「…俺は言いたくない。もしそうなったら、お前が冒険の途中でそうなったと伝えてくれないか」

剣士「…それでいいのか?」

武道家「あぁ。それが俺らしい最期だと思ってる」

剣士「それがお前の望みなら、俺はきいてやるさ」

武道家「…ありがとよ」

 
ホウ…ホウ…サワサワサワ……


剣士「……草木がなびく音。夜も更けてきた…か」

武道家「この雰囲気には、酒がよく似合うぜ」グビッ

剣士「はは、全くだ。さて、もう一杯ー…」


ミシ…
 
 
剣士「ん…」


ミシミシミシ…グラッ…


剣士「…何だ?」


…グラグラグラグラ!!ミシミシッ…!!

ゴォオオオッ…!!!

 
武道家「…地震か!?」

剣士「地鳴りも…!結構でかいぞ!」

ゴォォォッ!!グラグラグラグラッ!!…ガチャンッ!!


剣士「あらら…高かったボトルが…。とにかく一回部屋に戻ろうぜ!」ダッ

武道家「そうだな、あとで合流しよう!」ダッ!


タッタッタッタッ…

……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ガチャッ!


魔道士「あ、剣士!」

剣士「なんかすげぇ揺れだぞ!一回外に出よう!」

魔道士「う、うんっ!」

グラグラグラッ…!!!


剣士「ほら手ぇ貸せ、急ぐぞ!武道家らも外に出てるはずだ!」グイッ

魔道士「うんっ」

タタタタッ…

……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 宿 の 外 】


タタタタッ…ガヤガヤ…!!

剣士「うおっ、すげぇ人だかり」

魔道士「みんな外に逃げてきたんだね…武道家たちは?」

剣士「えーと…」キョロキョロ


武道家「おーい、こっちだ!」

乙女格闘家「あっ、剣士たち!おーい!」フリフリ


剣士「この人ごみの中でも目立つ奴らだ…恥ずかしい奴らめ!」

魔道士「きっとその言葉は、私らに対しても浮かんでると思うよ…」

 
タッタッタッタッ…

武道家「ふぅ、無事で何より。すげぇ揺れだったな」

剣士「こんなでけぇ地震なんか久しぶりだ」

魔道士「みんな驚いて逃げてきたんだね」

ザワザワ…ガヤガヤ…!!

乙女格闘家「何にせよ、みんなが無事ならよかったよー」


…ウー!!ウー!!


剣士「うるさっ!?…今度は何の音だっつーの!」


魔道士「これは中央軍の緊急招集音…かな。中央軍が、緊急配備されてるんだと思う」

魔道士「凄い地震だったし、何かあったのかも」

 
剣士「…」

剣士「一応、中央軍の一般依頼受付所に行ってみるか?」


武道家「そうだな。何かあった時に動ける面子がいたほうが軍も楽だろうし」

剣士「人助けになるかもしれねーしな、行こう!」

魔道士「うん」

乙女格闘家「だねっ」


…………
……

本日はここまでです。
途中④、いつものご挨拶も兼ね、有難うございました。

皆さま有難うございます、投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍 一般依頼受付所 】 


ザワザワ…ガヤガヤ…!!  


剣士「うへっ…夜中なのにココもすげぇ人だぜ…」

魔道士「一緒の考えの人とか、依頼の発布されるかとお金儲けになると考える人たちもいるんだと思う」

剣士「ちょっとこれじゃ中にも入れねぇな…」

魔道士「どうする?」


武道家「何か依頼があるなら受付所で動きあるだろうし、少し待機してみてもいいんじゃないか」

乙女格闘家「そうだねー。もう少ししたら動くかもしれないし」

 
剣士「なぁ…ここが震源地じゃなかったら、もっとでかい地震のところがあったってことだろ?」

魔道士「…たぶんね」

剣士「だとしたら、被害がものすげーんじゃ…」

魔道士「うん…。そんな事がないように考えたいけど…」

剣士「…」


サッ…サササッ


武道家「…あ?」ピクッ

剣士「どうした」

武道家「今、受付所の裏から軍人さんたちが出てったのが遠目だが見えたぞ」

剣士「中央軍が?」

武道家「中央軍の依頼受付所だし珍しいことじゃないが、随分急いでたような…」

剣士「…追いかけてみるか」

武道家「受付所のほうでも何かあるかもしれねーんだぞ?」
 
剣士「どうせこの人だかりじゃ前も詰まって動けねーよ。脇道にそれて追いかけてみようぜ」ウズッ

 
武道家「…仕方ねぇな」

魔道士「はぁ、いっつもそうなんだから」

乙女格闘家「仕方ないね」


剣士「じゃ、行くぞ」


タッタッタッタッ…

……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 路地の一角 】


タタタッ…コソッ

剣士「…っと、止まれ」バッ

武道家「どうした。いたか?」

剣士「…軍人さんらが集まってる。中心にいるのはお偉いさんか?」

武道家「えーと…」ジー


魔道士「…」ジー

魔道士「……あっ!?」ハッ

魔道士「あ、あの真ん中の人…!あの人ってあの時の人じゃない…!?」


乙女格闘家「あの時…?私は見たことないよー?」

武道家「俺もだな」

 
魔道士「たぶん、武道家と乙女格闘家は知らないと思う」

魔道士「剣士、ほら!学生の時に、私たちに道を尋ねてきた大戦士先生の部下だったっていう…!」


剣士「……あぁ!」

魔道士「中央少尉!」

剣士「中央少尉!」


魔道士「だけど、今のあの服についてるバッジは…大尉のだね。昇格したんだ」

剣士「…お、静かに。何か話そうとしてんぞ」

魔道士「私らに気付かないでしゃべるって、昇格しても昔と変わってないね…」


ザザザザッ…ビシッ!!

軍人たち「召集致しました!」

中央大尉「ご苦労。中央軍本部より、緊急招集と情報が入った。今から共有するから良く聞いてくれ」

軍人たち「はっ!」ビシッ!

 
中央大尉「震源地は東方大陸。震域は中央を含め、大陸全土で確認された」

中央大尉「まだ詳しい被害情報等は入っていないが、我々はその救出隊へ組み込まれる可能性が高い」

軍人たち「はっ!」ビシッ


中央大尉「詳細は本部にある転移装置を使用し、東方支部へ到着後に武装中将より指揮を受ける予定だ」

中央大尉「既に中央軍本部には各地より集まった軍人らが待機している」

中央大尉「混乱を避けるため、出来る限りー…」


…ボソボソ

剣士「聞いたか?東方側が震源地だってよ…。転移装置って"扉"のことだよな」

魔道士「うん。東方側って、今は鍛治長さんたちが行ってるんだよね…」

武道家「前の地震は、エルフ族の村の直下だったんだろ?今回も、東方側のエルフ族の村直下とかじゃねえのか…」

乙女格闘家「うーん、どうなんだろ…」

 
剣士「…つったって、俺ら軍人じゃねぇし干渉できねぇし…」

魔道士「こればっかりはどうしようもないよね」

武道家「…エルフ族の住む場所での地震は二度目…少し不安になるな。無事だといいんだが、鍛治長サンら」

乙女格闘家「神隠しだっけ?あの時みたいな事なかったらいいんだけど…」


剣士「…ま、大丈夫だろ。武装のオッサンも指揮するみたいだし」

剣士「俺らはとりあえず、一般受付のほうで少し待機してたほうがよさそうか」


魔道士「うんっ。武装先生がいるんだし、大丈夫だよ」

…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 同時刻 中央軍本部 】

…ドンッ!!

武装中将「…一体どうなっている!震源地付近の東方支部にまだ連絡はつかないのか!」

武装中将「緊急隊も準備したというのに、転移装置も動作停止とは!」


大魔術中佐「落ち着いてください。今、うちの配下が取り急ぎ転移装置の復旧を行っております」

拳闘家少佐「加えて、うちの直属の者も小隊で向かわせました。明日の明朝には東方側の情報は把握できます」


武装中将「…槍士大将殿、元帥殿は何をしているんだ!」

武装中将「被害の確認もできず、支部側の最後の連絡は"甚大な被害"のみ!」

武装中将「ただでさえエルフ族が多く住んでいる地区だというのにー…」

 
大魔術中佐「…まさかこのタイミングで転移装置が停止するとは」

拳闘家少佐「転移装置に利用している魔力に何らかの問題が?」

大魔術中佐「今までこのような事はなかったので、問題の特定からさせていますが…」

武装中将「くそっ…!」


拳闘家少佐「もしかしたら、東方側の支部の面子も中央へ向かっているかもしれません」

拳闘家少佐「…とにかく落ち着かなければ」


武装中将「…分かっているが。くそっ…!」


…ガチャッ!

元帥「…みなのもの、ご苦労」

 
武装中将「元帥殿!」バッ!

元帥「時間帯のせいもあるが、今いる幹部はたったこれだけか…」


武装中将「…」

拳闘家少佐「…」

大魔術中佐「…」


元帥「槍士大将のやつは、本部へ集まった面子を指揮をしているのでここへは来ない」

元帥「人数は少ないが、このまま会議を始めようと思う」


武装中将「…会議といえども、現地の東方支部と連絡がつかなければどうにもなりません」

武装中将「一刻も早く、東方支部と連絡をつけるべきです!」

 
元帥「それについては既にに拳闘家少佐と大魔術中佐が行っているはずだろう」

元帥「連絡がすぐにつかないのは仕方ないことだが、今出来るのはそれだけだ…」


武装中将「…し、しかし!転移装置は停止し、少佐の隊は明日の明朝以降など!」

武装中将「どうにかならないものか……!」


…ガチャガチャッ、バタンッ!!!

軍人「し…失礼いたします!」


拳闘家少佐「何だ…確認もせず入るとは、何をしている!」


軍人「っ!」ビクッ

軍人「緊急だったもので、申し訳ありません!たった今、転移装置が作動致しました!」


武装中将「本当か!」

 
軍人「そ、それでその…、大変失礼とは存じますが、震源地付近にある東方支部の一名をこちらに!」スッ

拳闘家少佐「…連れてきたのか。貴様、たかだか離れ支部の軍人など、話を聞いて伝えるだけでよいものを!」

軍人「も、申し訳ございません!!ですが!!」

拳闘家少佐「言い訳は無用!貴様、いかなる場合であろうが軍人たるものー…」


武装中将「…落ち着け少佐。彼だって分かっているはず」

武装中将「規律…それを犯してまで連れてきたという事は尋常ではない事態」

武装中将「いいぞ、入らせろ」


軍人「…有難うございます!」

軍人「おい、入れ!」


拳闘家少佐「…武装中将殿は甘すぎる」

 
ガチャッ、ギィィ…
 
…ヨロッ、ポタッ、ポタッ…

東方軍人「ぐっ…うっ…」


拳闘家少佐「!」

大魔術中佐「!」

元帥「!」

武装中将「…どうしたんだ、その傷は」


東方軍人「し、失礼致します。自分は東方大陸…祭壇町支部の…」

武装中将「挨拶はいい。重要な部分だけ伝えろ」

 
東方軍人「は…はいっ…!地震後、支部より町へ倒壊した建物もあり…救出隊を編成…!」

東方軍人「その救出隊により、エルフ族…一部住民らの消失を確認…!」


武装中将「何だと…!?」


東方軍人「…その村の調査中に…、周辺から町へ"魔獣の集団"が出現…」フラッ

東方軍人「やがて編成隊は魔獣と衝突……。我が支部は援軍を出撃、再び魔獣らと交戦……っ」

東方軍人「その直後、人体への影響はなかったものの…魔力濃度の急上昇を確認しました…」

東方軍人「現在、前線付近の東方支部は、甚大な被害が…。至急、応援を……」


武装中将「!」

拳闘家少佐「!」

大魔術中佐「!」

元帥「!」


東方軍人「あ゛っ…」

フラッ…ドシャアッ……

 
武装中将「…」

拳闘家少佐「今の話…本当だと思いますか?」

大魔術中佐「事実、彼のケガも酷いですしね。これはちょっと…」


元帥「…」

元帥「とりあえず、その男は治療室へ。今の言葉が本当なら、今すぐ転移装置を使って援軍を送る」

元帥「町のエルフ族の消失が本当なら、あの時の事件と同じ。今回こそは問題を突き止めねばならん」


武装中将「そうですね。大魔術中佐、部下に転移装置の安定を確認をしてくれ」

武装中将「その後、拳闘家少佐は小隊に魔力調査を行うメンバーを隊に加え、救助も視野に入れて向かってくれるか」


拳闘家少佐「小隊でよろしいのですか?」

 
武装中将「先遣隊として、まずは向こう側の状態の確認等をしてほしい。準備を頼むぞ」


拳闘家少佐「はっ!」ビシッ

大魔術中佐「承知致しました」ビシッ

ガチャッ、タッタッタッタッ…

………

……

 
……

…………
 
元帥「…」

元帥「さて、少し厄介なことになったな」


武装中将「…こういう時、自分が若ければ前線へと進んで立ったのですが」

元帥「ワシらはもう歳だ。あとは若い者たちの時代だよ」

武装中将「はは…」

元帥「こんな時、彼がいれば"俺がやる"と言って率先して向かったんだろうな」

武装中将「彼とは?」

元帥「…大戦士くんだよ」

武装中将「あぁ…」


元帥「彼もまた、歳といえば歳だ。だが、彼ほど強い男はワシは知らぬ」

武装中将「…そうですね」

 
元帥「さて、ワシらも出ねば若い軍人らに文句も言われるぞ。槍士大将に代わって指揮へ出よう」スクッ

武装中将「今回のコトは、一般に情報を出しますか?」


元帥「いや、そう問題を大きくしなくてもよかろう。過去に似たような事案はあったものの、問題とはならなかった」

元帥「あの時と違うのは、魔獣が現れたということ。地震に触発されて出現したものとは思うが…」


武装中将「元帥殿が大きな問題にしないというならよろしいのですけども…」

元帥「…どうした。珍しく不安か?」

武装中将「いえ、同じ事件が月日を経て起こるとは…。どことなく胸騒ぎがするだけです」


元帥「…お主の予感は当たるからな。あまり悪い予感は出さないでくれよ」

武装中将「はは、思いすぎかもしれませんしね」

元帥「うむ…。そう考えたほうがよい。何にせよ、最悪の事態は想定すべきだと思うがな」

 
武装中将(…)

武装中将(あの東方支部の軍人の話が本当なら、あの神隠し事件の再来で間違いはない)

武装中将(すると、魔力濃度の上昇で転移装置に支障が出るほどの魔力があったということか?)

武装中将(だが、前回はなかった魔獣の集団の出現か…)

武装中将(支部とはいえ、手練れの軍人がキズだらけにされるものだろうか)

武装中将(少佐の先遣隊による支部の状態の確認をせねば何も言えぬが、この胸騒ぎは……)


………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 治 療 室 】

…ガシャアンッ!!

治療員「…おい、早く縛りつけろ!暴れてては治療もできん!麻酔が何故きかん!」

アシスタント「ですが、暴れすぎてて…!」


東方軍人「が、がぁぁっ!は、離せ!ダメだ、まだ伝えるべきことが…!」

治療員「はいはい、幹部連さんたちは忙しくなるんだ、あとで話を聞いてやるから」

東方軍人「ち、違う…!これは大事なことで…!」


治療員「…仕方ない。数週間堕ちるかもしれんが、劇薬の麻酔を直接投与するぞ」スッ

…ブスッ

東方軍人「!」

ドサッ…

東方軍人「…」スヤッ

 
治療員「…ったく、重病なのに暴れるなっつーの。さて、治療を始めるぞ」

アシスタント「はい」

カチャカチャ…


東方軍人(ダメだ…。寝てしまっては…)

東方軍人(あの軍勢は…)

東方軍人(あの…魔獣たちは…ち…せい…を…)

…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日 早朝 】

元帥「…」

槍士大将「…」

武装中将「…」

大魔術中佐「…」


…コチコチ


元帥「少佐の先遣隊を出発させてから5時間にもなるか」

 
槍士大将「未だに戻らないとは…」

武装中将「彼らの隊に何かあった…ということか」

元帥「その可能性は否定できぬな…」

槍士大将「すぐにでも第二隊を送るべきとは思いますよ」

元帥「だが、状況も分からず送るには…少し気が重くなる」


武装中将「少佐程の男が、その辺の魔獣にやられるとは思いません」

武装中将「上位種の魔物とぶつかったか、何か起きたか…」


元帥「実力を持っても、対処できない相手…か」

元帥「下の者に向かわせるには、少々危険だな」

 
槍士大将「自分が参りましょうか」

元帥「いや、ダメだ」

槍士大将「…なぜです?」


元帥「ここにいる面子は、基本的に動かすわけにはいかん」

元帥「何かあった時、指揮をとれる人材は失えん」


大魔術中佐「…今ここにはいないようですが、聖大佐や少将はどこへ?」

元帥「彼らは他の支部で前線指揮中だ。あっちはあっちで大変なようでな」

大魔術中佐「なるほど…」

元帥「世代交代時期とはいえ、層が薄いものだ…。これほど人材が乏しいとは」

大魔術中佐「…」

 
槍士大将「…自分や元帥殿、武装中将殿は指揮を中心にするとして」

槍士大将「魔術中佐は転移装置や、今後何かあった時の為の知能的立場、会議の中心となり…か。」

槍士大将「…確かに、どうにもなりませんな」

槍士大将「尉官以下では今回の問題は任せられませんね」

槍士大将「…この状況ですし、犬死の可能性がある。それは可哀想でしょうから」


元帥「…無駄に犠牲を出すことはできん」

武装中将「…」

槍士大将「…」

大魔術中佐「…」

 
武装中将「…」

武装中将「では…一つ提案があるのですが」


元帥「…何だ?」


武装中将「中央軍として、恥ずるべき行為とはなるでしょう」

武装中将「ですが、その軍への侮辱を承知のうえで、もっとも改善の策になりえると思います」


元帥「ふむ…言ってみるがいい」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数時間後 一般依頼受付所 】


…ザワザワ、ガヤガヤ


剣士「ふわぁ~…」

魔道士「夜が明けたのに、いまだに凄い人の数」

武道家「ここぞとばかりに、仕事があるかもと集まってるんだろう」

乙女格闘家「これじゃ、簡単な依頼すら受けられないなぁ…」

 
剣士「いつまでも俺らもここにいても、どうしようもねーし…」

魔道士「でも、馬車って動いてるのかな。あまりに大きい災害だと、移動制限かかるんじゃなかったっけか」

剣士「えっ、まじで?」

魔道士「うん。前、嵐が来た時も移動制限で田舎町に2週間滞在したでしょ」

剣士「あー…そうだったな」


武道家「だけど、ここにいても仕方ねーのは事実だぞ」

乙女格闘家「馬車が止まってるなら歩きでもいいけど、他の国境とか越えられるかな?」

武道家「んー…」

乙女格闘家「あまりに被害が大きかったら、他国の国境のゲートも閉まっちゃってるかもしれないよね?」

 
剣士「…とりあえず、人が多すぎるとうるせーし、宿に戻って計画練らないか」

武道家「賛成。ここにいるよりはマシだ」

魔道士「うん、そうしよう」

乙女格闘家「さんせー…」

 
剣士「…さて、じゃあ宿に戻ろうぜ」

魔道士「だね」

武道家「…昨晩は少し待機してたし、眠気がひどい。少し寝てから話し合いな…」フワァ

乙女格闘家「…ぎゅーっと添い寝しよっか!」

武道家「い、いや…」

 
タタッ…タタタタタッ…!!ダダダダッ!!

???「…おぉぉいっ!!」

ダダダダダッ……!!


剣士「ん…」

武道家「なんか後方がやけにうるせえな」

魔道士「何だろ?疲れてるし、朝から騒がしいのやめてほしいんだけど…」

乙女格闘家「ここに缶詰状態で頭おかしくなった人じゃないかな」


???「…見つけたぞ!!剣士っっ!!」


剣士「あぁん?俺の名前…?」クルッ


???「ラリアットォォォウッッ!!!!!」

…ビュオッ!!!

剣士「…へ?」

 
…ゴシャアッ!!!

剣士「ぬあああっ!?」バキィッ!!

ズザザ…ドシャアッ…!!


魔道士「け、剣士!?」

武道家「おーおー、吹き飛んだなぁ」

乙女格闘家「っていうか、何で剣士がラリアットされたの」


…ムクッ

剣士「…っ!」

剣士「いてぇな…この野郎!!誰だコラァッ!!」クワッ

 
???「おぉ、怖いな。立派な冒険者になってるって話は聞いてたが…」

???「すっかり大人になった感じじゃないか」


剣士「…あぁ?」

???「…ちと髪の伸びたし、少しばかり老けたから分からないか?」
 
剣士「…」

???「…おいおい、本当に分からないのか。兄と呼んだ男を忘れるなんて、酷い話じゃない」


剣士「…あに?あに、兄…」

剣士「…」

剣士「…えっ」ピクッ

剣士「まさか…!だ、大戦士兄っ!?」


大戦士「…正解♪」ニカッ

本日はここまでです。有難うございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 近くのカフェ 】


大戦士「お姉さん、コーヒーね」

店員「かしこまりました、少々お待ちください」ペコッ

タッタッタッタッ…


剣士「大戦士兄、本当に久しぶりじゃん!どうして中央にいるんだよ!」

魔道士「…お久しぶりです」

武道家「久しぶりっすね、大戦士サン」

乙女格闘家「おひさです!」

 
大戦士「…いやー今朝方さ、急に武装大佐…じゃないや、武装中将に呼ばれてさ」

大戦士「今日は学校のイベント日だったんだけど、休んでこっちに来たんだよ」

大戦士「中央本部の転移装置が安定してないらしくてね、ここの受付所に飛ばされたんだ」

大戦士「そして外に出てみれば、人ごみの中から抜け出ようとした君たちの姿を見つけたわけ」ハハハ


剣士「武装中将に呼ばれたって、オッサンが大戦士兄をわざわざ?」

大戦士「あの人が俺を呼ぶなんて、よっぽど何かあったのかねぇ」

剣士「…昨日の地震のことじゃないのか」

大戦士「恐らくね。冒険学校付近も凄い揺れたよ」

剣士「…」

大戦士「それよか、君たちの噂は聞いてるぞ。"黄金世代の卵"って言われてるらしいじゃないか」

剣士「…卵?」

大戦士「何だ、知らないのか?」

 
剣士「…魔道士、聞いたことある?」

魔道士「全然」

武道家「美味そうってことなのかね」

乙女格闘家「私、きっと美味しいよ~♪でも、食べていいのは武道家だ、け」キャー

武道家「…」


大戦士「そういうことじゃなくてだな」

大戦士「俺や、武装中将が活躍していた時代を"黄金期"ないし"黄金時代"と呼んでいるんだ」

大戦士「名だたる冒険者や、実力が高い人らが多く、かつ中央軍として世界統治を安定させていたからだ」


剣士「ふーん。自慢か。それで?」

 
大戦士「…」

大戦士「この数年で、その黄金時代を築いたメンバーは俺を含め…冒険者としては引退の時期だ」

大戦士「そして、下の世代である君たちの時代となった」

大戦士「だが、どうにもこうにも実力の長けた者らはいなかった」

大戦士「そんな中、この短期間でメキメキと成果をあげ、実力も高い若い先鋭パーティが現れたわけだ!」


剣士「…それがもしかして」

魔道士「私たち…?」


大戦士「その通り。君たちは、自分らが噂になっていることくらいは知っているだろうが」

大戦士「俺らや中央軍、引退せし熟練者らからは"黄金世代の卵"と呼ばれているんだよ」


武道家「おぉ…」

乙女格闘家「かっこいー!!」キラキラ

 
大戦士「そーいうこと。ま、これからもがんばってくれたまへ、若き冒険者よ」ニカッ

剣士「へへっ」


武道家「…そういえば、大戦士さん」

大戦士「うん?」

武道家「少戦士とかはどうなったんだ?次の年らへんに卒業できたんだろ?」


大戦士「あー…次の年に卒業してね」
 
大戦士「今は確か豪剣士と二人、ペアで冒険者として世界を駆け巡ってるよ」


剣士「同業者、ライバルになったってわけだな」ニヤッ


大戦士「君たちほど名前も売れてないし、これからに期待って感じかな」

大戦士「依頼紹介は俺が直接出来るわけでもなし、チビチビと小さな依頼をこなして生活してるらしいけどね」

 
武道家「師匠なんだから、もっと色々と手をかけりゃいいのに」

大戦士「彼らも君たちみたく、自由でいたい!と言うだろうし、最初から手をかけるつもりはなかったかな」

武道家「あ~なるほど」


大戦士「…あっ、そうそう!豪剣士くんといえばさ…」

大戦士「豪剣士くんは、尊敬できる剣士みたくなるために、スマートな名前がいいとかで…」

大戦士「"剣豪"って名前にしてたね」
 

剣士「え゛っ」

魔道士「うわぁ…愛されてるね」

剣士「嫌だっつーの!!」

武道家「…」

乙女格闘家「剣豪と、剣士の愛…おえっ」

剣士「変な想像してんじゃねえ!」

 
大戦士「あっはっはっは、君たちは全然変わってないな」

剣士「そうそう変わるかっつーの」

大戦士「うん、君らはそのままでよろしい」

剣士「当然だ」フン


トコトコ…

店員「…お待たせ致しました。ご注文のコーヒーをお持ちしました」


大戦士「おっ、ありがと…」

カタッ…カタカタカタ…

大戦士「…」ピクッ

 
カタカタカタ…ガタガタガタガタッ!!グラグラグラッ!!!

ゴォォォォオッ!!


剣士「ちっ、また地震か!」

魔道士「大きいよ!」

武道家「…乙女格闘家、もっとこっちにこい!」

乙女格闘家「う、うんっ!」


グラグラッ…!!

店員「きゃああっ!」パッ

大戦士「…いかん、コーヒーが!危ない!」バッ

…パリパリンッ!!バシャッ!!

店員「あっ!」

 
グラグラグラ…ミシミシッ…

ミシッ…ミシ………


剣士「ふぅ…収まったか。大丈夫だったか魔道士」

魔道士「うん…」

武道家「乙女格闘家も、大丈夫だな」

乙女格闘家「うん」


剣士「大戦士兄は…、って!」


ジュウウッ…

大戦士「あっちぃ~!熱々コーヒーもろに被っちゃったよ!」ハハッ

店員「あ…あう…」ブルブル

 
大戦士「大丈夫かい?抱きしめて悪かったね、嫌だっただろうこんなオジサンで」ハハ

店員「わ、私…コーヒーを…!やけどが…!」

大戦士「あぁ、これでも俺は元冒険者でさ、こんなのぬるま湯みたいなもんだし、大丈夫だから安心してくれ」ニカッ

店員「で、でも…」


大戦士「いやー、丁度浴びるほどコーヒー飲みたかったんだよな!」

大戦士「ついつい自分から本当に浴びに行っちゃったよ」ハハハ


店員「…っ」


剣士「お姉さん、本当にこの人は大丈夫だから安心して」

武道家「そうそう。火炎で燃やされても、平気な人だから大丈夫」

大戦士「あのね君たち…」


店員「ご、ごめんなさいっ!」

 
大戦士「だから、謝らなくてもいいさ。それより、カップの破片が危ないから動かないで」バッ

店員「…」

大戦士「よいしょっと。今拾うから待ってくれよ」スッ

チャリ…チャリッ…


大戦士「おら、剣士たちも見てないで手伝う。冒険者たるもの、人の役に立ってこそだ」

剣士「わ、分かってるっつーの!」

魔道士「はいっ」

武道家「なんかこういう教え、久々だな」

乙女格闘家「学校に戻ったみたいだね」ヘヘッ

 
店員「…」

大戦士「…」

チャリチャリ…パラパラ…


大戦士「…よしっと。これで大丈夫」

店員「…有難うございました…本当に…」

大戦士「なになに!君のような可愛らしい娘さんにケガがないなら、何より」ニコッ

店員「…は、はいっ」カァッ

タッタッタッタッタッ…


大戦士「お、おいちょっと!せめて破片のごみくらいはもってってー…」

 
剣士「…」

剣士「だ、大戦士兄の男らしさを見た気がした」


魔道士「あんな感じなことばっかりやってきたのかなぁ…」

武道家「罪な男ってやつじゃねえか…」

乙女格闘家「恋に年齢は関係ない…か。完全に堕ちたね、あの店員のお姉さん…」


大戦士「うおっし!コーヒーも満足するほど飲んだし…」

大戦士「そんじゃ久々に、中央軍本部に行きますかぁ!」バッ!


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍本部 】


武装中将「…で、なぜこの子らがいるのかな?」ピクピク


剣士「…へへ」

魔道士「…」

武道家「…ふふ」

乙女格闘家「…」


大戦士「ははは、未来を担う子たちにも、ぜひ情報を教えてやってくれないかなと」


…ゴツンッ!!!

 
大戦士「」プシュー

武装中将「お前は幾つまで、そのままなのだ!」


大戦士「ぶ、武装中将殿!しかし私が呼ばれるということは相当な事態」

大戦士「いずれ、この若き冒険者たちにも及ぶ事だと思い、先鋭達である彼らを連れてきたのです」


武装中将「例えそうだとしても、元軍人であるお前がそういう事をするでない!」

大戦士「…そ、そんな面倒臭いことばっかだから軍を辞めたんでしょーが!」

武装中将「はぁ…。あのまま続けていれば世界を担う男になる逸材だったというのに…」

大戦士「そういうのはパスですよ。所詮、俺には似合わない舞台でしたから」

武装中将「…似合う、似合わないの問題ではないだろう」

大戦士「いいんですよ、俺は自由で。なーんて」ハハ


剣士「二人のやり取り始めて見たが、なんかなぁ」ボソボソ

魔道士「…だね」ボソボソ

 
武装中将「全く…」

大戦士「…で、本題にいきましょうよ。割と真面目に、由々しき事態なのでしょう?」

武装中将「…確かにそうなのだが」チラッ

大戦士「そんなに剣士たちがいると話辛いのですか?」

武装中将「彼らの性格を知ってるからな…絶対に首を突っ込む案件だ」


剣士「…酷い言われようだな。俺らが規律を乱しかねないみてーじゃねーか!」

武装中将「…乱すだろ?」

剣士「はい」

武装中将「…げんこつ食らうか?」

剣士「いいえ」


大戦士「はっはっは!」

…ゴツンッ!!

 
大戦士「」プシュー


武装中将「ったく…仕方ない。時間もないし、剣士たちは聞くだけにしておけよ」

武装中将「大戦士の言う通りではないが、下手をすれば世界を巻き込まれん事態になっているのだ」


剣士「世界が巻き込まれる事態?」

武装中将「昨日教えた、東方に住むエルフ族の話は覚えているだろう」

剣士「あぁ。西方ではなく、本当はエルフは東方に住んでたってやつな」


大戦士「なんだ、そういう事まで教えてるなら気にせず機密情報もどんどん…」

…ゴツンッ!!!ゴツゴツンッ!!

大戦士「」プシュウ…

 
武装中将「…ごほんっ」

武装中将「今回の震源地は、東方大陸の中心部。太陽の祭壇町付近、つまりエルフ族の町が震源地だ」


大戦士「…!」ピクッ


剣士「!」

魔道士「エルフ族の…」

武道家「…やっぱり、そうだったのか」

乙女格闘家「だ、大丈夫なんですか?」


武装中将「うむ。実は昨晩、その支部から転移装置で連絡が入ってな…」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


大戦士「…なるほど。再び住民の消失と、魔獣の集団ですか」


武装中将「…その後、先遣隊として少佐の隊を向かわせたが未だに連絡が入らない」

武装中将「その為、一刻も早く次の小隊を派遣する予定となっている」

武装中将「…俺が自ら行くのも考えたが、指揮をとれる人間がいなくなるのは困るといわれてな」


大戦士「確かに、今の軍の状況で武装中将殿含む、幹部を失うのは痛手でしょう」


武装中将「拳闘家少佐から早めに連絡が入ればいいのだが、どうにもこうにも帰還せず…。」

武装中将「先遣隊が戻らない以上、安易に動くのは得策ではない。だが、情報が必要だ…」

武装中将「先ほども言ったが、今後の為に情報を掴むため小隊派遣を一刻も早くせねばならん」

 
剣士「エルフのジイチャン…そんな場所で大丈夫なのかよ…」

武道家「剣士の飲み会の席の一言が、こんな状況を知ってしまう事になってしまうとは…」

魔道士「別に剣士が起こしたわけじゃないでしょ、そんな言い方やめてよ…」

武道家「わ、わりぃ…」


大戦士「それで俺が呼ばれた理由は?ま、大体分かりますけどね」

武装中将「…小隊に入ってほしいんだ」

大戦士「やっぱりね」ハァ


武装中将「軍を退役した身で、このような事を頼むのは申し訳ないと思っている」

武装中将「だが、頼める人材がいない。…今の軍はあまりにも弱すぎるんだ」

 
大戦士「武装中将殿が歳をとったといっても、中将殿の世代や俺の世代でも充分に戦えるメンバーはいるでしょう」

大戦士「そういった、いわゆる黄金世代の引退した人たちを呼び戻せばいいんじゃないですかね」


武装中将「…最悪、その…呼び戻すことも考えている」

大戦士「!」

武装中将「まだ情報が錯綜しているが、今回は何かが変だと思うんだ」

大戦士「…本気ですね。貴方がそんな考えまで持っているとは」


武装中将「何にせよ、拳闘家少佐の先遣隊ないし、これから送る小隊で情報を固めたい」

武装中将「それまでは大隊を送るにも…無駄になる可能性がある以上、大きな動きは出来ないのは分かるだろう」

 
大戦士「…」

大戦士「…その小隊は、俺が指揮して着いてきますか?」

大戦士「当時ならまだしも、今の若い世代が俺のことを知っているとは到底思えない」


武装中将「お前は有名人だぞ?こう言うのはなんだが、お前の名だけで着いてくるはずだ」

大戦士「もう退役して10年以上ですよ?」

武装中将「未だに大戦士は伝説として残っている」

大戦士「…」

武装中将「…行ってくれないか。頼む」

大戦士「やれやれ。軍も都合がいいですね、結局は俺は小隊のお守りってわけでしょう?」

武装中将「言い方は悪いが、それは認めざるを得ない…」

大戦士「はぁ…」

 
武装中将「どうだろう…。頼めないか」


大戦士「…」

大戦士「…では、武器は俺が現役時代に使ってた軽剣を用意してください」

大戦士「あと、俺に従うよう、しっかり若いメンバーにも伝えること」

大戦士「過去の栄光を振りかざして指揮をしても、現場でついてくる人間はいません」

大戦士「現役の中将である貴方から一言を頂ければ、まぁ何とかついてくるでしょう」


武装中将「!」

大戦士「ただ、本当に役に立つかは分からないですよ」

武装中将「…やってくれるだけ、有難い。有難う」

大戦士「いいですよ。世界の危機になるかもしれないというなら、動ける面子が動くしかないでしょう」

武装中将「…」

 
剣士「大戦士兄…」

大戦士「剣士たちは、まだ動く時じゃない。残念だけど、もうしばらく待機しててくれるかな」

剣士「…わ、わかってるっつーの!」

大戦士「…バカに素直だな」


魔道士「どんなバカでも、こういう空気は読めるということです」

剣士「うっせっ!」


武装中将「ははは、では早速準備をさせよう」

武装中将「剣士たちは、一度自分たちの宿へ戻るといい」

武装中将「中央を離れるなら、東部側には向かわないことだ」

武装中将「祭壇町付近だけでなく、その周囲の閉鎖区域を拡大する強化を進めているからな」

 
剣士「…わかった。とりあえず俺らは俺らのままで生活するよ」

剣士「だけど、必要な事があったら呼んでくれ。これでも俺ら強いんだぜ?」ハハッ


魔道士「…うん、だねっ!」

武道家「そうだな。喜んで戦うぜ」

乙女格闘家「任せて!」


大戦士「あぁ…。分かってるよ」

武装中将「はは、お前らのような若き冒険者がいて嬉しく思うぞ」

大戦士「武装中将殿、これが俺の教え子であり、弟子ですよ。頼もしいでしょう?」ククッ

武装中将「未来を担う冒険者たち…か」

大戦士「…ふっ」

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市の一角 】

トコトコ…

剣士「はぁ~…大戦士兄、大丈夫かねえ」

武道家「大丈夫だろ。殺しても死なないような人だし」

魔道士「私、ちょっと今回の事態がどうなっていくか少し不安だな…」

乙女格闘家「こんなこと聞いたことないもんね。本当に私たちに飛び火してきそう」


剣士「なぁに、武装のオッサンと大戦士兄で何とかなるだろ」

剣士「最強の戦士に、最強の指揮官だろ?」


魔道士「…ふふっ、そうだよね」

 
武道家「もし俺らが中央軍にいたら、大戦士さんと一緒に東方へ行ったのかもしれないな」

剣士「あー…」

武道家「ま、今は関係ないか。俺らは俺らの生活の心配しようぜ」

剣士「そうだな…東方側閉鎖するっつってたし、今度は南にでも行くか?」


魔道士「そういえば…北、東、西はいったけどまだ南って行ったことないね」

剣士「船も使って、砂漠地帯とかっつーのでも見に行くか!?」

魔道士「うん、それでもいいよ。過酷な場所って聞いたけど、私らで受諾できるクエストあるかもしれないし」

剣士「よっしゃ、決まったら早速今日から出発しようぜ!」


武道家「砂漠か…。水持ってかないといけないのかね」

乙女格闘家「食料いっぱい買わないとねー。船も出てるか分からないし、調べながらいかないと」

 
剣士「んまぁ、とりあえず南方大陸行きの船着き場まで行くか」

武道家「港周辺にも食料店はあるだろうし、そこで計画のことを改めて話し合うってのもいいかもしれん」

剣士「そうだな、じゃあ早速出発しようぜ!行くぞぉ~っ!」ダッ!

武道家「おっ、待てコラ!!」ダッ!


魔道士「あっ!ち、ちょっと待ってよ!」ダッ

乙女格闘家「まだ中央の宿に荷物置きっぱなしでしょー!」ダッ


タッタッタッタッタッ…………

…………

……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍本部 転移装置前 】

バチバチッ…!


大戦士「それでは、行ってまいります」

武装中将「…うむ」

大戦士「えぇ、任せてください」


小隊軍人たち「…」ビシッ!


大戦士「どんな状況かは分からないが、俺がお前たちを守ると誓う」

大戦士「ただ、過去にない事である以上、相応の覚悟は…しておいてくれ」


小隊軍人たち「はっ!」ビシッ!

 
武装中将「では、武運を祈る。あまり先走りすぎた無茶はするんじゃないぞ」

大戦士「な~に、ちゃっちゃと俺らでも解決して戻ってきますよ」

武装中将「…本当にそうなりそうだがな」

大戦士「では…」ビシッ!

武装中将「…」ビシッ!


大戦士「これより東方支部、祭壇町へと突入する!」

大戦士「到着後、各自軽率な行動をとらず、小隊長である俺か、副隊長の"中央大尉"に従うように!」


…ビシッ

中央大尉「…また貴方と組むことになるとは思いませんでした」

中央大尉「久々に、あなたが隊長として活躍するところを見せて頂きますよ」


大戦士「…はっはっは、楽しみにしておけ!それじゃあ出発する!」

大戦士「小隊、前進っ!」

  
小隊軍人たち「はっ!!」ビシッ!

ザッ…ザッザッザッザッ…!!

大戦士「…」

中央大尉「…」

小隊「…」
 
 
バチッ…、バチバチバチッ!!ギュウウウウンッ!!

ギュウウッ…!!

ウゥゥン…

……

 
武装中将「…」

武装中将「…頼んだぞ、大戦士」


バチ…バチバチバチ…!!ボォンッ!!!プシュー…!


武装中将「むっ…?」


タタタタッ…!!

軍人「…ぶ、武装中将殿!失礼致します!」

軍人「武装中将殿、魔法転移装置に何らかの異常…停止した模様!」

 
武装中将「…なんだと!」

軍人「すぐに大魔術中佐殿をお呼びし、原因の調査をいたします!」

武装中将「大戦士たちが向かったばかりなのだぞ!急げ!」

軍人「は、はいっ!」

タタタタッ…!!


武装中将「…ッ」

武装中将「大戦士っ……!」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 東方大陸 祭壇町(エルフ族の町) 】


バチッ…バチバチバチッ!!

…ギュウウウンッ!!!バシュウンッ…!


……スタッ…!


大戦士「うしっ!…無事に到着したか」

中央大尉「そのようですね。さて…全員隊列を組め!」

小隊軍人たち「はっ!」

 
…バチバチ…バチィッ!!ボォンッ!!

プシュウ…!!


大戦士「…ん?」

中央大尉「何の音でしょう?」


タタタッ…!

小隊軍人「…報告致します!転移装置が、停止した模様です!」


中央大尉「何?」

大戦士「は…はは。しょっぱなから嫌なことだな…」

中央大尉「どうしましょうか。魔術師らに復旧をさせますか?」

大戦士「復旧は向こう側に任せよう。転移装置の原動力である巨大魔石は本部にあるわけだし」

中央大尉「分かりました」

 
大戦士「それよか、見ろ。この支部の惨状はどうしたんだ……」


ゴォォォォ…!


中央大尉「随分と…荒れていますね。地震があったとはいえ、割れたガラス等も放置されているとは…」

大戦士「ここの支部はそれなりの人数はいるはずだし、本部の少佐が来ているはずだろう。なのに人の気配もないぞ?」

中央大尉「確かに、待機部隊がいてもいいはずなのですが」

大戦士「と、すると…ここに待機できない事態が起きたか…?」

中央大尉「とりあえず町に出てみましょう。エルフ族の民が消失したと聞きますし」


大戦士「そうだな。確か大広間から抜けられるはずだ」

大戦士「そこの角を曲がったところだったはずだ。全員進むぞ!」

ギシッ…!ギシギシ…

大戦士(木造の歩く音って不気味で好きじゃないんだがな…)

ギシギシ……

 
大戦士「…」

中央大尉「…」

小隊「…」

ギシギシ…!ギシギシ…ギシ…


大戦士「…」

大戦士「…」

大戦士「…むっ?」


モワッ…


中央大尉「うっ…」

中央大尉「何ですか…そこの角から流れ出てるこの霧のようなモヤは…」

 
モワモワ……


大戦士「大広間のほうからだ…」

ギシギシ…、クルッ

大戦士「…いっ!?」

中央大尉「どうしましたか…って!こ、これは!?」

小隊軍人たち「…っ!!」


ドロォ…ポタ…ポタ……

支部軍人たち「…」


大戦士「…何だこれは。支部の面子の死体の山じゃないか…」

中央大尉「何という酷い有様……!」ゲホッ

 
…ザワザワ

小隊軍人たち「お、おい…何だこれ…!うげっ…」

小隊軍人たち「死体だらけだ…」ゴクッ

小隊軍人たち「き、聞いてないぞ…!!」

ザワザワ…ガヤガヤ…!


中央大尉(…まずい。慣れていない状況で若い奴らが騒ぎはじ…)

大戦士「…静まれ!中央軍人たるもの、この程度でざわついてどうする!」バッ

中央大尉「!」

小隊軍人たち「!」


大戦士「実戦経験のないものもいるだろう。だが、これしきで騒いでいてはどうにもならん!」

大戦士「お前たちは、ここにいる以上、選ばれた者たちなのだ!」

大戦士「その自覚を持ち、しっかりしろ!」

大戦士「そして、隊を率いる俺たちを信じろ。中央大尉ないし、俺はなぁ…強いんだからな?」ニカッ

 
小隊軍人たち「…!」

小隊軍人たち「……はっ!」ビシッ


中央大尉(…さすがです。大戦士殿)


大戦士(…さて。落ち着かせたとはいえ…何だこの状況は…)

大戦士(地震でこうなるものか?美しくあるはずの建物が崩れ、床には支部の軍人たちが転がっている…)

大戦士(四肢が満足でない遺体まで…。魔獣が町の中へ侵入でもしたか…ふむ)

大戦士(それに…一体何だというんだこの…)

モワッ…モワモワ…

大戦士(開きっぱなしの入り口のドアから流れてくる、この霧のようなモヤ…)

大戦士(霧といえるのかどうか…まるで水気がないし、どうも気分がよくない……)


中央大尉「…大戦士殿。これからいかがなさいますか」

大戦士「外に出るのは危険な気がする。霧のせいで前がよく見えない状況での前進は危険だ」

 
中央大尉「それはそうですが、調査を行う以上……」

大戦士「…わかってるよ」


トコトコ…スッ

大戦士「……だがまぁ、この遺体たち。一体なぜココで倒れたのか」

大戦士「床だけでなく、壁までビッシリとした血の跡。それに戦った形跡と思われるものもある…」

大戦士「魔獣の仕業としても、実力のある軍人たちがこうも簡単に殺されるものなのか」

大戦士「そもそも、本部の拳闘家少佐の隊はどこへ消えた…?」


中央大尉「…それと、遺体を見渡す限り…エルフ族の姿はないですね」

大戦士「そうすると…やはり外。町の中…か。あまり動きたくはないんだがな」スクッ

中央大尉「…やはり、出るしかないですね」


大戦士「…」

大戦士「エルフ族の民家はすぐ傍にあるはず。そこの中で何か痕跡があるかもー…」ピクッ

 
…ヒュッ!!ヒュオオォッ!!

大戦士「ぬっ!」バッ!

…カキィンッ!!クルクルクル…ザスッ!


中央大尉「大戦士殿!?」

大戦士「大丈夫、防いだ。今のは…ナイフか?」チラッ

…キランッ


中央大尉「…ナイフ?どこからですか」

大戦士「そこの出入り口だな。霧の中から飛んできた」

中央大尉「…敵でしょうか」

 
大戦士「全員、一歩下がれ!」

小隊「はっ!」

ズザザ…


中央大尉「…ここにいるという、魔獣か何かですかね」

大戦士「魔獣がナイフを投げるって?…床に刺さったそのナイフ、拾ってくれるか」

中央大尉「分かりました」

トコトコ…スッ…チャキンッ

中央大尉「むっ…」


大戦士「どこのナイフだ。文様はあるか?」

中央大尉「これは…中央軍本部のものですよ」

 
大戦士「ってことは、味方が俺らを敵だと勘違いして投げてきたか…」

中央大尉「敵か、ですね」


小隊軍人たち(…すげぇ落ち着いて分析してるな。これが歴戦の人たちなのか)

小隊軍人たち(俺らも、いつかこうなれるのかな)

小隊軍人たち(とにかく今は、この状況でどうなるか…)


大戦士「…試すか」

中央大尉「突撃すると」

大戦士「冗談いうな、この中で突っ込んだら俺が殺されちまうよ」

中央大尉「昔の貴方なら、突撃してたじゃないですか」

大戦士「若い頃とはもう違うんだっての。とりあえず、そのナイフを貸せ」

中央大尉「どうぞ」スッ

 
大戦士「…」チャキンッ

大戦士「…この方向からだな」ググッ


中央大尉「投げる気ですか?」

大戦士「味方だったら困るし、当てないようにずらすつもりだ。そこの扉からモヤの中に薄ら見えている煉瓦にぶつける」

中央大尉「なるほど。相手の出方を伺うと」

大戦士「…おらっ!」ブンッ!!


ビュオンッ!!ヒュウウッ…ガキィンッ!!

…カランカランッ


大戦士「…」

中央大尉「…」

 
…シーン

大戦士「…反応なしか」

中央大尉「やはり、魔獣が何かが投げてきたのでは?」

大戦士「頭のわりぃ魔獣が、俺らを狙って正確に投げられるかよ」

中央大尉「…ふむ」


…ガタンッ!!


大戦士「…物音!」バッ!

中央大尉「外からです」チャキッ

大戦士「…」チャキッ

 
ザッ…ザッ…ザッ……


中央大尉「足音…」

大戦士「霧の中から、何か来るぞ」

小隊軍人たち「…っ」


ザッザッザッザッ…モワッ…


大戦士「お…姿が見えー……って、な、何っ!?」

中央大尉「…なっ!」

小隊軍人たち「な、何だ…こいつら…!」


???『…』チャキッ

 
大戦士「…おいおい、一体何だこいつら…」

中央大尉「ひ、人型ですが、服…武器…防具を持っている…。だけど人には到底見えないですね」

大戦士「そんなの見て分かる。中央大尉、君はどう分析する」


中央大尉「…魔獣でも、魔物でもなさそうですが、人にしてはあまりに異質。正直分かりません」

中央大尉「ですけどそうですね…。一つ確定していることといえば…」


大戦士「今回の事件の中心はこいつらの仕業だということだな」

中央大尉「…そういうことです」

大戦士「こいつら…確かに魔獣、魔物とは呼べないな。知性も高そうだ…が。一体こいつらは…」


ゴォォォ…

???『…知性が高イ?その言葉ハ、俺らをバカにしているな』

???『人間風情ガ、俺らをバカにするトは…』

???『まぁイイ、どうせお前らハ…皆殺シだカらな」チャキッ!!

 
大戦士「お前ら、人語を…!」

???『…我々が、人語を使うノは…不思議かな?』

大戦士「お前たち、失礼ならすまない。…人、なのか」

???『ハハッ!お前ラの言う中では…魔物ニでもなルか』

大戦士「…魔物?まさか!人型で、人語を理解する魔物など!」

???『…フッ』チャキンッ


大戦士「その臨戦態勢…あくまでも交戦希望か…っ!」

大戦士「全員、武器を構え!」


中央大尉「こ、こいつらは一体…!」チャキッ!

小隊軍人たち「…武器、準備します!」チャキッ!

 
???『…』ダッ!

ダダダダッ……!!

???『…ハハハッ!!』ブォンッ!!


大戦士(一体、何が起きているというんだ……!!)


…ビュオオオッ!!バシュウッ!!!
 
…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

本日の更新はここまでです。有難うございました。

皆さま有難うございます。お時間を頂いておりましたが、投下いたします。

  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 4日後 ところ変わって南方大陸・砂漠港 】


ジリジリ…ジリジリジリ…!

剣士「あ…つ…いーーーーーー!!!!!」

魔道士「うるっさーい!!」

武道家「いやこれ本気でヤバイぞ…気温何度よ…」フラッ

乙女格闘家「えーと、そこの温度計は…」チラッ


"47度"


剣士「しぬーーーーーーー!!!!!」

魔道士「うるっさーーーーい!!!」

 
武道家「南方大陸は砂漠地方…。熱帯とは聞いていたが…」

乙女格闘家「さすがに暑すぎるね…」フラッ

武道家「こんなところで依頼受けられるのか…?」

剣士「倒れそうだ…」フラフラ
 

トコトコ…

???「…おや」

???「おいおい、あんな恰好で…。旅行者か何かか?おーい!」


魔道士「…誰かに呼ばれてる?」

武道家「あそこのターバン巻いた男だな…」

乙女格闘家「な…なんですかぁ~…!」

 
タッタッタッタッ…

ターバン男「君たち、旅行者か何かか?」

ターバン男「そんな恰好でここにいたら、熱中症で死んじゃうぞ」


剣士「ここまで暑いとは思わなかったからさぁ…」フラフラ

ターバン男「きちんと準備しないとダメじゃないか。この近くに服屋があるからきちんとしたほうがいいよ」

剣士「服屋って…。服装で何とかなるもんじゃぁ…」

ターバン男「…この南方砂漠地方の服は、ちょっと特殊でね」

剣士「ん~…?」


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 砂漠港の服屋 】

…パサッ

乙女格闘家「みてみてー!」

キラキラッ…


武道家「…露出高すぎないか。踊り子っぽいぞ」

乙女格闘家「見せるとこ、見せられるうちに見せたいじゃん♪」

武道家「…いやお前、そうは言ってもな…」ジー

乙女格闘家「水着と一緒だって!」

武道家「あんま他人にお前の露出見せたくないっつーか…」

乙女格闘家「大丈夫大丈夫!この布の中身は、武道家だけのも…」

武道家「静かにしなさい!!」

 
…パサッ

魔道士「わ、私は恥ずかしいから、露出は抑え目で…」

キラキラッ…

 
剣士「…似合ってるな」

魔道士「そ、そうかな」

剣士「この下とかどうなってんの?下着?」ペラッ

魔道士「こ、こらぁぁっ!!」

剣士「お?いつもと違う…」

魔道士「…火炎で吹き飛ぶ?」

剣士「ごめんなさい」

魔道士「全く…」

 
乙女格闘家「それにしても、これ着た瞬間から凄いスーっとして涼しいよ、何でだろ?」

ヒヤッ…

武道家「俺と剣士の服も、結構厚めのはずなのに涼しいんだよな」

魔道士「ってことは、私らはスカートだから涼しい…ってわけじゃなさそうだね」

剣士「魔法か何かか?」


ターバン男「ここらで作られるものには、魔法の練りこまれた糸が使われていてね」

ターバン男「この服がないと、すぐに暑さでやられちゃうんだ」


剣士「へぇー…。オッサン、親切だな」


ターバン男「ここに住んで長いんだけど、熱で倒れる人が後を絶たなくてね…」

ターバン男「旅行者とかいたら出来るだけ声をかけるようにしてるんだよ」

 
剣士「そうなのか。ありがとうな!」

ターバン男「いえいえ。それで、君らはこれからどこへ行くんだい?」

剣士「この周辺に宿をとって、依頼がないか探しに行くつもりだよ」

ターバン男「依頼って…クエストのことかな?」

剣士「そうそう」

ターバン男「え…。もしかして、君たちは冒険者かい!?」

剣士「そうなんだけど…見えなかったか?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
剣士「あぢぃ~…」フラフラ

魔道士「倒れる~…」フラフラ

武道家「死ぬ~…」フラフラ

乙女格闘家「水~…」フラフラ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
ターバン男「…」

ターバン男「…ちょっと、見えなかったかな…なーんて…」ハハ…


魔道士「ま、まぁ…ね…」

剣士「はっはっは、気にすんな!んじゃオッサン、有難うよ!」

武道家「涼しくなったことだし、宿とって依頼ないか探すか」

乙女格闘家「一応、軍の支部とかにも顔だしてみてもいいかもねー」


ターバン男「…」

ターバン男「…冒険者か」ボソッ

ターバン男「あ~…、君たち!ちょっと待ってくれないか?」


剣士「む…どうかしたのか?」

ターバン男「いや…うーん…」

剣士「…?」

 
ターバン男「…良ければ、僕が依頼したいことがあるっていうか」

剣士「…お?」

魔道士「本当ですか!?」

武道家「服のお礼もあるし、安く請け負ってもいいんじゃないか」

乙女格闘家「そうだねー」


ターバン男「…ちょっと面倒なんだけどさ」

ターバン男「この海沿いをまっすぐ行ったところに、岩場があるんだ」

ターバン男「そこに出来た自然の洞窟に、盗賊団が住みついちゃってね…」

ターバン男「たまに来る旅客とか、地元の人間を襲ったりしてるんだよ…」


剣士「…ふむ」

武道家「軍の支部の人間は動かないのか?」

 
ターバン男「つい最近のことで、まだ軍の人間も処理してないみたいなんだ」

ターバン男「頼めるなら、さっさと討伐してほしいんだよねえ…」


剣士「…ま、いいぜ。盗賊程度なら俺らの相手にならねーしな」

魔道士「うん。さっさと倒して、軍に引き渡しちゃおうよ」

武道家「今から行くか?サクっと終わらせて帰ろうぜ」

乙女格闘家「さんせー!」


ターバン男「…有難う!自分の家内も危険に晒されていたので…助かるよ」ペコッ

ターバン男「歩いていけない距離じゃないし、自分も一緒に行きながら案内するよ」


剣士「おう!ちゃっちゃとやろうぜ!」

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 砂漠港 付近の洞穴 】


…ヒュウウ

剣士「ここか」


ターバン男「そうそう…。自然の洞穴だったんだけど、盗賊どもがイジったみたいで…」ハァ

ターバン男「出入り口に頑丈な鉄格子と、強固な施錠をしてあるみたいなんだ」


剣士「…確かに、ここから見ても太い鉄格子とでけぇ鍵は見える」

武道家「どうやって入るんだよ。中には盗賊らがいるんだろ?」


ターバン男「前に確認しに来た時は、入口に鍵を持った門番がいたんだけどな…」

ターバン男「今いないということは、もしかしてどこかへ出かけてるのかもしれない」

 
魔道士「鍵が開かないんじゃ、どうしようもないんじゃ…」

乙女格闘家「狭い洞穴で戦うなら、全員の帰宅待って、外で叩いたほうがやりやすいかも」

剣士「とりあえず、誰もいないなら周辺の地形と入り口から、中を覗いてみようぜ」

武道家「そうだな」


タッ…!タッタッタッタッタッ…


剣士「っと…、よいしょっと」

タンタンッ…ズザザァ…

武道家「よっと」

トントン…ストンッ


魔道士「っとと…」

乙女格闘家「よいしょっと」

タァンッ!…ズザザァ

 
ターバン男「う、うわ…」

ターバン男「みなさん、は、早いな…!」

ヨロヨロ…

ターバン男「はぁ、はぁ…。みんな身軽だね…さすが冒険者…」


剣士「このくらいはな。さて…」キョロキョロ

武道家「入口の前に、たき火の跡。昨日のだなこれは」

乙女格闘家「うん、少し焦げた匂いが残ってる」スンッ

魔道士「えーと、洞穴の中は…」


…コォォ


剣士「…いたって普通だな。この鉄格子とかは頑丈そうだが」

魔道士「この施錠されてるカギ、かなり大きいね。盗賊団だし、大事なものをしまってあるのかも」

乙女格闘家「一攫千金!?」

 
剣士「鍵ついてっけど、意外と簡単に開いたりとかしねーかなー…」

ガチャンッ!!ギィィ…


剣士「…」

剣士「…」

剣士「…開いたぞ!?」


魔道士「」

武道家「…何だそりゃ」

乙女格闘家「ま、間抜けな人がカギ当番だったのかなー…」

ターバン男「え…えぇぇ…」

 
剣士「…どうすんのこれ」

魔道士「ど、どうするって…」

武道家「とりあえず中に入って何あるか調べるか…?」

乙女格闘家「中から飛び出して奇襲作戦!」

剣士「あ、それいいかもしれん。それに宝物もあるかもしれねーし、中調べてみようぜ」

ゾロゾロ…


ターバン男「ちょちょちょ、みんな不用心すぎ!」

ターバン男「中に何があるか分からないっていうのに!」

 
剣士「…勇気一発よ!」

魔道士「勇気っていうか、バカに近いと思うけど」

剣士「あんだと!?」

魔道士「それに着いてく、私もバカなんだけどね」ハァ


武道家「…バーカ!」


剣士「あぁん!?」

魔道士「…」ギロッ


武道家「魔道士様、申し訳ございません」

剣士「俺にも謝れよ」

武道家「うるせー、バカ!」

剣士「あぁん!?」

 
魔道士「ほら…。もうそういうのはいいから、調べるなら入って、さっさと調べようよ」

剣士「お、おうっ」

ザッザッザッ…

武道家「少し暗いな…」

乙女格闘家「虫いそう…だけど、お宝もありそう…」

ザッザッザッザッ……


ターバン男「…」

 
ソロソロ…
 
ターバン男「…」

ソー…

ターバン男「…本当にバカなパーティだな」ハハ


剣士「あ?」

武道家「あぁ?」

魔道士「え?」

乙女格闘家「にゃ?」

…ガチャッ!!バタンッ!!ガチッ!!

 
剣士「あ…てめぇコラ!!鉄格子閉めて…何しやがる!」

魔道士「っていうか…今、鍵も閉めた!?」

武道家「…お、おいまさか…」

乙女格闘家「…あー」


ターバン男(盗賊団長)「…冒険者ってのは、本当にバカな」

盗賊団長「毎回そうだが、ここまで上手く引っかかるとは思わなかったぜ」


剣士「てめ…!」

…ガシィンッ!!!

盗賊団長「おっと、その鉄格子に触れないほうがいいぞ」

剣士「あ?」

 
カチッ…ビリビリビリ!!!

剣士「あがががががっ!!」


盗賊団長「はっはっは!鍵を閉めると、その鉄格子に触れたモノに電撃を流すんだよ」

盗賊団長「って、聞こえちゃいないか。気絶するほどの威力だしな!」


剣士「いてて…!ちょっと痺れたじゃねえかコラァ!!」バチバチッ

盗賊団長「」

剣士「てめぇが盗賊だったのか!」

盗賊団長「た、たまにこういう規格外の冒険者もいるんだよな…面倒くせぇ」

剣士「んだとコラァ!」

 
魔道士「…私たちを閉じ込めて、どういうつもり」

盗賊団長「なぁに、外側から強力な睡眠効果のある薬草を燻して、君らには寝てもらうだけだ」

魔道士「…!」


盗賊団長「ま、目覚めたら女は裸で奴隷船に乗って大海の真上か、奴隷馬車の中…」

盗賊団長「男は二度と目覚めないかもしれないな!ははは!」

盗賊団長「あ、もちろん…金目のものは全部取ってからだけどね?」


魔道士「な…っ!」

乙女格闘家「や、やだぁ!」

剣士「お前、最初っからこの目的で…!」

武道家「ぶち殺すぞ…」


盗賊団長「ふ~…。優しい優しい冒険者さんたちは、次々こうして餌食になってくれるんだよ」

盗賊団長「これで明日からも生きられる、有難うございます皆さん」ニコッ

 
剣士「…」

武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」

…ストンッ!


盗賊団長「…む?」


剣士「さて、どうする?」

武道家「はぁ~…安易な話にゃ乗るなってことだな。まだまだ初心者じゃん俺ら」

魔道士「はぁ…」

乙女格闘家「仕方ないね、乗っちゃった私ら責任あるし」


盗賊団長「この状況から腰を下ろすとは…。本物のバカなのか…」

 
剣士「ん~…」

剣士「どうにもこうにも、眠らされたらお終いだろ。その前に檻ぶっ壊さないとな」


魔道士「…やめて」

剣士「だけどよ、そうしないと」

武道家「やめとけ…」

乙女格闘家「まだ死にたくないー…」


盗賊団長「何の話やら。どうせ仲間ももうすぐ戻ってくる。そしたらお休みなさい…終わりだ」

盗賊団長「今回の女は、楽しみだぜ…。良い商品になる」ニヤッ

盗賊団長「男共は、あの世から女二人の最期でも悔しがって見てるんだな」ハハハ!

 
 
剣士「…」

武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」


…スクッ


剣士「今の言葉、イラっとしたぞ。やっぱやるわ」チャキンッ

武道家「俺もさすがにムカついた」スッ

魔道士「…私たちのこと、商品とかあんな言い方…。やっちゃっていいよ。だけど、崩さないでよ…」

乙女格闘家「魔道士ちゃんは私がフォローするよー」


盗賊団長「…あ?」

 
剣士「お前さー…盗賊さん。俺らをただの冒険者としてみたのが間違いだったな」

武道家「お前らの住処、悪いけど壊すぞ」


盗賊団長「…はぁ?その檻には特殊な反射魔法もかかっているんだぜ」

盗賊団長「それにこのへんの岩は、特殊な鉱石でな。そう簡単にゃ崩せん」

盗賊団長「物理攻撃や魔法攻撃でもよほどじゃないと効かないー…」


剣士「…だから、よほどのことが起きるってことだ」ググッ

武道家「お前、五体満足で残れると思うなよ」スッ


盗賊団長「…はい?」


カッ!!…ボッ…ボゴォォォオオオンッ……!!!!
 
…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 中央軍 砂漠港支部 】
 
…ビシッ!

軍人「ご協力、有難うございました!」

剣士「本当にこいつらが盗んでたものの一部貰っていいのか?」


軍人「まさか、盗賊団の一部が住民がなりすましていたとは…」

軍人「盗賊団長を捕まえることが出来ましたので、あとは芋づる式に捕らえられるでしょう」

軍人「その些細なお礼です」


武道家「灯台下暗しってやつだな。もっと軍人さんたちも、頑張れよ」


軍人「…」ビシッ
 
軍人「では、失礼致します」

ガチャッ…バタンッ…

 
剣士「あー…金にはなったけど、なんか納得いかねぇ展開だったな」

武道家「結局、あの洞穴の岩場一帯ぶっ壊しちまったしな」ハハハ

魔道士「死ぬかと思った…。だから加減してやめてっていったのに…」

乙女格闘家「でも、あの慌てた顔でちょっと怒りが収まったよ」

魔道士「まぁ確かにね…」

剣士「んじゃ、宿にでも戻りますかー…」


…ガチャガチャッ!!

軍人「す、すいません!」


剣士「ん…まだ何か用?」クルッ

 
軍人「あ、あの!忘れていたことがありまして!」

剣士「どったの?」

軍人「もしかするとなんですが…」

剣士「うむ」

軍人「剣士様たちのパーティ…でしょうか?」

剣士「…ん?」


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 中央軍本部 転移装置室 】


バチッ…バチバチバチッ!!

ギュウウンッ…!!


…ドサドサッ!!


剣士「あ、あいででで…!」

魔道士「いったぁい…」

武道家「やっぱ慣れねえぞ転移装置…」

乙女格闘家「うぅ…」

 
剣士「っつーか何だよ、"武装のオッサンが俺らを呼ぶ"とか…」

魔道士「あの時、別の場所に依頼受けにいくって言ってたから、他の支部に私たちのこと伝えてたみたいだね」

武道家「結局、あんな時間かけて砂漠に行ったのに…一瞬で戻ってきちまった」

乙女格闘家「私らを呼ぶなんて、何かあったのかな?」


剣士「まぁいいっての、オッサンに文句いってやる!」

剣士「いちいち俺らに絡まない方向で話してたのはオッサンのくせによ!」

ズンズンズン…ガチャッ!!


剣士「おい、オッサンどこだ!!」


武装中将「来たか」ズイッ

剣士「ぬおっ!?」

 
武装中将「待っていたぞ。折角の冒険途中で、わざわざ呼び戻してすまなかったな」

剣士「…何だよ!俺らが折角、盗賊団のアジトを見つけて討伐してー…!」

武装中将「お前たちの耳には、入れておいたほうがいいと思ったことでな」

剣士「あぁ!?」


魔道士「…ちょっと剣士静かに。どうしたんですか?」

武道家「武装さん、何かあったのか?」

乙女格闘家「どうしたんですかー?」

剣士「…な、何があったんだよ」


武装中将「…」

武装中将「……大戦士が、行方不明になった」

 
剣士「…あ?」


武装中将「約1週間前にお前らと別れたあと、小隊長として東方祭壇支部へと向かったのは知っているな」

武装中将「その直後、転移装置が停止」

武装中将「東方祭壇町の支部との連絡線は、現在も絶たれている。その他への転移装置は作動しているのだが…」


剣士「…」


武装中将「大戦士らが戻らないのに辺り、エルフ族が住む地区の国境沿いにて軍を強化配属し、閉鎖をしたものの…」

武装中将「未だに大戦士含む先遣隊からの連絡がつかない」


武道家「だ、大戦士さんが…!?」

魔道士「う、うそですよね…?」

 
剣士「…すぐに援軍も出せるだろ?救助隊も組めばいいだろ!」


武装中将「もし、大戦士が手こずるような魔獣が出現したとしていたら?」

武装中将「どんな援軍でも、無駄に命を散らすだけだ。そうそう簡単に援軍は出すことはできん……」


剣士「救助が難航しそうなら、せめて国境側から調査隊を組んで、現状を調べればいいじゃないか!」

剣士「その祭壇付近で問題が起きてるなら、何の情報でもいいから手に入れるべきだろ!」


武装中将「…もちろん、そうしている」

武装中将「その結果、一つだけ情報は入手することは出来た」


剣士「…なんだよ」

 
武装中将「…謎の霧が発生している。その祭壇周辺ないし、広範囲にわたってな」

剣士「…霧だ?」

武装中将「霧だ。どうやら、魔力を有する霧らしく、霧の中では魔力濃度が格段に上昇する」

魔道士「そ、それは人体への影響はあるんですか?強い影響があるというなら、もしかしたら…」

剣士「あ…そうか!もし倒れるくらいのものなら、大戦士兄たちは、行った瞬間に魔力酔いを起こしたんじゃ!?」


武装中将「安心しろ、それはない」

武装中将「魔力を有するといっても、人体が倒れるほどの魔力濃度ではない」


剣士「そ、そうか…」


武装中将「だが、視界が悪く…救助隊ないし援軍を出すには芳しくない状況でな」

武装中将「拳闘家少佐や大戦士、東方支部のメンバーやエルフ族…、行方不明者はとてつもない数だ」

武装中将「彼らを救出を試みる作戦は現在も会議として進んでいるが、

武装中将「いかんせん、安易に決定を下すわけにはいかんのだ…」

 
剣士「…な、何だよそれ!?早く出せよ!世界平和を担う、世界の中心、中央軍だろ!?」

剣士「それなのに、たかがひとつの町を覆う霧や、転移装置が停止したくらいで何もできないのかよ!」


武装中将「…それは分かっている」

武装中将「だが、無駄に犠牲を増やすことは出来ないんだ」

武装中将「もし同じ状況でお前は、武道家や魔道士らをこの状況で霧の中へ送ることが出来るか?」


剣士「うっ…!そ、それは…!」


武装中将「人はいる。だが、犠牲は出したくない」

武装中将「当初、どこか浅はかな考えだったのかもしれん。たかが行方不明、たかが地震」

武装中将「大戦士を送れば、問題の解決も時間の問題になると思った。あいつ自身が飲み込まれるとは思わなかったんだ」

武装中将「…仮にも世界最強の一角とも呼べる男」

武装中将「本部も、彼に任せておけば良いという結論は出した。しかし…っ」

 
剣士「…んだよ」

剣士「んだよそれ…!!」

剣士「なんなんだよ、それはっっ!!」


武装中将「俺らの失敗だ。大戦士が戻らぬ以上、慎重になるしかないんだ」

剣士「…大戦士兄を犠牲にして、他のやつが助かる道を探すってことだろ!」

武装中将「…世界を守るための、尊い犠牲になる…かもしれん…」

剣士「…もう大戦士兄は軍人じゃねえんだぞ!!」

武装中将「分かっている!!あいつの事を大事に思うのは、俺だって一緒だ!」

剣士「…ッ」


武装中将「とにかく今は、霧の発生や地震との関連性、全ての問題をあらゆる観点から調査せねばならん!」

武装中将「……それに、大戦士が死ぬとは思っていない。お前らだって、あいつがどんな男か分かっているだろう」

 
剣士「…」

武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」


武装中将「…話はそれだけだ。今から俺は、その霧の調査やらを大魔術中佐と行わなければならない」

武装中将「また何か進展があれば、お前らに伝えると誓おう」

武装中将「わざわざ、中央を訪ねてきてくれて悪かった」


剣士「…っ」

武道家「しんじらんねぇよ…」

乙女格闘家「大戦士先生が…」

 
魔道士「…」

魔道士「…」

魔道士「…あっ」ピクッ

魔道士「ぶ、武装先生。ちょっといいですか?」


武装中将「どうした?」

魔道士「その霧は、魔力濃度が高いんですよね?」

武装中将「…そうだ」

魔道士「なら、もしかしたらそれは、誰かが発生させた一種の魔法なのでは…?」

武装中将「何?」

魔道士「謎の霧というか、その存在自体が一つの魔法という考えは…ナシですか?」

武装中将「…どういうことか、説明してくれるか」

 
魔道士「いえ、本当に私なりの勝手な考えなので…」

武装中将「その考えでもいい、聞かせてくれ」


魔道士「え、えっと…」

魔道士「私は、魔法を使う中でも基本の火炎魔法が得意なんですけど…」


剣士「いっつも燃やすもんな。学生の頃には、爆炎の魔女と…」

魔道士「小火炎魔法」パァッ

剣士「ぬあああっ!!」ボォォッ!!

…ドサッ


魔道士「で、話を戻すんですけど…」

魔道士「もしかしたら、それは水蒸気のように水魔法を霧状にしたものではないかと…」

 
武装中将「…霧状に?そんなことが出来るのか」


魔道士「水、火、雷などに限らず、"魔法"には魔力が宿っていますよね」

魔道士「そこで、前に考えたことがあるんです」

魔道士「魔法を使うにあたって、周囲の魔力濃度を高めることが出来れば、自然と魔法は強力なものになります」

魔道士「そこで思いついたのが、火魔法と水魔法を合わせ霧状にした、フィールドマジックです」

魔道士「魔法で練られた霧のフィールドですし、その霧の範囲内では魔力を高める効果が得られるはずです」

魔道士「つまり、魔力濃度が上昇している事になるはずです」


武装中将「…!」


魔道士「ですけど、あまりにも繊細で…実践には向かないと諦めていました」

魔道士「何せ、得意な火炎魔法が霧の水分で弱体化しますし、雷魔法は空中を伝い自爆してしまいます」

魔道士「ですが今回のお話の魔力濃度の上昇や霧。私の考えた範囲魔法にとても似ていたので…」


武装中将「……ちょっと待ってろ。その話、アイツと一緒に話をしてもらおう」クルッ

魔道士「え…。は、はい…」

 
ガチャッ…バタンッ…


魔道士「…?」


剣士「へ、へぇ~…」

剣士「…すげぇな、魔道士。そんな事を考えてたことあんのか」


魔道士「ずーっと前だけどね。だけど、さっき言った通り私が得意な魔法と相性が凄く悪くて…」

魔道士「相性が悪いだけじゃなくて、その霧の維持とかにも魔力を使うし…」

魔道士「なんていうか…難しいんだよとにかく」


剣士「ふーん…」


ドタドタ…ガチャッ!

武装中将「慌ただしくてすまないな。入ってくれ」

大魔術中佐「失礼致します」ペコッ

 
魔道士「!」


大魔術中佐「…こちらの子が?」

武装中将「そうだ。少し、彼女から魔法論について話を聞いてくれるか」

大魔術中佐「承知致しました。えーと…魔道士さん?」

魔道士「は、はいっ」


大魔術中佐「私は、中央軍本部の大魔術中佐。同じ女性同士、気軽に中佐と呼んでもらって構いません」

魔道士「そ、そんな…」

大魔術中佐「お話、聞きました。あなたの理論、聞かせて下さいますか?」

魔道士「…は、はいっ」


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

剣士「…いつまで話してんだろ。女性同士で盛り上がってるみたいだし」

武道家「魔法論は面倒くせーしなぁ」

乙女格闘家「基本属性に、複合属性、あらゆるなんちゃら…」

剣士「あー、頭が痛くなる!」

武道家「全くだ」


武装中将「お前らな、冒険者ならもう少ししっかり勉強しろ」


剣士「へいへい…」

剣士「それよりオッサン、魔道士の考えってそんな凄いのか?」

 
武装中将「型に当てはまらない考え方だ」

武装中将「俺たちは、前の地震との関連性ばかり頭に取られたり、これはこうならないという考えが定着している」

武装中将「若者のような柔らかい考えは、あまり浮かばないんだ」


剣士「えーと、つまり…?」


武装中将「…たとえば。四角は四角、三角は三角に当てはめるパズルがあったとして」

武装中将「これをきちんと嵌めろと言われたら、その形通りにいれるだろう?」


剣士「そりゃ…」


武装中将「ところが、中には"四角"へ"三角"を自分なりに工夫し、組み込もうとする者がいる」

武装中将「今回の事もそのようなものだ。無茶苦茶だが、こういった発想が大事なんだ」

 
剣士「…はぁ」

武道家「お前の場合は、パズルなんか面倒くせぇ!っつって、その根本から切り裂きそうだな」

乙女格闘家「バカだもんね!」

剣士「おい」

乙女格闘家「あっ!ま、魔道士ちゃんたちの話終わったみたいだよ!ほら!」ビシッ

剣士「…」ピクピク


トコトコ…

大魔術中佐「…武装中将殿、終わりました」

魔道士「…」ペコッ

武装中将「うむ。どうだった?」


大魔術中佐「…この子、凄いですよ。私が考えることに、次々と回答していくんです」

大魔術中佐「ぜひ、部下に欲しい人材ですね」


魔道士「そ、そんな私なんか!大魔術中佐さんが、凄い発想で…!」

 
武装中将「まぁそんな話はいい。それよりその霧の正体は、それで間違いなさそうか?」


大魔術中佐「実際に触れたわけではないので、何ともいえませんが…」

大魔術中佐「話をした限りは、それで間違いはなさそうです」


武装中将「!」


大魔術中佐「ただ、こちらの話では水魔法に限定されておりますが」

大魔術中佐「他の者のたちの報告では、霧状、モヤといっても水気がなかったといいます」

大魔術中佐「と、すると…恐らく純粋な魔力を利用すればいけると思います」

大魔術中佐「例えば、魔力枯渇に使う強力な魔力を持つ純気魔石等をどうにか変換し、」

大魔術中佐「その強大な魔力を霧状にすれば、可能性があるかと…」


武装中将「自然に発生する可能性は?」

武装中将「純気魔石という前提で進めた場合、地震によって地中の純気魔石が掘り返されて起きた可能性もある」

 
大魔術中佐「過去にこのような事案は全くなかった事です」

大魔術中佐「あり得ないとは言い切れませんが、誰かが起こした可能性のほうが高いと思います」


武装中将「誰かが、意図的に…か」


大魔術中佐「そこで少し、仮説をたててみました」

大魔術中佐「…5年前の地震はその実験の過程で起きた地震で、霧の発生には失敗した」

大魔術中佐「だが、今回は発生に成功。今回の事案を企てた者がいる。その路線が浮かび上がってきましたね」

大魔術中佐「このような魔術は極めて不可思議。よっぽどな魔力の扱いに長けた者の仕業でしょう」


武装中将「…待て、まさか…」

武装中将「共通しその場にいる、魔力の扱いに長けた者…といえば…」


大魔術中佐「…このような不思議な技術を使えるのは、そこに住んでいる面子がいますよね」


剣士「ち、ちょっと待てよ!?そ、その面子ってまさか…!!」

 
大魔術中佐「その可能性が非常に高くなってきましたね」

大魔術中佐「人間へ恨みを持つ民、魔法の扱いに長けた民族…。つまり……」


剣士「え、エルフ族が人間を襲ったっていうのかよ!?」

 
大魔術中佐「…彼らには、人間を襲う十二分な理由があるでしょう」

剣士「ねぇよ!!絶対に!!」

大魔術中佐「どうしてそう言い切れますか?」

剣士「ジイチャンが…幼エルフやみんなが…!そんなことをするわけねぇ!!」

大魔術中佐「それはお前が出会った一握りのエルフでしょう?」

剣士「そ、それはそうだけど…!」

 
大魔術中佐「…神隠しという名目ですが、彼らが姿を消したのは、その時の戦犯だからかもしれない」

大魔術中佐「彼らの魔法は未知数」

大魔術中佐「霧だけでなく、何かしらの魔法で魔獣を自由に操り、軍を襲わせたのかもしれません」

大魔術中佐「…東方と西方に別れたのは、元々実験の為に人のいない地から戻らなかったとも言えます」

大魔術中佐「もう何かも…今回の件に繋がっていますね」


剣士「だ、だけど!」


武装中将「…決まった」ガタッ


剣士「…オッサン?」

 
武装中将「大魔術中佐、今から言う指示をすぐ本部全体へ通達。元帥殿へは俺が伝えておく」

武装中将「今回の案件、エルフ族の行った人間への攻撃行為の可能性が高い」

武装中将「国境、東方側を閉鎖している臨時支部へも同時通達」


剣士「…オッサン!?」


武装中将「今から俺は西方の支部へ行き、直接指揮をとり、エルフ族の町村で調査を行う」

武装中将「軍の規律に乗っ取り、行動をする。ではよろしく頼む」


大魔術中佐「承知致しました。失礼します」ビシッ!

ガチャッ、バタンッ!!


剣士「お、オッサン待てって!エルフ族だぞ!?」

武装中将「可能性が出てきた以上、無視はできん。分かるだろう」

 
剣士「だ、だけど!」

武装中将「…これが軍だ。政府なんだ」

剣士「そ、そうだけど!!」

武装中将「…大戦士は、エルフ族によって葬らされたかもしれないのだぞ?」

剣士「…っ!」

武装中将「…わかったな。では、早急に動かねばならぬ故、また会おう」

カツカツカツ…バタンッ…!


剣士「…っ!」ギリッ


魔道士「け、剣士…」

武道家「…剣士」

乙女格闘家「剣士…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

カツカツカツカツ…


武装中将(…俺とて、エルフ族がそこまで人間へ攻撃してくるとは思わない)

武装中将(だが、証拠が揃いすぎている)

武装中将(太陽の祭壇を崇める事を名目に、もし今までの準備をしていたとしたら…。)

武装中将(西方の過去の地震も、今回も、彼らが姿を消す十分な理由になる)

武装中将(それに、今の時期は全員が祭壇へ集まる時期とし、人間たちへ奇襲を消し掛ける絶好のチャンスだ)

武装中将(どんな考えでも当て嵌まる以上、エルフ族には何かしらの対応を急がねばならぬ)


武装中将(…すまんな、俺は世界を支える者として、非情にもならねばならないんだ…)

武装中将(だが、その前に…"この考え"。大魔術中佐へ準備を進めさせておこう…)

…カツカツカツカツ…

………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

剣士「…っ」ブルブル


魔道士「…剣士、落ち着いて…」

武道家「…」

乙女格闘家「…」


剣士「…」

剣士「…わ、わかった」ボソッ


魔道士「え?」

 
剣士「…俺ってさ、元々自由だし、素直にもっと生きるって決めたし」

剣士「ワガママだっていうなら、それでもいい」


魔道士「ちょ…まさか…」

武道家「…そのまさかだろ」ハァ

乙女格闘家「そう言うとは思ったけど…」


剣士「大戦士兄も、この武器はエルフ族との友好の架け橋になることを願ってた」チャキッ

剣士「その武器を渡された俺は…。大戦士兄と、エルフ族に関わった俺は!」

剣士「否が応にも、今回のことにも、首を突っ込んでるんだと思う…だから…」


魔道士「…」

武道家「…」


乙女格闘家「みんな武器貰ったけど…私は…」ボソッ

武道家「お前は俺と一心同体みたいなもんだ。俺の武器は、お前の武器でもあるんだぜ」ポンッ

乙女格闘家「…うんっ」

 
剣士「だから俺が…。俺が動かなくちゃいけない気がするんだ」

剣士「…隠された歴史を知って、大戦士兄やオッサンと関わって、エルフ族には魂を渡された」

剣士「これが偶然じゃなくて、きっと運命だと思う」


魔道士「…剣士。言うと思ったけどさ、本当に危険なんだよ?」

剣士「別に俺一人でも…」

魔道士「はぁ…このバカッ!」

剣士「!?」

魔道士「…私はさ、剣士についていくっていったでしょ」

剣士「…」


武道家「…はぁ」

武道家「仕方ねぇなぁ…」ポリポリ

武道家「お前のその目、そりゃ覚悟を決めた顔だな」

武道家「その気持ちは本物なのは分かるし、そんなお前に着いていかないワケにはいかんだろ」

 
剣士「…いいのか」

武道家「今更聞くことか?」

剣士「…」


乙女格闘家「何かあったら、一生恨むからね!」

剣士「…乙女格闘家」

魔道士「剣士、何があってもずっと一緒なんだからね」

剣士「…魔道士」


武道家「結局、俺らって子供の頃と何も変わんねぇじゃん」

武道家「ま…俺も最近は大人ぶってたけど、俺らはワガママ、自由気ままが捨てられないんだわな」ククク


剣士「…武道家」

 
魔道士「…まったく」

魔道士「ほら…リーダー!」


武道家「ほらほら、リーダーさんよ…」

武道家「…どこへ行くんだよ。黙ってたら分からねぇぞ」


乙女格闘家「ほらほらほらっ!」

乙女格闘家「剣士パーティなら、リーダーの剣士がしっかり指揮とってよね!」


剣士「…っ!」

剣士「あぁ…みんな、有難う…!」コクン

剣士「目指すは東方、エルフ族の住む太陽の祭壇の町!」

剣士「さぁ…出発だ!」バッ!

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

【to be continued....!】

 
本日はここまでです、有難うございました。
今回を持ちまして、章の区切りとなります。

また、一つご報告がありまして、仕事柄でキーボードと触れ合う機会が多いのですが、
多忙の中、指先(爪)を痛めてしまい、よっぽどなものではないのですが…
章区切りということもあり、次回の更新は4~7日以内となります。よろしくお願いいたします。

それでは有難うございました。

>>587
大戦士じゃね?

それとsageはメール欄

>>588
過去のSSで青年剣士の自宅(新築)に全員集合したときに



英雄剣士「・・・」ニコッ
戦士先生「え、英雄剣士殿!」
剣士教官「て、てめぇ!何でここに!」

565 : ◆qqtckwRIh.:2013/07/28(日) 19:06:06 ID:yds2lbJg
英雄剣士「・・・人の息子の家を破壊しといて・・・今更・・弁解はきかねえぞ?」ニコニコ
戦士先生「ももも、申し訳ありませんっ!」
剣士教官「・・・ふん」


とあるから大戦士じゃないだろうね

今日来そうだな

皆さま、たくさんのお言葉、スレの盛り上がり、
本当に有難うございます。

>>595
本当ならもう少し早く来るつもりでしたが、どうしても時間を出来ず…

それでは、投下開始いたします。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【これまでのあらすじ】

北西冒険学校に入学した剣士と武道家は、

魔道士、乙女格闘家、僧侶、魔術賢者、大戦士などの仲間と出会い、成長していった。

やがて卒業を迎えた剣士たちは、夢であった冒険者となり世界へと飛び出す。


それから数年。

名実とともに冒険者として実力を磨いた剣士、魔道士、武道家、乙女格闘家の4人。

何もかも順調にいくはずだった。……だが。

剣士が放った一言『学生時代に修学旅行で訪れたエルフ族の村へ行きたい』。

この言葉で世界を統治する"中央軍本部"へ足を運んだ4人。

 
そこで学生時代以来の武装先生と再び出会い、エルフ族の村の現状を調査してくれるという。
 
剣士は喜んでそれを承諾したが、その夜、彼らに大地震が襲いかかった。

震源地は東方エルフ族、太陽の祭壇の町。

それは学生時代に話を聞いた、地震後にエルフ族の村の住民全員が消失した

"エルフ族消失事件"そのままであった。


武装中将はこれを重く見て大戦士を再び軍へ呼び戻し、小隊とともに祭壇町へ送り込む。

しかし……。

大戦士を含めた小隊は行方不明となってしまう。


そこで剣士は大戦士のため、エルフ族のため、仲間とともに祭壇町へ行くことを決意した――。

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キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!

 
剣士らが東方にあるエルフ族が町、祭壇町への出発を決意してから数日。

東方側にある平野の一角で、彼らはキャンプを張りながら封鎖線を目指した。

そして6日の夜。

ついに、4人は東方封鎖線の目前まで辿り着く…。

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――――【 深夜 東方平野 】


剣士「ぷはぁ~っ」

武道家「あ゛~っ…食った食った」

魔道士「ごちそう様でした」

乙女格闘家「ずいぶんと遅い晩御飯になっちゃったねー」


剣士「しゃあないだろ、次から次へと魔獣が出てくるんだからよ」

武道家「周囲を落ち着かせようとしたら、すっかり真夜中になっちまったな」

 
魔道士「この辺て、こんなに魔獣が多いものなのかな」

乙女格闘家「そこまで強い魔獣じゃなかったけど、数が凄かったよね」

剣士「元々そういう地域なんじゃねえの?」

武道家「そうそう。こんな大自然なんだから、いても不思議じゃないぜ」


魔道士「う~ん、なんか活発過ぎるような気がするんだけどなぁ」

剣士「気のせい気のせい。っつーか、もう夜だしさっさと寝ようぜ」

魔道士「まぁ…明日も朝早いしね」

剣士「そういうこと。明日には封鎖線上に着くだろ?」

魔道士「たぶん…。」


武道家「ほんじゃ、テントに戻りますか」スクッ

乙女格闘家「二人とも、お休み~♪」

 
剣士「おう、お休み」

魔道士「おやすみなさい」
 
ザッザッザッザッ…

…………
……


剣士「…ふぅ」

魔道士「じゃ、私たちもテントに入ろっか」

剣士「だな」スクッ


魔道士「…」

魔道士「…」クスッ


剣士「…どうした?」

 
魔道士「ううん、ちょっと思い出しちゃっただけ」

剣士「思い出した?」

魔道士「うん。魔石の洞窟のときのこと」

剣士「…ふむ」


魔道士「ほら、私と僧侶が寝てる間、武道家と二人でずっと戦ってくれてたでしょ?」

魔道士「洞窟も暗かったし、夜だし…。魔獣の話とか、当時の雰囲気に似ててつい…ね」


剣士「あぁ…」

剣士「…」

剣士「あれ?お前に戦い続けてたこと話したっけ?」


魔道士「ううん、僧侶に聞いたんだよ」

剣士「あー…」

 
魔道士「剣士、妙にそういうところ隠したがるよね」

剣士「いやほら…、別に言うことじゃねぇし…」

魔道士「ふふっ」

剣士「…」


魔道士「…うん。あの時から見たら、少しは成長したよね…私たち」

剣士「そりゃそうだ。そうじゃなかったら、こんな魔獣の棲む平野の真っ只中にいねえよ」

魔道士「強さもだけど、それ以外のことも!」

剣士「あぁん?」

魔道士「なんか色々と成長したなって」


剣士「大人になったってか?」

剣士「…酒の席じゃ、大人になったってよく使うが、本当は実感はねーんだよな」

 
魔道士「う~ん…。それ、すっごい分かる」

剣士「正直、社会的マナーっつーのか、そういうのは学んだと思う」

魔道士「うん」

剣士「だけど、心っつーか…根本的な精神は学生時代と変わってないんだよな」

魔道士「あ~…うんうん」


剣士「大人になったら一人前だの何だの言うが、大人も性格や精神はそのままの奴が大半ってことだろ?」

剣士「結局、大人って言葉は成長した自分と区切りをつけたい奴が使う言葉だと思うんだよなぁ」


魔道士「あ~…」

剣士「大人になりきれない奴が、自分は大人だって見せる為に使う言葉ってこと」

魔道士「うん…」

剣士「だから俺は、酒の席で大人になったと使う。俺は子供のままでいいわ!ってか!」

 
魔道士「それじゃダメでしょ」

…ベシッ!

剣士「いてっ!」


魔道士「難しい問題だと思うけど、私たちは後輩から見たら立派な存在なんでしょ?」

魔道士「そんな剣士がそんなんじゃ、ダメでしょっ」


剣士「そういうのが面倒くせぇんだよ。面倒だって思う以上、俺は大人になりきれてないわけで」

魔道士「大人になりきれてない事が分かってれば、充分成長してるよ」

剣士「…そういうもんか?」

魔道士「…そういうもんだ!」

剣士「!」

魔道士「…へへっ」テレッ

 
剣士「お…。今のやり取りすげぇ懐かしく思ったぞ」

魔道士「ふざけただけ~…って。恥ずかしい…」エヘヘ

剣士「…あぁ!あの時のか…そうだったな。はははっ!」

魔道士「ほ、ほらっ、もう寝よっ!武道家たちも寝たんだからさ!」

剣士「おうよ。だけどさっきのお前、やっぱり可愛い…」

魔道士「も、もう~っ!!もういいから、恥ずかしいから!」


剣士「…」

剣士「…にひひっ」ニヤッ

…グイッ!

魔道士「きゃっ…!」

ギュウッ…!

剣士「…」

魔道士「…っ」

 
剣士「あ~…やっぱり好きだわ…」

魔道士「…うん」

剣士「ここまで着いてきてくれて、本当にありがとうな」

魔道士「ううん…当たり前だよ…」

ギュッ……

剣士「…」

魔道士「…」


…………
………

 
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・・・・
・・・
・・

<●><●> ジーッ 見てるで

 
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――――【 次の日 封鎖線上の茂み 】

…ガサッ!


剣士「…結局、ここに来るまでに準備も含めて結構時間かかっちまったな」

武道家「あの平野から結構早足で4時間か…」

乙女格闘家「それにしても、封鎖ってここまで大がかりなんだ…」

…ガヤガヤ

魔道士「うわっ、中央軍人がいっぱいいる…」


剣士「さ~ってと、どうやって通るか…」

剣士「…」

剣士「…ちょっと情報がないか、聞き耳でも…」スッ

 
ガヤガヤ…
 
軍人たち「…さて、もうすぐ交代の時間だな」

軍人たち「向こう側の封鎖も終わってるし、住民たちも入り込んだ形跡はないか?」

軍人たち「どうせ魔力感知してるし、入ったらすぐに魔法隊から伝達があるさ」

 
剣士「…参った。抜けられると思ってたんだが」

魔道士「一般街道は完全にダメだね。絶対に冒険者は通さないよ」

武道家「そもそもエルフ族がいる以上、元々ここは閉鎖されてただろうし、それ以上に今は厳戒態勢なんだろう」

乙女格闘家「どうするの?周囲も警備びっちりで抜けられないよ」

剣士「…強行突破は無理だよなぁ」

魔道士「冗談!そんなことしたら、私らが指名手配で新しい問題になっちゃうよ!」

武道家「それに、さっき魔力感知してるって言ってたぞ。目には見えないが、感知で魔法隊にバレちまう」

乙女格闘家「やっぱ無理なんじゃないかなー…」

 
剣士「何かないのかよ…」

武道家「剣士…ここは一旦引いて、別の方法を考えるしかないんじゃないか?」

剣士「ここまで来てか…」

武道家「軍の閉鎖はそう簡単に通れねぇよ。それに、強行突破したら魔道士の言う通り指名手配犯だ」

剣士「くっ…」
 

…ガヤガヤ


剣士「…ん?」ピクッ


軍人A「そういやさ、あそこの渓谷はどうなってる?」

軍人B「あー、森の間にあるでっけーところな。あそこは広すぎてどうにもならんらしい。感知もしてないぜ」

軍人A「…じゃあ、あそこから盗賊やら冒険者が抜ける可能性があるんじゃないのか?」

軍人B「俺らでも危険で近づけねえよ。並の冒険者ですら近づかない渓谷だぜ」

軍人A「おいおい…そんな危ないのか?」

軍人B「渓谷降りるだけで一苦労だし、激流だし、岩場は鋭利状だし…。自殺志願者用だぞあんなん」

 
剣士「…!」

剣士「聞いたか!みんな!」ニヤッ


武道家「自殺者用っつったな」

魔道士「自殺したくないよ」

乙女格闘家「死にたくない」


剣士「…見に行くだけ!行くだけ!」

武道家「…はぁ」

魔道士「あの軍人、余計なことを…」

乙女格闘家「…死にたくない」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 渓 谷 】

ザァァァ…!!!ゴォォ…!


剣士「ん~…」

魔道士「確かに、軍人さんたちの姿は見えないね」キョロキョロ

武道家「…話の通り岩場は鋭利で、足場は濡れてて落ちやすいし、落下したら即死だな」

ヒュウウウッ…ギラッ…

乙女格闘家「でもさ…」

剣士「思ったほど…じゃねぇな」


魔道士「確かに…去年行った登った崖のほうが急だったね」

剣士「な?来てみるもんだろ」

魔道士「軍人さんたちが大変っていうから、相当だと思ったけど、そうでもなくてちょっと安心」

武道家「どうせ剣士は、どんな所でも"行こう!"って言うだろうが…」

 
乙女格闘家(…う~ん……)

乙女格闘家(実は、私たちのレベルが凄い高いだけなんじゃないかって思うけどなー)


剣士「さて、んじゃちゃっちゃと降りるか。岩場飛びながら来れるだろ?」

武道家「余裕」

乙女格闘家「一気に駆け下りても問題ないよー」

魔道士「私は少し遅くなるけど…」


剣士「いいよ、魔道士は俺がアシストするから。ほら、手…つーか背負うわ」

魔道士「うんっ…」ギュッ


乙女格闘家「……。武道家、私もアシスト!」

武道家「…へい」ギュッ

……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 渓谷下 】

タァンッ…タンタンッ…

剣士「…っと」

武道家「うしっ!」

ズザザザァ……


魔道士「ありがと、剣士」

剣士「おう」

乙女格闘家「ありがと~。もうちょっとこのままで…」

武道家「降りてください」

 
剣士「とりあえず、一番下まで降りれて一安心っつーとこか」
 
武道家「ま、下の方に広い足場があってよかったな」フゥ


乙女格闘家「みんな、上見てよ…」

乙女格闘家「降りるときは気づかなかったけど、自然が織りなす景色、凄い綺麗だよー」


サァァァァ…ゴォォォ……ッ!


剣士「すっげー景色だなおい…」

魔道士「ここからこの景色を見た人って、そうそういないよね…」ホウッ…

乙女格闘家「きれい~…」


武道家「…おーい」

武道家「景色楽しむのもいいが、見回りが来ないとも言い切れないし、さっさと登ろうぜ」パンッ!

 
剣士「あぁそうか。ん~…降りる時よりも、登る方の岩壁の角度は少し厳しいな」コンコン

武道家「この足場進んで緩やかなところ探すか?」

剣士「あまり川上や川下に行くとさすがに軍が滞在してるだろうし…ココを登ったほうがいいんじゃないか?」

武道家「俺と乙女格闘家、剣士は余裕だが…」チラッ


魔道士「あはは…の、登れるかな」


剣士「んー…。まぁ背負って足場確保しながら飛べばなんとか」

魔道士「お願いします、ってしか言えないよ?」

剣士「お願いしますとかいらねえから」

魔道士「あっ…。う…うんっ」


乙女格闘家「武道家ー」

武道家「却下」

 
剣士「ほんじゃ、とりあえず装備とバッグを前に回してー…」

…ザワッ

剣士「……んっ?」ピクッ


武道家「どうした?」

剣士「今…何か…」

武道家「何か?」

剣士「聞こえたような…」

武道家「川の音じゃないのか?激しいからな」

剣士「いや。人の声のような気がする」

武道家「そんなバカな。いや、もともとバカだけど」

剣士「おいコラ」

武道家「気のせいだと思うぜ?本当なら、軍人かもしんねぇぞ?」

 
剣士「全員ちょっと耳を澄ませてみろよ。水や風の音の合間に、聞こえたんだって!」

武道家「はぁ、しゃあねえな…」

魔道士「もう…」

乙女格闘家「仕方ないなぁ…」


ゴォォォ…バシャアンッ…ザァァァァ…


剣士「…」

武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」

 
ザァァァ…!!


…ザワッ


ザァァァァ……バシャアンッ…!


剣士「…ほら、今!」

武道家「た、確かに!」

魔道士「聞こえた…!」

乙女格闘家「…どこから!?」

 
剣士「…気のせいじゃなけりゃ、ここからだな!」チャキンッ

剣士「この岩壁の中だ…!せーのっ…!」ググッ


武道家「おい剣士、ちょっと待て」

魔道士「ちょっ、ここで大剣振ったら足場崩れー…!」

剣士「そおりゃあっ!!」ブンッ!!

…バゴォォォンッ!!!

乙女格闘家「」


ゴッ…ドシャアッ!!ズゴォンッ……!

パラパラ…


剣士「…」

剣士「…お!?」ハッ

剣士「見ろよみんな、洞窟だぜ!?」バッ!

 
ビュッ…ゴツゥンッ!!!

剣士「!?」


魔道士「お、洞窟だぜ!?じゃなあぁーーい!!」

武道家「このアホッ!!ここで足場崩れたらどうする気だったんだ!!」

乙女格闘家「激流に落ちるのかと思った……」


剣士「い、いいじゃねえか!洞窟だぜ洞窟!?」

魔道士「…確かに洞窟は現れたけど」

コォォォ…

剣士「今の人の声は、確かにココからしたって!」

 
武道家「…お前はどうしてこう、余計なものを次から次へと…」

剣士「探検だぜ、冒険だぜ!?」キラキラ

魔道士「本当に人の声がここからしたなら、今のやり取りの音も聞かれてるだろし…」

乙女格闘家「東方側の洞窟だよ?味方って言い切れないんじゃないかな…」


剣士「まぁいいじゃねえか、敵にしろ何にしろ、何かいるってことだろうし!」

武道家「そりゃそうだが…」

剣士「階段状になって、地面に通じてるかもしれねえだろ!進もうぜ!はっはっは!」

武道家「…はぁ」


魔道士「剣士はこうなったら聞かないから…仕方ないね…」

乙女格闘家「それより、暗くて前に進めそうにないんだけど…」

 
魔道士「仕方ないな…。私が小火炎魔法で…」パァッ

剣士「いや俺のバッグに火魔石のランプ入ってるから、それ使おう」ゴソゴソ

魔道士「…準備いいね」

剣士「いつも持ち歩いてんだよ!こんな時に備えてな!」

魔道士「…そういうことだけは準備いいんだから」


武道家「学生時代の魔石の洞窟の時は、食料忘れてたけどな」

剣士「そりゃオメーもだろ!」


魔道士「…それじゃ、行くの?」

乙女格闘家「行くしかないみたいだし、出発だね…」


…………
……

本日はここまでです。
時間をとるのに遅れたため、加筆も含め展開していく予定です。
それでは、有難うございました。

>>600
>>611 合間の盛り上げ有難うございます。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 渓谷の洞窟 】


ザッザッザッザッ……


……ピチョンッ…ピチョンッ…


剣士「…」

魔道士「何なの…ここ…」

武道家「…ただの洞窟じゃねえな。これは…」

乙女格闘家「廃坑か何か…だね」


コオオォォ…

 
剣士「おいおい、ここから声が聞こえたんだぜ?廃坑ってことはないだろ」

武道家「お前、そうは言っても…」

…スッ

武道家「ほら、見ろよこれ」ポイッ

…パシッ! 
 
剣士「…んだこりゃ?」


魔道士「ん~と…」

魔道士「多分、古い線路の金属部分だね。木の部分は腐敗して泥に埋もれてるし」


剣士「…トロッコか何かのってことか」

武道家「相当古い鉱山なんだろ。人の声は気のせいじゃないのか」

剣士「だって、お前らも聞いただろ?」

 
武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」


剣士「なっ?それで気のせいってことあるかよ」

武道家「じゃあ、正体はなんだっつーんだ」

剣士「エルフ族か何かがいたとか」

武道家「祭壇の町じゃ、エルフ族が行方不明になってたっつっただろ」

剣士「…じゃあ、さっきの声は何なんだ?」

武道家「知らねぇよ!だから気のせいなんじゃねーかって」

剣士「全員が一斉に聞いといて、気のせいはないだろ」

武道家「そりゃそうなんだが…」

 
剣士「ま、こんなところで話してても水掛け論だろ。進めば分かるさ」

武道家「…水掛け論て。お前、妙に変なことわざとか熟語とか…知識蓄えてきてるよな」

魔道士「結構前から、本読んだりしてて色々覚えてるんだよ。頭良くなってるっていうか」

乙女格闘家「へぇ~!剣士、やるじゃん♪」


剣士「くくく…!ほら早くいかないと、こんなところで立ち止まってても"ぬかに味噌"だぜ?」

魔道士「それ"ぬかに釘"ね。っていうか使いどころのようで妙にニュアンス間違ってない?」

剣士「いいから行くぞ!」

魔道士「…」


武道家「…あいつ、本当に頭良くなってるのか?」

魔道士「ごめん、自信なくなってきた」


剣士「さっさと行くぞ!」


………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 廃坑深部 】 

ザッザッザッ…


剣士「んー…」

魔道士「…同じような景色ばっかで進んでない気がするんだけど」

剣士「なんか地上っつーよりも、地下に向かって進んでる気もする」


武道家「心なしか、泥がより泥っぽく、水交じりになってきてんぞ」

グチョッ…グチョッ…

乙女格闘家「道、間違えたんじゃないかな?っていうか、やっぱり…入るのが間違ってたんじゃ…」

 
剣士「…だけど、ここから戻るっつーのもなー…」

武道家「先に進んで行き止まりだったら、どのみち戻ることになるぞ?」

剣士「岩壁に戻って登ったほうが確実……ってか」

武道家「そういうこと」


魔道士「それに、あまり深く潜りすぎると空気も悪くなるし…」

乙女格闘家「まだそのランプ…ランタン?の炎が消えてないから大丈夫だとは思うけど…」

ボォォ…


剣士「…」

剣士「…しゃあないなあ。戻るか…」


武道家「最初からそうするべきだろ…」

剣士「…ごめんなさいね!」


武道家「ま、ついてきた俺らも俺らだし仕方ないー……」トクン

武道家「んっ…?」トクン

 
剣士「……どうした」

武道家「い、いや…」トクントクン

剣士「…」

武道家「…な、なんか……」トクンッ


乙女格闘家「ど、どうしたの武道家?」

魔道士「武道家?」


武道家「……あったかい」

剣士「…あぁ?」

武道家「わかんねぇ。何かこの辺…あったかいんだ…」トクンッ

 
剣士「いや、意味わかんねぇぞ。むしろ洞窟だから寒いし」

武道家「…いや、違う」

剣士「何がだっつーの!」

武道家「…こっちだ」クルッ

ザッザッザッザッ…!

剣士「お、おい!?」


魔道士「武道家、どうしたの!?」

乙女格闘家「ま、待ってよー!」


ザッザッザッザッ……!!

…………

………
……

 

……
………

…………

……ザッザッザッザッザッ!!


武道家「近い…気がする」

剣士「何がだよ!」

魔道士「あ、足場がどんどん悪くなるよ?…一体どうしたの!?」

乙女格闘家「う~…武道家、どうしたの?」

 
武道家「…」ピクッ

武道家「…ほら!あれを見ろ!」

  
剣士「…あ?」

魔道士「何を見ろって……あっ!?」

乙女格闘家「あ、あれって…」


モワッ…サァァ…


剣士「あれは…モヤ?いや、霧なのか…?」

魔道士「もしかしてあれが、謎の霧…魔法の霧?ってことは、出口が近いってこと!?」

乙女格闘家「あれが温かいって…何でそんなの感じたの?」

武道家「わ、わかんねぇけど…何か感じてよ…」


剣士(魔力の霧で落ち着くって…魔力枯渇症だかの進行のせいじゃねえのか…)ギリッ

 
魔道士「…」

魔道士「もしかして武道家……」


武道家「な、何だ?」ドキッ


魔道士「色々戦闘の経験を積んだおかげで、魔力に敏感になったの…?」

武道家「えっ?」

魔道士「そうじゃなかったら、魔力の霧なんか感知できるはずないし…」

武道家「あ、う…うむ!そうかもしれん!」

魔道士「魔法が主力の私より感知が高いって、何かなー」ジトッ

武道家「は…はっはっはっは!やっぱり俺は凄いからな!!」


乙女格闘家「すごーい!さすが私の旦那さん!」

武道家「はははっ!誇っていいぞ!!」


剣士「…」

 
魔道士「あ…待ってよ。でもさ……」

剣士「あん?」

魔道士「さっき私たちが聞いた声って、何だったのかな」

剣士「あ~…」

魔道士「気のせいだったと思いたいけど…」

剣士「…霧が呼んでいた、とか」

魔道士「何それ」

剣士「いや、何となく」ハハ

魔道士「霧がしゃべったって言いたいの?」

剣士「結局、誰とも合わなかったし…。霧が俺らを呼んだんじゃねーかなと」

魔道士「何それ」ハァ


武道家「とりあえず、出口にはいけそうだし早く行こうぜ」

乙女格闘家「そうだよ、早く行こうっ~」

 
剣士「…ま、行くか」

魔道士「魔力の霧…か。町はどうなってるんだろう…」

武道家「出口がどこに出るかすら分からないけどな」

乙女格闘家「変なところに出なければいいんだけど…」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 祭壇町 旧鉱山 】

…モワッ……ザッザッザッ…


剣士「…やっと外に出たぁぁ!」

武道家「やっぱりこの出入り口、鉱山っぽいな」

魔道士「私たちがここに来れたってことは、軍には見つからなかったってことだね」ホッ

剣士「戦犯にならなくてよかったな」ハハハ

魔道士「ほんとに…」


モワモワ…モワ……サァァ…


乙女格闘家「わっ、霧がすごーい…」

 
剣士「話に聞いてた通り本当に水滴がつかねえ不思議な霧だな」モワッ

魔道士「…魔力を霧状の可視出来るようにして、生命体に影響が出ない程に閉じ込めた霧なのかな」

剣士「お前の理論的にはそうなんだろ?」

魔道士「…そうだけど、実際に見て信じられないよ。こんな技術があるなんて」

武道家「実際も何も、目の前に触れているんだから仕方ない」

魔道士「確かに、魔力に包まれてる感覚っていうか…凄いふんわりするけどさ…」


剣士「…」

剣士「…おい武道家」ボソッ


武道家「ん?」

剣士「お前、この霧の中、調子がいいのか?」ボソボソ

武道家「…まぁ、調子はすこぶる良い。気分は最悪だがな。改めて病なんだと思い知らされたわけだ」ボソボソ

剣士「…」

武道家「一生この中にいりゃ、生きていられるのかもな……」

剣士「…」

 
魔道士「…何をボソボソと話してんの?」

乙女格闘家「聞こえないよ!」

剣士「あ、いや!」

武道家「な、何でもねぇよ!」

魔道士「…?」


剣士「さ、さてと!何か町に行く道とか目印になるものがあればいいんだが!」キョロキョロ

魔道士「旧鉱山ってことは、ここは町から近いのかな?」

武道家「金属だの鉱石は、エルフ族の大得意分野だし…よく使う分そんなに遠くに鉱山を開くとは思えんぞ」

乙女格闘家「鉱山があるから、そこに町を作るっていうのは割とよくあることだしね」

 
剣士「つっても、この霧じゃ無闇に動くと事故も…」

…ボソボソ

剣士「…あ?」


魔道士「…どうしたの?」

剣士「今、話し声が…」

魔道士「また?」

武道家「もうそのネタはいらないぞ」

乙女格闘家「さっきも聞こえたけど、誰もいなかったしね」


……ヒソヒソ


剣士「…ほ、ほら!」

 
魔道士「…みんな、聞こえた?」

武道家「いや。今回は聞こえない」

乙女格闘家「聞こえないよ」

剣士「い…いやいや!今はっきりと、この霧の中から誰かしゃべってただろ!」


武道家「魔道士、魔力の霧は人に聞こえない声を聞かせる効果もあるのか」

魔道士「うーん、魔法学的にはあり得ないと思うけど、謎の技術という以上、可能性はゼロじゃ…」

剣士「いや冷静に分析しなくていいし」

乙女格闘家「簡単にいえば、剣士がもっとバカになったってことだね」

剣士「うるせー!!」


…ヒソ、ヒソヒソ…

ボソボソ……ボソッ……


剣士「…」

 
……シーン


剣士「…声が止んだ」

魔道士「…?」

武道家「やっぱ気のせいだったんだって」

剣士「んーむ……本当に聞こえてたんだけどな…」


乙女格闘家「それより、町に早く進もうよ」

武道家「そうだな。とりあえず町の支部に辿りつかないと話にならんし」

剣士「そうだな…。まぁ、進むか…」

武道家「んむ」

剣士「…」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 祭 壇 町 】

コツ…コツ…コツ…


乙女格闘家「何…これ…」

剣士「ひ…酷すぎる…」

魔道士「これが、エルフ族の町…なの…?」

武道家「そこら中に瓦礫の山…。霧…。血の跡…。なんじゃこりゃ……」

ベチャッ…ドロッ…

…オォォ…ォォ……


剣士「な、何なんだよ……」

剣士「こ、こんな場所に本当に大戦士兄がいるっつーのかよ…!」

 
武道家「武装さんたちの話が本当なら、ココへ大戦士さんたちは送られてるので間違いないはずだが…」


剣士「人の気配…いや、生き物の気配すらしてないぞ…」

剣士(声はあったが、人の気はしなかった。本当に何なのか……)


武道家「唯一分かるのは、鼻に突く死臭…」

魔道士「何があったんだろう…」

乙女格闘家「本当に私たちがいていい場所なのかな…」


剣士「だ…誰かはいるはずだって!」

武道家「…この霧の中、一軒ずつ家に入って探すか?」

剣士「…」

武道家「それに魔獣の姿も見えないのも気がかりだ」

剣士「…」

武道家「この霧の中、やたらに動き回れるもんでもないだろう…」

 
乙女格闘家「うん…。この霧の中を敵に襲われたらどうしようもないよ…」

剣士「わ、わかってるっつーの!」

魔道士「一旦、支部を探そうよ。もしかしたらこっち側に来ている軍人さんたちがいるかもしれないから」

剣士「…そうだな。大戦士兄もいるかもしれんし…」

武道家「賛成だ」

乙女格闘家「…だね」


剣士「じゃ…行くか…」クルッ

ザッザッザッザッ……

 
コォォ…

ザッザッザッザッ……


武道家「…どこもかしこも酷い有様だな」


ザッザッザッ…

魔道士「…」

魔道士「…ちょっと気になったんだけどさ」

魔道士「武装先生が言ってた、エルフ族が自分の町をこんな風にするかな?」

魔道士「エルフ族は、自分の造り上げるものを"魂"として扱うのに、自分たちの町を壊してまで暴れると思う?」

 
剣士「あ…!そ、そうだよな!エルフ族の魂を、自分たちで壊すわけ…」

武道家「それほど人間を恨んでいたっていう可能性はあるんじゃないか」

剣士「…っ!い、いや…そ、それは!」

武道家「なくはないだろ?非道の復讐の為なら、魂くらい悪魔に売り渡すかもしれん」

剣士「…そ、そうだけどよ!なんかこう…違う気がすんだよ!」

武道家「じゃあ、お前は何の仕業だって考えるんだ。武装さんたちは、あれでも前線にいる経験の高い人なんだぞ?」

 
剣士「…それはわかんねぇけど、武装のオッサンの考えはあくまでも"霧の外"の考えだろ?」 

剣士「霧の中の、町の惨状を知ってたらあんな考え出さなかったんじゃねえかな…」

剣士「オッサンはきっと、誰よりもエルフ族が魂を大切にする民族だって知ってるはずだろ…」


武道家「…なるほど。そりゃ一理ある」

剣士「だろ?」


武道家「だとしたら、これは全て魔獣、魔物の仕業ってことになるわけだが…」

武道家「エルフの姿がねーのもだけど、送られてきたはずの人の姿もねーっつーのが気になる」

 
剣士「…魔族に襲われて、どこかに避難したとか…か」

剣士「んぐぐ…」

剣士「……あーもう!!わけわかんねぇ!!」ガシガシ!


魔道士「と、とにかく!今は、支部を目指そうよ」

魔道士「支部に行けば、何か分かるかもしれないんだから…」
 

剣士「そ…そうか」

武道家「憶測で言ってても仕方ねーもんな…」

乙女格闘家「まだ敵っていう敵もいないし、停戦状態かもしれないし…」

魔道士「うん。急いで探そう」


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【  祭壇町 ―中央軍支部―  】


タッタッタッタッ……


魔道士「あ、あった!」

剣士「ここが支部か…」

武道家「…何だこりゃ、ここ中心に建物が軒並みボロボロじゃないか…」

乙女格闘家「うわ…、道に血痕……引きずられているような跡とか…」

ドロッ…


剣士「…何かと戦ったのは見て分かるが…」

武道家「とりあえず中に誰かいないか確認しよう」

 
トコトコトコ……ギシッ、ギシギシ…

剣士「随分と軋む支部だな。木造のせいか?」

武道家「おいおい、崩れねえだろうな…」

ギシギシ…ギシッ……
 
 
魔道士「でも、見た感じ中に人はいなー……」ハッ

魔道士「…えっ!?」


剣士「な…っ!」

武道家「何だこりゃ…!」

乙女格闘家「こ、これ…って…」

本日はここまでです。有難うございました。

>>667
偉そうにね
意味分からん予測変換やエロ広告ばかりでスマホは疲れるな

皆さま有難うございます。

>>668
最近、酷い広告が沢山あるようなので考えるところも有りですが…。
広告のほうはどうにかなってほしいですね…。

それでは、投下致します。

 
ゴォォォ……

支部軍人たち「…」

小隊軍人たち「…」

ポタッ…ポタッ…


剣士「ひ、ひでぇ……!!」


武道家「…!」

武道家「お、おい!この腕章…中央軍のだぞ!」

武道家「中央軍の本部の隊、それと支部隊のじゃねえのか!?」


剣士「ってことは、中央から送られた面子がここで…やられたのか!」

剣士「ど、どうなってんだ!大戦士兄は…!エルフ族はどこへ!」

 
武道家「何だこの遺体は…。剣術や槍、格闘術でもここまでの酷い死体には…!」

剣士「魔獣の仕業なのか!?だが、ここまで非道なことを…!」

乙女格闘家「…ッ」


魔道士「…っ!」

魔道士「…ご、ごめん私……!」クルッ

タッタッタッタッ……

魔道士「ごほっ…!うえっ……!」
 
乙女格闘家「ま、魔道士ちゃん!背中…さするよ」

タッタッタッ…スッ…

魔道士「あ…ありがとう……」

 
武道家「…無理もないな。死臭に加えてこの損壊が激しい遺体たち…」

剣士「こ、この中に大戦士兄がいるんじゃないだろうな…」ブルッ

武道家「お、おいおい!そんなわけないだろ、あの大戦士さんだぞ!?」

剣士「そ、そうだよな…!」

武道家「必ずどこかにいて、仲間と戦ってたりするはずだって!」

剣士「お、おうよっ!」


乙女格闘家「…」

乙女格闘家「…地震、魔力の霧、エルフ族の神隠し、魔獣や魔物との魔族との交戦…」

乙女格闘家「繋がりそうで、繋がらない……何か、決定打のあるものがあればいいんだけどね…」


魔道士「お、乙女格闘家…。そ、そのことなんだけど…」ゴホッ

乙女格闘家「どうしたの?」

 
魔道士「あの…魔力の霧の技術は、今の人間の技量では絶対に行えない事だと思うから、人間の仕業じゃないはず…」

魔道士「だからエルフ族の仕業だと思ってたけど、自分たちで作り上げ、魂である町をここまで自ら破壊するとは思えない…」

魔道士「つまり人間と、エルフ族の路線は絶対じゃないけど、薄くはなった…」


剣士「…」

武道家「…」

乙女格闘家「…」


魔道士「残された謎は、エルフ族の神隠しと、襲った魔獣の正体…」

魔道士「そこで今、少し考えての……」

魔道士「あり得ないはあり得ない。その言葉通りの仮説をちょっとたててみたけど…」


剣士「…その仮説を聞かせてくれ」

武道家「お前の考えは的を射るからな」

乙女格闘家「そうだよ、教えてよ魔道士ちゃん」

 
魔道士「…もしかすると、第三の刺客が…いるってこと」

剣士「第三の刺客?」

魔道士「私たちは、軍もあんな風にパニックを起こすほどの体験をしてるのは分かるでしょ…?」

剣士「そうだな」

魔道士「だけど、私たちは"私たちが見てきた物事や体験"でしか憶測することが出来ないのが普通なの」

剣士「…あのパズルの話か」

魔道士「そう。"あり得ない"という事は絶対じゃないし、今回の魔力の霧だってあり得ないのが現実だった」

剣士「ふむ…。で、その"あり得ない"仮説の第三の刺客ってのはどういう意味だ?」


魔道士「……豊富な魔力を持つエルフ族を使い、この霧を発生させた第三の敵の可能性」

魔道士「可能性は2つあると思う」


武道家「2つの可能性…」

剣士「それは…なんだ?」

 
魔道士「1つ目は、謀反を企む軍内部の人間と組んだ、魂すら気にしないエルフたちの仕業」

剣士「あぁ…可能性は確かにあるな」

武道家「エルフ族の技術を使い、軍を潰そうとする人間がいるかもしれないってことか」

乙女格闘家「それだけじゃなくて、世界を掌握しようとするとか、パニックに陥れようとしてるとかもあるね」


魔道士「うん。そして、もう1つ。こっちは非現実的だけど…」

剣士「…非現実的とかは別にいい。お前の考えをそのまま聞かせてくれ」


魔道士「もちろん。もう1つの考えはね…」

魔道士「この霧を発生させる技術を持ち、で人間たちを襲おうと目論んだ連中がいる可能性」

魔道士「…人間、エルフ族。あと1つの種族が残ってるでしょ?」


剣士「あと1つの種族って…」

武道家「…真面目に言ってるのか?」

乙女格闘家「そ、それはさすがに…?」


魔道士「だから、本当にもしかしての可能性だけど、極めて知性の高いー……」

 
ビュ…ッ!!

……ヒュオオオンッ!!

剣士「ぬっ!?」ハッ

武道家「なんだ!あぶねぇ!」バッ!

ブンッ!!…キィンッ!

クルクルクル…ザシュッッ!


魔道士「剣士、武道家!?」

乙女格闘家「どうしたの!?」

剣士「…今のは!」

武道家「ナイフの投擲だ!正確に頭狙ってきやがった!」チラッ

ビィィン……


魔道士「な、ナイフってどこから!」

剣士「今の軌道…俺らが入ってきた入口からだ!何かいるぞ!」バッ!

 
モワモワ……ザッザッ…


剣士「…足音っ」チャキッ

武道家「ついに、お出ましってわけか」スッ

魔道士「…人か、エルフ族だったら嬉しいんだけどな…」スッ

乙女格闘家「それより敵じゃないことを願うよ…」スッ


ザッザッザッザッザッ……


剣士「…」ゴクッ

 
ザッザッザッ……チャキンッ

???『…また、一人…おいでますったようだ』

???『今度は…どンなヤツだ…?』


剣士「…おっ、言葉だと…。もしかして人間か、エルフ族か?」


武道家「…」

武道家「…ん?」ピクッ

武道家「…待て!よく見ろ!」

…モワッ…

???『…』


剣士「…!?」

魔道士「なっ…!」

乙女格闘家「何…あれ……!?」


???『…』ニタッ

 
剣士「な…何だお前ら!その恰好、人なのか…!?」


???『ハハ…人間ト一緒にするんジャない」

???『俺ラを見る奴らはよく驚クな。ま、それも楽シいんだが』


剣士「…一体、お前らは…?」
 
 
???『…お前らが言ウ種族の話で言えバ、魔物…魔族となルな』


剣士「魔族…だと!?」

武道家「はは…魔道士…」

魔道士「…っ!」

武道家「お前が言いたかったのは、"極めて知性の高い魔獣や魔物"…って考えだろ」

乙女格闘家「魔道士ちゃんの考え、変に当たってたってこと…かな」

魔道士「…ゆ、夢でも見てるの…?本当にこんな……」

 
???『まァ…いイ。どうせお前ラは……』チャキンッ


魔道士「ま、待って!意思疎通ができるなら、話をさせて!」

???『あァ?』

魔道士「貴方たちは何者!?前に来てた軍人さんたちは!?エルフ族はどうなったの!」

???『…』


剣士「お、おいおい…そんなん聞く相手じゃ…」


ゴブリンたち『俺ラはゴブリン族。気高キ、戦闘種族…』


剣士「言うのかよ!」

 
武道家「…落ち着け。今、ゴブリンっつったか?そんな魔物、聞いたこともないぞ」

乙女格闘家「それに、人型で…人語を理解するって…」

魔道士「貴方たちはどこから現れたの?魔物ってどういうこと?エルフ族について教えて!」

剣士「…そうだ!中央軍の人らや、エルフ族はどこへ行った!」


ゴブリンA『…エルフ?あァ、あいつらか…』

ゴブリンB『あイつらは所詮、媒体に過ギん』


魔道士「媒体?どういうこと…?」


ゴブリンA『…答えらレるのは、ココまデ。さぁみンな、準備をしろ」

ゴブリンたち『ここにイる人間は、使えるヤツ以外、皆殺シ…だ』チャキッ

ゴブリンたち『クク…』

ザワザワザワ……

 
剣士「ちっ…好戦的かよ!」

武道家「割と数がいるぞ…」

魔道士「やるしか…ないんだね」

乙女格闘家「…やらなきゃ、やられるよ」


ゴブリンA『…お前ら、イけ!!』バッ!!

ゴブリンたち『ウォォオッ!!』ダッ

…ダダダダダダッ!!!!


剣士「…」チャキッ

武道家「…闘気」ポゥッ

魔道士「中…火炎…」パァッ

乙女格闘家「闘気ぃ…」ポゥッ

 
ゴブリンたち『死ねェェェ!!』

…ブォンッ!!!


剣士「せいやぁぁっ!!」

武道家「連弾っっ!!」

魔道士「魔法っ!!」

乙女格闘家「れんだぁぁんっ!!」


ボッ…ボゴォォォォォォンッ!!!!グラグラ…ッ!!


ゴブリンたち『ガッ……!?』

ゴブリンA『!!』

 
ユラッ…

ゴブリンたち『ガハッ…』

ドシャアッ……


ゴブリンA『なッ…!』


剣士「…よわっ!」

武道家「はっ!見かけ倒しかよ」

乙女格闘家「もっと手応えあると思ったんだけど」

魔道士「中級魔法で余裕だね。ってか魔力が目に見えてあがってる…これが霧の効果…」

 
ゴブリンA『まタ…か…』ギリッ


剣士「あ?」

ゴブリンA『お前ラのよウな…イレギュラーの存在が……!』

剣士「どっちかイレギュラーな存在だよ」

ゴブリンA『あノ…前に来た、中央軍とヤらの人間ドもモ…!話と違っテ……!』

剣士「…中央軍だと?」ピクッ

ゴブリンA『…』

剣士「やはり知っているのか!その話、詳しく聞かせて貰おうか!」


ゴブリンA『…話スと思うか?』

剣士「話させないと…思うか?」チャキッ

 
ゴブリン長(ゴブリンA)『…こレでも一番隊を率いるゴブリン長…』

ゴブリン長『一矢報い、戦いに散らせて貰う!!』クワッ


剣士「…来いよ!!」


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ギュウウッ

ゴブリン長『ぐっ…!き、キツイぞ…!』

ギリギリッ…

剣士「おめーみてぇな危険なヤツ、縄で縛りあげておくのが丁度いいんだよ」

ゴブリン長『クソッ…不覚…ッ!』


魔道士「…未だに信じられない。あなた、本当に魔物なの?」

ゴブリン長『フン…』

 
…グイッ

剣士「ふん…じゃねえんだよ。お前ら、一体何なんだ。詳しく話せ」


ゴブリン長『…』

剣士「…」

ゴブリン長『…』

剣士「…悪いが、容赦しねぇぞ?」チャキッ

ゴブリン長『殺すナら殺せ…!』

剣士「…やっと見つけた大戦士兄や、この事件の手がかり。みすみす殺すと思うか」


ゴブリン長『…!』

ゴブリン長『だイ…戦士…。あァ…中央軍とヤらを率イていた…やツの名前か…』


剣士「…し、知ってるのか!!」

 
ゴブリン長『知ってルも何も……くくっ』

剣士「…何を笑ってる」

ゴブリン長『クク…アイツか…』

剣士「何笑ってんだコラァ!」

グイッ!!ギリッ…ギリギリ……

ゴブリン長『ガっ…!』


魔道士「剣士、落ち着いて!」

武道家「そんな締め上げたら、聞けるもんも聞けねぇぞ!」


剣士「あ、あぁ…」パッ

…ドサッ!

ゴブリン長『グっ…』

 
剣士「…ゴブリン長だっけか。てめぇ、この状況が分からないなら…分からせるか…?」

…チャキンッ

ゴブリン長『…チッ』

ゴブリン長『す、少シダけなら……話してヤる…』


剣士「!」

ゴブリン長『…』

剣士「…お、おう!!話してくれ!大戦士兄はどうなったんだ!」

ゴブリン長『あいツは……』

ビュッ!!ヒュオオオッ…バスンッッ!!


剣士「!?」

武道家「!」

魔道士「!」

乙女格闘家「!」


 
ゴブリン長『…』

ブシュウッ!

……ドサッ!ゴロンッ…


剣士「なっ…!」

武道家「く、クビが吹き飛んだ…!?」

魔道士「なっ……!」フラッ

乙女格闘家「魔道士ちゃん!」ガシッ

魔道士「だ、大丈夫…!それより剣士、武道家!今のは風魔法…恐らく後ろから!出入り口のほう!」

剣士「何っ!?」バッ


モワモワ…サァァ……


???『…あらら、口封じの為に殺すべきじゃなかったかしら。場所がバレちゃった』

 
剣士「…誰だ!さっきから霧の中から姿も見せず…!」

???『…待ちなさいって。あせっちゃダメ…』

剣士「あぁ!?」

???『クスッ…中々可愛い子たちが揃ってるじゃない…』

剣士「…?」


コォォ……ギシギシッ…ギシッ!!

???『これで、私の姿が見えるかしらぁ?』ズンッ!


剣士「うおぉっ!?」ビクッ

武道家「ぬおっ!?」

魔道士「うげっ…!」

乙女格闘家「き…きもちわるっ!!」

 
???『気持ち悪いなんて心外ねぇ…』ハァァ

剣士「で、でっけぇ蜘蛛…!?」

武道家「恐らく大型のアラクネ…だが!こいつも人語を話すのかよ!?」

魔道士「な…なんなのこれ…次から次へと…」

乙女格闘家「…虫は、だめぇ…」フラァ


アラクネ『私の種族の名前を知ってるのは、とても嬉しいわね』

アラクネ『だけど、"こっち"にいる子と一緒にしないでくれる?』


魔道士「…」ピクッ

剣士「何?」


アラクネ『…』チラッ

ゴブリンたち『…』


アラクネ『ふぅん…。ゴブリン族を一蹴するのは中々やるじゃない』

剣士「い、一体なんなんだよ…お前らは…!」

 
アラクネ『…焦らないの。もう少ししたら、全てが分かるから』

剣士「どういうことだ!」

アラクネ『でも、その前に貴方たちは死んじゃうんだけどね。私のお腹の中で』

剣士「あ?」


アラクネ『…風刃魔法っ!!』パァッ!!

…ビュオオオッ!!

剣士「攻撃魔法!?」

魔道士「あっ!…ち、中風刃魔法っ!!」パァッ!!


ビュオオオッ!!バヒュウンッ!!!!

ヒュオォォッ……!

 
剣士「ぐっ…!」

ビュウウッ……

魔道士「…な、なんて発動速度…!一瞬でも遅れてたら…!」ゾクッ


アラクネ『あらぁ?あらあら…。私の魔法を消すなんて……』

魔道士「…っ」

アラクネ『気に入らないわね』ギロッ

魔道士「!」

アラクネ『私はね、魔法だけじゃなくってよ!』ブンッ!!

魔道士「!」


ブンッ!!…ガキィィィンッ!!

剣士「…やらせるかよ!」ググッ

 
魔道士「剣士!」

剣士「物理なら…俺の出番だコラァ…!」ギリギリ


アラクネ『あらあら…』グググッ


武道家「おい!余所見してていいのか!?闘気…衝撃波ぁぁっ!!」

…グニッ!

アラクネ『…ただ触ってるだけのようだけど?痛くも痒くもないわよ?』

武道家「発っっ!!」ポウッ

ゴバァァッッ!!!

アラクネ『!!』

ドゴォォンッ!!ズザザザァ……


アラクネ『い…痛いじゃない…!』ググッ

 
乙女格闘家「今度は私の出番!!闘気…れんだぁぁんっ!!」バババッ!!

ボボボボォンッ!!…ズズゥン…


アラクネ『…がっ…!』フラッ

アラクネ『中々…やるじゃない……っ』

アラクネ『…ッ』

ドシャアッ!ズズゥン……!!


剣士「…よし!」

武道家「ふぅ…!これは夢か何か…だろ?」

魔道士「この町で何が起きてるっていうの…」

乙女格闘家「見たことのない魔物、魔獣…。それに凄く強いよね…。私たちじゃなかったら…」

剣士「…魔道士、こいつらの存在までは完璧に予測できたっつーことか?」


魔道士「私がさっき立てた仮説は、"極めて知性ある魔物"がやった事かもしれないっていう夢物語だった」

魔道士「だ、だけど…。これを見たら…やっぱり…」

 
剣士「知性のある魔物たちが、人間やエルフ族を、飲み込もうとしている…か」

剣士「一体どこから湧いて出てきやがった…突然変異か…?」


魔道士「それは分かんないけど、さっきの会話の中で気になる言葉が2つ出てきたの」

剣士「何だ?」

魔道士「エルフ族が、媒体に過ぎないっていうことと、"こっち側"って言葉」

剣士「あぁ…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ゴブリン長『所詮、エルフ族は媒体に過ぎない』

アラクネ『こっち側のアラクネは…』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

剣士「確かに、そんな感じなことは言っていたな」

魔道士「どんな意味があるかはまだ分からないけど…。この魔物達が元凶で間違いないと思う」

 
武道家「じゃあ、これからどうするんだ。ここにいても、何も始まらないぞ」

魔道士「この事を一刻も早く武装先生…じゃないや、武装中将さんに伝えないといけないと思う」

武道家「…そうするべきだ。これは俺らだけでどうこうできる問題じゃない」

魔道士「うん…」


剣士「だけどよ、他に魔物がいたら…この騒ぎだし、俺らを狙ってくるんだろ。霧の中、移動できるか?」

武道家「行くしかないだろ」

乙女格闘家「もしかして、大戦士先生たちもこんな風になって…もっと強い魔物に襲われたんじゃ…」

剣士「おいおい…不吉なこと言うなっつーの。大戦士兄で勝てない相手とか、俺らじゃ絶対に…」


…ズシンッ!!!


剣士「!」

魔道士「!」

武道家「!」

乙女格闘家「!」

 
…ズシンッ!!!!ズシンッ…!!!!!ズシンッッ!!!


剣士「お…おいおいおいおい!!何だこの足音!!」

武道家「ば、ばか!でかい声出すな!」

剣士「じ、地鳴りがやべぇ!どんだけデケェ奴いるんだよ!!」

武道家「は、早く逃げようぜ!」


魔道士「うかつに外に出たら、鉢合わせするかもしれないよ!」

乙女格闘家「魔道士ちゃん、いい案はない!?」

魔道士「えっ…!わ…私!?」

乙女格闘家「魔道士ちゃんの考えなら、うまく逃げれそうな気がする!」

魔道士「えっ…!う、う~ん…ちょ、ちょっと待って…!」


ズシンズシンッ…!!バサッ…バサバサッ…!!

 
剣士「な、なんか空飛んでる音とかするんだけど…」

武道家「それも一匹じゃねえぞ…」

剣士「魔道士、何も浮かばないならダッシュで町の外へ出たほうがー…」


魔道士「…」

魔道士「…そうだ」

魔道士「…こ、ここにある支部の転移装置を使おうよ!」バッ!


剣士「は!?」

武道家「お、おいおい!それが動かなくなったから、中央本部でも色々困ってるんだろ!?」

乙女格闘家「動かなかったら、使えないよ!」


魔道士「違うの!もしかしてだけど、この霧が影響だとしたら…私の理論で動くはず!」

剣士「…もしかしてって…!この状況で賭けるのかよ!」

魔道士「…うん」

剣士「…」

 
武道家「…剣士、どうする」

乙女格闘家「…リーダー!」

剣士「…」

魔道士「…」


ズシンズシンズシンッ…!!バサバサッ!!


剣士「…分かった。お前のこと、信じるぞ」

魔道士「…うん」

武道家「じゃあ、早く転移装置のある部屋探すぞ!」

乙女格闘家「奥の部屋にいつもあったし、大体ある場所は分かるよ!」

 
剣士「じゃあ行くぞ!3人とも、しっかり遅れんなよっ!」ダッ!

武道家「おうよ!」ダッ!

魔道士「うん!」ダッ!

乙女格闘家「当たり前だよ!」ダッ!


…ダダダダッ!!ギシギシ!ギシッ!!


剣士「多分、転移装置はあそこの角を曲がったところに…!」

ダダダダッ…!!


…バキャァンッ!!!ボォンッ!!パラパラ…


剣士「うおっ、今の音は!?」バッ

武道家「後ろのほうだ!壁か何か壊れたような…!」

本日はここまでです。有難うございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
ゴゴッ…ズシンッ……!!

武道家「…っ!?」


???『…同胞の血の臭いが、俺を呼んだのか』


剣士「なっ…!なんだ…こいつは…!」


???『…時はまだ満ちてはおらぬ。だが、ココへ来られるのは少々困る」


剣士「…こいつも…人語を…!」チャキッ

武道家「剣士…こ、こいつは…実力が…!」

剣士「んなの…見てわかるっつーの…!」


???『…その差が見えていながら、我へ挑もうというのか。若き人間よ』

 
剣士「…守るべき存在がある限り」

???『ふむ、立派な志だな』

剣士「…褒めてくれるのか。礼を言うべきか…?」

???『それでもお前たちを見つけた以上、容赦は出来ぬ事は分かってくれ』ゴォォ

剣士「…っ」チャキッ

武道家「…ずいぶんと似合わねぇ言葉遣いで、おっかねぇこと言いやがるな…!」スッ


???『む?あぁ…では、これでどうだ?』ググッ

…パァァッ!!


剣士「んっ…!」

魔道士「えっ!?」

武道家「なにっ!」

乙女格闘家「えっ…!」

 
…スタッ

???『これなら、我の言葉遣いでも構わないかな?』


剣士「にん…げん…だと!?」

武道家「お前、人間なのか!?」

魔道士「ど、どういうことなの…!」

乙女格闘家「それに、私たちと変わらない歳に見えるよ…?」


???『ふむ、そうか。ご紹介が遅れてすまないな』

???『我は、りゅ……』


…バサッバサッ!!


???『いつまで話をしている…!早く殺さないか…!』

 
剣士「また増えやがった…!まるでトカゲの巨大な化け物だな…!」

武道家「…話なんかしてる場合じゃねぇぞ!マジで逃げるぞ剣士!」

剣士「そのほうがよさそうだ!」

魔道士「うんっ!」

乙女格闘家「いそごっ!」

ダッ…ダダダダッ!!


???『人間のガキがぁ…!俺のコトをトカゲだのぬかしやがって…!」

???『俺は話す暇も与えねえからな…!逃がすかよ…!』スゥゥ


剣士「何を…」チラッ


???『カァッ!!!』ボッ!!

ゴォォォォォオッ!!!!

 
剣士「!?」

魔道士「か、火球っ!?大…水流魔法っ!!」パァァッ!!

…ザバァァンッ!!!ジュオォオッ…!!

魔道士「くっ…!」


???『…ほう、俺の攻撃を』

???『…』

???『なら、これではどうだ……?』グググッ


武道家「まだ何かする気だぞ!」

魔道士「くっ!ま、魔法なら…!この霧の中なら、どんな魔法でも!」


???『…』ニヤッ

???『お前らの世界にゃ、この威力のは見たことねぇだろ…!?』ググッ

ビュッ…ブォンッ!!!

ヒュッ、ヒュオオオオオッッ!!!

 
魔道士「…風魔法!?打ち返す!大風刃魔法っ!!」パァァッ!!

…ビュウオオオッ!!!


???『…残念』ニタッ

魔道士「!?」

ビュオッ!!

魔道士「えっ!?ま、魔法がすり抜け…!」

…ズバァンッ!!!!

魔道士「きゃああっ!!」

ズザザザァ…!ドォンッ!!

 
剣士「ま、魔道士!!」

魔道士「ぐっ…!な、何が…!」ズキンッ!

…ポタッ、ポタッ


???『そりゃ魔法じゃねぇんだなぁ。真空波ってやつだ』ギラッ


剣士「ぶ、物理攻撃か…!あんな目に見えた真空波を!」


乙女格闘家「魔道士ちゃん!回復薬っ!」バッ!

魔道士「うっ…!あ、ありがとう…!」

 
???『…おいおい、回復薬とかやめろよ。そんな粘られちゃ困るぜ?うちの親方様に怒鳴られちまうからな』

剣士「…っ!」

???『さぁて、さっさとクビも飛ばしてやるか…』グググッ


剣士「…全員!魔道士をフォローしながら、振り返らず転移室を目指せ!」

武道家「分かった!」ダッ!

魔道士「ご、ごめんね…!」ヨロッ

乙女格闘家「ううんっ!」ギュッ

ダダダダダッ!!!


???『おいおい、待てよ!大人しくしてろって!』

???『まぁ、落ち着け。ここは、我も一緒に参戦しよう』パァァッ!

 
ズッ…ズズズゥゥンッ…!!


武道家「今の音は…あいつが元の姿に戻った音だな!」

剣士「…一撃が来る前に!」

魔道士「ぐっ…!」ヨロヨロ

乙女格闘家「もう少しだよ、頑張って魔道士ちゃん!」

ダダダダダッ……!!


剣士「…み、見えた!あそこだ!」


"転移室"


武道家「突っ込め!!」

剣士「ぬおらあああっ!!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 転移装置の部屋 】 


…バボォンッッ!!!

剣士「…っしゃあ!!」

ドロッ…

剣士「っと…ここも死体だらけかよ…!」

武道家「きっとここから逃げようとしたんだろうな…」

乙女格闘家「それより、魔道士ちゃん!やっぱり転移装置は止まってるよ…どうやって動かすの?」


魔道士「え…えっと、転移装置が動かないのは多分…魔力源に異常があるからなんだけど…」
 
魔道士「動力源は他の魔力に干渉されやすくて、それは飛び込むゲートの周りにある部分でー…」

魔道士「…うっ!」ズキンッ

…ポタッ、ポタッ

剣士「魔道士…血が…!」

 
魔道士「だ、大丈夫だから…!よく聞いてっ…!」ズキンッ

魔道士「この…ゲートの周囲にある部分に、この霧の魔力の粒子が入り込んでるの…!」

魔道士「そのせいで、ゲート全体に魔力を送るのを邪魔してるんだと思う…!」

魔道士「だから、ここにある魔力の霧にある魔力を…使い切る…!」


剣士「使い切るってどうするんだよ!」

魔道士「すぐ説明するから…とにかく、みんなは転移装置の前へ…!」

剣士「わ、わかった」ダッ

タタタタッ…


魔道士「…そ、それじゃ…私がこの部屋にある魔力の霧を使い切るんだけど…!」

魔道士「敵も目の前だし、この支部を壊す勢いで魔法を使うから…それと同時に皆はゲートへ飛び混んで…!」

 
剣士「お、おう!」

魔道士「…私の火炎に焼かれるのが先か、中央本部へ行くのが先かってね♪」

剣士「お前、怖いこと言うなよ…」

武道家「はは…」

乙女格闘家「魔道士ちゃんの魔法は凄いからね、期待してる♪」


魔道士「…っ」チラッ

モワッ……

魔道士(さ、さっきの真空波で壁に大きな穴が…)

魔道士(そのせいで霧が絶えず部屋に…!それにあの敵もすぐそばにいる…!)

魔道士(この状況でみんなを守るには…方法は…これしか……っ)

 
ズシンズシンズシン……!!


魔道士「いけない、さっきの奴らが…!じゃあ、行くよ…」

魔道士「全員、衝撃に備えるように食いしばってね!」パァァッ!!


剣士「…」

剣士「待て、よく考えたらお前、魔法を使うって…ゲートに触れないようにどうやって魔法を……」


魔道士「…」ニコッ

魔道士「極…火炎……」パァァァ!!

 
剣士「おい!!待てって!!」

武道家「ま、魔道士…?」

乙女格闘家「ち、ちょっと待って魔道士ちゃん!!」

 
魔道士(剣士……ごめんね……)

魔道士「魔法っっっ!!」


剣士「ま…魔道士ぃぃっ!」バッ!


ピカッ………!!

ズッ…ズドォォォォォォオンッ!!!!!


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍本部 転移装置室 】


バチッ…バチバチバチッ……!!

ギュウウンッ!!バシュンッ!!


…ドサドサッ!!


剣士「…ッ!」

武道家「ぬおっ!」

乙女格闘家「あうっ!」

 
剣士「こ、ここは…」ムクッ

武道家「どこかの建物…。中央軍の本部…か…?」


剣士「…」

剣士「…!」ハッ

剣士「……ま、魔道士は!」


武道家「…そうだ!魔道士は!?」

乙女格闘家「魔道士ちゃん!?」


…シーン…


剣士「なっ…!何でいないんだ!!!」

武道家「お…おい!冗談だろ!?」

剣士「な、何であいつ…!!」

乙女格闘家「ま、まさか…私たちを逃がすために犠牲に…」ブルッ

 
剣士「なっ…!!」

武道家「ウソだろっ!!ま、待てよ!!じゃあアイツはまだあの地獄にいるのかよ!?」

乙女格闘家「そ、そんなこと……!」


剣士「~~…っ!」ブルッ

剣士「…も、戻る!俺はあそこへ戻るぞ!!ほら、動かすぞ!転移装置!」

…ゴンッ!!!

剣士「動けよ…!あそこへ戻せ!!おい!!!動け!!!どうすれば動くんだ!!」

ゴツッ!ゴツンッ!!!ゴツンッッ!!!ゴツンッ!!!!!!!


武道家「剣士、拳がイカれちまう!!」ガシッ

剣士「離せコラァ!!!」

…バキィッ!!

武道家「がっ!」

 
剣士「魔道士のやつ…何で…!!うおおおおっ!!!」

武道家「剣士!しっかりしろ!!」

剣士「うあああああっ!!!」

武道家「くっ…!だらぁぁっ!!」ブンッ!!!

…バキャアッ!!!ズザザザァ…!!

剣士「ぐあっ!!」


武道家「はぁ…はぁ…!落ち着けぇぇ!」

剣士「何だとコラ…!魔道士がお前…何が…!お前…おいっっ!!!」スクッ

武道家「俺だってどうすりゃいいかわかんねぇよ!!」

剣士「んだったら、この装置動かすくらいの気力でぶん殴れや!」

武道家「あぁ!?んなことしても意味ねえんだよ!!」

剣士「気合でどうにかすんだよ!!」

 
武道家「バカ野郎が!!そんなんでやれたら俺だって……!」ドクンッ

武道家「…う゛っ!?」ドクンッ!!!

 
剣士「あぁ!?」

武道家「ごほっ…げほっ…げほげほっ!」

剣士「!」

乙女格闘家「!」


武道家「お゛…あ゛…がふっ…!」ゲホッ!

武道家「あ…?」

…ベチャッ!!ポタッ…ポタッ…


剣士「…お、おい!?」

乙女格闘家「ぶ、武道家…?何で、血を…吐いて…」

 
武道家「う゛っ…あ……っ」グルンッ

…ベチャアッ!ドシャッ…

剣士「え…」

乙女格闘家「…え?」


武道家「…」

ビクッ…ビクンッ……


剣士「ぶ…どうか……?」

乙女格闘家「な…何なの…?えっ……?」

 
剣士「お…おい!おい!!!」

乙女格闘家「や…やだぁぁっ!!ど、どうしたの武道家ぁぁ!」


武道家「…」


ドタドタ…ガチャッ!!

大魔術中佐「一体さっきから何の騒ぎですか!やかましい!」

大魔術中佐「……って、あなたたちは…」ハッ


剣士「あ、あんたは…」

乙女格闘家「武道家、武道家ぁぁぁっ!!」

武道家「…」


大魔術中佐「な…。ど、どうしたというんです…?」


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 同時刻 中央都市 教会 】


リンゴーン…リンゴーン……


神官「…う~ん!今日も天気がいいなぁ」ノビノビ

神官「じゃ、本日も人のため…見回りなど頑張りますかぁ!」

…バキッ!

神官「ん?」

カキィンッ!…コロンッ…コロンコロン……

神官「…えっ」

…キラッ

 
神官「な…何でヒーリング用の杖の魔石が…」

神官「新しく購入したばっかなのに…」

神官「…」

神官「…うっ!?」

…ゾクッ!

神官「な…何だろう、今の悪寒……」

神官「凄く…嫌な感じだった…」

神官「風邪…かな?」


………

 
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――――【 雪降町 魔術賢者の自宅 】

魔術賢者「…」

魔術賢者(…最近、中央軍で色々と動いていると噂を耳にする)

魔術賢者(武装先生…じゃなくて、武装中将殿も動いているというし……)

魔術賢者(あの地震から何かが変な気がする…。他の軍の人間もそれに気づいてる…)

魔術賢者(左官以上は何か教えて貰ってるようだけど…)

魔術賢者(旦那が私に教えないのはちょっと…不満…)ブスー

 
…スクッ

魔術賢者(ま、軍事機密は夫婦間の問題…じゃないのか…)

魔術賢者(乙女格闘家じゃないし…私にはわからん…)

魔術賢者(魔道士も、これにだったら答えてくれたかもな……)


…カキィーン……!


魔術賢者(ん、何の音…)クルッ


コロコロ…キラッ


魔術賢者(…私の杖の魔石が…落ちた音か)

魔術賢者(ふむ、最近…新調したばかりだったのだが……)

 
…ゾクッ!

魔術賢者(!)

魔術賢者(な、何…今の悪寒…)

魔術賢者(凄く…嫌な…)

魔術賢者(…)


………
……

本日はここまでです。
次回の更新は、少し空けた9月16日予定になります。

それでは、有難うございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
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――――【 1時間後 中央軍本部 応接室 】
 
コチ…コチ…

剣士「…」

乙女格闘家「…」

剣士「…」

乙女格闘家「…」


剣士「…どうして、こんなこと……」ボソッ

乙女格闘家「…」

 
剣士「…俺が、あの時エルフ族の村へ行こうと言ったから…?」

剣士「俺がみんなを引っ張ったから…?」


乙女格闘家「…」

剣士「…くそっ!くそぉぉぉっ!!くそぉぉぉ…っ!!!」


乙女格闘家「…」

乙女格闘家「…剣士のせいだよ」


剣士「!」

乙女格闘家「って言えばいいの?」

剣士「何…?」


乙女格闘家「違うでしょ。剣士の言葉に、私やみんなが動かされた」

乙女格闘家「その言葉を信じた以上、剣士の責任じゃないんだよ。ううん、誰が責任とかはないと思うよ」

乙女格闘家「私だって、そんな事言ったら…、何であの時、やめようって言えなかったのって…」グスッ

 
剣士「乙女格闘家…」


乙女格闘家「だからそうやって自分を責めないで。私だって、知らない世界に飛び込むのが楽しく思った」

乙女格闘家「みんなだって、ぶつぶつ言いながらも洞窟を見つけたり、東方へ乗り込むって言った時にワクワクしてたと思う」

乙女格闘家「……うん。責任とかの問題じゃないんだと思う」


剣士「…」

乙女格闘家「…」


コンコン…ガチャッ

大魔術中佐「お待たせいたしました」

剣士「!」

乙女格闘家「!」

 
大魔術中佐「…武道家さんの容体は安定しています」

大魔術中佐「さっき貴方たちに早口で説明されたものの、ほとんど聞き取れませんでしたが…」

大魔術中佐「東方の祭壇町へ勝手に行った挙句、行方不明者と怪我人を出したということで相違ないですね?」


剣士「…」

乙女格闘家「…」


大魔術中佐「…本来なら、今すぐ貴方たちを縛り上げ、罪人扱いにするべきでしょう」

大魔術中佐「しかし、祭壇町から生きて帰還した以上、その情報はしゃべって貰いますよ」


剣士「…っ」

乙女格闘家「…はい」

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大魔術中佐「…にわかには信じられない話ですね」

剣士「…」

乙女格闘家「…」


大魔術中佐「人語を理解し、知性のある魔物。地鳴りを起こす程の大きさの魔物…ですか」

大魔術中佐「しかもそれが人間の姿に変身したと。…夢物語ですね、まるで」


剣士「…嘘は言ってねぇ」

大魔術中佐「それは無論、信じています」

剣士「…信じてくれるのか」

大魔術中佐「そりゃそうです。君だって必死なんでしょうから」

剣士「…何が」

 
大魔術中佐「自分の所為で、愛する者を失った挙句」

大魔術中佐「歴戦の友を治療室送りにし、自分の無力さを知ってしまった君が最後にすがれるのは…」

大魔術中佐「私たちしかいないということが、分かっているからですよ」ニコッ


剣士「…ッッ!」

乙女格闘家「ちょっと、そんな言い方!」ガタッ!

大魔術中佐「事実でしょう?」

乙女格闘家「だけど!」

剣士「…いい、乙女格闘家……っっ」ギリッ

乙女格闘家「剣士…」

剣士「…ッ」

 
大魔術中佐「…」

大魔術中佐「何だ、武装中将殿に聞いたよりよっぽど大人ですね」ポリポリ


剣士「…?」

乙女格闘家「え?」


大魔術中佐「それにしても、武装中将殿も読みが鋭い」フゥ

剣士「…どういうことだ」


大魔術中佐「いや何、前に会った時…エルフ族へ対策をとるって武装中将殿が立ちあがったじゃないですか?」

大魔術中佐「その時に念の為、君たちが行動を起こす可能性が高いので…準備を進めてほしいと言っていたんです」


剣士「!」

乙女格闘家「!」

 
大魔術中佐「"今回の事案は、剣士たちといえども犠牲者が出る可能性が非常に高い"」

大魔術中佐「"だが情報を得て戻ってきた場合、それを最重要案件とし、処理の計画を立てる"…ってね」


剣士「ぶ…武装のオッサンが…」

乙女格闘家「私たちの行動を…読んでいた…」


大魔術中佐「そういうことです」

大魔術中佐「どうやって東方大陸沿いの監視を突破したのかは分かりませんが、全て予測の範囲内でした」


剣士「…」

乙女格闘家「…」


大魔術中佐「この事は、すぐにでも武装中将殿に伝えます」

大魔術中佐「貴方たちはえーと…武道家を中央都市の治療院へ運ばせるので、一緒に着いていくといいでしょう」

大魔術中佐「それでは私はこれで」スクッ

 
剣士「…ま、待ってくれ!」

大魔術中佐「はい?」

剣士「…この情報で、きっと武装中将は祭壇町への編成隊を組みなおすと思う!」

大魔術中佐「でしょうね」

剣士「だ、だったら…その時!俺も一緒に、そこへ行きたいっ!!」

大魔術中佐「なぜです?」


剣士「な…なぜって…!!」

剣士「ま、魔道士を助けに…!!」


大魔術中佐「…貴方たちが言うのが本当なら、そこは地獄。またその中へ行く気ですか?」

剣士「だ、だって…魔道士は…!」

 
大魔術中佐「…」

…グイッ!

剣士「ぐっ…!?」

大魔術中佐「…若造が、舐めるなよ」

剣士「!!」


大魔術中佐「お前は所詮、ただ少し強い冒険者に過ぎなかったということだ」

大魔術中佐「お前のせいで、お前の愛しい人は、地獄を見ている。いや…もう見せられたか?」

大魔術中佐「知性のある魔物…人型がいるんだったか?くくっ…」

大魔術中佐「生殖はどうだ?もしかしたら…どうなっているかな…?」

大魔術中佐「あぁ…その前に、自らの火炎で身体のパーツも残さぬほど吹き飛んだか…?」


剣士「…っ!!」

乙女格闘家「や…っ!そんな事言うの…やめてください…っ!!」

 
大魔術中佐「…何がやめてだ。お前らヒヨっこが、考えもなしに飛び込むからそういう結果を出したんだろう」

大魔術中佐「この期に及んで、そんなアホな考えをもう持たぬように、改めて教えているんだ」

大魔術中佐「あとは軍に任せて、静かに過ごせ…ってね」

パッ…ドサッ!

剣士「うっ…」


大魔術中佐「大目に見るのは今回までだけだ。これ以後、祭壇町への侵入をしたり…」

大魔術中佐「この中央軍本部へ立ち入った時点で、お前らは重罪として処理する。いいな!」

大魔術中佐「…」

大魔術中佐「ま…それさえ守れば、あとは私らに全部任せておいてください。では」ニコッ

カツカツカツ…

ガチャッ、ギィィ…バタンッ……

 
乙女格闘家「け、剣士…!」バッ


剣士「…」

剣士「はは…」


乙女格闘家「…剣士?」

剣士「情けない話だな。全くもってあの女軍人さんは正論だよ…」

乙女格闘家「…」

剣士「俺は俺のせいで、魔道士を失ったんだよ。はは…はははっ!」

乙女格闘家「…っ」


剣士「…どうすりゃいいんだよ…」

剣士「俺は…どうすればいいんだ……!!」

………
……

 
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――――【 少しして 西海岸街 】

…ガチャッ

大魔術中佐「失礼致します。中央より転移装置を利用し、武装中将殿にお伝えすべく参りました」

武装中将「…来たか。して、内容は」

大魔術中佐「剣士たちに関してです」

武装中将「…やはりか…。情報は?」

大魔術中佐「得られました」

武装中将「…犠牲者はいたのか」

 
大魔術中佐「…魔道士が現地へ取り残されたようですが、恐らく死亡したものと」

武装中将「…っ!」


大魔術中佐「武道家は、怪我自体はなかったものの中央へ戻った後に倒れ、治療院へ送りました」

大魔術中佐「彼は魔力枯渇症。恐らく、霧の魔力地域から、急激に濃度の低い中央へ来たためにショックが起きたものと。」

大魔術中佐「…恥ずかしい事ですが、我々でなく無謀ともいえる若き冒険者によって謎の解明へ近づいたわけですね」


武装中将「…」

武装中将「今はその得られた情報を感謝し、使わせてもらおう。その情報を整理次第、すぐに対策をとる」


大魔術中佐「…承知致しました」ビシッ

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
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――――【 数時間後 治療院 待合室 】


剣士「…」

乙女格闘家「…まだ、武道家は目を覚まさない」

剣士「…」

乙女格闘家「…剣士」


剣士「…」

乙女格闘家「…剣士」

剣士「…」


乙女格闘家「武道家は、祭壇町で何かを受けて倒れたの…?」

乙女格闘家「それとも、元々何か…病気を…」

 
剣士「…」

乙女格闘家「…」

剣士「…それは」

乙女格闘家「…うん」

剣士「それは俺から言う事じゃない。あいつが目を覚ましたら…自分で聞いてくれ」

乙女格闘家「…わかった」

剣士「…」


ガチャッ…ギィィ…

治療員「…武道家さんのお友達の方ですね?」

乙女格闘家「は、はい」ガタッ

剣士「…」

 
治療員「…先ほど、武道家さんは目を覚まされました」

乙女格闘家「!」

剣士「…」

治療員「面会が可能なので、どうぞ」

乙女格闘家「は、はいっ」

剣士「…」


………
……

<●><●> 見てるやで

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 病 室 】

ガチャッ…

乙女格闘家「…武道家!」

剣士「…」


武道家「…よっ」

ダダダッ…ギュウッ…!

乙女格闘家「よ…良かったよぉ…!」グスッ

武道家「おいおい、大げさな。血を吐いて倒れただけじゃねーか」ハハハ

乙女格闘家「うぅぅ~…」ギュウッ…

 
剣士「…」


武道家「…剣士」

乙女格闘家「あっ…」ハッ

武道家「お前…俺が倒れたあと…どうなったんだ?魔道士は…」


剣士「…」

剣士「死んだろ、多分」ククッ


武道家「!」

乙女格闘家「!」


剣士「あんな場所で生きてられるわけがねぇよ。死んじまったぜ、きっと」

剣士「それとも何か、実験体にでもされて、弄ばれてもしたか?」

剣士「さぁーな!知らん知らん!はっはっは!」

 
武道家「…お前!」

乙女格闘家「剣士…何言ってるの!!」


剣士「…それより武道家、早く元気になれよ。早く依頼でも探そうぜ」

武道家「…待てや」

剣士「あ?」

武道家「お前…何言ってやがる!!」

剣士「…何が?」

武道家「何がって…!」


剣士「依頼探す気ないのか?なら、あとは勝手に仲良くやってくれ」

剣士「俺はちょっと外の空気吸ってくるわ」クルッ


武道家「…おい!待てコラァ!!」
 
ガチャッ……バタンッ!

 
武道家「こ…この…!」ググッ

乙女格闘家「ま…待って…!」ギュッ

武道家「…乙女格闘家?」

乙女格闘家「私…今、剣士と顔合わせられないよ…」グスッ

武道家「どうして…。泣いてるからか?」

乙女格闘家「違う…違うの…」

武道家「…じゃあ何で」


乙女格闘家「私、自分で自分が本当に嫌…!」

乙女格闘家「どうしよう…わ、私…」


武道家「どうしたんだ…?落ち着いて話をしてくれ…」

 
乙女格闘家「…武道家、絶対に私のこと…嫌いになる」

武道家「俺は嫌いになんかならん…言ってくれ…」


乙女格闘家「その…」

乙女格闘家「私…武道家の顔みたら、武道家が同じ立場じゃないって一瞬思っちゃったの…!」ブルッ

乙女格闘家「最低…最低だよ…」

乙女格闘家「こうして、最低だって言い聞かせて…自分を落ち着かせようとしてる自分も…!!」


武道家「…」


乙女格闘家「…こんな思いで、剣士と顔を合わせたくないの…!」
 
乙女格闘家「それもワガママで、もっと嫌になって…っ」ポロポロ

 
武道家「…乙女格闘家」

乙女格闘家「…」グスッ

武道家「…乙女格闘家」

…ギュウッ

乙女格闘家「!」


武道家「なぁに、人としてそう思っちまうのは仕方ないことだと思う…」

武道家「だけど、剣士の気持ちも痛いほど分かるし、俺だってどうしていいかわかんねぇ…」

武道家「こんな時、どうすりゃいいんだろうな…」

武道家「…立場が逆だったかもしれないのに、それも分かってるのに…」

武道家「今、俺もアイツにどんな言葉をかけていいのかわかんねぇよ…………」


乙女格闘家「うぅぅ…」

武道家「…」ギュッ…

 
乙女格闘家「魔道士ちゃん…きっと…無事だよね…」

武道家「あ、アイツが死ぬわけねぇよ!死ぬわけねぇ!!」

乙女格闘家「…っ」


武道家「魔道士…剣士…」


………
……

 
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・・・・・・・
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・・・
・・

 
――――その日、剣士は戻ってくることはなかった。

いや、その日から剣士は姿を消したのだ。

"黄金世代の卵"とも呼ばれたパーティのリーダーが行方不明になったことは瞬く間に広がった。

当然、神官や魔術賢者の耳にも入ることとなり、

回復した武道家、乙女格闘家と合流して剣士の捜索にあたるも、行方を知ることは適わなかった。


あの時、どうして追いかけなかったのか……。

その責任を感じた武道家と乙女格闘家もまた、姿を消した。


そして、それと同時期に、世界は大きく揺れ動く…………。

 
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――――【 < 数日後 >中央軍本部 】


元帥「…よく集まってくれた。これより、祭壇町における問題解決のための会議を行う」

槍士大将「…」

武装中将「…」

聖大佐「…」

大魔術中佐「…」

豪闘少佐「…」

 
元帥「本来、拳闘家少佐の参加や大戦士の参加もあっただろう」

元帥「しかし…みなの知っての通り、現在も彼らに関する情報は得られていない」


全員「…」


元帥「他に危害が及ぶ前に、改めて情報の整理を行おうと思う」


全員「…」


元帥「この度起きた地震と同時に、太陽の祭壇の町にてエルフ族の消失と支部の壊滅的被害が確認された」

元帥「その後、拳闘家少佐及び大戦士の小隊が突入。どちらも行方不明となっている」

元帥「更に、剣士率いる若き冒険者パーティが無断とはいえ、知性のある魔物の存在を知り、我々に情報を提供」

元帥「彼らは1名の犠牲者を出すも、エルフ族の仕業と考えていた我々の考えを覆すかもしれぬ情報を持ってきてくれた」

元帥「まぁそれでも、これがエルフ族の仕業ではない!と言い切れる訳ではないが」

 
槍士大将「…それで、早急に対策を練ればならないということですね」

元帥「その通りだ。全員が集まるまで、多少の時間はかかってしまったが…」

槍士大将「…元帥殿は、これからのこと、どうお考えでしょうか」

元帥「先ず、祭壇町を囲むようにして現在も閉鎖を行っているのを強化し、防衛線とするつもりだ」

槍士大将「防衛線ですか?」

元帥「本当に知性のある魔物が人を襲っていたというなら、外へ漏らすわけには絶対にいかん!」

槍士大将「…でしょうな」


元帥「その後、我々のいずれかを隊長とし、祭壇町へ本格的な"攻撃部隊"を送る」

元帥「指揮者を失う云々を言っている場合ではない」

元帥「いかに知性の高い魔物であろうが、我々を敵としたことを思い知らせてやる他はないだろう」

元帥「多少時間はかかるが、全世界にある支部から攻撃隊のメンバーを組み、祭壇町奪回戦を開始する」


全員「…」

 
聖大佐「…ちょっとお待ちください、元帥殿」スッ

元帥「なんだね」

聖大佐「その情報…。つまり、知性ある魔獣、魔物の信憑性はどうでしょうか」

元帥「何?」


聖大佐「聞けばそれは、ただの冒険者パーティから受け取った情報というじゃありませんか」

聖大佐「それが大戦士さんクラスの人間ならまだしも、ただの冒険者の情報…自分は信用しきれませんね」

聖大佐「その前に、その情報が本当か軍で人選した調査隊を組み…その確認後に行うべきです」

聖大佐「攻撃部隊1つを編成し、動かすのも、何百万という金…住民たちの血税が消費されるんですよ?」


元帥「それはだな……」


…スッ

武装中将「元帥殿、ここは自分が」

武装中将「聖大佐…この作戦及び今回の情報で動く事を決めたのは自分が思ってのこと」

武装中将「これが虚の情報だった場合、この席は空けるつもりだ」

 
聖大佐「…面白いですね。武装中将殿がその地位を賭けてまでも、その一般冒険者を信用してると」

武装中将「そうだ」ギロッ


聖大佐「…」

聖大佐「…分かりましたよ。その冒険者たちの話が本当であることを願います」


武装中将「…分かってくれて有難い」

武装中将(…剣士、魔道士、武道家、乙女格闘家…。お前たちが命を賭して得たものを決して無にはしない)


元帥「…全員、分かってもらえたようだな」

元帥「それではこれより、防衛線の確保及び前線部隊の調整に関し、話し合いを進める!」

…………
……

 
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・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
<…更にその日から数日が流れて…>

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――――【 中央都市 中央軍 依頼一般受付所 】
 

ザワザワ…ガヤガヤ…


受付嬢「続いての方、どうぞ」

傭兵「失礼する。以前紹介された依頼は完了したのだがー…」

受付嬢「では、新しい依頼表を発行致しますのでお待ちください……」

ガヤガヤ……ワイワイ…


トコトコ……

…ストンッ

冒険者A「はぁーっ…相変わらず混んでるな…」

冒険者A「待合室の椅子にすら座るのにすあ時間かかるの何とかしてくれねぇかなぁ…」

 
…ポンッ

冒険者B「ういっす!」

冒険者A「…おっ!」

冒険者B「久しぶり。やっぱりここにいたか」

冒険者A「お前、子供生まれるっつってから全然姿見せないから…冒険者辞めたのかと…」

冒険者B「はっはっは!いや何だ、ちょーっとに噂を小耳に挟んだもんでよ」

冒険者A「…噂?」


冒険者B「そうそう。お前、知らないの?」

冒険者A「おう、何だそれ」

冒険者B「実はさ、今日あたり…中央軍での一般公募が始まるらしいんだ」ボソボソ

冒険者A「何っ!?」

 
冒険者B「ばか、声がでけぇ!」

冒険者A「わ、わりぃ。なんでそんな情報…知ってるんだ?」ボソボソ

冒険者B「本当に何も知らないんだな」

冒険者A「…うるせーよ。で、何でだ?」

冒険者B「少し前に、あの成果あげまくってたパーティが解体っつーか…行方不明になったのは知ってるだろ?」

冒険者A「あぁ」


冒険者B「実はそれは、中央軍に深く関係した事案に触れちまって、その問題に巻き込まれたとかっつー話でな」

冒険者B「その事案がすげー面倒で、一般の冒険者からも軍への応援要請として募集がかかるかもしれないんだと」


冒険者A「…へぇ!でも、何でその情報をお前が?」

冒険者B「身内に中央軍の人間がいてさ、そいつの話だから信憑性は高いわけで」

冒険者A「いいじゃん…。それが本当なら、俺も今日志願するぞ?」

 
冒険者B「あたりまえじゃねえか!給金はあるし、万々歳だ」

冒険者A「…いつ出るのかなー。本当ならめっちゃ喜ぶんだけど」

冒険者B「信用しろよ…」


ガチャッ…ギィィ…

ドタドタドタ…!!


冒険者A「…あ?」

冒険者B「なんか妙に騒がしい…って!今入ってきた奴、ありゃ中央軍のお偉いさんの制服だぞ!」

冒険者A「何!?ってことはまさか…!」


中央軍人「…みなのもの、静かにしろ!これより、中央軍からの発表がある!」

冒険者A「…!」

冒険者B「…!」

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

―――この情報は、中央軍が一部の人間へ流した噂だった。

中央軍は、少しでも戦闘力を確保する為、一般の冒険者から改めて軍の補強を行う策を出したのだ。

全て元帥と武装中将の考えの中で半ば強行的に進められた策に、内部からの反発の声も少なくなかった。

…しかし。

既に拳闘家および大戦士の率いた2つの戦闘部隊を失っていた軍は、その補強を受け入れざるを得なかった。

その後、軍へと入隊した冒険者たちは何も知らぬまま、東方大陸の防衛線へと配置される。


そして、配置の完了と、中央軍の"攻撃部隊"の形成が完了する頃には、1か月がたっていた。


その間、中央軍は注意深く相手の動きを探っていたが、

東方祭壇町を含め、世界は何事もなく…ただ静かに時間は過ぎた。

そう…静かに。ただ、静かに。不気味な程に……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
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・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 そして 中央都市の路地裏 】

…バキィッ!!

盗人「がっ…!」

…ドサッ


???A「…ったく、逃げ足ばっか早い盗人だぜ。面倒くせーっつーの」ハァ

???B「あのね、これは依頼なんだからしっかりしろって」

???A「こんな安っぽい依頼受けてたって仕方ねーだろ」

???B「…こういうところからの積み重ねが大事だっての」

???A「そう言うがな、その言葉を言い続けてもう3年目だぜ?」

 
盗人「ぐっ…!」ブルブル
 
盗人「て…てめぇら…一体何もんだ…!」
 

剣豪(豪剣士)「…冒険黄金時代を飾る未来の卵、"剣豪"とは俺のことだ。こいつは"戦士"、俺の勇敢なる仲間さ」

戦士(少戦士)「はいはい。っつーか、盗人に豪語するのは恥ずかしいからヤメてくれないか」


盗人「…てめぇら…覚えとけよ…!」

剣豪「うるせえよ。いいから寝てろ」

ブンッ…バキッ!!

…ドサッ!

……

本日はここまでです。
慌しく時間が進み、ごちゃごちゃしつつもありましたが、
お付き合いいただきました方々、有難うございます。

>>767 ありがとやで。

それでは、失礼致します。

魔道士「くっ、殺せ!」

オーク (剣士には勝てなかったよ)

この展開が頭をよぎった

皆さま有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 カフェ 】 

…グビッ

剣豪「ったく、本当にショボい依頼ばっかで腹の足しにすらなりゃしねぇ」

戦士「…だから先月に募集された中央軍へ志願すれば良かったって言ったじゃないか」

剣豪「バカ野郎、剣士先ぱ…剣士が軍へ入らなかったのにどうして俺らが」

戦士「あのな…」

剣豪「別に、剣士に感化されて名前変えたわけじゃねーからな」

戦士「何も言ってないだろう」

 
剣豪「…」

戦士「…」


剣豪「剣士たち、どこ行ったんだろうな」ハァ

戦士「行方不明…か」

剣豪「大戦士もあの地震の日から学校に戻ってないみたいだし…嫌な予感がするぜ」

戦士「おいこら"大戦士師匠"または、"大戦士さん"と呼べ」

剣豪「あの人がいなくなってから、すぐに剣士たちが消えたと聞く。何か関係がありそうだが…」

戦士「話聞けよ。軍の緊急志願兵の募集にしろ、何か動いているのは確かだと分かるんだけどな…」

剣豪「…」

戦士「…」

 
ゴゴッ…ミシミシミシ…

剣豪「!」

戦士「!」

ゴゴゴゴ…カタカタ……

剣豪「…」

戦士「…」

カタカタ…カタ……

……


剣豪「…収まったか」


戦士「最近、地震が本当にひどくないか…。前々から地震はあったが…」

戦士「あの日から微震とはいえ、より酷くなった気がする…」

 
剣豪「…余震ってやつじゃないのか?」

戦士「あー…まぁそうかもしんないけど」

剣豪「何か感じてるとでも?」

戦士「いや…」

剣豪「…」

戦士「…」


コツコツコツ…カチャッ

店員「お待たせいたしました、ご注文のコーヒーになります」


戦士「ん…。お前頼んだ?」

剣豪「いや。つーか俺はもう、飲んでるし」グビッ

戦士「だよな。だって、お姉さん」

 
店員「あ、あれっ…」

店員「……あっ!も、申し訳ございません、お隣のお客様でした!」


戦士「あぁ、いえいえ」

店員「し、失礼致します!」ペコッ

カチャカチャ……

戦士「…」

剣豪「…」


トコトコ…スッ

店員「…申し訳ございませんでした。ご注文のコーヒーになります」

???「有難うございます」

店員「それでは、ごゆっくり」ペコッ

タッタッタッタッ……

 
戦士「…」

剣豪「…」

戦士「…あれ?」ハッ

剣豪「どうした?」

戦士「今の声…どこかで聞いたことあるような……」ガタッ

剣豪「おい、どうした」


トコトコ…ポンッ

戦士「あの…すいません」

???「はい、なんでしょうか」クルッ


戦士「あの、もしかして貴方、どこかでー…」

戦士「……って!」


剣豪「…あっ?」

???「あっ!」

 
戦士「もしかして…!そ、僧侶先輩……ですよね!?」

神官「も、もしかして君たち…少戦士と豪剣士!?」

剣豪「…」ペコッ


戦士「お、お久しぶりです!」

神官「い、いや本当に…。どうしたの?こんな所で」

戦士「それはこっちのセリフで…!」

神官「いやいや、僕はこの近くの教会で働いてるからね」

戦士「あ、そうなんですか」

神官「うん」

戦士「…って、そんな話じゃなくて!僧侶さんなら、あの人らの行方知ってますよね!?」

神官「あの人ら?」

 
戦士「はい…」

剣豪「…」

戦士「あの方たちです…」


神官「…」

神官「あぁ、そういうことか」

神官「剣士くんや大戦士先生のこと…だね」


………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

戦士「…そうですか」

剣豪「やはり…」


神官「僕も剣士くんを探したけど、手掛かりすら見つからなかった」

神官「…そもそも僕は、剣士くんが何をしたのかすら聞いてないんだよ」


戦士「教えて貰えなかったんですか?」

神官「教えて貰わなかったというより、聞かなかったっていうほうが正しいかな」

戦士「どういうことです?」

 
神官「…聞くに聞けない雰囲気だったんだ」

戦士「…」

剣豪「…」


神官「本当なら、僕は今も剣士くんを探したいと思ってる」

神官「だけど仕事がある以上、抜けるに抜けられないんだよ……」


戦士「…そうですよね」

剣豪「いなくなったのは剣士だけなのか?」


神官「…いや。少しして武道家くんや乙女格闘家さんの姿も見えなくなった」

神官「何かよっぽどな事があったみたいで…」

 
剣豪「…それじゃあ、噂は本当だったのか」

神官「噂?」


戦士「剣士先輩がいなくなった後、すぐにそのパーティ全員が姿を消したって話です」

神官「…そんなことまで冒険者の間で噂に?」

戦士「そりゃ第一線で活躍し、現役世代じゃ世界で一番成果をあげてたパーティといっても過言じゃなかったですからね」

神官「…」

戦士「他の人の行方も知らないんですか?」


神官「最後にあったのは1か月前。剣士くんが消えて、一緒に捜したんだけど…。」

神官「武道家くんたちも消えたのは、それからすぐだったかな」


戦士「…」

戦士「そ、そうだ!魔道士さんは!魔道士さんはどうしたんです?」

 
神官「!」


戦士「剣士先輩、魔道士さん、武道家先輩と乙女格闘家先輩のパーティでしたよね?」

戦士「消えたのが剣士先輩だけなら、魔道士さんは3人と一緒に姿を消したんですか?」


神官「…っ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
神官「武道家くん…魔道士さんはどうしたの?」

武道家「…正直、生きてるか分からない。いや…正直言えば…もう……」

神官「えっ…?」

乙女格闘家「…」ブルッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

戦士「…僧侶先輩?」

神官「…あっ」ハッ

 
戦士「魔道士さんは…どうしたんですか?」

神官「あ…。あー…えっと…」

戦士「剣士先輩の"幼馴染"だし、一緒に愛の逃避行でもしたんですかね?なーんて…」

神官「…え?」

戦士「え?」


神官(剣士くんの幼馴染は武道家くんなんだけど…)

神官(何か間違って学生時代から覚えてたのかな。でもこの場合…こっちのほうが…)


戦士「…?」

神官「えっと…!う、うん。そうみたいだよ」

戦士「!」

神官「だから、武道家くんと乙女格闘家さんで探してたー…とか…うん」

 
戦士「…そうだったのか。じゃあ、剣士さんは魔道士さんと逃避行を…?」

剣豪「…んだよ!それ!」ガタッ

戦士「ん?」

剣豪「結局、恋愛に溺れて平和な暮らし…冒険者の道から逃げたってことなのか…?」イラッ

戦士「バカお前、剣士さんに限ってそんなこと…!」


神官「剣豪…!違うっ!それは違うっ!!」バッ!

戦士「!」

剣豪「!」


神官「あ…。い、いや、違うと思うよ。きっと、そうなる事情があったんだと思う」

神官「彼らが何があっても逃げる人じゃないって…君たちもよく知ってるはずだよね」


戦士「…は、はい」

剣豪「…」

 
戦士「…」

剣豪「…」 
 
神官「…」


戦士「…そっか。そうだよな」

剣豪「まぁ…そうか」


神官「うん。それにさ、剣士くんたちのことだし…」

神官「そのうち、いつの間にかひょっこり現れて…世界で暴れるかもしれないよ」アハハ


戦士「ははっ、違いないですね!」

剣豪「くく…」


神官「…ま、僕は今日はこれで失礼するよ」

神官「いま僕は、この中央都市の郊外にある教会にいるからさ…。何かあったら訪ねてきてね」ニコッ

 
戦士「…ありがとうございます!」ペコッ

剣豪「どうも」ペコッ


神官「じゃ、これで失礼。またね」

戦士「…はいっ」

剣豪「…了解」


…………
……

 
ザッザッザッザッ………

神官(…剣士くん、どこに行ったんだよ…)

神官(君を心配している人は沢山いるんだよ……!)

神官(剣士くん、武道家くん、魔道士さん、乙女格闘家さん…!)

神官(…ッ)


神官(剣士くんのパーティは、ここで終わりなの?)

神官(まだ…終わりじゃないでしょ…!)

神官(……剣士っ…!)

…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 2日後 夜 山奥村 】

…ギシッ

剣豪「…せめぇよ!!」ゲシッ!

戦士「いっ!」

…ドスンッ!!ゴロゴロ!

戦士「いって!」


剣豪「なんで男二人でせめぇベッドで休まねぇといけねぇんだよ!」

戦士「この村で唯一取れた宿に文句いうんじゃないっつーの!」

剣豪「だったらオメーは床で寝てろ!」

戦士「うおい!」

 
剣豪「…ったく、次の依頼だと聞けば、こんな田舎でただの狼退治とは…!」

戦士「仕方ねーだろ!」

剣豪「お前はもっとまともな依頼をとってこれねえのかよ!」

戦士「あのな…!お前がこういう下積みの依頼を断り続けた結果だろうが」

剣豪「…分かってるっつーの!」

戦士「じゃあ言うなよ!」


剣豪「…ッ」プルプル

剣豪「…寝る!」


戦士「おやすみ!」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 付近の森の中 】


ホウ…ホウ…チチチ……


戦士「…ったく」

戦士「結局俺が追い出されてるんじゃないか…」ポリポリ

戦士「まぁ前回の依頼はアイツがクリアしたようなもんだし…許してやるか」ハァ

戦士「…」

サァァッ……ッ

戦士「…月が、綺麗だ」

ソヨソヨ……

 
戦士「…」

戦士「…はぁ」

戦士「…師匠、剣士先輩…武道家先輩……」

戦士「一体どこへ…行ったんですか…」

戦士「魔道士さん…」

戦士「…っ」

ヒュウウウッ……


戦士「…自由であるこそ、冒険者であるとは言いますけど」

戦士「何も言わず突然と、目標の三人が消えてしまったら…俺は…!」

戦士「…っ」

 
サァァ…!フッ……

戦士「…っと」

戦士「月明かりも雲の中へ消えちまった…か。暗闇は好きじゃないんだけどね」

戦士「…」
 

…ガサッ


戦士「…むっ」ピクッ

ガサガサッ…!

戦士(誰かいる…?)

戦士「…」

戦士「…そこの茂み!隠れてるようだが、誰かいるな!」

…シーン 
  
戦士「…おい、いるのは分かってるぞ。それとも魔獣か?」

戦士「人間ならば、出てこい!出てこないのなら、こちらから仕掛けるぞ!」

…シーン

 
戦士「…」

戦士「…仕方ない。忠告はしたからな!」チャキッ

戦士(とはいえ、本当に人ならば困る。威力も抑え…)

戦士「いくぞ!」ダッ!

ダダダダッ…!!

戦士「…小斬っ!!」ビュンッ!!


…ガキィンッ!!


戦士「うあっ!?」

クルクルクル…ザシュッ!

 
戦士「なっ…!俺の武器が一撃で弾き飛ばされ……」ビリビリ

???「…甘いな」

戦士「言葉…!人か!くそっ、武器を…!」バッ!

???「小火炎魔法っ!」パァッ

…ボォンッ!!

戦士「!」

ズザザザァ……


???「…武器を飛ばされた時点で、お前の負けだ。拾う間に切り捨ててやろうか?」

戦士「何だと!」

???「攻撃を仕掛けるほうが負けてどうする。見えぬ相手に手を抜くのはどうかと思うがな?」

戦士「…くっ!」

 
???「…」

戦士「…何者だ!俺を狙ってきたか!?」

???「…」

戦士(月が隠れたせいで、姿が見えない…。だが、声は男……)


???「…まぁ気にするな。それよりお前は…戦士で間違いないな」

戦士「…やはり貴様、俺を狙って…」

???「あぁ…違う違う。話を聞け…」

戦士「何?」

???「お前に大事な話がある」

戦士「話だと…?その前に貴様は何者だ!それを名乗れ!」

???「…」

戦士「…何故、黙る!」

 
???「…時間もない」

戦士「何?」

???「時間もないんだ。いいか、聞け」

戦士「…その前に、お前が何者か教えて貰おうか。姿も見せない以上、信用は出来ない」

???「…ダメだ」

戦士「…?」

???「そちらからは…もう…」

戦士「何を…言っている?」


???「いいか、今すぐ西方…星降町へ急げ」

戦士「…何?」

???「あそこに…塔の…霧と……」


戦士「一体何を…!」

戦士「…むっ」ピクッ

 
…サァァァ……ッ


戦士(…月明かりが再び出たか…!これで奴の姿を…!)

戦士(…)

戦士(…え?)ピクッ

戦士(……えっ…あっ!!あぁっ!?)

戦士「あ、あぁ・・・貴方はっっ!?」



大戦士「…聞こえたか。いいな…?」



戦士「だ…大戦士…師匠っ!?な、なぜココにっ!!」

大戦士「…いいな。頼んだぞ」

戦士「し、師匠っ!!!」ダッ!

大戦士「まだ…助かる間に……」スゥッ

戦士「…き、消え…!?ま、待ってください!師匠っっ!!」ダッ!

 
大戦士「…」

…スゥッ……シュンッ…


戦士「っ!?」

戦士「き、消えた…!?」

戦士「し、師匠っ!!どこですか、師匠ぉぉっ!!」

オォォォ…………

………

ホウ…ホウ……

ソヨソヨ…サァァッ………


戦士「…っ」

戦士「…大戦士師匠~~っ!!!」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日 】


戦士「…」

戦士「…」

…パチッ

戦士「…っ!?」ガバッ

戦士「…」

戦士「あ…。い、いつの間にか山の中だというのに、寝ていたのか…」

 
チュンチュン…

戦士「…」

戦士「全て、夢か…。大戦士師匠……」ギリッ

戦士「…」

戦士「…ん」ピクッ


…キラッ


戦士「あれは…俺の武器…」

戦士「夢の中で…大戦士師匠に吹き飛ばされて…地面へ…」

 
戦士「…」

戦士「…」

戦士「…まさか!」

戦士「夢じゃ…なかった……!?」


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 山奥村 宿 】

ダダダダッ!!バキッ…トゴ゙ォンッ!!

剣豪「!?」

戦士「あ、起きてたか!」

剣豪「そりゃな…。それよりお前、一晩ずっと外に…。つーかドアぶっ壊し…」

戦士「それどころじゃねえよ!」

剣豪「あ?」

戦士「いいから…行くぞ!ほら、早く!」

 
剣豪「おいおい、落ち着けよ…んだっつーんだよ」

戦士「落ち着いていられるかよ!早く出発だ!」

剣豪「…どこに行くっつーんだ?」

戦士「西方大陸の更に遥か西の丘……星降町だ!」

剣豪「…はぁ?」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 馬車の中 】

パカッ…パカッ……


戦士「…最短ルートの海を渡っていく金がなかった」

剣豪「で、大きく外回りをする馬車のコースかよ」

戦士「急いで来てほしいっつってたのに…」

剣豪「大戦士が来てほしいっていう声をねぇ…。夢だろそんなん」

戦士「だから、夢じゃないんだって!」

剣豪「夢じゃないなら、幻覚じゃねえのか」

戦士「…現実だっつーの!」

 
剣豪「お前さ…。そんな夢の話で、なけなしの金使ってさ…」

剣豪「そんな遠くの星降町とか行くっつーのは…分かってんだろうな」


戦士「あぁ?」

剣豪「行き倒れになるかもしれんぞ。まともな飯すら買う金が尽きてるんだからな」

戦士「…そこはそこで仕事があるだろう」

剣豪「…」

戦士「…」


剣豪「はいはい。んじゃちょっと気になった事があるんだが…いいか?」

戦士「おう、なんだ」


剣豪「お前の話が、もし。もーしーもー…本当だとしよう」

剣豪「…何でわざわざお前をそこへ呼ぶ?つか、姿が消えただのなんだの、意味が分からないんだよ」

 
戦士「…そ、そりゃあ…俺が弟子だから…」

剣豪「何かあった虫の知らせとか、色々あるのは理解できっけど、そんな事態なら剣士を呼ばないか?」

戦士「うぐっ…」

剣豪「…お前に助けを呼ぶなんて、普通ないだろ」

戦士「それが仲間にかける言葉かよ。泣くぞ」

剣豪「泣け泣け」

戦士「あのな…」


剣豪「…」

剣豪「…それとも、剣士に伝えれない状況とか…か?」


戦士「!」

 
剣豪「何にせよ、大戦士がそこいて、もう1度会えたらそりゃ嬉しいことだ」

剣豪「だけど呼ぶってことは、何かしらの理由がある」

剣豪「わざわざ星降町へお前を呼ぶか?」

剣豪「俺らが稼いでいないのを知ってるのに…こんな遠くに普通、呼ぶか?」

剣豪「つまり、大戦士が動けない理由が何か…あるかもしれない」


戦士「…そうか」

戦士「軍の転移装置を使えば中央都市とかで待ってるのが普通だろうし……」


剣豪「だろ?俺らが稼いでないの知ってて、こんな遠距離を歩かせて…」

剣豪「…全く、嫌な予感しかしねぇぞ」

 
戦士「…何があるんだろうな」

剣豪「"もしも"お前の話が本当だったら、な」

戦士「そこは信じろよ…」

剣豪「…まぁ、ちょっとした長旅になるし…俺は寝る」カクンッ

戦士「へいへい」


剣豪「…大戦士さんに何事もなけりゃいいけどな」ボソッ

戦士「ん?」

剣豪「…何でもねぇよ」

戦士「…そうか」


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
それから数日後。

時間を要したものの、彼らは"星降町"へと辿り着く。


道中、文句を言いながらも剣豪は戦士と同じように大戦士の言葉を信じていた。

戦士が思った以上に言葉の意味を深く考え、何が待ち受けるかも分からぬ土地に、覚悟を決めていた。


だが……

本日はここまでです。有難うございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 星 降 町 】


ザワザワ…ガヤガヤ…

旅行者たち「…♪」

旅行者たち「わーい!綺麗~!」

ワイワイ…!!


剣豪「…」

戦士「…」

剣豪「…すげぇ、人多いんだけど。何これ、こんな場所に大戦士がいるのか」

戦士「丘が多くて、山沿いだから田舎町だと思ってたら…」

 
…ザワザワ

旅行者A「今日も楽しみだねー♪」

旅行者B「うんうん。世界で一番星が美しく見える丘…ロマンチック~♪」

旅行者A「宿も凄く綺麗だったし、流星群見られるかなぁ♪」

旅行者B「見たいねぇ♪」


剣豪「……立派な観光地じゃねぇかよ!!」

戦士「は…はは…」

剣豪「何、大戦士アホになったの?観光一緒にするために、わざわざ呼び出したの?」

戦士「ど、どうでしょう…」

剣豪「やっぱりお前の幻覚だったんだろ…。金もなしに観光地に来てどうすんだよ…」ハァァ

 
戦士「…で、でも!どこかに何かあるかもしれねぇだろ!」

剣豪「ど、こ、に、だ」

戦士「…」

剣豪「…」


戦士「と、とりあえず!軍の支部に何か変わった現状がないか聞いてみようぜ!」

戦士「出発出発!おい、行くぞ!」


剣豪「…」

 
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 星降町 中央軍支部 】


星降兵「…問題は特に起きていない」

戦士「さ、さいですか」


星降兵「見たところ、冒険者か」

星降兵「残念ながら、この町で一般への依頼配布は行わないようにしている」

星降兵「見ての通りココは観光地として有名で、問題も少なくはない」

星降兵「その為、我々軍が観光客同士の小さなケンカをも含む、些細な問題も解決にあたっている」

星降兵「冒険者の休息のため、町興しをしているほどだ」

 
戦士「そ、そうすか…」

戦士「…」チラッ


剣豪「…どうすんだよ」

戦士「は、はは」


剣豪「はは、じゃねえよ!何だ、大戦士がココで休息でもとってんのか!?」

戦士「い、いや~…。そ、そうなのかも?あはは…」

剣豪「そんなわけねぇだろうが!!」

戦士「うぅ…」

剣豪「もしかして、お前がここに来たかっただけじゃねえのか!」

戦士「い、いやそれはないっつーの!そもそも、こんな町があるなんて知らなかったし!」

 
星降兵「おいおい、ここで暴れるのはよせ!」

星降兵「…」

星降兵「…ん?」

星降兵「まてお前たち。今、大戦士と言ったか?」


戦士「あ、は…はぁ。一応…」

星降兵「大戦士…いや、大戦士殿とお知り合いか?」

戦士「お知り合いっていうか、俺は大戦士の弟子で…」

星降兵「で、弟子!?」

戦士「えぇ。数年前までは一緒に世界を旅していました」


星降兵「…」

星降兵「そういえば大戦士殿は引退してから、孤児と旅をしたと聞いた事があるが…」

 
戦士「…そんな噂が」

剣豪「お前、意外と有名人な」

戦士「俺っていうか、大戦士師匠のほうに俺がくっ付いているだけじゃないか」

剣豪「コバンザメ」

戦士「…怒るぞ」


星降兵「…」

星降兵「…まぁ、それはいい。とにかくココで暴れることは許さん」


戦士「あ、はい…」

剣豪「うい」

 
戦士「じゃあどうするかなぁ…」

剣豪「…大戦士の情報、まずは集めるしかねぇだろ。お前が本当に"ここにいる"っていうならな」

戦士「ぜってぇ見つけてやる」


星降兵「…いないと思うぞ」ボソッ


戦士「えっ」

剣豪「は?」


星降兵「いや何、この町の規律を守る支部には、様々情報が自然と集まってくるんだ」

星降兵「大戦士殿がこの町へ来ていたら、そりゃすぐに広まるだろうし」


戦士「そ、そうなんですか」

戦士「…」

戦士「…」チラッ

 
剣豪「…殴っていいか?」

戦士「謝るから。謝るから!」
 
 
星降兵「まぁ…だがしかし。」

星降兵「お主が本当にあの方の弟子で、この町に大戦士殿がいるというのなら…いるのかもしれん」


戦士「で、ですよね!」ガバッ!

星降兵「う、うむ。だがな、あの方がここへ来て何をするのか…」

戦士「あー…」


星降兵「そもそも…さっき言った通り、宿やどこかへ現れた話は聞いていない」

星降兵「もしかすると…あちら側へ行ってるのかもしれんが…」


戦士「…あちら側?」

星降兵「我々の管轄は、この町と星の見える丘の周辺までだ。それで…あそこに巨大な山があるだろう?」スッ

戦士「んー…まぁ」ジー

 
星降兵「あそこの山林および山間部は管轄外でな」

星降兵「あそこの周辺は、基本的に我々は干渉しない地域なんだ」


戦士「なぜです?」


星降兵「ココからでは分からないが、あそこは獣道や平地が多くて…」

星降兵「その道を進むと、エルフ族の住む地区へと続いているので、こちらではなく別の支部の管轄となる」

星降兵「まぁそもそも魔獣が多く、支部の面子でも手を焼く故に干渉はしない方針なのだが。」

星降兵「それでもたまに魔獣が降りて来ることはあるし、その時は対処せねばならんがな」

星降兵「しかも最近は、雲というか霧がかかっていて…より危険で…」

星降兵「あそこへ近づく者はいなくなっている」


戦士「…その山部で、泊まれるような場所はあります?」

星降兵「間に広い平地はあり、キャンプをはるには丁度いいとは思うが、魔獣も多いし、今は霧も出るし…」

戦士「…行ってきます」ダッ!

星降兵「お、おい!?」

 
剣豪「まぁ言うと思ったがな。大丈夫、心配ないって」

星降兵「心配ないって…お前ら!」


剣豪「あー…。これでも俺も実は、あの"大戦士さん"に学生時代教えてもらってたんだよ」

剣豪「じゃ、俺も行くんでまた」ダッ

タッタッタッタッタッ………!!

…………


星降兵「な、なんと…まさか…」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数時間後 星降町の山間部の平野 】

ヒュウウッ……


剣豪「ここが平野ね…」

戦士「本当に山沿いに、広い平野が…」

剣豪「それにあの軍兵の言った通り、さっきから獣の臭いがプンプンするぜ」ツンッ

戦士「確かに大戦士師匠がいるとしたら、ここだろうけど…」


剣豪「あの人なら獣食って生きてそうだが、この広さから探すのは骨が折れるぞ?」

戦士「んー…」

 
モワッ…ヒュウウッ……

剣豪「…本当に向こう側から霧がかかってやがる…。視界わりぃなー…」

剣豪「こんな中で捜すのかよ…」


戦士「…捜そうぜ」

剣豪「…」

戦士「…」

剣豪「お前、あとでうめぇ飯奢れよ。ぜってぇだからな」

戦士「…それくらいでいいのなら」ニカッ


………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

モワモワ…ムワッ…

…ヒュウウ……

 
剣豪「…視界悪いわ、獣の臭いするわ、最悪だぜ…クソッ!」

戦士「人の気配がしねぇなぁ…」

剣豪「そりゃいるわけねーだろうが!」

戦士「それに…」チラッ

剣豪「あ?」

 
戦士「この霧…少し変じゃないか」

…モワッ

剣豪「何が」

戦士「霧っていうかモヤ?いや一緒か。何かコレ、水滴が付かないし…フワフワするぞ」

剣豪「あぁ…確かに。なんか浮ついた感じがするな」

戦士「この土地の特質か何かなのか?」

剣豪「いやしらねえよ」

戦士「ですよね」


ザッザッザッザッ…


剣豪「…」

戦士「…」

 
ザッザッザッ…
 
剣豪「…なぁ」

戦士「ん?」

剣豪「冒険者って一体、何なんだろうな」

戦士「…はぁ?」

剣豪「確かに、この世界には秘境や歴史の遺産は残されてる」

戦士「おう」


剣豪「だが、それを取り仕切るのは所詮、中央軍…。つまり、政府だ」

剣豪「俺ら一般冒険者は、その中でいいように使われ、自由に見せているだけの不自由な世界に生きてる気がするんだ」


戦士「…」

 
剣豪「確かに冒険者は、世界を自由に走り回る」

剣豪「だけどそれは軍の規制の中であり、最近ますます厳しくなってきた」

剣豪「東方側の一部区間じゃ、軍による閉鎖も行われてるらしいじゃないか」

剣豪「まぁ確かに剣士みたく強ければ、自由も利くだろう」

剣豪「だが、事実…酷い扱いの冒険者もいる。軍の規制のせいもあるし、色々理由はあるんだろうが…」


戦士「…」

戦士「そりゃ仕方ないだろうよ…。」

戦士「その規制がなかった時代、冒険者の横暴や事故死が極端に多かったわけだろ?」

戦士「確かにやりすぎかもしれないが、犯罪を犯す同業者が減り、生きるチャンスが増えたってことさ」


剣豪「…まぁ、そうだが」

戦士「だろ?」

 
剣豪「…ふむ、そうか」

剣豪「人が生きるこの世界じゃ、真の自由…真の冒険者っていうのはいないのかもしれねぇな…」


戦士「はは、なんか哲学的だ」

剣豪「思った事を言っただけだ。大体合ってるだろ?」

戦士「まぁ」


ザッザッザッ……


戦士「…」

剣豪「…」

 
ヒュウウッ……ムワッ……
 
戦士「…」ピクッ

剣豪「…」ピクッ

戦士「…血の臭い」ボソッ


…スッ

戦士「…この臭い、遠くはない」チャキッ

剣豪「魔獣か?」チャキッ

戦士「分からん。幸いこっちは風下…チャンスは得ている」

ヒュウッ…


剣豪「鼻の効く相手なら、すでに俺らは襲われていたってか」

戦士「…足音を殺しながら近づこう。音に敏感な相手でも困る」

 
ソロソロ……

剣豪「…」

戦士「…」

剣豪「…」

戦士「…」


モワッ……


剣豪(ちっ…霧のせいで視界が悪い。速攻は俺のほうが上だろうが、感覚的なモノはこいつに勝てん)

剣豪(一旦後ろにまわるか…)スッ


戦士(相手への反応は剣豪のほうが早いだろうが、いかんせんコイツは鈍いからな…)

戦士(…一旦俺が前に出る。出来るだけ感覚を研ぎ澄まして、剣豪に先制をとらせたいが…)

 
剣豪「…」

戦士「…」

ソロソロ……モワッ…


剣豪(くそっ…霧がうぜぇ。鼻に血の臭いが鬱陶しい)ツンッ

戦士(霧の中での目視は無駄だ。血の臭いがひどくて鼻も効かん。とにかく気配を読まねば…)ツンッ

剣豪(…戦士なら、この状況の中でも相手を見つけられるだろうが…)

戦士(…この状況でも、俺なら相手は大体把握できる。だが…)


剣豪(いくら俺でも、霧の中の見えざる敵に、突っ込んでやられてしまう可能性がある…)

戦士(いくら剣豪でも、霧の中の見えざる敵に、突っ込んでやられてしまう可能性がある…)

 
ソロソロ…ツンッ…

戦士(…血の臭いは消えない。恐らく相手は目の前…。だが、霧で目視が出来ない…!)

戦士(いっそのこと、ある程度の魔法で吹き飛ばすか?)

戦士(いや…相手の数が分からない以上、どうにも動けない…)


…ポンポンッ

戦士(ん?)

剣豪(…戦士、まだなのか)ギロッ

戦士(…もう少し待て…まだだ)

ソロソロ…


戦士(…)

戦士(…)

戦士(……!)ピクッ

…バッ!

 
剣豪(いるのか…?)

戦士(…)コクン

剣豪(出るか?)チョイチョイ

戦士(ダメだ。まだ相手の数も、種類も分かっていない)ブンブン

剣豪(どうする?)チラッ

戦士(相手が動くのを待つ)チラッ


剣豪(…)

剣豪(…)コクン

剣豪(分かった、突撃だな)チャキッ

 
戦士(!?)

本日は短めですが、ここまでです。有難うございました。

皆さま有難うございます。
本日、いつもの時間より遅れましたが投下致します。

 
剣豪(…俺に任せろ!)ダッ!

戦士(ちょちょちょっ!全然分かってねぇぇ!)

ダダダダッ…!! 

戦士(く、くそっ!えぇい、俺も突っ込んじまえ!!)ダッ!!

ダダダダッ…!! 
 

剣豪(…むっ!)

…スウッ

???「…」

剣豪(霧の中に影…!敵だな!?うおおおっ!)

バッ…ブォンッ!!

戦士(あぁぁ、もう!!俺もやってやらぁ!!)

バッ…ブォンッ!!

 
ガガガッ!!ガキィンッ!!キキキィンッ!!!

剣豪「!」

戦士「!」


???「…び、びっくりする…!なんだ!」ググッ


剣豪「俺の一撃を止めやがったって…人か!?」

戦士「人…だが、俺らの一撃を受け止めた…!?」


???「君らは…人間か!?なぜここに…!」


剣豪「…ぐっ…!お前も人だろ?」ググッ

男エルフ「いや、俺はエルフ族だ」グググッ…


剣豪「…何っ!?」

戦士「エルフ族!?」

 
男エルフ「…この殺気と攻撃は、敵意を持ってやった事なのかな」ググッ

剣豪「あ、いや…魔獣か何かかと…」

男エルフ「なら俺には敵意はない。武器をしまってくれないか」

剣豪「…すまん」

…スッ

男エルフ「ありがとう」


戦士「なぜ…エルフ族がここに…?」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ベリベリッ…ドシャアッ…

男エルフ「ふぅ、手伝ってくれて助かったよ。一人じゃこの皮を剥ぐのは大変だったんだ」

剣豪「なるほどな。血の臭いは、アンタがこの巨大魔獣を倒したからだったのか」

戦士「こんな相手がこの平野になぁ…」


巨大魔獣『…』


男エルフ「…ところで、君たちはどうしてここに?」

剣豪「それはこっちのセリフだ。エルフ族がいるような場所じゃないだろう」

男エルフ「…」

 
戦士「剣豪、最初からケンカ腰になるな。俺の名前は戦士。こいつは剣豪だ。あなたの名前は?」

ハンター(男エルフ)「…適当でいいんだがな。そうだな…ハンターでどうだ」

戦士「分かった、ハンターだな」

剣豪「…」

ハンター「うん、よろしく」 
 
 
戦士「えと…じゃあ、襲撃してしまったしたお詫びと言っちゃなんだけど」

戦士「なぜ俺らがここにいるか、先に教えようと思う。俺らは人を探しているんだ」


ハンター「人?」


戦士「…うむ」

 
ハンター「…こんな場所には、人間はいないぞ」

ハンター「早く帰るといい。見たところ…冒険者か何かだろう」


戦士「…ここまで来たのには理由があるんだ。そう簡単に戻れるものじゃない」

ハンター「…」

戦士「今度はこっちが聞きたい。ハンターはなぜここに?エルフ族はこの山の向こう側じゃないのか?」


ハンター「それは…」

ハンター「…」

ハンター「…言えない」


剣豪「おいおい、フェアじゃないだろう。教えろよ」ズイッ

戦士「ま、待て…落ち着け」

 
ハンター「…たまたま魔獣を追いかけていたらココにいたということにしてくれ」

剣豪「してくれってなんだよ。してくれって」

ハンター「すまん…言えるものじゃないんだ」

剣豪「どういうことだよ」

ハンター「…とにかくココから離れて、町のほうに戻れ。ここは危ない」

剣豪「…納得いかねえだろ!」


戦士「ま、待て待て。どうしても理由が言えない事があるのかもしれないだろ」

剣豪「だけどよ…」


ハンター「…すまないな。そういってもらえると助かる」

 
戦士「いや、いい。だけど俺とて、ここから離れるわけにはいかないんだ」

ハンター「…」

戦士「理由は言いたくないなら、無理やりは聞かない。だけどその代わり、情報があったら教えてほしい」

ハンター「情報?」


戦士「この近くでキャンプをした痕跡や、魔獣、魔物類が斬撃された跡とかは見なかったか?」

戦士「…それは、俺の師匠がやったことかもしれないんだ」


ハンター「いや、見ていない」

戦士「……そうか。…有難う」

ハンター「力になれなくてすまないな」

戦士「いや、いいんだ…」

ハンター「とにかく…俺は何も知らない。早く霧の外へ抜けるといい」

 
剣豪「…」
 
剣豪「…あ?」ピクッ

剣豪「おい、ハンター。ちょっと待て」


ハンター「何だ?」

剣豪「…"霧の外へ抜けろ"ってどういうことだ」

ハンター「…あっ」ハッ

剣豪「おぉ?どうした…意味あり気だな。この霧の中に何かあるみてぇじゃねぇか」

ハンター「い、いや!何でもない!」

剣豪「…慌ててるな?」

ハンター「いや…!」


剣豪「正直に言えよ。この霧の中に何がある。この霧は一体なんだ?」

剣豪「それと、本当に他の人間はいないのか怪しくなってきたな?」

 
ハンター「し、知らん!」

剣豪「そこまでで知らないわけがないだろう。なら、力づくでも…」チャキッ


ハンター「…っ!」

ハンター「くっ…!」ババッ!

…スッ!ググッ…!!


剣豪「…ほう、弓武器を構えるか。本性を現したな?」

戦士「おいおい…」


ハンター「ここならまだ間に合うんだ!早く外へ行け!行かなければ、容赦はしない!」

剣豪「だから理由を話せっつってんだろうが!」


ハンター「だから…」

…ザワッ

ハンター「!」

ハンター「だ、ダメだ!これ以上は…俺の声が…霧を伝う!犠牲はもう見たくない!出ていけ!」

 
剣豪「あぁ!?」
 
戦士「一体…どういう…」

剣豪「しっかりと話をしろよ!わかんねぇんだよ!」

ハンター「くっ…!」


ザワッ…ザワザワッ……!!


ハンター「!!」

戦士「…な、何だ!?」

剣豪「今、ざわざわと何か…」


ハンター「…っ」

ハンター「くそっ、もう戻って来たのか…?これ以上は!」ダッ!!

ダダダダッ……!!

 
戦士「あっ、待ってくれ!」

剣豪「おい、俺らも追いかけるぞ!」ダッ!

戦士「……それしかないよな」ダッ!

剣豪「…ぜってぇ吐かせてやる」


ダダダダダダッ……


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 霧の中 深部 】
 

タッタッタッタッ……ズザザ…


剣豪「くそっ、見失った!」

戦士「一体どこへ…」


剣豪「…」

剣豪「…んっ」ピクッ


戦士「どうした?」

 
剣豪「何か…ないか?そこ…」

戦士「何かって…」クルッ

剣豪「霧の中だが、妙に黒くて、でけぇものが…」

戦士「ん~…?」


…モワッ…

オォォォォ…ォォォ……ォォ……


剣豪「…っ!?」

戦士「う、うおっ!?何だこれ!?」


オォォォ……ォォ……


剣豪「と…塔か…?」

戦士「こんな場所に…こんな建物が…」

剣豪「…すげぇ高いぞ。霧があるとはいえ、雰囲気でわかる。一体これは…」

戦士「さっきのハンターは、これを隠したかったのか?」

 
剣豪「じゃあ、さっきの奴はこの中にいるんじゃないか?行こうぜ」

戦士「待て待て待て!危険とかあるかもしんねーだろ!」

剣豪「…知ったことか!あいつがいるなら、無理やりにでも真実を聞き出す!」

戦士「確かに気になるが…」


…ソロソロ


剣豪「だったら行くべきだろ!」

戦士「…だが」


…ソロソロ


剣豪「何を迷ってんだよ!」

戦士「…こんな不自然な建物があるかよ!霧といい…建物といい…」

 
剣豪「…びびりかよ!」

戦士「そういう問題じゃー…!」


ソロソロソロ……ヒュッ!!ゴツゴツンッ!!


剣豪「がっ!」

戦士「ぐっ!」


…ドサドサッ!


ハンター「…やれやれ」

 
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 1時間後 】


剣豪「うぐっ…」ムクッ

戦士「…いつつ」ムクッ


ハンター「気づいたかい、二人とも」


剣豪「…て、てめぇ!」ハッ

戦士「そうだ…突然殴られて…」


ハンター「屈強そうな二人だったけど…」

ハンター「さすがに魔力の宿った気絶効果のある武器じゃ、一撃だったみたいだね」

 
剣豪「…ここはどこだ!」


ハンター「さっきの塔から近くにある小屋さ。そんな攻撃的になることはない」

ハンター「別に縛ったりもしてないし、介抱してやったんだぞ?」


剣豪「自分で殴っておいてよく言えるセリフだな…!」

ハンター「あのね…。ま、運が良かったか」

剣豪「運だと?」

ハンター「…とにかく、元気になったなら帰る道を教えるから戻ることだ」

剣豪「あんなもん見せられて、素直に帰ると言えるか?」

ハンター「…」

剣豪「この霧はアレを隠すためのモノだったんだな…そうだろう?」

 
ハンター「…」

ハンター「…違う。この霧は…」

…ザワザワッ

ハンター「!」


剣豪「ん…」

戦士「耳に…何か…」


ハンター「…静かに。やはり帰ってきたのか…?」

ハンター「さっきのは一部が戻ってきただけだったが…これは本隊が……」


剣豪「…何がだ」

戦士「帰ってきた…?」

 
ハンター「…ま、俺の小屋には滅多に寄らないし別にいいけどな」

ハンター「それよか、声を聞き取られたら困る。早く帰れ」


剣豪「待てよ…。本当に話を聞かせろ。一体なんのことだ」

戦士「…さすがの俺も、ここまでくると気になるの一言だけど」


ハンター「…話すことはないと言っただろう」


剣豪「お前な、ここまでこうしといて、話さないのはないぜ」

剣豪「エルフ族がここにいること、塔、霧。どう考えてもおかしいだろうが」


ハンター「…」

剣豪「…」

戦士「…」

 
ハンター「…」

ハンター「…はぁ」

ハンター「……何を…聞きたいんだ」


剣豪「お…?教えてくれるのか?」


ハンター「教えないと、帰る気がないのは分かったからな…」

ハンター「それに考えてもみれば、無駄なことだ。そのほうが犠牲も少ないかもしれん」

剣豪「…?」


ハンター「もういい、教えてやるよ。何を聞きたい」

 
剣豪「…遠慮なく聞くぞ。あの塔はなんだったんだ」

ハンター「あの塔は、魔力の塔さ。この霧がいらなくなるようにね」

剣豪「…どういう意味だよ」


ハンター「この霧はね、魔力の霧なんだ。俺らエルフ族の体内に宿る魔力を糧に生み出されたものでね」

ハンター「いや…。今も生み続けられていると言ったほうが間違いではないが」


剣豪「どういうことだ」


ハンター「はは…。まぁ~…軍もバカなもんだってことさ」

ハンター「助け合いだの、仲間だの…人間だの…戦いだの…」

ハンター「いざという時に動けないくせに、どうにもこうにも…」ブツブツ


剣豪「…意味が分からないぞ。一体を何を言っている?」

 
ハンター「あぁ、そうか。そこも知らなかったんだな。じゃあ最初からになるか……。」

ハンター「だけどね。それで君たちは、後悔することになるかもしれないよ」


戦士「…後悔?」

剣豪「話を聞くだけで後悔?そんなもんあるわけねぇだろ…」


ハンター「…」

ハンター「君たちは、この世界で起きる事を、知る事になるということさ…」


戦士「…?」

剣豪「だから、御託はいいから本題を早く話せと!」

 
ハンター「…じゃあ、よく聞いてくれ」

ハンター「君たちは、地震を知っているよね。あの…1か月程前に起きた大地震さ」


剣豪「そりゃ…な」

戦士「…もちろん。あの日から大戦士さんは姿を消したんだから…嫌でも…」ブルッ


ハンター「あの地震はね…彼らがやってきた合図だったんだ」


戦士「…彼ら?」

ハンター「俺らも信じられなかった。だけど、彼らの話を聞いて、俺らの存在意義がわかった」

戦士「…?」

ハンター「…そういうことさ」ブルッ


戦士「…それじゃ分からないぞ」

剣豪「わかんねぇよ…何を言ってる」

 
ハンター「…"魔界"。この言葉、君たちは信じるかい」

戦士「…魔界?」

剣豪「魔界って…何だ」


ハンター「そのままの言葉さ。この世界とは別のもう1つの…別世界」


戦士「…?」

剣豪「さっぱり言ってる意味が分からねぇ。頭大丈夫か?」


ハンター「あぁ、ごめんごめん」

ハンター「…っ」

ハンター「一から話をしないといけなかったね…」


剣豪「だからさっきからそう…!」

 
ハンター「…あの1か月前の地震は、魔界とこちら側が繋げた時に起きた衝撃なんだ」

ハンター「信じられないのも無理かもしれないが、この世界と同じように、魔界には魔界の住民がいる」

ハンター「そして、彼らはこちらの世界へ、己が欲望のために魔界の軍隊を引き連れてやってきたのさ」


剣豪「…はぁ?」

戦士「はぁ…」


ハンター「…信じられないよね」


剣豪「…とりあえず、お前が俺らをバカにしてるのは分かった」

ハンター「ぷっ…」

剣豪「斬る」チャキッ

戦士「ちょちょちょっ、ちょい待ち!!」ガシッ!!

 
剣豪「離せ!!絶対にこいつ、ぶっ殺す!バカにしてるにも程があるだろうが!」

戦士「まだ話の続きあるかもしれねぇだろ!!」


ハンター「…ははっ、信じられないか。そりゃあ、君たちは見てないからね」

剣豪「何をだよ!」

ハンター「"知性ある魔物"。魔族ってやつをさ…」

剣豪「あぁ!?」

ハンター「絶望だよ。あんなのに…敵うわけがない…!」ブルッ

剣豪「…?」


ハンター「…俺らの存在の意味、人間との違いはようやく分かった」

ハンター「そして、真実を聞いた時、おかしくなりそうだった!」

ハンター「いや、もう…壊れてるのかもしれないけどね…くくく…」クスクス

 
戦士「…ハンターさん?」

ハンター「…君たちがもし、生きてココから出れたなら、伝えるといい」

戦士「…」

ハンター「この霧の中だけだと思うな。この塔は…魔力の塔は、もう、完成する」

戦士「…完成?」

ハンター「人間は気づけぬまま、終わるんじゃないかな」

戦士「…?」


ハンター「…俺らエルフ族は…」ブツブツ

ハンター「元々、人間に容姿が似ていたから…」

ハンター「ただ、それだけの為に…先に準備をさせるために送られてきただけだったんだ」ブツブツ


剣豪「…」

戦士「…」

 
ハンター「…ぐっ…!?」ズキンッ!!

…ヨロッ

剣豪「…ハンター?」

戦士「ハンターさん!?」


ハンター「…だ、だけど…!」

ハンター「やられっぱなしほど…悲しいものはない…っ!」

ハンター「だったら…チャンスもあろうと…!犠牲を少なくするためにも、君たちに伝えた…!」

ハンター「き…霧が消える前に…!」ブルブル

ハンター「伝えてくれ…俺の言葉を……!」


剣豪「…!?」

戦士「な…何が…!」

 
ハンター「霧の中は、よく声が響く…!」

ハンター「奴らに俺の声が気づかれた…お前らも気づかれている…逃げろ…早く…!!」

…ガタガタッ…!!

剣豪「お、おい!」

戦士「ハンターさん!?」


ハンター「…がぁっ!!」

バシュウンッ……!!

キラッ…キラキラ……!


剣豪「…っ!」

戦士「なっ…!?」

 
サラサラ…モワァッ………

剣豪「は、ハンターの姿が…消えた…?」

戦士「い、いや違う…!これは…!」

モワッ…

戦士「見ろ…!ハンターのいた場所から、白いモヤのようなものが…」

戦士「ま、まさか…。外を覆う、霧の正体は……」

戦士「…っ!」ハッ


…ズドォォンッ!!

戦士「こ、小屋の壁が壊れた!?」

剣豪「…おい!何か来るぞ!」


ズシンッ…ズシンッ…!!


???『…バカな奴だ。実力を買って、食糧を取らせるのに生かしておいたものを…』

 
剣豪「…敵か!?」チャキンッ

戦士「な、何だこいつは…!」チャキッ!


オーク『やはり人間か…。ふん、オーク族である俺も知らぬとはな』ニタァッ


剣豪「オーク…?こいつ、人間か?到底そうは見えないんだが…」

戦士「さっき言ってた、世界を掌握せんとするっていう魔界の住民ってやつ…なのかもしれんぞ」

剣豪「何?じゃあさっきの話は…」


オーク『おいおい、あのバカそんなことまで話をしてやがったのか』

オーク『チッ…最初から霧にしておくんだった…』

 
戦士「…っ」

戦士「貴様らは一体何者だ!」


オーク『話を聞いたんだろう?』

戦士「魔界など!魔族など…!」

オーク『やれやれ…』

戦士「…知っている事を話してもらおうか…」

オーク『…』ニタァ


剣豪「…戦士、のんきに話しをしてる場合かよ。こいつ…意外と強いぞ』

オーク『俺が人間如きにやられるかよ…クハハッ!』

剣豪「…っ」チャキッ

…ジリジリ

 
オーク『やる気か?人間風情が…』

剣豪「…」

オーク『やめとけ。諦めろ…お前ら如きでは相手にならん』ククク

剣豪「…やってみねば分からん」


オーク『大人しくしておけ。お前らを殺すのは簡単だがー…』

オーク『そうだな…魔力の塔の糧となってもらうのも悪くはない…。丁度あいつらも切れそうだしな…』


剣豪「…あいつら?」

オーク『…そうだな。それがいい…クヒッ…』

剣豪「…気持ちの悪い笑い方しやがって!斬るっ!!」ダッ!

ダダダッ…ブォンッ!!

 
オーク『おっと…。ふんっ!』

ビキビキッ…ガキィンッ!

剣豪「…!?」

戦士「っ!?」


オーク『だから無駄だっつーの…』ググッ


剣豪「お、俺の剣を…腕の一本で受け止めただと…!」

オーク『…じゃあ今度はこっちの番か。お前に…耐えられるかな?』ニタッ

剣豪「!」

オーク『ふんッ!!』

ブンッ…ビュオッ!!

  
剣豪「うおっ…!」

…ドゴォンッ!!ズザザザァ…ボォンッ……!!


戦士「け、剣豪!!」

オーク『っと…、あ~らら。死んじまったかな…?』ククク

戦士「な、何なんだ…お前…!その肉体、その力…!」

オーク『くははっ…。だから言ってるだろうが。お前らじゃ相手にならねーってな』

戦士「…っ」


オーク『…やめとけやめとけ。大人しく生け捕りされとけ。お友達みたく死にたくないだろう?』


戦士「…」

戦士「…ふっ」


オーク『む?』

 
ダッ!!ダダダダッ…!!

オーク『ぬっ!?』

剣豪「うおらぁぁっ!!」ブンッ!!

…ザシュウッ!

オーク『ぐぬっ!?』


剣豪「…あんな程度で、俺が死ぬかよ……!」ユラッ


オーク『な、なんだと…』

剣豪「油断すると、その自慢の筋肉も防御力を落とすらしいな?」

オーク『貴様…よくもこの俺に傷を……!』ギロッ


剣豪「ちょっと最初は油断しただけだ。てめぇ…俺を吹き飛ばしやがって…」ペッ

剣豪「…満足のまま生きられると思うな」ギラッ

 
オーク『くははっ!傷一つつけたくらいで戯言を!!』


剣豪「…傷一つで済むと思ってるのか、てめぇ」


オーク『…来い!』


剣豪「行くぞ…」チャキッ


………
……

久々の深夜更新となりましたが、本日はここまでです。
有難うございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ザシュウッ!!ボトッ…

オーク『うおぉぉおっ!!お、俺の腕がぁぁ!!』

剣豪「次は…脚か…?」

オーク『わ、わわわ…わかった…や、やめてくれ…!!助けてくれ…!』


剣豪「お前は、俺を殺そうとした」

剣豪「つまり、逆に殺されるってこともあるって覚悟もあったんだろ……?」チャキンッ


オーク『ひ、ひぃぃっ!!』


戦士「…」

 
剣豪「だが、助けてほしいんだろ?なら、助けてやる。質問に答えれば…な」

オーク『な…なんだ…!?こ、答える!』

剣豪「お前らは何者だ。何をしにここにいる。あの塔はなんだ。さっきのエルフ族はどこへ行った!」

オーク『…っ』

剣豪「…」ブンッ!

…ブシャアッ!!

オーク『いぎっ…!!』


剣豪「3…2…1…」


オーク『わ、わかった!答える!!』


剣豪「…」ブンッ!

…ザシュウッ!!

オーク『ぎあああっ!!』

 
剣豪「3…2…」

オーク『お、俺らは人間共の言う相手での…ま、魔物だ!別の世界から…やってきた…』

剣豪「別の世界とはどういうことだ」

オーク『人間界と一緒だ…!お前らに、この世界はなんだと聞いても、答えられないだろう!』

剣豪「なるほど、正論だ。では、何をしに来た」

オーク『こ、此方側の世界を俺らのものとするために!』

剣豪「あの塔はなんだ」


オーク『お…俺らはこの霧の中でしか行動を出来ない!』

オーク『あの塔が完成すれば、俺らの世界と同じ気運を保ち…霧がなくても生存できるようになる!』


剣豪「さっきのエルフ族はどこへ行った」


オーク『え、エルフ族は俺らと同じ世界の出身だ!』

オーク『だが、人間に容姿が似ていて気運がなくても生活できるから先にこちらに送られてきていた!』

オーク『エルフ族は特殊な魔力を持っていて、俺らの魔術式で魔力の霧となるんだ…!』

 
剣豪「…戻せるのか」


オーク『む…無理だ。エルフ族に流れる魔力を膨大に暴走させ、霧へと姿を変えさせる…』

オーク『戻す方法はない…』


戦士「…っ」

剣豪「…そうか。ここにはお前以外の魔物はいるのか。今の数は?」


オーク『お、俺らも人間と同じく食糧を必要とする。故に、こちら側にいる獣を狩りに出ているが…』

オーク『数的にいえば中隊に匹敵する数はいる…』

オーク『今、塔の中には同胞が少し残ってるが…わずかな待機組しかいない…!』


剣豪「べらべらと…何でもしゃべるんだなお前は」ククッ

オーク『た…助けてくれるんだろ…?』

 
剣豪「…だめだ」

オーク『ひっ!』

剣豪「死ね」ブォンッ!!

…ザシュウッ!!

オーク『はぐっ……!』

ドシャアッ……ドロッ……


剣豪「…最初から赦す気なんざねーよ。バーカ」ペッ

戦士「あぁ…同意見だ」

 
オーク『…ッ!』ピクッ
 
オーク『がっ…ぐうぅっ…!』ゼェゼェ


剣豪「!」

剣豪「お、おいおい…どんだけ頑丈なんだよ」


オーク『も、もうじき…塔は完成したら…貴様らなど…!ふひっ…ひひひっ…』

剣豪「…」

オーク『あの男と…あの女…いい黒魔石の素材になってくれたからな…』

剣豪「…何!塔に人間がいるのか!?」

オーク『…』

…ガクッ


剣豪「…お、おいコラ!そこで死ぬのかよ!」

戦士「と、塔の中に人間が!?」

 
剣豪「…捕まえたような言い草だったが」

戦士「剣豪…登ろう。助けるんだ」

剣豪「バカいうな、今の話聞いてたか!?」

戦士「…塔の中にいるのは少しだろう。こいつ程度なら、俺らでやれるはずだ」

剣豪「死ぬぞ」

戦士「…」

剣豪「…」


…チャキンッ


戦士「…行こう。冒険者は、人の為に」

剣豪「はぁ……。分かったよ…。ほら、行くぞ…」

戦士「…ありがとう」

剣豪「お前ならそう言うと思ってたっつーの…くそっ」

戦士「…ふっ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 魔力の塔の内部 】 

ダダダダダッ…!!

戦士「…とりゃあっ!!」

剣豪「うおらぁぁっ!!」

ブォンッ…ブシャアッ!! 
 

ゴブリン『な、何だコイツら…!!』


戦士「どけどけぇ!捕えられた人間はどこにいる!」


ゴブリン『…言ウと思うか!』

 
戦士「…言わないなら、切り刻む」チャキッ

ゴブリン『はははーっ!やってミろォ!!』

戦士「せいやあっ!」ブォンッ!!

ゴブリン『フンッ!』

ガキィンッ!!キキィンッ!!


戦士「むっ…!」

ゴブリン『ハハハッ!』


剣豪「手ェ抜くんじゃねぇよ戦士」ブォンッ!!


…ザシュウッ!!

ゴブリン『ガッ…!』ドシャッ


剣豪「っしゃ、次ッ!」

 
ダダダッ…!
 
戦士「くそっ、次から次へと…何が少しだ!」

剣豪「っつーか!登っても登っても、人間なんざいねぇぞ!」

戦士「…っ」

剣豪「あいつに一杯食わされたわけじゃねえだろうな…!」

戦士「…あの中で、俺たちに虚をつくほどの相手には見えなかったがな」

剣豪「そりゃそうだが…」


ダダダダダッ……!!ズザザァ…


戦士「っと、また階段だな!これで何層目だよ!?」

剣豪「分からん!だが、そろそろ最上階に着いちまうんじゃねぇのか!」

戦士「くっ…!どこかで見落としたのか…!」

ダダダダダッ…!!

 
剣豪「…っ」

戦士「どこまで登れば……っ!」

ダダダダッ!!


…キラッ

剣豪「…ん?…おい、階段の上を見ろ!」

戦士「おっ…!次の扉…今までと違う文様が見えるな…」

剣豪「何かあるっぽいぞ!ぶっ壊して入るぞ!」チャキッ

戦士「…何かいたら奇襲になるか。わかった、行くぞ!」チャキッ

ダッダダダダダダダッッ!!


剣豪「うおらぁぁぁっ!!」ビュンッ!

戦士「おらあぁぁぁっ!!」ブォンッ!!


ガツッ…ドゴォォンッ!!パラパラ……

 
剣豪「うしっ!突破ァ!」

戦士「おっしゃ!」

ズザザザァ……


剣豪「お…。今までと違う部屋…だな」

戦士「天井が高い…ドームのようだな。何だ、この部屋は…」


…ギラッ!


戦士「ん…?」

剣豪「…お?」


ギラッ…!


戦士「ん~?なんだありゃ…真っ黒な…石?」

剣豪「なんだよあれ…。つーか、よく見たら部屋全体に…石の結晶っぽいのが…」


ゴォォォ……

 
剣豪「…なんだ、気持ちわりぃな。とにかくあのデカイ結晶みたいな所に行ってみようぜ」

戦士「お、おう…」

タッタッタッタッタッ…


…ギラギラ…

剣豪「…っと、これは…」

戦士「な、何だよこれ…。黒い水晶か?」

剣豪「いや、この輝きは魔石の類か何か…じゃないのか」

戦士「黒い…魔石…?」ハッ


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
オーク『あの男と女は黒魔石の素材に…』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


戦士「…黒魔石!そういえばアイツが、素材になるとか言っていたな!」

剣豪「ってことは、ここにいた人間はこの魔石の素材になったのか…?」

 
戦士「…人の姿がないってことは、遅かったのか…!くそっ!」

剣豪「ちっ…。これを一体何に使うっつーんだよ…」

戦士「…あいつらが生きるために霧が必要なんだが、それをいらなくする為に~…とか言ってたような」

剣豪「あぁ…」

戦士「…待てよ。じゃあ、これを壊せば……」

剣豪「そういうことかもしれん」

戦士「…やるか?」

剣豪「やるべきか…」

…チャキンッ


戦士「…」ググッ

剣豪「…」グググッ

 
…ブォンッ!!
 
戦士「せいやっ……!」

剣豪「うおらっ……!」


「…待て!!」


戦士「!?」ピタッ!

剣豪「!?」ピタッ!


「これを攻撃してはダメだ!これは魔力や威力を吸収する、此方側にない特異な魔石!」

「お前たちの高い威力は、この塔に力を貸すだけだ!」


戦士「な、何の声だ!?」

剣豪「どこから話をかけてやがる!敵か!」

 
「…よく、ここまで来てくれた。ありがとう」


戦士「…?」

剣豪「ありがとうだぁ?何もお礼を言われるこたぁねえぞ!それよりどこにいる!」


「…ここだ」


戦士「…部屋には誰もいないぞ!」

剣豪「堂々と姿を見せやがれ!」


「…もう、力もないんだ」


戦士「…力もない?」

剣豪「意味が分からんぞ!お前…敵だな?ここへいた人間はどこへいった!」

 
「……」

「戦士、剣豪…。最期にお前たちを一目見れて、本当にうれしく思うぞ……」


戦士「…え?」

剣豪「な、何…?」


「…悔しいが、俺はここまでだ。お前たちには危険なことをさせてしまって…すまなかった」

「だが、お前たちの実力を一番に知ってるのは俺だ。それを信じさせてもらった…」


戦士「ま…待って…」

剣豪「お、おい…まさか…!」


「…もう、俺はこの黒魔石に取り込まれ、残るのはこの意識だけさ」

「はは、ドジっちまってさぁ…もう、お前らと戦うこともできなくなっちまったよ…」


戦士「ま、まさか…!だ……」

剣豪「大戦士…さん…!?」

 
大戦士「ははっ!気付いてくれたか。…身体はもう、この黒魔石に溶けちまってな」

大戦士「声だけでも届いてること、本当にうれしく思う」


戦士「う…嘘ですよね…?」


大戦士「話すべきことは沢山ある。話したいこともある。だが…時間もない…」

大戦士「お前を呼んで良かったよ。ここへ来てくれて…有難う」


戦士「嘘だ…!嘘ですよね…!あなたほどの人が…!!」

大戦士「…本当にすまない」

戦士「嘘ですよ!!嘘だと言って下さい!!」

大戦士「お前なら必ず来てくれると信じていた。ありがとう」

戦士「なぜ…!何故ですか!何故、大戦士師匠とあろう人がこんな…こと……っ!」

 
大戦士「…」

大戦士「俺は、祭壇町へ小隊長として送り込まれた。そして、知性ある魔物とやらと衝突したんだ」

大戦士「当初は俺を含め、有利に進んだ。俺らで解決まで持って行けるんじゃないか…とね」


戦士「…」


大戦士「だが、それは甘い考えだった。部下たちには本当に…すまないことを…」


戦士「一体、その町で…何が…!」


大戦士「…竜族を知っているか」


戦士「竜族、ですか…?」


大戦士「あぁ…。あの時、俺は……」

 

……
………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 祭壇町 支部 】

…シャキンッ!ドサッ!

ゴブリン『…』

…ゴロンッ


大戦士「…まだ、やるか」


ゴブリン長『…なっ…なんだと…!俺ノ部隊が…一瞬で…!』


中央大尉「見たところ、お前がこの部隊を率いるリーダーか」

中央大尉「我々、中央軍を甘く見たことを後悔するんだな」


ゴブリン長『…話ト、違イ過ぎるぞ…!』ギリッ

 
大戦士「話と違う…だと?」

大戦士「それは気になる言葉だな。聞かせて貰おうか」


ゴブリン長『…ッ』チャキンッ


中央大尉「やめとけ。お前の実力では、一人で到底勝てるものではない」


ゴブリン長『…だガ、俺コそ気高き戦闘種族!易々と口を割ルわけには!』


中央大尉「やれやれ、ではココは自分が」チャキッ

大戦士「…頼む」

中央大尉「もちろんです。いざ…参る!」ダッ!

ゴブリン長『…ッ!』

ダダダダダッ…ガキィンッ!!

 
小隊軍人たち「ふぅ…。中央大尉殿が勝利で、ようやく落ち着くきそうだ」

小隊軍人たち「…一時はどうなることかと思ったが、何とかなってよかったよ」ハハハ

小隊軍人たち「さすが大戦士さんたちだ」

小隊軍人たち「つーか、この程度の魔物たちに支部の奴らはやられたのか?」

小隊軍人たち「あっ、それそれ。俺も少し気になったんだよー……」


…ズズゥンッ!!!


小隊軍人たち「なんだ!?」バッ


…ポタッ、ポタッ


小隊軍人たち「…えっ?」

 
???『やれやれ、急ぎ過ぎるぞ人間たちよ』


中央大尉「だ、大戦士さ…」ブルブル


???『おっと、半殺し状態では辛かろう。すまなかったな』

ブォンッ…ズバァンッ!!!

ドシャッ!ゴロゴロ……


大戦士「…!!」


…ザワザワッ!

小隊軍人たち「な、なんだアイツ!?」

小隊軍人たち「い、一体…!!」

小隊軍人たち「でけぇ…トカゲ…?いや…。っつーか、また言葉を…!」

小隊軍人たち「そ、それより副隊長が真っ二つにされ…!」

 
ゴブリン長『…チッ、俺ガかっこよク倒そうとしタところをジャマしヤがって…』

???『…それは済まない事をしたな。では、あの向こうの小隊長の男やってもらえるかな?』


ゴブリン長『…』

ゴブリン長『そ、そレは興が削がレたノで、お前ニ任せる!』プイッ


???『そうか。では、休んでいてくれるか』

ゴブリン長『う、ウむ…』


大戦士「…っ」

大戦士「き、貴様は一体…!」


???『…我の事かな?』

大戦士「随分と、いい話し方だな……!」
 
???『…』

大戦士「そのでかい身体…!まるでトカゲの化け物…魔獣の一種なのか…!?」

 
???『…そうか、自己紹介が遅れた』

バハムート『我の名前はバハムート。竜族を率いる、竜族の長ともいうべきか』


大戦士「バハムート…?竜族だと?」


バハムート『混乱するのも無理はない。だが、そのような説明の前にお前たちには消えてもらうー……』スゥゥ


大戦士「…ま、待て!話が出来るなら、話をさせてほしい!」


バハムート『…』 

バハムート『……ふむ。聞こうか』スッ


大戦士「お前たちの目的は何なんだ!俺は、お前らのような魔物の存在を見たことがない!」


バハムート『…』

大戦士「…っ」

 
バハムート『…良かろう。少し、話をしてやろう』

大戦士「…いいのか」

バハムート『その前に少し。見たところお前は、優秀な人間なのだろうな』

大戦士「…な、何?」

バハムート『我の爪の前に砕け、そこに転がった亡骸…中央大尉といったか。それはお前の特別な仲間のようだ』


大戦士「…っ」


バハムート『だが激昂するわけでもなし、悲観するわけでもなし。この状況に妙に落ち着いている』

バハムート『いや、むしろ…この状況から新たな情報を得ようと、活路を見出そうとしている』


大戦士「…」

 
バハムート『戦いの場において、非常に優秀。その優秀なお前に、話をしない訳にはいかないだろう』

大戦士「…そう言って貰えると、嬉しいね」

 
バハムート『では、まず……』

???『待て』

バハムート『…むっ?』

バサッバサッ…ズズゥン…!

???『何を悠長に話をしようとしてやがる…』


…ザワザワッ!

小隊軍人たち「ま、また増えた…!」

小隊軍人たち「俺たち…ど、どうなっちまうんだ…」

小隊軍人たち「だ、大丈夫だ…!俺らには、あの大戦士さんがついてるんだから!」


バハムート『…バジリスク、か』

バジリスク『人間は、殺せと言われているだろう…。使えるやつがいるなら別だがな』 

バハムート『そうだったな。どうも、礼儀のクセが抜けなくてな』

バジリスク『まぁいい。それより、そこの人間は他の奴より優秀そうだ。そいつは生け捕りで塔の素材としよう』

バハムート『ふむ…それがいいだろう』

 
大戦士「…っ!」

大戦士「話し合いで何とか出来ると思ったのは、やはり無理だったか」チャキンッ


バジリスク『…ふっ、話すことなど何もない……!』

バハムート『話が出来なくてすまないな。では……っ!』スゥゥ


大戦士「…くっ!」チャキッ!!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 塔 最上階 】
 

戦士「…っ」

剣豪「それで…大戦士さんが…」


大戦士「俺が生涯の中で、最も凶悪で最も強大…」

大戦士「一匹ならまだしも…あの二匹を相手にどうこう出来るものじゃなかった…」

大戦士「気が付けば、俺は黒魔石の中。崩れていく身体を、見続けていた…」


戦士「ぐ、軍をやめた貴方が!大戦士師匠が犠牲になることはなかったはずなのに!」

大戦士「…仕方ないことだ」

戦士「…っ」

 
剣豪「だ、大戦士さん。話を割って…いいか?」

大戦士「…なんだい?」

剣豪「大戦士さんは、どうやって戦士のもとへ現れたんだ?」

大戦士「あぁ…」


戦士「そ、そうだ!俺もそれを聞きたくて…!」
 
 
大戦士「あの時までは、黒魔石にエルフ族の魔術師もいてね」

大戦士「その方の魔法のおかげで、お前の前へ行くことが出来た」

大戦士「ま、少しだけ黒魔石の魔力も感化されて、実体化しすぎてお前の武器を吹き飛ばしちまったが」ハハ


剣豪「…」

戦士「…大戦士さんは、どうして俺のもとへ…。俺に助けを求めたんですか…?」

 
大戦士「剣士、武装中将、武道家。だが、今は彼らはココへ来させるべきじゃなかった」

戦士「あの…剣士さんもですか」

大戦士「今、彼らは葛藤と戦っている。俺の話を聞けるべき状況じゃないんだよ」

戦士「ど、どういうことで…」


大戦士「だがまぁ、それを抜きにしても俺はお前へと声をかけたけどな」ハハッ

戦士「…えっ?」

大戦士「お前は、誰よりも大事だと思った一番弟子。お前に声をかけず、誰が逝けたものか」

戦士「だ…大戦士師匠っ…!」


大戦士「…そして、二人とも。お前たちに聞いてほしいことがある」

戦士「は、はいっ」

剣豪「…はい」

 
大戦士「あの話は聞いたのだろう?」

戦士「あの話…ですか?」

大戦士「魔界のこと、魔物のこと。彼らの目的のことだ」

戦士「あ…はい…」


大戦士「よし、それならいい。お前らのやるべき事は、それを中央軍本部へ伝え、世界に危機を訴えること」

大戦士「軍がいかに優秀とはいえ、力を過信し、どうにかなると思っている傾向があるはず。その気持ちを排除せねば…」


戦士「ぼ、僕らが伝えて…信じてくれますか」

大戦士「信じる。俺からの言葉だと、本部にいる"武装中将"へ伝えるんだ」

戦士「…はいっ」

大戦士「そ、それと…すまない。俺は…どうやら…ここまでだ…」

戦士「…師匠っ!?」

大戦士「お前たちともっと…!い、一緒にいたかったよ……」

 
戦士「…大戦士師匠っ……!」ギリッ

剣豪「…ッ」


大戦士「…お前と出会えたこと、お前と世界を歩けたこと、本当に…本当に楽しかった」

戦士「そ、そんなの…僕も一緒です!!」

大戦士「で、弟子とは言い続けていたが…今更…こう思う。お前は……息子の存在だった…と…」

戦士「…っ」ブルッ

大戦士「…ははっ…今更…だな……」


戦士「だ…大戦士師匠っ……!」


大戦士「うん?」

戦士「貴方を…お父さんと…呼んでもいいでしょうか…!」グスッ

大戦士「…そう、呼んでくれるのか」

戦士「…っ」

 
大戦士「…」


戦士「お…」

戦士「お父さん…っ!」ポロポロ


大戦士「…っ!!」

大戦士「は…はは…。なんか、恥ずかしいな。あ…ありが…とう…」

大戦士「願わくば、最期に…思い切り、抱きしめてやりたかった……」


戦士「…う、うっ…あうぅ……」

ポタッ…ポタッ……

 
大戦士「…それと、剣豪」

剣豪「は、はい!」

大戦士「剣豪も、息子の為に有難う。お前も教え子として、冒険者として、弟子として…期待しているからな」

剣豪「…はいっ…」


大戦士「…さ、さて…本当に時間も…少なくなってきた…」

戦士「!」

大戦士「お前たちにはもっと、教えたいこともたくさんあった…んだが…な…」

戦士「お父さんっ…!」


大戦士「さ、最後にも、もう一つだけ…お前たちに頼みが…ある…」

戦士「な、何ですか!!」

剣豪「何でもおっしゃってください!」

 
大戦士「入口の脇の黒魔石の中…!ま、魔道士が…捕えられている…!」


戦士「えっ!?」

剣豪「なっ!?」


大戦士「魔道士も…すでに…取り込まれつつある…!」

大戦士「お…俺が最後の力でお前らに…俺の残った魔力を一時的に渡す……!」

大戦士「そうすれば力を吸収されずに…黒魔石を破壊できる…はず…!」


戦士「ま、魔道士さんが…なぜ…!」
 
 
大戦士「説明している暇は…ない!…こ、今後…必ず…剣士たちの力が必要になる時が来る……」

大戦士「その為にも…!か、彼女は失ってはだめだ…!」

 
戦士「で、でも待ってください!剣士さんや武道家さんは、行方不明で…!」

大戦士「か、彼女が戻れば、必ずあいつも姿を現す!」

戦士「…っ!」

剣豪「わ、分かりました…!」


大戦士「では、いくぞ…。あとは頼んだぞ…二人とも…」スゥ


戦士「お…お父さん!!」

剣豪「…大戦士さんっ……!」


大戦士「…」

パァァッ…ッ!!

 
戦士「へ、部屋の黒魔石が輝きを…!」

剣豪「力が…あふれてくる…!」

戦士「…剣豪、この力があるうちに!」

剣豪「おう!」

ダダダダッ…!!


戦士「ど、どこに魔道士さんが取り込まれてるんだ!」

剣豪「…っ」キョロキョロ


「…そこだ」

…ギラッ


魔道士「…」


戦士「!」

剣豪「!」

 
戦士「…い、いた!あそこっ!だけど、どうやって傷つけないように…!」

剣豪「一撃が強すぎたら、魔道士先輩ごと吹き飛ばしちまう!」



「…信じろ。俺の力を受けたお前らだ…出来るはずだ」



戦士「…わかった。やるよ、父さん!」チャキンッ!

剣豪「…大戦士さん、力を借ります!」チャキンッ!

…スッ

戦士「…うおおおおっ!!」

剣豪「…だらぁぁぁっ!!」

…ブォォンッ!!!ガッ…ガキィィンッ!!!

戦士「ぬあああっ!」

剣豪「ぐっ…ぐぅぅっ…!!」

ググッ…ググググッ……!!

 
 
………
……

「冒険者は、人の為にこそ…。そして、自由に生きてこそ……」

「……俺の役目は、本当にこれで全て……」

……
………

 
…ビキッ!

ビキビキビキッ…!!


戦士「…あっ!」

剣豪「おっ…!」


パキャアンッ……!!キラキラキラ……


戦士「や、やった!」

剣豪「お、おっしゃあ!!」


魔道士「…」グラッ

 
戦士「い、いけない!」ダッ!

ダダダダッ…ガシィッッ!!ズザザザァ…

魔道士「…」ダランッ

戦士「…魔道士さん、魔道士さん!」

魔道士「…」

戦士「…魔道士さんっ!!」


魔道士「ん…」ピクッ


戦士「よかった…生きてる…」

剣豪「それにしても、なぜ魔道士先輩がここに…」

 
戦士「…お父さん、魔道士さんは助けましたよ!」

剣豪「大戦士さんっ!魔道士さんは…無事です!」


……シーン


戦士「…お父さん?」

剣豪「大戦士さん…?」


……シーン


戦士「お父さん…どこ…ですか?」

剣豪「…っ」

戦士「お父さん…。お父さん…っ!?」


剣豪「…ッ」

剣豪「せ、戦士…。大戦士さんは……」

 
戦士「ち、違う!あ、あの人は遊ぶのが好きだから!」

剣豪「…」

戦士「きっと、まだいるのに遊んでるだけなんだよ…!」

剣豪「戦士…」

戦士「…うん、遊んでるだけなんだ……」

剣豪「…」

戦士「凄く強いから…」

剣豪「…」

戦士「…っ」


剣豪「…」

剣豪「す…すまん。お前にかける言葉が…見つからない……」

 
戦士「…」

剣豪「…」

戦士「…だ、大丈夫」

剣豪「…」


戦士「大丈夫だ。大丈夫…」グスッ

戦士「大丈夫だよ…うっ……」ポロポロ


剣豪「…戦士」


戦士「どことなく…お父さんが現れた夜から、こんな気はしてたんだ…」

戦士「分かってた…分かってたけど……」


剣豪「…」

 
戦士「ひぐっ…」

ツー……ポタッ

魔道士「…」ピクッ


戦士「うぅ…うっ……」


…ポタッ…

ポタッ……


魔道士「…」

魔道士「…っ?」

魔道士「えっ?」ハッ

魔道士「…あれ、私……!」ガバッ!


戦士「!」

 
魔道士「私、一体……」

戦士「…っ」

魔道士「あれ…?」

戦士「…」


魔道士「…」

魔道士「…あ、あれ!?」カァッ

魔道士「私、何で裸……!」バッ!


戦士「…っ」

剣豪「…」

 
魔道士「…だ、誰?」

魔道士「っていうか、剣士たちは!?」

魔道士「それにココは…どこ…」

魔道士「…そもそも私…いき…てる…?」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数 分 後 】


魔道士「…服、有難う」


戦士「いえ…。羽織るものだけで、申し訳ないです…」

戦士「それと、今話をした通り、お父さ…いえ、大戦士師匠は……」


魔道士「…」

魔道士「そんなことが…あったなんて……」ブルッ


戦士「貴方も、この黒魔石の素材にされる寸前だったんです」

戦士「大戦士さんの最後の望み、叶えられて本当に良かったと思います…」

 
魔道士「大戦士さんが、私の為に力を使って…。私なんかの為に…」

戦士「…魔道士さん、"私なんか"なんて、言わないでください」

魔道士「!」

戦士「お父さんが助けた貴方がそんな事を言っては、どうにもなりません!」

魔道士「…ごめんね」

戦士「…っ」


魔道士「…でも、大戦士さんがそんなこと…本当に…信じられないよ…」

戦士「…」

魔道士「…」


剣豪「…戦士!そう悔やんでる暇なんかないだろう!」

剣豪「俺らに託されたのは、魔道士先輩を剣士に届け、中央軍に全てを伝えるまでだ!」

剣豪「その全て果たしてから、悔やむべき…だろう…!」

 
戦士「わ…分かってる!分かってるけど!」

魔道士「…」

戦士「分かってるよ…。でも…でも……っ!」


剣豪「…っ」

魔道士「…」


戦士「…わかってる…けど…」

戦士「か、身体の震えが…」ブルッ

戦士「ど…どうすれば…。ぼ、僕は…これから…一人に……!」

戦士「剣豪も魔道士さんも、僕の気持ちなんかわかるわけないからそんなことー…!」


魔道士「…戦士」

ソッ…ギュウッ

戦士「!」

 
ギュウウッ…

戦士「ま、魔道士さん!?」


魔道士「本当にありがとう…戦士」

戦士「ま、魔道士さん…!だ、抱きしめ…!羽織ってるだけだから服が…!」

…パサッ

魔道士「いいの。戦士…ありがとう」

 
戦士「そ、それは…当然のことで…」カァッ

魔道士「…」

ギュウウッ…!!

戦士「…っ!」

 
戦士「ま、魔道士さん…!?」

魔道士「戦士。手を…貸して」スッ

戦士「えっ?」


グイッ!…スッ…


戦士「!?」

戦士「ま、魔道士さんっ!?ななな、何を!胸に…!」


魔道士「…落ち着いて。大丈夫だから」

戦士「お、落ち着いてって!」

魔道士「戦士。私の胸から、私の鼓動を…感じるよね」


トクン…トクン…


戦士「…そ、そりゃ当然で…!」

  
魔道士「私の身体が、私の心が鼓動を打って、、こうして生きているのは…貴方たちのおかげなの」

魔道士「…ありがとうって、何度言えばいいのか分からない」

魔道士「貴方が私を救ってくれた」

魔道士「そして、今のあなたの気持ちは、凄く…分かる。分かろうと出来る」

魔道士「大事な人が失った哀しみ。大事な人がいなくなること」

魔道士「貴方の哀しみを分かろうとする人が、分かる人がいる。貴方は一人なんかじゃない…」

魔道士「だから……」


戦士「…っ」

魔道士「…」ニコッ

戦士「…」

 
魔道士「…少し、落ち着けたかな」

戦士「は…はい…」ドキドキ

魔道士「うんっ、よかった…」

戦士「…」

魔道士「…」


ヒュッ…ゴツンッ!!!

戦士「」


剣豪「…いつまで魔道士さんの胸触ってんだ!」

剣豪「落ち着いたなら、さっさと魔道士さんを剣士のもとへ連れてくぞ!」


魔道士「あはは…」


戦士「わ、分かってるよ!」

戦士「…って俺ら、よく考えたら剣士さんの場所分からくないか?」

 
魔道士「えっ?」


剣豪「あっ…そうか…」

戦士「…どうしよう」


魔道士「ち、ちょっと待って。剣士の場所が分からないって…どういうこと?」

魔道士「あの3人のことだから、嫌でも居場所なんて分かるような…」


戦士「…あっ!」

魔道士「え?」


戦士「そ、そういうことか…!」

戦士「剣士さんが姿を消したのは、魔道士さんがこんな風になったから…!」


魔道士「待って!剣士が…姿を消した…?どういうこと!」

 
戦士「…そうか、魔道士さんは何も知らないのか」

魔道士「…だから、どういうこと?剣士が消えたの!?」

戦士「えっと、お互いの情報…整理し合いましょう」

魔道士「…う、うん」



戦士「まずは、俺らが知ってる情報から…」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

剣豪「そういうこと…だったのか」

戦士「東方祭壇町で…そんなことが…」

魔道士「…私がいなくなって、パーティが解散してたなんて……」


剣豪「それほど魔道士さんの存在は大きかったってこと…か」


戦士「でもこれで全部が繋がった…!」

戦士「祭壇町での事件、知性のある魔族の存在、剣士さんが姿を消した理由…!」


剣豪「だな。一刻も早く、中央軍にも塔の存在と魔族の話を伝えないといかん」

戦士「魔道士さんが生きてたこと…戻ってきたことも!大戦士さんのこと…も…」

剣豪「…あぁ」

 
魔道士「剣士…」ギュッ

戦士「大丈夫ですよ、魔道士さん。剣士さんは必ず…」ソッ


…ゴツンッ!

戦士「」


剣豪「…アホ」

戦士「ってぇな、何すんだよ!」

剣豪「お前、どさくさに紛れて魔道士さん抱きしめようとしただろ」

戦士「…」

剣豪「お前が魔道士さんのことを大好きなのは知ってるが、あんま調子乗んなアホ」

戦士「ば、バカっ!おいっ!」

 
魔道士「…」クスッ


戦士「ち、違いますよ!魔道士さん!」

剣豪「さっさと行くぞ!他の魔族が帰ってきたら困るだろ!」

戦士「分かってるよ!出発だ出発!」

剣豪「だから行くぞっつってんだろーが!」

戦士「ま、魔道士さん行きましょう!出発!」


剣豪「…アホ」

剣豪(お前がまだ哀しくて温かさを求めるのは分かる。だが、魔道士先輩は…違うだろ…)


魔道士(…剣士)

魔道士(まだ私は、生きてるよ。剣士は今…どこにいるの…?)


………
……

本日は久々の大量更新となりましたが、ここまでです。
次回は新スレとなります。
ここまでお付き合いして下さっている方々へ、改めて有難うございました。

店長がピーナツ作製器?使ってたのはもとは人間だってのか?

 
皆さま、有難うございます。
新スレ前に、あまりこのような書き込みはしませんが、少しだけ補足を。

今回の作品は自分の過去作品の全ての作品のゼロ(もっとも初期)にあたるもので、
これだけでも楽しんで頂ける構成とは考えております。

>>990 にあります作品は、錬金術師シリーズのことだと思いますが、
時空列的にいえば

今回の作品>剣士シリーズ>>竜騎士シリーズ>錬金術師シリーズ>真剣士(現代物語)

となっており、剣士から竜騎士へつながる間は、約数千年の刻を経たものとなっており、
厳密にいえば繋がってはおりますが、別作品として楽しんでいただけるようになっています。

 
自分の作品は、一部を除きどれを読んでも単体作品として楽しめるよう、物語が進んでいますので、
お時間があれば他の作品も是非、一目だけでもご覧になってみてください。
こちらのスレに何度かいただきましたが、自分のWikiにて作品一覧を公開しております。
また、新作予告等もそちらにしており、何度か話題にも出されておりましたが、

錬金術師「経営難に立ち向かうことになった」シリーズ
上記特別編および、その3!の予告編等を公開していたりしています。


>>990 について
あれは一部ネタバレになりますが、「魔界」より持ち込んだ魔石になる描写をしておりますので、
ご安心を…。


以上、ちょっとしたご報告と補足でした。

WikiURL:http://seesaawiki.jp/naminagare-ss/


尚、剣士の新スレは

< 剣士「冒険物語…!」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1411733633/) > 

になります。それでは、失礼いたします。

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