阿笠「別荘を建てたぞ!」 (31)

阿笠  「ついにわしもセレブの仲間入りじゃ!」

歩美  「わあ、素敵なログハウスだね!」

阿笠  「まあ、最近研究所がゴミ屋敷になっとるから、しばらくここに
     住むことにしたのじゃよ」

コナン 「おっ、薪ストーブもあるな!」

阿笠  「ほっほっほ、薪ストーブは今自然に優しい暖房器具として
     見直されているのじゃよ。国や県からも補助金がもらえるのじゃ」

元太  「おお、材木の山があるぜ!」

阿笠  「それは近所の植木屋さんからもらってきたのじゃ。薪割り道具も
     一式あるから自分で燃料を用意できる」

光彦  「まあ、それはいいんですけど・・・どうして僕の家の隣
     なんでしょうか?」

阿笠  「たまたま土地が空いていたからじゃよ。おかしな隣人がいると
     いうことで安く買えたぞ!」

コナン 「あー、なるほどなあ」

歩美  「それじゃあ仕方ないよねえ」

光彦  「どういう意味ですか!?あのですね、最近は住宅街で薪ストーブを
     燃やす家が増えたせいで、近隣トラブルも増えているんですよ。
     洗濯物に臭いがついたりとか。よく見たら、博士の別荘は僕の家から
     見て風上じゃないですか。博士、本当に大丈夫なんですか?」

阿笠  「あーあー、大丈夫じゃ。最近の薪ストーブは煙もほとんど出ないからのお」

光彦  「でも、火災とか・・・」

阿笠  「とりあえず、薪ストーブは三時からつけるぞ。それまでに洗濯物を
     とりこめばいいじゃろ」

光彦  「ちょっと待ってください!冬の三時じゃ洗濯物が乾ききらないですよ!」

阿笠  「ああ、うるさいのお!帰って宿題でもやってろ!出てけ出てけ!」

ドスッ

光彦  「わあっ、蹴らないでください!」

これは一部ノンフィクションであり、近所であった悲劇的な隣人トラブルが
もとになっている。光彦の両親については気にするな。






夕方 円谷家

朝美 「ねえ、みっちゃん。なんか家の周りが焦げ臭いんだけど。」

光彦 「阿笠博士が隣に引っ越してきて薪ストーブを燃やしているんです」

朝美 「こんな住宅街で?」

光彦 「はい。なんでもエコだとかなんとかで。」

朝美 「洗濯物に臭いがついちゃってるし、家の中も閉め切ってるのに臭いわ。
    ねえ、みっちゃん。博士に何とかしてもらえるように言ってもらえない?」 

光彦 「そうですね」

阿笠別荘

ピンポーン

阿笠  「なんじゃ光彦君か。何か用かの?」

光彦  「あのー、薪ストーブの煙が臭いんで何とかしてもらえませんか?」

阿笠  「臭いじゃと?臭いなんかするわけないじゃろう。ワシが使ってるのは
     最新式の薪ストーブじゃぞ。燃料もちゃんとしたのを使っておる」

光彦  「でも臭いものは臭いんですよ」

阿笠  「光彦君、ワシは寒さを凌ぐために薪ストーブを使っておる。これが
     ないと凍え死んでしまうのじゃよ。これは当然の権利であり、それを
     使うなというのは人権侵害ではないのかの?」

光彦  「でもそこらじゅう臭いですよ。ちょっと外に出て確認して・・・」

阿笠  「うるさいっ!」

光彦  「ひっ・・・」

阿笠  「そもそもここはワシの敷地じゃ!勝手に入ってくるな!警察を呼ぶぞ!」

光彦  「うわあああああっ!」

ダダダッ

阿笠  「まったく、ようやく行きおったわい」

灰原  「全く、あのソバカス文句言いに来たの?生意気ね」

阿笠  「そうじゃのう。死んでしまえばいいんじゃ」

翌朝 阿笠別荘

阿笠  「さて、今日は楔とハンマーで丸太を割るとするかのう。丸太に楔を
     刺して・・・・それをハンマーで打ち込むのじゃ。
     んほおおおおおおおおおおおおお!!」

カーン!カーン!カーン!

阿笠  「鉄を鉄に打ち付けるわけじゃから・・・とてつもない高音が響くぞ!」

カーン!カーン!カーン!

阿笠  「窓を閉めていようが関係ないぞ!」

カーン!カーン!カーン!

光彦  「うるさいですよ!今何時だと思っているんですか!」

カーン!カーン!カーン!

阿笠  「んほおおおおお!なんか聞こえるが気のせいじゃろう!」

カーン!カーン!カーン!

続きは後で

光彦  「やめてくださいよ博士!」

阿笠  「なんじゃ光彦君か。どうしたんじゃ?」

光彦  「朝からそんな大きな音を立てないでください!迷惑です!」

阿笠  「はあ、ワシがいつそんな音を出した?言いがかりはやめてもらいたいのお」

光彦  「警察に電話しますよ!」

阿笠  「うるさいのお。チェーンソーの方がいいかの」

ギュイイイイイイン

光彦  「うわああああああああ」

ダッ

阿笠  「ほっほっほ、この程度で逃げるとはだらしがないのう」

その夜

ギュイイイイイイン

佐藤刑事「阿笠さん?」

阿笠  「おお、佐藤刑事。ワシの別荘にようこそ。」

佐藤刑事「ご精が出ますね」

阿笠  「何か用かの?」

佐藤刑事「えーと、私は本来このようなことは専門外なのですが。光彦君から
     薪割りの音がうるさいという苦情がありまして・・・」

阿笠  (あのソバカス小僧・・・)

阿笠  「ほっほっほ、そうですか。それなら中でゆっくりお話しましょう」

佐藤刑事「はい、お邪魔します」


パンパンパンパンパン!

阿笠  「んほおおおおおおっ、気持ちいいのお!ババアマンコ最高じゃああ!!」

パンパンパンパンパン!

佐藤刑事「いやあああああっ、やめてええええええええ!!」

パンパンパンパンパン!

阿笠  「どうじゃ、コーヒーに入れた痺れ薬のせいで動けないじゃろ?」

パンパンパンパンパン!

佐藤刑事「あ、あなたは何てことを・・・・ああっ!」

パンパンパンパンパン!

阿笠  「ほっほっほ、ワシの楽しみを邪魔する奴は皆敵じゃ!ウッ!」

ビュルルルルッ!!

佐藤刑事「いやあああああ、中に出さないでええええ!!」

阿笠  「はあ、はあ、はあ、イったゾ・・・気持ちよかったわい」

佐藤刑事「ヒック・・・わたる・・・」

阿笠  「さてと、こいつは用済みじゃ。風呂場に持って行ってバラバラに
     してやるかのう。後始末はジンとウォッカに任せればいいじゃろ。
     ほっほっほ、チェーンソーは人体をばらすのにも便利じゃのう」

佐藤刑事「いや、やめて・・・・」

阿笠  「んほおおおおおおっ!!」

ギュイイイイイイイイン!!

円谷家

朝美  「ひいいいい、うるさい!またやってるわ!」

光彦  「さ、佐藤刑事が説得に行ってるはずなのにどうして!?」

その夜、光彦と朝美はストレスで眠れなかった。佐藤刑事に連絡を取るも
音信不通。業を煮やした朝美と光彦は近隣住民を集めて市に抗議することにした。
しかし・・・

住民1 「薪ストーブの煙?別に臭くないけど?風上だしね」

住民2 「薪割りの音?うーん、私はほとんど家にいないからね」

住民3 「うちは商売やってるからね。近所といざこざは起こせないんだよ」

住民4 「せやかて工藤」

近隣住民で親身になってくれる者はいなかった。仕方なく二人だけで市の
環境政策課を頼った。だが・・・

職員  「薪ストーブの煙が臭い?それは大変ですね。でも、煙を取り締まる
     法律がないんですよ。お願いぐらいならできますけど、住人がそんな
     感じじゃどうしようもありませんね。弁護士にでも頼んでください」

朝美  「そんなお金ありません!」

職員  「法テラスという無料で弁護士に相談できる場所があるんです。
     行ってみたらどうですか?」

そして二人はわらにもすがる思いで弁護士を頼った。

弁護士 「うーん、薪ストーブの隣人トラブルは増えてるんですけど、法律上
     取り締まれないんですよ。解決できたケースはほとんどないですね。
     やり方次第で慰謝料を取ることもできますが、少額ですし。
     相手に支払い能力がないと泣き寝入りですね。あと、万が一負けたら
     逆に訴えられることもあります。」

結局、二人の大きな助けになってくれる者はいなかった。肝心の阿笠は聞く耳を
持たない。幼い姉弟はただ苦痛に耐えるしかなかった。

数日後 円谷家

バキイッ!

光彦  「うわっ!」

朝美  「みっちゃんどうしたの?」

光彦  「急に床板が抜けたんです!」

朝美  「どうしたのかしら・・・あっ、シロアリがいるわ!」

光彦  「もしかしたら・・・博士の家の庭に置いてある木材からシロアリが
     発生したのかもしれませんね。木材はほとんど雨ざらしですから」

朝美  「そういえば、最近ネズミも見かけるわね。腐った木材を根城にするとか」

光彦  「人権侵害です、苦情を言いましょう」

朝美  「でも、敷地内に入るなって・・・」

光彦  「それなら電話で言いましょう」

光彦  『もしもし、光彦です』

灰原  「何よ、キモイわね。またクレーム?」

光彦  『僕の家でネズミやシロアリが大発生してるんですけど・・・そちらの
     雨ざらしの木材が原因だと思うんです』

灰原  「はあ、あんた何言ってるの?バカじゃないの?」

阿笠  『どうした哀くん?』

灰原  「となりのソバカスがうちのせいでネズミやシロアリが大発生したって
     言いがかりつけてるのよ」

阿笠  「ほっほっほ、変わってくれるかの?」

光彦  『あ、博士、うちでシロアリが・・・』

阿笠  「ほっほっほ、気にするな。うちもシロアリに喰われたことぐらいあるぞ」

光彦  『そういう問題じゃありません!』

>>19
一部抜けてた。修正

阿笠別荘

プルルルルル

灰原  「はい、阿笠です」

光彦  『もしもし、光彦です』

灰原  「何よ、キモイわね。またクレーム?」

光彦  『僕の家でネズミやシロアリが大発生してるんですけど・・・そちらの
     雨ざらしの木材が原因だと思うんです』

灰原  「はあ、あんた何言ってるの?バカじゃないの?」

阿笠  『どうした哀くん?』

灰原  「となりのソバカスがうちのせいでネズミやシロアリが大発生したって
     言いがかりつけてるのよ」

阿笠  「ほっほっほ、変わってくれるかの?」

光彦  『あ、博士、うちでシロアリが・・・』

阿笠  「ほっほっほ、気にするな。うちもシロアリに喰われたことぐらいあるぞ」

光彦  『そういう問題じゃありません!』

阿笠  「あああああああああああああああああああああああああ!!
     うるさあああああああああああああああああああああい!!」

光彦  『ひいっ!』

阿笠  「おかしな言いがかりをつけてうるさいんじゃあああああああ!!
     今そっちに行くから待っておれ!!」

ガチャン!

円谷家

朝美  「どうしたの!?」

光彦  「博士が突然切れだして、こっちに来るって・・・」

朝美  「ええっ!」

阿笠  『みつひこおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
     でてこおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオいい!!』

円谷姉弟『ヒッ!』

朝美  「門の外で叫んでるわ!」

光彦  「敷地内には入ってこないんですね・・・」

阿笠  『謝れええええええええええええええええええええええええええええ!!
     土下座しろおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
     ファビョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

阿笠の怒鳴り声は一時間近く続いた。その後、阿笠は日が沈むまで庭で薪割りを
していた。罵声や騒音は着々と姉弟の精神をむしばんでいった。

翌日 円谷家 庭

光彦  「あっ!」

朝美  「どうしたのみっちゃん!?」

光彦  「ぼ、僕のマウンテンバイクが・・・」

朝美  「酷い、傷だらけだわ」

光彦  「きっと、あいつの仕業です。昨日の腹いせに・・・もう我慢できません
     ・・・殺してやります」
ダッ

朝美  「あ、待ってみっちゃん!」

阿笠別荘前

光彦  「博士、いるのはわかってるんですよ!出てきてください!」

ジン  「小僧、ここに何か用か?」

光彦  (黒服の男?どうみても普通の人じゃない・・・)

ジン  「何か用かと聞いているんだが?」

光彦  「い、いいえ何でもありません。失礼しました・・・」
    (ヤクザが絡んでるんじゃどうしようもないです・・・)

トボトボ

ジン  「行ったか」

阿笠  「ごくろうじゃったのおジン」

ジン  「いえ」

阿笠  「案の定、マウンテンバイクを壊した仕返しに来たな。じゃが、
     これでもう二度と来ないじゃろう。しばらく見張りは頼んだぞ」

突如として現れた黒服の用心棒に光彦の心は折れてしまった。光彦は七歳の
若さでたちの悪い社会悪を知ってしまった。その心は絶望に満ちていた。
一部始終を見守っていた朝美も光彦を責めることはなかった。

その夜 阿笠別荘前 黒いポルシェ内

ジン  「それにしてもひでえ臭いだ。ボスの命令とはいえ、燻製に
     なるのはごめんだな」

ウォッカ「最新式の薪ストーブは煙や臭いはほとんどでねえはずじゃ
     ないんですかい?ベルモットの別荘にもありやしたが別に
     臭くはなかったですぜ」

ジン  「フン、お前の目は節穴か?ボスが使ってるのは最新式じゃねえ」
    「あれは中国製の粗悪品だ」

ウォッカ「そうなんですかい?」

ジン  「博物館行きの暖房器具には詳しくねえが、まっとうな海外製なら
     確かに臭いや煙は最小限に抑えられる」

ウォッカ「俺には違いがよくわかりませんぜ」

ジン  「普通は煙突にフィルターみてえなものがついているようだが、
     それらしきものは見えねえ。何より、ボスは燃料の薪をきちんと
     乾燥させてねえ。見ろ、トタンを適当にかぶせてあとはほとんど
     雨ざらしだ。それが一番の臭いの元だろうな」

ウォッカ「なるほど・・・」

ジン  「考えても見ろ。普通に揃えりゃ八ケタ近くも金が飛ぶ代物だ。
     庶民に簡単に手が届くわけねえだろ。乾いた燃料も買えば高い。
     しかし金持ちの真似事はしたい。そうなると、粗悪な品物と
     粗悪な燃料を揃えるしか―――」

バアンッ!!

ジン  「なんだ・・・」

ウォッカ「あっ、煙突が火を噴いてやすぜ!」

ジン  「まあ、大方手入れを怠ったんだろうな。粗悪品の整備不良による
     火災なんてよくある話だそうだ。煙突火災って奴だな」

ウォッカ「どんどん燃え広がってやすぜ。あっ、ボスとシェリーが出てきた!」

阿笠  「おい、ウォッカ!早く車を出せ!」

灰原  「ここから逃げるわよ!」

ウォッカ「へい、わかりやした!」

ブロロロロロロ!!

灰原  「ねえ見て、光彦の家も燃えてるわ!」

阿笠  「ほっほっほ、ワシらに楯突いた罰が当たったのじゃろう! 
     ザマミロじゃああああああああ!!」

闇を駆ける黒いポルシェの中に悪の笑いがこだました。一方、円谷家。

光彦  「ぼ、僕の宝物があああああああ!!」

朝美  「何をやってるのみっちゃん、早く逃げないと死んじゃう!」

光彦  「あは、あははははは・・・・もうどうでもいいです」

朝美  「え、何を言ってるの?」

光彦  「お姉ちゃん、この世界は残酷ですよ。明らかに酷いことをされていても
     取り締まる法律がないからって誰も助けてくれないんですよ。阿笠博士や
     灰原さんにも裏切られて・・・僕はもう、こんな世界で生きたくない!」

朝美  「みっちゃん・・・そうね。私も疲れちゃった。今から逃げたって
     私たちの家や宝物は燃えちゃってて元に戻らないし、私もきっと
     人を信じられないと思う。死んだ方が楽かもね。」

光彦  「うん。僕、お姉ちゃんと一緒なら恐くないですよ。」

朝美  「私もよ、みっちゃん。」

光彦  「ずっと・・・一緒です」

朝美  「生まれ変わっても一緒になろうね」

こうして二人の幼い姉弟は炎の中へと消えていった。近年、様々な隣人トラブルが
多発している。騒音、悪臭、日照問題、原因はいくらでも挙がるだろう。
自分の家で好きなことをしたい、趣味に没頭したいという気持ちはおかしな
ものではない。しかし、我々は社会に生きている以上隣人の存在に気を配らねば
ならない。自己中心的な気持ちが思わぬ被害を招いてしまうこともあるのだから。


数日後

阿笠  「しかし、光彦のやつ傑作だったのう。わざわざ粗悪品の薪ストーブを
     用立てた甲斐があったわい」

灰原  「光彦もバカね。まさか家と心中するなんて」

阿笠  「光彦の丸焼きなんぞ宮のたれをかけても喰えんわい!!」

灰原  「朝美の燻製もごめんだわ」

二人  『wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』

阿笠  「さて、次はどうするかのう」

灰原  「歩美の家の隣にゴミ屋敷でも作ったら面白いんじゃない?」

阿笠  「ほっほっほ、ゴミ屋敷問題は解決が難しいからのう。最高の苦痛を
     与えてやれるじゃろう。」

灰原  「で、やっぱり最後は延焼させるのね」

阿笠  「とーぜんじゃ!」

二人  『wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』


どこまでがほんとなんだ…
つかアガサと灰原ぇ…

>>29
佐藤刑事の下りとヤクザが出てくる以外はほぼ実話かな。
あと被害に遭った家は死人こそ出なかったけど延焼が
中途半端だったせいで火災保険も下りなかったみたい。
いっそ全部燃えてしまえばよかったって言葉は印象的だったな

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom