大学に落ちたら高校時代に戻された話 (26)

俺は大学に落ちた

××大学 理学部 物理学科

そこが俺の受けた所だ

そこで研究し俺はあるものを作りたかった

それは・・・

いやそんなこと今となっては関係ないか

そんな事を考えている内に周囲の声にイラついている自分に気がつく

合格に笑ってはしゃぐ親子

感極まって泣く者

抱き合う男女、付き合っているのだろうか

イラついているのに反してなぜか頭は冴える

まるで落ちてしまったのは自分だけではないか

そういう考えすら浮かんできた

笑い声が鬱陶しい

まだ冬の寒さの残る冷たい風すらも鬱陶しい

落ちたのは当然といえば当然なのだろうが

俺はやればできる

本気を出せば志望校の合格なんて余裕だ

心のどこかでそう思っていた

昔からそうだ

高校での定期テストの時だって

悪くてもあせるどころか勉強してないから、本気でないから

などと言って余裕すら見せていた



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葉が枯れ落ちすっかり寂しくなった
並木街道をひとり歩いていると

突然後ろから声がした

「お、いたいた。お前だなミタライってのは
っても分りきってんだけどな」


振り返るとそこにはそう言って笑いながら近づいてくる
一人の男がいた

「誰だ?」俺は自分でも気づかぬうちに尋ねていた
すると男は、にまりと笑って言った

「誰だって、んなこと自分が一番わかってんじゃないの?
ミ・タ・ラ・イさん♪」

この男の言うとおりだ
俺はこの男をよく知っている

いや、知っている。という表現すらおかしく思える
なぜなら、この男は

俺が生まれてから18年間ずっと見続けている顔だからだ
そう、“俺自身”なのだ

厳密に言えば俺ではない
今の俺より少し老けている

「変装ってわけではないのか?」
再び俺が聞く

自分はやればできる、本気を出せば~
お前の好きな言葉だろ?
そしてお前は自分のことをクズ野郎だと思い始める」
男が言う

「クズ野郎は違うが・・・
まぁその“推測”はあってるぞ続けてみろ」

「い~やお前は自分のことをどうしようもないクズ野郎だと思うようになるね」

「・・・まぁいいや、お前が思い返すようになったころにまた来てやるよ

え~と、そうだなぁどういえば信じてもらえるかな

あ、そうだ高校のとき遅めの初恋って奴をしたっけな

確か名前は・・・ムカイさんだったかな?

んで、どうすればいいのかわからなかったお前は

彼女をストーk「やめろ!!わかった信じる信じるから」

この男を信じることにしたのは気が変わったからだ

信じてもいいと、ふと思ったからだ

ふとだ、理由なんてない

因みに言っておくがストーカーなんてしてない

断じてしてない

あれはストーカーではない

だが、この“俺”はいったいどうやってここに?

まさか・・・

いや、ありえないか

そんなことを考えでいると

「じゃちょっと寝てもらうぜ」

「なn・・・」聞き返す暇もなかった


━━ろよ
おき━よ
起きろよ!!


「ここは・・・?」どこだ?
“俺"にされたことを思い出せ・・・

「所長どこに行ってたんですか・・・
って誰ですか、ソレは」

「にしし~
まぁ気にすんなって~」

「気にすんなって・・・」

「それより、あの装置どこやったけ?
使いたいんだけど」

「使いたいってあれはまだ・・・」

「大丈夫だって~♪」

「ったく何でそんなこと言い切れるんですか?」

「なんでって・・・
“俺”がここにいるから?」

「・・・理由になってませんよ、それ」

「まぁまぁ
お!あったあった
これを、こうしてスイッチオーーーーーン」

「あ、ーーそう最後ーーとつ

ーーリとーーーやーーー」

ったく、何を考えているんだ、“俺”は・・・

なんか危険っぽかったじゃねぇか

そんなんで俺にもしものことがあったr

「っておーーーい!!!
おきたと思ったらなんだよ!
考え事か?お?お?」

「なんだよ、るせぇな」

「うるせぇってなんだよ

小学校から一緒で、やさしくてイケメンのこの

ワタリ様が寝てて起こられそうな

貴方様を起こしてあげたのに」

「あー、はいはい

ありがとうございました」

この無駄にテンションの高い男は
そう、世間で言う幼馴染という奴だろう

家も隣で勝手に上がりこんでくるし
しかし、なぜ
男なんだ
そういうのは普通
女じゃないのか

まぁいい
俺はこの高校3年間を

必死に勉強して
今度こそあの大学に
受かってやるんだ!

そのためにもさっそく今日は帰ってすぐ勉ky「なぁなぁ!!!」

ワタリが耳元で尋ねてくる

「今日さ、入学式が終わってホームルームのあとさ
どっかカラオケでも行ってあそばね?」

ワタリからの誘い
遊びたい盛りの高校生だ

ましてや、入学式の日だ

だが、俺には大きな目標がある

「わるい、せっかくの誘いだけど
今日は・・・」

いや、まてよ
俺は仮にも大学に向けて
勉強してきた身だ

ほとんどしてないに等しいが・・・

だったら、今日1日ぐらいは
遊んでもよいのではないだろうか

そう思い直し

「いや! やっぱいくわ!!」

「おう! そうこなくっちゃ!!」

今日だけだ、明日からは毎日頑張ろう

入学式が無事終わり 
ホームルームも終わりに近づいてきた

「さぁ、もう高校生だから
言わなくてもわかると思うが
寄り道せずにまっすぐ帰れよ」

その言葉に俺とワタリは目を見合して笑う

そんな様子に気づいたからか
先生から声がかかる

「あ、そうそう
ミタライ君とワタリ君は
このあと職員室に来るように」

「「!?」」

今度は目を見合して驚いた

「おいおい、入学早々なんだよ」

「俺たちが笑ってたのに気づいたんじゃないか?」

「まじかよ、ついてねぇ」

そんなことを話しているうちに

「お、ついたぞ」

「はぁ、これから怒られるのかよぉ」

そういって落ち込むワタリを尻目に

コンコン

失礼します

「コンドウ先生に呼ばれてきました」

「あぁコンドウ先生ね、君達は・・・
先生のクラスの子?」

「はい」

「そう、ちょっとまっててね」

コンドウセンセーーイ

ハーーイ

クラスノコガキマシタヨー

イマイキマース

「よく来たね」ニコ

いやな笑みを浮かべて
先生が来た

「やっぱり、説教ですか
せんせーー」

ワタリが大胆にも尋ねる

「おう! よくわかったな!!」ニヤ

「「はぁ」」

「何でいきなり説教なんですか!!」

再び尋ねる

「そりゃぁ、入学式早々
式もほったらかしで
やたら楽しそぉぉぉお、に
話している生徒がいるなぁ
と思ったらウチのクラスの子だったもんだからなぁ?
きっと、話したりてないだろうなぁ、と思ってだな」

「「・・・」」

「くぅぅう、やっと説教も終わったし行くか!!」セノビー

「そうだな、気晴らしにもなる」
そうだ、今日はただの気晴らし、明日から勉強し続ければいいだけの話だ

「そういえば、どこのカラオケに行くんだ?」

「このワタリ様にまかせておきなっさぁい」ドヤガオ-

「・・・おう」

「なんだよ、不満か?」

「いや、そういうわけではないが・・・」

こいつがこうやって自身に満ちているときは

大体よからぬことをしでかすから心配なだけなのだが・・・

「まぁ、ついてからのお楽しみ♪

・・・っとンなこと言ってる間についたぜ、ここだ」

「ここは・・・」

「っそ、なつかしいだろ♪」

ここは昔、俺とこいつで秘密基地にしていた場所だ

たしか、なにかの研究所だったか・・・

「で、ここでどうやってカラオケをするんだ?」

「っふっふ~ん、これを使うんだ!!」

「カラオケマシン? 電気はどうするんだ? 音は?」

「だぁいじょうぶだって、電気は・・・ほら

何でかは分かんないけどまだとおってるみたいだし

音はここ、元研究所だろ?

実験とかの関係で防音なんだぜ」

ご都合主義といったやつか・・・

「ん? なんかいった?」

「いやなんでもない」

「そっか、いやぁそれにしても懐かしいな

昔ここでおまえといろいろ話したっけ

親のこと、学校のこと、将来の夢なんてモンも語ったっけ」

「・・・そうだな」

「あの時の夢、まだ覚えているか?」

「さぁな、そんな昔のこと忘れちまったよ」

「それもそうだな!」

嘘だ、俺はまだあのときの夢を

追い続けている

大学に落ちてしまった今となっても

タイムスリップしてまで

追い続けている

「ま、そんなことより

歌おうぜ!!」

「・・・そういえばテレビはあるのか?」

「・・・え?」

「テ・レ・ビ、それ、テレビにつなぐやつだろ?」

「・・・・・・えぇぇぇとぉぉ

ちょっとカラオケはやめとこうぜ、ほら

説教が長くてもうこんな時間じゃないですか」

「3時だな」

「オヤツ タベタイデスネ」

「・・・はぁ、ゲーセンでも行くか」

「はい、ごめんなさい」

「さて、そろそろ帰るか」


「おう、もうこんな時間だしな」

気づけばもう7時だ

まぁ、今日はいろいろあって

疲れているし帰ったらすぐ寝よう

何度も言うが

明日から勉強しよう

必ず、ぜったいだ

そして次の日の授業

なんだ、この程度の問題か

だったら、勉強なんてしなくてもぜんぜんいけるな

人間不思議なことに、少しでも余裕をもってしますと

その余裕を増やそうとするのではなく

その余裕で以下に楽するかを考えてしまうものなんのである

もちろん、俺自身もそのとおりであった

この程度の問題なら

しばらくは遊んでいても大丈夫だな

どこかでそう決め付けていた

この判断が今後どのように作用するなど

このときは全くわからなかったし

考えてもいなかった

少しでもわかっていたならば

あんな惨劇を招くことなんてしなかっただろう

「おい、大丈夫なのかよ」

突然心配そうにワタリが聞いてきた

思い当たる節などひとつもない

当然のように聞き返した

「・・・なにが?」

「お前、最近ずっと授業中寝てるし

この間も隣町の不良たちとゲーセン行ってたのを

みたって奴が何人もいるぜ」

ワタリはそういって続ける

「最近どうしちまったんだよ

前までは明るくて、いつも笑ってて、元気な奴だったのに

いまでは、何に対してもやる気をなくしちまってる

いったい何があったんだよ!!!」

最後は声を荒げていた

クラスメイトの視線が集まる

少し苛立ちも感じた

そのためか、普段よりさらに冷たく突き放してしまった

「・・・・・・別に、お前に関係ないだろ」

「なんだよ、関係ないって俺はお前のことを思って

心配して声かけてやってるのに

そんな言い方ないだろ、ふざけんな

ふざけんなよ!!!!!

もうしらねぇ、勝手にやっとけ!!」

そういってワタリは、あいつは

教室を出て行った

「・・・んだよ」

思わずつぶやいた

俺のことを思って?

心配して?

声をかけてやっている?

ふざけるなはコッチの台詞だ

何様のつもりだ

俺の気持ちなんて知らないくせに

俺だって好きでこんなことしてんじゃねぇよ

本当なら今頃は

大学に入って

たくさん勉強して

研究したいことをして

あのときの夢をかなえているはずだったのに

それがかなわなくて

それで、それで・・・

「なんだってんだよ!!」

俺は思わず叫んでいた

再び静まり返る教室

「クソッ!」

耐え切れず教室を出て行く

それからの日々はただただ出席を稼ぐためだけに

学校に行きだらだらと

惰性の日々をすごしてきた

そんな生活を続けて

早2年

「いよいよか・・・」

思わずそうつぶやいてしまった

そう、俺は再びあの場所に立っているのだ

正直自信はないが、まぁ一応ほかのみんなより3年長く勉強しているんだ

大丈夫だろう

自分に思い込ませるようにして

受験に望んだ






結果は

不合格





わかっていた、3年前のあの時と何も変わってないのだから

いや、むしろ唯一無二の親友ワタリを失っている分

あのときよりもひどいといえるだろう

それも、すべて自分が悪いのだから

笑いすらこみ上げてくる

あぁ、俺はなんてだめな人間なんだ

とんだ、クズ人間だな

「あ・・・」

つい口に出してしまった

そうだ、あのときの

“俺”が言った言葉

「は、ははは、ははっはっははは

そうだそうだ、俺はなんてだめでどうしようもない人間だ」

声に出して笑ってしまった

周りの目が痛々しい

だが関係ない

なんでかって?

俺はクズ人間だからだよ

「っと、そろそろかぁ?」

突然後ろから間延びした声がした

そこには“俺”がいた

「どうだ、もう一度高校3年間すごしてみた感想は?」

「どうもこうもねぇよ

つまらない3年をすごし

友人は失いその挙句また落ちてんだもんなぁ

わらうしかねぇよ

もうあんな思い2度とごめんだね」

「・・・そうか、2度と経験したくないか」

真剣な顔で、そしてどこか切なそうに彼が聞く

「あぁ、全く持ってそのとおりだね」

俺は答えた

だが、その返事は予想とは

ちがい、想像すらできないようなものだった





「だが、もう1度だけ経験してもらう」

「なっ・・・」

驚きのあまり声が出なかった

「お前、俺にはもう1度だけ過去に戻り

もう3年間すごしてもらう」

“俺”が続ける

「ただし、全く同じにしろとはいわない

むしろ変わってほしい、いや変わるんだ

今の自分を感じたことを生かして

もう3年間過ごしてくれ」

そういい終わると俺の返事を聞かず

また眠らされた

━━ろよ
おき━よ
起きろよ!!

目を覚ますとそこには

ワタリがいた

なんとなく気まずくて

しぃ

とやって黙らせて

その場はしのいだ

その後ホームルームの前

ワタリが来た

「おいおい、せっかく起こしてやったのに

なんだってんだよぉ!!

俺がまぬけみてぇじゃん」

そんな光景に思わず微笑む

「ん?なにわらってんだ?

まぁいいや、それよりさ

これ終わった後カラオケいかね?」

これだ

これをどうする

正直に話すか・・・

いや、しかし

「なんだよぉ、こたえろよぉ

おーい、ミタr「すまん、それいけねぇわ・・・」

「・・・なんでだ?」

静かに尋ねられる

「・・・俺は行きたい大学があるんだ

そのためには今日ここで遊んでちゃいけないんだ

もちろん、入学式初日に

しかも、俺が言うようなことじゃないのはわかっている

でも、だめなんだ!すまねぇ・・・」

俺が言い終わると

ワタリはそのまま静かに答えた

「そっか、がんばれよ

その大学にいけるように努力し続けるんだ

でも、どうしても弱音を吐きたくなったら

俺の所にこい、それだけは約束しろ

いいな?」

「あぁ」















そして、月日は流れ

とある研究所



ついに俺は完成させた

子供のころからずっと夢を叶えた

思えば高校の3年間、最後の3年間は

必死に頑張っていたな

昔の俺があれを見たらなんというだろう

っふ

笑みがこぼれた

「あなた!!

ついに完成されたんですね!!」

こいつは助手でそして俺の妻の

ムカイだ、この研究をずっとそばで支えてくれた

「あぁ、ついにだ」

コレはこいつと高校時代支えてくれたワタリがいなかったら

完成していなかっただろう

いや、そもそもこの場に立っていなかっただろう

「なぁ」

ムカイに聞く

「はい、なんでしょう」

「いきなりで悪いが、早速コレを使わしてもらう」

「まぁ、実験しないで大丈夫なんですか?」

「あぁ、“俺”がここにいるからな」

「そうですね・・・」

「そういえば・・・」

思い出したようにムカイが尋ねる

「いったい、誰のところに行くつもりですか?」

「そうだな、どうしようもないクズ野郎のところかな」

コレで終わりです!!

初投稿なんで
至らないところも多々ありますが
温かい目でお見守りください

また、文章上の失敗等はご指摘いただけると
感謝感激です

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