士郎「君は……?」さくら「真宮寺さくらと申します」(46)

士郎「えっと……」

さくら「少し待っていて下さいね」ギィ

士郎「いや、今外に!」

さくら「はい、分かっています」

さくら「まずは落ち着ける場所にしなければですから」

さくら「……また、ここに来られた」ボソ

士郎「え?」

さくら「貴方はここに居て下さい」

さくら「衛宮さん」

士郎「どうして名前を……」

さくら「どうも、お待たせしました」

さくら「見たところ、あなたはランサーですか?」

ランサー「ほぉ、なんか変なのが出てきたかと思えば」

ランサー「あんたが今回のセイバーって訳か」

さくら「粗野を絵に描いたような人ですね」

ランサー「生憎と、これが性分でね」

ランサー「で?オレは奥のやつに用があるんだが?」

さくら「彼は私のマスターですから」

さくら「行かせるわけには行きませんね」チャキ

ランサー「……へっ、そういう分かりやすいのは嫌いじゃないぜ」シャキ

ランサー「悪いが、出てきて早々帰ってもらう羽目になるな」

さくら「大した自信ですね」

ランサー「自信ってか、事実でよ」

ランサー「いきなりだが、宝具、使わせてもらうぜ」ヒュオオォ

さくら(なるほど、一撃必殺の宝具)

さくら(霊子甲冑で防ぎ切れるかどうか……)

さくら(それに、この違和感)

さくら(おそらく、霊力の供給が……)

さくら(……私の霊力で、最後まで戦い抜く必要があるかもしれない)

さくら(ここで、無駄な力を使うこともできない、か)

ランサー「おいおい、目の前で考え事とはいい度胸だなぁ」

ランサー「待ってるなら、行かせてもらうぜ!」

さくら(………!来る!)

ランサー「刺し穿つ死棘の槍《ゲイ・ボルク》!!!」

さくら「………!!」キィン

ランサー「……どーなってやがんだ?おい」

さくら「なるほど、貴方は光の御子クー・フーリンだったのですね」

ランサー「オレの宝具は百発百中だぜ?」

ランサー「それがかすり傷しか負わせられないってのはおかしく無いか?」

さくら「因果律の逆転、恐ろしい宝具ですね」

さくら「ただ、私とは相性が悪いようですが」

ランサー「どうやらそのようで」

ランサー「…ちぃ、邪魔が入った」

ランサー「セイバー、次はない」

さくら「あら、私が大人しく貴方を帰すとでも?」

ランサー「……ああ、そんな気がするな」

さくら「……決着は次にしましょう」

ランサー「へっ、今は言わせといてやるよ」シュッ

さくら「さて、と」キンッ

さくら「出てきたらどうですか?」

???「やはり、見つかっているようだが?」

???「うるさいわね!知ってるわよ、もう!」ガサガサ

???「ふぅ、初めましてセイバー」

???「私は遠坂凛、こっちのアーチャーのマスターよ」

アーチャー「私はいない方が平和に話し合いで解決できるのではないか?」

凛「そう思うならどっか行ってなさい、また令呪を使うわよ」

アーチャー「……さすがにマスターの蛮行を見るのは偲びない、近くで待機することとしよう」スゥ

アーチャー(セイバー?あの女……何者だ)

さくら「それで、凛さんは何故ここに?」

凛「ああ、えっと衛宮くんが……」

士郎「遠坂?」

凛「あ、あはは……」

さくら「とりあえず、少し落ち着きましょうか」

~衛宮邸内~

士郎「こんなものしかないけど」コト

さくら「ありがとうございます」

凛「……」

士郎「で?遠坂がここにいることと、この人が出てきたこと」

士郎「何か関係があるんだろ?」

さくら「……」ズズッ

さくら「おいしいお茶……」ホゥ

凛「……ええ、まあ関係あると思うわよ」

凛「にしても、衛宮君がマスターになるなんてね」

凛「……しかも、セイバー、強そうな……」ギリッ

士郎「遠坂?」

凛「うるっさいわねぇ!少しは考える時間くらいくれてもいいでしょう!」ダンッ

士郎「な、なんか印象違うな、遠坂」

士郎「……なるほど、聖杯戦争」

凛「はぁ、衛宮君も魔術師だってだけでオドロキなのに」

凛「まあ土俵にも立っていない人を倒しても私の実力の証明にはならないから」

凛「今回だけよ、こんなサービス」

さくら「遠坂……」

凛「なによ、いきなり呼び捨て?」

さくら「あ、いえ」

さくら「すみません凛さん、全てお任せしてしまって」

凛「……あんたも、なんか調子狂うのよね」

士郎「そういえば、君の名前……」

さくら「すみません、他のマスターの方がいる所では」

さくら「私のことは、セイバーとお呼び下さい」

士郎「え、どうして……」

凛「さっき話したじゃない」

凛「貴方は違うけど、普通マスターになるような魔術師なら」

凛「名前を聞けばそのサーヴァントの能力やランク、宝具なんかもわかっちゃうものなんだから」

凛「ま、見たところ日本の英霊みたいだし?そんなに手間もなく見つかりそうではあるけど」

さくら「それはご自由にどうぞ」

凛「……やっぱ気に食わないわね」

凛「とりあえず、衛宮君、いや士郎」

士郎「いきなり呼び捨てかよ」

凛「いいじゃない、面倒だし」

凛「で、マスターなら登録しといた方がいいわよ」

寝る、また今度

士郎「登録?」

凛「マスターのために、色々してくれるのよ、教会が」

凛「……ま、詳しいことは神父にでも聞きなさい」

凛「一応、先輩魔術師として、案内までならしてあげるわ」

凛「そこから先は、敵同士」

士郎「敵……」

士郎「なぁ遠坂、お前は聖杯を手に入れてどうしたいんだ?」

凛「……内緒」

士郎「え……?」

凛「とにかく!さっさと行くわよ」

さくら「士郎さん、行きましょう」

さくら「せっかくのご厚意、無下にするのは良くないと思います」

~教会~

綺礼「おや、凛」

綺礼「こんな夜更けにどうした?」

凛「お届け物よ」

凛「新しいマスターと、サーヴァントが現れたわ」

綺礼「ほう……」

さくら「……!言峰綺礼!」シャキン

綺礼「おや、数奇な運命だな、セイバー」

綺礼「ここでまた相対するとは、いやはや」

士郎「知り合いなのか?」

さくら「士郎さん、あの男に近付いてはいけません」

さくら「あれは、人ではない何か……」

さくら「醜悪さの塊です!」

綺礼「ははは、嫌われたものだ」

綺礼「だが、今の私はただの神父、今回は警戒せずともよい、セイバー」

さくら「そんな言葉が信用できるとでも?」

綺礼「……ふ、違いない」

凛「あの、さっさと終わらせてくれないかしら?」

凛「サーヴァントとなんで知り合いなのかは気になるけど」

綺礼「なに、単純な話さ」

綺礼「前回の聖杯戦争の時も、そこのセイバーは参加していたというだけだ」

凛「!」

凛「ちょっと!それってどういう……」

綺礼「まあよい、衛宮士郎、お前にマスターの資格ありと認め、ここに聖杯戦争の参加を受理しよう」

綺礼「戦いの中でサーヴァントを失う、もしくは棄権したくなった時、教会を再び訪れるとよい」

綺礼「身の安全は保証しよう」

凛「綺礼!話を聞きなさい」

綺礼「いや失敬、凛」

綺礼「だが、どうやらマスター同士のいざこざが起こりそうなのでね」

綺礼「私は介入できん、話は全てが終わった後で良いだろう」

綺礼「今は励むことだ」

凛「……」ギリッ

士郎(たしかに、神父って割りには不気味なやつだな)

綺礼「……そうだ、衛宮士郎」

士郎「?」

綺礼「喜ぶがいい、貴様の望みはようやくかなう」

士郎「……それはどういう」

綺礼「あとは、自分自身に聞くことだ」

綺礼「助言しておく、逃げる時はおとなしく逃げろ」

綺礼「それが人のあるべき姿だ」

士郎「……あんたが何を言いたいのか、わからないな!」

綺礼「……それならそれでいいさ」

さくら(言峰綺礼……あの時のようにまた……)

さくら(問題が山積みね、なんとかしなきゃ)

凛「……ほんっと、やなやつ!」

士郎「ああ、本当に神父なのか?あいつは」

凛「人の話は聞かないし、不気味だし」

凛「まったく、これだから……」

アーチャー「凛」スゥ

凛「な、なによイキナリ」

アーチャー「逃げるぞ、もうすぐここに」

さくら「アーチャー、一体何が?」

アーチャー「……」チッ

アーチャー「バーサーカーだ、イリヤスフィールが動き出した」

さくら・凛「イリヤが!?」

凛「って、なんであなたまで」

アーチャー「いいかセイバー、私はそこの男がどうなろうと知らん」

アーチャー「お前もマスターになったからには、判断は己ですることだ」

凛「士郎、セイバー」

凛「あんた達もイリヤスフィールとは正面切って戦うべきじゃない」

凛「一旦態勢を立て直して……」

アーチャー「いいから行くぞ!」

???「ええー、もう行っちゃうの?」

アーチャー「!早い……!」

イリヤ「どうも、セイバーのマスターとアーチャーのマスター」

イリヤ「わたしはイリヤスフィール・フォン・アインツベルン」

イリヤ「こっちはバーサーカー」

バーサーカー「……」

士郎「な、なんて大きさだ」

イリヤ「ふふ、強そうでしょう」

イリヤ「まあ、バーサーカーは最強だから、実際に強いんだけどね」

イリヤ「なにせ、バーサーカーは英霊ヘラクレスなんだから」

士郎「ヘラクレスって……」

凛「自らサーヴァントの素性を明かすなんて、大丈夫なのかしら?」

イリヤ「平気よ、別に」

イリヤ「そこの二人、見たこともないけど」

イリヤ「すっごく弱そうだもん」

さくら(イリヤ……やはりアインツベルンが)

さくら(私のことも覚えていない、か)

アーチャー「凜、今ここで戦う意味は無い」

アーチャー「行こう」

イリヤ「行かせると思う?」

アーチャー「そちらも今日は引き下がったらどうだ?」

アーチャー「こちらはアーチャーとセイバー、多少不本意だが」

アーチャー「この状況、共闘するに吝かで無いぞ」

凜「ちょっと!勝手に話を進めないでよ!」

凜「……ま、でもそうね」

凜「いくらヘラクレスでも、二人相手は荷が思いんじゃない?」

イリヤ「ふぅん」

イリヤ「じゃ、やってみる?」

凜「あ、ダメだこの作戦」

士郎「遠坂……」

さくら(士郎さん、私もここは下がるべきかと)

さくら(幸い屋敷であれば、防御もある程度きちんとしています)

さくら(逃げることさえ出来れば)

士郎(それはそうだろうけど)

士郎(作戦はある?)

凜「アーチャー、いっそここで奴を倒しなさい!」

アーチャー「何を言っているんだ……」

士郎(遠坂は完全にテンパってるしな)

さくら(そういうタイプには見えませんでしたけど)

さくら(私、素早さには自信があります)

さくら(アーチャーはアーチャーで、逃げることは可能でしょう)

さくら(まずは士郎さんの安全が第一です)

イリヤ「そこ、なにこそこそしてるわけ?」

さくら「いえ、なんでもありませんよ」

さくら「アーチャー、そっちは上手く対処できますよね?」

アーチャー「無論だ」

アーチャー「うちのマスターは、そちらのマスターと頗る相性が悪いらしい」

アーチャー「今後は敵同士、あまり関わり合いになってほしくはないな」

さくら「そうですね、その方がいいでしょう」

さくら「互いの武運を祈ります」

アーチャー「ふん、精々生き残るがいい」ガシッ

凜「ちょっと!アーチャー!」

アーチャー「セイバーがなんとかすると言っている、こちらはこちらだ」

イリヤ「バーサーカー!逃がさないで!」

アーチャー「残念だが、視界に入らないのは得意でね」シュンッ

イリヤ「……っ、逃げ足の早い」

さくら「さあ士郎さん、私の手を」スッ

士郎「いいけど、一体なにを?」

さくら「私の力の一つです」スウッ

イリヤ「!消えた……!?」

士郎(どうなってるんだ?)

さくら(今の私たちは、認識できない状態になっています)

さくら(彼女なら見破るまでそう時間もかからないでしょうし)

さくら(とにかく退きます、下を噛まないで下さいね)シュンッ

士郎(うわぁぁぁ!?)

イリヤ「……バーサーカー、あの二人」

イリヤ「ううん、まあいいわ」

イリヤ「次に会った時は、確実に仕留めるわよ」

バーサーカー「………グルルッ」

~衛宮邸~

さくら「士郎さん、大丈夫ですか?」

士郎「……ちょっと気持ち悪いくらいかな」

士郎「なんとかなってるよ」

さくら「良かったです」

さくら「とりあえずは作戦会議をしましょう」

士郎「作戦会議?」

さくら「はい」

さくら「聖杯戦争を戦い抜くための作戦です」

士郎「……聞かせてもらえる?」

士郎「お茶、淹れるよ」

さくら「ありがとうございます」

さくら「……それで、まずは今の状況から」

士郎「頼むよ」

さくら「私と士郎さん、聖杯戦争のマスターとサーヴァントですが」

さくら「霊力の繋がりがありません」

士郎「霊力?」

さくら「ああ、ここでは魔力ですね」

さくら「本来、サーヴァントはマスターから力を受け現界しているのですが」

さくら「士郎さんから、その力を受け取ることができていません」

士郎「そうか……」

士郎「ごめん、俺がまだ未熟だから」

さくら「ともかく、これは改善できる確証もありません」

さくら「凜さんなら何か方法を見つけられるかもしれませんが、あまり頼るのも良くないでしょう」

士郎「はは、戦争だもんな」

さくら「なので、今後は私自身の持つ霊力だけで戦うことになる可能性が高いです」

さくら「ですから、無駄な戦闘はなるべく避け、最終戦付近で戦える力を温存する必要があります」

士郎「もし霊力が無くなったら、君は」

さくら「私に単独行動スキルがあればまた違うとは思いますが」

さくら「恐らく、霊子甲冑の力で現界を少し長引かせるくらいが限度でしょう」

士郎「よく、分からないけど」

士郎「消えてしまうってことだよな?」

さくら「ええ、間違いなく」

さくら「私はなんとしても、聖杯を手に入れなければなりません」

さくら「他のマスター、サーヴァントには渡せませんから」

士郎「そうまでして、叶えたい願いがあるってことかい?」

さくら「……少し、違いますが」

さくら「ともかく、今後の話を続けます」

さくら「まずは、私に自由な行動を出来る時間を下さい」

さくら「幸い、私たちには繋がりがありません」

さくら「近くても遠くても、不具合はないはずです」

士郎「そう……なのか?」

さくら「私の外見は日本人ですし、目立ちにくいとも思います」

さくら「士郎さんも、出来るだけこっそり生活して下さい」

さくら「学校へ行かれる以外の外出も、無いに越したことはありません」

士郎「意外だな」

士郎「学校はいいのか」

さくら「学校には凜さんがいます」

さくら「突然襲ってくる方ではないでしょうし、他のマスターから襲撃を受けた場合も彼女を盾にすることが……」

士郎「……嫌だ」

さくら「盾というのは語弊がありますが」

さくら「要は、学校で襲われるということは同時に凜さんも襲うことになる」

さくら「彼女は士郎さんに関係なく、自ら戦うことでしょう」

士郎「それでも、嫌だ」

さくら「直接戦うのは、あのアーチャーでも?」

士郎「……それは、まあ、うん」

士郎「とにかく、俺は遠坂が戦っているのにそれを見て見ぬ振りはできない」

さくら「しかし、私はそこまで強い力は持っていません」

さくら「士郎さんを守ること以上に、力は……」

士郎「……っ」

さくら「士郎さん……」

士郎「俺は……無力だ」

士郎「でも、それでも」

士郎「何かを成し遂げるために、犠牲が出るなんてのは許せないんだ」

さくら「……」

士郎「ごめん、滅茶苦茶で」

さくら「分かりました」

さくら「もし、どうしても戦わなければならない時」

さくら「そして、自分の身が危険に晒された時」

さくら「その時は、令呪を使って下さい」

士郎「これを……?」

さくら「令呪を使って命令していただければ、どこに居ようとも」

さくら「助けに参ります」

さくら「その代わり、きちんと考えて下さい」

さくら「その令呪が無くなってしまわないように」

さくら「そして、最後の戦いに勝利する時には」

さくら「必ずひとつ、残しておくように」

士郎「……わかった、約束するよ」

さくら「すみません、本来ならばセイバーとして積極的に戦うべきなのに」

士郎「いや、それも俺に問題があると思う」

士郎「ともかく、俺も無理に首を突っ込まないようにするよ」

さくら「よろしく、お願いします」

士郎「ところで、セイバーは一人で何をするつもりなんだ?」

さくら「まずは、この街にいるはずのマスター、サーヴァントの調査です」

さくら「私は武器、技能で考えるとセイバー、ライダー」

さくら「そして、アサシンの適性があるんです」

士郎「へぇ、なんだか変な感じだけど」

さくら「先ほどイリヤの所で使った力のせいです」

さくら「例えば、こんな風に」スッ

士郎「!遠坂……!?」

さくら「人の姿を演じる、人の意識に干渉して姿を変える力です」サッ

さくら「時間に差こそあれ、一瞬ならば誰でも騙せると思います」

士郎「なるほど、それがあれば危険は無さそうだな」

さくら「はい、私は大丈夫です」

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