堀裕子「サイキックトレーニング!」依田芳乃「でしてー」 (29)

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――――


堀裕子「ふんっ、むむむむっ……!!」ググッ


依田芳乃「……」


裕子「はぁっ、はぁっ、もう一回!」


芳乃「ほー……」ズズズ……


裕子「ムンっ、むむむっ……!!」グググッ


芳乃「今日も天気がよいのでして」パリパリ


芳乃「……ほー」ズズズ……



裕子「お、おかしいですね……この知恵の輪、いくらやっても……」ゼェハァ


裕子「……今日のトレーニングは、これくらいにしましょう!」


芳乃「……そなたー、そなたー」


裕子「な、なんですか芳乃ちゃん?」ビクッ


芳乃「先程から見ていましたがー、その方法では外せないのでしてー」ヒョイッ


芳乃「この知恵の輪はーこのようにしてから引っ張るとー」カチャカチャ


裕子「おお!ま、まさか!」


芳乃「簡単にー……」グイッ


裕子「??」


芳乃「……むー」グイッグイッ


裕子「どうしたんですか、芳乃ちゃん?」


芳乃「硬いのでして……」ジーッ


芳乃「……そなたー、後は任せたのでしてー」ヒョイッ


裕子「は、はい!ふんぬっ!」グイッ



カチャッ


裕子「!」


裕子「やった!やりました!」


芳乃「これくらいはー造作も無いことでしてー」ニコッ


裕子「あれ、でも芳乃ちゃん、さっきのは……」


芳乃「……今日も天気がよいのでしてー」フイッ


裕子「芳乃ちゃん」


芳乃「そなたー世の物事にはー触れてはならぬこともー」


――――


裕子「むむっ……このピースは……ここですね!」


芳乃「違うのでしてー」


裕子「あ、あれ?じゃあこっち!」


芳乃「それはこちらでしてー」


裕子「え、えっと……おかしいですね、私のサイキックパワーにかかればこれくらい簡単なはず……」


芳乃「そもそもーそなたのさいきっくとはーいかなるものでしょうかー」


裕子「さ、サイキックとは……?」


裕子「難しいですね……」


芳乃「そもそもーこれでは特訓として正しくないのでしてー……」


芳乃「超能力のようなー人並み外れた力を持つにはー、このような特訓は不要かとー」


裕子「えっ!?じゃあ、どうすれば……!?」


芳乃「神の力を借りればよいのでしてー」


裕子「?」


芳乃「その身に神を降ろしー神の力をお借りすることでー……」


芳乃「……そなたー?」


裕子「な、なるほど、そういう手段もあるんですね?」キョトン


芳乃「……」


芳乃「ではー、まずはそなたはーこのパズルを解くのでしてー」


芳乃「それがーそなたの欲する力へのー近道となるでしょうー」


裕子「はい!どれがどのピースか、私のサイキックで全部当ててみせます!」ムムッ



芳乃「……そなたには、まだ早かったようでしてー」


裕子「?」


芳乃「なんでもないのでしてー」


――――


裕子「私のサイキックにかかれば、さいころの目くらい自由自在です!」バッ


カラカラカラ……


裕子「よし、4ですね……ああっ!?」


芳乃「一回休みでしてー」


芳乃「ではー、わたくしの力をご覧にいれましょうー」ポイッ


カラカラカラ……


裕子「また6ですか!?」


芳乃「これくらいはー造作もないことでしてー」


裕子「でも、これで5連続……はっ!もしかしてイカサマですか!?」


芳乃「そのようなことはーありませぬがー」


裕子「いいえ!これは怪しいと、私のサイキックが唸ってます!むむむっ!!」


芳乃「……仕方ないのでしてー。ではー、これで白黒つけましょうー」スッ


裕子「むんっ!」カラカラカラ……


裕子「えっと……これは何でしたっけ?」


芳乃「5の目でしてー」


芳乃「ではーまいりましょうー」カラカラカラ……


裕子「!!」


芳乃「ほー、シゴロでしてー」


裕子「も、もう一回!」



裕子「ぜ、全敗……!?」ガーンッ


芳乃「お分かりいただけたでしょうかー」


裕子「……師匠!」


芳乃「?」


裕子「芳乃ちゃん!弟子にしてくださいっ!!」ガシッ


芳乃「えーと……困ったのでして」


――――


芳乃「そなたーそなたー」


裕子「うーん……」


芳乃「ねー、聞いてますー?」ユサユサ


裕子「あ、芳乃ちゃん……」


芳乃「なにかーお悩みでしょうかー」


裕子「えっと……本当は私、サイキック向いてないんじゃないかって……」


芳乃「……今更でーございますかー」


裕子「えっ」


芳乃「なんでもないのでしてー」


裕子「よ、芳乃ちゃん?」


芳乃「なんでもないのでして」グイッ


裕子「う、うん……」


裕子「むー……」


コトッ


芳乃「あまり深く考えずーお茶でも飲みましょうー」


裕子「芳乃ちゃん……」


芳乃「おせんべいもーありますゆえー」サッ


裕子「そうだね……あっ!」


裕子「見て、芳乃ちゃん!茶柱!茶柱だよ!!」


芳乃「ほー、確かに茶柱でしてー……」


裕子「はっ……!今なら、今ならサイキック、出来るかも……!」


裕子「今ならこのスプーンが……むんっ!」


芳乃「ふむー……」クイッ


グニャァッ


裕子「ま、曲がった!曲がりました!!」


芳乃「おおーさすがはそなたでしてー」パチパチ


裕子「えへへ……やっぱり私にはサイキックが一番です!」


芳乃「そなたにはーやはりさいきっくが似合うのでしてー」ニコッ


――――


裕子「9は……これ!」ペラッ


芳乃「……違うのでして」


裕子「お、おかしいですね……9はこっちです!」ペラッ


芳乃「それも違うのでして」


裕子「今日は力が安定しませんね……芳乃ちゃんも神経衰弱、やってみる?」


芳乃「ではー、わたくしも参加いたしましょうー」



ペラッ


芳乃「ほー……8はここでして」ペラッ


裕子「!」ハッ


芳乃「3でございますかー……ここでして」ペラッ


裕子「!!」ガーンッ


芳乃「おやー……」


芳乃「2は……ここでして」ペラッ


芳乃「……おやー?」


裕子「あっ、やっと回ってきた……凄いね、芳乃ちゃん!」


裕子「でもエスパーユッコも負けていられませんよ!」ペラッ


芳乃「ではー、そなたの力を見せてもらいましょうー」



裕子「……私は24ペアです!」


芳乃「わたくしはー22対でしてー」


裕子「ということは……私の勝ち!?」


芳乃「おおー……おめでたいのでしてー」


裕子「……やった!ついに芳乃ちゃんに勝ちました!」


芳乃「これもそなたのー弛まぬ特訓の結果でしょうー」パチパチ


裕子「えへへ……これがエスパーユッコの力です!」ドヤァ


芳乃「そなたの力ーすばらしきものでしてー」ニコッ


――――


裕子「では、このペンにご注目を……むむっ!」グッ


裕子「……あれ?」


裕子「むんっ!お、おかしいですね、中々コインに貫通しない……!!」グイッグイッ


芳乃「そのような手品はーもともと細工が仕込まれていましてー」


裕子「いえ、これはサイキックマジックですから!種も仕掛けもなくていいんです!」


芳乃「ほー……」


芳乃「……おやー?ではーそのような手品はーできないのではありませんかー?」


裕子「ですから、そこをサイキックで……むむっ、むむむむ……!」グリグリ


芳乃「……ほー」


芳乃「少し、貸してくださいませー」


裕子「いいですけど……できるんですか、芳乃ちゃん?」


芳乃「まーまー、見ててくださいませー」


芳乃「ではー、こちらのペンをーこちらのコインに貫通させてみせましょうー」


芳乃「むー……」ジーッ……


グニャッ


裕子「!」


芳乃「……いかがでしょうかー」


裕子「あ、あれ……本当に貫通してる!?」


芳乃「どうぞー見てくださいませー」スッ


裕子「あっ……す、すごい!本当に貫通してます!」


芳乃「これくらいはーたやすいことでしてー」


裕子「やっぱり芳乃ちゃんはすごいですっ!流石は師匠!」


芳乃「……師匠ではないのでしてー」



裕子「……そういえば、これってどうやって戻すの?」


芳乃「……おやー?」


裕子「芳乃ちゃん」


芳乃「大きな挑戦にはー失敗もつきものでしてー……」


――――


裕子「今日のサイキックトレーニングは応用編です!」


芳乃「今日はー何をするのでしょうかー」


裕子「その名も……読心術!」


裕子「今から芳乃ちゃんの心の中を読んでみせましょう……!」


芳乃「ほー……」


裕子「むむっ……!」


芳乃「……?」


裕子「むむむっ……!!」


芳乃(困ったのでして……いかがいたしましょうかー)



裕子「うーん……」


裕子「……やはり読心術は難しいですね」フゥ


芳乃「心を読むなどはーまこと難しきことでしてー」


裕子「まだサイキックトレーニングが足りないということですね!」


芳乃「……そういうことにーいたしましょうー」


裕子「さあ、次は芳乃ちゃんの番です!私の心の中を当ててみてください!」


芳乃「……わたくしですかー?やってみましょうー」



芳乃「むー……」ジーッ


裕子「よ、芳乃ちゃん?」


芳乃「……」グイッ


裕子「芳乃ちゃん?あの、ちょっと近いというか……」


芳乃「我慢なさいませー」ジーッ


裕子「さ、流石にこういうのは……!」アワワッ



グゥー……


裕子「あっ」


芳乃「……もしやーお昼のことなどー考えているのでしょうかー?」


裕子「そ、そうですね!芳乃ちゃん、どこか食べに行きましょう!」


芳乃「それは良きことでしてー。……ではー、早くまいりましょうー」


――――


芳乃「ほー……これはすばらしき石でして」


裕子「むむむ……サイキックパワーの込められた石は……これだっ!」


芳乃「流石に川辺の石ではー力も少ないのではありませんかー?」


裕子「いいえ、この石からは強い力を感じますよ!サイキック石です!」


芳乃「……そなたがそれでよいのならーきっとその石にも力があるのでしょうー」


裕子「そうですね……!でも芳乃ちゃん、石を集めるのって珍しい趣味ですね?」


芳乃「そなたには言われたくないのでしてー」


裕子「……?」


裕子「でも、どうして石なんですか?」


芳乃「石にはひとつとして同じものはなくーそれは人も同じことでしてー」


芳乃「出会いもあれば別れもありーそうした流れの中で石は丸く美しくなるのでしてー」


裕子「……な、なるほど!それは確かに……あ、あれ、えっと……?」


芳乃「やはりそなたにはー難しい話でしたかー」


裕子「……?」キョトン


芳乃「ではー、そこに楽しみを加えましょうー」


芳乃「遊びの中からー人は力を付けてゆくのでしてー……そなたー、これをどうぞー」スッ


裕子「平たい石……これは水切りですね!貸してください!」


裕子「むんっ!」ポイッ


ボチャンッ


裕子「あ、あれ……?」


芳乃「石は回すように投げましてー、水面にて撥ねさせるのですー」シュッ


パシャパシャパシャッ


裕子「おお!わ、私も!」シュッ


パシャッ


裕子「い、一回!一回だけどできました!」


芳乃「おおー。ではー、数を増やしましょうー」


裕子「はいっ!エスパーユッコの、サイキック水切りショーです!」


芳乃「本番の前にーまずは練習からでしてー」


――――


裕子『えっ!?芳乃ちゃんと二人でライブですか!?』


芳乃『ほー……それは楽しみでしてー』


裕子『おお……!一緒に頑張りましょう、芳乃ちゃん!』


芳乃『はいー、そなたとともにまいりましょうー』



ザァァァァァ……


裕子「明日は折角のサイキックライブなのに……」


芳乃「台風が近づいていてはー開催は難しきことかとー」


裕子「いえ、まだ何とかなるはずです……!」


芳乃「しかしーこの先はしばらく強い雨模様でしてー」


裕子「……そうだ!私の力で、台風も吹き飛ばせば……!」


芳乃「そなたー……自然の力にはーわたくし達の力などー」


裕子「いいえ、やってみないと分かりません!」


裕子「むんっ、むむむむむ……!!」ググッ


裕子「はぁっ……はぁっ……手強いですね、でも……!」


芳乃「……そなたー、時として諦めることもー大事でしてー」


裕子「いいえ、まだです!」



裕子「むむむっ……はぁっ!」グッ


裕子「サイキック、日本晴れ……っ!!」


芳乃「……そなたはー何故諦めぬのですかー?」


芳乃「わたくし達の力などー自然の力の前には小さきものでしてー」


芳乃「ましてやそれを変えるなどー人並み外れた力はそなたにはー……」


裕子「……それでも、私は続けます!」


芳乃「それは何故でしょうー?」


裕子「楽しみにしてくれているみんなの為に、私のサイキックはあるんです……!」


裕子「確かに最初は、格好良いからでしたけど……今は、違います!」


裕子「誰かを笑顔にしたり、勇気付ける……私達は、アイドルですから!」


裕子「その為にも、たとえ台風だって、諦めちゃいけないんですっ!!」


芳乃「……ほー」


裕子「だから私は……あ、あれ、芳乃ちゃん?」


スタスタ……


ギュッ


芳乃「そなたの気持ち、伝わったのでしてー」


裕子「芳乃ちゃん……!」


芳乃「そなたの力はー自然の前には小さきものでありましょうー」


芳乃「ですがーわたくしもー力をお貸しいたしましょうー」


裕子「……はい!」


芳乃「諦めてはならぬと教えてくれたのは……他ならぬそなたですからー」


芳乃「ではー……少しばかりお手伝いくださいませー」


裕子「……って、芳乃ちゃん?」


芳乃「なんでございましょうー?」


裕子「これ、てるてる坊主ですよね?」


芳乃「いかにもーてるてる坊主でしてー」


裕子「流石にこれじゃ、台風は……」


芳乃「いえー、これで終わりではありませぬー」


芳乃「かの身に神を宿しーお力を借りることでー雨雲を振り払いましょうー」


裕子「……?」


芳乃「そなたが神を信じなくてもよいのでしてー」


裕子「いえ、信じますよ!芳乃ちゃんが言うんですから!」


芳乃「……ありがたき言葉でして」ニコッ


芳乃「ではー、まいりましょうー」



芳乃「……我らが力とそなたのお力にてー、悪しき雨雲を払いませー」


裕子「私と芳乃ちゃんの、サイキック日本晴れ!」


裕子「明日天気にならなかったら……サイキックお仕置きですからねっ!!」



――――


裕子「……みなさんこんにちはーっ!ユッコです!」


\ワァァァァァァァァァァァ!!/


裕子「今日はいい天気でしたね!これもサイキック日本晴れの力でしょうか!」


裕子「いつもより元気よく!サイキック推しで!今日も行きますよっ!!」


\ユッコ!!ユッコ!!!/


裕子「早速ですが、エスパーユッコの……さいきっくイリュージョン!」


裕子「皆さんご存知だと思いますが……今日の主役はもう一人います!」


裕子「私の念力で、彼女をステージに呼んでみせましょう!」


\イイゾー!!ガンバレユッコー!!!/



裕子「では……ムンっ!」


裕子「むむむっ……それっ!!」


裕子「おおっ、あれは……あ、あれ?」


芳乃「ほー……宙を舞うことも、必要とあらばー」フワフワ


裕子「お、おかしいな……ワイヤー、ですよね……?」


芳乃「ふわりと飛ぶのもー良きかなー良きかなー」フワフワ


ザワザワザワ……


裕子「芳乃ちゃん、本当に飛んで……?」


芳乃「……そなたー、知らぬ方が良いこともー世の中にはありましてー」ニコッ


裕子「え、えっと……そう!念力!これは私のサイキックです!」


裕子「ほら、見てください!今日のもう一人の主役、芳乃ちゃんが……今、到着しました!」


フワフワ……


スタッ


芳乃「遅くなりましてー。わたくし依田は芳乃でしてー」


芳乃「本日はわたくし達のライブをーご覧にいれましょうー」


\ワァァァァァァァァァァァァァ!!!/


\ヨシノチャーンッ!!!/


裕子(あれ……いつもより、歓声が大きいですね……っ!)ビクッ


裕子(なんだか今日は一段と緊張します……!)


芳乃「そなたー、手が震えていましてー?」ヒソヒソ


裕子「こ、これは……武者震いです!」ヒソヒソ


芳乃「……ではー、わたくしからのーさいきっくでしてー」ギュッ


裕子「!」


裕子「……ありがとう、芳乃ちゃん!」


芳乃「いえー、ではまいりましょうー」ニコッ




芳乃「さてー……わたくし芳乃とー」


裕子「アイドルユッコの……サイキックライブ!」


芳乃「それではー、とくとご覧あれー」ニコッ


裕子「私達のイリュージョンは……まだまだ、これからですよっ!」


以上で終わりでしてー

ありがとうございました。

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