魔法使い「ここは、どこなのですか?」
身長大体140~150cmくらい
眉はキリリとし、目はほんのりたれ目でその斜め下には泣きほくろ
項に近いところで縛られてるタイプの黒髪ツインテール
無駄にでかい黒のとんがり帽子が特徴的
背中で手を組み前傾姿勢で覗き込むように制服に着替え終わった俺を見てくる
男「俺んちだけど・・・」
リビングで服を着替えて、階段をのぼり、自室で荷物を持ってこようとしたら、謎の幼女が立っていた
魔法使い「オレンチ・・・?聞いたことのない国なのですね・・・・まさか王都から離れた郊外の町なのでしょうか」
かなりの見当外れな返事、俺も返事に困りが生じる
男「いや、日本だけど」
魔法使い「ほ、ほぇ~・・・国内での独立を他国に知られるぬ間に行っていたというやつなのですね。初めて聞きましたニホン!!」
あんまし詳しくないんだけどさ、こういう人のことって、イタイとか厨二病とかコスプレイヤーっていうんだよな
魔法使い「あっ!そういえば申し遅れました。私の名前は魔法使いなのです!先程、勇者様の元へ座標指定をし転移したのですが・・・」
どうしよう。俺こういうの本当に詳しくないからさ・・・。昔、友達がゴンストしてるのを少し見たことあるだけだし・・・・
魔法使い「あっ!申し訳ありません!!」
男「は、はい?」
魔法使い「あろう事か、この私目が勝手に勇者様のお宅へ土足で入ってしまうなど、なんたる不覚!罪は財産身体をもって償います!どうか王都への通告は止めてくださいまし!」
これって何だろう。取り敢えず大人しく合わせておけばいいのか。人生初の経験にかなり動揺しまくってるわ、俺
魔法使い「わ、私はやっと!・・・やっと魔法使いとしての試験を合格出来たのです・・・・やっと王から直接、勇者様のお供につける事の許可を頂いたのです」
男「試験・・・ね」
魔法使い「私は正式な血族の魔法使いではないのです。ですから、コネクションによる酒場等の仲間の入れ替えが出来なかった・・・いや、その権利がなかったのです」
血族?酒場?あぁ、そういう設定ね
魔法使い「そもそも私には魔法学校へ通う資金すらなく、学校からの申請すら貰えない始末」
男「話を聞く限り、魔法使いは血族や資金的な関係で、勇者の仲間になる事が不可能に近かったという事だな」
魔法使い「はい。恥ずかしながら、そうなのです」
そう少し俯きながら答えた。よくよく考えればとても悲壮感漂う話だ。設定だけどね
男「じゃあ・・・・どうして王が直接そんな事を許してくれたのか?あともう一つ、なぜそんなキミが魔法使いになれたか?・・・だね」
魔法使い「簡単に言うなら・・・私は全て自論で形付ただけなのです。鍛練に励み、技を磨く。それだけなのです・・・・教えてくれるのは、自分の掴んだ感覚だけなのです」
男「1から全て自分で導き出したってことか」
魔法使い「はい!そして私が許可を得た方法とは、実力行使なのです」
男「随分と物騒だな。なんだ?王都にでも乗り込んだのか?」
魔法使い「・・・・いいえ。私が一人で魔王の部下の四天王ハートフィリアを倒して、王に身を献上したのです」
『四天王』これはまた厨二心揺さぶる言葉。だが、俺は厨二病を患った事がないので何も感銘を受けないのだがな
男「まぁそうなると王都の人間も認めざるを得ないわなぁ」
魔法使い「ただし、そこまでは実力で得れた実績。私には私を証明できるものが無いのです。血縁関係もなく、魔法学校の修了証まで無いのです」
男「え、親はいないのか?」
魔法使い「ええ、私は今はもう潰れてしまった教会が私の生まれたところなのです。気付いたら私には神父様とシスターと同じ孤児の人しかいませんでした」
男「あぁ、それでさっきは血族がどうのこうのって・・・」
魔法使い「はい。そして、私には身分を証明できるものがない。つまり、信用や信頼は十分に得られてない半信半疑な魔法使いなのです」
男「俺だって、知らない奴から『こいつは兄だ』と言われて、一応過去の記憶を共有してたって、それが確かな証拠だと限らないからな。疑って当たり前さ」
魔法使い「はい、そういう事なのです」
指をパッチンと鳴らして魔法使いは答えた
男「んじゃ、まぁ話は面白かったから、そろそろお前も帰ったほうが良いんじゃないか?あと数分もしたら学校だって始まる時間だし・・・」
魔法使い「は、はい?あれ、勇者様は何歳でございますか?」
少し焦った様子で質問する魔法使い
男「え、15歳だけど・・・」
そう答えると魔法使いは「ぷっ」と息を漏らして笑い始めた
魔法使い「あははっ!勇者様は既に学業をご卒業して、もう3年も経つじゃないですか。もうー、冗談はよしてくださいよ」
男「そうだな。俺もそろそろこの冗談を終わらせたい。早く飯食って学校に行きたいんだ。というか、不法侵入でぼちぼち通報する・・・・・ん?そういえば、どうやってウチに入ったんだ?」
魔法使い「この転移石で座標指定すれば何処でも転移出来ますけど・・・・これは学校では必ず習う授業の筈なのですが」
男「・・・・・はぁ、そろそろ飽きたわ。出てってくれ、母さんに見つかって面倒になるとかヤだからさ」
魔法使い「いえいえ!勇者様はこれから私と共に魔王を倒しに行っていただきます!」
スクールバッグを手に取り、魔法使いに背を向けた
しかし後ろから右手を握り、引っ張るように無理やり魔法使いの方に体を向けられた
男「なぁ勘弁してくれ。遅刻したら困る」
魔法使い「いいえ、これは義務なのです。そして私の信用や信頼もかかっているのです」
男「いや、だから、そういうのはもう面倒だから・・・え、どうして手を握って」
魔法使い「では、行きますよ!!」
男「あのさ、何処にぃいいえあ!!?え!?なになに!?目の前がーー・・・」
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
~転移先、第七の街~
魔法使い「さて、着きましたね」
男「・・・・・え、夢か!?」
目が覚めたら、そこは石やレンガで作られた家が立ち並ぶ街だった
人がわんさかと溢れかえっており活気が良い
魔法使い「ここは第七の街ユグリネなのです」
慌てて手や目を使い自分の身なりを確認する
男「え、いや・・・俺、学校の制服だし、朝髪の毛整えたままだし、スクールバッグ持ってるし・・・・・は?まじで?」
魔法使い「何がマジなのでしょうか?」
男「ちょっとほっぺた抓るからな」
魔法使い「はい?え、それはどうひぃううう!!!いひゃいいひゃい!!」
激しく魔法使いの頬を抓った
男「あっ、魔法使いのほっぺた抓っても意味ない!!俺のを引っ張らなきゃ・・・・いたたたっ!!って、おい!?目が覚めろよ!?」
覚めてくれれば嬉しかった
魔法使い「勇者様?先程から何をやられているのですか?」
男「え、俺って本当に勇者なの?」
魔法使い「ええ、そうでしょう」
『この人は何を言っているのだろう?』という顔で答えた魔法使いに少しイラッときた
男「・・・・・・。あ、あはは、あはははは・・・・・・・・・・・・まじかぁ・・・」
魔法使い「それでは第七の街ユグリネの地下にある『勇者の剣』を取りに行きましょう」
転移する前から、ずっと握っていた手を再び引っ張り、その『勇者の剣』のある場所へと向かおうとする魔法使い
男「嫌だし、そもそも俺は勇者じゃないし」
魔法使い「はい?何を仰られているのですか」
男「俺はそんな非現実的な存在ではないし、夢見た世界なんかを闊歩しようとも思わない。まず自分の身に危険がある事自体が間違いだ。世界が違うと価値観も変わるんだよ!」
それを言い終わると魔法使いは口を開けたまま動かなくなった
そして5秒程したら、唇を噛み締めて俺を見つめて言ってきた
魔法使い「・・・・・・・それはつまり、私と共に魔王を倒すことは出来ないということですか?」
男「当たり前だ」
魔法使い「・・・・・じゃあ、死にます」
男「ああ、そうしろそうし・・・って、はぁ!?死ぬって・・・ええっ!?」
この魔法使いは正気の沙汰じゃない
魔法使い「私は勇者様と魔王を倒すことだけを夢見て今まで12年間生きてきたのです・・・私の目標に退路が断たれました。つまり・・・生きる意味がありません。自害いたします」
男「ま、まままっ待てぇ!!死ぬな!生きろ!我が身を大切にしろよ!!」
魔法使い「な、なら勇者様は私と魔王を倒してくれるのですか・・・?」
男「いや、それは・・・」
魔法使い「じゃあ死にます」
男「やっやるから!!魔王を倒すから!!だから死なないでくれっ!!」
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
~地下~
かつこつ・・・・かつこつ・・・・・と靴の床を叩く音だけが響くほど薄暗く静かな石の壁の空間
男「なぁ・・・もし俺が『勇者の剣』を抜くことが出来なかったどうする?」
魔法使い「なぜそのような事を?」
男「冗談なしに俺は勇者じゃないぞ」
魔法使い「ふふっ・・・座標がアナタを示したのです。そんなわけありません」
自信満々なキミを裏切ってしまうのが本当に申し訳ないな
だって俺、勇者じゃないし
男「・・・・・。勇者がこんな格好で旅に出ると思うか?」
魔法使い「それもまた装備でしょう。見たことのない生地ですね。さすが勇者様です!」
キラキラした目で見られても困る
俺の世界の服は戦闘に適するものではないと自身を持っていえよう
男「・・・・・はぁ、遅刻したら先生に怒られるなぁ・・・って、もうそんなこと気にしているのは無意味か」
だって魔王を倒さなきゃ、これは帰れなさそうだし
魔法使い「さて、勇者様!着きましたよ」
ああ、そうだ。剣が抜けなきゃいいんだ。抜けなきゃ俺は勇者なんかじゃないって証明できるじゃないか
魔法使いには悪いがそうさせてもらおう
いや、抜けないから選択肢なんてないけどさ
魔法使い「ささ、どうぞ」
男「悪いが魔法使い。一度『勇者の剣』を握って抜いてみようとしてくれ」
魔法使い「はい?私なんかじゃ到底抜くなんてこと無理ですよ」
もしかしたら誰でも抜けるようになってるデキレースってパターンかもしれない
もしかしたら騙して遊ぼうと考えているのかもしれない
男「ああ、一応だ。一応」
魔法使い「は、はい?いいですけど・・・・ふっ!!はっ!」
剣の柄を握り、掛け声と共に身体を反らせるくらい引っ張る魔法使い
抜けない演技・・・・というわけではないか
魔法使い「はぁはぁ・・・・無理です・・・ぜんぜんピクともしません」
男「よし安心だ。じゃあ俺がいこう」
つまりデキレースではないな
魔法使い「はい!」キラキラ
ごめんな。俺にはこの剣は抜けないんだよ
男「ん、せーのっ!」
しゃきんっ!
男「みずたま!」
ずでんっ!!
魔法使い「勇者様っ!?」
え?何が起きたの?剣の柄を握って、一応誠意を魅せるために全力で引っ張った
そしたら、瞬間に魔法使いのパンツが見えた
男「いってぇ!?は!?何これ、軽すぎだろ!?本当に刺さっていたのか!?」
魔法使い「さすが勇者様です!私初めてこの『勇者の剣』が抜かれたところを見ました!」
やんややんやと一人で喜び踊る魔法使いを尻目に、俺は・・・
男「・・・・・・違う」
魔法使い「え?」
違う違う違う!俺が望んでいたのと違う。いや、想像してたのと違う
だって抜ける筈ないのに
だって俺は勇者なんかじゃないし、一般的な男子高校生だし、何をやっても普通を貫き通してきた健全男子だし!
男「あっ・・・え、いや・・・・・なんでこんなことが・・・・・」
魔法使い「勇者様、勇者様!」
男「え、なんだよ」
魔法使い「私の魔法で『勇者の剣』はブレスレットの装飾へ変えれますがどうします?」
今はそんな提案どうでもいい
男「へ?」
魔法使い「勇者様が魔力を込めれば簡単に『勇者の剣』の装備の取り外しが可能になるということです」
まりょく・・・?
男「そうだな。このまま持ち歩いても邪魔だしな。そもそも魔力って何だろうな」
魔法使い「では、いきますよ!・・・・っは!!」
男「おおっ!消えた・・・あっ!で、このブレスレットが『勇者の剣』というわけね」
すごいすごいこれがまりょくか。まほうか。おれはじめてみたよ
魔法使い「はい!じゃあ1度試しに装備してみてください」
男「してみてくださいって・・・まず俺は魔力を込めるなんて出来るわ(シュヮキンッ!)・・・け・・・・・クソッ!!なんで出来るんだよ!?」
少し右手に神経集中したら『勇者の剣』装備されちゃったし
俺にもそんな突拍子もない気狂い能力を持っているってことでいいのかな?絶望したー
魔法使い「うふふ・・・勇者様ったら、当たり前のことを何故そこまで驚いてらっしゃるのでしょう」
男「正解は簡単。俺が勇者じゃないからだ」
魔法使い「まだ言いますか?確かに勇者の一族の中にはたまにいます。戦うのが怖い、旅に出たくないと申す者も・・・・だがしかし、それは勇者様にしか出来ないから仕方ないのです」
男「それとこれとは話が違って」
魔法使い「知ってますか?いくら素質があろうとも勇者になりたくてもなれない者もいるんです。勇者は時代に一人しか存在しないのです。アナタが選ばれた以上、それは選択肢のない物語。ですが『死ぬ』という選択肢もないこともないです」
男「・・・・・そんな」
魔法使い「でも良いですよ。次の世代もまた魔王が復活して勇者を選び、倒さなくてはならなくなる。それは永遠と続く輪廻。終わることのない戦いです。ならば、勇者様が此処で世界を終わらせても良いんです」
男「・・・・・・」
魔法使い「人間は魔物とは違い転生はしません。ですから、ここで世界を滅ぼしてしまえば2度と世界は魔王軍に苦しめられることはないんです。だって人間はいなくなくなりますから」
なんでかなー・・・・人間って単純だよな・・・
男「・・・・・はぁ、そういうことね」
魔法使い「・・・・・?」
ただの男子高校生が1つ世界を滅ぼしたなんて、ある意味かっこいいよな
でも、それは立場上の問題だ
例えば救世主とした他の会社の力を貸した。だけど、やる気がなくてその会社を救世主が潰してしまった。飽く迄他人事だけど、それは人間としてどうなのかな?って話さ
潰してしまった会社の人間にも家族はいるのだから・・・
つまり、俺からしたら選択肢は1つ
男「・・・・いいよ、やるから。それでいいから。少なくとも俺は勇者としての素質があるということが知れた。死ぬなら死ぬでそれも本望だ」
魔法使い「・・・・・・・」
男「『仕方無い』その言葉だけで十分だ。だって、そうしなきゃならない時もあるってことだし・・・そう。当たって砕けてゲームオーバーしなきゃラッキーってもんだ」
魔法使い「勇者様・・・・」
男「それと、魔法使いの信頼も手に入れなきゃいけないしな。俺はそういう無駄な思いを残させるのが1番嫌いなんだよ」
俺は魔法使いの頭を帽子の上に優しくポンッと乗せた
魔法使い「ふぇ・・・はっはい!」
男「じゃあ、行くか」
魔法使い「はい、勇者様!」
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
~とある道中~
ポニテ「あっ!男~!遅刻とは関心ならないなぁ」
一本に縛られた黒色の髪を子馬の尻尾のように靡かせて
口角の上がった緩んだ頬はほんのり紅色
身長は160中間くらい
服は大きいのを着ているのか袖の長さのせいで手の平は見えていない
特徴は豊満な胸であろう
男「いやいや、お前もまだここを歩いているって時点で遅刻してるし。というか悪いのは俺じゃないから大丈夫だし」
ポニテ「・・・はっ!もしかして、重たい荷物を持ったお婆ちゃんの救援でもしてたとか!?」
男「お前はエスパーか」
ポニテ「えへへ・・・すごいでしょー!そう、お姉さんはエスパーなんだよぉ」
将来詐欺にあいそうだな・・・こいつ
ポニテ「お姉さんね、今男の考えている事が分かるよ!」ドドーン
人を指差しちゃいけないって親に言われたでしょう
男「おお、それは興味深い」
ポニテ「幼女に興味がある・・・・かな?」
男「えっ・・・・」
ーーーーーー回想ーーーーーー
男「そういや魔王を倒せば俺は元のところへ帰れるのか?」
魔法使い(12歳)「え、この転移石を使えば今すぐにでも戻れますけど・・・忘れ物ですか?」
男「・・・・・んんっ?帰れるの?今すぐに?」
魔法使い(小学6年生?)「そりゃまぁ来れたなら帰れるのも当然なのです」
男「帰りたいんだが」
魔法使い(ロリータ)「え、ですがまだ魔王が」
男「また後で頼む!明日から土日だからさ、それとも今日用事が終わったらでもいいし!頼む!」
魔法使い(つるペタ)「そ、そんな頭を下げないでください!や、約束ですよ?」
男「あぁ分かってる!!」
魔法使い(幼女)「では、転移石は勇者様にお渡しします。使い方は魔力を込めれば自然と脳に地図のようなものが流れ込んできます。そこから座標を指定してください」
男「おう、また魔力か」
魔法使い(ちみっこ)「ですが、座標の計算は程々に難しいのです。それとは別に直接マーキングしておくタイプもありますが」
男「じゃあどうすれば・・・」
魔法使い(処女)「あ、履歴が残っていますのでそれを指定してください。その中に『私(魔法使い)の家』『(私)魔法使い』『勇者様(男)の家』『勇者様(男)』があります」
男「指定の方法って、頭の中でどうやれば良いんだよ」
魔法使い(小娘)「やってみれば、『ああ、こういうことか』ってなりますから。ものは試しですよ」
男「そうか・・・」
魔法使い(童女)「では、また私の家に用事が終わったら来てくださいね。待ってますから」
男「おう」
ーーーーーー回想終了ーーーーーー
ポニテ「あっははー!なんてなんて嘘ですよ~ん」
お腹を抱えて笑っているポニテ
男「まぁ半分正解かな」
まぁ夢であって欲しかった
ポニテ「あはははは・・・・・・え・・・?」
男「なんか妙な幼女に目をつけられたんだ」
ポニテ「あっ!なんだそういう意味で『興味がある』なんだね。わーもう、お姉さん驚いちゃったなぁ」
普通の思考を持っていれば、そうなるだろう。何に驚いたんだ
男「幼女に恋心を抱く男子高校生がいると思うか?そんなのチラシの裏だけにしとけ」
ポニテ「たまに男の言うことは分からない時があるよ」
男「悪いな」
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
~学校、教室~
お嬢様「あ、」
澄んだ金色の髪はストレートに腰まで伸びており、その金色で目立つ事となった水色のカチューシャ
身長は女性にして少々高めの160後半
クラスでは珍しいニーソックス
高校生とは思えない大人びた顔立ち
性格は見た目通りの高飛車
男「おー・・・お嬢様じゃん。どしたん?」
お嬢様「き、気安く呼び捨てにするんじゃありませんことよ!」
いつも話しかける少し怒っている、どうしてだろうか
男「お嬢様はお嬢様だぞ・・・?ふぁぁ・・・・・えとさ、なんで俺の席に座っているの?寝たいんだけど・・・」
お嬢様「あら、男さんはこんなお話を知っておわかり?とある人の為に履物を懐へ入れて温めてあげた人のお話を」
男「知ってるけど。それじゃあお嬢様は男の家来かー・・・ん、これお嬢様や。俺にその制服のブレザーを貸してくれたまえ」
お嬢様「ちょっ、調子に乗るんじゃありませんよ!私は家来ではありません!・・・・・まったく、3時限目が始まるまでですの」
初めは拒否するような口振りなのに、最終的には何でもお願いを聞いてくれる優しい性格
でもなんで怒っているのかは分からないけど
男「いつもありがとな・・・お嬢様のブレザーはいつも温かくて良い香りもするし、良いお布団だな~・・・すぅすぅ・・・・・」
お嬢様「眠りにつくのが早すぎですわ。朝はお話が出来なかったので、もう少しお話してくれても宜しいですのに・・・」
~数分後~
お嬢様「男さん・・・」ナデナデ
男「ん・・・こしょばゆいんだけど・・・・お嬢様」
お嬢様「あら?私ったら失礼な事に起こしてしまいましたか。これは申し訳ありませんわ」
男「いいよいいよ・・・お嬢様に撫でてもらうと気持ちいいしさ」
お嬢様「セ、セクハラで訴えますわよ!わよ!?」
どこから取り出したのか分からない扇子で顔を隠したお嬢様
なんで、そんな怒ってるのかな。何かやっちまったか?
男「ふふっ・・・お嬢様ありがとな」
お嬢様「な、なんの事でしょう?私はただ目の前で寒さに震える人間を見たくないが為、仕方無くボランティア精神にのっとり行為を行ったに過ぎませんことよ」
男「そうかそうか。でもな、無償の優しさほど嬉しいことはないんだぞ。ありがとな」
お嬢様「ふ、ふん・・・今回だけはその御礼に応えてあげましょう。どういたしましてですわ!」
ポニテ「ちょっとお嬢様ちゃん?私の男に何をしているのかなぁ?」
お嬢様「・・・・・。あらあら朝から騒々しいですわね。どちらのニワトリが鳴いているのでしょうか。ああ、ニワトリではありませんね。寝坊するニワトリなんかありえませんから。大変申し訳ありませんこと」
ポニテ「何かな~ん?その気に触っちゃう言い方」
男「ん?ポニテ・・・日直の用事終わったの?」
ポニテ「うん!男に会いたくて急いできた」
男「そうかそうか。それにしてもポニテは元気だな~・・・・まぁ元気があることは良いことだ・・・・な、お嬢様?」
お嬢様「ですが限度はあってもらわないと困りますわ。私はどうも庶民の気分が合いませんことよ」
ポニテ「そうですか、あぁそうですか~。じゃあ私の男から離れて欲しいなぁ?男も私とおんなじ庶民だよーん」
お嬢様「え、えぇ。そうしますわ。私は所詮庶民とは分かち合えないのですから。さようなら、男さん」
男「え、もっとお嬢様と話していたんだけど、良いだろ?ポニテ」
ポニテ「えっ!?」
お嬢様「そ、そうですの!?ではなく、仕方ありませんわね・・・・そ、そそそっそこまでおっしゃるのでしたら、お側にいてあげますの」
ポニテ「むぅ・・・」
だって今日で最後の会話になるかもしれないしな・・・
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
~学校、屋上~
どうしたもんかなぁ・・・確かに魔力は存在し、『勇者の剣』は抜けたということで俺は勇者の素質があるという事実はできた
だからといって疑問が晴れたわけではない。俺は一般中流家庭の息子であり、一族が勇者なんて話聞いたことがない
男「だったら、何をやらなきゃいけないか。警察に相談?精神科へ送られるか・・・」
「あれれ~?青春かな?青空を見つめるなんて粋なことしてるね!お姉さんも混ぜてよー」
男「!?」
油断していた。なんせ音も何も聞こえなかったから
ポニテ「あはは、そんな驚くことかなぁ?」
いつも通りの歪まぬ笑顔にホッとする
男「んーいや、俺は気付かれないように教室を抜け出したつもりなんだけどな」
ポニテ「ざんねーんでしたーん、はっぴーたーん♪お姉さんの目は掻い潜れないぞ~」
男「へぇ。それは本当に残念だな」
ポニテ「ほう、そういうこと言っちゃうんだ。意外にがっくり来るよ?」
男「ああ、悪い悪い。今は少し思い詰めていたからさ・・・・」
ポニテ「はーい!そんなギチギチな状態の男に良いお知らせと悪いお知らせがあります!どっちが聞きたい?」
男「良いお知らせだけで良いよ」
ポニテ「じゃあ良いお知らせからね・・・うん。あのさ、男・・・・・」
いきなり声を少し吃らせる
男「ほいほい、なんですかー。早く言ってくださいなー・・・」
何か糸でも切れたのか、吹っ切れたような満面の笑みを見せて
ポニテ「じゃじゃーん!!お姉さー・・私と結婚できる権利が発生したんですけどするかなかな~?」
男「・・・・・・はぁ・・・・そういうのね、いいよ。遠慮しとくわ。じゃあ次は悪いお知らせの方を頼むわ、どうせ言うんだろ」
ポニテ「あ、あはは!そかそかぁ・・・じゃあ悪いお知らせはね」
男「早くしろ」
ポニテ「あっ!その前に1つネタを挟むね」
男「どうでもいいから、話したいのなら話せよ」
ポニテ「奇跡ってあると思う?」
男「そりゃあるだろ。一期一会という言葉もあるしな」
ポニテ「じゃあ奇跡って好意的に起こせると思う?」
男「それは無いな。それはもはや・・・奇跡じゃない」
ポニテ「残念。あるんだよ」
男「・・・・?」
ポニテ「『変えることの出来ないモノを変えようとして、変わった』それは、奇跡って呼ぶんじゃないかな?」
男「まぁそうだなぁ。翼のない人間に翼を生やすようなものだ」
ポニテ「例えば神様に願った。『好きな人を振り向かせたい』って・・・でも好きな人には、もう想い人がいた。じゃあ、どうするの?どうすれば振り向いてくれるの?」
男「そんなの自分の力で魅了するくらいしか・・・」
ポニテ「そんなことで振り向いてくれる程、人間は簡単じゃないんだよ。・・・・・うん、ならどうしようかって。簡単だよ」
男「そ、そうか」
ポニテ「好きな人が出来る前に、その人の想い人になっちゃえば良いんだよ」
男「そんなの無理だ」
ポニテ「だから言ったでしょ、奇跡ってあるんだよ」
男「だから意味が分からないって」
ポニテ「でもね、奇跡だって無償で起こせるものじゃ・・・・ないんだよ」
男「おい、話を聞け!」
ポニテ「じゃあ、悪いお知らせを言うよ」
今度は吃ることなく、笑顔のまま
ポニテ「私ね、未来に帰らなきゃいけなくなったんだ」
・・・・・・・・意味がわからない
「・・・・・は・・・?」それが俺の初めに出た言葉だった
ポニテ「残念・・・お姉さんフラレちゃったから」
男「お、お前何を言って・・・というか、なんだよ・・・・・その後ろの・・・・穴は」
いや、あれは穴なのか・・・?
どちらかというと空間が裂けているような・・・真っ暗な闇のようなものが・・・・・
ポニテは謎の笑みを浮かべた。「ふふっ・・」と笑い、だけど目は真っ赤でボロボロと涙が流れていた
そして呆然と立ち尽くす俺を尻目に、そのこの世のものとは思えない空間の歪みに手をかけて、俺に背を向けた
男「お、おい!ポニテ!!未来に帰るって本気で」
そんな俺の言葉を割くように
ポニテ「じゃあね、毎日楽しかったよ」
再び振り返り、いつもの笑顔を見せた。そして、ポニテの身体が闇の中へ入っていく
男「い、行くな!!」
手を伸ばしたけど届かなかった
気付いた頃にはそこには何も残ってなかった。痕跡も何も・・・・
ただただ後ろ姿相手に届かない手を伸ばしていたんだ
そんな異次元な話に対し、俺はただ意味も分からず高らかに笑うしかなかった
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
教室に戻ると俺の隣の席。ポニテの席なのに、顔見知りの友人が座っていた
少し胸がざわついた
嫌な予感がしたんだ
先生にポニテのことを聞いた
そしたら、先生は不思議そうな顔をして「誰のことかな?」と答えた
そして、みんなも不思議そうな顔をして同じように答えるの繰り返し
・・・・はぁ・・・そういうことね。
いいよ、受け入れる。
でも、1つ受け入れない。だって、これは『仕方無い』事じゃないんだから
それに何も解決していない。お前の涙の理由が分かってない
俺はそういう無駄な思いを残させるのが1番嫌いなんだよ
そして俺は
「だから、頼む」
「俺じゃ力不足なんだ・・・お願いだ」
とある石に願いと魔力を込めた。
取り敢えず今夜は此処までです
ありがとうございました
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
~魔法使いの家~
魔法使い「・・・・。勇者様、それは魔王討伐に関係あるのですか」
男「無いさ。・・・それこそ私情だ」
魔法使い「ですよね・・・」
男「悪いとは思ってる。魔法使いにはそれ以上に達成しなければならないことがある。でも、俺には時間がないんだ」
魔法使い「・・・・・・」
男「頼む・・・明日からいつだって魔法使いと旅に出てやる。魔法使いが望めば、今の生活捨ててでも、そっちの世界に住んでやる!だから、今だけは・・・・・俺に力を貸してくれ」
俺は生まれて初めて額を地面につけた
惨めなんて思わない
寧ろ誇らしいと思えた自分がいた
魔法使い「勇者様が私目なんか頭を下げないでください。勇者様は胸を張ってください」
魔法使い「私はご命令とあらば、勇者様と御一緒いたします!それが仲間なのですよ」
魔法使い「私情なんて、どんとこいなのです!だって勇者様は私の私情を解決させてくれようとしてくれてるのですから」
俺は生まれて初めて女性に自分から抱きついた
母親にも父親にもした事ないことを、昨日知り合ったばかりの人間に恥ずかしげもなく抱きついた
身体は小さい。簡単に潰れてしまいそうだ
俺の方が年上だ。なのに、彼女のほうが遥かに大きく感じた
彼女は昨日知り合ったばかりの俺をもう仲間なのだと言っている
一目見た時に思ったんだ。この人は俺を裏切らないって
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
魔法使いは目をぱちくりと大きく見開いた
魔法使い「み、未来ですか・・・?」
男「あぁ、魔法使いでも流石にそれは無理難題か」
顎に手を当てて「ううむ・・・」と唸った魔法使い
魔法使い「そのようなのは物語の中の話だけしか・・・・未来を司る魔法なんて私は一度も聞いたことありません」
男「・・・・・そうか」
魔法使い「どうしましょう・・・お力不足で申し訳ありません・・・・・」
男「いや、いい。それより1つ聞いていいか?」
魔法使い「は、はい?どうされたのですか」
男「人間と意思のないモノ。それの違いを答えてみろって言われた、どうだろう・・・?」
魔法使い「・・・・生命とかですかね。あっ、ですが薬草などは植物ですが、一般的にはモノの扱いになりますか。それなら、そのまま意思があるかどうかですか?」
男「そうだな。当然、意思があるかどうかと答えるだろう」
魔法使い「はい、そうですね」
男「じゃあ、亡くなってしまった人間と意思のないモノの違いはなんだろうか・・・まぁ言葉に詰まるだろう。なんせ、とある博物館等では、何千年前のミイラや白骨体を飾っているところもある」
魔法使いは疑問符を浮かべ、小首をかけしげた
魔法使い「はくぶつかん・・・?」
男「モノを飾り、それを展覧している場所だ」
魔法使い「あ、そういうことですか」
男「さて、じゃあ今の俺の博物館の説明で分かっただろ?それは飽く迄人間も『モノ』扱いになるんだよ。それこそ魔法使いの言った薬草と同じさ」
魔法使い「それは無いんじゃないんですか。人間は人間であり、それをモノ扱いしようだなんて間違っています」
男「・・・・・いいや、俺は道徳的・倫理的な事を語りたいんじゃない。ただ物理的に人間もモノの扱いなんだろうと言いたいんだ」
魔法使い「あっ・・・なるほどなのです」
男「例えば何かにぶつかったとしよう。それは、人間だろうと岩だろうと物理的に考えれば、同じモノだろう?」
魔法使い「そうですね」
男「話を変わるけどさ・・・『勇者の剣』ってこの世に1つしか無いんだよな」
魔法使い「はい。勇者様しか抜くことを許されていない唯一無二の最高級魔法剣です。ひと振りで夢想や魔法を打ち消し、そして雷を斬り・山を消し・海を裂くとも言われてます」
男「・・・・・1つしかない。でも、それは現実的理論。非現実が存在する世界にそれは通用するのか?」
魔法使い「いいえ、それはありません。非現実を語るのなら、それは並行世界のようなものでしょう。その考えの元、思考を凝らすのならば、幾つも『勇者の剣』は存在する事になるでしょう」
男「そうだな」
魔法使い「だがしかし、時間や状況を含め、勇者様が抜いたという『勇者の剣』は絶対に1つしかないんです。一本に繋がった結果。同じものが存在すると言うなら、それはもはや並行世界ではなく、現実なのではないでしょうか・・・?」
男「正解だ。お前は頭が良いな」
魔法使い「い、いえ・・・・・・・寧ろこんな事考えておられる勇者様のほうが凄い・・・・」
男「ん、なんか言ったか?」
魔法使い「いえいえっ!何も言ってないのです!」
男「・・・・?」
魔法使い「ささっ、どうぞ続きをお願いなのです!」
男「それを踏まえた上で、ちょっと確認したい事があるんだ。だから着いてきてくれないか?」
魔法使い「はい?良いですけど・・・何処へ行くのですか?」
男「第七の街ユグリネだ」
ーーーーーーーーー
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~第七の街ユグリネ~
魔法使い「な、何故再び地下の間へ行くのですか?あそこには『勇者の剣』を祀る神殿しかないのですよ」
男「それを確認しに行くんだよ」
魔法使い「は、はい?」
男「例えば、魔法使い。お前が未来へ姿を消したとしよう」
魔法使い「はい、私が未来へ・・・」
男「そしたら、現実にいる魔法使いは居なくなるって事で良いのか?」
魔法使い「そうだと思います。私が消えた瞬間に違う私が出現するなんて考えられないですし・・・」
男「じゃあ、その場合未来には魔法使いが2人いるって事で良いんだな」
魔法使い「多分、そうでしょう。時間移動を行った瞬間に、その世界の自分が居なくなるのなんて・・・」
男「非現実的に考えれば、未来と現実の自分が入れ替わるという結果も考えられる。魔法や奇跡がある世の中、そんなのも有り得るかもしれないからな」
魔法使い「・・・・・ですね。否定出来ません」
男「だから、もしかしたらこの世の中には違うポニテが存在するかもしれないんだ」
その言葉を聞き、魔法使いは何かに気付いたように「はっ・・・」と声を出して続けた
魔法使い「・・・・・そういうことですか。分かりました。勇者様が何故このユグリネの地下へ再び足を運んだのかが」
男「あぁ・・・」
魔法使い「勇者様、あなたは本当に何者ですか?私はあなたのその聡明さには驚かされるばかりです」
男「聡明なんて言うなよ。何故かそうしなきゃいけないって思ったんだ。分からない・・・既視感のような。正直、気持ち悪いさ」
魔法使い「分からなくて宜しいと思います」
男「は?」
魔法使い「・・・私も勇者様と同じです。既視感というものなのです。何故か分かってしまったら、駄目な気がするのです」
男「・・・・・。うん、だな!俺は魔法使いを信じるよ」
魔法使い「あわわっ!そのようなことを言って頂きありがとうございます!!とてもとても嬉しいのです!」
男「そうかそうか。そんなので嬉しいなら幾らでも言ってやるから」
魔法使い「あっ、いえ!そんな私の傲慢を強要したい訳じゃありません!言いたくないのであれば言わなくて結構です!」
男「別に言いたくないわけじゃないし。傲慢とも思わないよ・・・だって俺は魔法使いにはそれくらいしか出来ないから」
魔法使い「・・・・っ!はい、承知しました!!」
男「だから、今日は対価になる働きに期待してる。・・・・なーんて、上から過ぎたかな」
魔法使い「ふふっ・・・いいえ。期待していてください。だって私は勇者様にはそれくらいしか出来ないのですから」
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~『勇者の剣』の神殿~
魔法使い「やっぱり・・・・」
男「だな」
魔法使い「では、やはり先程の考えは打ち砕かれますね。その時間にあったものが無くなったとしても、世の中はそれを補おうとはしない・・・・ですね」
男「いくら有り得ない事が数え切れない程起きる世界でも、そんな奇跡は起きないって事か」
魔法使い「・・・・・。あの・・・勇者様?」
男「もしかして、俺がやろうとしている事が無理だと思っているのか?」
魔法使い「い、いえ!ですが・・・そのような事例は過去に聞いたことないのです。下手したら私達の身体は異次元の彼方なんてことも考えられます」
男「当たり前だよ。無くて当然だ。有ったらその事例の元に動くつもりさ。俺だって半信半疑、若しくはゲームで言う『バグ』のようなものに賭けているだけだから」
魔法使い「・・・・・。分かりました。ただし私に予防線を引かさせてください」
男「予防線・・・?」
魔法使い「少々名残惜しいですが・・・超最高級入手困難アイテム『ダイヤイト』を使いましょう」
男「『ダイヤイト』・・・?」
魔法使い「これは絶対に千切れる事なく、ほつれる事もない糸なのです。かの最高難易度ダンジョンのクリエート山の神殿にいる白龍の涙を素材にします。その白龍の涙は何があろうと砕けないダイヤモンドになるのです。そしてその白龍のダイヤモンドと夢魔族の髪の毛を化合調合させて作られたのが『ダイヤイト』です」
男「ピアノ線のごとく敵を切り裂く為の道具とか?」
魔法使い「違います。これは、人間と人間を縁で結び願いを込めれば、糸を辿ってその人間の元へ行けるという転移魔法とは違った未だに解明されてない無印な特異魔法道具です」
男「転移魔法とは違ったって、どういう意味だ?聞いた感じじゃ転移魔法だが・・・」
魔法使い「実際にあった事故の事例です。ある人間が、とある人間と『ダイヤイト』で契りを交わしたそうなのです。ですが、契約対象の人間は不運な事に亡くなってしまったのです」
男「・・・・」
魔法使い「ですが、『ダイヤイト』の契約は繋がったまま。もしかしたら、まだ生きているのではないか?と思い、その残った一人は願ってしまったのです。『会いたい』と」
男「そんなの何も起こらず干渉するんじゃ」
魔法使い「いいえ、そしたらどうでしょう。願った瞬間に、その人間は身が砕かれ、霧のように塵となり消滅してしまったのです。直ぐに解明が進みました。ですが、情報不十分な為、解明など出来なかったのです」
男「それは、やっぱり死んで天国まで会いに行くという解釈なんじゃ・・・・」
魔法使い「はい、そうなのです。ですから言ったでしょう。『縁で結ぶ』と・・・。ですが、『縁』という目には見えない心理学のようなものを魔法として扱って良いのか。そして結果、無印な特異魔法と規定されたのです」
男「不思議だな」
魔法使い「それに・・・そもそもこれは魔力を込めるのではなく、願いを込めるのです。魔力を使わない魔法なのです。なのに素材は魔法アイテムなのです。誠にロマンチックで不可思議なものなのです」
男「なんでそんなものを魔法使いは持っているんだ?」
魔法使い「乙女の秘密です」
男「いきなりボケかますな、腰砕けだわ・・・」
魔法使い「さて、この『ダイヤイト』は一見便利な道具ですが、かなり危険を伴う道具です。そして、この『ダイヤイト』の契約が出来るのは、お互いの信頼や信用を持てる人間としか契りを交わせません。まさに『固い絆』というものです」
男「そうか」
魔法使い「生憎の事ながら、私にはそのような仲の友人や家族などおりません。ですから、勇者様・・・・アナタにお願いしたいのです」
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~学校、教室~
お嬢様「お、男さん!お昼放課、突然居なくなって・・・・探したのですわよ!!」
金色の綺麗な長い髪の毛をパタパタと揺らして駆け足で近付いてきた
男「え、心配してくれたの?」
お嬢様「だ、誰があなたの心配なんてするものですか・・・せ、先生に言われましたの!男さんが居なくなりましたので探してくださいと!ですから、私はしぶしぶと・・・」
男「そかそか。悪いな心配させて」
お嬢様「人の話を聞いてますの!?」
男「あはは、だってお嬢様の目は心配してくれてた目だし・・・目が真っ赤だよ?」
お嬢様「・・・・・・・・・・ご、ご友人を心配しない人なんていませんわ。ましてや、男さんですし」
こんな性格だから、いくら怒られようと憎めないんだ
男「ありがとね」
お嬢様「ふんっですわ」
お嬢様は腕を組んで、頬をふくらませそっぽを向いた
さて、なんだか罪悪感があるけど・・・
男「そんなお嬢様にお願いがあるんだけど・・・・。これを受け取って欲しい」
お嬢様「いきなりご機嫌取りですか、まったく!って・・・まぁ綺麗ですわね。これは指輪・・・ですか?」
男「俺が信用出来るなら付けてほしい。だから信用してないなら、付けなくていいよ」
お嬢様「は、はいぃ!?そ、それはぷっぷぷプロポーズですのぉ!?」
そんな慌てた顔は初めて見たな
男「え、いや違うけど・・・友達として、俺を信用するに値するかどうかだ。だからさ、俺はお嬢様に信用してもらえていれば、嬉しいな・・・っていうのが見たいだけなんだ」
お嬢様「ふん。先程のは冗談ですわ・・・。そして、残念なことに私は男さんの事は信用していますわ。で、ですから・・・この指輪ははめさせてもらいます」
男「・・・・・・ありがと」
お嬢様「お礼する程ではありませんことよ!・・・・・・・・ばか」
男「それじゃ俺は頭痛と気分が優れないから早退すると先生に伝えておいてくれ」
にこっと笑顔を浮かべながら、そう伝えた
お嬢様「わかりま・・・・って、完全完璧に元気そのものじゃありませんか!私を馬鹿にするのも大概にするのですわ!」
男「悪いな。今はどうしても外せない用事があるんだ」
お嬢様「納得できませんわ。ですが、いいですわ・・・・私は心も懐も広いですから。水に流してあげましょう」
男「ありがと。それと平然と金持ちアピールすんな。あと心配もすんな」
お嬢様「で、ですからぁ!私は心配などしてませんことよ!・・・・・男さんの言葉を信用していますのですから、心配は無用なのですわ」
男「そうかそうか。じゃあ、明日もまたお嬢様のブレザー借りる事になるからさ」
お嬢様「庶民のくせにそのような生意気な口を利くんじゃありませんのよ!」
男「え、貸してくれないの?」
お嬢様「それくらい貸してあげますわ!」
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~魔法使いの家~
男「悪いことしちまったな」
魔法使い「契約は撤回不可能なのですよ。それは勇者様の選ばなければならない1つの選択肢なのです」
男「だからと言ってもな、人を騙しているんだ。不確認不安要素の道具を私情で他人を巻き込んでいるんだ。火の海の上の橋がいつ崩れるか分からないのに渡らせるようなものだ」
魔法使い「いいえ!!そんなことありません!!」
男「い、いきなり大声出すなよ」
魔法使い「信用しているからこその事なのです・・・・勇者様にそこまで信用されてもらえるなんて、その人は幸せ者なのです」
男「じゃあ魔法使いも幸せ者だな」
魔法使い「ふぇ・・・」
男「さて、じゃあ転移石を使うか」
魔法使い「あ、あの・・・今のは」
男「ほら、くっつけよ。俺1人だけで行くことになるぞ」
魔法使い「わ、わかりました!」
魔法使いは俺の右腕に勢いよく抱き着いてきた
男「よし、せーのっ・・・!」
魔法使い「はいっ!」
取り敢えず今日は此処までです
ありがとうございました
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