【ラブライブ】にこ「二つ結い、二人結い」 (33)
ラブライブのSSになります
若干の設定改変あり
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・・・・・
にこ「ママ!ママ!」
ママ「んん……」
にこ「ママ!!!」
ママ「はっ!今何時!?」
にこ「お腹減ったよう」
ママ「ごめんね、今起きるから」
にこ「お腹減った!お腹減った!」
ママ「はいはい、すぐできるから。お着替えしてて」
にこ「脱がせてー」
ママ「んもう、にこちゃん。自分でできるでしょう?」
にこ「やだやだやだ!」
ママ「私はあなたのご飯を作ってるのよ……」
にこ「脱がせてー!」
ママ「あんまりママを困らせないで……」
ママ「はい。にこちゃんのおさげの完成よ」
にこ「どうしてこっちとこっちを結ぶの?」
ママ「にこちゃんはわんぱくだから。動きやすい方がいいんです」
にこ「いいんです!」
ママ「ほら!ちゃんと机を向いて食べなさい」
にこ「うん」
ママ「あああ!ほらほら、こぼして!!!」
にこ「ママ!早く!幼稚園遅刻しちゃう!」
ママ「ああ!嘘っもうこんな時間!?」
にこ「とうちゃくー」
ママ「いってらっしゃい。にこ」
にこ「ママもおしごとがんばってね!」
ママ「帰りに迎えにくるからね」
にこ「なあに?先生」
先生「にこちゃん、ママお迎え遅くなるって。先生と一緒に待ってようね」
にこ「ママ……」
先生「大丈夫よ。にこちゃんはお利口さんだから待てるよね?」
にこ「……うん」
先生「にこちゃん!?にこちゃん!!!どこいったの!?」
にこ「にこ、一人でも帰れるもん」
にこ「いっつもママと通ってるもん」
にこ「ママ……」
にこ「ここ、どこ?」
にこ「うわあああああん」
にこ「ママー!ママあああ!!!」
にこ「ヒック……ヒッ」
どうして泣いてるの?
にこ「ふぇえ?」
ママは?
にこ「わかんない」
あなたも迷子?おねえちゃんが一緒に探してあげる。
にこ「おねえちゃんだれ?」
私は___ よろしくね。
……スクールアイドル……
にこ「おねえちゃんアイドルなの?」
・・・・・
ニッコニッコニー!アサデスヨー!ニッコニッコニー!アサデスヨー!
ピッ
にこ「んん……」
夢……
懐かしい夢を見た。幼い頃の私の記憶。
にこ「朝、か」
布団から体を起こし、うーんと背伸びする。
うーんとうーんと日差し浴びながら。
にこ「さて」
にこ「ママ!ママ!」
ママ「はっ!今何時!?」
にこ「まだ大丈夫だけど」
ママ「あぁ……もう」
にこ「もう朝ごはんはできてるわ」
ママ「ありがとう。にこ」
にこ「そういえばスーツもシワシワだったからアイロンかけといたから」
ママ「そんな気を回さなくていいのに」
にこ「いいのよ。ママは毎日大変なんだから」
ママ「にこ……」
にこ「家のことは私に任せて」
もうにこだって子供じゃないんだからこれくらいは当然。
ママはにこのために働いてくれているんだもの。
ママ「じゃああと五分……」
にこ「ママっ!!!」
ママを見送って、チビ達を起こして、私も準備をする。
これが私の日常。
辛いなんて思ったことは一度もないわ。
こんな温かい朝を毎日迎えられて、私は幸せ。
鏡に向かって髪を結う。
もうすっかり慣れてるから、髪のセットにはそう時間がかからない。
にこ「うん。大丈夫。にこは今日もかわいいわ。にこっ!」
にこのトレードマーク。
あこがれの象徴。
にこ「じゃあ行ってくるわね」
チビ達「いってらっしゃーい!」
春。
この音ノ木坂に通い始めてはや数週間。
今日は入部届けを出す日。
にこ「どこに入ろうかな~にこ、迷っちゃうぅ」
なんてね。とっくの前から決めている。
あの日から、決まっている。
……アイドル研究部。
きっとそこから、始まるんだ。
「ええ~にこちゃん、まだ決めてないの!?」
にこ「うーん、やりたいこといっぱいあってぇ」
クラスメイトA。席が近かったからお話するようになった。
残念なことに人間関係ってそんなことで決まってしまうのよね。
「そういうあんたはどうなのよー!」
クラスメイトB。Aと同じ中学校だったらしい。
知り合いがいるということで、入学初期からこの二人はデカイ顔をしている。
果たして、この二人と知り合えたのは幸か不幸か。
A「私もまだだけどー!っていうか入んないかも」
B「私はもともと入る気ないっていうかー!」
にこ「ええ~?二人は入らないの?」
A「にこちゃんは入るつもりではいるんだ?」
B「なのにまだ決めてないとか!にこちゃんらしい~」
にこらしい?よく知り合って間もない人間にそんなこと言えたもんだわ。
きっとそのうちこの子達、ウチらみんな仲良し!とか言い出すわ。
みんなって誰よ。クラス?学年?全人類?
にこ「ええ~でもぉ、気になるところはあるっていうかあ」
B「えー!どこどこ?」
にこ「アイドル研究部とかあ」
B「いいじゃんいいじゃん!にこちゃんかわいいし!いけるって!」
にこ「かわいいくないよ~。全然そんなあ」
A「いやいや、いけるって!そうだ、ウチらも入ってあげるから!」
B「ええ?私も?」
A「当然でしょ!親友の背中押してあげなきゃ」
にこ「えっ」
げっ、めんどうなことになった。
この謎の積極性と行動力はなんなの?
てかいつから親友になったのよ。
にこ「いや、でも」
結局私はAとBとアイドル研究部に入った。
入ってからわかったことだけど、一年生は私たち三人だけだった。
……まあ結果オーライね。
・・・・・
春。
今年からほのかも二年生!
幼馴染のうみちゃんとことりちゃんとも同じクラスになれてルンルンだよ!
……でも。
ことり「今年の一年生、ひとクラス分しか入ってこなかったって」
うみ「そうですか……やはりもう」
ほのか「廃校なんてさせないよ!」
うみ「ほのか……」
ほのかが一年生の頃、この音ノ木坂の廃校という話がちらついた。
理由は生徒の減少。
そこでほのかは学校をPLしようと剣道の大会に臨んだ。
結果はみごと優勝。
これで少しは何かが変わると思ったのに。
うみ「しかしこれでは私たちにはもうどうしようもありません」
ほのか「もっと、もっと何か派手なこと……」
ことり「ほのかちゃん……」
ほのか「うーん、うーん」
そうだ!!!
・・・・・
初夏。
AとBとスクールアイドルを結成して、今日は初ライブの日。
もちろんお客さんがいっぱい!!!
なんて夢は見ない。
多くのアイドルには下済み時代というものがあるわ。
にこ「いっくわよー!」
AB「うん!」
私たちは精一杯踊って、歌った。今はこんなんでも、きっといつか……
現状に満足するわけはないけど、確かに充実感はあった。
きっと二人だって、なあなあで入ってきたけどアイドルの素晴らしさに気づいてくれたはず。
A「ていうか、客いなさすぎ」
B「やってる意味あるのかなあ。ねえにこちゃん」
……
にこ「そんなことないよぉ。二人共かわいかったしぃ」
A「でもだれもみてくれないじゃん?」
にこ「きっといつか振り向いてもらえるよぉ。はい、にこっ!」
B「はあ、にこちゃんは能天気でいいなあ」
カチーン。
A「にこちゃんはいいなあ。そんなに簡単に夢を見られて」
ブッチーン。
にこ「はあ?」
AB「えっ……」
にこ「簡単なわけないじゃない!だからこうして毎日毎日努力してるんでしょうが!!!
あんたらが練習来ない日もにこは一人でやってるのよ!この衣装だって振り付けだって選曲だって全部!!!」
B「ちょっと」
にこ「アイドルなめてんのはどっちよ!!!グチグチいうならやるなっての。不愉快よこのあんぽんたん」
A「なにそれ……ひどい」
B「いままで猫かぶってたんだ。信じてたのに。友達だと思ってたのに」
A「もういいよやめやめ。あんたなんか知らない。一人で踊ってれば?」
後日、二人は退部届けを出してきた。
もちろん私は悪者にされ、あることないことクラス中に吹聴された。
別にいいわよ。もうほっといて。
一人でも、やってやるわよ。
・・・・・
夏。
廃校を阻止すべくほのかたちはスクールアイドルを結成した。
メンバーはほのか。うみちゃん。ことりちゃん。
先輩ののぞみちゃん。
後輩のりんちゃん。はなよちゃん。それからまきちゃん。
りんちゃんとはなよちゃんは最初から入ってくれた。
まきちゃんはちょっと揉めたけど、ひとつ上のニコ先輩が説得してくれた。
ニコ先輩も入ってくれたらよかったのに。
ニコ「ごめんね、私はアイドルとか興味ないかなあ」
のぞみちゃんはナントカ部てやつが廃部の危機で、統合という形で入ってくれた。
全然そっちの活動はしてないけどいいのかな。
ほのか「えりちゃーん!七人も揃ったよ!」
えり「でも約束は九人でしょう?」
うみ「あと一人ですか……」
えり「うみ、算数は苦手だったかしら?あと二人よ」
うみ「一人ですよ」
えり「心当たりがあるのね?」
うみ「はい」
ことり「ええ?だれだろう?」
とにかく、ほのかたちは学校を救うため活動を始めていた。
ニコ「頑張ってるね。私も応援してるから」
ほのか「ニコ先輩も入ってくれたらいいのに」
ニコ「嬉しいけど、私は遠慮しておくね。そうだほのかちゃん!」
ほのか「えっ、はい」
ニコ「ちょっと座って」
ほのか「?」
ニコ先輩はほのかを座らせると、髪をいじりだした。
ニコ「~♪」
ほのか「あの……?」
ニコ「いいからいいから」
鏡を見る。
ほのか「わあ……!」
ニコ「ほら!かわいい!」
髪の右側だけ結んで……よくわかんないけどかわいい!
ほのか「ありがとうございます!とっても気に入りました!!!」
ニコ「よかったあ」
ほのか「ニコ先輩もどうですか!?」
ニコ「私は、このおさげが好きなの。昔ママが……」
ほのか「?」
ニコ「なんでもない」
今日から毎日この髪型にしようかな!
廊下でスキップをしていると……
うみ「コラほのかっ!廊下は走ってはいけません」
ほのか「わっうみちゃん……スキップだよ!」
うみ「そんな屁理屈」
ことり「ほのかちゃん、その髪型かわいい!」
ほのか「えっへっへ。ニコ先輩にやってもらったんだ」
ことり「ニコ先輩かあ」
うみ「どうして片側だけなのですか?」
ほのか「わかってないなあ。これがオシャレなんだよ!」
うみ「はあ」
ことり「アシンメトリー?」
うみ「アシンメトリー……左右非対称ですか。二つ結いにはしないのですね」
ほのか「二つ結い?」
ことり「ツインテールのことだね」
うみ「そうも言いますね。古くからの名称なので二つ結ひ、かもしれません」
ほのか「ひ?」
うみ「ひ、です」
ことり「ひ、って文字がツインテールみたい!」
ほのか「本当だ!!!」
うみ「因みにツインテールの語源は帰ってきたウルトラマンに登場する怪獣の名なんだとか」
ほのか「うみちゃんはハクシキだなあ」
ことり「ウルトラマンが帰ってくるの?」
うみ「はい。ヒーローは必ず帰ってくるのです」
ほのか「なるほどなるほど。ツインテールと、ひ、でヒーローが帰ってくるのかあ」
ことり「全然違うよほのかちゃん」
うみ「ちゃんと聞いていましたか!?」
・・・・・
秋。
一人ぼっちになってから久しい。
クラスではいつも一人。
部活でもいつも一人。
でもにこは諦めない。絶対アイドルになるんだから。
それに、本当の孤独ではないもの。
家に帰れば大好きな家族がいてくれるもの。
どうせ周りの連中は家庭を蔑ろにして遊び呆けてるやつばっか。
親の悪口なんて聞くと吐き気がするわ。
誰のおかげで生きてこれたんだっつーの。
そして愚か者は決まってこういうわ。
「産んでくれなんて頼んでないし」
そんなやつらに私は負けない。
いつか、絶対見返してやる。
私は間違ってなかったって証明してやる。
……いえ。周りに惑わされちゃダメ。
私は私のために頑張ってるんだから。
私は絶対に後悔なんかしない。
そういえばこの前、こんな映画をみたわ。
一人の少女がタイムスリップ……タイムリープできるようになる話。
その主人公は何度も何度も自分の都合の悪いことが起こるたび、それを回避した。
……ああいうの、私は大っきらいよ。
どんな現実も、どんな私も、きっと私は受け入れる。
最終的には、その回避した分のツケが他の誰かに回ったりして後悔したりするんだけど。
それも甘っちょろいってのよ。
私はたとえやり直す力があったのしても、絶対に使わない。
今の私をなかったことにはしたくない。
ああ、でもその子の友達の「前見て走れよ」ってセリフは印象的ね。
何気ない会話なんだけど、過去に囚われていた主人公にはうってつけの言葉。
まあ、その友達はそのことを知らないで言っているんだけど。
とにかく!私は絶対に後悔なんかしない。
にっこにっこにー!
・・・・・
秋。
えりちゃんも加わってくれて、ほのかたちはμ’sとして動き始めた。
スクールアイドルの甲子園、ラブライブの予選出場へのチケットも手にして順風満帆。
私たち八人で、必ず優勝してみせる。
必ず廃校を阻止してみせる。
えり「正式な部にはなれなかったけれど、なんとかここまで来られたわね」
のぞみ「そうやね!」
ニコ「その髪型、すっかり様になってる!」
ほのか「うん!」
ニコ「頑張って優勝してね!」
ほのか「約束するよ!」
ニコ先輩にやってもらった髪型はすっかりトレードマークになっていた。
・・・・・
冬。
私には二人ほど顔見知りがいる。
一人は絢瀬えり。
過去の栄光を忘れられずに今の自分の気持ちも分からず、道に迷っている。
えり「私は生徒会に入って、学校をより良くする。それだけ」
先を見据えてるようで、振り返ってばかりな気がする。
同情するわ。自分のために生きられないなんて。
もう一人は東條のぞみ。
のぞみもまた、過去の孤独な自分に囚われている。
のぞみ「ごめんね、にこっち。何もできなくて」
なのにのぞみが悔いているのは、私を助けられないこと。
余計なお世話よ。
わかってるくせに。手を差し伸べたところで私が素直に受け取るワケないって。
にこ「あんたらねえ」
えり「あたっ!」
のぞみ「えりちもドジやねえ。柱に気づかないなんて」
えり「こんなところに……もう!」
にこ「前見て走れよ」
私は、いつかのようにまたあの日の夢を見た。
正確には、あの夢の続き。
・・・・・
にこ「ありがとう。おねえちゃん」
おねえちゃん「ごめんね、ママ見つからないね」
にこ「うん」
おねえちゃん「はい、ジュースだよ!」
ピト……
にこ「ひ、冷たっ!」
おねえちゃん「ひひひっ!」
にこ「……」
おねえちゃん「あれれ?」
にこ「知らない人にものを貰っちゃダメてママが」
おねえちゃん「そっかあ……。お利口さんだね」
にこ「えへへ」
おねえちゃん「じゃあおねえちゃんが全部飲んじゃうぞー!」
にこ「あっ」
おねえちゃん「ん?ん?」
にこ「おねえちゃんは、どういう人?」
おねえちゃん「んー?私はね、音ノ木坂の高校生さんなんだあ」
にこ「高校生なの?大人だと思ってた」
おねえちゃん「ええ~!そっかあ。子供には大人に見えるのか」
にこ「おねえちゃんは、何やってる人?」
おねえちゃん「ふふん。聞いて驚け!スクールアイドルだよ!」
にこ「アイドル?おねえちゃんアイドルなの?」
おねえちゃん「うん。今は全然有名じゃないけどね」
にこ「すごい!アイドルって優しいんだね!私のこと助けてくれた!」
おねえちゃん「まだ助けきれてないけどね……」
にこ「ジュース、ちょうだい」
おねえちゃん「いいの?」
にこ「もう、知らない人じゃなくなったから」
・・・・・
……正直つらい。
一人で大丈夫。諦めない。頑張れる。
そう言い聞かせてる。自分に。
でもね、とってもつらいの。
ああ。またあのおねえちゃんに会いたいな。
また、私が困っているとき助けてくれないかな。
・・・・・
冬。
ほのかたちは予選に破れた。
アライズという大人気グループに負けた。
やっぱり無謀だった。ほのかじゃダメだった。
学校、守れなかった……どうして?
こんなの嫌だよ……どうして?
なにがダメだったの?なにがいけなかったの?なにが足りなかったの?
ニコ「その、残念でしたね」
ほのか「ニコ先輩……」
ニコ先輩は私たちのことを応援してくれた。
アイドルには興味がなくて、入ってはくれなかったけど。
それでも応援してくれた。
ほのか「約束守れなくてごめんなさい……」
ニコ「謝ることないじゃない」
ほのか「どうして、応援してくれたんですか?」
ニコ「私に入ってって言ってくれたから」
ほのか「え?」
ニコ「私を必要としてくれたのは、あなたたちが初めてだった」
ほのか「……」
ニコ「昔ね、私迷子になったことがあるの」
ほのか「迷子?」
ニコ「うん。幼稚園で、ママの帰りが遅くて一人で帰ろうとしちゃったの。
それで迷子になって、泣きながら道路に飛び出した。
そのとき、ママがね、私をみつけちゃったの。
トラックにひかれそうになっている私を」
ほのか「そ、それで?」
ニコ「ママは、もういない。私の弟か妹になるはずだった子と一緒に……」
ほのか「……ごめんなさい」
ニコ「ううん。……それで、私はずっと一人ぼっちだった。
そんなとき、あなたが私をアイドルに誘ってくれた。
とっても嬉しかった。だから応援することにした」
ほのか「だったら、一緒に……」
ニコ「私にはそんな情熱がなかったから。イタズラに加わるような真似はできなかった」
ほのか「……話してくれてありがとうございました」
ニコ「とにかく、μ’sはよくやってくれた。だれも責めたりしないよ?」
ほのか「でも」
ニコ「こんなお話はおしまい!」
ほのか「……」
ニコ「そういえばね、この前映画をみたの」
ほのか「え……どんな映画ですか?」
ニコ「一人の少女がタイムスリップ……タイムリープできるようになる話」
……
ほのか「そうだ、それなんてタイトルの映画ですか?」
ニコ「時をかける少女」
……
そうは言ってくれても、私は諦められなかった。
それに、ニコ先輩の話……
あのときの、先輩の悲しそうな顔。
ずっと一人ぼっちだったんだ。
たぶん、今も。
学校どころか、私は大切な人すら救えないのかな?
そんな……
いやだ。
せめて、大切な人一人くらいは……
学校は守れなかった私だけど、それでも。
ほのか「ニコ先輩……」
孤独なあの人を、救ってあげたい。
次の日。学校。
もうラブライブは終わったのに、ほのかは校舎の裏で一人練習をしていた。
ほのか「もっと……こう」
うみ「ほのか」
ことり「ほのかちゃん」
ほのか「二人共……どうして」
うみ「ふふ。みんな考えることは同じです」
ことり「ラブライブは終わちゃったけど、ことりたちにはまだ時間があるよ」
ほのか「そっか、そうだよね。最後まで、スクールアイドルでいよう!」
だって可能性感じたんだ そうだ進め
後悔したくない 目の前に
僕らの道がある。
ほのか「いっくぞー!」
ことり「ちょ!!!ほのかちゃんっ」
うみ「まって!そっちは!!!」
そのとき、ほのかは何を思ったのか、階段を飛び降りた。
魔が差す?一瞬の気の迷い?血迷った?気がふれた?
とにかく、その場の勢いって怖いよね。
でもなぜか、私はそうせずにはいられなかった。
あっ……まずいかも。
死ぬ。
・・・・・
ほのか「……えっ?」
生きてる。なんだ?
ここどこ?なにがなんだか?
えっと、なんとなく見覚えのあるような。
でもどこかちょっと違うような?
とにかく、階段を飛び降りたら私は迷子になった。
なんだそりゃ。
ほのか「どどどどうしよう」
しばらく、あたりを彷徨った。
よく、迷子になったらそこを動くなっていうけど。
ほのかはそういうタチじゃない。
ほのか「まいったなあ……」
「うわあああああん」
ふと、子供の泣き声が聞こえた。
女の子「ヒック……ヒッ」
ほのか「どうして泣いてるの?」
女の子「ふぇえ?」
ほのか「ママは?」
女の子「わかんない」
ほのか「あなたも迷子?おねえちゃんが一緒に探してあげる」
女の子「おねえちゃんだれ?」
ほのか「私は高坂ほのか。よろしくね」
しばらくその女の子の手を引いて歩き回ったけど、ママは見つからない。
女の子「ありがとう。おねえちゃん」
ほのか「ごめんね、ママ見つからないね」
女の子「うん」
ほのか「はい、ジュースだよ!」
ピト……
女の子「ひ、冷たっ!」
ほのか「ひひひっ!」
女の子「……」
ほのか「あれれ?」
受け取ってくれないや。嫌いな飲み物だったかな?
女の子「知らない人にものを貰っちゃダメてママが」
ほのか「そっかあ……。お利口さんだね」
女の子「えへへ」
……知らない人についてっちゃダメとは教わらなかったのかな?
ほのか「じゃあおねえちゃんが全部飲んじゃうぞー!」
女の子「あっ」
おねえちゃん「ん?ん?」
女の子「おねえちゃんは、どういう人?」
ほのか「んー?私はね、音ノ木坂の学院生さんなんだあ」
女の子「高校生なの?大人だと思ってた」
ほのか「ええ~!そっかあ。子供には大人に見えるのかあ」
女の子「おねえちゃんは、何やってる人?」
ほのか「ふふん。聞いて驚け!スクールアイドルだよ!」
女の子「アイドル?おねえちゃんアイドルなの?」
ほのか「うん。今は全然有名じゃないけどね」
女の子「すごい!アイドルって優しいんだね!私のこと助けてくれた!」
ほのか「まだ助けきれてないけどね……」
女の子「ジュース、ちょうだい」
ほのか「いいの?」
女の子「もう、知らない人じゃなくなったから」
ほのか「そっか。はい」
女の子「おねえちゃんの髪、どうなってるの?」
ほのか「え?」
女の子「かわいい」
ほのか「ええ~これはねぇ、先輩にやってもらったのがはじめで……」
女の子「やって!」
ほのか「いいの?キミのおさげも似合ってるよ?」
女の子「いいんです!」
ほのか「うーん……うまくできるかな」
女の子「わくわく」
ほのか「よ……し。こんな感じかな?」
ちょっとバランスが悪いけど、私の髪みたいに結んであげた。
せっかくなので両側。ツインテール。
女の子「ありがとうおねえちゃん」
ほのか「うんうん、こっちも似合ってるよ」
女の子「あっ!ママ!!!」
ほのか「どこ!!?」
ママ「ああ、よかった!すみませんうちの子が……」
ほのか「いえいえ、見つかってよかったね!」
女の子「うん!ありがとうおねえちゃん」
ママ「本当にありがとうございました」
ほのか「バイバイ!」
女の子「ばいばい」
ママ「ありがとうございました。失礼します」
女の子「おねえちゃん!」
ほのか「?」
女の子「私!大きくなったらおねえちゃんみたいになるね!!!」
ほのか「あはは。うん!またね~!」
女の子はママに連れられていった。
よかったよかった。
ママ「もう!二度とこんなことしちゃだめよ!」
女の子「ごめんなさい……」
ママ「……無事でよかったわ。にこ」
ほのか「えっ……」
・・・・・
また春が来た。
アイドル研究部に入って二年ちょっと。
私は三年生になった。
……部員は私一人になった。
それでも私の心は折れない。
だって、憧れのアイドルが私の中にいるから。
いつか、あのおねえちゃんのようなアイドルになるんだから。
ちょうどあのときのおねえちゃんとにこは同い年くらいかしら。
今頃、あのおねえちゃんは何してるのかな。
「講堂でライブやりまーす!!!」
「スクールアイドル結成しました!」
「初ライブ是非見に来てくださーい!」
なんですって?
私を差し置いてスクールアイドル結成?
冗談じゃない。どんな輩か面を拝みに行ってやりましょう。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
夏。
私はμ’sのメンバーになった。やっぱり私は、アイドルが好きだから。
そう。憧憬の始まりはあの日。全ての始まりはあの日。
あの日も今日みたいに……
にこ「あっついわねえ」
りん「にこちゃんだらしないにゃ」
うみ「水分補給のため休憩です」
はなよ「汗だくだよぉ」
ことり「ふふっ。私も」
にこ「ああっ!最悪!水筒忘れたわ!!!」
りん「えー!こんな日に!?しょうがないなあ」
ほのか「はい、ジュースだよ!」
ピト……
にこ「ひ、冷たっ!」
ほのか「ひひひっ!」
にこ「……」
ほのか「あれれ?」
ほのか「どうして泣いてるの?」
にこ「おねえちゃん……?」
私をツインテールにしてくれたおねえちゃん。
ジュースを私の頬にあて、ひひひと笑うおねえちゃん。
ツインテールと、ひ、でヒーローが帰ってきた。
時をかけて帰ってきたウルトラマン。
私が道に迷ったら、どこからともなく現れて。
私を助けてくれるんだ。
……あなただったのね。
にこ「二つ結い、二人結い」
終劇
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