提督「変身!」漣「ご主人様、調子に乗ると…え?」 (241)
提督『提督直々に出る!!』
強化スーツで身体を覆われた提督がポーズを決める。しかも艦娘同様海の上を疾走し始めた。
漣「えっ…?えっ…?本当に変身した?」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1412778404
呆然とする漣。当然である。
いつも秘書艦を撫でくりまわして喜んでいるアレな感じの提督が、ヒーローよろしく変身したのだから…
しかし、それは“敵”も同じだったようで…
怪人?「な、なんだこいつは?相手は艦娘じゃなかったのか?」
提督『いったい何なんだコイツらは?深海棲艦じゃないようだが…』
・
・
・
話は少し遡る。
深海棲艦と呼ばれる存在と戦う海軍鎮守府。
様々な海域において、数多の提督と艦娘が深海棲艦と交戦を繰り返しているが、ここに着任した提督の周りは少し違っていた。
通常、深海棲艦は海上を行くものを攻撃する。が、この鎮守府周辺に変わった深海棲艦の集団が現れた。
海賊のごとく、沿岸部から物資を略奪しているのだ。まるで提督たちが任務で海域を攻略するかのように目的をもって行動していた…。
提督「よし、では今回は艦隊での出撃ではなく、やつらの目的の調査、及び沿岸部への略奪を水際で防ぐのが目的だ。」
伊勢「うへぇ、こりゃまた随分と通常任務から外れた作戦じゃない。」
蒼龍「まぁまぁ…警備任務の延長線…みたいなものですし。」
提督「まぁ…近場の巡回だよな。伊勢と蒼龍は偵察機を飛ばしてくれ。」
ハーイ
鈴谷「んー…しっかしさー、目的を持って集団で進軍するって私たちみたいじゃん。」
漣「そうですねー。もしかして向こうにも提督業始めた人がいるんですかねぇ?」
阿武隈「そんなのが出て来たらもっとパニックにならない?」
提督「深海棲艦を統べる提督ねぇ…やってることは海賊まがいだからなぁ…
ともかく、鈴谷、阿武隈は沖合を…」
提督「漣は俺と一緒に陸地から調査だ、以上!」
リョウカイ!
沿岸部
提督「漣や~、体力温存のためにおぶってやろうか?」
漣「結構です。ご主人様ってば、そうやって触ろうとしてくるんだから…作戦中ですヨ。」
提督「ちぇ、緊張をほぐしてやろうとしたんだよ。」
漣「そういうのいいから任務の続き!」
ピピ…
提督「ん?伊勢から入電?」
伊勢『提督!来たよ!例の奴ら!もう沿岸に向かってる!』
聞き終わるや否や提督が指示を出す。既に普段のおちゃらけた顔ではなかった。
提督「巡洋艦組、地点●×へ急行せよ。空母組は艦載機で援護。漣っ…!」
漣「ほいさっさー!沿岸への被害を防ぎつつ、鈴谷さんたちが到着まで足止め、ですね。」
提督「そうだ。その後包囲して…」
蒼龍『提督、気をつけて!敵影は3、うち2つは駆逐艦クラス…
でも最後の1つは正体不明よ。人型をしてるから巡洋クラス以上かもっ!?』
提督「漣、無茶はするなよ。最悪、相手のデータだけでもわかれば…」
というその時…
怪人?「悪いがデータをとっても参考にはならんよ。」
提督、漣「!?」
突如、声がしたかと思えば、海上から攻撃が来た。
慌てて回避して海上をみれば、見たこともない敵がいた。
怪人?「沖合の艦娘や偵察機を振り切ってくるのは骨が折れたよ。お前が部隊の大将だな?」
提督「だったらどうした?」
怪人?「我々の仕事がやりにくくなる。消えてもらう。」
提督(仕事?いかん?やられ…)
漣「させるかぁぁ!援護防御ぉ!」
敵の攻撃を、漣が割り込んで受け止める。
漣「はにゃっ…!」
提督「漣っ!?」
怪人?「邪魔をするなぁ!」
続く攻撃で爆炎が発生し、直撃ではないものの提督が後方へ吹っ飛んだ。
漣「ご主人様っ!」
怪人?「駆逐艦ども、あの艦娘の相手をしろ」
イ級「イー!」
駆逐艦に足止めされる漣。一方、爆発の煙の中で提督は…
提督「くっ…あいつは新手の深海棲艦か?」
??「違いますね」
突如、煙の中から別の声がした。慌てて身構える提督。だが、そこにいたのは、先程の怪人ではなかった。
エージェント「突然申し訳ありません。私は“財団K川”のエージェントです。」
提督「“K川”…鎮守府に資金や技術提供してるという…」
エージェント「その認識で構いません。あの敵に対抗する…新技術を持ってきました。」
提督「? そんな補給通達なかったが…?」
エージェント「緊急時ですので、スポンサー特権です。さぁ、これを…」
差し出されたのは…バックルに船のマークがついた…
提督「ベルト?艤装なのか?漣に装備できるなら…」
エージェント「いえ…これは艦娘には使えません。人間…提督であるあなたを強化するものです。変身すれば艦娘並の戦力が期待できますよ…」
提督「変身?」
エージェント「せいぜい、盛り上げてください…」
提督「何?どういう…」
漣「きゃあぁぁっ」
提督が問い詰めようとしたところで、漣の悲鳴が遮った。
煙が晴れたところで海上の漣の姿が見えた。敵の攻撃で中破まで陥っている。
漣「うぐぅぅ…何も言えねえ」
イ級にはなんとか渡り合うものの、あの怪人には押し切られているようだ。
提督「くっ…あれ、エージェントは…いない?」
爆発の煙が消えるとともに、ベルトをわたしたエージェントもいなくなっていた。
提督「鈴谷達は…まだ来ないか……」
提督「こうなりゃあ!漣、今行くぞ!」
ベルトをしめて駆け出す提督。
漣「へ?な、何考えてるんです!ご主人様!?」
怪人?「とち狂ってお友達にでも……ん?なんだ?あのベルトは!?」
提督「うおおおっ! 変 身 !」
漣「ご主人様、調子に乗ると…え?」
・
・
・
そして話は冒頭に戻る。
怪人と提督(変身態)はお互いの正体がわからぬまま戦闘を開始するのだった…
続く
提督『せいっ!…っと水の上でも同じように動けるんだな…』
怪人?「うおっ…海の上で格闘戦とはな。」
敵怪人の取り巻きだったイ級も提督への攻撃に参加するが、意外にも提督は的確に攻撃をかわしていく。
漣「うそ…ご主人様ってばあんなに戦闘技量があったの?」
漣が唖然としている間に、提督は攻撃をかわしつつもイ級に肉薄し、蹴りと手刀を叩き込んで無力化した。
小回りの効く駆逐艦とはいえ、接近しての攻撃には弱いようだ。
怪人?「おのれ、ちょこまかと!くらえ!くらえ!」
提督と距離をとり、砲撃で攻撃をする怪人。
提督の強化スーツには見たところ、遠距離攻撃用の武装はない。
提督『回避ィィ!』
が、素早い動きで着弾予想地点から離れる提督。
提督『艦同士ならともかく…人型がやり合うんなら徒手格闘(こっち)のほうがいい』
提督『おおりゃあー!』
気声を放って、提督が格闘攻撃を開始する。砲撃でできた隙を狙ってまずは拳を叩き込む。
さらに激しい攻撃の前に、怪人は防戦一方になる。
怪人?「まさか…艦隊戦で至近距離の殴り合いだと…」
提督『殴り合いじゃない…海軍式格闘術だ。どんな訓練もしとくもんだな。これでも良い成績修めてきたんだぜ!!…と。』
突如、提督が攻撃を中断して距離をとる。そしてこの場にいる味方へ援護要請を行った。
提督『今だ!漣!撃てぇぇ!』
怪人?「しまっ…艦娘のほうが残って…」
漣「了解っ!漣はしつこいんです!!」
ウサギの乗った連装砲が火を吹く!
漣の砲撃に対し、慌てて防御する怪人。しかし攻撃によって体勢を崩されたところに、今度は波に乗って加速した提督が突撃する!
提督『はあぁぁ!!』
そのまま怪人に渾身の飛び蹴りを決めた!
怪人?「ぐわぁぁっ!」
怪人はそのまま吹っ飛び、水しぶきをあげて海面に激突する。
怪人?「がはっ…」
そのまま体を炎上させながら海に沈んでいった。
提督『はぁ…はぁ…や…』
漣「『やったか?』は言っちゃダメですよ。敵が復活しますからね。」
提督『ふぅ…敵部隊の沈黙を確認。おや…?』
提督が一息ついたところで、体を覆っていたスーツが消えていく。普段の軍服にもどった提督は…
提督「うおっ…し、沈む。」
漣「ちょ…何やってるんです!?ご主人様!?何で急に沈むんですか?」
提督「わかんねーよ。あのスーツが消えたら…
あっ!あれを着てるときじゃないと艦娘と同じ力が出せないのか?」
もはや溺れる寸前ではあったが、そこは海軍の所属、着衣水泳でなんとか水面に顔を出している。
漣「イマイチ決まらないヒーローですね~
ほら、つかまって下さい。」
提督「す、すまん。」
漣に肩を貸してもらう形で陸地へ向かう提督。さすがに艦娘だけあって、小柄な漣といえど提督を曳航可能であった。
鈴谷「おーい!お待たせぇ!って、何で提督が海上にいるの?」
阿武隈「あのー、傍目から見ると半裸の漣ちゃんに提督が抱き着いてるようにしか見えないんですけど…」
沖合にいた鈴谷達が集まってきた。まさか彼女達も提督がヒーロー姿に変身して敵を撃退したとは思わなかったのであろう。漣に肩を借りている提督を見て怪訝な顔をしていた。
阿武隈「ところで敵は漣ちゃん一人でやっちゃったの?」
鈴谷「そーそー、何か新型?みたいなのもいたらしいじゃん。よく頑張ったよねー。」
漣「えっと…漣じゃなくてご主人様が…」
鈴谷「?」阿武隈「?」
提督「あー、まぁ…後で話すよ…」
提督(それにしても、あの人型…明らかに深海棲艦じゃないよな…
それでも深海棲艦を率いてたみたいだし…何だったんだ?)
鎮守府
伊勢「おっ!?帰ってきた!お帰り~」
蒼龍「お疲れ様。わ!?漣ちゃん、だいぶやられたね、大丈夫?」
漣「このくらい…」
提督「いや…すぐに入渠してこい。苺パンツ丸出しにされたらかなわん。」
阿武隈「さっきまで、その状態の漣ちゃんに抱き着いてたのに?」
鈴谷「そうそう!今更紳士ぶったって遅いよー!」
漣「そーですねぇ…ご主人様、海からあがったのにくっついてましたもんね。」
提督「ばっ…お前、それは漣が心配だったから支えようと思ってだな…
ってオイィ!伊勢と蒼龍はドン引きして汚いモノを見る目をするのをやめなさい!!」
伊勢「うわ~」蒼龍「ええぇ~!?」
提督「あぁ!もう、今日は解散!俺は、さっきの戦闘データをまとめてくる!」
その後、修理を終えた漣が執務室で提督を問い詰めていた。
漣「…で?ご主人様?結局、あの変身はいったい何だったんですか?」
提督「俺にもわからないよ。あの時、突然ベルトを渡されて…」
漣「渡した人に心当たりは?」
提督「さぁ?」
漣「どういった原理で変身したんです?」
提督「さぁ?」
漣「うわぁ…」
提督「あの敵のことも含めて、わからんことだらけだよ。上にも謎の敵性団体と謎の装備としか報告しようがない。」
漣「はぁ…ともかくそんなわかんないこと尽くしで、よく戦えましたね。いや今までの深海棲艦も正体不明でしたけど…」
提督「ふっ…漣がピンチだったから体が勝手に動いてしまったんだよ。
俺だって士官とはいえ、戦闘の訓練は受けてたからな。戦える力があるんなら俺だって戦うさ!」
漣「熱弁乙」
提督「へ?」
漣「『ご主人様(キュン…)』な~んてなると思いましたか?指揮官が前線で格闘戦に臨んでどうするんですか!?
次にああいうのが出て来ても、私達に任せていつも通り後方で指揮をしてくださいね。
ほかの皆にも変身できるって見せびらかしちゃダメですよ!」
提督「えぇー!?せめてベルトの性能くらい調べようぜ!?夕張や明石に頼んでさぁ…」
漣「ご主人様は危ないことしないの!さっ、書類仕事してください!」
漣は提督の背中を押し、デスクに向かわせる。その表情は少しだけ嬉しそうだった。
漣(ま、まぁ、助けに来てくれたご主人様は少しだけ頼もしく見えましたケド…)
一方の提督は…
提督(うーん…一度しかやり合ってないからわからないけど……
なんかあの類の敵は艦娘とは相性悪い気がするんだよなぁ…)
鎮守府周辺警戒中
漣「ご主人様ったら、皆と一緒に現場に出るんだ、なんてカッコつけて…」
潮「私達のこと、心配してくれてるんだよ。」
漣「でも、提督としての評価は統率力でしょ?
局地戦で活躍したからってご主人様の戦果にはならないでしょうに…
今日だって鎮守府に残してくるの大変だったんだから…」
潮「そ、そうなんだ~、けど今は目の前の任務に集中しようよ。
また新型の深海棲艦が来るかもしれないし…」
一般人「きゃあああっ!?」
潮「え?え!?」
悲鳴のした方へ駆け付けると、またしても怪人と深海棲艦が街から略奪を行おうとしていた。
漣「また海賊まがい!?どうなってるの?」
急ぎ、海上から陸地にあがる漣と潮。
怪人2「ぐふふ…ん?」
漣「こら~、一般人さんから離れなさい!」
潮「海軍鎮守府の者ですっ!おとなしくしてくださいっ!」
怪人2「ほぉ…」
怪人は掴んでいた一般人を放り出すと、漣たちに対峙した。
一般人「ひ、ひいいぃっ…」
慌ててその場を離れる一般人。
それを尻目に漣たちと向き合ったまま、怪人は率いてきた深海棲艦に指示を出す。
怪人2「よし、お前らは戦利品を運べ。
ぐふふ、今日は艦娘が二人か…?この辺荒らし回って稼ぎも終えたところだし、新しい戦利品としてお前らも持ち帰ってやる。」
潮「ひっ…お、お持ち帰りされちゃう?何なの?この人?」
漣「荒らしに触れちゃダメよ、潮。ここで返り討ちにしてやりましょ!」
そう言うなり漣が怪人に向けて砲撃を放った。
砲撃に一瞬ひるむものの、すぐに余裕をとりもどした怪人。駆逐艦2人を相手に戦いの体勢をとる。
怪人2「ふふっ、勇ましいお嬢ちゃんだ…だがこの数を相手にできるか?」
怪人の合図で次々と深海棲艦があらわれ、漣と潮を取り囲む。
潮「わわっ…ど、どうしよう…漣ちゃん…私達だけじゃ…」
漣「大丈夫…っ、すぐ皆が合流してくれるわよ。」
潮と漣は背中あわせで背後のカバーに入る。
漣「とにかく敵の数を減らすわよ。」
潮「了解!」
弱気になっていた潮も、漣に頼ってばかりはいられないと意を決し、攻撃を開始する。
しかし…
怪人2「ふん!深海棲艦ならともかく、この俺には当たらんぞっ!」
潮「う、そ…効かない?回避されちゃう!?」
漣「くぅ…私たちだけじゃあ…」
二人の攻撃で深海棲艦は退けられても、怪人は怯まない。
じりじりと追い詰められていくその時、遠くから援護射撃がはいった。
怪人2「む?」
伊勢「お待たせっ!!」
蒼龍「私もいるよ!」
伊勢の砲撃に続いて、今度は蒼龍の艦載機が攻撃を開始する。
鈴谷「まずはまわりの敵を撃破!」
阿武隈「潮ちゃん!漣ちゃん!大丈夫だった?」
重軽の巡洋艦も到着し、怪人を援護していた深海棲艦を撃破した。
漣「先輩方!」
潮「ありがとうございます!」
鈴谷「おっし!これで頭数はこっちが有利じゃん!」
怪人2「む、増援か?面白いな!」
言うなり、怪人は海へ飛び込む。
伊勢「ちょっ!?逃がさないわよ!」
怪人2「そうだ…追ってこい…」
蒼龍「奪ったもの返しなさーい!」
その時、怪人の進む方向に突然船が現れた。
阿武隈「えっ?何あの船?」
鈴谷「偽装して停泊させてたの?」
怪人2「ぐふ…可愛い女の子を独り占めというのも怒られそうなんでな。こっちも数を揃えさせてもらおう。」
伊勢「こいつらの…母船?」
その船にあげられた旗をみた潮が呟く。
潮「髑髏のマーク…」
漣「ホントに海賊船…なの?」
艦娘達が戸惑っている間に怪人一一海賊の仲間が船から出てきた。
怪人3「おいおい…金目のモノを奪ってくるだけじゃなくて、こんなカワイイ娘まで連れて来たのか?」
怪人4「じゃじゃ馬過ぎて愛でられないんじゃないか?」
怪人3「ひぃふぅみぃ…6人か…さすがに1人じゃ手に余るな。」
怪人2「すまんが手分けして頼む。なに、ちょっと頑丈なだけの小娘だ。
痛い目にあわせてひん剥いてやれば、大人しくなるさ。」
下びた笑いをする怪人達に嫌悪感をあらわにする艦娘たち。
その先頭をきって伊勢の主砲が火を噴いた。
伊勢「好き勝手言ってくれるじゃないの!この海賊風情!」
鈴谷「キモい笑い方するな~!とにかく先手必勝!」
鈴谷も続き、火力を一人の怪人に集中させる。
敵が3人に増えたとはいえ、まだ艦娘たちのほうが数的に有利。確実に仕留める戦法だった。
が…
怪人3「遅ぇよ!」
鈴谷「え…?」
バシィン!
鈴谷「うああっっ!」
着弾前に踏み込んで来た怪人3が、鈴谷の頬をはたいた。そのまま海面に倒れ込む鈴谷。
潮「鈴谷先輩っ!くっ…」
潮が援護のために砲を向けた瞬間、既に怪人3は懐に飛び込んでいた。
そのまま潮の潮の胴に掌底を叩きこむ。
潮「かっ…はっ…げほっげほっ」
咳き込んで倒れる潮。
怪人3「おっ、ガキだと思ったら、結構良い身体してんじゃねえか。最後まで沈まなかったら可愛がってやるよ。」
蒼龍「くっ、阿武隈、二人をお願い。艦載機…遠距離から…」
怪人4「おい…本体がこんな近くにいてどうする…」
蒼龍「!?」
やはりあっという間に距離を詰められ、蒼龍は怪人4に喉元を絞められてしまう。
蒼龍「くっ…うううっ…」
伊勢「くぅっ!蒼龍を離せぇ!」
伊勢が軍刀を抜いて切り掛かる。だが、今度は怪人2が立ち塞がる。
怪人2「おい、刀はもっと腰を入れて切り下ろすものだぜ。よっと…」
伊勢「うわっ」
怪人2によって、あっという間に軍刀を弾き飛ばされてしまう伊勢。
そこに怪人4が掴んでいた蒼龍を投げ付けた。
伊勢「あぐっ!」
蒼龍「きゃああっ!」
阿武隈「このっ、離れてっ!来るなぁ!」
潮と鈴谷を回収した阿武隈は怪人たちに向かって必死に砲を放つが、素早い敵の動きを止めることが出来ない。
阿武隈「深海棲艦とは戦い方が全然違う…懐に入られての接近戦なんて…」
怪人3「所詮こいつらは“艦”だ。足を止めての撃ち合いならともかく…俺達海賊のやり方にはついてこれまい。」
阿武隈「う、うそ…当たらない!?」
怪人4「もう少し相手に合わせた戦い方をするべきだったなぁ!」
阿武隈「きゃあああっ!!」
ついに阿武隈も相手の攻撃で倒れ込んでしまう。
仲間がやられていくのを目の当たりにする漣。幸いまだ全員轟沈はしていない…が、このままではそれも時間の問題だ。
漣(そんな…この前は漣の主砲でも当てられたのに…
前はご主人様が格闘で戦ってたから?
私たちだけじゃ相性が悪すぎる…
こんなことになるなら…ご主人さまに大見栄きるんじゃなかった……っ)
怪人2「さぁて、あとは嬢ちゃんだけか…
投降して俺達に可愛がられるなら、全員命だけは助けて……ん?」
漣「?」
怪人達が近づいてくる気配を察知し、言葉を切った。
ブオオオォォォン
艦娘たちも近付いてくる音の方に目を向ける。
伊勢「う…何?」
鈴谷「へ?水上バイク?」
提督「………」
それは水上バイクで水しぶきをあげながら突撃してくる提督の姿だった!
提督「 変 身 !!」
提督『うおおおりゃああぁ!!』
提督は戦闘形態に姿を変えると、水上バイクで怪人に体当たりした。
阿武隈「えっ?提督が…」
潮「わわっ…ヒーローみたいな姿に変身しちゃいました~」
蒼龍「何なの…これ?」
水上バイクから降りた提督は海面に立っている。
提督『やっぱり変身すると、海上で活動できるんだな…
っと、遅れてすまない。まだ全員生きてるな?』
伊勢「は、はい…まだ何とか…」
鈴谷「提督、ソレ…いったいどうしたの?」
提督『悪い…後で説明するから…あいつらは俺に任せな。』
怪人達と対峙する提督。
怪人2「やってくれたな!海軍の者か!」
提督『鎮守府の提督だ。直々に出てきてやったぜ!』
怪人2「何が直々に、だ!偉そうに…」
怪人3「まぁ、まて…
おい、海軍の提督さんよ?お前も俺達と同じ力があるなら、一緒に暴れねーか?
宮仕えなんて背広組にこき使われるだけで面白くねーだろ?」
提督『お前ら…やはり深海棲艦とは違うのか…
“力”といったな…どこで手に入れたんだ、その力?』
怪人4「あぁん?我等が親分がくれたのよ。これで広い海は俺達の者だぜ。海軍もおそるるにたらん!」
提督『親分…ね』
余裕か、挑発か、怪人達が提督に誘いの言葉をかけてきたが、提督はその会話から情報を引き出そうと話を続けさせた。
伊達に、気分のコロコロ変わる年頃の艦娘達がかしましく騒ぎ立てる鎮守府をまとめているわけではない。
提督『そいつはここにいるのか?』
怪人4「こんな前線の稼ぎにまでお出でにはならねぇよ。あの方は……」
怪人3「おい、その辺にしとけ。あんま情報もらすな。」
怪人4「いいじゃねーか。こいつが一緒にくればよし。逆らうってんなら…ここで消しちまうんだからな。」
さすがにこれ以上情報をこぼしてくれないと見た提督は、話を切り替えた。
提督『……残念だが、俺は善良な公務員なんでね。税金払ってもらってる以上、市民の味方さ。』
潮(よ、よかったぁ…提督が敵方に寝返るかと思いましたぁ…)
阿武隈(潮ちゃん…意外と提督の評価厳しいね…)
怪人2「はっ?いいご身分だな。国家の犬が!」
提督『こう見えても賢い忠犬でな…』
怪人2「ちっ、お上に尻尾振ってんじゃねーぞ、犬っころ!」
提督『忠犬やってるお陰で、可愛いメス犬のいる鎮守府に着任できたのさ。』
漣「やめてくれませんか?その言い方…」
提督『まぁまぁ…お前達は離れたところに行ってな。主砲が届くくらいの…な?』
伊勢「……わ、わかりました!みんな、ここは提督に任せよっ。」
皆、負傷しているということもあって、艦娘達はその場を離れた。
一方、提督は改めて怪人達と向き合う。
提督『さぁて…はみ出し者ども…
とりあえずウチのメス犬ちゃんたちをいたぶってくれた仕返しはさせてもらうぜ!!』
怪人4「このっ!イカれた犬があぁ!!」
怪人4が素早い踏み込みで襲い掛かってくる。
しかし、提督は艦娘達とは戦い方が違った。
提督『おおっと、犬といっても、ドイツの『とびきりイカれた女猟兵ども』程じゃないぜ!』
怪人3「こいつ…」
提督は素早い身のこなしで、怪人4のみならず波状攻撃を仕掛けてきた残りの敵も相手にして立ち回った。
蒼龍「す、すごい…3人相手に…」
伊勢「互角以上に戦ってる…?」
漣「ご主人様、アレで意外と近接戦闘は得意みたいなんですヨ…」
怪人4「こいつっ…パワーもスピードも俺達より上だと!?」
提督『残念だったな。技量も上だ!』
提督は3人相手に素早く立ち回りながら、それぞれに的確に打撃を与えていく。
スーツの性能というより、軍人として訓練された技術だった。
普段は執務室で艦娘にいたずらしてぶっ飛ばされている提督であるが、腐っても軍人…やる時はやるのだ。
怪人2「こ、このぉ…」
提督の戦闘術に翻弄され、動きが鈍る怪人達。
提督『お前ら、さっきは艦娘たちに有利に立ち回ったみたいだけどな…』
怪人3「?」
提督『あいつらの火力をあまり馬鹿にしない方がいいぞ…』
怪人「なに?」
提督が離れた場所にいる伊勢達に合図を送った。
提督『今だ!雌犬ども!撃てぇぇ!』
伊勢「目標、前方の“4人”……せーのぉっ」
艦娘達「「誰が雌犬だぁぁ!!」」
提督も巻き込んで艦娘達の砲撃が降り注ぐ。
怪人&提督『うわああああぁぁぁぁ!』
潮「あわわ…こんなことしちゃって大丈夫でしょうか…」
阿武隈「潮ちゃんだって撃ち込んだじゃない……」
潮「雌犬呼ばわりはさすがに……」
漣「ご主人様…調子に乗りすぎですヨ。一発だけなら誤射かもしれませんからね、仕方ないですね。」
砲撃が止んだあと、何とか回避した提督が艦娘達に文句を垂れる。
提督『おいぃぃ!あぶねーだろ…って、あれ?スーツの形状が…』
鈴谷「あれっ?提督、なんでまた姿が変わってんの?」
蒼龍「パワーアップ?」
砲撃後の煙の中から見えたのは、今までと外見の違うスーツになった提督の姿だった。
提督の姿が今までと変わり、両腕に連装砲、両足に魚雷発射管のついたものにかわった。
その姿は水雷戦隊所属の艦娘に近い形状である。
提督『ほう…こいつは……駆逐艦クラスってことか』
ベルトからは「DESTROYER」との音声が流れている。
提督『なるほど…小物を露払いしろってことか…』
はじめは支援砲撃を受けた上に、相手の姿が変わって浮足立った怪人も再度戦闘体勢にはいる。
怪人2「てめぇ!今更砲を装備したところで、もう遠距離攻撃には当たらんぞ!」
提督の装備を遠距離用とみてとった怪人2が接近戦を仕掛けてくる。
怪人2「うおおっ!」
提督『じゃあ、こいつの使い方を見せてやるよ!せいやっ!』
提督は、砲は使わずに今まで同様徒手空拳で怪人2とやり合う。
技量で勝る提督は敵の攻撃をいなし、そのまま相手に拳を打ち込み……
そのまま腕の連装砲を発射した。
怪人2「ぐはぁっ……」
零距離で砲撃を喰らい、思わず後ろに吹っ飛ぶ怪人2。
提督『とどめだ!』
その隙を見逃さず、提督は距離を詰めて回し蹴りを叩き込む。さらにキックのインパクトと同時に魚雷を放った。
怪人2「ぎゃああああっ!!」
爆炎をあげて海に沈んでいった。
怪人4「このやろう、よくもぉ!」
仲間をやられたことに激昂した怪人4が突撃してくる。どこに持っていたのか、ライフルのような武器で小回りのきく射撃をしながら攻め立てる。
怪人3「ふん、こっちが遠距離攻撃できんと思ったら大間違いだぞ。」
怪人3も攻撃に加わる。
提督『うわっ!海上で歩兵みたいな武器を使いやがって…』
一転してピンチになったその時、再び提督のスーツが姿を変えた。
提督『おわっ…!?』
蒼龍「あっ!また提督の形が変わったよ!」
漣「連装砲と魚雷はなくなりましたね。」
今度は艦砲の類は付いておらず、左腕に小さな甲板を模したモジュールが装着された以外特徴はない状態だ。
が、その甲板から戦闘機が飛び出した。
提督『これは…?』
ベルトからは「AIRCRAFTCARRIER」の音声が流れる。
提督『空母クラスか!』
戦闘機たちが怪人達の周りを飛び回り提督への攻撃を妨害する。
怪人4「なんだ、コイツらは!?あのやろうの艦載機か?」
怪人3「どのみち本体を狙えば……うっ」
戦闘機に気を取られた怪人達は提督の接近を許してしまっていた。
提督『今だ!』
怪人3に、提督と戦闘機の連携攻撃が決まる。
戦闘機の機銃が音を立てて撃ち込まれ、続けざまに提督の正拳が入った。
提督『はぁッ!!』
怪人3「こんな…ぐわあああっ…」
提督『これで2体轟沈だな…船扱いでいいのかわからんが…』
残った怪人4は不利を悟り、母船(海賊船)に向かって後退した。
怪人4「ちいっ…覚えてろよ!」
彼我の間は既にかなりの距離が開いている。
阿武隈「ああっ!?いつの間にかあんな遠くへ逃げてる。」
潮「逃げられちゃいます!」
提督『逃がすか!…ん?』
ベルト「CRUISER」
ベルトの音声とともに、今度は脚部が艦首を模した形に変わる。
提督『巡洋艦クラス?なら…』
提督は逃げる怪人に向かって一気に加速する。
提督『待てぇぇい!巡洋艦の巡航能力舐めるなよ!』
怪人4「なに!追いつかれ……なに?」
提督は逃げる相手に追いつく、というところで止まらずにさらに追い越してしまった。
提督『うおおっ!?止まれん!駆逐艦クラスより小回りは利かないのかっ?』
鈴谷「えー…いまいち決まらないなぁ…でも逃がさずに済みそうじゃん!」
伊勢「あっ!?また提督の姿が変わった!?」
なんとか怪人の逃走を防ぐことに成功した提督の姿がさらなる変化を遂げた。
提督『おおっ!?なんか今度はパワフルな感じだな。』
その姿は、見るからに頑丈そうな装甲とパワーの溢れる外見へと変化していた。
ベルトからは「BATTLESHIP」の音声が流れる。
提督『なるほど、戦艦クラスか…』
怪人4「このやろう!どけ!どけぇぇ!」
提督を突き飛ばして逃げようとする怪人4。だが、重装甲の前に逆に弾かれてしまう。
怪人4「ぎゃっ!?」
提督『よーし…とどめだ!大艦巨砲主義キーック!』
怪人4「うわああぁぁっ!?」
爆発炎上して沈む怪人4。それを見てか、海賊船は沖合に姿を消してしまった。
漣「あーっ…母船には逃げられちゃいましたね…」
戦闘が終わり、提督の周りに艦娘が集まってくる。
鈴谷「提督すっごーい。鈴谷達があんなに苦戦したのに…っていうか、そのカッコなんなの?ねぇ、ねぇ?」
蒼龍「といかあの敵は何なの?」
伊勢「戦艦の私がいうのもなんだけどさぁ…“大艦巨砲主義キック”って何よ?」
阿武隈「これならもう提督を敵船団の中にほうり込んどけば良いんじゃないかな?」
提督『ええぃ、いっぺんに喋るなぁ!』
漣「ご主人様…」
提督『ん?』
戦闘が終わったというのに、いつになく神妙な面持ちで俯く漣。
漣「出撃前は…ごめんなさい…
私に任せとけって息巻いて…この有様でした…」
潮「漣ちゃん…」
提督『あー…なんだ…
あんな海賊が出てくるなんて今までなかったし、司令官が前線で格闘するってのも変な話だしな…
漣は別に間違っちゃいないよ。』
漣「……」
提督『さ、帰ろうぜ。さすがにあんだけ暴れると疲れたよ。
今回は水上バイク持ってきたからな。』
提督「変身がとけても沈まずに済む。」
提督「よーし、とりあえず鎮守府に戻ると…するか……あ?あれ…?」
漣「ご主人様!?」
変身を解いたとたん、提督が水上バイクに突っ伏してしまう。
潮「えっ?ええっ!?どうしたんですか?提督っ!?」
提督「うう…急に…力が抜けて…」
漣「まさか…さっきの戦闘で怪我でもしたんですか?いやっ!いやです!ご主人様!」
漣が泣きながら提督にすがりつく。
漣「嫌ですヨ!敵を倒した後に傷口が開いて倒れるなんてベタな展開は!」
鈴谷「展開の方かーい!?って、提督、別に外傷はなさそうだけど…」
伊勢「あ…もしかして…」
提督「うぅ…腹がへった…力がでない」
阿武隈「はい?お腹が減ったの?」
蒼龍「燃費が悪い戦艦や空母の娘みたい…」
伊勢「さっき色んな形に変身してたけど…それが原因?」
提督「みたいだな……うぅ…潮ちゃんや、その胸に蓄えたエネルギーをわけておくれ。でへへ~。」
潮「ひぁぁ~、こ、困りますぅ!」
漣「はいはい!!帰ったら間宮さんに何か作ってもらいまショ!」
こうして今回も、提督は漣にひっぱられて鎮守府に帰還するのだった。
なお、潮の胸部装甲にエネルギーが蓄えられているかどうかは定かではない…
海賊船を撃退して数日後…
大淀「提督、上層部よりわが鎮守府に正式な任務として海賊討伐が通達されました。」
提督「深海棲艦を従え、各地を荒らす海賊を壊滅させる…か。
何だか特殊部隊みたいになっちゃったなぁ…。」
大淀「仕方ありません…ただでさえ正体不明の深海棲艦は、艦娘でないと対処できないのに…
その艦娘が太刀打ち出来ない相手が存在するなんて、もはや人類の脅威ですよ。」
提督たちが調査及び戦闘によって集めたデータをもとに判明した情報から、これ以上海賊勢力が拡大する前に手を打つべし、というのが上層部の指令だった。
そして彼等と交戦経験のある提督へ、その特殊任務が通達されたのだった。
大淀「しかし…実質彼等と相対できるのは、その、変身?ですか?それをした提督だけなんですよね?大丈夫なんですか?」
先の戦闘以来、鎮守府内にも「提督が戦闘形態に変身して戦った」という話は行き渡っていた。
ちなみに明石や妖精さんたちに調べてもらっても、ベルトの解析は芳しくなく、詳細不明のままであった。
大淀のように、提督を前線に向かわせることを心配する艦娘も少なくなかった。
提督「いや、心配しなくても大丈夫だ。あの海賊怪人には艦娘の攻撃そのものが通用しない訳じゃない。」
大淀「?」
提督「みんな…おそらくあいつら海賊が従わせてる深海棲艦も含めて、対人戦闘に慣れてないのさ。」
提督「海の上を歩く歩兵なんていないものな。それで艦娘も深海棲艦も砲撃戦がメインだろ?
だから小回りのきく素早い格闘戦を挑まれると相性が悪い、ってこと。」
そこまで話して、大淀がなるほどと頷いたとき、賑やかな報告がとびこんできた。
鈴谷「提督~、演習終わったよ。いやぁ、普段とは違う戦い方だからマジ疲れたよ~。」
熊野「提督の考えた近接戦闘を中心としたシュミレーション。なかなかためになりましたわ。
前回は待機でしたが、わたくしも負けませんことよ。」
鈴谷「今度は鈴谷達も大活躍しちゃうよ!」
すでにこの数日間、提督の発案による戦闘プログラムで艦娘たちも接近戦に対応できるよう、訓練をさせていた。
訓練の一環として最初に、「糞提督なんかに負けるわけない!」と曙が提督と手合わせしたが、
やはり接近戦では提督にボロ負けしてしまい涙目で顔を真っ赤にして悔しがっていた。
そこから比べれば、みんな現在はそこそこ対応できるレベルに成長している。
提督「ま、それでもまだまだ付け焼き刃の技術だがな」
鈴谷「なにおぅ!」
提督「まぁみんなの練度はともかく、慣れない戦いを強いられることになると思う。無理だと思ったらすぐにさがること。」
鈴谷「はーい…」
提督「基本戦術としては前衛では俺が戦う。みんなには中衛、後衛を頼む。飛龍はいけるか?」
飛龍「まかせて。私も実際に戦うのは初めてだけど…
蒼龍と私で後衛を務めて、アウトレンジから援護します。」
蒼龍「ホントは提督に前衛まかせるのは悪い気がするんだけど…」
提督「適材適所だよ。少なくともこれからの任務は、艦隊率いてドンパチやるのとは離れた話になりそうだ。」
大淀「なんだか…」
鈴谷「提督が立派に見える。まるで軍人?」
熊野「普段は秘書艦をつっつくのが仕事みたいになってますからね。」
提督「オイィ、聞こえてるぞ!?」
提督「…ったく、じゃあ次回の出撃は、鈴谷、熊野を中衛、蒼龍、飛龍を後衛で…」
漣「ご主人様…」
提督「ん?どうした?漣?」
漣「本当にご主人様が前衛で出撃するんですか?」
提督「何だ?俺でも十分戦える…というか俺の方が効果的に戦えるのは前回わかっただろう?」
漣「で、でもでもっ、私たちも対海賊用の訓練はしましたし…」
鈴谷「大丈夫だって、漣ちゃん。今度は私達も提督にまかせっきりにはしないって!」
蒼龍「そう!こないだの借りもあるしね。」
提督「な?漣たちはかわりに鎮守府の仕事を進めてくれ。頼むぜ第七駆逐隊。」
朧「はい、留守は任せてください。」
曙「ったく、なんで糞提督が出撃して私が留守番なのよ。ちょっと私に勝ったからって…。」
潮「曙ちゃん、私達は私達で遠征任務とかあるから…」
漣「……」
潮「漣ちゃん…」
提督「よーし、それでは明日の出撃に向けて各員準備!!」
皆が解散した後
潮「あの…提督?」
提督「どうした?潮?」
潮「あの…その…も、もう少し漣ちゃんのことも構ってあげてくださいね?」
提督「え?」
潮「そ、それだけですぅ…」
潮はそれだけ言い渡すと、ペコッと頭を下げて走り去ってしまった。
ぽかん、とする提督であったが、思い返してみれば漣は元気がない様子だった。
提督(そういえば漣はここんとこネットスラングも使ってこないな。心配させてしまってるかな?
潮の言う通りちょっとかまってあげようか…)
提督「おーい!漣!」
漣「ご主人様…漣にご用ですか?」
提督「いっしょにメシでも食いにいこう。ちょうど今白露と時雨が料理を作ってるらしい。」
漣「あの二人が?」
提督「待機組だから出撃メンバーに振る舞いたいってな。折角だから頂こうぜ。」
漣「それはちょっと興味ありますね…」
食堂
白露「おっ待たせぇ!白露流辛くない麻婆豆腐だよ。」
白露は自ら配膳し、いつものように人差し指を立てた。
が…出てきたのは「いっちばーん」ではなく……
白露「食事の時間は天使が下りてくる。そういう神聖な時間だよ。」
漣「へ?」
続いて時雨の作った料理が供された。
時雨「僕の作ったおでんだよ。食べてみてよ。」
提督「あ、あぁ」(なんで具が3種類だけ?)
時雨「鳳翔さんが言ってたよ…
おでんのつゆは見た目じゃない、口にしてみないとわからないんだ…」
提督「そ、そうか…」
白露と時雨の料理を味わいながら提督が漣に話しかける。
提督「なぁ、漣や…」
漣(うーん…時雨ちゃんは
時雨『それはどうかな?僕は幸運艦だよ。』
敵『なにぃ?貴様何者だ?』
時雨『佐世保の時雨だ!覚えておけ!』
って、言っちゃいそうな…)
提督「漣?さざなみ~?」
漣「はっ!?なんです?ご主人様?」
提督「いや…漣はさ、俺が戦いに出るのは不満か?」
漣「それは…そんなことは…ないですよ。この前だってご主人様がいなかったら危なかったですし…。
でも…ご主人様の、提督のお仕事とは掛け離れたことなのに…
戦うのは私達艦娘の役目なのに、それを果たせないのは残念っていうか…」
提督「そっか…それでこの前から元気がなかったんのか。
意外と真面目に考えてたんだな。ただのネット中毒のパロディセリフ娘だと思っていたが…」
漣「あの…もう少しオブラートに包んでですね…」
提督「なぁに、心配すんな。海賊連中を倒したらまたいつもの任務に戻る。
そんときは漣にも大暴れしてもらうさ。」
漣「その時ご主人様は?」
そこで提督は急に遠くを見つめ、黄昏れたように呟いた。
提督「俺は…この戦いが終わったら…執務室で皆にタッチを敢行するさ…」
漣「うわぁ…死亡フラグを乗り越えて本当にやりそう…」
提督「だろ?」
漣「もう…調子に乗るとぶっ飛ばしますよ。」
漣は呆れながらも、うれしそうに笑いながら答えるのだった。
そして翌日提督達は対海賊の任務に、第7駆逐隊は遠征任務へ向かうのだった。
翌日、提督は輸送船に搭乗し、海賊の出現に備えていた。
輸送船の航海ルート上に海賊の出没情報があり、交戦経験のある提督達に護衛が通達されたのである。
提督(なんだか用心棒みたいだな。まぁ、海賊たちの本拠地がわからない以上しかたないか…)
輸送船船長「では提督。本艦の安全は貴官らに任せます。」
提督「了解だ。絶対にこの航海を成功させよう。
既に哨戒として艦娘達を先行させている。大規模な深海棲艦の妨害もなさそうだ。」
海上
飛龍「提督~、こちら飛龍。索敵機を飛ばしてるけど進路上に敵影は見えず。ひとまず安心だね。」
蒼龍「航路の半分以上まできたけど何も起きないね。」
熊野「何もなければそれに越したことはありませんわ。」
鈴谷「そだね。平和が一番、ってね。……あれ?」
熊野「どうしましたの?」
鈴谷「鈴谷達、速度出し過ぎた?輸送船が離れてってるみたいな…」
見れば、艦娘たちと輸送船の距離が予定より開いてしまっている。
飛龍「あれ?提督?提督~」
飛龍が急いで提督に通信を送った。
提督「何だ?敵影か!?」
飛龍「いや…そうじゃなくて…輸送船の速度が落ちてない?」
蒼龍「機関の故障かな?」
提督「何!?」
輸送船船長「提督、異常事態だ。原因は不明だが船が座礁したように動かなくなっている、と操舵士が報告してきた。
機関部からは機関に異常無しとのこと。」
提督「ソナーに反応は?水中からの妨害の線は?」
ソナー手「本艦近辺に潜水艦の反応は見られません。」
海賊の妨害か、謎の現象に輸送船内に緊張が走る。
船外では、先行していた鈴谷達がひきかえしてきて、船体周辺を調査していた。
鈴谷「提督~、大変だよっ!」
何かに気付いた鈴谷が、船内の提督へ無線で報告する。
提督「どうした?何か見つけたのか?」
鈴谷「よ、よくみると船体に白い糸みたいなものが絡まってる。
でも…船が止まるほどのものなんて一体何なわけ?」
熊野「そもそもこの糸(?)、どこと繋がってるんですの?海底?」
触って調べようとした熊野が、糸?に触れた途端悲鳴をあげた。
熊野「ひゃあぁぁっ!?何ですの、コレ?」
鈴谷「どしたの?熊野…って、うわっ…なにこの糸、ネバネバしてキモッ!!」
熊野「まるで蜘蛛の巣ですわ…」
何気なく感想をもらした熊野だったが、通信で聞いていた提督は何か思い当たったようだ。
提督「この船は、蜘蛛の巣に絡まった獲物か…」
鈴谷・熊野「?」
提督「総員!戦闘準備!蒼龍、飛龍、索敵機の警戒を密に!」
提督は思い立ったや否や、すぐに艦娘達に指示を飛ばした。
提督「海賊が獲物を狙ってくるぞ!」
熊野「りょ…了解ですわ…たしかに深海棲艦とはやり方が随分違うようですわね。」
提督「奴らの狙いは船の破壊でも、輸送の妨害でもなく、略奪だからな。物資ごと沈めるってことはしないだろうよ。」
蒼龍「でも、なんで海賊の仕業だってわかるの?」
提督「海上に蜘蛛の巣をはるなんて訳のわからん技術を使うのが、あの海賊ども以外にいてもらっちゃたまらん…」
蒼龍「はは…」
苦々しく答える提督に、蒼龍も苦笑してしまった。同時に飛龍から報告がはいる。
飛龍「海賊船発見!こちらに高速で向かっています!」
提督はその通信が入ると、船内から甲板へ飛び出していった。
甲板からは既に目視でこちらへ向かっている海賊船が確認できた。
提督「来たな!」
海賊船の出現とともに、海上からは先陣としてチ級やリ級が向かってきた。
提督「巡洋艦クラスまで手下にしているのか!?」
鈴谷「提督、こいつらは任せて!」
熊野「深海棲艦相手ならいつも通りですわ!」
提督「頼む!」
海上の敵を重巡メンバーに任せ、提督は輸送船の甲板から海賊船の動きを注視する。
海賊は、深海棲艦に艦娘の相手をさせ、その間に接舷して乗り込む算段のようだ。
接近する海賊船。迎え撃とうとする提督。その時、海賊船から提督を見ている人物と目があった。
海賊「無駄な抵抗はやめて積み荷をおろしたほうがいいぞ。こっちはまだこいつらを温存しているんだからな。」
海賊の傍らには、戦艦ル級やタ級が侍女のごとく控えていた。
提督「こいつら…戦艦まで…」
海賊「ま…人型をしてる奴は船の制圧や荷の運搬もやりやすいからな…
俺達の力を見せつけてやれば、こいつらも従順なもんだぜ。」
海賊がタ級の肌を撫でながら得意げに話す。
海賊「さぁ、軍の奴らなんか蹴散らしてやれ!」
タ級「ハイ…マスター…」
いよいよ船同士が接舷し、甲板にル級とタ級が乗り込んできた。
提督「そうはいくかよ。」
提督はベルトを装着し戦闘体勢にはいる。
提督「変身!」
変身した提督は流れるような動きでル級とタ級を相手どる。
戦艦クラスとはいえ、懐に入られての素早い格闘戦には提督に分があった。
「ナンダコイツ?」
「ニンゲンカ?」
提督『どけぇっ!!』
ル級とタ級の2体の戦艦クラスを吹き飛ばした提督を見て、後ろで見ていた海賊も驚いた表情を見せる。
海賊「貴様、その姿は……この前我らの仲間を沈めた奴か。」
海賊はゆっくりと提督のいるほうに歩き出した。
そして…
海賊「こちらも相応の力で相手をしようか…」
言うなり、姿を人間から怪人形態に変化させた。
しかもただの人型でなく、蜘蛛のような意匠が全身を覆っている。
蜘蛛海賊「前の連中と同じと思うなよ!」
提督『またおどろおどろしい奴が出てきたな…
まさか海上に蜘蛛の巣を張ったのもお前か?』
蜘蛛怪人「獲物を捕らえるにはぴったりなんでな。」
提督『船をまるごと止めちまう程の力かよ…』
警戒しつつ戦闘の構えをとる提督。
しかしいきなり蜘蛛海賊は手をあげて合図を送った。
すると後ろの海賊船に控えていたのか、深海棲艦が続々と姿を現し、提督を取り囲んだ。
提督『げっ…』
「アイテハヒトリカ…」
「イツモノカンムスジャナイネ…」
「マスターノオオセノママニ…」
・
・
・
蜘蛛海賊「何も1対1でやりあうことはない…そうだろう?」
海賊に服従する深海棲艦達が一斉に提督に襲い掛かる。
提督『この…っ』
乱戦になりながらも、甲板狭しと動き回り、深海棲艦をたたきのめしていく。やはり接近戦は軍で訓練をつんだ提督に有利だった。
しかし、蜘蛛海賊の存在が提督の有利を覆す。
蜘蛛海賊「ふんっ!」
提督『うわっ!』
蜘蛛海賊の攻撃で吹き飛ぶ提督。さらに敵は追撃を仕掛けようと提督へじりじりと迫ってくる。
提督『それなら…』
ベルト「AircraftCarrier!」
形勢を立て直すため、提督が空母形態へフォームチェンジした。
特殊能力の艦載機を蜘蛛怪人に向かって発進させる。
蜘蛛海賊「むっ!?」
意表をついての艦載機による奇襲は、しかし蜘蛛海賊の横を通り抜けてしまった……。
驚かされながらも、呆気なく不発に終わったことを笑う海賊。
蜘蛛海賊「ふん。残念だったな。真珠湾のようにはいかなかったかぁ!」
提督『………』
提督『どうかな?』
頭部の装甲と仮面で隠れているものの、提督はニヤリと笑い、“海上で待機していた艦娘”に通信を送った。
提督『蒼龍、飛龍!艦爆だ!ありったけぶち込めば、こいつらの後ろの海賊船もただじゃすまんだろ!』
先程通り抜けていった提督の艦載機も、輸送船に接している海賊船に向かっていった。
蜘蛛海賊「な、なにぃ!?」
さらに二航戦組が待ってましたとばかりに艦爆機を弓から放った。
蒼龍「大物を狙っていきましょ!」
飛龍「第二次攻撃の要をみとむ、ってね!」
次々と放たれる攻撃隊。
おまけに提督に敵が殺到しているため、ろくに迎撃ができない。
蜘蛛海賊「ちっ、後詰めを用意していたとはな。」
提督『おまえらがこっちの戦力を見誤っただけだよ。』
蜘蛛海賊「ちぃ…おのれぇ…」
蜘蛛海賊「船を離せ。手の空いている奴らは対空防御だ。」
深海棲艦達が船を守って後退し、海賊船自体も輸送船から離れていく。
さらに蜘蛛海賊も甲板から海上へ飛び降りてしまった。
提督『待てっ!逃がすか!』
提督『蒼龍、飛龍、お前達は海賊船をトレースしておいてくれ。』
蒼&飛「「了解!」」
後退する海賊船を二航戦の娘達に任せ、提督も敵を追って海上に降り立った。
海上では鈴谷が撤退していく深海棲艦を追撃していた。
鈴谷「待てぇ!熊野、このまま私達で海賊達を捕まえちゃおう!
この前散々痛めつけてくれたお返しをしてやるんだから!」
熊野「ちょっと!熱くなりすぎですわ、鈴谷。一人で深追いしては…」
熊野の制止の言葉をかける。が、それが終わらないうちに異変が起こった。
突然、どこからともなく飛んできた糸が鈴谷に向かって飛んで来た。
鈴谷「ひゃあっ!?何?このベタベタしたのは…輸送船に絡まっていた糸?」
糸に巻き付かれ、あっという間に鈴谷の動きが封じられてしまった。
鈴谷「うわっ!?やだぁ~キモっ!?」
熊野「鈴谷!?大丈夫ですの!?」
蜘蛛海賊「まったく…好き勝手やってくれる小娘達だ…」
海賊船の後退を援護するために、海上の重巡達を攻撃しにきた蜘蛛海賊がその手から糸を出して鈴谷を搦め捕っていた。
蜘蛛海賊「ふんっ」
鈴谷を搦め捕った蜘蛛海賊は、そのまま彼女を振り回して放り投げた。
鈴谷「うわぁっ!!…いったぁ…って、うごけないぃ…」
がんじがらめに拘束されて身動きがとれなくなる鈴谷。
海上にてモゾモゾと身をくねらせるのが精一杯だ。
熊野「鈴谷っ!?このぉっ!私が相手ですわっ」
熊野「とぅおぉぉぉっ!!」
蜘蛛海賊「はっ、威勢だけはいいお嬢さんだな!!」
攻撃を開始する熊野だったが、蜘蛛海賊はあっさり砲撃をかわし、今度は熊野の足元から糸が飛び出す。
熊野「きゃっ!?あっ…主砲が…」
熊野は身動きがとれないほど巻き付かれはしなかったが、主砲に糸がからまってしまった。動きも制限され、まともに戦闘ができない。
蜘蛛海賊「綺麗な蝶も蜘蛛の巣に絡まっては一巻の終わりだな。」
提督『こらっ!待てっ!この蜘蛛野郎!』
その時、海賊を追ってきた提督が追いついた。
鈴・熊「「ていとく~」」
提督『おお、こりゃまた…なまめかしい感じに拘束されてるなぁ…
特に鈴谷は糸が食い込んで身体のラインがはっきりと…眼福、眼福。』
鈴谷「うるさいっ、ばか~」
蜘蛛海賊「おのれ…どこまでも邪魔をして…お前を倒して仕切直しとさせてもらう。」
提督『ふん、だったらこっちは、お前を倒して海賊退治をさせてもらう。』
再び提督と蜘蛛海賊が対峙し、戦闘が開始される。
蜘蛛海賊は先日戦った怪人たちよりも強力な存在のようで、今度は提督も一筋縄ではいかなかった。
互角の格闘戦を繰り広げた後、蜘蛛海賊が前方に腕を伸ばした。
蜘蛛海賊「くらえっ」
提督『!?』
海賊の腕から白い糸が飛び出し、提督の腕に絡まった。動きが封じられた提督に、海賊が光弾を放つ!
提督『うわっ!?』
提督は腕に糸に絡まり、蜘蛛海賊から距離を取れない。海賊の攻撃が命中してしまう。
蜘蛛海賊「ふん、この糸はそう簡単には切れないぞ。」
提督『それなら…』
提督はチェーンデスマッチの状態を打開するため、スーツのフォームを変えた。
ベルト「BattleShip」
提督『うおおりゃあっ!』
戦艦クラスにフォームチェンジし、そのパワーで蜘蛛の糸を引き寄せる。引っ張り合いに力負けした蜘蛛海賊がバランスを崩す。
蜘蛛海賊「うおお!?!?」
提督『今だ!くらえっ!』
その隙に回し蹴りを叩き込む提督。糸で繋がっているため、今度は海賊のほうが下がってダメージをやわらげることができない。
ダメージを受け、堪らず蜘蛛海賊は提督の腕に絡み付いた糸を切り離す。
一進一退の末、再び戦闘が仕切直しとなる。
蜘蛛海賊「くぅっ…貴様も身動きが出来ないようにしてやる!」
今度は糸を網状にして提督を捕まえようとする。
…が、どこからともなく飛んで来た戦闘機がそれを妨害する。
蜘蛛海賊「なっ…!?」
熊野「航空巡洋艦を甘く見ないでくださいな。身動きがとれなくても…」
鈴谷「無理矢理発艦させるくらいできるって!」
提督『よくやった、鈴谷、熊野!』
熊野「お礼はサンドイッチでいいですわ。」
鈴谷「やっちゃえ、提督!」
戦闘機の妨害に気をとられ、隙のできた蜘蛛海賊に提督渾身のキックが炸裂した。
提督『ハァァァッ!!』
蜘蛛海賊「ぐわあああっっ!!?」
さすがの蜘蛛海賊も吹き飛んで爆発炎上。海中に沈んでいった…。
提督『ふぅ……って、あいつ沈んじまった!捕まえて奴ら海賊の構成を吐かせようと思ったのに。』
鈴谷「ご、ごめん、提督。私がヘマしたばっかりに…」
提督『拘束された色っぽい姿を晒してくれたので不問!!』
熊野「台なしですわ!…あら、鈴谷も糸がほどけたんですの?
私に絡まっていた糸は消えてしまったんですが…」
鈴谷「鈴谷のも消えちゃった…提督がアイツを倒したせい?」
提督『かもな…。これなら輸送船も動かせるな。
海賊船の行方は蒼龍たちが…』
ちょうどその時、蒼龍から通信が入る。
蒼龍「…提督、ゴメン。」
提督『何だ?アクシデントか!?』
飛龍「海賊船に…逃げられましたっ…」
蒼龍「深海棲艦に阻まれて…その隙に…」
提督『そうか…いや、奴らの逃走方向をトレースしたなら得られるデータもあるかもしれない。ひとまず、輸送船に戻ろう。』
蒼龍「はい…」
提督『そう気を落とさなくていい。今回の第一目的は輸送船の護衛だ。最後まで気を抜かずにいこうぜ。』
こうして途中、襲撃はあったものの何とか撃退し、提督達は輸送船護衛任務を成功させたのだった…。
幕間
暁「さあっ!暁が今までの話を解説してあげるわ!」
響「いきなりどうしたの?」
暁「何か第六駆逐隊の出番はなさそうだから…」
雷「それで、せめて解説だけでもってこと?ま、めちゃくちゃな設定だし、おさらいしといたほうがいいかしらね。」
でん「雷ちゃん!設定とか言っちゃダメなのです。」
暁「とにかく行くわよ!前回までの3つのできごと!
ひとつ、『鎮守府近海に深海棲艦とは別の敵、海賊が現れる!』」
響「ふたつ、『この海賊は何と深海棲艦を従えていて、艦娘は接近戦では歯が立たない』…」
雷「みっつ、『司令官が謎の組織からベルトをもらい変身、軍隊仕込みの格闘術で敵を撃破』したわ。」
でん「そしてよっつ!『海賊の討伐のため、司令官さんと鎮守府の戦力で戦いに赴いた』のです!」
暁「ちょっと、なんで3つって言ったのに4つまであるのよ!」
でん「這い寄るラノベみたいなのです。」
響「そもそも何で電は“でん”なんだい?」
でん「はわわ…でも読みづらいから“でんちゃん”でもいいかな…」
雷「どうしたのよ?今までそんなこと言わなかったじゃない!?」
暁「まさか!?これも海賊のしわざ!?」
響「なんだって?それは本当かい?」
でん「お遊びはこの位にして、次回からは本編再開なのです。」
輸送船の護衛から1週間ほどがたったある日…
提督は再び湾岸部のパトロールをおこなっていた。漣と日向を連れ、水上バイクで沿岸を巡回する。
漣「あれから海賊の出没の話は聞きませんねぇ。漣達も遠征中にそういったのには出会いませんでした…」
日向「私も一度顔を合わせてみたいかな…
いや、これは不謹慎か…出てこないに越したことはないからね。」
前回、前々回の戦いで共に留守番だった日向がつぶやく。
おしゃべり好きな伊勢から提督の武勇伝を含めて聞いていたらしく謎の敵にも興味があるらしい。
提督「ま、被害に遭うのは民間人や非戦闘員だからな。早いとこ奴らの本拠地を見つけて叩かないと。」
漣「イタチごっこみたいになってますよね。今となっては海域攻略してた頃が懐かしいですよ。」
やれやれといった表情で漣が軽口を叩いたその時、日向の飛ばしていた索敵機に反応があった。
日向「提督!」
提督「見つけたか!?よし行くぞ!」
漣「がってん!」
提督は水上バイクを加速させながら叫んだ。
提督「変身!」
戦闘形態に姿を変えると、日向と漣と共に海賊のいるほうへと向かっていった。
海賊達はまさに一仕事始めようと沿岸の町へ向かうところだったが、提督達は「仕事前」に叩こうと先制攻撃を仕掛けた。
日向「あれが深海棲艦を従えるという海賊か…」
日向が長距離から主砲を発射する。続いて提督が敵集団に肉薄し、漣が中距離から援護に入った。
提督『ようやく見つけたぞ、この海賊ども!町へは行かせんっ!今日こそ取っ捕まえてやる!』
漣「…ご主人様、それ逃げられるフラグですヨ。」
海賊「チッ!運が悪いな!邪魔が入ったか!」
海賊が怪人形態に変化し、提督を迎え撃つ。その外見は人型ながらまるで毒キノコのように毒々しい色で覆われていた。
日向「何だ、アイツは?キノコ?」
漣「マジックマッシュルームの密売でもやってるんですかねぇ…」
艦娘達の感想をよそに提督とキノコ怪人の戦闘が始まっていた。
提督『せぃやっ!』
キノコ海賊「ふん!なんのぉ!」
が、敵の規模が小さかったのと、提督達が先制攻撃した影響もあり、海賊側はすぐに後退を始めた。
キノコ海賊「まともにやり合う必要もない…出直すぞ。」
手下の深海棲艦らに指示を出し逃走を開始する。
提督は敵の手掛かりを捕まえようと焦ったのか、あまりに潔く撤退する海賊を逃すまいと追撃に移ろうとする。
提督『野郎!逃がすか!』
日向「むっ…提督、無茶だ」
漣「ご、ご主人様っ」
提督は日向達の制止を振り切り、敵陣に突っ込もうとする。が、キノコ海賊が振り向き様に煙幕のようなものを吐き出した。
提督『!?』
日向「提督っ、危ない!下がって!」
とっさに日向が提督を掴んで後ろに放り投げる。
提督『うわっ』
漣「さっすが日向先輩、戦艦のパワーは伊達じゃない!」
しかし、提督の代わりに日向が、敵の放った煙幕を被ってしまった。
日向「うっ…ゴホッゴホッ…煙じゃない?キノコの胞子か何か?」
日向が胞子の煙幕を振り払ったときには既に海賊達は、姿を消していた。
日向「はあっ…はあっ…」
提督『日向っ、すまん、大丈夫か?』
日向「……」
漣「ひ、日向先輩?」
日向「大丈夫よ!!心配ないわ!!」
提督『ん、そうか~、無事でよかった。』
日向「さあっ、海賊も追っ払ったし、一旦鎮守府へ帰りましょう!」
提督『お、おう?そうだな。』
漣(ん~?)
鎮守府
伊勢「あっ!日向!おかえり!提督と漣もお疲れ様。」
日向「ただいまぁ~、いせりん!」
伊勢「へ?」
提督「!?」
漣「!?」
伊勢「い…いせりん!?」
ニッコリと帰還の挨拶をする日向に、目を見開いて硬直する提督たち。
一方、日向はキョトンとした顔で目をぱちくりさせている。
日向「伊勢だから“いせりん”だよ。私のことは“ひゅうとん”って呼んで!」
伊勢「…」
伊勢「……」
伊勢「ええええぇっっ!!?」
伊勢「ど、どうしたの日向!?出かける前とは別人じゃないの!?」
日向「えっ?そうかなぁ~」
提督「ど、どうしたんだよ日向!?さっきの戦闘だって普段どおりの……」
漣「あっ、でも日向先輩は戦闘終了から妙に元気というか活発になっていたような…」
日向「もぉ!!私のことは“ひゅうとん”って呼んでよぅ!」
提督「お、おぉ…悪かったな“ひゅうとん”……」
日向「えへへ。」
伊勢「日向がすごい笑顔で……いいかも!“ひゅうとん”いいかも!」
日向「でしょっ、いせりん!」
何故かこの状況をたのしむ伊勢型姉妹。
一方、提督と漣は置いてけぼりをくらっている。
提督&漣「「うーん……何が原因だろ?」」
漣「…あ!」
提督「あの海賊が吹き出した胞子!」
提督「ちょい、ちょい…伊勢…」
伊勢「えっ!?ひゅうとんが提督をかばって…」
提督「くぅ…っ、すまない。日向、俺のせいで…」
日向「やだ、提督さーん!そんな顔しないでよ!元気出して。休めるときに休むんだよ、えいっ!」
元気付けようとしたのか、日向が提督に抱き着いてきた。
すでに艤装を外しているため、柔らかい体が押し当てられた。
途端に提督の顔がゆるむ。
提督「うへへ…まぁ害はなさそうだし~このままでもいいんじゃ………
いや、ダメだな。やはり元のクールな日向でないと…」
漣「……」
背中に無言で主砲を押し付けてるくる漣に気圧され、途中からキリッと表情を変えるのだった…
漣「まったく…ご主人さまったら調子に乗って!
世の中には口調が違うだけで発狂する人たちもいるんですヨ。」
提督「何を言ってるんだ!?
と、ともかく、伊勢は日向に付いていてやってくれ。少し様子をみよう。」
伊勢「わかった。よーし、ひゅうとん、折角だから可愛い服で着飾ってみようよ。」
日向「えぇ~、そんなの着たからって意味はないよ。どうせベッドでは脱いじゃうんだしぃ。」
伊勢「ぃやーん、ひゅうとんたら、オ・ト・ナ!」
キャイキャイ
提督(だ、大丈夫かなぁ…)
翌朝
提督「うーん…朝か…」
ムニュ。
提督「ん?」
宿舎で目覚めた提督は、自分の寝床に柔らかいものが入り込んでいるのに気付き、寝ぼけまなこをこすった。
そして隣で眠っている日向に気付くのだった。
日向「すやすや…」
提督「おおぅ…かわいい寝顔しやがって……」
提督「……」
提督「ちがーう!!」
提督が取り乱すのも無理はない。日向が黒インナーどころか、かわいらしい下着で眠りについているのだから。
提督の大声を聞き付け、艦娘たちの宿舎からも様子を見に娘たちが集まって来た…
提督「……」
朧「提督…そういうの、良くないと思う、多分。」
曙「はぁ…この糞提督ならいつかやっちゃうと思ってたけどね…」
潮「て…提督…何かの間違いですよね?ねっ?」
提督「そ、そうだよ。誤解、間違いだ!」
漣「……間違い(意味深)」
提督「おい、落ち着け漣。日向もちゃんと説明してくれよ、何でそんなカッコで俺のところにいたんだ?」
ハイライトの消えた目で迫りくる漣をなんとか抑えながら、提督は日向に説明を求めた。
日向「えへへ、ごめんなさい。いせりんが可愛い服選んで着せてくれたんだけど…どうにもエスカレートしちゃって…」
その時、当の伊勢が提督の部屋へ駆け込んで来た。
伊勢「あっ、ひゅうとん!こんなところにいたのね。さぁ、早く戻って今度はこっちの服を着るのよ。」
日向「えぇ?そんなフリフリの服~?私には似合わないってば!」
伊勢「いいじゃん!いいじゃん!たまにはオシャレしようよぅ!」
伊勢は下着姿だった日向に服をきせると、無理矢理連れていってしまった。
日向の性格が変化したことで、元から高かった伊勢のテンションがさらにヒートアップしたようだが、今は相手をしていてもらおうと思う提督だった。
漣「なるほど、日向先輩を構いたくてしかたない伊勢先輩から逃れようとして、ご主人様の蒲団に入り込んだわけですね。
ふふっ、役得でしたね、ご主人様。大丈夫、漣は信じていましたヨ。」
提督「嘘を…つくなっ!!」
漣「てへっ★」
曙「何なのよ…このコントは…」
朧「お約束…かな?……あれっ!?通信?」
曙が呆れ返っていたところに、緊急の通信が入った。
朧「提督、大変!民間船が海賊の襲撃を受けてるって…
提督が昨日遭遇した奴みたい!」
提督「!」
提督はすぐに軍服に着替えて、鎮守府に緊急出撃を発令した。
対海賊にシフトしているとはいえ、資源輸送任務や装備の点検、入渠中のものもいて、現在の戦力は必ずしも万全ではない。が、神出鬼没の相手に文句を言っても仕方ない。
遊撃、予備兵力として艦娘を待機させているのがせめてもの幸い。
たまたま提督のもとに集まっていた第七駆逐隊の面々を引き連れて、海へ続く道へ飛び出していった。
提督「まったく…朝っぱらから仕事熱心な奴らだぜ。」
漣「ご主人様っ、これ…食べてってください!
また戦闘後に空腹で力尽きたら大変ですから!」
提督「お、サンキュー、気が利くな。」
漣「えへへ」
差し出されたお握りを頬張り、漣の頭を撫でてやる。次いで、対海賊戦は初めてとなる朧と曙にも声をかけた。
提督「ふたりは、海賊相手には無茶をするな。後方から支援、または取り巻きの深海棲艦の相手をしてくれ。」
朧「わかりました…全力で任務にあたります。」
曙「ふん、糞提督がどれほど戦えるか見させてもらうわよ!
まぁ、私だって訓練続けてきたのよ。全部やってやるわ。」
提督「だから無茶をするなって……潮、曙が前に出過ぎないように見張っててくれな。」
潮「は、はいっ!曙ちゃんは私がお守りします。」
曙「なんで私に子守が必要みたいに言うのよっ!?」
結局、いつものようにガヤガヤと騒がしくなっていると、横から提督に声がかけられた。
日向「提督さん!私も連れてってくれるよね!」
提督「日向…いや、ひゅうとん!」
日向「私もアイツにやられっぱなしじゃイヤだからねっ!こんどこそぶっ飛ばしてやる!」
いつもよりテンションが高いため、妙に好戦的な口調の日向とそれを追って来た伊勢が合流した。
伊勢「いいね、いいね、盛り上がってんじゃん、ひゅうとん!」
提督「あ、熱くなりすぎるなよ!」
日向と伊勢を嗜め、提督は水上バイクに飛び乗って海へ出ていった。
海上では、件のキノコ怪人達が民間船に威嚇射撃をおこなっていた。
もとより海賊の狙いは、物資や誘拐なので沈めたりはしない。
その分、「仕事」には時間を要し、それが提督達の救援を間に合わせた。
提督「そこまでだぁっ!!」
キノコ海賊「なっ…、またお前か!?」
提督「うおおぉっ! 変 身 !!」
強化スーツを身に纏うと、バイクで海賊に体当たりを敢行。海賊たちの民間船への攻撃を妨害した。
提督『よし!第七の皆は船を護衛。曙は前に出すぎんなよ。』
朧「了解」
曙「何で私だけ言うのよ!!うざいなぁ!!」
なんだかんだ文句を言いながらも、そこは軍人(?)、きっちりと防衛にまわっていた。
提督『伊勢と日向は……』
伊勢&日向「「待ってぇ~」」
低速なので遅れていた。
キノコ海賊「全く邪魔な奴らだ。だが今日はこちらも頭数を揃えてきたからな。貴様らもろとも飲み込んでくれる!」
提督『うるせぇ!こっちもお前のせいで日向がおかしなことになってんだ!
撃退して終わりなんて甘い真似はしないぞ!!提督直々に取っ捕まえてやるぜ、このキノコ野郎!!』
キノコ海賊「ふんっ!」
提督「いくぞ!」
海上にて、再度提督と海賊の戦いが開始された。
戦闘開始直後、先手必勝とばかりに提督が猛攻をかける。
提督『おおおぉっ!!』
キノコ海賊「うおわっ!?」
提督『またあの変な胞子を飛ばされる前にケリをつける!』
提督のラッシュの前に防戦一方の海賊。
さらにそこへ遅れていた戦艦組があらわれ、援護を開始した。
伊勢「遅れた、遅れたぁ!」
日向「私も提督さんの力になるんだからっ!」
伊勢、日向の砲撃が加わり、さらに勢いを増す提督。一気に相手を沈黙させ、捕まえようと打撃を加える。
提督『とどめだ!大人しく捕まれ!!』
キノコ海賊「……ふん」
そして、
日向の砲撃が提督に直撃した。
提督『ぐああっ!?』
伊勢「えっ!?」
漣「なっ、何?日向先輩が…ご主人さまに…」
朧「フレンドリーファイア?でも、明らかに提督を狙う弾道…」
日向の近くにいた伊勢も、民間船の護衛に回っていた第七駆逐隊も突然の事態に戸惑う。
後方からの思わぬ衝撃に膝をつく提督。そして、ここぞとばかりに反撃してきた海賊の攻撃を食らってしまう。
提督『ううっ…ひ、日向!?』
後方に吹っ飛ばされた提督は、まさかの行為をとった日向の方を見る。
しかし、当の日向が一番驚いていた。青ざめた顔で震えている。
日向「な…何…これ…?」
伊勢「ちょっと!?どうしたのさ、日向!?」
日向「伊勢?か、体が…勝手に動いちゃう…っ!ひゃあっ!?」
伊勢「ちょっ!?」
近寄った伊勢を砲身で薙ぎ払う日向。その表情は混乱しきっており、確かに体が勝手に反応しているようだ。
提督『お、おい?どうした!?日向、日向!?』
キノコ海賊「ふっふっ…まさか俺の胞子を吸い込んだ奴を連れてくるとはなぁ…
おまえらが勝手に、うまい具合に事態を好転させてくれたな。」
提督『!?』
漣「胞子って…まさか…あなたが日向先輩を操って…」
キノコ海賊「その通り!俺の胞子を吸い込んだものは、一種の酩酊状態になり、大元である俺の指図に従うのだ!これこそが我が変身態の能力!」
曙「何、長々と解説してんのよ!よーするにアンタを倒せばいいってことでしょ!」
曙が状況を打開するために船の護衛から攻撃に転じ、海賊に接近しようとする。が…。
キノコ海賊「ふんっ!」
曙「あっ…」
またしても煙幕のように胞子をばらまく海賊。とっさに後ずさり、吸い込むことを避ける曙だが、肝心の敵へは近づけない。
それどころか、海賊は深海棲艦を統率し、提督達に対し攻勢に出てきた。
さらに海賊は日向に対しても命令をとばす。
キノコ海賊「さぁ、そこの航空戦艦。お前の上官に向かって発砲するんだ。」
日向「や、やだ…やめて…」
日向の意思に関係なく、砲門が提督に向けられる。
提督『くっ…』
日向の意思とは関係なく発砲される砲弾を、提督は素早く動いてかわす。
ダメージは負わないが、これでは海賊と戦うどころではない。
日向「うわぁぁぁ…提督さんっ!ごめんなさいぃぃ!」
提督『日向!気をしっかり持て!』
日向「むりぃ…」
操られている中でも性格は変化したままのようで、日向は半泣きになってしまっている。
提督(まずい。あのキノコ野郎を捕まえるどころじゃなくなってきたぞ。)
一転して追い詰められる提督。
伊勢「ちょぉっと待ったぁ!」
その時、日向のとなりにいた伊勢が日向の体に抱き着き、砲撃退勢の邪魔をする。
伊勢「日向ぁ、ちょっとガマンしてね!」
日向「い、伊勢…」
伊勢「提督!よーするに…日向が砲激出来ない恰好になればいいんでしょ…」
提督『ん?』
伊勢「ええぇぇい!」
日向「へっ?」
伊勢は日向の艤装をひっぺがえすと、何と服も黒インナーごと破ってしまった。
海上で普段の中破以上の露出になる日向。
日向「………」
日向「いやぁぁぁぁっ!!?」
下着もあらわに、艶しい肌を晒した日向は、悲鳴をあげて両手で体を覆い隠す。
伊勢「よし!乙女の羞恥心作戦成功!」
提督達に向かって親指をたてる伊勢。
船の護衛にまわった第七の面々は「それでいいの?」という表情をしているが、ともかくも敵の、日向を操っての妨害はストップしたようだ。
キノコ海賊「この…っ、妙な真似をしおって!」
提督『それはっ……』
海賊も思わぬ方法で攻撃を封じられたことで苛立ち、隙を作ってしまった。そこを逃さず、提督が距離を詰める。
提督『こっちの台詞だぁぁ!!』
キノコ海賊「ぐわぁぁっ」
提督の回し蹴りがきまり、海賊が吹っ飛んだ。
キノコ海賊「くっそう……だがっ!もう一度胞子を食らえっ!ふははは!」
提督たちとの間に壁を作るように胞子を撒き散らす。先ほど、同様の手段で攻撃を封じられた曙が声をあげる。
曙「ああっ!また!?あれじゃ近づけないじゃない!」
提督『心配するな。同じ手が通用するか!』
「DESTROYER」
提督は魚雷発射管と連装砲が装備された駆逐艦フォームに姿を変えると、魚雷を引っこ抜いて放り投げた。
提督『ほいっと…』
朧「あ…まさか…」
さらに砲撃を当てて爆発させた。
そして胞子の煙幕は爆風で吹き飛んでしまった。
キノコ海賊『あ……』
潮「す、すごい。あんな使い方があったなんて…」
漣「おおっ!ドヤ顔の敵の切り札をあっさり破るなんて……そこにシビれる、あこがれるぅ!」
胞子の煙幕が消えた瞬間、迷わず提督は海賊に突進し、無力化するために猛攻を加えた。
提督『だだだだだぁ!』
キノコ海賊「ぐっ…がぁっ…ごふっ…」
最後に足払いをかけて転倒させると、駆逐艦フォームの装備である連装砲を突き付けた。
提督『終わりだ、大人しく連行されろ。』
朧「すごい…提督ってこんなに強かったの?」
潮「う、うん…格闘戦は得意みたい。訓練の成績もよかったって…」
曙「や、やるじゃない!糞提督!」
漣「いわゆるホールドアップってやつ!?」
海賊の取り巻きの深海棲艦も第七駆逐隊の面々に退けられ、散り散りに逃げていった。
漣「やりましたね!ご主人様!」
提督『あぁ、これでこいつら海賊の情報も…』
キノコ海賊「ふ…ざけるな…誰が貴様らなんかに話すか」
バシャアン!
キノコ海賊「ごぼっ!?ごぼぉっ…!?」
反抗的な態度をとった海賊に対し、提督は海面に海賊の頭を叩き込んだ。
提督『海の上だと静かにさせるのが楽でいいな…』
漣「ヒエッ…」
朧「提督…普段は結構アレなのに、任務のことだと容赦ないよね…」
潮「前に助けてもらったときも、雌犬だなんだ言ってたけど、海軍で戦うことを誇りに思ってたみたいだし…」
提督『よし。民間船の安全は確保できたし、あとはこいつを連行するだけ……』
提督がキノコ海賊を引っ立てようとしたそのとき、正体不明の光弾が提督に向かって飛んできた。
提督『何っ!?』
とっさにかわす提督。しかし光弾は提督ではなく、キノコ海賊に降り注ぎ…
キノコ海賊「ぎゃああああっ!!」
そのまま爆散して沈んていった…。
提督『な…?』
漣「ご主人様っ!あれっ!」
唖然とする提督だったが、漣が指差した方角に人影を見つけた。
正確には船の上にたっている人影である。
提督『あれは…海賊船?』
海賊船の上に立つ人物がサッと手をあげると、船は全力で海域を去っていってしまった。
提督『口封じか…』
潮「て、提督…大丈夫ですか?」
提督『俺は…な。』
潮「あ、あの人、味方に撃たれて沈んだんですか?」
提督『まあ…機密漏洩の防止ってとこかな。』
潮「……」
提督『お前がそんな顔しなくてもいい。元気出せ。』
ポヨン、と潮の胸を叩く提督。あまりにも自然だったため、潮も元気付けるためにされたことだと思い込んだが…
潮「提督……あ、あれ?私今さりげなく胸叩かれましたよっ!?」
提督『伊勢、日向の様子は?』
赤面する潮を尻目に、敵に操られていた日向の様子を伺う。
伊勢「大丈夫。落ち着いたみたい。」
装備どころか服までいつも以上に破れ、うずくまっていた日向だったが、戦いが終わってさすがに落ち着いたようだ。
日向「す、すまない、提督。戦いのさなかだというのに取り乱してしまって…」
伊勢「まぁ、今回は日向をびっくりさせて動きを止めるのが目的だったからね。」
日向「伊勢の作戦は理解できるが…やられたほうはたまったものではないな。」
伊勢「そう言わないの……って?日向、喋り方?」
日向「あんな性格になるのもたまったものじゃないな…」
提督『も…もどったか…』
伊勢「えーっ、“ひゅうとん”も可愛かったのにぃ…」
日向「もうそんな呼び方も、あんなフリフリした服を着るのもごめんだ。」
提督『下着姿でベッドにはいってくるのは?』
提督がからかうと、日向は腰に残った軍刀を引き抜いて提督の首筋に押し当てた。
日向「忘れなさい!!」
提督『わ、わかったわかたっ!』
こうして、海賊の情報を手に入れることはできなかったが、日向も元にもどり、提督達は民間船を護衛しつつ鎮守府に戻っていった。
なお、その後しばらく鎮守府では伊勢が日向を「ひゅうとん、ひゅうとん!」といって追い回していたそうな。
漣「ご主人様!ショッピングモールですよ!ショッピングモール!」
提督「こら!その台詞は危険だからやめなさい!」
提督と漣は非番の日を利用して街に買い物に来ていた。
近海での海賊の出現頻度は高くない。
が……。
漣「なんだか、お客さん少ないですね。」
提督「やっぱり沿岸部が襲われたりするから、街に活気が無くなってるんだな…」
漣「ただでさえ深海棲艦のせいで流通が滞ったりしますからねぇ。」
提督「…こんなところでのんびりしてるわけにもいかないな。」
漣「駄目ですよ!ご主人様は休めるときにしっかり休まなきゃ!
今は他の皆が沿岸警備に出てるから大丈夫ですよ!」
提督「いや…でもなぁ…鎮守府近海で海賊の被害が大きくなったら、うちの鎮守府が叩かれるじゃん。『海軍はなにやってるんだ』って。」
漣「ええっ!?ご主人様、ちゃんと世間体とか考えてたんですか?
いつも艦娘にセクハラまがいのことしてたから、そういうの振り切ってるかと…」
提督「そういうのはバレないようにやってるからいいんだよ。」
漣「…最低なヒーローですね。」
提督と漣がしょうもない話をしておどけて歩いていたものだから、前から来た買い物客とぶつかってしまった。
「おっと、失礼。」
提督&漣「「ご、ごめんなさい」」
「いや、僕も荷物を抱えすぎて前方不注意になっていたから…」
提督「大丈夫ですか?」
「ええ、それにしても海賊のせいか、このあたりは物資が高騰してますね。」
提督「え、えぇ…」
「独自の流通ルートを持っていれば、貿易で稼げると思いませんか?」
提督「は?」
買物客の男が突然商売の話をしだしたため、面食らう提督。
そこに漣が割って入った。
漣「あの…儲かるかもしれませんけど、危険と隣り合わせじゃないですか?
制海権はもちろん、場所によっては制空権も深海棲艦にとられているんですよ。このあたりは海賊だって…」
「危険があるから競争相手も少ないとも言えますがね。
それに…この辺りは海軍が何度も街を守ってるそうじゃないですか。海賊もやりにくいでしょ。はっはっは!」
そういうと男は笑いながら立ち去っていってしまった。
提督「何だったんだ?」
漣「さぁ?でも、あの人も言ってましたよ。海軍が守ってるって…」
提督「まぁ…な。役目は果たせてるかな…」
漣「まぁ、私達も買物終わりましたし、帰りましょうか。」
提督「ああ。ん、そういえば漣。パンツ買わないのか?」
漣「……は?」
提督「たまには苺パンツ以外の大人っぽいのでもいいんじゃないか?」
漣「…ご主人様、ホント最低なヒーローですね。」
そして鎮守府へ帰っていった。
鎮守府が海賊の襲撃を受けたのはその夜である。
深夜、突然鎮守府の警報が鳴り響いた。
宿直にあたっていた艦娘たちから提督に連絡が入る。
村雨「ち、鎮守府近海に所属不明の船影。まっすぐ鎮守府へ向かってきますっ!」
夕立「サーチライト点灯します。っ!?これ…例の海賊船っぽい!?」
提督が防衛の指示をしつつ、映像を見ると確かに今まで何度か見かけた海賊船が映っていた。
提督「おいおい、ここを襲撃かよ…めぼしいものは何もないぞ。」
村雨「ま…まさか…私達捕まって売り飛ばされちゃう?」
夕立「ひゃああっ…想像したくないっぽい!」
提督「馬鹿にするな。向こうから来てくれたんだ。地の利はこっちにある。上陸してくるところを叩くぞ。」
提督「戦艦、空母勢は鎮守府の防備。夜間戦闘だ、前にでなくていい。
駆逐艦、巡洋艦は俺とともに迎撃準備。大淀、全体の司令塔を頼む!」
大淀「お任せください。これでも連合艦隊旗艦を務めた身です。」
鎮守府の外へ飛び出した提督は、漣をはじめとした駆逐艦達とともに、サーチライトで警戒される夜の海を睨んだ。
提督「ん…?」
ところが、海の上には深海棲艦を率いる海賊の姿はなく、代わりに闇の中からあらわれるように小舟、おそらく海賊船から射出された小型艇が近寄って来た。
その小型艇に乗る人物がライトの光で映し出されたとき、提督と漣があっ、と声をあげた。
漣「ご主人様…あの人…」
提督「昼間の…」
なんと小型艇に乗っていた人物は昼間出会った買物客であった。
提督「あんた…なんで…」
男は昼間とは違い、威圧するような雰囲気をまとって話だした。
??「言っただろう。洋上に“独自の”ルートをもてば稼げるって。」
??「そして“海軍がいるから、海賊がやりにくい”って。」
??「だから…ここらの海軍の拠点である鎮守府を叩きにきたんだよ。」
まるで『道にある石が邪魔だからどかします。』というように宣言すると、男は自分の素性を明かした。
海賊頭領「一一一頭領である俺自らなぁ!!」
提督「まさか、ボスみずからお越しとはな…」
提督は平静を装いながらも、相手が発する危険な雰囲気を感じ取っていた。それは、今まで海賊達と交戦経験のある艦娘たちも同様だった。
阿武隈「て、提督さん、あの人と知り合いなの?すっごく怖いんだけど…」
提督「今日出会って一言二言話しただけどな…その時はあんまり海の男って感じはしなかったが…」
鈴谷「み、見た目普通の人間だけど…ヤバそうなオーラが…」
熊野「でも…相手は一人だけですの?」
ジリジリと相対し、様子を伺う提督達。対して、海賊頭領はゆっくりと近づいてくる。
頭領「心配しなくても相手は俺一人だぜ!なぜなら…」
頭領「俺一人でお前らを倒すのは十分だからだ。」
提督「あれは?」
提督が頭領の腹部にあるベルトに気付く。
次の瞬間、頭領が異形の姿に変身した。
頭領『いくぞ…』
まるでお伽話に出てくるような海賊船の船長のような姿をした怪物になり、提督達に向かってくる。
提督「くっ」
提督も負けじと戦闘形態に姿を変える。
提督「変 身 !」
提督と海賊頭領が激突する。提督は艦娘達の援護を受けながら接近戦に持ち込んだ。
漣をはじめ、阿武隈、鈴谷、熊野ら海賊との戦闘経験あるものが周りに位置し、数でも有利である。
が…蹴散らされた。
頭領『ふんっ!』
提督『うわっ…!』
提督よりもパワーも装甲もスピードも上回っているのか、頭領の攻撃で提督が押し負ける。
さらに頭領は銃を取り出し、周りの艦娘に向けて乱射する。
漣「きゃっ…」
阿武隈「て、提督さんが押されるなんて…」
提督『この…っ』
再度挑みかかる提督だったが、拳も蹴りもすべて止められてしまう。それどころか態勢を崩されたところに至近距離から銃撃を食らった。
提督『うぐっ』
頭領『吹き飛べ!』
さらに海賊頭領のパワーで回し蹴りを食らい、鎮守府の建物に激突し、ダウンしてしまう。
提督『ぐふっ…う…』
漣「…っ!ご主人様っ!」
提督を助けるために漣が海賊の頭領に攻撃をしかける。
漣「このっ…当たれぇぇ!」
それに続けて潮や阿武隈たちも続く。
阿武隈「潮ちゃん!私達も!」
潮「はい!」
目標に向かって砲撃を仕掛ける艦娘たち。しかし、相手は足を止めずに砲撃を避け続け、銃で反撃してきた。
頭領「欝陶しいわ!小娘ども!」
曙「きゃあっ」
朧「くうっ」
頭領の銃撃は、本体は小形ながらも一発一発は艦娘の主砲と同等の威力の光弾を放ってくる。
銃撃で怯んで接近を許してしまった艦娘たちは、今度は相手の体術で倒されていってしまう。
熊野「ううっ…悔しいですわ。」
鈴谷「こいつ…強すぎ…」
漣「くっ、それならぁ…」
みるみるうちに仲間を戦闘不能にされながらも、なんとか動くことのできた漣は今度は至近距離からの砲撃を試みる。
頭領「甘いな」
頭領は突撃してきた漣の射線軸上からズレると、交差気味に漣の持つ主砲を破壊し、さらにボディに拳を叩き込んだ。
うっ、と呻き声をあげて崩れ落ちる漣。そのまま頭領は、漣の小柄な体を、提督が倒れているほうに蹴り飛ばした。
ドサッと音をたてて提督の横に漣の体が転がる。
漣「あぅっ…」
提督「ぐっ…さ、漣…おい、大丈夫か!?」
漣「な、なんとか…ご主人様こそ、ボロボロじゃないですか。」
提督「何言ってる。そう簡単に負けるか。」
頭領「無理だな、お前には。」
海賊の頭領が提督達にゆっくりと近づいてきた。
提督『何だと…?』
頭領『せっかく力を手に入れながら、自分の野望のために使おうとしない…』
言いながら海賊の頭領は一気に間合いを詰め、提督を殴りつける。
頭領『貴様のような臆病者に俺と戦うことなどできんっ』
提督『うわっ!?』
一方的に攻撃を受ける提督。その間も頭領の口上は続く。
頭領『俺は!この力をもって深海棲艦を従え、洋上を俺の支配下に置く!
制海権も海底資源も何もかも手に入れる!
そうすれば地上にしがみついている奴らも俺に頭が上がらなくなる!』
提督は頭領にボロボロにいたぶられながらその口上を聞いていた。
ついには頭領に首を締め付けられながら掴み上げられた。
提督『ぐ…うぅ…』
勝ち誇ったように頭領は提督に話し続ける。
頭領『欲ももたず、軍の犬になって尻尾をふっている貴様にはできんことだろう!
これが俺と貴様の力の差だ!俺はこの海の王になるのだ!』
圧倒的な力を見せつけ、ついに提督に止めをさそうとする頭領。
だが…
提督も諦めてはいなかった。
提督『ふざけるなぁ!』
足を振り上げて頭領の顎に蹴りを入れ、掴まれていた腕を振りほどく提督。
頭領『なっ!?貴様?』
提督は納得いかん、とばかりに渾身の一撃を頭領に叩き込み、初めて頭領を後退させた。
見事なカウンターに漣をはじめ見守るしかなかった艦娘たちも声をあげる。
提督『だまって聞いてりゃ、好き勝手いいやがって!』
漣「そうですよ!海上支配なんてさせな……」
提督『勝手に人を夢も希望も無いみたいに言うんじゃねぇ!』
鈴谷「んん~?」
熊野「そっち!?ですの?」
提督『俺はなぁ!艦娘に襲われる派よりも襲う派なんだよ!』
曙「……は?」
提督『要するに…だ。可愛い娘たちを戦わせて自分は後ろでふんぞりかえってるなんて性に合わないんだよ!』
違うベクトルで力説する提督に唖然とする敵味方だったが、さらに不思議なことが起こった。
提督のベルトが光りはじめ…
提督『力を手に入れたってんなら俺は…』
頭領『貴様…何だ!?その姿は?』
提督『この娘達と同じ場所で戦うことを望むね!!
そんで俺のかっこいいところを見せつける!これが俺の欲望だ!!』
「Combined Fleet」
提督の強化スーツが、「連合艦隊」を冠する新たな形態に変化していた!
曙「まったく…海軍で戦うことに誇りを持ってたんじゃないの?あの糞提督…」
潮「…カッコつけたかっただけみたいですね。」
朧「提督らしいかも…子供みたいな理由だけど…嫌いじゃないよ」
鈴谷「提督…いくらなんでも欲望に忠実すぎない?」
熊野「貴女がいうならよほどですわね…でも…」
阿武隈「そういう提督さんも、あたし的にはOKです。」
前線で戦う駆逐艦や巡洋艦たちは生温かい目で提督を見守っていた。
大淀「まぁ…指揮官が前線で兵を鼓舞することは例がないわけでも…」
蒼龍「どっちかっていうと呆れさせてる気も…」
飛龍「あはは、やりたいようにやってるだけだもんねぇ。」
日向「だが…大層な理想を掲げている連中よりは余程身近だな…」
伊勢「それでこそ“私達の提督”って感じだもんね!」
鎮守府内部で防衛に当たっていた大淀たちも苦笑しながら提督を見守る。
そしてその提督の側では…
漣「ホント…ご主人様はいまいち決まらないヒーローですねぇ」
新しい力を得た提督が攻める。
攻める。
攻める。
今度はパワーもスピードも劣っていない。
提督『くらえぇっ!』
先程までのお返しとばかりに、提督の格闘術が炸裂する。
頭領『貴様っ…』
提督の攻撃の前に、分がわるいとみた頭領が距離をとる。
漣「うわ…ご主人様ホントに格闘術は強いんですねぇ。あっ…!相手を海にまで押し返しました!」
まるでシーンが変わったら採掘場に移っている特撮のように、戦闘の場を陸上から海上に移す両者。
頭領『この…調子に乗るな!』
頭領が遠距離から銃で撃とうとする。
が、なんと提督の強化スーツから戦闘機が発進し、攻撃を牽制しはじめた。
頭領『!?』
さらに…
提督の腕部と脚部に砲と魚雷があらわれ、一斉発射される!
提督『「連合艦隊」とはよくいったもんだ。いろんな艦種の力が一度に使えるのか…』
提督『これなら力負けはしないっ!』
頭領『ぐわぁっ』
隙を与えず、頭領に猛攻を続ける提督。ここでけりをつけんとばかりの勢いだ。
そして決定打を与えるべく攻撃を加えようとする。
だが最後の一撃は海賊の頭領には届かなかった。
突然、両者の間に降ってきた砲弾により、提督と頭領の戦闘は中断されたのである。
提督『おわっ!?』
頭領『ふっ…』
漣『ご主人様!沖です!海賊船が攻撃を始めました!』
頭領『少し甘く見ていたな…』
提督『…!逃がすか!?』
いつの間にか海賊たちがダメージを負った頭領を守って撤退をはかっている。
頭領『お前の力については認識を改めよう。だが俺は俺の野望をあきらめんぞ!
俺が気に入らないなら、せいぜい止めてみるんだな!』
提督『偉そうにするんじゃねえっ!』
逃がすまいと追おうとする提督だったが、今度は海賊たちに率いられた深海棲艦が立ち塞がる。
提督『うおっ…邪魔しやがって…』
多勢を前に突撃しようとした提督に、鎮守府から艦娘たちが止めにはいる。
曙「ちょっと糞提督!いくらなんでもひとりじゃ無理よ!」
朧「ここは深追いするべきじゃない…と思う。」
潮「さっきの戦闘で皆さんダメージを受けてます。漣ちゃんも武装が破損して戦闘には耐えられません。」
提督『…っ。そうだな…。こちらも被害が大きい。戦闘続行はここらが限度か…。』
深海棲艦の相手をしていた鈴谷たちも相手を追い払うことには成功した。
鈴谷「提督、あいつら撤退していくよ。」
熊野「やはりボスが負傷したのをみて退ったんですわね。提督、お見事ですわ。」
海賊たちが撤退していくのを見てひとまず安堵する。艦娘とともに鎮守府へ帰投していった。
提督『とりあえず、土壇場で押し返せたからよかったものの…』
海からあがったところで提督の変身が解除された。陸ではこれもボロボロになった漣が出迎える。
漣「ご主人様ぁ、やりましたねぇ!」
提督「おぅ!お互いボロボロだな。」
漣「でも、まぁ漣もちょっとは頑張ったでしょ?」
提督「まぁな。次も期待してるぜ!早くドックにいって直してこいよ、な。」
漣「ねぇ、ご主人様?」
提督「ん?」
漣「さっきのご主人様、お世辞にもヒーローっぽくはなかったですけど…」
提督「…悪かったなぁ!」
漣「でも、その欲望に忠実なところ、漣は好きですよ。えへへっ。」
提督「はは…ありがとな!よぉし、次こそ海賊退治するぞ!」
漣「おぉ~!」
こうして提督と漣は海賊討伐の決意を新たにするのだった。
果たして彼らは海賊を退治し、再び通常任務に戻ることはできるのか?
提督達の戦いはこれからだ!!
ご愛読ありがとうございました。
伊58「まさかの打ち切りエンドでち!?」
伊19「イクたちの出番も潜水艦フォームもなかったの!!」
伊8「作者の力量の無さが伺えます。」
伊168「最初は潜水艦フォームもあって、中間強化が連合艦隊、最強フォームも別にあったらしいよ」
伊401「最後まで書けなかったんだね…」
おしまい
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません