【艦これ】提督「はぁ……」 (25)

※不定期更新の可能性大

※思いつきで書いてるため、けっこう遅め

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???「どうした、ため息なんてついてさ? らしくないなぁ」

提督「……いや、何でもない。気にするな」

???「そうか? なんなら医者でも呼ぶか、っておい! 聞いてるのか?」

提督「……」(ポケー

???「変な提督だな……医者呼んどくからな! 顔紅いし熱でもあったら大変だからな!」

提督「……呼ばなくっていいって」

???「ならちょっと休憩室で寝てこいって! ほら、行くぞ!」

提督「……」

そんなこんなで俺は休憩室に強制連行された。昼下がりだっただかろうか、俺以外にだれも居ない。
外からは駆逐艦だろうか、わいわいと声がする。

???「ほれ、寝た寝た。お茶とコップはここに置いとくからな」

提督「すまない、天龍」

天龍「別にいいってことよ。困ったときはお互い様とか言うだろ。」

なぜだろう、普段はヘタレっぽい彼奴が微妙にかっこ良く見える。

天龍「じゃあ、鎮守府周辺の警備にあたってくるからな! 寝てろよ! До свидания!」

バタンと扉を閉め、15.5cm副砲をガシャガシャ言わせ、天龍は廊下を走っていった。
どうして唐突にロシア語を使ったのかは、聞かないでおこう。
どうせ大した理由でもない。

布団に入ると、日頃の疲れのせいだろうか、すぐに眠くなった。
迫りくる睡魔に身を任せ、目を閉じた。

 * * *

燃えていた。何もかもが。俺の思いで、大切な場所が。
逃げまとう駆逐艦、覚悟を決めたようで敵と戦う戦艦・空母たち。
待った……、軽巡洋艦や重巡洋艦は? 一人として見当たらない。
嫌な予感がする。

「提……督っ!」

振り向く。そこには血だらけの天龍が、鞘を支えになんとか歩いていた。

「お前?! 何がっ!」

「すま……ん……
俺が警備を……疎かに……し」

耳を劈くような爆発音とともに天龍の身体が崩れた。
崩れた、というよりバラバラにバラバラバラバラバラバラきれいさっぱり爆散。

「天……龍……?」

答えは返ってこない。
何が起きているのかは十分分かっていた。でも俺はそれを認めたくない。
嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!

「ぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!」


「起きろ! おい起きろって!」

聞き慣れた声に身体を揺さぶられる。この声は……馬鹿な、お前は死んだのでは……。
そこで、俺はようやく気づく。――これは夢だったのだと。現実ではなかったのだと。
目を開けると心配そうな顔で覗き込まれていた。

「大丈夫か?」

が、次の瞬間、一笑された。アハハハと笑う天龍を見て、俺は心底安心した。

「な、何がおかしい! お、俺はな、お前が……」

そこまで言って、止めた。そう、あれは所詮俺が見た夢だったのだ。何も心配することはない。
ましてや誰にも言う必要がない。

「ふーっ、久しぶりにこんな笑ったぜ。お前の涙目の顔……思い出すだけでくくっ」

人が本気で心配してたのを笑いものにされると結構ムカつくもんだ。

「悪かったな……」

「それはそうと、飯の準備が出来たってさ。さっさとこいよ」

「分かったよ。着替えるからあとから行く。」

「二度寝するなよ」

パタンとドアを閉め、食堂へと向かっていった。俺は冷や汗でぐっしょりとした制服を脱ぎ……。
そういえば着替えがなかった。持ってきてもらえばよかったが、時すでに遅し。静かにドアを開け、誰も居ないことを確認し、俺は執務室へ走った。

 * * *

食堂はいつも以上に賑やかだった。普段は真っ白な机や椅子が並べられたこの空間が食事のたびに活気あふれる場所になる。戦いのことをしばらく忘れ、楽しくお喋りしながら美味い食事に舌鼓を打つ。俺はこの時間がこの上なく心地よい。多分彼女たちも同じだろう。

「司令官さーん、ここ空いてるよー」

雷が手こっちを向いて手を降っていた。そのとなりでは響、電、暁と姉妹かたまって座っている。相変わらず暁型の4姉妹は仲が良くて微笑ましい。
椅子がまだ高いらしく、足をぶらぶらさせている電の隣に席を取り、箸に手を付けた。

「やけに豪華だなぁ……」

「今日は大漁だったのです!」

正規空母漁獲団が大成果を上げて帰還したらしい。それを鳳翔さんが腕をふるって調理し、そして、今に至る訳だ。

「この魚、悪くないね。Мне понравилось」

「それはヒラスズキなのよ」

フォークを片手に得意そうにする暁。

「へぇ……暁おねえちゃんって物知りなのね!」

「い、一人前のレディーとしては当然のことよ! ねぇ、司令官」

「あ、ああ、よく勉強したんだな。偉いぞ」

空いていた左手で頭を軽くなでてやる。さらさらの深い紺色の髪がフワッと持ち上がる。

「なでなでしないでよ! もう子供じゃないって!」

「そのわりにいつも嬉しそうに見えるよ」

「いうなぁ!」

顔を赤らめて響に反論する暁。
全く、素直じゃないなぁと思い、

「そういえば司令官さん、警備のおしごとの間に変なものを見つけたのです」

電が机の上にそれを置く。右手に収まるほどほどの大きさで、銀色に光っていた。見たことがない形だったが、明らかに兵器の類だ。

「長門さんが、敵艦隊の弾丸じゃないかって言っていたのです」

「ば、爆発とかはしたりしないのか?」

「打ち終わったやつみたい」

手に取り見てみる。運用している弾と同じぐらいの大きさなのに遥かに重い。多分3倍ぐらい。そして驚くことに、その表面に繋ぎ目はひとつもない。

「どこで見つけたんだ?」

「西の方? 砂浜に落ちてたのです」

「これ、貰ってもいいか?」

敵兵器のものだとすると、貴重なサンプル。ぜひとも分析したいところだ。砂浜に落ちていた、つまり相当な距離を海水で流されてきてもこの光沢。貴金属を使っているのだろうか。ますます興味が湧いてきた。

「し、司令官さんのお願いなら断れないのです」

「本当か?! ありがとう、感謝するよ」

ちょっと悪いことをしてしまったか。ちょっとしょんぼりしている電に透かさず響が耳打ちをする。ゴニョゴニョ。

「そ、そのかわり、い、電とデートするのです!」

吹いた。何ということを教えたんだ響よ。当の本人は知らんぷり、デザートの抹茶アイスに手を付けている。

「えーズルい……司令官、雷も連れて行ってよー」

「お、お出かけなら暁も連れて行きなさいよね」

「はわわわ」

くっ……致し方あるまい。

「わ、分かった。今度の日曜日にみんなで出かけよう。響も来るか?」

「司令官が望むならね」

ハハハと苦笑し、抹茶アイスを口に含む。ほんのり苦い、優しい味が口の中に広がった。

 * * *

第一艦隊、戻ったぞ――その声に俺は机を覆い尽くす書類の山から顔を上げる。

「お帰り。お疲れ様」

「おいおい、この山は何だ? 今度は何やらかしたんだよ」

ニィっと悪質な笑みを浮かべ束の上の方に手を伸ばす木曾。そして、顔を顰める。

「うひゃぁー、予算関連かよ。 何、『貴殿の鎮守府は大した成果が無いため、予算を削減する』だって? 言われてんじゃん、なぁ」

「うるさいなぁ、予算なんてなくてもやっていける用にしてるから」

「その結果が長遠征隊か? なあ頼むよ、戦いに出させてくれよ。俺はもう資源運びは飽きたんだ」

呆れたように、山に予算の手紙を投げ戻し、執務室の真ん中に置いてあるソファーにドカッと座る。

「それは無理な相談だ。第一に、今戦闘を繰り返したら資源が枯渇する」

「その為の遠征、ってワケか?」

「そうと思っておいてくれ」

仕方ねぇ、もうちょっとやってやるよ、と木曾はガラステーブルの上に置いておいたコーヒーに手を伸ばす。
俺は机から立ち上がり、窓に向かう。微かな波の音と、鴎の鳴き声が心地よい。飽きることなく、ずっと聞いていたい――、そう思った。
決してエリートでは無い俺が艦隊を指揮するようになり、はや半年。色々あったな……。


「なぁ」

続く無言に耐えきれなかったようで、木曾は呟いた。
じっとマグカップを見つめ、決して俺を見ようとせず、ギリギリ聞こえる程度の声で。

「どうしたんだよ、急に」

「……いや、別に良いんだ」

コーヒーを飲み干し、立ち上がる。帽子を取り、扉へと向かう。

「報告書はそこに置いといたからな」

バタン、と行ってしまった。
俺はため息を付き、置いていった物に目を通す。何かまずい事でも言ってしまったのだろうか。
考えても仕方が無いので、再び机に戻る。
報告書には『確保資源、燃料および弾薬各1200単位。鋼材、ボーキサイトは入手できず』とあった。


暫くして、俺は金剛を執務室に呼びつけた。

「Hey、提督ぅー。何か用デース?」

風呂上がり早々らしく、髪はまだ濡れたままだった。それでもピンと立ってるアホ毛には関心すらしてしまう。

「開発班にお願いがあってね、風呂上がりの所申し訳ない」

「気にすんなデース! で、今回は何なのデス? 三式弾の量産デス?」

三式弾量産――――資材を大量投入したものの、失敗に終わった開発計画の事だ。
そのため、余計に遠征が増えたことは言うまでもない。

「いや、今回はこれを見てもらおうと思って」

「Oh、何デスネーこれは?」

得体の知れない銀色の物体を差し出す。それを興味深そうに見つめ、首を傾げる金剛。

「やっぱり分からないか?」

「ウー、バラバラにしてみれば分かるかもしれないのデース」

「分かった。ただ、敵の通信機の可能性も捨てきれないから、慎重に作業を進めてくれ」

「その事は大丈夫ネー。ここら辺の通信を監視している霧島から何の報告もないからネー」

俺は思わず黙り込んだ。まさか、開発班がここまでやってるとは。てっきり、仕事さぼってティーパーティーしてるのかと。

「提督ぅー、私達を舐めてもらっちゃ困るのデース!」

立ち上がり胸を張る金剛、その言葉には今までに無い重みがあった。戦闘が減り、暇になった戦艦達が作り上げた開発班はきちんと成果をあげていたのだった。ただ、俺が気づかなかっただけで。

「わ、分かった。ただ、気をつけてくれ」

「ワカリマシター」

「そ、そうだ、資材は各種どれぐらい必要か?」

「分解するだけだから別にイラナイネー。じゃ提督ぅー See you tomorrow なのネー!」

ひょいと例の物体を取り、廊下へと消えていってしまった。俺はソファーに倒れるように座り込み、長いため息をついた。

「提督失格だな、俺」

* * * *

 午前五時、俺は誰に起こされたわけでもないが、布団を飛び出す。着替えを済まし、外へ向かう。誰もいない広場に波の音だけが谺する。鎮守府の清掃は俺の日課だ。何よりも、朝の海からの優しい潮風が心地よい。

「おはよう、司令。今日も掃除?」

「おはよう、望月。お前も最近随分早起きなんだな」

「最近仕事が大変でね、お風呂はいってご飯食べるとすぐ眠くなっちゃうんだ」

 長い髪を風になびかせ、眼鏡を押し上げる望月。

「お陰で早起きできるようになったんだけど。まあ、朝の空気も嫌いじゃないし、悪いことじゃないね」

「寝坊常習犯のお前からそんなことが聞けるとはな」

 俺はくすっと笑う。

「誰のせいだと思ってるんだよ、まったく」

「おっ、それは司令官への挑戦か、望月? 俺を打ち負かし、お前が新たな司令官となり皆を指揮し、世界征服か?」

「別にそう言う意味じゃないし、あたしが司令官ってどうさ? みんなついてこないっしょ?」

 俺はどこを向けばいいのか分からないので、とりあえず空を見上げ言った。ちょうど昨日考えていたことだ。

「それはなってみないと分かんないもんだよ。俺だって俺じゃ司令官なんて勤まらないと最初は思ってたさ」

 望月は地面を見つめ、ぼそっと言った。

「キミはいい司令官だよ。なんせ壊れかけたあたしを救ってくれた」

「なあに、司令官として当然のことをしただけさ。お前の方が、姉さん達が全員沈んで辛かっただろうに、俺はアレぐらいしか出来ないんだよ」

 そして、頭をちょっと掻きながら続けた。

「最も、それで救われたと思ってくれるなら嬉しいけど」

 俺をじっと見つめる望月。なんだか恥ずかしいというより、照れくさい。そして暫くして、望月はニコリと笑い、

「ふふっ、司令官。きっとその馬鹿みたいな優しさにみんな魅かれるんだね」

 そして、立てかけてあった帚を手に取り、

「さっ、掃除しますかぁーっ!」

 望月、俺はお前がこんな風に笑ってくれて、本当に嬉しい。あの時の悲報を聞いた時、生き残ったお前だけは守り通す、そう決めていた。だから除籍されても、上が何を言おうと、俺はお前を守ったつもりだ。だって、お前達姉妹、挙って『司令官ともっと一緒に居たかった』なんて書き残すから――――。

「司令官、どうしたんだよ。目真っ赤だよ」

 せめて生き残りのお前だけでも。それが先立った彼女達への俺がしてあげられる唯一のことだから。 

「もう大丈夫、砂が目に入ったみたいだ」

 袖で涙を軽く拭き取り、俺は望月の方を向き直る。

「よし、さっさと済まして皆を起こしにいくか」

 いつまでも、過去を振り返っていてはいけない、そうだよな望月。俺は帚を片手に朝日を見つめ、そう思った。穂先の乾いたシャッシャッという音が、明るくなり始めた鎮守府に響き渡るなかで。

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