ぬ~べ~「幻想郷か……厄介なところに引きずり込まれてしまったものだ」その2 (183)


【前スレ】

ぬ~べ~「幻想郷か……厄介なところに引きずり込まれてしまったものだ」

ぬ~べ~「幻想郷か……厄介なところに引きずり込まれてしまったものだ」 - SSまとめ速報
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【今後の予定】


最終話「 百鬼夜行――そして境界線の向こう側へ の巻」(中編及び後編)


<エピローグ>「 希望の面と絶望の仮面 / 夜回り先生ぬ~べ~と秘封倶楽部の異次元談話 」


――霧の湖の上空――




\ギュルルルルルルルルルルルルルルド―――――――――――――――ン!!!!/




びゅーん!! カシャカシャカシャ!!


文「皆さんこんばんは。毎度お馴染みの射命丸文と」

美樹「絶世の豊満美少女・細川美樹で~す!」

文「私たちは今、霧の湖の上空で繰り広げられている頂上決戦の模様を余すところなく独占生中継しています」

美樹「ぬ~べ~ファイトー!」


\カッ! ギュォォォン!!!/


文「現場ではこのように、激しい戦闘が繰り広げられていますが」

文「果たしてどういう決着がつくのか。我らが幻想郷に明日はあるのか」

文「解説の美樹さん、この戦闘の行方を占う上で何か注目すべき点はありますか?」

美樹「そうですねぇ。とりあえずあの無乳の人は長くは持たないんじゃないでしょうか?」

文「おや、それはどうして?」

美樹「やはり胸の大きさこそが戦力の決定的な差になるからよ!」

文「なるほど確かに!」


ザッ!!


天子「あらあら、カラスと人間が仲良く野次馬なの?」

文「おおっと噂をすれば敵機が目前に迫っています! 危うし美人記者!!」

美樹「ここは緊急回避よ!」


ビューン!!!


天子「逃がすか~!!」


ビュォォォォォォォォ!! カチーン!!!


天子「……」


ゆきめ「やった~! 氷漬けにしたわよ!!」

早苗「油断してはいけませんよー」

ピシピシピシピシ……パリーン!!!


天子「ふふふ……冷たい氷。だがこの程度で頭を冷やす私ではない」

ゆきめ「うそーん!?」

天子「お前の気質はとっくに読み切っているわよ! 雪女には……これをお見舞いして差しあげましょう!」


ゴォォォォオオオオオオオオ!!


ゆきめ「!!」

早苗「緋想の剣で吸収した気質を変化させ、ゆきめさんが最も苦手と思われる炎を放出してきました!」

早苗「これはきっと『こうかは ばつぐん』ですね。ゆきめさん、よけて――!」


ジュゥゥゥゥゥウウウウウウ!!


天子「ふふ、遅かったようですわね」


ゴツーン!!


天子「痛っ!?」

ゆきめ「雪女だからってなめないでよね! 炎に耐性くらいつけてるんです~!!」

早苗「氷の盾で反撃ですね!」

コォォォォオオオオオオオオオオオ


ゆきめ「もっともっと大きくできるんだから!」

天子「ふーむ、氷塊がまるで巨大なフライパンのように」

ゆきめ「今よ早苗っ!」

早苗「私たちのコンボ技です。開海『海が割れる日』――!!」




パキィィィン――ドゴォォォォォグサリィッッッ!!




天子(!! 凍えるような“御神渡り”だが――冷たさよりもむしろ熱さを感じるわ。不思議ね)

天子(あの娘(ゆきおんな)の悩みごと――恋い焦がれて熱い心が氷を断片を通してでも伝わってくる)

天子「――おあついことねぇ」


ゆきめ「……暑い? あいつ感覚マヒしてきてるのかも!」

早苗「体感的なあつさのことを言っているのではないみたいですよー」

文「おお!」

文「雪女さんが作った、巨大な円盤状の氷板の中央部が裂けて山脈のようにせり上がり敵機を直撃っ!!」

文「意表を突かれた天子さんは一旦、要石(とびどうぐ)を引き寄せて距離を取っています!」

美樹「いくら強靭で絶壁な体を持っていると言っても、少しずつダメージを蓄積していってるのね!」

文「更に様々な外的圧力が加わって思うように天候を左右できない様子!」

美樹「このまま敗れ去ってしまうのかー! 敵の反撃にも期待よ!」


ゆきめ「それは期待しちゃダメー!」

早苗「でもちょっと期待したい部分も」


ギュ―――――――――――――――――ン!!!


ぬ~べ~「2人とも避けろーっ!!」

霊夢「絶鬼の妖力波が来るわよ!」


ゆきめ「わっ」

早苗「きゃっ」


サッ


\ちゅど~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!/

文「これは危機一髪! 背後からの一撃を辛くもかわした両名!」

美樹「相変わらずヤバい威力ね! 妖力波(アレ)をまともに喰らったらひとたまりもないわ!」

文「ちなみに着弾したのはまたしても紅魔館近郊! 広大な庭の一角から炎がメラメラと上がっています!」

美樹「誰が後始末するのかしらー」


文「さて、我々はマスコミ生命を賭けてもう一方の敵機――青鬼のカルロ・ゼッキ氏に取材を試みます」

美樹「レッツ・ゴー」


ビューン!


早苗「気を付けてくださいね!」

ゆきめ「だからカル何とかって誰なの!?」

霊夢「ってコラー!」

ぬ~べ~「やめろ! 行くんじゃない!!」

文「ええー、絶鬼さんでしたね。職業はピアニスト兼指揮者と聞いていますが」


絶鬼「職業? 別に仕事じゃないけどピアノはよく弾いていたよ」

絶鬼「指揮棒を振るってオドロオドロしいの旋律を奏でるのもお手のものさ」


美樹「人間バージョンの方が確実に女子モテするわよ。バラをかざす姿もサマになってるし」


絶鬼「そう? 人間ってのは簡単に見た目になびいてしまうから本当に浅はかだよ」


文「それで、絶鬼さんが鬼の手異変に加担する目的は? まさか本気で幻想郷を征服しようとでも思ってるんですか?」


絶鬼「無論そのつもり」


美樹「もうやめておきなさいよ。またぬ~べ~達にやられて地獄に堕ちたいの?」


絶鬼「もう堕ちないさ。なぜなら幻想郷(ここ)そのものが地獄のコンサート開場になるからだよ!」


クワッ


文「ああっと! 絶鬼氏が中立的立場たる私たちに非情にも攻撃を仕掛けてきます!」

美樹「これは大ピーンチ! 取材班の運命やいかに――!」

霊夢「神技『八方鬼縛陣』」


ギュゥゥゥゥン!! 


絶鬼「な……に!?」


霊夢「鬼の動きを封じるにはコレが効くわよ!」

早苗「もういっちょいきましょう! 妖怪退治『妖力スポイラー』――!」

ゆきめ「あのエゲツナイ技ね」


ズォォォォォオオオオオオォォォォォォォォォォオオオオオオオオオ


絶鬼「ぐあっ!? 力が……妖気が吸い取られてゆく……!?」


霊夢「吸い上げられたあんたのチカラは――」




シュォォォオオオオオォォォォオオオオオオオ




ぬ~べ~・萃香「俺の《左手(おにのて)に萃まってくるのさ!》」

ぬ~べ~「食らえ、絶鬼ッ!!」




ぬ~べ~・萃香「《 元 鬼 玉 》」

絶鬼「ッ!!!?」


ギュウウウウウウウウウウウン!!!




天子「させるかー!!!」


ぬ~べ~「なっ!!?」


ドゴォォォ―――ン




ゆきめ「鵺野先生ーっ!!」


ビュンッ!!


早苗「要石が鵺野さんに直撃しましたよ! 天子さんはそのまま下降していきます!」

霊夢「あいつ!! いっそのこと絶鬼と一緒に封印しちゃおうかしら」

絶鬼「うぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」


早苗「呪縛を振りほどこうとしてますよ!」

早苗「さらに拘束しちゃいます――蛇符『バインドスネークカモン』」

霊夢「御守『妖怪足止め守り』」


シュンシュンシュンシュンシュンシュンシュンシュンシュンシュンシュンシュンシュン


絶鬼「こォしゃくなァァァアアアアアア――――!!」


グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


早苗「……凄いですねゼッキさんは」

早苗「諏訪子様たちに散々苛められて疲れてる筈なのに、まだへこたれてくれません」

霊夢「案外そっち系の気質があるんじゃないの? あの天人とつるんでるわけだし」

霊夢「ま、こっちはそういうシュミはないから――もう攻撃を受けるつもりはないけど」




霊夢(    夢想天生    )




早苗「これは…博麗神拳の継承者が使う究極の防性奥義!」

文「キマシター! 霊夢さんが瞳を閉じて空の境地に入っています!」

文「ここから先は無敵と化した鬼巫女の独壇場なのかー!?」

美樹「これはたぶん精神統一系の必殺技ね!」

美樹「ぬ~べ~の方も気になるけれど、こっちも目が離せない!」


――紅魔館跡――




ゴォォォオオオオオォォォォオオオオ……




美鈴「ZZZ」


バシャ-ン!!


美鈴「ひゃっ!?」


弥々子「早く起きんだっぺ!」

美鈴「え……どちら様……? 河童さん?」

にとり「おたくの屋敷の花壇とかが燃えてるよ。崩れた建物のほうに燃え移ったら更にマズイんじゃない?」

美鈴「ふぁー……。……火事!?」


ゴォォォオオオオオォォォオオオオオ


美鈴「ああ~……これはまたお嬢様や咲夜に怒られる。早く消火しなきゃ」

弥々子「皆で協力して火を消ぜばいい! おら手伝うっぺ!!」

にとり「もしも山にまで飛び火したら迷惑極まりないからね。……私ら河童も手伝うよ」


ザザッ


響子「 火 事 だ ー ッ 」

村紗「異変も漸く収束に向かい、手持ち無沙汰になってまいりました。私たちも手を貸しましょう」

小傘「あーもうクタクタよう……誰でもいいから私を見て驚いてよ」


美鈴「驚きました。こんなにたくさんのひとたちが皆協力してくれるなんて」


――霧の湖の上空――


ギューン!!


天子「よし、旋回して二時の方向から再度襲撃といこうかな」

天子「ふう、なかなか手強いわねー。次はどんな手を使おうかしら」


ザッ!!


ぬ~べ~「おいおい、まだ奥の手でも残っているというのか?」

天子「む。ぶっ飛ばしたつもりだったけれど? 要石に張り付いて這い上がって来たわけ?」


《そうだよー》

ぬ~べ~「この岩は操ることはできなくとも触れることはできるようだ」

ぬ~べ~「ただ、正真正銘の要石だということは確からしい。あの注連縄には手を出せないな」

天子「そうよ。この緋想の剣もしかり――下々の者(おまえたち)には使いこなせない」

ぬ~べ~「天人か。最初に聞いた時は八丈島の妖怪・天子(テンジ)のことかも、と思ったが……いやはや畏れ多いな」

《私は嘘などつかぬわー!!》

ぬ~べ~「あっ……ごめんごめん……」

天子「はははは! もう仲間割れ? 小鬼ときたら、そんな愚直な人間と手を繋ぐとはね」

ぬ~べ~「ぐ……バカで悪かったな~」

《愚直ってのは悪い意味にもとれるけどいい意味にも取れるんだよ――バカ正直は》

天子「覇鬼とやらもあまり賢そうでは無かったが、貴方もそうらしいですわね。お似合いかもしれない」

ぬ~べ~「そうかもな」

ぬ~べ~「だが、絶鬼は賢い。神通力を自在に使いこなすと云われる天人の君ならば、ヤツの本性は理解できているはずだ」

天子「まーね」

ぬ~べ~「だったら何故ヤツに加担するんだ! 君だって幻想郷の住人なんだろう?」

ぬ~べ~「天人の生は快楽に満ち溢れ、生きている間の苦しみなど感じることなく桃源郷で暮らしているんだろう?」

《……》

天人「それは夢物語ですわ。部外者はあれこれ詮索せず口を慎みなさい」

ぬ~べ~「ああ、部外者である俺がとやかという筋合いはないのは百も承知だ――だが」

ぬ~べ~「鬼の兄弟が非道の限りを尽くし、数多の人間や妖怪たちの心の拠り所を踏みにじるような」

ぬ~べ~「そんなことを――」

天子「させてたまるかって?」

天子「ならば話は単純。このまま我々を倒せばよいのよ」

天子「私は刺激を欲しているの。貴方が言うほど、桃源郷(てんかい)は理想郷ではないの。もっとずっと退屈でつまらないところなの」

天子「少なくとも私にとってはね。だって私は――不良天人なのだから!!」


ドスッ!!


天子「今度は拳で語り合おうじゃないか――人間と小鬼よ!」


ぬ~べ~「……ぐおっ!!」

《受け止めるだけじゃ駄目だよ! ほらほら土手っ腹に一発かますんだ!!》

ぬ~べ~「だ……だが!」

天子「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ――――ッ」


ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ

ぬ~べ~「ぐおおお――――ッ!!?」

《もー。言わんこっちゃない》




ドッボ―――――――――――――――――――――――――――――――ン!!




天子「急転直下で霧の湖に不時着か――小鬼はともかくあの人間は再起不能かな?」


ガクンッ!!


天子「ッ!? 要石の動きが止まった――?」


ピキピキピキピキピキピキピキ!!


ゆきめ「湖水を上空(ここ)まで押し上げて岩ごと氷漬けにしたのよ!!」

天子「これはこれは、氷柱じゃなくてまさしく氷の柱になってるわね。要石がスッポリ包まれちゃった」

ゆきめ「鵺野先生も私がちゃーんと受け止めたわ」

ぬ~べ~「ありがとな、ゆきめくん。へっくしゅ……ちょっと凍えたがな……」


《早く酒を呑んであったまるんだ!》


ぬ~べ~「ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク……ウィ~ス! 酒は旨いぞ~!!」

ゆきめ「そ、そんなイッキ飲みとかしちゃ……」


天子「さてさて、じゃあタコ殴りの続きといこうかな」

ゆきめ「鵺野先生、こんな手くせの悪い敵ボッコボコにしちゃっていいじゃないの!」

ぬ~べ~「だ、だが」

ぬ~べ~(倒せと言っても弾幕ごっこの範疇じゃないとすると失神させる程度なのか?)

ぬ~べ~(それとも……?)

ぬ~べ~(相手は子どもだぞ……。実のところはどうか知らないが……俺にとっては天真爛漫な小娘なんだぞ)


《見た目に騙されちゃダメだよ。こいつは博麗神社を乗っ取って自分の領地を広げようと目論んだことだってあるんだから》


ぬ~べ~「……領地を」

ゆきめ「根っからのワルってわけなのね?」

ぬ~べ~「……事実なのか?」

《強引ではないんだけどね。割譲ってのは嘘ではないよー。まあときたま居座ってるだけ》

ゆきめ「えーよく分かんない。どっちが悪いの?」


ヒュン!!


天子「さーて」


ガシィッ!!


天子「な!」

ゆきめ「また要石とやらで暴れ回るつもりでしょ!」

ぬ~べ~「とにかく絶鬼に手を貸すのは止めるんだ! 君自身の身をも滅ぼすことになってしまうぞ!」

天子「私自身を取り押さえたところで何になるのよ」

天子「要石は私の意思でどうとでも動かせるんだから」

ぬ~べ~「この……分からず屋だな!」

《やっちゃえやっちゃえ~》




ぬ~べ~・萃香「《 百 万 鬼 夜 行 》」




天子「――。――……一念岩をも通す、かな」





                                    (つづく)


――霧の湖の上空――


ぬ~べ~「おおおおおおおッ!!」

天子(――!)




ヒュル―――――――――――――――――――ン!!




ゆきめ「! 鵺野先生、上から絶鬼の手が伸びてくるわ!」

ぬ~べ~「!?」




パシィィン! ビュルルルルル!!




ゆきめ「ええ!?」

ぬ~べ~「なにっ……!?」

天子「絶鬼――今度はそちらが助けに来てくれたのね」

絶鬼「……別に」

絶鬼「さっきの……借りを返しただけだ……よ。遊び半分とはいえ、一応は……仲間なんだろ」

天子「うふふふ。地上を這いつくばる数多の生物たちよ」

天子「――今回はここで見逃してあげるわ」


ギュ――ン!




ぬ~べ~「絶鬼が曲がりなりにも、鬼とは異なる種族の……人間を助けるとは」

ゆきめ「人間ってワケじゃないんでしょ? 天人って」


《あれも、元々は人間だったんだよ》

《それに、好きで天人になったわけじゃないんだよね――いわゆる棚から牡丹餅ってやつだ》


ぬ~べ~「……それはどういう」

ビューン!


文「お2人とも、生きてますか~!」

美樹「大丈夫、生きてるみたいよ!」

霊夢「まったく、こっちが幻想郷(せかい)一位の実力を見せつけようとしたところで颯爽と敵前逃亡するんだから」

早苗「あれだけ抑え込んでもまだ御札のチカラを弾き返すだけのエネルギーがどこに残っていたんでしょう?」

早苗「気力とか根性とかそういう非科学的な感情論で動いているのかしら?」


ぬ~べ~「美樹や他の皆も無事か。それならまあ一安心だが」

ゆきめ「あいつらまた雲の上まで上がっていったわよ」


《でも、要石はこちらの手元に残ったからね》

文「湖の中央に見事な氷の塔が建ちましたねぇ……」

美樹「涼しくていいわー。流石ゆきめさん、やるぅ!」

ゆきめ「えへへ」

早苗「中に要石が入ってますし、今後はこの氷塔を御神体にしてお祀りしたらいいんじゃないですか?」

霊夢「そのうち溶けるでしょ」


ぬ~べ~「あ、それから緋想の剣とやらも」

ぬ~べ~「どさくさに紛れて奪い取ったぞ――持つだけならできるそうだからな」


スッ


霊夢「ご苦労様」

早苗「絶鬼さんは流石に虫の息。天子さんも道具を二つとも手放しては決め手に欠きますね」

ゆきめ「でもやたらめったら頑丈だし、知恵も働くみたいだし……まだまだ油断できないわ。早く追撃しなきゃ」

霊夢「あいつらは直ぐに堕ちるわよ――さんざん姿を現さなかった“最強”の妖怪が還って来たみたいだし」

ぬ~べ~「最強の……?」




\この世は分からない 事がたくさんある~♪/




ぬ~べ~「!」

ゆきめ「歌声? 下の方から響き渡って来る」

早苗「まるで地鳴りのようですね――きっと私たちのことを後押ししてくれているんですよ」

\どんな風が吹いても 負けない人になろう~♪/




霊夢「何だか元気が出てくるわね」


《そりゃあ、私が皆の精神(パワー)を萃めにかかってるからだよ。というのはちったあ正確じゃないね》

《歌に乗せて自然と萃まる雰囲気(ムード)を収束しているのさ。歌の力ってのは凄いもんだね》


ぬ~べ~「――ああ」

ぬ~べ~(この能力――速魚も来ていたんだな)


ぬ~べ~(だが、歌の力の源は幻想郷を守りたいと願う皆の気持ちだ)


――人間の里――




\YEAH!! F●CK!! HOOOOOOOOO!!/




広「頑張れぬ~べ~!! こっからじゃよく見えないけど!」

まこと「とにかく頑張るのだー!」

克也「生きてるか~先生~!! つーか、あれ美樹じゃないのか……?」

郷子「え、どこ? 私には分かんないわ」

こいし「あそこよ、あそこ」

阿求「空が白んで来たものね」

慧音「長い夜だったねぇ」

小鈴「あの幽霊は成仏したのかな?」

小町「さあ。急にいなくなったし、あたいには判らないな」

布都「お主はそろそろ仕事場に帰らないとよろしくないのではないか?」




\それでも弱い奴必ずいるもんだ~♪ 守ってあげましょうそれが強さなんだ~♪/




雲山「……」

一輪「湖のほとりから発せられた力強くも優しい歌声が、幻想郷中にこだましているわね」

屠自古「ウム」


――天空――


絶鬼「人間も妖怪も鬼も……神でさえ皆……力をひとつに合わせて向かってくる」

絶鬼「幽鬼人妖を越えて結ばれた絆ってやつか。……同じだよ……前と」

絶鬼「リフレインしていたのは……ぼくのほうだったのかも」

天子「……。お兄さんと吸血鬼の妹ちゃんはどうなったのかしらね」

絶鬼「いつまでたっても戻って来ないな。山の向こう側で飛び交っていた激しい火花も……終には途絶えた」

絶鬼「覇鬼兄さん……また誰かに封印されちゃったのかな? あの兄さんなら十分あり得るよ」




\今日からイチバンたくましいのだー♪ お待たせしましたすごいヤツー♪/




天子「愉快な歌が聞こえてくるわね。天界で奏でるのんびりとして優雅で味気ない謡とは全く違うわ」

絶鬼「……追い詰められたな。気分は四面楚歌だよ」

天子「ほう。ならば私は虞美人草ね」

絶鬼「君は草じゃないだろ」

天子「――“天災は忘れた頃にやってくる”」

天子「これってね、故事ことわざの類に聞こえるけれど、実のところはそう古い言葉じゃないのよ」

絶鬼「……ふーん」

天子「また皆がこのたびの天災を忘れた頃に、新たな異変を起こすとしよう!」

天子「それでも警戒レベルは上がるでしょうから、今次ほどの大規模に展開するのは難しいかもしれないけれど」


天子「弾幕ごっこは何度でも繰り返し(ルフラン)できるのだから」


絶鬼「――ハァ」

絶鬼「比那名居天子――きみに次があるのなら、また頑張ったらいいさ」

絶鬼「ぼくには――もう次はないだろうから」




――シュンッ


衣玖「総領娘様、それと野蛮な青鬼の貴方」

衣玖「お迎えにあがりました――どうぞ、懲罰房へお入りください」




\今日から一番カッコイイのだー♪ バリバリ最強NO.1♪/




天子「ん、誰だったかしら?」

絶鬼「……」


衣玖「Go to the Hell」




~~~~~~~~~~~~~~~クパァァァァァァァ


絶鬼(これで終わりか――……さよなら……覇鬼兄さん)

天子(え……私までスキマ送り?)


グニュゥゥゥゥゥゥゥゥ~~~~~~~~~~~~~~~




\なるほどーホント今日から一番♪ 一番だ一番ー♪/




シ――――――――――――ン


衣玖「ゆっくり頭を冷やしてください――地獄の業火に身を焦がしながらね」



                                    (つづく)


――天空――


衣玖「……まったくもう」


シュンッ


玉藻「正しくは“Go to hell!”なのですが?」

衣玖「それでは総領娘様に『くたばれ!』とでも言うようなものじゃないですか。そんなことは言えません」

藍「屁理屈はいいとして、このことは天界の方面にはちゃんと連絡しているので? まあ、こちらとしては知ったことではないが」

衣玖「ご心配なく、話は通してありますから。多少の懲罰を受けても文句は言えませんわ」


玉藻「むしろ甘過ぎるくらいじゃないのか? これほどのコトを起こしておいて」

玉藻「旧地獄(the Hell)に堕とすだけ――それもほんの一時とは」


衣玖「大地に溜めこまれた歪みを一定程度吐き出させた点は評価できると思われますが」

衣玖「次の天災が発生するまでにはそれなりの時間経過が必要になるはずです」

衣玖「それに総領娘様の暇は十分潰されたはず。この先3日位は振り回されずに済みそうでなにより」


玉藻「たった3日ですか。そんなリスキーな存在、普通なら追放モノだと思いますがね」

藍「幻想郷は何者をも受け入れる。それに当の天人にとってみれば、地の底を這いずり回されるだけでも相当懲りるはずよ」

玉藻「天人の性質など知らないが、問題は絶鬼の方だ。今度は地底に地雷を封じ込める気か?」

玉藻「後のち何が起こるか知れたものじゃない」

藍「本当に完全に封じ込めるつもりなのか――あるいは、もっと別の考えがあるのやも知れない」

藍「紫様の頭の中にはね」


――地底(血の池地獄)――


ドッボーン!!


絶鬼「……!」

絶鬼「ここは……?」

絶鬼(違う……無間地獄じゃないぞ……)


紫「――念には念を更に入れて」


絶鬼「!?」


紫「貴方の身体の“内側”と“外側”の境界を曖昧にしておいた」

勇儀「ほー。見た感じ何も変わった様子はないが?」

紫「だから、今の貴方の身体は内側が外側であり、また逆に外側が内側でもある――概念的な意味でね」

勇儀「ま、よく判らんが――枷符『咎人の外さぬ枷』」


ガチッガチッガチッガチッ


絶鬼「うごあァっ……!?」


紫「流石の鬼も、“内側”から力を封じられたら手をこまねいてしまうでしょう?」


絶鬼「キサマ……一体何者だ……ッ」


紫「……」




ニュルルルルル――シュンッ!




絶鬼「ッ……逃げるのか……!」

勇儀「あちらさんは随分と多忙だそうでね」

絶鬼(空間に開いた割れ目の中から覗く無数の目――さっきぼくたちを取り込んだヤツか)

勇儀「あんまり暴れられると困るからね。悪いが枷は付けさせてもらった」

勇儀「よ、んーと……名前は何だったっけ?」

絶鬼「……」

勇儀「ああ、私か――私は星熊勇儀と言ってだな。旧都を仕切る怪力自慢の鬼よ!」

絶鬼「……絶鬼という」

絶鬼「まったく……ここの鬼たちは……牙の抜けた狼か」

勇儀「抜けたんじゃないよ。抜いてるんだよ自分から。もっとも、また牙を生やすこともできるよ」


勇儀「ま、血の池にどっぷり浸かって疲れを癒すんだね。絶鬼とやら」

勇儀「後で旨い酒を持って来てやるからさ」

絶鬼「分からないなあ……きみたちの……甘っちょろい考え方は」


――地霊殿(中庭・灼熱地獄跡)――


ガシィィィイイイイイイイイ


お空「貴女が私と合体(フュージョン)希望なの?」

天子「あーれー」

お空「地底にまで響いて来たのよ。大地の主の怒りがね」

お空「だから、貴女をちょっと懲らしめなきゃいけないの。今の気分はどう?」

天子「当ててみて」


さとり「……」

紫「……」

神奈子「……」

さとり「『別に、悪くない気分よ』」

神奈子「さてと封印するか。……誰が全盛期を過ぎたヨボヨボの老婆だって? え?」


紫「鳥の仲間になった蝙蝠は鳥に非ざることを揶揄されて怒り」

紫「獣に擦り寄らんとするもまた弾かれ」

紫「唯我独尊の悟りを開く」

紫「ただし、その視界は平面の内側へ閉じられる――」

天子「――平面の内側?」


さとり「闇黒の炎に灼かれて消えるがいいわ!」

神奈子「やれ、本気で」


お空「 地 獄 の 人 工 太 陽 」


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●●●●●天子「!?」●●●●●
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さとり「動揺しましたね。そして想起しましたね――トラウマとは呼べないまでも、無意識に懼れを抱いた恐怖の“弾幕”のかたちを」

さとり「想起『恐怖催眠術』」




さとり「  焦  熱  覇  拳  」




ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

天子(これは……! 覇鬼が迷いの竹林で繰り出した……大火球!!)

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

天子「あ、あちちちちちっ!!! これは効くー! 熱い熱い熱い~!!」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

メラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラ


神奈子(地獄の業火――見事な灼熱地獄の再現じゃない)

お空「うにゅー! 楽しいですね、さとり様!」

さとり「遊んでるつもりはないわ」

紫「……」


パチィン!




シュ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




紫「クスクス」

さとり「『地底に自ら籠った猿は邪気眼の使い手だったかしら』って?」

さとり「第三の目(サードアイ)の力をなめないでください」

神奈子「んん、天人は奥の孔へ堕ちたか?」

お空「ちゃんと殺れたかしら」

紫「ぷぷぷ」

さとり「『御留守になった足元を見てみれば分かるわよ』」

\ポツーン/


神奈子「これは……誰かのスペルカードかい? ……いや、これ」


ヒョイ


さとり「あ、……それは家に備え置きのタロットカード――……なっ!?」

――《ち、ちょっと。こっから出しなさいよ~》

さとり「え……待って下さい。カードの表面(なか)に天人さんが入っているんですが……。これはまさか」

お空「自力でカードの中に隠れたってことですね? なかなかやるわね」

神奈子「お馬鹿。こんな出鱈目なことをあっさりやってのける奴は――」


紫「境符『二次元と三次元の境界』――比那名居天子をこの三次元空間(げんそうきょう)から追放したのよ」

紫「暫くそこで頭を冷やしなさい」

――《えー、暫くってどれくらいですか?》

紫「――さてと、ああ忙しいわ。まだ諸々の事後処理をやってのけないと」

神奈子「おっと、こちらものんびりはしていられないな」

神奈子「大結界を元通り修復されたら、外に一時避難させた神社を再び引き寄せるのにひと手間掛かる」

紫「それは御面倒ですわねぇ。なんならこちらが守矢神社と湖をセットで元通りにするから――」

神奈子「――便宜を図る代わりに残りのケサランパサラン(あれ)を使わせろっていうんだろう?」

紫「ええ、そうよ」

さとり「……」

神奈子「……この際、ケチケチしない。使い方次第では、素直に首肯するんだけどね」

紫「とても有意義で愛のある使い方――とはいえ少々、私のエゴイスムを包含しているわ」

さとり「……」


チラリ


神奈子「よし、いいだろう」


シュン!!


紫「……」


ニュルルルルルルルン!!

お空「??」

お空「うーん、取り敢えずもう音沙汰ないみたいですし……地上の異変は解決したんでしょうか?」

さとり「たぶんね。そのうち、お燐が報告に来ると思うわ」


――《私は孫悟空が五行山に封印されたのと同じように、カードの中に閉じ込められてしまったわけね》


さとり「そのようですね」

さとり(正位置の意味は自由、型にはまらない、無邪気、純粋、天真爛漫、可能性、発想力、天才)

さとり(逆位置の意味は軽率、我儘、落ちこぼれ……か)


――《私にとってはこの空間は確かに立体であるのに、貴方達が見れば平面なのよね。摩訶不思議そのものですわ》


さとり(カードの中にいるという特殊な状況だからか、彼女の現在の思考はまるで読めないわ)

お空「さとり様、それどうするんですか?」

さとり「どうするっていってもねぇ。スキマ妖怪は『好きにしていいわよ』って心の声で言ってたけど」

さとり(破ったり燃やしたりしたら……天界のお方がたと一悶着ありそうよね……。でも手元には置いておきたくないわ)

さとり「そうだ、質入れしようかしら。それで屋根の修繕費用を捻出できるし」

お空「それは名案ですね。でも、こんなものにお金を出して引き取ってくれる所あるかしら」


――《やだ~私売られちゃうの~?》


――幻想郷(上空)――


ビューン!!


文「只今戻りましたよ。一部報道によると三途の川方面での闘いも早々に決着がついたみたいです」

霊夢「本当に? ソースは?」

美樹「本当だってば! 向こうでドアノブカバーをかぶった女の子に聞いたナマ情報よ」

霊夢「館の主(あいつ)か。ということは、さぞカリスマを発揮したんでしょうね」

ゆきめ「あの鬼は倒されちゃったってこと? 地獄に落とされたの?」

文「討伐では無く融和的な和解による決着のようですね。細かな経緯はまだ把握していませんが、これだけはハッキリしています」

文「覇鬼氏は鵺野さんが恩師の方と共に封印を施したことについて、もう文句を垂れたりはしないし――」

文「――人間を食べることもやめるそうです」

ぬ~べ~「何だって!? それは……本当に本当なのか……?」

文「ええ。ちなみに美奈子さんという女性の魂は無事に解放され、現在は三途の川の辺りに留まっていらっしゃるそうですよ」


文「ネオ地獄にも行ってみます? よければ案内しますよ」

ぬ~べ~「――後で、頼む」

カッ――パアアア


早苗「わあ、眩しいですね。ランジングサンですよ」

美樹「ふぁ~あ……今になって眠くなって来たわ。ねえ、ちょっと寺子屋か阿求さんちでひと眠りしてきていい?」

美樹「現実(にんげんかい)に戻るのは、せめてその後ってことで……」


萃香「何言ってるの~。今夜はパーっと魑魅魍魎勢ぞろいで宴会やるんだからさ。お前さんたちも強制参加させちゃう♪」

萃香「だから、昼間のうちは各々やりたいことをやってりゃいいよ」


美樹「いいの? ラッキー!」


早苗「時間が許せば是非、守矢神社に寄ってくださいね。丁重におもてなし致しますから」

ゆきめ「ここではいきなり問答無用で襲いかかることをおもてなしって言うの?」

文「早苗さんと会話する場合は常識にとらわれてはいけませんよ」

霊夢「ふぅ……ようやく終わったのね。後片付けが大変そうだけれど」

ぬ~べ~「……」

霊夢「鳴介さん?」

ぬ~べ~「ん? あーいや、スマン……ちょっと物思いに耽ってたよ」

霊夢「あんまり考え込むのが似合いそうな面だとは思わないわよ」

ぬ~べ~「……そうだな。考え込むことはないな」


フワフワ


ケサランパサラン「♪」




霊夢「! これは……雪? とんだ季節外れね。異変の余波かしら」




ビュォォオオオオオオオオオオオオオオオオ~~~~


レティ「初雪かい? 今年は冬が来るのが早いわね。霧の湖もダイナミックに凍結しているし」


ビュォォオオオオオオオオオオオオオオオオ~~~~

文「あ、黒幕が唐突に現れました」

ゆきめ「! 同じタイプの波動を感じる」

美樹「何だか登場させるシーンがなくて、やっつけで出したカンが否めないわね。うーさみ」


早苗(神奈子様の綿毛たちが……こんなに沢山……空から降りてくるなんて)


ぬ~べ~「ケサランパサラン――幸せを呼ぶ小妖怪たちだ」

霊夢「幸せを? ――だったら、今回の異変で滅茶苦茶に壊されちゃったものを」

霊夢「綺麗さっぱり元通りに修復してくれたりしたら――助かるわね」


ケサランパサラン達「……」




ぽわあああああああああああああああああああ




     (最終話:百鬼夜行――そして境界線の向こう側への巻<中編>・終 )

バトル展開はこれにて収束です。

あとは、お礼参りと観光とパンツと宴会をさらっとやって本編終了の予定。


――博麗神社――


華扇「見事に元通りになったわね。ケサランパサランの秘める力……恐れ入ったわ」

霊夢「本当に」


霊夢「――で、貴女はどういう形で責任を取ってくれるのかしら?」

華扇「えっ」

霊夢「いくら終わりよければとはいえ、一つ間違えばどうなってたか分からないのよ」

霊夢「仙人様は覇鬼の封印を解いた責任をどういう形でお取りになるのかな~って」

華扇「そ、そうね。何らかの形で責任は取るわ」

霊夢「ま、今夜の宴会で裸踊りをするとか、それくらいのことでいいのよ」

華扇「誰がそんな破廉恥なことを……。宴会といえば、もう昼過ぎよね――早く準備にとりかからないと」

華扇「さぞ大勢来るんでしょ?」

霊夢「そうね」

座敷童子「――コクリ」


霊夢「ほら、あんたたちー! 私に悪質なイタズラをしようとした報いよ、ちゃっちゃと準備を手伝いなさい」

サニー「あれは悪戯じゃなかったのにー」

ルナ「けれども巫女が元気になって良かったわ」

スター「巫女が構ってくれないとイタズラのし甲斐がないものね」


――博麗神社の裏山――


ぼぉおぉおぉおぉおぉおぉお……


雛「ありがとう、厄はちゃんと返してもらったわ」

貧乏神「そんじゃ。おらは、クニへ帰る」

雛「いい人に巡り合えたらいいわね。でも、やり過ぎちゃダメよ」

雛「ほどほどに、頑張って」

貧乏神「ああ」


紫「お別れの挨拶は済んだわね」


ニュルルルルルルルル


雛「ごきげんよう」

橙「……」

橙(外界から貧乏神を連れてきたのは紫様の気紛れか何かだった……)

橙(つまり異変の大本のきっかけを作ったのは……)


――人間の里(移動屋台)――


じゅぅじゅぅー


ミスティア「どうだい、うちの鰻丼の味は?」


郷子「凄く美味しいですよ」

まこと「みすちーさんはお料理上手なのら~」

広「おかわり~!」



ミスティア「うんうん、素直でいい子ども達だ。特別にサービスしちゃうよ」


\わーい/


妹紅「まだ、その子ども達を引率してるの? 本当の担任の先生はどこに?」

慧音「あっちこっち頭を下げに行くそうでね。別にこの子らのことも押しつけられたってわけじゃないよ」

慧音「今日一日だけの話だし。それに寺子屋の方は臨時休校だから手も空いている。昨日の混乱のせいで親御さん達も不安がっているのよ」

妹紅「うーん、そりゃそうだろうね。にしても、慧音はどこの子どもに対しても世話焼きねぇ」


――命蓮寺――


星「今日は普段以上に里人で賑わっているわね」

ナズーリン「確かに。あからさまに宝物目当ての者は門前払いしたのだが」


わいわいがやがや


克也「この人ら全員お寺の信者?」

雲山「……」

一輪「毘沙門天の授福に肖りたい者が大半なのよね。人間は財への執着が深いこと深いこと」

克也「ふ~ん」

村紗「そういう貴方は何故こちらに?」

克也「オ、オレは金目当て何かじゃねーって」

克也「ここの皆には世話になったし……もう一度感謝の気持ちを伝えたくて」


がやがや


聖白蓮「さあさあ、お集まりの皆様――どうぞこちらへ」

響子「大阿闍梨によるご説法の時間ですよ」


わーわー


克也「うおおっ! 美樹の言ってた通り大玉スイカだぜ! 小町のねーちゃんより更にでけぇ!!」

一輪「……邪なり」

村紗「欲に忠実だと言えばそれまでですがね」


――香霖堂――


ぬ~べ~「この度はうちの生徒が勝手にお店の品物を万引きしたそうで……本当に申し訳ない」


ペコペコ


霖之助「いいや、持って行っていいと言ったのは僕の方なんでね」

霖之助「そちらのお嬢さんは少し強引だったが、けして万引きしただなんてことはない」


美樹「だって。許してもらえて良かったわね、ぬ~べ~」

ぬ~べ~「当事者はお前なんだぞ……」


魔理沙「香霖がそう言ってるんだ。ありがたく貰っときなって」

美樹「はぁーい。お断りするのも悪いし貰っときますわ、魔理沙お姉サマン♪」

魔理沙「そうだ。隣の部屋に香霖堂の非売品(コレクション)が飾ってあるんだぜ。ついでに見て行かないか?」

美樹「へー、見たいです見たいです!」


タタッ

ぬ~べ~「……」

霖之助「……」

ぬ~べ~「えーっと、あの子はこちらの娘さんだったんですか。元気な子ですね」

霖之助「そういうわけではないけど、まあ縁あって、ここの常連客なんだよ」

ぬ~べ~「あ……そうでしたか。すみませんね~早とちりしちゃって」


/ぬ~べ~! 私、しばらくここで物色してるから先行っていいわよ。いろいろ行くとこあるんでしょ?\


ぬ~べ~「……まったく」

霖之助「託児所ではないが、客の相手はそれなりにはするつもりなんで」

ぬ~べ~「そうですか。じゃあ、お言葉に甘えて!」


ペコリ――ガラッ


霖之助(鬼の手異変――しかし、あの御鬼輪(どうぐ)は持ち出しただけで結局使わなかったようだ)


ギラリ


霖之助(さてと、ミニ八卦炉を早いところ修理しておくか)


――霧の湖の畔――


レティ「まだまだ暑いわね……勘違いして出てくるんじゃなかったわ」

ゆきめ「体の表面を氷で覆えば難を凌げるじゃない」

レティ「私の能力はね、冬という季節そのものを強めることなの。だから冬じゃないと無力に等しくてね」

ゆきめ「へぇ」

レティ「どこぞの妖精や貴女と違って吹雪を起こしたり雪を降らせたりはできないわ」

ゆきめ「登場シーンで吹雪いてたような」

チルノ「見慣れないヤツらがタムロしているね」

レティ「――さてと、私は涼しい所で惰眠を貪りつつ冬を待つとするわ」

ゆきめ「御達者で」


チルノ「あたいをムシするとはいい度胸だ」

ゆきめ「……えーと、そっちも雪女系?」

チルノ「よくぞ見破った……褒めてつかわすよ」


ぬえ「氷精だろう」

チルノ「どうだい、あたいと一緒にカエルを凍らして遊ばないか?」

ゆきめ「カエルー? もう懲り懲りよ……アレは」


ぬえ「私を無視するとはいい度胸ね」

ゆきめ「……んーと、ちんちくりんの鵺だった? 何か用?」

ぬえ「これをあの人間に渡してくれないかしら」

チルノ「何だいこれは?」

ゆきめ「鵺野先生の……お財布?」

ぬえ「それから、……一言伝えてもらっていいかしら」

ぬえ「『達者でな』とね」


――紅魔館――


咲夜「え、お嬢様のパンツですって?」

レミリア「言ってない」

フラン「眠鬼っていう未熟な鬼の小娘がね。強力な霊能力者をパンツにしたらパワーアップするんだって」

咲夜「それでお嬢様のパンツをその小鬼にあげちゃったんですか?」

咲夜「つまりお嬢様は現在履いてないと……直ぐに替えを用意」

レミリア「よく聞きなさい。霊能力者(にんげん)をパンツにして履けば妖力をコントロールできるらしいのよ」

咲夜「……はい? ……はあ、それは特異な能力ですね。本当にそんなことができるの?」

フラン「さあ。口から出まかせかも知れないけど、眠鬼はそう吹聴していたのよね」

レミリア「面白そうでしょ。試しに咲夜をパンツにさせてみようかと思って」

咲夜「嫌ですよ。第一、霊能力者じゃありませんし」

レミリア「咲夜がパンツになったら私が履いてあげてもいいかも」

咲夜「……」

レミリア「何で……考え込むのよ……」

咲夜「……ところでその眠鬼というのは何処にいるんですか」

フラン「お兄様と一緒に三途の川の畔で小石を積んで遊んでたわよね」

レミリア「だから、そろそろお説教から解放されたんじゃないの?」

レミリア「それより……覇鬼(アレ)をお兄様って呼ぶのはやめなさい」




――図書館――


小悪魔「大図書館も数多の書籍も建物も庭も元通りになって本当に良かったですね。パチュリー様」

パチェ「ふふ、そうね」

小悪魔「あれ……そういえば、ベベさんはどちらに?」

小悪魔「さっきまでその辺で片づけを手伝ってくれていたのに」

パチェ「今度は本物のスキマに誘われて帰って行ったのよ」

小悪魔「……あ、そうなんですか」

パチェ「あれほど悪魔に似つかわしくない悪魔なら人間社会に上手く溶け込めるでしょうね」

小悪魔「そうですね」


――中有の道――


青娥「つまり、下着の材料にするために強力な霊能力者を探している――ということかしら?」

眠鬼「そうなのよ」

眠鬼「お兄ちゃんを左手に封印した人間も狙い目だけど、幻想郷(ここ)って変わったチカラを持ってる連中が沢山いるみたいだから」

眠鬼「他にも手頃な者がいたら紹介して欲しいなぁって」

覇鬼「うがうが」

青娥「つまり、貴方達は私を狙って現れた刺客では無いのね」

覇鬼「シカクって何だうが?」

眠鬼「四角は四角でしょ?」

眠鬼「どう? いいパンツの素材に心当たりとかない?」

青娥「そうですわねえ。博麗神社にいらっしゃってはいかがでしょう?」

眠鬼「ハクレージンジャー……」

眠鬼「あっ! そういや閻魔様がそんな所のこと言ってたような」

青娥「博麗の巫女は強力な霊能力者と言って差し支えありませんわ。さぞかしいい素材になるでしょう」

青娥「でも手強い相手よ。真正面から挑んでは勝算は高くないと思うの」

青娥「今日の晩にその神社で酒宴が開かれるらしいから、そこに潜り込んで好機を窺ってはいかが?」

眠鬼「ふむふむ成程。ありがとう、いい話を聞かせてもらったわ」

青娥「どういたしまして」


シュルンッ


覇鬼「どこかに消えたうが」

眠鬼「瞬間移動かな?」


タッ


正邪「おーい、お前ら」

針妙丸「貴方達の絶鬼(おとうと)の居場所が判ったわ」

覇鬼「!! 本当か!」

眠鬼「絶鬼お兄ちゃんはどこにいるの!?」

正邪「山の地底(した)にいるそうだ」

針妙丸「案内するわ。気前のいいこちら側の鬼がかくまっていて、大人しくしているそうよ」

――異空間道場――




――カポーン




神子「……」

ぬ~べ~「……」


ガラッ


屠自古「粗茶デスガ」

ぬ~べ~「あ、どうも。頂きます」


ズズズ


神子「……」

ぬ~べ~「おお~、実にうまいお茶ですね!」

屠自古「デハ、ゴユルリト」


ピシャッ


神子「……」

ぬ~べ~「……あ、すみません。礼儀作法とかなってなくて。あ、あのーですね……」

神子「口にせずともよろしい。君が言いたいことはよく判っている」

シャシャシャ カキカキ


ぬ~べ~「筆をとって何を?」

神子「私のサインが欲しいのだろう?」

ぬ~べ~「……え」

神子「あの口を慎まない娘も私の熱烈なファンだと聞いている。二枚認(したた)めるとしよう」

神子「折角だから私が読み取ったイメージを元に君の似顔絵を添えてあげるわね」

ぬ~べ~「は、はあ」

神子「よし、描けたわ。どうぞ、受け取りなさい」

ぬ~べ~「あ、どーも」

ぬ~べ~(!? ……俺って、周りからはこんな風に見られていたのか……?)

ぬ~べ~「……えーと……ありがたく、頂戴しておきます」

神子「うむ」

神子「そして――あの子共らのことはもう気にせずともよい」

神子「ことの成り行きで助け舟を出したまで」

ぬ~べ~「そうですか。それはかたじけない」

神子「ただし君が彼らの教師ならば、もっと厳しく接するべきときもあるわ」

神子「甘やかしすぎるのも禁物なのです」

ぬ~べ~「いや~、ごもっともです」

神子「また己自身修練することも怠らず、よき木鐸(しどうしゃ)となりなさい」

ぬ~べ~「ええ。これからも俺なりに頑張るつもりです」


神子「さて、私の話はこれまでとしておきましょう。君も――忙しいだろうしね」


――守矢神社――


美樹「んーほんと空気がおいしいわ。眺めも最高! 幻想郷が一望できるわ」

魔理沙「結構、高い山なんだぜ」


早苗「あ、鵺野さんも来て下さったんですね」

ぬ~べ~「ゆきめが世話になったそうだから、一言挨拶にと。射命丸くんとの待ち合わせもあるしな」


ぬ~べ~「……で、美樹は何でここにいるんだ? ここは危険な場所らしいんだが」

美樹「虎穴に入らずんば虎児を得ずよ。危険どころか、いつもは関係者以外は立ち入り禁止レベルなんだって」

魔理沙「今回は私の箒でひとっ飛びさ。山の妖怪たち(主に河童)は幸せの綿毛を探して警備どころじゃないらしいし」

美樹「かく言う私も探索隊に加わろうかと思ってて。あれだけ降って来たんだからまだ何処かに隠れてる筈よ」

ぬ~べ~「そんなことをしてたら日が暮れるぞ……まあ兎に角、黄昏時までには広達と合流して博麗神社にな」


美樹「はーい。じゃ、ぬ~べ~は大人のラブロマンスを満喫して来てね」

魔理沙「ラブロマンス? ふーん、まだ昼なのにお盛んなんだな」

ぬ~べ~「大人をからかうなよ~!」

早苗「鵺野さん、文さんが向こうで呼んでますよー」


                                     (つづく)

――風神の湖の畔――


諏訪氷『ゲロゲーロ』

文「まだ溶けないんですか、これ」

諏訪子「よくできてるよね」


ぬ~べ~「どもー。おや、こちらは?」

文「ああ、どうも。こちらは神です」

ぬ~べ~「! あなたが神か!」

諏訪子「ま、そういうこと」


ザッ


神奈子「その左手の中に、今鬼は入ってないんだろうね?」

神奈子「外の鬼にしろ内の鬼にしろ面倒だから神社に近づけたくないんだよ」

ぬ~べ~「ああ、ご心配なく。今はただの義手状態なんで――……こちらの方も?」

文「神ですよ」

ぬ~べ~「左様ですか……先程の太子さんといい、頭が上がらないなあ」

神奈子「ああ、聖徳道士に会ってきたのか」

諏訪子「宗教勧誘とか受けた? 早苗も一時ね、道教に改宗しちゃったのよ」

ぬ~べ~「いや、そういうのは特にはなかったかな」

神奈子「ちなみに貴方の宗派は?」

ぬ~べ~「宗教ですか? いやーまあ、はっきりコレというのは――」

ぬ~べ~「まあ普段、霊や妖怪を相手にするときは経文(これ)を唱えてますけどね」


ヒラヒラ


神奈子「白衣観音経か――つまり仏教の手先ということになるね。これで理由はできた」

ぬ~べ~「はい?」

諏訪子「仏教徒がうちの神社に対して単身で宗教戦争を仕掛けてきたという設定でひと勝負しようじゃないの。貴方の力を直に試してみたいし」

ぬ~べ~「ええっ……ちょっと、流石に弾幕ごっことはいえ神を相手にするのは畏れ多いといいますか……」

文「そうですよね。それに鵺野さんには大事な用がありまして」

文「これから彼岸に行って――最愛の恩師の方に別れを告げるところなんですよ」

文「あまり時間もございませんしね」

ぬ~べ~「……まあ、そういうことなんですよ」

ぬ~べ~「今夜の大宴会には参加するんですが。……人間界の方にいる生徒達や他の皆も心配しているだろうし」


神奈子「ふむ、そうかい。時間に追われるのも大変だねぇ」

諏訪子「それじゃあ、早くやることをやって、心置きなく幻想郷を後に出来るようにしておきなさい」

諏訪子「それから、後で――博麗神社でね」

ぬ~べ~「はい――それでは、また後ほど」


――中有の道――


文「神様に限らず、幻想郷における時間感覚というものは外界と比べものにならないでしょうね」

文「人間ならば朝日とともに目を覚まし、日が暮れれば早々と戸締りをして床につく毎日」

文「狐狸妖怪は概ねその逆を行きますがね。どうです、退屈そうに思えますか?」

ぬ~べ~「そうだな。人によりけりだろうが、意外と住めば都なのかもな」

ぬ~べ~「人にも妖怪にもちゃんと居場所が用意されている点は、外の大都会に比べると余程いい環境じゃないかな」

ぬ~べ~「妖怪にもいろいろいるが、科学技術の進歩という人間が欲望の具現化によって、善良な妖怪の居場所が失われてしまうことも往々にしてある」

ぬ~べ~「彼らを見える者にとっちゃ、そういう光景は忍びないしな」

文「――そうですか。おっと、そろそろ目的地が見えてまいりましたよ」


――三途の川――


文「それでは、ごゆっくり~。隠し撮りとかはしませんのでご安心を」




ザザアアアア……




ぬ~べ~「えっと、渡し賃は六文だったか? ここでの相場に換算するとどのくらいに……」

ぬ~べ~「……ん、俺のサイフがないぞ!?」

小町「いいからいいから、特別にタダ乗りさせてあげるって」


ザザー


小町「……ハァー……」

ぬ~べ~「何だか疲れているようで。やはり、死神の仕事は大変なのかい?」

小町「いやね、毎度サボってて映姫様(ボス)にこってりお説教されてるのさ。やれやれだ」

ぬ~べ~「……いやー、死神が仕事をサボったらダメだろう……いろいろと」

小町「今回に限っては他所でしっかり働いてたんだよ? いろいろあったからねぇ」

ぬ~べ~「ははは、すいませんね……あちこちに迷惑かけて」

小町「別に責めてるわけじゃないって。というより実のところお前さんの責任と言うわけじゃあないしね」

小町「ほら、もうじき彼岸(むこう)に着くよ――霧が晴れて人影が見えてきただろう?」

ぬ~べ~「……!!」

――――ザザァ

――ザァ


美奈子「鵺野くん」


ギイイ――ジャリ……


小町(逢うは別れの始めだが、別れもまた新たなる出逢いの始まりである)

小町(それは恰も円環のごとく生死の境を超越して永遠に循環してゆく。それが輪廻転生)

小町(それでも、たったひとつの別れに拘泥するのが生者のサガよ。ゆっくりと別離を受け入れていきな)


ぬ~べ~「先生」


ギュゥゥウウ!!


ぬ~べ~「!!?」


美奈子「私、自由になれたわ――覇鬼と判りあえることができたから」

美奈子「もう、思い悩み苦しむことは無くなったわね――私も、あなたも」

ぬ~べ~「……美奈子先生」


ザザー


小町(死相が見えていることは黙っておくか。結果的には無意味な余命宣告になるようだし)


――冥界(白玉楼)――


トントントントントントントン

ジュゥゥゥゥ

パッパッパッパッパッパッ


妖夢「あのー幽々子様」

妖夢「厨房の給仕(ゆうれい)達がいやにせわしないんですが」

妖夢「お夕飯の支度にしては少々早いですよね?」

幽々子「もうすぐ御客人が現れるの。だからご馳走を用意させているのよ」

妖夢「ああ、そうなんですか。……って、今度はどちら様が?」

幽々子「私も食べるんだけどね。おやつとして」

妖夢「ああ、そうですか……」

幽々子「だから妖夢も用意するのを手伝ってあげて頂戴」

妖夢「あ、はい。……判りました」


――人間の里――


がやがや


玉藻「遠目に見たときにはちっぽけな里だと思ったが、実際に降り立ってみると意外に広い」

玉藻「ここに暮らす人間の数はどのくらいなんです?」

藍「多からず少なからずよ。限られた土地での自給自足なのだから、大結界の成立当時と比してもさほど総数は変わっていないわ」

玉藻「なるほど確かに、近代合理主義の波から遮断された閉鎖社会なら、百年以上経過しようと極端な人口増加は考えにくい」

玉藻「むしろ、人口が増え過ぎたらそれはそれで困った問題が発生しますものね」

藍「まあね」

玉藻「――なにしろ管理者側(あなたがた)にとって、守るべきはあくまで妖怪」

玉藻「場合によっては、最適な人口を維持するために妖怪をけしかけて人間を間――」

藍「それは人里で口にしてよい発言ではないな。おまけにとんだ憶測だ」

玉藻「おっと、失礼」




ヒソヒソ


広「あっ。あれ玉藻じゃん。何かスゲー美人と喋ってるぞ」

まこと「えーと、もしかして……」

郷子「まさか……そういうカンケイの人なのかしら? やだ、美男美女って絵になるわね」

タッ


橙「藍様、玉藻様」

藍「おお、橙か――鬼達(かれら)の処遇について紫様は何と?」

橙「その点については問題ないからこちらからの手出しは無用だと」

玉藻「なるようになるというのか?」

藍「最終的に彼らの行く末を決めるのは例の人間になるということでしょう」

玉藻(一応は和解したとはいえ、いつそれを反故にするか分からない鬼など)

玉藻(ここに残して早々に立ち去るのが合理的だろうが)

玉藻(――さて、鵺野先生はどう考えるのか)

橙「ええと、それから話は変わりますが――」

橙「玉藻様、貴方の将来性を見込んでいい話を提示しようと……紫様が仰せでした」

玉藻「将来性? まるで見透かされているようでいい気はしないな」

藍「だが、聞くだけ聞くつもりだろう?」

玉藻「ええ、聞くだけはね」




ヒソヒソ


広「玉藻のやつ……子どもまで作ってたのかよ!?」

まこと「ど……どうすればいいのかな、広くん響子ちゃん」

郷子「どうするって言っても、やっぱり、そっとしておいた方がいいんじゃない?」

広「あ、もうどっか行っちまったぜ!」

まこと「このことは皆には内緒なのだ……シー」

郷子「お喋りな美樹がここにいないで良かったわね」


――地底(旧都)――


ドボドボドボドボドボドボ


覇鬼「ぷが~!!」

勇儀「おおう、いい呑みっぷりだ! ほらほら、もっと呑みねぇ!」

眠鬼「ほんと、久々に3人揃ったね。またいっぱい遊べるね!」

絶鬼「……そうだな」

針妙丸「遊ぶだけならいいのよ」

絶鬼「そうそう、遊ぶだけさ。無邪気に遊ぶだけだからこの拘束具を外してくれないか?」

勇儀「いいや外さん。お前の言葉はイマイチ信用できない」

針妙丸「でも、それなりに反省はしていると思うわ。少しだけ、緩めるくらいなら」

正邪「騙されてはいけません。こういう輩は脳ミソを取り換えない限り考えを改めないのです」

ヤマメ「貴女にも言えることだよね、それ」


覇鬼「まだまだ足りないうが~」

ヤマメ「ほいほい。やはり鬼はどこの出身の者でもたいがい酒に強いらしい」

お燐「どうもどうも~。やってるねぇ」

お空「お酒もお肴もたんと用意したわよ」 

勇儀「これは有難い。さあさあ、お前さんたちも座った座った」


お燐「いやぁ、貴方達が暴れ回ったせいでみんな大変だったんだよ」

眠鬼「えー、私はぜーんぜん暴れてないんだけど。お兄ちゃん達が勝手にやったことなのよ」

お燐「そうだね。だから、これからはお兄さん達が勝手なことをしないように貴女がちゃんと見張るんだよ」

眠鬼「うん、……まあね」

正邪(と言ってもこの鬼娘も幼稚な子どもだ。考え方がどちらに転ぶかは判らない)


チラリ


絶鬼「眠鬼――そいつらの言葉に耳を傾けるな。洗脳されるだけだ」

お空「洗脳なんてしないわよ。ちゃんと貴方達のことを受け入れてあげる」

お空「さあさ、貴方も呑みなさいよ」

絶鬼「ふん。そんなのいらないよ」


お空「この人は天邪鬼?」

針妙丸「きっとそうだと思う」


お空「じゃあ、本当はとても呑みたいのね――ほら、浴びるように呑ませてあげるわ」


ばしゃーん!!


絶鬼「……喧嘩を売っているのか」

お空「うにゅ?」

サラサラサラサラ……


萃香「酒なら無尽蔵にあるよ! ほーら浴びるように呑ませてやる」

絶鬼「! お前は……あいつの左腕に宿っていた――ゴバババババッ!?」

萃香「思う存分呑め呑め~!!」

勇儀「しけったこと言ってないで心の底から酔ってみろ! ときにはバカになったほうが楽しいもんだよ!」


ヤマメ「どこまでもつかな」

眠鬼「頑張れ~絶鬼お兄ちゃん」


お空「あれ、貴方どこかで会ったっけ?」

覇鬼「うが?」

お燐「ほら、昨日の夜に地霊殿で元気に遊んで(いろいろ壊して)行った鬼だよ」

ヤマメ「今は人間の姿に擬態しているもんね。そりゃあ、判らなくても仕方ないさ」


針妙丸「それで、貴方達はこれからどうするつもりなの?」

覇鬼「これから? もっと酒を呑むんだうが」

針妙丸「あ、いいえ……もう少し先のことについてなのだけれど」

眠鬼「んーとね、夜になったらハクレー神社ってとこに行くわ。場所は……あれ、どっち行けばいいんだっけ?」

正邪「……。ま、ここまで付き合ってやったんだから案内するのも吝かではないか」


ヤマメ(博麗神社でも恒例の宴会をやるそうだから、そこで今後のことを話し合うつもりなんだね)

ヤマメ(幻想郷に留まるのか。彼らの故郷の地獄に帰るのか。――あるいは)


――地霊殿――


パラ


さとり「……」

天子《ねぇ、何の本を読んでいるの?》

さとり「別に私が何を読もうが関係ないでしょう?」

天子《面白い?》

さとり「……。まあね。読まないと読めないから面白いのよ」

天子《それはどういう意味?》

さとり「本は感情を持たないから先読みができないわ。だから面白いの。特に心理描写が豊富な物語が好き」

天子《ああ、なるほどね》

さとり「だから黙っていてください。もうじき、貴女のお迎えが来るそうなので――リュウグウノツカイだったかしら?」

天子《うん、たぶん》


パラ


さとり「……」

天子《貴女、ここに独りで引き籠ってて楽しいの?》

さとり「……だから、静かにしていてくれませんか」

天子《嫌よ、退屈だもの》

さとり「勝手なお方ですね」

天子《――貴女、今の私の心は読めていないみたいね》

さとり「……」

天子《ならば、お話しましょう。先読みできないから楽しいわよ》

天子《本なんていつでも読めるだろうけど――この私のありがたいお話を聞ける機会はもう二度とないでしょうから》

さとり「……」

天子《いかが?》

さとり「はぁ……本当に自分本意なお方ね」


――冥界(白玉楼)――


美奈子「パクパクパクパクパクパクパクパクパクパクパクパクパクパクパクパクパクパク」


幽々子「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ」


ぬ~べ~「……」

妖夢「……」

ぬ~べ~「驚いた……美奈子先生に負けるとも劣らない食べっぷりだ」

妖夢「驚いたのはこちらのほうよ」


サァァァァァァァァァァァ


ぬ~べ~「――。あの木は……」

妖夢「あれは西行妖と言ってね――……何か気になることでも?」

ぬ~べ~「いや。気のせいなのかもしれないが」

ぬ~べ~「――綺麗な、桜だ」

妖夢「……」

幽々子「ああ、美味しかった」

妖夢「幽々子様。決着は着きましたか?」

幽々子「早食い競争じゃないのよ?」

幽々子「それに私は食いしん坊じゃないわ。まだまだ生理的な欲求が残っているだけ」


美奈子「ご馳走様でした」


幽々子「お粗末様」


ぬ~べ~「……」


幽々子「時間が許す限り、冥界を散策して行ってくださいな」

幽々子「誰も、邪魔するものなどおりませんから」


ぬ~べ~「はい。そうさせていただきます」



――――――――
――――


妖夢「……」

幽々子「どうしたの妖夢、そんな顔をして。悩み事?」

妖夢「あの後、彼らはいったいどういう形で最期の別れを迎えたのかな……と」

幽々子「出逢いのかたちも別れのかたちも人それぞれよ」

幽々子「貴女だって、そうだったでしょう?」

妖夢「……はい」


妖夢「あの、幽々子様」

幽々子「ん?」

妖夢「幽々子様は、いつか……。いえ、そんなことは……ないのでしたね」

幽々子「ええ、そんなことはないわよ」

幽々子「少なくとも――いつかは今じゃないわ」


                                    (つづく)

さっくりといいつつ結構長くなっているなー……とは思いますが

もう少しです。次は日曜日の夜の更新で

乙です、前から思ってたけど凄い東方詳しいのな… エンディングの内容まで知り尽くしているとは
もしかしてLunaシューター?

>>101 いえいえ。ルナティック以前にノーマルが……。

では投下

――博麗神社――


ざわざわざわざわ


ミスティア「チッ、チッ、チッ」

慧音「ん、何言ってるの?」

ミスティア「え? 夜雀の鳴き声だよ」

慧音「ああ、日が暮れて夜になったのをさりげなく表現したかったのか」

阿求「口で説明しないと判らない時点でさりげなくではないでしょう?」


広「いやー、人里は全制覇したってくらい歩き回ったな」

まこと「歩き過ぎてもうヘトヘトなのだ」

広「郷子は大丈夫か? 足とか痛くねーか」

響子「別に大丈夫よ。私は妖怪だし」

広「そっか」


郷子「……」


広「……あり? あんた、郷子なのか」

響子「ええ、そうだけど」

広「良かった、間違えてなかったか」

郷子「途中からわざとでしょ?」

まこと「キョウコちゃんがふたり……区別がつかないのだ」

響子「声の大きさで区別できると思うけど」

郷子「それ以前に容姿で区別できるじゃない……」

広「呼びづらいな。じゃ、郷子はキョウコ2号って呼ぶことにすっか」

郷子「何で私が2号なのよ!?」

響子「このふたりって、とても仲が良いのね」

まこと「そうそう、皆仲良しなのだー」

克也「うぃーす」


まこと「! 克也くん」

広「お前、里じゃ見なかったけどどこ行ってたんだ?」

克也「寺とか山の麓の川とかだな」

郷子「一人で?」


村紗「私たちが御供をしておりました」

克也「船長さんがいると釣りがはかどったぜ。ま、釣れた魚は川に返したんだけどな」

一輪「資源は大切にしないとね」

雲山「――コクリコクリ」


布都「なんじゃお主ら、仏教徒ならば不飲酒戒があるというのに酒宴に現れるとは」

一輪「私は肉は断ってますよ。お酒はまあ……毘沙門天代理も口にするし」

雲山「……」

村紗「ですが聖の手前、実はお忍びでの参拝なのですよ」

広「ふーん、何かめんどくさいんだな」

郷子「布都さんの方は大丈夫なんですか?」

布都「ふふ、我は道場を代表しての正式な参戦なのじゃ。何も問題は無い」

一輪「あらそう」

霊夢「……ちょっと、参戦って何よ。もう火事は懲り懲りだからここで宗教戦争とかしないでよ?」

座敷童子「(うんうん)」


まこと「あっ」

克也「ん、どうしたまこと?」

まこと「そっか。いっぱい幸せを運んで来てくれたのだ」

克也「?」


霊夢(あら、見えてるのね。この座敷童子ちゃんが見えるひとと見えないひとの違いはどこにあるのかしら)

座敷童子「♪♪」

霊夢(いっそこのまま残って欲しいんだけどなあ)

霊夢(でもこの子、鳴介さんの知り合いだそうだし……一緒に還るんでしょうね)

霊夢「あー……何だか反動が心配だわ」

こいし「大丈夫。元通り人の来ない薄汚れた妖怪神社になるだけよ、きっと」

霊夢「!? あんた今、心を読んだ?」

こいし「え?」

霊夢「何だ……ただの無意識か」

座敷童子「クスクス」

霊夢「ちょっと、笑いごとじゃないのよ」


ザッ


魔理沙「おい、霊夢が何かひとりでブツブツ言ってるぜ」

アリス「心の病じゃないの? いい医者を呼んだ方がいいんじゃないの」

美樹「いい医者なら、私達の側にもいるわよ~」

克也「お、美樹!」

郷子「遅かったじゃない。ちょっと心配してたのよ」


美樹「いやーね……ケサランパサランを探して妖怪の山から魔法の森……そして無縁塚まで捜しまわったんだけどさあ……」

にとり「ついに発見には及ばなかったよ……くそう」

美樹「やっぱ、私だけ残って明日も探そうかな!」

にとり「山も森もまだ手付かずな地域があるからね。次はもっと装備を整えて行こう!」


まこと「……美樹ちゃんの隣にいるのは誰なのだ?」

広「さーな……何だか妙に意気投合してるみてぇだが」

慧音「あれって、河童なのよ。見た目からじゃ原型が想像できないだろうけどね」

郷子「ええー?」

弥々子「おらの友達だっぺ」

克也「! いつかの巨乳河童~!?」


小鈴「すごい人だかりね」

阿求「あら、小鈴もいたの。気付かなかったわ」

小鈴「ええー、ひどいわ。最初から隣に座っていたのに……」

がやがやがやがや


美樹「これだけ人がいるとマズイわね……頑張って発言しなきゃ、私埋もれちゃいそうだわ」

魔理沙「お前だけは絶対に埋もれないと思うぜ」

霊夢「そうよ、あんたってある意味イチバン存在感あるわよ」

アリス「度胸も考え方も能力も人間離れしてるものね」

てゐ「そうよ、貴女は将来いい商い人に成れると思うわ」

メディ「私の作った毒まんじゅうを食べても貴女には耐性がありそう」

美樹「いや~、そこまで褒められるとテレるわあ~」


広「おいおい……美樹が滅茶苦茶溶け込んでるぜ。妖怪達の間に」

まこと「ぼくも美樹ちゃんを見習って溶け込むのだ」

郷子「見習わなくていいって」

克也「さっきから話が全然進んでないけど……大丈夫なんかな」

慧音「子どもがそういう心配をしなくてもいいんだよ……」


がやがやがやがや


華扇「あとどれくらい萃まるのかしら……お酒やお料理が足りるのか心配だわ」

スター「でも、皆いろいろと持ち込んでるから大丈夫じゃないの?」

ルナ「それより、私達って完全に埋もれてない?」

サニー「ちょっとちゃぶ台をひっくり返して存在感を示そうか?」

霊夢「やったら即刻レッドカードで退場処分にするからね?」

魔理沙「なー霊夢、あとどんだけ来るか分かんないし待っててもキリがないだろ」

魔理沙「さっさと始めようぜ。ほら、注いでやるよ」


トクトクトクトク


広「あ、……ども」

メディ「ねえねえ、これ食べてみてよ。下剤しか入ってないから」

広「……って、それ言われたら誰も食べないって」

こいし「はい、これお土産よ」

広「ん? ああサンキュ、……って小石じゃないかコレ」

てゐ「この人参、折角だからタダであげるわ」

広「いや、ナマでこんなに貰っても……しかもニンジンかよ……」

魔理沙「確実に何かウラがあるだろうから断った方がいいぞ」


美樹「あらぁ~、広も結構人気じゃない。どうするの郷子?」

郷子「んもーからかうな! どうするも何も、今夜で終わりなんだから……」

美樹「だから、現地妻を量産してもOKってことなの。太っ腹~」

郷子「キィィィ!」

美樹「きゃー! 郷子がお酒の席に乗じて襲って来たわ! ダメよ、私はそこの人達と違ってノーマルなんだから!」

阿求「そこって……もしかして私達のこと?」

小鈴「私達もノーマルよね? 阿求はともかく、私は普通の人間なんだもの」

ミスティア「ちょいと意味がズレてるわよ」

わいわいがやがや


霊夢「もうなし崩し的に呑んでる連中もいるし、乾杯とかいいわね」

華扇「はは、まだ萃香(しゅさいしゃ)も黒幕もぬ~べ~さんも来てないのにね」


克也「あ、言われてみればまだぬ~べ~も来てないのか。それに玉藻先生やゆきめさんも」

雲山「……」

一輪「これだけ入り乱れていると忘れちゃうね。といっても雲山も私も面識ないけどさ」

まこと「えーと、くろまくって?」

慧音「まあ、判り易く言うなら悪役のことね。今回の異変を起こした者たちのこと」

克也「ええ!? そいつらが来たら、またヤバイことになるんじゃ」

村紗「本当に危険な方はいらっしゃらないと思いますがね。――どうぞ」

布都「――おお、かたじけない。溶け込める者は来るであろうな。保護者同伴かも知れぬが」


――地底(旧都)――


お燐「おーい、生きてるかい」

絶鬼「ぐおーうごーぐおー……むにゃむにゃ……ZZZ」

お空「ああ、これはダメね。可哀想だけど、地下センターの最深部に手厚く葬ってあげましょう」

ヤマメ「いや寝てるだけでしょ、どう見ても」


萃香「勝ったね!」

勇儀「いやー面白かった。こいつ予想以上にはっちゃけたな~!」

正邪「何だかんだでお前らやっぱり兄弟だったな」

覇鬼「当然だうが」

眠鬼「もともと絶鬼お兄ちゃんも覇鬼お兄ちゃんに似てお調子者なのよね~」

針妙丸「調子に乗っているどころの乱れようじゃなかったけれどね……」


ザッ


パルスィ「姐さん……まただね……また私だけを退けものにしたんだね……妬んでやるぅ!」

お燐「……とか何とか言ってるよ」

勇儀「ああ、済まん。また忘れてた!」

パルスィ「はっきり言わないでよ~!」

勇儀「だから今からパルスィも交えて二次会だ――ほら、起きなよ」


ドンドンドンッ!


絶鬼「ZZZ……ふごふごががッ!?」

お燐「あたい達は朝まで付き合うよ」

ヤマメ「まだまだ頑張ってもらわないとね」

お空「まだ寝ぼけているの? 仕方ないわね、目覚まし代わりに――」


\鴉符『八咫烏ダイブ』/


BOMB!!!!




萃香「さてと、私達はそろそろ地上に向かうとするかい? ハシゴだ」

眠鬼「あー! そうだった、すっかり忘れてた! 早く行こ行こ~」

針妙丸「絶鬼さんは放っといていいの?」

眠鬼「大丈夫よ。それに酔ってて面倒臭いし」

正邪「そうか……。まあ、とりあえず行くとしよう」

覇鬼「……」

眠鬼「覇鬼お兄ちゃんも行くでしょ?」




覇鬼「行く。行くが――寄り道をしてからいく」


――霧の湖の畔――




速魚・わかさぎ姫「「気持ちに嘘つくようなことは辞めてYESのいい子は卒業しよう

そうすればきっと自分のことをスキになれるはずだよ

強気でいこう~♪」」




ゆきめ「……」

チルノ「何だい? センチメートリズムなツラをして」

ゆきめ「……え?」


ザッ


レミリア「感傷主義(センチメンタリスム)でしょ」


ゆきめ「誰?」

チルノ「さあ。新種の妖怪かな」

レミリア「……あんたねぇ」

フラン「あ! 覇鬼お兄様を封印していた人間と熱いヴェーゼを交わしていた雪女だわ」


ゆきめ「!? ……な、何よあんたたち! 私や先生のこと知ってるの!?」

レミリア「当然よ。私は全ての生物の運命を見通し、それを自在に操ることができる」

ゆきめ「運命を……」

咲夜「といっても、映像を視覚的に観ただけなんですよね?」

フラン「ええ」


タッ


早苗「あ、ゆきめさん発見!」

ゆきめ「早苗」

諏訪子「どうしたの? ようやく一大事が事無きを得たってのに、ちょっぴり元気ないじゃない」

ゆきめ「ううん、別にそういうわけじゃ……」

早苗「あら、そういえば鵺野さんは? 一緒にいたんじゃないんですか?」

ゆきめ「あーうん、ちょっと鵺野先生は……大事な用があってね」

ゆきめ「それに、幻想郷って女のひと多いじゃない」

早苗「多いというか、うーん。たまたま女性との遭遇率が高いだけです!」

ゆきめ「あの嫉妬妖怪じゃないけど……」

早苗「ああ~、妬いちゃうんですね。判りますよ、その気持ち」

諏訪子「……。それだけなのかな」

ゆきめ「……え?」

諏訪子「そうだ、忘れないうちにちゃんと伝えておかないとね」

諏訪子「――つららという名前の雪女の少女から、貴女に伝言を頼まれていたのよ」

ゆきめ「!! つららが……私に?」




速魚・わかさぎ姫「「迷いのある人生だっていいよ

どんな悩みだって超えてみせる

たったひとつしかない自分を好きになろう~♪」

レミリア「ちょっと、この紅魔館の主たる私が空気と化しているんだけど」

神奈子「仕方ないんじゃないの。そちらさんはその雪女の娘とは初対面だろう?」

咲夜「そうですよお嬢様。またいつか、吸血鬼や魔王や究極生命体が幻想入りしたときにメインを張ればいいんです」

フラン「? 心当たりでもあるの?」

咲夜「ええまあ、謎の異空間に取り込まれたときに……少々」


チルノ「さっきからあたいが空気だ……これはゆゆしき事態だよ!」

大妖精「むしろそのほうが妖精らしいと思うんだけど……」


美鈴「ええっと、とりあえず博麗神社に行ってからお話しませんか。もう夜も更けてきましたし」

咲夜「あら、美鈴も居たのね」


――??――


ザザザザザザザッ!!


ぬ~べ~「ッ!!」

ぬ~べ~(どうやら、離別によって感傷的な気持ちに浸っているヒマはないらしいな)

ぬ~べ~(むしろ、丁度良かったさ……この気持ちを紛らわせることができる)

ぬ~べ~(いいや――改めて心の整理が出来る)


ぬ~べ~「俺がいったい、何者なのか――それを再確認するよい機会だ」

ぬ~べ~「俺の名は地獄先生ぬ~べ~!」

ぬ~べ~「俺はこれからも美奈子先生の遺志をついで、これからも子ども達を、人々を、皆を守り通すんだ」

ぬ~べ~「これ以上ここで遊んでいるわけにはいかないのさ!! そこをどいてくれ!!」


ズズズズズズズズズズ……


芳香「どーかーなーいーよー」

芳香「毒爪『ポイズンレイズ』」


ギュゥゥゥン!!


ぬ~べ~「うおっ――!?」


ザッ!!


ぬ~べ~「くそ……!」


ジワァ


ぬ~べ~(クナイの先端に……毒が塗ってあるな……! かすり傷程度だが――)


芳香「毒爪『ポイズンマーダー』」


ジャララララ――ギュゥゥォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!


ぬ~べ~「――!」


ザザザザッ


芳香「避けるだけ?」


ぬ~べ~「闇雲に避けているわけじゃない――妖波封印!!」


フォォォォォォォォォォォォォォン


芳香「……」

ぬ~べ~「霊波封印の術の応用だ! 俺の霊力を使ってお前の動きを封じる――なるたけ傷をつけないようにな」


芳香「キズをつけない? 傷をつけない? 傷つけたくない?」

芳香「我々、戦士(キョンシー)は傷つくことなど怖くないのだ」

ぴょーんぴょーんぴょーん


ぬ~べ~(強引に突っ込んでくるか!! 痛みも何をも恐れない、中国由来の動く屍体キョンシー)

ぬ~べ~「お前はなぜ俺を狙う!」

芳香「……あれー、何でだっけ?」


ガスッ!!


ぬ~べ~「ぐはあッ!!」


ドサッ


芳香「あ、あーそうだ。命令されたからだ」

ぬ~べ~(――命令だと)

芳香「お前の秘めるチカラ、それを試してみろ、と。だから、『全力でやれ』って」


グニィィィィ!!


ぬ~べ~「うぐ……ぉ……おおっ……」

芳香「首絞めてるぞー。大丈夫かー?」

ぬ~べ~(異常だ……これほどの腕力とは……っ)


芳香「でも、押し倒したけどこのあとどうするんだ。『やれ』って何をやればいい?」

ぬ~べ~「俺に聞くなよ……。そりゃ、あれだろ……『殺せ』ってことだろ……文脈的に……」

芳香「んー? 喰べたらいいの?」

ぬ~べ~「……いや、それは……ちょっと……困るな……俺が……」

ギリギリギリギリ――ガクッ


芳香「気絶した? このまま生け捕りにすればいいのかな」


ザッ!!


陽神明「あえて“気”を絶したんだ――! 俺はこっちさ」

芳香「ええー?」


フラフラフラ


芳香「そぉーれ――毒爪『ゾンビクロー』」


ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン――ブシュゥゥゥ!!


芳香「よーし、今度こそ撃沈ー」


シュン!


陽神明「おいおい、俺は本体じゃないんだぞ?」

芳香「あれれ?」

陽神明「今の俺は、お前と同じく“不死身”だ」


シュン!!


芳香「待ーてー」

ズルッ


芳香「あらっ」


ザッ


ぬ~べ~「元の位置に戻ったぞ」

ぬ~べ~「やはりな。キョンシーはあくまで屍体――体が硬直していて関節が曲がらない」

ぬ~べ~「視点移動の激しい動きで翻弄すれば、いずれこちらの動作について来れなくなる」

ぬ~べ~「南無大慈大悲救苦救難広大霊感白衣観世音――!」


ギュルルルルル!!


芳香「うぉ……捕まった?」


ギチィィィィィィ!!


ぬ~べ~「悪いな。お前自身には何の恨みもないが――」

ぬ~べ~「――お前をこんなやり方で利用しているヤツは……」

芳香「……利用している?」

芳香「誰が? 誰を?」

ぬ~べ~「……教えてくれ」

ぬ~べ~「お前には自我があるのか」

芳香「……」

ぬ~べ~「それとも、お前は完全にその呪符を張った術者の操り人形なのか」

ぬ~べ~「俺には判らない――お前にはさっき出会ったばかりで、俺は何も知らない」

ぬ~べ~(それに、知らない方がいいのかもしれない……からな)

ぬ~べ~「前者だとしたら、俺はすぐにこの場から立ち去るさ。敢えて術者に従う理由があるということだからな」

ぬ~べ~「だが――もしも仮に、後者だったとしたら」


芳香「自我――何それ、おいしいの?」


ぬ~べ~「そうか」

ジャラン


ぬ~べ~(……常に携帯している白衣観音経、霊水晶、念珠、……その他諸々の道具)

ぬ~べ~(ここ一番では鬼の手のチカラを使ってきたが、霊能力者としての様々な術も身につけてきた)

ぬ~べ~(覇鬼達の今後のこと――勿論、その意向次第ではあろうが)


芳香「何をする気だ?」


ぬ~べ~「なるべくこの幻想郷の住人に干渉するようなことはしなくない。だが、お前をこのまま放って立ち去ることは……どうしてもできない」

ぬ~べ~「お前の屍体(からだ)を弄ぶ原因となっている、その額の御札に込められた呪力を払い除け」

ぬ~べ~「お前の魄(たましい)をその呪縛から解放する――!」

芳香「……」


ぬ~べ~(もしかすると俺は――鬼の手を卒業するべき時にあるのかもしれない)

ぬ~べ~(どう思いますか――美奈子先生)




――(それは、やめたほうがいいわ)




ぬ~べ~「!!? 誰だ! 俺の思考に……介入したというのか!?」


シュルンッ!!


ぬ~べ~「!? 無い! 無くなっている……確かにそこにあった屍体(キョンシー)が一瞬のうちに……」


パチパチパチ


青娥「まずまずの腕前でした。今後も努力を重ねれば、人間を超越することが出来るかも知れません」

ぬ~べ~「……何者だ」

青娥「『鬼を左手に封印した人間』と聞いて、一度この目で見てみたいと思ったの」


ザッ


芳香「ふっか~つ。やっぱりゾンビは永遠に不滅です!」

青娥「よしよし。早かったわね」


ぬ~べ~「……あんたか。呪いを施した術者は」

青娥「死体は死なない。ふふ、素敵でしょ?」

ぬ~べ~「何を考えているんだ。あんたがやっていることは……人の命に対する冒涜だぞ」

青娥「貴方がやっていることは、生命に対する冒涜にはならないの?」

ぬ~べ~「な……」

青娥「さっき芳香に対してしようとしたことも、霊能力を駆使して魂を成仏させるなどということも」

青娥「立派な生命への介入、自然の理に対する不当な干渉、禁忌ではありませんか。違います?」

ぬ~べ~「……それは」


ヒューン!!


ぬ~べ~「!」

芳香「んー?」

青娥「あら」




……ユラァリ




覇鬼「人間よ」

ぬ~べ~「バ……覇鬼!」


ガシッ


覇鬼「さっさと酒を呑みに行くうが。お前とも、まあその……ちゃんと話をしないといけない」

覇鬼「だから、そろそろ遊ぶのはやめて行くうが!」

ぬ~べ~「覇鬼……お前。……って、お前が言えたことか、それ」


青娥「残念だわ。もう少しお話をしたかったのだけれど」

芳香「ちょっとだけ眠くなったぞ。家に帰りたい」

青娥「そうね、そろそろ帰りましょうか。ケガしたところを、ちゃんと修復してあげないとね」


ぬ~べ~「……あんたは」

覇鬼「ん? あいつらは誰だ?」


青娥「誰かと誰かの繋げる絆(ほだ)しには様々な形があるということなの」

青娥「――貴方はいったい、どんなカタチがお好み?」

青娥「それでは、ごきげんよう」


ニコリ


ぬ~べ~「お、おい待て――」

芳香「お前達。死ぬなよぉー!」


シュルルルルルルルン!!


ぬ~べ~「!?」

覇鬼「うが!?」


――――――――
――――




シ―――――――――――ン


ぬ~べ~「……ここは、どこだ?」

覇鬼「知らん」

ぬ~べ~(さっきまでの奇妙な空間は……幻覚を見せられていたのか。それとも空間そのものをあの術者が作り出していたのか)

ぬ~べ~(今となっては確かめる術は無いが……いずれにせよ、もし真正面から闘っていたら手強い相手だったに違いない)


ぬ~べ~「……あれ、そういやお前はどうやって俺の元まで辿り着いたんだ? 異空間だったんだぞ」

覇鬼「だから知らん。お前を探していたら、いつの間にかここに来てたんだうが!」

ぬ~べ~「そうなのか……?」




ザッ!




文「鵺野さん~!! 無縁塚(こんなところ)にいたんですか!」

ぬ~べ~「射命丸くん!!」

文「まったく捜しましたよ……記事の校正をしながら様子見をしてたのに忽然と失踪しちゃうんですから」

文「ってうわ!?」

覇鬼「ウガー」

文「あややや……覇鬼さんでしたっけ。ご一緒でしたか」


文「まあ兎も角、ちゃっちゃと博麗神社に行きますよ。あちらはもう宴もたけなわでしょうけれどね」

ぬ~べ~「あ、ああ、そうだな。いかんいかん、随分と時間を食われてしまったらしい」

文「何か……あったのですか?」

覇鬼「いいから早くいくうが~」

ぬ~べ~「そうだな、諸々の話は……後にしよう」

ぬ~べ~(ふぅー……本当にいろいろあったが、ようやくこれで大団円って感じかな)


ヒュォォオオオオオオオ


ぬ~べ~(それでは――さようなら、美奈子先生)

ぬ~べ~(本当に永い間――お世話になりました)




                                    (つづく)

次回の更新で本編完結です。水曜日かあるいは木曜日に投下予定です

それでは


――霧の湖の畔――


ゆきめ「鵺野先生~~!!」


ギュウウ


ぬ~べ~「ゆ、ゆきめくん!? 待つんだっ……公衆の面前で」

ゆきめ「……先生」

ぬ~べ~「……?」

ゆきめ「……いきますよね」

ぬ~べ~「……」

ゆきめ「私達……うまくいきますよね?」

ぬ~べ~「……」

ぬ~べ~「ああ――うまくいくさ。きっとな」

ゆきめ「……先生」


カシャカシャカシャカシャカシャ


文「いやー見せつけてくれますね」


レミリア「面倒な話よね。雪女ならターゲットを氷漬けにして山に連れ込めばいいだけでしょ?」

諏訪子「まあね。本来雪女ってのはそういうモノなんだろうけど」

早苗「ゆきめさんの所の山の神様って頭がカタいんですね。今の時代もっと人間にフレンドリーじゃないと神様も信仰を集められません!」

早苗「ですよね、神奈子様」

神奈子「……そうだねぇ」

神奈子(だが本来、神とはそういうものだ。人間に恩恵をもたらすとともに、禁忌を破った時には危害を加える存在)

ゆきめ「あ、それから先生……これ」

ぬ~べ~「ん? あ、俺のサイフじゃないか!」

ゆきめ「あの鵺が持って来てくれたのよ」

ぬ~べ~「……そうか。ぬえが拾ってくれたのか――む、中に……宝石が!? あり得ん、俺のサイフなんだぞ!」

ゆきめ「んーと、何かのご利益があってっどうとかて言ってたんだけど」

ぬ~べ~「ご利益? ……そうか」

ぬ~べ~「じゃあコレは、もっとご利益のありそうな神社に奉納しておこう」

ぬ~べ~「お賽銭代わりとして――博麗神社に」




フラン「気前いいわね、あの人間」

覇鬼「うがうが」

咲夜(将来は雪女に財布を握られるのかしら)


レミリア「ほら、続きは外界(むこう)へ還ってからやりなさい。さっさと妖怪神社に行くわよ」

ぬ~べ~「あ、ああ!」


ザザァー


速魚「それじゃ、私もそろそろ行きますねー」

わかさぎ姫「ええ。速魚さん、ありがとね」

わかさぎ姫「貴女と一緒にいろんな曲を歌って……弱小妖怪な私がスポットライトを浴びたみたいで」

わかさぎ姫「楽しかったわ」

速魚「私もです」

わかさぎ姫「お元気で」

速魚「さよーならー」


――博麗神社(参道)――




\わーわーキャーキャーイヤアアアッうひゃあああっ/




玉藻「……」

藍「……」

藍「どうした? ……先に進まないのか」

玉藻「まがまがしい妖気を感じますね……」

藍「はは、そうね……」


ピューン!


霊夢「あ、藍じゃないの!」

霊夢「ということは、隣にいるのは玉藻さんね?」

玉藻「いかにも」

藍「霊夢、誰か泥酔して暴れているの?」

霊夢「違う違う。鬼の小娘が一発芸をやってるのよ」

霊夢「何か私を下着化しようとしてるらしくて、ちょっと避難してきたわけ」

藍「なるほど。……ええー」

玉藻「放置していて大丈夫なのか?」

霊夢「大丈夫よ。そろそろ萃香たちが抑え込んだ頃でしょう」

霊夢「今行けば仙人が裸踊りが見れるわよ。あの小娘ったら酒宴の場を混乱させる目的だったのかしらね」

霊夢「他の皆もストリップ状態だから、興味があったら覗きに行けばいいわ」

玉藻「いいえ結構」

藍「混乱と言っても……ほとんど女ばかりだからそういうのは大して意味がないでしょうに」


霊夢「あ、そうそう! 話は変わるけど――聞いたわよ藍!」

霊夢「あんたそこの玉藻さんと婚約したんだってね。もう子どももいるんだとか」


藍「え?」

玉藻「はい?」

霊夢「挙式はいつになるの? これがほんとの狐の嫁入りね」


藍「いやいや……ちょっと待て」

玉藻「何を言っているんだ……」


ザッ


ぬ~べ~「玉藻! それは本当か……?」

ゆきめ「いつの間にか敵の前から逃げ出したのかと思いきや……」

早苗「やることをやってたんですねぇ……」

霊夢「おめでとう。どれくらいの年の差婚なのかしら」

ぬ~べ~「おうおう~やるじゃないかお前~!」

早苗「神社婚をやるなら是非、守矢神社でどうぞ~!」

ゆきめ「神社婚って……」


藍「……おい、誰がこんな風説を流布したんだ?」

玉藻「……知りませんよ」


――――――――
――――


――博麗神社(境内)――


霊夢「ふうー、無事片付いたわね」

華扇「……」

霊夢「どうしたの? 何か元気ないじゃない?」

華扇「疲れたわ……様々な意味で……」

霊夢「そういや鬼のパンツって虎皮がスタンダードよね。あれはどうしてなのかしら?」

華扇「それは、鬼門に関係があるのよ――艮(丑寅)のイメージから……」

霊夢「へぇー」

華扇「何よ……そのしたり顔は」


ガヤガヤガヤガヤ


魔理沙「ヒドイ目にあったんだぜ……」

咲夜「どんな目に?」

魔理沙「あいつを止めようとしたらパンツにされたんだぜ……」

咲夜「へぇ……本当にそんな力があったのね」

咲夜「それで、大丈夫だったの?」

魔理沙「ああ。頭がボーッとしてきて……危うく意識を失ってパンツの付喪神になるところだった」

美鈴「でも、その様子だと助かったんですよね?」

アリス「も、もういいでしょ! 終わった……話なんだから」

魔理沙「そうだな……もう終わった話なんだ……あれはたぶん夢だったんだな」

咲夜「?」


萃香「ほら、コレやるよ」

ぬ~べ~「ん……? こ、これは……」

萃香「鬼のパンツだよ。欲しいだろ? 脱ぎたてホヤホヤだよ~」

ぬ~べ~「ま、待ってくれ……。それは何というか教師として……手を出しちゃいけない気がする」


眠鬼「んもー! また私のパンツ捕られた~!! パンツがないと力がでないよぉ~」

ぬ~べ~「……」

萃香「あの小娘のさ。ちゃんと“保護者”が保管しておきな」


ヒョイ


覇鬼「眠鬼は俺の妹。だから俺が預かるうが」

ぬ~べ~「え、お前……妹いたのか?」

レミリア「ええ、ってあんた知らなかったの?」


フラン「覇鬼お兄様は……これからどうするの?」

覇鬼「……」

眠鬼「お兄ちゃん!」

覇鬼「眠鬼?」

眠鬼「博麗霊夢とやらをパンツにするのは……あきらめるわ」

眠鬼「ここは敵が多すぎる」

霊夢「あったり前でしょ――何が哀しくてあんたに履かれなきゃいけないのよ」


眠鬼「だから、私の狙いはお前だ! 鵺野鳴介!!」


ぬ~べ~「え、俺っ!?」


眠鬼「フフフ……人間界に行けば、ここほど邪魔立てをする連中はいないはず」

眠鬼「必ずやお前をパンツにしてパワーアップしてみせるぞ! 覚悟しておけ!!」

ぬ~べ~「おいおい、何だかイマイチ緊張感のない宣戦布告だな」

阿求「ちゃんと……連れ帰ってね……」

小鈴「うぅ……」

ぬ~べ~「ああ……何というか……済みません」

覇鬼「分かったー! 眠鬼がそういうのなら」

覇鬼「俺も人間界に戻る――!」

ぬ~べ~「……覇鬼」

覇鬼「そういうわけだ――うが」

ぬ~べ~「そうかい」


霊夢(それでいいのかしらねぇ。でもまあ、これに関しては私が口出しすることではないか)


広「……でへへ……いいモン見してもらいましたぁ……ZZZ」

美樹「ううーん……広ぃ……ZZZ」

克也「おっぱい……おっぱい……おっぱい……ZZZ」

美樹「ZZZ」


文「……。とりあえず記念写真を撮っておきますか」


カシャカシャ


まこと「ぼくが眠ってる間に何があったのら?」

慧音「うん、まあ……いろいろとね」

弥々子「どうして皆また服を着るっぺ? おらのように裸でいいじゃないか」

にとり「あのねぇ……文明人は服を着るもんなんだよ?」

神奈子「おーい、そこの河童達。宴の余興だ、相撲を取れ」

にとり「! ……ラ、ラジャ!」

弥々子「おお、やっと相撲が取れるっぺか!」


\ ハッケヨーイ ノコッタノコッタ /


早苗「神奈子様は相撲の起源に関わりがあるんですよ」

ゆきめ「そうなの?」

諏訪子「もう勝負がついたね」

早苗「あの外来河童さん、驚異(胸囲)的な強さですね……!」


静葉「まあ一杯どうぞ」

ぬ~べ~「あ、どうも」

穣子「秋の味覚ですよ。どうぞご賞味くださいな」

ぬ~べ~「ああ、これはどうも」


雛「こんばんは」

ぬ~べ~「あ、どうも……こんばんは」

こいし「えんがちょえんがちょ」

雛「ふふ、えんがちょの向こう側に厄神(わたし)がいるわ。神の領域は決して侵してはならない」

雛「気をつけなさいね。――それでは」


ス――

布都「厄神は何しに来たんじゃろうな」

村紗「賑やかしじゃないですか」

雲山「……」

一輪「枯れ木も山の賑わいさ。あんまり気にしなくてもいいよ、外来人さん」

ぬ~べ~「いやぁ……妖怪の山に入ったことを諌められたのかな」

こいし「せーんせ! 気付いてない?」

ぬ~べ~「勿論気付いてるぞ。君とも結構遊んだな。――お姉さんとこれからも仲良くしろよ」

こいし「うん」

ぬ~べ~「ここの神社にも幸運をもたらしてくれたんだな」

座敷童子「にこり」

ぬ~べ~「いい歌だったぞ、お疲れさん」

速魚「まだまだですよー」


早苗「皆でカラオケ大会しましょう!」

速魚「おー」

覇鬼「俺も歌ううが~」

ミスティア「じゃ私も歌おうかな」


がやがやがやがや


正邪「ふふふ、さっきの混乱に紛れてちゃぶ台をひっくり返したぞ!」

眠鬼「そんなことで達成感得てんの?」

針妙丸「もう悪いことしちゃダメだよー」

がやがやがやがや


ぬ~べ~「……」

霊夢「賑やかでしょ?」

ぬ~べ~「ああ、いいな。こういう雰囲気は……ふぁーあ……眠くなってきたな」

霊夢「あらら、まだまだ夜は長いわよ?」

ぬ~べ~「それもそうだな。寝てしまったら、すぐにでも幻想(ゆめ)から醒めてしまいそうだ」

霊夢「起きていても、もうじき醒めちゃうことに変わりは無いけれどね」

ぬ~べ~「ああ、それもそうか」

霊夢「だからもうたいして時間は残っていないでしょうけれど――あと少しだけ時間を共有しているわけだから」


霊夢「その刹那(あいだ)は――ゆっくりしていってね」

――地底(旧都)――


パルスィ「何なのこれは……」

勇儀「ほぉー」

お燐「おおー」

ヤマメ「へぇー」

絶鬼「……」


天子《ふふ……平面化されてしまってこのザマさ》


衣玖「ちなみに要石と剣に関しては一族の御方々が回収されたので現時点で問題はありません」

お空「そう、それは良かったわ」


絶鬼「封印されたわけか」

天子《まあね》

絶鬼「リベンジはできるの? いや、するつもりなの?」

天子《そりゃあ、当然ね》

絶鬼「何の迷いもないんだな」

天子《迷わない人生ほどつまらないものはないわよ》

天子《貴方もちょっと悩みなさい。時間の猶予はあまりないわ》

絶鬼「猶予だと?」

勇儀「……」

天子《このまま忘れ去られる運命を選ぶか、それに抗うのか》

天子《よく考えて決めなさいよね――どちらを選ぶにしろ、失うものはあるでしょうけれど》

絶鬼「……」


――博麗神社の裏山――


藍「意外とあっさり提案を受け入れたものね」

玉藻「こちらにとって不利益な話ではないと判断したからですよ」

玉藻「かといって私の研究の妨げになるほどの用件ではない」

藍「勿論、ウラがあることも判っているわね?」

玉藻「ウラを理解しているほうがむしろ務まるんじゃないですか?」

藍「……お前にはウラのウラがありそうで、私は信用ならないな」

玉藻「ウラのウラさえも、あの八雲紫(だいようかい)は見越していそうではあるが」


藍「――まあ、とりあえず乾杯といこうかな」

玉藻「――ええ」




――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――
――――――――――――――




――死の森(古井戸)――




こっけこっこー




「いずなお姉様~!?」

「いずなさん、大丈夫!?」

「俺が介抱するから……お前達は今すぐ家に戻りなさい! もうじき夜も明けるな……ちゃんと登校するんだぞ」


ユサユサ


いずな「……、う~~~~~~ん……ん?」

ぬ~べ~「よっ! 朝だぞ、さっさと起きないと学校に遅刻だ」

いずな「あああっ! ……0能力者っ!!!」

いずな「あれ……私、また夢を見てたのか!? もう訳わかんなくなってきた」

ぬ~べ~「だろうな、頭を打ちどころが悪かったんじゃないか?」

ぬ~べ~「見事にのびてたぞ……古井戸の底でな」


ぬ~べ~(おそらく俺達を探し回った挙げ句、ここに辿り着いたんだろう。もうその時には異界に繋がる扉は閉じていたようだが)

いずな「……えっと……コレは夢じゃないんだよね?」

ぬ~べ~「ああ、安心しろ。これは幻想(ゆめ)じゃなく現実だ――鵺野鳴介は確かに今ここにいる」

いずな「……そっか。なら、いいんだ」

いずな「!! ちょっと、その手は……!?」

ぬ~べ~「おっと、手袋嵌めてなかったな」

いずな「どういうことだよ! それって……まさか」

ぬ~べ~「まあ、思い出話は放課後にでもゆっくりとしてやるよ」

ぬ~べ~「ああ忙しい! まずは童守小に連絡して――」


タッ


いずな「あ、待てよお~い!」


ダッ


ユラァァァァァァァァァァァァァァァァ




――この世には目には見えない闇の住人達がいる

ヤツらは時として牙を剥き、君達を襲ってくる


彼はそんなヤツらから君達を守るため

地獄の底からやって来た、正義の使者


――なのかもしれない






                               (完)

●これで一区切りとします。一話のように全体をもっと簡潔にまとめたら良かったなとは思いますが、
欲が出てかなり風呂敷を広げてしまいました。


●週末くらいにエピローグを投下して等閑になった部分を補完する予定です。


●長い間>>1の暇潰しに付き合ってくださりありがとうございました。

【EPILOGUE 1】


~~幻想郷側~~




リリーホワイト「春ですよー」




――博麗神社――


霊夢「え、今……何て?」

華扇「最近の貴女はちょっと弛み過ぎだと思うの」

華扇「有事を見越して鍛えておくにこしたことは無いわ。だから、また私が稽古をつけてあげようかなと」

龍「コクリコクリ」

霊夢「遠慮しておくわ。修行してもあんまり意味だろうし。そういうのは本人の気持ち次第なんだから」

華扇「そんな人ごとみたいに……」

霊夢「貴女にとっては人ごとなんじゃないの?」

華扇「んー……それはそうだけれど、ね」


スタッ


魔理沙「おーい、霊夢!」

霊夢「あら、魔理沙」

華扇「貴女もよくここに来ているわね」

魔理沙「仙人さんもしょっちゅう居るよな」

霊夢「で、何か用? 紅魔館の連中がついに異変を起こしたから伝えに来たとか?」

魔理沙「いや、まだそういう話は聞いてないぜ」

霊夢「じゃ、いつも通り駄弁りに来たってことか。お茶は勝手に入れて頂戴」

魔理沙「あ、そうだ。そういや、異変ってわけじゃないんだけどな」

魔理沙「ほら、あの謎の医者『Ⅹ』がまた人里に現れたらしいぜ」

霊夢「ああ、『X』さんね。小耳には挟んでいるわよ」

華扇「……『X』……? 何者なの、それ?」

魔理沙「だから医者なんだってば」

霊夢「忘れた頃に人里に現れては里人達を回診して廻るんですって、無償で」

魔理沙「町医者の手には負えないような怪我や病気でも、その『X』の手にかかると立ちどころに快復するとか」

華扇「……ふぅん」

魔理沙「でも、ヤツの正体は不明なんだ。変装が得意な上にすばしっこくてなかなか捉えられない」

霊夢「実のところはあのウサギの仕業なんじゃないの? 薬の移動販売の一環ってことで」

魔理沙「いいや、あいつじゃないぜ。あいつは前に捕まえたしな」

華扇「ちょっと気になるわね」

霊夢「別に気にするほどのことじゃないと思うけど」

霊夢「ウサギじゃないとしたら、竹林の名医がお忍びで人里まで回診に来てるのかしらね」

魔理沙「それはどうだろう。永遠亭まで行ったら治療してくれるけど、わざわざ人里にまで下りて来るかな」

霊夢「来たい理由があるんじゃない? でも正体はバレたくない――だから変装して正体不明のドクター『X』としてふるまっているわけね」

華扇(里人たちは、永遠亭が担っている製薬・販売事業に関して詳しく知らされていない)

華扇(いや、知らされない約束になっている)

華扇(だから『X』が竹林の名医だと仮定すると、あえて正体を秘匿する行為にも合点がいく)

華扇(のだけれど――本当にそれだけのことなのか。まだウラがあるような気がするわ)


ジャリ……


霊夢「ん?」

華扇「誰?」

魔理沙「なぁッ!? その仮面は――!!」


こころ(A)「赤が好き? 白が好き? 青が好き?」


コココココココココココココココココココロ

霊夢「微妙に威圧感があるわね。で、どうしたの魔理沙――あの気味の悪いお面に見覚えでも?」

魔理沙「大アリだぜ! 前に話しただろ、鬼の手異変のときに人里で暴れ回った怪人のことを」

霊夢「……ああ」

魔理沙「だが……あの野郎は私の渾身の一撃で砕け散ったはず……!」

魔理沙「ハッ! まさか、あの仮面そのものがヤツの本体だったのか!?」

霊夢「殺人鬼(かいじん)の被っていた仮面が本体――面霊気ならぬ面霊鬼ってとこかしら」

魔理沙「じゃあ、面霊気(あいつ)は今、怪人の残忍な感情に支配されて……暴走!?」

霊夢「ふー、てことは私の出番ね――『夢想封印』の威力を見せてあげるわ」


華扇「そのいわくつきの仮面をきちんと供養してもらうために巫女のもとに現れたってことなのね」

こころ(喜)「うん、その通りよ♪」


霊夢「あららら」

魔理沙「何だよ……ミイラ取りがミイラになったわけじゃないのか」

こころ(怒)「我は内なる希望から自我に目覚めたのだ!」

こころ(怒)「仮面(こやつ)に宿った思念を垣間見ようとも、感情を乱されることなどないわ!」


華扇「その仮面からは、どんな思念――持ち主に対する要望――が読み取れたというの?」


こころ(哀)「こやつの持ち主には希望がなかった。否、知らず知らずのうちに希望は失われてしまったのだ」

こころ(哀)「こやつは持ち主に対して己を大切に扱ってほしいと切に願えどもついに叶わなかった」

こころ(哀)「持ち主の負の感情に触れ続けた仮面(こやつ)は、いつしかその感情を表象する面(おもて)となった」


華扇「……妖怪変化(へんげ)と化したのね」

魔理沙「あの怪人、数十年間に渡って沢山の子供を殺めてきたらしいし」

魔理沙「それをいつも目の当たりにしてきた仮面(どうぐ)に魂が宿れば、ロクなモノにならないだろうな」

霊夢「『荒ぶれば禍をもたらし、和(な)ぎれば幸をもたらす』――だから道具は大切に扱わないといけないのよね」

霊夢「――それで、仮面(これ)はうちの神社で供養すればいいんだっけ?」

こころ(笑)「うん、そうなのよー」

魔理沙「おい急に軽いぞ」

こころ(驚)「こやつは怨恨に彩られた醜悪な自我を捨て、元の物に戻る道を選んだのだ!」


こころ(希望)「――私は、こやつの選んだ希望(みらい)を後押ししてやりたい」


カッ!


魔理沙「くっ! 希望は前に進むんだぜ」

華扇「霊夢」

霊夢「判ったわ」


霊夢「持ち主の宿怨に左右されることなく、これからは有るがままにに存在していきなさい」

霊夢「――ただの道具としてね」




                            「 希望の面と絶望の仮面 」(終)

ぬ~べ~を最初に読んだ当時、一番怖いと思ったのはAの話でした。

……次回でエピローグも終了です

どうも>>1です。ご無沙汰してます

最後なのいい感じのオチをつけようと暫く考えていましたが思いつきませんでした…

再び並行世界を扱うので、話に説得性を持たそうと超弦理論を齧りましたが理解不能でした…


…というわけで、なかなか上手くまとまらなくて暫く放置してましたが

もう難しく考えずネタに走ることにしました、すいません。投下再開します


~~幻想郷側~~




レティ「冬ですわー」




ヒュゥゥ





――人里郊外――


玉藻「上手く巷間に溶け込んでいたんですがね」

マミゾウ「化けることに関しては儂の専売特許じゃ」

マミゾウ「狐共に後れをとるわけにはいかんわ。ましてや、お前さんはまだまだ若造らしいしの」

玉藻「あなたも、狐狸妖怪の類ですね?」

マミゾウ「佐渡の二ッ岩というものじゃ。以後よろしゅう」

玉藻「佐渡の? フフ、なるほど」

マミゾウ「といっても、今となっては幻想郷の二ッ岩と名乗った方が自然だが」


ぬえ「それで、お前は何故ここにいる。とうとう外界で忘れ去られて正真正銘の幻想入りかしら?」

玉藻「まさか。非常勤の町医者といったところだ。フィールドワークを兼ねてのね」

マミゾウ「ほう。つまり、お前さんは管理者(あちら)側ということか」

ぬえ「薬師のフリをして、実態は間諜ということね?」

玉藻「フリではない」

玉藻「実態について敢えて否定はしませんよ――あなたがたも妖怪(こちら)側なんですからね」

マミゾウ「狐にしては素直な言い草じゃな。まあ、儂らとて糾弾するつもりなどはないからの」

ぬえ「うむ」


玉藻「――さて、私は内でも外でも多忙なんでね。そろそろ」

マミゾウ「まあ待て待て」

マミゾウ「挨拶代わりにお遊びに興じようじゃないか。郷に入っては郷に従え、じゃろ」

玉藻「郷に入っては、ねぇ」

ぬえ「代わりに外界の近況報告で手を打ってもいいけど?」

ぬえ「どう? かの鬼の三兄妹たちは、例の人間と共生できているの?」

玉藻「……。守秘義務というものはあるが――これだけは伝えておこうか」


玉藻「覇鬼と眠鬼はすっかり人間社会に溶け込んでいる」

玉藻「絶鬼は――もしかすると変わってきているのかも知れないな」

玉藻「鵺野先生の鬼手仏心の姿勢がヤツの思考にも影響を与えつつあることは相違ない」

ぬえ「ふぅん、そうなの」

玉藻「もっとも、鵺野先生はとうに遠方へ転任されたので――近況とは言い難いがね」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

――九州地方・某小学校――


ギュォォォォォォォォ~!!


魔物「ォォォォォオオオオオオオォォォォオオオオオオオオオオオオオオォォォ」

生徒「うわあああッ!!?」

ぬ~べ~「俺の生徒に手を出すな――――ッ!!」


スパァン!! ――ドサッ


生徒「せんせー!」

ぬ~べ~「大丈夫か?」

ぬ~べ~(次元の裂け目の出現――前に出くわしたのは……あれはまだ童守小で勤務していた頃だったな)


ピシピシピシピシピシピシピシッ!!


生徒「う、後ろーっ!!」


ギュォォォォォオオオオオオオオォォォォオオオオオオオオオォォォォ……


ぬ~べ~「!? しまっ――!」




ギュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル

……シ―ン




生徒「ぬ~どん先生ーっ!!」


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


【――??――】


シ――――――――――――――ン


ぬ~べ~「ここは……?」

ぬ~べ~「どうやら異次元空間を経由して、校庭からどこか見知らぬ空間に飛ばされてしまったらしいな」

ぬ~べ~「だが、かつて異次元の魔物と対峙した時に見たような“裏返し”の現象が俺の身体に及ぶことは無かったらしい」


《果たしてそうかな? 僕にはむしろ、見事に裏返されちゃったんじゃないかって思えるんだけど》


ぬ~べ~「! 絶鬼、何か思い当たる節でもあるのか」

《だってあの奇妙な異空間を通過してきたんだよ? そうそうまともに元の世界に無事戻って来れると思うかい?》

《僕が思うに、ここは裏の世界――これまで人間界として関知していた表の世界とは対をなす文字通りの別世界である》

《そういう可能性だって十分有り得るんじゃないかな?》

ぬ~べ~「なるほど確かに……可能性は無限にあるだろうな」

ぬ~べ~「しっかし、お前は頭が切れるなぁ。絶鬼が協力してくれると俺も心強いぞ」

《何言ってるんだ。これは協力なんかじゃないよ。覇鬼兄さんのように封印されて眠りっぱなしになったりはしないさ》

《こうやってお前たち人間の行動や心理、お前が経験する様々な出来事を理解し集積し知識として吸収することで》

《次に復活を果たした時の侵略方法の参考にしようと思ってね。今度は単純な破壊行為に終始せず、人間社会の病理に付け込んで――》

《フフ――真綿を締めるように、ジワジワと君達の世界を蝕んでやる》

ぬ~べ~「おいおい、怖いこと言うなよ」

《いやあ、君の霊力が弱まるチャンスが訪れるときが待ち遠しいよ》

ぬ~べ~「はぁー……」

ぬ~べ~「まったく、相変わらずだなーお前は。俺の目が黒いうちはそんなことはさせんぞ」

ぬ~べ~(裏の世界か……。かつて幻想郷という地に足を踏み入れたことがあったな)

ぬ~べ~(あれもある意味、裏の世界といってもいいだろう。人間界とまさしく表裏一体の、あたかも夢の中のような世界)

ぬ~べ~「それはそうと、まずはここが何処なのかを確かめないとな。いったい、どこだ?」

ぬ~べ~「見渡す限り、いや、何も見えない漆黒の闇の中だ。宇宙空間か?」

《宇宙だったら無重力だろう? 足がつくはずがない》

ぬ~べ~「……ああ、それはそうだ。とりあえず動き回ってみるか」


スタスタ……コツン


ぬ~べ~「お? ……壁があるじゃないか」


スタスタスタスタ……コンコンッ……コンコンッ


ぬ~べ~「四方に壁がある。ここは密閉された部屋の中か。だが普通の部屋ではないな」

ぬ~べ~「窓も扉も電灯も見当たらないし、壁は平らではなく曲がりくねっているぞ」

《円筒形や円錐形かというとそうでもないね。凸凹でデタラメな壁だ。規則性が感じられないよ。外から見たらどういう形をしているのだろうね》

ぬ~べ~「そして真っ暗闇の壁一面には――何やら、ごく小さな……器材か何かが敷き詰められているようだ」

ぬ~べ~「う~ん……わからんな、この空間」

ぬ~べ~「以前に強い内在霊気を持つ少女と俺の霊力が同調(シンクロ)して、海外にテレポートを繰り返す経験をしたことがあって」

ぬ~べ~「あの時は周りに聞く人がいたからなあ……何とか帰ることが出来たんだが」

《それって話の次元が違うだろう?》

ぬ~べ~「ああ、違うな。文字通り異次元に導かれたわけだから……」

《僕が思うに、ここは最先端をゆく研究施設の実験棟の内部なんじゃないかな》

《自然科学関連の書籍の挿絵でこういう特殊な空間のイメージ図を見た覚えがあるよ》

ぬ~べ~「へぇー。って、俺オカルト関連はともかくそういうお固い分野の本はあんまり読んでないだろ?」

《君が惰眠を貪ってる間も僕は寝てないんだよ》

《兄さん達に連立って人間社会に根を下ろすことに訣めた以上はね――いろんな角度から人間というモノを観察してみようと思ってさ》

《人間が書いた様々な書物に目を通すのもその一環だ》

ぬ~べ~「ふーん。勉強熱心なものだな」


ぬ~べ~(もともと知恵がある鬼だからこそ、人間というものを理解して)

ぬ~べ~(人間の味方とまではいえなくとも……)


ヴィィィィィン


ぬ~べ~「む! 下の方から妙な音が――」




パカッ

《……床扉(ハッチ)か。前後左右ばかり気にして足元が疎かになっていたね》


助手「ん?」


ぬ~べ~「……あ、どうも。お邪魔してます」

助手「……」

助手「教授~! 不審者がたぶん時空を超えて船内に不法侵入したっぽいぜ!」



\今ね、手が離せないからとりあえず拘束した上で連行してきて! 後で実験材料にするわ/



助手「了解」

ぬ~べ~「……」

助手「そこの君、悪くは扱わないから――早速、一緒に来てもらえるかな?」

ぬ~べ~「聞こえたぞ……丸っきり悪く扱うつもりだろ!」

ぬ~べ~「第一、君は中学生か? ここはどこなんだ? それと教授ってのは――」


ニュルルルルルルルルルルルルルル


ぬ~べ~「!!」

ニュルルルルルルルルルルルルルル


助手「知りたい? フフ、私は――ってあれ……消えた?」


ザッ


教授「ちゆり君、異世界人(しんにゅうしゃ)なんていないじゃない。騙したわね」


ボカッ!


助手「騙してないって~! ほら、ついさっきまでそこにいたんだって」

教授「いないじゃない!」


ボカッ! ボカッ!! プスプス……


助手「ひぇー、いたいじゃない。今回は私悪くないのに~」

教授「――あら。本当にいたんじゃない」

助手「え?」


スッ


教授「ほら、ここに置き土産があるわ。この閉鎖空間の中に本来有る筈のない代物が」

助手「……」

教授「――素敵な薔薇ね」


――――――――――
――――――


【――夜の街――】


ぬ~べ~「また次元の裂け目に飛ばされてしまったようだな」

《……。今度は別の輩の仕業かもしれないけれどね》

ぬ~べ~「別の?」

《ああー、君はアレには面識が無かったね》

ぬ~べ~「アレ?」

《独りごとだよ。気にしないで》


ガヤガヤガヤガヤ


ぬ~べ~「……まあいい。今度はゴミゴミとした大都会の一角か、さっきの妙な場所よりはまだいい」

ぬ~べ~「日本ではあるようだが――“俺の知っている日本”なのかどうか」

《早く手掛かりを探したほうがいいよ。さっきのように妙な連中に絡まれる前にね》

ぬ~べ~(――む、ごく間近に霊気を感じるな。こっちは俺の専門分野だ)


「くぅ、いつもいつも馬車馬のごとくコキ使いやがって~! やってられんわ!」

「荷物半分持ちましょうか」

「いいっていいって、こんな重いモン持ったら○○○ちゃん飛べないだろう」

「あ、そういやそうかも」

「で、今度は何の仕事受けたんだっけ? もうちょい事前に説明してくれたら心の準備もできるっちゅーに」

「うーんと確か、じげんの穴がどうこうって言ってたような」

「次元の穴? あな? アナ? そうか覗き穴かーっ」

「わっかりましたよ●●さ~ん! 今ノゾキに行きますから待っててくださーい!!」


ビューン


「ちょっと待って下さいよー、△△さんっ」


ツツ――――


ぬ~べ~(……取り憑かれているわけじゃないようだな)

ぬ~べ~(俺とゆきめも、傍から見たらあんな感じだったりするのだろうか)


シュルン――パシッ


ぬ~べ~「ん、いつの間にか左手に新聞紙が握られて……ってお前、勝手に」

《いいから読んでみなよ》

ぬ~べ~「……。分かったよ、んーと、なになに」

ぬ~べ~「ッ!! ……これは」

《ここは少し先の未来の世界だね。いや、僕達の知っている世界とは限らないか》

ぬ~べ~(参ったなあ……未来に向かって時を駆けているわけか)

ぬ~べ~(いや、これは俺の身に来たるべき未来なのかは判らない。この世界には“この時点”での俺が存在するのか否か)

ぬ~べ~(そもそも存在しない別世界であるのか。あるいは鏡の中にあるようなファンタジックな世界なのか)

ぬ~べ~(俺に知るすべは無い……何しろ、次元の裂け目をつかさどる存在の実態など解明不能だろうし)

ぬ~べ~(こちら側から、あの異次元空間に再びアクセスすることも困難な上に)

ぬ~べ~(仮にアクセスできたとしても、そこからどうやって俺が元々いた世界のあるべき時間軸に戻るのか)

ぬ~べ~(あの宇宙人のような異次元生物が親切に案内してくれるとは露ほども思えないし)

ぬ~べ~「う~む……どうしたものか」


――――――――
――――


\ギャハハハハハハハ/


ぬ~べ~「おいこら、君達。見た感じ中学生くらいだろう」

ぬ~べ~「こんな時間にこんなところをふらついていないで、早く家に帰りなさい」

「おい何かうっせーのが来たぞ」「ホームレスじゃね?」「超ウザいんですけど~!」「行こ行こ」

ぬ~べ~「あんまり帰りが遅いと親御さんも心配しているぞ。それから、遊びもほどほどにしてちゃんと勉強もするように」


スタスタスタ……


ぬ~べ~(やれやれ。小学生くらいならまだしも、中学生や高校生となると、難しい年ごろだし素直に親や教師の言うこと聞かないんだよなあ)

《……何やってるの》

ぬ~べ~「ん? 見ての通り、深夜徘徊をしている子どもたちに声かけしてるんだよ」

《馬鹿じゃないか……自分の置かれた状況を考えてみなよ》 

《自分の世界の人間のことを気に掛けるっていうのならまだしも、こんなことをして何か意味があるのかい?》

ぬ~べ~「異世界だろうが何だろうが、子どもたちのことを心配して無意味なことなんかないさ」

ぬ~べ~「むしろ、お前の口から『人間のことを気に掛ける』なんて言葉を聞ける日がくるとはな」

《……》

ぬ~べ~「口には出さずとも、あれ以来、お前だって少しずつ変わって来ているんじゃないのか?」

《ぼくは何も変わらないさ。覇鬼兄さんや眠鬼のように、人間と馴れ合って鬼の本性を忘れたりはしないよ。絶対にね》

ぬ~べ~「ははは。強情なやつだな~」


蓮子「見て、メリー。ホームレス風の成人男性がひとり笑いながら路上を闊歩しているわ」

メリー「あれは目を合わせてはいけないタイプね。行きましょう蓮子」

ぬ~べ~「っておいコラーッ! 誰がホームレスだ! 俺は小学校の教師だぞ! 教員免許もここに――」

ぬ~べ~「ってあれ……ない……」

《職員室に置いたままにしてきたんだろう。今更気付いたのかい?》

ぬ~べ~「あれ、てことは財布も? ……つまりこの世界では本当にホームレスになっちゃってるのか俺は!!」


スタスタ


ぬ~べ~「っておい、待ちなさい! そこの高校生っぽい2人組! こんなところほっつき歩いては」


蓮子「不審なホームレスが追いかけてくるわ。どうする、メリー」

メリー「警察に通報した方がいいんじゃない?」


ぬ~べ~「いや、だから怪しい者じゃないんだって……お金も身分証も持ってないけどな」

蓮子「それより、私たちはれっきとした大学生なのよ? たとえ夜回り先生のような人だとしても咎められる理由は無いわ」

ぬ~べ~「え、大学生なの? ……スマン、見た感じ童顔だったから勘違いしちゃって」

ぬ~べ~「あーでも、大学生だと言ってもだな……そのー、こういうホテル街を女の子2人で歩くってのは……そのだな……危ないというか」

蓮子「でも、幻覚(ゆめ)の中で補導されそうになるなんて初めての経験ね、メリー」

メリー「そうね。でも、不良サークルなのに今まで補導されなかったことの方が不思議かもしれない」

ぬ~べ~「不良サークル? こんな時間に活動か? いったい何のサークルなんだ」

蓮子「秘封倶楽部よ」

ぬ~べ~「何だって? ひひゅーくらぶ?」

メリー「張り巡らされた結界を暴くサークルなのよね。私には見えてしまうのよ――結界の境目が」

ぬ~べ~「結界の境目だと?」

蓮子「結界の境目――境界が見えるどころか、もう操作できる段階に入っているんじゃないの?」

ぬ~べ~「――君たち。その話、もう少し詳しく聞かせてくれないか」


【――某居酒屋――】


据置TV<昼間は現役女子高生 夜の街では妖艶なイタコ霊媒師

――その少女の名は 葉月いずな

「冥界の扉の内に何があるや 南無阿弥陀仏の念いがあるや!」

現代都市妖鬼考 霊媒師いずな

J月K日金曜日・深夜0時12分より放送開始

「ようこそ クダに招かれし迷い人――さあ あなたの話を伺いましょうか?」>


ガヤガヤ……ガヤガヤ


蓮子「ねぇ、メリー。今の番宣に出てきたの、前に何処かで遇ったような気がしない?」

メリー「そうかな? 蓮子がそう思うのならそうなのかも知れないわね」


パクパクモグモグ


ぬ~べ~「ふぉーなるほどー、そんな能力がムシャムシャ……あるとはなハフハフ」

メリー「あの……しゃべりながら話さないでくださらない?」

ぬ~べ~「あースマンスマン。腹が減ってたからな~ついつい手が止まらなくて」

蓮子「お代は私たちが払うから気にしないでいいわよ。とても興味深い手(モノ)を見せてもらったお礼よ」

ぬ~べ~「いやー、恩に着るよウサ耳蓮根くん」

蓮子「ウサミミじゃなくて宇佐見です。レンコンでもないわ」

メリー「学生に奢ってもらう無一文の霊能力教師って……」


ぬ~べ~「君らは、変わった能力の持ち主同士――いい友達なんだな」

蓮子「まあね。メリーに比べたら私の能力って平凡に思えてくるけれど」

メリー「あら、蓮子だって変な能力持ちじゃないの。それに貴女の思考回路に比べたら私の方が断然凡庸だと思うの」

ぬ~べ~(特異な“見えないチカラ”を語り合える相手――それも同年代の友達は貴重だぞ。これからもお互い仲良くな)

ぬ~べ~「で、君たちにとっては、この世界はあくまで共同幻想であって現実ではないというんだな」

蓮子「共同幻想っていう言葉の意味をちゃんと理解しているの? 言わんとしていることは伝わるけれど明らかに誤用よ?」

メリー「いいじゃないの、伝わるんだから」

ぬ~べ~「そうそう。俺には自然科学関係って教養程度の知識しかないからな。難しい話にはついていけん」

蓮子「まあいいわ。――夢だから、そのうち醒めるのよね。私たちは、いつものように」

メリー「たぶんね。また、何か物を持ち還っちゃうかもしれないけれど」

ぬ~べ~「ところで、俺はどうなるのかな? ……この経験が俺にとってもいつか醒める夢だったら都合がいいんだが」

蓮子「さあね。貴方の言う異次元生物が実在するのだとしたら、その異空間では時間も多次元である可能性は無きにしも非ずだと思うの」

蓮子「つまり多様な方向性を持った時間軸が、異空間の中で交叉していると仮定すれば――」

ぬ~べ~「うーむ、……複数の並行時空が入り乱れていて、俺は元いた世界線のある一点(時刻)から、別の世界線のある一点に飛ばされてしまったと」

メリー「そういうことなのかしら?」

蓮子「理論の飛躍でしかないけれど、通俗的なSF小説に出てきそうな表現としてはそんな感じでしょうね」

ぬ~べ~「……俺は還れないってことか。これからどうしよう……」

蓮子「……メリー、ちょっとお手洗いに――席を空けるわね」

メリー「わかったわ。いってらっしゃい」


スタスタ


ぬ~べ~「……」

メリー「……」

ぬ~べ~「ま、そういうわけだ――俺の力では残念ながら境界は操れん。ましてや君のように夢と現の境なんてな」

メリー「そういうわけって。私はできちゃうのだから仕方ないじゃない」

メリー「貴方は今、通常の3次元空間から2次元空間――例えるなら紙の表面に描かれた漫画の世界――に次元を超越して入り込んだようなもの」

メリー「その場合、3次元の世界と2次元の世界を隔てる境界は確かに存在しているわ」

メリー「物理的な意味でも精神的な意味でも――そこに境界が存在する限りは操ることが出来るの」

メリー「たとえ、異次元空間が介在していようともね」

ぬ~べ~「そうか、判った。そこまで聞けば安心だ」

メリー「え? これだけで安心しちゃうの?」

メリー「さっき遇ったばかりの見ず知らずの相手を? 全て私達の妄想かも知れないのに」

ぬ~べ~「確かに突飛な話だが、口から出まかせには思えないし」

ぬ~べ~「直感的に信用してもいいんじゃないかと思ったんだ。俺がここで君達に出会えたのも――何かの縁のように思えてくる」

《……》

メリー「そうね。縁もゆかりも、どこかであったのかしらね」

ぬ~べ~「今夜は、君たちのサークル活動に特別講師として参加させてもらうとしよう」

メリー「え? 今すぐ元の世界に帰りたいわけじゃないの?」

ぬ~べ~「これから墓でも荒らしに行きそうな不良娘たちを放っておけないさ、たとえ幻想(ゆめ)の中だとしても」

蓮子「メリー、今戻ったわよ。さて、そろそろ今夜の活動を始めるとしましょう!」

ぬ~べ~「待て待て。保護者の代わりに俺が同伴するからな」

メリー「と言ってるのよね。どうする?」

蓮子「仕方がないわね。一夜限りの特別顧問として歓待するわ」

ぬ~べ~「ああ。一夜限り、俺が君たちの先生だ――何があろうとも、君たちの安全は俺が守る」

ぬ~べ~「この左手に封ぜられし鬼の力を使ってな」




《まったく、――鬼(ひと)遣いが荒いなあ》

《      ぬ~べ~は      》




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             「 夜回り先生ぬ~べ~と秘封倶楽部の異次元談話 」(終)


                                   (おしまい)

エピローグも蛇足だったかなとは思いますが

ぬ~べ~を題材に扱うのはこれが最初で最後なんで色々書いてしまいました


誤字も自己解釈も多く、双方のそれっぽさを再現できたと思いませんが…

長々とお読みいただいた方、お疲れ様でした


それでは。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年11月12日 (水) 08:42:14   ID: uCGyXQzA

ぬーべーちゃんと帰れたんか?

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