由暉子「爽先輩?」爽「やっべ」ギュッギュ (32)

咲SS 有珠山メインです



由暉子「? ……どうされたんですか?」

爽「えっ、べつに…」

爽「どうもしないし…。うん。うん、なにが?」

由暉子「すごく慌ててるので」

爽「いや全然ッ! 慌ててねーし!」

由暉子「手で何かを潰すような動作が見えたんですけど」

爽「む、虫がさー! 飛んでてさー! 思わずこうブチッと!」

爽「いきなり窓からでっかいの入ってくんだもん! やー、びっくりだよなー!」ハハッ

由暉子「素手でやったのですか。引きます」

爽「お、おう…」

由暉子「あと、窓開いてませんよ?」

爽「……」

由暉子「それに部室……なんだか煙くさいです」


爽「………」ダラダラダラ

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由暉子「爽先輩? 汗すごいですけど…」

爽「だ、だいじょぶだって。フツーフツー…」

由暉子「顔色真っ青ですよ」

由暉子「あの、ハンカチ。汗ふきますから」フキフキ

爽「いい子…」

由暉子「やっぱり部室が煙いのが原因では?」

爽「だ、だいじょぶだって。フツーフツー…」

由暉子「いえ、普通じゃないです」

爽(やっべ…超やっべー)

爽(今日って一年は6限じゃなかったっけ。油断してたわ)

爽(タバコ吹かしてるトコ、直で見られたわけじゃないみたいだけど)

爽(かくなる上は…)ムムム


爽「そ、そーだな! やっぱ窓締め切ってると換気悪いな! 開けよう!」ガララッ

爽(強引に誤魔化すっ! これっきゃないッ)


ドタバタドタバタッ…

爽「さ、さあッ…どーだ?」

爽(証拠隠滅完了ッ!)

爽(換気したし、箱とライター回収したし、ついでにエロ本も蹴っ飛ばしてベッドの下に入れたっ!)

爽(これでもう、OKなはず…!)


由暉子「……」

由暉子「やっぱり、怪しいです」

爽「え?」

由暉子「爽先輩、動かないでください」

由暉子「私の勘が告げています…。これは、事件です!」

爽「ちょっ……ユキ?」

由暉子「煙くさい部室…。窓も開いていないのに入ってきた虫…。不可解な爽先輩…」

由暉子「無造作に転がっていた薄い本…。乱暴に蹴っ飛ばした爽先輩…」

由暉子「極めつけ! 部室に不釣合いな空き缶っ!」



爽(ぎゃあーっ! ぜんぶ見られてんじゃん!)

爽(てかあの空き缶、灰皿代わりの…。やばいやばいッ)



由暉子「爽先輩……私にはすべてお見通しです」

由暉子「これら数々の証拠が突きつける事実ッ……それは!」


由暉子「不良ですっ! 間違いありません!」バーンッ

爽(あぁ……とうとうバレちゃったかあ)

爽(真面目っ子のユキの前では、いい先輩でいたかったけどな)

爽(ま、しょーがないか。今更言い訳すんのダッセーし)


爽「ゴメン…」

由暉子「? なぜ爽先輩が謝るのですか?」

爽「へ?」

由暉子「不良はどうやら、私たちの居ぬ間に部室を土足で荒らしたようです」

由暉子「許せません。絶対に捕まえましょう!」

爽(えっとー…これって私がタバコ吸ってたんじゃないって、勘違いしてる?)

爽(やっりぃー! 儲けっ! セーフ! セエエェェェフッ!!)

爽(助かったーっ! さすがユキっ、微塵も疑ってない!)


爽「やー、ユキはいい子だなぁ」ナデナデ

由暉子「ひゃっ…。もう、撫でてる場合じゃありません」

由暉子「爽先輩もちゃんと怒ってください。不良に荒らされたんですよ」

由暉子「私たちの神聖な部室を!」プンプン

爽「怒ってる怒ってる」モミモミ

由暉子「全然怒ってるように見えないです」

由暉子「それと、なぜ胸を?」

爽「ユキはやっぱりやわらかいな!」

由暉子「……」ツネッ

爽「いたたたっ!」

爽「なんだよぅ…いつもはもっと触らせてくれんのに」

由暉子「真面目な話をしてるんです」

爽「私だって中途半端な気持ちで揉んでないよ」

爽「責任は取る」キリッ

由暉子「……」ジト

爽「ゴメン」


由暉子「…私、とても好きなんです」

由暉子「先輩たちが私を必要としてくれた、この麻雀部が」

由暉子「だから。ここが汚されたら……すごく、悲しいんです…」

爽「………」

爽(そーいやユキ、中学でイジメられてたっけ)

爽(本人は、全然つらくねーって言ってたけど)

爽(そもそもイジメだとも気づいてなかったんだけど)

爽(べつに強がりじゃなくて本心だと思うけど)

爽(…でも、それと独りで寂しくないってのは、違うよな)


爽「……わかった」

由暉子「え…?」

爽「部室の件は、私に任せとけ」

爽「私がちゃんと……ユキの大事なもの、守ってやる」

由暉子「……」ポケー

由暉子「…はい。よろしくお願いします、爽先輩」クスリ

爽「ああ」

由暉子「じゃあ私、帰りますね。今日は用事があって部活出れないので」

爽「…あ、それでもしかして先に伝えにきたのか?」

由暉子「はい。おかげで思わぬ事件に遭遇しましたけど」

由暉子「でも爽先輩に会えたので。だいじょうぶだと思います」



由暉子「爽先輩はいつも……カッコいいですし!」

…………
……


爽「………」スパー

爽「…はぁ~。どうすっかなー」プカプカ

爽「誤魔化せたけど…限界あるよな」

爽「ユキがいくら鈍くっても一度尻尾が見えたら、いろんなトコに目端がいくだろーし」

爽「やっぱ時間の問題だよな」ギュッギュ


爽「……」シュボッ

爽「スフー…」

-唐突な回想-

ユキが有珠山高校にくる前。
まだ、中学生のゲストだった頃のこと。

あの頃は、部室で当たり前に煙吸ってたな。
ユキが部外者だから、そういうのを見せないようにしてただけで。


べつに、不良のつもりはないんだ。

喫煙が悪いことだとも思ってないし、たまに酒だって持ち込んで飲んでた。
見つかんなきゃいいだろ、ぐらいの感覚。

でもヤバイ薬みたいな、そういうのには手を出そうなんて思わない。
つーかクスリとかハーブやるヤツってただのバカだろ。

ケンカなんて小学生以来したことないしな。
こっそりバイトして、遊んで、目をつけられない程度に勉強して。

普通だよ。いい子じゃないだけ。
私たちのほとんどは、カトリック系学校に通っててもイエス様を信じてない。



じゃあなんでユキを麻雀部に入れたんだ、ってなるよな。

暇だったから。

理由はそんだけ。
麻雀部だと思って入ったら雀卓もなくって、先輩が売り飛ばしたって話聞いたら、
急にどうでもよくなった。

そんな日常がダラダラ続いて、ちょっと刺激が欲しかったんだ。


ユキを助けたかったわけでも、
カッコいい先輩になりたかったわけでも、ない。

そんで、いつもみたいに賭けポーカーしながら、そういう話になった。


揺杏「なあ、爽」

爽「んー?」

揺杏「あのさ。話があんだけど」

爽「金なら貸さないよ」

揺杏「違うって。…あのさ、うちのちゅーがくせーだけど」

爽「ユキがどうかした?」

揺杏「爽さぁ。いつまでやるわけ?」

爽「なにが?」

揺杏「だから…こういう茶番だよ」

揺杏「隠す必要なくねー? つか、イチイチ証拠隠すのめんどいんだけど」

揺杏「ユキがくる時間になったらタバコと酒隠して、換気して、床掃除して、テーブル拭いて…」

揺杏「私らメイドかよ。なんで年下相手におもてなししてんだ」

揺杏「べつに言ったって引かれねーって。成香だってあっさり染まったじゃん」

爽「ちかちゃん怖いです…ってな!」

揺杏「そーそー! チカはあの見た目でエロ本マニアだもんなー」

爽「一緒に読も!って膝に座らされた成香、泣いてたな!」

揺杏「泣くっしょ。こえーよ、あれ。ハァハァ息荒えし! 犯される!って思うわww」

爽「wwwww」

揺杏「wwwwww」


揺杏「やべ、脱線してるわ。だからさ、チカもストレス堪ってんの」

揺杏「コレクション半分近く焚書されるし、猥談もできねーって」

ガチャッ

誓子「あ、二人とも早いわね。もういたんだ」

爽「おー。成香は?」

誓子「掃除当番。すぐ来るって」

誓子「…その様子だと、揺杏話したみたいね」

揺杏「チカがエロ本処分されて涙目、まで話した」

爽「プッ」

誓子「ちょっと!」


誓子「…あー。いいや。で? 爽、どうするのよ」

誓子「ユキちゃん、もう有珠山受かったじゃない。来月には入学してくる。時間ないよ?」

爽「今のままでいいじゃん」

爽「バレないバレない。今までバレなかったくらいなんだからさ」

爽「私たちの隠蔽スキルを信じろ!」


誓子「…はぁ~。重症ね、これ」

爽「ていうかそろそろ時間か。ほらタバコ消せ。換気、換気」ガラッ ビュオーーッ

揺杏「さっむッ!」

誓子「さっむッ!」

爽「さっむッ!」


揺杏「…マジで? 爽、来年もこんな風雪に耐えんの?」

誓子「真冬でも窓開けるの? 正気?」

爽「コート着れば楽勝だから」カタカタ

揺杏「なんで極寒の中でタバコ吸わなきゃなんねーの…なんの罰ゲームだよ…」

爽「嫌なら吸わなきゃいいだろ」

揺杏「……爽が吸ってるから私も吸ってるだけなのに…」

爽「ん、なに?」

揺杏「…なんでもねー」プイッ

誓子「あぁもうッ、寒すぎ! ぜんっぜん割りに合わない!」ブルブル

誓子「爽! 今度買い物付き合ってよ! 防寒着買うから!」

爽「いいよ。でもせっかく街に出るなら映画も観よーぜ! 封切りしたばっかの話題作観てー!」

誓子「あったり前でしょ! 貴重な外出日使うんだから!」

誓子「午前中に映画観たらランチ食べて、それから服見に行って、カラオケしてボーリングして」

誓子「ベンチで夜景観ながら晩御飯食べて、寒くないように手を繋いで帰るの!」

爽「いいね、いいね」

誓子「待ち合わせは駅前に朝十時!」

爽「待ち合わせって……一緒に行けばよくねー?」

誓子「バカ! そういうことじゃないの。ムードが大事なの!」

爽「そっか? まぁチカがそうしたいんならいいけど」


誓子「…よしッ」グッ!

揺杏「チカ、上手くやったねー?」

誓子「な、なんのことかなっ?///」

爽「じゃ、そろそろ閉めるぞー」ガラガラ

揺杏「あとはファブリーズ撒いて、っと」シュッシュッ

誓子「あっ、ユキちゃんきた! 校門のとこ……あはは、走ってる走ってる」

爽「あんな急がなくてもいいのにな!」

揺杏「証拠隠滅ずみだし、もーいつきても平気だけどー」


ガッチャッ

成香「肺炎怖いです…」スッパァーー モクモクモク…


爽・揺杏・誓子「………」


爽「け、消せ! 消せーーーーーッ!!」


モッカイマドアケロ! サッムッ! ナルカタバコ!タバコケシテ! コワイデス!

ユキチャン、モーキチャウヨ! ユキ、ハシルナーッ! ハシンナクテイイ!


…………
……

外見改造が上手くいったのか、イジメはなくなったらしい。

でも、それは私たちがいたからじゃなく、ユキが自分で解決した問題だ。

高校入学からはそういう場面に出くわしたことはない。
たまに漏れ聞くユキの一年生での立場は、なかなかになかなかだ。


真屋さんって可愛いよね。アイドルみたいだよね。おもちだよね。揉みたいよね。

麻雀でインターハイ出るって。すごい。可愛い。舐めたい。

でも、ちょっと中二病入ってるよね。


概ね正解。


『爽先輩はいつも……カッコいいですし!』

ズキッ…

爽「……ユキ」

爽「ユキにとっては、ここは大事な場所だもんな」

爽「私はさあ。おまえが思ってるほどカッコいい先輩じゃないんだよ」

爽「そんな幻想は……もうお終いにしよう」

揺杏「ん? おっ、爽…」スフー

爽「没収」

揺杏「うぇ? え…なんで?」

爽「部室でタバコなんて言語道断」ギュッギュ

揺杏「ちょっ…! なにしてんの!」

誓子「もったいない…」

揺杏「まだ火つけたばっかなんですけど」

爽「チカ、揺杏…。私、決めたよ」


爽「今後、有珠山高校麻雀部は、タバコ・飲酒・エロを禁ず!」バーンッ


揺杏「…は?」

誓子「えっ」

揺杏「なにいきなり。どした?」

爽「実はユキにバレかけた」

揺杏「マジで?」

爽「うん。でさ。もういっそ全面禁止にしようと思って」

爽「タバコも酒も、もともとは暇潰しだし、ちゃんと麻雀部として活動するならいらないさ!」

爽「エロ本を嗜む女子高生ってのはそもそもおかしーし」

誓子「ど、動画はっ? 動画はおやつに入りますか!?」アタフタ

爽「アウト! ていうか余計やべー」

誓子「そんな…!」ガクッ

爽「隠し通すのは、もう無理だと思うんだ」

爽「でも、私一人がやめても意味ないから。これを機にみんなでやめるってことで」

揺杏「…べつに私らニコ中ってわけじゃないけどさ。ホントにやめれんの?」

揺杏「ある程度習慣になってると禁煙してからがつらいって言うじゃん」

揺杏「そりゃあユキは真面目だから、裏切られた!って怒ると思うけどさー」

揺杏「でも、絶交したりはしないんじゃね?」

爽「だな。ユキはたぶん許す」

爽「聖書の一句でも詠んで説教しながら、許すよ」

爽「でも、だからって悲しくないわけじゃない」



爽「ユキのカッコいい先輩のままでいるか、幻滅させて傷つけちまうかでいったら……」

爽「私はユキを悲しませたくないんだ」

揺杏「結局、爽はユキのために自分を変えるってわけだ…」

誓子「嫉妬してる?」

揺杏「べっつにー。私、負けたとは思ってないし」

揺杏「爽とは、私とチカのほうが全然付き合い長いんだし。幼稚園ンときから一緒なんだから」

揺杏「外面取り繕ったってそのうちボロが出るに決まってるよー」

誓子「そうかなぁ。私はけっこう爽マジだと思うけど」

誓子「最初ユキちゃんに、うちに来いって言ったのも爽だもん」

誓子「幻滅されたくないなんて…爽の口から聴くなんてね」

揺杏「……あんなこと、私には言ってくれなかったのにさ」

揺杏「ちっくしょ」グス…

誓子「……」ナデナデ

誓子「あはっ。慎重差あるから、あまり格好つかないわね」

揺杏「どーせデカ女だよ、私は…」

誓子「子供の頃は私よりチビで可愛かったのになぁ」

誓子「……いつの間にかみぃんな、おっきくなっちゃったね」

由暉子「えっ……もう解決したんですか!?」

爽「ああ。もはや奴らが部室に現れることはない…」

爽「しかしユキよ、この事件には有珠山高校の深い闇が関わってる……訊くなよ、絶対訊くなよ?」

由暉子「ゴクリです」

由暉子「さすが爽先輩です。昨日の今日で解決されてしまうなんて」

由暉子「私、先輩の名探偵ぶりに感服しました!」キラキラ

爽「いいね、いいね」

爽「惚れ直していいぞ!」

由暉子「もう惚れてますから、もっと好きになりました」

爽「いいね……うん?」

爽「ユ、ユキ…。いまなんて…?」



由暉子「有珠山高校の《闇》……暗部……いったい何者?」ムムム


爽「あ、中二スイッチ入っちゃった」

爽「…なあ、ユキ」

由暉子「はい? なんでしょう?」

爽「インターハイ終わったらさ。……遊園地に行かないか?」

由暉子「遊園地?」

爽「せっかく東京に行くんだから、行ってみたいだろ。ネズミーランド」

由暉子「行きたいです! あ、でも…時間あるでしょうか」

爽「なんとかなるさ。なんなら最終日の夜、抜け出してもいい」

由暉子「夜から?」

爽「ああ。限られた時間でどれに乗るか悩みまくって、ナイトパレードに慌てて飛んでって…」


爽「きっと楽しいぞ!」


由暉子「……はい!」




カンッ!

もし有珠山の風紀がちょい乱れてたら、的な感じでやってみました

読んでくれた方ありがとうございました

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