捨て子「……」 (19)

旅人「部屋、空いてるかな?」

女将「ええ、あまりお客様が来ないものでして」

旅人「そうなのかい? すごく風情のある旅館なのに」

女将「お客様はあれを知らずにこの村へ?」

旅人「あれ?」

女将「立ち入り禁止の山があるのですよ、ほら、あの山です」

旅人「見事な山だが……凶暴な獣でも?」

女将「獣ならまだしも……厄介な事に、人の子ですよ」

旅人「人の子?」

女将「昔あの山に捨てられた子供が、どういう訳か生き延びたようで」

旅人「ほう」

女将「今ではほぼ野生化して、あの山に住み着いているのですよ」

旅人「野生児って訳か」

女将「はい、あの山に入ると、持っている物を奪われるそうです」

女将「火も自分で起こせるみたいで、たまに村に下りてきて土鍋やらを盗んでいくんです」

旅人「殺されはしないのかい?」

女将「死人は聞いておりませんが、怪我を受けた者は何人もいますね」

旅人「へえ、珍しい話だね」

女将「今泊まっていられるのは、刀を持った男の方ですね」

旅人(侍か、武者修行にはもってこいな村だもんな)

女将「お客様は何故この辺鄙な村へ?」

旅人「……」

女将「あ、失礼いたしました。余計な事を……」

旅人「いや、いいさ。それより、部屋を案内してもらいたいな」

女将「はい」

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捨て子(火が付きにくい……今日は湿度が高いな)ゴリゴリ

捨て子(時間がかかりそうだ)

捨て子(やっと付いた。後は乾燥させた枝を……)フー

捨て子(これでしばらくは持つな)

捨て子(……お腹空いた)


捨て子(いた、鹿が一頭。番は居ない。あのサイズなら棍棒で一発だ)

捨て子(この道なら水を飲みに行くんだろう)ザッ

捨て子(……やっと来た)

捨て子(! 罠にかかった! つるが引きちぎられる前に!)ダッ

捨て子「フッ!!」ガツン!!

捨て子「よし、脳震盪起こしてる……」ズシャッ

捨て子(喉切り裂いて……よし、死んだ。運ぼう)

捨て子(ふぅ、重かった)ドサッ

捨て子(脚を縛って、木に吊るして)

捨て子(人間が持ってたワキザシで腹掻っ捌いて、内臓出して)グチュグチュ

捨て子(水で洗って……肝臓と心臓は先に喰っておくか)ガツガツ

捨て子(……!! ようやく頭落とせた……舌抜いて、角は矢にしよう)

捨て子(脚から肉と皮の境目に刃を入れて、皮剥いで)スッ

捨て子(終わった。部位ごとに分けて)ゴリゴリ

捨て子(今日は肩の部分を食べて、残りは燻して貯蓄にするか)

捨て子(うまい)ガツガツ


捨て子(……よし、また貯蓄が増えた)

捨て子(果物ときのこ採りに行こう)

捨て子「あ、蛇だ」グサッ

捨て子(こいつも後で燻しておこう。頭だけ先に落としてっと)グチャ

捨て子(……よし、回収も終わったし、そろそろ戻ろうかな)


捨て子(皮も鞣し終った。冬が来る前にもっと貯蓄増やさないと……)

捨て子(何回目の冬だろう)

捨て子(ボクが捨てられたのが……いつだったかな)

捨て子(……どうでも良いか、そんなこと)


捨て子(寝よう)

捨て子(朝だ、何しよう)ガツガツ

捨て子(竹でも切ろうかな)

捨て子(……ふぅ、今日はこのくらいでいいか)ドサッ

捨て子(オノ、そろそろヤバいな。また取りに行かないと)

捨て子(喉乾いた……水飲みに行こう)

捨て子(うまい)ゴクゴク

捨て子「――!!」

捨て子(熊の足跡、新しいし匂いもまだ消えてない)ダッ

捨て子(熊はヤバい、早く住処に戻らないと)ザザザッ

捨て子(困ったな、近くに現れたんだったら、そう簡単に出歩けないぞ)

捨て子(燻したの使うしかないか)

捨て子(湧水のある所で鹿捌いたからな、しばらくは別の湧水を使おう)

捨て子(岩と竹でしっかり防いでるけど、近づかれたら耐えられないな)

捨て子(とりあえず、火を焚いて煙を出しておこう)パチパチ……

捨て子(この山で一番強いのは熊だ)

捨て子(それに、猪も厄介だ。昔ほんの小さな子供を狩ろうとしたら、返り討ちにあった)

捨て子(もう少し大きな個体なら、太ももが抉り取られてただろうな)

捨て子(食べて寝よう、余計な体力を使いたくない)


ザアァァァァ……

女将「生憎の雨ですね」

旅人「そうだね、でも私は雨の音は好きかな」

旅人「目を閉じて、雨音を聞く。それだけで、心が豊かになる」

女将「……変わっていますね」クス

旅人「よく言われるよ……あ、私がここに来た理由だけど、大した事じゃないよ」

旅人「人の汚い欲望から、逃げて来たんだ」

女将「と言いますと?」

旅人「ある日耐えられなくなってね。周りの人間は、自分の地位しか考えていない」

女将「もしかして、お客様はお偉いさんなのですか?」

旅人「なに、今はただの詩人さ」

女将「そうですか……あ、今日の献立はですね……」

旅人(山の子……雨が降っているが、どうしているんだろう?)

捨て子(運が良かった。雨が降ってくれた)

捨て子「!」クルッ

侍「ほう、この距離で気付くか」

捨て子「ガルルルル……」

侍「自分は村の者から依頼を受け、貴殿を成敗しに来た」

捨て子「……」

侍「手合せ願おうか……と言っても、言葉は分からんか」

捨て子(雨のせいで、あいつの匂いが分からなかった)

捨て子(あいつの持ってるの、ワキザシよりもさらに大きい……カタナ、って言うんだっけ)

捨て子(当たったら多分死ぬ)

捨て子(でも、この山の動物たちに比べれば、大した事はない)ダッ

捨て子(勝てない相手には逃げる、これが正しい)

侍(速い!)

侍「待て!」

侍「……く、見失ったか。何と言う身体能力」

侍(迷う前に戻るとするか。次は絶対に仕留める!)ザッ

捨て子(面倒だな、あの人間)

捨て子(多分、またやってくるだろうなぁ)

捨て子(……罠仕掛けるか)

捨て子(……最近寒くなってきたな、毛皮もっと集めないと)

捨て子(……)





旅人「おや?」

住民「いい加減、あいつをどうにかしねぇと! あいつが居るせいで、山菜やらきのこやらが取れねえ!」

住民2「でもよう、どうやって狩るんだい? あの腕の立つ流浪の剣豪でも駄目だったんだろ?」

住民「そりゃあいつは野人。獣に近いとはいえ人間だよ」

住民「以前脇差し盗まれた奴いただろ、なら刀の危なさも分かるはずだ」

住民2「近づいただけで、あっという間に逃げたんだってなぁ」

住民「チッ、どうすりゃいいんだよ……」

住民2「あ、そういや昨日すごい雷だったよな」

住民「ああ、山の方に落ちたみたいだが」

住民2「もしかしたら当たってるかもなぁ」

住民「だと良いがねえ……」

ロリなのかショタなのか

ボクだけじゃまだ何とも‥‥

捨て子(どこかに雷が落ちたみたいだ)

捨て子(晴れてるし、罠でも仕掛けておこうかな)

捨て子(よし、完了。竹切りに行こう)ザッ

捨て子(……ふぅ、今日はこのくらいでいいか。半分は削って槍にしようかな)ピクッ

捨て子(何か近づいてくる)バッ


旅人「やあ、初めまして」ニコ

旅人「言葉は分かるかな?」

捨て子(人間……この辺りの服装じゃない)バッ

捨て子(何か役立つものを持ってるかも)ドンッ

旅人「うおっ!」

捨て子「……?」ペラ

捨て子(何これ、人間が来てる奴じゃない……つるつるしてて、薄い)

捨て子(食べるものじゃなさそう)

旅人「あぁ、気になるかい? それは紙って言うんだ」

捨て子「カミ?」

旅人「! やはり会話は出来るのか」

捨て子「……」

旅人「私はこの村を訪れてね、君の話を聞いたんだ」

旅人「君の事が知りたい、教えてくれないか?」

捨て子「……」

旅人「少しだけでいいからさ」

捨て子「別に話す事なんてない」

捨て子「ボクは生きてきた。ただそれだけ」

旅人「……どうやって?」

捨て子「よく覚えてない」

捨て子「でも、ボクはある日「人間」から「獣」になった」

捨て子「捨てられて、初めて食べた肉は怪我をしたウサギだった」

捨て子「石で殴って殺して、肉に喰らいついた」

捨て子「まだ暖かくて、柔らかかったのは覚えてる」

捨て子「それから、住処を作って、火を起こして、山に来る人間の物を奪って、動物を殺して」

捨て子「そうやって生きてきた。それだけ……別に話す事なんてない」

旅人「そうか……ありがとう、貴重な事を聞けたよ」

捨て子「このカミは何に使うの?」

旅人「ものを書く時に使うんだよ」

捨て子「カク……?」

旅人「分かんないか、こうして」サッ

捨て子「……それで?」

旅人「それだけ」

捨て子「そんなもの、生きる役に立たない」

旅人「はは、それもそうか」

捨て子「ワキザシとか持ってないの?」

旅人「生憎私は詩人でね、物騒なものは持ってないよ」

捨て子「シジン?」

旅人「言葉って言うのは、心を豊かにしてくれるものなんだ」

捨て子「心が豊かになっても、それで肉が喰える訳じゃない」

旅人「まあそうだね、暮らしに余裕が出来たら、多分君を癒してくれるよ」

捨て子「……ボクは獣だ。癒しなんていらない」

旅人「そうか……でも、君はいつか人に戻れる時が来るさ。僕には分かる」

捨て子「……ここに来る人間は、すぐ逃げて行った」

捨て子「どうしてお前は逃げないの?」

旅人「私は死んでも心残りは無いからね」

捨て子「……」

旅人「――ふぅ、もうこんな時間か。少し話し過ぎてしまったね。私はもう戻るよ」

旅人「……また来てもいいかい?」

捨て子「……」ザッ

旅人(思ったより、人間としての心が残ってるみたいだな)

旅人(会話は出来る。人を襲うのも悪意があっての事じゃない)

旅人(そういう意味では、誰よりも純粋な子なのかもしれないな)

旅人「ふむ、村の人達は、少し誤解しているな」

旅人(食べ物を渡す代わりに山菜を取ってくれ、みたいな事も多分やってくれるだろう)

旅人(……でも、少し不穏な空気だな。嫌な予感がする)


捨て子(あの人間、変な事言ってたな)

捨て子(助け合いが大切……)

捨て子(そんな事は知ってる)

捨て子(でも、ボクは独りだ。もう助けあう人なんて居ない)ピクッ

捨て子(すぐ近くに変な匂いがする!)

侍「また会ったな。今度は逃がさんぞ」ザッ

捨て子「……」

捨て子(考えすぎて、警戒が緩んでた……)

侍「この洞穴を根城にしていたのか……逃げ場は無い」スッ

捨て子「ヴヴ……!!」

侍「では、行くぞ……!?」

猪「フゴオォ……」ノソノソ

捨て子(猪だ!)

侍(猪か。やられる前に動く!)スッ

捨て子(そんなんで勝てるわけない!)

猪「」バッ

侍「な、上に飛ん……!?」ドン

捨て子「ああぁっ!!」ベキッ

侍「……!?」

捨て子「ここまで、来れ、ば、安心かな……」ゼェゼェ

捨て子(あの人間は、猪の跳躍力をなめすぎだ)

捨て子(飛び蹴りを左肩にもらった……折れてるかも)

捨て子(何でボクはあいつを助けたんだろう)

捨て子「あの人間と話したせいだ……きっと」

捨て子(少し休もう……)ドサ


旅人「どうも……良い温泉だね」

侍「ああ、確かに……」

旅人「あなたが剣豪の侍さんだね」

侍「貴殿は……ただものではないな、雰囲気が読めぬ」

旅人「今はただの詩人さ」

侍「そうか……情けない話だが、山の子と手合せに行ったのだが、猪が乱入してきてな」

旅人「ほう」

侍「危うく襲われる所だったが、山の子が自分を庇ったのだよ」

旅人「!」

侍「人に危害を与えるものが、殺しに来ている敵を庇うだろうか?」

旅人「実は私も会いに行ってね、少し話をしたよ。どうも語弊があるらしいね」

侍「ふむ……どうしたものか」ザバッ




村長「遠い所からありがとうございます」ペコリ

忍A「いえ……仕事はこなしますから」

忍B(あの団子うまそう)

村長「ありがたい……さっそくだが、お願いしてもよろしいかな?」

忍「承った」シュバッ


旅人「あの黒い四人は……忍、だったか」

侍「ああ、身体能力に優れ、飛び道具の扱いに長けるそうだ……山の子を狩る気か」

旅人「……どうする?」

侍「あの童には、一度話をしたい……行くか」

旅人「ああ」

捨て子(何かが走ってる……あの方角からだ)

捨て子(何だあの黒い奴ら……?)

忍A「標的確認」

忍D「聞いてたより小さいのう」ゴキゴキ

忍A「行くぞ」ブンッ

忍B「あいよ」ブンッ

捨て子「ぐっ!!」

捨て子(何だこの黒いの、硬くて重い!)

捨て子(こいつらは敵だ!)バッ

忍B「手裏剣とクナイ刺さっててあの身軽さか。確かに面倒だな」ダダッ

忍A「常に奴の逃げ場を無くすように投げろ、持ってる獲物は脇差しだけだ」

忍D「どうやら手負いのようだな、我々なら十分倒せる」

捨て子(くそ、あいつらそこそこ速い。それに飛び道具持ってる)ザッ

捨て子(身体の所々から血が出てる。ずっと動くのは避けたいな)ダンッ

捨て子(上から逃げよう)シュルッ

忍A「木に登るか! 悪い判断では無いが」ブン

忍D「そこだ」ブン

捨て子「チッ!」キン

捨て子(簡単には登らせてくれないか……囲まれた)

捨て子(このままじゃ殺される)

捨て子(……でも、そんなの関係無い)ギロ

捨て子(生きるか死ぬか。この山ではそれが絶対のルール。ボクはそうやって生きてきた)

捨て子「」ダッ

忍A「逃がすな!」ブンッ

忍D「ふん!」ゴッ

捨て子「……!!」

忍B(分胴を受けても怯まずに走るのか)ダッ

捨て子「ふっ!」ブン

忍B「なっ!?」グサッ

忍A(持ってた脇差しを投げた……逃げ切るつもりか)

忍D「ぬぅ……速度が上がった、このままでは逃げられるぞ」

忍A「問題無い」

捨て子(……!! 傷口が開いてきた)ズキ

忍C(お、来た来た)パラパラ

捨て子(チッ、前にもう一人……)ダッ

捨て子「!? ぐっ……ああぁぁぁ!!」グサッ

忍C「うわ、痛そ……まぁ俺がやったんだけど」

捨て子「ウゥ……」ググッ

忍A「無理だ、素足に巻き菱が刺さった……ろくに動けまい」

忍A「覚悟」チャキッ

しえん

忍Dから溢れるローブシン臭

捨て子(……くそ、これまでか)

ズン

忍A「……な、あれは!」

ズン ズン

熊「……」ヌッ

忍C「く、熊!?」ダッ

忍A「おい、急に背中を見せるな!」

熊「……」ドッドッドッドッ

忍C(嘘だ、速、え、もう、後ろに――)

ドゴッ

「忍C……こ、こっちに来るな!」

グチャ

「ひ、ひぃいぃいぃ!」

バァンッ!


ガツガツ……

熊「……」

捨て子「……」

熊「ガゥ」プイッ

ズン……ズン……

捨て子(満腹になったか……)

捨て子(まぁ、見逃されても、もう死ぬんだろうけど)

旅人「おい、山の子!」ダッ

侍「大丈夫か!?」ガシ

旅人(この出血量じゃ……もうじき限界が来るか)

捨て子「……人間、お願いがある、んだ」ゼェゼェ

捨て子「……ボクが死んだら、死体を、あの洞穴に埋めて、ほしいんだ」

捨て子「ボクの兄ちゃんも、そこで死んだから……」

旅人(捨てられた子供は一人じゃなかったのか!)

侍「ああ、約束する! おい山の子、何故あの時自分を助けたんだ!?」

捨て子「分かんないよ……」

捨て子「でも、心のどこかで、ボクは人間になりたかったのかも……お前の話を聞いたせいかな」

旅人「大丈夫だ、君は立派な人間だよ」ギュッ

捨て子「そっか……ああ、もう限界かも」

捨て子(視界の隅が、じわじわ黒くなってきた……これが、死ぬって事なのかな)

侍「名前……そうだ、貴殿の名前は!」

捨て子「ボクの名前は……捨て子、だ、よ……」スゥ

侍「おい、捨て子……?」ユサユサ

旅人「……くっ!」

侍「……捨て子殿。貴殿の名前を、一生我が心に刻みつけておく!」ビシッ

旅人「……運ぼうか」

侍「……よし」

旅人「安らかに眠ってくれ……」パン

侍「……」パン

旅人「……これから、どうするつもりだい?」

侍「明日で、この村を出るつもりだ」

旅人「そうか、私もだよ。彼の事は絶対に忘れない」

侍「ああ……ここに一人の人間、捨て子が散った」

旅人「私はまた旅に出ようと思う。もし良かったら、君の行く場所に着いて行っていいかな?」

侍「……ああ」

旅人「じゃ、行こうか」

侍「そうだな……さらば、捨て子」



女将「へえ、山の子が……」

侍「ああ、あの童はあっぱれであった」

旅人「一人で逞しく生きてきて、人間の勝手な都合で殺されて」

女将「……」

旅人「でも、私は彼がとても美しく思えたよ」

侍「ああ、自分もだ」

女将「そうですか……私、明日の早朝にお供えに行こうと思います」

侍「ああ、それが良い」



旅人「じゃ、そろそろ行こうか」

侍「うむ」

旅人(捨て子。私達はまたこの地を訪れるよ)

旅人(その時は、笑って空の上から見ていてくれ)

侍「さらば、捨て子」

旅人「またね」

ー三年後ー

旅人「……この村に来るのも、随分と久しぶりだ」ザッ

侍「ああ、そうだな。あの洞穴はまだ残っているだろうか?」

旅人「……おお、まだ残ってる」

侍「でもおかしくないか? 捨て子亡き今、この山を訪れる者はいくらでもいるだろう」

旅人「ふむ、木の実の貯蔵などもカラカラだが残っている」

侍「! 下がれ!」

旅人「……山犬!?」


山犬(黒毛)「……」ザッ

山犬(茶毛)「……」

山犬(黒毛)「ガウ」ポト

山犬(茶毛)「……グルル」ポト

旅人「これは松茸、それに木の実だ」

侍「……まさか、お主達は」

山犬(黒毛)「……」ペコリ

ダッ

侍「……やっぱり、あの黒毛の山犬は」

旅人「ああ」

旅人(捨て子、生まれ変わったんだな……隣にいたのは兄君か)

侍「良かったな、捨て子……」



――なあ、知ってるか、あの山に住み着いた二匹の山犬の噂。

――おう、黒と茶色の奴らだな。確か、とある洞穴を根城にしてて、近づくと吠えまくるって奴だろ?

――そうそう。満月の夜の決まった時間になると、大きな雄たけびを上げるらしいな。

――俺、一回聞いたぜ。何か、誰かに届けようとしてるような、綺麗で力強い声だったよ。

――へぇ、まるで人間みたいだな。

――そういや、昔あの山に山の子が居たよな。

――ああ。忍だか侍だかが倒したらしいけど、死体が無いから本当の事はよく分からん。

――もしかして、山犬に生まれ変わってたりな。

――はは、そうかもな。


終わり

駄文失礼しました。これにて終了です。

おつ!おもしろかった!!

おつおつ
よかった

面白かったよ

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