【モバマス】と【艦これ】のクロスです。
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ある日、凛がいつものように事務所へ行くと……
凛「おはようござ……」
玄関のドアのノブが回らない。
凛「……あれ? 鍵、締まってる」
凛「おかしいな、今日ってお休みだっけ?」
凛「私が休みでも、誰かはいるよね? プロデューサーとか、ちひろさんとかトレーナーさんとか」
凛「えっと、カードキー……」
凛「お財布の中だったかな……」
凛「あったあった」
がちゃり
凛「……おはようございます」
凛「やっぱり誰もいない?」
凛「おかしいなぁ。あ、もしかしたら寮のほうにみんないるのかな? それともレッスンスタジオかな」
携帯を取り出す凛。
凛「……メールも留守電もきてないなぁ」
と、チャイムの音。
凛「え、嘘、お客さん? 誰もいないよ?」
連打されるチャイムの音。
凛「ちょ、ちょっと、何よ、誰よ」
勝手に開くドア。
自動ロックではないので、中からロックし直さないと開けっ放しになってしまうことを凛は忘れていたのだ。
慌てたところでもう遅い。
入ってきたのは小さな包みを手にした、どこか見覚えのある格好をした女性。
大井「すいませーん。人いるの見えたから勝手に入っちゃいましたけど、いらっしゃいますよね?」
凛「あ、はい」
大井「あ、ここの人?」
凛「え、ええ」
大井「千川ちひろさん、いらっしゃいます?」
凛「いませんよ、えっと、アポ、とってます?」
大井「取ってませんが、連絡はしているはずなんですけど」
それじゃあちひろさんが知っているはずじゃないのか、と凛は思う。
それにしても……考え直してみてもやっぱり見覚えのある相手。
他の事務所のアイドル? いや、違う。この格好は……
凛「すいません。どなたですか?」
大井「……もしかして、渋谷凜ちゃん?」
いきなり自分がいたのは拙かったかな、と凛は考えた。
こう見えても、絶好調の現役アイドルではあるのだ。
凛「……」
大井「入ってすぐはわからなかったのよ? 見覚えがあるなあとは思っていたけれど、ついさっき思い出したの」
凛「ええ、渋谷凜です。失礼ですけれど、貴方は?」
それでも、訪れてきたのはむこうだ。
ここはアイドル事務所。アイドルがいて何が悪いのか、と凛は開き直ることにした。
大井「大井」
凛「大井……何さんですか?」
大井「大井は大井よ」
自分も我慢強くなったなぁ、と思う凛。
凛「すいませんが、フルネームを」
にやり、と意地悪そうに大井は笑う。
そして流れるような動作で敬礼。
大井「対深海棲艦特設海上自衛隊、別称鎮守府所属、球磨型軽巡洋艦四番艦大井です」
一瞬、凛の眼が大きく見開かれた。
現代日本での知名度という点ではタメが張れる、下手すると負けている存在がそこにいたのだ。
ただし、今の凛の反応でわかるように、姿形そのものはあまり知られていないのだけど。
凛「え? ……あ、艦娘の方!?」
大井「まあね」
凛「す、すいません。存じ上げなくて……」
大井「ん、別にいいですけど。広報で顔売ってるのって、島風ちゃんとか金剛さんとか、球磨姉や多摩姉だしね」
凛「えっと、あの、青葉さんは知ってます」
大井「ふーん。なんでまた」
凛「蒼、好きなんです」
大井「ああ、そ」
凛「あの」
大井「ん?」
凛「いつもありがとうございます」
大井「ん……? あ、ああ」
大井は今度こそ優しく笑ってひらひらと手を振った。
大井「いいのいいの。私たち、戦うしか能がないし。皆さんの平和は艦娘の誇りってね」
何も言えず、頭を再び下げる凛。
大井「だからね、畏まらなくていいから……あー、こんな時北上さんなら巧く言うんだろうけど……うーん」
大井「まあ、いいか」
大井「それで、ちひろさんは本当にいないの?」
凛「私も今来たばかりで」
大井「ふーん。待たせてもらっていいかな?」
凛「はい。私もしばらくはいますから」
大井「そう? それじゃあ遠慮なく」
大井をパーティションで区切られた応接室に案内すると、凛はお茶の用意を始めた。
大井「気にしなくてもいいわよ。どうしてもって言うのなら、適当な缶コーヒーでも出してくれれば」
凛「そういうわけには」
事務所のお客さん、ということもあるが、そのうえ相手は艦娘である。
文字通り命がけで、自分たちの生活を守ってくれているのだ。感謝しないほうがどうかしている。
大井「それより、聞きたいことがあるの」
凛「はい?」
結局コーヒーを置き、凛は招かれるようにして大井の向かいに座る。
そしてコーヒーも二人分。
大井「ウチの那珂ちゃんや青葉さんが、アイドルの情報色々仕入れてくるんだけど」
凛「はあ……」
大井「中にはゴシップとか妙な噂話もあって」
凛「あ」
相手の次の言葉を予想する凛。
が、それは外れて、
大井「アイドル安部菜々が、実は宇宙人って本当?」
真顔でそう尋ねるのだ、大井は。
凛「ウサミン星人……ですか?」
大井「そう」
本気で聞いてるのか冗談なのか、と聞きかけて凛は口を閉じた。
ほんの数年前の自分に「艦娘」や「深海棲艦」の話をすれば、自分はそれを信じただろうか?
否。無理だ。
だったら、ウサミン星人だって。
信じている人を笑うことなど、凛にはできない。
それよりなにより、本当にウサミン星人かもしれないじゃないか。
そもそも安部菜々、そして池袋晶葉が、
「ウサちゃんロボをウサミン星の地球外テクノロジーで改修したものがウサミンロボ」と明言している。
大井「さもなきゃ、実は艦娘じゃないかって、ウチの島風ちゃんが」
凛「はい?」
大井「菜々ちゃんの横にいるちっちゃいの。なんとかロボ?」
凛「……いますね」
大井「アレが、連装砲ちゃんの同族に違いないって、いつも言うのよ」
凛「連装砲ちゃん……ああ」
思い出した、艦娘島風の横にいつもいる謎の生命体。
池袋晶葉が欲しがっていた、謎の愛らしい生命体。
そうか。ウサミン科学は艦娘に近しいのか、そうなのか。
凄いな、ウサミン星人。
妙に納得できると凛は思う。
凛「菜々さんは違いますよ。宇宙人かどうかは知りませんけれど、少なくとも艦娘ではないですよ」
大井「そっか。那珂ちゃんが凄く期待してたんだけどねぇ」
凛「期待、ですか?」
大井「艦娘出身のアイドルがいるんだったら自分だって、ってね」
凛「プロデューサーに話してみましょうか? そういうイベントと言うか仕掛け、この事務所大好きですから」
大井「ふーん。それじゃあ話してみようかな」
凛「あの」
大井「なにかしら?」
凛「こっちからも聞いていいですか?」
大井「機密に抵触しなければ、話してあげるわよ?」
凛「深海棲艦って……」
大井「うん」
凛「魚なんですか?」
大井「え」
凛「……七海ちゃんがとても気にしてて……」
大井「あ、ああ、えっと……」
凛「他の人は、着ぐるみ説とか」
大井「……私ら、着ぐるみと日夜戦ってんのか」
凛「ごめんなさい」
大井「いや、怒ってないけどね。ちょっとびっくりしたわ」
大井「とりあえず、正体不明ってのは間違いないんだけど、流石に魚じゃないと思う」
大井「あと、着ぐるみでもない……と思う」
凛「思う?」
大井「私たちで言うところの艤装をつけていて、外見をごまかしているって意味ならあり得るかもね」
凛「それって……」
大井「あー、根拠は聞かないでよ。機密になっちゃうから。明日、黒服に囲まれるわよ?」
がちゃり
三人目が現れる。
ちひろ「あ、凛ちゃん、来てたのね、ごめんなさい。急にプロデューサーに届け物が……」
ちひろ「え? 大井さん?」
凛「ちひろさん、お帰り」
大井「お邪魔しています」
ちひろ「大井さん、連絡くだされば良かったのに」
大井「提督に届け物を頼まれたんですけれど、連絡来てませんでした?」
ちひろ「いえ、何も?」
大井「……ちっ、あの役立たず……」
凛「え?」
ちひろ「え?」
大井「いえ、なんでもないんです。それじゃあちひろさん、ウチで預かっていたこれ、お返しします」
包みの中から大井が取りだしたのは、凛にも見覚えのあるスタドリエナドリセット。
大井「やっぱり、高速修復材の改良には使えないみたいだって結論が出ましたよ」
ちひろ「人間用、というか、プロデューサー専用の調合薬みたいなものですからねぇ」
大井「え、これ、人間に飲ませてるの?」
大井「くれぐれも間違っても飲まないようにって、提督に念押しされて……」
凛「え?」
ちひろ「……大井さん、それ、機密って言われてませんでした?」
大井「え?」
ちひろ「解体任務を頼む相手は明石さん、でしたっけ?」
大井「ひっ!」
凛「な、何も聞いてません! 私は何も聞いてません!!」
ちひろ「凛ちゃんが賢い子で良かったですね、大井さん」
大井「……」
大井(なに、この威圧感……この人実はレ級……いえ、姫級じゃないの!?)
ちひろ「うふふふ、冗談ですよ、冗談」
大井「次は龍田さんに来てもらうことにするわ……」
ちひろ「そうだ、お客様用のお菓子買ってきてたんですよ。どうぞ、大井さん。凛ちゃんも、ね」
大井「あ、はい。いただきます」
凛「いただきます」
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ただいまー。
あー、緊張した。こんなに緊張するなんて思わなかったわ。
それにしてもあの子、話してみると割と面白い子だったわね。
また機会があったら会ってみようかな。
ん? なに、この雑誌……なんて私の部屋に……
あ、この前来たあいつが忘れていったのかな。
あれ、これ、あの子が載ってる雑誌じゃない。ふーん、専門誌か。
どれどれ……
なにこれ。
専門誌って言うより五流ゴシップ誌じゃない。
うわっ、あの子、変なあだ名ついてるのね……んー、これ、デマじゃないのかなぁ。
……よし、次に会うことがあったら聞いてみよう。
いや待って。
それより、ここに書いてあるあだ名でいきなり呼びかけてやろうかしら。
ふふっ、そのほうが面白そう。
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ほら、思ったより早く再会のチャンス。
よし、それじゃあ早速、例のあだ名で……
大井「クンカー?」
凛「クレイジーサイコレズ?」
互いに「あれはねーよ」と憤りあうまで、あと一分。
以上お粗末様でした
作中の漢字間違いなどの不手際、お詫びします
クレイジーサイコレズの8割強くらいはツイッターのボットだと思う……
凛「鎮守府潜入レポート?」
モバP「そう」
凛「だけど、私レポーターの仕事なんてやったことないんだけど……」
モバP「メインレポーターは別にいるから、その辺は大丈夫だよ」
凛「あ、そうなんだ」
モバP「メインを勤めるのは川島さんだ。元地方局のアナだから、その辺りの経験は充分あるよ」
凛「うん、それなら安心だけど」
モバP「向こうからはもう少し人数増やしてもいいって許可もらったから、多分五人くらいになるかな」
凛「それはわかったけど、どうして、私に? あ、仕事が嫌って訳じゃなくて、純粋な疑問、ね」
モバP「それが、ウチの事務所が絡むと知ったら、向こうからリクエストしてきたそうだ」
凛「え?」
モバP「ちひろさんに聞いたよ。なんだか、艦娘の大井さんと仲良くなってたって?」
凛「あ、ああ、それ……え? それじゃあもしかして、大井さんのリクエスト?」
モバP「そうみたいだ。今の予定では、向こうでのエスコートは球磨型軽巡の方々がやってくれるらしい」
モバP「五人というのも、同型艦数に合わせたんだろうな」
凛「同型って……姉妹の数、よね?」
モバP「……そうだな、俺としたことが。すまん」
凛「それで、あと三人はどうするの?」
モバP「そうだなぁ」
バタンと乱暴にドアを開く音と共に現れるアイドル。
愛海「話は聞いたよ!」
棟方愛海である。
モバP「一番駄目な奴が一番に来るんじゃねえっ!!」
愛海「な、なんでっ!?」
モバP「重巡!」
愛海「愛宕! 高雄!」
モバP「駆逐!」
愛海「潮!」
モバP「龍驤!」
愛海「大きさじゃないんだよ?」
モバP「危なすぎて連れて行けるかぁっ!!」
愛海「なんでぇえっ!!??」
凛「今の、プロデューサーもかなり失礼だよね?」
モバP「……すまん」
凛「艦娘さんたちのバストサイズに詳しいね」
モバP「……仕事柄、女性のスタイルにはすぐに目が行くんだ。他意はない」
凛「ふーん。そういうことにしておいてあげる」
モバP「それより残りの三人をだなぁ」
凛「それじゃあ、菜々さんは? 向こうのえーと……島風さんが、会いたがっているみたいだけど」
モバP「あ、それは駄目だ。俺も候補に入れていたんだがな」
凛「どうして?」
モバP「ここだけの話だぞ」
凛「う、うん」
モバP「ぶっちゃけ、ウサミン星では地球に対する内政干渉は禁じられている」
凛「はい?」
モバP「鎮守府に行くということで、ウサミン星が艦娘側につくと判断されても困る、ということだ」
凛「……」
モバP「わかった?」
凛「菜々さんも大変だね」
モバP「まあね」
凛「あれ?」
モバP「どうした?」
凛「深海棲艦って正体不明だよね?」
モバP「公式発表ではそうなってるな」
凛「うん。大井さんも教えてくれなかった」
モバP「正体不明だからな」
凛「内政干渉ってことは、ウサミン星では深海棲艦を公式に地球上の存在だと認めていることに……」
モバP「!?」
凛「……」
菜々「……」
ミミミンミミミンミミミンミミミンミミミンミミミンミミミンミミミンミミミンミミミンミミミンミミミンミミミンミミミンミミミンミミミンミミミンミミミンミミミンミミミン
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モバP「……何の話だっけ」
菜々「菜々がスケジュールの関係で鎮守府に行けないってところからですよ」
凛「あれ、菜々さんいつの間に?」
菜々「さっきからいましたよ?」
凛「あれ、そうだっけ……」
モバP「うーん、そんな気もしてきた」
菜々「それじゃあ菜々は、衣装合わせがありますからこれで」
凛「行ってらっしゃい」
モバP「次の衣装はさと……シュガーハートが作るんだよな、喧嘩するなよ、似たもの同士」
菜々「似てませんよ、とにかく行ってきまーす」
モバP「うぃー」
凛「それで、取材にはいつ行くの? それまでにはあと三人を決めておかないと」
モバP「そうだな、他の仕事との兼ね合いもあるし、スケジュールに余裕を持たせないと」
凛「そうだよ。深海棲艦が襲ってきたら取材どころじゃないんだから」
モバP「さすがにそれは取材中止になると思うが」
凛「それはそうだけど、私たち以上に取材の制約が多いだろうからね」
モバP「そりゃそうだ」
凛「早苗さんは?」
モバP「確かスケジュールは空いていたな」
凛「早苗さんなら元婦警だし、守秘義務とかはわかっていると思うんだ」
モバP「たしかにな……、それでいくと、マキノも……いや、あいつは自分から調べに行きそうで怖いな」
モバP「あ、もうこんな時間か。とりあえず、凛と川島さんは決まりだから、あとはこっちでスケジュール見ながら決めるよ」
凛「ん、わかった」
その頃、鎮守府では……
続
提督「まあ、つまり、なんだ。一般市民の方々にも愛される鎮守府というのもいいじゃないかと」
急に集められた艦娘たち。
秘書艦である愛宕からまず発表されたのは、取材という名のお客様が来るということ。
青葉「取材ですか? 広報のお仕事とは違うんですか?」
島風「えー、また窮屈な服着るの? あれは嫌だよ」
龍驤「あー、あのな、島風、あれは普通の服やから。自分の、普段の服がちょっち派手すぎや、ちゅう話やから、な?」
愛宕「取材対応は球磨型の皆さんにお願いします」
球磨「クマ?」
多摩「にゃ?」
北上「うえ、面倒くさそー」
大井「北上さんは私がフォローします」
木曾「球磨姉と多摩姉は広報で慣れてるだろうからいいけどさ、俺たちはそんなの初めてだぞ」
愛宕「万が一の場合の護衛も兼ねてですから。そのときはお願いしますね」
球磨「わかった、任せるクマ。それで、相手は何人クマ?」
愛宕「五人前後、の予定だそうです」
天龍「しかしよぉ、愛宕さん、なんでまた、鎮守府の中に呼ぶんだ? 今までの取材はこっちから出向いてただろ?」
金剛「そうデース。私たちだって、広報センターでトークしたですヨー!」
愛宕「それはぁ……」
言葉の続かなくなった愛宕の後ろに座っていた提督が立ち上がる。
そして、冒頭の言葉である。
金剛「今更デース」
提督「ま、そういうなよ」
並んでいる艦娘たちを見渡す提督。
提督「ご機嫌を取れ、とまでは言わないけれど、嫌われるよりは好かれた方がマシだろう」
龍驤「そりゃあ、まあ?」
提督「いざって時に四面楚歌なんて、ぞっとしないでしょ」
龍驤「弾は前から飛んでくるとは限らん、ちゅうことかいな?」
提督「おいおい、民間人を守る軍人がそんなこと言っちゃあいかんでしょ」
龍驤「提督は何も言うてへん、言うたんはウチや」
提督「悪いね」
龍驤「悪いやっちゃなぁ、君」
きしし、と笑う龍驤。
龍田「はいはーい。いちゃつくのはそのくらいにしてあげてぇ、大井ちゃんと天龍ちゃんの目が怖いの~」
大井「はぁ?」
天龍「どういう意味だ、おい」
提督「龍田ー、その辺にしておけ、天龍は姉妹だから仕方ないが、大井まで苛めるもんじゃないよ?」
龍田「はーい」
天龍「俺はいいのかよ」
大井「北上さん、提督と龍田さんが苛めるー」
北上「はいはい、大井っちはアタシの隣、ここに座っててねぇ」
天龍のぼやきと大井の嘘泣きに何人がクスリと笑い、空気がやや緩む。
提督「ま、印象を良くするのはどちらにしろ大切だよ。痛くもない腹探られてもつまらんだけだしね」
提督「これまでも、可能な限り取材などには応じてきたが、今回はさらに内部までの取材を許可したってことだ」
島風「ねえねえ提督。どんな人が来るの?」
きゅうきゅう
島風「連装砲ちゃんも気になるって言ってるよ」
愛宕「あ、それはですね。シンデレラガールズプロダクションというところのアイドルがいらっしゃるそうです」
島風「しらなーい」
初春「確か、ウサミン星人とやらがいるところじゃの」
島風「……! そこか! それなら知ってる。連装砲ちゃんのお友達がいるよ」
那珂「どうせなら那珂ちゃんは天海春香ちゃんや、天ヶ瀬冬馬くんに会いたいなー、あ、秋月涼きゅんとか」
青葉「違う事務所じゃないですか?」
那珂「そうだっけ?」
木曾「ジュピターは961プロ、天海春香は765プロ、秋月涼は876プロ。全員、別の会社だ」
大井「……」
多摩「……」
球磨「……」
木曾「なんだよ、みんなして」
北上「……詳しいね、木曾っち」
木曾「あ」
提督「いやぁ、木曾を取材対応に回して正解だったようだね」
木曾「……!? まさか……」
提督「あー、木曾。本気で隠したいのなら、鎮守府の酒保に注文するのはやめとけ」
提督「いくら密かに頼んでも、平常業務以外の注文には俺の許可がいるから、全部目ぇ通してるんだわ」
木曾「あ……う……」
秋雲「木曾さん木曾さん、そういうときは酒保を通さずに直接通販するんです」
秋雲「酒保を通さないと内部割引がきかないけど、それはあきらめて」
球磨「みんな知ってるクマ」
多摩「木曾の買ったアイドル情報誌は、球磨型みんなで回し読みしてるにゃ」
木曾「いつの間にっ!?」
北上「本当に気づいてなかったんだねぇ」
木曾「おおおお……」
大井「落ち込まないの、来月からお姉ちゃんたちも雑誌代出してあげるから」
深海棲艦の猛攻でも怯んだことのない木曾がぐったりした様子で膝を突いている姿を、天龍は気の毒そうに眺めていた。
龍田「天龍ちゃん天龍ちゃん」
天龍「なんだよ」
龍田「天龍ちゃんのお買い物はちゃんと隠してるから、ね」
天龍「」
短いけどここまで
次回はようやく、アイドルたちが鎮守府に来る……はず
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