希　　（うち、何であんな事したんやろ。こんな事になるなんて…）

希　　（これじゃ、もうえりちと顔合わせられないやん）

ﾎﾞｲｰﾝ

「きゃっ！」

希　　（しまった、前見てなかったからぶつかっちゃった）

希　　「ごめんなさい。大丈夫やった？」

にこ　「いたた、なんてスピードで廊下を走ってるのよ…って希だったのね」

希　　「あ、にこっち……ごめんごめん」

にこ　「まったく副会長が廊下走るなんて何考えてるのよ」

希　　「だからごめんって。はい、手つかまって」

にこ　「んしょ…あんたって意外とお転婆なのよね」

希　　「耳の痛い話やけど、にこっちには言われたく無いかな」

にこ　「ふん、そんな事は良いからとりあえず部室に行くわよ」

希　　「えっ、何で部室？」

にこ　「目の周りが真っ赤、アイドルがそんな顔でどこに行くつもりよ」

希　　「あっ……ごめん」

にこ　「それ聞き飽きたわ、ほら行くわよ」

にこ　「タオル濡らしてきたから目元を冷やしときなさい」

希　　「うん」

にこ　「じゃあ部室の鍵は置いておくから、私は行くわね」

希　　「一緒にいてくれないん？」

にこ　「……はぁ、少しだけよ」

希　　「ごめんね」

にこ　「だから聞き飽きたって」

にこ　「理由…聞いて欲しいの？」

希　　「うーん…聞かないで欲しいかも」

にこ　「じゃあ何で残らせたのよ」

希　　「一人になりたくなかったからかな」

にこ　「あんた意外と寂しがりやなのね」

希　　「そうかもしれんね…」

にこ　「少しだけならいてあげるわよ」

希　　「ねぇ、頭撫でててくれん？」

にこ　「はぁ？あんた調子に乗ってるんじゃないわよ」

希　　（そう言って手を伸ばして来てくれる。にこっちは優しいなぁ）

希　　（口に出したらやめちゃうんやろうけど）

にこ　「身体が大きいだけでうちの妹達と変わんないわね」

希　　（うちもにこっちみたいなお姉さん欲しかったわ…）

希　　「…………」

「希…希…」

希　　「んっ…」

「もう、やっと起きたのね」

希　　「ママ…おはよう」

希ママ「おはよう、ごめんね。ママ今から仕事に行ってくるから」

希　　「え？今日はお休みだって」

希ママ「ごめんね、急にお仕事が入っちゃったのよ」

希　　「でも今日は一緒に遊園地行こうって言ってたのに…」

希ママ「ごめんね、また遊園地はまた今度行きましょう」

希　　「やだよー今日行くって約束したもん、遊園地行くって約束したもん」

希ママ「ごめんね、でももう仕事に行かないと」

希ママ「そうだ、これ、キャラメルあげるわね。希好きだったでしょ」

希ママ「じゃあママ行くから、お留守番お願いね」

希　　「うえーん、ママー！ママー！！」

希　　「んっ…あれ？」

にこ　「あ、やっと起きたわね」

希　　「うわっ、うち寝ちゃってたん？こんなに真っ暗に」

にこ　「まったく、人を待たせておいて寝るなんて信じられないわ」

希　　「ごめ……待っててくれてありがとうな」

にこ　「良いわよ、別に」

希　　（ウチにもにこっちみたいな姉妹がおったらあの時あんなに寂しい思いせんかったのかな）

にこ　「その代わり、今から買い物行くの手伝いなさいよね」

希　　「うん、別にいいけど」

にこ　「ついでにうちで夕飯も食べて行きなさい、どうせ用意してないんでしょ」

希　　「えっ…お邪魔してもいいん？」

にこ　「一人くらい増えても変わらないわよ、それにチビ達も喜ぶわ」

希　　「ふふっ、にこっちは優しいなぁ」

にこ　「な、何言ってるのよ。そんな事より明日はちゃんと絵里と仲直りしなさいよね」

希　　「えっ！？」

にこ　「生徒会室の方から泣いて走ってくればそのくらいわかるわよ」

希　　「うん…本当にありがとう」

にこ　「ほら、さっさと買い物行くわよ。この時間ならお肉が半額ね、焼肉でもしようかしら」

希　　「わーい、にこっち大好きー」

にこ　「まったく現金なんだから」

希　　（結局えりちとまともに話せないまま放課後になっちゃったやん）

希　　（しかも昨日と同じで生徒会室にえりちと二人きり…気まずい）

希　　（いやいや、逆にこれは謝る絶好のチャンスやん、行くんやウチ）

希　　「え、えｒ…」

絵里　「希、これあげるわ」

希　　「りち、え？あ、ありがとう…チョコレート？」

絵里　「うん、美味しいから食べてみて」

希　　「う、うん……あ、ほんとや美味しい」

絵里　「ふふっ、そうでしょ」

希　　（えりち、昨日の事気にして無いんかな…何かうちだけ空回りして馬鹿みたい…んっ？）

希　　「えりち、これチョコの中にキャラメルが入ってるやん」

絵里　「ふふん、その通りよ」

希　　「もう、ウチがキャラメル苦手なの知ってるやろ？」

絵里　「昨日私のファーストキスを奪った罰よ、そのくらい我慢して食べなさい」

希　　「あっ……えりち……ごめ」

絵里　「なーんてね、私もそんなに酷い人間じゃないわ」

絵里　「そのキャラメルは…」

希　　「えっ………んっ！？」

絵里　「…私が貰ってあげるわね」

希　　「んなっ！！え、ええぇぇええりち！？」

絵里　「うん、こんなに美味しいのに何が嫌なのかしらね」



『私のセカンドキスはほろ苦いけど甘いキャラメルの味だった』

希　　「はぁ…今日は疲れたわー」

希　　「えりちったらあんなに激しく…」

希　　「でもえりちと仲直り出来て良かった……ありがとう」

希　　「あぁー！！また顔が熱くなってきた。もう今日は早く寝よ」

希　　「…………………………」

Pi...Prrrrrr　　ｶﾞﾁｬ

希　　「あ、お母さん？久しぶり、元気にしてた？」

希　　「うん、私も元気にしてるよ」

希　　「仕事はどう？うん、そう前よりは忙しく無いんだ」

希　　「じゃあ今度さ、休み合ったら遊びに行って良い？」

希　　「うん、お父さんも一緒にさ」

希　　「それで…久しぶりに家族で焼肉でも食べたいなって」

おしまい