一ノ瀬志希「お前も匂いフェチにしてやろうか~♪」 (34)

アイドルマスターシンデレラガールズの、一ノ瀬志希のSSです。
前半台本非エロ、後半地の文でR18。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1410870765

モバP「なんだ、いきなり」

志希「いやぁ、あたしはキミのニオイに魅かれて、今ここにいるわけだけど」

志希「最近あんまり、ハスハスできてないなーって思って。いっつもキミ、忙しい忙しいっていってあたしの相手してくれないんだもん」

モバP「そりゃあ、志希の人気が上がってきたからだよ。嬉しい悲鳴、ってやつだ」

志希「それはわかるけどさぁー。でもやっぱり、あたしの嗅欲は最近満たされてないんだよ」

志希「しかも、ハスハスできなくて苦しいのはあたしだけじゃない? キミは、あたしのこと全然嗅ぎたがらないし」

志希「こんなの不公平でしょー。 なんであたしばっかり苦しまなきゃいけないの?」

モバP「何が不公平なんだよ。男の匂い嗅ぎたがるお前のほうが変わってるんだろう」

志希「そこで、あたしちょっと頑張っちゃいましたよ。これ、見て! 志希さん特製の香水、その試作品第一号だよん」

モバP「香水、か。アイドルというより女優の守備範囲だけど、志希のキャラにも合ってるし、上手くすればいい企画になりそうだが」

志希「でしょ。早速つけてみるから、ちょっと嗅いで、感想を聞かせてよ」

モバP「わざわざつけてくれなくても、瓶から直接嗅げば……いや、ダメか」

志希「当たり前じゃなーい。香水は身体につけて使うものなんだよ。体の匂いと混ざって、本来の
香りを出すんだよ」

志希「実際使う時の状況を再現しなきゃ、テストにならないじゃない」

モバP「だよな。じゃあ、ちょっと失礼」

モバP「(……18歳の娘の体臭を嗅いでる成人男性か。誰かに見つかったら、どうやって言い逃れよう)」

志希「そんな離れたところじゃ、匂い分かんないでしょ? もっと近くに……来て」

モバP「(……!? 抱き寄せられて……鼻が、当たりそうだ)」

モバP「(しかし……近くに寄ってやっと分かったが、微かな良い匂いがする。肌が触れるくらいまで近づかないと分からない、仄かな香りだが)」

志希「どう? あたしの自信作。担当プロデューサーの感想、聞かせてよ」

モバP「……いいな、これ。すごく匂いは弱いけど、でもそれがまたいい。爽やかな、瑞々しい感じだ」

モバP「つけすぎて悪臭撒き散らすより、これくらい控えめな方がずっといいよ」

志希「ふっふっふ。このあたしが、悪趣味な成金おばさんみたいな真似、すると思う?」

志希「香りと悪臭の差は、とっても微妙だからね。こんな風に、一番近くの人にだけ分かるくらいので丁度いいんだよ」

志希「例外は、キミのニオイくらいだね。さっぱりしてる時でも汗かいてる時でも、独特の味わいがあって……今も、堪能させてもらってるよん」

モバP「……お前、そういうこと絶対よそで言うなよ。分かってるだろうが」

志希「もー、志希さんがこれだけ褒めてあげてるのに、つれないねえ」

志希「でも、本当にキミの匂いは特別だよ。海外にもキミみたいな人はいなかったんだし」

志希「テレビ局とかより、化粧品会社に営業しにいったほうがいいんじゃない?」

モバP「馬鹿言うな。俺を売り込んでどうするんだよ。……もうそろそろレッスンの時間だ。行って来なさい」

志希「はーい。終わったら直帰していい?」

モバP「構わんぞ。また明日、な」

志希「ん。また、ね。ふふふ。楽しみだなあ」

 翌日。

志希「おっはよーう。今日はお仕事だっけ?」

モバP「わかってるならもうちょい早く来てくれよ。あんまり余裕無いんだ。すぐ出るぞ」

志希「ちょっと待ってよ。仕事はいいけど、その前にハスハスさせて?」

志希「起き抜けはハスハス分が足りないから、キミを嗅がないと力出せないし」

モバP「お前なあ。急ぐっていってるだろ」

志希「お願い! キミもあたしの事ハスっていいからさあ」

志希「ほら、昨日の香水、またつけてきたんだよ。胸元、嗅いでみて」

モバP「ダメだ。このままじゃ遅刻……って、おい!」

モバP「(ネクタイ掴んで引っ張りやがった。乱暴な奴め……しかし、やっぱいい匂いだな、これ)」

モバP「(担当アイドルの胸に顔突っ込んで深呼吸してるなんて、誰かに見られたら退職もんだけど……)」

モバP「(この、ゆるいリボンに染み込ませてあるんだな。鼻から肺まで洗われるみたいな……やっぱり志希はすごいな)」

志季「ふふ。堪能してくれてるねえ。キミも匂いフェチになっちゃう? あたしと一緒に」

モバP「(志希の胸、柔らかいな。もっとこうしていたい。ずっと、この香りに……)」

モバP「……! いや、いやいや! こんなことしてる場合じゃないんだって! 行くぞ志希! 香水の話は……仕事の後にしよう!」

志希「うーん。さすがに二日目じゃまだダメか。しょうがないのかな」

モバP「?」

志希「なんでもないよっと。じゃあ、いっちょ頑張っちゃいましょうかー」

モバP「(ものすごく急いで、結局なんとか間に合った)]

モバP「(そこまで計算していたとしたら、さすがはギフテッドと言わざるを得ない)」

 またある日。

モバP「さて、今日の仕事も大体終わりだが……」

志希「お、早かったねえ。じゃあ、いつもの。二人の秘密の会議、始めちゃおっか」

モバP「誤解を招くような言い方はやめろ」

志希「誤解、ねえ? ……ふふ、いつまでそんなこと言ってられるかな」

志希「まあいいや。今日は首元だよ。香りが長持ちするように、改良してみたんだ。朝と変わってないか、嗅いでみて」

モバP「(なんだか最近、志季の匂いを嗅ぐのに抵抗を感じなくなってきている)」

モバP「(今なんて、椅子に座ってる志希に、後ろから覆いかぶさるようにして首筋の匂いを嗅いでいるんだ)」

モバP「(ちょっと前まで、志希とこんなことするなんて考えたことも無かった)」

モバP「(いや、これは製品試験なんだから疚しいところは何も無いのだが)」

モバP「(この感覚……癒やしとしか表現できない)」

志季「どう? ご満足いただけてるかな?」

モバP「あ、ああ、いい匂いだよ。微かすぎて、密着するぐらいじゃないと匂いが分からないのはまずいかもしれないけど」

モバP「そこさえ何とかすれば、このまま売りだしても行けるんじゃないか?」

モバP「やっぱりすごいな、志季は」

志希「まあこの香水は、誰かれ構わず嗅がせるようなものじゃないしね」

志希「ちゃんと相手を見定めて使わないとダメなんだよ」

志季「……しかしそれにしても、キミがあたしのことこんなに褒めるなんて、珍しいじゃない」

志希「そんなに気に入ってくれると、製作者としても嬉しいよ」

モバP「うん。なんというか……リラックスできる。仕事の疲れが飛ぶよ」

志季「へーえ。ちひろさんのスタドリと、どっちが癒やされる?」

モバP「スタドリ? アレは飲み物だからなあ……単純には比べられないけど」

モバP「でも、どっちか選べって言われたらこっちだな」

モバP「さっぱりしててしつこくなくて、いつまででも嗅いでいたくなる」

志季「そっかそっか。キミもだいぶこっち側に近づいてきたよね。あたしはあたしの才能が恐ろしいよ」

モバP「心にもないことを……」

志希「口ではそんなこと言いつつも、実際はあたしのことクンカクンカしてるんだもんね。ペットみたいでカワイイよ」

モバP「(年下の女の子に可愛いと言われて喜ぶ男はそうはいない、が……志希から離れることはできない)」

モバP「(離れたらこの匂いを感じ取れなくなってしまうからだ)」

志希「ふ、ふ、ふふっ。だいぶ、あたしの匂いに馴染んできてくれてるよね。いいよ、もっと浸っちゃって。我慢なんてしないで、ね……」

モバP「(結局、かなり長い時間、志希の匂いを嗅いでしまっていた)」

モバP「(遅くなったので車で送ってやることにしたが、狭い空間で二人きりになると、また志希の体からいい匂いが立ち上ってくるような気がして、別れ難かった)」

モバP「(それから、俺と志季は人目を盗んで一日に何回もお互いに体臭を嗅ぎ合うようになった)」

モバP「おう、志希。今日は早いんだな」

志希「うん。ちひろさんが来るまで、たっぷりハスハスしたくってね」

志希「キミも、あたしのこと嗅ぎたいんでしょ? だから、こうして一番に事務所に来てるんだもんね。いいよ。いっぱいハスハスしあお」

モバP「(奥の部屋へ引っ込んで、ちひろさんや他のアイドルが来るまでの時間、抱き合ってお互いに匂いを嗅ぎまくっていたり)」

志希「ふわ~っ。あー働いた働いた」

モバP「お疲れさん。今日もいい感じだったぞ。志希もだいぶテレビ慣れしてきたな」

志希「にゃっはっは。志希さんに任せなさーい」

志希「と・こ・ろ・で。ずっと集中してたから、もうあたし疲れちゃった。……ね、しよ」

モバP「TV局でか? さすがにそれは……事務所に帰るまで我慢してくれよ」

志希「いーや。ハスハスさせてくれなきゃ動けないよ。それに……キミだって、あたしがいない間、寂しい思いしてたんじゃないの?」

モバP「なに……!?」

志希「大丈夫だって。このへん、そんなに人通り多くないし。物陰にいれば、誰も邪魔しに来ないよ」

志希「ハスハスさせてあげるから、ハスハスさせてよ。ギュッてして。いいでしょ?」

モバP「……ちょっとだけだからな。すぐ出るぞ。見つかったら、何を言われるかわからん」

志希「もー、心配症だなあ。この辺は誰も居ないって。志希さんの鼻を信用してよ」

モバP「(志希が俺に抱きついて、胸に顔を埋めて深呼吸している)」

モバP「(すぐ下の、志希の頭、髪から仄かな香りがする)」

モバP「(思い切り抱きしめて、豊かな髪に顔を突っ込むと、一気に緊張が解けた)」

志希「ふんふん……ハスハス……あたしの髪、いい匂いするでしょ?」

モバP「シャンプー変えたのか? あの香水に似た匂いだけど」

志希「まあね。あたしもいろいろ試行錯誤してんの。どっかの誰かが堅物だからね」

モバP「……」

モバP「(志希の言いたいことは、分からなくもない)」

モバP「(しかし、自分がプロデューサーであることを忘れたくはなかった)」

モバP「(志希との間にまだ一線を引けていると、思っていたのだ)」

志希「ハッスハス~。あー、ほんといい匂い」

志希「これ全部あたしのだからね。他の女に嗅がせちゃダメだよ」

モバP「……おい。勝手に決めるな」

志希「もう決まったの。キミはあたしのなんだから、他所の女の人にほいほいついて行っちゃダメだよ」

志希「ふらふらしてたら、あたしの匂いも嗅がせてあげないんだからね」

モバP「(職業に殉ずるつもりがあるなら、ここは突き放すべき場面だろう)」

モバP「(でも、俺にはできなかった。志希の香りのせい……というと、自分の流されやすさを志希に責任転嫁しているみたいだが)」

モバP「(実際、この匂いを長時間嗅げないと、どうも落ち着かないのだ)」

モバP「……? おい、足音、か? 志希、離れろ。人が来るぞ」

志希「え~。もうちょっと! もうちょっとだけ」

モバP「ダメだ! 何言ってんだ、出るぞ!」


モバP「(いち早く人の接近に気づけたお陰で、問題にはならなかった)」

モバP「(しかし、外であんな事して、挙句人に見つかりかけるなんて、今まではありえなかったことだ)」

モバP「(いよいよあいつからの悪影響が深刻になってきたか、と思っていた日に)」

モバP「(唐突に志希が切り出した)」

志希「ねえ。今度、三日間お休みが欲しいんだけど」

モバP「オフか? まあ志希は最近良く働いてくれてるから、それくらいは構わんが」

志希「おおっ、話が早いねえ。ありがと。ちょっと試してみたいことがあってね」

モバP「試す、というと……例の香水か?」

志希「あー、まあ、あれ関係だね。試すというか仕上げというか」

志希「結果が出たらすぐに分かると思うよ。楽しみにしてて」


モバP「(趣味が失踪というだけあって、志希は割りと気まぐれにいろいろなところに出没するが)」

モバP「(まるまる三日間休むというのは結構久しぶりだ)」

モバP「しかし、だからといってどうということはない。3日会わないくらいで、何がどうなることもない」

モバP「そう思っていた」

モバP「志希のいない一日目が終わるまでは」

モバP「(アイドルがいないからといってプロデューサーが暇になるかというとそうでもなく)」

モバP「(いつもとそう変わらない遅い時間まで残って仕事していたわけだが)」

モバP「疲れた……ダメだ、頭が回らん」

モバP「なんで独り言なんて言ってんだ、俺……ああくそ、ダルいな……」

モバP「(特にきつい仕事があったわけでもないのに、何故かやたらと疲れる)」

モバP「(プロデューサーの嗜み、スタミナドリンクでも飲むとするか)」

モバP「(小瓶の蓋を開けて飲み口に鼻を近づけると、人工的な刺激臭がする)」

モバP「……今更だが、ひどい臭いだなこれ。よくこんなの、喜んで飲むよ。まったくプロデューサーってやつらは……」

モバP「(鼻を摘んで一気に飲み下す。いつもなら、間もなく効果が現れて活力が戻ってくるのだが)」

モバP「全然ダメだ……不良品じゃねえのか。もう一本飲むか?」

モバP「(いや、でもあんな臭いのもう一本飲むなんて耐えられん。もっといい匂いが嗅ぎたい。例えば……志希みたいな)」

モバP「いや、いやいや今のはおかしいだろ。なんで志希が出てくる。まるで中毒……!」

モバP「(そのことについて、俺はそれ以上考えなかった)」

モバP「(何か、猛烈に嫌な予感がしたからだ)」

モバP「いや、もうとにかく帰ろう。帰って寝よう。年寄りじゃあるまいし、寝たら疲れも取れるさ」

モバP「(こういう、根拠の無い希望的観測は大抵裏切られる)」

モバP「(社会人なら、その程度分かってて当然なのに、な)」

ちひろ「おはようございま……って、モバPさん? なんか、顔色悪いですね」

モバP「ええ、まあちょっと……疲れてて……」

ちひろ「そうですか。良かったら、スタドリ飲みますか?」

モバP「いえ、もう飲んだんで。多分大丈夫だと思いますよ」

ちひろ「そうでしたか。でも、気をつけてくださいね。志希ちゃんが帰ってきたと思ったら今度はモバPさんがいない、なんてことになったら困りますからね」

モバP「その心配は無いですよ、多分」

モバP「(志希、早く帰って来い。なんでこんなことになってんだよ、俺)」

モバP「(お前の頭脳で……いや、お前の臭いで、俺を癒してくれ)」

モバP「(香水が、志希の匂いがないと俺はもう……)」

その翌日。

ちひろ「おはようございま……モバPさん!? どうしたんですか、救急車呼びますか?」

モバP「いえいえ、その必要はありません。だいじょうぶですよ」

ちひろ「でも……顔色、昨日よりひどくなってません? 苦しくないんですか?」

モバP「そんなになってますか。まあきょうはそんなに外回りにいきませんが」

ちひろ「……モバPさん、肝臓の病気とか、無いですよね?」

モバP「ありませんよ。ありませんとも。心配ごむよう」

ちひろ「だったらもう少し声張ってくださいよ。怖いですよ」

モバP「(正直いって、そんな余裕は無い)」

モバP「(すこし志希の匂いから離れただけでこんなに苦しむことになるとは思いもよらなかった)」

モバP「(何をしてても嗅覚が冴えて、嗅ぎたくもない臭いを嗅がされて、もう失神しそうだ)」

モバP「(志希の身体、志希の香水、志希の汗、なんでもいい、あいつの匂いを嗅がないとダメだ)」

モバP「(唯一の支えは、明日になったら志希が帰ってくるということだ)」

モバP「(志希ならなんとかしてくれる。志希なら俺を助けてくれる)」

モバP「(こっちの希望的観測は、まだ信用できそうな気がした)」

ちひろ「とにかく! 今日はモバPさん、残業禁止です。仕事が終わったらすぐ帰って、休むなり病院行くなりして下さい。お願いしますよ」

モバP「(志希がいないなら、家だろうが事務所だろうが大差は無いが)」

モバP「(一番に帰れるなんて、珍しい。ありがたく休ませてもらうとしよう)」

モバP「(早く明日になれ)」


モバP「そんなこんなでいつの間にか家に戻ってきていた」

モバP「(明日になれば志希をハスハスできる。とにかく今こうしているだけで辛い)」

モバP「酒でも飲んで、寝よう。明日になれば、大丈夫なはずだ」

ここから後半です。

 そう思っていた矢先、ドアホンが鳴った。
 狭いアパートの室内、呼び鈴の音は殊更に高く響く。
 何か、言い知れぬ期待感のようなものに突き動かされ、玄関扉を開ける。
 と、見慣れた美少女が飛び込んできた。

「うう~ん……あは、やっぱいいね、キミ。ひっさしぶり……ハスハス、ハスハス♪」
「志希……なんで、ここに」

 今日まで休みを取っていたはずの志希が、どういうわけか自分の部屋まで来ている。
 奇妙な状況だが、彼女を拒む気にはなれない。
 久しぶりに嗅ぐ志希の芳香が、何よりも俺を癒していたからだ。

「んー……んふふ、あー、いい匂い。ね、あたしがいなくて、寂しかった?」
「ああ。お前の匂いが嗅ぎたくて嗅ぎたくて……狂いそうだったよ」
「ふっふふ。だよねー。あたしもだよ。
 ちょっと焦らしてあげるだけのつもりだったのに……こんなにされちゃって。ほんとに罪な男だよ、キミは」

 意味深な言葉を問いただすこともできない。
 ただ、志希を抱きしめて体臭を嗅ぐことしかできない。
 志希が俺を、壁まで押していくのを止めることができない。
 女の子の細い腕でトン、と突かれただけで、足を投げ出して座るような体勢であっさり押し倒されてしまった。

「は……あぁー、いい匂い。キミの家、キミの匂いが染み付いて、あ、ぅんっ……!」

 少し涙目になって顔を真っ赤にして小さく震えている志希が愛しい。
 普段の、あの深遠な知性はどこへ行ってしまったのか。
 飢えた獣のような雰囲気は今の俺とそっくり同じだ。

「……うー……3日くらい、我慢できるはずだったのになあ。こんなにされちゃうなんて。過小評価してたよ」

 言いたいこと、聞きたいことはいろいろあるが今はそれどころではない。
 志希と密着して、抱きしめて顔を寄せて、その汗ばんだ肌や豊かな髪の芳しさに酔うのが先だ。
 ほんの僅かな香りも逃したくなくて、1mmでも離れたくなくて腕に力を込める。
 服と下着越しに、志希の大きな胸が変形するのが分かる。
 汗ばんだ乳からも良い匂いがするように思えて、恥ずかしいくらいに心拍数が上昇する。
 襟からあの香水の匂いがして、何度も深呼吸する。
 汚い世界の悪臭に苛まれ続けた俺の心身がどんどん癒やされていく。
 久しぶりにこうしてお互い嗅ぎ合うことで、俺はようやく回復できた。

「あたしが休んでる間、どうだった? 辛かった? ……って、聞くまでもないかな」
「志希がいなくて、大変だったよ。死にそうだった。もうこんなの……耐えられん」
「そっかそっか。キミもようやく、あたしみたいなヘンタイになってくれたんだね。嬉しいよ」

 言うと、志希は顔を上げて目を閉じる。唇を尖らせる。
 何を求めているのかは察せたが、しかしまだ俺の心には一片の理性が残っている。

「……志希。俺達は……」
「もう、そういうのいいの。キミはあたしの言うこと聞かなきゃダメ。
 日本にも、外国にもキミみたいなのはいなかったんだから。絶対離さないよ。
 キミは、あたしのものだ」

 躊躇っていると、志希は俺の背に両手を回し、強引に唇を押し付けてきた。
 柔らかい舌が、俺の口の中に滑りこんでくる。唾の音がいやらしく鳴る。
 技巧よりも勢いが勝る、吸い尽くすようなキス。美少女の熱烈な求めに、屈するほか無い。
 口の小ささの割には長めな舌に、俺の舌を絡めてみる。
 ぬるりとした感覚と唾液の匂いそして味が、痺れるほどに心地いい。

「……ちゅる……んちゅ、……っは」

 さんざん人の口を味わい尽くして、志希がにっこり笑う。
 白いシャツの胸元がはだけてブラが垣間見えている。
 紅い肌と白い下着のコントラストに、思わず唾を飲み込む。リボンを緩めながら、志希が言った。

「……すごいね。エッチな匂いがプンプンするよ。そんなにコーフンしたの? そんなに、あたしのこと好き?」
「当たり前だろ……こんなことして、落ち着いてられるか……」
「そうだよね。じゃあ、もっと凄いことしちゃおうか」

 興奮のあまりか、やや覚束ない手つきで志希が俺のズボンを脱がそうとする。
 突然のことで反応が遅れたが、どのみちここまで来てしまって、何事も無く別れるなんて絶対に無理だっただろう。

「志希、お前、やっぱり……」
「アイドルとプロデューサーだから、とかは聞きたくないよ。
 あたしもキミも、とっくにドヘンタイなんだからさ。ヘンタイゴッコなんかじゃ、満足できないよね。
 キミのしたいコト、なんでもさせてあげる。絶対、嫌いになんかならないから……あたしにも、好きなコトさせて。ね?」

 白く長い指で、いつの間にか下半身を裸に剥かれてしまっていた。
 志希と抱き合って体臭を嗅ぎあってディープキスして胸を押し付けられて、硬くなりきった男性器を見られる。
 羞恥と興奮で汗ばむそれに、志希は端正な鼻を近づけ、一度深呼吸した。

「……っふぅ……すぅー……はぁー。んー…ふっ、ふふ、ふふふ」
「志希?」
「ダメだよ、こんなの。犯罪的だよ。こんな匂い嗅いじゃったら、なんにも解んなくなっちゃうよ。これは、あたしのものだよ」

 言うなり、志希は口を開け、我慢汁を漏らし始めている亀頭を口に含んだ。
 温かい粘膜に先端を包まれ、一瞬で出してしまいそうなのを何とか耐える。
 竿を咥えながらも志希は鼻で大きく深呼吸しており、根元の方までゆっくり飲み込んでいこうとしている。
 激しく搾り取るというよりはじっくり味わう感じのフェラで、志希はあまり頭を振ったりせず、唇で竿をしごいて舌で先端を賞味している。
 射精しそうなのを一度こらえたせいか、いつになく先走りが多い。だらだら溢れる粘液を志希は舌先で舐め取り、ぴちゃぴちゃと音を立てて飲んでいく。

「んちゅ、じゅる、るるる……んふ、もっほかんりへ……おひる、はふはふはへへ……あむ」

 舐めて飲み込むまでの間に口の中に臭いを充満させて、その臭いを楽しんでいるらしい。
 細い喉を上下に動かして粘液を飲み込むたびに、志希の喉奥が蠢いて男性器を責める。
 小さい口で大人のものを飲み込もうとするせいで、時折先端が喉頭に当たる。
 硬い肉の壁に接触するのもまた気持ちよくて、口と舌だけで搾られるよりもずっと早く屈しそうになる。
 じゅるじゅるいう唾液の音もひどく淫らで、唾塗れにされて変に興奮してしまう。
 喉を犯されて苦しくないはずはないのだが、気管近くまで男性器に侵入されて涙を流す志希の表情には明らかに悦びが混ざっている。
 這いつくばるような姿勢でフェラチオしながら、志希は上目遣いの視線を投げてくる。
 どこまでも貪欲な眼と、ブラがズレて隠しきれなくなった胸チラとで、もう我慢ができなくなる。

 臭いで分かったのだろうか、何も言わずとも志希は察したようで、目を伏せて唇をきゅっと締めて、受け入れる体勢に入った。
 志希が動くたびに揺れる髪、そこから立ち上る汗の香りに惑わされ、そのまま俺は射精した。
 舌の上に思い切りザーメンを注がれ、さすがの志希も動きを止める。
 口を強く閉じて、精液を零さないように耐えているらしい。
 何日も抜いていなかった多めの精液を、志希は頬を膨らませることで何とか口に溜める。
 出し終わると、唇を真一文字に引き結んだ志希が顔を上げた。
 眼を軽く閉じて、顎を開けて鼻で深呼吸。震えながら、腹の膨らみが分かるくらいのを何度かした後、ゆっくり口を開けた。
 口の中が精子で白く染まっている。
 これら全部自分の出した子種だと思うと、背徳感で身が震える。
 外気を取り込んで、また何度かぴくぴく痙攣して、白濁を飲み込んでいく。
 湧き出てくる唾液と混ぜ合わせて、粘り気の有る液体を少しずつ飲み下していく。
 そのたびに喉が動いて、今アイドルの食道を自分の精液が通っているのだということを嫌でも認識させられる。
 自分の体を抱くようにして精飲を終え、舌にこびり付いたのを前歯で削ぎとってそれも飲んで、ようやく一息ついた。

「あー……これ、すっごい。
 もうダメ、これなしじゃ生きていけないよ。あたしの知性の敗北だよ。今まで何人の娘を中毒にしてきたの?」
「お前、何言って……」
「ねえ、もう今さら、したくないなんて言わないよね。口に出したら、次はこっちだよ、ね」

 立ち上がって、俺を見下ろしながら志希がスカートの中に手を入れ、パンツを脱ぎ捨てる。
 白くて飾り気のない下着の、股の部分がべっとり濡れている。もう履けないくらい汚れたパンツは、股との間で糸を引いている。
 散々股間と精液の臭いを楽しんで、少し落ち着いたように見えなくもない志希だが、まだ満足には程遠いらしい。
 スカートの中でぬちゃぬちゃ音を立てながら、壁にもたれかかった。

「お願い、もう待てない。しよ。キミの遺伝子、あたしにちょうだい」

 言いながら、自らスカートを捲って濡れた女陰を魅せつけてくる。
 少し泡だった粘液の匂いが強烈。髪や香水と比べるとお世辞にもいい匂いとはいえないが、もはやそんなことはどうでもいい。
 壁に手をつかせて胸と腹とに手を回して、まだ萎えていなかった男性器を一気に挿入する。
 狭い膣道がめりめりいうが、大量の愛液のお陰で挿入そのものは簡単だった。
 精液と唾に塗れた竿を挿れたことで、志希の女の臭いが一層強まる。
 壁に追い詰めるようにしてうなじの匂いを嗅ぐと、汗と交じり合って生々しくなった香水の芳香。
 バックで犯しながら首筋に唇を這わし、髪と香水の匂いを嗅ぐと、志希は喜びに悲鳴を上げた。

「……あは、いい、それいい……! もっとハスハスして、犬みたいにぃ……!」

 息を吸い込むごとに、自分の内側から志希のものになっていくような気がして興奮が抑えられない。
 一度達した竿を無理にでも勃たせる魔性の香りに包まれて、欲望のままに腰を振る。
 志希の膣は意外と反発が強く、思い切り押し込むと少し固めの肉が侵入物を押し出そうとしてくる。
 そんな風にされると男は気持ちよくなって、もっと犯したくなるのを分かっているのだろうか。
 肉と肉がぶつかり合って、パンパンと下品な音を鳴らす。
 志希の尻や腰から汗が流れて飛び散って俺を煽る。
 玄関先で欲望のままに交わる、まるで獣のようなセックスに俺たちは溺れていた。

「あひっ……! ひゃ、あ、い、いっ……!」

 短く低い声とともに、志希の締りが一瞬強まる。
 もしかしたらイったのかもしれないが、それを確認している余裕は無い。
 逃げられないよう腰を捉えて、生の女性器を何度も蹂躙する。
 男根を出し入れするごとに志希の臭いは強まり脳を揺らし、興奮とともに理性が失われる。
 愛液と先走りでどろどろになった女性器から強い匂いがする。深呼吸すると頭がクラクラして、思わず首筋に吸い付いた。

「ひ……! そ、こ……!?」

 予想外の場所にキスされて志希が一瞬うろたえる。
 しかしそんな狼狽もすぐ快感に押し流される。志希はバックで疲れながら、俺の頭、髪の毛の中に顔を埋めてきた。
 今日はまだ風呂に入っていないから、頭の臭いはそれなりにあるだろう。二、三度深呼吸した志希は、一瞬息を呑むと股から透明な液体を漏らした。

「あ、あひ、にゃはは、噴いちゃった、よ……! キミのせい、だからね……!」

 足元の水たまりからは、尿とも愛液ともつかない生っぽい香り。一度では終わらず、俺が男性器で子宮を突き上げるたびに志希の股から透明な液体が噴き出る。
 玄関先をびっしゃびしゃにして、志希は今にもくずおれんばかりに感じている。
 温かい液体を足にかけられて、俺の興奮も抑えられなくなってきた。耳たぶと頬にキスして、言う。

「……もう、出る……!」
「ひ、いいよ、だしひゃって……! あたひのナカに、マーキングしてぇ……!」

 言われるとほぼ同時に、膣奥目掛けて射精した。
 一回目よりも多いくらいの精液が、志希の胎内に注がれる。
 潮と愛液とですでに濡れきっていた彼女の膣は、更なる液体を貯めきれず、交じり合って異臭を放つ液体をだらだら垂れ流す。
 背後から抱きすくめられて生で射精されて、志希は荒く深呼吸している。
 顎を上げて喉を反らして、汚れた空気を肺いっぱいに吸い込もうとしている。
 汗だくな志希を離したくなくて、射精が終わるまで俺は彼女を抱いたままでいた。

「あ、あは、すっごかったぁ……ねー、あたしもう立てないよ。抱っこしてぇ」

 男性器を抜くやいなや床に崩折れた志希に手を貸し、お望み通りのお姫様抱っこでベッドまで運ぶ。
 寝かしてやって、少しは休めるかとも思ったのは考えが甘かった。

「くんかくんか……あはぁ~っ……オスの臭がする。しばらく洗濯してなかったんだね。えらいえらい……」
「洗ってないのを褒められるのは、初めてだな」
「当たり前だよ……こんな、ハスハスしてるだけで妊娠しちゃいそうなニオイ……んふ、ハスハス、んふふ……」

 緩んで蕩けて、見たことがないくらいひどい顔の志希。
 変質者みたいな表情で、ベッドに寝転んで俺の掛け布団を抱きしめて顔を突っ込んで悩ましげに悶えている。
 スカートはめくれ上がりパンツは玄関に脱ぎ捨てたまま、シャツのボタンは外れブラジャーはズレて、汗と汁とで全身ひどく濡れ、臭っている。
 まるで強姦された直後のような有り様だが、白い粘液で汚れた股をもどかしげに弄る仕草は、被害者というより加害者のそれに近い。
 露出しっぱなしだった下半身に再び熱が回る。
 志希を仰向けに寝かして、脚の間に割り込んで肩をベッドに押し付けると、粘ついた汗の淫らな香りが広がった。

「んー、布団もいいけど……やっぱり本物が一番だよね。
 もっと、もっとヘンタイになっちゃおうよ。絶倫プロデューサーくん♪」

 すでに二回射精したが、欲情は一向に収まらない。
 完全に勃起した竿を二人の汁でどろどろな穴に挿し込んでいく。
 締りのきつさは相変わらずだが、水分が多いためか先程よりも随分やりやすい。
 奥まで挿入すると、組み伏せられた志希が一度びくんと震えた。
 ベッドと俺自身、上下から臭いで挟まれると感度も上がるのだろうか。
 と、そんな風に思う力も無くなっていく。志希の匂いのせいで余計なことは考えられない。
 腹側の膣壁を擦るように出し入れを繰り返す。
 バックの時には余り触れられなかった部分を連続で刺激されて志希が鳴く。

「……にゃんっ! そ、そこ、そこいい、もっとして、ぁは……!」

 地声寄りの低めの声が俺の興奮を煽る。
 パンパンと股を打ちつけながら、空いた手でシャツのボタンを強引に外す。
 丁寧に外す余裕など無く、ブラを喉元まで強引に押し上げる。
 露わにされたおっぱいは大きく丸く、何より良い匂いがする。
 もう俺は志希の香りに抗う術を持たない。
 誘われるがまま、ぷるぷるの美乳に顔を寄せ、控えめに勃起した乳首を口に含んだ。

「ぅあっ……あ、おっぱい……美味しい?」

 残念ながら母乳は出ないが、それでも十分美味い。
 コリコリした乳首を歯で甘く責めると下の方から鋭敏な反応が帰ってくる。
 志希の生乳に顔を埋めると肌の匂いと汗の匂いが鼻に広がってクラクラする。
 普通の正常位から、抑えつけるようなもっと荒々しい移っていくほどに、志希の喘ぎ声も大きくなっていく。
 敷布団を掴んで喉を反らせる志希が息を大きく吸い込むたびに、身体と膣が震えて俺を責めた。

「あん、はっ、いい、イイよ、こんなにいいなら、もっとはやく……」

 腰を使いながら乳を吸い、膣奥を突いて感じさせる。
 それほど長く耐えられるわけでもなく、もう耐えられなくなってきていた。

「……志希。志希、志希……!」
「きて、きて。キミの匂い、カラダの、奥に……!」

 腰と膝の裏に、志希の長い脚が絡みついている。腰を引けず膣内射精する他ない状態だが、かえってそれが興奮する。
 脚に捉えられて一層奥まで突き込む。子宮に一番近いところをごりっとえぐると、志希の身体が強張る。
 脚で固められそれ以上引けなくなって、俺はそのまま射精した。

「……!」
「ん、ふ、もう、ビクビクしてぇ……今、出てるんだね。いい匂い……」

 中出しされながら、志希はうっとりとした表情を浮かべる。
 今夜は後何回、こうして志希を貪れるだろうか。俺は既に時間の感覚も失いつつあった。

 翌日。
 志希と嗅ぎ合うことで完全に復活した俺を見て、ちひろさんは随分安堵したようだった。
 俺達の間に起こったことを知られる訳にはいかないが、今のところ怪しまれている様子はない。
 何ら咎められること無く、俺と志希は二人で仕事に出かけることができた。

「じゃあ、今日も頑張ってこい。終わる頃には、迎えに来るから」
「えー。あたしのこと、見ててくれないの?」
「そうしたいのはやまやまだが、ちょっと仕事が貯まっててな。待たせるつもりはないから、勘弁してくれ」
「もーしょうがないなあ。キミもあたしも、もうひとりじゃ頑張れないの分かってるでしょ?」

 彼女の言う通り。
 俺とて、できるならば一日中志希といたい。すぐ隣で、あの香りを感じていたい。
 お互いにお互いの痛みを理解しているから、志希もそれ以上強く主張することはない。
 テレビ局の物陰に隠れて、抱き合って匂いを嗅ぎ合うことで許してくれる。

「ハスハス~。んーいい匂い。終わったら、また嗅がせてね」
「ああ。その時は、俺にも……」
「わかってるって。ちゃんと責任とったげるから。
 そうだっ」

 言うなり、志希はシャツの裾から手をいれ、ブラをいじりだした。
 まさかここでする気かと思うも、さすがにそこまで無謀な女ではない。
 パンツとお揃いの、白のブラを俺に手渡して嬉しげに笑った。

「我慢できなくなったら、これ使っていいよ。昨日から洗ってないから、結構ハスハスできるはず~。
 擦りつけたりぶっかけたりして、キミのニオイもいっぱいつけてくれると、嬉しいな」

 わずかに汗の染みこんだブラジャーを受け取る。
 今日の昼休みはこれに決まりだな。そう思いながら、俺は志希を送り出した。

以上です。

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