ことり「攻めるより攻められたい」 (92)

ことり「……」

真姫(ことりがずっとこっち見てる)

真姫「何よ、どうしたの?」

ことり「!?」

真姫「いや、そんなに驚かなくても」

ことり「ご、ごめんね」

ことり「……」

真姫「……」

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真姫(あれ? 何でこんなに気まずいわけ?)

真姫(別にことりと話すのに慣れてないわけでもないのに)

真姫(というか、ことりの態度がよそよそしい感じがするような……)

ことり「……」

真姫(なのに、まだこっち見てる)

真姫「ことり」

ことり「は、はいっ!」

真姫「……何かあったわけ? そんなに私の方見て」

ことり「え、な、何でもないよっ!」

真姫(あやしい)

真姫(それに今、お腹おさえたし)

真姫(まさか腹痛? それにしても元気そうね)

真姫「隠し事なんかしないでよ。気になるじゃない」

ことり「かっ、隠し事なんてしてないよ!」

真姫(ますますあやしい)

真姫「ほら、まだ誰も部室に来てないんだから」

ことり「ま、真姫ちゃん近い……」

真姫「そんなのどうでもいいわよ。早く教えなさい」

ことり「ダメだよぉ……」

真姫「何で」

ことり「真姫ちゃん、ことりのこと変な子だって思うもん」

真姫(さっぱりわからない……)

真姫「そんなこと思わないわよ」

ことり「思うよ」

真姫「思わない」

ことり「おーもーうー!」

真姫(埒が明かないわね)

真姫「いいから教えなさい」

ことり「あぅ」

真姫「何顔赤くしてるのよ」

ことり「うぅぅ……」

真姫(……仕方ない。最終手段ね)

真姫「1回だけお願いごと聞いてあげるから教えなさい」

ことり「ほんと!?」

真姫(……現金な子ね)

ことり「あ、あのね……」

真姫「うん」

ことり「夢で真姫ちゃんに会って……」

真姫(夢で? 夢で私を見たからってそんなに……)

ことり「……キス、されたの」

真姫「……」

ことり「……おへそに」

真姫(ことりの中の私のイメージって何なの)

ことり「ま、真姫ちゃんのせいじゃないよっ!」

ことり「ちょっと、意識しちゃって……」

真姫(ちょっとどころじゃなかったわよ)

真姫「はぁ……で、ことりはおへそにキスしてほしいわけ?」

ことり「えっ!?」

真姫「いや、意識してたみたいだから」

ことり「……」

真姫「?」

ことり「……お、お願いします」

真姫(まあそのくらい、無茶なお願いよりは簡単よね)

真姫「ん。おへそ出して」

ことり「それはちょっと恥ずかしいから……真姫ちゃん、もっと近付いて」

真姫「え?」

ことり「こっち……」

真姫「このあたり?」

ことり「うん」

ことり「…………は、はい。上着持ち上げてるから、なるべく早く……」

真姫「……」

真姫(なんか変な気分ね。ことりのお腹を見てるなんて)

ことり「ま、真姫ちゃん早く」

真姫「あ、うん」

真姫「……行くわよ」

ことり「……」

真姫(簡単だと思ったけど、これって意外と……)

ことり「う、うぅ……そんなに見ないで」

真姫(いや、わかってるんだけど……)

真姫「綺麗ね」

ことり「!?」

真姫「あ、ごめん」

ことり「も、もぅ……真姫ちゃんってばぁ……」

真姫(かわいい)

真姫(もっと悪戯したい気分になるわね)

真姫「触ってもいい?」

ことり「え、そ、その……」

真姫「ダメ?」

ことり「い……いいよ?」

真姫「何で疑問系なの?」

ことり「だ、だって、変な感じだから……」

真姫「そう。私も変な感じよ」

真姫(これじゃ私の方が断然変な子よね)

真姫「触るわよ」

ことり「う、うん」

真姫「……」

ことり「……っ」

真姫(すべすべ……)

ことり「まっ、真姫ちゃんっ……」

真姫「何?」

ことり「くすぐったい……っつ」

真姫(……もっと、そんな顔が見たい)

真姫(こうやって……撫でるように)

ことり「ひゃっ」

真姫「かわいい声ね」

ことり「真姫ちゃんっ……早く……」

真姫「ふふ、まだよ」

ことり「ひゃあんっ」

真姫「まだ指でなぞっただけよ?」

ことり「ま、待って、声が……声が出ちゃう」

真姫「そう……だったら塞がなくちゃ――――――――

~~~~~~~~




ことり「よし、シミュレーションかんぺきっ!」



>>14 酉抜けた





ことり「ちゅー」

真姫「どうしたのことり。タコの真似?」

ことり「ふっふっふ。私は今日、予知夢を見たのです」

真姫「また?」

ことり「うん。だから今回こそ正夢に……」

真姫「いつも言ってるでしょ。起こらない出来事を見るのは予知夢じゃないって」

ことり「でもでも」

真姫「でもじゃないわよ。またわけのわからないことする気?」

ことり「わけのわからないことなんかじゃないよぉ」

真姫「この前だって、縄でぐるぐる巻きにされて椅子に縛り付けられてたじゃない」

ことり「あれは穂乃果ちゃんと海未ちゃんにお願いしたの」

真姫「え? 自ら縛ってもらったの?」

ことり「うん。真姫ちゃんの反応を見たくて……」

真姫「いつものことだと思って放置してたわね」

ことり「放置プレイってやつだね」

真姫「だってすごく楽しそうだったもの」

ことり「それはそうだよ。抵抗できない私に真姫ちゃんが……まあ何もしてくれなかったけど」

真姫「うぐ……」

ことり「というわけでリベンジです。今回は真姫ちゃんに、おへそにキスしてもらいます」

真姫「おへそ? ていうか何、リベンジって」

ことり「さあ!」

真姫「わっ、急に何?」

ことり「お願いします!」

真姫「しないわよ。それにお腹だしてたら風邪引くわよ?」

ことり「真姫ちゃん暖めて」

真姫「バカは風邪引かないって言うし、大丈夫かしら」

ことり「真姫ちゃんひどい」

真姫「ひどくて結構よ」

ことり「ちぇー」

真姫「……何で近づいてくるわけ?」

ことり「こっちから来たよ」

真姫「いや、だから」

ことり「逃げ場はないよ!」

真姫「あるわよ」

ことり「じりじり」

真姫「来ないで」

ことり「もう1回!」

真姫「……何なのよもう。私に怒られたいわけ?」

ことり「というか、真姫ちゃんに攻められたいなぁ……みたいな」

真姫「攻め……?」

ことり「そうだよぉ。手を繋ぐのも、抱きつくのも、キスをするのもぜーんぶ私からだもん」

真姫「それは……そうだけど」

ことり「さあ! 本能の赴くままに!」

真姫「……ことりがこんなに変態になったのって、私のせいなのね」

ことり「しょうがないよ。真姫ちゃんはヘタレだもん」

真姫「むかつく」

ことり「その怒りでヘタレ脱却を……」

真姫「しないわよ。うるさいわね」

ことり「真姫ちゃんのいけずー」

真姫「ことりも毎回キスを迫ろうとするのはやめなさい」

ことり「真姫ちゃんがキスしてくれればやめるよ?」

ことり「あ、唇のケアは万全です。なんたってこのリップクリームがあれば……」

真姫「いや、だから」

ことり「カバンに入ってるから、真姫ちゃんも使う?」

真姫「いらないわよ。ていうかカバンについてるそのリボンって……まだつけてたの?」

ことり「もちろんだよっ。あ、私がリップ塗って真姫ちゃんにキスすれば……」

真姫「バカ。そんなの軽々しくできないわよ」

ことり「重いキスをください」

真姫「キスに重いも軽いもないでしょ――――――――」

ことり「これが軽いキスだよっ。ちゅっ」

真姫「!?」

ことり「重いのはわからないけど、これくらいなら……」

真姫「……」

ことり「唇をぶつけただけ……なのに……」

真姫「……バカ」

ことり「……その反応はずるい! やめられない!」

真姫「ちょっ、やめっ……んん」

絵里「ハラショー」

希「いつも通りやね」

にこ「楽しそうで何よりだわ」








絵里「真姫」

真姫「何?」

絵里「真姫、ことりと仲良しよね。いつからそんなに仲良くなったの?」

ことり「ふっふっふ……真姫ちゃんの傍にことりの影あり」

ことり「真姫ちゃんのためなら、たとえ火の中水の中草の中森の中、ちょっと飛ばしてスカートの中」

真姫「そこも飛ばしてほしかったわ」

にこ「絵里、これはバカップルよ」

希「そうやね。真姫ちゃんもまんざらじゃなさそうやし」

真姫「うるさい」

希「あ、照れた」

ことり「かわいい」

真姫「……」

絵里「告白はどっちからだったの?」

にこ「それ、聞いたことなかったわね」

ことり「告白はことりからだよ」

希「そうなんや。てっきり真姫ちゃんからかと」

真姫「それ、どういう意味?」

絵里「……真姫とことりってそもそもそんなに仲が良かった?」

真姫「……あれ、そういえば、ことりと一緒にいるのが増えたのっていつからだっけ?」

ことり「ええっ、覚えてないの?」

真姫「あ、ごめん……」

ことり「ううん。私しか知らないからいいの」

真姫「ぐぬぬ……」

ことり「それじゃ、真姫ちゃんと私の馴れ初めからお話ししましょう」









それは夏の、とても日差しの強い日でした。

真姫ちゃんは私に話しかけてこう言います。

「キスがしたい」

戸惑ってしまいました。

だって私は、そんなことはしたことがありません。

でもなぜか、その時の私はその未知への関心に毒されていたのでしょう。

何も言わず、頭を垂れるように首肯を示すことしかできませんでした。

私が次に顔を上げると、真姫ちゃんが何かを手に持っていました。それは、ただのマフラータオル。

どこからともなく取り出されたそれは、真姫ちゃんの手によって視界を奪う道具に変貌しました。

まるでガラス細工を扱うように繊細な手つきで、私を暗い闇の中に突き落とす真姫ちゃん。

そっと私を包まれたそれからは、微かに真姫ちゃんの匂いがしました。

それに安堵する私。

しかしそんな一瞬の隙も許さず、見えなくなった視界の外でゆっくりと誰かが私の頬に触れます。

緊張のあまり、ぎゅっと拳を握ってしまいました。

キスをしたい、という私の意思を確認したのかどうか、私は見ていません。

もしかすると無理矢理にでもする気だったのかもしれません。

でもそんな背徳さえ、この状況を盛り上げるためのスパイスの一匙にすぎなかったのです。

次にまた、誰かが私の頬に触れました。

その柔らかい感触は、私の知らない感触でした。

甘くてとろけるマシュマロのような、そんな感触。

「次はどこがいい?」

悪魔の囁きが聞こえてきます。

そんな甘い、甘くて怖い言葉の響きに魅入られて私は――――――――






にこ「ちょ、ちょっと!」

ことり「え?」

にこ「おかしいでしょ! 馴れ初めを語るはずなのにどうしてそこまで関係が進んでるのよ」

絵里「ハラショー」

にこ「ほらまた絵里がハラショーしか言わなくなった」

希「えりちはそういうのに耐性がないからなぁ」

絵里「うん」

真姫「で、本当は何なの」

ことり「ああ、真姫ちゃんと衣装の話して怒られた時だよ。私が真姫ちゃんと仲良くなりたいって思ったのは」

真姫「……あー。あの時ね」

にこ「怒られた? 何、ことりは罵られたいと思ったわけ?」

ことり「違うよぉ! ……今はそうだけど」

真姫「ちょっと待って、今何か聞き捨てならない台詞が」

ことり「それは春が終わり、夏が始まる頃……」

にこ「って、さっきのなんだったのよ」

真姫「ことりの妄想よ」

ことり「現実になってほしいね」

真姫「うるさい」







~~~~~~~~

真姫「衣装って全部ことりが作ってるのよね」

ことり「うん。あ、次の衣装はこんな感じだよ。まだ細部は完成してないんだけど」

真姫「ふーん……」

ことり「……ダメ、かな? よかったら着てみてくれない?」

真姫「……前の衣装に似てる」

ことり「えっ」

真姫「ここの部分とか、そことか。スカートも……」

真姫「ちゃんと作ってるの?」

ことり「!」

真姫「……まあいいけど」

~~~~~~~~





ことり「なんてことがあって、真姫ちゃんは部室から出て行っちゃったの」

絵里「真姫、トゲトゲしてるわね」

真姫「……昔のことよ」

にこ「あ、照れてる」

希「かわいいなぁ」

真姫「ち、違うってば」

ことり「この話にはまだ続きがあってね」

真姫「私が謝ったところでしょ」

ことり「ううん、その前の話」

真姫「え?」

ことり「私が出て行った真姫ちゃんを追いかけようとして、1年生の教室に行ったの」

真姫「……まさか」










~~~~~~~~

ことり「真姫ちゃん、教室にいるかなぁ」

ことり「……ん? 誰かの声がする……」





花陽「謝り方?」

凛「ことりちゃんに言いすぎたってどういうこと?」

真姫「……衣装が前と被ってるって言っちゃったの」

花陽「衣装?」

真姫「そう。せっかく作ってくれたのに、ちゃんと作ってるのか、って」

凛「……真姫ちゃん不器用だね」

真姫「うるさいわね、言われなくてもわかってるわよ」

凛「それで、なんて言って出ていったの?」

真姫「まあいいけど、って……」

花陽「そっか……うん」

真姫「私も曲作ってて、ちゃんと作ってるかなんて言われたら、ものすごく腹が立つもの」

真姫「そう思ったら、どうしていいかわからなくて……逃げてきた」

花陽「人のことを思いやれるようになったんだね、真姫ちゃん」

真姫「……子どもみたいに言わないでよ」

凛「凛たちはまだ子どもにゃ。凛だってかよちんを怒らせることだってあるよ」

真姫「たとえば?」

凛「こっそりかよちんのおにぎり食べちゃったり、かよちんが行きたがってた有名なアイドルのライブチケットなくしちゃったり」

花陽「あはは。あったね、そんなこと」

凛「でもちゃんと仲直りするもん。そうやって友達ができるんだよ!」

花陽「そうだね。友達といて、喧嘩しないなんてことはないんだよ」

真姫「……そうね」

真姫「ありがとう2人とも」

真姫「私、ちゃんと謝ってくるわ」

花陽「うん、頑張ってね!」

凛「真姫ちゃんなら大丈夫にゃ」

真姫「うん」

~~~~~~~~





ことり「……って」

希「……いい話やなぁ」

にこ「な、何よ。そんな学園ドラマみたいな展開」

絵里「友情っていいわね……良い友達を持ったわね、真姫」

真姫「そうね……で、ことり。盗み聞きしてたの?」

ことり「ばっちり」

真姫「くっ……」

にこ「それでことりは許したの?」

ことり「許すも何も、私は初めから怒ってなかったよ?」

希「え、そうなん?」

ことり「うん。作った衣装のこと、よく見てくれてるんだなぁって、ちょっとうれしかったくらいだもん」

真姫「え、でもあの後謝った時、ことりは許すって……」

ことり「真姫ちゃんの努力を見たくて……怒ってないだなんて野暮なことは言えないよぉ」

真姫「本音は」

ことり「それを後で言えば、きっと真姫ちゃんは怒ってくれるだろうなぁ、と思いました」

真姫「……」

絵里「真姫が震えてる……」

にこ「怒ったらことりの思うツボだもの」

希「ことりちゃん、その時からそんなこと考えてたん?」

ことり「ううん、本当は真姫ちゃんが可愛かったから、水を差すようなことしたくなくて」

真姫「……ま、あの時から話す機会が増えたのよね」

ことり「うん。それからだね、真姫ちゃんとの距離が縮まったのは」

絵里「そうなのね。あ、そういえば確かに夏になってから2人で一緒にいるのをよく見かけるようになったわね」

ことり「えへへ、真姫ちゃんが意外と安全だから落ち着くの」

にこ「安全って?」

ことり「手も繋いで来ません!」

希「あー……」

真姫「……何よ」

絵里「結構前だけど、2人でお出かけしてた時は普通に手を繋いでなかった?」

真姫「あれは……意識する前だったから」

ことり「そんなこともあったねぇ」

希「いつの話?」

絵里「ほら、私たち3人で買い物に行ってた時よ」

にこ「……ああ! あの時ね!」

ことり「その時から私は、真姫ちゃんを好きだったのかも」

希「ひゅーひゅー!」

にこ「お熱いわね」

絵里「夏バテに気を付けて」

真姫「最後の何よ」

希「でもウチは、ことりちゃんが告白したってところが気になるなぁ」

ことり「ふふ、真姫ちゃん、教えていい?」

真姫「別にいいけど」

絵里「え、いいの?」

にこ「まああんたたち、気が付いたらくっついてたしね」

ことり「うん。真姫ちゃんが恥ずかしいから言うなって」

真姫「……あれは恥ずかしいわよ。いろんな意味で」

絵里「真姫顔真っ赤」

真姫「見ないで」

にこ「え? でも私たちに打ち明けるとき、穂乃果や凛は知ってたみたいじゃない?」

希「確かに、あんまり驚いてなかったなぁ」

ことり「それは……その場に居合わせてたから」

希「えっ」

絵里「ど、どういうこと?」

真姫「そのままの意味よ」

にこ「何があったの……?」

ことり「えっと……たまに私は部室で寝ちゃったりするんだ。たとえば夏休みとか、練習のあとに衣装作ってたりすると」

真姫「ことり、私が話すわ」

ことり「いいの?」

真姫「大丈夫よ」

ことり「話してる途中に恥ずかしくなって、話すのやめたりしない?」

真姫「……善処するわ」

希「真姫ちゃん……」

真姫「あれは……そうね、ことりと仲良くするようになってからのことよ」

真姫「私は練習が終わった後しばらくして、部室に忘れ物をとりに戻ったの」









~~~~~~~~

真姫「私の携帯、ちゃんと部室にあるかしら……」

海未「あ、真姫。来ると思っていましたよ」

真姫「え? 海未?」

ことり「すぅ……」

真姫「ことりは……寝てるの?」

海未「はい。先ほど様子を見に来たら、もう」

真姫「ふーん……」

海未「真姫、これですよね」

真姫「あ、私の携帯! ありがとう。でもどうして?」

海未「ことりが寝てしまう前に、真姫にメールをしても返信がないと言っていたので、少し探してみたんです」

海未「すぐに見つかりましたよ。棚の上に置きっぱなしでしたから」

真姫「ありがと」

真姫「……そういえばことりって、こうやっていつも寝てるの?」

海未「練習の後ですからね。私にできるのは、こうやってブランケットを掛けてあげることくらいです」

真姫「いつも持ってきてるの? そのブランケット」

海未「はい。夏休みは授業がないので、カバンに楽々入るんですよ」

真姫「そうなのね」

海未「あの、真姫」

真姫「何?」

海未「最近ことりとよく遊んでいますね」

真姫「……あ、べ、別にことりをとっちゃおうだなんて思ってないわよ」

海未「ふふ、狼狽えないでください。何もヤキモチを焼いているわけではないんです」

真姫「え?」

海未「ことりはあまり、積極的に人と関わるタイプではないので……真姫と仲良くなってくれたことがすごくうれしいんですよ」

真姫「そうかしら? 私の知ってることりは、結構積極的に人と関わるタイプだと思うんだけど」

海未「ことりは昔から、意外と内弁慶なんですよ」

真姫「……そう?」

海未「はい。ですから真姫と仲良くなれたと、ことりの口から言われたときはうれしかったです。穂乃果と一緒に喜びましたよ」

真姫「へぇ……知らなかったわ」

海未「怒られると思っていたんですか?」

真姫「いや、急に幼馴染が他の人と仲良くしたりしたら、ヤキモチくらい焼くんじゃないかと思ってた」

海未「真姫は他の人というカテゴリではないでしょう?」

真姫「え?」

海未「私たちは友達ですよ。友達が幼馴染と仲良くするのに、何の問題があるというんですか」

真姫「……うん、そうね」

真姫「海未はいつもことりを待ってるの?」

海未「はい、弓道部の練習がない日は。それ以外の日は穂乃果が待っています」

海未「ですが夏になってから穂むらの手伝いが増えたらしいので、2人揃って待つのは難しいですね」

海未「衣装作成の手伝いが出来ればいいんですけど……ことりの邪魔をしてはいけませんし、大丈夫だと念を押されていますからね」

真姫「……私が待つっていうのはどう?」

海未「えっ? 真姫がですか?」

真姫「あ、うん。だって2人とも忙しいんでしょ?」

海未「そうですが……良いんですか? 真姫だって事情が……」

真姫「別にいいのよ。休日だってμ'sの誰かと遊ぶくらいしかすることなかったし」

真姫「それに……友達なら頼ってくれてもいいんじゃない?」

海未「……ふふ、そうですね。では早速、明日にお願いします」

真姫「ええ」

~~~~~~~~




ことり「そんな話してたんだ……」

希「ことりちゃんは聞いてなかったん?」

ことり「うん。気付いたら真姫ちゃんがそばにいたから」

絵里「なんだか素敵ね、その言葉」

にこ「真姫ちゃん、待ってる間何してたの」

真姫「こっそり衣装作る手伝いしてた」

絵里「ええっ!?」

希「真姫ちゃん衣装作れたん!?」

真姫「なんでそんなに驚くのよ……ちょっとした部分よ。リボンとか」

真姫「あ、ちゃんと別の生地でやったわ。何回か作ってから本番に移したの」

ことり「うん、それがすごく綺麗に出来ててね」

にこ「へー、知らなかった。リボンでも難しいんじゃないの?」

真姫「ふん、簡単よ簡単」

ことり「ふふっ、真姫ちゃんはこう言ってるけど、実際はたくさん指を怪我したんだよね」

真姫「う」

希「え? そうなん?」

真姫「練習中は変に心配かけないように絆創膏とってたからね。2日に1回ずつしか練習ないし」

絵里「真姫、頑張ってたのね。えらいえらい」

真姫「ちょ、な、撫でないでよ!」

ことり「絵里ちゃんずるーい! 真姫ちゃん踏んで踏んで」

にこ「あんたは何かおかしい」

ことり「いやいや、考えて見てよにこちゃん。真姫ちゃんが蔑むような目でこっちを見ながら罵ってくれるシーンを」

にこ「考えたくないわよ!」

真姫「だから、そんなのはいつもやらないって言ってるでしょ」

ことり「むむむ……」

希「真姫ちゃん真姫ちゃん」

真姫「なに?」

希「……もしかして真姫ちゃんが全然手を出さなかったから、ことりちゃんはこんな風になったんかな?」

真姫「言わないで。知ってるから」

希「あらら……」

にこ「欲求不満ってやつかしら」

絵里「踏まれると痛くない?」

ことり「そこの力加減が難しいんだよね、真姫ちゃん」

真姫「いかにもやった風な雰囲気出さないで。やったことないから」

ことり「え? まだやったことない? ていうことはこれから……」

真姫「言ってない」

ことり「ほら、みんなが見てるから」

真姫「なんで見てるのにやるのよ」

ことり「だって真姫ちゃんが生き生きしそうだから」

真姫「そんな趣味はないってば」

ことり「ちぇー……いつかは真姫ちゃんに罵ってもらうんだから」

希「これ、カップルの会話なんかな」

絵里「仲がいいのは伝わってきたわ」

にこ「で、肝心の告白シーンはどこにいったのよ」

ことり「ああ、それは真姫ちゃんがリボン作ってるシーンを私が目撃して……

ことり「それで、色々感情が高ぶって……つい口からぽろっと好きって言っちゃったの」

絵里「ええっ!? ずいぶんあっさりしてない!?」

真姫「ええ、そうよ。私もそれに、好きよ、ってあっさり返しておしまい」

希「な、なんか急展開過ぎる気が……」

真姫「そんなものよ」

ことり「うん。そんなものだよ」

にこ「で、穂乃果たちはどこでそれを見てたの? 立ち会ったんでしょ?」

真姫「ああ、あの時私も少なからず動揺してたから……針を指に刺しちゃって。もともと怪我してるところに」

絵里「い、いたそう……」

真姫「痛かったわ。血も出たし。つい大きな声で痛いって言っちゃったのよ」

にこ「あ、それでみんなが来たってわけ?」

真姫「そういうこと。穂乃果と海未は私と入れ替わりでことりを待つって約束してたから」

真姫「その日はもともと途中で凛と花陽と帰るつもりだったのよ」

真姫「それで4人がちょうど部室の近くまで来てた時に叫んじゃったから……ね」

ことり「私も、自分が自分で告白したのにびっくりして戸惑ってたのもあって……」

ことり「それに加えて真姫ちゃんが衣装作り手伝ってくれたとか真姫ちゃんと両想いだったとかで混乱してて……」

絵里「え、何かしたの?」

真姫「思いっきりキスされたわ」

ことり「えへへ……」

にこ「でもその間、真姫ちゃんは指から血を垂れ流してたわけでしょ?」

希「しゅ、修羅場……」

絵里「サスペンスね……」

ことり「うん。みんなそう言って顔を真っ青にしてたから、事情を説明しなくちゃいけなくて……」

絵里「大変だったのね……」

真姫「まあ、そんなこともあるわよ」

希「それっていつの話?」

ことり「夏真っ只中! って感じの時だよ」

真姫「ええ。この部室でね」

希「なんでウチらはいなかったんやろ……」

ことり「確か3人は、生徒会の仕事だったような……」

にこ「あ、思い出した。私が無理やり連れてかれたやつだ」

絵里「だって練習はお休みだったし、外に出られるってにこも喜んでたじゃない」

にこ「そ、それは置いといて」

にこ「そういえばことり、生徒会は行かなくていいの?」

ことり「今日は生徒会の仕事はお休みなの。前日に片付けておいたからねっ!」

希「ああ、そっか。今日は特別な日やもんね」

にこ「ん、忘れないうちにプレゼントを渡しておくわ。はいこれ」

絵里「私からも、はい」

希「ウチもちゃんと用意してきたよ」

ことり「にこちゃん、絵里ちゃん、希ちゃん。ありがとう」

絵里「真姫はもう渡したの? 凛と花陽はもう渡してたみたいだけど」

真姫「まだよ」

にこ「ふーん、私たちは退散した方がよさそうね」

絵里「え、なんで?」

希「えりちのにぶちん」

絵里「?」

にこ「邪魔して悪かったわね」

ことり「ううん、楽しかったから大丈夫だよっ」

希「また明日にみんなで集まってパーティーするんやろ? やっぱりケーキとか食べるなら休日がいいもんなぁ」

真姫「そうね」

絵里「よくわからないけど、あんまり遅くならないようにね」

真姫「わかったわ」

ことり「はーい」

真姫「……ふぅ」

ことり「……真姫ちゃん」

真姫「どうしたの?」

ことり「それで……いつ踏んでもらえるんですか」

真姫「プレゼントあげないわよ」

ことり「ええっ!?」

真姫「いや、冗談だけど」

ことり「知ってるよぉ。真姫ちゃんはそんないじわるしないもん」

真姫「……はぁ。はい、これ」

ことり「目隠ししててもわかっちゃいます」

真姫「なら当ててみて」

ことり「リボン!」

真姫「正解よ。誕生日おめでとう」

ことり「ふふ、ありがとう」

真姫「あの……そろそろリボン、外してもらえないかしら」

ことり「ダーメ。あれは初めて真姫ちゃんが作ったリボンだもん。ずっとつけてるよ」

真姫「だってあれ、下手くそに出来たやつじゃない。形もぐちゃぐちゃだし」

真姫「ことりだって、カバンにもっとかわいいものつけたいでしょ?」

ことり「ううん。あのリボンは私にとっては大切な思い出だから……真姫ちゃんに言われたって外しません」

真姫「……そう」

ことり「真姫ちゃん照れた?」

真姫「別に」

ことり「ねぇ真姫ちゃん」

真姫「?」

ことり「誕生日くらい、キスは真姫ちゃんからがいいなぁ」

真姫「……」

真姫「…………」

真姫「………………わかった」

ことり「長かったね」

真姫「気にしないで」

真姫「……いくわよ」

ことり「はーいっ」

真姫「……」

ことり「……真姫ちゃん?」

真姫「あと5秒待って」

ことり「待たなーいっ」

真姫「ひゃっ……!?」

真姫「……こ、ことりっ! 今何を……!」

ことり「首へのキスだよ。早くしないとどんどんキスしていっちゃうぞー」

真姫「ちょ、やめなさいよ」

ことり「ふふ、早くしないと。今日は穂乃果ちゃんと海未ちゃんが家に来てくれるから」

真姫「……2人は泊まるの?」

ことり「うん」

ことり「一緒のベッドで寝ちゃうかも。もしかしたらそれ以上のことも――――――――」

真姫「お仕置きが必要みたいね」

ことり「……え?」

真姫「もう私のこと以外、何も考えられないようにしてあげる」

ことり「真姫ちゃん、ちょっ……ん」

ことり「っ、ま、まきちゃん……なんで……そんな、んっ」

真姫「……っはぁ、はぁ……」

ことり「……」

ことり「……あ、あれ? 真姫ちゃん? もうおしまい?」

真姫「……ごめん」

ことり「え?」

真姫「……ごめん」

ことり「え、ど、どうしたの急に」

真姫「……ただのヤキモチよ。ことりがそんな風に言うから」

ことり「もしかして……さっきの?」

真姫「そうよ。誰かにとられるかと思ったら……嫌だったのよ」

ことり「真姫ちゃん……」

ことり「追い込まれるとすごいね」

真姫「うるさい」

ことり「えへへ……でもさっきの真姫ちゃん、素敵だったなぁ」

真姫「忘れて」

ことり「ううん。きっと忘れられない……あんなに激しくされるなんて……」

真姫「……謝るわ。嫌だったでしょ――――――――」

ことり「すごく……魅力的だった」

真姫「え」

ことり「真姫ちゃんに支配される感覚……すごくよかったよ!」

真姫「もう手遅れじゃない……どうしてこんなことに」

ことり「いやいや、まだ始まったばっかりだよ! さあ真姫ちゃんもう1回どうぞ!」

真姫「やらないわよ! この変態!」

ことり「ありがとうございます!」

真姫「もう、何それ! 意味わかんない!」










凛「お邪魔しまーす」

花陽「お邪魔します」

穂乃果「あ、いらっしゃい2人とも」

凛「あれ? 絵里ちゃんたちは?」

海未「注文したケーキを取りに行っています。もう少しで帰って来ると思いますから、待っていてください」

花陽「そうなんだぁ……あ、真姫ちゃんも来てるんだね」

真姫「ええ」

凛「あれ? ことりちゃんは? ことりちゃんのお家なのにいない……」

ことり「ここだよー」

花陽「……!?」

凛「あ、なーんだ。背もたれで見えなかったにゃ。ソファに座って……ない!?」

穂乃果「真姫ちゃん1番乗りだったんだよー」

花陽「い、いや、そうじゃなくて! この状況はどうなってるの!?」

海未「私たちが来た時からそんな感じでしたよ」

凛「な、納得いかないにゃ!」

真姫「今日もことりが夢を見たらしくてね。朝から電話かけてきたのよ」

真姫「私の太ももに挟まりたいって」

ことり「えへへー予想通り天国だよぉ……ほっぺが気持ちいい」

穂乃果「あ、だからことりちゃんはクッション持っていったんだね」

凛「ま、真姫ちゃんはそれでいいの……?」

真姫「ただ足にことりの顔を挟んでるだけだしね。テレビ見られるし」

花陽「いや、楽かどうかじゃなくて……」

真姫「ああ、前に比べたらずいぶんマシよ。パンツ被りたいとか、足をなめたいとか言ってたし」

ことり「昨日はおへそにキス……結局してもらえなかったけどね」

凛「……こんとんとん」

花陽「とんが多いよ凛ちゃん……」

絵里「ただいまー。ケーキ持ってきたわよー」

にこ「あ、凛と花陽も来たのね」

希「主役は……ああ、まだ太もも?」

真姫「ほらことり、出なさい」

ことり「はーい」

穂乃果「ことりちゃん生き生きしてるね」

ことり「真姫ちゃんからエネルギーをもらったからかも」

真姫「とらないでよ」

海未「昨日は結局、真姫からプレゼントをもらえましたか?」

真姫「ちゃんとあげたわ」

ことり「あ、そうそう。昨日の話なんだけどね、真姫ちゃんが――――――――」

真姫「こ、ことり! あれは言わない約束でしょ!」

ことり「言った方が真姫ちゃん怒ってくれるもん……」

真姫「……なんでこんな変態を好きになったのかしら、私」

海未「もともとことりはこんな風に人に甘えることをしませんでしたからね。真姫、頼みますよ」

穂乃果「ことりちゃんは積極的じゃなかったからねぇ」

真姫「今はどうしてこう……こんな残念なことに」

ことり「私のこと、嫌いになった?」

真姫「……別に。もう慣れたわ」

希「やっぱりバカップルやね」

にこ「そうね」





      おわり


ことりちゃん誕生日おめでとう
案の定過ぎたけど

おつ

乙乙

素晴らしい
乙です

すっごく良かった

>>1の書く変態ことりちゃん好きだわ

いつにも増して脳みそぷわぷわしてたなww乙!


また意味深なタイトルを…

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年09月13日 (土) 10:56:13   ID: 1u9BbhRM

ことまき最近増えてきたね
とてもいいことまきでした 乙

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