剣士「Lv46、臨時PT募集ー」勇者「レ、レベ?りんなんだって?」(639)

勇者「……」

勇者「!」パチッ

勇者「なんだ、ここは……」

勇者「草原か……しかし見た事の無い景色だな」

勇者「一体どうなっているんだ……俺は確か、ボスクラスの魔物と戦っていて」

勇者「そうだ……戦闘中に突然光に飲み込まれて……」

勇者「転移魔法の類だろうか……」

勇者「まんまと逃げられた、か? 今後は対策を取らないとだな」

勇者「あれは城か……しかし、あの城でさえ見覚えが無いな」

勇者(世界中旅したと思っていたが、まだ知らない土地があったのだろうか)

勇者(もしや、人間の領土じゃない……とにかくあそこに行ってみる他ないか)

―― [戦 闘 開 始] ――

勇者「!? 空中に文字が!」

ゴブリンA「ゲッ」ザッ

ゴブリンB「ゲッゲゲ」ザザッ

勇者「……」ゴシゴシゴシ

勇者(魔物っぽいのの頭上にまた文字が……)

勇者(ていうかゴブリンって……インプの間違いじゃないか、これ?)

ゴブリンA「ゲゲ」ブンッ

勇者「よっと」ヒラッ

勇者「たあ!」ザザン

ゴブリンAB「キュゥゥ……」ドザ

―― [戦 闘 終 了] ――

ゴブリンAB「」スゥッ

勇者「ゴブリンの死体が消えた……」

勇者「何なんだ一体。まさか、俺は異世界に飛ばされたのか?」

勇者「とにかく移動するか」

宝箱「」パァ

勇者「!?」

勇者「た、宝箱が現れた? 本当にどうなっているんだここは……」

勇者「……」

勇者「とりあえず開けてみるか」カチッ

勇者「? 金貨と肉? ゴブリンの肉か……これは棍棒?」

勇者「……戦利品か? 全く意味が分からないな」

勇者(ここは俺のいた世界ではないのは明白)

勇者(もしかしたら物理法則や魔法も違うかもしれない……面倒な事になったな)

勇者(いや、もしかしたらそうした世界を一時的に作り上げ、俺を幽閉している可能性も絶対無いとは言えない)

勇者(戻る方法以前にこの世界の事を知らなくては……)

[風の城下町 南広場]
勇者(また文字が……だが地名が分かり易いのは有難いな)

勇者(何より……)

騎士「それでよ」

盗賊「なんだそりゃ。ねえよ」

魔法使い「ねーねー、またあそこの狩場行ってみない?」

拳闘士「やだよ。あそこで盾になんのきつい」

勇者(随分と様々な者達がいるな。何より人間が暮らす領土で本当に良かった……)

勇者(これだけいれば何とか情報が集められそうだが)

勇者(彼らの頭上にも文字が……まさか俺もか? 鏡を探さないと)ゾォッ

剣士「ジョブ剣士でLv46、臨時PT空きありませんかー」

勇者(レ、レベル? りん、なんだ? 彼は何を言っているんだ?)ジー

剣士「? どうかしましたか?」

勇者「あ、いや、何でもない」

剣士「? うん? え? 何その装備、格好良い!」

剣士「うっわぁすっごい……超レア級ですか?!」

勇者「え? レ? い、いや、まあ鍛冶師に特注したものだが」

剣士「え?! 生産装備?! へえぇぇ見た事無いや、レア素材のかなぁ」

勇者(そ、そうか。俺の装備はこの世界では異様なのか)

剣士「レベルいくつなんですか?」

勇者「は? え?」

剣士「ってPC情報見ればいいんですよね」

剣士「? あれ? No Dataってなんで?」

剣士「鯖重いのかなぁ……」

勇者(駄目だ、何を言っているのかさっぱりだ……)

勇者「ええとだな、その、すまない。俺は旅の者でな、少し話が聞きたいんだがいいだろうか?」

剣士「え? はあ……」

剣士(ロールプレイかな? 初めて見るなぁ)

勇者「恐らくだが俺はここではない世界の者だ。そうした異世界の者が現れる事はあるのだろうか?」

剣士「へ?」

勇者「俺の世界では魔王という存在がいたんだが……もしやこの世界にもいるのだろうか?」

剣士「はい?」

勇者「……すまない、俺も現状をどう説明すれば伝わり易いのか分からないんだ」

勇者「ああ……名乗ってなかったな。すまない、俺は勇者という者だ」

剣士(それはPC名見えるから分かるけど……)

勇者「俺の世界では魔王という存在がいたが、遥か昔に討伐された」

勇者「昨今、新生魔王軍なるものが暗躍し、各地に被害をもたらしている」

勇者「彼らの狙いは魔王討伐時に生み出された宝玉だ」

勇者「魔王の力が封じられているとも魔王自身が封じられているとも言われている」

勇者「何れにしても彼らの手に渡る事だけは阻止しなければならない」

勇者「その為に魔王軍と戦いながら旅をしていたのだが、突如この世界に居たんだ」

剣士(うっわぁ……ここまで設定盛り込んでるRPって今時いないんじゃないかなぁ)

剣士(でもこの人の目的ってなんだろ? こんなRPする以上何か……)

剣士(あ、元の世界に帰る為のそれっぽい珍アイテム探しとかかな)

剣士(変わった人だけど面白いそうだし礼儀正しいし付き合うかな)

剣士(それって必然的に僕もRPする事になるなぁまあいっか)

勇者「という事なのだが……」

剣士「そういった人の話は聞いた事がありませんね……」

勇者「そうか……いや手間を取らせてすまなかった」

剣士「そんな状態でお一人は大変でしょう。良ければ僕も出来る範囲で協力しますよ」

勇者「なに? 本当か?! あ、だがしかし、俺が返せるものなど」

剣士「そんなの気にしないで下さいよ。一期一会とかなんかそんな感じだと思ってください」

勇者「いちごい……? いやまあ、そう言って貰えるなら、こちらとしても願ったり叶ったりだ」

剣士(勝手にフレ登録しとこ。あ、相互で登録するタイプのMMOじゃないからこその設定なのかな)

剣士(ついでにもっかいPC情報……あれ? またか。非公開の扱いじゃないし何なんだろ)

勇者「とは言え、何からしたものか……」

剣士「直前にどういった所にいました?」

勇者「魔物の砦で戦っていたんだが……」

剣士「手がかりも無いですし、そういった所から見て回りましょうよ」

勇者「……それもそうか」

剣士(結局勇者さんのLv分からないなぁ一応僕でも行ける場所にしておくか)

[風の国 南第八エリア]
勇者(一瞬で……転移魔法の類だろうか。それにしても)

勇者「ここも草原か……」

剣士「この国は基本、草原MAPだらけですからね」

[淘汰されゆくオークの塔]
―― [戦 闘 開 始] ――
ハイオークABCD「ゴフッ」

剣士「よっし、いっくぞ!」

勇者「あ、待ってくれ」

剣士「はい?」

勇者「この世界で俺の魔法を試してみたい」

剣士「分かりましたー」

剣士(魔法剣士かぁ。結構不遇職なのに……本当RP中心としたプレイスタイルなんだなぁ)

勇者「雷撃!!」ズガガン ズガン

オークABCD「ブゴォォ……」ドザァ

―― [戦 闘 終 了] ――
剣士「……は? え?」

勇者「よし、問題なく使えるな」

剣士(え? え? 何? 今の何の魔法? 一撃? ロ、ログは?)

勇者 > 雷撃
オークA > 1965のダメージ
オークB > 1878のダメージ
オークC > 2021のダメージ
オークD > 1917のダメージ

剣士(何だ、これ……本当に雷撃って魔法? うそうそ、そんなの無いって)

剣士(でもログに技名残っているし……え? どういう事? 超隠しイベントとか公式イベントの?)

剣士(まさかGM? そんなイベント告知されてたっけ……)

勇者「どうしたんだ?」

剣士「な、なんでもないです」

ハイオークA「ゴフゥッ!」

勇者「よっと」

勇者「たああ!!」ザンッ

剣士「……」

ログ検索[回避]ピッ

   ・
   ・
勇者 > 回避

勇者 > 回避
勇者 > 回避
勇者 > 回避
勇者 > 回避
   該当ログ 96

勇者「ここらの敵は大した事無いな」

剣士「す、すみません。任せっきりで」

剣士(ハイオークって命中それなりだったよなぁ。いくらなんでも避け過ぎ……)

剣士(っていうかこの人、本当に攻撃避けてる素振りだし……)

剣士(でもハイオークの攻撃射程ってあんな短くないし……うーん)

勇者「気にしないでくれ。君がいてくれなかったら俺は分からない事だらけだし、付き合わせてしまっているからな」

勇者「戦闘くらいでしか俺には返せる物が無いしなぁ……」

剣士「あ、ありがとうございます……って、宝箱! 勇者さんがちゃんと回収して下さいよ!」

勇者「え?! いや、え……うーん、それだと意味がないんじゃ」ブツブツ

剣士(もしかして……そんなの考えたくないけどチーターなのかな)

剣士(いやいやAGI極の人かも……あるいはあの装備がそうとか)

勇者「たああああ!!」ザンッ

オークソルジャー > 5127ダメージ(クリティカル)

剣士(この与ダメ、どれだけ凄い装備ならAGI極で叩き出せるんだろう)

オークキャプテン「グオオオオオ!!」

勇者(こいつは流石に強そうだな……)

剣士「げっ! なんでボスがこいつなんだ!」

勇者「イレギュラーか……?」

勇者(ま、俺のすべき事は変わらないが)

オークキャプテン「ガアアア!!」ブォッ

勇者「ふっ!」

勇者「はぁっ!!」ザンッ

オークキャプテン「グブゥゥゥ!!」

勇者(流石に一撃では無理か……だが今の一撃で)バッ

勇者「隙だらけだ!」ザンッ

オーク首「」ゴッ

剣士「おわぁっ!」

勇者「よし!」

剣士(ひえぇなんだ今のグラ! 生首転がってきたぁぁ!!)

剣士(それに今の攻撃も……)

オークキャプテン > アタック
勇者 > 回避
勇者 > 首落とし
オークキャプテン > 即死

剣士(即死技……調べた限りじゃ剣士系には無いはずなのに)

剣士(うーんうーん……なんだか……何なんだろうなぁ)

勇者「お、宝箱……あれ? 色が違うな」

剣士「あーそれはレア宝箱です」

勇者「へえ」

剣士「赤が通常、銀がレアでボスやダンジョン奥にあります」

剣士「金が超レア……イベントボス等倒すと出ます」

剣士「後は紫が特殊レア、レアなんですけど魔法関係の物しか出ません」

剣士「輝く赤がウルトラレア。本当に僅かな報告例があるだけで眉唾物ですね」

勇者「ふむ」

勇者(やはりところどころ何言っているか分からないな……)

[風の城下町]
剣士「あ、もうこんな時間……」

勇者「用事があったか……すまなかったな」

剣士「いえいえ、お気になさらずに。ではまた明日~」

勇者「え? あ、ああ……え? 待ち合わ」

剣士「」シュンッ

勇者「せもなし……き、消えた?!」

勇者「……」

宿屋
勇者「よかった……この世界にも宿屋はあるのだな」

勇者(しかし……これほど難しいものとは)


魔法使い『あーあたしぃ、そういうプレイ? っていうの? 嫌いなんですよぉ』

斧使い『え? あー……あはは。うん、そういうのは聞かないな、じゃ』

僧侶『……』ツカツカツカ

盗賊『や、俺そういうの駄目なんだわ』


勇者「彼はよほど奇特な人なのだな……」

翌日
勇者(それにしても、この世界の者達はよく姿が消える。転移魔法にしては頻度が……)

勇者(どうなっているんだろう。剣士に会えたら聞いてみよう)


剣士「……」シュン

剣士「えーと勇者さんのいるMAPは……[悲鳴止まぬ処刑者の塔]ってかなり高レベのとこだ」

剣士「こりゃあ追いかけられないし町で待ってるかぁ」

剣士「どっか安全な場所に移ったら追いかければいいし」

ガーゴイルABC「ギギャギャ」

勇者「たあああああ!!」ヒンッ

ガーゴイルABC「ギョァァ」ザンッ

勇者「多少はやるがここも大した事は無いな」

勇者(やはりもっと強い魔物がいる場所でないと、それらしい物も得られないのだろうか)

勇者(にしても、彼はどうやって俺と落ち合うつもりなんだろう)

[風の城下町]
勇者(この世界にも帰還アイテムがあって助かった……)

勇者(意外と何処の世界でも似たようなアイテムがあるものなんだな)

剣士「あ、いたいた。勇者さーん!」

勇者「剣士! よく分かったな」

剣士「はい、そりゃあ……」

剣士(流石にこれはRP妨害しちゃうか?)

剣士「まあ、そんな事より今日はどうします?」

勇者(結構大切な事を聞いたつもりだったんだが……)

勇者「少し聞きたいのだが……君から見て、俺はどう見える?」

剣士「はい?」

勇者「その、なんだ? 昨晩、君が別れを告げた後、姿が消えたがあれはどうなっているんだ」

勇者「俺にはそれが出来ない。というか姿が消えた後、君は何処に居たんだ?」

勇者「宿屋を探しに町を方々としていたが、見かけなかったぞ。別の町に移ったとかか?」

剣士「えぇ? いや……ううん」

勇者「何か遠慮しているようだな……正直に話してくれ」

剣士「うっ……」

剣士「……分かりました。あの、勇者さん? ログアウトぐらい分かってますよね……流石に」

勇者「ログ……なんだって?」

勇者「よく人がいきなり消えたりするんだが、それはそのログなんとかというものの所為なのか?」

剣士「は? え? あの、流石にちょっとRPについていけないんですけど」

勇者「ロール……すまない、何のことだ? 巻物に似た何かか?」

剣士「え……? 本気で言っています?」

勇者「……全て本気だ。それと昨日話した魔王の話も、俺の世界にとっては本当のことなんだ」

剣士「……」

勇者「教えてくれ。君から見て俺はどう見える?」

勇者「君の素振りから分かっていて当たり前の、ログなんとかというものを知らない俺はどう見えるんだ?」

剣士「……」

剣士(な、なんだこれ。どうなっているんだろう……)

剣士(ちょっと本気で考えてみよう……)

剣士(この人はどう見てもNPCには見えないし、そういうイベントの話は見つからなかった)

剣士(見聞きした事が無い技がログに残る……システムが認識する未確認の技を使う)

剣士(……)

剣士(いや全く分からない)

勇者「剣士?」

剣士「えっと……いくつか質問します。イエスかノーで答えて下さい」

勇者「ああ」

剣士「パソコンは分かります?」

勇者「ノーだ」

剣士「ネットゲームって知っています?」

勇者「ノーだ」

剣士「……このゲームのタイトルは?」

勇者「ノー……そもそも質問の意図が分からない。何が『このゲーム』なんだ?」

剣士「……」

剣士(何これ何これどうなってんの……)

剣士「全部、本当に本気の答えなんですよね」

勇者「嘘偽り無い、というかつきようが無いのだが」

剣士「……」

剣士(全て本当の事とするなら……)

剣士(この人は本当に別の世界、ファンタジーな世界で魔王軍と戦っていた人で)

剣士(何かの拍子にこのMMOにPCとして紛れ込んだ……それなんてゲーム)

剣士「……」

プレイヤー情報
―No Data―

剣士(だもんな……)

剣士(とすると、まずこの世界が娯楽の世界である事を説明……)

剣士(うっわどうしたら伝わるんだろうこれ)

勇者「……」ジリ

剣士(あ、焦れてる)

剣士「えっと……とりあえず、聞いた話の中として、勇者さんの状態については分かりました」

剣士「極論からいきますと、勇者さんの存在は本来ありえない異常なもの、というのが僕の見解です」

勇者「だろうな……」

剣士「勇者さんが今まで見てきた人、僕も含めて生身の人間はここにはいません」

勇者「な、なに?! そうなのか?」

剣士「何ていったらいいのか……ここは仮想世界なんですよ」

勇者「かそう……下層、仮装? どういう意味だ?」

剣士「ゲームの中って言っても伝わら……あ、そうだ。勇者さんの世界に本ありますか? 誰かが作った物語とか」

勇者「物語も本もあるぞ。というか仕方が無いとはいえ……ものすごい馬鹿にされた気分だな」ズゥゥン

剣士「す、すみません」

剣士「えっと……この世界は本の中みたいな物で、ある道具を使ってこの本の中に自分を存在させているんです」

剣士「ただ、自分は本の外から操作しているんです……みたいな。何となく分かります?」

勇者「理屈は分からないが、世界の仕組みは見えてきたな。ログなんとかというのは、本当の君が本から離れたという事なんだな」

剣士「はい。まあ、その場にキャラクターを放置する事もできますけどね」

剣士「で、そうした外から操作されている人等をPC、自動で動く人等をNPCと言います」

勇者「……」

勇者「道具屋や魔物はNPCというものなのか」

剣士「はい、その通りです」

勇者「魔物を倒すと姿が消えて、宝箱に魔物の素材含めた戦利品が出てくる」

勇者「これはこの本の世界に定められたルールという訳か」

剣士「そうです、ていうか凄い飲み込み早いですね……」

勇者「空中に文字が現れたりしたからな……」

勇者「ここが異世界であるのは早い内に気づいた以上、この世界の理を理解しようと考えていたからだ」

勇者「しかし……ここが一時的な、しかも物理的に存在しない世界だとは」

勇者「俺には君が極普通に存在する人に見えるぞ」

剣士「操作の一つにエモーションと言って、表情や仕草を細かく指示できますので」

剣士「まあそれでも、普通の人には見えない動きのはずですが……"外"から見るのと"中"から見るのは違うんですかね」

剣士「けれども……こうなると色々と困りましたね」

勇者「何がだ?」

剣士「さっきも言ったとおり、勇者さんは異常なんです。イレギュラーなんですよ」

剣士「運営に見つかったらどうなるんだろう……ああ、人気の無いところでよかった」

勇者「運営……? この本を管理するギルドみたいなものがいるのか」

剣士「はい。それ無しにはこの世界を維持する事は出来ません」

剣士「早いところ勇者さんを元の世界に戻す手段を探さないとだなぁ」

剣士「一先ずここに隠れていて下さい」

勇者「え?」

剣士「勇者さんの姿はとてつもなく人目を引きます」

剣士「運営に見つかるのも時間の問題ですので、姿を消す道具を買ってきます」

勇者「なるほど……すまないな。この世界で稼いだ金だ」ジャラ

剣士「え?!」

勇者「どうした? ああ、一日で稼ぐには大金だったとかか?」

剣士「あ……はい、そんなところです」

剣士(トレード画面無しに一気に所持金増えた……勇者さんには他のPCとの接触は避けさせないと)

剣士「これだけあれば数日はもつかな」

黒騎士「さっきのなんだったんだろうな」

僧侶「逃げ切れなかったら全滅でしたね。バグだったのでしょうか」

狩人「見た事の無いグラで名前も無いし、正式実装前のMobかもな」

黒騎士「やべぇ緊急メンテきちゃうじゃん」

剣士(……げっ、メンテの事忘れてた! やばいなぁ定期メンテまであと四日かぁ)

剣士「お待たせしました」

勇者「おお、すまないな」

勇者「そうだ。今日、平然と君の方から俺を探し出したが、それは本に備わる機能か何かか?」

剣士「そうです。PCもNPCも名前が分かっていて、近くにいればMAPに表示されます」

勇者「地図が見られるのか。そういったものを表示させる術が、分からないというのは歯がゆいものだな」

剣士「……」

勇者「どうした?」

剣士「……その、大事な話があるというか、気づきまして」

……
勇者「なるほどな。一時的に本の機能が止まるとは」

剣士「……」

勇者「どうなるか分からない以上、何としてもそれまでに片をつけなくては……とは言え手がかりもなし」

勇者「……何か特殊な神殿や祠とかって無いのだろうか?」

剣士「特殊……あー……」

勇者「なんだその返答は」

剣士「えっとですね。あるアイテムを持っていると、フィールドとダンジョンが変わるんですよ」

勇者「……。全くもって言っている意味が分からないのだが」

剣士「例えば這いよる宝玉ってアイテムを持っていると……飽くまで僕達、外の人の視点なんですけども」

剣士「城や町、魔物が出ない安全地帯以外が、暗くなって出てくる魔物も強くなるんですよ」

勇者「それが変わる、という意味か」

剣士「はい。それで個々のダンジョンには特定の宝玉を持っていくと、宝玉そのもの効果とは別に変化する設定を持っているんです」

剣士「この間の『淘汰されゆくオークの塔』ですと、忘れがたき宝玉っていうのを所持していると特殊仕様になります」

剣士「本来は宝玉の効果は不死……アンデッドしか魔物がいなくなるんですが、最上階に超強いゴースト系オークのキングが出ます」

剣士「あ、普通のボスなんかと目じゃないほどに強いボスをキングとか言ったりしますね」

勇者「……集団でそういうのを狙うグループとかいそうだな」

剣士「なんで分かるんですか。あ、賞金首モンスターとかか」

剣士「話を戻しまして……。この世界には僕達プレイヤーがパワースポットと呼ぶ場所があります」

剣士「魔物が出ない、町でもない場所なんですが、ダンジョンみたく特定の宝玉を持っていくと」

剣士「ちょっとしたアイテムが手に入ったりイベントが起こったりするんです」

勇者「意味深な特別な場所か」

剣士「はい」

勇者「よし、それを虱潰しにしていくか」

剣士「……ただ」

勇者「?」

剣士「……宝玉って超高くて。僕もアンデッドが出るだけの、忘れがたき宝玉しか持ってないんです」

勇者「持っているには持っているのか」

剣士「宝玉の中で一番手に入りやすく、基本捨て値で出回るので……」

勇者「そ、そうか」

勇者「しかしそれだとどうしたものか。借りたりはできないか?」

剣士「いやー高価なものですから持ち去り考えると、誰も貸してくれませんよ」

剣士「担保も用意できないですし」

剣士「ただパワースポットに関しては、まだまだ分からない事だらけなんで」

剣士「試しに巡ってみてもいいのかなぁとは思っています」

勇者「ふむ……ともすればさっさと行ってみた方がいいか」

剣士「まずは宝玉無しで行ってみましょうか」

[風の国 南第四エリア]
勇者「うん……? あれは?」

剣士「骸骨系のMobなんてこんな所にいないはずですけども」

骸骨将軍「ぐ……ぬ、勇、者? 何故、いや、構わ……」

勇者「?! 貴様、何故この世界に! いや、お前も……なのか?」

剣士(見た事無いグラに名前も未表示……町で聞こえたバグモンスターは勇者さんの世界の魔物か)

骸骨将軍「頼、む……殺せ……殺、てくれ……私が」

勇者「な、何を言っているんだ」

骸骨将軍「た、しじゃ……なくな」

―― [戦 闘 開 始] ――

勇者「え……?」

剣士「名前が表示された……まさかこの世界のMob化した?」

骸骨将軍「カカ、コココ」

剣士(ボイスチャットじゃなくなった……しかもこの音)

剣士「ゆ、勇者さん! 骸骨系モンスターが出す音です!」

勇者「……」ギリ

勇者「私が私じゃなくなる、か……もっと早くに気づいていれば……すまない」スラァ

骸骨将軍「カカカ」ヒュン

勇者「くっ!」ガギィィン

勇者(強さは変わらないのか……流石に楽にはいかないな)

剣士(初めて勇者さんが剣で受け止めた……)

勇者「ふっ」ギィン

骸骨将軍「ココ、カカカ」ヨロ

勇者「たあああっ!!」ザンッ

骸骨将軍「グガァッ! カカカ」ヒュン

勇者「ぐっ!」ザッ

骸骨将軍 > 2732のダメージ
骸骨将軍 > アタック
勇者 > 2021のダメージ

剣士(通常攻撃でこれだけの威力!? え、援護しなきゃ)

剣士「夜落としのカード」カッ

骸骨将軍 > 無効

剣士(て、なんかめちゃ強そうだし……アイテムで状態異常できるかなぁ)

勇者「ちぃっ!」バッ

勇者「落r」

骸骨将軍「カカカカコココ」ザンッ

勇者「かはっ」ヨロ

勇者(くそ、戦い辛い! 骸骨将軍なら心配する必要も無いが、今のこれは何時、剣士に矛先を変えるか……)

剣士「シールドスパイク!」

骸骨将軍「グガァッ!」

骸骨将軍 > スタン

剣士「勇者さん! 今です!!」

―― [戦 闘 終 了] ――
勇者「ふう……」

剣士「お、お疲れ様です」

勇者(まさか向こうの魔物でこちらに来ているとは)

勇者(単純に自分一人帰還すればいいという問題ではなさそうだ)

勇者(なによりこの状況……もしかしたら、明確な原因があるのやもしれない)

勇者「……何が起こっているかは分からない以上、調べる方を進めなくてはな」

剣士「は、はい」

[歴史に残らぬ聖堂]
勇者「……な」

剣士「どうかしましたか?」

勇者「ここは……馬鹿な」

剣士「え?」

勇者「恐らく、とされていたが……昨日話した魔王に関する宝玉がある場所とそっくりだ」

剣士「ええ?!」

勇者「……」

勇者(まさかその宝玉が……今回の一端だとでも言うのか?)

剣士「て、ちょっと待って下さい。なんで分かったんですか? 場所は判明しているけど、入手の仕方が不明とかですか?」

勇者「昔、魔王の宝玉の在り処に関する調査が行われてな、その資料にいくつかの候補があるんだ」

勇者「ある程度宝玉の位置を掴む為の、大雑把な調査だったようだが……」

勇者「今後、調査ができなくても、再度訪れれば必ず判断できるようにと、内装のスケッチが纏められていたんだ」

剣士「無駄に……」

勇者「いやまあ、助かってはいるが正直そう思う」

剣士「因みにその後なんで調査が?」

勇者「その時は平和だから色々な派閥がいたんだ。資金の無駄という考えとかさ」

勇者「今になって調べ始めても魔王軍進行が妨害になっていてな」

勇者「思うように進んでいないんだ」

剣士「にしても、何をもってそこに宝玉があるかも、としたんですか?」

勇者「魔王自身、あるいは魔力、どちらが封じられてるにせよ、周囲の大気に含まれる魔力の量は多くなる」

勇者「まあ……実際は宝玉を出現させる術分からず、その調査もそこそこに、魔力量の測定だけしたって話だが」

剣士「あー……」

勇者「で、話を戻すと……」

剣士「はい……」ゴクリ

勇者「その資料で見た景色が、俺にとっては今現実のものとなって目の前にあるわけだ」

剣士「ここは元からこんな感じです。勇者さんの件でこうなった訳じゃありません」

勇者「ところが奇跡か……か」

剣士「スケッチが不完全で似ている、とか?」

勇者「いや……凄いリアルなスケッチなんだ。画家でも連れて行ったのかってぐらい」

勇者「偶然じゃない……いや逆か?」

勇者「あまりにも同一な聖堂があるが故に、今回の異常が発生した?」

剣士(こういう時の定番って……)

勇者「どうした? 何でもいい。話してくれ」

剣士「こっちの世界は物語の娯楽がいっぱいあるんですけど、こういう時の定番って」

剣士「こういう感じで同じような場所が何かの拍子で、その宝玉がこっちに現れる……」

剣士「というか勇者さんの世界と一時的、部分的に繋がちゃったりするものなんですよ」

剣士「で、この世界の特大のボスがその宝玉を手に入れる」

剣士「……本来、意思がない筈のNPCが自立して動き出し、ほにゃららら……」

勇者「ほにゃらら……」

勇者「だがまあ……今現在が君にとっては物語のような出来事なのだろう?」

剣士「はい」

勇者「そういう事もありえるやもしれないな……」

勇者「だがまだ宝玉が持ち出されていない。一時的に繋がっているだけの可能性もある」

勇者「座して待つ訳には行かない。一度君の言う、ここが変化する宝玉を持ってこよう」

剣士「ですね」

[忘れがたき歴史に残らぬ聖堂]
勇者「名前が変わった……」

剣士「条件に一致した宝玉を持ってきていると、地名の前に宝玉の名前がつくって考えられてます」

勇者「なるほ」ズンッ

剣士「どうしました?」

勇者「何も、感じないのか?!」

剣士「え、はい……すみません」

勇者(この重苦しい威圧感のような魔力……まさか本当に魔王の宝玉が!)

勇者「!?」スゥ

剣士「??」

勇者(和らい、だ……何が)

―― [戦 闘 開 始] ――

剣士「え?! ここで?!」

勇者「何が現れた!」

シャドウ「……」

剣士「シャ、シャドウ!? こ、こんな所で……」

シャドウ「……」シュバッ

勇者「ぐ!」ザザザッ

剣士「うわ!」ザザザッ

勇者(? 剣士の驚きの割りにそれほど力は……)

剣士「ま、不味い! 勇者さんが攻撃を……」

勇者「え?」

シャドウ「」グニャリ

影剣士「……」グニャ

影剣士「……」ギィィン

勇者「ぐ!」ギギギ

影剣士「……」シャッヒュンッ

勇者「く、そ!」ザンッ

勇者(剣士をコピーしたのか?! 格段に強くなった……いや彼の能力は元々これだけあるという事か!?)

勇者(だがこれなら……俺に変わる前に倒せれば!)

影剣士「」グニャリ

剣士「よ、夜呼びのカード!」

影剣士「..zZ..zZ」

勇者「!」

剣士「シャドウは攻撃を当てたPCの姿になれます! PCの持つ技、能力が超強化された状態です!」

剣士「状態異常の耐性はコピーされたPC依存、僕は睡眠・幻惑・混乱が有効です!」

勇者「了解だ!」ヒンッ

影剣士「!」ザンッ

影剣士「」グニャリ

シャドウ「……」

剣士「え……」

勇者「元に戻った……?」

シャドウ「」グニャ

影大剣「……」グニャリ

勇者「な……」

影大剣「……」ブォン

勇者「がっ!」ザンッ

剣士(な、なんなんだあれ! 聞いた事がない! 未確認の攻撃方法か?!)

シャドウ > 形状変化
シャドウ > 変化:影大剣
シャドウ > アタック
勇者 > 2912ダメージ

剣士(並のPCじゃ歯が立たないぞ……!)

剣士(……これが噂にすらならないなんて。勇者さんの様子を見る限り、魔王の力が本当に影響を?)

勇者「剣士!!」

シャドウ > 上段斬り

剣士「え?」

影大剣「……」ブォンッ

剣士「うああぁぁ!!」ガギィィン

剣士 > シールドバッシュ
剣士 > Avoid
シャドウ > スタン

勇者「おお!」

剣士「っはぁ! っはぁ!」

剣士(回避率特化の盾じゃなかったら……今のでもしかしたら)

剣士(定番だとこういう敵に倒されると……うおぉ)ブルッ

勇者「はっ!」ザザザン

勇者 > 三太刀返し
シャドウ > 2311ダメージ
シャドウ > 2145ダメージ
シャドウ > 4859ダメージ(クリティカル)
シャドウ > スタン回復

剣士(異常な強さだけど……これなら勝てる、はず!)

黒大剣「……」ノソ

勇者(やはり……巨体な分、一動作毎のインターバルがあるな)

勇者(回復するなら今か)

勇者「太陽の聖域」カッ

勇者「……」シュゥシュゥ

剣士「?」

勇者 > 621回復
勇者 > 668回復

剣士(リジェネ系……5000以上食らっているはずなのに。単発高回復の魔法は使えないのか)

勇者(さて……次の攻撃がくるはずだ)ジリ

影大剣「……」ヒュン

シャドウ > 独楽斬り

剣士「ひぃっ! 回転しながら突っ込んできますよ!」

勇者「え?」

影大剣「……」ヒュン ヒュン ヒュンヒュンヒュン

勇者(不味い……避けるのも耐えるのも無理だぞ、あんなの)

剣士(一撃があれなのに連続で斬りつけられたら……成功してくれ!)

剣士「爆激符!」ピッ

影大剣「……」ッドォォン

シャドウ > 行動キャンセル

勇者(動きが止まった?)

剣士「は、はは……しばらくレアはドロップしなさそうだなぁ」

剣士「行動中の技を止めただけです! すぐに動き出します!」

黒大剣「……」グニャリ

シャドウ「……」グニャニャ

剣士「あ……げ、まさか」

影勇者「……」

勇者「……」ザッ

影勇者「……」チャキッ

剣士(い、一騎打ち? というか勇者さんの超強化版ってもう……僕に援護の隙すらないんじゃ)

勇者「……」ダッ

影勇者「……」ドッ



勇者 > 8243ダメージ(クリティカル)

勇者「……ぐぅ」ボタボタボタ

剣士「あ……うあ……」ガタガタ

影勇者「……」クル

勇者「く、そ……」

影勇者「……」スゥ

勇者「が……間合いだ!!」バッ

影勇者「!」ガッ

剣士(ア、アイアンクロー?! その状態で何、! 時間稼ぎ?! え、援護を!)ワタワタ

勇者「マジックドレイン!!」

影勇者「!!」

影勇者 > MP10231ダメージ
勇者 > MP10231回復

剣士(MP多っ!!)

勇者「く……」ヨロ

勇者「くれて、やる」ポィ

影勇者「?」ポッ

食魔花「」キチキチ

勇者 > 食魔花
影勇者 > MP1ダメージ
影勇者 > 急性魔力欠乏症
影勇者 > 526ダメージ(スリップ)
影勇者 > 589ダメージ(スリップ)
影勇者 > 625ダメージ(スリップ)

影勇者「!」ガクガクガク

剣士「怖っ!」ビクッ

勇者「もう大丈夫……いや、姿を変えてこない限りはな」シュウシュウ

影勇者「」ガクガク ビクンビク

剣士「ど、どうなっているんですか?」

勇者「俺の世界は基本、誰もが魔力を持っている。量の差はあるのだがな」

勇者「それが急速に消費消失した場合、ショック症状を起こし処置できなければ死に至る」

勇者「まさか、再三苦しめられたこれに助けられるとはな……」

影勇者「」ピク ピク

勇者「どうやら……これで終わりそうだな」

剣士「あの最後にMPが1残っていたのは?」

勇者「マジックポイン……魔力残量の事か? ここは全て数値化されているのか……」

勇者「ショック症状自体避けられないが、僅かでも残っていれば自身で対処できない程の症状にならないからな」

勇者「一撃で全て魔力を失わないような効果の装備を持っているんだ」

剣士「有無の差がそこまで……」

勇者「ああ、全くだ……」

影勇者「」シュン

紫宝箱「」スゥ

剣士「おお……紫宝箱」

勇者「……ふと気になったのだが銀よりいいものなんだよな」

剣士「そうですよー」

勇者「色的にそうは見えないんだが……」

剣士「あー……一応、赤は一般イメージだからでして」

剣士「銀はそのまま銀の宝箱、紫は魔法を帯びているミスリル銀、金がそのまま金、光る赤がオリハルコンってなってます」

剣士「オリハルコンってそちらの世界にはありますか?」

勇者「伝説上はな……だがしかし、ミスリル銀より金のが価値が高いのか」

剣士「そこは中身とイメージとして折り合いがつかなったそうです」

勇者「……」カチッ

勇者「なんだ、これは……分かるだろうか?」

剣士(? ああ、トレード画面出ないんだった)

剣士(宝玉の欠片……アイテム情報もNo Dataか。どう見ても勇者さん絡みだよなぁ)

剣士「全くもって。多分そちらの世界に関わるものだと思います」

勇者「だろうとは思った……。すまないが返してくれないか?」

剣士「というよりも僕が持っていても仕方が無いですしね」

剣士「一度町に戻ってアイテム補給してきますね……また戦闘になると困りますし」

勇者「それもそうだな……」

剣士「ここの茂みに隠れていて下さい。透明化のアイテムも無駄には使えませんし」

剣士「それじゃ行ってきますね」

勇者「ああ、助かるよ」


剣士(あれ? おわ! レベルが2も上がってる!)

剣士(骸骨将軍と特殊シャドウ、相当な経験値だったんだなぁ……)

剣士(あ、あの装備が使えるようになる! 露店出てないかなぁ)ウキウキ

勇者(宝玉の欠片……触れると魔力が寒気のように登ってくる)

勇者(普通じゃない……やはり魔王の宝玉と見るべきか)

勇者(そうなるとやはりこれは、魔王の魔力を封じたもの、か?)

槍騎士A「あっ」

槍騎士B「おっ」

勇者「!」

勇者(不味い……気づかなかった!)

槍騎士A「すまない! 助けてくれ!」

槍騎士B「礼ならいくらでもする。手を貸してくれ!」

勇者「え? あ、ああ、いやしかし……」

槍騎士A「頼む! 急がないとならないんだ!」

勇者「……。分かった。どうすればいい」

槍騎士B「すまない、着いてきてくれ!」

[PvP 草原]
槍騎士C「……」

槍騎士D「来たか」

勇者(……全員同じ格好。何かの組織か?)

勇者「それで、どうすればいいんだ」

槍騎士A「……」

槍騎士B「残念だが、頼みなどはじめからない。騙して悪いが仕事なんでな」

槍騎士D「ふざけるな。それこそ仕事中だ」

勇者(物言いからして……管理している者達か!)

槍騎士D「不正プレイヤー、貴様が何をどうやってその状況を保っているかは分からないが……」

槍騎士D「排除させてもらうぞ……」

勇者「待て、君達はこの世界を管理する者なのだろう。その君達ですら、俺の排除に姿を現さなければならないのか」

槍騎士C「何言っているんだ……こいつ」

槍騎士A「GMに対して煽っているのか?」

槍騎士B(この状況で俺以上にふざけるとかメンタルつええ……)

槍騎士D「強制的にログアウトをさせようとしても、こちらのコマンドを弾き」

槍騎士D「特定MAPに強制的に移動させようにもそれも無効」

槍騎士D「アカウントを調べようにも、何一つ情報が存在しないかのように読み取れず……」

槍騎士D「不正プレイヤーの度を越えた……最早ハッカーと呼ぶに値するお前が」

槍騎士D「中々面白そうなRPをしているとはな。性質が悪くて反吐が出る!」

槍騎士D「貴様の情報を解析し、二度と我が社のサーバーに繋がる事すらできなくしてやろう!!」ザッ

勇者(彼らでさえ俺をどうこうできないのか……なら、この場でどうするつもりだ)

勇者(彼らに倒されたら俺はどうなる……? 剣士達なら復活できるのだろうが……)

勇者(それが狙い、か?)

槍騎士A(俺達の権限ですらどうにもできなかった……)

槍騎士B(コマンド全部弾きやがるからなぁ)

槍騎士C(で、あればこのデバッグ用の槍で全て見通してやるよ、ハッカー)

槍騎士D(ダメージを与える、それはPCのHP残量のデータを書き換える事になる)

槍騎士D(その処理の隙間を潜り、貴様の情報を抜き出してくれる)

槍騎士A「……」ヒッ

勇者「!?」ギィィン

勇者(早い!)

槍騎士B「そぉら!」

槍騎士C「……」

勇者「ちぃっ!!」バッ

勇者(上手い!)ザッ

槍騎士D「……」ブォン

勇者「!?」ガギィィン

槍騎士D「……ちっ」ギィン ブァッ

勇者(強い!)ギィィン

槍騎士A「あいつ……普通に強いぞ」

槍騎士B「しかも迫真の演技。かっけぇ……」

槍騎士C「真面目にやれ!」

槍騎士D「……」ジリッ

勇者(何とか先制を掻い潜ったと思ったが……)

勇者(完全に四方を押さえられた……なんて熟練度だ)

勇者(外部から操作してこれほどまでに緻密に動けるとは……恐れ入るな)

勇者(これは……本気でやらねばならないが、彼らを倒してしまった時に何が起こるか分からない……)

勇者(倒しきらずに勝つ。苦しい勝利条件だが元より単身で戦ってきた身……その程度できずにどうする!)ダッ

槍騎士A「!」バッ

槍騎士C「あ、馬鹿!」

勇者「……」ズザァ

槍騎士A(!? フェインt)

勇者「たあっ!」ザンッ

槍騎士A > 5612ダメージ(クリティカル)

槍騎士A(あ、やばい……)

槍騎士B(おいおい、なんだよこのダメージ……どうなっちゃってんの)

槍騎士C(一般の目に晒される可能性を考慮して、一般PCで来たのは失敗だったか……)

勇者「たああ!」ヒンッ

勇者 > 急所返し
槍騎士A > 3961ダメージ
槍騎士A > Dead

勇者「!!」ドキッ

勇者(二発で……馬鹿な! いや、彼らにとって俺はそれだけイレギュラーなのか! しかしこれでは……)

槍騎士D(サーバーのデータに書き換えられた痕跡は無いはずだが、何故実装されていない技が……だが)

槍騎士A:Dead「悪い……」

槍騎士B「噛ませ犬様ご苦労様でーっす」

槍騎士A:Dead「てめぇ……」

勇者(操作している者は無事か……特別悪影響はないのだな)ホッ

槍騎士D「B、C!」

槍騎士B「へい」バッ

槍騎士C「……」ダッ

勇者「まだ戦うのか」ギィィン

槍騎士B「すまんね、お仕事なの」ビッ

勇者「なら……」クル

槍騎士C(距離を取らせは……)

勇者「雷撃刃!!」カッ

勇者「……。な!?」

槍騎士B「うっひぃ……なんだ今の」バチバチ

槍騎士C「剣で範囲攻撃……? くそ」バチィ

槍騎士B > 352ダメージ(Guard)
槍騎士C > 1436ダメージ(Guard)
槍騎士C > 麻痺

槍騎士B「対雷装備でゴメンネ」ビッ

勇者「くっ!」ギィン

槍騎士D「……」

槍騎士B(こりゃあ、A切捨ててCだけでも回復させといた方がいいかもしれんね)

槍騎士D「……」ブァッ

槍騎士D(倒す必要は無い。ダメージが入ればそれでいい……終わりだ)

勇者「!」

槍騎士D > クラッシュピアース

勇者「くぅぅ!!」ガギィィン

槍騎士D「!?」

槍騎士D(この技を受け流しただと!?)

槍騎士B「足元が以下略」ビュ

勇者「ふっ!」ヒラリ トッ

勇者「たあ!」ザンッ

槍騎士B「うは、回避高すぎ……チート乙」

槍騎士C「真面目にやらないからだ!」ビュッ

勇者「……く」バッ

勇者「たああ!」ガギィィン

槍騎士D「……」ギギギ

槍騎士D(後ろに回りこんではみたが……恐ろしい反応速度だ)

勇者「……」バッ

槍騎士D「え……?」

勇者「はっ!」ザン

槍騎士C「げっ!」

槍騎士B「そこぉ!」

勇者「……ふっ!」キンッ

槍騎士B「ですよねー……ん?」

槍騎士B > 6385ダメージ(クリティカル)
槍騎士B > 武器破損

槍騎士B(剣でウェポンブレイクとか……ハッカー、チーターじゃなけりゃ、お友達になりたいんだけどなぁ)

槍騎士C「……」バッ

勇者「……」ジリ

槍騎士B「これ、せこいから使いたくなかったけど」ヒョイ

勇者「なっ!」ビタッ

槍騎士B > 影縛りのカード
勇者 > 行動キャンセル

槍騎士D「終わりだ」ビッ

勇者「間に、合え!」ググ バッ

勇者「……」ガギィィィン

槍騎士D「……」

槍騎士D > 閃光突き
勇者 > Avoid
槍騎士C > 閃光突き
勇者 > 1201ダメージ

勇者「……」

槍騎士C「ふう……」

勇者「大したものだ……俺の居た国の近衛兵ですら、十人同時に相手しても無傷だったものを」

槍騎士B「ホント面白いなぁ君。状況分かってる?」

勇者「?」

槍騎士B「……よく考えたら状況分かってたら怖いわ」ジャ

勇者「は? え?」

勇者(構えを解いた? 何故……?)

槍騎士B「あのね。君、凄いプロテクト組んでるっしょ。ダメージ与えた時の処理使って、そっちの情報頂こうとしたのよ」

勇者「そ、そうか??」

槍騎士D「……」

槍騎士B「あーもーなんだかねぇ……悪意無さそうだから俺もついつい口が滑っちゃうよ。はいはいすみませんって、始末書書きますよー」

槍騎士D「C、結果は?」

槍騎士C「」

槍騎士D「……どうした?」

槍騎士C <Link Dead>

槍騎士B「えぇぇ?」

槍騎士A:Dead「見てきます」

槍騎士A:Dead <AFK>

勇者「……」

勇者(何が起こった……まさか俺の所為で何か?)

槍騎士D「なに? 馬鹿な事を言うな」

槍騎士D「……分かった。お前達はログアウトして解析しろ」

槍騎士A:Dead「」シュンッ

槍騎士C <Link Dead>シュンッ

勇者「? 何を言って……」

槍騎士B「いや、普通にAとCと話してるだけだって。そんくらい分かるっしょ?」

勇者「いや、すまないが君達がどういう状況か俺にはさっぱり分からないんだ」

槍騎士B「……ん? え?」

槍騎士D「本当に……何者なんだ。貴様は」

槍騎士D「謎の膨大な量のデータが得られたそうだ……とんだ地雷までしかけてくるとはな」

槍騎士B「うっへぇマッジスか」

勇者「……もし可能であれば、俺の話を聞いては貰えないだろうか?」

槍騎士D「話だと……今更何を」

勇者「君達はこの世界を管理する者達なのだろう? ……出来れば、協力してほしい」

槍騎士B「ちょ、まだRPするの? でもそういうの好きよ、俺」

槍騎士D「B」

槍騎士B「サーセン」

槍騎士D「何れにせよ、現状打つ手が無くなった。話だけは聞いてやろう」

……
槍騎士D「馬鹿な……そんな事が」

勇者「自分が会った者も初めは冗談だと思っていたようだ」

勇者「だが、俺には分からない何らかの根拠を元に、それを信じた方が辻褄が合うと気づいたようだ」

槍騎士D(確かに……いや、未知数の塊であるからこそ、今までの謎の現象が起こったと片付けては)

槍騎士D(だが……明確な部分を見ればこそ、確かに辻褄が合う)

槍騎士D「その協力者を呼べ」

勇者「すまないがこの世界の機能の殆どが、俺には利用できないんだ」

勇者「地図が出せるそうだが、俺にはそれすら方法が分からない」

槍騎士D「名前は!」

槍騎士B(うっわぁだんだんイラついてる。触らぬ神に祟りなし、大人しくしとこ)

勇者「剣士という者だ」

槍騎士D「……」

勇者(あの様子から見るに、遠方のPC同士でも連絡を取る機能があるのだろうな)

勇者(便利そうだし羨ましいものだが……彼にはまた迷惑をかけてしまうな)

……
剣士「……と、自分では判断して行動していました」ビクビク

槍騎士D「……」

槍騎士B(やっべ、徹夜でもいいから今すぐ解析にいきてえ。二つディスク離れてるのに、なにこの威圧感)

勇者「すまないがせめて、彼だけは大目に見てもらえないだろうか」

槍騎士D「……っ、はあぁぁぁぁ」

剣士「!」ビクッ

槍騎士D「そこの君」

剣士「は、はい!」

槍騎士D「私と彼をフレンド登録してほしい」

槍騎士D「これから定期メンテまで、どちらかのキャラが必ずいるようにしておく」

槍騎士D「何かあったり、必要な事があれば連絡してくれ」

剣士「え……いいんですか?」

槍騎士D「今の我々に出来るのは解析と、上の性急な判断を押しとどめる事ぐらいだ」

槍騎士D「表立って助けてはやれない。善良なプレイヤーの君にはすまないが、それで勘弁してほしい」

剣士「い、いえそんな! ありがとうございます!」

剣士「勇者さん、大丈夫ですか?」

勇者「俺はな。それより更に君に迷惑をかけてしまいすまなかった」

剣士「気にしないで下さいよ。好きでしているんですから」


槍騎士B「先輩、珍しくやっさすぃー」

槍騎士D「昔を思い出しただけだ」

槍騎士B「なんですそれ。ネトゲで言っても格好悪いっスよ」

槍騎士D「ネットゲームという非日常の中ですら、更なる非日常を求めたりしたものだろ」

槍騎士B「……先輩も昔は厨二病だったんスね」

槍騎士D <AFK>「ツカッツカッ ツカッ カッ」

槍騎士B「カッ え? ツカッ あちょ、タンm ゴッ」

剣士「あ……そうだ。すみません」

槍騎士D「どうかしたのか?」

剣士「実は先ほど、[忘れがたき歴史に残らぬ聖堂]に行ってきたんですが」

剣士「そこで異常に強く、特殊攻撃を行うシャドウが出現しまして」

槍騎士D「……また、訳の分からない状況を」

剣士「……え、えと。倒した時に、恐らく勇者さんに関係するであろうアイテムを入手したんです」

槍騎士D「ほう、どんなだ」

勇者「これだ」

槍騎士D「……? っ!」

剣士(GMでもトレード画面無視してアイテム渡されたら驚くよなぁ……)

槍騎士D「……なるほど、先ほどの話とも繋がるな」

槍騎士D「これは返しておこう。だが、他者とアイテムの交換などは行うなよ」

勇者「え? あ、ああ……?」

剣士「それで他の場所もそうなるのではないかと考えています」

剣士「けど、その……忘れがたき宝玉しか持っていないので、もし可能でしたら宝玉をお貸し頂けないでしょうか?」

槍騎士D「……仕方が無い。いいだろう」

槍騎士B「えー……マジッスか。まだいくつかはネットでも、ドロップ報告上がってすらないっスよ」

剣士「!」

槍騎士B「あ、やべっ」

槍騎士D「……他言無用で頼めるな」

剣士「は、はい」

槍騎士D「……。よし、これを」

剣士「闇・宝玉? 火・宝玉……この宝玉は一体」

槍騎士D「デバッグ用のものだ。次の定期メンテナンスでロストするように設定してある」

槍騎士D「くれぐれも他者に渡さないように」

剣士「は、はいっ!」


勇者「ふぅ……助かった」

剣士「裏方のGM見るの初めてだなぁ」

勇者「ジーエム?」

剣士「管理している人達の中で、専用キャラクターでこの世界に来て色々とする人達です」

剣士「イベントの進行役だったり……まあ今回みたく不正しているプレイヤーにお仕置きしたりですね」

勇者「なるほどな。向こうは俺も一介のプレイヤーとやらに、見なしてくれていたのが救いだったな……」

剣士「どうしてですか?」

勇者「あのまま畳み掛けられていたら負けていたかもしれない」

勇者「この世界で力尽きたら……きっと俺は死んでしまうのだろう事を思うと」

剣士「あ、あぁ……」

勇者「何はともあれ、一先ずは本の機能が止まる日までは、管理側からは攻撃が無くなった」

勇者「少しは安心できそうだ」

剣士「でも結局、姿を消していないとですけどね」

勇者「駄目なのか?」

剣士「……宝玉と一緒に、大量の姿を消す道具も渡されました」

剣士(そりゃあ未確認装備で身を包んだキャラがいるとか、運営も火消しが面倒だもんなぁ)

勇者「つまり……見逃すのは、剣士が先手打って伝えた、可能な限り穏便に済ます手段を実行した上で、という事か」

剣士「……言動の裏読むの得意ですね」

勇者「卑しい貴族と向かい合わなければならない事もあったからな……」

勇者「そんな話はどうでもいい。次は……宝玉を全部持っていていいのか?」

剣士「え? ああ、大丈夫です。複数持っていた場合フィールドに効果があるのはランダムです」

剣士「ダンジョンとかだと条件になっている宝玉が優先、無ければこれもランダムですね」

剣士「風の国だとあと三箇所パワースポットがありますので、ガンガン行っちゃいましょうか」

勇者「ああ、よろしく頼む」


[恵み振る変わりなき湖の畔]
剣士「……」サヤサヤ

勇者「長閑だ……」サァァ

剣士「……ですね」

勇者「ここは普通だな……実際何が起こるんだ?」

剣士「湖でそこの光り輝く場所から光る水と、貴重な魚が採取できます」

勇者「……? だけか?」

剣士「です。いや、結構入手手段が限られたアイテムなんで」

勇者「そんなものか……」

剣士「そんなものなんです。こういう本の世界って」

[猛り上る隠された花畑]
剣士「……」サヤサヤ

勇者「長閑だ……」サァァ

剣士「……ですね」

勇者「……ここは?」

剣士「燃えているような花から火の花が採取できます」

勇者「そればっかだな……」

剣士「この本を遊び始めた人が集まる国なんで、初心者向けみたいな」

勇者「しかし、殆どの宝玉は早々手に入らないのだろう?」

剣士「ナンデスヨネー」

[吹き荒ぶ西の果て見る岬]
剣士(吹き荒ぶ宝玉ってあるんだ……ドロップ報告無いのこれか)

勇者(人がいる……喋るとばれてしまうな)

剣士「あれ? NPCだ」

勇者「なんだ、では問題ないんだな」

行商人「……」

剣士「あ、特殊な道具売ってる」

勇者「……思わず二度ほど桁を数えてしまったぞ」

剣士「それだけ価値があるものなんですよ」

剣士「見事に聖堂以外全部外れたなぁ……」

勇者「あ……三箇所か」

剣士「はい……」

勇者「他の国があるそうだな」

剣士「北に森の国、更に北に雪山の氷の国、北東に山岳地帯の崖の国」

剣士「その南に海の国。えーと南南西に砂漠地帯の砂の国、その東に火山の火の国」

勇者「……ややこしいな。よく覚えていられるな」

剣士「いやぁ遊んでいれば、自然と覚えていくものなんですけどね」

勇者「うん……? 基本西の方には国が無いのか」

剣士「風、氷、砂の国の領土が広がっているだけですね」

勇者「森の国とやらは?」

剣士「西が凄い短いんです……風の国に南と西を抑えられている感じです」

勇者「……森がそこで途切れているのか」

剣士「そういう事です」

剣士「次は森の国に向かいましょう」

剣士「森の国は三箇所です」

剣士「一箇所が風の国よりにあるので歩いていきましょう」

勇者「城下町から城下町へと瞬時に移動できるのか……」

剣士「はい、転送サービスっていうのを使ったり、転移魔法で特定の地点を登録している方にお願いしたりですね」

勇者(全部回りきれるのだろうか……)

槍騎士B<やっほー>

剣士「あ、槍騎士Bさんから連絡が来ました。ちょっと待って下さい」

勇者「え? あ、ああ……」

剣士<どうしました?>

槍騎士B<一応伝えておこうと思ってねぇ。今のところ、実装Mobの強化版は君達が倒したシャドウのみね>

槍騎士B<彼の世界とやらの魔物、特に名前未表示のはちらほらいるみたい>

槍騎士B<何人か瞬殺されたってさー>

剣士(GMとしてそれ、笑っていいんだろうか……)

槍騎士B<ただ、Mob化していないからなのかねー。デスペナ無いから炎上はしていないのよ>

槍騎士B<ま、倒しても旨みが無いから、大抵は逃げているようだねぇ>

剣士(炎上は、ていう事はやられた人がどっかで情報吐き出しているのか……)

剣士(負けたら死亡とかは無いようだし……まあ、あの宝玉で強化されました的なのは油断できないけど)

剣士<ありがとうございました。こちらは風の国のパワースポット、聖堂以外外れでした>

槍騎士B<おー頑張れー>

剣士(超人事っ)

剣士「ふう……」

勇者「一体どういう仕組みで連絡を取り合ったんだ?」

剣士「えーとですね。今こうして勇者さんと普通に会話している状態ですけども」

剣士「僕達にとっては道具に向かって話しかけ、道具から出る音を聞いて会話を成立させているんです」

勇者(通信魔法の道具版といったところか……)

剣士「今こうして勇者さんと話していますが、近くに誰かいれば当然会話を聞かれます」

剣士「これを特定の誰かを指名して、一対一で会話したりする事ができるんですよ」

勇者「便利だな……」

剣士「現実にも電話、ていう道具があって、これを使うと遠距離の人と連絡し合えるんですよ」

勇者「この世界の外でも似た事ができるのか!」

勇者「狼煙や伝書鳩のようなものでなくて、だよな?」

剣士「そうですよ。個々の電話ごとに10桁近くの番号が割り振られていて」

剣士「その番号をボタン式で入力すると、十数秒の内には繋がるんですよ」

勇者「へえ……! 凄いなぁ」

勇者「君の世界は。魔法というもの自体はないのか?」

剣士「ありませんよ。飽くまで想像上のものとしてしか存在していません」

剣士「その代わり科学や文化が発達していて、電気……雷の力を制御して、エネルギーとして活用しています」

勇者「凄いな……もしやこの世界を維持しているのも雷の力なのか」

剣士「そうですよ。というか大抵の物は少なからず、雷の力が必要になります」

剣士「外部から引っ張ってくる必要があったり、小型の容器に封じ込めて使ったり」

勇者「小型?」

剣士「小指の第一関節から先ぐらいの大きさの物とかあります」

剣士「勿論、小さければ小さいほど小型のものしか動かしませんが」

勇者「それはもう、魔法道具じゃないのか?」

剣士「あーよくそういうネタはありますね。発達し過ぎた科学は魔法と変わらない云々……」

勇者「そうか……少し君の世界を見てみたいな。どれほどの文明の差なのだろう」

剣士(多分、相当かけ離れてる……)

勇者「……まさか君の世界ではこの世界みたく、手元に地図を表示させたりとかできるのか?」

剣士「えーと、端末……様々な情報を処理する小さい道具がありまして」

剣士「それを使えば周囲の地図を確認したりできますよ」

勇者「……文明に天と地ほどの差がありそうだな」

剣士「魔法が無い分そうした分野を発達させてきた、というところがありますからね……」

僧侶「あ、剣士」

剣士「! どうしたの、こんなところで」

勇者(今のうちもう一つ、消え去り草を服用しておくか……)

僧侶「薬草採取。そっちは?」

剣士「ちょっと人と待ち合わせしていて、向かっているところ」

僧侶「ふーん? そっか。じゃ、気をつけてね」ニコ

剣士「……。んん??」

僧侶「あれ、珍しい。噂知らないの?」

僧侶「謎のバグモンスターとか謎の装備のPCとかがいるって話だよ」

僧侶「バグモンスターに到っては負ると昏睡するって話だよ!」

剣士(既に尾ひれついてる!!)

勇者(なんだとっ!)

剣士「それ本当?」

僧侶「んーニュース一通り調べてみたけど、そんな話は聞かないかなぁ」

剣士「デマだって分かってるんじゃん……」

僧侶「でももしかしたらそういう事があるかも、って話」

僧侶「まあ、現実的ではないけども、運営が何も言っていないところを見ると雲行き怪しいし」

僧侶「そして現れる主人公、同行して問題を解決してその名は長く語り継がれ……」ブツブツ

剣士「はいはい……そうだ、その謎装備のPCって?」

僧侶「なんか何人かいるらしいよ。GMのゲーム内用のキャラだとしても、未実装装備だなんて目立つだけだし」

僧侶「一体なんなんだろうね」ウーン

剣士(何人か……?)

勇者(俺以外にも誰かが来ているのか……一体誰だ)

僧侶「森の方に行くの?」

剣士「え? あ、ああうん」

僧侶「もしかしたら会えるかもね、さっきすれ違ってよ」

剣士「えっ! へ、へえ……予定変えて狩りじゃなくてその人探そうかなぁ」

僧侶「超可愛いPCだったよぉ」ニヤニヤ

剣士「あっそう」

僧侶「ちぇ、つまんないなー。まあいいか。待ち合わせだっけ? じゃねー」

剣士「うん、またー」

勇者「……凄い情報を置いていったな」

剣士「……です」

勇者「それにしても随分と可愛らしい人だな。君も中々隅におけないな」

剣士「まあ、あれ。男ですけどね」

勇者「……」

勇者「あ、ああ……線の細い容姿の所為で、そういう趣向になってしまったのか……」

剣士「現実じゃむさい男ですけどね」

勇者「……」

勇者「何なんだ、君の世界は……どうなているんだ」

剣士「えーとですね、まず僕達の声は道具を通して伝えていると言いましたよね」

剣士「声の高さとか設定できるんで、野太い声から高い声まで自在なんですよ」

勇者「ほー……」

剣士「で、ここの世界は僕達にとっては現実で無いので、まあ性別合わせない人とかたくさんいます」

剣士「性別や姿とか自由に決められますので」

勇者「……ほー」

剣士「姿が可愛いから、て人もいますけど、さきほどの彼みたく、こういった世界で女性の振りをする人はネカマっていいます」

勇者「ネカマ?」

剣士「オカマ、オナベって分かります?」

勇者「オナベは聞かないな……」

剣士「男のように振舞う女性、オカマの逆だと思って下さい。で、こういった世界はネット、と呼ばれるシステムの上に成り立ってます」

勇者「そうした中にいるオカマオナベはネがつくのか」

剣士「そんな感じです。ネカマの多くは……まあぶりっ子したりして、男性に貢がせたりが多いです」

勇者「ああ……なるほどな……」

勇者「しかしネナベの必要性は?」

剣士「まあ、女性だと知られると男性に粘着……付き纏われたりしますからね」

剣士「そういう煩わしさを避けたいって女性は多いらしいですよ」

勇者「なるほどな」

勇者(しかしそうなると、性別に違和感の無い者が現実では同性か異性か分からないというのも、何とも恐ろしい話だな……)

剣士「まあそんな訳で……何の話だったっけ……。あ、そうだ。謎の装備!」

勇者「彼女……彼が来た方角に行こう」

剣士「ですね」


勇者「人影なぞ見当たらんな……」

剣士「うーん。あ、勇者さん姿が……」

勇者「おっと……ちょっと待っててく」..ォォン

剣士「爆発音? 戦闘かな……あれ? なにあの氷」

勇者「……」サー

剣士「ちょちょ、いきなりどうしたんですか! というか消え去り草!!」タタタ

勇者「……」タタ ズザァ

四将・氷「ん?」

四将・風「あら……」

勇者「貴様ら……」

四将・氷「はっ! やっぱりお前が絡んでいたか」

勇者「あぁ?」

剣士「え? あのー」

勇者「寝言は寝て言うものだぞ? ちんけな魔王軍なぞ押すに押したる状況下、下らん小細工をする必要もなし」

氷「へぇぇぇ! その割には私達四将を一人も倒せていないようだけどもねぇ!」

勇者「姑息なお前達が何時挟撃してくるか分からん以上、余力を残した状態で決着しなくちゃならないからなぁ!」

氷「はぁ?! 何時私達が多対一で挑んだってのよ!」

勇者「俺一人に軍隊けし掛けてきているのはお前達だろう!」

氷「人外が寝言ほざいてんじゃないわよ! 一般兵如きに一対一を望む気?! 馬鹿じゃないの!」

剣士「えー……」

風「あの二人は会えば何時もこうなのですよ」

剣士「……えー」

剣士「というか勇者さん……口調と言い方が」

風「他の四将には普通なのですがねぇ……」

剣士「あの……貴女達は?」

風「彼に同行しているという事は、大まかな話を聞いているのでしょう」

風「私は新生魔王軍、四将の風、特性は風。彼女は氷と言い、特性は氷です」

剣士(あ、音読みなんだ……四天王じゃなく四将かぁ)

剣士「特性ってなんですか?」

風「我々魔族や魔物は種族ごとに苦手な属性と得意な属性があります」

風「まあ、得意な属性の対になるものが苦手というだけですが。人間には得手不得手程度で、大きな耐性の差はないようですがね」

剣士「なるほど」

剣士「というか勇者さん……口調と言い方が」

風「他の四将には普通なのですがねぇ……」

剣士「あの……貴女達は?」

風「彼に同行しているという事は、大まかな話を聞いているのでしょう」

風「私は新生魔王軍、四将の風、特性は風。彼女は氷と言い、特性は氷です」

剣士(あ、音読みなんだ……四天王じゃなく四将かぁ)

剣士「特性ってなんですか?」

風「我々魔族や魔物は種族ごとに苦手な属性と得意な属性があります」

風「まあ、得意な属性の対になるものが苦手というだけですが。人間には得手不得手程度で、大きな耐性の差はないようですがね」

剣士「なるほど」

勇者「その乳房を切り落として月の女神と同じにしてやろう! ああ、それじゃあ摩り下ろした方が早いか!」

氷「なんならその粗末なもの切り落として、復讐の女神出産を助けてやろうか! あーそのダガー潰した方が早いわね!」

剣士「ちょ、勇者さーーーん!!」

風「氷、一般の方の前でそういう事は言わないの」

氷「喧嘩吹っかけてきたのはこいつよ!」

勇者「お前達が大々的に進軍したのが全ての始まりだ!!」

氷「あァン!」

勇者「あァッ!」

剣士「勇者さんが二重人格になった……」

風「……」スィ

勇者「ぉ……」クラ

氷「ぁぅ……」カクン

剣士「え……?」

風 > 花香る風
勇者 > 睡眠
氷 > 睡眠

剣士(四将の人も……もしかして今のほぼ絶対に睡眠にする技とかかな? 凄いなぁ)

剣士(というかこれ、僕にかからないようにした、て事だとしたら……勇者さんの世界の人達)

剣士(考え一つで通常のフィールドでPKできるのか……絶対にさせないようにしないと)

風「はい、落ち着いた?」

氷「ねえ殺っちゃいましょ、今この男殺っちゃいましょうよ」

勇者「ほー……手の平返して二対一か」ピキ

風「はーい。痴話喧嘩はそこまで」

勇氷「「何処が!」」

剣士「あの……お二人は勇者さんとは敵同士ですよね?」

風「ええ、そうですよ」

剣士「……」

勇者「どうかしたか?」

剣士「いえ、敵同士という割りにその、何と言うか恨み合っていないというか」

氷「……この世界では恨みあうものなのか」

風「そうよ。外の世界では国で戦争をしているのよね?」

剣士「ええ……え? 何で知っているんですか」

風「他の方に聞いたのですよ。こちらは異邦人ですからね。下手に出て頼んでみたところ色々話してくれましたわ」

氷「ああ……鼻の下伸ばした男達を集めていたのはそれか」

剣士(この風って人、分かっていてやったんだろうなぁ……)

勇者「相変わらず薄汚い手段だな」

氷「ほぉ……お前はそこの男がいなかったらどうしていたんだ?」

勇者「……」ゴゴゴ

氷「……」ゴゴゴ

風「……はあ」

剣士「……あー。あ、さっきの質問、聞いてもいいですか?」

風「? ああ、恨み合っていない、ですね」

風「恨み辛みが無いといえば嘘ですけども、少なくとも私達は私達が信じるものの為に戦っています」

風「それが他者を虐げる事も承知の上で、です。そして彼は彼で守るものの為に戦っています」

風「明確な敵ではありますけども、お互い無為に悪意を振りまいている訳ではありません」

剣士「お互いを好敵手として捉えていると」

風「そこまで清い関係ならいいのですが……これは戦争なので」

剣士(勇者さんの世界は割り切っているというかなんというか)

剣士(勇者さん自身の反応を見ると、四将……新生魔王軍の暴論じゃあないみたいだし)

風「こんなところでよろしいでしょうか?」

剣士「あ、はい。ありがとうございます」

勇者「――――――!!」

氷「――――――!!」

風「……とりあえず、貴方と現状確認をした方が話が進みそうね」

剣士「で、ですかね」

……
風「……なるほど」

剣士「そんな訳なんですよ」

風「……」

剣士「……あの?」

風「あ、すみません」

風「状況だけ見れば……魔王様を封じられた宝玉は、既に何者かの手に渡り悪用されている、と見るべきなんでしょうね」

剣士「……何故そこまで魔王の宝玉が必要なんですか? 多くの血を流してまで得るほどのものとは……」

剣士「それともそれは、絶対の力であるとかですか?」

風「あまり……無関係な人に話していいものか悩むところですが」

風「……何処か遠くの御伽噺だと思って聞いて下さい」

風「昔、魔王様が何故、どのような経緯をもって、その座に就いたかは分かりません」

風「もう4,500年ほど前の事ですからね」

風「その当時は魔族も魔物も極々少数の集まりで生活をしており」

風「時には同族や人間と、領土の奪い合いをしていました」

風「そんな中、人間達は多くの集団が一つとなり、国というものを作り上げていきました」

風「遥か昔から因縁のある我々に対し、人間達は軍隊という形で攻め入ってきました」

剣士「その時に立ち上がったのが魔王……?」

風「その通りです」

風「その後、付け焼刃とは言え国としての形を保ち、人間側に対して徹底抗戦の構えを取りました」

風「……結果は知ってのとおり、人間の名だたる者達に魔王様は討たれてしまいました」

風「それからというもの、百年近くは惨めな生活であったそうです」

風「人間達の追撃から逃げつつ、地に根を下ろす事もままならず……」

風「百年を過ぎた頃から、人間達も我々の根絶やしは諦めていきました」

風「しかし、見つけこそすれば剣を掲げて追い立てる……新生魔王軍が生まれるまで、それが続きました」

剣士(魔王側が悪じゃないパターンの王道って感じかなぁ)

風「それ故に、確固たる力……一度は敗れはしましたが、魔王様自身、またはそのお力を探しているのです」

風「そしてもう一度、今度は確かな国として独立し、人間側に立ち向かい勝ち残る。それが我々の考えです」

風「無論、中には人間に対して復讐心を燃やす者も数知れないのは事実。ですが無用な殺生を許した事はありません」

剣士(絶対的な力の長の下に、かな。という事は、魔王軍に賛同していない魔族魔物もいるのか)

剣士(一般兵や非武装の魔族とかの気持ちと、人間側の気持ちさえ片付けば共存できるんじゃないかなぁ)

剣士「なるほど……よく分かりました」

風「……諭しますか?」

剣士「いえ、平和な国で生まれ育った僕には、そんな事できませんよ」

風「さて、談笑はそれぐらいにして……」

勇者「談笑だと!?」

氷「風! これは私達魔族の誇りの問題よ!」

風「問題解決への手がかりを得られたのですから、私達もそれに沿った行動をすべきです」

剣士(華麗にスルー)

氷「え? 手がかり!?」

剣士「話してないんですか……」

勇者「馬鹿に話したところで意味は無いだろう」

氷「アァ?」

風「氷。異世界から帰還等々、その指揮は私に任せていただけますか?」

氷「へ? あ、うん……構わないけどもなんで?」

風「言質も取れた事だし……新生魔王軍、四将・風、ともに氷」

風「我々はこれより、勇者ならびに剣士の計画に協力をする」

勇者・氷「はぁ?!」

風「ついては、綿密な話合いの場を設けて頂きたい」

剣士「なるほど……分かりました」

勇者・氷「えっ!?」

氷「あんたが指揮っているんじゃないの……?」

勇者「いや……うん? いやそうだな。どちらかという決定権は剣士にあったな……」

剣士「と言っても……場所の説明ってどうしたらいいんだろう」

風「この世界において、地名ごとに分かれた区画は正方形のマスのようなものでしたね?」

剣士「ええ、そうですよ」

風「氷、正方形の氷のパネルを作って。一辺が……2cmもあればいいかしら」

風「数は……11X11でお願い」

氷「はいはい……分かったわよ」ピキン

剣士「わーすごー……」

風「風の国はこのあたりかしら?」

剣士「えーと待って……このあたり、かな? 現在地がここ」

剣士「ここからが説明難しいなぁ……」

風「場所と地名、パワースポットと呼ばれる場所がどこら辺にあるかを教えて下さい」

氷「ま、風だったら覚えられるわよね」

剣士「凄いですね……」

勇者「一つ疑問なんだが。剣士、その指差し……そんな細かい動きもできるのか。生身の人間と遜色の無い動きに見えるぞ……」

剣士「あーえーと、歩いたりとかできなくなるんですけど、その場で細かい動作を行う、という操作方法に切り替えてます」

風「この動きが外部からの道具による操作……人間の文明が剣士さんの世界の水準じゃなくて、心底安心しています」

……
風「説明は聞いて覚えられましたけども……」

剣士「宝玉が不便すぎる……」

氷「必要な宝玉がバラバラね」

剣士「うーん……あ、そうだ。あの人なら」


槍騎士B「あのねぇ……俺、便利屋じゃないのよ」

剣士「す、すみません」

槍騎士B「ま、事情は分かったし協力する、て言っちゃってるしいいんだけどさ」

槍騎士B「てか超美人。いやいや、これが実在するとか生身で見れる勇者君羨ますぃー」

氷「は? え?」

風「あら、ありがとうございますわ」ニコ

勇者「いや……二人とも殺しあった仲だが……」

槍騎士B「もーなんで戦争なんてしちゃってんの。和解しちゃった方が絶対いーじゃん」

風「……こちらの世界の方はこういうものなんですか?」コソ

剣士「……性格的には独特ですけど、国内の同性の考え方としては少数派じゃないのが苦しいところです」

槍騎士B「ほい、じゃあこれが宝玉ね」

風「ありがとうござ……あらこれは?」

槍騎士B「ほい、こっちも」

勇者「地図? おお……道具としてあったんだな」

氷「私の分まで? ありがとう」

剣士「え?」

槍騎士B「や、地図見れないって言っていたからさ。Cβって地図見るコマンド無くて、その時の骨董品持ち出したのよ」

剣士「えぇ! 地図見れなかったんですか……このMAPの広さで。アイテム枠一つ潰さないといけなかったんですか……」

槍騎士B「Oβ後期までね。初心者ソロで旅立ち迷子続出で笑ったよ。自殺コマンドも無かったしね」

剣士(プレイヤーなのかGMなのか……相当古株の人なんだなぁ)

槍騎士B「んじゃあ俺はこれで」

剣士「ありがとうございました」

槍騎士B「何かあったらまたWisしてねー」

剣士「はーい」

槍騎士B「」シュンッ

氷「……時折、彼らは聞かない呪文を口にするな」

勇者「……言語においても我々と文明の水準が違うのだろうな」

風(こういった世界で使う用語らしいけども、勘違いが面白いから黙っておきましょ)

剣士「道具も揃ったし、海と砂と火の国の方をお願いしてもいいでしょうか?」

勇者「南半分か」

氷「理由は?」

剣士「えっと……地図じゃ分からないんですけど、道が入り組んでるのが北の方が多いんで」

剣士(Mob的にも南の方が過酷だけど、勇者さんと対峙する二人だし問題ないんだろうし)

風「合流はどうしますか?」

剣士「僕の方でお二人の居る場所を確認し、向かうという方法で」

風「この世界の機能は本当に便利ですわね……」

……
風「さて……二人も行った事ですし」

氷「ええ……」

風「……」ゴソ

風「……綺麗」

氷「本当に宝石の類が好きよね」

風「ちょっと!」

氷「はいはい、鳥だなんて思っていな」

風「鉱石だって好きなのよ!」

氷「え? あ、あれ……? それ本当に光物が好きなだけじゃ……」

……
剣士「……」

勇者「どうした?」

剣士「いえ……結局のところ、あのお二人ってどういう感じなのか、よく分からなかったなぁと思いまして」

勇者「四将の内の二人、というのは分かっているか。一人が氷。特性は氷」

勇者「武器はレイピア。的確に鎧の隙間を縫って刺してくるから侮れないな」

勇者「彼女の使う魔法は巨大な氷柱や無数の小さいものを空中で生成したり、地面から隆起させたりする」

勇者「あとは極寒の猛吹雪を生み出したりして厄介なものだ」

勇者「風の特性は風。武器は短剣二本による二刀流」

勇者「風の作用で自身の身体も軽くしているのか、風のような素早い動きで切りつけてくる」

勇者「フルアーマーでも脅威に値する近接格闘能力を持つ」

勇者「魔法は竜巻や風の刃等々。俺達の世界ではオーソドックスなものだが」

勇者「彼女自身の近接攻撃も相まって、脅威であると言える」

勇者「というか魔王軍の4トップなのだから脅威であって当然だがな」

剣士「なるほど……」

剣士「……」

剣士「体系的になんか……逆ですよね、イメージ的に。胸とか」

勇者「憎たらしい相手ではあるが、女性である事を考えると氷は中々可哀相なものだ」

[森の国 南第一エリア]
[恵み振る捕食者舞い寄る花畑]

勇者「……ここは何とも無いか」

剣士「……」

勇者「どうした?」

剣士「情報によりますと、ここの中央の花畑で花の採取か休息をとると」

剣士「魔物が現れて襲われるんです。それもかなり強い」

勇者「ほう……面白い」

剣士「ちょ」

―― [戦 闘 開 始] ――

デドリーポイズンバタフライ「……」バッサバッサ

勇者「蝶というサイズか!? 人ほどの大きさではないか!」

剣士「だあああああ!! 普通のシャドウより強いの来ちゃったぁぁあぁ!!」

デドリーポイズンバタフライ > 猛毒鱗粉
勇者 > 猛毒
剣士 > 無効

勇者「た、耐性装備はしてあるはずなのだが……」クラ

剣士「超高確率なんですよ!」

勇者 > 2132ダメージ(毒)

剣士「うひゃああ!」

剣士「毒消し草!」パァ

勇者 > 無効

剣士「あーー!! 猛毒はこれじゃ駄目だったあああ!」

剣士「勇者さん! 毒消せませんー! あと、麻痺とか眠りとか使ってきます!」

勇者(運営の彼ら以上に危険な状態かもしれないな……)

勇者 > 2351ダメージ(毒)

猛毒蝶「」バッサバッサ

勇者(だが、今回は微塵の遠慮も要らない)

勇者「太陽の聖域」パァ

勇者「……」ゴクリ

勇者 > キュアポーション
勇者 > 無効

剣士「毒消えてません!」

勇者「だろう、なっ!」バッ

猛毒蝶「」バサササ

勇者 > 回避
勇者 > 遅効性神経毒:行動不能まで40秒

勇者「……?」ピリ

剣士「あー! えーと! その蝶が近くにいると神経毒の鱗粉を吸い込みます!」

勇者「先に言ってくれ!!」

剣士「そこまで詳しく覚えてないですよ! こんなMob!」

勇者(早めに片付けないと!)

勇者「爆牙突!!」ゴァッ

猛毒蝶「キキキ」バササ

猛毒蝶 > 6754ダメージ(エレメンタルブレイク)

剣士「あ、ああそうだ! 炎系が有効です! あと、周囲に粉を巻き始めたら注意です!」

剣士「高濃度の鱗粉は吸ったら一気に毒が回ります!」

猛毒蝶「」バササッバササ

勇者(鱗粉で身を守っている? 下手な属性の魔法ならどうにかされるのだろうが……)

勇者「雷撃!!」ズガガン ズガン

猛毒蝶 > Avoid
猛毒蝶 > Avoid
猛毒蝶 > Avoid

勇者「雷撃が防がれた……!」

剣士「は、早く倒さないと」ワタワタ

勇者 > 遅効性神経毒:行動不能まで20秒

勇者(体が痺れてきたな……)ピリビリ

勇者「剣士! マジ、MP回復できるか!」

剣士「え? は、はい!」

勇者「よし……」グッ

勇者「……」ゴオォォ

剣士「刀身から……凄い炎が」

勇者 > 煉獄一太刀

猛毒蝶「」バッサバッサ

勇者「はああ!!」ブォンッ

猛毒蝶「キキキ」バササ

猛毒蝶 > 9757ダメージ(エレメンタルブレイク)

剣士(やっぱり鱗粉撒いていると炎がより通るな……)

勇者「うおおおおおおお!!」

勇者 > 煉獄一太刀
猛毒蝶 > 10023ダメージ(エレメンタルブレイク)
勇者 > 煉獄一太刀
猛毒蝶 > 8956ダメージ(エレメンタルブレイク)
勇者 > 煉獄一太刀
猛毒蝶 > 9459ダメージ(エレメンタルブレイク)
勇者 > 煉獄一太刀
猛毒蝶 > 9331ダメージ(エレメンタルブレイク)

剣士「す、凄い……けど」

勇者 > 遅効性神経毒:行動不能まで10秒

勇者「おおおおお!!」ビリビリ

勇者 > 煉獄一太刀
猛毒蝶 > 10231ダメージ(エレメンタルブレイク)
勇者 > 煉獄一太刀
猛毒蝶 > 9994ダメージ(エレメンタルブレイク)
勇者 > 煉獄一太刀
猛毒蝶 > 9869ダメージ(エレメンタルブレイク)
猛毒蝶 > Dead

剣士「! 倒した!」

勇者「っはぁ!」ピタ

勇者「う……あ」グラ

勇者「あああぁぁぁあぁ!」ガタガタガタガタ

勇者 > 急性魔力欠乏症

剣士(勇者さんのMPの高さなら……)

勇者「ひっ……んぐっ! ごくっ」ガタガタガタガタ

勇者 > ハイポーション
勇者 > 3000回復
剣士 > 高純魔石
勇者 > 2353回復(MP)

剣士(三割回復なのに? そうか、あの時はシャドウの強化であれだけのMMPだったって事か)

剣士(でも三割は三割、のはずだ。これでだいぶ助けになるはず)

勇者「っはぁ……はぁっ……はぁっ……」

勇者「はぁ……ふぅ……すま、助かっ……」

勇者「ぁ」ビリビリビリビリ

勇者 > 遅効性神経毒:行動不能
勇者 > 猛毒回復

勇者(体が痺れて全く動けないが……息苦しさが消えた……猛毒が消えた?)

勇者(……この世界では、ある程度の身体の異常は自然治癒で治るのか)

剣士「……」

剣士(一先ずは大丈夫そうかな……神経毒回復まで待たないと)

金宝箱「」スゥ

剣士「おぉぅ……金宝箱とか初めて見た」

勇者「開……ろ」ビリビリ

剣士「いいんですか?」

勇者「……」コク

剣士「では……」ガチャ

剣士 > 太陽剣入手

勇者(おお……美しい剣だ)

剣士「ひやああああああ!!」

勇者「?」

剣士(ひぃぃぃ50Mするぅぅ!!)

剣士(っていうかこの鯖で何本目だ!? ひいいいいい!!)ガタガタガタガタ

剣士「あばばばば……」ガタガタガタ

勇者(よっぽど良い装備なのだろうな……付き合わせてしまっている謝礼になるといいなぁ)

剣士(ひやああああああ!! Lv的に絶対晒されるううぅぅ!!)

勇者「ふう……動けるようになったか」

勇者「……装備しないのか? さっきの」

剣士「やー……あれ装備すると色々と面倒な事が起こるんで」

勇者「そうか……巻き込んでしまっている謝礼になればと思ったんだがな」

剣士「しゃ、謝礼どころじゃないですよ……多分、明日死ぬぐらいの運を使ったぐらいな」

勇者「しかし魔物を倒したのは俺だ。その宝箱を出現させたのは俺なのだぞ」

剣士「いや、あの……開ける時にランダムで……まあいいか。おわ、また1レベ上がった」

勇者「それにしても強かったな……相手の情報無しでは骸骨将軍の非じゃなかった」

剣士「そりゃまあ……初見殺しですからね」

剣士「ある程度情報が出ているとは言え……恵み振る宝玉自体、そこまで数が出回っていないですし」

剣士(にしてもこの剣、ホントどうしようかなぁ……扱いに困るぞー)

勇者「ふう……俺はもう大丈夫だ。次のポイントに向かおう」

剣士「あ、はい」

剣士(もしかしたら、僕も戦わざるを得ない状況もあるかもしれないし持っておこう)

剣士(超レア剣とは言え、Lv49剣士に何が出来るのか甚だ謎だけども)

[森の国 北第三エリア]
[切り荒ぶ忘れ去られた山小屋]

勇者「宝箱……」

剣士「本来ここは何も無くて、休息取って回復できるだけなんですけど、宝玉の効果ってところでしょうか」

勇者「開けてみるか……」ガチャ

勇者 > 太陽盾入手

剣士「ぶうううぅぅ!!」

勇者「ど、どうした?」

剣士(太陽剣と盾一緒に持っている人って、この鯖でも十人もいなんじゃなかったっけかぁぁ!)

剣士(ひああああとんでもない事にぃぃぃぃ!)

勇者「剣士、これを受け取って欲しい」

剣士「嬉しいけど嬉しくない!」

勇者「え? な、何故?」

剣士「い、色々とこの世界では面倒な事が多……いや、僕の世界が、かな」

勇者「とは言え、この世界の……それも装備を俺が持っていても仕方が無い」

勇者「というより今の装備の方が強い」

勇者「いざという時はこれを使って逃げ延びてくれ」

剣士「う……分かりました。一応受け取っておきます」

剣士(可能な限り、そうした状況にならないでほしいなぁ)

勇者「さあ、次に行くぞ」

剣士「あ、はい」

[森の国 東第五エリア]
[遥か果ての閉ざされた山道]

剣士「……」ゴクリ

勇者「どうしたんだ?」

剣士「ここ、ゴーレムが出てくるんですよ……」

勇者「倒せばいいのか」

剣士「……まあ、そうなんですけど」

勇者「ゴーレムなら今ま」ゾクッ

勇者「!!」ゾクゾク

剣士「え? 嘘……まさか」

勇者「悪寒が消えた……来るぞ!」

剣士「また……超強化Mob」

―― [戦 闘 開 始] ――

勇者「情報と支援を頼むぞ!」

剣士「はい!」

グランドゴーレム「ゴォォン」ドドド

剣士「耐久攻撃防御が高いです! 魔法に対してもそこそこ!」

剣士「攻撃は腕や脚による近接格闘! 薙ぎ払いに気をつけて下さい!」

勇者(後はそれ以上にどう強化されているかか……)

剣士(一見すれば楽そうに見えるけども……脅威のATKが故に薙ぎ払いだけで、多くのPTが壊滅したという)

剣士(対物装備でもラストスパートの連続攻撃で、よく崩壊するっていうし……勇者さん)

グランドゴーレム「ゴオオ」ブォン

勇者「うおぉっ!」

勇者(これほど巨大なゴーレムは久々だ……! 腕の薙ぎ払っただけでこれほどの風圧)

勇者(直撃したらただではすまないな……)

勇者「有効な属性とかは無いのか!」

剣士「風!」

勇者「使えん!」

剣士「相手の素早さに作用する魔法!」

勇者「使えん!」

剣士「えー……」

剣士「道具で支援するか……」

剣士「沸き立つ泥沼カード」ピ

グランドゴーレム > AGI四半減

剣士「爆風符」ピ

グランドゴーレム > 931ダメージ(エレメンタルブレイク)
グランドゴーレム > 844ダメージ(エレメンタルブレイク)
グランドゴーレム > 878ダメージ(エレメンタルブレイク)

剣士(やっぱりそこら辺の攻撃呪符じゃまともなダメージにならないか)

グランドドラゴン「ゴォォン」ドズンドズン

剣士「あれこっち来てる……まさか」

コマンド > ターゲット確認
グランドゴーレム > 剣士

剣士(ヘイト稼ぎ過ぎた)サァッ

勇者「雷、神!!」カッ

グランドゴーレム > 2522ダメージ
グランドゴーレム > 2241ダメージ
グランドゴーレム > 2197ダメージ
グランドゴーレム > 2208ダメージ
グランドゴーレム > 2477ダメージ

グランドゴーレム「ゴォォ」

勇者(よし、こちらに注意が向いたな……)

勇者(それにしても硬いな……雷神でビクともしないとは)

勇者(これは予想以上にタフなタイプだな……)

勇者「たああ!」

勇者 > 一刀両断

剣士(おお……強そう! DEF無視とかしそう!)

グランドゴーレム「ゴオオン」

グランドゴーレム > 硬化

勇者「なっ!」ガギィン

グランドゴーレム > Guard

剣士「……は?」

剣士(ガード技? グランドゴーレム使わな……まさかまたか)

グランドゴーレム「ゴオオン」ブォ

勇者(叩き潰される!)バッ

グランドゴーレム > グランドインパクト

剣士「あ……強化型でそれは死n」

グランドゴーレム「ゴオオオ!」ドゥッ

……
勇者「く……」

勇者「! くそ、気をやっていたか!」バッ

グランドゴーレム「ゴオオン」ズゥン ズゥン

勇者(距離が随分……いや、俺が吹き飛ばされたのか)

勇者「! 剣士!」

剣士:Dead「すみませーん……」

勇者「大丈夫なのか?!」

剣士:Dead「えと……この世界のルールとしてはアウトですけど、僕自身は問題ないです」

勇者「そうか……よかった」

剣士:Dead(とは言え)

勇者 > 15478ダメージ
剣士 > 19032ダメージ

剣士:Dead(グランドインパクトってここまで酷くないって)

剣士:Dead(ステータスで割り振れるポイントでMHP上限9999だってのに……)

剣士:Dead(職業のレベル毎のボーナス加算、装備・スキルの効果で三万いくらしいけども)

剣士:Dead(こんなのと戦えるPCって廃ギルドでもそうはいないぞ……)

剣士:Dead(ほんとコレ系は、ステータス上限飛び越えてるっぽい勇者さん達次第だなぁ)

勇者(不味い……急いで回復しないと一撃でも貰ったら死ぬぞ)

勇者「太陽の聖域」カッ

グランドゴーレム「ゴオオ」ドゴン

グランドゴーレム > 投石

剣士:Dead「岩が飛んできます!」

勇者「うおぉ!」ドゴォン

勇者(くそ……これだけ岩場となると、また弾き飛ばしてくるな)

勇者(予想以上に戦いづらい……)

勇者(だが……)ダッ

剣士:Dead「懐飛びこんでも危険ですよー!」

グランドゴーレム「ゴォォン」ブァ

勇者「一方的に攻撃される方が危険だ! それに!」バッ

グランドゴーレム「ゴオォ」ブァン

勇者「動きは遅い!!」ダンッ

剣士:Dead「腕に飛び乗った……!」

剣士:Dead(漫画やゲームだけの世界じゃなかったんだ……ある意味そっち側の人だけど)

勇者「……」タタタタ

グランドゴーレム「ゴオオオ!」ブン

勇者「遅い! 顔まで来れば……」ザッ

勇者「たあああああ!!」キンッ

勇者 > 一刀両断
グランドゴーレム > 5784ダメージ

剣士:Dead(うーん……確かグランドゴーレムのMHPって十万ぐらいなかったかなぁ)

剣士:Dead(しかも相手は強化型。一度戻って急いでここに来た方がいいのかなぁ……)

[ホームポイントに強制帰還まで 58分35秒]

剣士:Dead(というか勇者さん一人旅だったっぽいし、蘇生アイテムとかないんだろうなぁ)

勇者「はあああ!」キンッ

勇者(くそ……一人で削りきれるのか?)

グランドゴーレム「ゴォォン!」ブン

勇者「潮時か!」バッ

グランドゴーレム「ゴッ!」ドゴォン

グランドゴーレム > アタック
勇者 > 回避
グランドゴーレム > 4039ダメージ

勇者「くそ、どれだけダメージを与えられているんだ」

剣士:Dead(うーん、勇者さんが押しているけど、一撃の被弾でひっくり返りそうだなぁ)

剣士:Dead(それにゴーレム系は最後の暴走があるし……というかあれが暴走したら僕いても何も変わらないなぁ)

剣士:Dead(囮かな? 引き寄せた方が勇者さん的には楽だよなぁ)

「どーすんのさぁ」

剣士:Dead(どうしようね……本当。うん?)

「状況から我々に組するわけでもなく、彼とも敵対している。ならば取るべき道は決まっている」

「はぁ……まさか共同戦線を張る事になるたーね」

「さて……」

剣士:Dead(誰かいる? 何処に……)パァ

剣士 > 蘇生

「爆撃」

グランドゴーレム「ゴォ」ドゴォン

勇者「! ……まさか」チラ

四将・雷「……」ニタニタ

四将・炎「……」

剣士「ゆ、勇者さーん」

四将・炎「状況が状況だ。今は共に手をt」

四将・雷「勇うぅぅ者ぁぁぁぁ!!」クワッ

勇者「」ビクッ

炎「雷。君はあのゴーレムと遊んでいなさい」

雷「えっ、いや、だけどよぉ。やっぱり勇者と遊」ウズウズ

炎「雷」

雷「ちぇー……ちぇー……」

雷「炎はお前とお話しを希望だってさぁ」

勇者「お、おお……」

雷「仕方が無いからお前で憂さ晴らしだ……簡単にくたばってくれるなよ」ジャッ

グランドゴーレム「ゴォォン」ズゥンズゥン

雷「ヒャッハアアァァ!」バヂヂ

四将・雷 > 帯電Lv1(新陳代謝・運動神経活性化)

雷「ぶち、のめす!!」

勇者「……」ハラハラ

剣士「勇者さん?」

勇者「あれは戦闘狂だ。何時箍が外れてこっちに向かってくるか……」

炎「その時には止めるから安心してくれ……」

勇者「二人がかりで?」

炎「……ああ」

>>19
ここは陸地から行ける浅めの浜と、渡し舟で行く周囲が断崖絶壁の浜がある
そこは6~9月渡し舟が出ていて、崖の浜に移りそこから海の中入っていく

スキューバーだとボンベとか色んな機材を装備して潜る
スキンダイブ(素潜り)だと基本的にはマスク(ゴーグル)とかシュノーケル(咥える管)使う
写真はマスク、シュノーケル、フィン、ウェットスーツ、重りがだいたいの装備だったかなぁ


日程中唯一見つけたレア物 伊勢海老
http://2sen.dip.jp/cgi-bin/upgun/up10/source/up7464.jpg
http://2sen.dip.jp/cgi-bin/upgun/up10/source/up7465.jpg
http://2sen.dip.jp/cgi-bin/upgun/up10/source/up7466.jpg

おわぁ

剣士「あの人、一番強いんですか……」

勇者「……超がつくパワーファイターだ。ある意味ゴーレム系と相性良すぎて、すぐ倒してしまいそうで怖い」

勇者「ついでに言えば、あれと戦って俺が生きているのは、剣と体術の技量で何とか捌いたからに過ぎない」

炎「小細工無しで正面から戦ったら……対策無しでの戦闘だったら彼女は最強だろうな」

剣士「えーと……貴方も魔王軍の方、ですよね?」

炎「彼女は新生魔王軍、四将・雷。私は四将・炎と言う。君はこの世界の住人だな」

剣士(あ、そこからまた説明しないとなのか。面倒くさ)

勇者「で、お前は手を取り合おうと考えたのか」

炎「状況を見れば矛を向け合うのは得策ではないだろう」

勇者「全くだ。あれの管理もしっかりと頼むぞ」

炎「……」

勇者「……いや真面目な話、返事してくれよ」

炎「……嫌だなぁ」

剣士「そんなに?!」

炎「話した通り、あれを止めるのは骨が折れるし痛い」

勇者「気持ちは分かるが止めてもらわないと、お前の言う得策でない状況になるんだが」

炎「分かっている……。驚いていないところを見ると、二人も来ているのだな?」

炎「彼女達に押し付けてしまうか……」

剣士(この人、普通そうに見えて結構酷い事言ってる!)

勇者「いや、風と氷には素直なんだよ。多分、同性だからなのかな」

炎「あの優しさを我々にも向けてもらいたいものだ」

勇者「全くだ」

剣士(敵対者なのに凄い仲よさそう……)

グランドゴーレム > グランドインパクト

剣士「あ、僕また死ぬ」

炎「雷、動きを止めろ!」

雷「雷撃波!」ドッ

グランドゴーレム「ゴオオォォ」ズドォォン

グランドゴーレム > 転倒

剣士「転倒耐性MAXじゃないのか……」

剣士(むしろこの人達がそのルール打ち破っているだけっぽいか)

雷「さあ、耐えて見せろよ! 雷刃円舞!!」バヂヂ

グランドゴーレム > 7355ダメージ
グランドゴーレム > 7654ダメージ
グランドゴーレム > 6979ダメージ
グランドゴーレム > 7177ダメージ
グランドゴーレム > 7429ダメージ
グランドゴーレム > 7201ダメージ

剣士「すっご……ていうかまだ攻撃続いているし」

剣士「どうやって捌いたんですか、あれ」

勇者「放電が止むまで走って逃げた」

炎「私でも逃げる」

剣士「えっ」

グランドゴーレム「ゴオオオ」

グランドゴーレム > 硬化

雷「つあああ!」ガギィン

雷「? 急に手ごたえが」

剣士「あ、一時的に無敵状態です」

炎「だそうだ」

雷「雷撃一貫!!」

グランドゴーレム > 6105ダメージ(貫通)

剣士(キング相手でも確実に無敵化する技を貫いたっ!!)

炎「やはり雷一人でどうにもなりそうだ。私達は離れて話でもするか」

……
炎「なるほどな」

勇者「お前はどう考える?」

炎「もしかしたら、欠片を集めていくと宝玉の形に戻るやもしれん。協力しない訳にはいかないな」

勇者「相変わらずだな。それが無ければ、俺はお前と親友にでもなれるのだろうが」

炎「こちらも同じだ。だが立場が違う以上、手を取り合うつもりは無い」

炎「全ての欠片が出揃った時、首を洗って待っていろ」

剣士「……あのー、勇者さん。欠片を見せてもらっていいですか?」

勇者「? 構わないが」

剣士(アイテム情報は無いけど、アイテムの画像はちゃんとあるんだよなぁ……でもこの大きさって)

剣士「この欠片。元の丸い形だとどれくらいの大きさだと思います?」

勇者「うん? んー……両の手に収まらない、ぐらいだろうか?」

剣士「僕もそうだと思います」

剣士「で、パワースポットなんですけども……。残りの場所全てで欠片が手に入ったとしても」

剣士「大きさが足らなさ過ぎるんですよね」

炎「なに?」

剣士「勿論、丸み帯びている部分から尖っている先端まで……これが半径で無いとすれば話も違いますが」

剣士「資料とかに元の大きさとか載っていなかったんですか?」

勇者「……確か、うろ覚えだがそんな小さいものではなかったはず」

炎「しかし割れ方が均一という事も無いだろうに」

剣士「もう一つ気になっているのがそこなんですよ」

剣士「これが魔王という存在を封じたものなら、割れた時点で宝玉に力はないじゃないですか」

剣士「つまりこれは魔王の力を封じたもの……なら宝玉単体ではエネルギーの塊でしかないはず」

剣士「恐らく今戦っているのも宝玉の影響でしょう。なら何故欠片が、少なくとも前回見つかったところから離れたここに?」

勇者「元の宝玉は何者のかが持っている。そしてその破片を散りばめている」

剣士「一番考えられそうなところは……」

炎「……」

勇者「宝玉消失も可能性大か。願わくば剣士の想像通り、この世界のボスとやらに消費して頂きたいものだ」

勇者「良かったな。お前達も馬鹿な事を考える必要がなくなるんじゃないか」

炎「下らん。魔王様の宝玉は手段の一つに過ぎん。我々の取るべき道は変わらん」

剣士「とにかく今は、原因究明が先で考えたほうがいいですよ」

剣士「そもそも、宝玉の所有云々より皆さんが元の世界に帰れる事が、第一に優先されるべき事でしょう」

勇炎「……確かに」

剣士(本当に仲いいな、この二人……)

雷「雷光一閃!!」カッ

グランドゴーレム「ゴォォォォン!」ガラガラガラ

グランドゴーレム > Dead

剣士「……?」

ログ検索[暴走]ピ
   該当ログ0

剣士(ひぃっ! 押し切ったのあの人?!)

剣士(HP二割切ると発動だよなぁ……どんな勢いで削りきったんだ)

炎「終わったようだな」ゴクリ

勇者「……」ゴクリ

剣士(同胞まで喉鳴らして戦慄しているっ)

雷「ちょ、炎まで身構えないでよ」

炎「いや、お前の事だからな」

勇者「なあ」

雷「信頼低すぎない?! というか何で勇者と一緒に相槌打ってんの? 味方だよね!」

炎「味方だからこそ、相手を思えばこそ手を取り合う事も」

雷「なに、あたしが捧げられれば世界平和達成とかほざくの?」

勇者「そこまでは俺も思わんが、敵対していて尚、ある種の信頼というものが」

雷「ほざく気マンマンじゃないの」

勇者「……一先ず、炎と剣士から説明を受けてくれ」ダッ

剣士「擦られた! 逃げ出した!」

雷「というかこの子、無関係でしょ」

剣士「まあ……皆さんの世界の事情に関しましては」

雷「え? 現状に加担しているの?」ギラ

剣士(うおおぉぉ! ゾクってきた! 殺気! これが本物の殺気なのか!)

炎「いや、我々への助力を惜しまない、と申し出てくれている者だ」

雷「ああなるほど」

勇者「……」スタスタ

炎「お前も逃げ出すな。流石に雷に無礼だろう」

雷「ねえ、その言い方、あたしより勇者との方が信頼関係にあるように聞こえるの気のせい?」

剣士「というか本当にどうしたんですか?」

勇者「……」

剣士「……?」

剣士(あ、気づかれないように欠片を回収してきたのか!)ハッ

炎「で、協力するにしても今後どうするのだ」

勇者「お前達は他の二人と連絡する手段……は無いから俺達と遭遇したのか」

勇者「ふむ……」

雷「うん? ちょっと待って。氷や風も来てんの?」

炎「らしいな……しかし」

勇者「……」

炎(如何にして雷を切り離すか本気で考えているな……)

剣士(雷さんを切り離す方法考えてそう……)

勇者(一戦交えて落ち着いているとは言え邪魔だ。どうやってこのバーサーカーを、風達に引き渡すか)

雷「にしても氷も協力してんの? すっごい意外」

炎「大方、風に言いくるめられたのだろうな」

剣士(当たり)

勇者(むしろ状況的にそれ以外ないだろうに)

炎「しかし……合流する術が無いとなるとお前と行動を共にするしかないな」

剣士(Wis送ったりするとどうなるんだろ……やっぱりこっちの声は届くけど、向こうから返答は無いのかな)

剣士(それって伝わっているか分からないよなぁ)

剣士「森のパワースポットはこれで終わりですし、風さん達と落ち合うというのはどうでしょうか?」

[海の国 東第七エリア]
[猛り上る東の果て見る岬]

勇者「少し暑いな」

炎「そうか?」

雷「そりゃあ炎はねえ……こっちは熱や炎に耐性がある訳じゃないし、鎧着込んでんのよ」

剣士(この先は火山と砂漠とは言え、風の国よりちょっと南ってだけだし。常夏って感じじゃないけど暑いのかぁ)

勇者「確かここはウォーターゴーレムだったか?」

剣士「はい。あれ? 勇者さんに説明した事ありましたっけ……」

勇者「風に場所とそこで起こる事を説明していただろう。それぐらい俺も覚えていたさ」

炎「水のゴーレム? 珍妙な」

勇者「水の体なのだろう?」

剣士「そうですよー。なので物理攻撃通りにくいんですが……」

雷「ふーん、じゃあ炎以外は」


氷「絶対零度」カッ

ウォーターゴーレム「」ピキン

風「真空双刃!」キキンッ

ウォーターゴーレム「」ガラガララ

氷「初めから凍らせて砕けば良かったわね」

風「消耗を気にせず戦えれば、風圧で体を砕いてやれたのですがね」

勇者「問題ないらしいな」

風「あら。あら?」

雷「風ー氷ー」ブンブン

炎「無事で何よりだ」

氷「雷? 炎まで?」

風「それにしてもよく場所が分かりましたね。剣士さん方、『プレイヤー』の機能は便利そうですね……」

剣士「勇者さんにも言われました、それ」

氷「それにしても……」

風「……」

雷「どしたのさ?」

氷「大丈夫だったの?」

炎「一応はな」

風「問題ありませんでしたか……?」

剣士「え、ええ……」

雷「……」

勇者「時々、それでまともな信頼関係が築けているのが不思議なのだが……」

……
炎「で、だ。今後においては知識量の関係もあって、風氷雷。こちらは私と勇者、剣士君で分けようと考えたのだが」

風「構いませんわ」

氷「ま、勇者と一緒じゃなければ何でもいいわ……」

氷(雷を厄介払いしたいだけよね……)

風(口実作って雷を押し付けたい魂胆が、見え見えなのは黙っておきましょうか)

勇者(よっし!)グッ

炎(一先ずは安心だな)ホッ

雷(炎はぶちのめす。勇者はぶっ殺す)

剣士(空気が不穏過ぎる)ゾォ

炎「さて、用事は済ましたし我々は次の目的地に向かうか」

勇者「次は何処だ?」

剣士「森の国の北東、崖の国です」

風「私達は次は火の国に向かいますので」

雷「勇者ぁ……くたばんじゃあないよ?」

勇者「要らん心配だな」

剣士「……あの」

勇者「どうかしたか?」

剣士「やっぱり……皆さんを見ているとどうしても違和感を感じるんです」

炎「どういう事だ?」

剣士「その、風さん達に勇者さんとの関係を聞いてはいるんですが、それにしては打ち解け過ぎじゃないですか?」

勇者「……そう、なのか?」

氷「あたし達が打ち解けてる……? 貴方の世界はどれだけ殺伐としているのよ」

剣士「あ、お二人は含めなくていいです」

勇氷「えっ」

炎「まあ、食事を共にしたり談笑した事もあったからな」

剣士「どういう状況ですか……それ」

風「なるほど……剣士さんの世界では、非武装の者が暮らす居住区等に対し」

風「不可侵でもって戦争を行う、というのが無いのですね?」

剣士「? そうですね。戦火に包まれる事は珍しくないですよ」

勇者「そ、そうなのか……? 何だろう……お前達が良い人の集団に聞こえる話だな」

剣士「?? それが皆さんの関係性とどう繋がるんですか?」

炎「先ほど言った通り、町等には攻め込む事はしていない」

炎「そして国としては成り立っていない状態だからな。慰安や部隊に休暇を与えるとなると」

炎「その先は大抵、人間の町等である訳だ。無論、姿が人間と変わらない者に限るが」

剣士「何ですかそのほのぼの戦争……」

勇者「二度ほど町で四将とかち合ってな」

剣士「トップの四人一斉に慰安旅行?!」

風「一度目は……確か本当に一時であるものの、休戦が結ばれた時でしたでしょうか」

氷「あったわね……大きな天災に巻き込まれて、お互い疲弊した時が。被害の少ない地域まで移動したわねぇ」

剣士(もう何を言っているんだが……勇者さんの世界、話し合いのテーブルに着かせたら和解できると思うんだけどなぁ……)

勇者「そういえば、話は変わるが剣士。君はまだこの世界に留まっていて大丈夫なのか?」

剣士「あ、すみません、そろそろ」

風「あ、落ちるのですか?」

剣士「はい、すみません。……さらっとこっちの世界の用語使いましたね」

風「ええ、この世界の人達の会話を聞いていたら、何となくそういう事なのだろうと思いまして」

剣士「めちゃくちゃビビリましたよ」

氷(なにが落ちるんだろう……)

雷(おちる、落ちる、堕ちる、墜ちる……。何のこっちゃ)

炎(どういう意味だろうか。後で聞いてみるか)

勇者(ふむ、ログなんとかというのはオチルとも言うのか)

勇者「今日みたくそちらから見つけるでいいのか?」

剣士「はい、そうですね」

炎「風達を見つけたように、か?」

勇者「ああ、そうだ」

剣士「勇者さん。くれ、ぐれも無理と目立つ事は避けて下さいね」

勇者「心得ているさ」

剣士「それじゃあ皆さんも、おやすみなさい。また明日」シュン

炎「消えた……転移魔法の類だろうか」

勇者「そんなところだ。しかし剣士がいないのなら、今日のところは休むとするか」

雷「なにぃ!」

氷「ま、これから何が起こるか分からないし、無理する必要は無いわよね」

風「雷、暴れ足りないのでしょうけども、それは明日、ね」

炎「こちらは今日、この世界に降り立ったのだがどうすればいい?」

勇者「剣士からはあまり人目につくなと言われているし、もう宿屋は使えないだろうな……」

風「野営するしかない、という事ですね」

炎「……」パチ パチ

勇者「……」ノソ

炎「なんだ? 火の番ならこちらがやると言うのに」

勇者「眠れないからな。それにしても……」

氷「すー……すー……」

風「……」

雷「くかー……」

勇者「まさか、お前達と夜を過ごすとはな」

炎「昨日まで考えた事も無かったな」

勇者「……剣士から見たら、事情は分かったが俺達が殺しあっているのが理解できない、という事なんだろうな」

炎「彼の言動を見るにそうなのだろうな」

勇者「俺達は……何があれば手を取り合えるんだろうな」

炎「……驚いたな。君からそんな言葉が出るとはな」

勇者「憎悪を元に戦っているわけではない。お前達自身だって、過去の遺恨そのものは割り切っているだろう」

炎「そうだな……」

勇者「俺は……俺はお前達が和解の意思があるのなら、国王達にそれを伝え、調整させるつもりだ」

勇者「この世界での経験、というかお前達と共に行動する事」

勇者「絶対に今までとは違う、物事の見方ができるはずだ……すぐに答えは求めないが考えてくれ」

炎「本当に……急に一体どうしたんだ?」

勇者「ここの世界の者達にほんの少し諭されただけだ」

勇者「正直、俺自身明確な答えは持っていない」

勇者「だから振り返ってみた時、刃を向け合うだけの関係に終わる必要性は無いんじゃないかと思った」モゾモゾ

勇者「だが、正直何を言えばいいのか、どう考えたらいいのかよく分からない。こういう時は寝るに限る。おやすみ」

炎「……そう、か」

勇者「火の番、数時間後に俺を起こせ」

炎「……折角だ。そうさせてもらおう」

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剣士「……」シュンッ

剣士(後三日……今日が休みで良かった。パワースポット探しは午前中に終わるだろうなぁ)

剣士(問題はそれがゴールじゃない事、それで手掛かりが得られるか分からない事……か)

剣士(考えても仕方が無いか。行動あるのみっ)

剣士「……」

剣士(仮に勇者さん達が帰還する事に成功したとしても、その後は……)

剣士(死んで……ほしくないな)

[海の国 東第七エリア]

剣士(火属性が多いな……猛り上る宝玉かなぁ)

剣士(……あれ、ちょっと待てよ。宝玉効果があるように見えて、処理は別MAPの扱いだったよなぁ)

PC検索 [勇者]
[海の国 東第七エリア]

剣士(や、やばい……どの宝玉のMAPか分からないぞこれ……)

剣士(というか勇者さんどういう扱いなんだろう……)

剣士(PT勧誘したらノータイムでPT結成されたから、僕の宝玉に引っ張られていたんだろうけど)

剣士(今孤立している? どうしよう、困ったな……)

剣士(あれ? 待てよ……風さんと氷さんは一緒にいたよなぁ……)

剣士(うーん、勇者さん達はお互いが仲間、PTとして認識していればゲーム内のPTと同じ効果を得ているのかな)

剣士(相変わらず逸脱しているなぁ……今更か)

剣士(とすれば、多分五人共一緒に行動しているのかな……)

剣士(あ……今、PT組んでないのに消え去り草使ってたら、こっちから見えないぞ……)

剣士(んー……)

whisper接続[槍騎士B]
接続していません

剣士(うひゃあぁ!)

剣士「……」ドギドギ

剣士「お、おはようございます」

槍騎士D『ああ、おはよう……というのも何だか可笑しな話だな』

剣士「あ、あはは……」

槍騎士D『何か問題でも起こったか?』

剣士「はい、あの……」


槍騎士D『分かった。位置の解析なら可能だ。今すぐ調べて座標も伝える』

剣士「ありがとうございます!」

剣士(町ですぐに宝玉預けられる準備しておいたほうがいいかなぁ)

剣士(この辺りかなぁ……)

槍騎士D『そこから東に。そこに彼がいるはずだ』

剣士「ありがとうございます」

剣士(仕方が無いとは言え、GMに座標監視されているとか怖い)

槍騎士D『すまないが他にも仕事がある。また何かあったら連絡をくれれば協力しよう』

剣士「は、はい。分かりました」

剣士「勇者さーん」

勇者「おお、剣士か」

剣士(うわっやっぱり普通に見える。こっちのシステムにも影響与えてきているかぁ)

勇者「どうした?」

剣士「い、いえ何でもありません」

炎「さて、剣士君も来た事だし、続きをするか」

勇者「だな」

風「次は砂漠ね」

氷「剣士さんからの話どおりですと、戦闘は大量のゾンビとだけですが」

雷「ふんっ」ムン

炎「楽そうだな……」

氷「雷がいる時点でもうね」

剣士「昨日お話したとおり、火の国の方は何が起こるか不明な場所が一箇所あります」

剣士「ネット……えーと、この世界の人達の予想だと、そこは戦闘になりそうとの事なんで気をつけてください」

勇者「その三人で注意すべき事があるのだろうか」

炎「正直あったら困るがな」

剣士「でも強力な攻撃を連続で繰り出すような敵だったら……」

雷「相手を吹っ飛ばしてやる」

氷「氷漬けにする」

風「避ければいいので。因みに私達三人とも、自力で回復できます」

剣士(これで勇者さんと戦う時は一対一って紳士過ぎる……)

[崖の国 北第三エリア]
[忘れがたき知られざる崖下]

剣士「さて……」

炎「ここは?」

剣士「分かり辛いんですけど、ここから更に下に降りられるんですよ」

勇者「……転落死体とかありそうだな」

剣士「……」

炎「まさか……」

大量の転落死体「」

炎「飽くまで……剣士君の世界ではここは作り物、のようなものなのだろう?」

剣士「です」

勇者「中々エグい作り手だな」

剣士「宝玉がないとここまで降りてこれないんですけどね」

剣士「因みに色々とアイテムが手に入ります」

勇者「……死体からか」

剣士「……です」

剣士「一応、貴重品も手に入るんですが今回は出なかったかぁ」

勇者「ここはこれで終わりか」

炎「ならば次だな」


[崖の国 東第五エリア]
[刹那の寄る辺無きキャンプ跡]

勇者「ここは?」

剣士「不明です。未ドロップの宝玉は吹き荒ぶと刹那の宝玉かぁ」

炎「何が起こるか分からない、か」

勇者「!」ゾク

炎「なんだ……この魔力は!」ブル

剣士「……まずい、情報の無いMob強化型とかやばい」

―― [戦 闘 開 始] ――

雷獣「ガアアアアアア!!」

勇者「特性は雷か……」

炎「お前には戦い辛い相手でないか?」

勇者「さてね……だが、雷よりかはよほど弱そうだ」

炎「全くだ」

剣士「この世界のルール上、闇に属する攻撃が有効です!」

勇者「ならば力と技量で」

炎「押し通すまで、だな」

雷獣「グルルル」

雷獣 > 咆哮

雷獣「ガアアア!!」

勇者「来るぞ!」

炎「言われるまでもない」

勇者 > 4336ダメージ
四将・炎 > 4012ダメージ
剣士 > 5828ダメージ

勇者「いけるな!」ダッ

炎「ああ!」バッ

剣士「……」

剣士 HP:155/5983

剣士(死ぬ)

剣士(勇者さん達にとっては全くやばくなかったか。通常版だと耐性無しなら同じくらい食らうのかなぁ)

剣士(うーん、効くかなぁ)ピラ

剣士 > 夜落としのカード
雷獣 > 暗闇

剣士「お、効いた。雷獣は今、目があまり見えていません!」

勇者「じゃあ雷撃系の攻撃注意か」

炎「だな」

剣士「え?」

雷獣 > サンダーボルト

剣士「あれー?」

剣士(そんなに思考ルーチン発達していたっけ)

剣士(あれ? そういえばゴーレムも、勇者さんが頭に乗った時に自分自身に向けて攻撃したっけ)

剣士(……まさか、欠片でこの影響力って事は、宝玉そのものを持ち出したのってとんでもない事になってんじゃ)

剣士(本当に自我もってそう……ラスボス来るかなぁ?)

勇者「剣士! 逃げろ!」

剣士「え?」

雷獣 > スパークニードル

剣士 > 1721ダメージ
剣士 > 1993ダメージ
剣士 > 1708ダメージ
剣士 > 1844ダメージ
剣士 > 1970ダメージ

剣士:dead「まあ予想はしてました」

炎「しばらく待っていてくれ!」

剣士:dead「はーい」

四将・炎 > 三太刀返し
勇者 > 三太刀返し
雷獣 > 3922ダメージ
雷獣 > 3781ダメージ
雷獣 > 4017ダメージ
雷獣 > 3852ダメージ
雷獣 > 3701ダメージ
雷獣 > 3956ダメージ

剣士:Dead「ぶふっ!」

剣士:Dead(ダメージ酷過ぎ!)

剣士(あー……二人いる時点で、宝玉の欠片の効果あっても敵が可哀相な状況なんだなぁ)

剣士:Dead(大丈夫だろうけど一応ログ確認しておくかぁ)

勇者「たああっ!」

炎「せやあ!」

雷獣「ガアアア!!」

勇者(流石にもう一人いると他愛ないな)

炎(一人であれば少々苦戦する程度だな)

雷獣 > 発狂

剣士:Dead「! 敵が強くなります! 気をつけてください!」

雷獣 > ディバインスパーク

雷獣「グルルル」バヂヂヂ

勇者「何をするつもりだ……」

炎「来るぞ!」

雷獣「ガァッ!」バンッ

勇者「ぐ!」ヂヂ

炎「くおっ」バヂヂ

勇者「ふっ飛ば、な」ザァ

炎「勇者!」

剣士:Dead「勇者さん!」

雷獣「ガアア!」ズダダダ

炎「また雷撃の針か!」タタ

炎「遅いのだよ!」ダッ

雷獣「ガゥ……」

炎「煉獄一太刀!!」

剣士:Dead(まずいまずいまずいどうしよう!)

剣士:Dead(ログにはまだ勇者さんは健在しているよう……PTの情報!)

剣士:Dead(HPが減ってる……けどまだ生きている! どっかに着地できたか引っかかった?)

剣士:Dead(この後どうすれば)


勇者「く、お! ったぁ!」ドッガッズザザザザ

勇者(ほぼ崖だが傾斜していてくれて助かった!)ザザザザ

勇者(使い物にならなくなったら……いや、気にしていられるか!)ザンッザガガガガガ

勇者(これでも秘宝の類の剣だ……持ちこたえてくれ!!)ガガガガガガ

炎「たああっ!!」

雷獣 > 7102ダメージ(クリティカル)

炎「はああっ!」

炎 > 急所返し
雷獣 > 3961ダメージ

炎「終わりだっ!」ゴァッ

炎 > 赤熱一閃

雷獣「ギャゥン!」

雷獣 > 14977ダメージ
雷獣 > Dead

―― [戦 闘 終 了] ――

剣士:Dead「すっごい……」

炎「はぁっ、はぁっ、少し、飛ばし過ぎたか……」

炎「剣士君」パァ

炎 > 再生の炎
剣士 > 蘇生

剣士「ありがとうございます。勇者さーーーん!!」


「勇者さーーーん!!」

勇者「剣士の声、か……?」パララ

勇者「こちらは無事だ! 待っていてくれ!」

勇者「もう少しで……底だ」ズリリ ズリリ

炎「崖下まで無事に降りれたようだな」

剣士「無事なのはいいですが……ど、どうやって」

炎「何れにせよ我々は待つしかないのだろう?」

剣士「そう、ですね」

炎「ならばのんびり待つとするか」ガシャ

剣士「M……魔力の残りの量は大丈夫ですか?」

炎「ああ、あれ以上長引くとよくなかったが、指先が痺れる程度で済んでいる」

炎「直に回復するだろう」

炎「君から見て……私達はどう見える?」

剣士「……とても親しい仲に見えます」

炎「そうか……今までそんな事を気にもとめなかったがな」

炎「君の世界からすれば……我々が殺しあっているようには見えない、か」

剣士「はい」

炎「……そこは随分と強く言うのだな」

剣士「僕は……皆さんに死んでほしくないです。勿論、皆さんの世界の事に関して、僕は部外者です」

剣士「それでも……」

炎「分かった。気にとどめておこう」

剣士「それとあの……失礼な事だと思いますが聞いてもいいですか?」

炎「ああ、私に分かる事なら何でも聞いてほしい」

剣士「その……魔王軍の方は、飽くまで建国が第一目標であって」

剣士「魔王の宝玉は確固たる地位……力を得る為の手段に過ぎないんですよね?」

炎「その通りだ」

剣士「ならなんで人間と戦争しているんですか? 表立って戦う必要はないんじゃないですか」

炎「ああ……本来なら、な」

炎「新たな魔王軍を設立した時点で尚、人間は我々を見つければ攻撃してくる状態であった」

炎「勿論、初めは少数精鋭で行動していたが、多くの部隊が人間の手によって壊滅させられていった」

炎「魔王様の宝玉を探すにも被害が増えるばかりで進展など無い」

炎「始めの方の部隊に到っては、人間側に危害を加える気が無いのとそれを探している事」

炎「それをどう使うつもりか。それらを書簡にして持たしていた」

炎「が、生還できた者達は一様に、読みこそすれど書簡ごと切り捨てた、という報告だった」

炎「故に、我々は……全面的に彼らと戦う事を決意したのだ」

剣士「そう、ですか……」

剣士(……うん?)

炎「無論、彼らだけに非がある訳ではない。だからこそ勝手な言い分ではあるが、彼らと戦わずして済むならそれがいいのだがな」

剣士「……」

剣士(戦っている魔王軍と人間軍の気持ち次第だけど……国の重鎮を説得できれば、勇者さん達の戦争って止まりそうだなぁ)

剣士「そういえば……勇者さんって仲間の方とかいないようですけど、何か知ってらっしゃるんですか?」

炎「彼と共に行動できるレベルの者がいないそうだ。我々とて多対一の数の暴力に晒されれば危険だが……」

炎「その多の一部が勇者と組したところで、足手まといになるのは日を見るより明らかだからな」

剣士「勇者さんって何者……」

勇者「大した事は無い……幼少の頃から剣を訓練していた田舎育ちの人間だ」

炎「ここの崖をもう登りきったか」

炎「何故、魔族に生まれてくれなかった、と悔やんでも悔やみきれないな」

勇者「そんな願い、払い下げ願うよ」

剣士「よくご無事で……」

勇者「正直、死んだかと思っ、たぁ」ググー

勇者「ふう……で、何の話だ」

炎「何故、勇者は一人で戦っているのか、という事だ」

勇者「言った覚えは無いが……まあ言動から悟られた、か」

勇者「剣の腕はそれなり、体力的なところもそれなり」

炎「嘘を言え……人間の壁を越えているだろう」

勇者「魔法は何とか雷属性が扱えるぐらいで、基本下手糞なのを無理やり叩き上げて今の状態まで引っ張った」

剣士「え?! そうなんですか?」

勇者「剣に魔力をのせる分にはまだマシなのだがな。どうしても魔法として使うのは……」

勇者「それにしたって、魔力の消耗は人より大きい。おまけに魔力を流出、消失させる効果にめっぽう弱い」

勇者「魔力欠乏症を防ぐ為にも、必死になって相手から魔力を奪い魔法を学んだものだ」

剣士「勇者さんに化けたシャドウの魔力、装備の効果が無ければ全部奪ってましたもんね」

勇者(逆に言えば、自分の技を跳ね返されたら致命打になるという訳だが、黙っておこう。気づかないでくれ)

炎(魔法反射させたら物凄い地雷化するのでないか……それは)

勇者「それでまあ……俺の補足ならば魔法が得意な者、となるがそれでは、俺を少数精鋭として送り出す意味があまり無い」

剣士「絶対に勇者さんについていけないですもんね……それで、一人で旅立たされたんですか?」

勇者「まあ、他にも色々な連中が煩い事もあって、そこから逃げ出したという部分はあるな」

炎「……どの国がどういった支援するか、とかか」

勇者「よく分かったな……」

炎「まあ……多少なりとも人間社会に入り込んだりはしているからな」

剣士「言い方がスパイですね」

炎「流石にスパイ活動する価値のあるような場所は、厳重だから実践した事はないがな」

炎「というかだ。勇者と合流できたのならここにいる意味はないのでは?」

剣士「あ、そうですね」

勇者「いや、というか剣士。宝箱回収していないのか」ガチャ

剣士「あー……忘れてました」

炎「……」ピク

勇者「流石にこの距離だと気づかれるか」

炎「当たり前だろう……それが宝玉の欠片か」

勇者「回収しなかったお前が悪い。渡さんぞ」

炎「ほう……」

剣士「お二人ともー……行きますよー」

[氷の国 東第一エリア]

剣士「……」ビュアアァァァ

炎「おお……」

勇者「さっむ……」カタカタ

勇者「け、剣士は実際にはこの場にいないからいいとして、何故お前が寒がらないんだ」

炎「微量の魔力を燃焼させて体の周囲の気温を上げている……まあそれでもそれなりに寒いぞ」

勇者「卑怯な……」ブルル

剣士「えーと……行きますよ?」

[氷の国 東第二エリア]
勇者「……」ザッザッ

炎「雪深い土地だな」

剣士「万年氷に閉ざされた世界、だから氷の国なんですよ」

剣士「さあ……そろそろですよ」

勇者「因みに今向かっているのは?」

剣士「アイスゴーレムというのがいるところです」

勇者「物理が効くんだな」

炎「炎で融かせそうだな」

勇炎「よし」

剣士(ほんと何の心配もいらなさそう)

[這いよる万年解けぬ巨大氷]

勇者「来るぞ」ゾクッ

剣士「問題発生したらお報せします」

炎「ああ、後方にいてくれ」

―― [戦 闘 開 始] ――

アイスゴーレム「ゴオオン!」

勇者「声がグランドゴーレムと変わらないな」

剣士(SEのデータ同じですから)

アイスゴーレム「ゴオオ」ブァ

炎「連爆撃!」

アイスゴーレム「ゴオオン」ドドドン

勇者「雷神!!」

アイスゴーレム「ゴオオ……」ズガガガンズガガン


剣士「……」

剣士(一瞬で二人で二万超えのダメージ叩き入れた……)

剣士(アイスゴーレムは多彩な防御技使うからその分、他より若干HP低いんだよなぁ)

剣士(暇そうだし強化型グランドゴーレムのMHP計算しておくか)

剣士(……? どっか間違えたかな……)

剣士(おあ、これ本当に八十万ある! 勇者さんで二十五万ぐらい削っていたのか……)

剣士(雷さんマジ化け物……でもこれ、宝玉の大部分をこっちの魔王とか持ってると厄介だなぁ)

剣士(四、五百万ぐらいか? 攻撃力変わらなくても、PCじゃ削りきれないなぁ)

剣士(んー……アイスゴーレムで六、七十万ぐらいかなぁ……)

炎「灰燼!!」ゴッ

アイスゴーレム「ゴオオン」ゴゴゴゴ

炎「はぁっ! はぁっ!」ガタガタ

勇者「任せておけ!」

炎「あ、ああ、任せ、る」ガタガタガタ

勇者「こっちだ! かかって来い!」

剣士「……」

アイスゴーレム > プリズムガード
アイスゴーレム > 14332ダメージ(貫通)(エレメンタルブレイク)
アイスゴーレム > 13997ダメージ(貫通)(エレメンタルブレイク)
   ・
   ・
炎 > 魔力欠乏症発症

剣士(鬼だ……貫通で多段HITって)

剣士(うん? 急性がついていない……ああ、一度に消費したわけじゃないからか)

剣士(一応、回復アイテム使っておこうかなぁ……むしろMP回復のBuffつけとくか)

炎「……? なんだ、魔力が少しずつ」

炎「彼、か……?」


剣士「……」グッ


炎「徐々に回復していく……月の聖域のようなものか」スック

勇者「もう大丈夫なのか?」

炎「派手にはいけないがな」

勇者「よし、叩き潰すぞ」

炎「ああ」

アイスゴーレム「ゴォォォン」ガラガラガラ

アイスゴーレム > Dead

―― [戦 闘 終 了] ――

剣士(二人揃ってこれかぁ……勇者さんの世界、戦力的には戦線は世紀末状態だったりして……)

宝箱「」スゥ

勇者「……」

炎「……」

剣士「?」

炎「いや、お前が預かっていてくれ」

勇者「! そうか、分かった」

炎(わざわざ敵が置いていったものだ。どんな細工があるかも分からない)

炎(もし何か起こされても一箇所に集中させていたほうが、リスクは減らせそうだ)

勇者「他はどうなっているのだ?」

剣士「北側に水晶が採取できる場所、あと西側には北にある洞窟を抜けないといけないので」

剣士「水晶採取地に寄った後、洞窟を抜けて……まだ何があるか情報の無いパワースポットに行きましょう」

炎「しかし二人いればよほどの事が無い限り、そうそう苦しい戦いにはならないだろう」

剣士「正直そうなんですよね」

剣士(しかも傾向としては次も戦闘だとしても、強化型じゃないから瞬殺だろうし)

[氷の国 北第六エリア]
[輝き散る未だ見ぬ水晶洞窟]

勇者「ほう……」

炎「美しいな……」

剣士「採取していきます?」

勇者「折角だしな」

炎「風あたりは特に喜ぶだろうな」

剣士「へえっ」

炎「まあ……光物が好きなだけなのだが」

剣士「……鳥?」

剣士「!!」

勇者「どうした?」

剣士「い、いえ……珍しい水晶がとれたもので」

炎「それは良かった。我々には君に返せるものがないからな」

剣士(太陽剣、盾の時点でもう……)

剣士(にしても光の結晶と日の結晶か……とんでもない化け物アイテム来ちゃったな)

剣士(使用者の光系スキルを一時的に超強力化と、MAP内全PC全回復か……)

剣士(日の結晶だけで10Mがしたっけ……廃人、キング狩りギルドご用達)

剣士(光の結晶はどうしようかな。光系って少ないしスキルツリー面倒だし……なんか実装されて、高騰するまで保管かなぁ)

クリスタルゴーレム「ゴオオ」ドズドズ

勇者「たぁっ!!」キンッ

狼ABC「ガウガウ!」

炎「はぁっ!」ボボォゥ

剣士(そういえばここの洞窟……飽くまでダンジョン扱いじゃないから、宝玉効果無しだっけ)

剣士(勇者さんとか通常攻撃で確殺だし……)

勇者「弱いな……」

炎「ああ。ここの世界ではどのぐらいに位置している魔物なのだ?」

剣士「え? そうですねー……僕ですとゴーレムは一対一でアイテム使って何とか倒すぐらいです」

勇者「そんなものか」

[氷の国 西第一エリア]

勇者「……」ガタガタガタ

剣士「あーしまった……勇者さん達の防寒具」ビュアアァァ

炎「これは流石に……」ブル

炎「私に施してくれた魔力回復、まだ使えるだろうか?」

剣士「あ、はい。余裕ありますよ」

炎「また施してくれ。勇者」パァ

勇者「お、おお……温い」ホワ

炎「少しずつ効果が薄れていくし、常時魔力を消費していく」

炎「効果が切れそうなら言ってくれ」

[氷の国 西第四エリア]

勇者「くお……」ガタタ

炎「火力を上げよう……とんでもない場所に踏み込んでしまったものだ」ブル

剣士(でもある意味、正解だったかも……あちらの三人がこっちだとしたら、相当文句言われただろうなぁ)


[火の国 北第二エリア]
[猛り上る隔てなく呼び誘う温泉]

風「ふあ……」チャポ

氷「はぁ……いいわ」

雷「剣士の奴、いいところ回してくれたもんだぜ」

[切り荒ぶ牙剥く者の狩場]
―― [戦 闘 開 始] ――

氷狼「オォォン!」

勇者「こちらが受け持つパワースポットはこれが最後なんだな!」ブルブル

剣士「です!」

炎「これを倒せばこの国から出ていいのだな!」ブルブル

剣士「です!」

勇者 > 奮起(攻撃力150%増加)
炎 > 奮起(攻撃力150%増加)

―― [戦 闘 終 了] ――

勇者「さあ帰るぞ!」

炎「急ぐぞ!」

剣士「や、あの、宝箱ぐらい回収しましょうよ……」ガッチャン

剣士 > 太陽兜入手

剣士「」

勇者「け、剣士?」

炎「どうしたのだ?」

剣士(ナニコレドウイウコト)

剣士(ここまで来るともう、槍騎士さん達が弄っている気がしてきた……というか弄ってるよねこれ)

剣士(兜……グランドゴーレムでしかドロップしない、なんて思われていたけど、ここでもドロップするのか)

剣士(……むしろ勇者さん達の影響で、ドロップがおかしくなっている可能性もあるか)

剣士(ま、それ抜きにしても作為的な何かを感じるなぁ……うーん、一先ず保管しておこう)

剣士(他PCのいない所で必要に迫られた時だけ使おう)

[恵み振る変わりなき湖の畔]

勇者「ああ……暖かい」ヌクヌク

炎「しばらく横にでもなるか」ヌクヌク

勇者「名案だな」ゴロリ

炎「三人の様子はどうだろうか?」

PC検索[四将・風]
[熱き滾る火口広場]

剣士「んー……多分戦闘中ですね」

剣士(場所が場所だしマグマのゴーレムとか火竜かなぁ)

勇者「しかし……この後はどうすればいいんだろうな」

炎「思いつく欠片の在り処はこれだけだろう?」

剣士「え、えっと……あるかもしれない、なら他にも候補はあります」

勇者「と、言うと?」

剣士「特定の宝玉を持って行ったダンジョンのボスがキングと呼ばれる、と言いましたよね」

勇者「そういえば聞いたような……」

炎「それを巡る、か? どれほどダンジョンというものがあるのだ?」

剣士「最低、エリアに一つ」

勇者「エリア……風が一辺11枚のパネルで正方形にしていたよな……」

炎「パネル……な、まさか」

剣士「そ、そこまでぎっちりじゃないですよ? ただまあ……かなり数は、あります」

勇者「……面倒だな」

炎「流石にそれはなぁ……」

勇者「雷に丸投げするのはどうだろうか……スタンプラリーだ、と」

炎「名案だが、やる気はあっても効率は悪いだろうな……特にその、なんだ」

勇者「頭か」

炎「頭だ」

剣士(もう戦争止めちゃえ)

勇者「仮にそれを巡るとしたら、待っている間も惜しいな」

炎「うーむ……」

剣士「一応、パワースポットで得られる全ての欠片が集まったら何か起こるかもしれませんし」

剣士「何より……流石にダンジョンだと誰かしらに見られるでしょうし……」

勇者「姿を消したまま戦えないのは不便だな」

剣士「できちゃうと迷惑行為が横行しちゃうんで……」

剣士「あ……勇者さん達の世界にそういう魔法は無いんですか?」

勇者「透明化か? 理論すらまだないだろ」

炎「見つけ出せた者は、後世に名を残しているだろうな」

剣士「中々、思うようにいきませんね……」

勇者「そう上手くいく訳がないだろう……。元の世界で俺がどれほど歯痒い思いをしていると思っているんだ」

炎「実にそうだな。ただ一人に多大な損害を与えられているのだ」

剣士「え、あれ? 地雷?」

勇者「いや、戦地を渡り歩いている人間の経験として教訓を」

炎「念には念を押しても、軍隊の瓦解報告を受ける理不尽さを伝え残す為に」

勇者「え? がか、え……そこまで酷い損害を一度に与えていないはずだぞ」

炎「相手が勇者とは言え、二百対一が覆されて戦意消滅して、丸々除隊してしまった隊があるんだぞ」

剣士「ぶぅっ!」

勇者「ま、待て、その規模だと殺してても五十未満のはずだが……」

炎「いや……瞬く間にそれだけ殺されれば心も折れるだろう……何処が人間なのだ、本当に」

剣士「あのー……実際のところ、皆さんのお強さってどういう序列になっているんですか?」

勇者「んー……どうだろうな」

炎「ふむ……いや、面白そうだ。お互いに出し合ってみるか」

勇者「そうだなぁ炎、俺、風と氷が同列ぐらいか氷が僅かに劣るか」

炎「そうなのか? 私と勇者が同列、次いで間があって風、少し間があって氷だと考えている」

剣士「……? 雷さんは?」

勇炎「扱いに困る枠」

剣士(なんでそんな言葉でハモるんだろ……)

勇者「風、氷より強い。というのは確かだが、俺らより強いかと言えば強いんだが、一応まだ負けてない」

炎「捌ければ勝てる。少なくとも模擬戦では負けた事は無い」

勇者「でもその捌くのが少しでもミスると……」

炎「立て直す間もなく……」ブルル

剣士「凄い共通認識なんですね……風さん達は捌くだけの技量が無いんですか?」

炎「あの巨大なハルバードを、短剣や刺突剣で捌けると思っているのか……」

剣士「あー……そういえばそうですね」

勇者「それに魔法を物理的に掻き消してくるからなぁ……彼女達では勝ち目が無い」

剣士「へー……え?」

剣士(勇者さん達が戦慄する、逸脱した内容は聞かなかった事にしよ)

剣士「勇者さんと炎さんは戦った事があるんですか?」

勇者「ああ」

剣士「……よく無事でしたね。上だと思っているんですよね」

炎「あれはまあ……魔力欠乏症で不利な状態に追い込まれてな」

勇者「粘って魔力奪いつつ戦ったんだよ」

剣士「あー……」

勇者「格上を相手するなら当然の戦法だ」

炎「正直、勇者の剣技の方が脅威だったからな。及び腰であったお陰で、逆に逃げるチャンスが得られたものだ」

剣士(これどっちか強気で行動したらバランス崩れそうだなぁ……嫌な事に気づいちゃったな)

剣士「あ、風さん達が風の国に帰ってきたっぽいです」

勇者「迎えに行くとするか」ムクリ

炎「ああ」


雷「敵よえぇ……」

炎「だろうな」

雷「サシだったのに……」

勇者「サ、サシでか……」

氷「一人で戦うって言って聞かなかったのよ」

風「剣士さん」チョイチョイ

剣士「? 何かありましたか?」ヒソ

風「いえ、雷に見つかると欲しがって面倒になるので、こちらを」ゴソ

剣士 > 黄金鎧トレード

剣士「!!」

剣士「よく隠せましたね」

風「ばらして仕舞っていたので」

剣士(本格的に何かの思惑を感じるなぁ……)

剣士(剣盾兜鎧……太陽系列揃っちゃったよ。全鯖でいないんじゃないかな)

剣士(わー……一度に使いたくなぁい)

風「私達には何も返せませんので……できればこれでその……」

剣士「いえいえ十分すぎますよ。本当にありがとうございます」

勇者「それにしても……」

炎「ああ、特には何も起こらないな」

雷「どーすんのさ」

槍騎士D『何をした!』

剣士「ほわぁ!」

勇者「剣士?」

剣士「す、すみません、槍騎士Dさんから連絡が……ちょっと待って下さい」

[槍騎士B]
whisperに返答しますか?
[はい]ピッ

剣士「な、なにがでしょうか?」

槍騎士D『異様な程にサーバーに負荷がかかっている!』

剣士(濡れ衣!)

槍騎士D『君達がいるMAPは重たく無いのか? そこが一番酷いはずだぞ』

剣士「え……嘘、快適ですよ」

槍騎士D『……なに? 馬鹿な』

剣士「他に重たいところありますか? 今パワースポットで得られた謎のアイテムがここに集まっているんです」

剣士(あ、濡れ衣じゃないなこれ)

槍騎士D『なるほど、待っていろ』

槍騎士D『! ラスボス、で意味は通じるな? そこの戦闘用のMAPも負荷がかかっている』

剣士(魔王とかグラの使いまわしの無い一点物のボスだよなぁ。廃ギルドの独占状態の)

剣士「そこに他のPCはいませんか?」

槍騎士D『二箇所にいたようだ。だが一斉にMAPへの接続が切れている』

槍騎士D『と、言うより切断された、と言った方がいいな』

剣士(廃人ナムー)

剣士「一人残らず同時に切断されるって異常ですね」

槍騎士D『ああ……関わっている、と見るべきか』

剣士「だと思います」

槍騎士D『……何があるか分からない。実質攻略不能なMobが現れるやもしれない』

槍騎士D『他のデバックチームに専用のPCを待機させておく。状況が変わったら、随時連絡が欲しい』

剣士「分かりました」

槍騎士D『何? 本当か? そうか……引き続き頼む』

剣士「どうしたんですか?」

槍騎士D『五箇所のMAP……どんな問題が起こるか分からないから、接続できないよう処理しようとしたのだが』

槍騎士D『こちらから操作を受け付けなくなったそうだ』

剣士「受け付けないってそれって」

槍騎士D『ああ、彼ら同様だ』

剣士(既に風さん達にも)

槍騎士D『今朝報告をくれた時に、彼女達のPC情報を見ただけだ』

剣士「そういえば五箇所って言ってましたけど……」

槍騎士D『ああ、何故かは分からないが、問題ないのは一番実装から短い……』

剣士「腐敗竜、ですか……他五体のラスボス自体、関連性が無いし偶然なんですかね」

槍騎士D『何とも言えないな……』

剣士(寧ろ腐敗竜が魔石を手に入れた結果だったり。他五体を操ってる、まさかね)

槍騎士D『少し、連絡を密に取ったほうがいいかもしれないな……』

剣士「ですね……こちらも進展がありましたら報告します」

槍騎士D『ああ、すまないがそうしてもらえると助かる』

剣士(さて……現状分かった事が、一部MAPが重いってだけだしなぁ)

剣士(勇者さん達にはなんて言おう)

剣士「管理側からいくつか情報を貰いました。皆さんの状態が特殊で何とも言えませんが」

剣士「体調とか何か変わった事はありませんか?」

勇者「特には」

炎「同じく」

雷「すこぶる好調」

氷「で、しょうね……」

風「何があったんですか?」

剣士「ええと説明が難しいのですが、この世界を構築している道具に負担が大きくなっているという事でして」

剣士「そうなると僕達にとっては操作が重く……こちらの指示に対して、行動が実行されるまでの間が大きくなるんです」

勇者「忘れていたが、君達は時間差を感じさせないほど、高速の操作と命令処理がされていたんだったな」

氷「時々忘れるわね……魔物も動きが生々しいのに」

剣士「あとは一部のMAPが特に酷いという事でして」

炎「そこに行ってみた方がいいのではないか?」

剣士「って思うじゃないですか」

風「何か問題でも?」

剣士「僕じゃそこまで辿り着けません」

雷「あたし等がいるじゃないの」

風「あ……人が集まる場所なのですか?」

剣士「ダンジョンの最深部なんですけどね……道中で稼ぐ人とか多くいるんですよ」

勇者「透明化していても攻撃はされるしな……」

炎「攻撃を受けたり攻撃したら効果が切れる……」

氷「人がいる場となると……ねえ」

剣士「そーいう訳なんで……あ」

槍騎士D『指定座標に送る、か。便利屋ではないのだぞ』

剣士「す、すみません。でも調査するにはそれ以外、勇者さん達の姿を見られずに進む方法も、僕一人行く方法も無いんです」

槍騎士D『……手がかりが欲しいのはこちらも同じだ。協力しよう』

剣士「ありがとうございます」

槍騎士D『来る者帰らぬ荒野なら深部に人はいないな』

剣士「よろしくお願いします」

槍騎士D『ああ、ではやるぞ』

[来る者帰らぬ荒野]
[第六エリア]

剣士「……」シュンッ

剣士「ん?」

剣士「あ、あれ?」ポツーン


炎「剣士君一人が消えたぞ」

勇者「どうなっているんだ?」

風「さ、さあ……?」

剣士「ちょ、どういう事ですか」

槍騎士D『? 彼らはこちらの操作を受け付けないと話さなかったか?』

剣士「あっ! え? じゃあ僕一人でどうしろと!」

槍騎士D『とりあえず最深部を見たかったのだろう』

剣士「僕欠片持っていません……」

槍騎士D『……なるほど』

剣士「と、とりあえず中入ってみます」

[来る者帰らぬ荒野]
[最深部]

剣士「……?」

剣士「あれ? ムービーが始まらない……というか普通のMAP状態だ」

槍騎士D『機能していない、のか』

剣士「はい……というかラスボスのいないMAPですね」

槍騎士D『はあ……どうなっているのやら』

剣士「お、お疲れ様です。町に戻りますね」

……
剣士「という訳でした」

勇者「なるほど……根城っていた魔物が消えた、か」

雷「なーさ。その管理側に、あたし等が魔物から見えないような何かしてもらえないの?」

剣士「特殊な処理全て無効化されるそうですよ」

氷「……じゃあもう、あたし達で乗り込むしかないわね」

剣士「ちょ、ちょっと待って下さい。相談してみます」


槍騎士D『無茶を言うな』

剣士「ですよね」

槍騎士D『ナビゲーションはするから絶対に見られるな』

剣士「見られたらどうしましょう?」

槍騎士D『……』

剣士「……」

槍騎士D『絶対に見られるな』

剣士(ネットの向こうからこの威圧感)ブルブル

[来る者帰らぬ荒野]
[第一エリア]

剣士「という訳で第四エリアまで突っ走ります!」ダッ

勇者「良し来た」

炎「任せろ」

風「これでも戦線に立つ側なので」

氷「あたし達の事を気遣わないで」

雷「ガンガン進んじまっていーからねー」

剣士(まあ……現代基準だと人間じゃない方々だしなぁ)

[来る者帰らぬ荒野]
[第六エリア]

勇者「あっさり来れたな」

炎「意外と問題ないものだな」

剣士(移動速度増加アイテム使ってみたけど、勇者さん達全員平然とついてきた……)

剣士(おまけに人がいないところに魔物集めて一網打尽ですぐまた移動……)

風「どうかされましたか?」

剣士「あ、いえ」

剣士「で、ここが目的の場所なんですが」

氷「ただの広い場所ね」

雷「何もいないよーだしね」

剣士「うーん」

剣士「勇者さん達を連れてきてみても何も……」

槍騎士D『なに? となると一体……』

雷「さっきも剣士の動きが止まっていたけど、あれ何してんの?」

風「恐らくウィスパーと呼ばれる機能を使っているのだと思うわ。特定の相手と遠距離で会話できるそうよ」

勇者「その機能なら俺も話には聞いたな。今まさに使っているのか」

[恵み振る変わりなき湖の畔]
剣士(この様子だと他四箇所も意味が無いのかなぁ)

勇者「どうする?」

剣士「一先ず各地のダンジョンでも攻略しますか……宝玉は2セットしかないのが歯痒いところですが」

剣士(今日、槍騎士Dさんに頼りまくりだから、これ以上面倒事頼むのも嫌だしなぁ)

槍騎士D「だろうと思って先手を打ちに来たぞ」

剣士「ひあぁぁ!」

槍騎士D「また呼び出されるのも面倒だ。全員分のデバッグ用の宝玉と地図だ」

剣士「す、すみません」

雷「これで一人一人ダンジョンってのを攻略できんのね」

剣士「問題は人がいるって事かぁ」

剣士「ううん……」

槍騎士D「流石に随時、各地のダンジョンの接続人数まで伝えてられんぞ」

剣士「ですよね」

槍騎士D「効率は落ちるが誰もいないダンジョンを伝える。そこを攻略していってくれ」

剣士「勇者さん達にWisって届くか試してないなぁ」

槍騎士D「接続できなかったぞ」

剣士「試したんですか……」

勇者「ああ、そうか。初めは俺を剣士同様、普通のプレイヤーとやらだと考えていたのだったか」

炎「どういう事だ?」

勇者「逸脱した行動として管理側に見咎められていて、他のプレイヤー同様の処罰をしようとしたらできなかったそうだ」

勇者「恐らくその一対一の会話で呼び出す、という事も試したのだろう」

剣士「あー……」

槍騎士D「だからあの時は、わざわざ出向いて呼び出したのだ」

氷「呼び出す……?」

風「折檻部屋、とかでしょうかね」

剣士「間違ってはいないですね」

槍騎士D「! 状況が変わった。ダンジョン攻略は待って欲しい」

剣士「? 何か状況が変わったそうです」

剣士「どうしました?」

槍騎士D「腐敗竜の所に行く方法は知っているか?」

剣士「はい。火の国のあるダンジョンの隠し通路を通って」

剣士「特定のアイテムを使うと腐敗竜のダンジョンに移動するんですよね」

槍騎士D「ああ、その時に特別なエフェクトが発生して……開通している合図になるのだが、現在常時そうなっているそうだ」

剣士「……治せないんですか?」

槍騎士D「例の如く、な」

槍騎士D「飽くまでネットで上がっている情報だけだ」

槍騎士D「そこもやはり何も現れないそうだ」

剣士「けど、負荷はない?」

槍騎士D「ああ……」

剣士「調査すべきだとは思いますが、ネットに情報出たって事は……」

槍騎士D「実装当日の半分ぐらいの人数がいるな」

剣士「あー……それじゃあ僕達なんで呼び止められたんですか?」

槍騎士D「よくよく考えたら、現地へ送る方法があると思ってな」

剣士「え? 一切、弾かれるんですよね?」

槍騎士D「ああ、だから」

魔法使いA「どうもでーす。槍騎士Dさんの後輩でーす」

勇者「彼女も管理側の?」

剣士「ですね。で、方法というのは?」

魔法A「コマンドが駄目なら、テレクリを使って移動すればいいじゃない」

魔法A「って事で腐敗竜D最深部手前の座標でっす☆」

剣士「え? ダンジョン内は駄目なんじゃ」

勇者「話しているところ悪いがさっぱり話しについていけないのだが」

剣士「え、あ、はい。というか僕もツッコミたいところがいっぱいで。因みにそれ素でやっているんですか?」

魔法A「折角なのでぶりっ子やってまーす☆」

氷(ぶりっ子ってこういう事をいうものだったっけ?)

剣士「えーとテレクリ、テレポートクリスタルというアイテムでして」

剣士「特定の場所の位置を記したアイテムで、それを所持して遠くへ移動できるテレポートという魔法を使うと」

剣士「その座標に移動できるのですが、ダンジョン等ではこのクリスタルが生成できません」チラ

魔法A「えーとですね……先輩、これ、ああはい」

魔法A「ここだけの話で聞いて下さい。テレクリはテレポートとは別の魔法で生成しているのは知っていますね?」

剣士「はい」

魔法A「『生成を禁止されている場所』であって、『テレポートで直接移動する事が禁止されている場所』ではないんです」

剣士「ああ、そういう処理……GM権限でクリスタル作ってしまえば」

魔法A「まあ、イベント用MAP移動とかでそうした形をとっていますからね。気づいている人いると思いますよ」

剣士「確かに……考えてみればそうですね」

勇炎雷風氷「???」

剣士「ああ、えっと今のは僕向けの解説だったので忘れて下さい」

魔法A「では今からPTテレポートしますね。PT申請下さい」

剣士「あ、はい分かりました」

剣士(そして恐らく槍騎士Dさんとリアルで話したからなのか、魔法使いさん完全に素に戻っているという)

[溶け逝く地深き底]
[第七層]

剣士「僕、初めてで最後かも……こんな所に来るの」

魔法A「今現在、一番難易度高い所ですからね」

勇者「この先も空っぽだったりしてな」

剣士「それじゃあ行って来ます」

魔法A「ついでに私も見ていきます。報告すべき事があっても困るので」

剣士「他のPCを通行止めとかにしてくれないんでしょうか……後続迫っているんじゃないですか?」

魔法A「まだ五層です。よほどの事が無い限り追いつかれないでしょう」

[最下層]

剣士「ムービー始まらない……またかぁ」

勇者「いや……」

炎「微弱だがこの感覚は」ピリ

雷「宝玉の欠片ん時に感じたものに違わないねー」

魔法A「ほ、本当ですか?」

氷「でもあまりにも弱々しいわ」

風「魔力が……何処かから漏れ流れてきた、そんな感じですね」

剣士「収穫があったような無かったような……」

[森の国 北第三エリア]
[切り荒ぶ忘れ去られた山小屋]

魔法A「それでは私は戻りますね」

剣士「ありがとうございました」

魔法A「」ペコ シュンッ

剣士「……ふう」

勇者(途中から口調がまともになってたな)

炎(途中から口調が素であったな)

雷(つまんねーな。とっとと戦わせて欲しいんだけどなー)

氷(素に戻っていたわね)

風(先程の方の登場時の様子、何がしたかったのかしら……)

剣士「一先ず、これからの事なんですけども」

勇者「地道にキングとやらを撃破か」

剣士「それ……」

炎「?」

風「剣士さん?」

雷「おーい」

剣士 <Link Dead>

勇者「あー……もしかすると、オチルしたのかもしれん」

風「使い方が微妙に……まあいいでしょうか」

ID[**********]
PS[**********]
    [login] ピッ

[サーバーに接続できません]

「ちょ、嘘でしょ。冗談止めて、え、勇者さん達は?」サァ

「い、いや、回線が込み合っているだけだ! うおおおお!」ピピピピピ

[サーバーに接続できません]
[サーバーに接続できません]
[サーバーに接続できません]
[サーバーに接続できません]

「くそ……ログイン画面城の絵だし! これが城オンラインか……って、頼むから繋がって!」ピピピ

一時間後

勇者「……」スタスタ

炎「どうだった?」

勇者「誰もいなかった。いや、剣士のようなプレイヤーは、か」

風「道具屋等はどうでした?」

勇者「いるにはいるが、あれは自動で動いているのだろう?」

風「ええ、NPCというものだそうです……しかしそうなると、PC全員がこの世界から追い出された?」

風「となると私達は、私達だけはこの世界に取り残された、という事でしょうか」

炎「ふむ……剣士君なら我々の位置が分かるのだな」

氷「ならやる事は一つね」

雷「……? ! ああ」ニタァ

翌日

剣士「……」シュン

剣士「うわーどうすんだうわー……」

剣士「あと二日……二日」ブツブツ

剣士「一先ず、勇者さん達と合流s」

槍騎士B『繋がったっ!』

剣士「? どーしたんです?」

槍騎士B『ちょ、テンション低すぎ。昨日の鯖缶、俺達の所為じゃ無いよ?』

剣士「あー……まあ分かってますよー」

槍騎士B『一先ず彼ら集めて。集め終わったら言って。説明するから』

剣士(なんか凄い慌ててるなぁ)

槍騎士B『や、もーどうしたらいいんだろうね。こっちもてんわやんわだよ。とにかく急いでお願い』

剣士「わ、分かりました」

槍騎士B『それと君は出来るだけアイテム持って来て。流石に一度にカンスト量生成するとバレる。代金払うからさー』

剣士「……」

剣士(あの槍騎士Bさんが真面目に仕事? の事考えてる。ちょっと僕も真面目にならないと)

剣士「あ、見つけた! すみませんでしたぁ!」

勇者「剣士! ああ、良かった。気にするな。剣士以外の者もさっぱりいなかったぞ」

雷「おう、お陰でバッチリだぜ!」

剣士「はい?」

氷「誰もいないなら気兼ねなくダンジョンとやらを攻略できるじゃない」

剣士「……はい?」

炎「少しくたびれたがまあ、な」

風「……制覇したのですよ。全MAP」

剣士「……は?」

炎「残念ながら宝玉の欠片は得られなかったがな」

剣士「そーですか」

勇者「それと俺達の世界の魔物が大量に現れているようだ」

剣士「へっ? 本当ですか?!」

氷「……私が受け持つ部隊もいたわ」

炎「ここの世界の魔物と化していたから、殺すほか無かったがな……」

剣士(だからか……いや待てよ、それならGMの無敵キャラ投入するだけでも)

剣士(うぇ……これ以上、酷い事が起こっているのかなぁ)

槍騎士D「集まったみたいだな」

槍騎士B「頼むよー。多分、君らの手にかかってるわ」

剣士「説明お願いできますか?」

槍騎士A「一応、意味の無い話だが、勇者というPCの解析についてだ」

勇者「俺は実在しているのだが……」

槍騎士C「結果はファイルが破損していて、明確なデータを得られなかった、だ」

剣士「一日半近く時間があっても、ですか?」

槍騎士D「ログインしていない間、私も立ち会ってみたがどうやっても解析できなかったのだよ」

勇者「つまりどういう事だ?」

槍騎士B「ま、君達の存在は色んなルールを逸脱してんのよ。ま、初めに会った時からぶっ飛んでたけどな」

剣士「構成するデータすらもそれを裏付けた訳ですか」

槍騎士A「そんなところだな」ハァ

勇者「俺の事はどうでもいい。それ以外の事態で呼び出したんじゃないのか?」

槍騎士C「ああ……既に気づいていると思うが、正体不明のMob。まあ、君らの世界の魔物、かな?」

槍騎士C「が大量に発生し、各地で大混乱が起こっている。風の国すら城下町の西側とか人いない場所が占拠されているし」

剣士「町の中で沸いてるんですか?」

槍騎士C「PCみたく出入り口から沸いたりしているようだよ」

炎「つまり……この際、形振り構わず我々に迎撃を願うと」

槍騎士D「いや。その点は急遽、魔物の襲撃イベントという事で、他のプレイヤーに戦ってもらっている」

剣士「上手い事利用しましたね」

槍騎士D「我々も手が足りないのだ。で、本題だ」

槍騎士D「溶け逝く地熱の底の最下層手前でシャドウナイトが出現した」

剣士「え? それって魔王の前で戦うものじゃ……」

槍騎士D「ああ、それもかなり強い。今、情報を得た複数のギルドが討伐しているところだが……」

剣士「腐敗竜の所に魔王の手下ってそれって……」

槍騎士D「どうもおかしな方向に加速しているようだ」

風「話を聞く限りでは、先日行ったところをこの世界の魔王が占拠している、と?」

槍騎士D「実態はどうかは分からないが、可能性はあるだろう。いや、ここまでくるともう、何でもありえそうだ……」

剣士「つまり僕達は……」

槍騎士A「ああ、君達には溶け逝く地熱の底の最下層に行ってもらいたい」

槍騎士C「運営チームからはカンスト、完全耐性のPCを行かせる」

氷「どういう事?」

剣士「この世界のルールで言えば無敵、です」

雷「ま、あたしは強い相手と戦えんのなら何でもいいけどさ」

槍騎士A「もし、本当に最下層で何かが起こるとしたら、それは君達に関係する事なんだろう」

槍騎士B「んもー夢物語みたいな話だけどさー。面白くなってきやがったぜ」

槍騎士C(この後のスケジュールが、完徹で組みなおされていた事は黙っておいてやろ……)

槍騎士D「昨日よりサーバーへの負荷もかかっている。これ以上、上を押し留める事はできないだろう」

剣士(もしかしてしなくて、昨日切断はこれが原因だよなぁ……)

槍騎士D「これで全てを仕舞いに出来なければ緊急メンテだ」

剣士「げっ」

勇者「確か……ここの機能が一時止まるというあれか」

槍騎士D「火消しがどうのは後だ。我々も現場に向かい対応する」

槍騎士D「ついて来て、貰えるな?」

剣士「勇者さん」

勇者「元より、こちらには選択肢など無いだろ」

炎「全くだな」

雷「ま、戦闘だったら全て片してやろうじゃないの」

風「部下達も巻き込まれている以上、長引かせる訳にもいきません」

氷「ラストバトル、というものね」

剣士「……」コクリ

剣士「よろしくお願いします」

槍騎士D「ああ、こちらこそ」

[溶け逝く地熱の底]
[第七層]

槍騎士A「どうやらシャドウナイトは討伐されて、多くのプレイヤーが最下層にいるようです」

剣士「……」ゴクリ

勇者「……これは」ビリ

炎「間違いないな」

槍騎士D「どうした?」

雷「この先、問題が来ているわよぉ……」

氷「宝玉の欠片がある場所に来た時と同じ雰囲気なのよ」

槍騎士C「……そういう相手に殺されても平気、だよな」コソ

剣士「あ、僕何回か殺されたんで大丈夫です」コソ

[最下層]

剣士(画面が暗転した! ムービーが始まる……どうなる)

魔王「ようやく来たか……」

魔王「愚かな人間どもよ!」バッ

「おお、新ムービー」
「いきなりイベントなのにちゃんと作ってあんだな」
「でも何で腐敗竜のところに」

魔王「なあ……今の勇者よ」

勇者(!)

炎(こちらを、見ている……!)

剣士(まさか本当に自我が……? いやいや流石に)

魔王「実験は成功だ」スイ

勇者「なっ!」

風「欠片が吸い寄せられていく……」

魔王「よもやこの様な地で、これほどの依り代を得られ、再び蘇る事ができようとは……」

氷「割れているはずの宝玉が……元の形に」

「? なんだっけ?」
「いや……そんな設定は無かったはずだが」

勇者「まさか、そんな……本当にか? 古の、魔王なのか」

「誰、叫んでんの」
「うへ、RP?」

魔王「……ふ、如何にも。我こそは奮起し、魔族の国を立ち上げ、人間に敗れた魔王……」

魔王「我が力を封じるられゆく最中、己の敗北を悟り、この宝玉に我が精神も入れ込んだ者だ」

「え、あれ? 答えた?」
「いやいやまさか」

氷「魔王、様……本当に?」

炎「魔王様! 貴方が討たれてから云百年の月日が流れました!」

炎「そして私どもは、今再び魔王様の悲願を掲げ、立ち上がろうと奮起している者です!」

炎「何卒、我々新生魔王軍の長として、人間達にそのお力を示し、国の繁栄と平和を」

魔王「下らん」

炎「は……?」

風「ま、魔王様? それは一体……」

魔王「貴様のその思想が下らんと言ったのだ」

魔王「繁栄? 平和? 人間達に力を示しただけでどうする」

魔王「奴らを押さえつけ、奪い、支配しなくてどうするというのだ!」

炎「なるほど……魔王様のお考え、よく分かりました」

魔王「良い、貴様は愚かしくも若輩者ゆえの事、これより我が元で一層の精進に励むがいい」

炎「いえ、貴方は要りません」

魔王「なに……?」

勇者「……炎」

炎「我々は飽くまで一つの国として生きる事を目指す者達」

炎「貴方のような狂人の戯れに付き合う気は毛頭無い!!」

魔王「ほう……他の者等も同じか」

風「我々は元より、略奪者に身を落とした覚えはありませんゆえ」

氷「そうね……あたし達は外道になった訳ではないし」

雷「あたし、そういう方が分かりやすくていいわー」

氷「ら、雷……?」

魔王「話が分かる者もいたのだな。いいだろう、その者達の首を持って来るがいい、側近として向かいいれてやろう」

雷「だけどつまらないよねぇ。生かしておけば、勇者みたいなのが現れたりすんだからさ」

雷「つー事で……手前は死ね」クィ

魔王「……」

「どうなってんの……」
「あ、もしかしてこれもムービーの一部?」
「映像魔王しか映っていないんだけど」

剣士(勇者さん達には普通に周囲が見えているんだろうなぁ)

「運営しっかりしろ」
「手抜き過ぎじゃね」

槍騎士A(とばっちり!)

槍騎士D「……ふっ」

槍騎士C(鼻で笑った! 超怒ってる! めっちゃ怒ってる)

槍騎士B(やべー、しばらくこの人のディスクに近寄らないでおこ……)

魔王「よい……この地より、この世界を蹂躙した後、元の世界に戻るつもりであった」

魔王「貴様ら共々、消し炭になるがいい!」バリィン

勇者「宝玉が……五つに割れた!」

「五つって事は」
「魔王含んで五体? 含まないで五体?」
「ラスボス同時攻略とか無理すぎる」
「あ、一欠けら魔王のとこに留まった……じゃあ他四体か」

剣士(どっち道、流石にヤバイんじゃ)

エレメンタルゴーレム「ゴオオオン!!」ズゴゴゴ

ギガンテス「ガアアアア!」ズォォン

デスナイト「……」ボゥ

千年竜「グアアアアア!!」ドドォン

魔王「……」スッ

魔王「根絶やしにせよ!!」バッ



―― [戦 闘 開 始] ――

炎「勇者、あの魔王を討て」

勇者「いいのか?」

風「魔王とは……人間に討たれるものだそうですよ」

炎「あんな者でも、皆敬意する気持ちはあった。せめてもの手向けだ」

勇者「分かった……他四体は任せるぞ」

氷「ふん、気負うほどの相手じゃないわ」

雷「ああ……ぶっ潰してやるぁ!!」

勇者「お、おう……」

槍騎士D「我々は千年竜を行くぞ」

大剣使い「すみません、遅れました」

槍騎士B「チート組は適当に攻撃してりゃいーよ」

両手剣「ひでぇ」

槍騎士C「心配する必要ないしなぁ……」

剣士(さあて……僕どうしよう)

剣士(岩場に隠れてよ……)コソコソ

剣士(流石廃ギルドは全員Lv90代か……カンストも多いし)

剣士(だけど……いや、今は目の前の事に専念しよう)

エレメンタルゴーレム「ゴオオオン!!」ドゴォン

「被ダメおかしくねー!?」
「こいつ強くなってるぞ!」
「落ち着け、攻略法は変わらないはずだ」

炎「随分と大物だが……攻撃はし易そうだな」

エレメンタルゴーレム「ゴォォン」キラキラ

エレメンタルゴーレム > エレメンタルガード
エレメンタルゴーレム > プリズムガード

剣士「炎さん! 物理魔法に対して、大きな防御効果を発揮する技を発動させました! 時間経過で切れます」

剣士「また魔法を反射させる技もあります! 気をつけて!」

炎「情報、感謝する! さて……お前のその障壁、私の炎に耐えうるか!」ゴォァ

ギガンテス「グオオオオ!」ドドドン

「なんだよこれ! 初めっから発狂状態か!?」
「Buff早く!」
「盾で時間を稼げ!!」

氷「随分と戦いやすそうな事」シュンッ

剣士「氷さん! ギガンテスは攻撃力がとてつもなく高いです!」

剣士「一撃に気をつけてください! また地面を隆起させたり中距離攻撃が可能です!」

氷「ありがとうね。ま、期待して待っていて頂戴」

デスナイト「フゥゥゥ」ブォン

「ええー……」バタ
「即死耐性80%なのにっ!」ドザ
「なんだよこれ、即死強すぎだろ」ドサァ

風「デスナイト……あの鎌、死神の鎌ってことかしら」ヒラリ

剣士「風さん! デスナイトは全ての物理攻撃に、相手を即死させる力があります!」

剣士「距離を取ると、強力な闇系魔法を使ってきます! 気をつけて下さい!」

風「闇系魔法というのは分かりませんが……当たらなければどうという事は無い、という事ですね」フワ

千年竜「グアアアア!!」ゴアアアァァ

「ブレス強くなってんぞ!」
「属性障壁もっと重ねろ!」
「人手足らん!」

雷「ふんっ!」ドズン

四将・雷 > 自雷針

雷「雷神!!」カッ

四将・雷 > 5843回復
四将・雷 > 6329回復
四将・雷 > 5970回復
四将・雷 > 6211回復
四将・雷 > 6025回復
四将・雷 > 帯電Lv3(全ステータス上昇)

雷「おらぁっ! 簡単にくたばんじゃねぇぞ!!」

剣士(……あの人は大丈夫そうだな……うん)

魔王「爆撃」ドドドン

「ちょ、なにその魔法」
「そもそも爆発系とか使わないんじゃねーのかよ!」
「完全にイベント用か! 無茶振り!」

勇者「魔王」ザッ

魔王「やはり私の相手は貴様か……憎々しい、その鎧も、その剣も!!」

勇者「! なるほど、何故勇者という存在がこの場にいる、と判断したのかと思ったが」

勇者「魔王を討った武具、その伝承は間違いではなかったのだな」

魔王「ほざくなっ! 所詮は道具よ! 貴様ごと叩き潰してくれる!!」

勇者「来い! 魔王!!」

剣士「ああ……完全に戦いだしてる。勇者さんだけ情報が……大丈夫かなぁ」

剣士(そういえば無敵チームはどこ行ったんだろう、あ)


デスナイト「フゥゥゥ」ヒュンヒュン

風(この速度ならそこまで油断しなければ問題なさそうね)バッ

デスナイト「カァッ!」ブォン

風(あとは隙を突いてダメージを与えていけば……)ヒラリ

大剣使い「……」ブォン

剣士(無敵チーム、どんな仕様なんだろ。攻撃したら敵即死だったりしたら笑えるけども)

ザンッ

大剣使い「なっ……」

大剣使い「攻撃が、当たるだなんて」

デスナイト > アタック
大剣使い > 4852ダメージ
大剣使い > 即死発動
大剣使い > Dead

剣士(物理魔法完全耐性あるいは回避だったんだろうな……)

剣士(弄ってるところにはとことん、システムに干渉してきているか)

剣士(やっぱり要は勇者さん達かなぁ……PT情報出しておいて、HP・MPだけでもアイテムで支援しよ)

風「隙有り!」ヒン

デスナイト「」スゥッ

風「!」

デスナイト「フゥゥ」シュウッ

風(後ろを、取られ)

「インパクト!」ドゥッ

デスナイト > 1439ダメージ
デスナイト > ノックバック

「スタンさせるから釘付けにして」
「撃て撃て撃て」
「伝説の突きわ、あ」ドザ
「VITが前出んな、てかなんでお前こっちいんの」

剣士(相手のステータスが高くても、戦術で相手できるのか……)

剣士(無敵チームより廃人ギルドの方がこの場じゃ心強いかもなぁ)

千年竜「コァ」スァ

「ブレス来る」
「やば、間に合わ」

千年竜「ガアアアア!!」バアァァァ

*** > Dead
*** > Dead
*** > Dead
*** > Dead
  ・
  ・

槍騎士D(威力が遥かに上がっているな……)

槍騎士B:Dead「サーセン」

槍騎士A:Dead「すみません……あれ無理ですって」

槍騎士D「止むを得んとは言え、もう少し事態に合わせた装備を考えないのか……」

雷「そうらっ!!」

千年竜 > 8954ダメージ
千年竜 > 9322ダメージ
千年竜 > 9006ダメージ

:Dead「おお、すっげ」
:Dead「イベントNPC? あんな装備見た事ねえ」
:Dead「あれでPCだったらチート乙だな、運営仕事しろ」

槍騎士D「……っ」

槍騎士B:Dead(微かな舌打ちがこええ)

槍騎士A:Dead(怒りのボルテージが貯まっていく……)

炎「灰燼!!」

エレメンタルゴーレム「ゴオオオ!」ボボォォ

「すっげ……貫通してるぞ」
「俺達も支援攻撃をするぞ」
「Buff上書きするからBuff管理ヨロ」

エレメンタルゴーレム「ゴオオ!」ドズンドズン

炎「ぐ、う……怯まないか」ブルブル

「はい、Buff剥げ」
「おっし弱体化させるわー」
「AGIとATK優先」
「おっしゃあいくぞ」
「次Buffまで20秒」

炎「ふぅ……ふぅ……流石に、一人であったなら……。ここの世界の者達も、中々、やってくれるな」

氷「地吹雪!!」

ギガンテス「ガアアアア!!」ブォン

「お、暗闇になった!」
「このギガンテス強すぎ、近接寄るなよー」
「行くだけ無駄だし近接しかできないから見てる」
「ちょ」

氷(でも、確かにあれは肉弾戦はすべきではないわね……)

氷(あたしの剣ではろくにダメージにならないようだし、魔法で攻めていった方が良さそうね)スィ

氷「凍土!」

魔王 > 雷撃
勇者 > 回避
勇者 > 3201ダメージ
勇者 > 回避
勇者 > 雷光突
魔王 > 回避
勇者 > アタック
魔王 > 3887ダメージ
魔王 > アタック
勇者 > シールドガード
勇者 > 1003ダメージ

「すっげえ……」
「巻き込まれたら一瞬で死ぬな……」
「支援に回るしかないな」

剣士(実際問題、今あれに割って入ったら叩きのめされるよなぁ)

剣士(遠距離で使える回復アイテムセットしておこ)

ギガンテス「グアアアア!!」ブァ

氷「しまっ」ゴシャ

「うおっやべ」
「あの人落ちたら負けるぞ」

氷「コフッゴフ」ビチャビチャ

「盾組行って!」
「リザ頼むからな」

剣士(やっば)

剣士 > 休息のカード
四将・氷 > 3000回復

氷「た、助かるわ……」パァ

四将・氷 > 氷竜の息吹
四将・氷 > 7000回復

氷「よし!」スック

ギガンテス「ガアアア!」ドドン

*** > 8566ダメージ(ガードブレイク)
*** > Dead
*** > 8298ダメージ(ガードブレイク)
*** > Dead
*** > 8014ダメージ(ガードブレイク)
*** > 8698ダメージ(ガードブレイク)
*** > Dead

剣士(うわぁ……廃人は阿鼻叫喚だなぁ)

炎「はぁっはぁっ」カタカタカタ

「MHP高すぎね……?」
「イベント用の設定なんだろ」
「誰かMPクレ」

炎(不味いな……魔力管理が難しく)フワ

炎「これ、は……」

四将・炎 > 278回復(MP)
四将・炎 > 265回復(MP)

剣士(ひぃぃ忙しい! 支援追いつかなぃぃ! 五箇所見るとか無理ぃぃ!)

剣士(夕飯一回奢りで僧侶扱き使えば良かったぁ!!)

風「あっ」ザシュゥ

デスナイト「フゥゥゥ」

風「く、う……」

風(しま、次の攻撃を避けられ……)

「ディーフェンスディーフェンス」バッ

デスナイト「フゥゥ」ヒュン

「うはw死んだwww」ドザ
「捨て身代わりGJ!」
「その人守れ! 俺らだけじゃ食い止められないぞ!」

デスナイト「カァッ!」

「ちょ」ドサ
「範囲攻撃とか聞いてないwww」ドサ
「前衛壊滅」ドゥ
「え、あれどうやって止めんの……」

デスナイト「フウウ」ヒュン

風「くっ!」シュゥ

風(回復より距離を取る事に専念すべきだった……受け止めるしか!)スッ

デスナイト「フゥッ」ゴシャァッ

風「え?」

「お、ナイスノックバッ……誰?」

雷「風ーしっかりしてよねー。四将一の敏捷が泣くわよぉ」

風「ま、間違っていないけども、そんな呼ばれ方していたの……私」

剣士「……」


雷『アーッハッハッハッハ!!』

千年竜『ガォォォン!』

千年竜 > 8935ダメージ
千年竜 > 9053ダメージ
千年竜 > 9204ダメージ
四将・雷 > テンション上昇(攻撃力増加)
千年竜 > 10023ダメージ
千年竜 > 10639ダメージ
千年竜 > 9773ダメージ
千年竜 > ヘルブレス
四将・雷 > 雷撃波
四将・雷 > 回避
四将・雷 > テンション上昇(攻撃力増加)
  ・
  ・

剣士(鬼だ……炎さんなんて比じゃない。修羅だ、修羅がいる)


「なあ」
「ああ……」
「あのイベントキャラだけでいいんじゃね、もう……」
「そう思う……設定ミスだろ」

槍騎士D「……」

槍騎士B「いちおーあれって彼らの世界の住人なんっすよねぇ」

槍騎士A「……その世界とやらの人間は本当に人間なんだろうか」

雷「はあああ!!」

デスナイト「フゥゥ」ズザァ

「すげえ! 全部の攻撃にノックバックついてんのか!?」

風(ただの力任せです)

デスナイト「カァッ!」ビィッ

雷「はぁっ!!」ブァン

「すっげぇ! 武器で魔法無効化したぞ!」

風(ただの力任せです)

剣士(……順次攻略していきそうだなぁ。問題は魔王か)

剣士(能力が完全に勇者さんの世界よりな所為で、一番苦戦を強いられているなぁ……でも)

勇者「はぁっ!」

魔王「遅いわっ! 死」ドズッ

魔王「が、な……」

「Buff支援終わった奴から援護射撃」
「うっす」
「折角だし爆裂矢使うか」
「俺、光の矢使うわ」

魔王「貴さ」ザンッ

勇者「ふぅぅ」

魔王「ぐ、ぐぐ……」

剣士(少し攻防の勢いが落ちたからか、廃人ギルドが攻撃し始めたなぁ)

剣士(それだけで押し勝てそうって……魔王の宝玉って実は大した事無い? あ、五分割だからか)

剣士(これならあまり気を張り詰めていなくてもよさそうかな)

剣士(とは言え、ワンパンで引っくり返すとかやってきそうだし、ログのチャックは怠らない方がいいか)

雷「そうらどうしたあ!! 風だってもっと粘るぞ!!」

風「……無理」

剣士(デスナイト討伐秒読みっ)

剣士(そういえば千年竜は宝箱出たのかな……圧倒的に雷さんが与ダメ出してるから、まだ誰も開けられない、か?)

剣士(宝玉の欠片回収してこないとなぁ)

ギガンテス「ガアアア!!」

氷「はぁっ! はぁっ!」

「くそ、こいつ何時になったら死ぬんだ」
「百万は与えているのに……」
「回復アイテム切れたー」

氷「く……」ヨロ

ギガンテス「ガア!」ブン

氷「かっ」ゴシャ

風「氷!」ガッ

氷「ふ、う……?」ドクドク

風「雷が来たわ。もう大丈夫よ」

氷「そ、か……ごめ」ドクドク

風(これほどの出血、私の魔法ではこの致命傷は……)

剣士(あ、射程入った)

剣士 > グレートヒーリングポーション
四将・氷 > 10ダメージ
四将・氷 > 9000回復
四将・風 > 3000回復

剣士(!? ダメージ?! 風さん?!)

氷「……」ビッショリ

風「恐ろしい程の治癒効果で助かったけども……水薬は投げつけて使うのがこの世界のルールなのかしら……」ビショ

雷「でかいだけの木偶の坊があああ!!」

ギガンテス「ガアアアアア!!」ドザァン

「今までの苦労はなんだったのか」
「あれって千年竜と戦っていたよな……」
「うわ、デスナイトも終わってる!」

雷「さあて、残りはゴーレムと魔王様だけど……」チラ


炎「はああ!!」キンッ

エレメンタルゴーレム「ゴオオオオ!」ガラガラガラ

「いよっしゃああ!」
「勝ったぜええい!」

勇者「魔王……お前の企みは終わりだ」

勇者「宝玉に封じるなどしない。今この場で引導を渡してやろう!」

魔王「ぐ、貴様……!」

炎「ええ、我々の世界に……ましてや魔族達にすら、貴方を必要とされない」

雷「なーに? まだ勇者倒せてないんですかー……そんな弱いんじゃあ、あたしですら求めませんよー」

氷「あたし達はあたし達を道を行きますのでお眠り下さい」

風「我々が魔族を導いていきますので」

魔王「ぐ、ぐぐ……馬鹿な……このような事が……ならば貴様だけでも!!」バッ

勇者「!」ザンッ

炎「勇者っ!」

勇者「……」

魔王「……」

―― [戦 闘 終 了] ――

勇者「……」

魔王「……」ズルゥ ドザァ

炎「……」

勇者「……本当に良かったんだな?」

炎「そんな顔をするんじゃない。全て本心だ。ありがとう、愚かな先代に全うな戦いの中で幕を引かせてやってくれて」

槍騎士D「終わったのか?」

剣士「いえ、分かりません……。あ、そうだ。太陽装備……」

槍騎士D「? どうかしたか?」

剣士「え……いえ」

槍騎士B「あ、それ俺」

槍騎士A「何の話だ?」

槍騎士B「ちょーと数字弄ってねぇ」

槍騎士D「……」

槍騎士B「や! もしもの保険! ほら、通常の仕様道理の行動なら効くじゃん!

槍騎士C「始末書じゃ済まないだろう……」

剣士「太陽装備揃った時はもう、そうなんだろうなと思いましたよ」

槍騎士B「え?」

剣士「え?」

槍騎士B「流石に全部は不味いから、比較的ドロップが確認されてる剣と鎧だけにしてたんだけど……」

剣士「えぇ?」

剣士(勇者さんの影響説が強まってきた……? うっそぅ)

剣士(でも、ここまで非現実的なら……)

剣士「勇者さんの世界に神様とかいるんですか?」

勇者「ああ……いるにはいるが」

勇者「一応は神託とかそういうのもあるらしい……俺はあまり信じていないんだが」

炎「お前……それはいくらなんでも」

氷「その称号も神託で授かったんじゃないの……」

剣士「え? そういうのなんですか?」

勇者「ああ……それで都市に連れ出されて魔法を叩き込まれた訳だ」

剣士(剣は田舎暮らしの時に叩き込まれていたのかぁ……)

氷「それにしても……これで終わったのね」

風「……? でもおかしくないかしら?」

炎「何がだ?」

風「先程の魔王様の依り代となった元の魔王にとっても、ここは拠点ではないのでしょう……なのに何故」

剣士「多分、他四体を呼ぶにはここが広くていいからだと思いますよ」

剣士「全部のMAPで一番ここが広いですから」

勇者「そんな理由だったのだろうか……? 意外としょうもないんだな。魔王も」

「お、ルート権キタ」
「あ、てめ」
「ご開帳ー!」ガパァ
「あれ? 中身が無い……」
「は? んだよそれ」

剣士(中身が、無い……?)ピク

勇者「しかしこれからどうすれば……」

炎「む、そうだったな……」

剣士「み、皆さん! あれ見て下さい! どう見えますか!!」

勇者「? 紫の光が立ち上って……まさか」

風「……! この感じは」ゾク

氷「粉々に砕けた宝玉……」

炎「……待て、ここの主の姿は……先程の五体の中にあった、のか?」

剣士「……」サァァ

剣士「せ、戦闘態勢をとって下さい!」

槍騎士A「ど、どうしたんだ?」

剣士「ま、まずい……あぁ、もう、目立ちたくない! けど!」

剣士:shout「宝箱も開けないで!!」

「え?」
「開けちった……」
「こっちも」
「俺も」
「だって誰も開けないし」
「今正に……」

剣士(開けた報告五人っ!)ゾォ

槍騎士D「まさか、発端となっている……」

剣士「粉末状になって舞い上がってます!」

勇者「い、いや……奥に流れていくぞ」

剣士:shout「皆さん、戦闘準備お願いします! 強化腐敗竜が出現するかもしれません!!」

「え? イベント終わりじゃない?」
「あ、宝箱空っぽってそういう……」
「ちょっと待てさっきのレベルで強化された腐敗竜って……」
「倒せるのか……?」

槍騎士D「しかし、彼らが五人揃っているのだぞ。いくら強化された腐敗竜と言えど」

剣士「それが問題なんです! もし現れるとしたら、殆ど宝玉一個分の強化です!」

剣士「さっきの五分割強化とは訳が違います」

勇者「どう判断すべきか分からないな。剣士、頼む」

剣士「腐敗竜は強力な酸を体内に生成し、更にそれが自身の体を蝕んでいる竜です」

氷「聞くだけだと弱そうね」

剣士「その分、凄まじい再生能力を持っています。常時回復していっていると思って下さい」

炎「それは倒せるのか?」

剣士「一定量の回復が終わると再生できなくなりますが、腐敗竜自身が強化になります」

雷「それまで削れってね」

剣士「それと攻撃に気をつけて下さい……」

剣士「全ての体液が強力な酸性になっています」

剣士「勇者さん達でも直撃したらタダでは……」

勇者「肝に銘じておこう」

風「どういった攻撃方法なのですか?」

剣士「尾っぽを振り回す、後は全て唾を飛ばす攻撃です」

雷「唾ぁ?」

炎「なるほど……恐ろしいな。近づいて尾を回避できたとしても、表皮から飛び散る体液も危険なのだろうな」

剣士「はい。それに涎自体大量に垂れてきます。仮に近づいたとしても、決して頭部の下に行かないで下さい」

剣士「……僕の知っているのはこの程度です。その……」

槍騎士A「いや、その情報でだいたいだ」

槍騎士C「基本的には遠距離から攻撃し、移動し続けて唾を避ける」

槍騎士C「遠距離に注意が向いている所を、近接が横から攻撃後するに離脱、って感じだな」

雷「まどろこっしい……」

炎「雷、今回ばかりは我々も死を覚悟して向かわなければならない」

炎「……けど、雷にとっては何時もと変わらないか。無理な特攻だけは止めてくれよ」

雷「別に何時も特攻しているつもりないんだけどー?」

勇者「えっ」

風「あ、あれで……」

氷「嘘、でしょ? 雷、嘘と言って」

雷「え、なにその反応」

剣士「……」

炎「……」

剣士「何で炎さん達はこれで団結できているんですか?」

炎「私も常々不思議だよ……」

風「! 全部の粉末化した宝玉が……」

勇者「……!!」ゾッ

炎「これ、は」ゾゾッ

雷「……ふ、はは、ははは! こりゃあ随分と」ニタァ

風「どうやら本当にこれは……」ゾゾ

氷「生きて帰れるといいわねぇ……」


腐敗竜「ルルルル……ウルル」ズロロ

腐敗竜「ギャオオオオォォォン」ビチャボタボタ

―― [戦 闘 開 始] ――

腐敗竜「ウウウウ」ジュゥボタボタボタ

「唾来るぞ!」
「散れ!」
「耐酸90%の俺が輝く!」

腐敗竜「ハシュッハシュッハシュッハシュッ」

「え、いきなり連、避け」

剣士「な……」

腐敗竜 > 連射投酸
*** > 201ダメージ
*** > 354ダメージ
*** > 328ダメージ
*** > 807ダメージ

剣士(かすっただけで300? 連射直撃で800? 90%の耐性で? じゃ、じゃああれは実質……)

「生半可な耐性じゃ当たったら即死だぞ、おい」
「やばい、こっち向いた!」
「頬が膨らんで……連射来るぞ!」
「ひいいい」

腐敗竜「ハシュッハシュッハシュッ」

槍騎士A「これどうするんです?」

槍騎士D「私に聞くな」

槍騎士B「連射速度も上がってんなー……攻略できなくね?」

槍騎士C「うーん」

勇者「雷神!」

炎「灰燼!」

氷「凍土!」

雷「雷神!」

風「風神!」


腐敗竜「ギャアアォォン!」ドドドドン

腐敗竜「ウウウウ」ボタボタ

勇者「散れ!」

炎「言われるまでも無い!」

剣士「ひぃ……」


腐敗竜 > 投酸
腐敗竜 > 連射投酸
腐敗竜 > 連射投酸
腐敗竜 > 連射投酸
腐敗竜 > 爆散投酸
腐敗竜 > 連射投酸
腐敗竜 > 連射投酸
腐敗竜 > 投酸
腐敗竜 > 連射投酸
腐敗竜 > 爆散投酸
  ・
  ・

剣士「……」ガタガタ

腐敗竜「ルルル……ギャオォォン!」

剣士(勇者さん達は……)キョロキョロ

氷「ゴボッ」ジュワジュワ

炎「ぐ、う……なん、て、酸、だ」ボジュゴボ

勇者「ほんの少し、掠めた程度で……」ジュブジュブ

風「助けに行きたいけども……岩陰から出たら」ゾォ

雷「さ、流石にこれは……ああ、こんな気持ち、久々だ」ゾクゾク ニタァ

剣士(僕達はいい。だけどこのままだと勇者さん達は……)

剣士(どうする……回復させたところでこの状況を覆すには……覆せるのか……? これを)

槍騎士B:Dead「太陽装備使っちゃいなー」

剣士「……え?」

槍騎士C:Dead「それでどうにかできるとは思わないがなぁ」

槍騎士B:Dead「全四種を装備すると色々と特典があるんだよー。仕様書見てねーの?」

槍騎士B:Dead「装備者の耐性強化に常時リジェネ、PTで貼れる超耐性の障壁と光系の魔法と剣技が使えるよーになる」

槍騎士D「剣自体に対竜、ゾンビ、魔が付与されている。ある意味腐敗竜特化の剣と言えるな」

剣士「!」

槍騎士A:Dead「つーか……俺らはプレイヤーですら無いし、そこまで細かいとこ見てないな」

槍騎士B:Dead「えー?」

剣士(全てがお膳立てされていたかのように……)

剣士(誰の意思かは分からないけど……それが一筋の光明なら)

剣士 > 日の結晶
*** > 完全回復
*** > 完全回復
*** > 完全回復
  ・
  ・

「お、生き残りで日結晶持ちいたか」
「ありがてえ」
「けど蘇生されてもこれどうすんの」

腐敗竜「ギョル……」

氷「か、体が……凄い」

炎「また、剣士君に命を拾われたようだな」

剣士 > 太陽鎧 装備
剣士 > 太陽剣 装備
剣士 > 太陽盾 装備
剣士 > 太陽兜 装備

剣士(いくつかBuffが付いている……凄い)

剣士(完全耐性は無いこそ、殆どが80%台だ……)

剣士(月の装備が実装されたらリジェネが常時MP回復かな)

剣士(勇者さん達の戦いで、僕が前線に立つ時が来るとは)ゴク

剣士(……そして絶対に晒される)ゴクリ


剣士「勇者さん!」

勇者「剣、士……立派じゃないか、似合っているぞ」

炎「ああ……全くだな」

剣士「ありがとうございます」

……
勇者「なるほど……その装備の力で俺達もあの酸に多少は耐えられるように」

氷「けれど、それで近づけても決定打なんて……」

剣士「この剣にあります。この剣は魔や竜を払う力があります。さらに光属性、聖なる力だと思って下さい」

剣士「腐敗竜は驚異的な生命力ですので、一撃で倒す事は叶わないでしょうが……」

風「それでは一体?」

勇者「対魔……聖なる……そうか、魔王の宝玉の力そのものを」

剣士「はい。可能性の話ですし、賭けではありますが」

剣士「ただその技ですと、剣技は僕のこのキャラの体力をほぼ全て、魔法であれば魔力を全て消費します」

雷「チャンスは二度って事?」

風「剣士さんの様子からですと、魔法は不得手なのだろうと思います。つまり」

炎「魔法で一撃加えたところを剣でもって、根幹となる宝玉の力を払う、と」

剣士「僕に考えられるのはそんな感じです」

氷「それで弱体化できるのなら儲けものね」

剣士 > サンライズガード
勇者 > サンライズガード
四将・炎 > サンライズガード
四将・風 > サンライズガード
四将・雷 > サンライズガード
四将・氷 > サンライズガード

勇者「あの竜が発する魔力の圧迫感が……」

炎「これが君の世界の耐性というものか?」

剣士「体感的な事は分かりませんが恐らく……」

風「……」キィィン

氷「……」キィィン

氷「あたし達ができる支援は施したわよ」

風「では作戦通りに」

勇者「必ず成功させるぞ」

炎「当然だ」

腐敗竜「ウウウウ、ブヒュッ」

「やべっ」
「爆散唾きたぁ!」
「散らばれ!」

槍騎士D「彼らの話、聞いていたな」

槍騎士B「囮っすね」

槍騎士A(一応、GMなのになぁ……)

槍騎士C「さて、やるかぁ」

勇者「こっちだ、雷神!」

炎「灰燼!」

腐敗竜「ルルルル」スィ

氷「凍土!」

腐敗竜「ガアアァァ!」

雷「氷、ナイス!」タタッ

氷「ら、雷!? 話を聞いて」

雷「魔法でチマチマ戦うのは性にあわなぁーい!!」ダダダ

氷(チマチマって……雷神は雷魔法の最高位じゃないの……)

剣士「……」ドギドギ

風「私の支援魔法が切れたら掛け直しますので言って下さい」タタタ

剣士「は、はい」タタタ

剣士(僕が作戦の要、僕が作戦の要、僕が)ドキドキ

風「剣士さん、もう少しリラックス」

剣士「うぇ?! か、顔に出ているはず無いんですが……エモなんて操作してないですし」

風「それでも私達には、剣士さんが緊張して、引き攣った顔をしているようにしか見えませんよ」

剣士「うぅ」

風「ほら、雷を見て下さい」

剣士「え……? えっ、何であの人一人で突っ込んで!?」

風「近接で戦えず焦れたのでしょうね」

剣士「あの人は……」

風「まあ、先程の猛攻撃でも軽症でしたし、信じてあげてください」

剣士「はあ……」

風「ふふ」

剣士「え?」

風「いえ、何も」

風(緊張は解けたようですが、余計な事を言う必要も無いでしょうね)

「オワタ」
「こっち被弾ー」
「リザくれリザ」
「射程範囲外だしそこまで近寄れないって」

槍騎士D「ふう……」

槍騎士A:Dead「すっげぇ、まだ生きている……」

槍騎士C:Dead「よく避け続けられますね」

槍騎士B「一応、こっちの動きに合わせた照準の定め方すんのよ。撃たれた瞬間に合わせた動きすりゃあいーのさ」

槍騎士A:Dead「……Cβからプレイヤーだった奴は、軽く言ってくれるな」

槍騎士B「ま、さっきはドジったけどなー。ちゃんと、プレイヤーとしても遊んだほーが楽しーぜ?」

槍騎士C:Dead(休日までログインしたくないなぁ……)

剣士「あ、あと少し……」

腐敗竜「グルルルル」ブンッ

剣士「尾、長……えっ」ドン

風「ぐ! う……」ドッ

剣士「風さん!」

四将・風 > 6558ダメージ
四将・風 > 転倒

風「行って下さい! こちらを向かれたら終わりですよ!!」

剣士「……。分かりました!」

「避ける合間に撃てー!」
「被弾したー!」
「お、おい、あれすっげぇ……!」
「え? な、太陽装備……」
「何なんだあいつ……あいつもNPC?」
「っていうかあの謎装備、全員PCって噂だぞ」
「そうなのか? イベント用のGMか……?」


剣士「……」タタタタ

腐敗竜「ダヒュッ」ベッ

剣士(こんな間近で腐敗竜を見る時が来るなんて……二度とないだろうなぁ)

剣士(……どうか成功しますように)ヒ

剣士 > 光の結晶
剣士 > 太陽神の加護(光系スキル攻撃力、範囲上昇)

剣士「……」ゴクリ

剣士「……食らえ」

剣士 > サンライズアロー
腐敗竜 > 20433ダメージ

腐敗竜「グアァァァン!!」ギョロ


「すっげぇ」
「なんだあの魔法」
「光の筋が……かっけぇな」

勇者「雷神! 雷神!! はぁっ! はぁっ!」

炎「まずい、こちらを振り向きもしないぞ!」

勇者「剣士……」


腐敗竜「ルルルル」ボタタボタ

剣士(これは……だけどこの距離なら届く!)

剣士「頼む……これで!」

剣士 > サンライズソード
腐敗竜 > 36549ダメージ

「すっげえ……」
「何だよあれ、太陽フル装備スキルか?」
「動画撮ってりゃ良かった……」

腐敗竜「ガアアァァ!!」ジュウジュウ

風「! 完全ではないけども……」

氷「今まで放っていた魔力が格段に!」

雷「やぁっと……同じ土俵には立てたって事かねぇ」ニタァ

勇者「落とすぞ」

炎「ああ」

腐敗竜「ダヒュッ」

剣士(これは、何しても直撃だよなぁ……)

剣士 > シールドガード
剣士 > Aboid

剣士「……? は?」ブジュブジュ

風「剣士さん! 一旦離れますよ!」グィ

剣士「え? へ? えぇぇ!?」ブァ

剣士(まさか、他のPCに引きずられて行くなんて……風さん的には掴んで、空飛んだんだりしてると思うけど)

風「剣士さん……その装備」

剣士「え、あ、ああ……どう見えますか?」

風「装備が若干融けています……」

剣士(! 本当だ……装備の耐久度が一気に)

剣士(これじゃあまるで、本物の武具のような……)

風「とにかく、あの竜の異常な強化も大きく失われているようですので」

風「後は私達が戦います」

剣士「僕も……」

風「いえ」

風「剣士さん達にとって何の事でも無いのでしょうが、私達には貴方が生きている人間に見え」

風「力尽きれば……やはり死んだ人間のように見えるのです。それでも声がするので、それはそれで不気味ですが」クス

風「とにかく、知人が力尽きる姿を見るのは堪えるものなのですよ」

剣士「でも、皆さんは力尽きたらそれこそ……」

風「大丈夫ですよ、私達なら」

剣士「……あ、そうか。そういえば炎さんは蘇生魔法が使えたんだった」

風「はい?」

剣士「え? そういう話じゃないんですか……?」

風「私達の世界には死者を蘇らせられる魔法はありませんよ……?」

剣士「……」

剣士(どうなっているんだ? 皆の呻き方が本気過ぎて、炎さんの魔法の事忘れていたと思ったら……)

剣士(僕に施された蘇生効果は、システムに干渉するほどの回復効果があるだけで、勇者さん達の現実では……)

風「とにかく……私達は皆、戦場に身を置くものです。この程度で死ぬ訳にはいきませんわ」ニコ

剣士「……」

剣士(だったら、尚更……僕は)

「! 涎のダメージ下がってるぞ!」
「これぐらいなら何とか……」
「ああ、Buffくれ! 腐敗竜を狩るぞ!」


槍騎士B「どーすんっすか」

槍騎士D「強化型とは言え彼らもいる。必要以上に手を出す必要は無いだろう」

槍騎士A「え? 撤収ですか?」

槍騎士D「他のデバックチームにも伝えろ。後方で様子を見ている。事態収拾が見えた段階で撤収、やるべき業務に戻るぞ」

腐敗竜「ギャアアォォォン」ジャバジャバ

「ちょ、待て、なんだあの涎の量」
「あんなん見た事無いぞ」

腐敗竜「ゥゥ」プクゥ

勇者「まずい! 一気に噴出すつもりか!」

炎「散れ!」

腐敗竜「ブウウゥゥ!!」

*** > Dead
*** > Dead
*** > Dead
*** > Dead
  ・
  ・

氷「く、うっ!」ジュバババ

氷(酸の量が多すぎる! 氷壁が、もたない!)バジュッ

氷「~~~~!!」ブジュ ジュジュ

氷「……?」チラ

太陽盾「」ジュブ ジュジュゥ

氷「……これって!」


勇者「ふぅ……間に合ったか」

剣士「やっぱりこういう使い方ができたのか……」

剣士(盾を投げるなんてスキルは無いけども、勇者さんならああやって投げつけて壁にする事も……)

剣士(これで、僕の守りが減るけども鎧と兜がある。多少の酸なら被っても平気、なはず)

剣士(それに……"僕達"なら死んでも実害は無い!)

腐敗竜「ギャアアアアア!!」ブォン

勇者「避けろっ!」バッ

剣士(あ、盾無いのに尾っぽは)ゴシャァ

勇者「剣士!」

剣士「」ドザァァ

剣士 > 2355ダメージ
剣士 > ノックバック

剣士「……こ、これなら」

勇者「剣士! 平気か!」

剣士「は、はい……! 僕も戦闘に加わります!」

勇者「大丈夫なのか?」

剣士「自分の事は自分でします! 僕も、最後まで関わらせて下さい!」

勇者「……分かった。ここまで手を貸してくれた君だ。任したぞ」

剣士「はい!」

剣士(奮発してきて良かった)

剣士 > 高純魔力水
剣士 > 3000回復(MP)
剣士 > ハイポーション
剣士 > 2907回復

雷「たあああ!!」

腐敗竜「ガアアアアア!」ブォン

雷「あ、タイミング外、ぢぃっ!」ドォンッ

四将・雷 > 2751ダメージ(Guard)
四将・雷 > ノックバック

勇者「雷!」

腐敗竜「ルルルル」ボタタタ

剣士「させない!」

剣士 > サンライズアロー
腐敗竜 > 21036ダメージ

腐敗竜「グルルル……ダヒュッ」

剣士「わっ」ベシャァァッ

剣士「まだ剣が残っているんだ……耐えてくれ!」ジュバババ

剣士 > 1043ダメージ
剣士 > 927ダメージ

剣士「よし!」

剣士 > ハイポーション

剣士「もう一度叩き込む!」

「おお……なんか前衛が凄い事になってんぞ!」
「注意がこちらに向かない内に撃ちまくれ」
「! こっち向いた、連射クルー」

「こんだけいる腐敗竜討伐ってのも無いなっ」
「なんかすげー楽しくなってきた! 突っ込め!」
「腐敗竜相手に前衛総突撃とかねーが俺も混ざる!」


氷「地吹雪!」

風「風塵!」

腐敗竜「ガアアアア!」ブンブン

雷「ばぁか! 尾っぽ振り回すだけならっ!」ザッ

雷「はああああ!!」ドンッ

腐敗竜 > 尾脱落

勇者「流石……」

炎「あの尾を落としたか……」

腐敗竜「ハシュッハシュッ」

勇者「連射、来たぞ」

炎「初めこそ焦りはしたが……」

勇者「速いが細い唾液なら」バッ

炎「避けるのは楽だな」ザッ

炎「前足、行くぞ!」

勇者「ああ!」

腐敗竜「ガアアァァァ!」

勇者「煉獄!」ゴォッ

炎「一太刀!」ザンッ

腐敗竜「ウウウウ」ジャバザバ

炎「流石にこの位置で吐き出される訳にいかないな」スゥ

勇者「体勢を崩させてもらうぞ」ダッ

剣士(勇者さん達は間に合わないだろうけど、僕が間に合った!)スラッ

剣士「もう一発!!」

剣士 > サンライズソード
腐敗竜 > 38665ダメージ
勇者 > 爆牙突
腐敗竜 > 5955ダメージ
四将・炎 > 業炎連斬
腐敗竜 > 7084ダメージ
腐敗竜 > 6733ダメージ
腐敗竜 > 6981ダメージ
腐敗竜 > 転倒

腐敗竜「ギャアアアア!!」ドバァ

勇者「凄い量だな!」バッ

炎「むしろ鮮血か……? 体が崩壊しているのか?」

雷「!」チリッ

雷「そろそろ悪あがきの時間かしらねー?」

腐敗竜「グリュリュリュリュ」ボコボコボコボコ

腐敗竜「ガアアアアアア!!」

勇者「足が治って……!」

炎「尾も生えてきたぞ!」

腐敗竜「フシュゥッ」ビュッ

腐敗竜 > 高速投酸

「やべ」ヂッ

***:Dead

氷「くっ!」ドチャァッ

氷「た、盾が」ジュバババ

風「氷、投げ捨てて!」

氷「わ、分かった!」

盾「」ドロォォ

四将・氷 > 太陽盾 破壊

風「他の人を掠めて尚、勢いが衰えないなんて……」

氷「というか貫通していたわね」

風「……最後の灯火という事かしら」

氷「そろそろ魔力も苦しいし、あたしは前に行くわ!」


雷「はあああ!!」ギィィン

腐敗竜「ウウウウ」ギロ

雷「硬っ! いいじゃない!」バッ

腐敗竜「ガアアア!」ブォン

雷「たああ!」ガァン

雷「ぐ、う! 流石に、その尾は切り落とせない、か!」

雷「だからって諦めるつもりもねーけども!!」ザンッギンッ

腐敗竜「フシュルルル」ブォンブン

腐敗竜「ガアアア!!」ブォ

雷「ぐ!」ドゴォン

炎「くそ、雷が近すぎる!」

勇者「! 雷神!」

腐敗竜 > 2451ダメージ
四将・雷 > 5386回復
腐敗竜 > 2207ダメージ
四将・雷 > 5722回復
腐敗竜 > 2740ダメージ
四将・雷 > 6016回復
  ・
  ・

雷「あんがと! こっちは魔法使ってる余裕ないわぁ!」バヂヂ

剣士「……」

ログ検索[腐敗竜]
腐敗竜 > 2030ダメージ
腐敗竜 > テールウィップ
腐敗竜 > 904ダメージ
腐敗竜 > 2743ダメージ
腐敗竜 > 2509ダメージ
腐敗竜 > 2996ダメージ

剣士(やっぱり耐性が上がっている……)

剣士(勇者さんの雷神や炎さんの灰燼ですら3000超えなかったか……強いな)

剣士(数の暴力で削りきるしかないか……)

「これ、押し切れんのか?」
「また大量に噴出すぞ!」
「発狂したらまた威力が上がってんぞ!」
「東側、近接壊滅!」


腐敗竜「グルル」ギョロ

氷「!」ズザァッ

氷「ちょっと……まだ攻撃していないわよ」タラ

腐敗竜「ガアアアア!」ダラダラ

腐敗竜「ダヒュッ」

氷「氷壁!」ドンッ

氷壁「」ジュバッ

氷(貫通、してく)

剣士「どうだ!」バッ ジュバババ

剣士「よっし! 前に出ただけで身代われた!!」ジュバ

氷「剣士! 貴方!」

剣士「大丈夫です! 多分……」ジュゥゥゥ

剣士(いや駄目かな……耐久がもう。え?)スゥ

腐敗竜「ガアア!!」ブン

剣士「げぇっ!」ガァァン

剣士 > 4183ダメージ

剣士(アイテムでリジェネかけて無かったら死んでた!)ズザァァ

剣士 > 太陽鎧 破壊
剣士 > 太陽兜 破壊

剣士(おわぁっ!)バキィィン

勇者「剣士!」

炎「ここで食い止めねばならないな」

氷「け、剣士!」ワタワタ

剣士「大丈夫です、大丈夫ですから慌てないで下さい」

剣士 > ハイポーション
剣士 > 3000回復

剣士(もう剣のみかぁ……)

剣士「これも神様の思し召しなら……使い切らないとかなぁ」

氷「え?」

剣士 > 闘士のカード
剣士 > 攻撃力上昇
剣士 > 皆殺しのカード
剣士 > 死せる一撃(次無属性攻撃スキルダメージ1.5倍)

「お、見ろよあいつ……」
「まさか太陽剣捨てる気か」
「おお、太っ腹。与ダメ見ものだな」

剣士「さーてどうなるかな」

腐敗竜「グルルル」ダラダラ

剣士「これ放ったら速攻で叩き潰されるのかなぁ」

剣士 > フルパワースラッシュ
腐敗竜 > 423971ダメージ
剣士 > 太陽剣 破壊
剣士 > 行動不能

腐敗竜「オオオォォォォン!!」ゴゴゴ

「地鳴り咆哮キタ! あと一割っ」
「涎爆撃くるぞー!」
「いーや攻撃だ!」

炎「あと一押しか……」

勇者「ああ、終わりにするぞ」

雷「一気に叩き潰す!」

風「可能な限り、魔法で酸が反れるよう支援します」

氷「魔力が回復してきたし、あたしは魔法で攻撃するわ」

腐敗竜「ブウウゥゥゥ」

剣士「とぁっ!」ズザァ

剣士「ま、間に合ったぁ……岩場が無かったら風さんに文句言われるところだった」

腐敗竜「ギャアオオオン!!」

剣士「……」チラ

剣士(総攻撃が始まったか)

腐敗竜 > 1544ダメージ
腐敗竜 > 1092ダメージ
腐敗竜 > 1957ダメージ
腐敗竜 > 1306ダメージ
  ・
  ・

剣士(これで……僕達の勝ち、かな)

……
勇者「たあああ!!」キンッ

腐敗竜 > 4906ダメージ(クリティカル)

腐敗竜「ガアアアアアア!!」

腐敗竜 > Dead

腐敗竜「ァァァァ」ズドォォン

―― [戦 闘 終 了] ――

「おしゃあああ!!」
「勝った勝った!」
「お前ら動くな邪魔!」
「リザ配布初めまーす。漏れてたらシャウトしてー」

腐敗竜「」ブァァァ

勇者「終わ、ったか……」

炎「粉末化した宝玉が腐敗竜の体から立ち上っていくな」

雷「消えていくし、もう魔力も感じられないわねー」

風「ええ……流石に、これ以上の戦闘は苦しいところね」

氷「まるで……天に昇っていくかのようね」

勇者「……っぷふ」

氷「……ア?」

勇者「随分、ロマ、チスト……」プルプル

氷「~~~!」ギリギリギリ

炎「二人とも……いい加減にしないか。というか元気だな……」ハァ

剣士「というか今まであれ以降、喧嘩されていないのが不思議なんですが」

風「この二人、間に誰かを挟んでいる時は衝突しないのですよ……」

剣士「……?」

雷「あー……単純に勇者と氷が炎と話している、みたいな状況だとねー」

剣士(ああ、相槌打つ程度で直接の会話の相手が違うから、か……)

剣士「……。!?」ビクッ

風「? どうされました?」

剣士「あ、嘘……いや、そうか」

氷「何かあったの?」

勇者「なんだ? 何か揉め事か?」

炎(……お前達がな)

剣士「皆さんは今まで、頭上に名前とかが見えていませんでしたか?」

氷「あーそういえば……あれ? 勇者のが消えている」

剣士「違います。皆さんのが消えているんです」

雷「ありゃ、本当だ」

炎「そうか……本当に終わり、という事か?」

剣士「……」

勇者「剣士、そんな顔をしないでくれ。そして……ありがとう」

剣士「……本当に感謝していますか?」

勇者「え゛、あ、ああ、勿論だ」

剣士「炎さん達、皆さんはっ」

炎「あ、当たり前ではないか」

風「ええ、剣士さんがいなかったら、今も尚放浪していた事でしょうね……」

氷「……本当、貴方が魔族だったらどれほど良かった事やら」

雷「あんたのお陰で中々楽しかったぜー」

剣士「……」コクリ

剣士「なら! それに関するお礼は行動で払っていただきます!」

勇者「……。え? ちょ、剣士、どうしたんだ」

剣士「何時まで、この世界にいられるのか分かりませんので、急ぎ足で伝えます。勇者さん!」

勇者「はいっ!」

剣士「元の世界に行ったら国王達を脅してでも何でもいいから、新生魔王軍との協議のテーブルにつかせるよう説得して下さい!」

勇者「はぁっ!?」

剣士「いっそ、断るならもう最前線で戦わない、故郷に帰る。でもいいです! いいですね!」

勇者「わ、分かった」

剣士「あ、戦線で戦っている兵士とかもいますよね」

剣士「そうした人達には、魔王軍が攻撃、領土を侵犯しない限り、戦闘を禁止させて下さい」

勇者「ちょ、そんな無茶」

剣士「返事は!」

勇者「はいっ!」

剣士「炎さん!」

炎「!」ビク

剣士「炎さんは魔王軍そのものに対して直接指揮を執っていますね!」

炎「あ、ああ……一応は」

剣士「元の世界に戻ったら即時、展開中の軍を撤退!」

剣士「魔族の者が暮らす場所など、最低限の戦線まで引き上げて下さい!」

炎「わ、分かった」

剣士「更に協議の場の準備を! 皆さんは人間を知っていても、人間は皆さんを知っていません、多分」

剣士「勇者さん筆頭に護衛をつけさせて、魔王軍中枢で人間の王と協議を行って下さい!」

炎「ほ、本気で言っているのか?」

剣士「当然です!」

風「随分と大胆な考えですね……」

剣士「も~~~~っ! 皆さんがおかしいんですよ! 戦う人トップが仲良く出来て、国が仲良く出来ないとかアホくさい!!」

勇炎「お、おお」ビクッ

風「さ、流石にそれは無茶苦茶な理論では……」

剣士「戦争するくらいなら、無茶苦茶理論でも押し通して下さい! 国王が嫌がったら?! 勇者さん人類最強でしょ! 脅して下さい!」

勇者「え、ええ……?!」

剣士「魔王軍兵士が和解を求めていないなら?! あの魔王と同じように切り捨てて下さい!」

炎「な……ううむ」

氷(正直、実質総統しているのがあたしじゃなくて良かった……剣士の怒鳴り声ちょっと怖い)ドギドギ

剣士「人間側が領土侵犯どうのと文句言ったら?! 今までの虐殺を詰問して下さい!」

剣士「魔王軍が不満を言ったら?! 雷さんがいて宝玉に固執して、戦争になった事を反省して下さい!」

剣士「戦争の勝敗を国王が気にしたら、戦争そのものを吹っかけたの人間だって事と、雷さんの全力をデモンストレーションして下さい!!」

剣士「魔王軍が過去の事を持ち出したら?! 人間側から賠償分捕って下さい!」

剣士「はーっ! はーっ!」

勇者「お、おお……」

炎「ううむ……」

風「……」

氷「……」オドオド

雷「ふあぁ……」

勇者「け、剣士……?」

剣士「僕はっ!」

炎「っ!」ビクッ

剣士「僕は、皆さんに死んでほしくなんかありません……」

剣士「勇者さんと炎さん達で、殺し合いを続行させる為に、協力してなんていません……」

剣士「皆さんがただ……無事に帰還し、平穏な生活を送って欲しくて、ただそうなって欲しいだけで」

勇者「剣士……」

剣士「だから……だから、これで皆さんが殺し合いに戻るなんて事……」ジワッ

「……そうだな、理由がどうあれ共闘もお互いに語らいもした上で、今まで通り戦えはしないな」

「飽くまで兵士を指揮しているのは俺じゃないからな……。だがここまで言われて何もしない訳にもな」

「……厄介事に巻き込まれた、と思っていましたが……もしかしたら私達には必要な事だったのかもしれませんわね」

「あたしは直接の被害は無いし、怨恨も無いから和平が結ばれる分には喜ばしい事だけども」

「まーあたしは戦えればいいだけだし、親善試合にかこつけて勇者とかと戦うだけだしねー」

剣士(ああ、なんだよこれ……ディスプレイが歪むし勇者さん達の姿が薄く見える……)ジワァッ

「……ぐす」ゴシゴシ

剣士「皆さん、お元気でっ」

……

剣士「……」シィン

……
[現在メンテナンス中です]
[メンテナンス終了後にログインして下さい] ピッ


(あれからもう一週間か……)

(イベントは告知ミスと設定ミス。ま、一つの鯖でしか行われていないとかないもんなぁ)

(今回、未確認装備のPCはGMで、GM専用装備であり今現在PCが入手できるようになる予定はなし)

(本来はその個々のPCにシナリオがあって、プレイヤーは彼らを助けつつ彼らの目的を達成せよ、というイベント)

(その一環として、魔物の襲撃イベントである、と)

(但し、本来語られるべきシナリオは、今後改めて公開する事は検討中である、と)

(シナリオが出来上がったら公開、て事かなぁ。うわぁ、大変そう)

(にしても超苦しい言い訳オンパレードだけど……それ以外どうしろって話だもんな)

(まだまだ暴動待ったなし、な状態で炎上しているし……他の鯖のPC全員にアイテム補填がどう効果を出すか)

(槍騎士Dさんの苛立ちが簡単に想像できるなぁ……Wikiにも乗る珍事扱いだし。コメがバッシングの嵐だし……)

(後はもう押し通すしかないよなぁ……総合スレはどうなってるかな)カチ

"結局、腐敗竜戦にいた全身太陽装備のPCなんなの"
"GMじゃなくて?"
"同じ名前のPC、昨日風の国で見たぞ"
"凸れ"

(……)ダラダラ

"それ剣士ってPCだわ
~~~~~.jpg"

(わーーー!! SSまでーー! 遂に丸裸にされたー!!)

"フル太陽とかブルジョワ乙"
"ちょwwwフル装備wwww"
"廃人ギルドの別キャラか? でもLv50で太陽使うとかアホ過ぎ"
"ところがどっこい
~~~~~.jpg"
"うはw全部ロストしてんじゃねえかwww"
"もったいなw"

(壊れた時のログまでっ。誰だよこんなのSSに撮ったのっ!)

(あーやばいなぁ……これからは色々と聞かれそう)

(運営バッシングで注目がそれているとは言え、僕も嘘を考えておかないとだなぁ)

"確認されている新GM
勇者
~~~~~.jpg
四将・雷
~~~~~.jpg
四将・炎
~~~~~.jpg
四将・風
~~~~~.jpg
四将・氷
~~~~~.jpg"

(まあ……こうなるよね)

(検索かけるとちらほら絵もあるし……)

(確実に勇者さん達が存在した証が生まれていくのは……嬉しいな)

[風の国 南第四エリア]
[恵み振る歴史に残らぬ聖堂]

僧侶「はー……そんな事があったとは」

剣士「口外しないでよ?」

僧侶「えー今のは宝玉持ちのあたしが付き合ったお礼じゃなーい?」

剣士「……」

僧侶「はいはい、分かりましたー」

剣士「宝箱……」

僧侶「そういえばここだけ、Mob沸かないのに戦闘になったんだよね? 何でだろう?」

剣士「さあ……分からない事ばかりだからなぁ」ガッチャ

剣士「? 絵画アイテム」

僧侶「へえ、そんなのここでドロップするんだ」

剣士「家なんて持っていないから売るしかないけど……どんな絵だろ」

剣士「あっ……」

僧侶「どしたの?」

剣士「ううん……」

剣士(良かった……向こうは、少なくとも今までより丸く落ち着いたのかな)

絵画
[ 風 雷 勇者 炎 氷 ]

剣士(本当に……良かった)ジワ

……
勇者「……ん」

勇者「ここ、は……」ムク

勇者「……見覚えが。って、王城じゃないか」ノロノロ

勇者「く、そ……頭が痛い。全く、地名が表示されるというのは便利なものだったな」

兵士「誰だ! そこで何を……ゆ、ゆゆ勇者様!!」

勇者「ああ……すまない」

兵士「い、いえ! よくぞご無事で!!」

勇者(ああ、面倒だがまた状況把握からか)

勇者「詳しい事は今は話せないが、どういう状況であったか教えてもらえないか?」

兵士「はっ! 数日前に一週間ほど前に魔王軍の手によって勇者様を生け捕りにした」

兵士「という情報が新生魔王軍の側近という者より伝えられました」

兵士「現状、勇者の処刑、これ以上の進撃の意思は無い」

兵士「貴国らと勇者の命が惜しいのならば大人しく待つがいい」

兵士「ただし斥候の一人でも発見しようものなら分かっているな、との事でした」

勇者(側近、非戦闘員にして知将と言う噂だったな……戦えないのに将を名乗っていいかは別にして)

勇者(恐らく、四将、勇者共に蒸発の報聞いたのであろう)

勇者(状況不明のゆえ、場を膠着すべきと判断したのか……考えたな)

兵士「各国動けずにいる中、北の国が進軍準備を進めていたところです……ああ、本当に良かった」

勇者(一番軍事力を持っているからな。俺が領土内での戦闘を行う事すら嫌うほど、自分達でどうにかしたがっている)

勇者(剣士の置き土産……一番厄介な相手だな)

勇者「ありがとう、すぐに陛下の下に向かう」

兵士「はっ!!」


……
勇者「……という事があり、私はこの数日間彼らと行動を共にしていました」

陛下「何と……信じられぬ」

勇者「つきましては陛下、私は魔王軍を国と認め、和平を結ぶ事を具申致します」

陛下「なっ!」

「魔族と友好を結べと……?」
「なんて恐ろしい事を」
「ああ、勇者様が洗脳されてしまわれた……」

陛下「正気か!」

勇者「至って正気です。私は旅の中、彼らと接触する機会がありました」

勇者「その時より常々、時代が違えば親しき仲になれたのだろうと思っておりました」

勇者「今回彼らと共に戦い、そして異界の人間に諭され気付かされました。何故戦っているのか、と」

陛下「……」

勇者「陛下、受け入れ難い事は十分に分かります」

勇者「ですがこの連鎖、現状をもって断ち切るのであれば、どちらかの殲滅でもってしかありません」

勇者「私は別の道を行きたいと思います。別の未来を見たいと思います」

陛下「もし、私が首を横に振ったらどうするつもりだ……?」

勇者「各国の中で、陛下が一番私の事を信頼して下さっています。その陛下ですら却下されるのであれば……」

勇者「私はこの地を離れ、魔王軍の軍門に下ろうと考えております」

勇者(どうだ……)ゴクリ

「なっ……」
「そ、そんな事になったら……」

陛下「……」スッ

「……」シィン

陛下「昔から……柔軟な対応をしてみせる一方で、一度決めたら芯を貫き通すものだったな」フッ

陛下「だが……私一人だけの意思では決められん。他国は勿論、自国の民も納得させねばなるまい」

陛下「まずこの場にいる家臣、近衛兵、兵士に何か伝えたい事はあるか?」

勇者「……」

勇者「ご存知だと思いますが、魔物・魔族には特性と言うものがあります」

勇者「だが何故そうなのか、等詳しい事は全く分かっていないのが現状」

勇者「彼らと友好的になれた暁にはそうした研究が飛躍的に進むだろう、と」

陛下「ふむ、魔法の技術面でも大きな貢献が期待できそうだな。他にはあるか?」

勇者(やはりこの人はある程度、理詰めじゃないと駄目か……困ったな)

勇者「……経済的に見て、流石にそこまで分かりません」

勇者「ああ、そうですね……。私事で申し訳ないですが、少しですが、自分が幸せになれます」

陛下「む……」ピク

「……」ザワ

陛下「どういう意味かね?」

勇者「自分は別に、戦う事が生甲斐という訳ではありませんので。人の姿をした魔族を斬るのはやはり心苦しい」

勇者「それと神託により勇者になって以降、初めて心からの安息につく事ができます」

「あ……」

陛下「……」

陛下「よかろう。我が国は勇者の提案する、魔族との和平に向けた協議に賛同しよう」

陛下「細かい話は追って話し合おう。まずは各国の説得からだ」

勇者「え……い、いいんですか?」

陛下「……勇者としてこの城に向かい入れたのも、学術戦術の指導を行うよう指示させたのも」

陛下「そして、皆の期待を双肩に背負い成長する姿を見てきたのも……全て私だ」

陛下「血こそ違えど息子のように思っている。その息子の幸せならば、多大な無茶もしようというものだ」

勇者「……あ、有難きお言葉!」アセアセ

陛下「急に畏まるな。そのような言い方、今までにした事もなかろうに」

勇者「……ふう。第一関門クリア、か」

勇者(他国はどうだろうな……俺の発言が必要だったら何か言ってくるだろう)

勇者(それまでは……どうするかな)

騎士「勇者殿」

勇者「お久しぶりです」

騎士「無病息災で何よりだ。陛下も喜んでおられたよ」

勇者「そ、そうですか」

騎士「なんだ……? その煮え切らない態度は」

……
騎士「なるほどな」

勇者「ええ、今までそのように接せられた事が無かったので、陛下の胸中を知った時は何と言うか」

騎士「あの方は昔から身近な者には言葉が足りないからな……」

騎士「きっと、今回の件でも甚く喜んでおられるだろう」

勇者「え?」

騎士「魔王軍との戦いは終わりが見えない状況が続いている」

騎士「それを和解という形で、息子のように思う君が立ち上がり行動しているのだ」

騎士「陛下とて戦乱を良しとは思っていない。ならば、当然の事であろう」

士「おっと、至急いくつか確認すべき事があったのだった」

勇者「どうしました?」

騎士「まずは宝物庫へ。ついて来てくれ」

勇者「はあ……」


騎士「ここに納められていた武具は知らないだろうか?」

勇者「ここは自分でさえ立ち入りを禁じられていたので……武具があったんですか」

騎士「ふむ……まあいい。それとこれから伝える神託が、今回の件と一致しているかどうか判断して欲しい」

勇者「神託、ですか」

騎士「ああ、先日あったのだよ」

騎士「大いなる力が世界を破り、果てなる世界へと旅立った」

騎士「彼の地より英雄達も旅立ちて、残された者はただ時を待つばかり」

騎士「太陽の輝きが、果てなる世界へ差し込まれ」

騎士「新たなる英雄の手により、大いなる力に輝きが放たれる」

騎士「英雄達は凱旋し、真なる平安を作り出す……と」

勇者「……」

騎士「……」

勇者「……」ダラダラ

勇者「つかぬ事お伺いします……ここに納められていた武具とは」

騎士「うむ、太陽をあしらった武具で、全部で剣、盾、鎧、兜が収められていた」

勇者「……その、何故俺にはそれが与えられなかったのでしょうか?」

騎士「俺も詳しくないが、この武具を授かった時の神託で必要とされるまで保管せよ、との事だったらしい」

騎士「確か昔、魔王が討たれた後の話らしいぞ」

勇者「そう、ですか」ダラダラダラ

勇者「神託は、まあ……そんな感じで」

騎士「そうか。平安……魔王の災厄はもう無いという事だな」

勇者「ええ」

勇者(作り出す……俺達の心情までお見通しって事か。これからはもうちょっと信じてみるか)

騎士「ん? もしかして太陽の輝きと言うのはこの武具の事だったのか? どうなったのだ」

勇者「!」ビク

勇者「……」

勇者「熾烈を極める激戦の中、魔王討伐という大いなる使命を果たすと共に、その役割を……」

騎士「そうかそうか……それなら良かった。意味があったのだな」ウンウン

勇者(剣とか必要だったとは言え、故意に壊したのは黙っておこう……)

……
側近「以上がこの数日間の報告です」

炎「ああ、よくやってくれた。ありがとう」

炎「先程伝えた件、全軍への通達を頼むぞ」

側近「はい」

氷「本当に和平が結ばれるのかしらね……」

風「人間側が今どうなっているのやら……」

雷「あたしはどっちだっていいからとっとと片付いてくれないかなー。おちおち勇者と試合もできねーの」

風「……試合」

氷「死合?」

炎(殺、し合い)

雷「炎、考えていることが顔に出てんだけど」

数日後
側近「戦線を引き上げ各隊長クラスを前面に立てて防衛線を築きました」

側近「『何事も無ければ』維持していく事ができるかと思われます」

炎「ああ、助かる。人間側から何か接触はあったか?」

風「まだ何もありませんわね……」

氷「現場仕事が減った分、デスクワークが処理しやすくていいですが、これはこれで微妙だわ……」

雷「手伝おーか?」

氷「い、いい!」ゾオ

風「大丈夫よ」

雷「即答だと思ったよ」

炎「……雷は暇を持て余しているのか?」

雷「んー時間潰すのはできているから別に暴れるとかねーよ」ジロリ

炎「それは良かった」

風「寧ろ、雷がどうやってストレス発散させているのかが、怖いのだけれども……」

雷「そーいや炎以外、直に見せた事ないっけ」

氷「え? 見せる? 何が?」


雷「じゃん」フフン

狼「……」

風氷側近「!?」

炎「ああ……そういえば居たな、狼」

氷「ど、どういう事?」

炎「魔王軍にスカウトした時から一緒に居たのだよ」

風「そうだったの……」

雷「こっちで暇があるならこいつ構ってられるからなー♪」モッフモフ

狼「アォォン」

「なっ」ガシャッ

炎「?」

兵士「……」

勇者「な、な……」ワナワナワナ

炎「何故いる……」

兵士「え、あの、一応、人間達の使者という事なので通したのですが……」

風「ありがとう、下がっていいわ」

兵士「はっ!」

勇者「なっ、ななっ」ガタガタ

勇者(雷が女性っぽい雷が女性っぽい雷が女性っぽい)グルグルグル

氷「ちょ、どうしたの? 大丈夫?」

炎「現実を受け止められず拒絶反応を起こしたか」

風「私達は女の子らしいところがあるのを知っているからいいものの、確かに勇者にとってこれはある種のトラウマでしょうね……」

側近「どうぞ」コト

勇者「あ、ああ、すまない」

炎「目が泳いでいる……動揺が隠しきれていないぞ」

雷「んだよ、あたしが狼と戯れていたら変か」

勇者「いや、だが雷だったら寧ろ獅子を選択するんじゃ……」

雷「勇者ん中であたしはどーなってんの? だいだいこの子はあたしが一人旅してた時に拾っただけだし」

風「……でもその種、他の生き物どころか同種ですら群れないで有名だと聞いているのだけど」

勇者「力でもってリーダーとして示したか……」

氷「イヌ科と相性良さそうね……」

炎「で、お前は困惑しに来たのか?」

勇者「はっ、しまった……目的を見失いそうだった」

勇者「落としてすまんが土産だ」ガサ

氷「さっきの……」

勇者「あれは不可抗力だろ……」

炎「で、本題に入ろうか」

勇者「一国を除き、各国が協議に参加する意思が確認できたから伝えにきた」

雷「残り一国どうすんのさー」モフモフ

勇者「もうすぐ、何処かの国に頭を下げるだろうから、その時に交換条件で飲ませるさ」

風「……? 言っている意味がよく分からないのだけれども……」

勇者「もうすぐ食料危機に気づくかなー……」

炎「……何をした」

勇者「外れにある国内三番目に大きい小麦畑に毒を撒いたから、そろそろ枯れ始める。もう手遅れだな」

氷「ちょ……」

風「でも今年は気候がいいから、豊作だったら分からないんじゃないのかしら?」

勇者「魔法を研究している知り合いに頼んで、雀千羽を一番大きな畑に放ってきた」

雷「わお、面白そーな事してんじゃん。見たかったぁ」モフモッフ

炎「どんな因果関係だ……」

勇者「基本、転移魔法って送る数で制限があるんだろう?」

勇者「知り合いは変な魔法ばかり研究していてな。範囲を指定した転移魔法も対象だったから」

勇者「ささっと小さいものを送るには丁度良かったんだ」

氷「というか……お前、随分とえげつない事もするんだな」

勇者「別に聖人じゃないからな」

勇者「まあ、そんな訳でもうしばらくだから、会場とか考えていてくれ」

炎「人数とか必要事項が何も無いのにか?」

勇者「ああそうだった。これが資料だ」

側近「お預かりします」

勇者「それと転移魔法使える奴はいないか?」

氷「風とあたしが使えるけども」

勇者「じゃあついて来てくれないか? お前達の意見も聞きたい事がある」

勇者「あの世界で、こちらの世界にある建築物と瓜二つの場所があったんだ」

勇者「そこが俺と剣士が始めて宝玉の欠片を手に入れた場所なんだが」

氷「ああ……聞いたわね」

風「でも今更何故そこへ?」

勇者「どうも魔力が溜まっているらしくてな。どうにも判断できないんだ」

風「なるほど……炎、私達は少し外に行ってきますので」

炎「ああ、分かった」

……
勇者「どうだ?」

風「これはどうにも……」

氷「今まで見た事が無い現象ね……」

勇者「二人でも分からないか……」ガシガシ

風「でも少しずつ魔力が散っているから、何れ無くなるでしょうけども」

風「もしかしたら、だけども。剣士さん達のあの世界への最後の繋がりの可能性があるわ」

氷「ああ……そういう考えはありえるわね。本当にここが起点であったのであれば」

勇者「……」

勇者「何か送れないだろうか……剣士に」

氷「絶対彼に届く訳じゃないのよ」

勇者「だが可能性はあるのだろう」

風「……」

風「あの世界の文字にはカンジと呼ばれる物があり」

風「少し教えて頂いたものは私達とは全く異なる形の文字だったわ」

氷「え? でもあの世界の文字、あたし達と同じ表記じゃ……」

勇者「俺達にはそういう風に見えていた……見えてしまっていた?」

風(……剣士さんは炎の魔法で蘇生された、と)

風「今となっては分からないけれども、私達は剣士さんから見るとあの世界のルールにさえも、干渉していたのかもしれない」

風「そして私達は翻訳された形で文字や言葉を見聞きし、彼らは翻訳された形で言葉を聞いていたのかもしれないわ」

氷「もしかしたら、手紙を書いたとしても今となっては伝わらない可能性も」

勇者「その仮定で考えると十分あり得るな」

風「……どうするの?」

勇者「一旦、そっちの本部に戻って急いで送る物を作ろう」

氷「はぁっ? だからその送る物どうしたらって話じゃ……」

勇者「そちらに人物画のスケッチが得意な者はいるか?」

勇者「これなら確実だろ」

勇者「手短に、各自が分かる程度でいいから」

「は、はあ……」

風「何時まであそこが保っていられるか分からないものね」

炎「帰ってきたと思えば」フゥ

氷「まあいいじゃない。剣士には世話になったんだし、こっちの無事ぐらい伝えたいじゃない」

雷「ま、そーね」


側近「え、えとこっちにいようね?」

狼「クアア」ノビー

……
炎「ここが……」

勇者「ああ。よし、入れるぞ」

雷「何もさー全員で来なくてもよくない?」

風「私はしっかりとこれを送り出したいし」

氷「あたしも」

雷「じゃー仕方無いわねー」

勇者「意外だな……お前がそういう事を考えていると言うのは」

雷「ま、欠片探しの時に温泉地回してもらったしねー」

炎「待て何の事だ?」

勇者「俺達は雪山だったのに?」

魔力溜り「」スゥゥ

勇者「消えた……」

風「これでもう、完全にあちらとは……」

炎「少し寂しいが、これが本来あるべき形だ。我々の中で忘れなければいい」

氷「ええ、そうね」

雷「んじゃあ帰るかねー」

炎「お前はどうする?」

勇者「やる事済んだし、俺も帰るさ」

炎「そうか」スッ

勇者「何の握手だ?」

炎「これからが大変だろう。よろしく頼むぞ」

勇者「そうだな……だが、前途多難だろうが、一応成功が約束されてはいる」グッ

氷「? どういう事?」

勇者「そういう思し召し、ていうのかな。ま、誰かに言われたから何だって話か」

勇者「何にせよ改めてまたよろしく頼む。今までのように……これからもずっと」

炎「ああ」

風「ええ」

氷「当然よ」

雷「とっとと協議関係終わらせて、試合しよーぜ」

勇者「……炎」

炎「……頑張れ」


   剣士「Lv46、臨時PT募集ー」勇者「レ、レベ?りんなんだって?」 終

なんでスケッチだよ
せめてデッサンだろ……

_ノ乙(、ン、)_

宝庫の米に犬とか土の人かなってあった
あの人か、納得

>>564
流石に勘違いを納得されても
本人に失礼だろうから言うが
全くもって違う

>>178
[海の国 南第三エリア]
[恵み振る人の無き漁港]

氷「ちょっと暑いわね……」

風「何言っているのよ。これから砂漠もあるのよ?」

氷「えいっ」キンッ

氷「ふ~……」

風「そうやって魔力を無駄使いして……これぐらいの暑さは我慢したらどうかしら?」

氷「元々あたしの故郷は北の方だから仕方が無いことよ」

風「まったく……」

氷「それでここは何ともなさそうだけど、どういった所だって?」

風「貴女も一緒に剣士さんから話を聞いていたじゃない……」

氷「大まかには分かっているけども細かい話なんて覚えてられないわよ」

氷「というか風もさ、その自分を基準にした考えやめなよ」

氷「時々だけど炎が落ち込んでいるわよ」

風「え?! 私の所為なのそれ? というか落ち込んでるって何で?!」

氷「風が異常な記憶力ってだけなのに、覚えてなくて不甲斐無いって思う時があるらしいわよ」

風「うっ……ほ、本当?」

氷「冗談でも炎の事を悪く言う訳ないじゃない……」

風「そう、よね。私はどうしたら……」

氷「風はフォローもしっかりしているけど、逆に上手すぎて気遣われてるのにも気づいているからねぇ……」

氷「時折やらかす時に、しっかり穴埋めしないようにしたら? 炎にフォローさせる場を与えるとか」

風「それは私が最低じゃない?!」

氷「うわぁ本当に面倒ね」

風「氷?!」

氷「あーはいはい。今度、炎と一緒の時に陥れてあげるから」

風「そんな解決方法?!」

氷「ほら、優先すべき事。ここはスルーでいいのね?」

風「~~~~!」プルプル

風「はぁ……ここでは特別な物資が入手できるそうよ」

風「もしかしたら剣士さんへの謝礼になるものも手に入るかもしれません」

氷「じゃあ二手に分かれて?」

風「その方がいいみたいね」

風「鳥の卵がいくつか手に入りました」

氷「こっちは……正直持っていたくないんだけど、場所が場所だし釣り餌の虫かしらね」ウネウネ

氷「ねえ、これ本当に特別な物なの?」

風「……正直、とてもそうには見えないわね」

風「持っていても仕方が無いわ。卵は食料になるにしてもそれは……」

氷「うん、捨てよう」ボチャボチャ

風「次へ向かいましょう」


釣り師「あーくそ……撒き餌でねぇ」

大斧使い「何時になったら巨大怪魚討伐できんかねぇ」

医術師「確かに一日一回のここでレア抽選狙う方がコストは安いけど、もうドロップ狙いの方が楽じゃない?」

槍使い「え? あれ? おい、あのでっかい魚影って?」

大斧使い「は? なんで?! ラッキー! どっかの馬鹿が撒き餌使っていったのか?!」

釣り師「50kは固いのに……おっしゃあ! 吊り上げるからbuff頼むわ!」

風「……次までちょっと距離があるわね」

氷「そうなの?」

風「さっきの卵、ゆで卵にでもして食べてしまう?」

氷「あー……そうね。小腹も空いているし、さっきのがあれなら次は戦闘になる、のかな?」

風「じゃあ氷溶かしてそれで茹でましょ」ガサ

氷「何時でもいいわ、器お願い」

風「はい」ゴト

風「モクモク」

氷「……」ゴクン

風「……」

氷「な、なにこれ凄い美味しい」

風「……これ、私達で消費しちゃいけない気がしてきたわ」

氷「でももう全部茹でちゃったしこの気候じゃ」

風「ええ……残り一個ずつ今のうち食べちゃいましょう」

風「剣士さん、ごめんなさい……漁港では何も手に入りませんでした」

氷「時々思うんだけど風ってほんといい性格しているよね」

[海の国 東第七エリア]
[猛り上る東の果て見る岬]

氷「!」ゾクッ

風「この悪寒は……まさか……」

―― [戦 闘 開 始] ――

ウォーターゴーレム「オオォォン」ジャボンジャボン

氷「本当に液体のゴーレム……」

風「どうやって模っているのか、少々興味があるけども」

風「私達の世界の魔法の技術じゃ実現できないのでしょうね……」

ウォーターゴーレム「オオオオ!」ボンッ

氷「え? 水を放り投げ……」

風「! 氷!」ガシッ

氷「わぁっ! ちょ、風?!」ババッ

風「……」ズザァ

水球「」ボォォン

氷「!? な」

風「あれだけ巨大な水の塊が落ちてきたら、鈍器で叩かれるじゃすまないに決まっているわ」

氷「ああ……なるほどね。やってくれるわ」

ウォーターゴーレム「オオオオ!」ブン

氷「でも近接攻撃は遅いわねぇ」ヒラリ

氷「はっ!」ジャボ

氷「へっ!? 体は完全に流動性を維持した水なの?!」バッ

風「風刃!」ザァ

ウォーターゴーレム「オォ」ザザザザ

ウォーターゴーレム「オオオオン!」ジャボジャボ

風「まったく効いていないわね……」

氷「核も見当たらないし……風、魔力分けて頂戴」

風「ええ、いいわよ」シュゥ

ウォーターゴーレム「オオオオ!」ジャボンジャボン

氷「流石にこの大きさは本気出さないとね」キィィィン

氷「絶対零度」カッ

ウォーターゴーレム「」ピキン

風「真空双刃!」キキンッ

ウォーターゴーレム「」ズル

―― [戦 闘 終 了] ――

ウォーターゴーレム「」ガラガララ

氷「初めから凍らせて砕けば良かったわね」

風「効率度外視であれば私が風圧で体を砕いてもよかったのだけれどもね」

>>245->>268
[砂の国 東第一エリア]

雷「あっつ……」

氷「流石にこれは……」

風「そうね……予想以上だわ。氷、お願い」

氷「ええ、任せて」キィン

雷「うひゃあ……涼しー」

氷「……結構燃費悪いかも」

風「これだけ暑いとなると仕方が無いわ」

氷「それにしても……雷がこの暑さでそんな顔するなんてちょっと意外」

雷「暑いに決まってんでしょ! こっちはフルプレート! 暑いじゃすまないっての!」

氷「そうじゃなくて……なんていうか一番何事にも動じなさそうだからさ」

雷「あのさー……あたしは何なの? 魔族だよ? 肉も焼けそうな暑さならあたしも根を上げるって」

風「雷はどんな過酷な環境でも生きていけそうだけど……」

雷「そんな無茶な……そりゃあ多少ならいいけども、こんなところは絶対住みたくない」

氷「……雷も同じ魔族なのね」

風「……驚愕の事実ね」

雷「え? なに? 二人して苛め?」

風「とりあえず全会一致で早くこの地帯を抜ける」

氷「そうね」

雷「違いないな」

風「じゃあさくさく進みましょうか」ザ

氷「……この砂地を本当に」

雷「……オアシスとかあるよな?」

風「喜んで、次行くところがオアシスよ」

氷「やった♪」

雷「俄然やる気が出てきた!」

……
氷「……ぁー」ジリジリ

雷「氷、魔法……暑くなってきた」ジリジリ

風「ほら早く行かないの?」

氷「暑い……暑いよ……いっそ熱いぐらいだよ」メソ

雷「せんせー氷がマジ泣きしそうでーす」

風「温室育ち過ぎ……私もぬるま湯で育ったとは言えそこまで?」

氷「もー……やだよー」

風「……」フー

風「四将・氷! その体たらくを部下に見せるつもりですか?」

雷「お説教モードはいいけど、一旦休めるところ探さない?」

雷「風もさ、砂に足を取られててだいぶ痛いでしょ」

風「う……。そう、ね……」

氷「うー……砂漠嫌ぁ……」

風「雷は大丈夫?」

雷「まあ荒地を歩くのはそれなりに経験しているからね」

雷「とは言え、流石にこの砂を含んだ風はちょっとうっとおしいかな」

雷「ま、風も弱音吐かずによく頑張ってるじゃん」

風「……私が弱ると、絶対氷が折れちゃうからね」

雷「あはは! 本当二人は姉妹みたい」

風「付き合いは長いからね」

雷「そういえばそんな話だったっけ。今度時間があったら聞かせてよ」

風「ええ、いいわよ」

雷「さ、て……氷はこんな調子だし、なんか水分が得られる物探してくるかな」

風「水分って……オアシスまでもつわ」

雷「これから更にペース落ちるのにもたないって。さっきサボテンが生えていたじゃん。ちょっともいで来るよ」


―― [戦 闘 開 始] ――

ドゴォ

―― [戦 闘 終 了] ――


雷「絞るからなんか器容易してー」

風「もいで来た割にバラバラ細かいのはなんで?」

風「氷、水分よ」

氷「う、ん」コクコク

雷「どうよ?」

氷「……マズイ」

風「……そうでしょうね」

雷「特に変わった事は?」

氷「……? 特に無いけども……」

雷「なら良かった」

風「え? 何が?」

雷「いやーサボテンって種類によっては毒素含むからさー。あたしは平気だったけど氷大丈夫かなーって」

氷「ちょっと! そういうの止めてよ!」ゾォ

雷「あ、元気になった」

[砂の国 東第三エリア]
[恵み振る命与えるオアシス]

氷「着いたー!!」

雷「休む必要無かったじゃん」

風「あんな恐ろしい事言われたら、私も無理してでもオアシスの水を飲むわよ」

雷「まーいいけどちゃんと沸かしてから飲みなよ?」

氷「そのくらいの知識はあるわよ!」

氷「うう……ちゃんとした水分」

雷「そりゃ良かったね」

風「それにしても聞き間違いだったかしら?」

雷「何がさ」

風「話だとここは元々戦闘があるらしいのだけれども……」

雷「恵み振る命与えるオアシス、ね」

氷「んくんく」ゴクゴク

氷「っぷはぁ!」

風「氷……」

氷「もうちょっと汲んで沸かそっと」

氷「……」ジャブ

氷「……? ううん?」

雷「どしたの……!」ゾ

風「まさか!」ゾゾ

氷「……」ゾォォォ

―― [戦 闘 開 始] ――

オアシス「」ゴボボボ

ゾンビ「オアアア」ザバァ
ゾンビ「アー」ザァ
ゾンビ「オアー」ザバァ

氷「いやーーー!! いやーーーーー!!」

雷「あれ? 氷はゾンビ苦手だっけ」

風(まだ飲まなくて良かった)ゾォ

氷「殺す、絶対殺す、何が何でも殺すぅ!」ガタガタガタ

雷「ああ、そっか。ゾンビじr」

氷「止めて!!」

風「さ、やるべき事をするわよ」

氷「人事だと思って! 人事だと思っ、うぷ!」

雷「あたしらで片付けた方がよさそう」

風「ええ……」

ゾンビ「アアアアア!!」
ゾンビ「アーアアー!」

雷「雷神!」カッ

ゾンビ「アアアア!!」ズガガン ズガン ズガガン

ゾンビ「アー」ドザ
ゾンビ「ァァ」ドサ
ゾンビ「ァー」ドッ
ゾンビ「アゥ」ドザ
ゾンビ「ゥー」ドンッ
ゾンビ「ウアー」ズザァ
ゾンビ「アーウ」ドザ
ゾンビ「アアウ」ザァ
ゾンビ「ァー」ドサ
ゾンビ「ゥゥァ」ドザァ
ゾンビ「ァァ」ザザ

雷「弱っ!」ビク

風(いくら複数回、雷撃が降り注ぐとは言え、範囲魔法の一撃で倒れるなんて)

雷「あー……」

雷「あたしが叩き潰すしておくから、風は氷を見ててあげてよ」

風「そうするわ……まさかここまで弱いなんて。お願いね」

雷「まあ、こいつを振り回しているだけで片付くんだろうけど」ガッチャ

雷「ふんっ!」ブォン

ゾンビ「」ボンッ
ゾンビ「」ボッ
ゾンビ「」ボジュ
ゾンビ「」ボシュ

雷「うっわ、全員頭が吹っ飛びやがった」

氷「オロオロオロオロ……」ビチャチャチャ

風「……」サスサス

氷「う、うう……何でこんな目に、うっ!」

風「流石に気の毒には思うわ」サスサス

氷「オロオロオロ……う、ううう!」

―― [戦 闘 終 了] ――

風「あ、終わった?」

雷「超弱い……素振りしていたような感じだった。あと宝玉の欠片、風が持っててよ」

風「ええ、割りそうだしそのつもりよ」

氷「もう砂漠ヤダ……」グスン

風「もう一箇所回って早く砂漠を抜けた方が良さそうね」

雷「氷のメンタルがガリガリ削られてるなぁ……」

氷「削れるわよ! 当たり前でしょ!!」

雷「ま、あたしも砂漠は好きじゃないし、とっとと終わらせよーよ」

風「それじゃあ最短距離を進むわ……途中に強い魔物がいるそうだけども」


―― [戦 闘 終 了] ――

巨大蚯蚓「」

風「こうなるわよね」

雷「弱い……流石のあたしもそろそろ泣くぞ」

氷「そんな事で泣かれるとあたしがキレるわよ」

[砂の国 南第四エリア]
[忘れがたき死招く遺跡跡]

風「……」

氷「……」

雷「……」

宝箱「」

雷「どういう事、オアシスと名前間違えた? え? 戦闘無いの?」

氷「ここまで来ると名称を利用した奇襲が目的っぽいわねぇ」

雷「はぁぁぁ……」

風「……」ガチャ

黄金鎧「」サンサン

風「! ……」チラ

雷「あーあ……勇者と戦いたい」

氷「あたしは何だっていいわ……これでやっとこの砂漠からも抜けられると思えれば……」グス

風「……」カチャカチャカチャ ゴソゴソ

雷「あー……ねー風ー面白いものあったー?」

風「水薬が手に入ったけども、剣士さんに差し上げるべきでしょうね」

雷「はっ! ……武具ですらないとか……つっまんない」

風(よし、鎧の収納は出来た……)ドギドギ

風(鎧が出たからばらして入れたから。剣士さんに、ね)ポソ

氷(あ、うんうん分かった)ポソ

雷「あーあ……」

[火の国 北第一エリア]

雷「火? 火山かな?」

氷「かしらね。ここは確か二箇所だったかしら」

風「ええ、そうよ。しばらくは山登りね」

氷「はあ……」

雷「つってもこの世界の転移魔法は楽だね。地図上の距離の半分は飛ばしてるんじゃない?」

風「そのぐらいかしらね。砂漠を完全横断とかにならなくて良かったわね」

氷「……」

氷「今後、砂漠って言ったら殴る」

風(トラウマ化している!?)

雷「魚を捌く? 鯖、食う? 鯖、燻製してみるけど食べる?」

氷「……」スラン

氷「……」ヒンヒュン

雷「ケラケラケラ」ヒョイヒョイ

風「二人とも遊んでないでそろそろ登るわよー」

氷「ふう……ふう……」

風「はあ……結構きついわね」

雷「えー? そうー?」

氷「く……ハスキー系め」

雷「あっはっはっ! そりゃあいい、今度からハスキー雷って名乗ろうかな」

風「え、喜ぶほど?」

雷「え? ハスキー可愛いじゃん」

氷(ある意味似合ってるわね)

[火の国 北第二エリア]
[猛り上る隔てなく呼び誘う温泉]

氷「おぉ……」

雷「すっげ、温泉? 結構な広さだな」

風「聞いてはいたけども、これは中々なものね」

氷「入る? 入るよね? 入るわよ!」

雷「ひゃっほーう、脱衣所どこだー!」

風「ふあ……」チャポ

氷「はぁ……いいわ」

雷「剣士の奴、いいところ回してくれたもんだぜ」

氷「帰ったら氷漬けにしようかと思ったけども、これで収める事にするわ」

風「剣士さん……物凄いとばっちりじゃない」

雷「ぶっちゃけ、氷は自分の所為なのが多いじゃん」

雷「砂漠地帯ってところも普段から体を動かしていればいいんだし、ゾンビ汁は不注」

氷「言うなぁぁ!!」

風「あら、何かしらそれ」

雷「お、ここら辺熱いな、お湯が吹き出てんかな。どう取るか……あ、これ動かせそう、よっと」ザバッ

雷「なんだ? 卵か?」

氷(また卵……)

雷「貰っていいもんかな? 周り人いないしいいよな?」

風「いいんじゃないかしら?」

雷「お、器が置いてある。器? え? ゴミ箱で良くない?」

氷(流石にもうゆで卵はね)ヒソ

風(ええ)ヒソ

雷「ぎゃああああ!」ベキャ

氷風「なに?!」

雷「あぁ……あたしの卵ぉ」ベチャァ

氷「あーあー何してるのよ。そこら辺のお湯、外に出しなさいよ」

風「まだ半熟みたいね」

雷「んー半熟ゆで卵かぁ……」

雷「とりゃ」パキャ

雷「この為の器かぁ……」

雷「あ、これ卵にかける調味料か」トパ

風「よく考えたらこの温度でゆで卵になるのかしら?」

氷「そういえばそうね……」

雷「うまーーーい!!」

氷風「え?」

雷「え、ちょ、ええ?! なにこれめっちゃうま!」

雷「も、もう一個!」

氷風「……」

氷「……あたしも」パキャ

風「……私も」パキョ

雷「……」ニヤニヤ

氷「……これは中々」

風「なるほど……卵のあたりの水温は沸騰に至らずともここよりも高いのね」

風「この世界の人間の文化は本当に進んでいるようね」

風「あえて半熟……生食できるものはそういう考えもありね」

氷「良いわねこれ」

雷「これって向こうでも作れる?」

風「温度やゆでる時間の調整が必要だろうけども作れない事はないはずよ」

雷「よっしゃ、たまにでいいから作ってよ」

氷「それくらいは自分で頑張りなさいよ……」

雷「えーめんどーい」

氷「あーさっぱりしたぁー」

風「でも確かに心なしか体が軽くなったような……」

雷「心なしじゃないよ。完全に疲労が取れている」

雷「多分ここ、体力とかが回復するようになってんじゃないの」

風「……でも確かにありえそうね」

氷「よっし、気合入ったわよぉ!」ムン

風「まああと一箇所だけどね」

雷「なんだ、そうなの?」

風「ええ、それも何が起こるか分からないところだけども……」

[火の国 西第六エリア]
[刹那の熱き滾る火口広場]

―― [戦 闘 開 始] ――

火竜「ギャアオオオオン!!」

雷「おっしゃあ!」

氷「あー……」

風「これは巻き込まれそうだし非難していましょう」

氷「ええ、あれに近づきたくないわよ」

風「はい、水」

氷「んく……ふう」

雷「はああああ!!」ズドン

火竜「ギャアアア!」ヨロ

風「それにしても中々な眺めね」

氷「山頂だものね」

雷「てやああああ!」ズンッ

火竜「フウウウウ!!」

氷「全部の欠片が集まったらどうなると思う?」

風「そもそも欠片が全て揃うのか……そして砕かれ散りばめたのは何者なのか、によるでしょうね」

雷「雷、神!!」

火竜「ガアアアア!!」

風「結局のところは出たとこ勝負になってしまうけれども、私はもう魔王様の宝玉は諦めているわ」

氷「え?! そうなの?」

風「少なくとも私はどう転んでも宝玉の力は失われている、あるいは最終的に失われる」

風「そう考えているわ……たたでさえこうして力を発揮しているのだもの」

氷「ああ……仮に残っていたとしてもそれは」

風「そう、もう私達が望んでいた力は無い……それこそ一時的に魔力や魔法を封じた魔石のようなもの」

氷「酷い凋落だわ。これでは魔王様も浮かばれないわね」

風「……炎も同じ事を言っていたけども、これは一つの手段でしかないわ」

風「魔王様の宝玉が手に入らないのであれば、戦いが本格化して直接実力を見せ付けるだけの事よ」

氷「面倒ね」

風「面倒よ。だからこそ魔王様の宝玉を手中に収めるだけで片付いてほしいのよ」

―― [戦 闘 終 了] ――

雷「はー……ちったぁ憂さ晴らしになったかなぁ」

火竜「」

氷「それは良かったわね……」

風「宝箱は?」

雷「ほい、欠片。でもなぁやっぱ弱いよ。炎や勇者、手合わせしてくんねーかなぁ」ブツブツ

風「……ありがとう。それじゃあ一旦町に戻りましょうか」

氷「炎達もう終わってるかな?」

雷「あの二人がいるんだ。向こうはさくっと終わってるでしょ」

氷風「二人……そうね」

>>330

勢いで蛇足までやって矛盾孕んでたら笑う
と思ったけどそもそも矛盾だらけの話だった事を思い出した

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年10月13日 (月) 10:24:55   ID: _aQmrUFq

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