凛「海未ちゃんが厳しすぎる」 (325)

海未「凛、テンポ遅れてる!」

凛「にゃっ!?」



海未「凛、今度はテンポ上げすぎ!」

凛「にゃにゃっ!?」



海未「凛!」

凛「にゃーっ!?」



海未「今日の練習はここまでです」

凛「つ、つかれた……」

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花陽「凛ちゃん、タオルだよぉ」

凛「ありがとうかよちん」

希「スポーツドリンクも、はい」

凛「うん。ありがと」

海未「真姫、次の曲についてですが……」

真姫「もう楽譜はできてるわ。これよ」

海未「ありがとうございます。後は振付だけですね」

海未「あ、とりあえず楽譜は部室に置いてきますね」

真姫「ええ、行ってらっしゃい」

穂乃果「穂乃果も一緒に行こうか?」

海未「いえ、そのくらい大丈夫ですよ」

絵里「凛、お疲れ様。今日は特に怒られてたわね」

凛「そうだよ、海未ちゃんは厳しすぎるもん」

ことり「ふふ、そうかなぁ?」

凛「え?」

ことり「凛ちゃんを怒ってる時の海未ちゃん、すごく楽しそうだよ」

穂乃果「そうだね。海未ちゃんうれしそうだよ」

凛「ど、どういう意味で?」

希「それはもちろん……ウチと同じで凛ちゃんにいたずらを」

にこ「何バカなこと言ってんのよ」

希「えへへ、冗談やって」

凛「本当にそうかなぁ?」

絵里「まあ海未は厳しいのは今に始まったことじゃないしね」

凛「うー……今日はもう疲れた! お風呂入ってラーメン食べて寝る!」

花陽「あれ、もう解散なの?」

ことり「海未ちゃんが何も言ってないってことは、解散して大丈夫だと思うよっ」

穂乃果「うん。何かあるなら海未ちゃんは呼びかけをしておくはずだしね」

絵里「すごいわね。海未のことは何でもお見通しって感じなの?」

穂乃果「幼馴染だからかな?」

ことり「ねーっ」

凛「じゃあ海未ちゃんに厳しくしないでほしいって言っておいてほしいにゃ」

にこ「海未ってそんなに厳しい?」

真姫「私たちには普通よね」

花陽「でも凛ちゃん、ダンスは普通にうまいよね?」

凛「自分で言うのもなんだけど、それはちょっと自信あるよ!」

希「……あ、ウチわかったで」

絵里「ええ、私もよ」

凛「えっ!?」

希「だって凛ちゃん、ダンス上手なんやろ? でも怒られてる」

真姫「……あ」

絵里「穂乃果たちは前から気づいてたの?」

穂乃果「なんとなく見てればわかるよ」

ことり「凛ちゃんがうらやましいなぁ」

凛「ええっ!?」

にこ「……何なのかしら。花陽はわかった?」

花陽「ううん、全然……」

希「2人には後でメールで教えてあげる」

凛「凛には教えてくれないの?」

絵里「それは自分で気が付かないと意味がないわ。人から教えられるより、もっとうれしいわよ」

凛「?」

穂乃果「それじゃ、とりあえず解散にしようか」

真姫「ほら、2人とも帰るわよ」

花陽「あ、うん」

凛「むむむ……謎は深まるばかり」

希「そんなに難しく考えても、お腹がすくだけやで?」

凛「それは困るにゃ!」

にこ「明日は休日だけど練習ないし、しっかり休むのよ」

花陽「うん、そうするよぉ」

穂乃果「あ、そうだ! 明日海未ちゃんと会って聞いてみたら?」

凛「え?」

希「そうやね。厳しくしないでほしいって、面と向かって言ってみればいいやん」

凛「なるほど……でも怒られないかな?」

ことり「ううん、たぶん海未ちゃんならちゃんと向き合ってくれると思うよ」

絵里「律儀だものね、海未は」

凛「うん、わかった! 今日はもう遅いし、明日にする」





凛「かよちん、真姫ちゃん」

花陽「どうしたの?」

真姫「何?」

凛「海未ちゃん、どうして凛に厳しいのかな」

花陽「私はまだわからないなぁ」

凛「真姫ちゃんは?」

真姫「ま、凛に意地悪したいとかって言う理由じゃないわよ。絶対に」

凛「そっかぁ……うーん」

真姫「もしかしたら、凛はわからないかもしれないわね」

凛「そうなの?」

真姫「だって凛、自分よりもすっごく運動のできる人とかって見たことある?」

凛「……ないにゃ」

花陽「そうだね、凛ちゃんスポーツ得意だもん」

真姫「難しく考えなくても、きっと明日になれば海未は教えてくれるわよ」

凛「そう?」

真姫「ええ」

凛「なんとなく、わかったようでわからないような……」

花陽「私もよく……」

真姫「そうね。花陽は憧れるタイプだし」

花陽「?」

真姫「にこちゃんもアイドルに対する熱意じゃ、誰にも負けたことなさそうだから」

凛「……真姫ちゃん」

真姫「え?」

凛「真姫ちゃんって、意外とみんなのこと見てるんだね」

真姫「べ、別にそんなつもりじゃないわよ……」

凛「よーし、明日になったら全部聞くぞー!」

花陽「ふふ、凛ちゃんうれしそう」

凛「い、いや、これは海未ちゃんと会えるのが楽しみとかじゃなくて、ラーメンが……」

真姫「なんだ。海未が好きだから気にしてたのね」

凛「ちがうにゃ! もー、真姫ちゃんのツンデレがうつっちゃった」

真姫「ツンデレって何よ」

凛「うー……じゃあ真姫ちゃん、ばいばい」

真姫「ええ。また……明後日ね」

花陽「あ、そっか。明日はお休みかぁ」

凛「2人と遊べなくてごめんね。また今度ね」

真姫「そんなこと気にしなくていいわよ」

花陽「うんっ。明日は頑張ってね、凛ちゃん」

凛「がんばるにゃー!」






凛「はふぅ……やっぱりチャーシュ入れててよかった」

凛「ラーメンの具にはチャーシューがないと、うん」

凛「ケチケチしてたらダメだよね。明日の分は明日買えばいし……」

凛「……明日、かぁ」

凛「凛は海未ちゃんと、もっと仲良くなりたいんだけどなぁ……」

凛「海未ちゃんはどう思ってるのかな」

凛「……」

凛「凛、そんなにダンス、へたっぴだったかにゃあ……」

凛「あ、そうだ! 海未ちゃんにメールしないと」

凛「ってあれ? 凛、今まで海未ちゃんにメールしたことあったっけ?」

凛「……あれれ」

凛「こ、こんなのじゃダメにゃ! ダメダメにゃ!」

凛「……でも、明日海未ちゃんに用事があったらどうしよう」

凛「にゃっ!? ……なんだ、メールかぁ。びっくりした」

凛「え、う、海未ちゃんから?」

凛「明日は私の家に来てください……って、あれ?」

凛「凛、約束した覚えないけど……あ! 穂乃果ちゃんとことりちゃんが伝えてくれたのかも」

凛「……こうして友達任せにしてるからダメなのかなぁ」

凛「うーん……あ! 流れ星!」

凛「お願い事は、えっと、うーんと……」




「海未ちゃんともっと仲良くなれますように!」


ここまで
また夜に更新する


短いけどちょろっと更新するよ





凛「……緊張してきた」

凛「海未ちゃんのおうちは初めてだよね?」

凛「……」

凛「海未ちゃんの私服ってあんまり見ないっけ」

凛「……気になる」

凛「……今日はもっと、海未ちゃんと話し合って……仲良くなるのが目標にゃ!」

凛「がんばれー凛っ!」

凛「よし! いっくにゃー!」






凛「……い、意外と近い」

凛「海未ちゃんのおうち、でっかい……」

凛「最初のあいさつはどうしよう……やっぱりこんにちは、かな?」

凛「ううん、でも道場っぽいし……」

凛「……」



凛「たのもーっ!」




海未「ああ、その声は凛ですね」

凛「!?」

海未「……どうしました?」

凛「う、海未ちゃんずっと扉の前に立ってたの? 急に出てきたからびっくりして……」

海未「いえ、朝の稽古と雑巾がけを終えたので、着替えに戻ろうとしていたんですよ」

凛「あー、だから袴で……」

凛「え? 雑巾がけ?」

海未「そうですよ」

凛「こ、ここ全部?」

海未「はい」

凛「すごいにゃ……」

海未「私は毎朝やっていますが……変でしょうか」

凛「ううん、全然。むしろ尊敬するというか……」

海未「あ、凛もやってみますか? 足腰が鍛えられますよ!」

凛「きょ、今日はちょっと……」

海未「そうですか。ではまた気が向いたときに」

凛「えっ」

海未「ついてきてください。案内しますね」


ここまでー
あんまり長くはしない予定




海未「ここが私の部屋です。着替えて来るので少し待っていてください」

凛「あ、うん」

凛「……広い」

海未「着替えてきました」

凛「えっ、もう!?」

海未「慣れてますから」

凛「慣れって怖い……」

海未「それで、話とはなんですか?」

凛「えっ」

海未「?」

凛「あ、いや、その……心の準備が」

海未「心の準備? そんなに重要なことなんですか?」

凛「ま、まあ……」

海未「それなら待ちますよ。お茶とお菓子でも用意してきますから」

凛「あ、海未ちゃん待って!」

海未「何ですか?」

凛「い、今言うから……」

海未「いいんですか?」

凛「うん。今を逃すと言えないような気がする……」

凛「……」

海未「……」

凛「い、言っても怒らないでね」

海未「それは内容によりますよ。ただの罵倒だったりしたら怒ります」

凛「違うよ、そういうのじゃなくて……お願い、かな」

海未「お願いですか?」

凛「うん。お願い」

海未「私でできる範囲なら聞きますよ」

凛「ありがとう海未ちゃん……あ、あのね」

海未「はい」

凛「れ……」

海未「れ?」

凛「練習中、凛にもっと優しくしてほしい……というか」

海未「……」

凛「……」

海未「凛」

凛「ご、ごめんなさい! 甘えてごめんなさい!」

凛「でもいつも凛ばっかり怒られてたから……その……」

海未「凛」

凛「ひゃいっ!?」






海未「ごめんなさい」





凛「……え」

海未「あなたに少し、期待を押し付けすぎていたみたいです」

凛「な、なんで海未ちゃんが謝るの?」

海未「当たり前です。私が悪いのですから」

凛「……?」

海未「ああ、話しますね。私が凛に厳しい理由を」

海未「凛はダンスが上手ですよね?」

凛「自分では上手なつもりなんだけど……海未ちゃんによく怒られちゃうよ」

海未「いえ、贔屓目でなくとも凛はダンスが上手です。私が保証します」

凛「え? ならどうしていつも怒って……」

海未「上手だからこそ、ですよ」

凛「上手だから……こそ?」

海未「はい。凛はリズム感もあるし、運動神経もいい」

海未「そんな風に恵まれた才能を持っている凛は……その……」

凛「?」

海未「……どうしても、成長させたいと思いまして」

凛「成長? なにそれ?」

海未「まだまだ凛には伸びしろがある……そう思うとつい、厳しく叱ってしまうんですよ」

海未「もう少しタイミングがあえば、もう少しテンポがズレなければ……」

海未「きっと凛は素晴らしい成長をしてくれる……なんて思ってしまうんです」

凛「……」

海未「すみません、迷惑でしたよね……」

海未「これからは気を付けます」

凛「待って!」

海未「え?」

凛「凛、誤解してた」

凛「てっきり海未ちゃんは、凛のことが嫌いなのかも、って思ってたから……」

海未「そ、そんなわけありませんよ! 凛のことは好きに決まってるじゃないですか!」

凛「そうだよね、うん……」

海未「そうですよ」

凛「よかったにゃあ……」

海未「それでさっきまではあんなに暗い顔をしていたんですね」

凛「えへへ……だってそう思っちゃうよ。海未ちゃんは凛にだけ特別厳しく見えたもん」

海未「う」

凛「やっぱり武道とかやってると、人を成長させたいって思うようになるの?」

海未「まあ、それもあるかもしれません。でも凛は……言うなればダイヤの原石のようで」

海未「磨けば光るとわかっていて、それを無視できなかったんですよ」

凛「て、照れるにゃ」

海未「いらない誤解を招いてしまったようで……すみません」

海未「もうこんなことはやめた方がいいですね」

凛「ううん。やめないで」

海未「どうしてですか? つらい思いをするのは嫌でしょう。こんな風に堅苦しいのだって……」

凛「いや、海未ちゃんが期待してくれてるなら頑張れるにゃ!」

海未「凛……」

海未「……顔、赤いですけど大丈夫ですか?」

凛「えへへ、言っててちょっと恥ずかしくて……」

凛「あ。でも海未ちゃんには、怒られる以外にやってほしいことがあるかも」

海未「何ですか? 私にできることならやりましょう」

凛「その……褒めてほしいにゃ」

海未「褒める……あ、そうですね。褒めなければ成長した実感がわきませんよね」

海未「私もよく子どもの頃、母に褒められて喜んだものです」

凛「そうじゃないの」

海未「?」

凛「凛は……海未ちゃんに褒められたいなぁ、って」

海未「そうですか、わかりました」

海未「……しかし練習中にいちいち褒める、というのも難しいですね」

凛「じゃあこうする! 凛と海未ちゃんが2人きりの時だけ褒めてもらうようにするの」

凛「それなら直すべきととことかよかったとことかも話せるし、みんなにもバレないよ」

海未「みんなには内緒の方がいいんですか?」

凛「だ、だって、みんなの前で褒められるのってなんだかくすぐったくて……」

海未「ええ、わかりました。ではそうしますね」

凛「うんっ!」


今日はここまで
まだまだ続くよ

海未「では早速……」

凛「!」

海未「あ、少し待っていてください」

凛「え? どうしたの?」

海未「来客のようです」

凛「うん、凛待ってるね」

海未「はい。すぐ戻りますね」

凛「はーい」

凛「……何で海未ちゃん、近づいてきたんだろう」





海未「凛、すみません」

凛「どうしたの海未ちゃん」

海未「今日、急に母と出かけることになってしまいまして……」

凛「ああ、いいよ。大丈夫。海未ちゃんのお母さんが来たの?」

海未「はい。今日は何も予定がなかったんですが……この埋め合わせは必ずしますね」

凛「うん、また明日ね、海未ちゃん」

海未「ありがとうございます、また明日、練習の時に会いましょうね」





凛「……今日はもう寝ちゃおうかなぁ」

花陽「あ、凛ちゃん!」

真姫「凛!」

凛「あれ? かよちん、真姫ちゃん? 何で凛の家の前にいるの?」

花陽「凛ちゃんがちゃんと海未ちゃんに言えたかどうか心配になって」

真姫「まあここまで来たのはよかったんだけど、どこに行ったのかまではわからなかったから、こうして家まで来たのよ」

凛「そうだったんだ……あ、とりあえずあがって!」

花陽「お邪魔します」

真姫「お邪魔しま……あれ? 誰もいないの?」

凛「うん。お父さんもお母さんも遠くまでお買い物に行ってるの」

花陽「あー、あそこだね。子どもの頃によく行った……」

凛「そこそこ」

真姫「ふーん……」

凛「あららー? 真姫ちゃん、凛のお父さんとお母さんに会いたかった?」

真姫「いや、凛のご両親も語尾に『にゃ』を付けるのかと思って」

凛「付けないよ!?」

花陽「あはは……」

凛「真姫ちゃんトマトジュースあるよ。飲む?」

真姫「いいの?」

凛「うん」

真姫「じゃあお言葉に甘えて……」

凛「あ、ごめん。これケチャップだった」

真姫「……」

凛「ご、ごめん真姫ちゃん! 冗談だからそんなに落ち込まないで!」

真姫「おっ、落ち込んでなんかないわよ」

凛「かよちんもトマトジュース飲む?」

花陽「あ、うん。いただきます」

凛「おにぎりあるけど食べる?」

花陽「是非!」

真姫「!?」

凛「かよちんいつも通りだにゃー」





花陽「それで、ちゃんと言えた?」

凛「言えたよ」

真姫「海未は何て言ってたの」

凛「今度からは褒めてくれるって」

花陽「よかったね、凛ちゃん」

凛「えへへ」

真姫「花陽はメールもらったの?」

花陽「うん。全然気づかなかったよぉ」

凛「……なんか真姫ちゃん、バーにいる大人の女性みたい」

真姫「え、なんで」

凛「グラスを片手に……なんか」

真姫「そんなの凛にもできるでしょ」

凛「ほんと?」

真姫「ほら、グラス持ってみなさい」

凛「キリッ」

真姫「バカっぽい」

凛「ひどいにゃ」

花陽「でもどうして帰ってきてたの?」

凛「海未ちゃんに急に用事が出来ちゃって」

花陽「そうなんだ」

凛「だから明日の練習まで会えないの」

真姫「海未が褒めるって……あんまり想像できないわね」

花陽「そうだね……海未ちゃんが褒める……」

凛「凛もちょっと楽しみなんだぁ」

真姫「ま、今日は暇なんでしょ? なら私たちで遊びましょう」

花陽「うん、明日は練習だし、それまでは遊べるね」

凛「ありがとう真姫ちゃん、かよちん」

真姫「えっ、いや、感謝されるようなことしてないわよ」

花陽「ふふ、真姫ちゃん照れてる」

凛「照れてるにゃ」

真姫「て、照れてないっ!」





凛「ふー、今日は楽しかったぁ」

凛「結局いつもみたいに3人で遊んじゃったけど……」

凛「……海未ちゃん、明日ちゃんと褒めてくれるかな?」



凛「……おやすみなさーい」





花陽「凛ちゃん! 凛ちゃんってば!」

凛「……んー……かよちん?」

花陽「早く起きてよぉ! 遅刻しちゃうよ!」

凛「……え、今何時?」

花陽「9時だよ!」

凛「……練習は」

花陽「9時半!」

凛「……遅刻しちゃう!」

花陽「凛ちゃん顔洗ってきて! 私は着替え用意するから!」

凛「にゃあああ!? こんな日に限って髪の毛ボサボサにゃ……うぅ」

花陽「朝ごはん食べられそう?」

凛「ううん、今日はちょっと無理かも……ごめんねかよちん」

花陽「大丈夫、走っていけば間に合うよ。だから急いで準備して!」

凛「うんっ!」





凛「ご、ごめんなさい!」

花陽「遅れましたぁ!」

真姫「凛、花陽、大丈夫?」

凛「大丈夫……はぁ、はぁ」

花陽「はー……ふー」

穂乃果「は、花陽ちゃんの方が大変そう……」

希「ちょっと休憩しといた方がよさそうやね」

絵里「そうね。花陽、日陰に行きましょう」

花陽「は、はい……」

ことり「寝坊しちゃったの?」

凛「うん……凛が寝坊しちゃって……」

にこ「まあそれだけ全力で走ってきたなら、怒るものも怒れないというか……」

海未「凛」

凛「え」

海未「寝坊するとは何事ですか」

凛「ご、ごめんなさい……」

海未「普段から生活のリズムを整えていないからこういうことになるんですよ」

海未「ですから……」

ことり「まあまあ海未ちゃん、練習始めよう? ね?」

海未「……そうですね。凛と花陽はしばらくストレッチをしていてください」

海未「私たちはグラウンド5周から始めますよ」

穂乃果「はいっ!」




凛「……かよちんごめんね」

花陽「いいよぉ。ちゃんと体が温まったし……ストレッチしよっか」

凛「うん……」

花陽「凛ちゃん、元気出して」

凛「……でもこんなんじゃ絶対、海未ちゃんに褒めてなんてもらえない」

花陽「大丈夫だよ。これから凛ちゃんが頑張れば、きっと海未ちゃんは褒めてくれるよ」

凛「そうかなぁ?」

花陽「うん。だから練習頑張ろうね」

凛「わかった。凛、頑張ってみる」

花陽「その調子だよ、凛ちゃん」

凛「……」

花陽「……凛ちゃん?」

凛「眠いにゃ」

花陽「あはは、凛ちゃんはいつも通りだね」





穂乃果「凛ちゃん、花陽ちゃん、もう大丈夫そう?」

凛「うん、ストレッチも終わったから……」

海未「ではグラウンドを2周してきてください」

花陽「2周でいいの?」

海未「ええ。2人はかなり走ってきたようですし、体力がなくなっても困りますからね」

海未「その間、私たちは休憩です。凛たちも走り終えたら休憩をとってください」

凛「はいっ!」

花陽「はい!」


ここまで
凛ちゃんは無事に褒められるのか!


更新は明日の朝昼になるよ
待たせてすまん




海未「では次はストレッチを」

絵里「海未、ストレッチはさっきやったわよ。次はダンスじゃない?」

海未「……そうでしたね。では各自、いつもの隊形に広がってください」

凛「はい!」

穂乃果「お、凛ちゃん気合入ってるね」

凛「頑張らなきゃいけないからね!」

海未「……」

海未「ワンツースリーフォー……希、もう少し右!」

希「はい!」



海未「穂乃果、タイミングずれてる!」

穂乃果「はいっ」



海未「……ツースリーフォー」

凛「……」

凛「ここはテンポを上げて……」

凛「っと」

海未「ワンツースリーフォー」

凛「にゃっ」

花陽「凛ちゃん!?」

真姫「凛!?」

凛「いてて……」

ことり「凛ちゃん大丈夫?」

凛「うん……靴紐がほどけてたみたい」

にこ「顔からいったけど……怪我してるんじゃない? 見せてみなさい」

凛「だ、大丈夫だよ!」

穂乃果「凛ちゃん、鼻! 鼻!」

凛「え? 鼻?」

凛「……あれ」

希「鼻血やね。誰かウチの鞄からティッシュとって」

絵里「はいはい。凛、鼻に詰めてきなさい」

凛「ん、ありがとう」

海未「凛」

凛「!」

海未「保健室に行きましょう。念のため冷やしておいた方がいいですから」

凛「や、海未ちゃん、凛はまだ……」

絵里「そうね。それがいいわ」

穂乃果「うん、海未ちゃん頼んだよ」

凛「え、ちょ、みんな」

ことり「こっちはちゃんと練習しておくから、凛ちゃんはきちんと休んでてね」

凛「で、でも」

花陽「凛ちゃん」

凛「……かよちん」

花陽「大丈夫だよ。今は休んでて、ね?」

凛「……うん」

海未「では行きますよ。凛、立てますか?」

凛「うん……」

凛「……」

海未「……」

凛「……廊下、静かだね」

海未「……そうですね」

凛「……」

海未「……」

凛「……あ、あの、海未ちゃん」

海未「何ですか」

凛「ごめん……なさい」

海未「どうして謝るんです。凛は何も悪くありませんよ」

凛「……だって」

海未「……」

凛「だって凛、今日は遅刻したし……」

凛「それに、ダンスもちゃんと……できなかった」

海未「……」

凛「褒めてくれるって、海未ちゃんは言ってくれたけど……」

凛「こんなんじゃ……褒めるところ、ないよね? えへへ……」

海未「……」

凛「だからちょっと……ちょっとだけ、ね」

凛「情けないなぁ、って」

凛「おもって……」

凛「……」

凛「……ぐすっ」

海未「着きましたよ、保健室です」

凛「……うん」

海未「凛、電気をつけておいてください」

凛「わかった……」

海未「ベッドに腰掛けて……はい、氷枕です」

凛「……うん」

海未「私は鍵を閉めておきます」

凛「……? 海未ちゃん、何でカギ閉めたの?」

海未「これで2人きりですよ」

凛「え?」

海未「だから、2人きりですよ」

凛「へ? なに? どういうこと?」

海未「凛、目を閉じてください」

凛「え、う、海未ちゃん、何するの――――――――」





海未「よく頑張りましたね」



海未「今日はずっと、あなたのことを見ていましたよ」

海未「以前指摘したステップについて、ちゃんと直していましたね」

海未「足の位置もしっかり揃っていました」

海未「褒めるところだらけです。褒めないところなんてありません」

凛「う、みちゃん?」

海未「最初の遅刻も厳しく叱りすぎました……反省しています」

海未「ちゃんと褒めるように褒めるように考えていたら、ついつい厳しくなりすぎてしまって……」

海未「すみません。あんな風に言われてはつらかったでしょう」

海未「凛が落ち込んでいる様子が見えて……途中からはあまり集中できませんでした」

凛「海未ちゃん、ちょっと」

海未「それなのに私は靴紐がほどけていることにも気が付かず……なんて周りが見えていないのか――――――――」

凛「海未ちゃん!」

海未「え、どうしました凛」

凛「褒めてるの……?」

海未「ええ、その通りですよ」

凛「ほんと? 怒ってないの?」

海未「いいえ、全然」

凛「……なんで?」

海未「凛が頑張ったからです」

凛「遅刻したのに」

海未「遅刻くらい誰だってしますよ。私もしたことがあります」

凛「ダンスも、転んじゃったのに?」

海未「この程度の怪我で済んで安心しました。もし凛の顔に傷でもついていたらと思うと……」

凛「海未ちゃん」

海未「はい」

凛「さっきまで凛に冷たかったの……なんで?」

海未「え? あれは褒める内容を頭の中でまとめていて……」

海未「冷たいように見えましたか? すみません……」

凛「……ちゃんの……」

海未「?」

凛「うみちゃんの……」

海未「はい、私ですが……」

凛「海未ちゃんのバカぁぁぁぁぁ!」

海未「!?」

凛「凛がどれだけ……不安だったか……っ」

海未「あ、その、配慮が足らずにすみません」

凛「海未ちゃん返事してくれないんだもん! 怒ってると思っちゃうでしょ!」

海未「ああ、そうですね……」

凛「バカバカバカバカ!」

海未「わかりました。改めて言い直します」

凛「え」

海未「よく頑張りましたね、凛」

凛「な、何をいきなり……」

海未「これから私はあなたを褒めます」

凛「う」

海未「今まで褒めてあげられなかったこと、すべてを褒めます」

海未「だから凛。今は怒らないでください」

海未「私はちゃんと、あなたを見ていますから」

凛「……うん」

海未「と言っても、あまり人を褒めたことがないのでですね……」

凛「うん」

海未「どうすれば凛は、褒められたと思ってくれますか?」

凛「率直だにゃ」

海未「すみません……あ、頭を撫でたりしてもいいですか?」

凛「うん、いいよ」

海未「では失礼して……」

海未「ん、ちゃんと髪を整えているんですね。えらいです」

凛「え? 普通だよ?」

海未「いえ、寝ぐせの1つもないなんて……私はたまにそのままだったりするので」

凛「ええっ、海未ちゃん寝ぐせつくの?」

海未「はい。もちろん普通に」

凛「でも海未ちゃんの寝ぐせなんて見たことないにゃ」

海未「穂乃果とことりが先に気付きますからね」

凛「そうなんだ……知らなかった」

海未「ましてや遅刻しそうなときなのに、ちゃんと身だしなみを整えて来るなんて……」

海未「私だったら2人に手伝ってもらうかもしれません」

凛「へぇ……意外だにゃ」

海未「よく言われます。私も普通の人間なんですから、たまにはそういう時もあるんです」

凛「ふーん……」

海未「まあそんな風に遅刻したことは、今まで1度だってありませんでしたけどね」

凛「あれ? でもさっき遅刻したことあるって……」

海未「それは確か……小学生くらいの時ですね。それっきりです」

凛「す、すごい……凛は今でも遅刻しちゃうのに」

凛「でも海未ちゃんが遅刻するなんて、何かあったの?」

海未「ええ、あの時は穂乃果とことりが風邪で休みだったので……」

凛「?」

海未「学校へ行く途中にですね。、その……猫を見つけてしまって」

凛「ねこ?」

海未「はい、ものすごくかわいらしい……首輪をつけた猫がいたんです」

海未「首輪の鈴を、ちりんちりんと鳴らして私の方に来たんですよ」

凛「うんうん」

海未「それでつい……魅入ってしまって」

凛「海未ちゃんもそういうのに弱いんだ」

海未「はい。遅刻していって先生に怒られてしまいましたが」

凛「お父さんとお母さんには? 怒られちゃった?」

海未「いいえ。父も母も怒りませんでした」

海未「悪い人にさらわれたりしなくてよかった、と……」

凛「……ふふ」

海未「どうしました?」

凛「海未ちゃん、同じこと言ってる」

海未「?」

凛「凛がダンスで失敗しても、ひどいケガをしなくてよかった、って」

海未「言われてみればそうですね……」

海未「……はっ! もしかすると、私がされたように凛を褒めれば……」

凛「?」

海未「でもそれではただの模倣……凛に対して失礼です」

凛「失礼?」

海未「……凛、あなたは何をされているときが一番幸せですか?」

凛「凛の幸せ?」

海未「はい」

凛「うーん、好きなものがいっぱいあって決められないにゃ……」

海未「その中の1つで構いません」

凛「そうだなぁ……あ!」

海未「思いつきましたか?」

凛「うん。凛はね、誰かをぎゅーっと抱きしめてるときが幸せかな」

海未「では私は凛をぎゅーっと抱きしめますね」

凛「うんうん……え?」

海未「ぎゅーっ」

凛「わわ、う、海未ちゃん!?」

海未「最初のころと比べて、凛はすごく成長しましたね」

凛「えっ、ちょ」

海未「教えればそれだけ成長する……私はそんな凛がうらやましいですよ」

凛「……」

海未「これからももっと頑張ってください。私はそれをちゃんと見ていますから」

海未「……どう、でしょうか。きちんと褒められたでしょうか」

凛「……」

海未「……凛?」

凛「もう片方からも鼻血出てきた……海未ちゃんのせいにゃ」

海未「ええっ!?」


ここまで
まだ続くよ




凛「ただいまー」

海未「戻りました」

真姫「凛、鼻血止まった?」

凛「う、うん」

穂乃果「……ははーん」

ことり「ふーん……」

海未「な、何ですか2人とも」

穂乃果「なるほどなるほど」

ことり「よかったね、凛ちゃん」

凛「えっ」

希「?」

絵里「何かあったの?」

海未「べ、別に何もありませんでしたよっ!?」

にこ「あやしいわね……」

海未「ほら、練習の続きを始めますよ!」




海未「凛、今ズレた!」

凛「はいっ!」



海未「凛、あともう少し右!」

凛「はいっ!」





凛「はー、疲れたにゃー……」

海未「今日はここまでにしましょうか」

真姫「海未」

海未「はい、どうしましたか?」

真姫「ちょっと凛に厳しすぎない?」

希「確かに……凛ちゃんばっかり注意されてたなぁ」

絵里「うーん、特に凛はダンスが下手ってわけじゃないわよね?」

にこ「そうね。でもどうしたの? 最近はずっとこんな感じがするけど……」

海未「それは――――――――」

凛「凛がお願いしたの」

真姫「え、凛が?」

凛「ふふふ、もっと上手になりたいからね!」

凛「それで海未ちゃんに褒めて……げふんげふん」

花陽「……あ、そういうことかぁ」

穂乃果「そういうことだね」

ことり「凛ちゃん偉いね。よしよし」

凛「えへへ」

にこ「何、そういうことだったのね。なら私たちも負けないように頑張らなくちゃ」

絵里「特訓とかしないと!」

希「え? 特訓?」

絵里「ええ、海未は凛のコーチみたいだから……希! コーチお願い!」

希「えっ!?」

絵里「だって希、ダンス上手だから」

希「いやいや、それならえりちの方が……」

にこ「あんたダンス得意とか言ってたじゃない。実際上手いし」

希「でも人に教えたことなんてないよ?」

絵里「そこは気合で」

にこ「丸投げじゃないの」

ことり「楽しそうだね」

穂乃果「うん。じゃあ穂乃果たちは4人で特訓だね」

真姫「別にいいけど……」

花陽「頑張ろうねっ!」

海未「……なんだかよくわからない展開になりましたね」

凛「でも海未ちゃん」

海未「はい?」



凛「2人っきりになれる時間、増えたね」




海未「……ふふ、そうですね。明日からは地獄の特訓になりますよ」

凛「望むところにゃ!」

絵里「でもどうするの? 特訓の成果とか見せ合ったりする?」

穂乃果「それ、楽しそう!」

希「そうやね。3日後とかに成果を発表し合おっか」

にこ「ますます負けられないわね……」

花陽「あ、そうだ。今日はこのまま解散して、各グループごとに作戦会議をするって言うのはどう?」

凛「作戦会議?」

ことり「たとえば誰かのお家に集まる、とか」

凛「!」

海未「!」

海未「穂乃果、ことり、花陽……あなたたち気付いて……」

穂乃果「おっと、野暮なことは言っちゃいけないよ!」

ことり「なんたって幼馴染だからね」

花陽「なんでもお見通しだよぉ」

凛「あはは……さすがにゃ」

穂乃果「うん、だから……人目を気にせずイチャイチャしてね!」

海未「!?」

花陽「!?」

凛「……あれ?」

ことり「海未ちゃん、応援してるよ」

海未「いえ、あの、少し勘違いが……」

穂乃果「穂乃果にはわかったよ……さっきドアを開けて出てきた瞬間のあの海未ちゃんの目……」

ことり「あれは確実に……ね」

海未「ね、と言われましても」

穂乃果「凛ちゃんも頼んだよ」

凛「え? う、うん」

花陽「ほ、穂乃果ちゃん、ことりちゃん」

穂乃果「最近ずっと凛ちゃんのことを目で追ってるなーとは思ってたけど……ふふふ、やっぱり読み通りだね」

ことり「うんっ!」

真姫「何の話してるの?」

海未「だからそれは誤解で」

穂乃果「うんうん。大丈夫だよ」

ことり「ちゃんと内緒にしておくから」

海未「……そうですね、わかりました。そういうことにしておいてください」

花陽「う、海未ちゃん!?」

海未「楽しそうなので、このままでもいいかと……」

ことり「うふふ」

穂乃果「あはは」

真姫「だから、何の話してるのよ」

凛「凛もよくわかんない」


ここまで
もう少しで終わるかも


レズ展開はない


こんなに放置しててすまん
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凛「海未ちゃんのお家、2回目だね」

海未「そうなりますね。今日は予定は入りませんよ」

凛「気にしなくていいのに」

海未「いえいえ。気にしないわけにはいきません」

海未「早速練習を始めますか?」

凛「うん。他のみんなに負けたくないもんね」

海未「そうですね。ではついてきてください」

凛「あ、ここが台所?」

海未「そうですね。最近は使っているとは言えませんが……」

凛「え? 料理しないの?」

海未「いえ、お湯を沸かしたりはしますよ」

凛「どういうこと?」

海未「最近は父も母も家を空けることが多くてですね……」

凛「海未ちゃん、もしかして……」

海未「……」

凛「なんで目、そらすの?」

海未「な、なんでもありませんよ」

凛「海未ちゃん?」

海未「う……」

海未「……そうですよ。最近はカップラーメンやレトルト食品を食べてばかりいます……みんなには内緒ですよ?」

凛「いいけど……意外。海未ちゃんはそういうところしっかりしてるイメージがあったから」

海未「私だって楽をしたいことだってあります」

凛「そっか……」

海未「幻滅しましたか?」

凛「ううん、なんとなく海未ちゃんが身近な存在だと思って……」

海未「身近?」

凛「うん。海未ちゃんってもっとこう……何でもできて、万能な感じがしてたから」

海未「私だって人間ですよ?」

凛「でも、もっと遠い感じがしてたの」

海未「そうですか……」

凛「うん」

海未「ではこうしましょう。練習が終わったら、一緒に晩御飯を食べて行ってもらえませんか?」

凛「ええっ!? 夜まで練習するの!?」

海未「あ、いえ、それは言葉のあやと言うか……」

凛「いや、でも海未ちゃん褒めてくれるよね……うん」

海未「凛、少し話を」

凛「よーし! そうと決まれば頑張るにゃー!」

海未「り、凛! 待ってください!」





凛「……も、もう無理……」

海未「まさか本当にやりきるとは……」

凛「海未ちゃんなんで……そんなに疲れてないの……?」

海未「日ごろから鍛えていますからね。それなりには」

凛「そっか……あ」

海未「どうしました?」

凛「明日学校にゃ……」

海未「……大丈夫なんですか?」

凛「わかんない」

海未「困りましたね」

凛「うん」

海未「とりあえずシャワーを浴びてきてください。着替えはありますか?」

凛「うん。学校に着て行ったのがあるよ」

海未「では私はご飯を用意してきますね」

凛「はーい」

凛「シャワーってどこにあるの?」

海未「まっすぐ進んで行けば見つかりますよ」

凛「わかったにゃー」

海未「シャンプーやトリートメントは置いてある分を使ってくれて結構です」

凛「了解!」





凛「はー……やっぱり海未ちゃんのお家って広いなぁ」

凛「……にゃにゃ?」

凛「これはまさか……海未ちゃんのお部屋?」

凛「……」

凛「おじゃましまーす」

凛「電気電気……これかな?」

凛「あ、ついた」

凛「……」

凛「……普通にゃ」

凛「あれ、パジャマが置いてある……なんで畳んであるんだろう」

凛「今日着る分?」

凛「んん? でも3つも置いてあるし……」

凛「……畳んで片付けてない?」

凛「なるほど、海未ちゃんは意外とめんどくさがり屋さんなんだね」

凛「意外な一面にゃー」

凛「おじゃましましたー」





凛「ただいまー」

海未「場所、わかったんですね」

凛「うん。あ、ご飯?」

海未「ええ、ちゃんと作っておきましたよ」

凛「……レトルト?」

海未「ち、違いますよ!」

凛「いや、あまりにも綺麗だったから……」

海未「今日は凛が来てくれたので、いつもより手間をかけて作ったんですよ」

凛「そうなんだ……ありがとう海未ちゃん」

海未「いえ、久しぶりでしたので、なんだか緊張してしまいました」

凛「そんなに料理してなかったの?」

海未「……」

凛「海未ちゃーん?」

海未「あ、あの、穂乃果やことりの家に呼ばれることが多くてですね、その」

凛「そっか」

海未「はい、そういうことです」

凛「野菜多くない?」

海未「このくらい普通ですよ。野菜はちゃんと食べないと……」

凛「カップラーメン」

海未「うぐっ」




凛「ごちそうさまでしたー!」

海未「お粗末様でした」

凛「ごはんおいしかったにゃ……」

海未「お鍋で炊きましたからね。時間はかかりますが」

凛「炊飯器使わないの?」

海未「ええ、無水鍋がありますから」

凛「無水鍋……あ、かよちんもお小遣い溜めて買いたいとか言ってた気がする」

海未「こ、高校生の口から出る台詞とは考えづらいですね」

凛「海未ちゃんはお小遣い溜まったら何買うの?」

海未「弓道で使うユガケを買います」

凛「……お湯かけるの?」

海未「簡単に言うと、矢を引くときの……」

凛「あ、手袋みたいなやつ?」

海未「まあ、そんな感じですね」

凛「それって部費で買えないの?」

海未「ああ、私はもともと自分のものを持っていたので」

凛「なるほどー。新しくするんだ」

海未「ええ」

凛「いくらくらいするの?」

海未「オーダーメイドのものでしたら2万円は超えますね」

凛「」

凛「ええっ!? そ、それじゃお小遣い全部飛んじゃうよ!?」

海未「そうなります」

凛「……お高いね」

海未「大切なものですからね」

凛「むむむ……恐ろしい世界を見たにゃ」

海未「ふふ、そうですか」

凛「……ん? 海未ちゃん」

海未「はい、どうしました?」

凛「海未ちゃんっていつ休んでるの?」

凛「練習して、弓道部に行って、お稽古して……」

凛「休みの日もダンスとか発声とかの練習あるでしょ?」

海未「……休み、ですか。そういえば、最後にまったく自由な時間をとれたのはいつだったでしょう」

凛「えっ」

海未「μ'sの活動を始めてからはほとんどなかった……となると、高校1年生の頃?」

海未「いや、あの時はほぼ毎週、穂乃果とことりの宿題を見たりしていましたね」

海未「では中学……いえ、中学3年生のころは受験で忙しかったですし……」

海未「中学2年生の頃……ですかね」

凛「」

凛「と、遠すぎるにゃ!」

海未「そうですか?」

凛「そうだよ! な、なんでそんなに過去になるの?」

海未「時間がなかったからですね」

凛「……海未ちゃん、ちょっとこっちに来て」

海未「?」





凛「海未ちゃんは、がんばりすぎにゃ」



海未「え、ちょっと凛、どうして頭を撫でるんですか」

凛「凛なんか褒めてる場合じゃないよ。海未ちゃん頑張りすぎ」

海未「頑張り過ぎとは……」

凛「海未ちゃん、ちゃんと休まなきゃ」

海未「睡眠はしっかりとっていますよ」

凛「食事は?」

海未「……ほどほどです」

凛「えらいよ、海未ちゃんは。えらすぎるにゃ」

海未「私はできることをやっているだけですよ?」

凛「普通の人はできないよ」

海未「?」

凛「今日はもう休んでね」

海未「ですが、今日は凛も頑張ったでしょう? まだちゃんと褒めてあげられていません」

凛「凛はいいの。海未ちゃんが褒められるべきなの」

海未「……」

凛「海未ちゃん?」

海未「私、こんな風に誰かに褒められたことってあまりないんですね。今気づきました」

凛「できて当たり前に思われてた?」

海未「おそらくは」

凛「凛もそう思ってた……でもやっぱり、海未ちゃんは普通の人間なんだよね」

海未「アンドロイドだとでも?」

凛「レトルト食品アンドロイドにゃ」

海未「わ、私だってちゃんと料理は……」

凛「ふふ、わかってるよ」

海未「……凛、私を子ども扱いしてませんか?」

凛「そうかも」

海未「むむむ、なぜですか」

凛「海未ちゃんが意外と身近だったから、かな?」





希「うん、全員そろったみたいやね」

にこ「海未がまだ来てないわよ?」

穂乃果「海未ちゃんには内緒なんだよね」

凛「うん」

にこ「?」

絵里「何? 特訓の成果を披露しあうとか?」

凛「違うよ。今日集まってもらったのは――――――――」




凛「凛に、料理を教えてほしいの」

真姫「料理? またどうしてそんなこと」

凛「真姫ちゃんは味見係ね」

真姫「ちょっと、私が料理できないとでも思ってるの?」

凛「凛だってパスタくらい作れるにゃ!」

真姫「……私の出番はなさそうね」

ことり「真姫ちゃん素敵な潔さだね……」

希「ふむふむ、なるほど……料理を作ってあげたい人がいるってことやん」

凛「まあ、そういうことかな」

穂乃果「よーし、そうと決まればしっかり教えないとね!」

ことり「うん。ありがとう凛ちゃん」

凛「えへへ、褒められるようなことしてないにゃ。海未ちゃんは強がりだから、2人を頼ってくれないんだよね」

穂乃果「ほほう、もうそこまで理解してるとは……」

ことり「何か聞いたの?」

凛「ううん、何も」

花陽「凛ちゃんうれしそうだね」

凛「凛にできることって、これくらいしかないもん」

絵里「……」

にこ「どうしたのよ絵里、真面目な顔して。賢そうに見えるからやめなさいよ」

絵里「いや、誰に作ってあげるのかと思って……」

希「にこっちもひどいけど、えりちはもっとひどいなぁ」

凛「じゃあみんな、よろしくお願いします!」

花陽「うん、頑張るね」

にこ「任せなさい」

絵里「ロシア料理なら」

希「ウチが教えられる範囲で」

ことり「それならお菓子も……」

穂乃果「ならおまんじゅうも?」

真姫「ちょっと、迷走してるわよ」

凛「とりあえずなんでも教えて!」

真姫「ええっ、いいの?」

凛「うん。それより真姫ちゃんもいいの?」

真姫「え?」

凛「味見役だからたくさん食べないと……」

真姫「えっ」










凛「よし、今日の晩ご飯の準備おしまいっと」

海未「ただいま」

凛「あ、おかえり海未ちゃん」

凛「……って、ここ凛の家だよ!」

海未「ああ、すみません。いつも戻ってきているので、つい」

凛「つい、じゃない! 海未ちゃんは実家に帰るにゃ!」

海未「大学からだとこちらの方が近いので……」

凛「もー、大学生ってこんな風になるの?」

海未「いえ。凛はしっかりしているじゃないですか」

凛「むー……それに、急に来てもご飯の用意できてなかったらどうするの?」

海未「凛はそう言いながら、作って待っていてくれますから」

凛「ぐぬぬ」

海未「今日は一段と疲れました……」

凛「勉強が?」

海未「はい」

凛「海未ちゃん頑張ってるもんね。えらいえらい」

海未「ふふ、幸せです」

凛「じゃあご飯にしよっか」

海未「はい」

凛「海未ちゃん、お箸とって」

海未「これですよね」

凛「それそれ」

海未「コップはありますか?」

凛「うん」

凛「……高校生の頃って、凛と海未ちゃんの立場、逆だったよね?」

海未「そうでしたね。凛が何でもできるようになっていくのには驚きました」

凛「海未ちゃんもなんでもできるよ?」

海未「凛は私よりも何でもできます」

凛「そうかなぁ?」

海未「はい。そうですよ」

海未「今日のご飯もおいしそうですね」

凛「腕によりをかけて作ったから」

海未「私がダメ人間になってしまいますね……」

凛「でも海未ちゃんは、もっと人に頼るべきなんだよ」

海未「そう言われると気が楽です。ここに入り浸りたくなります」

凛「ダメ人間だ!」

海未「明日はバイトですね……休みが欲しいです」

凛「休みが出来たらどうするの?」

海未「いつも頑張っている凛を褒めます。そして私が料理を作ってあげます」

凛「それ、海未ちゃんの休みじゃなくて私の休みだよね?」

海未「凛が褒めてくれたら疲れなんて吹き飛びますよ」

凛「えらいえらい」

海未「ふふ、もっとお願いします」

凛「じゃあご飯食べちゃおうか」

海未「はい」

凛「いただきます」

海未「いただきます」

凛「どうかな? ちゃんとできてる?」

海未「ええ、おいしいです。それに、お米はいつもよりおいしい気がします」

凛「ふっふっふ……これを買ったからね!」

海未「あ、無水鍋ですか」

凛「炊き方はかよちんに教えてもらったよ」

海未「味見役はまた真姫ですか?」

凛「うん。いくら食べてもスタイル変わらないからすごいよね」

海未「2人は元気にしていますか?」

凛「うん、元気だよ。穂乃果ちゃんたちは? 最近会ってないけど、まだ実家にいるんでしょ?」

海未「ええ、最近はあまり時間がとれませんが、2人とはよく遊んでいます」

凛「凛の家でね」

海未「はい」


ちょっと用事


飛んだ部分はおまけでやる


おまたせ

凛「海未ちゃん、今度みんなでどこかに遊びに行こうよ」

海未「それはいいですね。楽しそうです」

凛「お金は大丈夫?」

海未「ええ、ちゃんと貯金をしていますから」

凛「ほんとに? 無駄遣いしてない?」

海未「はい、もちろんです」

凛「じゃあ海未ちゃん、その鞄から出てる袋は何?」

海未「はっ……しまった」

海未「こ、これはですね……その」

凛「何? また変なの買ってきたの?」

海未「変なのとはなんですか」

凛「それ、この前マジックハンド買ってきた人が言う台詞?」

海未「あ、あれはつい物珍しくて……」

凛「まあ海未ちゃんには珍しいかもね」

海未「ほっ……」

凛「でもあれで凛のスカートをめくったのは許さないにゃ」

海未「あれはつい出来心で……つまめるものと言ったらそのくらいだったので」

海未「それに、つまんだだけでめくってはいませんよ?」

凛「ふーんだ。もうごはん作ってあげない」

海未「……私に死ねと言うのですか」

凛「いやいや大げさすぎるって」

凛「で、結局それは何なの?」

海未「こうなったら仕方がありません。白状します」

海未「これはですね……」

凛「うん」

海未「クリスマスツリー栽培セットです!」

凛「あ、そっか。もうすぐクリスマスだね」

海未「ええっ、もっと反応があっても……」

凛「聞いたことあるもん」

海未「そ、そんな……絶対喜んでくれると思ったんですが」

凛「え? うれしいよ?」

海未「そうですか! それはよかったです」

海未「是非育てて、毎日木の上を飛び越えて行ってください」

凛「凛は忍者じゃないよ」

凛「……でもクリスマスかぁ。去年みたいに絵里ちゃんたちも呼んでパーティーしたいね」

海未「凛は料理担当ですね」

凛「毎年やってるからもう慣れちゃった」

海未「学生の頃の凛は、もっとやんちゃで活発でしたよね」

凛「そうだねー。今でも運動は得意だよ」

凛「ていうか今でも学生だよ」

海未「でも料理や裁縫は苦手だった……のに」

凛「今では自炊できます」

海未「……私が褒めるような立場ではなくなってしまいましたね」

凛「……そうだね」

凛「でもね、やっぱり海未ちゃんに褒められるとうれしいよ」

海未「そうですか?」

凛「うん。海未ちゃんに褒められてると昔を思い出すもん」

凛「それに、海未ちゃんがいなかったら凛はこんな風になれてなかったよ」

海未「凛……」

海未「……眠くなってきました」

凛「台無しだにゃ!」

海未「おいしかったです、ごちそうさまでした」

凛「あ、もう食べてる」

海未「凛、お布団を……」

凛「食べてからすぐ寝ると太るよー?」

海未「その時は凛も一緒にダイエットです」

凛「不本意すぎるよ」

海未「今日は疲れました。早く寝ましょう」

凛「なんで海未ちゃん中心なの?」

海未「家でしか自由にできないんです……すみません」

凛「ここは凛の家だよ。海未ちゃんのせいでもうほとんど2人暮らしだよ」

海未「ここは居心地がいいですからね」

海未「……迷惑ですか?」

凛「迷惑だったらすぐに追い出してるよ」

海未「……ぐー」

凛「寝てるし」

海未「今のは狸寝入りです。騙されましたか?」

凛「バレバレにゃ」

凛「もう……なんだか妹ができたみたいな気分だよ」

海未「私も、面倒見のいい姉ができた気分です」

凛「前は立場、逆だったのにね」

海未「ええ」

凛「海未ちゃん」

海未「何ですか?」

凛「……今日もお疲れ様」

海未「凛も、今日1日お疲れ様です」

凛「……えへへ」

海未「ぎゅーっ」

凛「ふふ、ありがとう」

海未「……」

凛「……海未ちゃん?」

海未「すぅ……」

凛「あ、本当に寝てる」

凛「もー、本当に世話が焼ける……」

海未「りんはえらいですよ。えらいえらい……」

凛「……海未ちゃん、寝言でも凛を褒めてるの?」

海未「……」

海未「ほめてのびるこ……ですから」

凛「あはは、そうかもね」

海未「……はっ!」

凛「わ、海未ちゃん起きたの?」

海未「……今、恐ろしい夢を見ていました」

凛「え?」




海未「私が凛に養われている夢でした……」



凛「海未ちゃん……」

海未「え? どうしました?」

凛「それ、現状とあんまり変わらないよ……」

海未「ええっ!?」

海未「……で、では明日から私が食事を用意します!」

凛「それでいいけど……海未ちゃん朝起きられる?」

海未「ええ、起きられますとも」

凛「お弁当の分まで作れる?」

海未「できますよ」

凛「ちゃんとお箸の用意忘れないでね?」

海未「もちろんです」

凛「なら、任せるね」

海未「はい!」

凛「うーん……」

海未「どうしました?」

凛「凛って、海未ちゃんに甘すぎる気がしてきた……」

海未「えっ」




     おわり


おまけはまた明日


明日っていまさ(遅れてごめんなさい)



おまけ

凛ちゃん奮闘記

希「じゃあまずはウチから教えるで」

凛「お願いします!」

希「おお、気合入ってるなぁ」

真姫「別に希の家に来る必要はなかったんじゃない? 凛の家でも……」

希「まあまあ、真姫ちゃんは心の準備をしててな」

真姫「えっ」

凛「味見ね」

真姫「……毒物は無理よ」

希「まず料理をするにあたって大切なことは……」

凛「大切なことは?」

希「分量を守ること」

凛「めもめも」

真姫「当たり前じゃない」

凛「えっ」

希「えっ」

真姫「え? あ、当たり前……じゃないの?」

希「ちがうちがう。凛ちゃんが驚いてたから、ウチはそれに驚いたんよ」

凛「えっ……ひとつかみとか言わない?」

真姫「それ、ひとつまみじゃないの」

凛「……なるほど」

希「凛ちゃんそれ誰に食べさせたん!?」

凛「もう覚えたから大丈夫だよ」

希「お、恐ろしい過去が……」

凛「それで希ちゃん、他に大切なことは?」

希「ああ、えっと……そう! 愛情!」

凛「愛情?」

真姫「愛情ねぇ」

希「思いを込めて作ることで、おいしさが増すんやで!」

真姫「よく聞くわよね、そういうの」

希「あらら? 真姫ちゃんはもう試してみたん?」

真姫「……おいしくならなかったわよっ」

希「ごめんなさい」

凛「ちょっと待って」

希「ん?」

凛「希ちゃん、1人暮らし……だよね?」

希「うん」

凛「思いを込めるって……誰に?」

希「え、それはただの例えで……」

凛「……まさか見えない同居人がいるの?」

真姫「ちょっ」

凛「スピリチュアルってそういう……」

希「ち、ちがうちがう! そんな人いるわけないやん!」

真姫「そうよ凛。そんなことがあるなんてたまったもんじゃ――――――――」

真姫「……え?」

凛「……あれ? 今何か変な音しなかった?」

希「え、ええっ!?」

凛「かたん、って音……」

真姫「嘘でしょ……まさか本当に」

希「いやあああああ!?」

真姫「ちょ、希!?」

希「こわい……ウチそういうのむりぃぃぃぃ!」







にこ「で、料理できなかったってわけね」

絵里「大丈夫だった?」

真姫「ええ、ただハンガーが床に落ちた音だったわ」

凛「風で落ちちゃったみたいで」

希「お恥ずかしい限りです……」

凛「でも、料理の代わりに希ちゃんの慰め方を覚えたにゃ」

希「凛ちゃん優しかったもんなぁ」

真姫「ええ。確かにね」

絵里「何それ聞きたい」

にこ「あんた絶対忘れるわよ」

絵里「ありえる」

にこ「じゃあ、今日料理教えるのは私たちの番ね」

希「あれ? 2人なん?」

にこ「絵里は結構本格的なロシア料理を教えるつもりだったみたいでね」

絵里「凛が初心者ってこと忘れてたのよ。だからにこのサポートをするの」

凛「できたものがこちらにありますって言う役だね!」

真姫「いらないでしょそんなの」

にこ「絵里、今日は家、行っていいんでしょ?」

絵里「ええ。今日は開けてあるからね」

希「あー、ウチも行きたかったなぁ」

絵里「今日は用事?」

希「うん」

にこ「お化けには気を付けなさいよ」

希「凛ちゃん……にこっちがいじわるする」

凛「真姫ちゃん、やっておしまい!」

真姫「そんな機能はないわよ」





絵里「エリーチカのドキドキクイズ!」

絵里「さて、今日作る料理は何でしょうかー?」

にこ「それでゆで卵の作り方だけど」

絵里「にこのいじわる」

にこ「はいはい」

真姫「ま、早くて困ることはないわね」

凛「ゆで卵くらい楽勝にゃ!」

絵里「お、言うわね凛」

絵里「でも甘く見ちゃダメよ。すべてのゆで卵はローマに通ずと言うくらいなんだから」

凛「す、すごい!」

にこ「あんたの頭はどこに通じてんのよ」

真姫「作れるならやってみたら?」

凛「よーし、頑張る!」

凛「まずは卵を割ります」

にこ「ストーップ!」

絵里「わ、綺麗に割れたわね」

凛「えへへ」

真姫「ちょっと凛! 何してるのよ!」

凛「え? なんで?」

真姫「さっき何作るって言ってた?」

凛「それはもちろん、ゆで……」

凛「ゆで……」

凛「……」

凛「ああっ!?」

絵里「カラが1つも入ってないわね……合格!」

にこ「料理としては失格よ」

絵里「あ、そっか。ゆで卵作るんだったわよね」

絵里「……ああ!?」

真姫「絵里、何でそんなにテンポ遅れてるの」

にこ「いつものことよ」

凛「ど、どうしようにこちゃん、真姫ちゃん」

絵里「あれー? 私はー?」

にこ「まあ1つだけ割っちゃってもしょうがないし、卵焼きにでもする?」

真姫「そうね」

絵里「でもちょっと難しくない?」

にこ「それを教えるんでしょ」

絵里「なぁるほど」

凛「卵焼きってどうやって作るんだっけ」

絵里「ひゅってしてくるってして流して」

にこ「流して、しか工程を説明できてないわよ」

真姫「卵焼きくらいなら私、作れるわよ」

絵里「あ、そうなの?」

にこ「ならお手本でやってみせてあげて」

真姫「ふふん、任せなさい」

凛「真姫ちゃんすごいにゃ!」

真姫「余裕よ余裕。見てなさい」








穂乃果「……で、真姫ちゃんが全部作っちゃったんだ」

ことり「あはは……」

真姫「調子に乗ってたわ……」

絵里「でも真姫も上手に作れてたじゃない」

にこ「そうね、意外だったわ」

凛「うんうん」

凛「それに凛、料理の代わりに褒め方を覚えたよ」

ことり「褒め方?」

凛「うん」

絵里「何も得ないまま終わるよりマシよね」

にこ「まあそうね」

穂乃果「そっか。なら今日は穂乃果たちの番だね」

絵里「穂乃果……たち? ことりも一緒なの?」

ことり「うんっ。お菓子作りだし、一緒にやっちゃおうかなーって」

真姫「今度はお菓子……」

にこ「……できるのかしら」

絵里「り、凛は卵割るの上手よ!」

凛「得意だよ!」

穂乃果「なるほど。でも料理のレパートリーが生卵だけっていうのも……」

絵里「ごめん、それ料理じゃないわね」

穂乃果「まあ今日が終われば、きっと凛ちゃんはお菓子を作れるようになるよ」

ことり「あまーいお菓子が、ねっ」

凛「楽しみにゃー」

真姫「凛が作るのよ?」

凛「そうだった」

にこ「頑張りなさいよ」

凛「うんっ!」


ちょっと用事
マッテテー


更新は12時過ぎる


間違えた
自分のスレに誤爆した




ことり「というわけで、卵割が得意な凛ちゃんにはプリンを作ってもらおうと思います!」

凛「プリン!」

真姫「食べられるの作ってよね」

穂乃果「そういえば真姫ちゃんは何も味見してないんだっけ」

真姫「そうよ」

凛「プリンって難しそうだけど……凛にもできる?」

ことり「うん、できるよっ」

穂乃果「簡単なプリンの作り方っていうのもあるからね」

凛「……穂乃果ちゃんは大丈夫なの?」

穂乃果「んー?」

凛「和菓子に対する反逆みたいなのが……」

穂乃果「そこは大丈夫だよ! ……たぶん」

真姫「普通は大丈夫よ」

ことり「まずは私がお手本を見せるね」

穂乃果「穂乃果は見てるね」

真姫「穂乃果は何しに来たのよ」

穂乃果「……わかんない」

ことり「ちゃんとメモの用意はできた?」

凛「できました!」

ことり「それじゃ、始めるよ」





ことり「と、まあこんな感じで冷やしてできあがり!」

凛「か、簡単にゃ!」

穂乃果「え? もうできたの?」

真姫「穂乃果、せめて起きてなさいよ」

穂乃果「えへへ、うっかり」

ことり「あ、食べてみる?」

穂乃果「食べる食べる!」

真姫「いただくわ」

凛「いただきまーす」

真姫「……あ、おいしい」

穂乃果「この口の中でとろけるような甘み……さっすがことりちゃんだよ!」

凛「あの手軽さでこのおいしさ……ことりちゃんはとんでもないものを生み出してしまった」

ことり「私はレシピを見ただけだよー」

凛「これなら凛でも作れそう!」

真姫「その意気よ」

ことり「私もできる限りサポートするからね」

穂乃果「穂乃果は真姫ちゃんをサポートするね」

真姫「ただ食べるだけじゃない」

穂乃果「ばれたかー」

穂乃果「でもこの味、どこかで食べたことあるような……」

凛「え? 誰かに作ってもらったの?」

ことり「……あ、私が作ったんだよね?」

穂乃果「あ、そうそう! 簡単に作れるプリンがあるって……」

穂乃果「……」

ことり「……」

真姫「どうしたのよ」

ことり「そ、そうだった!」

穂乃果「……やっちゃったね」

凛「え? 何? どうしたの?」

ことり「このプリン、簡単に作れるからってついつい作りすぎちゃうんだよね……」

穂乃果「それでこの前、海未ちゃんに作りすぎたのを全部あげちゃって……」

真姫「……って、それじゃまさか」

穂乃果「うん。海未ちゃんは……」

ことり「しばらくはプリンは控えたいって言ってた……」

凛「」

真姫「……はぁ」

凛「あんまりにゃあああああ!」

穂乃果「で、でも待って。海未ちゃんに関する情報ならたくさん教えられるよ!」

ことり「うん! 海未ちゃんのことなら何でも知ってる!」

凛「あ、なら1つだけ聞いていい?」

ことり「何かな?」

凛「海未ちゃんの好きなお菓子は?」

穂乃果「穂むらのおまんじゅうだよ!」

凛「作れないにゃ!」

真姫「……情報は食べられないわね」









花陽「そ、それで私の番なんだね……」

穂乃果「ダメでした……」

ことり「花陽ちゃんが最後の希望だよ!」

凛「でも海未ちゃんのことは色々わかったよ」

真姫「料理の腕は一向に進展しないけど」

凛「うっ」

花陽「ふふ。じゃあ私は簡単なものを教えるよ」

真姫「食べられるものでお願いね」

花陽「うんっ。誰にでも作れるけど、実はとっても難しい……」

花陽「おにぎりの作り方を、ね」

穂乃果「花陽ちゃんの目つきが変わった……!」

ことり「つ、強そう!」

凛「かよちん……いや、かよちん師匠! お願いします!」

真姫「……何この空気」






凛「海未ちゃん、お腹すかない?」

海未「え? 凛? どうして弓道場まで?」

凛「差し入れを持ってきたの」

海未「ありがとうございます」

凛「たべてたべて」

海未「食べ物なんですか?」

凛「うんうん」

海未「あ、おにぎりですね」

凛「感想聞かせて」

海未「はい、わかりました」

凛「……」

海未「……ん、少し塩からいですね」

凛「塩、入れすぎちゃったかな……ごめんね」

海未「凛が作ったんですか?」

凛「うん」

海未「そうでしたか……文句を言ってすみません」

凛「ううん、次からは注意するから」

海未「ふふ、そうですか。ですが形はとても綺麗ですよ」

凛「あ、それはかよちんにも褒められたよ。真姫ちゃんもなかなかの出来だって言ってくれたし」

海未「ええ、文句のつけようがありません」

凛「えへへ、よかった……」

凛「ん? あの的、矢がいっぱい刺さってるけど……あれ全部海未ちゃんの?」

海未「ええ、今日は調子がよくてですね」

凛「海未ちゃん、しゃがんで」

海未「え? なんですか?」

凛「いいからいいから」

海未「はい、しゃがみましたよ」

凛「海未ちゃん」

海未「はい、何ですか?」

凛「よく頑張りました。えらいえらい」

海未「……もしかして、私の頭を撫でるために?」

凛「そうだよ。こうしたらちゃんと届くから」

海未「……」

凛「あ、それと海未ちゃん、ほっぺにごはん粒ついてるよ。とってあげる」

海未「あ、はい。ありがとうございます……」

凛「どうしたの? 何だかうれしそうだけど……」

海未「いえ、なんでもないですよ」

海未「……また来てくれますか?」

凛「うん。迷惑じゃなければ」

海未「ではまた来てください」

凛「わかった! 練習頑張ってね!」

海未「はい!」



海未「……褒めてもらえるのって、いいものですね。ふふ」





      おわり


ここまで
あとは大学生うみりんのおまけをちょろっとやって完結にする



おまけ

クリスマスイヴ前日

海未「……おはようございます」

凛「おはよう。よく寝てたね」

海未「すみません。眠れなくて」

凛「そうなの? あ、コーヒー飲んだせいかな?」

海未「はい、おそらく」

凛「カフェインってすごいね」

海未「ええ。侮れません」

凛「コーヒー飲む?」

海未「はい」

凛「お砂糖2つとミルクでいいよね?」

海未「はい。いつものでお願いします」

凛「了解!」

凛「……あれ? 何で海未ちゃんいるんだっけ?」

海未「ああ、睡魔に負けそうでしたので……家に帰るよりこちらの方が近くて」

凛「今思えば凛も、何でなんの疑問も抱かずにお布団敷いてあげたのかわからないにゃ」

海未「せめてシャワーは浴びたかったので眠気覚ましに、と思いましたが……やっぱりコーヒーは強いですね」

凛「ふふ、何時まで起きてたの?」

海未「1時過ぎです。夜更かしをしてしまいました」

凛「そっか。はい、コーヒー」

海未「ありがとうございます」

凛「そういえば海未ちゃんのパジャマ、普通に凛の家に置いてあるよね」

海未「しょっちゅう泊りに来るので、着替えを借りるよりも迷惑ではないかと思いまして」

凛「うん。海未ちゃんの服、見覚えあるやつばっかりだもんね」

海未「はぁ……こたつが温かいですね」

凛「そろそろ海未ちゃんが起きて来るかなーと思ってつけてたよ」

海未「……良妻賢母」

凛「え?」

海未「いえ、何でもありませんよ」

海未「それよりクリスマスのメール、しましたか?」

凛「あ、うん。みんな来れるって」

海未「それはよかったです」

凛「うん。穂乃果ちゃんとことりちゃんがでっかいケーキ作るって言ってたよ」

海未「ケーキ……楽しみですね」

凛「ふふ、海未ちゃんって甘いもの本当に好きだよね。今度何が食べたい?」

海未「プリンが食べたいです」

凛「うん、わかった」

海未「……朝食はどうします?」

凛「トースト食べる? 焼けばあるよ」

海未「ではお願いします」

凛「はーい」

海未「……冬休み、あってよかったです」

凛「そうだね」

海未「凛の家でくつろげますから」

凛「ダメ人間にゃ!」

海未「凛は朝、食べたのですか?」

凛「……ちょっとダイエット中」

海未「太っているように見えませんが……はっ! 胸ですか!」

凛「ほんと!?」

海未「いえ、わかりませんが」

凛「上げたら落とさないでほしいよ……」

凛「あ、トースト焼けた」

海未「いただきます」

凛「どうぞー」

海未「あれ、いつの間にベーコンが?」

凛「さっき焼いたのチンしたの」

海未「なんと……」

凛「卵は切らしてるからね。ちょっと高くて」

海未「ニワトリを買いますか……ちょうどここにバイトで貯めたお金が」

凛「いらないにゃ」





海未「……もうお昼ですね」

凛「ねー」

海未「……」

凛「海未ちゃん眠い?」

海未「いえ、特に……」

凛「凛の肩に頭乗せながらだと説得力ないよー?」

海未「そういえば以前、絵里たちに驚かれましたね」

凛「なんだっけ」

海未「こたつの同じところに2人で入るのは変だ、と」

凛「凛もそう思ってたけど、テーブルが横長だからね」

凛「それに結構あったかいし」

海未「はい」

凛「海未ちゃん」

海未「何でしょう」

凛「みかん食べる?」

海未「はい。むいてください」

凛「おお、海未ちゃん甘えんぼさん」

海未「動きたくないんです」

凛「あー、やっぱり?」

凛「あーん」

海未「あー……」

凛「海未ちゃん、それ凛の手だよ」

海未「……みかん」

凛「こたつで寝ると風邪引いちゃうよ?」

海未「鍛えてますから大丈夫ですよ」

凛「鍛えててもだーめ」

海未「……凛」

凛「なに?」

海未「凛のところには……ちゃんとサンタさんが来ますよ」

海未「バイトでお金……貯めてますし」

凛「正体バレバレにゃ」

海未「……まっかなおひげの」

凛「ちょっとスプラッタ入ってない?」

海未「明日は……頑張ってください」

海未「私もできる限り……褒めます」

凛「ありがとう」

海未「……」

凛「海未ちゃん、寝ちゃった?」

海未「……かろうじて」

凛「起きてるね」

凛「海未ちゃん」

海未「……はい。ほしぞらです」

凛「凛の家で電話に出るときの対応しなくていいよ」

海未「?」

凛「あのね、ペットを飼うと婚期が遠のくらしいの」

海未「ペット……?」

凛「そう、ペット」

凛「凛は海未ちゃんを飼ってるから、きっと婚期が遠のいてるよ」

海未「そんなことありませんよ……もらえるならわたしにください。2人くらい」

凛「試供品みたいに言われても……」

凛「でもね、凛はね――――――――」




凛「この雰囲気、そんなに嫌いじゃないんだ」

凛「……なんちゃって」

凛「や、やっぱり忘れて! 恥ずかしいから!」

海未「……」

凛「……寝てる」

海未「……凛は頑張ってますよ」

凛「え?」

海未「えっ? ねこ?」

海未「そんなぁ、うちではかえませんよ……りんがいるので」

凛「それはアレルギーって意味なのかな?」

海未「しゃけ……」

凛「あ、やっぱり寝言かぁ」

海未「えらいえらい」

凛「ふふ、海未ちゃんこたつ撫でてる」

海未「ほめてのびるこですから……」

凛「凛が?」

海未「わたしは」

凛「あはは、知ってるよ」

海未「……くぅ」

凛「……おやすみ、海未ちゃん」

凛「さーて、海未ちゃんのためにプリン作ろうかな」

凛「あ、卵ないんだった」

凛「海未ちゃんを置いて買い物に行くのも……うーん」

凛「ん? 真姫ちゃんからメール?」

凛「……えっ、こっち来る? あ、なら卵買ってきてもらおう」

凛「もしもーし、真姫ちゃーん」

凛「あ、かよちんもいるの? 2人とも、2日ぶりだねー」

凛「え? こっち?」

凛「うん。海未ちゃんがいるよ」

凛「ああ、そうそう。卵ね」

凛「はい、おねがーい」

凛「海未ちゃん。バイト頑張ってたご褒美にプリンを贈呈します」

海未「……」

凛「もう完全に寝ちゃってる」

凛「海未ちゃーん。今から真姫ちゃんとかよちんが来るよー」

海未「……こ」

凛「こ?」

海未「こんな恰好ではいけません。ちょっと着替えてきますね」

凛「海未ちゃん……」

凛「着替えは奥のタンスの上から3段目だよ」

海未「ええ、わかっています」

凛「わかってないわかってない。それ凛のパンツだから」

海未「あ、これですね」

凛「そうそう」

凛「……海未ちゃん、なんで凛の前だとそんなにゆるゆるなの?」

海未「決めたじゃないですか」

凛「え?」

海未「褒めるときは2人きり!」

海未「私もゆるゆるは2人きりの時だけです!」

凛「そんな真顔で言われても」

海未「今日、凛に甘えるのはこれで最後です」

凛「ん、何?」

海未「みかんをください」

凛「はい、あーん」

海未「あーん」

花陽「あれ? 凛ちゃん鍵開いてるよー?」

凛「」

海未「」

真姫「あら、いつも通り仲良しね」

凛「バレてた」

海未「がーん」




    おわり


よく考えたらだいぶ長かった
海未ちゃんは甘やかされる方が輝くと思うの

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年09月13日 (土) 12:05:50   ID: smU1wsLv

頑張ってください

2 :  SS好きの774さん   2014年09月20日 (土) 16:49:40   ID: Wyay9h_p

うみりんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

3 :  SS好きの774さん   2014年09月21日 (日) 15:55:43   ID: EEF5txIJ

乙です

4 :  SS好きの774さん   2014年09月21日 (日) 18:19:37   ID: V-x5g0ot

これは…最高だな

5 :  SS好きの774さん   2014年09月21日 (日) 19:01:59   ID: h4c9INAW

なんだあなたが神か

6 :  SS好きの774さん   2014年09月21日 (日) 21:53:21   ID: IDpw6MhH

凛ちゃんがどんどん乙女になってくよ…!
なんだあなたが神か

7 :  SS好きの774さん   2014年09月22日 (月) 15:31:57   ID: Zb1H5Bp3

うみちゃんが緩くてりんちゃんがしっかりしてるの初めて見たかも
すごい良かった

8 :  SS好きの774さん   2014年09月23日 (火) 21:30:22   ID: 0kDnUNd-

希ちゃんを除け者にすんのか死ねよ
りんのぞかうみのぞだろが
解ってねぇな

9 :  SS好きの774さん   2015年05月04日 (月) 21:24:48   ID: EvKKeV8C

希押しのフリしたアンチかな?

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