男「俺の高校時代の友人の話なんだが」 (42)

男「俺が高校生だった頃、変な友達がいてさ、そいつの話するわ」
女「気になるー」
男「俺の親友でさ、今でも連絡を取り合う仲なんだよな」
女「ちょっと妬いちゃうかも」
男「いや、そういう仲ではないかな」
女「じょーだん、でもあなたのそういう話聞くの初めてかも」
男「そっか、お前と話するときはこういう話はしないようにしてたんだよ」
女「ふうん」
男「あれは今から十年前……俺がまだ高校に入学したばかりの時の話なんだ。俺はまだ気が強い奴じゃなくて、いじめられていてな……」

いじめっ子「おうおう、お前金持ってんだろ、ちょっとジャンプしてみろや」
男「そ、そんな……もう今日はお昼ご飯代しかないよ」
いじめっ子「それでええんや、とっとと金渡しぃや」
男「ふ、ふええええええええ」
いじめっ子「素直に渡せよ!」デュクシ
男「! ……」
いじめっ子「そうだよ、それでいいんだよぉ」

男「クラスメイトもみな、見て見ぬふりをしててな」
女「えー可哀想」
男「暴力なんていつものことで、精神面もズタボロにされてたさ」
女「それでも学校行ってたんだ」
男「ちょっとばかし正義感が強くてな。どうも不登校という考え方はなかったらしい」
女「偉いんだね」
男「否定はしづらいが肯定はしないってとこかな」
女「それで、いじめっ子っていうのが友人?」
男「違うよ。九月の上旬頃に、激化したいじめを受けながら、俺はあるやつに出会ったんだ」

いじめっ子「お前バイト始めたらしいな。その金俺に回してくんねえかなぁ」
男「ヒッ」
いじめっ子「しゃーねえなあ。タダでとは言わねえよ。俺の椅子になる権利をやるからよお、俺に金を貸せよなあ」
男「……」
いじめっ子「ああ!?」
男「……い、いやだ、渡したくない……」

男「思えば初めての反抗だったよ」

いじめっ子「てめえ、弱いくせにいい度胸してんじゃねえか! 粋がってんじゃねえぞ!」
男「あ、あ……」
いじめっ子「どうしてやろうかな……おいそこの!」
クラスメートL「……」
いじめっ子「お前だよ、お前。こいつにどんな刑罰を与えたらいいと思う?」
クラスメートL「……」
いじめっ子「なあ、俺は全裸にして教卓に乗せるのがいいと思うんだが」
クラスメートL「……それでいいと思うよ」
いじめっ子「んじゃあ、彼の言う通り、それにしますかねぇ!」

男「後から聞けば、やっぱりいじめっ子にはみんな逆らうのは怖かったみたい」
女「みんな傍観者だったのね」
男「まあ、しょうがないといえば、しょうがないことだったのさ」

いじめっ子「ほらよ、服を脱げよ」
男「……」

男「俺は泣きながら服を脱いだね」

いじめっ子「どうだよ、この年になって人前で服を脱ぐのはよぉ」
男「……」ヌギヌギ

男「その時、あいつに出会ったんだ」

遅ればせながらSSです。書きためをパンパンと貼っていきます

ガラガラ
?「うっす! おお! 男が服を脱いでいる!」
いじめっ子「あ? 誰だてめえ」
?「ははあん、目下のものに名乗るほどのもんじゃねえな」
いじめっ子「いい度胸だな」
?「強いて言うなら、中原とでも言っておこうか!」

男「彼はそういうと同時に下腹部を思いっきり蹴り上げた」
女「それって……」
男「金的キック。いじめっ子は金玉押さえて泣きながら帰って行ったね」

いじめっ子「ふ、不意打ちなんて卑怯だぁ!」ダダダッ
中原?「バカめ、不意を見せる方が悪い」
男「あ、あの……」
中原?「ほう、俺に見せつけるにはとてもいい体じゃないか。通報した」
男「え?」
中原?「失敬。ついネットの用語が漏れてしまった」
男「あ、ああ、うん」
中原?「それに、先ほどのことは礼には及ばん。どう頑張ってもまとめには載らない活躍ぶりだったからな」
男「え、まとめ?」
中原?「ああ、すまん。これもインターネッツの言語だ」

男「あいつは最初から変なことを口走るタイプの男でさ」
女「変な人だねー」
男「学校では割と成績いいんだよな、そいつ」
女「へー、意外な人だね……ってその人の名前は?」
男「気分によるってさ」
女「キブンニヨル、変わった名前だね」
男「いや、毎日違う名前で名乗ってたよ」
女「え、変な冗談ね」
男「俺も最初はそう思ったけどさ、ニュー速VIP市の市役所に読み仮名は気分によるってお父さんが書いたらしいんだ」
女「おーぷん県の?」
男「そうそう」
女「どんな世の中よ……」

男「その、なんとお礼したらいいか」
謎の男「体で支払ってもらおうか」
男「え?」
謎の男「冗談だ」
男「はは、ははは」

男「そいつは自分のことを血糖値割高と言っていた」
女「何その名前」
男「俺も最初はどうかと思ったが、ニュー速VIP市の市役所はこれを許したらしい」
女「キラキラネームってやつ?」
男「市役所も注意しろよな」
女「社会風刺ね」
男「まあ、そうなるかな。それで、俺も次第にそいつと仲良くなっていったんだ」
女「そうなの」
男「部活動の前は俺らは屋上でもっぱら活動してた」
女「屋上解放なの」
男「無断でね」

血糖値割高「おーす、お、いたいた」
男「割高くん!」
血糖値割高「例のいじめっ子は?」
男「割高くんの顔を見るとそそくさと去って行ったよ」
血糖値割高「誇らしく思うね!」
男「そう?」
血糖値割高「いじめっ子追い返したけど、質問ある?」
男「ないよ、はは」

女「そのしゃべり方結構違和感あるわね」
男「のちのネット用語に使われてるけど」
女「真似して言ったことあるの?」
男「言ったら恥ずかしいからやめろって怒られたな」
女「黒歴史ってやつね!」
男「そうそう」

男「そういえば、会ったときから気になってたけど」
血糖値割高「結局質問あるのか」
男「割高くんって、髪、スキンヘッドだけど、おしゃれだね」
血糖値割高「お、そうだな」
男「それでいてひげがモジャモジャなのは面白いけど」

女「え! 高校一年生でモジャモジャだったの?」
男「今でもモジャモジャだよ」
女「高校生って髭が生え始めるときじゃないの?」
男「さあ、手入れ怠ってたとかじゃない? あ、まあ彼の顔結構変わってたけど」
女「芸能人だと誰に似てるの?」
男「芸能人……ドナルドダック?」
女「え、それってどうなの?」
男「母型はインド人らしい。それで地黒なんだよね」
女「ドナルド似で地黒……」
男「顔のインパクトは強いな」
女「顔写真とかは?写メ写メ」
男「公然猥褻フェイスとか自称してたけど、見てみたい?」
女「なおさら見てみたい」
男「ほらhttp://www60.atwiki.jp/kettouchitakame/pages/4.html
女「……!?」
男「顔は特徴的でしょ?」
女「ドナルド……!?」
男「くちばしの部分が」
女「ぎりぎりでアウトじゃない!?」
男「お、それはこいつの頭によく似たものを知ってる口ぶりじゃないか」
女「あ、それは、その、えっと……」
男「ちなみに頭に巻いているのはターバンな」
女「なぜ二つも!」
男「で、話を続けるぞ」
女「え?」
男「割高は新しく部活を立ち上げた」
女(え?まあ、いいや。話し始めちゃったし)
男「その名も安価部」
女「え、何が安いの?」
男「何が安いっていうわけじゃなく、SNSを自ら作り、遊ぶ部活だ」
女「SNS……掲示板とか?」
男「その通り。有名なところで2ちゃんねる、とか」
女「昔、友達がまとめ利用してたんだけど2ちゃんからの転載禁止がどうって怒ってたわ」
男「一般人にはそんくらいの認識だろうが、俺には結構大きなことに思えたんだよね、そういうの」

血糖値割高「安価部を作るぞ!」
男「安価部って?」
血糖値割高「ああ!それって質問?」
男「そ、そうだね」
血糖値割高「安価部、まあ要は安価を取る部活だ」
男「で、その安価って?」
血糖値割高「ああ!」
男「……」
血糖値割高「SNSって知っているか?あるいは掲示板」
男「掲示板って、不特定多数の人と会話等のやりとりをするコンテンツのことかい?」
血糖値割高「ほう、見事なことを言うじゃないか」
男「それで、その掲示板がどうしたんだい?」
血糖値割高「インターネットの上で、その掲示板を作り上げた人物がいる」
男「それってなんか、怖くない?」
血糖値割高「ふむ。いい考えだ。確かにインターネットは世界中に広がるもので、そこに掲示板を作るということは、自分の発言が世界中にさらされるということだ」
男「うん」
血糖値割高「だが、掲示板の機能のうちの一つに匿名性というものがある。筆跡によってばれることもなく、話し相手も自分の見知ったものではない」
男「自分の発言に責任を持たないということ?」
血糖値割高「言い方を変えればそうなるな。だが、そうやって相手を恐れないで発言すること、心をむき出しにすることは、今までになかった考えを生む」
男「岡本太郎みたいな?」
血糖値割高「極論はそうなるな」
男「でも、面白そうだね。秘めたる自分の発見ができるって」
血糖値割高「このコンテンツが大きく発展したら、ビジネスにも生かせる」
男「と、いうと?」
血糖値割高「インターネットに広告を作るんだ」
男「その企業のホームページとか、そういうの関係なしに?」
血糖値割高「その通り。その広告をバナーと呼ぶことにして、それをクリックすればその物品を購入できるサイトに飛ぶ」
男「物品を買えるサイト?」
血糖値割高「いいところに目を付けたな。今までの時代、人は欲しいものを自らの足で探した。でもこれからは違う。インターネットを駆使し、企業と個人を結び、品物を個人がインターネット経由で買い取っていく」
男「頭がパンクしそう……」
血糖値割高「言い過ぎたか、休憩しよう」
男「そうしてくれると助かる」
血糖値割高「ノートを使いながら、あとで丁寧に解説しよう」
男「ふえええええ」

女「それって、今のインターネットの形じゃない」
男「割高はそこまで見据えて安価部を作ったんだ」
女「え、相当賢いじゃない」
男「そう褒めんなって」
女「あなたじゃないわよ」
男「まあ、安価部があったから今のプログラミングの仕事ができるわけなんだし」
女「それはよかったじゃない」
男「部活動設立についての話もしよう」

男「でもさ、部活動設立には五人必要だったような」
血糖値割高「一人は心当たりがあるから大丈夫だ。もともとインターネットに興味があるやつでな」
男「じゃあ、あと二人だね」
クラスメートL「やあ……」
男「ん、あ、そ、こんにちは……」
血糖値割高「ん、何? 知り合い?」
男「クラスメートだよ」
クラスメートL「どうも、初めまして……」
血糖値割高「ん、よろしく、それで、何の用? 退去命令?」
クラスメートL「いや、そうじゃなくて……」
血糖値割高「じゃあなんだ、屋上を部活に使うとかそういうの?」
クラスメートL「そうでもなくて……」
男「もしかして、パソコンに興味があるとか?」
クラスメートL「その通り……」
血糖値割高「もしかして、入部希望者?」
クラスメートL「言えばそれでいい……」
男「やったね、創部の日も近いよ!」
血糖値割高「おお、部活動の日も近いね~いいゾ~これ~^^」

女「クラスメートLって……」
男「髪はぼさぼさでクールキャラ。お前とは大違いだったな」
女「もー」
男「はっはっは……でも、俺はそういうお前が好きだっつーの」
女「もー///」
男「クラスメートLも写真あるぞ」
女「えー、どれどれー」
男「ほら」
女「へー、男の子だったんだ」
男「Lも割高も結構頭良かったな。あそこらへんが付き合ったのも納得できる」
女「……え、血糖値君と付き合っているの?」
男「高校卒業してから付き合い始めた」
女「ホモカップルなの……! ちょっと興味湧いたかな」
男「ちなみにもう二人とのエピソードも結構面白いぞ」
女「どんなの?」
男「一人はなあ……」

男「そういえば、思い当たる人って?」
血糖値割高「こいつのこと」
>>1「俺です」
男「え?」
>>1「俺です」
血糖値割高「こいつは根暗だがいいやつだ」
>>1「さいですか」
男「見た目おっさんだね」
血糖値割高「俺の見た目もどうだよ」
男「と、とりあえず、よろしく」
>>1「よ、よろしく……」

女「>>1……いったい何者かしら……!」
男「ちなみに、それっきり幽霊部員」
女「え、何それ」
男「連絡先は交換したが、今でも連絡は取り合わないなあ」
女「ちなみに、スペックは?」
男「俺の通ってた高校だから、頭脳はそこそこ。運動はまるで駄目、独身で、あとは、ネットやってるくらいしか知らん」
女「典型的なオタクね……」
男「リアルとはつながりたくないから、LINEやtwitterもFBもやってない」
女「まるでネット仙人ね」
男「まあ、否定はできないわね」
女「で、最後の一人は?」
男「Lが連れてきたんだ」

L「どーも……」
男「あ、Lくん」
L「僕の彼女です。人数が足りないのなら、勝手に使ってやってください」
血流れ星ワクチン「血流れ星ワクチンです、どうかよろしくお願いします!」
男「血流れ星ワクチンさん……」

女「L君て彼女持ちだったの!?」
男「高校時代はモテモテだったからね、有益になりそうな彼女探し出すのに一苦労したらしい」
女「で、出た。彼女を機能で選ぶタイプの男」
男「まあ、Lは将来を見据えて付き合うタイプだったから血流れ星ワクチンさんもお嫁さんになれるって喜んでたよ」
女「今や彼氏はホモカップル……」
男「割高とワクチンは今は敵対関係にあるんだよねえ」

ワクチン「えっと、パソコンとかにはあんまり興味はなかったけど、L君のためなら、ボク頑張ります!」
男「う、うん。そうだね」
血糖値割高「えー、入れるのー」
男「これで、部活動申請できる人数になるよ
血糖値割高「いや、でもさー、女だろ」
ワクチン「えっと、そうですよ」
血糖値割高「まーん(笑)」
ワクチン「ちーん(笑)」
血糖値割高「気に入った、入部を許可する」
男「え!? 今のやり取りのどこにそんな要素が?」
血糖値割高「Lが彼女にするだけあるな、こいつ」
ワクチン「褒められて、うれしいです」

女「変わった人ね」
男「この子に関しては変わったエピソードが多いかな」
女「そうなの?」
男「ああ。無事創部した後に、青春したいから合宿を俺は提案したんだ」
女「あら、いいわね」
男「顧問もついていくことになったんだが、Lは拒否。ワクチンと割高、それから顧問と俺の四人で一泊二日の合宿をすることになったんだ」
女「この時、すでに>>1の姿はなし」

さっさと全部はっておきます
多少は我慢してくれ

男「ここが合宿の宿泊地……?」
顧問「ああ、そうだな。いやー、ボロな宿しか取れなかったんだよ。プログラミングする部活動なんてそんなオープンな部活じゃないからね」
血糖値割高「雰囲気あって、いいじゃないか」
男「あはは、夜は肝試しやらない?」
顧問「俺の目の届く範囲なら、何とでもしろよな」
男「じゃあ、ぜひ」
ワクチン「えー、やるんですか?」
血糖値割高「おお、なんだ、怖がってんのか」
ワクチン「怖がってなんかいません」
血糖値割高「可愛い子ぶったってそうはいかんざき」
男「ちょっと、喧嘩はだめだよ」
血糖値割高「喧嘩じゃない」
ワクチン「煽りあいです」
顧問「ははは、じゃあ入るぞ」ガラガラ
老婆「いらっしゃいまし」
顧問「どうも、予約していたS高校の安価部です」
老婆「大丈夫ですよ、お客さんはあなたたちしかいらっしゃいません」
顧問「はは、結構な穴場ってことですね」
老婆「私のような婆一人じゃ、客寄せもできません……」
顧問「そんなことはありませんって」
ワクチン「さっそくお部屋に向かいましょう」

女「おばあちゃんが一人で経営している宿なのね」
男「今は部活の顧問と二人で」
女「あら、跡継ぎになったのね」
男「それに近いといえば近い」
女「何その含みのある言い方」
男「顧問そのおばあちゃんと結婚したんだよ」
女「は!?」
男「年上好きだったんだよね」
女「そんなレベルじゃないわよね!」
男「俺も年上好きといえば年上好きだから、顧問の気持ちもわかるなあ」
女「やだ、それ困るわ! いや、私そう見られてたの!」
男「大丈夫」
女「何が!? ねえ何が!?」

顧問「いいか、俺はお前らを信用しているからな」
男「はは、当然……」
血糖値割高「もちろん大丈夫です」
ワクチン「そんなこと、聞くまでもありません」
顧問「じゃあ、俺は一人部屋、お前らは三人部屋で大丈夫だな」
血糖値割高「大丈夫ですとも」
男「……ワクチンさんは一緒の部屋で大丈夫なの?」
ワクチン「え? 何がですか?」
男「その、変な男子二人と一緒の部屋で」
ワクチン「あなたは信頼してるから、大丈夫です」
男「そ、それはありがたいというべきか、何というべきか」
ワクチン「彼の性癖について気になる点があるんです」
男「……と、いうと?」
ワクチン「ボクより、あなたやL君、顧問を見る目がどうも艶めかしいというべきか……」
男「……え!?」
ワクチン「いや、まあ確かに、僕はカッコいいけども。彼、ちょっとばかし、そっちのけがある気がするんです……」
男「……ちょっと待って、じゃあ彼は」
ワクチン「同性愛者の可能性が否めませんわね……」
男「まじか……」
血糖値割高「ん? お前らどうしたんだ?」
男「あ、割高くん……」
ワクチン「何でもありませんわ。ただ、飼っているチワワについて、相談しただけですの」

男「そういえば、ワクチンは本当にチワワ飼ってたな」
女「今、そんなどうでもいい話する必要性ある?」
男「いや、でも彼女のオフィシャルホームページにペットのチワワと一緒に写ってる写真が載ってたんだよ」
女「公式HP?」
男「うん。あれ、言ってなかったっけ、彼女現役のアイドル」
女「え!?」
男「AKBグループとかなんとか」
女「え、ええ!」
男「元吹奏楽部で肺活量がすごいからな。歌はうまいんだよ」
女「そ、そんなすごい子、あなたの周りにいたの……」
男「んー、見慣れてたし、そんなすごいのかな」
女「アイドルでも何でもない私なんてくすんで言えるわね……」
男「いや、お前の方が俺は好きだぞ」
女「え、ほんと?」
男「そういうくみしやすいとことか」
女「やだ、もー、褒めないでよお」
男「はは、褒めてないよ」

カポーン
男「気持ちいいね、お客さんも他にいないし」
血糖値割高「それな」
顧問「今夜は、何があっても俺を呼び出すことないように、いいな」
男「は、はい」
血糖値割高「それにしても先生。いい体してますな」
顧問「ははは、伊達に鍛えていないからな」
男「筋肉すごいですね」
顧問「触ってみるか?」
血糖値割高「え、いいんですか」ムニ
顧問「ばか、胸筋触る奴がどこにいる。腕だろ、ふつうは」
血糖値割高「つい、見とれるような筋肉でして、つい……」
顧問「全く……」

女「あれ、そういえば血糖値君って頭にターバン巻いているんじゃなかったっけ」
男「外したよ」
女「え、去勢!?」
男「どう変換したらそうなる」
女「あ、つい……」
男「髪の毛一本生えていないきれいな頭だったよ」
女「スキンヘッドなのね」
男「禿だって」
女「若くしてそんな許されざる病に……」
男「禿は悪くないだろ」

男「ところで、覗きとかしないのかい?」
血糖値割高「え、誰の」
男「女湯の」
血糖値割高「入っているの、ワクチンだけだろ」
男「まあ、そうだけど、ロマンを感じないかい?」
血糖値割高「何がいけなくて女の裸を見なければいけない」
男「僕、先に上がっていいかな」
血糖値割高「冗談だ」
男「心臓に悪いよ」

男「でも、結局お風呂でも寝てる時も特に何もなかったからな」
女「あなたは食べようとは思わなかったんじゃないかな」
男「ホモにモテないのか」
女「私はあなたが好きよ」
男「そうか」
女「えー、反応薄いー」
男「まあ、合宿で正体が現れたのは血流れ星ワクチンの方、なんだよなあ」
女「え?」

男「いいお湯だったね」
血糖値割高「感動的だな」
男「あ、月が見える」
血糖値割高「月が、綺麗ですね……」
男「そうだね」
血糖値割高「お前はいい感じにフラグを折っていくな」
男「フラグ?」
血糖値割高「何でもない、ただの独り言だ」
男「あ、将棋あるよ」
血糖値割高「お、一局やるか」
男「ボードゲーム苦手だけど、いいよ」

十五分後
血糖値割高「……王手」
男「割高くん、強いね」
血糖値割高「……ごめん、はっきり言うとかなり弱いぞ、お前」
男「え、そんなに?」
血糖値割高「ああ。十五分の試合で王手されるの初めて見たは」
男「そんなに?」
血糖値割高「プロ野球だったら三回コールドゲームみたいなもんだぞ」
男「そっかー」
血糖値割高「プロレスだったら技かけられる前にTKO負けしているようなもんだぞ」
男「そうなのかー」
血糖値割高「え、悔しくないの?」
男「だって、割高くんのたとえ、イマイチ分かりづらいっていうか」
血糖値割高「そ、そうか」
男「でも、月見ながら将棋も乙なものだね」
血糖値割高「……お前が楽しそうで何よりだよ」
男「ありがとうね、割高くん」
血糖値割高「お、おう」
男「……ワクチンさん遅いね」
血糖値割高「女は長風呂だからな」
ワクチン「さっぱりしました」
男「遅かったね」
ワクチン「いえいえ、女性のお風呂は……そんなもの……ですよ……」
男「ん? どうかしたかい?」
ワクチン「今日の、月は、とても、綺麗ですね……」
血糖値割高「ちょっと、目瞑ってもらえるか?」
男「え、あ、こう……?」
血糖値割高「月下に響く轟きよ、混沌なる黒き雷とともに、我が下へ来たれ! カオスブラックヴォルト!」ドンガラガッシャーン
ワクチン「あ、ああ、あああああああああああああああああ!」
男「え、え、何?」
血糖値割高「目を開けてもいいぞ」
ワクチン「は、私は今まで何を」
血糖値割高「さあな。月はもう見るなよ」
ワクチン「あ、あの発作が出てしまったのですね……」

女「は?」
男「後々聞いた話だが、血流れ星ワクチンは月を見るとSAN値がごっそり減るような変身をしてしまうらしい」
女「え、血糖値君は!?」
男「あいつ、手から雷が出るんだよね」
女「は?」
男「か?」
女「た?」
男「の?」
>>1「ちくわ大明神」
女「し?」
男「お?」
女「誰よ今の」

血糖値割高「飯もうまかったな」
男「普通に穴場だよね」
顧問「ご飯もうまいし、温泉もいい設備が揃っているのに、何で来客が少ないんだろう」
ワクチン「さあ……?」
男「じゃあ、先生、おやすみなさい」
血糖値割高「プロレス、頑張ってくださいね!」
ワクチン「プロレスって……?」
顧問「やかましいわい!」
血糖値割高「ははは……」
ワクチン「じゃあ、私たちも寝ますか」ガラガラ
男「布団はどうします?」
ワクチン「血糖値さんと私は外側で」
男「え、川の字で寝るんだね」
血糖値割高「まあ大丈夫だろう」
男「なんか、嬉し悲しが半々ってとこだね」
ワクチン「信頼してますから」
男「もう異性として見られてないんだね」
血糖値割高「まあ、女将さんの一存で布団が横一列に並んでいるし、川の字で寝ることを強いられているんだ」
男「敷きなおせばいいけどね、まあお風呂入った後だし、面倒だね」
ワクチン「とっとと寝ましょう」パチッ

女「ここで合宿篇は終了かしら」
男「ところがどっこい、ここからが長かった」

男「Zzz……」
隣の部屋「ギシギシアンアン///」
男「ん……うるさいなあ……」
ワクチン「!?」
男「あ……?」

男「隣の部屋で女将さんと顧問があれしてる声で俺は目を覚ましたわけだ」
女「キツイ寝起きね」
男「すると、どうだろう。眠り眼擦ると月光の下にさらされている白い素肌が、そしてその輪郭がうっすらと、見えるわけだ」
女「……ワクチンさんの?」

男「ん……ワクチンさん、起きているの?」
ワクチン「シー! シー!」
男「え、何? 何?」
ワクチン「(大きな声あげないでください!)」
男「あー、ごめん、ごめん」
ワクチン「(うるさいです!)」
男「(……それで、こんな時間に何やってるの?)」
ワクチン「(体に豆乳塗ってるんです!)」
男「(ああ、豆乳……)は?」ゴシゴシ
ワクチン「(うるさいです!)」
男「いや、でも豆乳……」モゴモゴ
ワクチン「(ボリュームがそれ以上大きくなったら、このままの状態で左手で鼻の穴に指突っ込んで窒息死させます)」
男「(ほげんー! ほげんー!)」
ワクチン「(……目を閉じてください)」
男「(……うん)」
ワクチン「(いいですか? 私は今、豆乳を体に塗るために浴衣を脱いでいます。目を開けたら私の体がすべて、あなたの眼中に収まるわけです)」ヌリヌリ
男「(はい)」
ワクチン「(私は責任をあなたにとって欲しくないので、あなたにこのあられもない姿を見せたくないのです)」ヌリヌリ
男「(はい)」
ワクチン「(どうか、どうか、目を開けないでください)」ヌリヌリ

女「変わった日課ね」
男「イソフラボンがどうとか力説してたけど、学説的には特に効果はないらしい」
女「まあでも、大豆にはいろんな効果があるからね。体に豆乳を塗ることが体に何か有益になるって言われたら私信じそう」
男「まあ、俺の体液を毎日のように塗り込んでいるわけだが」
女「注入じゃなくて?」
男「もう一回する?」
女「まだ話は終わってないわよ」

ワクチン「(……)」
男「(……)」
ワクチン「(……問題が発生しました。背中まで、豆乳が塗れないことです)」
男「(は、はあ)」
ワクチン「(塗ってくださいませんか)」
男「(は、はあ……)はあ!?」
ワクチン「(いい度胸をしていますね)」ギュー
男「(すみません、すみません! ヘッドロックはご勘弁を!)」
ワクチン「(しょうがないですね)」パッ
男「(ゼハー、ゼハー……で、ワクチンさんの背中に豆乳を塗れと)」
ワクチン「(その通り)」
男「(いいんですか?)」
ワクチン「(だから言っているじゃないですか、信じてるって)」
男「(……は、はあ。わかりました。やりますとも)」
ワクチン「(手を出してください)」
男「(はい)」
ワクチン「(豆乳のビンを乗っけます。もちろん、目はつむってください)」
男「(はい)」
ワクチン「(あまり重くないですよ)」コトッ
男「(持ちました)」
ワクチン「(目を開けてください)」クルッ
男「(はい)」
ワクチン「(これが私の背中です。ビンの中に手を入れて、豆乳を私の背中に直で塗ってください)」
男「(……はい)」汗ダラリ
ワクチン「(では、どうぞ)」
男「(……)」ヌリヌリ
ワクチン「(……)」
隣の部屋「ギシギシアンアン///」
男「(……)」ヌリヌリ
ワクチン「ひゃう!」
男「!」ビクッ
ワクチン「(いや、あなたが脇の方に手をやるから、くすぐったくなりまして……!)」
男「(いや、すみません……ワクチンさんの背中にほれぼれしてまして……)」ヌリヌリ
ワクチン「(……)」
男「(……)」ヌリヌリ

女「女の子の背中に直で触るとか、どんなエッチなゲームだ!」
男「ははー、さては嫉妬かな」
女「ちょっとその意は否定できない!」
男「ははは、かわいい奴め」
女「でもさ、今までどうやって背中に塗ってきたんだろうね」
男「妹がいなくなってからはお母さんに頼んでるそうだよ」
女「あ、複雑で重い話?」
男「いや。妹っていうのは架空の妹」
女「架空の妹がいたのか! そしてそれに背中に豆乳を塗らせていたのか!」
男「Lの話だとそうらしい」
女「胡散臭いわね、L君!」
男「いやあ、部活の一年次の特に面白いエピソードはこんな感じかな」
女「他にもエピソードはあるのね」
男「さあ、高校時代のエピソードは>>1のやる気次第じゃないかな」
女「何その飽きた宣言」
女「宣伝落ち!?」

おしまい

以下、酷評などが流れるスレ

よろしく

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom