提督「あんたのためなら俺は偉くなれますよ。大淀さん!」 (110)



 大淀「提督、平文でお願いします」

 提督「うーん辛辣。さっきの天龍たちみたいですね」

 大淀「先ほどの演習では惨敗されたようですが」

 提督「大淀さんあんた見逃したんですか!
    俺の考案した単縦陣の敵艦隊に複縦陣で突っ込み分断するという斬新な戦術を!」

 大淀「数百年前の戦術ですね……」

 提督「確かに負けはしましたが、見学者は皆括目して口をあんぐり開けてましたよ」

 大淀「戦艦二隻含む単縦陣へのネルソンタッチに、それ以外の顔はできないかと」

 提督「よっしゃ、もっと俺の優秀さを見せつけてやるぞ! 大淀さんどうすればいいですか!」

 大淀「それを私に聞く時点で優秀ではないと思います……」

 
 



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1409421224



 提督「大淀さん大淀さん」

 大淀「どうかされましたか?」

 提督「資源の配給がこないんですが」

 大淀「大変ですねえ」

 提督「いや大変ですねではなく、通常支給分もないんですが」

 大淀「何分小さな鎮守府ですから……、
    そういえば、配給資源管理はここでは司令長官が兼任なさっているはずですね」

 提督「えーマジですか、何かやっちゃったかー?」

 大淀「何か思い当たることは?」

 提督「いや何も、俺が元陸軍だからかもしれません」

 大淀「無能だからじゃ……」

 提督「なんてことを……司令長官からの評価ポイントは俺がこの鎮守府でダントツですよ!」

 大淀「根拠は?」

 提督「ありません! そもそも挨拶のあと元部下と飲みに行って記憶もありません!」

 大淀「軍人としての自覚もありませんね……」

 提督「あ、いやいや、確か長官のデスクの上に奥さんの写真があって、
    その奥さんをこの前ショッピングモールで見たって話をしたんですよ」

 大淀「はあ……奇妙な偶然もあるものですねえ」

 提督「で、その奥さんいかにも好青年って息子さんが一緒にいて、一家皆仲睦まじいんですねって褒めて……」

 大淀「あれっ?」

 提督「そう、確か息子さんのことでお世辞を言いまくったんでした!
    これは他の貧弱一般提督たちが奥さんのことしか褒めないのと違ってポイント高いですよ!」

 大淀「……あの、提督、言いづらいことですが……」

 提督「実際、司令長官も照れて顔を赤くして、ニコニコされて……ってどうしました?」

 大淀「司令長官は娘さんが一人で



    息子さんはいらっしゃいません」

 提督「」エー

 提督「ああくそ、資源がない!」

 大淀「大変ですねえ……」ズズズッ

 提督「お茶飲んでる場合じゃないですよ。このままじゃ出撃する前に壊滅します」

 大淀「前代未聞ですよ。歴史に名が残ります」

 提督「醜聞ってレベルじゃないですけどね! ……それで何か任務はないんですか?」

 大淀「任務……?」

 提督「あんたのしーごーとー!」

 大淀「ああ、そんなのありましたね。えー今受けられる任務は……と」

 提督「これでしばらくは助かるなあ……」

 大淀「一件ですね」

 提督「はい?」
 
 大淀「一件です。カムラン半島の敵艦隊を撃破せよ」

 提督「行くまでに燃料が尽きるんですが」

 大淀「どうやら司令長官は、あなたを本気で潰す気みたいですね」
 
 提督「俺をそこまで評価してくれるなんて……感激だなあ!」

 大淀「下水管から湧くコバエと同等の評価だと思います。
    あ、沸いているのは頭でしたか」

提督「大淀さんに言われるとなんか湧き上がるものがありますね!」


 提督「うおーん、大淀さーん」

 大淀「……提督さんですか。今度はどうかされましたか?」
 
 提督「他の提督が演習に応じてくれないんです」

 大淀「またネルソンタッチを繰り返したのでしょう?」

 提督「すげえ! エスパーですね!」

 大淀「提督のレパートリーはそれだけですから」

 提督「今までで一番傷つきましたよ……!
    でもまあ、目が死んでる天龍の突撃に皆びびったんでしょうね。
    一番新参っぽい奴の嘲笑の顔が、相手にしたくないって顔になりましたもん」

 大淀「この状況でまだそんなことをおっしゃるのですか……。
    そろそろ木曽さんあたりが怒り出したりはしないのですか?」

 提督「いや、あまりにも繰り返すもんだから
    何か考えがあるんだろうと言ってました。そのためなら従ってやるとも」

 大淀「艦娘の鏡ですね。すごいなあ木曽さん」

 提督「くだらないことだったら四人に一人だとも言ってましたね」

 大淀「家族への手紙の書き方ぐらいは教えますよ?」

 提督「ステンカ……スチャラカ……ステンレス……?」

 大淀「……お医者さんをお呼びしましょうか?」

 提督「いやね、誰も演習受けてくれなくて、演習所の談話室の机に突っ伏していたんですが」

 大淀「提督は自分の行為を振り返ることが必要だと思います。
    この鎮守府は、資料によると団結の面で高い評価を受けているみたいですよ」

 提督「ああ、確かに団結して俺をはぶってますね。 ……で突っ伏してたら、
    廊下からステ何とかは効率がいいだのの話が聞こえてきたもんで、なんのことかと考えてたんですよ」

 大淀「……捨て艦」

 提督「ああそれそれ、あー思い出しました、それ確か俺の恩人がぷりぷり怒ってたような気がします。
    まあ、今は行方不明になっちゃったんですが」

 大淀「最近では批判が高まり、表立っては行うことができない行為です。
    もっとも、何か罰則が規定されているわけではありませんが」

 提督「まあ、うちの艦隊にはそもそも電、天龍、木曽、秘書艦娘のよん…四?……」

 大淀「どうかされましたか?」

 提督「艦娘の数え方って、人か隻かで思想がわかる便利なリトマス試験紙ですよね……」

 大淀「私は特には気にしません。でも、どちらかといえば人のほうが嬉しいです」

 提督「ひ、……匹……」

 大淀「面白い冗談ですね」クスクス

 提督「私の配下の四人の艦娘は皆優秀でありますです! ハイ!」


 提督「電はいいこだなあ」

 大淀「電ちゃんですか……そうですねえ」

 提督「天龍に胸倉をつかまれたところをもう少しだけ信じましょうってかばってくれたんですよ」

 大淀「見捨てる寸前のような気が……」

 提督「そんな電のために何かプレゼントを買ってあげたいんですが、なにがいいでしょうかね」

 大淀「資源はどうですか?」

 提督「やっぱりなにか、かわいらしい小物ですかね。アクセサリーとか、ネックレスとか」

 大淀「弾薬とかが良いと思います」

 提督「洋服というのもいいですね。大淀さん、一緒に選びに行きませんか」

 大淀「石油が一番状態に沿ってますね」

 提督「ああでもやっぱり花ですかね。花。野草で冠を作るんです」

 大淀「こんなところでもビタ一文出さないのですね……」


 提督「秘書艦娘……雷はいいこだなあ」

 大淀「もう乗り換えたのですか……」

 提督「雷は、私がいるじゃないとか、皆が敵になっても私だけは味方よとか言ってくれたんですよ!」

 大淀「だめんずなんでしょうか」

 提督「恥ずかしいのか、顔は引き攣っていましたけれどね」

 大淀「あっ…………
    そ、そういえば以前、名前を呼んでいなかったようですが」

 提督「ああ、初見でなんて読むのかわからない上に、電と見分けがつかなかったんですよ。ハハハ!」

 大淀「ハハハじゃないです! 実際に雷ちゃんが傷ついていたらどうするの!」

 提督「実際、木曽にはすごい怒られましたね」

 大淀「当たり前です! ……でも、艦娘のみなさんは本当に仲がいいみたいですね」

 提督「初めはおとなしくて、あんまり馴染めていないようだったんですが、
    俺からの扱いに落ち込んでいるところを慰められて仲良くなったみたいです。
    これは俺のファインプレーでしたね!」

 大淀「すでにとりかえしがつかないほどエラーしているんですが……」

 提督「……………………………」

 大淀「提督、どこへいかれるのですか? こんな小型艇まで用意されて、もう日が沈みますよ」

 提督「ああいや、これは……そう! 何とかしてカムラン半島までいけないかなーと!」

 大淀「最近毎日のように出て行っているようですが」

 提督「別にこのままじゃ木曽に殺されそうだから、
    逃走ルートの確認をしているとかじゃないですよ。ハハハ!」

 大淀「……この小型艇、レンタルでも値が張るのでは? それに、秘書の雷ちゃんは……」

 提督「いやあ、大金払って手に入れたんですよ! 雷は……最初は一緒だったんですが最近はついてきませんね」

 大淀「……そんなお金があるなら資源を買えばいいでは?」

 提督「い、いやだ! 仕事のためには金は死んでも使いたくない!」

 大淀「それよりももっと大切なものをこのままだと失うのではないでしょうか……」

 提督「………………………………………ハハハ」

 大淀「提督。資源はどうなりましたか、……きゃああああああ!」

 鮫の死体「」デーン

 提督「ハッハッハ、大淀さんどうですか! この鮫! 
    昨日三時間にも及ぶ死闘の末仕留めたんですよ!」

 大淀「…………ハッ。ああ、そうですね。すごいですねー」

 提督「提督、頑張ったっぽい! 大淀さん! ほめてほめてー」

 大淀「…………」

 提督「いや、すいません、俺が悪かったです、はい」

 大淀「……まったく、偵察はどうしたのですか、偵察は」

 提督「逃走ルート……ゴホッ、いや、そもそも鎮守府近海からは許可なく出れないみたいで、
    だから手土産で、木曽も水に流してくれないかなーと」

 大淀「注がれるのは油だとおもいますが……。ああ、粗大ゴミは曜日を守ってくださいね」

 提督「えー、そんな、ちゃんと死ぬまで面倒見ますから」

 大淀「粗大ゴミの日は明日でした。よかったですね」

 提督「つめてえ……あ、そうだ、これを電へのプレゼントにしましょう。
    サンタよろしく寝てる電の枕元に置くんです」

 大淀「粗大ゴミはふたつになりそうですね……」




 大淀「そういえば……」

 提督「ん? どうしたんです?」

 大淀「いえ、先ほど提督が夕立ちゃんと同じことをおっしゃっていましたが、どこでお聞きに?」

 提督「ああ、あれは行方不明の恩人がよく電話で言ってたんですよ。なんでか俺に懐いていましたからね」

 大淀「そう……、ですか」

 提督「それにしても、明日まで待つのもめんどくさくなったんで、この死体、海にすてちゃいましょうか」

 大淀「………………………………」

 提督「……どうかされましたか。すごくつらそうですが」

 大淀「いえ、なんでも、ありません」

 提督「冗談ですよ、冗談。心配しなくても、ちゃんと明日ゴミに出します。
    ……あと、つらいことかなんかがあったらいつでも言ってください、あんたのためならなんでもしますよ」

 大淀「最近悩んでいるのはだいたいあなたのことなのですが……」
 

 提督「うおーん、うおーん」

 大淀「……………」カキカキ

 提督「いや、無視しないでくださいよ! ひでえなあ……」

 大淀「用件があるなら早くしてください」

 提督「ううう、電が! 電がついに、俺を、俺を最低だって!」

 大淀「あの電ちゃんを怒らせたんですか……」

 提督「電のプレゼントを結局何にするか悩みながら、
    いつも通り鎮守府近海の沖にまでいったところで、暁を拾いまして」

 大淀「あ、もしもし、憲兵隊ですか?」ガチャ

 提督「正当な権利ですから!……まあ、ひどく暴れたんで締め落としはしましたけど……」

 大淀「あ、もしもし、特高ですか?」ガチャ

 提督「水難事故の対処法ですから! ……で、なぜかボロボロだったんでドックに投げ込んで、
    そのあとプレゼント代わりにしようと電の横に寝かせておいたんですが」

 大淀「艦娘をプレゼント呼ばわりするんですね……」

 提督「起きた電が暁に話しかけたら、虚ろな目で戻らなきゃ……、とか言っていたらしいんで勘違いされたんでしょうね。
    これじゃ、俺……鎮守府を守りたくなくなっちまうよ……」

 大淀「やっとその気になりましたか。来月分の給料は支払われると思うので、
    頑張って再就職先を探してください」

 提督「給料三倍になりますかね?」

 大淀「なる可能性はあります」

 提督「ほんの20センチ×10センチの狭い隙間にー! いででで! やっぱ無理! 無理!」

 大淀「また馬鹿みたいな真似して……」

 提督「止めないでください。残り資源が一日分を切ったんです。
    なんとか艦娘どものの秘密を握らないと俺の命が危ないんです」

 大淀「……どうしてそれが、通気口に頭を突っ込むことになるのですか?」

 提督「鎮守府の敷地内の建物は、非常事態にはすべての隔壁が閉まるみたいで、
    酸欠にならないようにすべての部屋に通気口が通じてるんです」

 大淀「妖精さんぐらいしか通れなさそうな大きさですね」

 提督「妖精……? そう、妖精ですよ! 妖精に探らせましょう!」

 大淀「無理だと思います。基本的に妖精さんは艦娘の味方ですから」

 提督「ふん、どーせ妖精も艦装の整備のときは何してるかわかったもんじゃありませんよ
    匂い嗅いで発情してるかも……いて、いでで! 足の小指! いて!」

 大淀「あ、妖精さんですね。とっても怒ってます」

 提督「なにい……? 俺には見えませんが」

 大淀「ああー、心が汚れているからですね。きっと」

 提督「俺ほど純粋な人間もめずらしいと思うんですよ」

 大淀「それは幼稚と言うのでは……」


投下終了です
来週の終わりまでには続きを投下します


投下します



 提督「やったぜ」

 大淀「提督! どうしたんですか、どうして、こんな量の資源が……!」

 提督「もらっちゃいました! 優しい足長司令長官おじさんに」

 大淀「あの人が……?」

 提督「いや、どうもあの暁、人んちの子だったみたいで、どうせならうちに来てもらえないかって、
    司令長官に許可を取りに行ったんですけど、面倒くさい手順をふっかけられてしまいまして」

 大淀「そう……ですよね」

 提督「でも、指揮権の混乱は有事の際にとんでもないことになりかねないので、
    このままだともっと面倒なことになりますよって説得したら、
    なんと! 見舞いの資源までもらっちゃいました」

 大淀「あれ……?」

 提督「そういえば、何度も暁は初めから君の部下であるとか念押しされましたけど、
    何だったんでしょうね?」

 大淀「あの……、それって、口止め料……」

 提督「いやあ、世の中優しい人ばっかりですね。ハッハッハ!」

 提督「…………………」カシャン

 大淀「…………………」

 提督「さっさと作れよー」ガシャン

 大淀「…………………」

 提督「おるうあああああああああ」ガシャン

 大淀「…………………」

 提督「産め! 神の子を!」ガッシャーン

 大淀「あ、妖精さんに当たりました。カンカンに怒ってます」

 提督「いや、おかしいでしょう! 何でさっきから資源投げ込んでるのに、
    建造すらやってくれないんで……ブベッ!」

 大淀「投げ返してきましたね。提督、何か足りないものがあるのでは?」

 提督「すこしぐらい心配してくれてもいいじゃないですか……。
    えーっと、鉄に油、弾薬にボーキ、適量はわかんないですけど、各々単位にして100くらいはつぎ込んでますね」

 大淀「開発資源は……?」

 提督「なにそれ、新しいおもちゃらしき?」

 大淀「何キャラですか……雷ちゃんと一緒に建造したときに使いませんでしたか?」

 提督「いや、今も陸軍時代も秘書にすべて任せてましたから、ちょっとわかりませんね」

 大淀「残念ですが、これでは建造できませんね」
 
 提督「えー! そんな、これじゃあジリ貧ですよ、クソ! 足長が悪いよ足長がー!」

 大淀「手のひら返しすごいですね……」




 提督「いやあ、人間関係って恐ろしい……」

 大淀「やっと自覚して省みたのですね」

 提督「俺はいつでも人気者ですよ! ……じゃなくて、今日も演習場の机で仮眠しようと
    出てったんですが、なんか、あの新参提督が他の提督から爪はじきにされているみたいですね」

 大淀「提督のおかげで、他の提督たちはさらに仲良くなったと聞いていますが」

 提督「なんか足長司令長官おじさんの不興を買ったみたいです」

 大淀「あの、その言い方、やめたほうが……」

 提督「暁の元提督らしいんで、俺は挨拶しようとしたんですけど、
    なんかスカッとしたかったらしく、演習を挑んできましたね」

 大淀「……またネルソンタッチですか」

 提督「いや、たまには気分を変えようと単縦でいったら、なんかあいつら妙にやる気満々で、
    B判定で勝ちました。その提督はなんか死にそうな顔になってましたけど」

 大淀「無理もありませんね……」

 提督「まあ、俺も陸軍時代、撤退戦ではいつも後衛やらされてましたから
    あの提督の気持ちもわかりますってばよ」

 大淀「いつも人気者じゃなかったんですか?」

 提督「うおーん、うおーん」

 大淀「あの、根こそぎチリ紙持っていくのやめてください。迷惑です」

 提督「ああ、失礼……じゃなくて、天龍に嫌われました。どうしましょう」

 大淀「まだ好かれていると思っていたのですか……」

 提督「いや、今回は俺に非はありませんよ! 多分……」

 大淀「どうでしょうか?」

 提督「……信用ないですね。まあいいや、なんかうちの艦娘の寮の方で物音が聞こえたんで、
    何かなーってそっちに行ったら、木曽と天龍が揉み合ってたんですよ
    あ! 揉み合ってって、なんだかいやらしいですね! 」

 大淀「あの、続きを」

 提督「急いで割って入って話を聞いたら、天龍が何か他の提督のところにカチコミに行こうとしてたらしいです」

 大淀「………………!」

 提督「天龍は泣きそうになりながら、他にも同じ目になってるやつが沢山いるんだとか
    あいつら何も楽しいことも知らずに沈んじまうんだぞとか言ってましたね」

 大淀「………………」

 提督「陸軍としては海軍に反対である。とでも言おうかと思いましたけど、
    さすがに冗談言えるかんじじゃなかったんで黙ってましたら、何とか言えよとか
    ……大丈夫ですか?」

 大淀「…………え、ああ、はい」

 提督「前に言ったじゃないですか、大淀さん。 俺を信じてくださいよ」 

 大淀「はい、そうですね……」

 提督「うおーん、うおーん」

 大淀「あ、そこに紙やすりが積んでありますからそれを使ってください」

 提督「あ、ご丁寧に……じゃなくて、」

 大淀「……それで、今度はどの艦娘に嫌われたのですか」

 提督「雷です。でも今度も俺に落ち度はありませんよ!」

 大淀「それはもう何度も聞きましたが」

 提督「今回は本当です。いやね、お前のおかげで今の俺の艦隊はもっているって、
    お礼をしたくて、褒め続けていたんですが」

 大淀「なぜ他の娘たちにはそれができなかったんですか……」

 提督「で、なーんか、それを続けていたら泣き出して逃げちゃって」

 大淀「あんまりに寄ってくるから、怖くなったのでは?」
 
 提督「そんな! 俺のどこが不審者に見えるんですか!」
  
 大淀「それも何度も言ったことです」
 
 提督「ああ、俺の味方はどこにいるや、全世界が知らんと欲す」

 大淀「結局それ、見つかりませんよね?」



 提督「いやあ、世の中悪い人はいませんね!」

 大淀「なんですか、いきなり……酔っぱらっていらっしゃるのですか?」

 提督「なにがあったか聞きたいですか? ……そうですか! 聞きたいですか!」
 
 大淀「うるさい……勤務時間じゃないのですから、絡まないで……」

 提督「今日は近くの飲み屋に言ったんですが、あの新参提督に会っちゃいまして!
    いやあ、話してみると中々気の合うやつでしたよ!」

 大淀「……なんですか、それ」

 提督「すごい落ち込んでいたんで話を聞いたら、司令長官にいきなり皆がやってる戦法のことで
    激しく叱責されて、自分だけがやっていたことにされたんだと「いい加減にしてください!」」

 提督「………………………………」

 大淀「提督、あなたもわかっているでしょう! その人がどんなことをしてきたのか! 
    そしてその行為がどのようなことであるのか!」
 
 提督「……ダメですよ、大淀さん。それ以上はあなたが言っちゃいけないことです」
 
 大淀「………………え」
   
 提督「ほら、大淀さん、上層部の直属じゃないですか。
    やっぱり、そういう偏見ありきでの発言はしちゃいけないと思うんです」

 大淀「………」

 提督「でも、そいつも根はいい奴みたいですよ。
    司令長官に言われて断ることができなかったけど、本当はやりたくなかったって」

 大淀「失礼します……」

 提督「あれ、何か気に障ることでも言っちゃいましたか? 大淀さーん」







 
 大淀「………………」カタカタ 

     
      某提督についての報告
  元陸軍少将の………について……
  ……品性は下劣であり………能力、態度……皆無で……
  ………異常な思考を…………このことから…………
  陸軍でも……何らかの後ろ盾に…………出世を……
  ……中将……関係は……不明………
  

 大淀「………………」カタカタ 

 あなたが言っちゃいけないことです
  
 大淀「………………っ」

 大淀「…………………」ポタポタ

 大淀「…………………」ガタッ

  ガチャ………カッ、……カッ、……ッ














 

 





 提督「………………………………………ハハハ」


投下終了です

ミス、
また次の来週の終わりまでには続きを投下します


 提督「おーよどさーん」

 大淀「………………」

 提督「あの提督から、怖い話聞いちゃいましたよ。司令長官殿の建物には女の亡霊がいて、
    夜な夜なすすり泣きが聞こえてくるとか……」

 大淀「………………」

 提督「……怒ってます?」

 大淀「……申し訳ありません。ぼんやりしてしまいました」

 提督「へー、珍しいですね。あ、そうだ。
    駆逐艦娘が七名ほど、俺の下に配置換えになりましたから」

 大淀「え……」

 提督「あの提督に艦娘が足りないと相談したら、資源と引き換えに何人か寄越してくれたんです」

 大淀「…………」

 提督「いやあ、やっぱり持つべきものは友ですね! しっかし、何を考えて捨て艦なんてやるんでしょう。
    こんなにコストがかかったら、普通は損すると思うんですよ」

 大淀「……通常の五倍ほどで、換算されてしまっていますね」

 提督「ゲッ、騙されましたか、資源も以前の量に戻っちまったのに。
    まあ、なぜか天龍達の態度はちょっと軟化しましたから、良いとしますかね」

 大淀「……提督は、何をお考えなのですか……?」

 提督「え、……ハハハ、ばれてしまってはしょうがない。
    俺の目的は出世を重ね、英雄になり、ゆくゆくはこの海軍を牛耳ってやることです!」

 大淀「……もう、結構です……」

 提督「そんな顔しないでくださいよ。……まあ、今は、
    大淀さんと、たまに話をする間柄でいたいぐらいですかね」

 大淀「……………………………………………………………………
    はあ、……それぐらいなら、暇があるときならば、お付き合いします」

 提督「え、いいんですか?」

 大淀「今もそう変わりませんから。提督が懲戒免職になるまでぐらい、大丈夫です」

 提督「嫌なこと言わないで下さいよ……」


 提督「大淀さん、大淀さんは俺の友達ですよね」

 大淀「はあ、誠に不本意ながら」

 提督「もう、意味わかんないんですよ! あの新参提督、暁を保護したかとか聞いてきて、
    頷いたらいきなり、あの女の言った通りだとか怒り出して、
    支払いを俺に押し付けて帰っていったんですよ! あんまりにもひどくないですか!」

 大淀「提督……逆に考えたらどうでしょう」

 提督「逆に……?」

 大淀「そんなことで提督に対して怒るのでしたら、そんな人とはそこで手を切れてよかったと思うのです」

 提督「おお、……って、なんだか久々に親身になってくれましたね」

 大淀「一応、約束しましたから」

 提督「いやあ、大淀さんのそういう律儀なとこ、俺はとっても素敵だと思いますよ」


 提督「うーん、いてて。いってえ~」

 大淀「おはようございます。……あら、なんだか、提督の頬から秋の気配を感じます」

 提督「ちょっとは心配してくださいよ。俺の心は冬のようです」

 大淀「冗談です。ほら、こちらに来てください。手当てしますから」

 提督「え、マジですか。やった! 女の子に手当てしてもらえるなんて夢のようですよ!」

 大淀「……どうしてこんな怪我を?」

 提督「いや、仕事が終わって、また元部下と飲みに行ったんですが、飲みすぎておかしくなりましてね」

 大淀「駄目ですよ。提督。限度は見計らってあげないと」

 提督「いや、おっしゃる通り……そしたら、あなたはこんなところでなにをしているで……」

 大淀「で……?」

 提督「……ダアリヤスか。とか、言われながらビンタくらっちゃいました」

 大淀「……なんだか、どこかの駅員さんみたいな話し方」

 提督「まあ、昔は駅員みたいなかっこはしてましたね……」

 
 提督「……あれ? 大淀さんじゃないですか。奇遇ですね、こんな夜更けに」

 大淀「提督こそ。どうしたのですか?」

 提督「いやあ、今日は満月で、相当綺麗に上がってますからね。ちょっと散歩でもしようかと……あ!」
 
 大淀「……?」

 提督「大淀さん。……月が綺麗ですね」

 大淀「私は嫌いです」

 提督「うぐう! そ、そこまで言わんでもいいじゃないですか。俺、もう、死んでもいいみたいな気持ちになりましたよ!」

 大淀「………………」

 提督「反応すらしてくれねえし! チクショー!」


 提督「あーあー、じゃあもう俺は酒飲んで寝ますよ。まったく」

 大淀「提督……」

 提督「……ん?」

 大淀「もしですよ」

 提督「……はい」

 大淀「もし、絶大な権力を持った人物に、虐遇をうけている人たちがいて、それを提督だけが知っていたら、どうしますか?」

 提督「結構藪から棒ですね。……うーん、やっぱり、俺は権力におもねっちゃいますかね」

 大淀「……茶化しておっしゃっていますか?」

 提督「いやあ、今の時代、権力が無い人がそんなこと告発したって、自分の首が危ないだけですし」

 大淀「そう……ですか」

 提督「あれ、なんですか、なんか蝶だか蛾だかの標本を潰されたような雰囲気になってますが」

 大淀「いえ、ご協力、ありがとうございます」

 提督「え、あれ、今のなんかのアンケートだったんですか?! そんな、安定志向の何が悪いんですか!」

 大淀「それでは、おやすみなさい」

 提督「いや、助けます助けます! そんなこと許せないですよ! ……ああ、いかないで、査定にかかないで!」

 大淀「……………」スタスタ

 提督「ああ、くそっ! 高いワイン開けちまいますよまったく! おやすみさーい!」


 提督「…………」

 提督「……まあ、俺は、告発しませんよ。おれは」

 
 提督「大淀さーん。おはようござ……げえ! 憲兵!」

 大淀「おはようございます。提督。大淀、非常に残念です」

 提督「そんな、俺は何もしてませんし、身に覚えもありません!」

 大淀「何か重大な事件の重要参考人として話をお聞きしたいそうですが……」

 提督「……木曽が、木曽が! 碁盤の産地偽装は儲かるからって!」

 大淀「息を吐くように嘘をつかないでください。大体、ドヤ顔であんなことをおっしゃるから……」

 提督「ええ! 聞いてたんですか! ……俺はもう恥ずかしすぎますよ……ああ、死んでしまいたい」

 大淀「死ぬよりも辛い目にあうかもしれませんね」

 提督「……いやだああ! 拷問はいやだ! ああ! その鉛筆をどこに突っ込む気ですか!」

 大淀「指の間ではないでしょうか?」

 提督「いや、そんなことわかってますよ! ああああ、連れていかれるううう……らっめえええ!」ズルズル

 ギイ……バタン

 大淀「…………はあ」

 
 大淀「……ハア」

 提督「あれえ、なんだか疲れた顔してますね大淀さん」

 大淀「もうお帰りになられたのですか」

 提督「いやあ、本当にただの重要参考人だったみたいです。まあ、こんな悪いこと
     しなそうな顔しているんですから、それも当然だとおもいますけどね!」

 大淀「そういえば、もうお聞きになられましたか?」

 提督「もう聞く素振りすらしてくれませんね……ああ、絞られてるときに聞きましたよ」

 大淀「この鎮守府の司令長官以下四名が、艦娘を監禁し、私的な目的のために利用したとして、
     身柄を拘束され今、取り調べを受けています」
 
 提督「あんな可愛い娘たち捕まえてそんなことするなんて信じられませんよ! まったく………
    あ、そういえば、この鎮守府、提督がもう二人しかいませんよね」

 大淀「……ええ、そうですね」

 提督「そうなると、俺、司令長官補佐になるんじゃないですかね!」

 大淀「…………」

 提督「そんな心底軽蔑した顔で見ないでくださいよ……」


 提督「そういえば、結構前から犯罪行為は行われていたらしいですが、
     なんで今になって明るみにでたんでしょうか?」

 大淀「……内部告発がありました」

 提督「お、ということはあの、新参提督ですか?」

 大淀「私の口から、お話することはできません」

 提督「ああ、そうですね、大淀さんにも立場がありますからね……しっかし、それならあいつが司令長官代理でしょうか
     ちょっと疎遠になりましたけど、菓子折り持ってたら給与あげてくれないかなー」

 大淀「流石に、無理だと、思われるのですが」

 提督「うーん、いや、とりあえず媚びてみます。俺の面の皮は戦艦扶桑の装甲並ですから」

 大淀「微妙なラインですね……」


 提督「オップス……いてえ、ひでえ」

 大淀「大丈夫ですか……?」

 提督「へーきへーき。しかっし最近の若者は切れやすいって本当ですね!」

 大淀「今度はいったい何をしたのですか?」

 提督「俺の非が十割ですか……まあいいですけど。いやね、行ってみたら何だか落ち込んでたんで、
     話を聞いてみたら、南海戦域に行くことになったって言ってるんです」

 大淀「南海ですか……最前線ですね」

 提督「そう、それでやったじゃないですかばんざーいばんざーいって言ったら、
     いきなり殴りかかってきたんですよ! ひどいですよね!」

 大淀「……提督の非が十割です」

 提督「なんでですか……あ、そういえば、ハニトラにもかかったみたいですあの提督。
     肌の白い女に騙されたーって騒いでましたよ。怖いですね」




 


 提督「よっしゃあああ! ポウ! うぇひいいいい!」

 大淀「……提督、なんだかご機嫌ですね」

 提督「……見てたんですか」

 大淀「ええ、初めから」

 提督「…………まあいい、それよりも聞きましたか! 大淀さん!」
 
 大淀「ええ、聞きました。この鎮守府もおしまいですね」

 提督「ふははは! そう、私が司令長官です。図が高いー! 控えおろー!」

 大淀「司令長官カッコカリ、要するに代理です」

 提督「やっと俺に正当な評価がくだったんですね! 今まで通りやればいいって言われたんで、
     独自性が評価されたんだと思います。やったぜ」

 大淀「……いつでも首を切れますということなのでは?」

 提督「俺の配下どもにも自慢してきまーす!」



 提督「全員に土下座されちゃいました」

 大淀「は?」

 提督「本当ですよ! 別件ですけど……」

 大淀「提督がさせたわけではないですよね?」 

 提督「させませんよそんなこと……あの奥さんに浮気された腹いせだったって言ってる
     故、司令長官がいたじゃないですか」

 大淀「あの人の余罪が見つかりましたか?」

 提督「いやあ、雷がどうやらあの人の自覚なきスパイというか、行動を逐一報告するように
     頼まれてたらしくって、いまにも泣きそうな顔で謝りにきましたよ」

 大淀「…………」

 提督「他の皆も一緒に頭下げにきました。まったく、俺がそんなに器が小さいとでも
     思ってるんでしょうかね!」

 大淀「…………」

 提督「とりあえず海外艦と接触してくるように頼みましたけど……
     って、大淀さーん? どうかしましたかー?」

 大淀「……いえ、なんでもありません」








 提督「そういえば、大淀さん。上層部から言われた新しい艦娘の加入についてですが」

 大淀「すでに伺っています。逮捕された提督の傘下の艦娘と、
     監禁されていた艦娘のうち解体を望まなかった者が新しく加わります」

 提督「そうですか。報告ありがとうございます」

 大淀「……本当に大丈夫ですか? とても統率が取れるとは思えないのですが」

 提督「お、心配してくれるんですか? 感激しちゃいますよー?」

 大淀「はい、心配しています」

 提督「……ははは。まあ、大丈夫です。なんとかしますよ……
     おっと、今日の執務はこれで終わりですね。大淀さん。お疲れ様でした」

 大淀「……お疲れ様でした。」

 提督「それでは、おやすみなさい……っと、そうだ、大淀さん」

 大淀「どうしました?」

 提督「あんたのために、これからも偉くなりますから、期待しててくださいね」

 大淀「……はい」





 提督「あー疲れた」

 パシーン!

 あきつ丸『いい加減にするであります!』

 提督「あきつには悪いことしたなあ」

 あきつ丸『自分も、皆も、今の腑抜けた将校殿のために命を張ったわけではないであります!』

 提督「将校殿はやめろっていったのになあ」

 あきつ丸『……自分を罰するならご勝手に。ですが……』

 提督「あーあ」

 あきつ丸『それなら、あなたの居場所に、帰ってきてください……』

 提督「……」






 将校さんが、どんなになっても、私はあなたを尊敬しますよ

 

 提督「さあて、次は、正式な司令長官だ。……がんばるぞー」 

とりあえず一区切り つーか初めの方滑りすぎてんよー


 提督「おーれはちょうかーん、ふーなだいしょーう」ヒョイ

 大淀「提督、こちらにおいておきますね。……それから、船大将は今で言う元帥で、提督はまだまだ遠いです」

 提督「ん? ……ハハハ、相変わらず博識でいらっしゃる」ヒョイ

 大淀「……何をなさっているのですか?」

 提督「いやあ、俺も長官、」

 大淀「カッコカリ、です」

 提督「……長官代理になったことですし、なんか高貴な趣味でも始めようと思いましてね」

 大淀「趣味からですか……」

 提督「と、いうことで、始めたんですよ。ボトルシップ」

 大淀「…………」

 提督「ああ、そんな目で見ないで! ……つーか、大淀さん、なんか俺にはとげとげしいですね……」

 大淀「やっとお気づきになられたのですか……」

 提督「……そうだ、じゃあこうしましょう、俺が次に偉くなったら大淀さん、優しさマシマシってことに」

 大淀「……うーん、ううーん、……まあ、いいです……」

 提督「そこまで悩まなくてもいいじゃないですか……じゃあ、頑張りますよ! カッコカリをぽろっと落とします!」

 大淀「はい、応援しています。……提督の首が、ぽろっと落ちるまで」

 提督「ヒエー……」

 

 

 

 


 
 提督「そういえば、新任の提督、来ないですね。……未だに俺一人です」ヒョイ

 大淀「カッコカリですから……、冗談でもなく、提督がミスを犯した際に、円滑に罷免するつもりでしょう」

 提督「……カッコカリって表現、気に入ったんですか?」

 大淀「―――――」

 提督「お、赤くなった。いやあ、大淀さんのそんな顔、初めて――」

 大淀「……何か?」

 提督「一瞬で凍り付きましたね……おっととあぶねあぶね、崩すところだった」

 大淀「……見たところ、客船には見えませんが、何を作っていらっしゃるのですか?」

 提督「ふ、俺は気がついたのです。支持されるためには親しみやすさこそ、肝要だと」

 大淀「親しみやすさ、ですか」

 提督「つーことで、俺が今作っているのは、タンカーです!」ドヤア

 大淀「………………」

 提督「お、そのなんともコメントできないって顔、ここ最近増えたんじゃないですか?」



 


  提督「アッチ、アッチ! いてててて」

  大淀「だめじゃないですか、提督。勝手に軍服を染めつけては」

  提督「うぐぐ、絶対にもっと優しくなってもらいますからね!」

  大淀「さて、それでは、応急手当ぐらいはしますから、患部を見せてください」

  提督「やだ、大淀さんったら、ダイターン」 

  大淀「調子に乗らないでください」

  提督「はい! すいませんっした!」

  大淀「ハア……見たところ、紅茶か何かをかけられたようですが」

  提督「いやあ、なんか、食堂で二人の艦娘が険悪な雰囲気になってたんで」

  大淀「まさか、止めに入られたのですか?」

  提督「まさかって……まあ、お察しの通り、天龍を仲裁に入れさせたら、ヒートアップしまして、このざまですよ」

  大淀「そこまで激しく……諍いは無事に解決したのですか?」

  提督「俺の悲鳴が聞こえたのか、何とかその場は収まりました。あーいてえいてえ」

  大淀「それは……そうですか」

  提督「あ、紅茶といえば新入りの金剛なんですが、俺が近寄ると流暢な日本語で挨拶するんですよ!」

  大淀「……照れているのですよ。きっと」

  提督「大淀さんったら、優しいなあ!」
  


 大淀「その天龍さんですが、近ごろ木曽さんと一緒に指揮について学ばれているようです」

 提督「いやあ、いいですね! その向上心。俺、高く評価しちゃいますよ!」

 大淀「彼女たちは姉妹のこともありますから……自分が支えることを強く意識しているのでしょう」

 提督「ああ、球磨たちのことですか……しかしそれなら俺、あいつらに全部任せて、ずーとごろごろしちゃおうかな?」

 大淀「現行の規定は、ある状況以上の決定はすべて人間が行う、とされています」

 提督「結局、大きな決断を下すのは、人ってことですか」

 大淀「そういうことです。……艦娘は提督にはなれないのです」

 提督「上の立場は責任重大ってことですね! あれ、その、重大な立場にいるのは、この鎮守府では誰だろー?」

 大淀「……次のお方に期待しましょうか」



  

 
提督「あっちで喧嘩、こっちで喧嘩。やになっちゃうなーもう」

大淀「提督。お知らせしたいことが……」

提督「うう、前はすぐ辞職を勧めてきた大淀さんとこんなに仲良くなれるなんて……提督、感激!」

大淀「やっぱりむいていないとおもいますー……気はお済みになられましたか?」

提督「ああ、ありがとうございます。で、どうしたんですか」

大淀「いえ、資源についてなのですが、ボーキサイトが支給されていないようなのです」

提督「またですか! 海に来てそんな心配とは無縁になると思ってたんですがねえ……」

大淀「提督、備蓄資源はどの程度……?」

提督「まあ、カッコカリになってから見てませんけれど、前に見たときは結構どっさりあったんで大丈夫ですよ!」

大淀「提督。私、ひどく心配になってきました……」


提督「案の定でした!」

大淀「ボーキサイト、すこししか残っていませんでしたね」

提督「少量残すってのがいやらしいですよまったく! 野良空母にでも襲われたんですかね!」

大淀「以前の捕り物のどさくさに紛れて、不法に売り払われた可能性があります」

提督「訴え出ても聞き入れやしないでしょうし……。ああ、いやだいやだ」

大淀「提督……」

提督「しっかし面倒くさい、あーあ、頑張って遠征報酬で受領するしかないでしょうかね」

大淀「……そうですね。頑張りましょう、提督」

提督「まさか上層部もこの状態で無理難題を押し付けたりしないでしょう。多分」

大淀「…………………………そう、ですね」




提督「でもまあ、嬉しいこともひとつありましたね」

大淀「……? 何かあったのですか?」

提督「大淀さん、俺が横流しした可能性を全く考えてないじゃないですか」

大淀「――――!」

提督「いや、そんな息を飲まれても困るんですが。でも、なんだかんだ俺のことを信じたんですね」

大淀「……いえ、ただ気がつかなかっただけです。」

提督「お、ツンデレ! ただ俺はもっとストレートな方が……」

大淀「提督。それ以上は」

提督「ああ、失礼。……さあて、気分良く今日の仕事をはじめちゃいますか」

大淀「私は、少し資料を整理して参ります」

提督「ああ、ありがとーございます……んん? 指令書が届いたみたいです。中身はなにかなーっと」


提督「ぬ、ぬーん」

大淀「あら、どうされました提督? いつもよりも気の抜けた顔さをれて」

提督「ふへへ、僕の烈風だぞー」

大淀「……何してらっしゃるんですか! 指令書を紙飛行機にするなんて!」

提督「あ、これは違う紙です。指令書はこっち」ヒラヒラ

大淀「もう! ……それで、どのような、」

提督「南東方面において発見された空母型八隻含む機動艦隊複数を撃滅せよ」

大淀「え」

提督「エアカバーなしで敵の機動艦隊を倒せ! ですってさ。もう、やめたくなりますよー」








提督「しかし、ここまでのごり押しするってことは、上は皆、此処を一度更地にする気でしょうね」

大淀「…………」

提督「今頃、次に割り振る派閥別の人員比の相談でもしてるんじゃないですかね?」

大淀「そんな―――」

提督「俺たちがこの任務を果たせなければ、今ここにいる艦娘は殆ど残らないでしょう」

大淀「…………ッ」

提督「さあて、せいぜい、頑張りましょう、大淀さん」


提督「で、期日は……一か月じゃないですか、いくらなんでもですよねえ」

大淀「……如何としても、やり遂げなければなりません」

提督「うん、その通りです。そして、大淀さん、そのために必要なのは!」

大淀「この鎮守府の艦娘たちの混乱を鎮め、一つにまとめることです」

提督「えー、もっとこう、大型建造にゆめをたくす、とか」

大淀「現在、この鎮守府はおおよそ三つのグループに分かれています」

提督「ぐ! ……へえ、そうですか。そのグループを一つにしないといけないんですね」

大淀「そして、この三組には共通点があります」

提督「お! いいですねー。それを突っつきまわせばなんとかなりますね!」

大淀「三組とも、提督を欠片も信用していないのです」

提督「…………なんて思いがけない一致点!」


大淀「まず、囮の役割を負わされた艦娘たちの組。主に駆逐艦です」

提督「ああ、あの卑劣な戦術……」

大淀「彼女たちは、他の艦娘に対して心理的な溝を感じずにはいられないようです」

提督「そりゃあ確かに」

大淀「寵愛を受けていた一部の艦娘の姿を遠目で見る機会も存在したのだとか」

提督「うーん、もっと気合の入ったロリコン提督がいればよかったんですがねえ」

大淀「結果、彼女たちは轟沈する可能性に対して極端に恐れをいだいています」

提督「………………」

大淀「そのような状況下にいたわけですから、提督を信頼する事の方が難しいでしょうね……」



大淀「次に鎮守府の地下で監禁されていた艦娘たち。重巡が多いです」

提督「装甲もタンクも大きそうでしたね!」

大淀「……提督。彼女たちの前で絶対にそのようなことをいってはダメです」

提督「そんな! 俺から下ネタを奪おうってんですか!」

大淀「もっとも、提督は、このことはよく理解されているようですが」

提督「……ちょっと、なんのことです?」

大淀「提督は彼女たちの前には不用意に姿を現されていません……気を使われていたのですね」

提督「ん、いや、あれは……」

大淀「あら、提督のそのような顔、拝見するのは始めてです」

提督「……以前の意趣返しですか……」


提督「で、最後ですよ。OH!淀さん」

大淀「大淀です。……その金剛さんたち、前の提督たちの主力です」

提督「主力! じゃあそいつらを即、ぶっこませれば……」

大淀「策もなしに突撃させたならば惨敗します。いえ、そもそも提督の命令を素直に聞き入れるか」

提督「提督の言うことになんて絶対に負けたりしない(キッ!)ってことですか。これでも俺、上官なのに」

大淀「彼女たちは前の提督たちが何者かの罠にかけられたと考えています。その所業も信じていない艦娘が殆どです」

提督「あれー、重巡たちやくちくたちは……」

大淀「重巡の皆さんは口をつぐんで、また、表にも出さないようにしています。駆逐艦たちは如何様にも騙せると考えているのでは?」

提督「なんで、そんなに厚い信頼を……」

大淀「彼女たちの前では理想の提督でしたから……そんなことをしたはずがないと、思いたいのです」

提督「実際に現場を見たら、そうは言えないと思いますけどね」

大淀「……知っていたとしても、何も言うことができなかった艦娘もいるかもしれません……」

提督「……………………」



提督「なるほど……どうにもなりませんね!」

大淀「どうにかしなくては、提督の首も危ういですよ?」

提督「いやだって、なりふり構わず沈めなきゃいけないのに、こっちは一隻も沈めるなってのは……」

大淀「……確かに、どの艦娘が沈んだとしても、もはや結束は不可能でしょう」

提督「おまけにもうこの時点で、不和をかかえまくってますからね。あーあ」

大淀「提督……」

提督「どっかに錬度が高くって、文句言いながらも命令を聞いてくれて、無茶ぶりをこなしてくれる艦娘はいないかなー」


大淀「おはようございますていと……く?」

絨毯「」フックラ

大淀「…………」ズリズリ

大淀「おはようございます。提督!」

提督「布の下からこんにち……あれ、引っかかった、でれ、出れない! 大淀さんー助けてくださーい!」

大淀「…………はあ」ズリズリ

提督「おお、出れた」

大淀「さあ、今日も執務を開始しましょう」

提督「うん、スルーされているのはわかってますけど、理由だけ聞いてください」

大淀「……なんでしょうか」

提督「昨日、潜水艦たちから日に何度出撃すればいいか伺いがありまして」

大淀「…………彼女たちが」

提督「そもそも、そんな頻度で出撃させないと言って、されてない改装までしてやったらこちらを神の如く崇めだしまして」

大淀「彼女たちは資源回収のために、激務にさらされていたみたいです」

提督「そう、つーことで、大淀さん、とりあえず出撃させましょう」

大淀「オリョール海域へですか?」

提督「なにいってんですか、この鎮守府でも最上位錬度の連中ですよ、行先は決まってます!」


提督「やっぱりゴーヤがNO1!」

大淀「空母撃沈一、小破一。恐るべき戦果です」

提督「もう潜水艦だけでいいんじゃないですかね! 昔のゲームだと、U-ボートが英国海軍を殲滅してたんですよ」

大淀「その再現性はどうなんでしょう?」

提督「このこと見越して、鍛えてたんだとしたら、前任者たちはすげえ有能だったんでしょうね」

大淀「……ですが、提督、このように能動的な深海棲艦は……」

提督「よっしゃ、もう大勝利は目前! 希望に向かってゴーってやつです!」

大淀「あの、提督、おはなしが……」

提督「さあいけ、潜水艦隊は海上最強! ハハハ!」

大淀「…………」


提督「にしても、木曽は本当にすごいですね」

大淀「はい。彼女のおかげで騒動の発生も抑えられているようです」

提督「まあ、まだ実戦でまとまれるかはわからないみたいですが」

大淀「演習だけでも艦娘たちの精神状態の悪化の兆しが見て取られています」

提督「駆逐艦どもはそうでしょう。 他は経験不足と疑念のせいですかね?」

大淀「そのようです。今は対空訓練を中心に行っていますが……」

提督「今の状態じゃあ殴り合えないですし、そんな感じでいいんじゃないですか?」

大淀「……そうですね。それで宜しいと思われます」

提督「もし木曽がいなかったら、まさに三式弾状態になるところでしたね。ハハハ」

大淀「まったく笑えません」


提督「なんにしても、融和は大事って話です」

大淀「そうですね……話は変わりますが提督。間宮さんのところに艦娘をお使いに頼まれましたか?」

提督「ああ、何回か頼みましたが。……何かあったんですか」

大淀「いえ、情報処理が一時的に混乱したのか、ギンバイ扱いされかける事件がありました」

提督「げ、マジですか。悪いことしたかなあ」

大淀「気弱な艦娘は即座に認めてしまいましたが、まもなく容疑は晴れ、謝罪がおこなわれました」

提督「うーん、まあ一応俺も謝っておきますか。あ、大淀さん、その気弱な子の名前は?」

大淀「駆逐艦潮、潮ちゃんです」

提督「うしお、潮ね……」


提督「うおーん、うおーん。俺はもうだめだ」

大淀「敵機動艦隊の対潜防御が飛躍的に向上しました。空母一隻をさらに沈めたものの……」

提督「もはや、戦果を挙げることは難しいですか……なんで対策なんてうたれてんですか」

大淀「能動的深海棲艦は受動的と違い、こちらの行動に対して対策を取ります」

提督「じゃあもうこの潜水艦隊作戦は通じない?」

大淀「残念ながら、可能性は極めて高いと思われます」

提督「うぐ、ああ、俺の潜水艦隊が……このままじゃお先は真っ暗だあ!」


大淀「もう。さっさと立ち直って下さい。あと三週間ですよ」

提督「そうですね! つーことで、次の作戦です」

大淀「…………」

提督「とりあえず、大淀さん、敵の残りは」

大淀「空母三隻ずつを中心とする敵艦隊が二つです」

提督「かき集めた航空機は?」

大淀「わずかに正規空母が一隻分、出してしまったらもう補給は効きません」

提督「じゃあそれ、ぱーっと使っちゃいましょうか!」

大淀「……少々、時期尚早ではありませんか? もっと、使うべきときが……」

提督「出し惜しみしたら駄目ですよ、大淀さん! 残す手札に身を縛られるなんてこともおこるかもしれませんからね!」

大淀「ッ!…………」

提督「お、一理あるかもって考えましたね? いいんですよー認めちゃっても」


提督「で、大淀さんに認めてもらったんで、作戦を説明します」

大淀「……お願いします」

提督「大淀さん、テンション低いですよ! もっとあげていきましょうよ、ね」

大淀「…………」

提督「うんまあ、付き合わないで結構。……とりあえず、 水上打撃部隊組みます」

大淀「はい」

提督「できるだけ夕暮れに近づいて、敵艦載機をつり出します」

大淀「はい?」

提督「その隙に横から別働艦隊を差し向けて叩きつぶします。何か質問は?」

大淀「……本気でおしゃっているんですか」

提督「俺はいつだって本気ですよ、大淀さん」


大淀「こんな、提督! お考え直しを!」

提督「……ひとつは!」

大淀「………」

提督「ひとつは、空母三隻ならば艤装をすべて対空とすることで、制空権を失うことはないでしょう」

大淀「……しかし!」

提督「そうして東側から潜水艦隊を近づけ、もう一つの機動艦隊の接近を牽制しつつ、護衛の駆逐艦を引き寄せます」

大淀「……牽制がそう、うまくいくでしょうか」

提督「確かに、能動的深海棲艦は対応しますが、そこからさらに考えることは一部を除いてできません。……大丈夫です」

大淀「…………」


提督「そして、護衛の減った敵空母へ西側から水雷戦隊を突入させ叩き潰します」

大淀「水雷戦隊を、ですか」

提督「艦娘はどういうわけか駆逐艦の砲撃で空母を沈められますからね。これが実質ふたつめですか」

大淀「…………」

提督「後は、まあこれは上層部に感謝することかもしれませんが、指揮権は俺一本に統一されています。タイムラグは絶対にありません」

大淀「……わかり、ました」


大淀「人員は、どういたしましょう」

提督「水雷は初期からいたメンバーに任せて、連合艦隊のほうは三つの派閥から均等に割きます」

大淀「ですが、それでは……!」

提督「同じ立場に追い込まれれば、さすがに協力せざる得ないでしょう」

大淀「彼女たちには囮として扱われた艦娘もいます。この状況では……」

提督「経験豊富な戦艦連中がカバーしますよ。俺に対する悪感情は、まあ何とかします」

大淀「……では、私から言うことは、もはやありません」

提督「……まあ、下品な言い方になりますが、胸ちらつかせて近づいてきた男を、右のげんこつ見せつつ、
   左足で金的をお見舞いするだけの話です。……かならず、勝ちますよ」



提督「と、熱く言ったところでちょっと崩れたらお終いなんですけどね! 大淀さん、ほうこーく!」

大淀「敵空母三隻の撃破を確認」

提督「うーん、とりあえずは蹴り潰せましたか。で、損害は」

大淀「潜水艦隊、水雷戦隊は共に損害は軽微。ですが……」

提督「ですが……ですか、え、もしや……」

大淀「…………」チラリ

提督「えー、本当ですか、やだなあ。木曽に腹を切らされますよー」

大淀「……演技なのか、どうなのでしょうか……水上艦隊の被害甚大、大破多数。されども轟沈はなし、です」


提督「さすがに水上艦隊! おかげでアルミはほぼからっけつですが」

大淀「しかしそれでも、駆逐艦のある程度の恐慌は避けられなかったようです」

提督「そこを重巡も戦艦もうまくフォローしたんで沈まんで済みましたでしょう? やっぱり物を言うのは絆ですね!」

大淀「ある意味で、水上艦隊の艦娘は同じ立場に追い込まれていました。仲が良化したというわけでは……」

提督「……まあ、確かにそうですね。今後は同じ派閥で組んでも差し障りがないようにしないといけないわけですし」

大淀「残り一つ、三隻の空母を含む機動艦隊を撃破しなければなりません。現状を打破しなければ」

提督「……そうだ! 祝賀カレー大会でも開きましょうか! 大淀さん、ボーキ使って鍋を……」

大淀「あの、一つ覚えると一つ忘れるようなことは、やめてくださいませんか?」

大淀「では、最後の敵機動艦隊に関する方針を」

提督「もう飛行機は飛ばせませんから、嵐を待ちましょうか、ね」

大淀「…………」

提督「この季節ですから、後二度か三度か天気は荒れるでしょう。そのとき殴ります」

大淀「……そうですね、それしかありませんか」

提督「あれ、なんだか素直。もっと反対されると思ってましたが」

大淀「もう、慣れました。もはや私たちに残された手段は殆ど残されていません。……提督の指示に従います」

提督「ワタシ達……。……運と感に関しちゃあこの国でぶっちぎりの自信があります。まあ、なんとかなります……しますよ」

提督「そうだ、大淀さん、何か欲しいものあったりしますか?」

大淀「はい?」

提督「曲がりなりにもここまで来れたのは大淀さんのおかげですからね。恩賞ってことで」

大淀「完了前に褒美のことを考えるのは、あまりよろしくないかと」

提督「あー……まあ、でも、何か知らないけど部下どもに嫌われている中で、頑張ってくれるのは事実ですから」

大淀「……でしたら、まずは、カッコ……正式な司令長官になってください。それから考えます」

提督「へーい、わかりましたよ。しっかし、何とか人気取りしないとなあ、腹刺されるのは御免ですよ」


 大淀「………………」

 ……鎮守府において、……散見、……分断の、……せよ。

 大淀「……承知しました」

 キイ、スタ、スタ、……



 

 提督「………………うーん、有難いなあ、大淀さん」

 提督「でも、中途半端ってのは一番よくない。半端に残ると、修復するのも面倒だし」

 提督「やるなら、徹底的に、ですよ」


 大淀「大変です! 提督!」

 提督「なんですかー大淀さん、俺、今、孤独のグルメに興じてたんですが――」

 大淀「食堂で、愛宕さん他数名が恐慌をおこしました! そこから混乱が各所に波及しています!」

 提督「一人飯が仇になったか……原因は明らかになってますー?」

 大淀「……駆逐艦娘の証言によると、机の上に仮面のようなものが置かれていて、」

 提督「仮面……?」

 大淀「はい。遠巻きに見ていたら、入ってきた重巡たちが目撃、悲鳴を上げて動揺していた、と」

 提督「……前の元提督たちの忘れ物かもしれませんね」

 大淀「あの仮面が、ですか」

 提督「重巡どものトラウマの場面にいつも視界に写ってたんでしょう。あーあ」

 提督「とにかく、混乱を収拾しましょう。大淀さん、食堂にいた艦娘はー」

 大淀「それぞれの艦種が数名ずつ。早急に重巡たちを運ばせ、一応の緘口令を敷きました」

 提督「悲鳴聞いて集まってきた連中もいるし、知れ渡るのは時間の問題」

 大淀「はい……医務室に運ばれた者たちも異様な様子で怯え続けています」

 提督「それを無理やり見舞って広がると。とりあえず、……倉庫さらって他にないか探します。大淀さんは」

 大淀「引き続き、混乱の収拾に努め、また原因を追究します」

 提督「……置いた奴。置いたやつかー……戦艦どもか、駆逐どもか、あんまり突っ込みたくないですね」

 提督「ヒックシュン! 倉庫はひっくり返してさがしましたが、他には発見できなかったそうです」

 大淀「わかりました。引き続き出所を明らかにします。ただ、動揺は表面上は収拾されましたが、」

 提督「底は疑心暗鬼と、元提督どものぼう、ヘクシュン、が戻ってき、て……大淀さん、窓開けてください」

 大淀「はい。……しかし、提督。現在の状況で任務遂行は」ガチャ、ギイー

 提督「扉も開けますか、…………うん、数日後に艦娘集めて集会します。それまで、木曽と話し合います」ガチャ、

 大淀「……木曽さんなら、この鎮守府での人望も厚いです」

 提督「はい、収まりどころを決めなければ、ということで、大淀さん。数日燃料輸送で留守にします」

 大淀「遠征路上で協議されるのですか? しかし、今の鎮守府に――」

 提督「このままだと、感情的な意見に惑わされるかもしれませんから、どちらかに傾くと終わりです」

 大淀「……かしこまりました。留守中は、お任せください」

 提督「つーことで、木曽。近隣の島に、タンカー護衛、時間は一日だ」

 木曽「……おい、この初期の人員で、タンカー護衛? 状況を分かっているのか、お前」

 提督「十二分に理解しているよ。が、それでもこの遠征で話し合った方がいい」

 木曽「……わかった。こっちとしても策はない。しかしだ、提督」

 提督「なんだ?」

 木曽「もし逃げるような真似をしてみろ、俺が追いかけて腹を切らせてやる」

 提督「……ああ、肝に命じるよ」


 
 提督「おいおい、こんな簡単に認めちまうなよ」

 提督「しかも、それから動かずな言いきりっぱなしってことは、心根は強いんだな」

 提督「なあ、潮。どうせ皆を守るなら、もっとでっかいことしないか? 大丈夫、やるかやらないかだけだ」


 ザアアアア……ザアアアア……

 提督「……やるかやらないかだけか」



 提督「痛ててて、木曽やーい、まさかタンカーが爆発するなんて……木曽?」

 木曽「…………」

 提督「木曽?……呼吸、……してる」

 木曽「…………」

 提督「心臓、異常なーし、おっぱい、小さーい」ペタペタ

 木曽「…………」

 提督「ツッコミなしと、大破って感じか、……何とか、近くの根拠地にたどりつかないとなあ……」

>>93  がおかしくなっているので、修正します。


 提督「とにかく、混乱を収拾しましょう。大淀さん、食堂にいた艦娘はー」

 大淀「それぞれの艦種が数名ずつ。早急に重巡たちを運ばせ、一応の緘口令を敷きました」

 提督「悲鳴聞いて集まってきた連中もいるし、知れ渡るのは時間の問題」

 大淀「はい……医務室に運ばれた者たちも異様な様子で怯え続けています」

 提督「それを無理やり見舞って広がると。とりあえず、……倉庫さらって他にないか探します。大淀さんは」

 大淀「引き続き、混乱の収拾に努め、また原因を追究します」

 提督「……置いた奴。置いたやつかー……戦艦どもか、駆逐どもか、あんまり突っ込みたくないですね」

 提督「ヒックシュン! 倉庫はひっくり返してさがしましたが、他には発見できなかったそうです」

 大淀「わかりました。引き続き出所を明らかにします。ただ、動揺は表面上は収拾されましたが、」

 提督「底は疑心暗鬼と、元提督どものぼう、ヘクシュン、が戻ってき、て……大淀さん、窓開けてください」
 
 大淀「はい。……元提督が、なんですか?」

 提督「ああ、元提督どもの亡霊が戻ってきたみたいってことです」
 
 大淀「そう、ですね。……話は変わりますが、提督。任務遂行については……」ガチャ、ギイー

 提督「扉も開けますか、…………うん、数日後に艦娘集めて集会します。それまで、木曽と話し合います」ガチャ、

 大淀「……木曽さんですか、確かに、この鎮守府での人望においてではもっとも厚いです」

 提督「はい、収まりどころを決めなければ、ということで、大淀さん。数日燃料輸送で留守にします」

 大淀「遠征路上で協議されるのですか? しかし、今の鎮守府に――」

 提督「このままだと、感情的な意見に惑わされるかもしれませんから、どちらかに傾くと終わりです」

 大淀「……かしこまりました。留守中は、お任せください」

 修正完了。すみませんでした

>>96からの続きです

提督「ええーっと、星の運行から? 記憶にある地図通りの場所なら、あっちか」

提督「木曽を背負ってスタコラスタコラと、一日あればいけるかな?」

提督「ただ、記憶にあるとしたら、ここ、前線かもしれんのだよなあ……って、ゲッ!」ペカー

提督「今通過した光源、深海棲艦のじゃねえか……」

提督「なんちゃら級なんちゃら。まあ、名称は忘れたけど、一応、人型だったかな?」

提督「ジャングルを隠れて進むしかないか……。 まーた熱帯林生活かよ、いやーだ、嫌だ!」



提督「深夜の熱帯林を光源避けながら進んでーと、たまーにしか見ないから、もう奪回寸前なのか?」

提督「そろそろ勢力圏をぬければいいんだがなあ……敵中枢とかに漂着せんで、本当に良かった」

提督「木曽もとりあえずは安定してるみたいだしっと……げえ、段差で狭まってやがる」

提督「しかも、また光源……登れそうにないし、回り道も見えん」

提督「……突破しろってことか? マジで?」

本当に申し訳ありません。次回から必ず修正します。ご指摘ありがとうございました。

 提督「……こうやって這いずってると、陸にいた頃を思い出すなあ」

 提督「あきつはげんきにしてるかな……っとお、来た来た」

 提督「藪の下からこんにち……こんばんはー! 提督だよ!」グイッ

 提督「君が見つけたのは木曾だな。あんなキャラしてるが、リス見つけるとなでなでしたりするかも」ゴキイッ

 提督「クリティカル! ……あーあ、瞬間的に仲間呼ぶようなもんがなくてよかったー。危ない危ない」

 提督「人型に近くなると、弱点増えるよなあ……やっぱりシャチが最強なんだ」

 提督「イカンイカン、生きてたら困る。アホみたいなことしてないでさっさと行くか」 


 提督「日の出か、そろそろ抜けてくれよ」

 提督「あとは海岸線に沿って歩いていりゃあ、見えるはず……」

 木曾「……う……」

 提督「おお、起きたのか、……これでとりあえず帰っても血祭りにあげられなくて済むな」

 木曾「ここは、どこだ。俺は……」

 提督「よっしゃ、味方の歩哨発見! ここ、ここ! 新メンバー!」

 提督「で、本当に本人かの裏が取れるまで拘束だと」

 木曾「まだ、確認できていないのに、一緒で、しかも手当までするんだな?」

 提督「ああ、陸の頃の知人がいたからな、絶対本人だ、だってー。……俺に感謝しろよ、俺に!」

 木曾「ああ、そうだな。……ありがとう」

 提督「お、おお」

 木曾「なんだその顔は。……俺だって、命の恩人に噛みつくほど礼儀知らずじゃない」

 提督「…………………」

 木曾「それと、すまなかったな、出発寸前でお前にあたって。……俺もまだまだ未熟だ」

 提督「……だ、だめだ。イケメンすぎる! 自分の汚さを自覚するー! ぐ、グワー!」

 木曾「なにやってるんだお前……」

 木曾「石油タンカーが爆発か……」

 提督「ああ、まあ一隻だけだったし、上の方から爆発してたから、事故だなありゃあ」

 木曾「あいつらは」

 提督「ああ、多分無事だ。今頃は帰って俺たちが死んだとでも話してるかも」

 木曾「オイ! それじゃあ、もっと混乱に拍車が……!」

 提督「落ち着け。俺たちも明後日にはいつもの鎮守府だ」

 木曾「あの提督モドキどもが戻って来るかもしれないんだろう? 天龍がお前から聞いたと……」

 提督「はあ? また面倒くさいところだけ聞いてったなあ。もどってきやしないぞ。確かまだ裁判中だ」

 木曾「……まずいな。鎮守府にその話も知れ渡っているかもしれない……」

 提督「マジで? おいおい天龍、お前が勢いづかせてどうすんだよー」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom