爽「どうも皆さんこんにちは。 うんこ大好き獅子原爽です」
爽「え? 変態? ははっ、何をおっしゃいますやら」クックックッ
爽「うんことは、ありとあらゆる魅力に溢れた、魅惑のオーパーツ…」
爽「あなただって、本当はうんこの事が大好きなくせにぃ!」コノコノオ
爽「うんことは、けなしさえしなければ、実にスバラしい物なのです」
爽「たとえば…」
『バッカじゃねーの! お前の頭の中、うんこがつまってるんじゃねえかぁ!?』
爽「こういう人を罵倒する言葉に“うんこ”を使うと、うんこはとても下劣で汚らしく嫌らしい物だと感じられます」
爽「しかし!」
爽「次の場合はどうですか?」ポワポワポワーン
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ーーーーーーーー
ーーーー
玄「お、お、おねーちゃん! で、で、出たよおぉぉ!!」
宥「ク、クロちゃん、どうしたの? 出たって… まさか、オバケ?」
玄「ちがうよぉ! “うんこ”だよおぉ!」
宥「ええっ! ほ、本当?」パアアア
玄「本当だよ! やっと出たよおぉ!」ウルウル
宥「うう…っ! 玄ちゃん、3ヶ月もうんこ出てなかったものね…
私、玄ちゃんがうんこつまらせて死んじゃうんじゃないかって心配で… 夜も眠れなかった!」
玄「フランスパンくらいのが出たよぉ! おねーちゃんにも見せたかったよぉ!」
宥「良かった… 玄ちゃんが便秘で死ななくて、本当に良かった!」ダキッ
玄「う、うう… ありがとうおねーちゃん」ヒシッ
固く抱き締め合う、姉妹…
宥「玄ちゃん、ちゃんとうんこちゃんにバイバイしてあげた?」
玄「もちろんだよぉ! うんこナデナデしてあげたよぉ!」
宥「キシャアアアアアッ!! さわるんじゃねえぇ! このクロブタがぁぁ!!」チュドーン
玄「へぶぅっ!?」
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爽「・・・あれ?」
爽「おかしいな、うんこの魅力をお伝えしたかったんだけど…」
爽「なんか途中で変なことになっちゃった」テヘ
爽「ま、いっか… 妄想してる間に着いたみたいだね…」
ブロロロロロ…ッ
爽を乗せたバスは、ある学校の前で停まった。
爽「『宮守女子』に・・・!!」カッ
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1409378104
・前作→ 爽「獅子原爽のトイレ探訪記!」ユキ「行ってらっしゃい」(前編)爽「獅子原爽のトイレ探訪記!」ユキ「行ってらっしゃい」(前編) - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1406955362/)
・閲覧注意…本格的なトイレ・うんこSSです。 嫌悪感を感じた方はすぐに閉じて下さい。
・トイレやうんこに対して独自の哲学を持っている美少女 獅子原爽 が、実に清々しく爽やかにひたむきに排泄道を邁進するお話です。
・キャラをdisったり、読み手を不愉快な気持ちにさせる意図は全くありません。
キャラの魅力を表現し、楽しく読んでもらいたいです。
・多少の悪ふざけありますが、基本的には真面目なSS、の、つもり…
ときどき理屈っぽい場面があります。
・こんなSSをほめてくれる人がいたら嬉しいし、罵倒・批判してボロカスにけなしてくれる人も大歓迎です。
・ありとあらゆるうんこ・トイレ情報、うんこ予告、うんこ事後報告など常に大絶賛募集中。
・喫煙で停学くらった爽が、さまざまな高校のトイレを訪問してさまざまな人々とクサイ関係を築いていきながら成長していきます。
果たして彼女は日本を縦断し、最終の地鹿児島永水まで辿り着けるのか…?
<その4 ~岩手宮守「トイレ掃除de大フン闘」の巻~ >
~遠野市宮守女子高校~
ブロロロロロォ・・・ッ
爽「ふう、やっと着いた」
爽「もう薄暗くなってきちゃったな」
爽「まぁ、まだ部活してる子とか誰かいるよね」スタスタ
爽「・・・はれ?」
学校の正門前まで歩いてきた爽はピタリと足を止めた。
爽「な、な、何? これ…?」
爽は目を疑った。
宮守の正門には色鮮やかなネオンサインや電光看板が掲げられ、場末のバーのような雰囲気が漂っていたのである。
爽「・・・『キャバクラ&ホストクラブ MIYAMORI』・・・? なんだ、これ・・・?」
爽「おかしいな、ここで合ってるよな・・・?」ハテ
爽「・・・マジで学校がキャバクラに改装されてる・・・ なんなんだよこれ・・・」
爽「と、とりあえず事務所行ってみるか・・・」
・
・
・
~事務所~
トシ「よく来たね、獅子原さん。 私は『キャバクラ&ホストクラブ MIYAMORI』の代表を務めている熊倉トシだよ」
爽「・・・?? あのう、熊倉さんって、ここの麻雀部の監督やってましたよね・・・?」
トシ「ああそうだね。 2ヶ月前の話だけどね」
爽「ここは学校じゃないんですか? なんでキャバクラになってるんですか?」
トシ「ここの校長… 私の古い知り合いなんだけどね、そいつが、学校の資金を使って海外の金融派生商品デリバティブに手を出していてね・・・ そこの取り引きで大失敗して大損こいたのさ」
爽「へ・・・」
トシ「そういうわけで今、この学校は数百億円の借金を抱えているのさ。
本当は、もう廃校にして土地も売ッ払ッて、借金返済の足しにしなきゃいけないんだけどね・・・ そうすると、ここの生徒はみんな退学になっちまうだろ・・・?」
トシ「私は生徒会の子たちと相談してね、校舎全体を水商売の商業施設にすることで、学校を守ることにしたのさ」
トシ「今、宮守の生徒たちはみんな必死になって働いている。 学校を守るため、そして借金を完済して学業に戻るためにね・・・」
爽「・・・マジすか」
トシ「ちょうど、客が混み合ってくる時間帯だ。 せっかくだから、あの子たちの働いてる姿を見ていってくれよ。 さ、案内しよう」スッ
・
・
・
<キャバクラサイド>
哩「はあ、はあ、塞ちゃんはほんまエロか腰つきばしとるな・・・ こげん短いスカートばはいて… 誘っとるんやろ…?」グヘヘヘヘ
塞「もうっ! 哩さんったら… このお店はおさわり禁止ですよ?」
哩「カタいこと言わんと、スナオに… うっぷ?」オエッ
塞「! ちょっと! ゲロ吐かないで下さいよ! 食道の上のほう塞いであげましたから、早くトイレ行きましょう!」ササエ
哩「・・・すまなか…」ヨロヨロ
哩(クックック・・・ 計画通り… トイレでにゃんにゃんしたるでぇ…)ウヒヒヒ
胡桃「じゅうでん、じゅうでーん♪」ユッサユッサ
セーラ「おぅふ! く、くるみちゃん、は、激しすぎや! あぅ、あぅ!」ホヘー
洋榎「くぅぉらセーラ、もう時間や! く、くるみちゃん! こ、今度はうちのおヒザに…」ハアハアハア
胡桃「そこ! ちゃんと順番待つ! あ、あと一気とかしないの!」
豊音「わぁ、誠子さんってちょーイケメンですね! カッコイーッ!!」
誠子「そ、そう…?」テレ
豊音「うふっ。 誠子さん、ドンペリ頼んでくれたら、豊音のスカートの中入っても、いいよ…///」
誠子「ま、マジ? ド、ドンペリお願いします!」
エイスリン「・・・」カキカキ
エイスリン「コレ! ウチデ カッテル ニシキヘビ!」バッ
春「…かわいい ね…」
エイスリン「ハルモ トッテモ カワイイ ヨ!」チュッ
春「…///」ノヘー
エイスリン「…ハルチャン エイスニ、ロマネコンティ タノンデクレル・・・?」ウワメヅカイ
春「/// ロ、ロマネコンティ、こ、黒糖入りで…」=3=3
葵「ねえ久さん! このあと私とアフターしませんか?」
久「あ、葵ちゃん・・・ えと、外はまずいのよ… どっかで誰かに見られて美穂子にチクられたらヤバイからさあ…」
葵「今日もダメかー 残念!」
・
・
・
爽「すごいですねっ! 全国の色んな所からお客さんが来てる…」
トシ「ああ、宮守の子たちは今みんな崖っぷちに立たされてるからね。 アフターもこなしながら、一生懸命働いているよ。 さあ、ホストサイドにも案内しよう」
・
・
・
<ホストサイド>
シロ「…」ヌボアーッ
明華「シ、シロさん… お寿司頼みましたよ? ほら、イクラ! アーンッて、お口開けて下さいっ」
シロ「…」アーン
明華「あ、ああ… ステキです… シロさん///」
憧「ちょっと明華! 抜け駆けしないでよ! ほらシロさん、わ、私手作りのトリュフチョコ作ってきたのよ! はい口開けて!」
シロ「…」アーン
爽「な、なんですかあれ… 女王アリにエサあげてるみたい…」
トシ「シロはホストサイドで一番の稼ぎ頭さね。 ああやって座ってるだけで、いくらでも女の子が寄ってくるんだよ」
トシ「…獅子原さん、あんたもよく見ると、けっこうキリッとした整った顔してるねぇ。 良かったら、ここのホストクラブで働いてみないかい?」
爽「え?」
トシ「シロみたいに、女の子がわんさか寄ってくるかもしれないよ」ニヤ
爽「…私が、ホスト…」ポワポワポワーン
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憩「爽さん、うちを抱いて!」
淡「このどろぼう猫ぉ! 爽さんは私のものなのにぃぃっっ!」ムキーッ
いちご「二人とも何言うとるんじゃ! 爽さんはちゃちゃのんのもんじゃ!」
爽「やめたまえ、美しき花たちよ… 私は、3人でも4人でも、同時に愛してあげるよ…」キリリッ
一同「「「キャーッ 爽さあぁーんっっ!!」」」
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爽「是非! やらせて下さい!!」カッ
トシ「そうかい」ニタリ
・
・
・
爽「えっ? トイレ掃除?」
トシ「そうさ、宮守は女子高だからね。 ボーイというのがいない。 だから、新人はまずトイレ掃除を専門にやるのさ。 いいかな?」
爽「ふーむ…」
爽(トイレ掃除ならお手のものだ。家でいつもやっている…)
爽(小学生の時から、トイレ掃除には人一倍真面目に取り組んできた…)
爽(友達の家に、押しかけトイレ掃除に行くこともしょっちゅうだ…)
爽(トイレ掃除は私の十八番…! いくらでもやってやるぜ…!)
爽「いいですよっ! 学校中のトイレ、ピッカピッカにしてみせます!」
トシ「ほう…頼もしいね。 おーい、塞!」
塞「はい、トシさん」スッ
トシ「今日入った新人の獅子原さんだよ。 トイレ掃除のやり方を教えてやってくれ」
塞「分かりました。 獅子原さん、どうぞこちらへ」
爽「あ、はい…」
爽は水色のツナギを着て頭に三角巾をかぶり、使い捨てビニール手袋を装着して、塞に連れられてトイレに行った。
塞「じゃ、順番に説明していくわね。 まず、便器の上に乗って、天井の換気扇と電灯をきれいな雑巾で拭く」
塞「次に、便器を、手を洗うところ、給水管、貯水タンク、便器のフタ、便器の下、の順でこの汚れてもいい雑巾で拭く」
塞「便座だけは基本的に専用ペーパーで拭く」
塞「そしたら便座を上げて、便座の裏側も丹念に汚れを拭きとる」
塞「便器の中は、このトイレ洗剤ルックをスプレーして、小さめのデッキブラシでこする」
塞「ふちの方はデッキブラシが入らないから、歯ブラシでこすって汚れを落とす」
塞「汚れを落としたら、はい流す」ジャッバーッ
塞「水流の届かない所はちゃんと雑巾で拭いてね」
塞「次に、サニタリーボックスの汚物を回収して、ボックスの内側外側を拭く」
塞「最後に、床とスリッパの裏側を雑巾で拭いて、一応終了」
塞「閉店後の最後の掃除の時には、浸けおき洗剤をつっこんどいてね」
塞「ごくまれにゴキブリとコオロギみたいな便所虫が現れることあるから、見つけたら必ず殺虫剤で処理しといてね」
爽(ゴッキーか… 北海道にはほとんどいないんだよな。 ちょっと苦手だな…)
塞「でね、各トイレに4つずつ個室があるんだけど、やっかいなことに、入り口に一番近い個室は全部ウォシュレットがついてるのよ」
塞「機械部分がちょっと入り組んでて掃除しづらいんだけど、雑巾でまんべんなく拭いてきれいにすること」
塞「奥の細かい所は綿棒を使って汚れをこすり取る。 特にノズル部分のお湯が出てくるところはカビが発生しやすいから、毎回必ず綿棒できれいにしてね」
塞「この学校は3階建てで、各階に個室が4つのトイレが2つ、つまり全部で24の個室があるの」
塞「1階は1年生、2階は2年生、3階は3年生のスペースで、各学年約100人ずつ、つまり合計300人の生徒が働いている」
塞「1日で来るお客さんの数は優に2000人を超えるわ。 だから、トイレの使用頻度はハンパじゃない」
塞「トイレ掃除係は、たった一人で、営業時間中学校のトイレを巡回して掃除していくの。
でもね、たまにトイレでゲロ吐いたり、便座にうんこつけたりするお客さんがいるでしょ?」
塞「そういうことがあった時、ただちに現場に行けるように、トイレ係にはこのミニ携帯を持ってもらうの」スッ
塞「それで、連絡があった時は、巡回中のトイレ掃除はいったん中止して、嘔吐物とかの方を優先して処理してね」
塞「嘔吐物処理の手順も一応話しておくね」
塞「嘔吐物にはノロウイルスとかの伝染性のウイルスや雑菌が入っていることもあるから、慎重に処理しなくちゃいけない。 必ずマスクを着用してね」
塞「まず、嘔吐物全体にオガクズをまぶして、まとまりやすくする」
塞「次に雑巾でまとめて、ビニール袋に捨てる。 使用した雑巾と手袋も必ず捨ててね」
塞「そして、残っている嘔吐物の上にペーパータオルをかぶせ、その上から塩素系漂白剤を十分浸るように注いで殺菌する」
塞「5分たったら、ペーパータオルで嘔吐物を包んで捨て、雑巾で床をきれいにする」
塞「床に便が落ちていた場合の対処も同様よ」
塞「こんなとこかな… 何しろ校舎全体だから大変だけど、どう? できそう?」
爽「バッチリッす! この獅子原爽におまかせあれ!」ビシッ
爽はその日から、猛然とトイレ掃除を開始した。
新人離れした丁寧で素早い仕事っぷりは、概ね好評であった。
・
・
・
塞「爽なかなかやるわね。 私が新人の時も、ここまで丁寧にはできなかったわ」
爽「私はトイレが大好きだからね! これはやりがいのある仕事だよ」キリッ
塞「…どうしてトイレが好きなの?」
爽「トイレってのは、愛しのうんこと最後の別れをする厳かな場所だからね… でも、それだけじゃない」
爽「トイレは、この世知辛い世の中で、唯一“一人になれる”心安らげる癒しの場所なんだよ」
塞「…確かにそうかもね」
爽「トイレでは、緊張を解きほぐしてホッと一息つく事ができる。 人前では見せられない涙を流すこともできる。 そして妄想に耽りながら一人エッチに励むこともできる…」
塞「…」
爽「塞もヤッテんだろ? トイレでこっそり一人エッチ」ウェヒヒヒ
塞「し、してないわよそんなこと///」
爽「…だから、トイレってのはさ、排泄物以外に、日々の心のわだかまりも流して、スッキリできる場所でもあるわけじゃんね」
爽「トイレで心のエネルギーをチャージして、みんな一日一日をガンバッているんだよ」
爽「そんな神聖な場所を奇麗にする仕事なんだから、やりがいがあって当然」
塞「…そうだね。 爽あなたって、頭のネジが何本かはずれてるみたいだけど、けっこう清々しい人なのね」
爽「頭のネジが全部キッチリついてたら機械みたいじゃん。はずれていてこそ人間」
塞「爽が言うようにトイレは大事な場所だけど、なんというか、世の中ではコケにされていることが多いよね」
爽「そう! その通り! みんなトイレには一日に何回もお世話になるのにね。 なんでだろーな?
私は、今回のこのトイレ探訪の旅で、トイレとうんこの地位向上も目指していきたいんだ」
・
・
・
爽は毎日、一生懸命巨大水商売施設「MIYAMORI」のトイレを掃除した。
しかし、仕事に対する不満がないわけではなかった。
それは、客のトイレ使用のマナーについてである。
爽(毎日毎日、必ずいるな… うんこ流さねえ奴、ゲロ吐いてそのままの奴、床をオシッコびたしにしてく奴、タバコの吸い殻便器に捨ててく奴…)
爽(ピカピカにした直後にメッチャ汚されて、またすぐ掃除しに行かなくちゃいけないこともある)
爽(店をナメてる客がいるな…)モンモンモン
爽(客の質を上げる必要があるぜ… どうすればいい…?)ウーム
今回の宮守の話はちょっと長めです。
残り半分はまた来週書きます。
投下します
後半は真面目なトイレ話なので面白くないかも
・
・
・
爽は、代表のトシの所へ直談判に行った。
全てのトイレの入り口に、マナー向上のためのはり紙を貼らせて欲しいと頼んだのである。
爽「他の客やスタッフのことを考えてない奴が多すぎます! マナー向上について呼びかけをするべきです」
トシ「…そうかい。 私はねぇ、そんなことしても無駄だと思うけど… まあ、毎日一生懸命働いてるアンタが言うんだから、自分が納得するようにやってごらんなさい」
爽は早速自分ではり紙を作り、開店前にトイレにはりつけて回った。
文面はこうである。
『 お客様へ
当店のトイレを御利用いただきありがとうございます
次にお使いになるお客様のために、清潔にお使い下さいますよう、よろしくお願い致します
また、トイレでの喫煙は火災の危険がありますため、禁止させて頂いております
何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします 』
爽「…よし、これでOK…」ハリハリ
爽「これで少しは客のトイレマナーも良くなるだろ…」フンス=3
シロ「…あれ、爽?」スタスタ
爽「あ、シロ」
シロ「…ご苦労様… 何やってるの?」
爽「うん、ちょっとね。 トイレをきちんと使えない奴が多くてさぁ、チラシをはって回ってたんだ」
シロ「ふうん…」
シロははり紙の文面を読み始めた。
爽「…大丈夫だろ? 丁寧に作ったから…さ…?」
シロ「…長いねぇ。 トイレ行く時こんなの読むかな…」
爽「え…」
シロ「…あとこれさあ、大人ならみんな分かってることじゃない?」
爽「…??」
シロ「お店のトイレをきれいに使わなきゃいけないことも、喫煙しちゃいけないことも、みんな分かってると思う…」
爽「…いや、だってさ、現実に、守ってない奴がわんさかいるんだぞ?」
シロ「…その人たちは、自分がマナー違反をしてることを分かってて、“別にいいや”って思ってるんだよ」
爽「…別に、いいや…?」
シロ「このはり紙が、その“別にいいや”を直せるかな…」
爽「・・・」
シロ「あ、ゴメン、掃除してるのは爽だもんね… 私が口を出すことじゃなかった…」スタスタ
シロの言う通りだった。
はり紙の効果は全くなかった。
やはり毎日、私の仕事を増やしてくれる輩はトイレを無神経に汚してくれた。
爽(クソッタレ… 口惜しい…)
爽(こんなに一生懸命に働いているのに…!)
爽(私の仕事を邪魔する連中が…憎い…)ギリリッ
・
・
・
「最近さぁ、お客さん減ってきてない? 私、今日2人しかお客さんついてないよ?」
「そうだね… なんか売り上げも少し下がってきてるみたい」
「ねえねえ、あのトイレのはり紙のせいなんじゃないの…?」
「ああ、あの新人の子が貼ったやつ…」
「あんなの意味ないよねー トイレ掃除大変なのは分かるけどさー」
爽(・・・)
爽(なんでだよ… どうすればいいんだ…?)モンモンモン
そんなある日のこと
ピリリリリッ
爽(オッ 携帯に連絡…)
ピッ
爽「ハイッ 爽です」
塞『爽ごめん、3階の南側トイレなんだけど、お客さんが汚れてるって言ってるの。 悪いけど見てきてくれる?』
爽「…ん、了解…」ピッ
爽(…3階南側トイレだとぅ…? さっきピカピカにしたばっかだぞ…?)
現場は驚くべき状況だった。
個室の便座にうんこがつき、床にもれ、なんと通路にまではみ出していた。
しかも、便器の中には2本の吸い殻が捨ててあったのだ。
爽「・・・・!!」
プッツン
ダダダダダッッ
ガラッ
爽「おうっ! 誰だよっ! さっきそこのトイレでうんこした奴!!」
爽はツナギ姿のまま接客ルームに入りこみ、鬼のような形相で叫んだ。
爽「誰だよ! 出てこいよ! タバコ2本吸った奴だよ!」
塞「…ちょ、ちょっと爽…?」
エイスリン「サワヤ サン…」
豊音「はわわ…」
胡桃「!…」
爽「おい! お前かよくぅらぁっ!」ガシッ
久「い、いた…! ちょ、ちょっと何なのこの人…!?」
接客していた宮守嬢も、客たちも、唖然として爽の方を見ていた。
誰も動くことができない。
しかし、その目からは、
「なんだ?コイツ…?」
「汚ねえ格好で入ってくんなよ…」
「バカじゃねえの…?」
といった非難の気持ちが放たれていた。
爽「・・・クソッタレェ!」バタンッ タタタタッ…
爽はダッシュでロッカールームに行き、着替えて荷物を持つと、事務所に駆け込んだ。
爽「トシさん! ごめんなさい! 私仕事辞めます!!」
トシ「…」
爽「本当にすみません! 給料いりません! お世話になりましたぁ!!」ダダダッ
爽は正門をくぐり、バス停へ走った。 ちょうど新花巻駅行きのバスが来たところで、爽は乗り込んだ。
爽「……!!」
爽はバスの中で声を出さずに泣いた。
怒りの気持ち、悔しい気持ち、申し訳ない気持ちなどがないまぜになり、他の乗客が周りにいても涙を止めることができなかった。
爽(…もうイヤだよ。 こんなクソ田舎に来るんじゃなかった… 新花巻から新幹線に乗って、もう一気に東京に行こう…)
~新花巻駅~
爽(…ここ、急行のはやては停まらねんだな… 次のやまびこが来るのが、30分後…)
爽(乗る前に一発うんこしておこう…)スタスタ
爽は駅のトイレに向かった。
ガチャッ ムワ~ン
爽「む…!」
トイレのドアを開けた途端、強烈な異臭が爽を襲った。
思わず目がシパシパしてしまうほどの臭さである。
3つ並んだ個室の一番奥に、清掃のオバちゃんの小さな背中が見えた。
のぞきこむと、さっき爽がブチ切れた時と同じように床に落ちているうんこを、オバちゃんが片付けているところだった。
オバア「…あらごめんなさいね。 一番手前の個室きれいだから、そっち使ってくれる?」
爽「…オバチャン、こんな床に落とされたうんこ片付けるの、嫌じゃありませんか…?」
オバア「…仕方ないわよ、仕事だもの…。 酔っ払った人とか、ちょっとボケかけのおばあちゃんとか、たまにこういうことあるみたいなのよ」
爽「でも、汚した奴のこと、バカヤロウッて思いませんか? こんな奴いなきゃ自分の仕事も楽になるのに…」
オバちゃんはうんこを片付けていた手を止めると、少し曲がり始めている腰を伸ばし、まっすぐに爽を見つめた。
そして、こう答えたのだった。
オバア「私はね、この駅の清掃の仕事を始める時、自分に問いかけたのよ。 『トイレの掃除でもできるかな?』って。 私は、『できる』って自分で答えたの。 そう決めた以上、一生懸命お客さんに喜んでもらえるように、きれいにすることだけ考えているのよ。
だから誰が汚したかなんて一度も考えたことないの」
爽「…!?!?」
爽は茫然とその場に立ち尽くした。あまりにも予想していない答えが返ってきたからだ。
爽「…オバチャン、ありがとう!」ピューン
爽は便意があったことも忘れ、トイレを飛び出すとすぐさま宮守行きのバスに乗り込んだ。
爽は宮守に着くまでの間、バスの中でまた涙を流していた。
しかしその涙は、さきほどの怒りや悔しさの涙ではなく、慙愧の涙だった。
・
・
・
~「MIYAMORI」事務所内~
塞「トシさん、私追いかけます! タクシー代ください!」バンッ
トシ「…」
エイスリン「ワタシモ イク!」=3
豊音「爽さんがいないと淋しいよー…」
胡桃「爽はバカみたいだけど、いないと困る…」
シロ「多分新花巻に行ってる… 今からでも追えば間に合うかも…」
バタンッ
一同「「「「「「!?」」」」」」
爽「・・・」ハアハアハア
爽「ごめんなさい獅子原戻りましたぁ! 仕事行ってきmath!」ダダダッ
塞「…な、何があったの…?」
そこからの爽の働きぶりは常軌を逸するものだった。
「MIYAMORI」は、いわゆる朝キャバ営業をしており、朝は午前7時に開店する。 そして、夜は風営法で定められた0:00を越える深夜2:00まで営業していた。
爽は、店が開店している間、常に働いていた。
朝は6時に起き、浸けおきしておいた全てのトイレの後処理、芳香剤のセットなどをして開店に備える。 開店中は常に巡回をし、閉店後は最終清掃、ペーパーの補充、虫除け薬の塗布などをして明日に備える。
一日の睡眠時間はわずか3時間。 どんなに客に汚されても何も考えず、ただひたすらに、学校中のトイレを宝石のようにピカピカにし続けたのである。
そして一週間もすると、奇妙な現象が起きるようになった。
誰もトイレを汚さなくなったのだ。
何しろ、全てのトイレが接客ルームをはるかに上回るほどにきれいで爽やかなので、自然と、誰もが慎重に大切にトイレを利用するようになったのである。
トイレの雰囲気は店の品格・質を現す。
客のトイレ使用のマナーが良くなるにつれて、MIYAMORIの売り上げはグングンと上がっていった。
客層までも上がり、接客ルームでも、みんな優しく、大切に嬢を扱うようになっていったのだ。
胡桃「最近、ヘンなお客さん減ったよね。 私、ぜんぜん注意することがなくなった」
塞「そうだね、私も、セクハラされることがほとんどなくなった」
豊音「スカートの中入れてあげなくても、みんなドンペリ頼んでくれるよー」
エイスリン「オイロケ サクセン イラナイ!!」=3=3
シロ「…お客さん同士が、ケンカしなくなった…」
そして、数週間後…
異例の大繁盛を続けた「MIYAMORI」は、ついに借金を完済して店を閉め、学校へと戻ったのである。
塞「…ありがとう爽、あなたのおかげで、勉強に戻れるわ」
胡桃「受験勉強ができるよ!」
爽「私は掃除してただけだよ。みんなが頑張ったからでしょ?」
豊音「ううん、爽さんがちょーガンバッてたから、お客さんがいっぱい来てくれたんだよー」
エイスリン「サワヤ モウ イッチャウノ…?」
爽「…うん」
シロ「それで、いつ転校してくるの?」
爽「はは… 宮守に転校… それもいいかもしれないけど、一応有珠山の連中が待ってるからさ…」
トシ「爽、本当にありがとうね…」
爽「…トシさん」
トシ「人の非難、批判は誰でもできる。しかし、黙ってきれいにし続けることは誰にでもできることじゃないんだよ」
トシ「“大人”は言われてもやらないのさ。言われてやるような素直な心を持っているのは“子ども”だけ…」
トシ「でもね、人は人の背中を見ているんだよ。人を動かしたければ、背中を見せてやればいい…」
トシ「強制したり、頼んだりしなくても、黙ってやっていれば、その背中を見た人が必ず自分から動くんだ」
トシ「…なんて、口で理屈を言うのは簡単だけどね。爽あんたはそれを実際にやってのけた… 本当にすごいことだよ」
爽「はは、買いかぶりすぎですよ… あ、バス来たみたい」
ブロロロロロオッ・・・
塞「爽、また宮守に必ず来てよ?」
胡桃「いつでも歓迎する」
豊音「爽さんはトイレの天使だよーっ!」
エイスリン「レジェンド! オブ! ミヤモリ!!」=3
シロ「…気をつけてね…」
爽「うん、ありがとう! みんな!」ノシ
ブロロロロォォ…ッ
~バス車内~
爽「ふーっ…」
爽「楽しかったなぁ、宮守…」シミジミ
爽「私の、排泄の伝道師としての格も、少しは上がったかな?」
爽「給料もいっぱいもらっちゃったし、少し贅沢できるかも」ガッポガッポ
爽「まあゆっくり行こ。 とりあえず新花巻から宇都宮まで新幹線で行って、そこから…」
マンガンテンパリ♪ リーチフリコンデ♪
~~~~~♪ ~~~~~♪
爽「おっ… 携帯…」ポチッ
爽「はいもしもし」
誓子『さわやぁ! あんたどこで何やってんの? とっくに停学期間過ぎてるわよ?!』
爽「あーっ、そういえばそっか…」
誓子『早く戻ってらっしゃい!』
爽「いやー… まだ私岩手なんだよね。明日には越谷に着くと思うけどさ」
誓子『はぁ? 爽あんた何言って…』
爽「とりあえず鹿児島に行くまで戻れねーから、わりーけど学校の方には風邪とかなんとか言ってごまかしといてよ」プチッ
爽「さーて、次イクのは、インターハイベスト16のうちの1校・・・」
爽「『越谷女子』か!」クワッ
次回、~栃木「“うんこ”と連呼し続ける少女」の巻~ に続く…
乙ありがとう・・・
圧倒的感謝
第5話、投下していきます
< その5 ~栃木「“うんこ”と連呼し続ける少女」の巻~ >
ゴトンゴトン ゴトンゴトン
爽「・・・」ボケーッ
11月のある日のこと、獅子原爽は東北本線の列車内でボーっと窓の外を眺めていた。
栃木の山々が色鮮やかに紅葉しているのが見える。
新幹線を宇都宮で降りた爽は、これから栗橋という駅まで移動。 そこから東武日光・伊勢崎線に乗り換えて越谷に向かうのである。
爽(…)プスーッ
爽(やべ、屁ぇこいちった)
爽(うおっ くせぇ… ちくしょう…)ムワッ
爽(…オッ なんか一句浮かんだ…)
爽( “いとくさし 車内で香る わがオナラ” )
爽(う~ん・・・)
爽(ダメだ、いまいち… 30点… 赤点だな…)フフッ
爽(…)
爽(ヒマだぜ…)
爽(おならについてもう少し考察するか…)
爽(…そういえば筋肉マンはおならで空を飛べるんだよな…)
爽(…あーでも、王位争奪戦とか、筋肉マンがカッコ良くなってくると、全然おならしなくなってったんだよね…)
爽(…そう、カッコイイ奴におならは似合わねえのさ)
爽(おならなんか、しょせん下品な嫌われ者さ…)フフフッ
爽は電車に揺られながら一人ニヒルな笑いを浮かべる。
頭の中はおならでいっぱいである。
爽(しかし、おならには爆発的な笑いの力があることを私は知っている)
爽(昔、小学6年生の頃、全校朝会をやっている時に、私は体育館中に鳴り響くおならをかまして全校生徒全職員を笑わせたことがある)
くそ暑いのに校長のわけ分からん話がムダに長いもんだから、ダイナマイト級のやつを見舞ってやったのだ。
その時校長は自分で何話してたのか分からなくなったみたいで、話を適当に切り上げてソソクサと壇上を降りていった。
ザマアミロだ。
そんなことをしていたからといって、教師に睨まれることはあっても、子ども同士でバカにされたりしたことはほとんどない。
むしろ、低学年の子たちからは敬意の眼差しを向けられた。
時々、校内を歩いていると、すれ違いざまに ブッ と屁をこいて挨拶してくる子もいた。
そんなとき私は、すかさずひときわ大きいおならを返して、その子の礼儀に応えてあげたものだ。
ツギハー コヤマー コヤマー オオリノオキャクサマハー・・・
列車は少し大きめの駅に停まり、小さい男の子と母親の親子連れが乗車してきて、通路を隔てた向かい側に座った。
男の子はなぜか半べそをかいている。
ポケモンブレードカッテヨオオオオオッ ウッサイダマリナサイ
何やらごねている。 気になって様子を見ていたら、
「うんこぉ!!」
突然男の子が叫んだ。
爽(へえ… 抜いたなっ… 伝家の宝刀…!)
続けて…
ガキ「うんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこぉ!」
爽(出た…! うんこ速射砲(ガトリング)…! なかなかキレがいい…)
うんこやオナラはいつだって非力な子どもたちの味方だ。
この子は理不尽な大人を相手に我を通すため、魔法の呪文「うんこ」を唱えているのだ。
うんこ速射砲はなかなか強力だ。 特にこういう電車ん中とかでは有効な技なのだ。
爽(ふむ、この勝負… どうなる…?!)ワクワク
退屈していた私は、目の前で突然始まったバトルに胸を躍らせた。
勇者のうんこ速射砲は見事魔王を穴だらけにした… かのように見えたが、次の瞬間、
ガキ「いたたたたたたたたたたたたたたたぁぁぁぁっっ!!」
勇者は悲鳴をあげていた。
大魔王ハハオヤーがその人外の怪力でほっぺたを餅のようにつねりあげていた。
ガキ「 ううう… 」グスグス
魔王の怪力にひるんだ勇者はすぐさま意気消沈、ぐずりながらおとなしくなってしまった。
爽(…あめぇ! 甘すぎる…!!)
爽(未熟すぎるぜ少年… わがまま通すなら通すでとことんやりやがれ。 お前は勇者のライセンス剥奪だ…)
私はうんこスカウターを取り出し、少年を見てみた。
爽(…うんこLv23… ダメだこりゃ)ハア
レベル23なんて話にならない。 うんこ初心者もいいところだ。
え? 偉そうなこと言ってるけど私はうんこレベルどのくらいなのかって?
爽(ククク… 聞いて驚け… 私のうんこレベルは……)ゴゴゴゴゴ
爽(…3万を優に超える…! スーパーサイヤ人2くらいの力だ…!!)ズモモモモモモ
爽(は? 中2病? しかも痛すぎる?)
爽(・・・分かりました。 じゃあ、私が“うんこ”を武器にどれだけ熾烈な闘いを制してきたか、お話ししましょうか…)
爽(ま、アホ話の一つだと思って聞いて下さいな。 私の、うんこバトルの軌跡を・・・ね!)ポワポワポワーン
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
それは私が小学5年の秋の事だった。
9月の運動会が終わった次の週に、突然、新しい教師が担任になったのだ。
あとで聞かされて分かったことだけど、そのとき私のクラスは相当なレベルの学級崩壊クラスだったらしい。
今振り返ってみると、授業中に紙ヒコーキが飛んだり、パロスペシャルきめてる奴がいたり、針金持ってダウジングしたりしてる奴が普通にいたから、まあ確かに、ヤバいクラスだったんだろうな。
そんなワケで交代でやってきた教師・・・
そいつがとにかく、とんでもない奴だったんだ。
~朝、爽の教室~
ガキA「よし、二人とも準備いいか?」
ガキB「オッケー」
爽「カモ~ン」
A「うしっ では、10秒間うんこ勝負! よーい…」
A「スタートォッ!」カチッ
B「うんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこ・・・」
爽「うんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこ……」
A「・・・ストップゥ!」カチッ
A「…審査結果…… Aは42うんこ! そして爽は… ろ、68うんこ!」
A「よって勝者・・・・、うんこ連呼チャンピオン・獅子原爽ぁ!」
スゲー・・・! ツエエエエエ・・・! Bデモカテネエノカ・・・ アリエネエ・・・ パチパチパチパチ
爽「ふフン…」ニヤニヤ
ガラッ
一同「「「!?」」」
久保「…おい、全員席につけァ… チャイム鳴ってんぞ」
ガキC「あ? オバさん誰?」ヘラヘラ
久保「いいから席につけァ」
ガキD「何? 誰かのかーちゃん? 忘れ物届けにきたんすかー」
久保「2秒で席につけァァッッ!! クソ虫どもがァァ!!」バシーン
…!? …… ……! ………
竹刀で黒板を叩きつけたその女は教卓の前に立つと猛禽類のような目でクラス全体をねめつけた。
久保「今日からこの5年2組の担任になった久保貴子だ」
ハア・・・? ナニ・・・? ○×センセイハ・・・?
久保「黙って聞けァ! 前の担任がどんだけお前らを甘やかしてたか知らねーが…」
久保「これからの残りの半年、お前らが見るのは最悪の地獄だ」
…シーン……
久保「…ふん、ここはこの学校の害虫どもが集まったクラスらしいなァ」ニヤニヤ
久保「クソの役にも立たねえ害虫どもに、私が世間での身の振り方ってのを教えてやるァ!」
久保「ところでお前ァ」
ガキE「…」
久保「何故立ってる。 私は座れと言ったんだ」
ガキE「…聞いてなかったっす」
久保「へえそうかい」
久保「おい、そこのガキァ、あの立ってるつんぼの席を廊下に出せ」
ガキF「…」プルプル
久保「早く出せァ!!」
ブリッ ブ―――――――ッッ!!
久保「…」
久保「…おい、今屁をこいた奴は誰だ」
一同「「「「「……」」」」」シーン
久保「ここはつんぼのクラスか? よしいいだろうァ。 全員自分の机を持って廊下に…」
爽「私です」スッ
前から3番目の窓際の席にいた爽は手を上げた。
久保「…お前か、私が話してる最中に屁をこきやがったうすらトンカチはァ…」
爽「スミマセン。 先生の変な前髪がおかしくて、思わずお尻の穴が嶺上開花しちゃいました」
プッ クスクスクス・・・
久保「ほお…」
久保「アナルの締まりの悪いメス猿か… 特別な教育が必要みたいだなァ」ニヤリ
久保「お前名前はなんていうんだ」
爽「獅子原です」
久保「そうか・・・」スウウウウ
久保「獅子原ァァッッ!!」
爽「!?」ビクッ
久保「お前はこの教室の空気を汚した。 そしてこの私に楯突き、無駄な時間をとらせた」
久保「罪をつぐなってもらうァ。 休み時間になったら私のところへ来い」
その日からしばらく、私は久保の命令に従ってクラスの雑用係をやらされた。
朝は毎日30分早く登校して教室の開錠、掃除、植木鉢の水やりなどをし、休み時間には授業で使った物の片付け、黒板消し、次の教材の準備をした。
久保の迫力は大したもので、誰も逆らえなかった。
私も、久保の言うことは黙って聞いた。
久保は極端に厳しかったが、言ってること自体は正しいことが多かったのだ。
しかし勿論不満がない訳ではなかった。
久保のせいで楽しかった私の学校生活はメチャクチャだった。
休み時間に遊べないだけではない。
楽しくて笑顔に溢れたクラスは一変し、機械のようにモクモクと勉強をするだけだった。
常にピリピリとした緊張感が漂い、重苦しい空気が流れ、息がつまりそうだった。
爽(久保… 許すまじ…!)ムラムラムラ
しかし子どもでちんちくりんでうすらバカの私には、久保に対抗できるようなものはほとんど何もなかった。
理屈でやり込めることなど絶対ムリだし、
体力もかなうわけないし、
かといってコソコソした真似は嫌いなので、罠をしかけたりイタズラをしたりするのは嫌だった。
絶対的な権力者に、何らかの仕打ちを受け続けた時、人はどうするだろうか。
プライドを捨てその状況に甘んじる者
他人に助けを求める者
玉砕覚悟で闘いを挑む者
姑息な手段を用い、権力者を貶めようとする者
色々いるだろう
しかし私がそのような行動をとることはなかった。
私にはただ一つだけ、武器があったからだ。
そう、「うんこ」という武器が・・・
・
・
・
久保「教科書52ページを開け… 今日は役満のローカル役について…」
爽「先生!」ビシィッ
久保「…なんだ」
爽「大変です! MAKIGUSOが空を飛んでいます! 今すぐ捕まえに行きましょう!」
ドッ クスクス ハハッハ・・・
久保「…」
私は徹底して抗議した。 久保のやり方に。 うんこ話で。
爽「質問です! 先生は一週間にどのくらいうんこしますか? ちなみに私は20回です!」
爽「ヤバイっす! 校長先生がおならで空を飛んでいます!」
爽「私発見したんです! 見て下さい! 宇宙人のうんこです!」
久保は強敵だった。
私がうんこ発言をすると少しその場が和むが、久保はニヤリともしなかった。
こめかみに青筋をたててギロリと私を睨み、「机の上に正座していろ」と指示する。
そして私が正座しながらまたうんこ発言をすると、廊下に叩き出された。
久保は私の攻撃を大して意に介していない様子だった。
それでも私は地道にうんこ発言による攻撃を続けた。
そんな時に事件が起きた。
帰りの会の時、
久保「お前らまだ帰るな。 Gの筆箱が行方不明だそうだ。 今から全員で探してみてくれァ」
ザワザワ ザワザワ ガヤガヤ
5分後、筆箱は見つかった。
近くのトイレの便器の中から。
久保「…お前ら全員机にふせて顔をかくせ。」
久保「…この中にGの筆箱を便器に捨てた奴がいる」
久保「犯人… または、誰が犯人か知ってる奴は手を上げろァ」
…… …… ……
久保「全員顔を上げろ」
誰も手を上げなかったようだ。
久保「私は今からとなりの予備室に行く。 名前を呼ばれた奴から一人ずつ荷物を持って私のとこに来い」
一対一で全員を尋問するつもりらしい。
一人ずつ教室を出ていき、久保との話が終わると帰っていった。
爽「…?」
出席番号順じゃない。 席順でもないし、背の順でもない。 なんだこの呼ばれる順番は…?
いつまでたっても私は呼ばれず、ついに教室に一人になってしまった。
ガラッ
久保「…」
爽「…」
久保「獅子原」
爽「はい」
久保「お前の方から私に言うことはないか?」
爽「??」
久保「お前がGの筆箱を持ってトイレに入るのを見ていた奴がいる」
爽「…!?」
久保「なぜそんなことをしたのか話せ」
爽「…」
久保「獅子原ァァァッッ!!」
久保「いつまで黙ってんだ獅子原ァァッッ!!」
爽「…」
私はそんなことしてない。
誰だ私のせいにしたやつ…?
クラスの連中で私をうざがってるっぽい奴らもいた。 その中の一人か…?
久保「タダですむと思ってんじゃねえぞぉ? 獅子原ァッ!」グッ
爽「…!」
久保は私の胸倉をつかみギリギリと締め上げた。
久保「なんとか言えやごぅるあぁっ!」
爽「…」
私じゃねーよボケと言ったところでこいつは信じるだろうか。
アリバイとかが必要なのか…?
めんどくせーなもう・・・
決定的な証拠もなく、私が犯人だと決めつけやがって…
爽「…」ギロッ
私は襟首を締められながら久保を睨んだ。
久保「ああ? んだその目は…!? ナメてんのか?」
半端な口ごたえをしてもかなうわけはない。 私に残されてるのは、そう、アレしかなかった。
久保…! 一泡吹かせてやるぜ…!
爽「う・・・」
久保「?」
爽「・・・んこ」
久保「ああ?」
爽「うんこ、うんこ、うんこ、うんこ、うんこ、うんこ、うんこ、うんこ・・・」
久保「…! 貴様ァ・・・!」
そのあと私は久保が何を言ってもうんこと答え続けた。
久保は私の家に電話をかけ、母親を呼び出した。
母親にも問い詰められたが、それでも私はうんことしか答えなかった。
私はもう決めていたのだ。
久保が謝るまで「うんこ」と言い続けることを。
~翌朝~
女ガキH「爽、おはよう!」
爽「うんこぉっ!(おはよう!)」
H「え?」キョトン
爽「うんこうんっこ?(あれ? どした?)」
久保「獅子原、黒板が汚い。 もう一度ふけ」
爽「うんこ(はい)」
爽「うん、こぉ~(ねえ、消しゴム貸してー)」
女ガキI「は?」
爽「うん、こ! う、んこぉ!」ミブリテブリ
I「ああ消しゴムね」ハイ
爽「うんこ!(ありがと!)」
久保「獅子原、これ前に出て解いてみろ」
爽「う・んこぉ!(分かりません!)」
体育
ガキJ「爽そっち行ったぞぉっ!」
爽「うんこぉっ!(オーライ!)」
ガキK「うらぁっ」ブンッ
爽「うんこ!(おっと!)」スイッ
K「おい爽さっきボール当たったぞ!」
爽「うーんこう、んこぉ!(うっせえ当たってねーよ!)」
音楽
一同「今を~♪ 抜け出っそーう♪ 手に触れた~♪ Glossy future!♪」
爽「うーんーこー♪ うんっこー♪ うんこっうんっこー♪ うんこっうんこっ!♪」
久保「宿題わすれただとっ!? どういうことだ獅子原ァァ!!」
爽「ぅんこぉ…(すみません)」
女ガキL「じゃあね爽バイバーイ!」
爽「うっんこうんこー!(バイバーイ)」
家でも…
母「爽早く起きなさい!」
爽「う~んこぉぉ~(あと5分~)」
母「忘れ物ない?」
爽「うんこ! うーんこぉーっ!(大丈夫! 行ってきます!)」
母「オヤツよー」
爽「うーんこぉー(はーい)」
爽「う! んこうんこ!(オッ! やったカントリーマアムだ!)」
母「…オヤツにうんこうんこ言うなら食べなくてよろしい」
爽「うんこぉ!(殺生な!)」
爽「うんこぉ! うんこうんこうんこっ!(クソ親父! テレビ見るからどっか行け!)」
父「うるせぇ! ガキはもう寝やがれ」
爽「うんこ!(死ね!)」バリバリバリッ
父「ギャアアアアッ!」
爽「うーんこぉー(おやすみなさーい)」
母「はいオヤスミ。 歯ぁ磨いた?」
爽「うん! こ」
朝から晩まで私は何があってもうんこと言い続けた。
ぶっちゃけ非常に生活しづらかったが、わりとなんとかなるもんだ。
1週間たっても2週間たっても私は変わらずうんこと言い続けた。
学芸会があったが、「うんこ」と一言しゃべってトイレに行く役をやって、あとは木とか郵便ポストとかしゃべんない役をやった。
なんでそこまで異常なことをしたのか。 それが、私の抗議の仕方だったからだ。
1ヶ月が過ぎた頃、学校になぜかテレビの取材が来た。
恒子「皆さんこんにちは! 朝どき日本列島! 今日は、1ヶ月も『うんこ』しかしゃべっていないという世にも珍しい少女に会いに、北海道まで来ちゃいましたぁ!」
恒子「おっ 発見! こちらが件の少女です!」ババンッ
爽「うんこ(あ、ども)」ニコニコ
恒子「あの、お名前は?」
爽「うんこう、んこうんこー(獅子原爽です)」
恒子「本当にうんこしかしゃべってないの?」
爽「うん、こ(はい)」
恒子「どうしてうんこしかしゃべらないの?」
爽「うんこ、うーんこうん、こ うんこ…(担任がムカつく奴だからです)」
恒子「はい! まったくもって分かりません! 世の中にはこんな珍妙な子もいるんですね! スバラしいぃ!」
2ヶ月が過ぎた頃、今度はなんか立派な服を着た背の高い外人が3人ほどやって来た。
ギネスブックの審査だという。
誰かが、ギネス世界記録の公式ウェブサイトに申請をしたらしい。
外人たちは、私の友達や先生たち、そして家族にもインタビューをし、私が本当にうんこしかしゃべっていないのかということを確認していた。
そして1週間後には記録が認められてギネス認定証と立派な盾が送られてきた。
「“うんこ”と言い続けた日数70日間」がギネスワールドレコーズとして公式に認められ、私の名はギネスブックにも載った。
そして
うんこと言い続けて2ヶ月半が経った頃…
Gの筆箱を隠した真犯人がやっと分かった。
なんでも、その犯人が筆箱を持って歩いていたのを低学年の子が見ていて、その子が親に話をし、保護者づてに情報がグルグル回って学校にやって来たらしい。
そして、その情報に基づいて本人を問い詰めたところ、白状したとのことだった。
そいつは当然久保にこっぴどく叱られた。
・
・
・
久保「獅子原、お前のことを犯人扱いして悪かった」
爽「…」
久保「すまなかった。 許してくれ」ペコリ
爽「…先生、いいよ。 分かってくれれば」ニコッ
オオオオオオ・・・・ パチパチパチパチパチ
私が、2ヵ月半ぶりに「うんこ」以外の言葉を話した時、教室から自然と拍手が湧き起こった。
久保が涙ぐんでいたので少し引いた。
私がもうずっと「うんこ」しかしゃべらないんじゃないかと本気で心配してたらしい。
相手が大人だったとはいえ、ちょっとやりすぎたかもしれない。
それからというもの、久保は大分まるくなって、残りはとても楽しく、充実した学校生活を送ることができた。
この、徹底して意地を張ったうんこ連呼事件は、結果的に、得るものもあったけど、たくさんのものを私から奪った。 そして周りにたくさん迷惑をかけた。
しかし後悔はしていないし、あの事件がなかったら、今の私はないし、今の私の生き方につながっていると思う。
ーーーーーーーーーーーー
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ーーーー
ツギハー クリハシー クリハシー オオリノオキャクサマハ・・・
爽(…おっ)ハッ
爽(やべえやべえ乗り過ごすとこだった)イソイソ
爽(もう少しだな… さて! 越谷では、何が私を待ってくれているのかな…!)
次回、~埼玉越谷女子「生還セヨ! 魔境BOTTONの怪」の巻~ に続く…
<その6 ~埼玉越谷女子「生還セヨ! 魔境BOTTONの怪」の巻~ >
~埼玉越谷女子麻雀部部室~
景子「リーチ!」
ソフィア「おっとそれだ、ロン! 16300!」
景子「・・・ぬかった・・!」
花子「ソフィアの一人勝ちだね」
玉子「ノオォォであ~る…」
ソフィア「守りがうっすいんだわみんな… 川見てるか?」
花子「調子乗んじゃねーよ、部内の全体収支の累計は私が上だぞ?」
景子「…でも浅見先輩は何というか… ここぞって時に力が出ないでござるよ」
花子「うるせー、おめーもそうだろ景子。 来年はあんたが部長なんだからしっかりしてよ?」
玉子「それにしても史織は遅いであるな~」
ソフィア「だな。 3時に駅で待ち合わせだったから… もう戻ってきてていいよな」
ガチャッ
史織「遅くなりましたぁ~」
爽「お邪魔しまーす。 すんませんちょっとうんこしてて遅くなりました」サワヤカー
玉子「いらっしゃいである~」
爽「すみません、いきなり連絡して、迎えに来てもらっちゃって…」
花子「全然いいよ。 有珠山の大将が来てくれるなんて、私たちにとっても、後進の育成に役立つからさぁ」
ソフィア「獅子原さん早速卓に入ってよ」
爽「あ、ども。 ふふっ、牌にさわるの久しぶりだな」wktk
2時間後
花子「……」
ソフィア「つつ、つええ…」
史織「やぁん全然和了れな~い」
玉子「さ、三連続、獅子原さんがトップ… 誰も勝てないである…」
景子「さすが、北海道最強は伊達でないでござる…」
爽「ふふーん」ドヤッ
花子「もう一回! もう一回だ獅子原さん!」
爽「いいよー。あ、でもちょっとその前に私トイレ…」スッ
史織「またですかぁ?」
爽「いや、ちょっとオナラ… 出そうでさ」モゾモゾ
ソフィア「なんだ、オナラくらい気にしないでここでかましてくれりゃいいよ。 史織なんかいつも部活中に屁ぇこいてんだぜ」
爽「いやいや、私も自分とこの部室ではそうしてるけど、今日初めて会った人たちの前で、そんなこと…」モジモジ
花子「だからかまわないって。 気ぃ遣わずにブッとやっちゃっていいってww」
爽「…そ、そう…? じゃ、お言葉に甘えて…」スウウウウウ・・・
ボッフゥウゥゥ―――――ッッ!!=3=3
花子「」
ソフィア「」
玉子「」
景子「」
史織「…くさ」
花子「…シオリ…、ま、窓全開にしてきて…」ケホケホ
ソフィア「…やべっ、息が…」ゴホゴホ
爽「だ、だから言ったのに…」
景子「…見事な放屁でござるな」
爽「包皮・・・?///」
玉子「放屁。 景子は伊賀忍者の末裔なので、古くさい言葉をよく使うであーるよ」
爽「ああ、放屁、ね…。 ねえみんな、“おなら”とか“へ”とか“ほうひ”とかってさ、いまいちダサい名前だと思わない?」
花子「は?」
爽「おならがもしもっとカッコいい名前だったらさぁ、もっと堂々とおならする人も増えて、おならの市民権も強くなると思うんだよね」
史織「あ、あたしもちょっとそう思うかもぉ~。 そうだ、英語では“おなら”ってなんて言うんだろう?」
花子「…英語では、おならは“gas”とか“wind”とかって言うらしいよ」
ソフィア「そうだな。 “屁をこく”は、英語では“break wind”だ」
爽「“ブレイク・ウィンド”かぁ… うんうんやっぱ英語にするとカッコイイな!」
史織「ねえねえ、それじゃあ“すかしっ屁”は“Silent Wind”だねっ!」
玉子「“サイレント・ウィンド”・・・ まるで映画の名前みたいであるなー」
ソフィア「すかしっ屁の映画って、どんなんだよ…」
史織「じゃあさ、“にぎりっぺ”は?」
ソフィア「にぎりっぺは… “グリップ・ウィンド”… いや、“クレンチ・ウィンド”か…?」
史織「くらえ! グリップ・ウィンドオォォッッ!!」ニギリッペー
ソフィア「うぉ! おまっ! 史織てめっ! コロス!!」クッサー
アハハハハッ キャッキャッ ワイワイ ガヤガヤ
・
・
・
午後6時半
花子「あー笑いすぎて腹いてぇーww・・・ って、もうこんな時間か…」
玉子「大分暗くなってきたであーる」
花子「そうだね。 そろそろ解散かな。 獅子原さん今日泊まるとこ決めてるの?」
爽「うんにゃ。 なんも決めてないっす」
花子「あらそんじゃあ景子んちに泊めてもらえばいいんじゃね?」
景子「それは妙案でござるな」
爽「八木原さんの家…?」
ソフィア「景子の家は古いけどすごい立派な旅館みたいな家なんだよ。 明日土曜だし、どーせだから今日はみんなで泊まりに行かねーか? いいよな景子?」
景子「大歓迎でござるよ」
花子「はい決まりー、 みんな帰る準備しよーか」
史織「あの… 先輩… 私ちょっと用事あるんでぇ… すみませんが帰りますぅ…」
ソフィア「ん? そうか? じゃ、史織だけ抜いて5人で行くか」
実は、史織には景子の家に行きたくない理由があった。
景子の家には、一ヶ所、ある恐るべき場所があったからである・・・
いったん止まります。
続きは明日書きます。
投下します。
最後の方、免疫の無い方にはもしかしたら軽くホラーかもしれません。
ご注意ください。
爽(八木原さんの家はちょっと遠かった)
爽(南越谷という駅からJR武蔵野線に乗り、東所沢で降りてそこからバスに30分くらい乗って、停留所からさらに山の中を歩いた)
八木原さんが、提灯を持って慣れた様子で先頭を歩いていく。
爽「…す…すごい山ん中だね… 電灯もねえ…」ザッザッ
玉子「ここは狭山丘陵という場所であるよ。 映画の“となりのトトロ”のモデルになった、埼玉が誇る自然豊かな場所なのであーるよ?」
爽「はあ… なるほど…」
ソフィア「獅子原の住んでる所もけっこう田舎なんじゃねーの?」
爽「まあ… そうだねえ。 一応国立公園に指定されてて、有珠山と昭和新山っていうちっさい山があってさ… あと、すぐそばに洞爺湖があるんだ。」
花子「洞爺湖・・・ マリモが住んでるとこ?」
爽「それは阿寒湖だね。 洞爺湖は日本で9番目の大きさのけっこうでかい湖で、温泉もあってさ、わりと観光地なんだわ」
ソフィア「いいなぁ。 夏とか水遊びできんじゃね?」
爽「うん、夏には泳ぎにも行ったし… よく釣りに行ったよ。 放流もされてて、ウグイとか、ニジマス、ワカサギも釣れる」
花子「やっべ腹減ってきた。 明日みんなで渓流釣りに行こーぜ。 鮎、鮎!」
ザッ ザッ ザッ
爽「…けっこう歩くね… 八木原さん毎日こんなとこ一人で歩いてんの? 夜危なくね?」
玉子「…ここはたまに山賊が出るであるよ」
爽「マジで?」
景子「山賊は出ませんが… たまに大きいイノシシが現れるので一人で歩くのは少し危険でござるよ」
景子「でも、私は…」ヒュンッ
景子は突然自分の髪留めを取り、前の茂みに向かって投げた。
景子の髪留めは手裏剣も兼ねているのである。
キィッ!
茂みから、鋭い鳴き声。
ソフィア「オッ すげー! ノウサギ、けっこう太ってるぜ」ズルズル
ソフィアが茂みから血まみれのうさぎを引きずり出す。
爽「ひぇっ」
景子「獅子原どの… 明日、うさぎ鍋を振る舞うでござるよ…」
爽(・・・なんだこれ・・ こいつらサバイバル能力ありすぎだろ…)
八木原さんの家に着いたのは八時を過ぎていた。
おじいさんがシシ鍋を作って待ってくれていた。
爽「やばっ、 うまぁ! あじゃっ! うみぇええええぇぇっっ!!」ガッフガッフ=3
花子「ほえ… 気持ちのいい食べっぷりだねえ・・・」ムグムグ
ソフィア「獅子原がシシ鍋じゃあ、共食いだな」
爽「すんません私、人の3倍くらい食べるから…」
景子「遠慮せずたくさん召し上がるでござるよ」
食べるともう眠くなってしまった。
他の4人も、食べ終わると早々に寝床の準備をし始めた。
旅の疲れやら、カルチャーショックやら色々あった私は、布団に潜り込むとすぐに眠ってしまった。
・
・
・
真っ暗な中 目が覚めた。
爽(……)
横を見ると、越谷のメンバーがいびきをかいて寝ているのがうっすらと確認できた。
爽(…今、何時だ…?)モゾッ
カチカチと音を立てている柱時計・・・
わずかに月明かりが差していて、時計の針を読み取ることができた。
2時半―― 草木も眠る丑三つ時…
ゴロリと寝返りを打つ。 お腹にズッシリしたモノを感じる。
うむ、うんこだ・・・ うんこがしたい。
爽(ひいい… なんかやべえもん出そうでこええよここ… ナムアミダブツナムアミダブツアーメンアーメン・・・)ブツブツ
周りの子を起こさないようにそっと廊下に出る。
爽(電気… くそっ スイッチ分かんね)
爽(でも、たしかここの突き当たりがトイレだった…)ギシッギシッ
月明かりを頼りに廊下を歩く。
無事にトイレに辿り着いた。
爽(うしっ…)
しかしその時
「シシハラどの」
爽「!?」
突然真後ろで声がしたので、爽はヒッと小さい声をもらして後ろを振り向いた。
そこには、寝巻き姿の景子が立っていた。
景子「うんこでござるか? 獅子原どの…」
爽「は、はひ・・・ う、うんこです…」
景子「申し訳ない。 この時間は断水されていて、水が流れないのでござるよ」
爽「ふぇ・・・」
景子「外に汲み取り式の厠があるでござる。 そちらを使ってもらいたいのだが…」
爽「え、外…?」
景子「あちらでござる」スッ
景子が指差したのは、庭…というか敷地の外れにポツンと立っている、小さい物置のような小屋であった。
汲み取り式・・・俗に言うボットン便所・・・
便器の下に便槽があって、うんこが一定量たまったら、バキュームカーにうんこを引き取ってもらう、あの、汲み取り式…
爽(マジか…)
汲み取り式のトイレは総じて水洗より臭い。
爽は小さい頃に、田舎の祖父の家で汲み取り式を経験したことがあるが、あの臭さは軽いトラウマになるほどの強烈なものである。
それに、あんな普段使ってないような汲み取り式トイレは、想像するだけで膝が震え出すほどの猛臭を予感させる。
しかし・・・
爽(…)サスリ
爽はズッシリとした下腹部をなぜた。
なんとしても今、この子を産まねば・・・!
寝グソするはめになるぜマジで…
爽(女には・・・! やらねばならぬ、時がある・・・!)カッ
爽は意を決して縁側からサンダルを履いて庭に出た。
寒い。
小走りでトイレに向かう。
爽(……)
地震がきたら速攻でペシャンコになるんじゃないかと思わせるほどの古ぼけた木造の小屋だ。
爽(うんこの神様・・・! 我に力を… エナジーを…!!)
爽(いかなる激臭の悪魔にも…! 我は、屈せぬ…!!)スウウウウウ…
深呼吸をして息を止めて扉を開ける。
爽(…)モゾモゾ
手探りでスイッチを探し、電気をつけた。
爽「!!?」
裸電球に照らされたそのトイレの内部を目にした爽は呆然と立ち尽くした。
その、タタミ一畳ほどのスペースには、足置き場らしい2枚の板が並び、その板の間にポッカリと異様に大きい真っ暗な穴が口を開けていた。
そして、それ以外の物は何もなかったのである。
爽(…なんつー原始的なトイレだ…)
爽は鼻をつまみながら穴の中をのぞきこんだ。
うんこがけっこう上まで迫ってきている。
そして・・・
爽「…???」
穴の中に、何かがうごめいている。
爽「うおっ! これは・・・!!」
その時爽の脳裏を、走馬灯のように幼い頃の記憶が駆け巡った。
アレだ。
アレしかない。
田舎のじいちゃんちの肥溜めにいた、アレ・・・
白く小さい、おぞましきあの生き物…!
ウジである。
迫りくるうんこの上を、何十匹、いや、何百匹というウジがもぞもぞとはいずり回っていたのである。
爽「・・・!!!」ガタガタガタ
爽は恐怖に打ち震えた。 こんな所で用を足せというのか・・・!
しかし、その時、爽の脳内におかしな生き物が現れた。 悪魔のような格好をしているが、顔はなぜか揺杏だ。
悪魔揺杏「屁ッ屁ッ屁――ッ! どーよ爽! 普段偉そうにうんこうんこいってるオメーも、ウジにはかなわねーだろーがウジには!」
爽「…」
悪魔揺杏「これがうんこの真の姿よぉ! オメーもしょせんは温室育ちの女子高生… “あたちもうダメむりー”って、逃げ出していいんだぜぇ?」
悪魔揺杏「ククク・・・ とっとと流れない水洗トイレに行って、うんこさらしてこいやお子ちゃま爽たーん♪」ヘラヘラ
爽「…ナメンじゃねー…」
悪魔揺杏「あん?」
爽「私はうんこマスター爽! ウジなんか屁のかっぱだぜえ! 何百匹でもかかってこいやあぁぁ!!」カッ
悪魔揺杏「!」シュウウーッ
爽の気迫に、悪魔揺杏はその姿を消した… そして…
爽「やってやるぜオラアァァ!!」ザッ
勢い良くパジャマとパンツを脱ぎ、穴を大きくまたいだ…
しかし・・・!
ズルリンコゥッ!
爽「ひゃっ!」
またいだ右足は板を踏み外し、恐るべき地獄の入り口に落ち込んでしまったのである・・・!
爽「ひいっ!!」ガシッ
両手で必死に板にしがみつく。
爽「う・・・!」ガクガク
宙ぶらりんの右足からサンダルがスルリと脱げ落ち、うんこの上にポトンと乗っかった。
爽「あっが・・・!」
もしこのまま、体も穴に落ちたら・・・ 待ち受けるは、 当然、 “死” のみ・・・!!
爽「あ゙―――っ……」
渾身の力で上体を上げようとする。 しかし、穴が大きすぎて力がうまく入らない。
爽「くそった…れ…!」ハアハア
爽は荒い息をつきながら床を見つめた。
すると・・・
モゾモゾ ウジウジ
爽「・・・!?!?」
なんと、爽の目の前の床にも、ウジがはい回っているではないか・・・!
爽「あっぱっぱ・・・・」
そして、壁に目をやると… なんと、そこにも元気のいいヤツが何匹もはい上がっていたのである・・・
爽「・・・オ―――――ッ すごいっ… これは… すごい!!」
あまりのことに、爽は一瞬恐怖を通り越して感動の叫び声をあげた。
そして、そのあとにドッと恐怖の波が押し寄せ、爽は大声で助けを求めていた。
爽「ダレカ―――ッ タスケテェェ――――ッッ!!」
・
・
・
その後、他流忍者の襲撃かと勘違いした景子が真剣を手にトイレに入ってきて、爽はまたもや死の恐怖を味わったが、無事に引き上げてもらえ、地獄の穴に落下せずに済んだ。
爽は、うんこ・トイレに関しては誰にも負けないと思い上がっていたが、この日を境に考えを改め、うんこに対してより畏敬の念を持つようになった。
爽(…うんこは、元々は土に還るべきもの…)
爽(うんこにカビやバイキンがついて分解されて土になり、そこから、新しい命が生まれる…)
爽(その、うんこ→土 の過程で、ハエの幼虫も重要な役割を担ってる…)
爽(その、幼虫を怖がるようじゃあ、私も、まだまだだね)
爽(…うんこ・トイレの世界は本当に奥が深い… もっと謙虚な気持ちで、旅を続けよう…!)
次回、~西東京白糸台「手がかりはうんこ! トイレから消えた少女…!」の巻~ に続く…
多分来週、次スレを立てて白糸台から書いていきます。
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