怪人「ぎゃあああああ!!」戦隊ヒーロー「正義は勝つ!!」 (118)

(――あ~あ、まぁたやられちゃったよ……)

目の前の巨大なモニターを見ながら、ぼんやりと考えていた。
今回の怪人は、クモ男。
けっこううまくできたんだけど、まあ、相手は5人だし、これも仕方ないか。

「……総督、いかがいたしましょうか……」

目の前には、女幹部と男幹部が膝を付いて僕を見ていた。
どうするも何も、クモ男、爆発しちゃったし。

「……撤退。戦闘員を引かせろ」

「……かしこまりました」

「ああ、ちゃんとケガの治療と重傷者には特別休暇の検討もね」

「はっ――!」

凛々しく返事をした幹部たちは、部屋を出ていった。

「……ふぅ。この喋り方、疲れるんだよね……」

大きく息を吐き、被っていた兜を脱ぐ。しかし鎧は簡単には脱げないから、諦めるしかない。
これは、男幹部が用意したものだ。何でも、これくらいのものを着ていないと様にならないとか。割とどうでもいいんだけど。

……そう、僕は、とある組織の長をしている。世間では、僕の組織はこう呼ばれている。

――“悪の組織”、と……

それではお天気です

期待

東京は晴れるでしょう

オモロー!

「――お疲れ様ー」

「お疲れ様でした!総督!」

夜間警備担当の戦闘員は、敬礼しながらオラを見送る。
その言い方、本当は止めてほしいのだが、今更名称を変えるのも面倒で、とりあえず放置している。
外はすっかり日が落ちてしまい、空の星達が揺れ動き、帰る僕を労っていた。
当たりは森に囲まれたところであり、ここから駐車場までは歩いて30分かかる。ちょっとした、森林浴のようなものだ。
その中を、トボトボと歩く。

本当は警備を付けようという話になったが、それは拒否した。
僕は公私を分けるタイプだ。帰りくらい、一人でゆっくりしたい。

暗い夜道を歩きながら、何となく思い返していた。
こんなことをするはめになった、あの日のことを……

木原さーん ソラジロー

面白い

――あの日、僕が道を歩いていたら、目の前に隕石が落ちて来た。
それはこぶし大の大きさで、不思議な色を放っていた。虹色って言うのだろうか。赤、青、緑……次々と目まぐるしく違う色を放っている、不思議な石だった。
気になった僕は、それを手に取ってみた。
すると石は瞬時に砕けてしまい、光だけは僕の中に入ってきた。

……それ以降、手を何か生き物にかざし光を当てることで、擬人化させることが出来るようになった。

僕は驚きながらも、少しずつ能力を使いこなせるようになった。
そして考える。これを、どう使うか……
そこで僕が思いついたのは、ちょっとしたお手伝いだった。この能力で怪人に変えた生き物を、社会奉仕に使おうと思った。人間には到底無理なことも、怪人たちなら出来る。
普通の人生を送っていた僕が、世界中から感謝され、尊敬されるような―――そんな未来を、想像した。

――僕は、正義の味方になりたかったんだ。

思い立った僕は、とりあえず目の前にいたダンゴムシを怪人に変え、一緒に街に行った。
ダンゴムシ男を使って、脚の悪い人の移動手段にしてやろうって思っただけだった。
さすがに素顔を晒すのはあれだったから、祭りの露店で買ったマスクを付けていたけど。

――だがしかし、そこで問題が発生した。
まあ当たり前だけど、でっかいダンゴムシの怪人を見た人々は、叫び声を上げて逃げ惑った。
しまったと思った時は、既に遅かった。
気が付けば警官隊に囲まれてしまい、銃を向けられていた。
仕方なくダンゴムシ男に逃げることを言ったら、逃げるついでに警察官を吹き飛ばしまくってしまい、僕らはいろんな意味で全国的に有名な存在になってしまった。

……ある意味、僕の悪の道への、第一歩となった。

その時、一つの組織が立ち上がった。
何でも、こんなこともあろうかと日々準備をしていた人たちだとか。

こんなこともあると考えてたあたり、それまではただ痛い集団に思われていたようだが……ダンゴムシ男の襲来により、一躍注目を集めることになった。
そして、僕に出てくるように全国放送で呼び掛けたのだ。

どうしようか悩んだが、とにかく誤解を解くべく、ダンゴムシ男と話し合いに行った。
……ところが、奴らは僕らを見るなり、問答無用で攻撃を仕掛けてきた。
ダンゴムシ男は激怒した。
僕の制止を振り切り、ヒーローたちに飛びかかって行った。

……そして、合体攻撃により、見事に撃破されたのだった。
ちなみに、爆発したあとの怪人は、ただ元の姿に戻るだけだったようだ。一安心した。

命辛々逃げ延びた僕は、どうするか悩みながら歩いていた。

……その時に会ったのが、女幹部だった。

はいはーい

ドラえもんとしんのすけすれの人やな

ほう

女幹部はすぐに僕と分かったようで、いきなり手を握ってこう言ってきた。

『あなたの行動には感動しました!こんな世の中を征服しようとする勇気……私も、ご一緒させてください!!』

……何か、勘違いをしていたようだ。
だがそこから、女幹部の行動は凄まじかった。
ネットやツテを使って次々と仲間を集めていった。具体的にどうやって集めたかは分からない。
だが、この世の中をよく思わない人は多かったようだ。
あっという間に、大軍団へと発展した。

その後男幹部が加入し、僕はついに、悪の組織の総督となった。

……当然だが、僕がしたかったのはこんなことじゃない。
本当は人々から尊敬されることをしたかった。
だけど、その役目はすっかりヒーローたちに持ってかれてしまった。

再びどうするか悩んだけど、とりあえず、この組織を運用することにした。
ここまで僕のために集まってくれた人たちを、はい解散で帰すのは忍びなかった。
何より僕を必要としてくれていることが嬉しかった。

……そして僕は、流されていった。

「ただいま……」

家に帰りついた僕は、電気を付ける。
築数十年ものの年期のある木造アパートだ。
組織では総統総統と持て囃されているが、一歩組織から離れれば、しょせんただのアルバイト。
こんなボロボロのアパートに住むのがやっとだ。

ちなみに、悪の組織には給与はない。収入がないから当然だけど。
戦闘員、幹部たち……みんな、本当はそれぞれの生活がある。基地の運営は、それぞれの募金で賄われている。
まあ、質の悪い宗教集団のようなものなのかもしれない。

いつかみんな飽きてしまうと思っているのだが……なぜか、中々みんな飽きてくれない。
それどころか、女幹部によると、人数が増えているらしい。
まったくもって不可解だ。

やっぱり総督じゃなくて総統だよな。

>>17
そうなの?
まあ似たようなものだから、これで行く

ほう

はよ

ご飯作ってるから待ってて

>>16で総統って書いてるから、総督は書き間違えかと思ってた。
総督って中央政府から任命されるものだからね。
まあどっちでもいいから続きに期待。

こういうスレマジできもいわ キモオタどもは ブヒブヒ楽しめるかもしれんが、一般人からしたら苦痛でしかない

>>23
別に見なければ良いのだ

>>23
ここ見て書き込んでる時点でお前も一般人じゃねーから安心しろ

>>24>>24
>>23はコピペだぞ

>>24-25

支援

「――いらっしゃいませー」

お客が店に入ると同時に、条件反射的に口が動く。その様は、まさにパブロフの犬の如し。

そこは、僕が働くコンビニエンスストア。
ここに勤めて早2年……だらだらとここに勤め続けている。そしていつの間にか、僕はこの店の中堅へと君臨していた。

……これが、僕の普段の姿だ。
目立った夢も、やりたい仕事もない僕は、とりあえず生活費を稼ぐためにアルバイトをしている。
知り合いは、みんな仕事をしている。
やれキツイけどやりがいがあるだの、やれ苦労して昇進しただの、同窓会の度にそんなことを口にしていた。
そんなのは、正直興味はない。
キツイなら嫌だ。苦労するのも嫌だ。
僕の脳裏に浮かぶのは、まずそんな言葉だった。

ダメ人間ってのは、僕のような人のことを言うのかもしれない。

――ピンポーン

「――いらっしゃいませー」

再び、僕の口は無条件に動く。

(―――あ)

入ってきた客を見て、すぐに気付いた。
その女性は、スーツを着こなす。
髪を後ろで束ね、メガネ着用。ビジネスバッグを手に持ち、やや高いヒールをカツカツと鳴らしながら、凛々しく聡明に店内へと入って来る。
その姿は、見る人が振り返ってしまうほど、とてもカッコいい。……そう、カッコいい女性だ。
彼女は、このコンビニの近くにある会社の役員をする人物だ。
若くして管理職を任せられている彼女は、きっと世間で、エリートと呼ばれる人物なのだろう。

……ちなみに、どうして僕が、そんな込み入ったことを知っているかというと……

彼女は、微笑みながら僕を見る。そして、声なき声を僕に送る。
彼女の口は、こう動いていた。

――お疲れ様です、総統――

……彼女こそ、女幹部の普段の姿だった。

店内を歩く彼女。歩く姿もカッコいい。
……しかし、立ち読みするフリをして横目で彼女をチラチラ見ている高校生も、レジをしながらがっつり彼女を凝視している店長も、みんな揃って思いもしないだろう。
彼女が、コスプレ衣装を着飾り、全力で悪の幹部を務めているなんてことを。

「……これ、ください」

彼女は決まって僕のレジに商品を持ってくる。
そして必ず、カルボナーラを買っていく。よほど好きなようだ。

「……温めますか?」

「いいえ、けっこうですよ」

彼女は、優しく答える。
毎度のことながら、何だか不思議な気分になる。
組織では望んでもいないのに僕を敬って来るのだが、今目の前にいる彼女は、まさしく立派な女性だった。……今の僕なんて、まるで話にならないくらいに。
どうしてこんな女性が、自ら進んで悪の組織の一員になるのか、僕にはとうてい想像も出来ない。
何度か聞こうと思ったことがあるが、聞いたところで何かが変わるわけでもない。僕の座右の銘は、現状維持なのだ。

――ふと、彼女が小声で訊ねて来た。

「……総統、明日は何時に……」

「え?……ああ……じゃあ、昼の3時くらいで。仕事大丈夫?」

「はい。それまでには終わらせますので……」

そして彼女は、最後に笑顔を残して立ち去っていった。

……ほんと、なんであんな人が女幹部なんてしてるんだろう。

仕事終わり、店のバックヤードでタバコを吸いながら、ぼんやりとテレビを見る。
別にすぐに帰ってもいいのだが、何となく、目の前を流れる映像を見ていた。

テレビでは、有名な歌手が歌を歌っていた。
ビジュアル系の格好であり、会場では女性が黄色い歓声を上げている。凄まじいイケメンだし、当たり前か。しかしその見た目とは裏腹に、声はとても力強く太い。
自身が作詞作曲したバラード調の曲を必死に歌うその姿は、まさにプロそのもの。まあ、プロなんだけど。

「――この人、本当にいい声で歌いますよね。歌も凄くいいし……」

ふと、後ろから声がかかる。
振り返れば、コンビニの制服を着た女性が立っていた。
彼女は鈴形さん。このコンビニで働く、後輩さんと言ったところだ。
同い年ではあるが、なぜか僕に敬語を使って来る。
……ちなみに、同じコンビニに働いてるからといって、ムフフな展開になっているなんてことはない。彼女には、きちんと彼氏さんがいる。いつも迎えに来てるし。

「……でもこの人、最近あんまり曲を出しませんよね……。私ファンだから、ちょっと心配です」

「……ああ、この人、スランプだからね」

「そうなんですか?」

「らしいよ」

(……だって、本人が言ってたし……)

……鈴形さんは予想もしないだろう。目の前の画面の中に移るそのイケメンが、組織の男幹部であることを。

「……詳しいんですね。先輩もファンなんですか?」

不思議そうに僕を見る彼女。ファンなんてことはない。むしろ、僕は普段歌なんて聞かない。故にカラオケとかいう奴も大嫌いだ。

「……そうじゃないけど。ネットで見たんだよ」

「へえ~……」

「それより、その“先輩”って言うの、いい加減やめない?同い年だし……」

「でも、働き始めたのは先輩の方が早いですよ?」

「たかだかコンビニで、そんな体育会系なことなんて気にしないって」

「いいじゃないですか。私が、そう呼びたいだけなんです」

そう言い残し、彼女は店内へ戻って行った。

……それにしても、この人もこの人で不思議だ。
国民的な歌手であり、富も名声も手に入れた、いわば成功者とも言える人物……なぜこんな人が、あんな胡散臭い組織に加担しているのだろうか。

彼との出会いは、今でも鮮明に覚えている。
怪人が敗れ撤退する最中、僕の前に現れた彼は、突如土下座をしてこう叫んだ。

『俺も、仲間に入れてください!!』

女幹部は、すぐに彼が有名歌手であることに気付いた。それから紆余曲折ありながらも、彼は組織の一員となった。

しかしながら、女幹部といい男幹部といい、本当に謎だ。
なぜ社会の中で勝ち組の代表であるような二人が、僕の下にいるのだろうか。

そんな疑問を感じながらも、その答えを求めるつもりもない僕は、荷物をまとめて家に帰った。

「――いけええ!タニシ男!!」

「オラそこだよ!もっとやれ!!」

秘密基地では、モニター画面に向かって女幹部と男幹部が拳を握りながら声援を送る。
その他戦闘員も、ワーワー歓声を上げながら画面の奥で戦うタニシ男を応援していた。
その姿は、まるでプロレスを見る観客のようだった。

しかしながら、なぜかこの日は怪人の調子がすこぶるいい。
奇跡的にも、5体1という圧倒的不利な状況にも関わらず、ヒーローたちは追い詰められていた。

(マジかよ……勝っちまうんじゃないの?)

客観的に眺める僕ですら、そんなことを思う程、タニシ男は善戦していた。
……本当は、この日タニシ男にお願いしたのは、川の清掃であった。
それを忠実に守ったタニシ男は、川にゴミを投げ入れた少年を投げ飛ばしてしまう。そして通報を受けたヒーローたちが駆けつけ、こうして戦うことになってしまっていた。

しかしタニシ男は、ヒーローたちを圧倒していた。
周囲が水であるのを利用し、彼らを追い詰める。そして……

「――クソ!!撤退だ!!一度引くぞ!!」

ヒーローたちは、退散してしまった。

「やりましたよ総統!!タニシ男が勝ちました!!」

「うおおおおお!!!タニシ男おおおお!!」

大歓声に包まれる基地内。全員が手を取り合い、喜びを分かち合う。

「……マジかよ……」

まさか勝ってしまうとは思わなかった。予想外の結果に、凄まじく驚いていた。

……盛り上がる基地内とは裏腹に、ヒーロー達が撤退した後、タニシ男は一人静かに川のゴミを集め始める。
その姿は、実にシュールなものだった。

結局総統でいいの?

>>34
うん
そっちの方がしっくり来そうだし

――その夜、基地の中では宴会が開催されていた。
これまで、何度かヒーロー達を撤退させたことはあった。その度に、こうして祝賀会を開いている。
もちろん音頭を取るのは僕じゃない。誰とも言わず、勝利と同時に準備が始まる。

その席では、全員が笑い合っていた。
普段暑苦しい全身タイツを着ている戦闘員の人達も、この日は素顔を晒して酒を交わす。
まるで会社の飲み会のようだ。

「……ふう……ちょっと休憩……」

少し飲み過ぎたかもしれない。
火照った顔を冷ますべく、外の風に当たろうと思い立った僕は、楽しく飲み合うみんなの邪魔にならないように、静かに基地の外に出た。

ほう

外は綺麗な月が出ていた。
月の下で飲む酒もまた格別……とは言うものの、酒はもう飲みたくはない。
しかしまあ、これだけ大きな満月なら、酒はなくても十分楽しめる。夜空の下の特等席で、静かに上を見上げるのもいいかもしれない。

……その時、僕は気付いた。

(あれ?先客か……)

特等席には、既に先客がいた。

「……ああ、総統」

女幹部は、こちらを振り向いて笑っていた。僕は笑顔を返し、彼女の隣に並ぶ。

……本当に綺麗な空だった。
大きな月の周辺に、光の粒子を散りばめたような、とても壮大な景色だった。
こんな空を見ていると、本当に自分の存在なんてちっぽけに思えてくる。

「総統も、涼みに来られたんですか?」

「まあね。キミも?」

「ええ、そうですよ。……こんなに綺麗なんですもの。見ないわけにはいきませんし……」

女幹部は、安らかな表情で空を仰ぐ。
恰好こそ悪の女幹部と言ったところだが、その表情と瞳は、何も変わらない、一人の女性だった。

……ふと、思いついた。
今なら、彼女に聞けるかもしれない。

「……ねえ」

「はい、なんでしょうか」

「どうしてキミは、こんなところにいるの?」

「……え?」

僕の質問に、彼女は空を眺めるのを中断し、僕に顔を向ける。

「だから、どうして悪の組織なんて言われてる集団にいるの?」

「……」

「キミは、普通の生活で成功してるじゃないか。もし今の姿が人に知られたら、それを全部失うかもしれないんだよ?
なんでわざわざこんなことするのさ……」

僕の言葉に、彼女はすぐに、クスリと笑う。……笑ったんだ。

「……総統。私の夢って……何だと思います?」

「ゆ、夢?……さあ……こんなことやってるくらいだから、世界征服?」

彼女は、小さく首を横に振る。

「……はずれです。私の夢は、好きに生きることなんですよ」

笑顔を浮かべたまま、彼女はもう一度月を見上げた。

しえん

すこぶる④

いいよ!

「――私はこれまで、誰にも逆らわず、ただ言われたことをしてきました。
勉強をしろと言われれば勉強し、大学に行けと言われれば大学に行き、就職しろと言われれば就職しました。
両親は、常に私に期待をしていました。
それが嬉しくて、その期待に応えるために、ただひたすらに、がむしゃらに生きていました」

「……」

「……でも、ある日思ったんです。
私の人生って、なんだろうなって。
ただ人から言われるがままに生きて、これは、自分の人生って言えるのかなって。
生活は充実していました。でも、ふと後ろを振り返れば、私のこれまで生きてきた道には、レールしかありませんでした。
これじゃいけない。このままじゃいけない。
自分の人生に、自分の色がないことに焦りを覚えました。
……ですが、結局私は、それまで通り、その道を進むしかありませんでした。
その生活を壊すことが、とても怖かったんです……」

彼女は、表情に影を落とす。
しかしすぐに顔を上げ、黒い瞳に真っ白な月の光を写した。

「――その時に出会ったのが、総統なんです」

「……僕?」

酉忘れてた

待ってたぜ

男幹部が裏切り女幹部がヒーロー達に[ピー]されて総統が絶望する展開を希望



しないからやめといてくれよ

蜘蛛男ってことは組織はショッカーか

¥4

「最初にテレビを見たときは驚きました。
総統は、テレビの世界から飛び出したように、異形の怪人を従え、国家権力に凪ぎ払っていましたし。
この国で、ここまで出来る人がいたことに、衝撃を覚えました」

「ハハハ……」

本当はそんなつもりはなかったのだが、とりあえず苦笑いをしておく。

「最初は、バカなことをする人もいるな……と思いました。
ですが、その時に気付いたんです。
この人は、間違いなく自分の道を歩いている。
無茶と呆れられても、無謀と笑われても、この人は、この人が信じる道を歩いている。
きっとこの人が振り返ると、そこには、この人だけが歩いた道が出来ている……そう、思いました。
それが正しいかどうかは分かりません。
ですが、その姿に、私は深く感銘を受けました。
――心から、尊敬しました」

「……」

「……後は、いつの間にか体が動いていました。
街中を走り、総統を見つけました」

(それが、あの日……)

「――総統は、私の人生の灯台です。
行先も分からず、そこがどこかも分からず、路頭に迷いそうになっていた私の光なんです。
レールから飛び降りて、自由に走り回ることが出来る、眩い光なんです。
……ですから、私はここにいます」

そう話す彼女は、とても満ち足りた顔をしていた。
その顔を見たら、誰でも分かると思う。
彼女は、心からそう思っていると。

続きはよ

いいよ!

正直ドラやクレしんほど面白いと感じない

悪が悪のまま是か
いいな
がんばれ

彼女の言葉は、心に突き刺さった。
だって、今の僕こそ、周りに流されているから。
自分の意志なんかじゃなくて、自分の想像していた方向とは違う道を歩いていることにふてくされ、いじけているだけだから。

そんな僕を、彼女は尊敬していると言った。光だと言った。
こんな中途半端な存在なのに、彼女はここにいると言った。

……今の僕には、そんな彼女の言葉を受ける権利はない。

「……先に、戻っておく」

「え?は、はい……」

僕はその場を立ち去る。決して後ろを振り返らず。
彼女に、今の僕の顔を見てほしくなかった。ガッカリしてほしくなかった。
――こんな、僕自身を嫌悪する顔なんて、見せたくなかった。

来たか

あ、この話はけっこう短いですから
あしからず

しえん。
さるよけいるかな?

宴会は夜明けまで続いた。
朝方になると、大多数の人達がグロッキー状態で目を覚ましていた。
おかげでトイレは大行列が出来た。
これもまた、怪人が勝利した時の恒例の光景だ。

しかしながら、彼らは知らないだろう。
全員が出来上がってる最中、実のところ、今回の宴の立役者であるタニシ男は、ヒーロー達が用意した新兵器により敗れ、ただのタニシに戻っていたことを。
向こうは寄付金やら義援金でかなりの額を貰ってるからな。
新兵器開発には、抜かりはないようだ。

タニシ男、どうもお疲れさん。

それはそうと、それから数日後のこと、突然男幹部が言い出した。

「――今度の作戦、俺も参加します」

いやはや驚いた。急に言いだしたものだから。
でも、実際のところそれはマズイ。
何しろ、僕達は何だかんだ言っても、世間一般では犯罪者集団となっている。
もし彼の素性でもばれようものなら、即刻彼は警察に逮捕されるだろう。

だから僕は必死に反対した。それは止めた方がいいと。
だが、彼の意志は固かった。頑なに行くと言って聞かず、仕方なく、それに同意することにした。
せめて彼の素性がバレないようにするためにと、いつもより余計に力を込めて、とっておきの怪人を用意した。
それこそ、カマキリ男。
けっこう力使ったから、見た目もかなりゴツイ。
これなら、そっとやそっとじゃ負けることはないだろう。

カマきり男を従えた男幹部は、僕らに見送られながら颯爽と基地を出ていった。
頼んだよ。カマキリ男くん。

その後タニシ男の抱えてた寄生虫が世界を震撼させたことは誰も知らない。
……みたいな外伝あったら面白いかも

この人のしんのすけスレどこだろ…

カマキリ男に頼んだのは、とある公園の草むしり。
この公園、かなり雑草が生い茂っており、以前花火をしていたちびっ子たちが、誤って枯草を燃やしてしまい、あわや大惨事となるところだった。
周囲は住宅地。火が燃え移ったのなら、ただでは済まないだろう。
せっせと草を手のカマで切り裂いていくカマキリ男くん。
あまりに切れ味がよかったせいか、すぱすぱと公園の遊具さえも切り裂いていた。
泣き出す子供。怒り狂う区長さん。それでもカマキリ男は止まらない。
今の彼に見えているのは、目の前の雑草を全て処理することだけであった。

「――待てぇい!!」

突然、公園の中に勇ましい声が響き渡る。
声の方を見てみると、そこにいたのは、いつもの戦隊の皆様だった。

――するとここで、一緒に草をむしっていた男幹部が立ち上がり、ヒーロー達の前に立ちはだかった。
そして、高らかに声を響かせる。

「よく来たなヒーローの諸君!!待っていたぞ!!」

……彼は今、悪の男幹部になりきっていた。
見ていると、こっちが恥ずかしく感じるくらいに。

「お、お前は!?男幹部!?」

ヒーロー達も彼のテンションに乗っかる。
更に興奮したのか、彼はよく分からない構えを取る。

「……今日こそが、貴様たちの最後だ!!この俺と、カマキリ男が相手だからな!!」

……そして彼は、ヒーロー達に飛びかかって行った。

その時、カマキリ男は未だにせっせと草を刈っていた。

のび太の人?

ヒーローどもはモ○サントの手先w

「――いてて……」

「まったく……無茶し過ぎだよ。相手は5人なんだよ?」

「ハハハ……面目ない……」

僕は、基地に戻った男幹部の傷の手当てをする。
カマキリ男よりも早く飛びかかった彼は、見事なまでにボコボコにされてしまった。
見かねたカマキリ男が彼を助け出し、何とか素性がバレる前に基地へと舞い戻ってきた。
もちろんヒーロー達は追撃をしようとした。
しかし、今回の怪人は渾身の力作。そうそう簡単にはやられないように作ったつもりだったが、予想以上に強くし過ぎてしまったようだ。
逆にヒーロー達が、コテンパンに返り討ちに遭ってしまっていた。やり過ぎなくらいに。

「……まったく、キミも素性がバレたらマズいだろ?迂闊に突っ込んじゃダメだろ」

「……それでも、いいんですよ」

突然、男幹部が呟いた。見れば彼は、どこか笑みを浮かべていた。ただ視線を落とし、安らかに笑う彼。彼の口からは、想いが零れ始めた。

「――俺、歌手じゃないですか。歌作って、歌ってきたんですよ。
俺の歌で、たくさんの人が元気になれるように、たくさんの止まっている人が歩き出せるように、そんな気持ちを込めていたんです」

「……なんだ、立派じゃないか」

「そう言ってくれたら嬉しいです。――でも、最近分からなくなってきてたんですよ」

「……何が?」

「名前が売れ始めて、俺の周囲は変わってきました。
レコード会社は、CDの売り上げのために、俺に曲を催促してくる。ファンたちは早く新曲を出してほしいと、いつもブログに書いて来る。
曲を求められ、歌を求められ、俺は必死に作り、歌い続けました。
……でも、思ったんです。
今の俺は、いったい何のために歌ってんだろうって。人のためでもない。自分のためでもない。そんな歌に、何の価値があるんだろうって」

「……」

「そう思ったら、なんだか全部どうでもよくなったんです。そして、俺は、曲作りで手を抜いたんです。
適当に歌詞を書いて、曲を乗せて……それまで自分が納得できるまで見直していたものを、中途半端なまま販売したんです。
――そしたら、結局それも売れてしまって……」

「……それってつまり……」

「そうっす。ファンが買っているのは、俺の歌じゃないんです。俺の名前だったんですよ。
適当な歌でバッシングを受けて、自分を見つめ直そうと思っていました。それでも曲は売れました。
――それが、とても辛かったんです……」

……これが、彼のスランプの原因なのだろう。
一般人の俺からすれば、売れるってことはいいことだと思う。
でも彼にとっての歌は、そんな簡単なものではないのかもしれない。
魂を込めて歌を作ることにプライドを持ち、自分の存在意義を見出していたのかもしれない。
それが破綻してしまった彼は、僕なんかには想像も出来ないくらいのショックを受けたのだろう。

そう思ったら、今の彼に何も言えなくなってしまった。

さるよけ

>>2
こいつのスベりようがえげつないな

「……そんな時、総統の姿をテレビで見ました。
――すげえ、カッコよかったです」

「カッコよくは……ないと思うんだけど……」

「そんなことないですよ!……少なくとも、今の俺より、ずっとカッコいいです」

彼は、表情を曇らせる。とても辛そうに、両手を握り締めていた。

「バッシング受けても、世界中を敵にしても、それでもヒーローと戦い続ける総統の姿は、まさに俺が目指している姿でした。
そんな総統に近付きたくて、俺、ここに入ったんですよ」

(……またか……)

女幹部と、同じことを言っていた。
彼もまた、僕を頼っている。それは嬉しいことである。この日本で知らない人がいないくらいの歌手が、僕を尊敬している。
少し視点を変えれば、それだけで小さな自尊心が満たされている気がする。

……でも、それより何倍も、キツイ。

本当は、僕だってみんなに賞賛されたい。褒められたい。
でも、世間はそれを許してくれない。得体のしれない怪人を使役する僕を、敵だと認識している。
中途半端な気持ちで始めたツケだろうな。
僕は望まない形で今の僕をダラダラと続けている。
そんな僕に、彼を突き合わせていることが、とても心苦しかった。

ああ、先に言っとくわ
これ終わったら、またしんちゃん書く
もう話も決めてる

しんちゃんもいいけど、これもかなり好き!

>>70
おお!うれしい!

期待あゲイ??

それから数日後、思いもしない事態が起こった。

先日生み出した、草刈りのための怪人、カマキリ男……こやつ、強すぎたようだ。
草刈り用とはいえ、男幹部の警護も兼用させるためにこれまでよりも気合を入れて作り出していた。
分厚い装甲のような甲殻、鋭すぎる両手のカマ、全方位を見渡せる眼、図体に似合わず俊敏な動きを見せる脚、空を飛ぶための羽……その全てが、これまでのどんな怪人よりも強かった。

ヒーロー達は新兵器を開発しては戦いを挑んで来るが、その度にカマキリ男の逆襲に遭い、撤退を与儀なくされていた。

ちなみに、当のカマキリ男は、ヒーロー達を蚊ほども敵とは認識していない。
彼の使命は破壊ではない。雑草の除去なのだ。
来る日も来る日も街中の雑草を狩り続け、街からはすっかり雑草が消え失せていた。
それだけなら良かったのだが、切れすぎるカマはちょっとしたミスで電柱、壁をも切断しまくる。
結局それで通報されてしまい、ヒーローがやってきては撃退する毎日となっていた。

だが、ヒーロー達も全然めげない。
負け続けながらも、彼らは戦いを挑み続けていた。
……しかし、あまりに敗戦が続いたためか、彼らの支持率は急下落しているようだ。
先日ニュースで、彼らへの義援金が約半分にまで落ちてしまったとか流れていたし。

少しだけ、悪いことをしてしまったかもと、思わないこともなかった。

この総統なら地球温暖化もなんとかできるんじゃね?

保守

それから組織の中では、このまま一気に世界征服をしてしまおうというド派手なことを提案する奴まで出て来た。
確かに、悪の組織的観点から言えば、正義のヒーロー達が手も足も出せなくなっている今こそ、その絶好の機会だろう。

だがしかし、肝心の僕が、そんな世界征服などには微塵も興味がない。
何度も言うが、僕がなりたいのは正義のヒーローなのだ。それも目立たず、ひっそりと人々の役に立てるような、縁の下の力持ちタイプの。
メンバーには、適当に“カマキリ男に力を注ぎ過ぎて、しばらく怪人が作り出せない”と言っておいた。
本当は微塵も疲れてないけど。全然まったく。跳び箱も飛べるくらい元気。

しかしながら、このままヒーロー達が負け続けるのはマズイ。
何がマズいかって言うと、世界の子供たちの夢が、だ。

彼らの存在は、子供たちの憧れの的だった。
テレビの中限定だったはずヒーローが、目の前で悪の組織と戦っている。リアルタイムで、現実に存在している。
子供たちは彼らを尊敬し、憧れ、大多数の子供が、将来の夢を正義の味方と言うまでになっていた。
たまに、怪人と戦う時に子供会が観戦してるし。

このままでは、ピュアな彼らの夢さえも、怪人カマキリ男が刈り取ってしまいかねない。
そうなったら、間違いなくグレる。
正義の味方?あんなの弱いだけのヘタレじゃん。正義?負けてばっかじゃん。
……容易に想像できる。

だがしかし、今の段階では勝手に向こうが自滅していることであって、僕自身どうしようもない。
何せ、カマキリ男にはかなりの愛着が生まれていた。
世間の注目を浴びながら、彼は健気にも雑草(その他少々の建造物を含む)を狩り続けている。
彼にやられろというのも心が痛む。

とりあえず現状維持で、様子を見ることにしていた。

なんか、軽~い話だなオイ

期待

鷹の爪団と互角?

酉忘れてた
何で消えるんだろ

――そんなある日のこと。
その日僕は、第14回カマキリ男勝利記念祝賀会を抜け出し、一人居酒屋に来ていた。
こう毎日毎日飲み会をされたんじゃ、体が持たない。
酒を注がれる身にもなって欲しい。

ということで、今日は一人ゆるりと、こうやってカウンター席に座り、酒をちびちび飲むことにした。

「――だいたい、あのカマキリ男強すぎだろ……」

ふと、背後にある座席から、そんな言葉が聞こえて来た。

(……また、カマキリ男の話か……)

それは聞き慣れた会話だった。
……だが、この日の会話内容は、少し違っていた。

「……まさか、敵の組織があんな化物を用意するなんてね……」

「義援金の額も減り続けている。基地の運営、兵器の製造、開発、修理……次負ければ、おそらく運用は難しくなるな」

「そんな……それじゃあ、私達戦えないじゃない!悪の組織が、地球を征服しちゃうわ!」

「落ち着けピンク。まだ終わったわけではない。……次は、必ず勝つ。それだけだ……」

(……これって、もしかして……)

気付かれないように、後ろを振り向く。
そこには、男4名女1名の団体が、酒を飲んでいた。
そしてその姿には、見覚えがあった。

(あれは……戦隊ヒーロー?)

ヒーロー達は、ラフな格好で酒を飲んでいた。
その雰囲気は、凄まじく重い。まるで通夜のようだ。
口々に愚痴を言い続ける。

今回の怪人が強すぎる。
もう少し兵装が強くなってから生み出して欲しかった。
ていうか悪の組織の総統、空気嫁なさすぎ。
総統、もっとお約束的な展開を考えてほしい。
総統、とにかく空気読め。

……最後の方は、ほぼ僕への陰口だったが。

――だがここで、リーダー格の人物が口を開く。

「……しかし、一つだけ、俺は悪の組織に感謝したいな。――こうして、俺達を陽の当たる場所に出してくれたし」

彼の言葉に、4人は少し顔を綻ばせながら頷いていく。

「……確かに、それはあるよな」

「うん。ちょっと前までなら、考えられないくらい注目されているし。まるで、夢みたい……」

「今まで、散々だったからな……なんかさ、充実してるよな……」

口々に言葉を漏らすメンバーに、リーダー格は話しかける。

「……奴らが現れるまでは、俺達は、頭がオカシイ集団って思われていたしな。子供のころに憧れたテレビのヒーロー達……それにどうしてもなりたくて、どうしてもその夢が捨てられなくて、俺達は集まった。
兵器を開発し、訓練し、来る日も来る日も、悪の組織の登場を待ってたよな。
……当たり前だが、そんなものなんて現れなくて……そろそろ解散しようかという話まで出てた」

「………」

「――でも、奴らは現れてくれた。俺達を、ヒーローにしてくれた。子供達に、ヒーローを見せてくれた。
子供たちに画面の中の存在じゃない、リアルなヒーローを見せてくれた。夢を与えることが出来た。
――こんなに嬉しいことはない。
こういう言い方は不謹慎ではあるだろうが、ある意味では、奴らは俺達のヒーローだな……」

「………」

……少しだけ、誇らしく思えた。
そして思った。彼らもまた、僕と同じなのかもしれないと……

ヒーローいくつだよww

ピンクはおっさんだろ!

はよ

続きまだかな…

「……とにかく、次は必ず勝つぞ!俺達のために……子供たちのために……!!」

「ああ!」

ヒーロー達は手を取り合い、自らを奮い立たせる。
そして、それまでの重い雰囲気ではなく、勇ましい足取りで店を出ていった。

彼らが出ていった後、僕は目の前の焼酎と氷が入ったグラスを見つめる。

(……僕が、ヒーロー、か……)

彼らの言葉が、やけに心に残っていた。
これまで僕は、人を助けることだけがヒーローだと思っていた。
それは最も目に見えて、最も好感を得ることが出来るから。
単純に、誰の目から見ても、尊敬を受けやすいから……

だが彼らは、敵として見ているはずの僕を、ヒーローだと言った。

(正義ってのは、色々あるのかもしれないな……)

僕がなりたいのは、正義の味方。
だが、人々が純粋に憧れるためには、必ず対となる存在が必要となる。
人類の脅威が……悪の組織があってこそ、人々を守る正義の味方が栄えるのだろう。

悪が必要なのではない。必要なのは、人々の希望。
真っ暗なご時世を明るく照らすような、ただそこにいるだけで勇気が出てくるような、そんな存在……

(……よし)

僕は、静かに席を立つ。
目の前のグラスからは、氷が溶けてカランと音を鳴らしていた。

悪の自信と自覚を持ったか

――次の日。
僕は秘密基地に、組織のメンバー全てを集めていた。
全員が、僕の前で整列をしている。その光景は、壮大なものだった。

「――今日は、みんなに話がある」

ざわめく室内。こうやって、僕が全員の前で話すことなど、ほとんどないからだろう。

「今日、僕自らが、戦場に立つ。……ヒーロー達を、今日こそ倒す!!」

さらにざわめく場内。その声を後押しにして、高らかと宣言する。

「……僕は、決意した。今日こそ、世界を我が手に収める!!あの戦隊さえいなければ、自衛隊が来ようが警察が来ようが恐るるに足りない!!
僕の力で、世界を、手に入れる!!
――皆の者!!僕に続け!!」

「ワアアアアアアアアアア……!!」

会場中が大歓声に包まれた。
それは、まさしくGOサイン。これまで何度も誤魔化してきた、世界征服宣言であった。

大歓声を受ける中、僕はカマキリ男と基地を出発する。
付き添いの者は、今日は待機させた。来られては、何の意味もない。

「……カマキリ男、悪いな」

通路を歩きながら、僕は視線を合わせることなく、小声で彼に告げる。

「……謝る必要はありません。私は、あなたに仕えることが出来たことを、誇りに思います……」

「……ありがとう……」

そして僕らは地上に降り立つ。
来たるべき、決戦のために……

お?

町に出た僕らは、片っ端に建物を壊し始めた。
誰もいないのを確認したトイレ、永らく誰も住んでいない廃屋、クモの巣が張った銅像……
とにかく、最小限度で人に迷惑をかけるものを壊しまくっていた。

「ハハハハ!!早く止めないと、町中のものを壊すぞ!!」

少し大げさに笑う。
なんとなく、イメージ的に、ものを壊すときは笑うものだと思っているから。

しばらく建物を壊していると……来た。

「――まてぇい!!」

勇ましい声、凛々しい姿。5つの色は一列になり、僕らの前に立ちはだかる。
そして、叫ぶ。

「お前達の悪事も、これまでだ!!今日こそ、俺達がお前を倒す!!」

ほうほう……。中々気合入ってるんじゃないの?
しかしまあ、これまでの連敗のせいか、観客の拍手は薄いが。

それは別にいいとして、今日は僕も乗ってみる。

「ハハハハ!!散々我らに敗れたお前たちなど、敵ではないわ!!身の程を知れ!!」

……こんな感じかな?

なにせ悪の組織の総統なんてものは、なったこともない。
僕に出来るのは、こうしてそれっぽい言葉を言うだけだし。あとは、カマキリ男くんに任せるとしよう。

「――いけえ!カマキリ男!!」

「シャアアアア!!」

カマキリ男も怪人っぽい叫びを上げる。
そして彼は、ヒーロー達に飛びかかって行った。

はよ

「――クソッ!!」

……わずか10分後、ヒーロー達は地に伏せていた。
新兵器の開発もなく、以前通用しなかった兵装に頼るしかなく、当然と言うか何と言うか、まあボロッボロになっていた。
対峙するカマキリ男は僕の方を振り返り、困ったように手の鎌で頭をかいていた。

(早すぎるだろ……)

思わず天を仰いだ。
もう少し善戦してくれないとなぁ……まあ、そうは言ってもしょうがないので、次の段階に入る。

「ククク……この程度か……」

(ええと……こんな感じでいいんだろうか……)

「……やっぱり……強すぎる……」

「私達じゃ、勝てない……」

ヒーロー達は、絶望していた。
周囲にいた観客もまた、ヒーロー達の敗北を悟り、少しずつ、その場を立ち去り始めた。

「――待てよ!!」

「……!!」

……帰ろうと体を反転させた人たちに、少し強く声を出す。
これまで、見ていた人たちに何かを言ったりしたことはなかった。故に観客達は第三者として安心して見ることが出来たようなのだが……その日は、そうはいかなかった。
どうすればいいのか分からずに、観客達はお互い顔を向け合い、こちらの方を向き直した。

それを確認するなり、地に伏せるヒーロー達に声をかける。

「……この程度か?」

「……なに?」

「お前達が言っていた夢も、想いも、この程度なのか?」

「……!!」

「今、お前達の姿を、たくさんの人が見ている。たくさんの子供たちが見ている。それなのに、お前たちは諦めるのか?
無理だと思ったらすぐに諦めて、敵わないと思ったら這いつくばって絶望して……出来るかもしれないのに、倒せるかもしれないのに、全部を諦めて投げ出すのか?
……諦めるなら、俺は世界を征服させてもらう」

「……お前……」

「……立てよ!!ヒーローなんだろ!?ヒーローが簡単に、やられてんじゃねえよ!!
泥だらけになっても、ボロボロになっても、それでもお前らがやらなきゃ、誰がやるんだよ!!
――もう少し、根性見せやがれ!!!」

「―――ッ!!!」

僕の言葉に、赤い戦闘服を着た男がフラフラと立ちあがる。仲間たちは、彼を見つめていた。

「……立つぞ、みんな……」

「れ、レッド……」

「……思い出してみろ。子供のころ見たヒーローは、どんな状況でも諦めなかった。絶対に、負けなかった」

「………」

「だったら、俺達も諦めるわけにはいかないだろ!確かに相手は強い……だが、俺達が諦めてはいけないんだ……!!
――俺達は、ヒーローだ!!」

「……そうね」

「ああ……分かってるさ」

レッドの言葉に、倒れていた仲間たちは、ゆるりと立ち上がる。
一列に並んだヒーロー達は、ゆっくりと構えを取る。

「……行くぞ、悪の組織……俺達は、負けない!!絶対に、勝つ!!」

そして彼らは、雄叫びを上げながら、再びカマキリ男に駆け出した――――

熱い展開!!

さるよけ

ヒーロー達はカマキリ男に向かっていく。
しかし、元々限界だった彼らにまともな戦いなど出来るはずもなかった。

投げ飛ばされ、殴り飛ばされ、踏みつけられ……まるで子供と大人のケンカのように、ただ一方的にやられていた。
……だが、彼らはしつこかった。
どれだけズタボロになっても、どれだけ泥だらけになっても、カマキリ男に向かって行った。
最後はもはや戦いではない。倒され、立ち上がり、カマキリ男にしがみ付き、また倒され……何度も何度も立ち上がり、それでも向かって行った。
その姿は、とてもヒーローとは呼べるものではない。泥臭く、カッコ悪い。

――しかしここに来て、見ている人々には変化が訪れた。

「頑張れ!!負けんな!!」

「立ち上がって!!」

「頑張れー!!頑張れー!!」

いつの間にか彼らを見つめる人々が増え、僕と怪人、ヒーロー達の周りにはたくさんの人が集まっていた。
そして彼らの声援は、ただヒーローに向けられる。
それを糧に、彼らはまた立ち上がる。

「………」

これで、いいんだと思った。
カッコ悪くても、諦めないその姿は、見ている人に勇気を生み出させる。
これも、きっとヒーローの役目なんだろう。

カマキリ男に合図を送る。
それを横目で見た彼は、しずかに頷いた。

熱い天海だ

しえん

「ええい!しつこいぞ!」

カマキリ男は、一際大きく彼らを振り払う。吹き飛ばされた彼らは、一カ所に倒れ込む。

「何度やっても無駄だ!最後にお前達の、最高の攻撃でもしてみせろ!それが通じないなら、私の勝ちだ!」

カマキリ男は、ヒーローを挑発する。ヒーロー達にもはや動く元気はない。

「……わかった。これが、最後の攻撃だ……!!」

ヒーロー達は、一カ所に集まり、どっから取り出したか分からない武装を取り出す。
そしてそれを一つの巨大な銃に合体させる……そう、合体攻撃だった。

「……俺達の全てを、この一撃に込める……!!」

狙いをカマキリ男に定める。銃口が僅かに震えていた。

――そして、レッドはトリガーを引いた。

銃から光線が放たれる。光線はカマキリ男に直撃し、彼の体は光に包まれる。

「……ふん、こんなもの―――なんだ!?」

「――ッ!?」

「なんだこれは!!この前の攻撃と違う!?く、苦しい……!!」

光の中にいるカマキリ男は、その場にうずくまる。

「どうした!?カマキリ男!!」

「く、苦しい……!!」

そしてすかさず、レッドが叫ぶ。

「これが……正義の力だ!!」

「苦しい……苦しい……!!」

(あら~……同じ言葉ばっかり言ってるよ……もう少し言葉のレパートリーを増やすように言うべきだったかな……)

そんなことを思っていると、カマキリ男は大きく体を逸らした。

「――ぐわああああああ!!」

そして彼の体は、爆発する。

「か、カマキリ男ー!!」

彼が爆発したのを確認するなり、ヒーロー達は膝を付いてその場に伏せた。
肩で息をしながらも、喜びの溢れる声を漏らしていた。

「はあ……はあ……か、勝った……勝ったぞ……!!」

そして、大歓声が巻き起こった。

ワアアアアアアアアアア!!

大歓声の中心にいるのは、もちろんヒーロー達。
彼らにそれに応える力は残っていないが、それでも、その姿はどこか神々しかった。

(……よし)

その姿を見つめたあと、空に叫ぶ。

「……コウモリ男!!」

「―――ッ!?」

僕の叫びに、その場にいる全員が僕の方を向く。
そして全員が見守る中、僕の隣に巨大なコウモリが空から降り立った。

「あ、新手か……」

ヒーロー達は、絶望したように呟く。
……だが僕に、これ以上やり合うつもりもなかった。
僕の方にやってきたカマキリを手に乗せ、コウモリ男の背に乗る。

「……まさか、勝ってしまうとはな。その勝利に敬意を払い、今日のところは撤退しよう」

「ま、待て……!!」

僕を引き留めようとするレッドだったが、どこかホッとしているようにも見えた。
そしてコウモリ男は、大きく空に羽ばたく。

「この程度で勝ったと思うなよー。次こそは貴様らを必ず倒してやるからなー」

お決まりの捨て台詞を残し、僕は基地へと戻る。
最後に地上に目をやると、そこには、人々から囲まれて拍手を受けるヒーロー達がいた。

カマキリ男いいやつやー

「――さて、と……」

基地に戻った僕は、さっそく手に乗せたカマキリを床に置く。
そして手をかざし、力を込めた。

「……よっ――と」

カマキリは虹色の光に包まれ、そして再び、カマキリ男が姿を現した。
目の前に立つ彼に、声をかける。

「……大丈夫か?」

「……ええ。大丈夫です」

「悪いな。嫌な役をさせてしまって」

「いいえ。大したことありません。こうして元に戻してもらえましたし……」

「そうか……ありがとう」

「――総統!!」

僕らの元に、女幹部が駆け寄って来た。

「大丈夫ですか!?お怪我はありませんか!?」

声をかけながら、彼女は僕の体を触りまくる。
……ちょっと恥ずかしい。

「だ、大丈夫だって!……それより、負けちゃったよ」

「いいえ、総統が無事なら、それでいいんです。……それにしても……」

彼女は僕からようやく手を離し、不思議そうに首を捻る。

「……ヒーロー達の光線は、威力はほとんんど変わっていなかったはずなのですが……どうしてカマキリ男が……」

「……さあ、ね。正義の力って奴なんだろ、きっと」

さるよけ

すると女幹部は、何かを悟ったように目を見開いた。

「……総統、もしかして、あなたは……」

「……」

彼女は、きっと気付いたんだろう。
僕が何をしたのか。これから、何をしようとしているのか……

でも彼女は、フッと笑みを零した。

「……いや、何も言いません。きっとそれが、あなたが望むことでしょうから」

「がっかりした?……だったら、組織を抜けても……」

「――総統、それは言わないでください。私は、女幹部です。あなたがしようとしていることは、私のしたいことです。
望むがままに、ことを成してください。私は、あなたの隣にいますので……」

彼女は優しく微笑む。その姿は、悪の女幹部には見えない。
まるで聖女のように、彼女は立っていた。

「……ありがとう。女幹部……」

「――では総統、次の作戦ですが……」

そして僕らは、司令室に戻って行った。

序盤で一人称オラになってるところでちょっとにやけてしまった

――僕の毎日は、それから変わることはなかった。
アルバイトして、ご飯を食べて、布団で寝て……悪の組織の総統になって、怪人を作って、街に行かせて……
ヒーロー達の様子を見ては、程よい強さの怪人に調節する毎日。

ヒーロー達もまた、戦いを挑み、敗れながらも、最後は勝利する。
とても絶対的とは言わない。とても圧倒的とは言えない。
テレビで見ていた正義のヒーローとは、ほど遠いものなのかもしれない。

それでも、きっと世界中が、彼らの姿を見るだろう。
そして思うんだ。ヒーローは、そこにいるって。

正義の在処は僕には分からない。
何が正義で、何が悪なのか分からない。
だけど、こうして人に勇気を持たせる存在は、きっと尊いものだろう。

そのために、僕は今日も叫ぶ。女幹部と、男幹部と一緒に。
光があれば闇もある。逆に言えば、闇が無ければ光は輝かない。
思っていたものとは違ったけど、これが、きっと僕の役目なんだろう。生きる道なんだろう。

――だから、今日も叫ぶんだ。

「――さて諸君。世界を、征服するぞ……!!」

……僕は、とある組織の長をしている。世界征服を目論み、ヒーローと戦う。

世間では、僕の組織はこう呼ばれている。

――“悪の組織”、と……



終わり

え?




とりあえず乙

ほっこり

>>111
ごめん
これはあんまり長くならないかなぁって思いながら書いてた

とりあえず終わりです
ありがとうございました

乙だった

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