美琴「あら黒子、アンタ髪の毛ずいぶん切ったのね」(53)

黒子「はぁ・・・今日取り締まった連中の中に発火能力者がおりまして・・・」

美琴「でもまあ燃えたのがツインテールのとこだけでよかったじゃない」

黒子「この黒子、一生の不覚ですの!髪は乙女の命ですのに!!」

美琴(やだこの黒子・・・この髪型、男の子みたいでかわいい///)




ツインテールの部分だけなくなったイメージで

美琴「ね、ねぇ黒子。ちょっとこれ履いてみて」

黒子「これはスラックスですの?」

美琴「ちょっとアンタいま男の子みたいな髪型してるから、スカートじゃなくてズボン履いてるとこ見てみたいのよね」

黒子「・・・お姉様の頼みなら仕方が無いですわね・・・いかがでしょうか?お姉様」

美琴「」

黒子「?お姉様?」

美琴(おっほ・・・たまんねぇ)

黒子「あの・・・そろそろよろしいでしょうか」

美琴「あっ、あーー、ねぇねぇ黒子、その格好のまま私に向かって『お姉ちゃん』って言ってみて」

黒子「あのお姉様、いくらなんでもそれは」

美琴「1回だけ!ね!?」

黒子「えーでは・・・コホン。お姉ちゃん」

美琴「くっはwww」

黒子「もう!いくらお姉様でもあまりバカにしないでくださいまし!こう見えても私結構凹んでるんですのよ!!」

美琴「・・・あ、ゴメンゴメン。つい」

黒子「まったく・・・あぁ、早く元の長さまで伸びて欲しいですの」

美琴「あ、や、でも今の髪型もいいんじゃない!?うん、ほら髪の毛洗うのとか楽そうで!!」

黒子「そういう問題じゃないですの!!」

美琴(そっか・・・いままで全然気がつかなかったけど、黒子って結構カッコいい顔立ちしてたのね)

黒子「とにかく・・・明日学校へ行くのが憂鬱ですわ。周りに何て言われるか」

美琴「いや、大丈夫だとおもうわよ!ていうか、もし馬鹿にするような奴がいたら私に言いなさいよね」

黒子「あぁん、そこまでして黒子のことを!お姉様~!!」

美琴「フグぅオヒィ!」

黒子(?電撃が飛んで来ませんわね)

美琴「さ、さささ黒子。今日はもう寝ましょ。もう夜も遅いし」

黒子「ですわね。それでは、おやすみなさいまし。お姉様」

美琴「お、おやすみ~」

翌朝


女生徒1「あ、白井さんおはようございm・・・!?」

女生徒2「し、白井さん髪の毛ががが!!」

白井「ああ・・・おはようございますの。ちょっとこれは訳ありで」

女生徒1「しゅ、しゅきです!!!」

黒子「はい?」

女生徒2「白井さぁん・・・私、わたし・・・」

黒子「あ、あなたたち何を」

女生徒3「えっ?あれ白井さん!?」

女生徒4「うそ!素敵!!男の子みたい!!」

女生徒「素敵・・・」

黒子「」

黒子「な、なんだか皆の視線がおかしかったですの」

美琴「くーろこっ!!」

黒子「はっ、お姉様!!」

美琴「ねぇ、アンタ今日放課後暇?」

黒子「申し訳ございませんがジャッジメントの仕事が」

美琴「そ、そっか・・・アンタと一緒に買い物に行きたいと思ってたんだけど」

黒子「ありましたけど事務作業ばかりですので初春にお願いしますわ」

美琴「じゃあ放課後ここに集合ね!」

黒子「ガッテン承知ですの!!」


黒子(ああ・・・お姉様から私を買い物に誘ってくださるなんて今日はなんていい日なんでしょう)

放課後 セブンスミスト

美琴「実はね、今日はアンタに服を買ってあげようとおもって」

黒子「お姉様が!!私に!!服を!!」

美琴「ほら、アンタそんな髪型になっちゃったし、いつもみたいにスカートじゃない格好のほうが似合うと思うのよね!!」

黒子(別に常盤台は制服着用が普通ですから意味がないのでは・・・しかしお姉様がせっかく買ってくださるといのを無碍に断るわけにも・・・)

美琴「さ、まずはあの店から行きましょ!!」

黒子「あぁーお姉様ぁ引っ張らないでくださいましぃ!!」

黒子(でもこれはこれで・・・幸せですの)

美琴「・・・っと、これでどうかしら!!」

黒子「なんだか何処かの執事のような格好ですわね」

美琴「仕方が無いでしょ~!アンタが私の選んだ服を悉く子供っぽいっていうんだから!!」

黒子「さすがにゲコ太のプリントシャツと伊達メガネの組み合わせはマズイですの!!」

美琴「ド根性な感じでいいじゃない」

黒子「馬鹿にしないでくださいまし!!」

美琴(フフフ・・・計画通り。黒子が嫌がるようにして最終的にこの衣装に誘導するのが私の狙い)

美琴(今の黒子は見た目は完璧に美少年・・・しかし言葉遣いまで男らしくするのは無理がある。ただしこの格好なら普段の口調のままでもある程度執事キャラとして脳内補完が可能・・・!)

美琴「我ながら完璧だわ・・・」

黒子「あ、あのお姉様?選んでいただいて大変申し訳ないのですが、やはりこの服装は私には・・・」

美琴「黒子・・・その服、買ってあげるから。慣れない格好かもしれないけど、私が買ってあげたんだから来て欲しいな」

黒子「ガッテン承知ですの!寮にいる間は常に着る所存ですの!!」

美琴(ちょろい)

黒子「では改めて・・・いかがでしょうか、お姉様」

美琴「うん、やっぱ凄く似合ってるわよ」

黒子「・・・確かに、悲しいながら似合ってるかもしれないですわね」

美琴(いえ、完璧よ黒子。その凸凹のないボディラインはベストと組み合わさることによりまさに少年のそれ!おまけにしゃがれたその声も変声期特有の味わいがあるわ)

美琴「い、いいじゃない黒子。私そっちのほうが好きかなー、って」

黒子「お姉様・・・有難うございますの。・・・正直、髪を切ってからは不安でしたの。笑われるんじゃないかというよりも、私が私でなくなってしまったような気がして・・・」

美琴「黒子・・・」

黒子「でも、お姉様がこうして励ましてくれたおかげで、随分元気が出ましたの。本当に有難うございますの」

美琴「黒子・・・」

黒子「ですから・・・私を受け取って下さいましぃぃいい!!」

美琴「おっほ!!黒子、それはマズイですのwww」

黒子「やっぱり変ですの!!」

美琴「!!!?!?」

美琴「く、黒子!?」

黒子「いつものお姉様だったらここで私に電撃を食らわせるところですの!!なんで今日は私を受け入れるんですの!?」

美琴「そ、それは」

黒子「おまけに少し笑っているではありませんか!そんなに今の私が滑稽ですか!?」

美琴「ち、違うのよ黒子」

黒子「私を・・・おもちゃにしないでくださいまし・・・!」

美琴(そっか・・・そりゃそうよね。この子も大事な髪の毛をなくしてショックだったのに、こんなことしたら遊ばれてるとしか思えないわよね)

美琴「ごめん・・・」

黒子「うっく・・・すみません、取り乱してしまいましたの・・・やっぱり、こんなの私じゃない気がして・・・嫌ですの。辛いですの・・・」

美琴「黒子・・・大丈夫よ。私・・・」

黒子「お姉様・・・」

美琴「私、冗談抜きで今のアンタ結構好きよ」

黒子「えっ・・・」

美琴「いや、まぁ確かにいつもの黒子では無いわね。でも、今のアンタ、とっても可愛いんだもの」

黒子「お姉様が・・・私を、か、かか、かわ・・・!」

美琴「今までのアンタを否定するわけじゃないけど、そりゃ私だって正直見た目の好き嫌いもあるし・・・今は、そうね。前よりも

黒子「・・・前よりも?」

美琴「男の子に見える。だから。私は嫌じゃない」

黒子「・・・今までは、嫌でしたのね」

美琴「というよりは、アンタが望んでた関係になるのはちょっと・・・って感じだったわね。私ノーマルだし」

黒子「うぐ・・・」

美琴「でもまぁ、今のアンタなら迫られてもそんなに嫌じゃない、かな。・・・ああもう!フォローになってないけど、今わたしが思ってることはこれで全部!!別にアンタを馬鹿にしてるわけじゃなくて、今のその格好のアンタが好きなのよ!!」

黒子「」

黒子「」

美琴「だから、その・・・気にしてたならゴメン!謝るから。ただ、馬鹿にしてたわけじゃないのだけは信じて」

黒子「・・・お姉様」

美琴「?」

黒子「黒子は・・・黒子は・・・本日を以ちましてお姉様の忠実な『弟分』として生きてまいりますわ!!」

美琴「えっ」

黒子「お姉様!!わた・・・いや僕はお姉様のことが大好きですn・・・です!!」

美琴「oh...」

それからというもの、常盤台での黒子のモテっぷりはハンパではなかった。


佐天「いやー、えらいモテっぷりらしいね~白井さん!」

初春「今じゃ常盤台のアイドル的存在ですからね」

黒子「まさかこんなことになるなんて・・・」

佐天「今じゃ私も白井さんを口説きにここに来てるようなもんだからねー!ヘイヘーイ、彼氏ぃ私といいことしなーい?」

黒子「拘束しますよ」

佐天「うん、してしてー!!」

黒子「はぁ・・・」

初春「あっ、白井さん。第7学区でスキルアウト同士の小競り合いがったみたいです」

黒子「了解です。すぐに現場に向かいます。それでは佐天さん、ごきげんよう」


佐天「あー・・・いっちゃった。でも白井さん、喋り方まで本当に男の子みたいになったよね」

初春「本当に男の子になっちゃったんですよ」

佐天「えっ!?初春みたの!!?」

初春「何をですか・・・冗談ですよ!」

佐天「だよねぇ~」

第7学区

結標「まったくコイツらときたら・・・昔のことを蒸し返して襲ってくるなんて最低ね」

黒子「ジャッジメントです!!」

結標「ちっ・・・またメンドくさいことn・・・oh...」

黒子「うわっ、貴方は確か・・・」

結標(なにこのショタっ子!!やばい!超好み!!1000万回悪戯して融合したい!!)

黒子「level4の座標移動ともあろうお方が、スキルアウト相手にちょっかいを出すのはいただけませんね」

結標「あ、あなた・・・ハァハァ、お、お姉さんのこと知ってるのね」

黒子「えっ」

結標「だ、大丈夫よ。怖くない・・・ほら、おいで・・・」

黒子「正気か」

結標「先っぽだけ!先っぽだけだから!!・・・ね?」

黒子「きがくるっとる」

結標「おらっしゃああ!スキあり!!」

黒子「はっ!ふ、服がっ!!」

結標「おっひょふぉふぉおおおふぉーー!っふべろばばぎゃばば・・・ついてない・・・だと?」

黒子「未成年者略取未遂および児童福祉法違反の疑いで逮捕いたします」

結標「嘘よ・・・夢よ!これは夢だわ!!!どきにはさんでるの!?出しなさい!?」

黒子「あっアンチスキルの方ですね。あとはよろしくお願いします」

美琴「それは災難だったわね」

黒子「まったく、大能力者ともあろう方があのような変態行為など」

美琴「いやアンタ人のこと言えないって」

黒子「僕はお姉様一筋ですから」

美琴「ふふ・・・」

上条「ん?おーいビリビリー!!」

美琴「あっ」

黒子「うわ」

上条「久しぶりじゃねーか!」

美琴「うっさい、ビリビリっていうな!!」

上条「ははっ、ん?一緒にいるのは誰だ・・・ま、まさかお前の彼氏か!?」

黒子「これはこれはいつもいつもお姉様につきまとう『類人猿』さんではありませんか」

上条「!!?!そ、その呼び方、お前まさか白井か!?」

黒子「気安く呼ばないで欲しいですね」

上条「あ、ああ・・・ってその格好、どうしたんだ?ズボンなんて履いてるから一瞬常盤台が共学になったのかと思ったぜ」

美琴「一応礼装用にパンツもあるのよ。今は黒子、こんな髪だからスカートじゃなくてスラックスのほうが似合うでしょ?」

上条「へぇー、常盤台って女子しかいないから制服はスカートしかないのかとおもってたぜ。確かによくにあってる。結構男らしい顔してたんだな、お前」

黒子「ふんっ!!」

上条「ぐあっ!!?」

黒子「こんな野暮な類人猿は放っておいて行きましょうお姉様」

上条「股関に・・・空き缶・・・不幸だ」

黒子「そういえばお姉様、今日はあの殿方にご執心なさらないのですね?」

美琴「えっ」

黒子「いつもなら『待てやゴルァァァアア!!』といいながら電撃を飛ばして追いかけて行くところだと思うのですが・・・」

美琴「そ、そんなことは・・・ってなんでアンタがそんなこと知ってんのよ!!」

黒子「それは・・・いつもお姉様の事を見ておりましたから

美琴「・・・!」

上条「うー・・・イテテ・・・上条さんの下条さーん、生きてるかー?」


上条「まったく・・・白井のやつ、何もあそこまでやらなくてもいいじゃねーか」

上条「・・・そういえばビリビリのやつ、今日は追いかけてこなかったな」

上条「・・・ま、アイツもちっとは女らしくなったってことか・・・やべっ、特売の時間に遅れちまう!!」

美琴(そういえば私、いったいどうしたのかしら・・・)

美琴(黒子の言うとおり、いつもならアイツに構ってもらいたくてちょっかいを出してたの)

美琴(今日はそんな気分じゃなかった・・・)


黒子「?お姉様、大丈夫ですか?」

美琴「あ・・・うん、平気だから」

黒子「ならいいのですが・・・」

美琴(・・・なんで、かしら・・・)

美琴「ねえ、黒子」

黒子「はい、お姉様」

美琴「アンタ、その髪型になってから結構他の子に言い寄られてるみたいね」

黒子「ええ・・・ですが、僕はお姉様一筋ですから」

美琴(・・・そっか、私)

美琴(この黒子のこと)

美琴(本気で好きになっちゃったんだ)

黒子「・・・お姉様?」

美琴「ん・・・何でもないわ。ていうか!元々私とアイツは何ともないから!!」

黒子「そ、そうでしょうか」

美琴「さ、早く帰りましょ!今日の寮食は何だったかしら~!!」

黒子「あ、お姉様!待って下さい!!」

美琴(・・・現金なもんよね。今まで散々嫌がってたくせに、いざ自分好みの格好になったら受け入れるなんて・・・)

美琴(アイツのことだって、本当はどこかで諦めてた。素直になれない自分が嫌で、私の気持ちに気づいてくれないアイツがもどかしくて。子供の嫌がらせみたいなことして・・・)

美琴(私・・・てんでダメね・・・)

美琴「ねえ黒子」

黒子「なんでしょうかお姉様?」

美琴「アンタ、なんで私が好き・・・なの?」

黒子「お姉様だからです、としか言えません」

美琴「・・・!じゃあ、例えば私の見た目が変わっても?私がさっきのアイツと同じ見た目になったとしたら、どう?」

黒子「僕の気持ちは変わりませんよ。まあ、最初は戸惑うかもしれませんが」

美琴「・・・そっか」

美琴(あいたたた・・・自爆しちゃったわね)

美琴「ねえ、黒子」

黒子「はい、お姉様?」

美琴「ゴメンね。ありがとう」

黒子「おねえさ・・・」

その日私たちは、初めてキスをした。

黒子「お姉様・・・」

夢にまでみた美琴とのキス。

何を言葉に出せばいいのか分からない。

黒子の頬に一筋の涙が伝う。

美琴「黒子・・・泣いてる?」

黒子「お姉様・・・何故でしょう。涙が、止まらなくて・・・ふふ、おかしいですね」

美琴「ゴメンね・・・」

謝る美琴に、今度は黒子から抱きついた。

黒子「お姉様・・・黒子はお姉様を慕っております」

美琴「うん、知ってる・・・」

黒子「なのに何故でしょう。嬉しさよりも驚きのほうが大きくて・・・ああ、頭がまわりません・・・」

美琴「・・・うん」

黒子「いつもはこちらから迫って居たのに・・・おかしな話ですね」

美琴「嫌だった・・・?」

黒子は首を横に振りながら、美琴を抱きしめる腕の力を強めた。

美琴「ん・・・黒子、そろそろ帰りましょ・・・」

黒子「はい・・・黒子にお任せください」

二人は抱き合ったまま、姿を消した。

寮の部屋に戻るなり、黒子は美琴をベッドに押し倒した。

黒子「お姉様・・・」

美琴「黒子・・・だめ、今はまだ・・・」

しかし、美琴から電撃は飛んでこない。

黒子「お姉様、私、私ぃ・・・あああ、お姉様!」

美琴「黒子!ゴメン!今は・・・まだ・・・だめなの!お願い・・・」

気がつくと、美琴の肩が小さく震えていた。

黒子が初めてみる、弱々しい彼女の姿。

ふと我に帰り、すぐに身体を離す。

黒子「お姉様・・・」

美琴「ゴメンね黒子・・・もう少し、時間を頂戴・・・」

はだけたブラウスの胸元を握り締めながら美琴は言った


美琴「正直ね、私もまだ気持ちの整理がついてないの・・・だから」

黒子「お姉様」

美琴「うん・・・?」

黒子「お姉様の気持ちも考えず申し訳ありません」

美琴「ううん・・・」

黒子「ですが、私はいつまでも待ち続けますの」

美琴「黒子・・・?」

黒子「今までだって、ずっとずっと、お姉様が振り向いてくれることを願って過ごしておりましたの。 これからも、黒子はお姉様が振り向いてくれるそのときまでずっと待っておりますの」

美琴「黒子・・・フフ、アンタ。喋り方元に戻ってるわよ」

黒子「これも、私ですから」

美琴「うん・・・」

黒子「さぁ、お姉様。夕食の時間です。お召し物を直したら参りましょう」

そう言って、黒子は美琴の手をとった。

それから数日が経ったある日、黒子は不思議な噂を耳にする。

黒子「幻想御手・・・ですか」

初春「はい・・・以前でまわったものとは別に、同じような能力増幅系の道具が出回っているとか・・・」

黒子「しかしあれは、もうすでに存在しないはずでは」

初春「ええ・・・ただネット上の噂をみると、どうやら以前のものとは全く違うみたいなんです」

黒子「というと?」

初春「信憑性は不明ですが、どうやら薬物の一種みたいなんです」

黒子「薬物ですか」

初春「まあ飽くまでも噂なんですけどね・・・なんでもその新・幻想御手の出回っているらしい第七学区を中心に、スキルアウトが明らかに能力を使っていたとか」

黒子「ふむ・・・もし本当だとすれば誰が何のために流通させたのか・・・事の真偽も含めて確かめる必要がありそうですね」

初春「どうするつもりです?」

黒子「すでに目撃例があるのならば、いまは再発を待つしかないですね。怪しい情報があれば、すぐにジャッジメントとして駆けつけて・・・

黒子がそこまで口にしたとき、近くの壁が大音響とともに吹き飛んだ。

初春「うぐぅっ!!」

黒子「初春!!」

衝撃で壁に叩きつけられた初春の元へ向かおうとすると、崩れた壁の隙間から炎を纏った腕が伸びてきた。

?「見つけたぜぇ・・・」

黒子「!貴方はあの時の!!」

そこに立っていたのは、数日前に黒子の髪を燃やした発火能力者だった。

男「いやーあんときゃ世話んなったなぁ・・・おお?なんだ、男みてぇな髪型になってるじゃねえか!こりゃ人違いかぁ!?」

ゲタゲタと笑う男に黒子はすかさず釘をとばした。

男「おっと、間違いねぇな。あんときのテレポーターだ、お前」

まるで黒子の動きを読んでいたかのように釘を掴みながら男は言った。
そのまま黒子は男の背後に移動する。が、それもお見通しとばかりに男は振り返りもせずに裏拳を放った」

黒子「がっ・・・!」

黒子が顔を押さえるより早く、男は黒子の頭を鷲掴みにした。

黒子「ああう!う、ぐぎ・・・ぎ」

男「遅ぇよ、遅ぇんだよ。まあいいや。お前、少し寝てろや」

男の当て身に、黒子の意識は闇に溶けていった。

再び黒子の意識が戻ったのは、どことも知れぬ廃墟の一画だった。

身体を動かそうにも後ろ手に縛られているため身動きがとれない。

さらに不思議なことに、縄をテレポートさせようとしても能力が使えなくなっていた。

男「よぉ・・・気がついたか」

件の男が近づいてきた

黒子「こんなことをして、どうなるか分かってるんでしょうね」

男「・・・あぁ?」

男は黒子を睨みつけると、その頬に平手打ちを放った。

黒子「・・・っ!」

男「お前こそ、何してくれたか分かってんだろうな・・・」

男は顔を歪ませ、黒子の胸ぐらをつかみ上げる。

男「お前があの日、あの男を逃がしたせいで!助かるはずだった人間が今まさに死のうとしてんだよ!!」

そういうと男は黒子を壁に投げ捨てる。

黒子「あぐうっ!!」

男「・・・お前の能力は俺が貰った。もうお前に用はない」

男は背中を向けると、瓦礫の向こうへ歩き始めた。

黒子「ぐっ・・・あ、貴方が何をおっしゃっているかはわかりませんが・・・こんなことをした時点で、ジャッジメントが黙ってはいません・・・っ!」

男の背中に黒子が言葉を投げかける。

男「・・・俺は」

男「俺は滝壺を守るって誓った・・・邪魔する奴は、容赦しねぇ・・・」

眼光鋭く呟き、俺はその場を後にした。

俺は → 男は


ごめんね!

その夜、美琴は一人寮の自室でうなだれていた。

美琴「黒子・・・どこ行っちゃったのよ・・・」

ルームメイトの少女は、もう2日も寮に戻っていなかった。

ジャッジメントの支部が何者かに襲われ、それ以降行方不明者なのだという。

憔悴しきった彼女の部屋にノックの音が響き渡ったのは、日付が変わった頃だった。

寮監「御坂・・・起きてるか」

美琴「・・・はい」

寮監「たった今、白井が保護されたと連絡が入った・・・第七学区の廃ビルの前に倒れていたらしい」

美琴「!黒子は!?黒子は無事なんですか!?」

寮監「先ほど病院に収容されたとのことだ。衰弱が激しいらしい」

美琴「そんな・・・行かなきゃ・・・」

寮監「気持ちはわかるが、この時間の外出は許可できない」

美琴「でも!!」

寮監「規則は規則だ。例外は認めん。・・・今日はもう休め」

美琴「・・・」

眠れぬ夜が明け、美琴はそのまま彼女が収容された病院へ向かった。

医師によると、発見された時点で重度の低体温症と脱水症状を起こしており、疲労凍死寸前だったという。

冥土返し「今のところ命の危険はないけどね。しばらくは集中治療室だね」

美琴「そうですか・・・」

とりあえず彼女の無事は確認できたが、姿を見ることは叶わなかった。

ここ2日の徹夜の疲れに美琴が病院のロビーの椅子にもたれていると、ふいに聞いたことのある声に話しかけられた。

上条「・・・御坂、か?」

美琴「アンタ・・・」

上条「どうしたんだお前、えらい疲れた顔して」

美琴「別に・・・」

上条「別に・・・って、何もないことはねーだろ。何があったんだよ」

美琴「うっさい・・・アンタには関係ないでしょ・・・」

上条「つっても、お前がそんな顔してるのに放っておけねーよ」

相変わらずお節介なやつだ。そう思いながらも、美琴はここ数日に起きた出来事を彼に話すことにした。

上条「なるほど・・・白井がね」

美琴「ジャッジメントがいろいろ調べているみたいだけど、まだこれといった情報は掴めていないらしくて・・・そのとき現場にいたもう1人の子も、犯人の姿をハッキリとは覚えていないらしくて・・・」

上条「うーん・・・にしても、ジャッジメントの支部なんかでそんなに派手なことをやりゃあ、絶対に足はつきそうなもんだけどな」

美琴「それが、何ひとつ証拠が残って無いらしいのよ。監視カメラも全て破壊されてるし、足跡はおろか他の痕跡も何も残ってない」

上条「おまけに犯人は発火能力者で少なくともレベル4以上の能力の持ち主・・・ってか。それだけでも大分情報が絞られそうなもんだけどな・・・」

美琴「唯一手掛かりがあるとすれば、犯人の顔を覚えている黒子ね。少なくとも2回は犯人に会っているはずだから」

上条「2回?」

美琴「ええ。アンタ、前に黒子にあった時に随分髪が短くなってたでしょ?あれより数日前に、例の発火能力者に髪を燃やされたらしいのよ」

上条「それは同じ奴なのか?」

美琴「多分ね。何れにしても、黒子が目を覚ましてからじゃないと話が進まないわ」

上条「・・・分かった。俺も可能な範囲で調べてみる」

美琴「・・・いつもそうやって面倒なことに首を突っ込むのね」

上条「何言ってんだよ。困った時はお互い様だろうが」

美琴「・・・ありがと」

彼女が小さな声で例を述べると、上条は優しい目で微笑んだ。

それから2日後、黒子が集中治療室から一般病棟へ移ったとの報せをうけ、放課後に美琴は再び病院へ足を運んだ。

美琴「黒子・・・起きてる?」

静かに病室のドアを開けると、そこには痛々しい姿の黒子が眠っていた。

ほんの数日目にしなかっただけで随分痩せたように見える。

顔や首には薄くアザが浮かび、腕には点滴の管が繋がれている。立てる寝息も弱々しい。

その姿が堪らなく悲しく、気づかぬうちに美琴の頬に涙が伝う。

「黒子・・・」

小さな声で呼びかけ、そっと彼女の顔に手を当てる。冷んやりとした感触に、美琴は堪らず黒子にすがりついた。

美琴「黒子っ・・・!黒子、黒子ぉ・・・!」

あふれる涙が留まることを知らない。こんなに悲しい気持ちになるなんて。自分がいなくなった時も、黒子はこんなに悲しい気持ちをしていたのか。

その思いが、彼女を抱きしめる力を強くさせた。

黒子「・・・お、ねえさま・・・?」

美琴「!・・・黒子っ!黒子ぉっ!!」

黒子「ああ・・・やっぱりお姉様ですね・・・うれしい・・・い、痛!いたいいたい!そこ!そこは押してはならんところですの!!」

黒子「犯人の特徴、ですか」

美琴の質問に黒子は表情を曇らせる。

黒子「お姉様・・・気持ちは大変うれしいのですが・・・わたk・・・僕のせいで危険なことに巻き込むわけには」

美琴「何言ってんのよ!アンタ、入院するくらいのケガをしてんのよ!?アンタをそんな目に合わせた犯人を、許しておけるわけないでしょうが!!」

どうやら彼女は本気で怒っているらしい。周囲にはバチバチと電気の走る音が響いている。

黒子「お姉様、どうか落ち着いてくださいまし・・・」

黒子の言葉に、美琴はふと我にかえる。

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