「WE ARE M@STER P’s!!」【imas-9th Anniversary】 (699)


高木「あー、そこでこっちを見ている君!」


高木「そう君だよ、君! まぁ、こっちへ来なさい」


高木「ほう、何といい面構えだ。ティンときた!」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1408721607


高木「私がこれから語るのは、765プロと961プロ、決して結び付くことの無かったふたつの線を繋ぐ物語だ」


高木「765Pと961Pという2人の悠久の旅人が、未来を築いていく」


高木「なあ君、こんな世界があってもいいじゃないか」


高木「このコンテンツも間もなく10年。ここらで、その歴史を濃縮してみるなんていうのは……」


高木「……いかんいかん、大げさになってしまったようだ」


高木「ま、肩の力を抜いて、冗談半分にでも聞いてくれたまえ」


高木「おっとそれからこの物語の前に、以下の注意事項を見ておいてほしい」



【XENOGLOSSIA】【シンデレラガールズ】【ミリオンライブ!】
【765P&961P「ふたりのプロデューサー」 のリメイクである】
【700レスを超える長さ】
【765プロに人数が半分しかいないトンデモ事態】



高木「特にXENOGLOSSIAの要素はかなり強めだ。未視聴でも問題ないが、君に合わなかったらすぐに中断した方が良いだろう」


高木「本当にいろいろとメンドクサイ世界だが……受け入れてほしい所だ」


高木「それでは君にこの物語の登場人物を少しだけ紹介しよう」



天海春香……ゼノグラシアから逆輸入。本家とは違い、雪歩と真を「雪歩ちゃん」「真ちゃん」と呼ぶ。性格は本家とゼノグラシアのハーフぐらい。961プロ所属。


菊地真……ゼノグラシアから逆輸入。一人称が「ボク」なこと以外はまったく別人。千早以外名字で呼ぶ。961プロ所属。


萩原雪歩……ゼノグラシアから逆輸入。なので腹黒い面も持つ。男の人と犬は苦手じゃない。他人は名前にさん付けで呼ぶ。961プロ所属。


如月千早……中身は本家のままだが、若干ゼノグラシア要素を引き継ぎ、雪歩との関わりが深い。雪歩を「雪歩」と呼ぶ961プロ所属。


765P……我らが765プロのプロデューサー。美希・響・貴音のユニットを率いてIA大賞を狙う。


961P……特例で961プロ始まって以来のプロデューサーに就任した男。新米。


黒井……ジュピターに961プロを去られ、己の信念を失う。961Pをプロデューサーに雇い、ふたつのユニットをデビューさせた。



高木「それから、みんなの外見は2ndVisionのもので考えてくれたまえ」


高木「如月君には悪いが……72のまま、ということだ……」


高木「おっともうこんな時間か!私が長々と喋ってしまったな」


高木「前もって言っておくが、好奇心が無くなったら、途中で中断してもらってもかまわない」


高木「御覧の通り、私の話は冗長なのでな……」


高木「……それじゃあ、また物語の中で会おう」





高木「そうそう言い忘れていたよ」

高木「アイドルマスター、9周年おめでとう」



―――――

―――





―――ここは765プロ。



TV<クロイプロカラ、シンユニットデビュー!!


美希「あ、見て見て、961プロ新ユニットなの」


響「前に雑誌で見かけたな。“モンデンキント”と“わんつ→ているず”だっけ」チラッ


TV<マミダヨーン!! ウッウー!!タカツキヤヨイデスー!


貴音「話には聞いておりましたが、亜美の姉妹である、双海真美はこの人物なのですね」


響「ホントに亜美そっくりだぞ」マジマジ


美希「ねーねープロデューサー、このふたつのユニットどう思う?」


765P「おう、みんな可愛いが……フェアリーを超えるようなユニットじゃあないな」


貴音「プロデューサー、油断はなりませんよ?この方々は961ぷろのあいどるです」


響「同じIA大賞を狙ってくるユニットだもん、自分たちもうかうかしてられないなー!」


765P「やる気があるのは良いことだ。俺たちも頑張ろう」


765P「よし、んじゃあ仕事行こうか」


美希「はいなの!」スタッ


TV<ツヅイテハ、モンデンキントニヨル ビネツエスオーエス デス!


美希「それにしてもこの人たち、みんなおっぱいちっちゃいねー」


響「まるでオッサンだぞ、美希」ハハ…


―――――

―――




――場所は変わって、ここは高木社長の通うバー。カウンターには高木と黒井社長の姿がある。

偶然に会した2人は、一体どんな会話を交わしているのか。



高木「いやぁ~驚いたよ~!まさか961プロから新ユニットがふた組も!」


高木「なんせふた組もデビューしたんだからねぇ!」


黒井「……温存していただけだ。ジュピターが消えた今、新たに我が社の看板となるのは、あの子達だ」


黒井「お前たちには二度と負けん……真の王者が誰だか思い知らせてやるからなっ!!」


高木「しかし…竜宮小町に歌唱対決で一度敗れただけで、ジュピターを手放すなんて、お前はどうして……」


黒井「奴らが勝手に離れていっただけだ!分かったようなことをいうな……!」


高木「……ああそうだな」


高木「それで、お前のユニットは竜宮小町とフェアリーを超えていく算段はあるのかい?」


黒井「貴様に話すような理由もないが……」


黒井「今夜会ったのも何かの縁だ。一つ教えてくれてやろう」


高木「もったいぶるねぇ。話してくれよ」


黒井「……ジュピターの自立型アイドルユニットの体制を省みた結果」


黒井「………」


黒井「……モンデンキント、わんつ→ているず、には新たにプロデューサーを付けることになった」


―――――

―――






―――ここはとあるホール。今日はここで、モンデンキントとわんつ→ているずがミニライブを開催していた。

小さいながらも満員になった客席。歌の披露を終えた真美の声が会場に響く。


真美「会場の兄ちゃん姉ちゃーん!!」


やよい「わんつ→ているず、これからもよろしくお願いしまーっす!!」


\ワーーーーーー!!!ヤヨイチャーン!!マミー!!/


やよい「うっうー!次はモンデンキントのみんなだよー!!」


\フゥゥゥゥゥ!!/


961P「お疲れ様。二人とも、素晴らしいライブだったね」


やよい「あっプロデューサー!お疲れ様ですーっ」ガルーン!!


真美「ねーねー兄ちゃん!真美たち、ちゃんと出来てたかな?」


961P「ああ、とても素敵だったよ。本当は今一緒に喜びたい所だけど...」


961P「モンデンキントが終わったら、合同ステージもあるからな。気を抜かずに行こう」


春香「さあクランクアップだよー!みんな!!」


\ワァァァァァァァァ!!!/


雪歩「ラストの曲は、私達モンデンキントの新曲…」


真「『恋だもん~初級編~』を歌うよ」


千早「最後まで、応援よろしくお願いします!」


\オォォォォォォォォォォォ!!!!/


かくして、961プロのミニライブは大団円を迎えた。

ステージ袖では成功を喜びあうアイドル達の姿が。

デビューして一カ月足らず。駆け足で彼女たちは成長を遂げている。


春香「お疲れさまでした!」


961P「両ユニット混合のステージも大成功だな。みんな、本当にいいライブだったぞ」


千早「プロデューサーのおかげです。デビューから私達をここまで導いてくださったからこそ…」


春香「そうですよ!プロデューサーさんのおかげです!ねっ雪歩ちゃん!」


雪歩「……zzz」


春香「って立ったまま寝てるし!!」ガーン


アハハ…カゼヒクヨー


…… 一方で、上手く回らない歯車もある。



真「…萩原、今日は小さなミスが目立ったぞ」


雪歩「…はい、すいません」 シュン


真「ステージの上であまり余計なことを考えるなよ。ミスしたらボク達は終わりなんだ」


真「特に萩原は如月を意識しすぎだ。お前が歌を届ける場所はどこだ?」


雪歩「…分かってます。私だって、あの人に迷惑はかけたくないです…!」


真「ボクの言いたいことは言ったから。ひきとめて悪かった」スタスタ…


―――――

―――





―――場面は再び765プロ……

全てのアイドルユニットが目指す“頂”、『アイドルアカデミー』から通知が事務所に届いていた。



小鳥「プロデューサーさん、今年度のIA大賞の詳細が届いてますよ!」


765P「ありがとうございます、音無さん。律子には俺から伝えておきますね」


高木「いや~今年は竜宮小町にフェアリーと、765プロからもノミネートが確実だろう!!」


高木「嬉しい限りだね、きみィ」ハッハッハ…


小鳥「今年は、765プロがIA大賞を勝ち取れますよ!」


765P「はい!とにかく俺は全身全霊でフェアリーをプロデュースします!」


765P「他のユニットに負けないためにも」



765P「そして、竜宮小町と張り合うためにも……!!」


―――――

―――




ここはとあるロケ地―――


「……ありがとうございます、IA大賞ですか」


「電話の内容は聞いたわね、みんな」チラッ


律子が訊く。


「んっふっふ~、亜美たちならヨユーで大賞とっちゃうっしょー!」


「ヘラヘラするのは感心しないけど、大賞取る気はあるわ」フンッ


「そうね♪みんなと一緒が楽しいっていう気持ちなら、私たちは誰にも負けないもの~♪」ニコニコ


「頼もしいわ。その意気よ……さあ、ますます忙しくなるわね!」



ふわり…… 風が、彼女たちの髪を揺らしていった。


それはきっと、新たな世界まで吹きわたる風―――






【imas-9thAnniversary SS長編】


「WE ARE M@STER P’s!!」




961プロからモンデンキント、わんつ→ているずの両ユニットがデビューして、4ヶ月が経った。

軌道に乗り勢いを増す961プロ。圧倒的な実力でファンを増やしていく765プロ。

両者とも芸能界を盛り上げる先頭だ。


そんな中、アイドルユニットの頂点を決める闘いが、始まろうとしていた……


―――――

―――




―――ここは撮影スタジオ。

雪歩が初めてファッション誌の表紙を飾ることになり、961Pと雪歩の2人が訪れていた。


961P「雪歩、お疲れ様」


雪歩「ふぅ、緊張しました……」


961P「実は、俺もカメラを持ってきたんだ」


961P「衣装のままで、記念に一枚撮ってもいいかな?」


雪歩「大丈夫ですよ。可愛く撮ってくださいね」ニコッ


パシャッ


961P「雪歩はどっちかっていうとモデル業に光るものがあるよ」


961P「もちろん、ステージが良くないって訳じゃないけど」


雪歩「うーん、その通りだと思います」


雪歩「私は……舞台に立つといつも自意識に苛まれるんです」


雪歩「私を見に来てる人はいない……そんな自意識に」


961P「……?どうしてかな。そんなことはないと思うけど」


雪歩「本当ですね。理由に心当たりがあるとすれば…」


雪歩「……私がどうしてアイドルなのか、実はよく分かってないからかもしれません……」


961P「雪歩……?」


雪歩「すいません、変なこと言っちゃって。次の現場に向かいましょう」


―――――

―――





―――また別の日。ここは、真が出演するドラマの撮影現場。

新人であるにも関わらず、殆どミスの無い演技をする真に、プロデューサーは見入っていた。


<キュウケイデース!


961P「真、すごいじゃないか!監督も『実力のある子だ』って褒めてたぞ!」


真「別に。誰に言ってんの」プイ


961P「別にって……真、かなり練習したんじゃないか?」


961P「そうじゃなきゃ、あれだけパーフェクトな演技は出来ないだろ」


真「……今日はボクは役者として呼ばれたんだ。ミスをしないのは当たり前なんだよ」


真「ミスしたらそこで終わり。普段がアイドルだから褒められただけだ」ツン


961P「でも、普段から一人でストイックにレッスンもやってるし、もっと力を抜いてもいいと思うぞ…?」


961P「俺たちは仲間なんだから、他のみんなも頼ったりしてさ……」


真「ボク達は自分一人の才能を試す世界にいるんだ」


真「一人で上に登れないヤツはどうしようもないんだよ」


―――――

―――





―――視点は変わってここは765プロ。

ついにIA大賞からノミネートユニット発表の通知が届いた。事務所を緊張が覆う。



小鳥「IA大賞の運営から、ノミネートされたユニットの発表通知が届いてます!」


社長「おおぅ、ついにきたか…!」ガタッ


765P「音無さん、結果を教えてください」ドキドキ…


社長「……」ドキドキ…


小鳥「ノミネートされたのは、876プロの『ディアリースターズ』を筆頭に…」


小鳥「…魔王エンジェル、ニュージェネレーション、新幹少女…」


高木「音無君、765プロは...」ドキドキ…


小鳥「…765プロからは、フェアリー、竜宮小町の2組ともノミネートされています!!」


765P「やった…!」グッ


律子「ふぅ…なんだか少し解放された気分です」


高木「キミたち、大変ご苦労だった。これからも一層の活躍を期待している」


律子「プロデューサーとフェアリーには悪いですが、大賞は私達竜宮小町がいただきますよ」 ニヤッ


765P「む、フェアリーだって譲る気はさらさらないさ」


高木「ああ、音無君……通知を見せてもらえんかね?」


小鳥「はい、いいですよ?」スッ


高木「ありがとう……どれどれ」



高木(961プロからは、わんつ→ているず、だけか……)


―――――

―――




―――ここは961プロ内に存在する、961Pの事務所。

IA大賞ノミネートユニットが発表されたため、作戦会議が行われていた。


千早「……私達はノミネートされなかったのね」


雪歩「千早さん……」


春香「モンデンキントもデビューからあんなに頑張ったのになぁ……」


961P「残念だけど……でも、IA大賞がすべてじゃない」


真「……納得いかないよ、こんなの」


961P「真、結果は結果だ。今回は少し運が無かっただけだ」


961P「……わんつ→ているずは来週ノミネート公式発表会が、船上ライブと共に行われる」


961P「大賞を取るにはその会場での良いアピールが不可欠だ。それに向けて準備していこう」


「「はいっ!」」


961P「それから……」


961P「モンデンキントにはひとつ提案がある」


961P「765プロ、竜宮小町と一戦交えようかと考えている」


雪歩「竜宮小町との直接対決……ですか?」


961P「そう。まだ具体的なイメージが掴めている訳じゃないが、ステージバトルをオファーしようかと思う」


真「向こうが簡単に勝負を受けるもんか」


961P「たしかに今じゃただの妄想の内だ」


961P「しかし、毎年IA大賞にノミネートできなかったユニットはひっそりと消えているのが現状だ」


961P「ジンクスから脱却するには、俺たちはここでアピールするべきなんだと思う」


千早「……私も、何もしないよりはその案に乗りたいです」


春香「私もです!モンデンキントが負けていないんだってことを証明したい!」


961P「ありがとう。雪歩と真はどうかな」


雪歩「千早さんがそれを望むのなら、私もついていきます」


真「……やるからには勝つ」


―――――

―――




―――ここは765プロの劇場。

フェアリーと竜宮小町のノミネート決定を、未来達が祝福していた。


未来「みなさんIA大賞ノミネート、おめでとうございます!!」


美希「ありがとうなの!」アハッ!


翼「いいなぁ~私もIA大賞候補アイドルなんてなりたいなぁ~」


静香「翼はもう少しお仕事頑張らないと……」


翼「そうだね……フェアリー、応援してますよ!」


響「自分たち、翼や静香の分も輝いてくるからね!」


貴音「舞台は違えど、私達の心はひとつ、ですよ」


未来「船上ライブのTV中継楽しみにしています!」


翼「あ、ウチCS見れないから未来の家に見に行っていい?」


未来「え?しょうがないなぁ~」


あずさ「うふふ、私達も船の上でライブなんて楽しみだわ」ニコニコ


伊織「船の上ならさすがにあずさも迷子にならないわね♪」


アラ~!! アハハハ…


亜美「亜美たち、トップアイドルになっちゃうっぽいよ?」


律子「はぁ...あんたはそうやってすぐ調子に乗るんだから...」


765P「亜美も頑張ったんだ。少しくらい気を抜いてもいいじゃないか...」


律子「だ・め・で・す!...まったくプロデューサーは亜美に甘いんですから!!」


765P「フェアリーの3人みたいなパーフェクトなアイドルと接してると、 時々亜美のアホさが必要になるんだよ」


亜美「うあうあ~!兄ちゃんそれってどーゆうことだYO!」


―――――

―――





―――再び視点は変わり、ここは961プロ 社長室。

竜宮小町との共演の許可を、黒井社長が出すかどうか。

もしGOサインが出れば、765プロと961プロが関わりを持つのは、実にジュピター移籍後ぶりのこととなる。


黒井「...お前が高木の所のアイドルと共演を望むとはな」


961P「IA大賞にノミネートされたユニットに注目が集まっている今こそ、 一度剣を交える時期かと。計画は組み立て済みです」


黒井「だが、IA大賞前のこのデリケートな期間に、歌唱対決はリスクの面から、765側が拒否する……」


黒井「……いや、その可能性はない、ということか」


961P「...765プロは必ず乗ってきます。相手が我々ですから」


黒井「フン、こんなところで昔買った恨みが功を奏すとはな...」


黒井「モンデンキントのLive×Aliveの出演を許可する。 相手が格上だろうと、無様な負けは許されない」


黒井「分かったな」


961P「……承りました」


黒井「765プロ側には貴様が接触するのか?」


961P「はい。その予定です」


黒井「フン、奴らは我々を警戒しているぞ。そうやすやすとは疎通ができないだろう」


961P「……乗り越えてみせます。今後のためにも」


ドア<バタン……


黒井(961Pよ、わんつ→ているずのノミネート、見事ではないか)


黒井(しかし……ここからがモンデンキントの正念場だろうな)


黒井(このステージバトルで彼女たちの亀裂がどうなるか……)


黒井(ヤツは、持ち堪えるだろうか…それとも……)


―――――

―――





―――そして、IA大賞ノミネート公式発表&船上ライブ開催の日が訪れた。

後にこの日は、961プロと765プロの距離を縮めたターニングポイントともなる。



律子「あら、涼!」


涼「あ、律子姉ちゃん!竜宮小町もノミネートおめでとう!!」


律子「あんた達もついにIA大賞ノミネートまできたのね」


涼「最初876が選ばれたって聞いたときはびっくりしたけど……でも、大賞も狙っていくからね!」


律子「いや、あんた大賞無理でしょ」ヤレヤレ


涼「えっ!?」


律子「だって大賞をとるのは――」


キミガフレタカラー♪ ナナイロボタンー♪ スベテヲコイデソメタヨー♪
ドンナデキゴトモーコエテーユケルーツヨサー♪ キミガボクニークーレーター♪ 


伊織「船の上のみんなー!こんばんはー!!」


亜美「亜美たち、IAノミネートしちゃったZE☆」


あずさ「それでは竜宮小町の七彩ボタン、聴いてください♪」


\ワァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!/


―――そして全てのノミネートユニットがライブを終えた。

会場には、プロデューサーを見失ってしまったやよいのうろたえる姿があった。



やよい「うう~プロデューサー、どこいっちゃったのかな……」オロオロ



伊織「ちょっとそこのアンタ!!」



やよい「はわっ!?私ですか?」


伊織「あんたが961プロの高槻やよいね!悪いけど、IA大賞は私達が頂くのよ!!」


やよい「……?」


やよい「……よく分からないですけど、私たちも負けないようにがんばりまーっす!」


やよい「ええっと、竜宮小町さんの……」


亜美「おでこサンシャイン」ボソッ


やよい「おでこサンシャインさん!」


伊織「そうよ!私がおでこサンシャイン……って違うわよバカ!!」


真美「あれ~?そこにいる真美にそっくりな美少女は...」


亜美「お?この亜美にそっくりなぷりちーな声は...」


美希「私だ」ナノ!


亜美「うあうあ~!ミキミキ空気読んでYO!」



美希「しっぽがふたーつ!のやよいちゃんだよね? 近くで見るとちっちゃくてますますカワイイの!!」


やよい「えっと……えへへ……」


伊織「美希!なに仲良くなってるのよ!相手は961プr……」


美希「天使なの!スリスリしちゃうね!!」スリスリ


伊織「話を聞けー!!」プンスカ!


美希「改めましてやよいちゃん、ミキはフェアリーのミキなの!!」


やよい「水瀬伊織さん、星井美希さん、双海亜美ちゃん!初めまして高槻やよいです!」


真美「真美って呼んでねー!もしくはビューティフルクイーン!」


伊織「はぁ……なによ、961プロなのにまったく普通じゃない……」


やよい「あのー、前に961プロと何かあったんですか?」


伊織「……何かあったかって?」


伊織「……アンタは知らないのね……」


やよい「……えっ?」


美希「んー、やよいちゃんはまだ、気にしなくていいの」


伊織「むしろこれからのことを考えると、知らないままの方がいいかもね」


亜美「まみー!あの有名な普通すぎるアイドルがいたYO!」


真美「ほほう、それは楽しそうな感じですな!」


美希「そういえばミキもまだ未央に会ってなかったの」


伊織「……アンタ達遊びに来たんじゃないのよ」ハァ…



――― 一方その頃、迷子になってしまったあずさを探しに、貴音と響は船内を歩きまわっていた。


響「あずさぁー……どこにいったんだー!!」


貴音「困りましたね……船から降りていないといいのですが…」



凛「……我那覇さんに、四条さん?」


響「あれ……凛!久しぶりだね!!」


モバP「おう、響、貴音。ノミネートおめっとさん」ヒョコッ


貴音「ふふっ。ぷろでゅーさー、そのお言葉、お返しいたします」


渋谷凛
http://livedoor.blogimg.jp/deremasu/imgs/d/d/dd9552b7.jpg


響「CGプロもすっごい大きくなったよね!」


モバP「いやぁ、事務所立ち上げ当時にお前たちが手伝いにきてくれたおかげだよ」


モバP「765Pにもいろいろとノウハウを勉強したしな」


凛「“生っすか”にもたくさん出させて頂いていますし、私達が走り続けられたのは765プロのおかげです」


凛「これからも、765プロは私たちの目標ですよ…!」ニコッ


響「へへ、どういたしまして!」


響「ところで、卯月と未央はどこにいるんだ?」


モバP「おたくの亜美と、その姉にさんざん遊ばれてるよ」アッハッハ…


貴音「それで二人で、でーとしているという訳ですね」


凛「四条さん……!」アタフタ


貴音「ふふ、じょーくですよ、凛」クスッ


モバP「そういや、さっきあずさを見かけたけど……」


響「ほんと!?どこにいた?」


モバP「ああ、確か……」


―――――

―――





響「モバPの言ってた所に来たけど」


貴音「何故かぷろでゅーさーがいますね……」


響「プロデューサーと一緒にいるのは…?」


―――それは響と貴音が来る少し前のこと。

ついに961Pが765Pに接触していた。


961P「あの、少しよろしいでしょうか」


765P「えっと…あなたは……」


961P「初めまして、わたくし、961プロでプロデューサーをしております。961Pです」


765P「…!! …765プロ所属フェアリーのプロデューサー、765Pです」


961P「唐突ですが、ジュピター時代の件は本当に申し訳ありませんでした」


765P「…あなたも関わりが?」


961P「私がこの立場に就いたのは、ジュピターが961プロを辞めたあとです」


961P「……ですが、数々の妨害行為が765プロに行われたことは聞いております」


765P「……」


961P「今日は、勝手ながら765プロさんとの今後のお話をさせて頂きたくて参りました」


961P「……私もアイドル達も、これからの765プロさんとの活動に支障をきたすことを望んでいません」


765P「今後は妨害しないから一緒に仕事してくれ、と?」


961P「はっきりおっしゃいますね……言い訳がましいですが、今のアイドル達に罪はありません」
     

961P「モンデンキント、わんつ→ているずは共に765プロとの共演を希望しています」


961P「765プロと961プロが、力を合わせることができないかと、本気でそう考えています」


765P(ウチの力がついてきたことから、反撃を恐れての停戦か?)


765P(それとも純粋に友好を求めているのか...)


765P「今日この場で、『分かりました』とは言えません」


765P「こちらは一方的に攻撃されたのですから、すぐに信頼できるものでもないでしょう」


765P「ですが、あなた方が本当に和解の道を探ろうとしているのならば」


765P「今後も連絡をください。話を重ねましょう」


961P「……!ありがとうございます……!」ペコリ





(物陰)

響(961プロのプロデューサーだったのか)


貴音(響、なぜ私達は隠れて盗み聞きをしているのでしょうか……)


響(だって、二人とも怪しいぞ!)


貴音(今怪しいのは間違いなく私達だと思いますが……)

1です。一度休憩します(_ _)朝にまた再開するのでどうぞよろしくお願いします。


765P「ところで、何故急にこのお話を?」


961P「……今日のような機会を逃したら、私たちはニュートラルに対面出来ないと危惧したのです」


961P「私は961プロの人間ですから、まずアポをとる時点で警戒されてしまうでしょう」


961P「そうなってしまえば、お互いの本音も届き難くなってしまうのではないかと」


765P「そうですか……たしかに、そうかもしれません」


961P「竜宮小町のプロデューサー……秋月さんには、実は一つ、オファーを伺いました」


765P「律子に、ですか?」


961P「はい……あるテレビ番組のご共演のお願いです」


961P「突然の持ち掛けでしたから、ご迷惑をおかけしてしまいましたが…」


961P「門前払いではなく、一度持ち帰ってみる、とご提示くださいました」


765P「へぇ…律子が……」


765P「俺たちは、昔よりは仕事を選べるようになりました」


765P「このオファーにも乗るかどうか、選択することはできます」


765P「もし、考えた結果、見送らせて頂くことになっても、問題ないですね?」


961P「はい。もちろんです」





(物陰)


響(竜宮が961プロと共演かぁ……)


貴音(また何か、企みがあるのでしょうか)


響(貴音もそう考えるよね。ちょっといきなりすぎだぞ)


貴音(しかし……)


貴音(あちらのぷろでゅーさーは、黒井社長とは異なる空気を感じますね……)


―――――

―――




―――ノミネート公式発表会の翌日。

765プロでは、961Pからのオファーに対する捉え方の会議が行われていた。


律子「……というわけなんですけど」


小鳥「モンデンキントと竜宮小町のステージバトルのオファー、ですか……」


765P「律子の考えは?」


律子「普通のユニットなら、この時期にステージバトルをするのはリスクが高いですが……」


律子「でも、こっちは竜宮小町ですし、TVのゴールデン枠生放送でアピールできると考えると……」 


律子「……でも相手は961プロですしー……」ウーン


765P「なぁ律子、961プロのプロデューサーと話してみて、どうだった?」


律子「えっと……そこそこ丁寧な人…でした。あと友好的、かな?」


765P「だよな。向こうからこれほど友好的に接近されたことは今までなかった」


律子「それは、裏をかえせば罠かもしれない……ということですか?」


小鳥「えっ、罠……ですか?」オロオロ


765P「んー、罠じゃない……何か引っ掛かるぞ」


765P「どうしてこの時期にモンデンキントなのか……わんつ→ているずがノミネートしているのに」


律子「それは多分、わんつ→ているずが負けてしまうとダメージが大きいから?……あっ」ピコーン!


765P「そういうことだ。妨害でも買収でもして、最初から勝つ準備をしているなら、 向こうはわんつ→ているずを出してくるはず」


小鳥「つまり、モンデンキントは真っ向から挑んでくる、ということですね」


765P「これは推測でしかないが、ステージバトルでモンデンキントが竜宮小町に勝利し…」


765P「勢いを削ぐことで、わんつ→ているずの状況を有利にすることが狙い……?」


律子「………?」


律子「黒井社長の手駒がそんな回りくどいことすると思います?」


765P「んー確かに」ウーム


律子「おそらく……」


律子「向こうの狙いは、モンデンキントに注目を集める。多分それだけですよ」


765P「単純にアピールのための勝負、ということか」


律子「………そっかー。真っ向勝負かー」ボソッ


律子「竜宮小町に勝てるとでも……?ナメられたものね」フフフ…


小鳥「律子さん、怖い顔してますよ」


律子「やっぱりこの勝負、乗らないわけにはいかないわ!」


765P「……そうだな」


765P「だけど律子、961側には十分気をつけろよ」


律子「はい。アンテナは常にはっておきます」


―――――

―――




―――765プロから、「ステージバトルに参加する」という返事が届いた。

961Pの期待通りの運びである。

そのころ、最もIA大賞に近いユニットである竜宮小町を超えるため、モンデンキントはレッスンに打ち込んでいた。


真「何度同じ所で間違えるつもりだ、萩原」


雪歩「……ごめんなさい。もう一度お願いします」


真「分かってるのか?このステージバトルで負けたらモンデンキントは……」


春香「真ちゃん、ほら続きやろうよ!喧嘩してもどうにもならないよ!」


千早「雪歩、私と同じアプローチでやってみましょう」


961P(真……ノミネート落選以降、焦りが強くでているな……)


961P(無理もない。あれだけ努力を積み重ねてきたんだから)


961P(ユニットとして結果の残らないまま解散なんて冗談じゃない、そう思っているだろう)


961P(雪歩は……どうも最近、輝きが失われてきているように感じる)


961P(彼女はステージにいる時、一体どこを見ているのだろうか……)


961P(何を思ってステージに立っているのだろうか……)


―――――

―――




―――そしていよいよ、『Live×Alive』前日。

ここは双海家……


真美「今日どっちで寝る?」


亜美「んじゃー下で」


真美「ほい。おやすみー」


亜美「うん...」



<明日頑張ってね。亜美


亜美「りょ→かい!」


亜美「………」


亜美「………」


亜美(………全然眠れん)


亜美「……ねえ真美?」


亜美「亜美はね……亜美はずっと辛かったんだぞ」


亜美「真美のデビューはないって、黒井社長にいじわる言われたりもした」


亜美「それに、亜美のせいで真美がひどいこと言われてないか、心配してたんだ」


亜美「……だから」


亜美「だからね、真美のデビューが決まったとき、本当に嬉しかったんだ」


亜美「この前のライブでも、真美が楽しそうに踊ってて、ほっとした」


亜美「真美とやよいっちなら、IA大賞になってもいいかなーって思った」


亜美「……ごめんやっぱりそれはウソ」


亜美「亜美たちは……竜宮小町はモンデンキントを倒して、IA大賞をとるかんね」


亜美「ねえ真美?」


亜美「亜美たちはIA大賞をとるから。わんつ→ているずとか、フェアリーじゃなくて」


亜美「それが律っちゃんやいおりん、あずさお姉ちゃんとの約束だから」


亜美「……もう寝てたかな」



「兄ちゃんは……765プロにいじわるしたりしないよね……?」



……この場所は確か…真美に最初に会った時の……










961P「…夢か」

961P「……こんな日になんて夢を見たんだろう」


―――――

―――





―――そして、『Live×Alive』が行われる時が来た。



春香「プロデューサーさん!おはようございます!!」


千早「今日は頑張りましょう。プロデューサー」


雪歩「……zzz」


961P「みんなおはよう。雪歩、起きろー…」


961P「真は大丈夫か?」


真「誰に言ってんの」プイ


961P「……よし、リハーサルまで時間はあるから、楽屋でゆっくり準備してきてくれ。挨拶も忘れずにな」


\はいっ!/









そしてこの日をきっかけに、俺は思い知らされることになる。


本当は彼女達のことを、何一つ分かっていなかったのだと――


―――『Live×Alive』リハーサル。

スタジオにて、竜宮小町のリハーサルが行われている。


律子「みんな、準備はいい?」


亜美「おっけ→だよー!!」


律子「それじゃ、始めましょう!スタッフのみなさん、よろしくお願いします!」



―――――――――♪


..................


\ソットニギッテクーレーター♪/



伊織「……はい、私は大丈夫です」


<リョーカイデース


あずさ「あの、すみません、ちょっとここ、移動の時に引っ掛かりそうになっちゃって…」


<リョーカイ、カクニンシマス!


あずさ「はい!お願いします」


亜美「律っちゃんただいま~」


律子「お疲れ様。良いリハーサルだったわね!」
   

律子「私はまだ用事があるから、みんなは先に楽屋の方に行ってて」


伊織「あら、宣戦布告でもするの?」


律子「しないわよ!そんな血の気が多いように見えるの!?」


アハハハ…


<ツギ、モンデンキントサンリハーサルハイリマース!


961P「よろしくお願いします!」


961P「……さあみんな、いってらっしゃい」


―――♪


―――♪


春香(あれ……ステージから見える景色ってこんな灰色だったっけ?)


千早(息苦しさを感じるわ……それに雪歩…周りの動きに気を取られすぎよ…)


雪歩(……上手く動けない…!)


真(くそっ!なんでどいつもレッスン通りに動かないんだよ……!)


―――♪


961P(どうしたんだ…みんな…苦い表情だ…)


961P「すいません!いったん止めてください!!」


―――――

―――




961P「…確かに、この4人では久しぶりの大舞台になる」
     

961P「でもな、今までだってたくさん歌ってきたんだ。緊張することはないよ」


961P「お互いを信じて…」


真「分かったからもういい。時間ないんでしょ。リハの続きを」


千早「真、焦っても仕方ないのよ。今は冷静に……」


真「ボクは焦ってなんかいない!」


雪歩「真さん…やめてください」


961P「……時間をとって悪かった。続けよう」



961P(...本番までにどうにかしないとな)


―――リハーサルが終わって、ここは竜宮小町の楽屋前。



響「激励かー……」キョロキョロ


美希「そういえば、ミキ達が初めてTVに出たとき、竜宮小町が来てくれたっけ」


貴音「あのときはとても元気をもらえましたね」


響「今度はこっちが応援する番だな」


美希「あはは、ミキ達じゃうるさくするだけなの!」ガチャッ


「あっ!ミキミキ達だ!」


「あらあら、みんなそろっちゃったわね~」


「にひひっ♪私達は緊張なんかしてないわよ?」


―――――

―――



―――モンデンキント リハーサル後



春香「…ねえ真ちゃん?さっきの真ちゃんのポジションにね……」


真「ボクにかまっている暇があったら…天海はリハで声上ずってたから喉整えたら?」


春香「……そっか、ごめんね余計なことしちゃって」



春香(……うまくいかないからって当たんないでよ…!)


―――Live×Alive 出演者の楽屋近く


スピーカー<ミナサンコンバンハ!!


765P(お、番組が始まったか)


765P(前半はトークパート。そのあとに歌唱対決)


765P(ステージバトルは…俺は会場の特別席で応援する)




?「あら、あなた。どうしてここに?」


765P「うげっ!?貴方こそどうして……!?」


―――――

―――





―――いよいよ直接対決を目前に控えたモンデンキントの楽屋。



春香「ええっと進行表は……真ちゃん進行表かしtうわっ!」ステーン!


ガタッ!ダバァ……


真「なにすんだよ天海!!衣装びちゃびちゃじゃないか!!」


春香「ごっごめん!」


春香「……でも、真ちゃんもペットボトルのふたぐらいちゃんと閉めてよ」ボソッ


真「なんだよその態度は!?」


春香「風邪引くから早く着替えてきたら?」


真「―――!!!」


千早「真、熱くなりすぎよ」


真「……クソッ!」スタスタ


ドア<バタン!


オーイ、マコトドコイクンダー?
…キガエテクルダケ!


千早「春香も反省すべきだわ」


春香「……うん」


雪歩(この二人、どれだけ千早さんの足を引っ張れば気が済むのかしら……)



ドア<ガチャッ


961P「……みんな、ひとまず落ち着こう」


961P「慣れない対決形式で戸惑うのも分かるけど、お互いに気持ちを合わせることを忘れないようにしよう」


961P「今は、ステージとファンのことを優先するんだ」


―――竜宮小町の楽屋では、フェアリーがモニターを通して応援している。



貴音「前半のとーくぱーとが終わりました」


美希「いよいよなの……」


響「竜宮小町とモンデンキントの…」


―――直接対決―――


―――――

―――




司会「みなさまお待たせしました!」


司会「歌唱対決コーナー『Live×Alive』!!」


司会「今回のカードは『IA大賞に最も近いユニット』VS『デビューから快進撃を続ける新星』!!」


司会「どちらが観客の心をより多くつかむのか!」


司会「まずは――――」


司会「モンデンキント!!」


\ワァァァァァァァァ!!!フゥゥゥゥゥゥ!!!/




『残酷よ希望となれ』



この空の下 いつまでも
探し続けた夢
ひとりきり…どこへみんな旅立つの?

記憶の日々が遠ざかる
あの頃の笑顔は 胸の中いまを支えてた

無言の横顔で あなたも私も きっと
疵ゆえのペルソナ わかっていたよ

幸せのために 愛のためだからと
残酷な戦いを繰り返して
それでも涙がとまらない
願う心は一緒
それぞれの未来が呼ぶんだ


――――――♪


真(天海……声がふらつきすぎだ…)


真(萩原も…レッスンの時のアプローチと違う…!)


ガクッ!!


真(えっ…!?)


真(なんで…コードが……)




―――余計なこと考えてるから、ミスする



…ドシーン!!


―――――

―――




響「………」


美希「転んじゃったの……」


貴音「………」



響「なんだか、ステージを楽しんでるようには到底見えないぞ…?」


美希「やよいちゃんや真美は、もっと人に伝わるように歌うの…この人たちは…」


貴音(デビュー当時の輝きさえ失われていますね……)


―――――

―――




司会「エクセレント!その一言につきるステージでした!」


司会「続いては竜宮小町です!さあモンデンキントを超える感動を巻き起こせるか!?」


\ワァァァァァァァァァァァァ!!!!フォォォォォォォ!!!!/



律子「さあ、みんな。いってらっしゃい!」


伊織「…にひひっ♪」


亜美「んふふ~」ニヤニヤ


あずさ「……」ニコニコ


律子「…ってどうしたのよ、みんな」ギョッ


「律子」

「律っちゃん」

「律子さん」



――――亜美、絶対律っちゃんをIA大賞につれてくかんね!


――――私達はいつも律子さんと一緒ですよ!


――――心配することはないわ。あんたの竜宮小町は、最強よ。




『初恋~二章 告白の花火~』




「もう夏だね…」 君が笑う
今夜のお祭り みんな騒ぐ教室

窓の桜 今ないけど
心の花びら 今も舞ってく…


私恋してる
君の事想うだけで 嬉しいでもすぐ切なくなる…

好きと言いたくて 言えなくていつもいつも
でも今日の帰り道 君にちゃんと伝えよう…


学校の帰り 黙る私
「ねえどうしたんだよ?」 心配そうな君

優しいのはうれしいけど
何故か急に胸痛くて 泣きそうになった…

さよならする 分かれ道に着いた時
手を振る君はもう会えなそうで…

「君が好きだよ」

思わず言った瞬間に
遠くから花びらの様に 花火が舞った…


――「みんな、聞いて。もし竜宮小町がIA大賞をとったらね」


――「私は…先に進む選択をしようと思うの」


空を見る私の手

そっと握ってくれた…



律子「私は……忘れないわ。今日の、このステージを……」



―――――

―――




765P「もしも…」


765P「もしも俺と律子が、別々の事務所だったとして」


765P「竜宮小町とフェアリーが直接戦うことになっていたら」


765P「……俺たちは今日の竜宮小町に勝てただろうか」


765P「いや、フェアリーだけじゃなく、ディアリースターズ、ニュージェネレーション、ジュピター…」


765P「きっと“伝説”と呼ばれたあなたでさえ……」


?「あら、相変わらず生意気ね!」


?「確かに分からないわ。……でももっと気になるのは」




?「彼女たち、まだホントの底力は見せていないわね」


―――――

―――




―――Live×Alive放送後。黒井社長は善澤を例のバーに呼び出していた。

黒井の口から語られたのは、モンデンキントとわんつ→ているずに秘められた過去…


善澤「久しぶりだな。黒井」


黒井「ああ。悪かったなこの忙しい時期に」


善澤「お互い様だろう」ハハハ…


善澤「今日はモンデンキントの子たち、残念だったね」


黒井「……負けるということは分かっていた」


善澤「ん?…詳しく聞かせてくれるかい」


黒井「……」


黒井「いくら環境に恵まれているといえど、デビューしてまだ四ヶ月」


黒井「モンデンキントは……あの子たちはアイドルとしても人間としても未熟な部分が多い」


黒井「だが今日の相手は、偶然とはいえジュピターを倒した手練ユニットだ」


善澤「…ならどうして出演の許可を?」


黒井「...長い話になる」


善澤「構わん。こうして話すのも若い時以来だ」


黒井「当初、ジュピターとモンデンキントは近い時期にデビューする計画だった」


黒井「――だが、先にデビューしたジュピターが予定より早く路線に乗ってしまった」



―――――

―――




―――ジュピター デビュー当時―――


TV<今日のゲストは、日本中に大旋風を巻き起こしているジュピターのみなさんです!!


TV<キャァァァァアアアア!!!ショウター!!ホクトサーン!!ラセツクーン!! ウッセ!アマガセトウマダ!!



黒井「フハハハハ!!……どうだ高木め、これで私が正しかったということを思い知っただろう!!」


黒井「ジュピターは完璧なアイドルとなり、我が961プロは絶対的な王者となるのだ…!!」


黒井「……そして、プロジェクト・モンデンキントの成功によって、新たな伝説の幕開けとなる!」


秘書「黒井社長!765プロのことですが...」


黒井「なに!?各地のオーディションを765プロのアイドルが制圧…!?」


黒井「何故だ……765プロには秋月律子とかいうBランク止まりしかいなかったはず…」


秘書「それが…高木順二郎が765プロ社長に就任後、秋月律子はプロデューサーに転身していまして…」
   

秘書「さらに新たにプロデューサーを雇い、アイドル候補生を次々とデビューさせていると……」


黒井「ぐぅぅ!!高木ぃ……! 他人に頼ることしかできん無能の分際で!!」


黒井「……ならばよいだろう」


黒井「我が961プロが王者だということを、その貧相なアイドル達に分からせてやる…!」



黒井「私はなんとしても……ジュピターを最強のアイドルにしなければならん…!!」


「デビューできないって、どういうことですか!? 」


「黒井社長がしばらく待ってほしいって……なんでそんな急に…」


「ボクたちを、捨てたのかな……」




「私達、いつ『アイドル』のモンデンキントになれるんだろう?」


―――――

―――




黒井「高木は他人の才を見抜く能力に長けていた。反面、育成する技能に乏しかった」


善澤「……そう。そして君はその逆だ」


黒井「候補生の中からジュピターを結成したのは私だった」


黒井「ジュピターは見てくれこそ恵まれているが…」


黒井「アイドルの能力要素であるダンス・ヴォーカル・ヴィジュアル全てに才能があったわけでは無かった」


黒井「だが私は、ジュピターというアイドルを育て上げ、961プロを成長させた」


黒井「私のやり方は間違っていなかった」


黒井「しかし、他人の力を測り誤った」


黒井「高木は765Pをスカウトし、自身の弱点を補完した」


黒井「私は焦燥した。否定し続けてきた高木に負けるわけにはいかなかった」


黒井「……そして、私はあのプロデューサーの根性と機転の良さを見誤り、忌み手を使った」


黒井「結果、身を滅ぼすことになった」


黒井「私は失ったのだ。自らの手で築きあげた、自分の信念ともいえるジュピターを」


善澤「………」


黒井「それからしばらく、プロデュースができるような心理状態ではなかった」


黒井「……」


黒井「…だが私は、“贖罪”をしなければならなかった」


黒井「私が死なせてしまったプロジェクト・モンデンキントと…無意識に傷つけていた双海真美に」


善澤「双海亜美の姉妹……か。彼女は知っていたのかい、961プロが765プロの妨害を行っていたことを」


黒井「本人に訊いてはいないが…おそらく」


善澤「お前は最低の大人だな」


黒井「……そうだな」


黒井「この半年は償いだった。そう私の、彼女たちへの償いだ」


黒井「モンデンキントをジュピターに代わるユニットという名目でデビューさせ、 真美は、親友のやよいとユニットとしてデビューさせた」


黒井「しかし、モンデンキントも、真美も、私がプロデューサーになることを望んでいないのは明白だった」


善澤「だから961P君をプロデューサーに?」


黒井「…それも今日までだが」


善澤「どういうことだ……?」


黒井「ヤツにはモンデンキントは荷が重すぎたのだ」


善澤「そりゃあ、素人のプロデュースでアイドル達を…」


善澤「ジュピターに代われるレベルまで成長させろ、などというのは確かに無茶な話だと思うが」


黒井「いや、そうではない。ヤツに実力が無いという話ではないのだ」


黒井「いくら961プロに力があるとはいえ、 真美とやよいをたった4ヶ月でIA大賞ノミネートまで押し上げたのはあの男の力だ」


善澤「じゃあ何故…」


黒井「モンデンキントのメンバーをプロデュースするには……ユニットの亀裂が多すぎる」


黒井「ファンを見ようとしない雪歩、他人を見ようとしない真……」


善澤「おいおい…」


黒井「そして、今日の敗北で亀裂は地割れへと変化しただろう」


黒井「ヤツのプロデュース力が足りなかったというのもあるだろうが……」



黒井「モンデンキントはどこかで敗北せざるを得なかった」


黒井「そしてその“どこか”に、私が今日を選んだだけだ」


黒井「正確にはヤツが選ばせた、となるな」


善澤「……961Pのプロデュースを外して、モンデンキントはどうするつもりだ?」


善澤「この不安定な時期に彼女たちを支える人がいなくなるのだぞ?」


黒井「ああ。おそらく彼女たちは解散するだろう」


黒井「それが…彼女たちのためでもあり、961Pのためでも……」


善澤「…それのどこが償いなんだ。そもそもそんなこと961P君が――」ハァ…


黒井「ヤツは研修で海外に飛ばす。負けは負けなのだ…」


黒井「修行を積まなければ先には進めんと言えば、納得するだろう」


黒井「……わんつ→ているずは765プロに移籍なりさせるさ」


黒井「向こうのプロデューサーもこの二人のことを喉から手が出るほどプロデュースしたいはずだ」


黒井「同年代アイドルが多いプロダクションなら真美もやよいも文句はないだろう」


善澤「相変わらず強引だなぁお前は」ヤレヤレ


善澤「……そう上手くはいかないだろうな。思うに、あの961P君は……」


黒井「765のプロデューサーに似ていると言いたいのだろう?」


善澤「ははは……分かってるじゃないか」


善澤「それに、きっと君も心のどこかで、彼が拒否することを望んでいるんじゃないのか?」


黒井「さぁどうだかな」フフフ…


小鳥「お前はいつもはぐらかすなぁ!宗ちゃん……!」ピヘヘ…


黒井「………」


善澤「………」


小鳥「……あれ?」


小鳥「わ、わたし失礼しますね~!」アタフタ


黒井「……小鳥!」


小鳥「はいぃ!!」ビクッ


黒井「……母親は元気にやってるのか?」


小鳥「…最近はときどき電話をするぐらいですけど…でも声を聞くときはいつも元気ですよ」フフッ♪


黒井「そうか...ならいい」


黒井「それから高木にこう伝えておけ 。“これで961プロに勝った気でいるなよ”とな」


小鳥「うふふ……分かりました」ニコッ


小鳥「……黒井社長?これからは765プロとも仲良くしてくださるんですよね??」キラキラ


黒井「早く帰れ」


小鳥「もう!……善澤さん、今日のステージはいかがでした?」


善澤「相変わらず、良い歌声だったね」


小鳥「えへへ…ありがとうございます♪それでは、失礼しますね!」ガチャッ


黒井「飲みすぎたな。勢いであんなことを訊いてしまうとは」ハァ…


善澤「お前とここで語っていると、昔に戻ったように感じるよ」


黒井「ここでの話は他言するなよ……」


善澤「高木にもかい?」


黒井「笑えないジョークはよせ…」


―――――

―――




―――翌日、ここは961プロダクション。

今日、961Pは社長に呼び出されていた。


961P「あれ、おはよう千早!...今日はオフだけど、自主トレーニングか?」


千早「おはようございます。レッスンスタジオ、お借りしますね」


961P「ああ。でも、昨日の疲れもあるだろうから、ほどほどにな」


千早「体調管理には自信があります」キリッ


961P(もっと凹んだりしてると思ったけど、千早は大丈夫そうだな)


961P(俺は今からものすごい凹むことになりそうだけど…)


961P(ああ……行きたくない社長室。絶対大変なことになる)


961P(いや、まだまだモンデンキントはこれからなんだ…!)


961P(大丈夫。ここは、彼女たちをトップアイドルにするためにも踏ん張らなきゃ)


<ガチャッ


961P「社長、失礼します」



黒井「……来たな」


黒井「961P、お前にはハリウッドに行ってもらう」


961P「………」



961P「……はい?」


―――――

―――




―――時を同じくして、765プロ。

善澤が律子に竜宮小町についてのインタビューを行っていた。


善澤「律子ちゃん、ありがとう。これは良い記事が書けそうだ」


律子「いえいえ、こちらこそいつもお世話になってます」ニコッ


善澤「…高木は社長室にいるかな?」


律子「ええ、今の時間なら書類整理をしているはずです」


善澤「高木、入るぞ」


高木「おお、善澤。律子くんへのインタビューは終わったのかな?」


善澤「ああ。…明後日にはIA大賞グランドファイナルがあるというのに、律子ちゃんはなかなか余裕があるね」


高木「それも、彼女のいい所だ。昔はもっと心配性で臆病だったんだがな……」ハハハ…


善澤「竜宮小町は昨日の勝利で、ぐっとIA大賞に近づいた訳だが…」


善澤「以前言っていた、ハリウッドへの研修の話はどう考えているのかな?」


高木「…彼女は、結果そうなれば、“行く”と決めているようだ」


善澤「…そうか」


善澤「…昨晩、黒井と会った」


高木「ほう……?」


善澤「かくかくしかじかでな」


………


善澤「…と。この話は他言するなと言われていたんだ。そういう体で頼むよ」


高木「ははは……それにしても、黒井も変わったものだ」


善澤「プロデュースにかける想いだけは昔から変わらないみたいだけどね…」


善澤「突然海外だの言い出した時は唖然としたよ」


高木「想いが強過ぎて、表現方法を間違ってしまう。そんな不器用なヤツなんだよ」


善澤「はっはっは、懐かしいセリフだな。あの頃は961プロがまったくのヒールだった」


高木「…私の個人的な事情で765プロのみんなには大変な迷惑をかけてしまったのは事実だ」


高木「だが、時代は変わっていくものさ」


高木「……これから始まろうとしているのだ。あのふたりによって」


高木「いがみ合いの消えた、同志としての、765プロと961プロの新たな関係が……」


―――――

―――




―――ここは961プロのレッスンスタジオ。

社長室から戻った961Pは、千早のレッスンを見に来ていた。


961P「なあ、千早」


千早「はい?」


961P「俺がみんなのプロデューサーでよかったのかな」


千早「……昨日のことですか…?」


961P「まあ、いろいろあったんだけどさ。…結論から言うとね」


961P「俺、来年のIA大賞が終わったら、アメリカに行くことになった」


――お願いします!!俺はまだモンデンキントに何もしてやれてないんです!!


――ならば一年やる。来年のIA大賞までに、モンデンキントを一流のアイドルにしてみせろ。


――それができなければお前はクビ。だが、条件を飲まないのならこの場でクビだ。


――そして結果を出した暁には、1年間の研修に必ず行ってもらうからな。


――分かりました。必ず最高のアイドルにしてみせます…!!


千早「よかったか、よくないかなんて、まだ分かりませんよ」


千早「たしかに、他のプロデューサーの下にいたら、今頃私は海外レコーディングをしていた……」


千早「ということもあったかもしれません」


千早「ですが、私はこうしてプロデューサーに巡り合ったんですから、それ以上もそれ以下もないです」


千早「……それと、昨日の敗因は、プロデューサーだけじゃないですから……」ボソッ


961P「千早…ありがとう」


961P「プロデューサーとして、千早に一つ頼みがある」


961P「少しの間、モンデンキントを守ってくれないか」


―――――

―――




―――IA大賞。グランドファイナルの日がやってきた。

ここは国立オペラホール。今日ここで、アイドルの頂点に立つユニットが発表される。


美希「やよいちゃん!!また会えたの!」


やよい「あっ!美希さーん!」フリフリ


貴音「双海真美、こんばんは」


真美「亜美にいっつも聞いてるよぅ!チミがお姫ちん君だね!?」


響「実際に見るとホントに亜美そっくりだぞ…」


真美「うわーひびきんだー!?真美よりちっちゃーい!!」ガバッ


<ウギャー!!


765P「高槻さんに双海さん、初めまして。フェアリーのプロデューサーです」キリッ


やよい「初めまして高槻やよいですっ!」シュバッ!


真美「真美だよ→♪よろよろ~!」


765P(あー可愛いなー)


響(プロデューサー顔がゆるんでるぞ……)


765P「おっと、そろそろ始まるな…」


765P「高槻さん、双海さん、フェアリーとこれからも仲良くしてやってくれ」


真美「りょ→かい!」ビシッ


やよい「うっうー!美希さん、貴音さん、響さん!また会いましょー!!」


765P「お前たちとあの子たちが一緒にいると、まるで同じプロダクションのアイドルみたいだな」


美希「そうだね。なんだかやよいちゃん達は、他の子みたいに『ライバル』って感じがしないの!」


響「そうだなー。別にわんつ→ているずに実力が無いって話じゃないけど」


貴音「ふふ、これから共演する機会も増えると良いですね」


765P「……ああ」


―――そして、グランドファイナルが始まった。




司会「……以上24組のアーティストが、IA大賞にノミネートされています」


司会「果たして、各賞の栄冠は誰の手に?そしてIA大賞の行方は!?」




スノーホワイト賞 ディアリースターズ

愛「受賞したよーーーーーー!!!!!」ワーーーイ!!

絵理「愛ちゃん…おさえて、おさえて…」




フォレストグリーン賞 竜宮小町

伊織「ふぅ…まずは部門ね…」ドキドキ

亜美「いおりん、もっと喜んでいいんだよ?」




フェニックスレッド賞 フェアリー

美希「ぷ、プロデューサー!ミキ達、受賞しちゃったの!!うう、うれしいよ~!!」ウルウル

765P「やったな。でも泣くのはまだ早いぞ、美希」





ブラックパール賞 わんつ→ているず

真美「やったー!受賞できたよ、兄ちゃんっ!」

やよい「やりましょうっ!はいたーっち!!」


「「「いえいっ!」」」パーッン




オーシャンブルー賞 ニュージェネレーション

卯月「…ええっ!?」ガタッ

凛「やった…!受賞だよ!卯月、未央!!」ウルウル

未央「しぶりん…しまむー……!」ウエーン!!




魔王エンジェル「……チッ」

新幹少女「………」



司会「以上で、各部門賞の発表を終了します」


―――それでは、皆さん……


―――いよいよこの時がやってまいりました。本日最後の発表となります。


―――本年度、この国でもっとも輝いたアイドルに贈られる、最高の賞!


―――IA大賞の発表です!


―――おっと、今、私の手元に封筒が届きました!手が震えております!早速、開けてみましょう!


―――こっ、これは………!!


765P・モバP・961P
(いいから早く言え!)


―――コホン。それでは発表します。


―――本年度のアイドルアカデミー大賞に輝いたのは......!






ドコドコドコドコドコドコドコドコドコ...ジャーン!!



アイドルアカデミー大賞  『竜宮小町』



―――竜宮小町の皆さんです!おめでとうございまーーーーっす!!!


1です。一度休憩します(_ _)23時頃に再開させていただきます。


―――竜宮小町によるステージが披露され、IA大賞グランドファイナルが終わった。

その夜、部門賞を受賞した各々のユニットは、それぞれの喜びを分かち合っていた。


美希「ミキ、まだ胸がドキドキしてるの……!」


響「竜宮小町の歌、感動したなぁ…」


貴音「大賞には届きませんでしたが、共に研鑽した仲間が受賞したのです。なんと嬉しき事かと!」


765P「……みんなの頑張りで、フェアリーもフェニックスレッド賞が受賞できたんだぞ?」
     

765P「みんなもおめでとう。良く頑張ったな」


響「へへ……ほめてほめてー!!」


美希「プロデューサー、ミキも!」


貴音「それでは、私も」


765P「よしよし、よくがんばった」


―――プロデューサー。ホントにどうもありがとうなの!ミキ、すっごくすっごく、感謝してるよ。あはっ☆


―――ふふっプロデューサー。このメンバーを選んでくださったこと、真、感謝いたしますっ!


―――自分、プロデューサーや皆と、ここまで来れてホント良かったぞ! 今日のことは絶対忘れないよ!





765P「ありがとう。俺も皆をプロデュースできて、幸せだったよ」







765P「俺のプロデュースはまだ続くけどなっ!!」


―――いっぽう、ここはCGプロ。

ニュージェネレーションの受賞を祝うため、全ての所属アイドルが集まっていた。



卯月「ニュージェネレーション……オーシャンブルー賞を受賞しましたーっ!!」


CGプロ一同\いえーーーーーい!!!/


モバP(事務所揺れたぞ今...これが150人越えの力か...)


凛「みんな……!私達はまだまだ走り続けたい……!!」


凛「夢の舞台じゃ満足できない。だからこの先はCGプロみんなで夢を実現していきたいって思うんだ!!」キリッ


\うぉぉぉぉぉぉ!!ボンバー!にょわー!ヒャッハー!/


未央「私達が描いたステージは、もっと遠くにあるよね!!」エヘッ


未央「これからも、トップアイドル目指して、頑張っていこーっ!!」


\おぉぉぉぉぉぉ!!ヘーイ!これぞ世界レベル!!/



千川ちひろ「卯月ちゃんたち……本当におめでとう!」ウルウル


モバP「よくがんばった……ニュージェネレーション。これからもCGプロの先頭として、道を切り開いていってほしい」


モバP「俺たちの未来は、すでに始まっている!」


―――そしてここは876プロ。

小さい事務所ながら、そこには大手にも劣らない情熱が秘められている。

今回のアイドルアカデミーにて、強烈な個性を持つユニットが、ついに世間に認められた。


石川「スノーホワイト賞、受賞おめでとう」


愛「やったーーー!!!!」


絵理「ええっと、嬉しい!」ウルウル


涼「やりました!これで876プロも有名になりますね!」



尾崎玲子「ディアリースターズというユニットにして正解だったわね」


岡本まなみ「本当に夢をかなえたんだなぁ……」


石川「男性ボーカリストとアイドル二人のユニットがよくアイドルアカデミーにノミネートしたものだわ」


石川「どうなっているのかしらね。IAUは……」


涼「空気など読むなってことですよ。きっと!」


愛「えへへ…今日をきっかけに、私達はもっとトップアイドルに近づける気がします!!」


涼「……そういえば、舞さんは誰を呼びに行ったのかな…?」


絵理「特別……ゲスト?」


愛「楽しみですねーーー!!」




ドア<ガチャッ







――――「そう、僕だ」


―――つづいて、こちらは大賞を受賞した竜宮小町。

あずさの家にて、祝勝会が行われていた。

だが、他のユニットと違い、どこか寂しさを感じさせるものがあるのは、

メンバーが、律子といられる時間がもうあまりないことを知っていたからかもしれない。


亜美「J(女子)!P(会=Party)!Y(yeah)!!」ヒャッホウ!


律子「すいませんあずささん...またお邪魔してしまって...」


あずさ「うふふ、適当にくつろいでくださいね♪」



伊織「にひひっ♪」ギュッ


あずさ「あらあら~!どうしたの伊織ちゃん」ウフフ


伊織「いいじゃない、たまにはこういうのも♪」ギュッ


亜美「あーっ!ずるい、いおりん!亜美も!!」ドタドタ


……台所でごはんを作るYO!


律子「やっぱり…エプロン姿が新妻って感じですね」アハハ


あずさ「え?そうですか?」ニコニコ


亜美「んっふっふ~ところでいおりんは料理できるようになったのかな?」ニヤニヤ


伊織「あ、あれから少しは練習したわよ!」


律子(私は全然してない…)ボソッ


あずさ「あら、じゃあ今回は伊織ちゃん一緒にがんばりましょう♪」


律子「私も手伝います!」アセアセ


亜美「今日は亜美も手伝うよん」ピョコン


律子「あら、珍しいわね?」


亜美「…律っちゃんのそばにいようと思って」


律子「………」


亜美「なっ、なんか言ってよ!超ハズいじゃん!」カァァ


あずさ「…じゃあみんなで楽しく作りましょう♪」


ワイワイガヤガヤ…


「「「「いただきまーす!」」」」


律子「おいしい!」パァァ


あずさ「みんなで作ったスペシャルディナーね」ウフフ



伊織「その……どうかしら。私が作ったのは…」


あずさ「……前よりもっとおいしくなってるわ♪伊織ちゃん♪」モグモグ


伊織「ほんと!?」パァァ


亜美「よかったねいおりん」ニヤニヤ


亜美「あーっ!これ懐かしい!」


伊織「何の写真?……これ、初代パレスオブドラゴンじゃない」


亜美「初めてこれ着たときはヘッドセット落とさないように踊れるか心配だったよ~」


伊織「私もあの帽子が暑くて大変だったわ…」


あずさ「私はちょっと……太ももが…あぁ恥ずかしい」╱╱╱


律子(あずささんの恥ずかしがるポイントがよくわからない)


―――就寝まで竜宮小町は、今日までの研鑽を称え、そして偉大なプロデューサーとの別れを惜しんだ。


亜美「いっぱい!いっぱい!いっぱい!いっぱい!」

亜美「あ・な・た・の・声をっ!うん!」

伊織「いっぱい!いっぱい!いっぱい!いっぱい!」

伊織「き・か・せ・て・ほしっい!もう!」

あずさ「ぜったい!ぜったい!ぜったい!ぜったい!」

あずさ「ほ・か・の・ひ・とより!うん!」

「「「ぜったい!ぜったい!ぜったい!ぜったい!」」」

「「「す・き・だ・と・おもっう!」」」

律子「まずちょっとだっけー♪さぐってみよ♪」

律子「わたっしのメ・ガ・ネ♪すきっ?きーらい?」

「「「だいすきー!!」」」


アハハハハハ...


律子「竜宮小町はこれからどんなアイドルになっていくのかしら…」


律子「私はちょっとだけお別れになるけど……」


律子「ずっとみんなのことを思ってる」


律子「私が帰ってくるまで、留守はよろしくね」


律子「……頑張れ、私の竜宮小町!」


―――――

―――




―――少しの時間が経ち、いよいよ律子の出国を前日に控えた。

765プロの身内による律子の壮行会が、例のバーで行われている。


律子「社長が壮行会にゲストを呼んだっていうから、何かと思いましたけど……」


律子「まさか……貴方とまた会えるとは…」


?「引退しても、君は私のアイドルだ。ずっと君の活躍を見ていたよ。」


律子「もう。私はプロデューサーなんですよ?」


?「……私に力が無かったせいで、アイドル時代の君には苦労かけた」


律子「私は、少しも後悔してないですし……こんな私をプロデュースしてくれた貴方にも、感謝の気持ちでいっぱいです」


?「ところで律子……今日、この場所で壮行会が行われているのは理由がある」


律子「……まさか」ビクッ


?「君がアイドルだった姿を、もう一度この目に焼き付けておきたいんだよ」


?「歌ってくれないか。律子」


律子「……」チラッ


伊織「にひひっ♪歌いなさいよ律子!」
亜美「律っちゅあ~ん歌ってYO!」
あずさ「うふふ、みんな楽しみにしてますよ」
美希「律子...さん。美希も聞きたいの!」
響「律子、なんくるないさー!」
貴音「これはもう、満場一致ですね」フフ
高木「さぁ、律子くん」
765P「律子!」
涼「律子姉ちゃん!」


小鳥「律子さん、みんな待ってます!」ニコッ


律子「……小鳥さん……」


律子「もう、しょうがないわね!」


律子「よしっ!………といきたいところだけど」


律子「私歌える曲なんて…」


?「……この曲ならどうだ」



―― ラ ラ ラ ラ シ♭ ラ♪



?「私が初めて君に渡した曲だ」


律子「それなら、なんとか…」


律子「……伴奏よろしくおねがいしますね。順一郎プロデューサー!」


順一郎「ああ。任せろ―――」



―――『Cast a spell on me!』



―――『Cast a special spell on me!』


鏡の中 ため息がひとつ
「教科書がボーイフレンド?」
みんな言うけど


机の中 書きかけのラブレター
まだ見ぬあなたに 想いを馳せる


つまらない子だと 思うかしら?
本当はこの胸の ドキドキ探したいのに


恋を夢見るお姫様は
いつか素敵な 王子様に巡り会える
早くそんな日がきますように
そっと瞳を閉じるから

魔法をかけて!


765P(すごい…テンポもあれだけ揺らしているのに…)


高木(うむ。お互いを分かりあっている……そんな音楽だ…)


涼(やっぱり、律子姉ちゃんはアイドルだ…)



亜美「………」ウルウル


伊織(あんたにかけられた魔法はとけないわ……これからも、ずっと)


あずさ(律子さん……素敵ですよ)






順一郎(受け取れ……律子。私の、最後のプロデュースだ)


―――――

―――





―――翌日、空港に765プロの面々が集まった。律子に別れを告げるためである。



律子「じゃあみんな……バレるといけないから、もういくわよ…」クルッ



亜美「律っちゃーん!!」


律子「……!」ビクッ



あずさ「どこにいっても、私達の心はひとつ。そうですよね?」



律子「……もう」



律子「当り前でしょー!」


律子「私は765プロの、プロデューサーなんだからー!」ニコッ



美希「ずっと待ってるのーーっ!!」バイバイ


伊織「いってらっしゃい、律子!」


―――かくして、研修へと律子は旅立った。

765プロを支える大きな存在を欠いてしまったが、これを機に、765プロも新たな成長を遂げるかもしれない。


―――――

―――




―――時は少し遡り、IA大賞グランドファイナルの翌日。

やよいは961Pと真美を高槻家に招待し、受賞を祝うもやしパーティを開催しようとしていた。


961P「お邪魔しまーす」


やよい「どうぞー!上がってくださーい!」


真美「相変わらずの高槻家ですなぁ」


長介「兄ちゃん、久しぶり!」


961P「おう、元気にしてたか?」


961P「やよい、追加で買ってきた材料ここに置いとくよ」


やよい「はわっ、ありがとうございます!」


浩司「兄ちゃん、遊ぼーよ!」グイグイ


961P「ああ、今行くぞ」


<っしゃあ!真美の勝ちィ!!


<うわあ、ずるいよ~……


961P(真美は何をやってるんだ……?)


……もやしパーティ終了



961P「あぁ、美味しかった。ごちそうさま、やよい」


長介「ごちそうさま!」


浩太郎「ふう、ごちそうさまでした!」


真美「やよいっち、片付け手伝うよ」


かすみ「あ、私もやるよ!」


やよい「プロデューサー、こんなにたくさんお野菜もお米も……本当にいいんですか?」


961P「大丈夫だよ。結局今日で食べきれなかったし、俺は野菜嫌いだからな」


961P(余るように多めに買ったんだけど)


やよい「それじゃあ、またウチでご飯食べましょう。もちろん真美も一緒に!」


長介「兄ちゃん、浩司も浩三もまた遊んでほしいって!」


961P「オーケー。次はもっとゆっくりした時期にくるよ」


浩太郎「やよい姉ちゃんがね、昨日すごい喜んでたんだよ! 」


浩太郎「兄ちゃんと真美のおかげですごい賞が取れたんだって!」


やよい「こらっ、“真美さん”でしょ?」


真美「そうだぞ浩太郎。ビューティフルクイーンとお呼び!」


…アハハハハ!


961P「じゃあやよい、俺は真美を送ってくから……今日はありがとな」


やよい「はい!プロデューサー、また明日です!」ガルーン


真美「みんな、まったね→!」バイバイ


……961Pの車内



真美「ねえ兄ちゃん。あの野菜とお米の量は、さすがにやよいっちも気付いてたんじゃない?」


961P「……大丈夫そうだったよ。 ってか真美、分かってたのか」


真美「いま兄ちゃんが答えるまでビミョ→だったけどね!よく考えたら今までもめっちゃ多かったもん」


真美「そういうの、世間的にいうオセッカイってやつでしょー?」


961P「そうかもなー」


真美「……でも、真美は兄ちゃんのそういう所好きだよ……」


961P「はは……そうか。ありがとう」


―――――

―――




―――もやしパーティの翌日。本日はモンデンキント、わんつ→ているず共にオフとなっていたため、

961Pは事務所にて、これからの両ユニットの展開を思案している。

モンデンキントの不和、芸能界のプレッシャーなどから、気付かないうちに、ストレスが961Pの体に溜まっていた。


961P(朝の寒さもだいぶ慣れてきたな……)


961P(さて、せっかく黒井社長にこの部屋を頂いたんだ)


961P(今日はアイドル達はみんなオフだし、じっくりモンデンキントの作戦を練るぞ)


961P(そして……765プロとの協定計画も…)



<ガチャッ


千早「失礼します。プロデューサー、レッスンスタジオは空いていますか?」


961P「おはよう千早。今日、学校は?」


千早「テストだったので、午前中に終わりました。それで、自主トレーニングをしようと」


961P「そうなのか。あ、その前にちょっと渡すものが……」


千早「……?」


961P「例の、千早の曲が出来たんだ」スッ


千早「………えっ」パァァ


千早「…あの、ありがとうございますっ。精一杯歌わせていただきますね」ペコリ


961P「それともうひとつなんだけど」


961P「千早と雪歩のこと、そろそろ教えてほしいな」


千早「………」


千早「……プロデューサーは気付くのが遅すぎです」ハァ


961P「うん。今までアイドルをちゃんと見ていなかった」


961P「見ているつもりになっていただけだったと思い知らされたんだよ。あの時のステージでね」


千早「まだ分かっていないことがたくさんあるみたいですけど」
    

961P「はは…いじめないでくれよ。 この1年、みんなとしっかり向かい合って、みんなをトップアイドルにするって決めたんだ」


千早「まあなんでもいいですけれど…」


千早「私と雪歩は……961プロに入る前からの知り合いで……」


千早「幼い頃、どうやって出会ったのか、もう覚えていませんが……」



千早「雪歩は、昔からずっと私についてきてくれました」


千早「アイドルになると決意した時も、一緒に…」


千早「でもそのせいで、最近の雪歩は苦しんでいるんじゃないかと思うんです」


千早「何故アイドルになったのか…あの子はそれが明確じゃないから……」


―――――

―――





961P「ふぅぅぅーー……。疲れた…体が固まった」


961P「結局あれから1時間も千早と話し込んでしまい」バキバキ


961P「今日やろうと思ったことはあまり進んでいない」


961P「ま、捌かなきゃいけない仕事は無いから、ゆっくりでもいっか」ウン


<ガチャッ


やよい「おはようございます、プロデューサー!」


961P「あれ?やよい、オフなのに珍しいな」


やよい「はい、いつものオフの日は、学校の後に家事があるんですけど…」


やよい「昨日私が『また明日』っていったのを勘違いした長介が、全部やっといてくれてたんです!」


やよい「それで、折角なので事務所のお掃除をしようと思って!」


961P「それは助かるよ。ありがとう」


やよい「頑張りまーっす!」ウッウー!


961P(モンデンキントのファンをさらに増やすためには…)


961P(わんつ→ているずが広い層に支持されている理由をベースに戦略を考えればいいのか?)


961P(んー真美とやよいの人気の理由ね…)


961P(あれ、俺プロデューサーなのに表面的な売り文句ぐらいしか言えないぞ……)


961P(だめだ、ちゃんと向き合うって決めたんだ。考えろ、俺)



961P「……んー、やよいってなんであそこまで人気あるんだろう」ボソッ


やよい「…えっ?」ピョコッ


961P「あっ違うぞやよい別にやよいがだめってわけじゃなくて」


961P「なんでやよいがかわいいのかちょーっと考えなきゃで……」


961P「ひいてはやよいはどこがいいんだろうね?難しいですなぁコリャ!」ハハハ!


やよい「………?」


961P(まずいこのままでは俺はバッドコミュおじさんだ……)


やよい「……!」ピコーン


やよい「それじゃあ、一緒に考えましょう!」


やよい「プロデューサーが、私のいいなーって思う所、どこですか?」


やよい「そうですねー……じゃあ、触ってみてください!」 タッチコミュ!


961P(!?…やよいは絶対に勘違いしている…やよいの人気のある部位とかそういうことじゃないんだ…!)


961P(くっそー、この前共演した765プロシアターのあの百瀬とかいうアイドルだなうちのやよいに変なこと吹きこんだのは…!)


961P(今度会ったら飯でも奢って……いや、しっかり注意しなければ…)


やよい「…うー?」キタイノマナザシ


961P(…しかしここは…)




961P「………ギュッとな」ギュッ


やよい「...はわわ!?」╱╱╱╱


961P「…全部いいじゃん」


961P「やよいは、全部いいと思うよ」


やよい「えっと…その…嬉しいかも……」テレテレ


腕から伝わるやよいの体温が、とても気持ち良く、


俺は自分の中で疲労が解放されていくのが分かった。


小さな温もりに包まれて、気付けば涙が頬を伝っていた。


急激な倦怠感に襲われる。


961P「やよい、ちょっとごめんな。……ソファで寝る」フラフラ…


やよい「あっ、はいっ。毛布どうぞ!」


961P「ありがとう…」フラフラ…ドサッ


961P「……zzz」




やよい「……私はお掃除の続きをっ」ハワッ


―――――

―――





「よーし、おしまいです!」


「……プロデューサー?」ソロリソロリ…


(プロデューサー……目が真っ赤です……泣いてたのかな…)


「……」


「よいしょっと」モゾモゾ


「お隣に失礼します…」


「…泣かないで、プロデューサー」ギュッ


「いつもありがとうございます……」ナデナデ


「ふわぁ……Zzz……」


<ガチャッ


「プロデューサー、新曲、いい曲でした……って」


「あら、寝てしまっているのね」


「高槻さんも素敵な寝顔だわ」



「……私が歌えるのも、プロデューサーのおかげです。ちゃんと分かってますよ」ニコッ


「……~♪」 トーキヲーワータルー セーイジャノーヨニー ドンナコドクニー ナイテイタノー♪


―――――

―――




―――再び時は進み、律子が旅立ってから数日後…

765プロでは、新たな日常が始まろうとしていた……


765P「亜美、俺は別に枕じゃないからなー?」ナデナデナデリナデナデナデリコナデリナデナデリ


亜美「......Zzz...」グースカ




伊織「律子がいなくなったとたんこれよ!!」キーッ!


美希「プロデューサー、また亜美を甘やかしてるの?」


765P「む、亜美が勝手に膝の上に乗ってきたんだ。俺は何もしてないぞ」


伊織「じゃあその手を止めなさいよ!この変態!」


貴音「分かりますよ。響もこの“なでごこち”が...なんとも離し難く...」ナデナデナデリコナデリコナデリナデリナデ


響「……ふわぁぁぁ……」フワァァ


小鳥(あれは…響ちゃんの愛すべきアホ顔ね……)


美希「ふーん。 んじゃあずさ、美希がナデナデしてあげるの!」


あずさ「あらあら、お願いしようかしら♪」クスッ


765P「しょうがないなぁ亜美は」ナデナデ 亜美「……Zzz……」ナデラレナデラレ
貴音「ふふっ、綺麗な髪ですね響」ナデリコナデリコ 響「ふわぁぁ…」アホガオ
美希「ミキもショートにしよっかなー」ナデナデ あずさ「美希ちゃんならきっと似合うわ」ナデラレナデラレ






伊織(な、なによこの状況…! 律子…早く帰ってきて…!!)


765P「それで、これからのことだけど…」キリッ


伊織「さっきまでのテンションはなんだったの!?」


亜美「デコバルス君、静かにちたまえ」


伊織「あんた5秒前まで寝てたじゃない!あと何よデコバルスって!!」ピカーン


『961プロ協定計画書』


765P「…というわけで、961プロとの共演の機会が増えると思う」


伊織「本当に大丈夫なの?」


伊織「いくらLive×Aliveでは何もしてこなかったとはいえ……」


高木「君たちは、プロデューサー制の無かった961プロに、新しくプロデューサーが就任した話を覚えているね?」


あずさ「ええ…モンデンキントとわんつ→ているずをプロデュースしている方ですね」


高木「そのプロデューサー君が765プロとの友好を求めているんだよ」


貴音「わたくしと響は、以前にお会いしました」


響「ただアイツの実力が無いから、人気のあるウチと組んで仕事を増やしたいだけなんじゃって思うけど」


765P「確かに、何も考えずに受け入れるのはまだ危険だ。でもな、あいつは悪い奴じゃなさそうだぞ」


765P「…過去をチャラにしてやるとは言わないが」


亜美「……でもさ、真美は全然悪くない人だって言ってたYO!」


亜美「きっと大丈夫だと思うZE!」


伊織「分かってるわよ……私達だって信じたくないわけじゃないわ」


765P「まあ、共演したりするときは、俺が出来るだけ一緒に行くからな」


765P「それで、早速961プロからプレゼントが届いてる」


美希「プレゼント?なになにー?」ワクワク


貴音「はて、甘いものだと丁度良いのですが」


響「貴音、食べものじゃないと思うぞ……」



765P「フェアリー、“オーバーマスター”“KisS”。新曲だ」


765P「竜宮小町にも、“ムーンライトラビリンス”を」



伊織「さすが大手ね!新曲だなんて斬新だわ」


765P「………」


――とある一幕



765P「じゃあこれ、“Little Match Girl”と“Honey Heartbeat”、“キラメキラリ”」


961P「“オーバーマスター”“KisS”“ムーンライトラビリンス”です」


765P「で、961プロと楽曲シェアしたら、こっちの条件……」


765P「高槻さんがキラメキラリを踊っている所を録画してくれるって話だったな?」


961P「そんなこと言ってないです」


765P「ああ?業界の先輩に逆らうとは、良い度胸じゃねえか?」


961P「そっちが“高槻さんに歌わせたい曲があるから”ってオファーしてきたんでしょ」


765P「チッ、冗談の通じねえ野郎だな」


765P「……“Honey Heart Beat”は真美ちゃんが歌うようにな」


961P「はいはい……」


―――――

―――




あずさ「大人っぽい曲ですね…私気に入りました!」


美希「ミキ達の名前が歌詞に入ってるの!すごいねー!!」


765P「おう、良かったな」


765P(...言えない。個人的な興味で無理やり交換させた楽曲だなんて)


―――――

―――




―――新しい日常が始まろうとしているのは、961プロも同様である。

今日はメンバーが集まり、今後の方針についての指示が行われていた。

ただ、ある一人だけは、姿を見せていなかった……


961P「今日も春香は来ていないか……」


真「……ほっときゃそのうち来るさ」



雪歩「プロデューサー、これからの話ってなんでしょう?」


961P「ああ、みんな聞いてくれ。 961プロ主催『わんつ→ているず・モンデンキント』オールスターライブが決定したんだ」


真美「兄ちゃんほんと→!?」パァァ


やよい「それって、みなさんの前で、何曲も歌えるってことですよね!」


961P「それから、やよい。冠番組が決まった」


やよい「えええっ!?」


真美「おおぅおめでとう!やよいっち!」


961P「真美もいろいろな番組からオファーがきてるぞ」


真美「おおっ!?」


やよい「やったね、真美!」


「「はいたーっち!…いえいっ!」」パーンッ


961P「雪歩と真には、いくつかオーディションを受けてもらおうと思う」


961P「個人の課題を少しずつクリアしていってほしいんだ」


雪歩「……はい!」


961P「それから俺のことも少し伝えておこうと思う」


961P「俺は一年後にハリウッドへ飛ばされることになった」
     

961P「一年でみんなを立派なアイドルにできなかったら、それすらなくクビになる」


やよい・真美「「ぇええーっ!?」」エエーッ!?


961P「ゆっくり進めようと思っていた765プロとの協定も急ピッチで進めている」


961P「それで仕事が増えたっていうのもあるな。やよいのやつも水瀬さんと二枚看板の番組だし」


961P「来年、俺はいなくなってしまう…だからみんなにもついてきてほしい。大変なのは重々承知だ」


雪歩「プロデューサー……私達がふがいない所為ですか…?」


961P「俺がみんなと向き合うのを怠ったから招いた結果さ。だからこの一年、死ぬ気で君たちをプロデュースする」


961P「今日がまた新しい、俺達のスタートだ!」


真美「兄ちゃん…」


やよい「プロデューサー…」


961P「ごめん、話がそれたな。それで、千早のことだけど……」




961P「千早はソロデビューすることになった」


―――――

―――






―――― 千早 決意編 ――――




そのとき私は、三浦あずさのシングル『眠り姫』を歌っていた。
プロダクションのレッスンスタジオの中で、CDに収録されているカラオケの音楽に乗せて。


素敵な曲だと思った。もし765プロにいたら私が歌っていたのかな、とも思ったけれど、
三浦あずさのような人を惹きつける笑顔もスタイルも歌声も無い私には、到底考えられない話だ。


『――いつまで一人で歌っているの?』


声が聞こえた気がして嫌な気分になる。

私はただ、思いっきり歌いたいだけなのに。



あのそら、みーあーげてーーーー!!




パチパチパチ…という音に気付いて私は振り返ると、控えめな拍手の主と目があった。


961P「モンデンキントの如月千早さんですね。私はこれからプロデューサーを担当する961Pです」
     

961P「勝手にスタジオに入ってしまってすいません……挨拶だけ済ませて退散しようと思ったのですが…」


モンデンキント、という言葉を久しぶりに聞いた気がする。
日を重ねるごとに、私達の間でその単語はタブーと化していったからだ。


961P「あまりにもすばらしい歌声だったので……如月さん」ニコッ


千早「私のことは千早と呼んでくださって結構です。私…名字で呼ばれるの嫌いですから」ムスッ





それが私とプロデューサーの始まりだった。


プロデューサーは私達との対面のとき、ちょっとしたプレゼントを持ってきていた。

961P「これは、モンデンキントの最初のファンである自分からのプレゼントです」

そのとき私は、この人はまったく961プロのカラーには合わない人だと確信した。



それからモンデンキントはすぐにデビューを遂げた。
あまりにも待ち焦がれていたステージだったため、私もみんなも、おかしなテンションになっていたと思う。


デビューしてからは、新しい世界の連続だった。


ずっと961プロの中にいたせいか、全てが新鮮に思えた。


プロデューサーは最良の方法を模索しながら、常に私たちを導いてくれた。


たくさんのイベントや営業をこなしてきた。


しかし日々を重ねるにつれて、少しずつ、私たちの歯車はずれていった。

通じていた気持ちが届かなくなり、想いが言葉にならず、分かりあえない。

いや、本当は分かりあおうともしていなかったのかもしれない。

船が沈んでいくのを、ただ黙って見ているような、そんな日々が多くなった。

1です。ちょっと休憩します(_ _)また明日の朝に再開させて頂きます。


Live×Aliveを機に、私たちは完全に沈黙した。


竜宮小町に非情な差を見せつけられ、全国にレベルの違いを晒してしまった。


ユニットの空気が最悪でも、プロデューサーは気丈に振舞っていたけど、空元気だというのがすぐに分かった。


そして春香は、961プロに来なくなってしまった。


プロデューサーはそれから、私に「モンデンキントを守ってほしい」


と言った。


私をソロデビューさせて、表舞台にいさせることで、


モンデンキントがステージに帰ってこれるようにしたい、ということらしい。


私にとっては願ってもないチャンスだった。


―――――

―――




ソロデビューのステージを終えた私に、プロデューサーはプレゼントをくれた。


961P「千早、デビューお疲れ様。これはちょっとした記念に……」


デビューしただけでお疲れ様とはなんなのだろう。一体何の記念なのだろう。 ……言わないけど。


プレゼントは機械式のカメラだった。私にはデジタルと機械式の違いは良く分からない。
ところどころに傷みや色あせた部分があるから、プロデューサーの物だったのかと聞いたら、


961P「カメラの分解が趣味でね。動かなくなった機械式のカメラを安く譲ってもらって、それを直すのが好きなんだ」


961P「だからこのカメラは、譲ってくれた人と修理した俺の思い出がつまってる」


私のプロデューサーは良く分からない。それはデジタルと機械式の違い以上に。
写真を撮る前から思い出のつまっているカメラを渡されても、正直反応に困るわ。


961P「そのカメラを直すのには半年かかったよ…」ハハハ


千早「私がそんな大事なものを頂いていいんですか?」


961P「いいんだ。繊細なものは千早によく似合う」


961P「それにもう、分解はしないって決めたから……手元にあると分解したくなるし」


961P「あ、でもそのカメラの調子が悪くなったらいつでも言ってくれ」


千早「どうしてやめてしまうのですか?」


961P「カメラ以上に直すのが大変なものもあるって分かったから……」ハッハッハ



答えになっていない気がするけど……



そのあと、プロデューサーとたくさん話をした。
アイドルのことが殆どだったけど、カメラの分解の鉄則の話も聞いた。


961P「分解の鉄則その一、直すためには分解しなければいけない」


千早「とても当たり前のことを言っている気がします」


961P「分解の鉄則その二、パーツをひとつひとつ丁寧にチェックする」


千早「それも特に斬新ではないですね」


ソロデビューしてからは、とても忙しくなり、961プロにいることが少なくなった。


雪歩や真には会えないけれど、二人もそれぞれ頑張っているのだろう。


それに今は、まだ会う時ではない。


プロデューサーがあの二人を立ちあがらせるまで、しばらく別々の道を行こう。


―――――

―――




今日は久しぶりのオーディションに挑む。


参加者を確認したところ、トップレベルのアイドルが揃っているようね。


特に……765プロの星井美希……


ニュージェネレーションとの特別共演企画。その枠を狙って、粒ぞろいの闘いが始まった。


審査員「オーディション通過は、7番です。それ以外の方はお帰りください」


ザワザワ……


961P「やったな千早!これだけのトップレベルがそろうオーディションで……」


千早「ありがとうございますプロデューサー!大きな一勝ですねっ!!」



美希「………」


765P(モンデンキントの如月千早…か。ソロデビューしてから急成長したな……)


美希「むーっ!プロデューサー!」


765P「どうした、美希」


美希「なんでミキが一番じゃないの!?今日ミキはカンペキだったよ?」


765P「俺が読みを間違えたんだよ……美希ならヴィジュアル面ゴリ押しでいっつもいけてたのに」


765P「今日はあの歌のお姫様がツイてたみたいでな……」メンボクナイ


美希「ミキは納得いかないの!」


美希「……一緒に歌いたかったなぁ……未央たちと」ナノ…


モバP「初めまして。CGプロでアイドルのプロデューサーを務めています。モバPといいます」


千早「961プロダクションの如月千早です」


千早「この度は、ニュージェネレーションさんとのご共演の機会をありがとうございます」ペコリ


モバP「ふむ……如月さん、よかったらウチでアイドルやりませんか」


千早「………えっと」


卯月「プロデューサーさん、千早ちゃん困っちゃいますよっ!」


卯月「すいません、プロデューサさんが突然スカウトするのは珍しいことじゃないんですけど…」アハハ…


卯月「他の事務所のアイドルに手を出すのはダメですよ!」


モバP「出来心だ」キリッ


卯月「……えい!」チョップ!


モバP「」


卯月「千早ちゃん、よろしくね!最高のステージにしようね!」


千早「はい!よろしくお願いします、島村さん」


モバP「……君を見ているとニュージェネレーションの初期を思い出すな」


卯月「凛ちゃんとちょっと似てる雰囲気があるからかもですね!」


千早「……?」


モバP「凛と卯月、未央はCGプロ黎明期からいるアイドルでね」


モバP「ニュージェネが結成される前から、ずっとCGプロの看板として活躍してきたんだよ」


モバP「でも、凛は特に早熟だったから、誰かとユニットを組むにはバランスが取りにくかった」


卯月「それがね、ある時、凛ちゃんは私たちに『二人が、もっと実力をつけたら、絶対にユニットを組もう』って」


卯月「ずっと待っていてくれたんだ。私たちが成長するのを」


モバP「今の如月さんも……誰かを待っているんじゃないかな?」


千早「……はい。モンデンキントは、私の大切な…居場所です」


モバP「居場所、か」


千早「今は、少し……進む道を失っていますが…」


卯月「……きっと取り戻せるよ。千早ちゃんなら」


卯月「私たちも、少しでもモンデンキントの復活に貢献できたらいいな」


千早「とても嬉しいわ、島村さん」


卯月「う、卯月でいいです……」エヘヘ


私は、ソロデビューを遂げてから気付いたことがある。


私たちは決して一人ではないということ。


ソロで舞台に立っているとしても、それは決して一人の力で立っているのではない。


今までのたくさんの経験や、出会った人のおかげで舞台に立てているのだ。


それでも。


これからは私一人の力が鍵になる。


どれだけ、私が輝きを放つかが、モンデンキントを守るために重要だ。


……誰の助けも借りず、


たった一人でも、明日へ歩きだすために。


千早「……私は待っています。モンデンキントのみんなが戻ってくるのを」


千早「そして、またひとつになれる時を……」


モバP「その時はきっと遠くないはずだ。如月さんという光が輝いている限り」


モバP「他のメンバーも、その光を目指して、迷わないはずだから」


卯月「なんだか千早ちゃんのプロデューサーみたいですね」


モバP「焼きもちか卯月」


卯月「どう解釈したらそうなるんですか……」



―――――――

――――

――


千早は歩き出す。



それは仲間たちの標となるための歩み。



モンデンキント再生へ向けた、最初の一歩……


961P「千早、ニュージェネレーションさんとのコラボも楽しめるといいな」


千早「はい。つかみ取ったこの機会が、私にとってかけがえのないものとなるように」


千早「そして、彼女たちと、再び共に歩けるように…想いを込めて」


千早「全身全霊で、歌わせて頂きます」




千早 決意編 終わり



――――――――

――――





EXTRA STAGE


はーい、ミキなの。

最近はお仕事ばっかりだったから、今日はひさびさのお休み。

せっかくだからって、お昼寝もせずに街に遊びに出かけたんだけど…



黒井「ほう、無防備に一人歩きとは、お前の事務所は不用心だな」


変装してたのに、ヘンなおじさんにバレちゃったの。


黒井「低レベルな事務所ではサボりもお咎めなしか」


美希「今日はお休みなの」スタスタ


黒井「そういえば、千早に敗れたそうだな」


美希「……」ピタ


黒井「素材はまったく素晴らしいものだというのに、それを生かしきれない事務所は罪なものだ」


黒井「まともなプロデュースを受けてさえいれば、IAどころか世界も目指せるだろう」


美希「プロデューサー以上にミキを分かってくれている人はいないよ」


黒井「そう思い込んでいるだけだ。本当にあの男は優秀なのか?」


黒井「逸材揃いのフェアリーが、小娘のプロデュースするユニットに敵わないのは何故か考えないのか?」


黒井「全てあの男が無能だからではないか」


美希「うるさいの。ミキ、もう行くね」


黒井「……現状で満足か?そのままでは、帰って来た秋月律子に失望されるのではないか?」


黒井「星井美希、お前が望めばもっと高みを目指せるのだぞ」


美希「何が言いたいか、よく分からないって感じかな」


黒井「……我が社へ来い。お前の可能性を見届けてやる」



美希「あきれたなの。路上でスカウトなんて古すぎだって思うな」


黒井「これはこれは不覚にも失礼なことをした」



美希「もうちょっと昔だったら考えてあげないこともなかったよ」


美希「今は、ミキが一番輝ける場所は……みんなのいるところだから」


黒井「……才能を腐らせて、後悔するんだな」フッ



美希「ミキがいちばんキラキラ出来る場所は……765プロだもん」




美希「そうだよね……プロデューサー」



―――――――

―――――

――




―――― 雪歩 誠心編 ――――




時は、千早のデビュー直後。


あるオーディション会場に、不安と緊張の入り混じった表情の雪歩がいた。



―――――――

――――




私はなんでここにいるんだろう。

この場所に相応しい人がたくさんいるはずなのに。


そんな考えがアイドルになったとき、

ううん、アイドルになる前からずっと心の片隅にある。



だから、今日のオーディションでの失敗は、いつか起こるべきものだった。


一人の私に価値などない。 私は千早さんの後ろにいるべきだから。


961P「落ち着いて、いつも通りで大丈夫だからな!」


雪歩「はい……やってみます」


<6番さんスタンバイお願いします。


961P「あまり、力みすぎないように」


雪歩「行ってきます」





雪歩「6番、萩原雪歩です。よろしくお願いします」



―――――――

―――




プロデューサーが千早さんのソロデビューを告げた時、

私は彼が言っていることを理解できなかった。




961P「千早以外の誰がモンデンキントを守れるんだ」


雪歩「でもそんなの私は望んでいない!勝手なこと言わないでください!!」


千早「雪歩、私達は今のままじゃ前に進めないわ」
   

千早「お互いのためにも、ファンの方々のためにも、この期間は必要なの」


雪歩「千早さん……!? どうして……私たちずっと…」


961P「雪歩、これからも一緒に活動するために、大事なことなんだ」


雪歩「私は嫌ですっ!」


961P「それでも……今の雪歩は、千早と同じステージに立たせてあげられない」


雪歩「……っ!」


961P「もっと、雪歩が自分と向き合わなくちゃだめだ」


961P「この先を見据えて。このままじゃ、千早との距離が開くばかりだぞ」


雪歩「………はい」



――――――――

――――

――


オーディションのステージに立つ。


いつもと違う景色。隣にいた千早さんがいない。春香さんがいない。


私は……私は……どうしたら……


Vo審査員「あの子、961プロの子にしては、まったく尖ってない子だったわね」


Da審査員「なんつーか、しっくりこないんだよ。何も届かない」


Vi審査員「華がありそうな子だと思ったんだけどねぇ」


オーディションの結果を聞いたプロデューサーは、少しだけ悲しそうな顔をしていた。


でも、私の顔を見るなり、穏やかな表情を取り繕って、私を労う言葉をかける。


それがたまらなく辛い。


黒井社長のように叱り飛ばしてくれたらいいのに。


社用車の後部座席の私に向かって、プロデューサーが話しかけている。


961P「なぁ雪歩。今はさ、雪歩がアイドルをやってる理由が見えにくくなってるのかもしれない」


961P「でもな、ファンのみんなの前に立てば、きっとその理由に気付けると思う!」


ファン?ファンって何だっけ……



961P「これからはどんどん雪歩の売り込みを増やしていこうと思うんだ」


やめて……私がアイドルなんて、誰も期待してないんです……


961P「雪歩がすっごいアイドルになって、モンデンキントのみんなをびっくりさせてやろう」



やめて……


雪歩「……やめてください。そういうの、反吐がでます」


自分で自分をコントロールできない。


最低だ。


―――――――

――――

――


あんなことを言ったのにプロデューサーは変わらずに接してくれる。


その姿を見て私はますます自己嫌悪に陥っていく。


進退、という文字が頭の中にぼんやり霞んで見えはじめた。


誰かが囁いている。


「もういいじゃないか……所詮モンデンキントのお荷物だったのだから」


たくさんの人を笑顔に。


それができる存在になりたいと願っていた時期が、私にもあったかもしれない。


……あったはず。


でも、私には無理だった。


私には…私には…私には……



できない



――――――――

――――




私とプロデューサーとの営業が始まった。


あのオーディション依頼、プロデューサーと上手く話せない。


プロデューサーは一体何なんだろう。どうして私にこんなに優しくしてくれるんだろう。




961P「今日はまずイベントのキャンペーンだ。白雪姫になるぞ雪歩!」


それから午後はデパートの屋上でミニライブをした。


モンデンキントのCDも売り出したけど、千早さんの功績か、少しは売れたみたい。


私のファンは、今日いたのかな...いるわけないか、私のファンなんて。



961P「お疲れ様、雪歩。初日はひとまず成功って感じだな!」


961P「おっと、やよいと真美の現場を見にいかなきゃだ」


961P「今日はこれで……明日もよろしく!」ダーッシュ


夜、プロデューサーからメールが来た。


『雪歩、今日はお疲れ様! 明日はCDショップでトーク参加だ(^O^)/』


プロデューサー、千早さんも春香さんも真さんもわんつ→ているずも見ているのに……


私はこのまま、負担になり続けていて


それで、いいのだろうか。



――――――――

――――




営業に集中し始めてから、始めの一週間が過ぎた。


今日は握手会の予定だった。


プロデューサーと現場に向かう道中。


雪歩「あの、プロデューサー」


961P「ん?」


雪歩「私、もういいんです」


961P「いいって…?」


雪歩「もう、これ以上みなさんに迷惑かけられない」


雪歩「こうしてプロデューサーやモンデンキントの足を引っ張るぐらいなら……」


961P「どうした……急に」ポカン


雪歩「……アイドル、辞めた方がいいのかなって……」


961P「そんな訳ないだろう。俺たちには雪歩が必要なんだぞ」


雪歩「千早さんや…プロデューサーは……すごいです」


961P「……へ? 俺は別にすごいことなんか……」


雪歩「千早さんも、プロデューサーも…頑張って頑張って、答えをだせる人なんです」


雪歩「でも、私は……」


雪歩「失敗したらどうしよう、とか、嫌われたらどうしようって、怖がってばかり」


雪歩「一番大事な願いなんて、私にはかなえられっこない……」


雪歩「大事な人と、一緒にもいられない……」ウツムキ


961P「……必要なのは、ほんのちょっとの勇気と、強い気持ち」


雪歩「…はい?」


961P「前に春香に教えてもらったんだ。前を向くために必要なモノだって」


961P「雪歩だって、それを持ってると思うんだ」


961P「だって、これまで頑張ってきたから。ファンのみんなにだって、きっと通じる」


961P「応えてくれるさ。千早も、みんなも」


961P「さあ、いこう」スッ


差しのべられた手。


雪歩「………」


雪歩「………はいっ」ギュッ


961P(そう。怖がっちゃいけない)


961P(雪歩が本当に望む願いを叶えるためにも)


握手会が始まった。


みんな、私に会いに来てくれたんだ。


どうしてだろう。


私は今までたくさんのみんなと会ってきたはずなのに。


今日は少しだけ、不思議な気持ち。


みんなは私を見てくれているのに、私はちゃんと、みんなを見ているの……?


握手会の前半が終わって休憩をとっているときだった。



961P「雪歩、ファンのみんなをもっとよく見てごらん」


961P「よく見るっていうのは、 みんながどんな表情をしているか…」


961P「どんな想いで雪歩と握手しているのかを見てみるってことだ」


961P「そしたら、雪歩はどれだけのファンに支えられてるかが分かるはずだ」


どういうこと?


961P「いま雪歩が一番大事にしなきゃいけないのは、千早との繋がりでも、俺の面子を立たせることでもない」


961P「ここにいるファンのみんなと雪歩が一緒に楽しむことだ」


楽しむこと……?ファンの皆と……? でも私のファンなんて……


じゃあ、今ここにいるのは誰のファン?千早さんの、春香さんの、真さんの…


そして、私のファンも……


961P「さ、笑って!いってらっしゃい」ニコッ


その後の握手会は何かが変わった気がした。


表情を見よう、話すことをよく聞いてみよう。そういった小さなことを気にしただけなのに、


目の前に立っているファンの皆が確かに違って見えた。


はにかむ小さな男の子


励ましの言葉をかけてくれるお姉さん


優しい笑顔のみんな……


私の手を包みこんでいく、たくさんの手。


冷たい手、温かい手


私は……この手を覚えている……


『雪歩、あなたと一緒なら私も心強いのだけれど……』


『私がアイドルなんて……でも、いろんな人の笑顔が見れるって、素晴らしいですよね』


『あら、やっぱりアイドルに向いてるんじゃないかしら』ギュッ


『ち、千早さん、その手は……』


『私が目指すのは歌手だけれど、あなたは絶対、素晴らしいアイドルになれると思うわ』


どうしよう……どうしよう……




私、この手を離したくないんだ




私を、支えてくれるこの手を




『さあ、いこう』  『………はいっ』




あの時と同じ……この手を……!!


――――――――

――――

――


「あの、プロデューサー……」


「なにかな」


「私、もう一度ちゃんと、向き合ってみます…。私と、それから、ファンのみんなと……」


「そうか、頑張れ。俺はいつも雪歩の味方だからな」


それから私は、たくさん営業をこなした。


小さな会場で歌ったり、時々雑誌のモデルをしたり。


自分とファンの関係を見直していきつつも、


どうして私がアイドルなのか、やっと、理由に気づけたと思う。


もっと沢山の笑顔を見るために、私は今日も頑張っている。




審査員「合格は5番よ。それ以外はお疲れ様」




雪歩「うそっ!?やった……!!」


961P「やったな、雪歩!!」




そして、憧れていただけの千早さんの背中にも少しづつ、近づいている。



――――――――

―――――

――


961P「雪歩、本当に強くなったよ」


雪歩「私が変われたのは……プロデューサーとファンの皆のおかげです」


雪歩「モンデンキントにも本当に感謝しています。ずっとダメな私を守ってくれてて……」


961P「もう“千早さんがいなきゃ……”とか言わないな?」


雪歩「あう…言わないですけど……」テレ


961P「はは、ごめん意地悪だったな」


961P「……よし」


961P「頑張った雪歩にプレゼントだ」


雪歩「プレゼント……ですか?」キョトン


961P「新曲、“Little Match Girl”だ。 千早とデュエットで売り出そうと思う」


雪歩「えっ……?」



雪歩「えぇぇぇええええ!!?」エエエエ!?


“Little Match Girl”は発売後、好調に売り上げを伸ばし、“ちはゆき”ブームがちょっとした話題になった。



961P「雪歩、これ」


雪歩「えーっと、CGプロの3rdオールスターライブチケット……?」


961P「その時間帯はオフだから、見てきなよ。タダでもらったから」ニコニコ


雪歩「……?わかりました。ありがとうございます」




雪歩 誠心編 終わり



―――――――

――――

――



Scene of Underground



「ねぇ、アイドルって何?」


「アイドルの頂点って何?」


「アイドルなんて嘘のかたまり」


「なんの意味もない存在よ」


「こんな世界に夢を見続けた所で、私たちにはなにも残らない」



「芸能界なんて、嘘と下衆な打算だらけの偽物が勝利する世界」


「アイドルなんて、夢や希望からもっとも遠い存在だわ」



「だから証明してやるのよ」


「アイドルアカデミーなんて、この私でも頂点に立てる」


「“くだらない馬鹿騒ぎ”だってね」


「……それを証明しなきゃ」



「私の夢は終われない」


朝比奈りん「モンデンキントかー。なんかこういうのいいね」


東豪寺麗華「挫折からの復活なんて、感動的じゃない」


三条ともみ「これからの活躍にも期待できると思う」


麗華「共に夢に向かう仲間と、それを支える人たちがいて……」


りん「努力と友情ねぇ~。いかにもってカンジ?」イヒヒ


ともみ「……だからこそ、アイドルには向いてない」


麗華「その通りよ。トップアイドルを本気で目指すヤツも、それを応援するファンも」


麗華「本当にくだらないわ」ニヤ



麗華「それじゃ、魔王エンジェルのプロデュースを始めましょう」



――――――――――

―――――

――




―――― 春香 復活編 ――――



時は遡り、Live×Aliveのステージバトル終了後。


控室の廊下に、伊織と春香の姿があった。


伊織「あんた、モンデンキントの天海春香ね」


春香「……そうですけど」


伊織「さっき、楽屋であんた達のステージを見たわ」


春香「……」


伊織「あんたのプロデューサーに言っといて。私達の相手がしたいなら、もっと本気できなさいってね」


春香「私達は本気だったよ!」


伊織「そう。あれが本気なら、あんたは目をそらしているのね。自分たちの問題から」


春香「初対面で不躾だね……」


伊織「わかってるんでしょ。万全の状態でステージに立ってないって」


春香「やめて……っ」


伊織「菊地真が周りを見ていないことも、萩原雪歩がファンを見ていないことも……」


春香「やめてぇっっ!!」


伊織「待ちなさい。 ……あんたは自分に嘘ついていいの?」


春香「…いやだよ!! じゃあ、じゃあどうすればいいのよ!?」


伊織「そんなもの自分で考えなさいっ!!」


春香「そんな……」


伊織「あんなステージをファンに見せて、竜宮小町とも張り合えなくて」
   

伊織「周りがどれだけ迷惑してるか考えなさいよ!」


春香「……だったらほっといてよ……私の気持ちも分からないくせに……」


春香「優しい仲間がいる水瀬さんには分かるわけないよ……」


春香「私と違って、ずっとずーっと早くからデビューして、トップアイドルにも近くて……」


伊織「このっバカリボン!!」ブンッ




律子「――伊織っ!?」タタタ…



――ピタッ!


春香「――っ!!」


律子(っと寸止めか。はたかなかったわね……冷静だわ。あの子)


伊織「トップアイドルが近かった……?ふざけんじゃないわよ…っ」


伊織「トップアイドルはいつだって遠かった……私はずっと追いかけてここまできたの!!」


伊織「トップアイドルを追い続けて『やっと』ここまできたのっ!!!」


伊織「あんたこそ……何もせずモンデンキントのそばにいただけじゃない!!違う!!?」



春香「……そんなこと……ッ……そんなことっ!」


春香「……うぅ……グスッ!」タッタッタ…


律子「どうしたのよ伊織……」


伊織「……あいつの言った通りに、ほうっておけばいいのにね。私も、馬鹿ね」


律子「あんたは熱すぎるから、行き過ぎちゃう時が心配だわ」ハァ


律子「……あの子、どうなるかしら」


伊織「さぁね……これ以上はあいつらの問題よ」



―――――――――

――――




真美「いきなりチョーキキューヨーって……はるるんどうしたの?」


やよい「春香さん、病気なんですか……?」


961P「大丈夫だ。必ず春香は戻ってくるから、少しの間、待っていてほしい」


961P(春香が……どんな想いで今までモンデンキントにいたか……)


961P(俺は、それを分かっていなかった)


961P(もう一度、春香が戻ってこれるように……)


961P(今出来ることは、なんだろうか)



―――――――――

―――――

――


私はずっとアイドルになりたかった。

小さいころから、公園で歌を教えているお姉さんに憧れ、

きらめく舞台で踊るアイドルにときめいていた。



だから961プロの候補生になれた時は、もう本当に嬉しくて。

アイドルとして活躍できるなら、東京に通うのも苦じゃなかった。




私はどんなことがあっても大丈夫だろう。

アイドルとして、たくさんの人を笑顔にする存在になれるなら、

765プロのみんなのように、頑張れるはずだから。




しかし、私を打ちのめした現実は、厳しいレッスンでも、過酷な営業でもなかった。


私が候補生になった時点では、961プロに候補生の子がたくさんいた。

この中の誰かとユニットを組むのかな、とか思いながら、毎日レッスンをこなしていた。


辛いことも、きついことも多かったけど、なんとか2カ月乗りきった。

そのころには、自分の限界を感じて961プロを去っていく子たちが大勢いた。

気がつけば、私と同じ時期に入った子はいなくなっていた。


そんな折に、黒井社長は、ジュピターとモンデンキントというユニットのデビューの話を持ち出した。


先輩の冬馬さん、北斗さんと、後輩の翔太君によるジュピター。

そして、同期の千早さん、雪歩ちゃん……と私。そして外部オーディションで選ばれた真ちゃんがモンデンキントに。

選ばれたのは正直驚いた。他の人よりアイドルとして勝っている部分なんてないと思っていたから。


デビューが目の前にきたのが嬉しかった。モンデンキントのためならなんでもしようと思っていた。

モンデンキント結成の時に撮った写真には、仲間に囲まれて笑顔の私がいる。



それからいろいろな問題があって、私たちのデビューは遅れてしまったけど……


それでも、プロデューサーさんのおかげで、ちゃんとアイドルになることができた。


毎日が楽しかった。歌って踊って。いつも誰かの笑顔がそこにあって……



でも……でも、あの楽しかった毎日は、もう……


<ピンポーン♪  ハルカー



プロデューサーがドアのインターホンを鳴らして私の名前を呼ぶ。


私は応じない。彼が去ったあと、会えばよかったかなと後悔する。


やよいや真美も、私の家を訪ねることがあった。


そのときはさすがに居留守を使ったりはせずに、


私は出来るだけ二人を心配させないように、笑顔を取り繕った。


私はどうしたかったのだろう。なんでこんなことになっちゃったんだろう。


―――周りがどれだけ迷惑してるか考えなさいよ!―――


水瀬伊織の言葉が突き刺さる。


きっと雄弁な彼女は知らないだろう。飲みこんでは腐ってしまう言の葉の苦さを。


そして恵まれた彼女が知ることはないだろう。仲間に気持ちの伝わらない辛さを。


居心地の悪いモンデンキントが大嫌い。



『私は、千早さんみたいに歌は上手じゃないし、真ちゃんみたいにダンスもできないし』
 
『雪歩ちゃんみたいに可愛くふるまえるわけじゃないけど……』

『アイドルになりたい気持ちはだれにも負けませんっ!』


過去の私の声がする。あなたの好きだったモンデンキントはもういないのに。



なにも考えたくない。なにも知りたくない。


また少し経って、予想外の来客があった。

ドア越しに聞くその人の声は、少し前よりだいぶ穏やかだった。



「春香、私はあなたに謝らなければならないの」


「貴方はずっとモンデンキントを繋いでいてくれた。春香がそこにいたからずっとモンデンキントでいられた」


「ソロで歌っているとき気付いたわ。モンデンキントは私の大切な居場所だって」


「貴方が帰ってくるのを、私も、みんなも待ってる」


「だから、お願い春香……戻ってきて……」


「千早さん…私のことは、ほうっておいてください。もう私は……みんなと上手く笑えない……!」



「ほっとかない……ほっとかないわ!」


「私も、雪歩も、真も、プロデューサーだって……みんな春香を待っているの」


「モンデンキントとしてもう一度ステージに立ちたいって、それが私達の願いよ」
   

「……待ってるから」


私の……私の本当の願いは……どこ?


鏡のに問いかけても、そこには灰色の自分が映っているだけ。



――――――――

――――

――


『お料理さしすせそ』 収録後




伊織「あの、ちょっといいでしょうか?」


961P「はい……って、水瀬さん。どうされました?」


伊織「その、961プロの天海さんは、いま……」


961P「春香は、ちょっと休養が欲しいとのことで、お仕事を休んでいるよ」


伊織「Live×Aliveの後から、ですよね?」


961P「ええ、まぁ…」


伊織「あの、突然こんなことをお願いするのは失礼だって、分かっていますが……」


伊織「……私を、天海さんに会わせてください」


―――――

―――




961P「ここが春香の家だけど……」


伊織「ありがとうございます。 ドアを開けるまでお願いしてもいいですか?」
   

伊織「その、私が呼んでもきっと……」



961P「……はるかー?すまん、俺だが、渡すものがあるから一瞬あけてくれー!」



<……


<ガチャ……


伊織「せいっ!」ガシッ


春香「っ!?」


961P「俺は車に戻るな。さっきのアレ、渡しておいてください」


伊織「ええ。ありがとう」


伊織「中、入るわね」


春香「えっと……」


伊織「あんた、ずっと何してたの?」


春香「………」


伊織「いつまでこんなとこに引き籠ってるのよ」


伊織「服も着替えないで、バカリボンがリボンしなかったらただのバカじゃない」


春香「……」ピク


伊織「あんたにとってのアイドルって、そんな簡単に諦められるものだったの?」


伊織「だとしたら、本物のバカよ!!」


春香「……っ!!」


ブンッ


ピタッ


伊織「なによ、結構元気じゃない」


伊織「寸止めには寸止めってワケ?いやみね」


伊織「そんなに体力余ってんなら、あんたにはまだやれることがあるでしょ」


春香「っ……水瀬さん……」


伊織「他のメンバーが頑張ってるのに、あんただけよ。変わろうとしてないのは」


伊織「これ、あんたのプロデューサーから預かって来たから、置いておく」


伊織「じゃ、帰るわね。勝手に入って悪かったわ」


春香「水瀬さん……その……」


伊織「礼を言われる筋合いはないわよ」


伊織「……あんたとはまた会いたいわ。今度はステージの上でね」



そのころの車内


961P「情けないよ……みんなと向き合うって言っておきながら、ドアを開くぐらいしかできないなんてなぁ」


水瀬さんが置いていったプロデューサーさんからの預かり物は、一枚のDVDだった。



―――再生


961P「よしっみんな歌うぞっ!」


雪歩「春香さん、見てますか?」ニコッ


真「天海、途中で停止するなよ」クスッ


千早「笑って!」


くり返す毎日は 止まること知らないから

悩んだり 泣いた時間も通り過ぎてゆく

楽しいことだけじゃないけど 私がんばってるからね

「笑って!」のメール くじけそうなとき いつも読み返すよ

今はときどきね 週末の報告 それよりも声が聞きたい 会いたいよ


私が好きだと言っていた、765プロの歌う曲……


プロデューサーさん…歌うの上手なんだな…


雪歩ちゃんも真ちゃんも、私のために歌ってくれたんだ…


千早さん、とても綺麗な声……


デビューしたばかりの頃を思い出す。


未来が輝いていたあの頃。


今なら、また頑張れるかもしれない。



私にはまだ、やれることがある。


「レッスン、行かなきゃ」


私は走り出す。


最高の未来へ、突き進む。



―――――――――

―――――

――


961P「あれ、春香どうしたんだ?汗だくじゃないか……」


春香「はぁ……はぁ……ぷ、プロデューサーさん……」ゼェゼェ…


961P「どうしたんだ……顔色がネイビーだぞ」


春香「これ、あ、すこし、マズイかもぉ。意識が…遠くへ………」


961P「はっ、春香っ!?」


―――――

―――





春香「あれ……ここは」


961P「お、気がついたか。勝手にレッスンスタジオに運んだぞ」


春香「えぇっ!?運んだって…」


961P「お姫様だっこで」


春香「ふぇぇ!」アタフタ


961P「びっくりしたよ。急に来て急に倒れるもんだから」アハハ


春香「すいません……引き籠ってたので、体力が……」


961P「大丈夫。ストレッチからゆっくり体づくりしなおそう」


春香「はい……って今からレッスンですか!?」


961P「え?そのジャージ着てるってことはレッスンしにきたんだろ?」


春香「そうですけど……ナチュラルに受け入れすぎじゃないですか?」


春香「私昨日までバックレてたんですよ?怒ったりしないのかなって……」


961P「なんだ、そんなこと気にしてたのか。こうして戻って来たんだから、大丈夫だろ?」


961P「なあ雪歩」チラッ


雪歩「春香さん……お久しぶりです」オズオズ


春香「雪歩ちゃん!」


雪歩「あの、今までモンデンキントでいっぱい迷惑かけてしまって……」


雪歩「やっと気付いたんです…私はファンの皆も、モンデンキントのメンバーも大事なんだって」


春香「えぇっ!?雪歩ちゃんなんか中身変わった!?何があったの!?」


961P「ははは!春香は時代に遅れてるだけだ」


春香「そんなぁ……」


雪歩「私、また春香ちゃんと一緒に歌ってもいいかな……?」


春香「もちろんだよ!私も、嬉しい!」


961P「雪歩も真も強くなったんだ。さぁ久々にみんなでレッスンしよう」


961P「おかえり、春香」


モンデンキントは二度目覚める。


一度目は耐えきれないほどの我慢の末に


二度目はメンバーの団結が刻まれる時に





真「ほら天海、水飲んどけ」スッ


春香「ありがとう、真ちゃん♪」エヘッ


真「……その、迷惑かけた。ボクも、この場所が必要なんだって分かったよ」


春香「真ちゃん……」


真「これからもよろしくな、天海」ウツムキ


春香「うんっ!よろしくね!」ニコッ


春香「そういえば今日は二人ともレッスンの予定だったんですか?」


961P「それがだな……勝手にイベントの仕事がキャンセルされてて……」


春香「えぇっ!?大丈夫なんですかそれ……」


961P「原因はよく調べておく。春香は心配しなくて大丈夫だから...」


春香「分かりましたけど……何か手伝えることがあったら、すぐに言ってくださいね!」


春香「それでですね…もし機会があれば、765プロの水瀬さんとのお仕事を、頂けませんか?」


961P「…水瀬さんにやよいとの番組の後に突然呼び出されて、何事かと思ったら、“春香はどうしているのか”って」


961P「Live×Aliveから事務所に来てないって言うと、春香の家に連れてけっていうんだよ」
     

春香「どうして、水瀬さんは、出会って間もない私をあんなに激励してくれたんでしょうか……」


961P「俺はその激励を聞いてないけど、水瀬さんが言うにはだな」


961P「アイドルを目指しているのに、前に進めなくて足踏みしてる春香がほっとけなかったんだって」
     

961P「あ、これ聞かなかったことにしといてな」


春香「……水瀬さんは私に教えてくれたんです。だから、ちゃんとありがとうを言わないと」


961P「やよいと真美と千早にもな。あいつらもすっごい心配してたぞ。やよいなんて仕事も上の空なぐらいだった」


春香「そうですね……ちゃんとみんなに、ありがとうを言います」


春香「プロデューサーさんも、ありがとうございました。あのDVD」クスッ


961P「ライバル会社の歌を唄うなんてのは我ながら大胆だったよ」アハハ


春香「私、ちゃんと決めました。もう目をそむけないって」


春香「モンデンキントのみんなで、絶対トップアイドルになるんだって!」


春香「もしかしたら、またぶつかっちゃったりするかもだけど」


春香「それでも、前を向きたいって思うんです」


春香「どんな逆境だって、わたしにはまだやれることがある」




961P(俺は君のプロデューサーになって、自分なりに頑張ったつもりだった)


961P(でも、まだまだみたいだな)


961P(……春香がもう、ひとりで悩んだり、転んだりしないように)


961P(モンデンキントを支えていきたい。そう思う)



それから、少しの時間が過ぎて……


961P「春香、お疲れ様。水瀬さんと上手くやれたか?」


春香「はいっ!もう伊織ちゃんとっても面白くて!」


春香「いまだに時々バカリボンって呼ばれるんですけど、それを照れ隠しにしているのが可愛いんです!」


961P「そうか、上手くいってそうでよかった」アハハ


961P「頑張った春香に…はい、コレ」


春香「……? あっ! わぁー!これCGプロの3rdライブのチケットですね!」


961P「その時間帯はオフになってるから、見てきなよ」


春香「いいんですか!?ありがとうございます!」




春香 復活編 終わり



――――――――

――――

――



EXTRA STAGE


はーい、みんなのアイドル伊織ちゃんよ。
まったく、こうして伊織ちゃんの活躍が見られるなんて、幸せ者ね。

なんなのその顔文句あるワケ?


まあいいわ。今日はお仕事じゃなくて、美希とお茶に来てるの。


美希に二人きりで話したいなんて、初めて言われたから、私も驚いたわ。


美希「ミキ、もうちょっとだけ、がんばりたいのになぁ~」


伊織「あんたがやる気出してるなんて珍しいわね」


美希「最初はもっと楽に~って思ってたけどさ」


美希「竜宮小町を見てたら、ミキも頑張ろうって思えて」


伊織「へぇ」


美希「でも最近は特に頑張るようなことがないの……」


美希「才能を腐らせる……」ボソッ


伊織「何言ってんの?」


美希「このままじゃ、でこちゃん達に差をつけられちゃうの」


伊織「そんなことないわよ。あとでこちゃんやめなさい」


美希「いおりん」


伊織「それもダメ!」


伊織「まぁ、好きなようにやってみればいいんじゃない?」


伊織「あんたがちゃんとプロデューサーに言えば、きっとどうにかしてくれるはずよ」


美希「今ね、ホントはよく分かんないんだ」


美希「ミキはただ、そのとき自分がしたいって思ったことを今までしてきただけで…」


美希「だから……」


伊織「じゃあOKじゃない」


美希「へっ?」


美希「どういうこと…?」


伊織「美希はね、まだ最初のペンギンってことよ」


伊織「この業界のルールとか、後のこと考えて身動きとれないなんて、らしくないもの」


伊織「したいことをする。それでいいじゃない、美希なんだから」


美希「伊織……ありがとう」


伊織「べ、別にあんたのためじゃないんだからねっ(棒)」


美希「でこちゃんがツンデレって割と後付けだと思うの」


伊織「知ってるわよ……なんでこうなっちゃったのかしら」ハァ…



――――――――――

―――――

――


ここは961プロ社長室。


961Pから不可解な出来事の事情を聞いた秘書が、社長への報告にきていた。


秘書「社長、不審な動きをしている社員がいる模様です」


黒井「私に報告するということは、凡事じゃないな?」


秘書「アイドル管轄より、“モンデンキントの仕事が一部キャンセルされていた”


秘書「…とプロデューサー961P氏からの報告です」


黒井「あいつめ、迂闊に触れまわれば我が社の恥になるというのに……」


秘書「いえ、961P氏は私にのみ報告したと…… 」


秘書「この件はおそらく、外部に情報を流出させている社員が……」


黒井「そんなことは分かっている」


黒井「謀反とは、私の部下もなかなかだな」


黒井「芸能界の悪事に対する風当たりが強いこのご時世に愚かな手を……」


黒井「おそらく黒幕は…身の程を弁えないガキだ」


秘書「961P氏に近い社員の警戒を強めます」


黒井「任せたぞ。私は黒幕に心当たりがある。そちらを叩こう」


秘書「社長ご自身が、ですか」


黒井「子供を躾けるのは大人の責任だ」クックック…




―――― 真 新生編 ――――



言ってしまえば、ボクたちは取り換えのきく代用品なのかもしれない。


アイドルに心なんて、無いのかもしれない。



ボクはいつも一人だった。


隣のおうちのお姉ちゃんはボクの憧れ。

かっこよくて、かわいくて、きらめく舞台で歌う、アイドル。


『真ちゃん、今日も応援してくれたのね。うふふ、ありがとう』


「うん!お姉ちゃんすっごくきらきらしてたよ!」


―――ボクも、お姉ちゃんみたいなアイドルになる!



そしてボクは、お姉ちゃんを追ってこの世界に飛び込んだ。


――×××プロ、悪夢のライブ!!――


――たった一人が台無しにしたステージ!!――


――すべては一人のミスで崩壊した!?×××プロ、どうなる!?――




『真ちゃん、私の代わりに……トップアイドルに……っ』

『大丈夫。真ちゃんなら出来るわ……私の夢の続きを、お願い』



それっきり、大好きだった“アイドル”のお姉ちゃんには会えなかった。


ボクはすべての時間を投げ打ってダンスレッスンやヴォーカルレッスンに取り組んだ。


オーディションの落選と通過を繰り返した。


そして、気付いた時には、誰も彼も置き去りにしていた。


頑張れば頑張るだけ、きっと他人とは分かりあえなくなっていくのだと、悟った。



こいつらは何も分かっていない。


ボク達は自分一人の才能を試す仕事をしているのだ。



―――――――――

―――――

――


時は、千早のデビュー直後……


ここはあるオーディション会場。


961P「久しぶりのオーディションだけど、コンディションはどうだ?」


真「別に。いつも通りさ」


961P「よし。それだけ言えれば問題ないな」ハハハ


オーディションなんてこれまで何回受けたか分からない。


大げさに溜息をついたり、こちらを睨み続ける審査員の怖さを、大半の人は知らないだろう。


ボクはもう、そんな冷え切った空気には慣れてしまったけど。



<4番さん、スタンバイお願いします


審査が始まっている


曲が流れている


動かなきゃ、でも体がいうことをきかない


スポットライトが暑い 汗をかきそうだ


体は動かない


失敗したらどうしよう


頭に浮かぶのはLive×Aliveのステージ


無様に転んで…モンデンキントは負けて


ボクが失敗したせいだ ミスしたから終わりなんだ


ボクはお姉ちゃんみたいにならない そうやって完璧を追求してきたのに


ステージが怖い


審査員「……ハァ。帰っていいわよ」


・・・・・・・・・ねぇあの子、大丈夫かしら?クスクス

・・・961プロなら突っ立ってるだけで勝てるって思ってるんじゃない?

・・・・・ああいうの、気分悪いから来ないでほしいな


961P「真っ!大丈夫か!?」


961P「すいません、今日は失礼します!」


真「ごめん、プロデューサー……」ボソッ


―――――――

―――




「イップス、ですか……」


「ええ。菊地さんの過去の出来事が彼女を制限しているのです」


「真……ごめんな。オーディションの前に気づいていれば……」


「とにかく、今後も続くようであれば、絶対にケアを怠らないことです」


「わかりました……」


ステージに立っているのはきっとお姉ちゃんだろう


ボクが歌ってと願っても、何も発さない


お姉ちゃん、歌って……



今度はボクがステージに立っている


千早が、天海が、萩原が、歌ってといっている


でもボクは動かない。動いてほしいのに……!


動け……動けよ!


真「動けよこのポンコツっ!!」ガバッ



真「……」ゼェゼェ


真(最悪な夢だ……)


―――961プロ



961P「真、今日はオフにするって言ったじゃないか!」


真「プロデューサー、次のオーディションはいつ?」


961P「それはまだ決めてないけど、真は少し休んだ方が……」


真「ダメだ……ボクは立ち止まってちゃいけないんだ!」


961P「真、ちゃんと話をしよう。俺だってあんな状態の真をステージに立たせたくない」


961P「焦らなくていい。たとえ失敗したって、俺は責めない」
     

961P「でもな、周りのことも自分のことも見失ってる今のままじゃ、いつか真が潰れるぞ」


真「ボクはボクだ!周りのやつらなんて関係ない!」


真「今までだって一人でやれてきたのに、周りが足を引っ張るから……」


961P「そこが分かってないって言っているんだ!!」


真「……っ!?」


961P「周りが関係ないだって?真がどれだけ皆に助けてもらってると思ってるんだよ…!」


961P「千早は今、必死に真たちの帰る場所を守っている!」


961P「春香はモンデンキントを繋ごうとした代償に潰れかけている!」
     

961P「Live×Aliveをネタに真を貶める記事を書こうとした記者を止めたのは黒井社長だ!!」


961P「そういう支えてくれている人達がいることも知らずに……」


961P「一人でやれてるなんて今後一切口にするな!!」


真「……なんで……そんな……っ」


961P「真はしばらくレッスンにする。見つめ直そう、自分と自分の『仲間』のことを」



――――――――

――――




『もしもし、765P』


『ちょっと頼みたいことがあるんだ』


『765プロに、こういう子、いなかったかな』


765Pは961Pの相談に対し「うってつけがいる」と答え、


そのアイドルの冠番組にゲスト出演しないか、と提案した。


961Pにとっては、願ってもない話だった。


そして、そのアイドルと961Pの挨拶兼打ち合わせの日。


765Pに指定された場所は、何故か中華料理屋。


961P(765P、選んだのはよりによってこの子か…適役なのだとは思うけど……)


961P(モンデンキントどころかわんつ→ているずもまだこの子とは共演してないしなぁ)


961P(こっちのこと、警戒してるだろうなぁ……あんなことした事務所だし)


961P(山の中に放り出して番組奪おうとするなんて、やりすぎだよ黒井社長)ハァ…


961P(っていうかなんで765Pはこの店を指定したんだよ)


961P(アイドルとの打ち合わせに中華料理屋って……センスが絶望的なのか…?)


<カランコロン♪


響「……」スタスタ


961P「我那覇さん、初めまして菊地真のプロデューサーをしています961Pです」ペコリ


響「じぶん我那覇響。よろしくおねがいします…“961プロ”のプロデューサー」ムスッ


961P(ああ、胃が痛くなってきた)ウゥ…


961P「ええっと、今日は来てくれてありがとう」ニコッ


響「…ウチのプロデューサーがどうしてもっていうから」ハァ


961P「は、はは……そっか…」


響「自分、この番組でまた961プロと共演する日が来るとは思ってなかったぞ」ボソッ


961P「あの、ジュピターのことは本当にごめんなさい」


961P「謝ってすむ問題じゃないけどっ! でもっ二度と961プロはあんな真似はしない!」


961P「だからどうか……真のために力をかしてくれないか!」


響「………」


響「……ぷっ」プルプル


響「…んふっ…ふふふ」


響「あっはっはっは!!」ゲラゲラ


961P「へっ?」キョトン


響「ごーめーん!ちょっとからかうつもりだったのに、面白くてつい!」アッハッハ!


961P(豪快に笑う子だなぁ……)


響「あはは、何もしないのはちゃんと分かってるよ!それにあんな昔のこともう気にしてないから!」


961P「えっとそれじゃあ…」


響「共演、頑張るからね!」


961P「ありがとう我那覇さん……!」


響「はー笑ったらお腹すいちゃった。食べよ食べよ」


961P「えっ」


響「なんだー?ごはん食べるからプロデューサーはここにしたんでしょ?」


961P(いや、よそのアイドルと食事したなんてバレたら俺はクビ……)


響「チャーハン!チンジャオロース!!」


響「おいしいなぁ♪」モグモグ


961P(765プロのアイドルって少し変わってるのかな…)モグモグ


961P(初対面の男の前ですごい幸せそうにシュウマイを食べるアイドルって)モグモグ


961P「……可愛いけど」ボソッ


響「えっ?なんか言ったか?」モグモグ


961P「いっいや、おいしいなって思って!」アセアセ


響「……だってさ。よかったな美奈子!」


961P「……?」



佐竹美奈子「えへへ♪たくさん食べてくださいね?」ヒョコッ


佐竹美奈子(ミリオンライブ!)
http://livedoor.blogimg.jp/sosyage/imgs/7/d/7d16ccc1.jpg


961P「ああっ!美奈子ちゃん!?」


美奈子「お久しぶりです!この間はお世話になりました」ペコリ


響「あれ、二人は知り合いなのか?」


961P「ウチのやよいの番組にゲストとして出てもらったことが……」


響「へぇ~そんなこともあるんだな」モグモグ


961P「えっ、てことはこの料理は美奈子ちゃんが?」


美奈子「はいっ!って言っても、調理師免許は持ってないので」


美奈子「これは商品じゃなくてお礼の範囲内です」ヒソヒソ


美奈子「お礼ですから、お代はいただいておりません♪」


961P「そんな、悪いよ。こんなにおいしいのに」


美奈子「……また961プロのみなさんと一緒にお仕事させて頂ければいいんですよっ!」ニコッ


美奈子「プロデューサーさん、おかわりいっぱいありますから!」



――――――――

―――――

――



ボクはずっと高みを目指してきた。

自分の力でここまで上がってこられた。

――そう、思っていた。そうでありたいと願っていた。


モンデンキントに入る前のことを思い出す。ひたすらに積み重ねた日々。
そこには辛苦はあれど、楽しい思い出などひとつもない。

それから、モンデンキントに入って、たくさんのステージに立った。
ラジオやテレビに出て、ボクたちにファンレターが届いた。
それは確かに充実した毎日だった。


でも、ボクがそれを壊してしまった。


ボクは這いあがれるだろうか。


再び上を目指せるだろうか。


分からない。ただ分かるのは、ボクにはこの世界しかないということ。


まだ、ボクの約束は終われない。


961P「真、明日は久々に仕事だ!」


真「プロデューサー、その……まだちょっとステージは…」ウツムキ


961P「大丈夫だ。歌ったり踊ったりはしない」


真「どんな内容なの?」


961P「…カニと戯れる仕事だ」ハッハッハ


真「カニと戯れる?あの、魅力的だけど、さっぱり意味が……」


961P「明日になれば分かるよ。おっと、雪歩の営業が終わるから迎えにいってくる!」ダーッシュ!


961P「また明日な!」


真「えっ……あっおい!!」



そして、収録当日・・・


ディレクター「よんっ、さんっ、にっ...」ドーゾ


●REC


響「はいさーい!我那覇響です!飛び出せ動物ワールド!」エヘヘッ


響「今週もどんな動物と出会えるか楽しみだぞー!」


響「それじゃあ元気に、探検開始―!」


響「おや~?あそこにいっぱいいるのは何かな~?」


響「あっ、あれはカニだ!カニが数えきれないくらいたくさん!」


響「そしてカニと戯れているのは……」



真「はいさーい!」


響「はいさーい!こちらは今日一緒に探検する、菊地真隊員だぞ!」


真「よろしくね!響隊員!」


響「よろしく!それじゃあさっそくカニの世界へ行ってみよー!」


休憩中・・・



響「ほら真、水飲んだ?」スッ


真「ありがとう、我那覇…さん」


響「さっきも言ったけど、響でいいってば」アハハ


響「自分、カニといっしょに遊ぶのは初めてだったぞ!」


響「それに、真のカニへの愛が伝わって、なんか収録も楽しかったし!」


真「……響は、みんなの気持ちが分かるんだね」


響「カニ太郎たちのことか?まあ、分かるってほどじゃないけど……」エヘヘ


響「こっちがよろしくねって思って近づけば、仲間になるのは簡単だよ!」


真「……仲間、か」


真「響にとっての仲間ってなにかな」


真「ボクは、よく分からないんだ」


真「自分しか見ないで、周りを見失って……気付いたら一人ぼっちになっていた」


響「……」ウーン


響「……自分もよく分かるよ、真の気持ち」


響「自分のことばっかりで、家族のことを考えないで…」


響「それで、一人ぼっちになったこともあったよ」


響「あの時は大切なことを忘れかけてたさー」


響「アイドル始めたときも、自分は完璧だって」


響「自分一人でなんでも出来るって、そう思ってたけど……」


響「フェアリーの二人がいなかったら今の自分はないって、今はそう思うんだ」



響「仲間ってね、一人じゃできないことを一緒に乗り越えてくれて」


響「助け合ったり、面倒かけあったりするものだと、自分は思うよ!」


響「真の仲間は、きっといつも真のことを気にしてるはずさー!」


真「気に、してる……ボクのことを……?」


響「うん!」


真「そうか……やり直せるかな、ボクは」


響「きっと大丈夫さ。それが真の本心なら」


響「それに自分は、今日から真の仲間だぞ!」ニコッ


真「ありがとう……響」



――――――――

――――

――


――それから数日後...


春香「ハァ…久々のレッスン…きつい…」ゼェゼェ


真「ほら天海、水飲んどけ」スッ


春香「ありがとう、真ちゃん♪」エヘッ


真「……その、迷惑かけた。ボクも、この場所が必要なんだって分かったよ」


春香「真ちゃん……」


真「これからもよろしくな、天海」ウツムキ


春香「うんっ!よろしくね!」ニコッ


一人では出来ないこと。


仲間となら出来ること。


ボクは生まれ変わる。そして、報いたい。


凡小なボクを支え続けてくれた、これまでの全てに……!


――そしてまた少し経って…



961P「真、はいこれ」スッ


真「このチケット、CGプロの3rdライブ、ですか?」


961P「見にいっておいで。きっとためになるから」


真「えっと、ありがとう、ございます」ペコリ





真 新生編 終わり


そして 真 覚醒編 に続く


――――――――――

―――――

ーー



Daily Scene


――――765プロ



765P「響、菊地さんとの収録は上手くいったか?」


響「うん!きっと真も大切なことを思い出してくれたさー!」


765P「そうか。ありがとうな。きっと響なら器用にできると思ってた」


響「自分完璧だからな!」


765P「そういえば、961Pと話してみてどうだった?」


響「思ってたより普通だった、かな。あ、でも一生懸命な感じ!」


765P「普通で一生懸命って……まるでしまむr あ゛ぁぁっ!」ビクッ


響「っ!?どうしたの?」


765P「……CGプロの全体レッスン見に来いって言われてたんだった」ダラダラ


響「えぇー?もうライブ近いんだから早く行ってあげないと!」


765P「悪い、ちょっと行ってくる!」ダーッシュ!


765P「奥に音無さんがいるからよろしく言っておいてくれ!」


響「はいはい、いってらっしゃい」


響「おーい、ピヨ子ー」


小鳥「あら、響ちゃん、プロデューサーさんと一緒じゃないの?」


響「実はかくかくしかじかで」


小鳥「大丈夫かしら、プロデューサーさん」


貴音「間に合うといいですね…」


響「あ、貴音もいたのか」


貴音「なるほど、961ぷろのアイドルと共演を」


響「仲良くするのは得意なんだぞ」


貴音「わたくしも先日、真美とやよいと場を共にいたしました」


響「961プロ、もう前みたいにズルいことしたりしないみたいだね」


貴音「ええ。正々堂々と向き合えるのは、わたくし達にとっても嬉しきことです」


小鳥「今じゃ、伊織ちゃんとやよいちゃんを始めとした共演のお仕事がたくさんあるのよ」


小鳥「ちょっと前までは信じられないようなことねぇ……」ニコニコ


貴音「これも、ふたりのぷろでゅーさーのご尽力の賜物でしょう」


貴音「わたくし達はこの絆を大事にしてゆかなければなりません」


響「やっぱり仲がいいのが一番だなぁ」ウンウン



響「これからはもう、誰かと争ったり蹴落としあったりするのが無いといいなぁ」ポツリ



―――――――――――

―――――

――


そして、シンデレラガールズプロの三度目のオールスターライブが行われる日。

961Pの手引き通り、事情を知らないモンデンキントの3人は一同に会すこととなる。


雪歩「あっ、真さん!」フリフリ


真「萩原、早いな。ボクが一番かと」


真「……もしかして、天海も?」


雪歩「春香さんはいま物販に並んでます」


真「……こうやって三人揃ったのに、千早がいないのはもったいないな」


雪歩「千早さんは大事なお仕事が入ってしまいましたから……」


春香「雪歩ちゃーん、おまたせー!」


春香「おっ、真ちゃんもおはよう!」


真「テンション高いな、天海」


春香「そりゃそうだよ!アイドルのライブだもん!」


雪歩「春香さん、始まるまでに疲れちゃいますよ?」クスッ


真「そうだ萩原、コレ」スッ


雪歩「これは…ケミカルライト。頂いていいんですか?」


真「振らなくても、持ってるだけで雰囲気が楽しめるぞ」


雪歩「ありがとうございます、真さん」エヘヘ



春香「………」Equip:桃・橙・青(電気棒)×2 浅葱(楓用) 赤(蘭子用) etc…



『大変お待たせいたしました』


『これより、シンデレラガールズプロ3rdライブを開催します!』



\ワァァァァァァァァァ!!!/ \Fooooooo!!/



――――――――――

―――――

――


事務所の先頭を走るユニット、ニュージェネレーションの高いパフォーマンスや、


世間を賑わせるアイドル達の、強すぎるそれぞれの個性を生かしたステージが披露されていく。


各々を体現した楽曲とのシンクロが、見る者の心を掴んで離さない。


そしてライブ終盤、突如流れだした前奏は、


その日のどのナンバーよりも、鮮烈に春香たちの心を揺さぶった。


―――― ~♪



春香(このイントロはっ!)


雪歩(まさかここにいないのは……)


真(ウソだろ……)


ライトオン!


千早「ぼくらはーなにーをさーがしてーいるのー♪」


\ワァァァァァァァ!!!!/ \千早ちゃんだぁぁぁぁ!!!!/




春香「千早さんだぁぁぁぁぁ!!!」ウオオオオ


卯月『僕らはどこへ向かっているの』 ~♪


凛『いつか君と描いていた夢が』 ~♪


未央『砂になって零れ落ちる前に』 ~♪


闇の中を彷徨って 光見つけたときに

僕らはやっと感じるはずさ もう迷わない未来を


今は、この広い世界を 変えることは出来なくても

きっと足跡は残るはずだから

手を伸ばしてみよう そこになにが待っていても

さぁ光求めて


卯月「紹介するね!ニュージェネレーションとの企画で、一緒に歌ってくれた千早ちゃんだよーっ!!」


千早「みなさん初めまして!如月千早ですっ!」


\フォォォォォォォォォォォォォォ!!!!/


凛「千早さんは、この曲のタイトルにもなっている、CGプロの企画『Searching』で」
  

凛「ミュージックビデオの出演や、コラボシングルを共演して頂きました」


千早「ここにいるみなさんは、CD聴いてくださいましたか?」


\きいたよーーーっ!!/


千早「ありがとうございます!」パァァ


千早「本当は私なんかがこのステージに立っていいのか分からなかったけど……」


千早「みなさんの暖かい応援を感じることができて本当によかったです!」


千早「それから、ぜひぜひモンデンキントのほうm」


未央「ちょっとちーちゃん!CGプロのライブでなにさらっと宣伝してるのさ!」


千早「……モンデンキンt」


未央「スルーなの!?」


\アハハハハハハ!!/\チハヤチャンイイゾー!!/


春香「」アゼン


雪歩「」アゼン


真「……また一歩リードされたな」




千早「私はこれで失礼しますが……お送りするのは引き続き、CGプロだけのライブです!」


\ドッ!/


千早「ぜひ!またライブ会場でお会いしましょう!!」



――――――――

――――




ゲストステージは暖かく迎えられ、千早は喝采を背にステージを去った。


その後もCGプロのアイドル達の活躍により、オールスターライブは大団円を迎えた。


春香「今日ね、ニュージェネレーションと千早さんのステージを見て、『くやしい!』って思ったの」


春香「本当なら、千早さんと一緒にあの場所に立ってたのは私たちのはずなのになぁ…! って」エヘヘ


雪歩「私も同じことを思いました……」


雪歩「モンデンキントで、今すぐにでもファンのみんなに歌を届けられたらいいのにって」


真「……明後日の復活ミニライブ、絶対、今までで一番のステージにしなきゃな」


春香「うん!出来るよ!」


雪歩「あんなに頑張りましたから!」エヘヘ



―――――――――

―――――

――



Scene of Underground


―――東豪寺プロ



りん「ただいま、麗華!」


麗華「あら、りん。“あの社員”はどんなことを教えてくれた?」


りん「○月×日にこの会場でミニライブだってさ。それもユニット復活の」イヒヒ


麗華「そ。あとでお礼をしなきゃね」


麗華「業界大手961プロの社員もこんなものねぇ。金で簡単に裏切るなんて……」


麗華「あの横柄な社長が歯ぎしりするのが目に浮かぶわ」アハハ


りん「麗華ってば、社員まで手を出すなんて、えげつないねぇ~」


りん「ってかやりすぎじゃね?」


りん「この前の菊地真のオーディションとかやばかったっしょ」


ともみ「……CGプロのプロデューサーに追い込まれる可能性もあった」


麗華「何も私が特別汚いってわけじゃあないわ」


ともみ「“この世界がこういうふうにできているだけ”、ね」




麗華「さあ、“負け犬”がこれ以上起き上がるのは目障りだわ」


麗華「潰しましょうか、モンデンキントを。二度と夢が見れないように」




―――― 真 覚醒編 ――――



時は春香の復活後。


長らくレッスンや営業に打ち込んでいた真に、


プロデューサーは再びオーディションの話を持ちかける。


モンデンキントがステージに戻るために残された課題は、


真のイップスの克服のみであった。


準備も万全に、オーディション会場へとたどり着いた真と961Pだったが、


そこには仕掛けられた罠が待ち受けていた。


961P「真……本当に大丈夫だよな?」


真「あれからレッスンも積んだし、それに……」


真「千早も、萩原も、天海も、待っている」


真「ボクが歌えるように、踊れるようになるのを」


真「だから、ボクは早く追い付きたい」


真「三人と一緒に……ステージに立ちたいんだ」


<10番から15番の人、移動してください


961P「そうか…よし、いってらっしゃい!」


961P「でも、結果はこだわらなくていいからな。あくまで真らしくやればいいんだ」ニコッ


真「うん、いってくる!」


―――参加者控室



ゴチャゴチャ


真(誰だ、鞄の中身ぶちまけたの……!)


麗華「どうしたの?」


真「あ…いや、大丈夫!」


りん「あっれー?この人モンデンキントの子じゃない?」


りん「ほら、地上波ゴールデンで派手に転んじゃったヒト」イヒヒ


真「……!」


麗華「ああ、無様だったからよく覚えてるわ」クスッ


ともみ「今日はまた転びにきたのかしらね」ボソッ


りん「うっわーともみったらヒドーイ☆」キャハ


真(耐えろ、ボク。こんなの昔はいくらでもあったじゃないか) ギリギリ


麗華「私の会社の記者さんにあなたの記事を書いてもらおうと思ったのに」


麗華「止められっちゃったみたい!残念だわ……」


ともみ「もうイヤなアイドルしなくていいようにしてあげようと思ったのにね」


<ガチャッ


多田李衣菜「結局ロックなオーディション選んでくれるって」


李衣菜「プロデューサーさんは私のこと分かってるなぁ」デヘヘ



麗華「……チッ」


麗華「ま、せいぜい上手く転びなさい♪」


<10番の方、どうぞー


真「どけ……」ガタッ


スタスタスタ…


李衣菜「頑張ってね、菊地さん」コソッ


真「……!」


多田李衣菜(シンデレラガールズ)
http://livedoor.blogimg.jp/deremasu/imgs/e/5/e5c9bd4b.jpg


麗華「さ、これでどうにかなってくれると助かるんだけどね」


りん「ともみってば、迫真だったよ~」


りん「ちょっと怖かったかも?」


ともみ「……まあね」


麗華「ステージ失敗の可能性は6割程度ってとこね」


麗華「邪魔が入らなければもう少し……」チラッ



李衣菜「……?」



真「10番、菊地真です。よろしくお願いします」



ボクの闘いが始まった。


~~~♪


よし、体は動く……


『ああ、無様だったからよく覚えてるわ』


余計なこと考えるな


『今日はまた転びにきたのかしらね』


今はダンスに集中するんだ


『せいぜい上手く転びなさい』


あ、足が、震えて……



……だめなのかな、もう……



…違う、こんなんじゃない。



『頑張ってね、菊地さん』


……ボクは


『今日から真の仲間だぞ!』


……ボクは……!  


『ありがとう、真ちゃん♪』



ボクはアイドルだ!なめんなよ!!


踊って!歌って!誰もが憧れるアイドルなんだよっ!!



―――――――――――

―――――

――


真は後半、目を見張る持ち直しを見せたものの、あえなく落選してしまった。


舞台裏には、真に声をかけようとする李衣菜が待っていた。


李衣菜「菊地さん、残念だったね…」


真「無様な結果さ」ハハ…


真「でも、ありがとう。多田の一言が無かったら途中で止めてた」


李衣菜「控室にいた人たち、なんか変じゃなかった?」


真「あいつら、同じユニットだよ。きっとボクを潰しにきてたんだ」


李衣菜「そんな、そんなのって……」


李衣菜「そんなのロックじゃない。私、ひとこと言いに…」


モバP「――落ち着け、李衣菜」


李衣菜「プロデューサーさん!聞いてたの!?」


モバP「菊地さん、このことは君もプロデューサーに報告した方がいい」


真「はい…」


モバP「何事も冷静に対処しないとな」


李衣菜「むー……」


真「ボクは大丈夫だから、ほら」


李衣菜「……それじゃあまた、菊地さん、今度は一緒にお仕事出来たらいいですね!」バイバイ


真「ああ。えっと…いろいろありがとう、“李衣菜”」


李衣菜「……気にするな! 頑張ってね、“真”」ウインク


モバP「オーディションお疲れ様。961Pさんや如月さんによろしくね」



―――――――――

―――――

――


オーディション会場の外。


モバPと魔王エンジェルが接触していた。


卑劣なやり口を用いる彼女たちを諭そうと、モバPは声をかける。


モバP「やはりなにか仕掛けているとは思ったよ……東豪寺プロ」


麗華「あら、これはこれはCGプロのプロデューサーさん」


麗華「いかがでした?“勝者の決まっているオーディション”は……」クスッ


モバP「…いいか、人生の先輩だから言うけど、 こんなことはもうやめたほうがいい」


りん「なにそれ?説得する気あるの?」イヒヒ


りん「あんたみたいなバカな大人がいるから、この世界は偽物だらけなの!」


りん「やたら数だけいるようなプロダクションで、偉くなったつもり?」


麗華「いい加減目を覚ましなさいよ。アイドルなんて存在に、夢を見ることは無価値だって」


モバP「アイドルは夢をみさせる存在だ。君がそんなことを言うべきじゃない」


麗華「あら、私たちがどういう人間か知ってて言ってるのかしら?」


モバP「ファンのみんなは君に夢を与えられている」


モバP「君がそんなことを言っているなんて知ったら、彼らは悲しむに違いない」


ともみ「私たちにはどうでもいいこと」


りん「くだらないよ。応援する方も。本気でファンのためなんて思ってる方も」


モバP「……じゃあ、なんのために君たちはステージに立っている」


モバP「ファンのみんなを思ってじゃないのか」


麗華「あいつらのために私が踊ってんじゃねえよ」


麗華「私の掌の上であいつらが踊ってんだよ」


麗華「ま、偽物の笑顔であれだけ喜べるなんて」


麗華「ある意味“幸せ者”かもね?」


モバP「……スゥ」


モバP「渋谷凛、島村卯月、本田未央…」


「「「……?」」」


モバP「小日向美穂、三村かな子、多田李衣菜、神崎蘭子、城ヶ崎美嘉、城ヶ崎莉嘉……」


モバP「中野有香、水本ゆかり、福山舞、椎名法子、今井加奈、持田亜里沙、奥山沙織、

    間中美里、緒方智絵里、五十嵐響子、柳瀬美由紀、櫻井桃華、江上椿、長富蓮実、横山千佳、
    関裕美、池袋晶葉、太田優、棟方愛海、藤本里奈、大原みちる、遊佐こずえ、大沼くるみ、
    一ノ瀬志希、前川みく、赤西瑛梨華、松原早耶、相原雪乃、宮本フレデリカ、小早川紗枝、西園寺琴歌、
    双葉杏、楊菲菲、桃井あずき、涼宮星花、月宮雅、兵藤レナ、道明寺歌鈴、柳清良、井村雪菜、
    日下部若葉、榊原里美、輿水幸子、安斎都、浅野風香、大西由里子、安部菜々、工藤忍、栗原ネネ、
    古賀小春、クラリス、佐久間まゆ、村松さくら、丹羽仁美、原田美世、白菊ほたる、早坂美玲、有浦柑奈」


モバP「黒川千秋、松本沙里奈、桐野アヤ、高橋礼子、相川千夏、川島瑞樹、神谷奈緒、上条春菜

    荒木比奈、東郷あい、水木聖來、佐々木千枝、三船美優、服部瞳子、木場真奈美、藤原肇
    新田美波、水野翠、古澤頼子、橘ありす、鷺沢文香、八神マキノ、ライラ、浅利七海、ヘレン
    松永涼、小室千奈美、高峯のあ、高垣楓、伊集院恵、柊志乃、北条加蓮、ケイト、瀬名詩織
    綾瀬穂乃香、佐城雪美、篠原礼、和久井留美、吉岡沙紀、梅木音葉、白坂小梅、岸部彩華
    氏家むつみ、西川保奈美、成宮由愛、藤居朋、塩見周子、脇山珠美、岡崎泰葉、速水奏、大石泉
    松尾千鶴、森久保乃々、アナスタシア、大和亜季、結城晴、望月聖、二宮飛鳥、鷹富士茄子、桐生つかさ」


モバP「高森藍子、並木芽衣子、龍崎薫、木村夏樹、松山久美子、斉藤洋子、沢田麻理菜、矢口美羽

    赤城みりあ、愛野渚、真鍋いつき、大槻唯、姫川友紀、喜多見柚、上田鈴帆、海老原菜帆、
    及川雫、小関麗奈、衛藤美紗希、メアリー・コクラン、星輝子、片桐早苗、堀裕子、西島櫂、
    的場梨紗、財前時子、相場夕美、野々村そら、浜川愛結奈、若林智香、仙崎恵磨、日野茜、
    諸星きらり、十時愛梨、ナターリア、相馬夏美、槙原志保、向井拓海、市原仁奈、杉坂海、
    喜多日菜子、北川真尋、小松伊吹、三好紗南、キャシー・グラハム、難波笑美、浜口あやめ、
    村上巴、土屋亜子、首藤葵、冴島清美、南条光、佐藤心、イヴ・サンタクロース」


モバP「はぁ、やっぱり多さを実感するな」


麗華「なんなのよ……!」


モバP「今のは現在CGプロに在籍するアイドル全員だ」


モバP「俺が全員をプロデュースしている訳じゃないが、でも」


モバP「みんな、シンデレラになれる可能性を持った…」


モバP「本物のアイドルだ」


麗華「それが何よ。身内自慢かしら」


りん「可能性があるからなんなの?そんなの結局、札束の前じゃ無意味じゃん」


麗華「そう、あんたのプロデュースなんてそんなものよ」


麗華「事務所の資本の大きさとプロデューサーの数にモノ言わせて仕事とってるなんて」


麗華「私達とやってることは変わらないじゃない!!」


麗華「アンタ達大人はねぇ!!結局札束で殴りあってるだけなのよ!!!!」


麗華「アンタの事務所のアイドルだってそうよ!!」


麗華「大人の卑劣なやり方に巻き込まれて!!」


麗華「この薄汚いサバイバルの中で何もかも奪われて!!」


麗華「ガラスの靴で苦楽を共にしたライバルの屍を踏みつけて嘲笑うの!!」


麗華「ああ、なんてくだらない夢を見ていたのかって!!」アハハ!


モバP「確かに、俺たちのやっていることはサバイバルゲームかもしれない」


モバP「それでも、夢は夢で終われないじゃないか」


モバP「俺だって、君だって、夢を見る。何度でもアイドルの魔法にかけられようとする」


モバP「その魔法が解けるまで、夢のその先までアイドルを見守ってやるのが俺の仕事さ」



モバP「CGプロのアイドルは、楽しい気持ちや優しい気持ちを人々に届ける」
 

モバP「みんなをドキドキワクワクさせる魔法を操るんだ」



モバP「いつか、君たちもそんな魔法が使えるようになるといいね」


麗華「―――っ!!」


麗華「私たちが! アンタのアイドルに劣ってるとでもいいたいのっ!!?」




ザワザワ…ドウシタンダ……??




りん「……麗華、ともみ、行こうよ。メンドクサイことになりそうだよ?」キョロキョロ


ともみ「そうだね。これ以上無駄な時間を使うことはない。行こう」


麗華「……っ」



麗華「見てなさい。私の作った虚像が頂点を獲って」


麗華「アイドルなんて存在の無価値を証明してあげるわ……!!」


モバP(……結局、俺にはどうすることも出来なかった)


モバP(魔王エンジェルの考えが全て間違っている訳じゃない)


モバP(それに、強制も、同意も、きっと意味が無いのだろう)


モバP(彼女たちにもプロデューサーがいれば……)



―――――――――――

―――――

――


真のステージ再起のオーディションを終え、


モンデンキントはいよいよ復活に向けての最終段階に入った。


長らくぶりのユニットでのレッスンや、ラジオ番組などの収録を重ね、


再び走り出すための準備は整った。



そして、モンデンキント復活のミニライブ当日。


961P(いよいよだな…)


961P(Live×Alive以来のモンデンキントのステージ)


961P(俺は、彼女たちと向き合えただろうか。彼女たちは、自分自身と向き合えただろうか)


961P(今日は、これまでの俺たちを試すステージになるだろう)


961P(信じよう。モンデンキントを。そして俺自身を)


―――リハーサル前 控室




真「みんな、聞いてくれ。ボクは今日まで、みんなに支えられて、ここまで来れた」


真「ボクは自分勝手に周りを省みないで、みんなの気持ちも考えないで」


真「モンデンキントを壊してしまった」


真「……それでも、みんなは手を差し伸べてくれた」


真「千早も、天海も、萩原も、本当にありがとう」


真「だから、このステージは……」


真「ボクの全身全霊をかけてみんなに応えたい」


春香「…真ちゃん♪」スッ


雪歩「真さん」スッ


千早「真!」スッ



――――さあ、手を。


真「天海……みんな……」スッ




春香「961プロー!ファイトー!!」


「「「「オォーーッ!!!!」」」」


リハーサル中、真の様子を伺う雪歩。


前回の失敗以来ファンの前に立っていない真は、


そのプレッシャーから、今にも恐怖に押しつぶされそうに、その細い足を震わせていた。


雪歩「真さん、大丈夫ですよ」


真「萩原……?」


雪歩「ミスしても、大丈夫です。私が絶対カバーします」


雪歩「歌だって、ダンスだって……」


雪歩「もし転びそうになっても、私の手を掴んでください」


雪歩「だから、いつも通りステージを楽しんでいきましょう」ニコッ


真「萩原、ありがとう……」


雪歩「いえ、そんな…」




961P「敵わないな、みんなには」ハハハ…


――――開演直前 舞台袖




961P「さ、後はみんなに任せるよ」


961P「久しぶりの再会だ。めいっぱい楽しんでおいで」ニコッ


\はいっ!/





真(聞こえる…ファンのみんなの声が)


真(みんなは、ボクのことを嫌いになっていないだろうか)


真(いや、きっと大丈夫……大丈夫だ)


<開演アナウンス入りました!



春香「あれ、真ちゃん?」


真「天海……」ドキドキ



春香「真ちゃん、いこ?」ギュッ


雪歩「みんなで一緒に」ギュッ


千早「さあ、行きましょう!」ギュッ


真(……!)


真(震えが、止まった……)



―――真ちゃん、怖がらないで


―――見て、サイリウムの海だよ


―――ほら、スポットライトだよ


―――懐かしいね、綺麗だね


―――自分がファンのみんなを見てないと


―――ファンのみんなも私を怖がってしまう


―――でも、私が笑顔なら


―――みんなも笑顔で応えてくれる


―――それだけのことなんですよね…


―――だから、歌いましょう


―――真、ステージで


―――歌おう!!私たちと!!!!



S.O.S 聞こえた  やっとあなたに聞こえた……





真 覚醒編 終わり



―――――――――――

―――――

――


ここで場面は一度巻き戻り、


CGプロ3rdライブの翌日、つまり復活ミニライブの前日。


やよいと真美を連れ、961Pは例の中華料理屋へと向かっていた。


―――例の中華料理屋



真美「……ねえ兄ちゃん、ここ裏口だよ?」


961P「アイドル連れてくるときはこっちからって言われててな」


やよい「大きなお店ですねー」ホアー


ガチャッ


961P「こんばんは……ってあれ」


横山奈緒「いやー私もわかりますわ」アハハ


貴音「ふふ、でしょう?美奈子が自転車に乗っていると、まるで出前のようです」


美奈子「ええ~!そんなぁ」トホホ


横山奈緒(ミリオンライブ!)
http://livedoor.blogimg.jp/jin115/imgs/a/4/a44800e7.jpg


961P「四条さんに、奈緒ちゃん?」ポカン


奈緒「ん?……あら、961プロのプロデューサーさん!」


貴音「お久しぶりです」


真美「なおなおじゃ~ん!お姫ちんも~!」ウヒョー


やよい「美奈子さんっ!?」ハワッ


美奈子「わ~!やよいちゃんこんばんは!」


美奈子「プロデューサーさん、本当にきてくれたんですね!」ワッホーイ!


961P「四条さんと奈緒ちゃんはなぜここに」


貴音「偶然ですよ。運命の巡りあわせですね」フフ…


やよい「初めまして高槻やよいです!」ペコリ


奈緒「横山奈緒です。キミがやよいちゃんやな、ほんまカワイイわ!」


真美「よろしくね、みなりん♪」


美奈子「こちらこそ、真美ちゃん!」


貴音「プロデューサー殿、明日はモンデンキント復活のみにらいぶと聞きました」


961P「そうなったのも、今日まで765プロのみんなが協力してくれたおかげかな」


貴音「謙虚ですね。 彼女たちはまこと良き笑顔になりました」


961P「これからもっと輝くさ。四条さんたち以上に」


貴音「わたくし達はあなた方の想像を超えていきますよ」フフ…


961P「えっ?」ビクッ


貴音「世迷言です。お気になさらず」クスッ


961P(四条さん…若干だけど雰囲気が変わった、かな…?)


奈緒「なーんかあのお二人さんええ感じやな~」ニヤニヤ


真美「ハッ!?ちょっと兄ちゃんそういうのだめだよ!」ベシッ


やよい「プロデューサー!口についてますよ!」フキフキ


961P「お、おう……」オロオロ



――――――――――

―――――

――



そして翌日。場面は再びモンデンキント復活のミニライブ会場。


961P「雪歩。いい感じだったぞ、場当たり」


雪歩「ありがとうございます」エヘ


961P「んで、こんなときにする話じゃないんだけど、見てこの写真」


雪歩「…? あっ初めて雑誌の表紙に乗った時の私ですね」


雪歩「…でも、なんだか色が薄くないですか?」


961P「実はこの写真撮った時にカメラが壊れててさ」


961P「で、半年かけて直して、昨日撮った写真がこれ」ピラッ


雪歩「うわぁ!綺麗ですね……!質感が普通の写真と違う…」


雪歩「あれでも、昨日のこの時、プロデューサーいなかったはずじゃ?」


961P「撮ったのは千早だから」ハハ…


雪歩「そういえば千早さん、カメラを持ってました!」


961P「すごい綺麗にとれてるだろ?これ」


雪歩「はい……カメラって直すとこんなに変わるものなんですね」


961P「ああ。直せてよかったよ、ホントに」


<リハーサルハイリマース!


961P「聞いてくれてありがとう。頑張ってな。」ポン


雪歩「はいっ!」


リハーサルが終わって、真は先刻まで一緒にいた雪歩の姿が無いことに気付く。


それを二人に訊くが、春香も千早も雪歩の居場所を知らなかった。


しかし、最終チェックまでには戻ってくるだろうと、無理に捜索は行わないとした。



そしてこれは、この会場のとある場所での一場面である。


麗華「さて、貴方たちの準備ももう済んだわね」


麗華「それじゃ、よろしく」


麗華「いきなり音響パーにして、ちゃぁんと台無しにしてあげて」


謀反スタッフ「ああ…」


りん「うっわー、麗華そこまでしちゃう?」イヒヒ


ともみ「………」


麗華「モンデンキント復活の舞台がお葬式会場になるなんて最高じゃない♪」



「そのやり方は効果的だが、いささかダメージが小さいな」


りん「誰っ!?」ビクッ


ともみ「…ッ!?」


黒井「私なら、ライブ中に主電源を落とさせる」


謀反スタッフ「黒井社長っ!?う、うわぁぁ!!」ダダダダ…


麗華「貴方ほどの重役が、どうしてここに?」


黒井「三流アイドルに私のハンサムな顔を知られているとは、不快だ」


りん「まずいよ、麗華ぁ…」


黒井「さーてブスども。話がある」


黒井「まさかこんな小娘が我々の仕事の邪魔をしようとは…」


黒井「この業界のルールなんたら以前の問題だ」


麗華「私たちは頼まれただけよ」


黒井「ほう…?」


麗華「……貴方達961プロのアイドルにね」


麗華「モンデンキントを終わらせてくれって」ニヤ


黒井「実に興味深い話だなァ?」


麗華「萩原雪歩に頼まれたのよ」


麗華「東豪寺プロに協力するから、このくだらないユニットを潰してくれってね」


黒井「……!」


ともみ「言葉もでないかしら」


りん「なんなら、彼女が流失させた書類なんかもあるから、見せてあげるケド」イヒヒ


ともみ「内部に攻撃されちゃ、世話ないわね」


麗華「貴方も可哀そうな人」


黒井「そうだったのか……」


黒井「その場しのぎにしてはなかなか面白い予防線だ」


黒井「なあ、雪歩?」


「「「っ!?」」」


スタスタ……

雪歩「残念でしたね♪」ヒョコッ


麗華「なっ!?」


雪歩「この前のオーディションの後、私の楽屋から出ていく朝比奈さんをみたんですぅ」


雪歩「私の書類をもっていきましたよね?今日はそれを返してもらおうかなぁって」


りん(うそっバレてた!?)


雪歩「それで社長についてきただけなんですけどぉ~ 私がどうかしましたか?」


ともみ(どうやら本当にマズイみたいね…)


黒井「今日のライブを邪魔するそうだが、どうしたい雪歩」ククク…


雪歩「そうですねぇ」ニコニコ




雪歩「殺します……モンデンキントのために」ギロリ


「「「――っ!!!」」」ビクッ


雪歩「…な~んて♪」エヘ


黒井(迫真だった)


雪歩「これは本当に久しぶりの活動で、私たちもファンのみんなも待ち望んでいたステージなんです」


雪歩「だから水を差したいなら」


雪歩「……命かけなさいよ?」


「「「  」」」ガクガク


雪歩「それじゃ、私はスタンバイしてきますね!」


雪歩「社長、お先に失礼します」タッタッタ…


黒井「ああ。いってらっしゃい」


麗華「知ってるわよ。961プロが765プロに散々イヤガラセをしていたことぐらい」


麗華「そんな真っ黒なあなたが私たちに説教する気なの?」


黒井「早とちりするな。私は聖者になったつもりはない」


黒井「我が社に損害を与える害獣を駆除しに来たのだ。ガキでなければ弁護士が向かっていたぞ」


ともみ(麗華、ここは早く切り抜けたほうがいい)コソッ


麗華「そう、分かったわ。961プロにはもう手をださない。これでいいわね」


黒井「……貴様らも仮にアイドルなら、もっと“有意義”に時間を使え」


麗華「……」ギリッ


麗華「お前が……くだらない偽物がアイドルを語るな……」


黒井「一理ある。だが961Pの育てたアイドルは本物だ」


麗華「うるさい!お前だって、利用できる物はなんでも利用して!!」


麗華「金と権力で戦ってきたんじゃない!!」


麗華「そんな汚いやり方で育てたアイドルが本物ですって……?」


麗華「ふざけんじゃないわよっ!!」


黒井「確かに、我が社のユニットは凡百の事務所のアイドル共より」


黒井「上を目指すにあたっては遥かに障害が少ないだろう」


黒井「……だがな、結局、金などの力では越えられない物があるのだ」


黒井「頂点に立つには、絶対的なアイドルの力が必要だと、私は言いたい」


黒井「私の駒にもかつて本物のアイドルがいたが……」


黒井「私のもとを去って行った。妨害、工作行為を嫌ってな」


黒井「私がしたことを、奴らは『余計な真似』と言った」


黒井「そう、奴らにとっては無駄だったからだ。本物には子細工など必要ない、と」


黒井「頂点に立つのは、そういった他の諸々の力を必要としない絶対的なアイドルだ」


黒井「……それでも、お前たちが本物のアイドルを否定したいなら…」


黒井「お前たちのやり方で立ちあがって見せろ、魔王エンジェル」スタスタ…


りん「いっちゃったね…」


麗華「結局なんだったのよ…!」


ともみ「……もう行こう、ふたりとも」



――――――――――

―――――

――


――――開演直前 舞台袖


961P「いよいよだな、千早」


千早「はい。やっと、またこの舞台へと戻ってくることができました」


961P「今日まで負担かけてすまなかったな」


千早「お互い様です……それに、このユニットを変えたのはプロデューサーの力ですから」


961P「俺だけじゃないさ。千早も含めて、関わった全ての人の力だ」


961P「誰か一人でも欠けたら、ここには立てなかった。そう思う」


千早「プロデューサー、直ったカメラは、これからどんな世界を映すでしょうか」


961P「……きっとこのステージみたいに、輝いた世界のはずだ」


千早「分解の鉄則その一、直すためには分解しなければいけない、でしたね」フフ…


961P「よく覚えてたな。“その2”はパーツをひとつひとつ丁寧にチェックする、だ」


千早「プロデューサー、私はモンデンキントを守りました」


千早「ですが、今日このステージで私のその役目も終わりです」


千早「しっかり見ていてくださいね。私が守り抜いたモンデンキントを」


千早「……そして、あなたが信頼した如月千早を」ウインク



961P「……みんなが千早を待ってる。行って来い」ポンポン


千早「はい//」カァ


961P「さ、後はみんなに任せるよ」


961P「久しぶりの再会だ。めいっぱい楽しんでおいで」ニコッ


\はいっ!/



そして、彼女たちはきらめくステージへ―――



――――――――――

―――――

――




かくしてモンデンキントは劇的な復活を遂げた。




―――――――――

―――――

――


モンデンキントの復活ライブから1週間後。

ここは765プロ。


小鳥「961プロのモンデンキント、いろんな雑誌でとり上げられていますね」


765P「ええ、底力を見せてきました」


伊織「961プロといい、CGプロといい、勢いは大したものだわ」


765P「追いつかれないか不安か?」ハハ…


伊織「近づいてきたら叩き潰すだけよ」フンッ


小鳥「竜宮小町も唯一無二のトップアイドルだもんね、伊織ちゃん」


小鳥「もう私には想像できない世界よ…」ピヨヨ


伊織「ま、そんなに変わったことはないんだけど」


765P「3人はかなり順調だよなぁ」


伊織「まあね。それなりに余裕があるから、もっと忙しくしてもいいぐらいだわ」


765P「んじゃあもう少し考えてみるか」


小鳥「でもプロデューサーさん、無理だけはしないように、ですよ?」


765P「いえいえ、俺は大丈夫ですよ」


765P「竜宮はセルフマネジメントに秀でてますから、嘘のように負担は少ないんです」


伊織「そうよ。だからあんたはもっとフェアリーに注意した方がいいわ」


765P「気を抜いているつもりはないぞ」


伊織「そ。ならいいけど、もっとやり方は変えるべきかもね」



伊織「あのままじゃ、IA大賞なんて到底無理よ」



―――――――――

―――――

――


場面は変わって、ここは961プロレッスンスタジオ。


モンデンキントが無事復活し、いよいよ本格的に961プロオールスターライブへの取り組みが始まる。


そんな折に、ライブのために助っ人を呼んだと、961Pはアイドルに告げるのであった。


961P「おはようみんな。久しぶりにスタジオに全員集まったな」


961P「いよいよ961プロオールスターライブに向けて集中する時期になった」


961P「つまり大詰めだ。計画的に仕事を調整しつつ、人数が揃うようにレッスンを組む」


真美「ねー兄ちゃん、ライブってもうすぐっしょ?ちょっとノンビリなんじゃない?」


961P「んー、大丈夫。ライブ用の変則ユニット練習は前からしてただろ?」


961P「これから詰め込むのは細かい演出と6人のステージ練習だけだから」


961P「それに、短期でもしっかり成果が出るように特別なアドバイザーを呼んだよ」


千早「アドバイザー、ですか?」キョトン


961P「うん。大事なのは濃い時間で多くのことを吸収することだと思って!」


やよい「新しい先生……?」


961P「いやいや、現場のプロだよ。みんなもよく知ってる」


P’s携帯<テッテッテー♪


961P「あ、来たみたい。連れてくるね」


――君を見失う……Alice……♪


アイドル一同「!?」


ガチャッ


「やっほー♪久しぶり!」


やよい「翔太くん!」


「チャオ☆元気にしてたかい?」


千早「伊集院さん…」


真美「おっ、ジョセフ真月!」


「天ヶ瀬冬馬だ!!」クワッ!


雪歩「ジュピター……」


961P「そう、315プロの人気アイドル。また、みんなの先輩でもあるね」


翔太「“元”だけどねー」


真「いいのか?古巣とはいえ対立会社に協力して……」


冬馬「ヘッ、黒井のおっさんに頼まれたらやってなかったが」


翔太「依頼したのはそこのお兄さんだったし」


北斗「それにみんなは俺の可愛い後輩だからね☆」


冬馬「まあ……あれだ、俺たちのせいで、お前らに苦労かけちまったみたいだからな…」


春香「デビューが遅れたのはジュピターのせいじゃないよ?気にしない気にしない♪」


翔太「兄妹ユニット同士仲良くやろうってことで」アハハ


961P「はは、自己紹介はいらないね?さっそくレッスンを……」



真美「じゃあまず恋を始めるポーズから!」


北斗「こうやるのさっ!」ビシッ


やよい「すごいですー!」



真「よっと!」グルンッ


翔太「すごいお姉さん、一回見せただけで!」


春香「でも真ちゃんはバク転する機会ないと思うよ...」アハハ…


雪歩「あなたがレッスン出来るんですか?」ニヤニヤ


冬馬「うるせー!…ウチはアイドル候補生だらけだから俺たちが指導することも多いんだよ」


冬馬「だから、野郎たちに教えてる間にトレーナーの域まで達しちまったぜ」ドヤァ


千早「暑苦しそうな事務所ね」


雪歩「女性に飢えてここにきたんですか?」


冬馬「……何でこんなめんどくさい所に来ちまったんだ俺……」グヌヌ



961P「仲は良いね……みんな」アハハ…


<アシタイッチャオウ!キミニイッチャオウ!~♪


961P(これは予想以上だ…ジュピターの熱量にあてられて、みんな動きが良くなっている)


961P(それから彼らのステージ上を意識しての細かい指導)


961P(これはジュピターにしかできないだろう)


961P(961プロとの確執を飛び越えて3人は来てくれたんだ)


961P(ライブ、絶対大成功させなくちゃな)


――――スタジオの外



黒井「社員からジュピターらしき人物を目撃したと聞いたから来てみれば……」ハァ…


秘書「社長、よろしいのですか?」


黒井「フン、別に不利益になるようなことをしている訳ではない。放っておけ」


黒井「プロデュースの方針は961Pに一任している。私には関係のないことだ」スタスタ…


秘書「会われなくても…?」


黒井「………」


黒井「今は、まだだ」



―――――――――

―――――

――



Scene of Other side


――――765プロ



高木「どうだね。フェアリーの例のプロジェクトは……」


765P「道のりは平坦ではないです。3人とも受難が続いていますよ」


高木「君の疲労も限界まできているようだが」


765P「俺のことはどうだっていいんです」


765P「彼女たちが潰れないように、俺が見てやらなくてどうするんですか」


高木「こんな時こそ、人材不足が恨まれるな」


765P「いえ、事務所の外にも協力者は山ほどいますから……今は最高の環境ですよ」


高木「それで、今日呼んだのは他でもない、アリーナの企画についてだが…」


765P「黒井社長はなんと?」


高木「問題ない、進める、とのことだ」


765P「ほっ、安心しました」


高木「961プロ、765プロ共同開催、か。……信じられんようなことだな」


765P「時代は変わっていくものです。前に社長がそうおっしゃいました」


高木「いやぁそうだった!期待しているよ、君ぃ」ハッハッハ


765P「任せてください。このアリーナライブを、新しい時代の幕開けにしてみせます」キリッ



――――――――

―――――

――


――――東豪寺プロ



ともみ「麗華、コレ」ポスッ


麗華「何かしら」


ともみ「961プロのライブのチケット、3枚」


ともみ「この薔薇といっしょに届いてた」


麗華「そう……捨てといて」


ともみ「ううん。行こうよ」


麗華「なんでよ」


ともみ「ここにいけば、私たちが見たかったものが見れるんじゃないかな」


麗華「りんは?」


りん「……行こうかな」


麗華「はぁ、仕方ないわね」


麗華「……」


――立ちあがって見せろ、魔王エンジェル


麗華「私も、あれだけ言う社長のアイドルが、どの程度まで行けるのか、興味があるわ」


麗華「アイツの思惑通りに動くのは気に入らないけどね」



――――――――

―――――

――


ジュピターの協力により、以前よりさらに活気づいた961プロのアイドル一同。


961プロ初の試みであるオールスターライブに向けては、万全な準備が整っていた。


あとはただ、大勢のファンが待つ、輝かしいステージへと進むのみである。




―――― 真美のメール ――――



★月●日


兄ちゃん☆デビュ→、キメてくれてあんがとNE→→→☆
コレカラ、げーのーかいは、真美とやよいっちで、ぃパーぃ♡にしちゃうトヵッ☆

メチャイケアイドルで、がんばんNE!ょろちぃくぅう~♡
(_ _*)×(*_ _)

あと、亜美もめっちゃよろこんでたZE☆
じゃね☆★☆


■月▽日


ヤッホ→→→兄(C)真美ダョ→→→!!!
ヾ(≧◇≦)人(≧◇≦)ノ

兄(C)てば、マヂでわんつ→ているずをトップァィドルにしchao→→→
って思ってンだNE☆アンガト→→→!!!

ホント、めちゃカンド→→→してッヵラ☆↑↑↑↑

つぎヵラは、レッスンも、あそびとおんなぢくらい、メチャがんばンYO!!!
兄(C)も真美とやよいっちをガン×2もりアゲてNE→☆


●月■日


真美だYO☆

兄Chan☆オーデご→かくcho→うれち→ょォ(≧▽≦)人(≧▽≦)
うれちすぎて、ど→にヵなりso→!!!!

今回、マヂふぁんだったし、とちゅ→アピれなかったときとヵ、
も→×かも\(゜▽゜;))((;゜▽゜)/
とヵ思ったヶど、さぃごまでぁきらめなくてョヵったYO!!!!
ニンゲン、ぁきらめナイがカンヂンだNEE☆☆☆


◆月▲日


真美だYO☆ミ

兄(C)、きょ→のわんつ→ているずは
cho→→cho→→cho→→cho→→イケてたヨネ!
(≧▽≦)ハ。・:*:・゜´★,。・:*:♪・゜´☆

かいじょ→のおいチャンたちのシセン、クギヅケだったYO↑↑↑↑

兄(C)のゆ→ことき→て、ガンバってきて、よヵッタ→!!!!!

も→このまま、メチャイケモードで、
IAたいしょ→とヵ、ねらっちゃウ!?

しヵも亜美とヵミキミキとヵしまむーにあったZE☆
いおりんのおでこがめッちゃまぶしヵった(≧▽≦)人(≧▽≦)


▲月●日


兄ちゃん、亜美がね...竜宮小町はモンデンキントに負けないって、言ってたョ...
真美に言われてもどうすりゃいいんだYO!|||(-_-;)|||
とにヵくやよいっちと真美はたいしょ→とりにいくかんね!
兄(C)はキョーのらいぶあらいぶ頑張ってNE→!!


×月■日


しんぢらんナイよォ☆まぢぶもんしょ→とれるなんて(≧▽≦)

兄(C)&やよいっちとあそんで楽しかったこと思い出しながら歌ってきたヵらヵナ?

いつもたのしそ→に歌ってて、E→顔してるって、
帰りに、IAUの人にゆわれたし♡
マヂ兄(C)&やよいっちのおかげヵも☆\(^◇^\)(/^◇^)/

これヵらも、ぃっぱぃあそんで、E→思い出つくろ→NEEE☆☆☆
とりあぇずあしたはやよいっちともやしパ→てぃだFoo!!

でも×2やっぱ亜美たちはすごかったZE!
わんつ→ているずだってもっともーォっとキラキラ☆ミしたいYO!


▼月●日


うあうあうあうあ→→→→→も→→→はるるんタチ、ダメかなァ????
イマのカンジだったら、ゼッタイヤバ×1000(Tへヽ)(/へT)
メッチャしんぱィだョォ。。。

はるるんにあいたいョ☆マダがんばれるってイって→→→→!!!
兄(C)よろろろだかんNEEEEE(>_<)/★


☆月■日


真美だYO→☆★☆★

961プロみんないっしょにレッスンできてうれC!!
ジュピターきたのはおどろいたヶド!←
(/^_^)o日☆日o(^0^|)

ダンスとか、ガンバったカラ、め→っちゃツカレタんだケド、
うれしすぎて、全然ねむくなんないYO→!
それに、はるるんとゆきぴょんにメールしまくったら、
がんばろメ→ルがジャカジャカきて、返信いそがCすぎ→!
\(^_^;))((^_^;)ノ

うれC→悲鳴って、こ→ゆ→のを言うんだネ☆
でも、このうれしさ、真美が1番ほ→こくしたい人は。。。
やっぱ兄(C)ヵモ♡
(@^0^@)(@^0^@)

兄(C)、モンデンキントふっかつさせてくれて、ありがと→!!
兄(C)も、はるるんたちも、だ→いスキだょっ☆♡♡♡


◇月○日


あしたはいょいょライブだNE!
ちょっと真美の話をきいてくれぇぇ_(._.)_


会ったばかりのときにね、亜美のこと話したよね
真美が961プロに入った理由とかも


真美はさ、やっぱ亜美とチガうんだって分かってほしかったんだよね
同じとこにいたらキャラもかぶっちゃうし、そしたら真美が765プロにいてもしょーがないし!
で、頑張って961プロにはいったんだけど

でもその後、黒井しゃちょーが亜美たちをいじめ始めたって分かってさ、ほんとサイアクだった
昔はね、亜美はときどき元気ないときがあって、
真美がどうしたのってきいたってなんでもないってゆうんだ

そういうときはだいたいしゃちょーにいじわるされたときでさー
亜美も前に辛かったって言ってたケド、真美だってそんときはマジどーしようもなくてさ

んで、いつまでたってもデビューできないし、もー961プロやめよっかなーって思ってた
やよいっちがいなかったらとっくにやめてたかもだけどね。。。


そんなときに竜宮小町がジュピターぶったおしてさ、それでセカイが変わったよ。

あまとうたちがいなくなっちゃったのはザンネンだったケド↓↓


それから兄ちゃんが来て、最初はこの人も765プロにいじわるするんじゃないかって思ってた!

でもね、兄ちゃんはもう兄ちゃんって感じだからさーゼンゼンそんなことなくて、
やよいっちと一緒にデビュ→して、いろんなオシゴトして...
そしたらイイ賞もらったり、なおなおとかあずさおねーちゃんとかとオシゴトできたりもしてさ。


亜美からきいたんだけど、こんどは765プロとチョーでっかいライブしちゃうんでしょ?
(亜美にはヒミツにしといてって言われた←)
さすが兄ちゃんだよ、ホント。


亜美と一緒にステージに立てるなんてびっくりなんだよもー!
まだまだ亜美には追いつけないケド、兄ちゃんがいればすぐ追いぬけるもんね。


そろそろ眠くなってきた...
寝る(≧◇≦)


あしたは真美もゼンリョクでいくYO!
兄ちゃん、これからも真美をよろしく!大スキ♡



――――――――

―――――

――



Petit STAGE


ちひゃーがなにか見つけたようです。



「くっ!」


P「なんだちひゃー、それは…」


「くぅ!」スッ


P「961プロオールスターライブのチケット?」


P「まったく、どこで拾ってきたんだか」


P「どれどれ…」


『大人ひとりとぷち14匹 ご招待!!』


P「なるほど…」


P「……」


P「コンサートに行きたいかー!!」


<ナノー!! ウッウー↑ ヴァーイ



どうやらみんなで、ライブにお出かけするようです。



――――――――

―――――

――


ここは、961プロオールスターライブ会場。


いよいよわんつ→ているずとモンデンキントの集大成を見せる時が来た。


彼女たちの団結の力は、この先の未来を、どう変えていくだろうか。


――――リハーサル




雪歩(あれ…?この流れ、イメージ通りじゃないな…)


真「萩原、どうした?」


雪歩「真さん、さっきのこの移動なんですけど…」


真「ああ、ここはこういう間合いで……」


・・・


雪歩「ありがとうございます。問題なくできました」エヘヘ


千早「よかったわね、雪歩」


雪歩「はい!」


春香「……」ニコニコ




961P「やよいが待ってるから交代してくれよー」オーイ


╲はいっ!╱


春香「三人とも、いこ?」♪


――――開場後の楽屋



春香「お客さんいっぱいだって!」


やよい「うぅー、ちょっとドキドキしてきたかも……」


真「これだけ大きい箱だからね……きっと想像つかないぐらい人がいるんだろうな」ドキドキ


真美「いやーでも千早お姉ちゃんはこの余裕ですぜみなさん」ンフフ


千早「~♪」


春香「ああ、同じユニットなのに……どうしてこんなに頼もしいんだ」ガクリ


真「場数が違うからなのか……」


――――そしてここは、別の控え室。




雪歩「あれっ、プロデューサー」


961P「……ん」ゴクゴク


961P「雪歩も水か?」


雪歩「はい……ってプロデューサーこんな所にいて大丈夫なんですか?」


961P「うん。もうやれることはやったからね」


961P「あとはスタッフさんに任せて、みんなを送り出すだけだよ」


雪歩「あれだけたくさんの設備を動かすなんて、スタッフの方々はすごいですよね」


961P「特にウチは演出の量も種類も膨大だからな。961プロのスタッフは優秀な人が多いぞ」


雪歩「たしかにHoneyHeartbeatあたりはアイドルのライブらしからぬ演出だと思います」アハハ


雪歩「演出会議のとき、私が寝ている間にあんなことになるとは思いませんでしたよ」


961P「寝ていた雪歩が悪いな」ハハ…


雪歩「プロデューサー、あの」


961P「んー?」


雪歩「これからも、たくさんのファンが待つ……」


雪歩「楽しくてドキドキするステージに導いてくれますか?」


961P「もちろんだよ」


雪歩「優しいだけの相づちはいやですよ?」


961P「……本気だ」


雪歩「それじゃあ……」


雪歩「この先も、私をちゃんと見ていてくれますか?」


雪歩「……ときどき、いつも」


961P「ときどきいつも?どんな日本語だ……」


雪歩「おっ、乙女の日本語ですっ!///」タッタッタ…


961P「……なんだったんだ?」



――――――――

―――――

――


そして、いよいよ開演の時。


待機場所にて、開演アナウンスを待つ真と春香。


真「天海がLive×Aliveで言おうとしてたことが今分かった」ティン


春香「えっ、急になんのこと?」


真「多分、『あの場所にコードが出てたから気をつけて』……かな」


春香「……あっ、あー!あの時かぁ」


真「この時に天海の話をちゃんと聞いておけば良かったのにな」ハァ…


春香「今それを後悔しちゃうの!?あと1分で人前だよ!?テンション上げてこうよ!」キョドォ


真「過去のボクをぶん殴りたい。助走つけて」ズーン


<カイエンアナウンスハイリマース!


春香「……私はあの時の真ちゃんがいたから、今があるんだと思うよ?」ニコッ


真「天海…お前いい奴だな……」


春香「そんな今さら♪」


春香「さ、行こう! 今までを超えて、私たちの未来を創るために」



――ただいまより、961プロオールスターライブ『Go to the NEW STAGE! 』を開催します!



――――――――

―――――

――


ライブ序盤。


Little Match Girl 待機中……


雪歩「私はすごく嬉しいんです」


雪歩「こんなにたくさんのみんなの前で、千早さんと歌えることが……」


千早「私もよ。雪歩」


千早「会場が……白い雪のように、青い海のように変わっていくのを…」


千早「私は、これからもずっと、あなたの近くで見ていたい」


雪歩「寂しさはきっと……幸せに出会う日の序章」


千早「……?」


雪歩「そう、プロデューサーが、営業の時に教えてくれたんです」エヘヘ


雪歩「私、頑張ってよかったなぁ」


千早「……雪歩は今、幸せ?」


雪歩「はい、とっても」


<LMGスタンバイオネガイシマース!



千早「……行きましょうか」スッ


雪歩「あの、千早さん」


千早「どうしたの?」


雪歩「今日のヒロインは、私です」ウインク


千早「…負けないわ」クスッ



千早「強くなったわね……雪歩」


Can you heat it up at frozen night

Like a little match girl,yeah

Kiss me and burn it up

When I look into your heat ――



――――――――

―――――

――


ライブ中盤。


『キラメキラリ、いっくよーーー!!!!』


<キラメキラリっ!ずっとチュっと♪ ╲チュッチュッ!╱



春香「これだけ会場が広いと、ウルトラオレンジも圧巻ですね...」


961P「まるで山火事だよ」ハハ…


真「なあ、高槻ってあんなにパワフルだったか?」


961P「成長したのは、真たちだけじゃないってことだ」ドヤァ


<うちゅうかーらーみれーばーちーきゅうもなーがれぼしー♪ ╲ウォォオッハイッ!ウォォオッハイッ!╱



―――関係者席



冬馬「アイツ、961プロに来たときとは別人だよな……?」


翔太「あれだけ動き回って、よくペース乱さずに歌えるなぁ」アゼン


北斗「世界中のエンジェルちゃん達の中でも、やよいちゃんは特別な天使だね☆」


961P(IA大賞の後から、やよいは基礎的なダンスレッスンを積み直したからな)


961P(体力の向上はもちろん、ダンスもハイレベルにこなせるようになった)


961P(そこにやよいの持つ魅力が相まって、誰も真似できないオリジナルが生まれたんだ)


961P(熱狂的やよいファンの765Pの協力もあったけど…。)



<フレッフレッガンバレッ!さいっこー♪ ╲ワァァァァア!!╱



――――――――

―――――

――


そしていよいよライブも終盤。


ライブのメインの一つ、HoneyHeartbeatを控えた舞台袖。


961P(いよいよ次はメインのHoneyHeartbeat……会場のボルテージは最高潮)


961P(アイドルの疲労も少しずつ見えてきているけど)


961P(あれだけ頑張って来たんだ。もう怖れるものもない)


961P(ここは任せたぞ、真美、春香、真!)


真美「ねーねー兄ちゃんっ!」ピョコッ


961P「どうした真美……スタンバイしないとだめじゃないか」


真美「コレ兄ちゃんにあげるよ!」


961P「ん?手の中に何かあるのか?」シャガミ…


真美「…んっ」グイッ


――――ちゅっ


真美「いってくるねー!」パタパタ…


961P「……え?」ポカン


~♪


空はサニー&シャイニー

今日はきっと止まらない 

マイハニー ハートビート


╲ワァァァァァァァァ!!!!!╱


春香「ゲーセン♪ デートはSTART!!」

真「ねーねー!」

春香「会話はon and on♪ けっせーん ドーン!鬼の?」

真美「にせーん♪」

「難易度テンスターズ!!」

真「フルコンボ!歓喜の」╲フェースタ!╱

真「あれ財布どこでーすか?」

╲アッターケドナカミスカースカ!╱

「「「気を取り直してゆーこう!」」」


ゴー!╲カンランシャ!╱
照らす♪ ╲サンシャイン!╱
君に? ╲ワンサイン!╱
まわる ╲ユアッサイッ!╱
車はヒミツの ╲アンゴウ!╱
あとでもっかいよろしく! ╲アンコール!╱
さあスリー!╲スリー!╱ ツー!╲ツー!╱ ワン! SayYeah!
何してもいっいーんだ♪そらっのうえ ウィッイーンダハウス!╲Foo!╱


――――関係者席



りん「あの子たち、なんであんなキラキラして見えるんだろう」


ともみ「ファンの盛り上りも、私たちと異質」


ともみ「これがきっと、“本物”だけがもつ力だと思う」


麗華「私たちが目指していたもの……見たかったもの……」


麗華「苦労して手に入れたものが……本当の力…か」ウツムキ


―――~~♪


予定は海までよ サンセット ハイウェイ
時計を見ないでよ キープ イット アウェイ
夜も更けてきたね 門限前
だけどこのまま行こうよ どこまでも…

思い出一つ残したい
車を停めたシーサイド


春香「酸欠な車内!そう満月のせいじゃない♪」

春香「海にきらめくハイビーム♪まるでガラスのハイヒール!」

真美「いまなんじー!?」 ╲ンー、レージカァ!╱

真「シンデレラはベッドで寝る時間!」

春香「だけどミッツ数えてヒミツ作ろう♡ハチミツみたいHoneybeatハーニー♪」


真「シート倒したら?」╲ネエ、ユーシー!╱

真「Gimme君の!」╲エートゥージー!╱

╲キョーアンマリジカンナーイ!╱

真「ならBまでオンザビーチ!」

真美「さあスリー!」╲スリー!╱

春香「ツー?」╲ツー!╱

真「ワン!」 ╲「「「Say Ho!!」」」╱

まだ長いトゥナイト!私たちゲットオンザマイク! カモン!


――――ステージ袖



雪歩「実際に見るとすさまじいですね……演出」


千早「火炎、スモーク、レーザー、フラッシュ……」


千早「全力使いきってるわね」


961P「この後は男性ダンサーの神輿担ぎだ」アハハ…


やよい「そんなのもあるんですかー!?」ワクワク


―――~~♪


春香「Say Hoooooo!!」 ╲Hoooooooo!!╱

真「Say Ho!Ho!」 ╲Ho!Ho!╱

真美「Say Ho、Ho、Ho!!」 ╲Ho!Ho!Ho!╱

「「「Say Ho、Ho、Ho!! さわげぇぇぇーーー!!!!」」」

╲ヒャッホーウ!!ナンダアレハ!?ミコシダー!!ミコシガデタゾ!アハハツキヌケテンナ!!961プロサイコー!!╱


――――関係者席



未央「なにこれ!ホントにアイドルのライブ!?」アハハ!


卯月「あっ!真ちゃんがバク転した!!」キラキラ


凛「菊地さん、カッコいいな……」ホアー


未央「しっかしファンのみんなもすっごいコールだねぇ~!こりゃ楽しい!!」


卯月「こんな一体感なかなか味わえません!」ワイワイ


――~~♪


そっらっはー♪ まーさにスターリ~♪
╲ハーニー!ビーマイステディー!ハーニー!ソースィートベイビー!╱

こんな夜は止まらない!マイハニー♡ ハートビート♪
╲スリー!ツー!ワン!Hoo!╱          ╲プリーズミー!╱

そっとー♪ 渡すてがーみ~♪
╲ラブミー!ユアミーレディ!ハーニー!アイムソーレディ!╱

さよならすーるよ!  夢見たユー&ミー!
╲スリー!ツー!ワン!Ho、Hoo!╱    ╲プリーズプリーズミー!╱


真「Say,my honey,what you want?」――♪


「「「せなっかーにー♪に・じ・の・は・し・を………せおっってー!!」」」
                         
「「「ゆーら~♪...ゆーら~~♪...」」」
             ╲プリーズプリーズミーナウ!╱


╲ワァァァァァァァァァァァ!!!!ハルカァァァーー!!マコトォォォーー!!マミィィィーー!!╱



―――――――――

―――――

――



それから、アンコールを無事に迎え、長いライブの幕は降りた。


―――終演後 会場のどこか



961P「君たちは…」


りん「ライブ見たよ…」ウツムキ


麗華「忙しいと思うから、手短に」


麗華「菊地真に伝えておいて。今度は正々堂々やりましょうって」


ともみ「それから、いろいろとご迷惑おかけしました」ペコリ


961P「ああ、社長から話は聞いたよ…」


961P「もうこれ以上咎めるつもりはない」


961P「だから」


961P「…今度は君たちのステージを見せてくれ」ニコッ


麗華「……」


麗華「望む所よ」


961P「アイドルにとってただ一つ必要なもの」


りん「……?」


961P「君たちと、君たちを見てくれる人。それだけがアイドルである証だ」


961P「魔王エンジェルのステージを待ってるよ。ずっと」


ともみ「はい!」



――――――――

―――――

――


ここはモンデンキントの楽屋。


初めての大きなステージを終えたアイドル達は、心地よい疲れに包まれていた。


……次はどんなステージが待ってるんだろう


……はるるん、もう次の話?気が早いですなぁ


……えへへ、今日まで頑張れた私たちは、もっともーっと頑張れると思います!


……これからも961プロが成長し続けていけるといいな


……そうね。雪歩はどう思うのかしら?


……Zzz


……あら、お約束ね


最後に、ここはライブの熱量が去ったステージ。


黒井社長と、961Pの声だけが、静寂に響いている。


961P「黒井社長、撤退完了です」


黒井「ウィ、よくやった」


961P「ご協力ありがとうございました」


黒井「そういうのは全て終わってからだ」


961P「……はい」


黒井「この場所に立ちたいと……デビュー前の春香達はよく言っていた」


961P「……そうなんですか」


黒井「お前が我が社に来るまでの彼女たちを、お前はどのくらい知っている?」


961P「……」


黒井「デビューの見通しも無く、レッスンしかやることがなく」


黒井「また、その状況が当たり前の日々」


黒井「それがあの頃の春香達だ」


黒井「ずっと迷いや不安を抱えていただろう」


黒井「私にはどうすることもできなかった」


961P「……」


黒井「お前がプロデューサーになって、彼女たちの笑顔は輝きだした」


黒井「そして今、最高の笑顔を彼女たちは見せている」


黒井「……礼を言おう」


961P「いえ、そんな……」


黒井「しかし、よく春香たちをここまでひっぱりあげたな?」


961P「最初は俺の力なんて本当に小さなものでしたが……」


961P「…みんなのおかげで俺自身も成長できました」


961P「向き合って、信頼関係を築いて……失敗したり助けられたりもしましたけど」アハハ…


黒井「信頼関係か……大嫌いな言葉だ」ニヤリ


黒井「今ならハリウッドの件は考えてやってもいいぞ」


961P「……」


961P「いえ、俺は行きます。この先を見据えるなら、自分がもっと成長しなければ、と」


961P「今日のステージを見て、その思いは強まりました」


黒井「……馬鹿なやつめ。勝手にしろ」


黒井「それから、この次のアリーナライブの企画では、765プロに主導権を奪われるんじゃないぞ」


961P「……任せてください、この961プロのプロデューサーに」



「WE ARE M@STER P’s!!」 第一部 完結


このスレッドの残りで全て書ききれないため、
区切りがいいのでここで第一部完結という形にさせていただきます_(._.)_
また新たなスレッドで第二部を始めます。

第二部には、「フェアリー スーパー・スターダム」と「エピローグ」が残っております。

現時点では第二部の開始がまだ未定なので、
もし、続きがすぐに読みたいという優しい方がいらっしゃれば、
稚拙ではございますが、リメイク元の、
765P&961P「ふたりのプロデューサー」
の384番目のレス以降を続けてお楽しみくださいませ。

ここまで読んで下さった方々、ありがとうございました。

いつか書き始めるであろう第二部も、お目に止まりましたらよろしくお願いします(_ _)

それでは、このスレッドはhtml化依頼にださせて頂きます。

重ねて、今まで読んで下さった方々、本当にありがとうございました。

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